説明

積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物、これを含む積層セラミックスキャパシタ及びその製造方法

【課題】本発明は、積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物、これを含む積層セラミックスキャパシタ及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物は、誘電体セラミックス粉末、有機バインダ、及び特定の化学式で表される帯電防止剤を含む。本発明の一実施形態によるセラミックス組成物を含むセラミックスグリーンシートは、その厚さが薄くなっても静電気の発生量が少なく、優れた機械的物性を示すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物、これを含む積層セラミックスキャパシタ及びその製造方法に関し、より詳細には、優れた剥離性を有し、積層工程が容易である積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物、これを含む積層セラミックスキャパシタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、キャパシタ、インダクター、圧電体素子、バリスタまたはサーミスターなどのセラミックス材料を用いる電子部品は、セラミックス材料からなるセラミックス本体、本体の内部に形成された内部電極及び上記内部電極と接続されるようにセラミックス本体の表面に設けられた外部電極を備える。
【0003】
セラミックス電子部品のうち積層セラミックスキャパシタは、積層された複数の誘電体層、一誘電体層を挟んで対向配置される内部電極、上記内部電極に電気的に接続された外部電極を含む。
【0004】
積層セラミックスキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという長所により、コンピューター、PDA、携帯電話などの移動通信装置の部品として広く用いられている。
【0005】
最近は、電子製品が小型化及び多機能化されるにつれて、チップ部品も小型化及び高機能化される傾向にあるため、積層セラミックスキャパシタもサイズが小さく、容量が大きい高容量製品が求められている。
【0006】
一般的に、積層セラミックスキャパシタの製造方法は、まず、セラミックスグリーンシートを製造し、セラミックスグリーンシート上に導電性ペーストを印刷して内部電極層を形成した後、内部電極層が形成されたセラミックスグリーンシートを数十から数百層まで積層してグリーンセラミックス積層体を製造するものである。その後、グリーンセラミックス積層体を高温及び高圧で圧着して硬いグリーンセラミックス積層体を製造し、切断工程を経てグリーンチップを製造する。その後、グリーンチップをか焼、焼成、研磨し、外部電極を形成して、積層セラミックスキャパシタを完成する。
【0007】
最近、積層セラミックスキャパシタの小型化及び大容量化に伴い、セラミックスグリーンシートの薄膜化及び多層化が試みられている。しかしながら、セラミックスグリーンシートの厚さが薄くなるにつれて、機械的物性の発現により、セラミックスグリーンシートに含まれるバインダの含量が増加し、これによりセラミックスグリーンシートの静電気発生による副作用が発生している。この静電気の発生によって、積層時にセラミックスグリーンシートが折り曲げられたり、剥離が円滑になされなかったり、異物が吸着されたりして積層セラミックスキャパシタの品質が低下する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた剥離性を有し、積層工程が容易である積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物、これを含む積層セラミックスキャパシタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、誘電体セラミックス粉末、有機バインダ、及び下記式で表される帯電防止剤を含む積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物を提供する。
【0010】
【化1】

【0011】
前記帯電防止剤の含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して0.1〜10重量部であることができる。
【0012】
前記誘電体セラミックス粉末は、チタン酸バリウム系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料であることができる。
【0013】
前記有機バインダの含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して5〜20重量部であることができる。
【0014】
本発明の他の実施形態は、誘電体セラミックス粉末、有機バインダ及び下記式で表される帯電防止剤を含むセラミックス組成物を含む複数の誘電体層が積層されたセラミックス本体、前記セラミックス本体の内部に形成された内部電極、及び前記セラミックス本体の外表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結された外部電極を含む積層セラミックスキャパシタを提供する。
【0015】
【化2】

【0016】
前記帯電防止剤の含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して0.1〜10重量部であることができる。
【0017】
前記有機バインダの含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して5〜20重量部であることができる。
【0018】
前記セラミックス本体は、前記複数の誘電体層間に形成された接着剤層をさらに含むことができ、前記接着剤層は前記セラミックス組成物の有機バインダより重合度が大きい有機バインダを含むことができる。
【0019】
前記一誘電体層の厚さは、10μm以下であることができ、前記誘電体層の積層数は100層以上であることができる。
【0020】
本発明のさらに他の実施形態は、誘電体セラミックス粉末、有機バインダ及び下記式で表される帯電防止剤を含むセラミックス組成物で複数のセラミックスグリーンシートを製造する段階、前記セラミックスグリーンシート上に内部電極パターンを形成する段階、及び前記セラミックスグリーンシートを厚さ方向に積層してセラミックス積層体を形成する段階を含む積層セラミックスキャパシタの製造方法を提供する。
【0021】
【化3】

【0022】
前記セラミックス積層体を形成する段階は、前記セラミックスグリーンシートを積層機に吸着させて移動させ、前記積層機から脱着させて前記セラミックスグリーンシートの厚さ方向に積層することで行われることができる。
【0023】
前記セラミックスグリーンシートは、キャリアフィルムから剥離されて前記積層機に吸着されることができる。
【0024】
前記積層セラミックスキャパシタの製造方法では、前記セラミックスグリーンシート上に内部電極パターンを形成した後、前記セラミックスグリーンシート上に接着剤層を形成する段階をさらに含むことができる。
【0025】
前記接着剤層は、前記セラミックス組成物の有機バインダより重合度が高い有機バインダを含むことができる。
【0026】
前記帯電防止剤の含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して0.1〜10重量部であることができる。
【0027】
前記有機バインダの含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して5〜20重量部であることができる。
【0028】
前記セラミックスグリーンシートの厚さは、10μm以下であることができ、前記セラミックスグリーンシートの積層数は100層以上であることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一実施形態によるセラミックス組成物を含むセラミックスグリーンシートは、静電気の発生量を減らすことができる。また、セラミックスグリーンシートの厚さが薄くなっても静電気の発生量が少なく、優れた機械的物性を示すことができる。
【0030】
静電気の発生量が少なくなることにより、セラミックスグリーンシートの剥離力が低くなり、セラミックスグリーンシートが折り曲げられる現象が防止されて、セラミックスグリーンシートの積層の容易化が可能となる。また、工程中にセラミックスグリーンシートに異物が吸着する現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックスキャパシタを示す概略的な斜視図である。
【図2】図1のA−A'線に沿って切断した断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による積層セラミックスキャパシタの製造方法を説明するための一部工程の断面図である。
【図4】本発明の一実施例によるセラミックスグリーンシート及び比較例によるセラミックスグリーンシートの時間経過による静電気発生量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。但し、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及び大きさ等はより明確な説明のために誇張されることがあり、図面上において同一の符号で表される要素は同一の要素である。
【0033】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミックスキャパシタを示す概略的な斜視図であり、図2は図1のA−A'線に沿って切断した断面図である。
【0034】
本実施形態による積層セラミックスキャパシタ100は、複数の誘電体層が積層されたセラミックス本体110、上記誘電体層に形成された内部電極120a、120b、上記セラミックス本体の外表面に形成され、上記内部電極120a、120bと電気的に連結された外部電極130a、130bを含む。
【0035】
上記セラミックス本体110は複数の誘電体層111が積層されたものであり、誘電体層は焼結された状態で、隣接する誘電体層間の境界を確認することができないほど一体化されていることができる。
【0036】
上記誘電体層111は、本発明の一実施形態によるセラミックス組成物を含むことができる。これに関するより具体的な説明は後述する。
【0037】
上記内部電極120a、120bは、上記複数の誘電体層の積層過程で一誘電体層に形成されたものであり、焼結によって一誘電体層を挟んで上記セラミックス本体の内部に形成される。
【0038】
上記内部電極120a、120bは、相違する極性を有する第1内部電極120a及び第2内部電極120bを一対にし、誘電体層の積層方向に沿って対向配置されることができる。上記第1及び第2内部電極120a、120bの各一端は、交互に上記セラミックス本体の両側面に露出されることができる。
【0039】
上記第1及び第2内部電極120a、120bは導電性金属で形成されることができ、これに制限されるものではないが、例えばNiまたはNi合金からなることができる。上記Ni合金としては、NiとともにMn、Cr、CoまたはAlを含むものを用いることができる。上記導電性金属の平均粒径は0.1〜0.5μmであることができ、上記内部電極の厚さは0.5〜1.5μmであることができる。
【0040】
上記セラミックス本体110の側面に露出される第1及び第2内部電極120a、120bの一端は、セラミックス本体の外表面に形成された第1及び第2外部電極130a、130bと夫々電気的に連結される。
【0041】
本実施形態による積層セラミックスキャパシタのセラミックス誘電体層111は、本発明の一実施形態によるセラミックス組成物を含むことができる。
【0042】
本発明の一実施形態によるセラミックス組成物は、誘電体セラミックス粉末、有機バインダ及び特定化学式で表される帯電防止剤を含む。
【0043】
上記誘電体セラミックス粉末は高い誘電率を有するものであり、積層セラミックスキャパシタに用いられるものであれば特に制限されない。これに制限されるものではないが、例えば、ABOで表されるペロブスカイト型化合物を用いることができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系材料またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO)系材料などを用いることができる。上記ペロブスカイト系材料は、A−サイト(site)またはB−サイト(site)の一部が置換されることができ、上記チタン酸バリウム系材料は、Baの一部がCaまたはSrに置換され、Tiの一部がZrまたはHfに置換されたものを用いることができる。これに制限されるものではないが、例えば、BaTiO、BaCaTiO、BaTiZrO、BaCaTiZrOなどを用いることができる。
【0044】
上記誘電体セラミックス粉末の平均粒径は、0.1〜0.5μmであることができる。
【0045】
上記有機バインダは、当業界で通常的に用いられるものであれば特に制限されない。これに制限されるものではないが、例えば、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、アクリル樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アルキド樹脂、ロジンエステル樹脂などの有機バインダを用いることができる。上記セルロース系樹脂はエチルセルロースであることができる。
【0046】
上記有機バインダの含量は、上記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して5〜20重量部であることができる。
【0047】
誘電体層の厚さが薄くなる場合、機械的物性を満たすのが困難になる可能性がある。一般的に、有機バインダの含量を増加させると誘電体層の機械的物性を満たすことができるが、有機バインダの含量が増加すると誘電体層から発生する静電気の量が増加する可能性がある。
【0048】
しかし、本発明の一実施形態によると、静電気の発生を減らすことができるため多量の有機バインダを含むことができ、これにより、誘電体層が薄膜化されても、優れた機械的物性を満たすことができる。
【0049】
上記有機バインダの含量が5重量部未満であると機械的物性が低下する恐れがあり、20重量部を超過すると静電気の発生量が増加したり、セラミックス組成物の誘電特性が低下する恐れがある。
【0050】
本発明の一実施形態によるセラミックス組成物は、下記式で表される帯電防止剤を含む。
【0051】
【化4】

【0052】
上記式で表される帯電防止剤は、トリ−n−ブチルメチルアンモニウムビス−トリフルオロメタンスルホニルイミド(tri−n−butylmethylammoniumbis−(trifluoromethanesulfonyl)imide)と命名されることができる。
【0053】
上記式で表される帯電防止剤は、セラミックス誘電体層から発生する静電気を吸収することができる。また、上記式で表される帯電防止剤は、誘電体セラミックス粉末及び有機バインダとの相溶性に優れるため、誘電体セラミックス組成物内に分散されやすく、誘電体組成物の特性の変化を防止する。
【0054】
上記式で表される帯電防止剤の含量は、誘電体セラミックス粉末100重量部に対して0.1〜10重量部であることができる。より好ましくは、1〜5重量部であることができる。上記含量範囲内でセラミックス誘電体層の成形物性、乾燥特性、表面粗さ、強度、延伸性などの低下を防止することができる。
【0055】
上記帯電防止剤の含量が0.1重量部未満であると、誘電体層が薄膜化される場合に静電気が発生する恐れがあり、10重量部を超過すると、積層工程時にキャリアフィルムからのセラミックスグリーンシートの剥離が困難になる恐れがある。
【0056】
本発明の一実施形態によるセラミックス組成物には、当業界で用いられる溶剤を用いることができる。これに制限されるものではないが、例えば、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピノール、α−テルピネオール、エチルセロソルブ、ブチルフタレートなどの有機溶剤を用いることができる。
【0057】
また、本発明の一実施形態によるセラミックス組成物は、可塑剤及び分散剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0058】
これに制限されるものではないが、例えば、フタレート系列の可塑剤を用いることができる。また、これに制限されるものではないが、例えば非イオン性ホスフェート系列の分散剤を用いることができる。
【0059】
本発明の一実施形態によるセラミックス組成物を含んで製造される誘電体層は、その厚さが10μm以下であることができる。また、より高容量の製品は2μm以下であることができ、好ましくは0.1〜2μmであることができる。また、積層セラミックスキャパシタの誘電体層は、その積層数が100層以上であることができる。
【0060】
誘電体層はその厚さが薄くなるほど機械的物性を満たしにくくなる。これにより、有機バインダの含量が増加し、有機バインダの含量が増加するほどセラミックスグリーンシートから発生する静電気の量が増加するようになる。セラミックスグリーンシートから静電気が発生すると、積層時にセラミックスグリーンシートが折り曲げられる現象が発生する恐れがある。また、キャリアフィルムからのセラミックスグリーンシートの剥離が円滑になされなかったり、異物が吸着して積層セラミックスキャパシタの品質が低下する恐れがある。
【0061】
しかし、本発明の一実施形態によるセラミックス組成物を含むセラミックスグリーンシートは、静電気の発生量を減らすことができる。セラミックスグリーンシートの厚さが薄くなっても静電気の発生量が少なく、優れた機械的物性を示すことができる。
【0062】
静電気の発生量が減ることにより、セラミックスグリーンシートの剥離力が低くなり、セラミックスグリーンシートが折り曲げられる現象が防止されて、セラミックスグリーンシートの積層の容易化が可能となる。また、工程中にセラミックスグリーンシートに異物が吸着する現象を防止することができる。これについては、後述する積層セラミックスキャパシタの製造方法によってより具体的に説明する。
【0063】
また、図示されてはいないが、上記セラミックス本体は複数の誘電体層間に形成された接着剤層を含むことができる。上記接着剤層は有機バインダを含む層であり、上記有機バインダはセラミックス組成物に用いられる有機バインダより重合度が大きいものであることができる。
【0064】
上記接着剤層を含むことにより、誘電体層間に優れた層間接着力を確保することができる。これについては、後述する積層セラミックスキャパシタの製造方法によってより具体的に説明する。
【0065】
以下、本発明の一実施形態による積層セラミックスキャパシタの製造方法を説明する。
【0066】
図3は本発明の一実施形態による積層セラミックスキャパシタの製造方法を説明するための一部工程の断面図である。
【0067】
まず、複数の誘電体層を準備する。上記誘電体層は上述したように、本発明の一実施形態による誘電体セラミックス組成物を含むことができる。本発明の一実施形態による誘電体セラミックス組成物の具体的な成分及び含量は、上述した通りである。
【0068】
本発明の一実施形態によるセラミックス組成物を含むセラミックスグリーンシートを製造し、上記セラミックスグリーンシートを焼成することにより誘電体層を形成することができる。以下、これをより具体的に説明する。
【0069】
誘電体セラミックス粉末、有機バインダ及び下記式で表される帯電防止剤を混合して、セラミックススラリーを製造することができる。この際、溶剤は当業界で用いられる溶剤を用いることができる。これに制限されるものではないが、例えば、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピノール、α−テルピネオール、エチルセロソルブ、ブチルフタレートなどの有機溶剤を用いることができる。
【0070】
【化5】

【0071】
上述したように、上記式で表される帯電防止剤は、上記誘電体セラミックス粉末及び有機バインダとの相溶性及び分散性に優れる。
【0072】
上記帯電防止剤はセラミックスグリーンシートの表面への移動が困難なため、帯電防止効果が弱くなる可能性がある。従って、上記誘電体セラミックス粉末及び有機バインダの混合が完了された後、最終段階でセラミックススラリー内に添加されることができる。
【0073】
図3に図示されたように、上記セラミックススラリーをキャリアフィルムC上に塗布して乾燥し、所定の厚さを有するセラミックスグリーンシート(ceramic green sheet)111aを製造することができる。上記セラミックスグリーンシートは10μm以下であることができる。
【0074】
次に、上記セラミックスグリーンシート111a上に導電性ペースト(paste)を塗布して、内部電極パターン120を形成する。上記導電性ペーストの溶剤は特に制限されず、例えばジハイドロテルピネオール(DHTA、dihydroterpineol)を用いることができる。
【0075】
その後、内部電極パターン120が形成されたセラミックスグリーンシート111aを厚さ方向に積層して、セラミックス積層体110aを製造する。
【0076】
図3に図示されたように、セラミックスグリーンシート111aは積層機200によって移動されてセラミックス積層体110aを形成することができる。
【0077】
積層機200のヘッド210によってセラミックスグリーンシート111aはキャリアフィルムCから剥離される。上記セラミックスグリーンシート111aはヘッド210に吸着されて移動され、その後ヘッド210から脱着されて厚さ方向に積層される。
【0078】
セラミックスグリーンシートがキャリアフィルムから容易に剥離されるとともに、ヘッドに円滑に吸着されるほど、工程は容易に行われることができる。
【0079】
上述したように、本発明の一実施形態によるセラミックス誘電体組成物を含むセラミックスグリーンシートは、静電気の発生量が少ないため、キャリアフィルムから容易に分離されることができる。即ち、セラミックスグリーンシートの剥離力を低めることができる。
【0080】
これに制限されるものではないが、上記セラミックスグリーンシートの剥離力は10〜3mN/30mm(2.5μm sheet)であることができる。
【0081】
また、セラミックスグリーンシートがキャリアフィルムから剥離されたり積層体に積層される段階で、セラミックスグリーンシートが折り曲げられる現象が防止されることができる。また、工程中にセラミックスグリーンシートに異物が吸着する現象を防止することができる。
【0082】
また、上記セラミックスグリーンシート111a上に接着剤層140を形成することができる。上記接着剤層は有機バインダを含むことができる。
【0083】
本発明の一実施形態によるセラミックス組成物を含むセラミックスグリーンシートは、静電気が弱いため、積層機200のヘッド210に吸着されることが困難な可能性がある。
【0084】
本発明の一実施形態により、接着剤層140をセラミックスグリーンシート111a上に形成する場合、積層機200のヘッド210とセラミックスグリーンシート111aとの接着力を向上させることができる。
【0085】
上記接着剤層140はグラビア印刷によって上記セラミックスグリーンシート111a上に形成されることができる。
【0086】
上記有機バインダは、上記セラミックスグリーンシートに用いられる有機バインダより重合度が高いものを用いることができる。重合度が高い有機バインダを用いることにより、接着特性を向上させることができる。
【0087】
また、上記有機バインダは、内部電極を形成する導電性ペーストとして用いられる溶剤に対して溶解性が優れたものを用いることができる。例えば、ジハイドロテルピネオール(DHTA、dihydroterpineol)に対して溶解性に優れたエチルセルロースまたはポリビニルブチラール樹脂を用いることができる。
【0088】
また、接着剤層140の固形分含量は1〜20wt%であることができ、好ましくは1〜7wt%であることができる。
【0089】
上記接着剤層140の厚さは、セラミックスグリーンシートの厚さ、セラミックス組成物の成分及び含量などを考慮して選択されることができる。これに制限されるものではないが、例えば、150nm以下であることができ、好ましくは50nm以下であることができる。
【0090】
その後、内部電極パターン120の一端が表面に露出されるように、セラミックス積層体110aをチップサイズ(chip size)に合わせて切断し、焼成することにより、セラミックス本体を形成することができる。焼成は、これに制限されるものではないが、1,100℃〜1,300℃のN−H雰囲気で行うことができる。
【0091】
その後、セラミックス本体の側面から露出された第1及び第2内部電極の一端と電気的に連結されるように、第1及び第2外部電極を形成することができる。
【0092】
以下、実施例及び比較例を参照して、本発明をより具体的に説明するが、これによって本発明の範囲が制限されるものではない。
【0093】
1.静電気発生量の測定
【0094】
誘電体セラミックス粉末100重量部に対して帯電防止剤(トリ−n−ブチルメチルアンモニウムビス−トリフルオロメタンスルホニルイミド)を1重量部含むセラミックス組成物を製造した。これを利用して、厚さが夫々0.95μmであるセラミックスグリーンシート(実施例1)及び0.8μmであるセラミックスグリーンシート(実施例2)を製造し、静電気発生量を測定して下記表1に示した。比較例1及び2は、上記実施例1及び2と同一の条件であり、帯電防止剤が添加されないセラミックス組成物で、厚さが夫々0.95μmであるセラミックスグリーンシート(比較例1)及び0.9μmであるセラミックスグリーンシート(比較例2)を製造して、静電気発生量を測定した。
【0095】
【表1】

(単位:kV)
【0096】
上記表1を参照すると、実施例1及び実施例2は比較例1及び2に比べて、静電気発生量が少ないことを確認することができた。追加的な実験によってセラミックスグリーンシートに内部電極層を印刷した後にも、実施例1及び実施例2は静電気発生量が少なかった。
【0097】
2.剥離力の測定
【0098】
上記実施例1及び2と比較例1及び2によって製造されたセラミックスグリーンシートの剥離力を測定して、下記表2に示した。
【0099】
【表2】

(単位:mN/30mm)
【0100】
上記表2を参照すると、実施例1及び実施例2は比較例1及び2に比べて、剥離力が低くなることを確認することができた。
【0101】
3.セラミックスグリーンシートの表面粗さの測定
【0102】
誘電体セラミックス粉末100重量部に対して、帯電防止剤(トリ−n−ブチルメチルアンモニウムビス−トリフルオロメタンスルホニルイミド)の含量が夫々0.25重量部(実施例3)、0.625重量部(実施例4)、1.25重量部(実施例5)、2.5重量部(実施例6)であるセラミックス組成物を製造し、これを利用してセラミックスグリーンシートを製造した。上記セラミックスグリーンシートの表面粗さを測定して、下記表3に示した。また、上記比較例1によるセラミックスグリーンシートの表面粗さを測定して、下記表3に示した。
【0103】
【表3】

【0104】
上記表3を参照すると、実施例3から実施例6は比較例1に比べて、表面粗さが小さいことを確認することができた。グリーンシート内の突起は積層後に欠陥を引き起こす可能性があるが、実施例3から実施例6は帯電防止剤の添加により、表面粗さ値が低くなる特性を発揮した。
【0105】
また、誘電体セラミックス粉末100重量部に対して帯電防止剤(トリ−n−ブチルメチルアンモニウムビス−トリフルオロメタンスルホニルイミド)の含量が10重量部であるセラミックス組成物で製造されたセラミックスグリーンシート(実施例7)と、上記比較例1によるセラミックスグリーンシートとの時間の経過による静電気発生量を測定した。図4は実施例7及び比較例1によるセラミックスグリーンシートの時間の経過による静電気発生量を示すグラフである。
【0106】
図4を参照すると、実施例7の場合、時間が経過しても初期静電気量は殆ど増加しないが、比較例1の場合、時間が経過するにつれて静電気量が増加する傾向を表した。
【0107】
本発明は、上述の実施形態及び添付の図面により限定されず、添付の請求範囲により限定される。従って、請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲に属するというべきであろう。
【符号の説明】
【0108】
110 セラミックス本体
110a セラミックス積層体
111 誘電体層
111a セラミックスグリーンシート
120a、120b 第1及び第2内部電極
130a、130b 第1及び第2外部電極
200 積層機
210 ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体セラミックス粉末と、
有機バインダと、
下記式で表される帯電防止剤と、
を含む積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物。
【化1】

【請求項2】
前記帯電防止剤の含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して0.1〜10重量部である請求項1に記載の積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物。
【請求項3】
前記誘電体セラミックス粉末は、チタン酸バリウム系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料である請求項1に記載の積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物。
【請求項4】
前記有機バインダの含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して5〜20重量部である請求項1に記載の積層セラミックスキャパシタ用セラミックス組成物。
【請求項5】
誘電体セラミックス粉末と、有機バインダと、下記式で表される帯電防止剤とを含むセラミックス組成物を含む複数の誘電体層が積層されたセラミックス本体と、
前記セラミックス本体の内部に形成された内部電極と、
前記セラミックス本体の外表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結された外部電極と、
を含む積層セラミックスキャパシタ。
【化2】

【請求項6】
前記帯電防止剤の含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して0.1〜10重量部である請求項5に記載の積層セラミックスキャパシタ。
【請求項7】
前記有機バインダの含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して5〜20重量部である請求項5に記載の積層セラミックスキャパシタ。
【請求項8】
前記セラミックス本体は、前記複数の誘電体層の間に形成された接着剤層をさらに含む請求項5に記載の積層セラミックスキャパシタ。
【請求項9】
前記接着剤層は前記セラミックス組成物の有機バインダより重合度が大きい有機バインダを含む請求項8に記載の積層セラミックスキャパシタ。
【請求項10】
前記一誘電体層の厚さは、10μm以下である請求項5に記載の積層セラミックスキャパシタ。
【請求項11】
前記誘電体層の積層数は100層以上である請求項5に記載の積層セラミックスキャパシタ。
【請求項12】
誘電体セラミックス粉末と、有機バインダと、下記式で表される帯電防止剤とを含むセラミックス組成物で複数のセラミックスグリーンシートを製造する段階と、
前記セラミックスグリーンシート上に内部電極パターンを形成する段階と、
前記セラミックスグリーンシートを厚さ方向に積層してセラミックス積層体を形成する段階と、
を含む積層セラミックスキャパシタの製造方法。
【化3】

【請求項13】
前記セラミックス積層体を形成する段階は、
前記セラミックスグリーンシートを積層機に吸着させて移動させ、前記積層機から脱着させて前記セラミックスグリーンシートの厚さ方向に積層することで行われる請求項12に記載の積層セラミックスキャパシタの製造方法。
【請求項14】
前記セラミックスグリーンシートは、キャリアフィルムから剥離されて前記積層機に吸着される請求項13に記載の積層セラミックスキャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記セラミックスグリーンシート上に内部電極パターンを形成した後、前記セラミックスグリーンシート上に接着剤層を形成する段階をさらに含む請求項12に記載の積層セラミックスキャパシタの製造方法。
【請求項16】
前記接着剤層は、前記セラミックス組成物の有機バインダより重合度が高い有機バインダを含む請求項15に記載の積層セラミックスキャパシタの製造方法。
【請求項17】
前記帯電防止剤の含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して0.1〜10重量部である請求項12に記載の積層セラミックスキャパシタの製造方法。
【請求項18】
前記有機バインダの含量は、前記誘電体セラミックス粉末100重量部に対して5〜20重量部である請求項12に記載の積層セラミックスキャパシタの製造方法。
【請求項19】
前記セラミックスグリーンシートの厚さは、10μm以下である請求項12に記載の積層セラミックスキャパシタの製造方法。
【請求項20】
前記セラミックスグリーンシートの積層数は100層以上である請求項12に記載の積層セラミックスキャパシタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−114403(P2012−114403A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138182(P2011−138182)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】