説明

積層コンデンサ、配線基板、デカップリング回路および高周波回路

【課題】 積層コンデンサの等価直列インダクタンス(ESL)を低減する。
【解決手段】 互いに対向する第1および第2の内部電極14および15と第1および第2の外部端子電極とをそれぞれ電気的に接続する第1および第2の貫通導体20、20a、21および21aを、内部電極14,15を流れる電流によって誘起される磁界を互いに相殺するように配置するとともに、これら貫通導体のいくつかを、第1および第2の内部電極14および15の各々の周縁部において第1および第2の内部電極14および15に接続される第1および第2の周縁貫通導体20aおよび21aによって与える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、積層コンデンサ、配線基板、デカップリング回路および高周波回路に関するもので、特に、高周波回路において有利に適用され得る積層コンデンサ、ならびに、この積層コンデンサを用いて構成される、配線基板、デカップリング回路および高周波回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来からある最も典型的な積層コンデンサは、たとえばセラミック誘電体からなり、積層される複数の誘電体層、ならびに複数のコンデンサユニットを形成するように特定の誘電体層を介して互いに対向しながら誘電体層の積層方向に交互に配置される複数対の第1および第2の内部電極を有する、コンデンサ本体を備えている。コンデンサ本体の第1および第2の端面には、それぞれ、第1および第2の外部端子電極が形成される。第1の内部電極は、コンデンサ本体の第1の端面上にまで延び、ここで第1の外部端子電極に電気的に接続され、また、第2の内部電極は、第2の端面上にまで延び、ここで第2の外部端子電極に電気的に接続される。
【0003】この積層コンデンサにおいて、たとえば第2の外部端子電極から第1の外部端子電極へと流れる電流は、第2の外部端子電極から第2の内部電極へと流れ、この第2の内部電極から誘電体層を通って第1の内部電極に至り、次いで、この第1の内部電極内を通って第1の外部端子電極へと至る。
【0004】コンデンサの等価回路は、コンデンサの容量をC、等価直列インダクタンス(ESL)をL、等価直列抵抗(ESR)と呼ばれる主に電極の抵抗をRとしたとき、直列にCLRが接続された回路で表わされる。
【0005】この等価回路では、共振周波数(f0 )は、f0 =1/〔2π×(L×C)1/2 〕となり、共振周波数より高い周波数では、コンデンサとして機能しなくなる。言い換えると、LすなわちESL値が小さければ、共振周波数(f0 )は高くなり、より高周波で使用できることになる。なお、内部電極に銅を用いてESRを小さくすることなども考えられているが、マイクロ波領域で使うためには低ESL化が図られたコンデンサが必要となる。
【0006】また、ワークステーションやパーソナルコンピュータ等のマイクロプロセッシングユニット(MPU)のMPUチップに電源を供給する電源回路に接続されるデカップリングコンデンサとして用いられるコンデンサにおいても、低ESL化が求められている。
【0007】図13は、上述したMPU1および電源部2に関する接続構成の一例を図解的に示すブロック図である。
【0008】図13を参照して、MPU1は、MPUチップ3およびメモリ4を備える。電源部2は、MPUチップ3に電源を供給するためのもので、電源部2からMPUチップ3に至る電源回路には、デカップリングコンデンサ5が接続されている。また、MPUチップ3からメモリ4側には、信号回路が構成されている。
【0009】上述したようなMPU1に関連して用いられるデカップリングコンデンサ5の場合でも、通常のデカップリングコンデンサと同様、ノイズ吸収や電源の変動に対する平滑化のために用いられるが、さらに、最近では、MPUチップ3において、その動作周波数が500MHzを超えて1GHzにまで達するものが計画されており、このようなMPUチップ3に関連して高速動作が要求される用途にあっては、クイックパワーサプライとしての機能(立ち上がり時等の電力が急に必要な時に、コンデンサに充電された電気量から数ナノ秒の間に電力を供給する機能)が必要である。
【0010】このため、MPU1におけるデカップリングコンデンサ3にあっても、インダクタンス成分ができるだけ低い、たとえば10pH以下であることが必要となってきており、このようにインダクタンス値の低いコンデンサの実現が望まれている。
【0011】より具体的に説明すると、あるMPUチップ(動作クロック周波数約500MHz)3では、DC約2.0Vが供給され、消費電力は約24W、すなわち12A位の電流が流れる設計になっている。その消費電力の低減化のために、MPU1が動作していない時はスリープモードとして、消費電力を1W以下にまで落とす仕様が採用されている。スリープモードからアクティブモードへの変換時、MPUチップ3には、その動作数クロックのうちにアクティブモードに必要な電力が供給される必要がある。動作周波数500MHzでは、スリープモードからアクティブモードへの変換時において、4〜7ナノ秒という時間の間に電力を供給する必要がある。
【0012】しかし、上述の電力を供給することは、電源部2からでは間に合わないため、電源部2から電源を供給するまでの時間、MPUチップ3近傍に置くデカップリングコンデンサ5に充電されている電荷を放電することによってMPUチップ3に電源を供給することが行なわれる。
【0013】動作クロック周波数が1GHzのものにあっては、このような機能を満足させるために、MPUチップ3近傍のデカップリングコンデンサ5のESLは、少なくとも10pH以下であることが必要となる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】先に述べた一般的な積層コンデンサのESLは、500〜800pH程度であり、上述したような10pH以下には程遠い。このように、インダクタンス成分が積層コンデンサにおいてもたらされるのは、積層コンデンサにおいて流れる電流の方向によってその方向が決まる磁束が誘起され、この磁束に起因して自己インダクタンス成分が生じるためである。
【0015】上述したような背景の下、低ESL化を図り得る積層コンデンサの構造が、たとえば、特開平2−256216号公報、米国特許第5880925号、特開平2−159008号公報、特開平11−144996号公報、特開平7−201651号公報等において提案されている。
【0016】上述の低ESL化は、主として、積層コンデンサにおいて誘起される磁束の相殺によるもので、このような磁束の相殺が生じるようにするため、積層コンデンサにおいて流れる電流の方向を多様化することが行なわれている。そして、この電流の方向の多様化のため、コンデンサ本体の外表面上に形成される端子電極の数を増やすことによって、これに電気的に接続されるように引き出される内部電極の引出し部分の数を増やすとともに、内部電極の引き出し部分をいくつかの方向に向けることが行なわれている。
【0017】しかしながら、上述したように提案されている積層コンデンサにおける低ESL化のための対策は、効果の点において、未だ不十分である。
【0018】たとえば、特開平2−256216号公報、米国特許第5880925号および特開平2−159008号公報では、内部電極をコンデンサ本体の対向する2つの側面にまで引き出す構造が記載されているが、約100pH程度までしか低ESL化を図ることができないものと推測される。
【0019】また、特開平11−144996号公報では、内部電極をコンデンサ本体の4つの側面に引き出す構造が記載されているが、最も優れたESL値として、40pHが記載されているにすぎない。
【0020】また、特開平7−201651号公報では、内部電極をコンデンサ本体の上下の主面にまで引き出す構造が記載されているが、最も優れたESL値として、50pHが記載されているにすぎない。
【0021】そのため、このような積層コンデンサが用いられるMPUチップ用の(電源ラインを含む)高周波回路において、従来は、たとえば10pH以下といったESLを実現するため、複数の積層コンデンサを並列に接続した状態として配線基板に実装することが行なわれている。その結果、積層コンデンサのための実装面積が大きくなり、このような高周波回路を構成する電気機器の小型化を阻害する原因となっている。
【0022】そこで、この発明の目的は、低ESL化をより効果的に図り得るように改良された積層コンデンサを提供しようとすることである。
【0023】この発明の他の目的は、上述したような積層コンデンサを用いて構成される、配線基板、デカップリング回路および高周波回路を提供しようとすることである。
【0024】
【課題を解決するための手段】この発明に係る積層コンデンサは、積層される複数の誘電体層を含むコンデンサ本体を備えている。
【0025】このコンデンサ本体の内部には、特定の誘電体層を介して互いに対向する少なくとも1対の第1および第2の内部電極が設けられ、コンデンサ本体の、内部電極と平行に延びる少なくとも一方の主面上には、第1および第2の外部端子電極が設けられる。
【0026】コンデンサ本体の内部には、さらに、第2の内部電極に対して電気的に絶縁された状態で第1の内部電極と第1の外部端子電極とを電気的に接続するように特定の誘電体層を貫通する複数の第1の貫通導体、および第1の内部電極に対して電気的に絶縁された状態で第2の内部電極と第2の外部端子電極とを電気的に接続するように特定の誘電体層を貫通する複数の第2の貫通導体がそれぞれ設けられる。これら第1および第2の貫通導体は、内部電極を流れる電流によって誘起される磁界を互いに相殺するように配置される。
【0027】そして、前述した技術的課題を解決するため、第1および第2の貫通導体は、それぞれ、第1および第2の内部電極の各々の周縁部において第1および第2の内部電極に接続されている、第1および第2の周縁貫通導体を含むことを特徴としている。
【0028】上述の第1および第2の周縁貫通導体は、それぞれ、第1および第2の内部電極の各々の辺上において第1および第2の内部電極に接続されているものを含むことが好ましい。
【0029】また、第1および第2の周縁貫通導体の少なくとも一方は、対応の内部電極の角において対応の内部電極に接続されているものを含んでいてもよい。
【0030】また、第1および第2の周縁貫通導体は、それぞれ、第1および第2の内部電極の各々の辺上において第1および第2の内部電極に接続されているものを含みながら、第1および第2の周縁貫通導体の少なくとも一方は、対応の内部電極の角において対応の内部電極に接続されているものを含んでいてもよい。
【0031】この発明に係る積層コンデンサにおいて、第1および第2の外部端子電極は、それぞれ、第1および第2の貫通導体の各々に関連して点状に分布するように設けられていることが好ましい。
【0032】上述の場合、第1および第2の外部端子電極には、半田バンプが形成されていることが好ましい。
【0033】また、この発明に係る積層コンデンサにおいて、第1および第2の外部端子電極は、コンデンサ本体の一方の主面上にのみ設けられていることが好ましい。なお、第1および第2の外部端子電極は、コンデンサ本体の2つの主面の各々上に形成されていても、あるいは、第1の外部端子電極が一方の主面上に形成され、第2の外部端子電極が他方の主面上に形成されてもよい。
【0034】また、この発明に係る積層コンデンサは、MPUに備えるMPUチップのための電源回路に接続されるデカップリングコンデンサとして有利に用いられる。
【0035】この発明は、また、上述したような積層コンデンサが実装された、配線基板にも向けられる。
【0036】上述したように、この発明が配線基板に向けられる場合、その具体的な一実施態様では、この配線基板には、マイクロプロセッシングユニットに備えるMPUチップが搭載され、また、配線基板は、MPUチップのための電源を供給するための電源用ホット側配線導体とグラウンド配線導体とを備え、積層コンデンサの第1および第2の外部端子電極の一方が電源用ホット側配線導体に電気的に接続され、かつ第1および第2の外部端子電極の他方がグラウンド配線導体に接続される。
【0037】上述した配線基板において、好ましくは、積層コンデンサに備える第1および第2の外部端子電極は、バンプにより接続される。
【0038】この発明は、さらに、上述したような積層コンデンサを備える、デカップリング回路にも向けられる。
【0039】さらに、この発明は、上述したような積層コンデンサを備える、高周波回路にも向けられる。
【0040】
【発明の実施の形態】図1および図2は、この発明の第1の実施形態による積層コンデンサ11を示している。ここで、図1は、積層コンデンサ11の内部構造を示す平面図であり、(1)と(2)とは互いに異なる断面を示している。また、図2は、図1の線II−IIに沿う断面図である。
【0041】積層コンデンサ11は、積層される複数の誘電体層12を含むコンデンサ本体13を備えている。誘電体層12は、たとえばセラミック誘電体から構成される。
【0042】コンデンサ本体13の内部には、特定の誘電体層12を介して互いに対向する少なくとも1対の第1および第2の内部電極14および15が設けられている。この実施形態では、複数対の第1および第2の内部電極14および15が設けられている。
【0043】また、コンデンサ本体13の、内部電極14および15と平行に延びる主面16および17の少なくとも一方、この実施形態では、一方の主面17上には、第1および第2の外部端子電極18および19が設けられている。
【0044】コンデンサ本体13の内部には、さらに、第2の内部電極15に対して電気的に絶縁された状態で第1の内部電極14と第1の外部端子電極18とを電気的に接続するように特定の誘電体層12を貫通する複数の第1の貫通導体20および20aが設けられている。また、第1の内部電極14に対して電気的に絶縁された状態で第2の内部電極15と第2の外部端子電極19とを電気的に接続するように特定の誘電体層12を貫通する複数の第2の貫通導体21および21aが設けられている。
【0045】この実施形態では、各々複数の第1および第2の内部電極14および15が設けられ、第1および第2の内部電極14および15の間に形成される静電容量が、第1および第2の貫通導体20および20aならびに21および21aによって並列接続され、このように並列接続された静電容量が、第1および第2の外部端子電極18および19の間に取り出される。
【0046】上述した第1の貫通導体20および20aと第2の貫通導体21および21aとは、内部電極14および15を流れる電流によって誘起される磁界を互いに相殺するように配置されている。すなわち、この実施形態では、第1および第2の貫通導体20および20aならびに21および21aは、四角形、より特定的には、正方形の各頂点に位置する分布状態をもって配列されており、第1の貫通導体20および20aと第2の貫通導体21および21aとが互いに隣り合うように配置されている。
【0047】この発明の特徴的構成として、第1の貫通導体20および20aのいくつかは、第1の内部電極14の周縁部において第1の内部電極14に接続されている、第1の周縁貫通導体20aとなり、また、第2の貫通導体21および21aのいくつかは、第2の内部電極15の周縁部において第2の内部電極15に接続されている、第2の周縁貫通導体21aとなっている。
【0048】また、この実施形態では、上述した第1および第2の周縁貫通導体20aおよび21aは、それぞれ、第1および第2の内部電極14および15の各々の辺上において第1および第2の内部電極14および15に接続されている。
【0049】第1および第2の外部端子電極18および19は、それぞれ、第1および第2の貫通導体20および20aならびに21および21aの各々に関連して点状に分布するように主面17上に設けられている。この実施形態では、第1および第2の外部端子電極18および19は、それぞれ、導電パッド22および23ならびにそれらの上に形成される半田バンプ24および25を備えている。
【0050】このような積層コンデンサ11によれば、低ESL化をより効果的に図ることができる。
【0051】このような低ESL化の点について、この実施形態に係る積層コンデンサ11が優れていることを確認するため、内部電極14および15ならびに貫通導体20、20a、21および21aをニッケルを含む導電性ペーストによって形成し、内部電極14および15の各々の大きさを4.0mm×4.0mmとし、貫通導体20、20a、21および21aの配列ピッチを1.0mmとし、同じく直径を0.1mmとし、内部電極14および15と貫通導体21および21aならびに20および20aとの各々の間に設けられる絶縁領域の外径を0.2mmとした、積層コンデンサ11について、共振法によって、ESL値を評価したところ、18pHとなった。
【0052】なお、共振法とは、試料となる積層コンデンサについてインピーダンスの周波数特性を求め、この周波数特性における極小点(コンデンサの容量成分CとESLとの間の直列共振点)の周波数fo から、ESL=1/[(2πfo 2 ×C]
によって、ESLを求めようとする方法である。
【0053】また、比較例として、次のような比較例1、2および3に係る各積層コンデンサを作製し、各々のESL値を評価した。なお、比較例1〜3に係る各積層コンデンサの作製にあたっては、特に断らない限り、前述した積層コンデンサ11に係る試料と同様の方法を採用した。
【0054】積層コンデンサ11では、合計21個の貫通導体20、20a、21および21aが設けられたが、比較例1は、貫通導体として、積層コンデンサ11における周縁貫通導体20aおよび21aを備えないことを除いて積層コンデンサ11と同様の構造を有するもので、中央部に位置するもののみ合計9個の貫通導体を備えるものである。この比較例1によれば、82pHといった高いESL値しか得られなかった。
【0055】比較例2は、図3に示すように、貫通導体20および21の配列ピッチについては、積層コンデンサ11の場合と同様にしながら、周縁貫通導体を設けず、中央部に位置するもののみ合計16個の貫通導体20および21を設けたものである。この比較例2によれば、45pHといった比較的高いESL値しか得られなかった。
【0056】比較例3は、図4に示すように、貫通導体20および21の配列ピッチを狭めながら、中央部にのみ合計25個の貫通導体20および21を設けたものである。この比較例3によれば、積層コンデンサ11における貫通導体20、20a、21および21aの合計数である「21」より多い25個の貫通導体20および21を備えているにも関わらず、前述した積層コンデンサ11のESL値である18pHより高い28pHのESL値しか得られなかった。このことから、低ESL化には、周縁貫通導体20aおよび21aの存在が効果的であることがわかる。
【0057】図5は、この発明の第2の実施形態による積層コンデンサ26を示す、図1(1)に相当する図である。図5において、図1に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0058】図5に示した積層コンデンサ26は、周縁貫通導体として、第1および第2の内部電極14および15の各々の辺の中間部上において第1および第2の内部電極14および15に接続される第1および第2の周縁貫通導体20aおよび21aだけでなく、第1の内部電極14の角において第1の内部電極14に接続される周縁貫通導体20aを備えることを特徴としている。
【0059】上述のように、内部電極14の角に周縁貫通導体20aを配置することにより、第1の実施形態に係る積層コンデンサ11に比べて、さらなる低ESL化を図ることができる。前述したESL値の評価方法に従えば、この積層コンデンサ26によれば、15pHのESL値を得ることができた。
【0060】図6は、この発明の第3の実施形態による積層コンデンサ27を示す、図2に相当する図である。図6において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0061】図6に示した積層コンデンサ27においては、第1の外部端子電極18がコンデンサ本体13の一方の主面16上に設けられ、第2の外部端子電極19が他方の主面17上に形成されていることを特徴としている。
【0062】図7は、この発明の第4の実施形態による積層コンデンサ28を示す、図2に相当する図である。図7において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0063】図7に示した積層コンデンサ28においては、第1および第2の外部端子電極18および19の双方が、コンデンサ本体13の2つの主面16および17の各々上に設けられていることを特徴としている。
【0064】なお、図2に示した積層コンデンサ11にあっては、第1の貫通導体20および20aと第2の貫通導体21および21aとにおける図2に示した断面上での電流の流れを互いに逆方向に向けることができる。これに対して、図6に示した積層コンデンサ27および図7に示した積層コンデンサ28にあっては、第1の貫通導体20および20aと第2の貫通導体21および21aとにおいて流れる電流が互いに同じ方向になる。このことから、低ESL化に対する効果については、図2に示した積層コンデンサ11がより優れていると言うことができる。
【0065】図8は、この発明の第5の実施形態による積層コンデンサ29を示す、図1(1)に相当する図である。図8において、図1に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0066】図8に示した積層コンデンサ29においては、第1の貫通導体20および20aならびに第2の貫通導体21および21aが合計36個設けられていることを特徴としている。このように、貫通導体の数は、必要に応じて、任意に変更することができる。
【0067】また、積層コンデンサ29においては、図5R>5に示した積層コンデンサ26の場合と同様、内部電極の角に位置する周縁貫通導体20aおよび21aを備えている。この実施形態では、内部電極14および15の各々の一辺に沿って、合計6個の周縁貫通導体20aおよび21aが配置されているので、第1および第2の周縁貫通導体20aおよび21aの双方について、内部電極14および15の各々の角に位置するものがある。すなわち、第1および第2の周縁貫通導体20aおよび21aは、それぞれ、第1および第2の内部電極14および15の各々の角において第1および第2の内部電極14および15に接続されているものを備えている。
【0068】図9は、この発明の第6の実施形態による積層コンデンサ30を示す、図1(1)に相当する図である。図9において、図1に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】図9に示した積層コンデンサ30においては、第1および第2の貫通導体20および20aならびに21および21aが、三角形、より特定的には、正三角形の各頂点に位置する分布状態をもって配列されていることを特徴としている。
【0070】図9に示した実施形態に関連して、貫通導体の配列において採用される分布状態は、その他、たとえば六角形の各頂点に位置するような分布状態であってもよい。
【0071】図10は、この発明の第7の実施形態を説明するための内部電極14と貫通導体20、20a、21および21aとの位置関係を示す平面図である。
【0072】前述した第1ないし第6の実施形態では、周縁貫通導体20aおよび21aは、内部電極14および15(内部電極15については図示しない。)の辺上において内部電極14および15にそれぞれ接続されたが、これら周縁貫通導体20aおよび21aは、図10に示すように、内部電極14および15の辺より内側に配置されてもよい。図10に示した実施形態では、周縁貫通導体20aおよび21aは、それぞれ、内部電極14および15の各々の辺に接するように配置されている。
【0073】図11は、この発明の第8の実施形態を説明するための図10に相当する図である。
【0074】図11においては、周縁貫通導体20aおよび21aは、図10に示した場合と比較して、内部電極14および15(内部電極15については図示しない。)の辺よりさらに内側に配置されている。このように、周縁貫通導体20aおよび21aが、内部電極14および15の辺より内側に配置される場合、周縁貫通導体20aおよび21aの中心と内部電極14および15の各々の辺との間の長さ31は、貫通導体20、20a、21および21aの配列ピッチ32の1/3以下に選ぶことが好ましい。
【0075】以上、この発明に係る積層コンデンサを、図示した種々の実施形態に関連して説明したが、内部電極の数、あるいは、外部端子電極の数および貫通導体の数ならびに位置について、種々に変更することができる。また、貫通導体の断面形状については、図示のような円形に限らず、たとえば、四角形や六角形などに変更されてもよい。
【0076】この発明に係る積層コンデンサは、たとえば、前述の図13に示したMPU1に備えるデカップリングコンデンサ5として有利に用いることができる。このように、この発明に係る積層コンデンサをデカップリングコンデンサとして用いているMPUの構造について、図12に示した構造例に従って以下に説明する。
【0077】図12を参照して、MPU33は、下面側にキャビティ34が設けられた多層構造の配線基板35を備えている。配線基板35の上面には、MPUチップ36が表面実装されている。また、配線基板35のキャビティ34内には、デカップリングコンデンサとして機能する、この発明に係る積層コンデンサ、たとえば第1の実施形態に係る積層コンデンサ11が収容されている。さらに、配線基板35は、マザーボード37上に表面実装されている。
【0078】配線基板35の表面および内部には、概略的に図示されるように、MPU33において必要な配線導体が形成されていて、これら配線導体によって、図13R>3に示すような接続が達成される。
【0079】代表的なものについて説明すると、配線基板35の内部には、電源用ホット側電極38およびグラウンド電極39が形成されている。
【0080】電源用ホット側電極38は、電源用ホット側ビアホール導体40を介して、積層コンデンサ11の第1の外部端子電極18に電気的に接続され、電源用ホット側ビアホール導体41を介して、MPUチップ36の特定の端子42に電気的に接続され、さらに、電源用ホット側ビアホール導体43を介して、マザーボード37のホット側導電ランド44に電気的に接続されている。
【0081】また、グラウンド電極39は、グラウンド用ビアホール導体45を介して、積層コンデンサ11の第2の外部端子電極19に電気的に接続され、グラウンド用ビアホール導体46を介して、MPUチップ36の特定の端子47に電気的に接続され、さらに、グラウンド用ビアホール導体48を介して、マザーボード37のグラウンド側導電ランド49に電気的に接続されている。
【0082】上述した積層コンデンサ11の第1および第2の外部端子電極18および19とビアホール導体40および45との接続には、図12では詳細には図示しないが、バンプによる接続が適用される。
【0083】なお、図12において、図13に示したメモリ4に相当するメモリの図示は省略されている。
【0084】
【発明の効果】以上のように、この発明に係る積層コンデンサによれば、積層される複数の誘電体層を含むコンデンサ本体の内部には、特定の誘電体層を介して互いに対向する少なくとも1対の第1および第2の内部電極が設けられ、また、このコンデンサ本体の、内部電極と平行に延びる少なくとも一方の主面上には、第1および第2の外部端子電極が設けられ、コンデンサ本体の内部には、さらに、第1の内部電極と第1の外部電極とを電気的に接続する複数の第1の貫通導体、および第2の内部電極と第2の外部端子電極とを電気的に接続する複数の第2の貫通導体がそれぞれ設けられ、第1および第2の貫通導体が、内部電極を流れる電流によって誘起される磁界を互いに相殺するように配置されているので、この点において、積層コンデンサ内において流れる電流を種々の方向へ向けかつ電流長を短くすることができるので、ESLを小さくすることができるばかりでなく、第1および第2の貫通導体は、それぞれ、第1および第2の内部電極の各々の周縁部において第1および第2の内部電極に接続されている、第1および第2の周縁貫通導体を含んでいるので、内部電極の周縁部にまで磁界の相殺効果を及ぼすことが可能となり、一層の低ESL化を図ることができる。
【0085】このようなことから、積層コンデンサの共振周波数を高周波化することができ、積層コンデンサがコンデンサとして機能する周波数域を高周波化することができ、この発明に係る積層コンデンサによれば、電子回路の高周波化に十分対応することができ、たとえば、高周波回路におけるバイパスコンデンサやデカップリングコンデンサとして有利に用いることができる。
【0086】また、MPUチップ等と組み合わされて使用されるデカップリングコンデンサにあっては、クイックパワーサプライとしての機能が要求されるが、この発明に係る積層コンデンサは、ESLが低いので、このような用途に向けられても、高速動作に十分対応することができる。
【0087】また、この発明に係る積層コンデンサにおいて備える外部端子電極は、積層コンデンサを適宜の配線基板上に実装する場合、バンプ接続を有利に適用することを可能にする。現在、たとえばMPUチップのような半導体チップにおいては、動作周波数が高周波化するに伴って、バンプ接続が多用される傾向にあるが、主面端子電極の存在は、この傾向に適合するものである。また、このようなバンプ接続は、高密度実装を可能とし、接続における寄生インダクタンスの発生を抑えることもできる。
【0088】この発明において、以下のような各実施態様は、前述したような磁束の相殺をより高めたり、電流長をより短くしたりして、ESLの低減により効果的である。
【0089】第1に、第1および第2の周縁貫通導体が、それぞれ、第1および第2の内部電極の各々の辺上において第1および第2の内部電極に接続されているものを含むようにすることである。
【0090】第2に、第1および第2の周縁貫通導体の少なくとも一方が、対応の内部電極の角において対応の内部電極に接続されているものを含むようにすることである。
【0091】第3に、第1および第2の外部端子電極が、コンデンサ本体の一方の主面上にのみ形成されるようにすることである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態による積層コンデンサ11の内部構造を示す平面図であり、(1)は第1の内部電極14が通る断面を示し、(2)は第2の内部電極15が通る断面を示している。
【図2】図1の線II−IIに沿う断面図である。
【図3】図1に示した積層コンデンサ11の特性を評価するための比較例として用意された積層コンデンサを示す、図1(1)に相当する図である。
【図4】図1に示した積層コンデンサ11の特性を評価するために用意された別の比較例としての積層コンデンサを示す、図1(1)に相当する図である。
【図5】この発明の第2の実施形態による積層コンデンサ26を示す、図1(1)に相当する図である。
【図6】この発明の第3の実施形態による積層コンデンサ27を示す、図2に相当する図である。
【図7】この発明の第4の実施形態による積層コンデンサ28を示す、図2に相当する図である。
【図8】この発明の第5の実施形態による積層コンデンサ29を示す、図1(1)に相当する図である。
【図9】この発明の第6の実施形態による積層コンデンサ30を示す、図1(1)に相当する図である。
【図10】この発明の第7の実施形態を説明するための内部電極14と貫通導体20、20a、21および21aとの位置関係を示す平面図である。
【図11】この発明の第8の実施形態を説明するための図10に相当する図である。
【図12】この発明の第1の実施形態による積層コンデンサ11をデカップリングコンデンサとして用いている、MPU33の構造例を図解的に示す断面図である。
【図13】この発明にとって興味あるMPU1および電源部2に関する接続構成を図解的に示すブロック図である。
【符号の説明】
1,33 MPU
2 電源部
3,36 MPUチップ
5 デカップリングコンデンサ
11,26,27,28,29,30 積層コンデンサ
12 誘電体層
13 コンデンサ本体
14 第1の内部電極
15 第2の内部電極
16,17 主面
18 第1の外部端子電極
19 第2の外部端子電極
20,20a 第1の貫通導体
20a 第1の周縁貫通導体
21,21a 第2の貫通導体
21a 第2の周縁貫通導体
24,25 半田バンプ
35 配線基板
38 電源用ホット側電極
39 グラウンド電極
40,41,43 電源用ホット側ビアホール導体
45,46,48 グラウンド用ビアホール導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 積層される複数の誘電体層を含むコンデンサ本体を備え、前記コンデンサ本体の内部には、特定の前記誘電体層を介して互いに対向する少なくとも1対の第1および第2の内部電極が設けられ、前記コンデンサ本体の、前記内部電極と平行に延びる少なくとも一方の主面上には、第1および第2の外部端子電極が設けられ、前記コンデンサ本体の内部には、さらに、前記第2の内部電極に対して電気的に絶縁された状態で前記第1の内部電極と前記第1の外部端子電極とを電気的に接続するように特定の前記誘電体層を貫通する複数の第1の貫通導体、および前記第1の内部電極に対して電気的に絶縁された状態で前記第2の内部電極と前記第2の外部端子電極とを電気的に接続するように特定の前記誘電体層を貫通する複数の第2の貫通導体がそれぞれ設けられ、前記第1および第2の貫通導体は、前記内部電極を流れる電流によって誘起される磁界を互いに相殺するように配置され、前記第1および第2の貫通導体は、それぞれ、前記第1および第2の内部電極の各々の周縁部において前記第1および第2の内部電極に接続されている、第1および第2の周縁貫通導体を含む、積層コンデンサ。
【請求項2】 前記第1および第2の周縁貫通導体は、それぞれ、前記第1および第2の内部電極の各々の辺上において前記第1および第2の内部電極に接続されているものを含む、請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項3】 前記第1および第2の周縁貫通導体の少なくとも一方は、対応の前記内部電極の角において対応の前記内部電極に接続されているものを含む、請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項4】 前記第1および第2の周縁貫通導体は、それぞれ、前記第1および第2の内部電極の各々の辺上において前記第1および第2の内部電極に接続されているものを含み、かつ前記第1および第2の周縁貫通導体の少なくとも一方は、対応の前記内部電極の角において対応の前記内部電極に接続されているものを含む、請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項5】 前記第1および第2の外部端子電極は、それぞれ、前記第1および第2の貫通導体の各々に関連して点状に分布するように設けられている、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項6】 前記第1および第2の外部端子電極には、半田バンプが形成されている、請求項5に記載の積層コンデンサ。
【請求項7】 前記第1および第2の外部端子電極は、一方の前記主面上にのみ設けられている、請求項1ないし6のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項8】 前記第1および第2の外部端子電極は、2つの前記主面の各々上に形成されている、請求項1ないし6のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項9】 前記第1の外部端子電極は、一方の前記主面上に形成され、前記第2の外部端子電極は、他方の前記主面上に形成されている、請求項1ないし6のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項10】 マイクロプロセッシングユニットに備えるMPUチップのための電源回路に接続されるデカップリングコンデンサとして使用される、請求項1ないし9のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項11】 請求項1ないし10のいずれかに記載の積層コンデンサが実装された、配線基板。
【請求項12】 マイクロプロセッシングユニットに備えるMPUチップが搭載され、前記MPUチップのための電源を供給するための電源用ホット側配線導体とグラウンド配線導体とを備え、前記積層コンデンサの前記第1および第2の外部端子電極の一方が前記電源用ホット側配線導体に電気的に接続され、かつ前記第1および第2の外部端子電極の他方が前記グラウンド配線導体に接続されている、請求項11に記載の配線基板。
【請求項13】 前記第1および第2の外部端子電極がバンプにより接続されている、請求項11または12に記載の配線基板。
【請求項14】 請求項1ないし10のいずれかに記載の積層コンデンサを備える、デカップリング回路。
【請求項15】 請求項1ないし10のいずれかに記載の積層コンデンサを備える、高周波回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2001−148325(P2001−148325A)
【公開日】平成13年5月29日(2001.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−329012
【出願日】平成11年11月19日(1999.11.19)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】