説明

積層型ノイズフィルタ

【課題】小型化した場合にも1次の減衰極を所望の周波数帯域に生じさせることができ、かつ、加工精度に大きく依存することなく安定して製造することができ、安定した特性が実現できる積層型ノイズフィルタを提供する。
【解決手段】フィルタ本体80の側面に、側面入力端子81及び側面出力端子82を有し、フィルタ本体80が、入力端子電極31が形成された絶縁層10、積層した状態で連続して周回するコイルを構成するためのコイル形成用導体32A〜32Dが形成された複数の絶縁層10、コイル形成用導体32A〜32Dに接続されない第1の容量形成用導体33が形成された絶縁層10を有するとともに、入力端子電極31をコイル形成用導体32Aに接続し、コイル形成用導体32Dと、側面入力端子81に接続された第1の容量形成用導体33との間に第1容量C0を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型ノイズフィルタに関し、特にノイズ除去のためなどに使用されるフィルタ素子で、積層絶縁体内の導体パターンで構成したインダクタンスとキャパシタンスとによって、特定周波数で急峻な減衰量が得られる積層型ノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積層型ノイズフィルタとして、図15に示されたものが知られている。図15はT型LCフィルタの電気等価回路図である。このLCフィルタは入力電極と出力電極の間にコイルL1L2が電気的に直列に接続され、コイルL1、L2の間に、グランド電極に接続されたコンデンサC1が電気的に接続される構造となっている。コイルL1、L2には、コイルを形成する導体間に寄生容量C0が発生する。このコイルL1、L2と寄生容量C0が並列共振を起こすことにより、1次の減衰極が生じることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
コイルを形成する導体間に生じる寄生容量を利用して、減衰極を発生させた積層型ノイズフィルタとしては、上記特許文献1の他に、例えば特許文献2等が知られている。
【特許文献1】特開平8−330143号
【特許文献2】特開2000−151324号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子部品の小型化が進んでおり、積層型ノイズフィルタを構成する導体パターンを小さくし、積層数を少なくする必要がある。コイル導体のパターンが小さくなることにより、インダクタンス及び寄生容量が小さくなるため、1次の減衰極の発生する周波数帯域が所望する周波数帯域よりも高周波側に発生してしまうという問題が起こっている。
【0005】
1次の減衰極の周波数帯域は、コイルのインダクタンスとコイル形成用導体間に生じる寄生容量で決まっているため、従来、インダクタンスを大きくするために、コイル長を伸ばす(面積を大きくして1層あたりの巻き数を増やす、あるいは層数を増やす)などすることにより低い周波数帯に減衰極を生じさせていたが、小型化の観点より、上記のような方法で問題を解決することは困難となってきている。
【0006】
また、コイル導体のパターンが小さくなってしまうと、加工時の精度によってコイル導体間に生じる寄生容量が大きく変化するため、所望のフィルタ特性が得られないという問題が生じる。つまり、加工精度に対する要求が厳しくなる。
【0007】
本発明は、小型化した場合にも1次の減衰極を所望の周波数帯域に生じさせることができ、かつ、加工精度に大きく依存することなく安定して製造することができ、安定した特性が実現できる積層型ノイズフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層型ノイズフィルタは、フィルタ本体の側面に、側面入力端子及び側面出力端子を有し、
前記フィルタ本体が、入力端子電極が形成された絶縁層、積層した状態で連続して周回するコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された複数の絶縁層、前記コイル形成用導体に接続されない第1の容量形成用導体が形成された絶縁層を有するとともに、
前記入力端子電極を前記コイル形成用導体に接続し、前記コイル形成用導体と、前記側面入力端子に接続された前記第1の容量形成用導体との間に第1容量を形成することを特徴とする。
【0009】
このような積層型ノイズフィルタでは、コイルにより生じるインダクタンスと容量形成用導体を設けたことにより生じる第1容量をそれぞれ独立に機能させ、減衰極の周波数帯域を調節することができるため、第1容量を大きくすることで、コイル長を伸ばすことなく、つまり、コイルの面積を大きくしたり、コイル層数を増やすことなく、低い周波数帯域に1次の減衰極を生じさせることが可能となる。
【0010】
第1容量の形成方法に関しても、コイル部を構成するコイル形成用導体と容量形成用導体との間に容量を形成するため、容量形成用導体以外には導体を挿入する必要がなく、層数の増加を必要最小限に抑えることができる。さらに、並列容量を形成する容量形成用導体とコイル部の入力端子電極との接続構造に関しても、容量形成用導体を側面入力端子に直接接続することで、ビアホール導体を形成するスペースを作る必要がなく、素子の小型化が実現できる。
【0011】
本発明はフィルタの寸法が小さいほど効果が大きい。これは、寸法が小さいとコイル部のコイル形成用導体を一層増やした際のインダクタンスの増加が小さく、インダクタンスを大きくするのに必要な層数が増すためである。特にコイル部のインダクタンスが50nH以下となるような小型の積層型ノイズフィルタにおいては、コイル部のみで減衰極を所望の周波数帯に生じさせるには、コイル形成用導体を多数積層した構成にしなければならないが、本発明のように第1容量を形成する場合は1層のみの追加で、減衰極を低い周波数帯域に生じさせることが可能となる。
【0012】
また、本発明の積層型ノイズフィルタは、フィルタ本体の側面に、側面入力端子、側面出力端子及び側面グランド端子を有し、
前記フィルタ本体が、入力端子電極が形成された絶縁層、積層した状態で連続して周回するコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された複数の絶縁層、前記コイル形成用導体に接続されない第1の容量形成用導体が形成された絶縁層、第2の容量形成用導体が形成された絶縁層、前記側面グランド端子に接続される接地用導体が形成された絶縁層を有するとともに、
前記入力端子電極を前記コイル形成用導体に接続し、前記コイル形成用導体と、前記側面入力端子に接続された前記第1の容量形成用導体との間に第1容量を形成し、前記第2の容量形成用導体と前記接地用導体との間で第2容量を形成することを特徴とする。
【0013】
このような積層型ノイズフィルタでは、上記と同様、コイル長を伸ばすことなく、低い周波数帯域に1次の減衰極を生じさせることができるとともに、層数の増加を必要最小限に抑制でき、さらに、容量形成用導体を側面入力端子に直接接続することで、ビアホール導体を形成するスペースを作る必要がなく、素子の小型化が実現できる。
【0014】
そして、本発明では、第2の容量形成用導体と接地用導体との間で容量を構成することにより、1次の減衰極より高い周波数帯域において、減衰量を大きくすることができ、減衰帯域を広帯域化することが可能となる。
【0015】
また、本発明の積層型ノイズフィルタは、フィルタ本体の側面に、側面入力端子、側面出力端子及び側面グランド端子を有し、
前記フィルタ本体が、入力端子電極が形成された絶縁層、積層した状態で連続して周回する第1のコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された複数の絶縁層、前記コイル形成用導体に接続されない第1の容量形成用導体が形成された絶縁層、第2の容量形成用導体が形成された絶縁層、前記側面グランド端子に接続される接地用導体が形成された絶縁層、第2のコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された絶縁層を有するとともに、
前記入力端子電極に前記第1のコイルの一端を接続し、該第1のコイルの他端を前記第2のコイルに接続し、前記第1のコイル形成用導体と、前記側面入力端子に接続された第1の容量形成用導体との間に第1容量を形成し、前記第1のコイルと前記第2のコイルの間に接続した前記第2の容量形成用導体と前記接地用導体との間で第2容量を形成することを特徴とする。
【0016】
このような積層型ノイズフィルタでは、上記と同様、コイル長を伸ばすことなく、低い周波数帯域に1次の減衰極を生じさせることができるとともに、層数の増加を必要最小限に抑制でき、さらに、容量形成用導体を側面入力端子に直接接続することで、ビアホール導体を形成するスペースを作る必要がなく、素子の小型化が実現できる。
【0017】
そして、本発明では、第1のコイルと第2のコイルの間に接続した第2の容量形成用導体と、接地用導体との間で第2容量を構成することにより、1次の減衰極より高い周波数帯域において減衰量を大きくすることができ、減衰帯域を広帯域化することが可能となる。
【0018】
また、本発明の積層型ノイズフィルタは、フィルタ本体の側面に、側面入力端子、側面出力端子及び側面グランド端子を有し、
前記フィルタ本体が、入力端子電極が形成された絶縁層、積層した状態で連続して周回する第1のコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された複数の絶縁層、前記コイル形成用導体に接続されない第1の容量形成用導体が形成された絶縁層、第2の容量形成用導体が形成された複数の絶縁層、前記側面グランド端子に接続される接地用導体が形成された複数の絶縁層、複数のコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された複数の絶縁層を有するとともに、
前記入力端子電極に前記第1のコイルの一端を接続し、該第1のコイルの他端に前記複数のコイルを直列接続となるように接続し、前記第1のコイル形成用導体と、前記側面入力端子に接続された前記第1の容量形成用導体との間に第1容量を形成し、各コイル間に接続した前記第2の容量形成用導体と前記接地用導体との間で複数の第2容量を形成することを特徴とする。
【0019】
このような積層型ノイズフィルタでは、上記と同様、コイル長を伸ばすことなく、低い周波数帯域に1次の減衰極を生じさせることができるとともに、層数の増加を必要最小限に抑制でき、さらに、容量形成用導体を側面入力端子に直接接続することで、ビアホール導体を形成するスペースを作る必要がなく、素子の小型化が実現できる。
【0020】
そして、本発明では、複数のコイルを全てが直列接続になるように接続し、各コイル間に容量形成用導体をそれぞれ接続し、接地用導体との間で複数の第2容量を構成したことにより、1次の減衰極より高い周波数帯域において、減衰量をさらに大きくすることができ、減衰帯域を広帯域化することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の積層型ノイズフィルタにおいては、容量形成用導体を設け、コイル部との間に第1容量を生じさせることにより、コイルのインダクタンスと第1容量をそれぞれ独立に機能させることができるため、第1容量を大きくすることによって、コイル長を伸ばすことなく、低い周波数帯域に1次の減衰極を生じさせることが可能となる。また、容量形成用導体以外には導体を挿入する必要がなく、層数の増加を必要最小限に抑制できる。さらに、容量形成用導体を側面入力端子に直接接続することで、ビアホール導体を形成する必要がなく、素子の小型化が実現できる。また、コイルと並列な容量を確実に生じさせることができるため、加工精度に大きく依存することなく安定して製品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係る積層型ノイズフィルタ(フィルタ素子)の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、誘電体セラミックシート10はアルミナ、BaTiO、TiO等の誘電体、またはこれらの誘電体セラミックと結晶化ガラスなどの混合粉から成る。また、入力端子電極、出力端子電極、コイル形成用導体、容量形成用導体、グランド端子電極、ビアホール導体等の導体パターンは、Agを主成分とする導体材料によって構成し、側面入力端子、側面出力端子、側面グランド端子はAgを主成分とする下地導体の表面にNiメッキや半田メッキなどの層を形成して構成される。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の積層型ノイズフィルタの第1実施形態は図1に示す外観斜視図を有しており、その分解斜視図を図2に示す。
【0024】
積層型ノイズフィルタは、図2に示すように、入力端子電極31を表面に設けた誘電体セラミックシート(絶縁層)10と、コイル形成用導体32A〜32Dをそれぞれ表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第1の容量形成用導体33と出力端子電極34を表面に設けた誘電体セラミックシート10から構成されている。
【0025】
なお、導体31と32A、32Aと32B、32Bと32C、32Cと32D、32Dと34はそれぞれの導体が設置されている誘電体セラミックシートに設けられたビアホール導体を通じて、電気的に接続されている。
【0026】
また、図1に示すように、フィルタ本体80の対向する両端面には側面入力端子81、側面出力端子82が設けられている。側面入力端子81は入力端子電極31と容量形成導体33に電気的に接続され、側面出力端子82は出力端子電極34に接続されている。
【0027】
図3は第1実施形態の電気等価回路図であるが、図3に示されるL1は図2中の32A〜32Dによって形成されるインダクタンス成分であり、C0は32Dと33との間に形成される第1容量である。上記に述べたコイルL1と第1容量C0によって1次の減衰極が形成される。
【0028】
このようなノイズフィルタは以下のようにして製造することができる。先ず、BaTiOを主原料とするセラミック粉末にバインダー等を混合してグリーンシートを作製する。これをプレス加工してビアホールを形成し、このシートに各導体パターンとビアホール導体を、Agを主成分とする導体ペーストで印刷方式により形成する。そして、各パターンを任意の順番で積層し、プレスを行い一体化した後に所定形状にカットする。それを900℃前後で焼成することで直方体状のフィルタ本体80を作製し、側面入力端子、側面出力端子を、Agを主成分とする導体ペーストで印刷方式または、DIP方式を用いて形成して焼付け処理し、Ni、半田メッキを施して形成し、ノイズフィルタを形成する。
【0029】
このようにして作製した積層型ノイズフィルタでは、コイルのインダクタンスL1と第1容量C0をそれぞれ独立に機能させることができるため、第1容量を大きくすることにより、コイル長を伸ばすことなく、つまり、コイルの面積を大きくしたり、コイル層数を増やすことなく、低い周波数帯域に1次の減衰極を生じさせることが可能となる。
【0030】
第1容量C0の形成方法に関しても、コイル部を構成するコイル形成用導体32Dと容量形成用導体33との間に第1容量を形成するため、容量形成用導体33以外には導体を挿入する必要がなく、層数の増加を必要最小限に抑えることができる。さらに、第1容量C0を形成する第1の容量形成用導体とコイル部の入力端子電極との接続構造に関しても、容量形成用導体を側面入力端子に直接接続することで、ビアホール導体を形成するスペースを作る必要がなく、素子の小型化が実現できる。
【0031】
このような積層型ノイズフィルタのフィルタ特性を評価するために、Sパラメータ(絶対値)のシミュレーションを行った。
【0032】
ノイズフィルタの減衰特性を、容量形成用導体33を挿入した場合と挿入しなかった場合を比較して、図4に示す。曲線Aが本発明を用いた場合の減衰特性、曲線Bが本発明を用いない場合の減衰特性である。容量形成用導体33を挿入した場合には、1次極が低周波側に移動していることが確認できる。図4の曲線Aの特性を容量形成導体を導入することなく実現するためには、例えば、コイルの総インダクタンスが50nH以下の場合においては、コイルの層数を4〜5層加えなければならないが、本発明の構造では、積層数を1層加えただけで、素子全体の大きさをほとんど変えることなく、所望の特性が得られることが分かる。
【0033】
(第2実施形態)
本発明における第2実施形態のノイズフィルタは図5に示す外観斜視図を有しており、その分解斜視図を図6に示す。
【0034】
積層型ノイズフィルタは、図6に示すように、入力端子電極41を表面に設けた誘電体セラミックシート10と、コイル形成用導体42A〜42Dをそれぞれ表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第1の容量形成導体43とビア接続用導体44を表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第2の容量形成導体45A、45Bをそれぞれ表面に設けた誘電体セラミックシート10と、グランド端子電極46とビア接続用導体47を表面に設けた誘電体セラミックシート10と、出力端子電極48を表面に設けた誘電体セラミックシート10から構成されている。
【0035】
なお、導体41と42A、42Aと42B、42Bと42C、42Cと42D、42Dと44、44と45A、45Aと47、47と45B、45Bと48はそれぞれの導体が設置されている絶縁体シートに設けられたビアホール導体を通じて、電気的に接続されている。
【0036】
また、図5に示したように、フィルタ本体80の対向する両端面に側面入力端子81、側面出力端子82が設けられると共に、手前側及び奥側の側面にそれぞれ側面グランド端子83A、83Bが設けられている。側面入力端子81は入力端子電極41と容量形成用導体43に電気的に接続し、側面出力端子82は出力端子電極48に電気的に接続している。側面グランド端子83A、83Bはグランド端子電極46の両端部において、電気的に接続している。
【0037】
図7は第2実施形態の電気等価回路図であるが、図7に示されるL1は図6中の42A〜42Dによって形成されるインダクタンス成分であり、C0は42Dと43との間に形成される第1容量である。また、C1は45Aと46の間、及び46と45Bの間に形成される第2容量であり、LGは46に生じる微小なインダクタンス成分である。上記に述べたコイルL1と第1容量C0によって1次の減衰極が形成され、第2容量C1とLGによって、1次極より高周波側の減衰量が大きくなり広帯域化が実現できる。
【0038】
このようなノイズフィルタは上記実施形態1と同様にして製造できる。また、このようなノイズフィルタでは、コイルのインダクタンスL1と第1容量C0をそれぞれ独立に機能させることができるため、第1容量を大きくすることにより、コイル長を伸ばすことなく、低い周波数帯域に1次の減衰極を生じさせることが可能となる。
【0039】
第1容量C0の形成方法に関しても、コイル部を構成するコイル形成用導体42Dと容量形成用導体43との間に第1容量C0を形成するため、容量形成用導体以外には導体を挿入する必要がなく、層数の増加を必要最小限に抑えることができる。さらに、容量形成用導体を側面入力端子に直接接続することで、ビアホール導体を形成するスペースを作る必要がなく、素子の小型化が実現できる。
【0040】
また、第2の容量形成用導体45A、45Bと接地用導体46との間で第2容量C1を構成することにより、1次の減衰極より高い周波数帯域において、減衰量を大きくすることができ、減衰帯域を広帯域化することが可能となる。
【0041】
このようにして作製したノイズフィルタのフィルタ特性を評価するために、Sパラメータ(絶対値)のシミュレーションを行い、図8に示した。
【0042】
図6のノイズフィルタについて、容量形成導体43を挿入した場合と挿入しなかった場合を比較して、図8に示す。曲線Cが本発明を用いた場合の減衰特性、曲線Dが本発明を用いない場合の減衰特性である。容量形成導体43を挿入した場合には、1次極が低周波側に移動していることが確認できる。
【0043】
(第3実施形態)
本発明における第3実施形態のノイズフィルタは図5に示す外観を有しており、その分解斜視図を図9に示す。
【0044】
積層型ノイズフィルタは、図9に示すように、入力端子電極51を表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第1のコイルを形成するためのコイル形成用導体52A〜52Dをそれぞれ表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第1の容量形成導体53とビア接続用導体54を表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第2の容量形成導体55A、55Bをそれぞれ表面に設けた誘電体セラミックシート10と、グランド端子電極56とビア接続用導体57を表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第2のコイルを形成するためのコイル形成用導体58A、及び58Bをそれぞれ表面に設けた誘電体セラミックシート10と、出力端子電極59を表面に設けた誘電体セラミックシート10から構成されている。
【0045】
なお、導体51と52A、52Aと52B、52Bと52C、52Cと52D、52Dと54、54と55A、55Aと57、57と55B、55Bと58A、58Aと58B、58Bと59はそれぞれの導体が設置されている絶縁体シートに設けられたビアホール導体を通じて、電気的に接続されている。
【0046】
また、図5に示したように、フィルタ本体80の対向する両端面に側面入力端子81、側面出力端子82が設けられると共に、手前側及び奥側の側面にそれぞれ側面グランド端子83A、83Bが設けられる。側面入力端子電極81は入力端子電極51と容量形成導体53に電気的に接続し、側面出力端子82は出力端子電極59に電気的に接続している。側面グランド端子83A、83Bはグランド端子電極56の両端部において、電気的に接続している。
【0047】
図10は第3実施形態の電気等価回路図であるが、図10に示されるL1は図9中の52A〜52Dによって形成される第1のコイルであり、C0は52Dと53との間に形成される第1容量C0である。また、L2は58A、58Bによって形成される第2のコイルであり、C1は55Aと56の間、及び56と55Bの間に形成される第2容量であり、LGは56に生じる微小なインダクタンス成分である。上記に述べたコイルL1と容量C0によって1次の減衰極が形成され、C1とLGによって1次の減衰極より高い周波数帯域において、減衰量を大きくすることができ、減衰帯域を広帯域化することができる。
【0048】
このようなノイズフィルタは上記実施形態1のようにして製造できる。このようなノイズフィルタでは、上記第1、第2実施形態と同様、コイル層数を増やすことなく、低い周波数帯域に1次の減衰極を生じさせることができるとともに、層数の増加を必要最小限に抑えることができ、素子の小型化が実現できる。
【0049】
また、第1のコイルと第2のコイルの間に接続した第2の容量形成用導体55A、55Bと接地用導体56との間で第2容量C1を構成することにより、1次の減衰極より高い周波数帯域において、減衰量を大きくすることができ、減衰帯域を広帯域化することが可能となる。
【0050】
このようなノイズフィルタのフィルタ特性を評価するために、Sパラメータ(絶対値)のシミュレーションを行った。
【0051】
図9のノイズフィルタについて、容量形成導体53を挿入した場合と挿入しなかった場合を比較して、図11に示す。曲線Eが本発明を用いた場合の減衰特性、Fが本発明を用いない場合の減衰特性である。容量形成導体53を挿入した場合には、1次極が低周波側に移動することが確認できる。
【0052】
(第4実施形態)
本発明における第4実施形態のノイズフィルタは図5に示す外観を有しており、その分解斜視図を図12に示す。
【0053】
積層型ノイズフィルタは、図12に示すように、入力端子電極61を表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第1のコイルを形成するためのコイル形成用導体62A〜62Dをそれぞれ表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第1の容量形成導体63とビア接続用導体64を表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第2の容量形成用導体65A、65B、69A、69Bをそれぞれ表面に設けた誘電体セラミックシート10と、グランド端子電極66とビア接続用導体67を表面に設けた誘電体セラミックシート10と、グランド端子電極70とビア接続用導体71を表面に設けた誘電体セラミックシート10と、第2のコイルを形成するためのコイル形成用導体68A、68Bをそれぞれ表面に設けた誘電体セラミックシート10と、出力端子電極72を表面に設けた誘電体セラミックシート10から構成されている。
【0054】
なお、導体61と62A、62Aと62B、62Bと62C、62Cと62D、62Dと64、64と65A、65Aと67、67と65B、65Bと68A、68Aと68B、68Bと69A、69Aと71、71と69B、69Bと72はそれぞれの導体が設置されている絶縁体シートに設けられたビアホールを通じて、電気的に接続されている。
【0055】
また、図5に示したように、フィルタ本体80の対向する両端面に側面入力端子81、側面出力端子82が設けられると共に、手前側及び奥側の側面にそれぞれ側面グランド端子83A、83Bが設けられる。側面入力端子81は入力端子電極61と第1容量形成導体63に電気的に接続し、側面出力端子82は出力端子電極72に電気的に接続している。側面グランド端子83A、83Bはグランド端子電極66の両端部、及びグランド端子電極70の両端部において、電気的に接続している。
【0056】
図13は電気等価回路図であるが、図13に示されるL1は図12中の62A〜62Dによって形成される第1のコイルであり、C0は62Dと63との間に形成される第1容量である。また、L2は68A、68Bによって形成される第2のコイルであり、C1は65Aと66の間、及び66と65Bの間に形成される第2の容量であり、C2は69Aと70の間、及び70と69Bの間に形成される第2の容量であり、LG1、LG2は66及び70に生じる微小なインダクタンス成分である。上記に述べた第1のコイルL1と第1容量C0によって1次の減衰極が形成され、C1とLG1、C2とLG2によって、1次の減衰極より高い周波数帯域において、減衰量を大きくすることができ、減衰帯域を広帯域化することが可能となる。
【0057】
このようなノイズフィルタでは、上記第1〜第3実施形態と同様、コイル層数を増やすことなく、低い周波数帯域に1次の減衰極を生じさせることができるとともに、層数の増加を必要最小限に抑えることができ、素子の小型化が実現できる。
【0058】
また、複数のコイルを全てが直列接続になるように接続し、各コイル間に第2の容量形成用導体をそれぞれ接続し、前記接地用導体との間で複数の第2容量を構成したことにより、1次の減衰極より高い周波数帯域において、減衰量を大きくすることができ、減衰帯域を広帯域化することが可能となる。
【0059】
このようにして作製した積層型ノイズフィルタのフィルタ特性を評価するために、Sパラメータ(絶対値)のシミュレーションを行った。
【0060】
図12のノイズフィルタの減衰特性を、容量形成導体63を挿入した場合と挿入しなかった場合を比較して、図14に示す。曲線Gが本発明を用いた場合の減衰特性、曲線Hが本発明を用いない場合の減衰特性である。容量形成導体63を挿入した場合には、1次極が低周波側に移動していることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る積層型ノイズフィルタの第1実施形態の外観斜視図
【図2】図1の分解斜視図
【図3】図2の積層型ノイズフィルタの電気等価回路図
【図4】図2の積層型ノイズフィルタの特性図
【図5】本発明に係る積層型ノイズフィルタの第2実施形態の外観斜視図
【図6】図5の分解斜視図
【図7】図6の積層型ノイズフィルタの電気等価回路図
【図8】図6の積層型ノイズフィルタの特性図
【図9】本発明に係る積層型ノイズフィルタの第3実施形態の分解斜視図
【図10】図9の電気等価回路図
【図11】図9の積層型ノイズフィルタの特性図
【図12】本発明に係る積層型ノイズフィルタの第4実施形態の分解斜視図
【図13】図12の電気等価回路図
【図14】図12の積層型ノイズフィルタの特性図
【図15】従来のT型LCフィルタの電気等価回路図
【符号の説明】
【0062】
10・・・誘電体セラミックシート(絶縁層)
31、41、51、61・・・入力端子電極
32A〜32D、42A〜42D、52A〜52D、62A〜62D、・・・第1のコイル形成用導体
33、43、53、63・・・第1の容量形成用導体
45A、45B、55A、55B、65A、65B、69A、69B、・・・第2の容量形成導体
46、56、66、70・・・接地用導体
58A、58B、68A、68B・・・第2のコイル形成用導体
80・・・フィルタ本体
81・・・側面入力端子
82・・・側面出力端子
83A、83B・・・側面グランド端子
C0・・・第1容量
C1・・・第2容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ本体の側面に、側面入力端子及び側面出力端子を有し、
前記フィルタ本体が、入力端子電極が形成された絶縁層、積層した状態で連続して周回するコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された複数の絶縁層、前記コイル形成用導体に接続されない第1の容量形成用導体が形成された絶縁層を有するとともに、
前記入力端子電極を前記コイル形成用導体に接続し、前記コイル形成用導体と、前記側面入力端子に接続された前記第1の容量形成用導体との間に第1容量を形成することを特徴とする積層型ノイズフィルタ。
【請求項2】
フィルタ本体の側面に、側面入力端子、側面出力端子及び側面グランド端子を有し、
前記フィルタ本体が、入力端子電極が形成された絶縁層、積層した状態で連続して周回するコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された複数の絶縁層、前記コイル形成用導体に接続されない第1の容量形成用導体が形成された絶縁層、第2の容量形成用導体が形成された絶縁層、前記側面グランド端子に接続される接地用導体が形成された絶縁層を有するとともに、
前記入力端子電極を前記コイル形成用導体に接続し、前記コイル形成用導体と、前記側面入力端子に接続された前記第1の容量形成用導体との間に第1容量を形成し、前記第2の容量形成用導体と前記接地用導体との間で第2容量を形成することを特徴とする積層型ノイズフィルタ。
【請求項3】
フィルタ本体の側面に、側面入力端子、側面出力端子及び側面グランド端子を有し、
前記フィルタ本体が、入力端子電極が形成された絶縁層、積層した状態で連続して周回する第1のコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された複数の絶縁層、前記コイル形成用導体に接続されない第1の容量形成用導体が形成された絶縁層、第2の容量形成用導体が形成された絶縁層、前記側面グランド端子に接続される接地用導体が形成された絶縁層、第2のコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された絶縁層を有するとともに、
前記入力端子電極に前記第1のコイルの一端を接続し、該第1のコイルの他端を前記第2のコイルに接続し、前記第1のコイル形成用導体と、前記側面入力端子に接続された第1の容量形成用導体との間に第1容量を形成し、前記第1のコイルと前記第2のコイルの間に接続した前記第2の容量形成用導体と前記接地用導体との間で第2容量を形成することを特徴とする積層型ノイズフィルタ。
【請求項4】
フィルタ本体の側面に、側面入力端子、側面出力端子及び側面グランド端子を有し、
前記フィルタ本体が、入力端子電極が形成された絶縁層、積層した状態で連続して周回する第1のコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された複数の絶縁層、前記コイル形成用導体に接続されない第1の容量形成用導体が形成された絶縁層、第2の容量形成用導体が形成された複数の絶縁層、前記側面グランド端子に接続される接地用導体が形成された複数の絶縁層、複数のコイルを構成するためのコイル形成用導体が形成された複数の絶縁層を有するとともに、
前記入力端子電極に前記第1のコイルの一端を接続し、該第1のコイルの他端に前記複数のコイルを直列接続となるように接続し、前記第1のコイル形成用導体と、前記側面入力端子に接続された前記第1の容量形成用導体との間に第1容量を形成し、各コイル間に接続した前記第2の容量形成用導体と前記接地用導体との間で複数の第2容量を形成することを特徴とする積層型ノイズフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2006−246123(P2006−246123A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60249(P2005−60249)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】