説明

積層型撮像素子

【課題】本発明は、輝度情報及びカラー情報を十分に取得することができ、高感度と良好な色再現性を両立できる積層型撮像素子を提供することを目的とする。
【解決手段】入力光を受光し、光学像の輝度成分を取得する第1の撮像素子10と、
該第1の撮像素子の背面側に配置され、該第1の撮像素子を透過した透過光を受光し、前記光学像の色成分を取得する第2の撮像素子70とを有し、
前記第2の撮像素子のサブピクセル71の面積は、前記第1の撮像素子のピクセル11の面積の2倍、3倍又は4倍であることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型撮像素子に関し、特に、光学像の輝度成分を取得する第1の撮像素子と、光学像の色成分を取得する第2の撮像素子とを有する積層型撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビデオカメラやデジタルスチルカメラに用いられ、小型軽量で信頼性に優れる電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)や、相補型金属−酸化物半導体(Complementary Metal-Oxide Semiconductor:CMOS)等の固体撮像素子が知られている。かかる固体撮像素子からカラー画像を取得する場合には、予め色成分に分離された光を、固体撮像素子に入射する必要がある。カラー撮像の色分離方式については種々の方法が知られているが、1枚の固体撮像素子を用い、その受光面に設けられた画素毎に、複数種類の色フィルタを離散的に設けた構造の単板カラー撮像方式が主流となっている。
【0003】
図1は、そのような、従来から利用されている単板カラー撮像方式の一例を示した図である。図1に示す単板カラー撮像方式は、光の3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)を透過するフィルタをストライプ状に配置し、RGBの各サブピクセル1個ずつで1画素を形成した構成のRGBストライプ方式となっている。
【0004】
しかしながら、かかるRGBストライプ方式では、1画素に入射する光量のうち、各サブピクセルで利用できる割合は、面積で全体の1/3である。また、各サブピクセルには、R、G、Bのいずれか1色しか入射しないため、各色に対応する波長以外の光はカットされ、波長でも全体の1/3となる。結局、各サブピクセルでは、1画素に入射する光量の1/3×1/3=1/9しか利用できないことになる。ここで、利用できる光量の減少は、特に低照度下での感度低下の原因となる。加えて、特に近年、撮像素子の画素ピッチの微細化が進んでおり、画素サイズが小さくなると、1画素に入る光の強度自体が減少することから、感度低下は大きな問題となっている。
【0005】
この問題を解決するため、撮像素子を2層構造とし、上部素子で色成分を取得し、下部素子で輝度成分を取得する方法を用いたカラー撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このカラー撮像装置では、上部素子にR、G、Bの色成分のみに感度を有するとともに、光吸収率が10〜50%程度である有機光電変換膜を離散的に配置し、下部素子には一般的な撮像素子として用いられているCMOSイメージセンサ等を配置している。そして、上部素子で色成分を取得し、下部素子で、上部素子の有機光電変換膜を透過した50〜90%の光成分を、輝度成分として取得する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−130239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、上部素子でR、G、B成分の一部が吸収されるため、下部素子では、R、G、B成分の一部が欠落した情報が輝度成分として取得されることになり、入射光像本来の輝度成分を再現することが難しいという問題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載の構成において、1画素に入射する光量のうち、各サブピクセルで利用できる割合を、上部素子の透過率が50%、上部素子の色分離配列がRGBストライプ方式の場合で考えると、上部素子と下部素子の画素数が一致した構造であることから、下部輝度素子では1/2の利用率である一方、上部色素子では1/6(光量で1/2、面積で1/1、波長で1/3)に留まる。このため、色素子での光利用率が必ずしも十分でなく、特に低照度時における色再現性等が十分でない等の問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、輝度情報及びカラー情報を十分に取得することができ、高感度と良好な色再現性を両立できる積層型撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る積層型撮像素子は、入射光を受光し、光学像の輝度成分を取得する第1の撮像素子と、
該第1の撮像素子の背面側に配置され、該第1の撮像素子を透過した透過光を受光し、前記光学像の色成分を取得する第2の撮像素子とを有し、
前記第2の撮像素子のサブピクセルの面積は、前記第1の撮像素子のピクセルの面積の2倍、3倍又は4倍であることを特徴とする
これにより、入射光の色成分に変化が生じない段階で輝度成分を取得することができるため、十分に輝度成分を取得することができるとともに、面積の大きなサブピクセルを有する第2の撮像素子を用いて色成分の1サブピクセル当たりの光量を高めることができ、高感度と良好な色再現性を両立させることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に係る積層型撮像素子において、
前記第2の撮像素子の前記サブピクセル間の境界線が、前記第1の撮像素子の前記ピクセル間の境界線に重なるように前記第2の撮像素子の前記サブピクセルが配置されたことを特徴とする。
【0012】
これにより、第1の撮像素子と第2の撮像素子のバランス調整を容易に行うことができ、撮像時の色成分の演算処理を容易に行うことができる。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る積層型撮像素子において、
前記第2の撮像素子の前記サブピクセルは、垂直方向のサイズが水平方向のサイズの2倍、3倍又は4倍であることを特徴とする。
【0014】
これにより、色成分取得用のサブピクセルを、縦長の形状とし、各色間の成分調整を行い易い画素形状とすることができる。
【0015】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る積層型撮像素子において、
前記第2の撮像素子の前記サブピクセルは、同一色用の前記サブピクセルが同一列に配置されたストライプ配列であることを特徴とする。
【0016】
これにより、各色成分間の調整を行い易いストライプ型のサブピクセル配列とすることができ、色成分の調整を容易に行うことができる。
【0017】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明に係る積層型撮像素子において、
前記第1の撮像素子の光透過率は、30〜60%であることを特徴とする。
【0018】
これにより、輝度用素子で利用する入射光の光量と、色用素子で利用する光量をバランス良く調整することができ、高感度と良好な色再現性を両立させて実現することができる。
【0019】
第6の発明は、第1〜5のいずれかの発明に係る積層型撮像素子において、
前記第1の撮像素子は、可視領域の総ての波長領域において感度を有することを特徴とする。
【0020】
これにより、可視領域の総ての波長領域について輝度情報を取得することができ、実物に対して再現性の高い画像を取得することができる。
【0021】
第7の発明は、第1〜6のいずれかの発明に係る積層型撮像素子において、
前記第1の撮像素子は、光電変換膜を含むことを特徴とする。
【0022】
第8の発明は、第1〜7のいずれかの発明に係る積層型撮像素子において、
前記第1の撮像素子よりも前記入力光の入射側寄りに撮影レンズを更に有し、
該撮影レンズの焦点は、前記第1の撮像素子に合わせたことを特徴とする。
【0023】
これにより、適切な焦点深度を設定することができ、第1の撮像素子と第2の撮像素子の間隔を適切に定めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光学像の輝度成分と色成分をバランスよく取得することができ、高感度と良好な色再現性を両立させて撮像を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来から利用されている単板カラー撮像方式の一例を示した図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る積層型撮像素子の一例の全体構成図である。図2(A)は、実施形態1に係る積層型撮像素子の一例の側面構成図である。図2(B)は、実施形態1に係る積層型撮像素子の輝度用素子のピクセルの平面構成図である。図2(C)は、実施形態1に係る積層型撮像素子の色用素子のサブピクセルの平面構成図である。
【図3】本実施形態に係る積層型撮像素子の入力像の焦点についての説明図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る積層型撮像素子の一例の平面構成図である。図4(A)は、実施形態2に係る積層型撮像素子の輝度用素子のピクセルの平面構成図である。図4(B)は、実施形態2に係る積層型撮像素子の色用素子のサブピクセルの平面構成図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る積層型撮像素子の一例の平面構成図である。図5(A)は、実施形態3に係る積層型撮像素子の輝度用素子のピクセルの平面構成図である。図5(B)は、実施形態3に係る積層型撮像素子の色用素子のサブピクセルの平面構成図である。
【図6】本発明の実施形態4に係る積層型撮像素子の一例の断面構成図である。
【図7】本発明の実施形態5に係る積層型撮像素子の一例の断面構成図である。
【図8】本発明の実施形態6に係る積層型撮像素子の一例の断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0027】
〔実施形態1〕
図2は、本発明の実施形態1に係る積層型撮像素子の一例の全体構成を示した図である。図2(A)は、実施形態1に係る積層型撮像素子の一例の側面構成を示した図である。
【0028】
図2(A)において、実施形態1に係る積層型撮像素子は、輝度用素子10と、色用素子70とを備える。輝度用素子10は、光の入射側に配置されており、入射光を受光する。色用素子70は、輝度用素子10の背面側に配置されており、輝度用素子10を透過した透過光を受光するように構成されている。
【0029】
実施形態1に係る積層形撮像素子は、輝度用素子10を入射光側に配置し、その背面に色用素子70を配置したことで、まず輝度成分を輝度用素子10で優先的に取得することができる。これにより、十分な輝度信号を取得することができる。また、輝度用素子10では、入射光の総ての波長領域からほぼ一様に輝度成分を取得するため、入射光の波長成分の比率は維持したまま、透過光を出力することができる。よって、輝度用素子10の透過光を受光する色用素子70は、利用できる光量は減少するものの、各色の波長領域における光量分布は一定であるので、入射光の波長分布に基づいて色成分を取得することができ、各色間におけるバランスを適切に保った状態で色成分を取得することができる。
【0030】
図2(B)は、実施形態1に係る積層型撮像素子の輝度用素子10のピクセル11の平面構成の一例を示した図であり、図2(C)は、実施形態1に係る積層型撮像素子の色用素子70のサブピクセル71の平面構成の一例を示した図である。
【0031】
図2(B)に示すように、輝度用素子10は、3N×3M画素(N、Mは自然数)のピクセル(画素)11で構成される。一方、図2(C)に示すように、色用素子70は、3N×M画素のサブピクセル(副画素)71で構成され、1つのサブピクセル71の面積は、輝度用素子のピクセル11の3倍の大きさとなっている。
【0032】
色用素子70の各サブピクセル71の前面には、同色のR、G又はBのカラーフィルタをストライプ状に形成している。よって、各色のサブピクセル71の数は、N×M画素となる。かかる構成とすると、色用素子70の各色の解像度は、輝度用素子10の解像度と比較して、(1/3)×(1/3)=1/9と低くなるが、人間の眼の視覚特性により、色は輝度の(1/4)×(1/4)=1/16程度であっても、実用上問題無いことが知られている。よって、色用素子70の解像度は、輝度用素子10とのバランスにおいて、実用上問題の無いレベルに設定されている。
【0033】
輝度用素子10は、入射光のうち、可視光成分領域(波長380nm付近〜780nm付近の波長範囲)において、一様に40〜70%の範囲の強度の光を吸収して輝度信号を出力するとともに、残りの可視光を一様に透過させる。輝度用素子10を透過した光は色用素子70に入射し、カラーフィルタでR、G、Bの各色成分に分光された後、それぞれのサブピクセル71の色信号として出力される。
【0034】
なお、輝度用素子10の透過率は、30〜60%であることが好ましいが、30〜55%であることがより好ましく、40〜50%程度であることが更に好ましく、50%程度であることが特に好ましい。基本的に、輝度用素子10と色用素子70の光の利用率は、両者で1:1となることが好ましいので、輝度用素子10の光透過率は50%程度であることが好ましいが、色用素子70で色成分が十分に取得できる場合には、輝度成分の利用率(=100−透過率)を50%よりも若干高くするようにしてもよい。輝度用素子10の透過率は、このような観点から、用途、色用素子70とのバランス等を考慮して、適宜好ましい透過率に設定することができる。
【0035】
本実施形態に係る積層型撮像素子と、従来のRGBストライプ方式での撮像素子とについて、図2(A)に示した3N×3M画素のうち、1画素に入射する光量を1として、光の利用率を比較する。従来のRGBストライプ方式で3N×3M画素のカラー撮像画像を得るためには、3N×3M×3サブピクセルが必要となる。その際、1画素に入射する光量のうち、各色のサブピクセルで利用できる光は、既に説明した通り、面積で1/3、各色の波長で1/3となり、全体では1/3×1/3=1/9となる。
【0036】
一方、本実施形態に係る積層型撮像素子では、3N×3M画素のカラー撮像画像を得るために必要なサブピクセル数は、3N×3M(輝度用素子)+3N×M(色用素子)=3N×4Mである。輝度用素子10では、総ての可視波長領域の光を40〜70%吸収するため、利用できる光は、60〜30%となる。ここで、例えば、輝度用素子10の光吸収率を50%とすると、色用素子70で利用できる光量は1/2となる。一方、色用素子70については、入射する光量自体が1/2、各色の波長で1/3となるが、面積が輝度用素子10の3倍であるため、結局、色用素子70でも1/2の光量を利用することができる。よって、従来のRGBストライプ方式と比較しても、特許文献1に記載した方式の輝度用素子で1/2、色用素子で1/6の光利用率と比較しても、感度や色再現性の向上が期待できる。
【0037】
図3は、本実施形態に係る積層型撮像素子の入力像の焦点について説明するための図である。図3において、撮影レンズ100と、撮影レンズ100による焦点Pと、撮影レンズ100の焦点深度Dが示されている。焦点深度Dは、撮像画像のピントが合って見える許容範囲を意味する。撮影レンズ100は、本実施形態に係る積層型撮像素子の前方、つまり入射光側に配置される。
【0038】
図3に示す入力像の焦点Pは、入射光側に配置された輝度用素子10に焦点を合わせることが好ましい。つまり、入力像の焦点Pが、色用素子70ではなく、輝度用素子10の位置に合うように撮影レンズ100を設定することが好ましい。具体的には、例えば、輝度用素子10が光電変換膜等の受光素子を備える場合には、かかる受光素子の厚さ方向の中心付近が、焦点深度Dの範囲内に位置するように設定すればよい。
【0039】
焦点Pを色用素子70ではなく輝度用素子10側に合わせるのは、色用素子70については、多少、受光面がレンズの結像面から光軸方向にずれている状態であり、デフォーカスしている方が偽色の発生を抑制することができるからである。色用素子70上でデフォーカスしている場合、他色の周辺画素領域の色成分も混入するため、画素近傍の平均の色成分を撮像するという目的に合致する。つまり、色用素子70に焦点Pが合っていると、カラーフィルタで各色の波長成分にほぼ完全に分光され、他の色はほぼ完全に遮蔽されてしまうが、デフォーカスして若干ボケていれば、周辺の他色のカラーフィルタからクロスするように入射する色成分を各色用ピクセル71で受光することができ、より広い領域を平均化させた色成分を有する状態で透過光を受光することができるからである。また、上述のように、色成分は、輝度成分の(1/4)×(1/4)=1/16程度の解像度でも視覚上の問題が無いため、デフォーカスの程度も輝度成分の画素11の4×4=16倍程度までの範囲で、任意に設定することができる。
【0040】
撮影レンズ100の焦点深度Dは、レンズの絞り値F、許容錯乱円(画素ピッチ)δと(1)式の関係にある。なお、レンズの絞り値Fは、レンズの大きさに対する絞りの大きさを示す調整値であり、許容錯乱円は、撮像画像のピントが合っているように見える領域の広さを示す値である。
【0041】
【数1】

(1)式に従えば、輝度用素子10の画素ピッチが5μm、撮影レンズ100のF値を1.7としたとき、焦点深度Dは17μmとなるが、許容錯乱円を画素ピッチの4倍にとれば、焦点深度Dは67μmとなる。よって、輝度用素子10の画素ピッチが5μmのときには、輝度用素子10の撮像面と色用素子70の撮像面の距離は67μm以下に設定すればよい。
【0042】
次に、本実施例に係る積層型撮像素子の信号処理について詳細に説明する。色用素子70のR、G、Bそれぞれの振動出力を内挿して、輝度用素子10の画素11の位置と対応させたものをRc(i,j)、Gc(i,j)、Bc(i,j)とする。ここで、(i,j)は画素位置を表す。画素(i,j)に対応する輝度用素子10の出力をL(i,j)、求めたい各画素位置のRGBの値をR(i,j)、G(i,j)、B(i,j)とする。輝度用素子10の波長に対する感度が理想的に一様な場合、(2)式が成立する。
【0043】
【数2】

また、Rc(i,j)、Gc(i,j)、Bc(i,j)とR(i,j)、G(i,j)、B(i,j)には、(3)〜(5)式の関係が成り立つ。
【0044】
【数3】

(2)〜(5)式を用い、R(i,j)、G(i,j)、B(i,j)は、(6)〜(8)式から求めることができる。
【0045】
【数4】

(6)〜(8)式は、輝度用素子10の感度が波長によらず一様である場合に成立するが、輝度用素子10が波長に対して感度特性を持つときには、(2)式は(9)式のようになる。
【0046】
【数5】

ここで、C、C、Cは、輝度用素子10の波長に対する感度によって決まる定数である。(9)式と(6)、(7)式を用い、(10)式の連立方程式を解くことによって、未知の変数R(i,j)、G(i,j)、B(i,j)を求めればよい。
【0047】
【数6】

なお、今までの説明において、輝度用素子10の縦に隣接した3画素分のピクセル11と、色用素子70の各サブピクセル71は、上下で1対1に対応し、輝度用素子10の3画素分をまとめたピクセル11の外側の境界線と、色用素子のサブピクセル71間の境界線が一致し、輝度用素子10及び色用素子70の面に垂直な方向に重なるように配置された例を挙げて説明した。しかしながら、色用素子70の各サブピクセル71が、輝度用素子10のピクセル11の3倍の面積を有していれば、必ずしも重なるように対応した配置でなくてもよい。
【0048】
但し、輝度用素子10のピクセル11と色用素子70のピクセル71とが、境界線が一致して重なっていない配置の場合には、(1)〜(9)式を用いて説明した演算はより複雑なものとなる。よって、図2(B)、(C)に示したように、輝度用素子10のピクセル11の3画素分と色用素子70のサブピクセル71の1画素分が1対1に対応し、上下に重なるような配置とすることが、演算処理上好ましい。
【0049】
〔実施形態2〕
図4は、本発明の実施形態2に係る積層型撮像素子の一例の平面構成を示した図である。図4(A)は、実施形態2に係る積層型撮像素子の輝度用素子12のピクセル13の平面構成を示した図であり、図4(B)は、実施形態2に係る積層型撮像素子の色用素子72のサブピクセル73の平面構成を示した図である。
【0050】
実施形態2に係る積層型撮像素子の側面構成は、図2(A)で示した構成と同様であり、入射光側に輝度用素子12が配置され、輝度用素子12の背面に色用素子72が配置された構成となっているので、図示を省略している。また、かかる輝度用素子12を入射光側、色用素子72を輝度用素子12の背面に配置した構成の利点は、実施形態1における説明と同様であるので、その説明を省略する。
【0051】
図4(A)において、輝度用素子12の平面構成が示されており、ピクセル13が3N×2M画素配列されている。各ピクセル13は、入射光を受光し、輝度成分を取得することができれば、図2(A)に示したピクセル11と同様の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。実施形態2に係る積層型撮像素子の輝度用素子12は、配列されたピクセル数が、3N×2M(N、Mは自然数)で表示されている点だけが実施形態1と異なっており、ピクセル13の配列についても、本質的な相違点は無い。特に、Mが3の倍数である場合には、実施形態1と画素数の表示の仕方が異なっているだけであり、全く同一の画素配列であってもよい。
【0052】
一方、図4(B)において、色用素子72は、R、G、Bがストライプ状に配置された点は実施形態1の色用素子70と同様であるが、各サブピクセル73の面積が、輝度用素子12のピクセル13の2倍の大きさである点で、3倍の大きさである実施形態1の色用素子70と異なっている。これにより、色用素子72のサブピクセル73の数は、3N×Mとなり、輝度用素子10のピクセル13の1/2となっている。
【0053】
このように、色用素子72のサブピクセル73の面積は、輝度用素子12のピクセル13の2倍に設定されていてもよい。なお、実施形態2に係る色用素子72のサブピクセル73は、輝度用素子12の縦方向に隣接する2画素分のピクセル13を合わせた大きさとなっている。色用素子72のサブピクセル73を、輝度用素子12の縦方向に隣接する2つのピクセル13に対応させた縦長の長方形のピクセルとし、同じ色用のサブピクセル73を同一列に配置することにより、実施形態1に係る積層型撮像素子の色用素子70と同様に、全体としてはRGBストライプ方式と同じ配置とすることができる。
【0054】
なお、輝度用素子12は、実施形態1に係る積層型撮像素子の輝度用素子10と同様に、透過率な30〜60%の範囲で用途に応じて任意に設定することができるが、例えば、透過率を50%に設定した場合について考える。
【0055】
輝度用素子12の光透過率を50%とした場合、入射光の1/2の光量が輝度用素子12を透過し、輝度用素子12で利用できる光量は入射光の光量の1/2となる。色用素子72においては、輝度用素子12を透過した入射光の1/2の光量を受光する。また、各色の波長で利用できる光量は受光した光の1/3となるが、各サブピクセル73の面積は、輝度用素子12の2倍であるため、色用素子72の各色のサブピクセル73で利用できる光量は、輝度用素子12の入射光の光量の(1/2)×(1/3)×2=1/3となる。このように、実施形態2に係る積層型撮像素子においては、輝度用素子12で利用できる光量と色用素子72の各色のサブピクセル73で利用できる光量を適切にバランスさせ、高感度と色再現性を両立させることができる。
【0056】
ここで、従来の方式では、3N×2M画素のカラー撮像画像を得るためには、3N×2M×3のサブピクセルが必要となる。一方、本実施形態に係る積層型撮像素子の場合、3N×2M画素のカラー撮像画像を得るために必要なサブピクセル数は、3N×2M(輝度用素子)+3N×M(色用素子)=3N×3Mとなる。
【0057】
なお、図4において、輝度用素子12のピクセル13が縦に隣接した2個分と、色用素子72のサブピクセル73の1個が1対1に対応して重なり、外側の境界線が一致した配置となっている例を挙げて説明したが、これらの1対1の対応は必須ではなく、色用素子72のサブピクセル73が輝度用素子12のピクセル13の2倍の面積を有していれば、色用素子72の光の利用度を高めることができる。
【0058】
〔実施形態3〕
図5は、本発明の実施形態3に係る積層型撮像素子の一例の平面構成を示した図である。図5(A)は、実施形態3に係る積層型撮像素子の輝度用素子14のピクセル15の平面構成の一例を示した図であり、図5(B)は、実施形態3に係る積層型撮像素子の色用素子のサブピクセル75の平面構成の一例を示した図である。
【0059】
実施形態3に係る積層型撮像素子においても、側面構成は、図2(A)に示した構成と同様である。つまり、光の入射面側に輝度用素子14が配置されて入射光を受光し、輝度用素子14の背面に色用素子74が配置され、輝度用素子14の透過光を受光する。これにより、輝度用素子14で最初に一様に輝度成分を取得し、その後、色用素子74で各色の波長成分のバランスが崩れていない透過光から色成分を取得できる点は、実施形態1における説明と同様であるので、本実施形態においてはその説明を省略する。
【0060】
図5(A)に示すように、実施形態3に係る積層型撮像素子の輝度用素子14は、3N×4M(N、Mは自然数)個のピクセル15を備えている。個々のピクセル15は、入射光の輝度成分を取得できれば、実施形態1又は実施形態2に係る構成と同様であってもよいし、異なっていてもよい。また、輝度用素子15は、入射光の40〜70%の光量を吸収し、光透過率は30〜60%となる点も、実施形態1及び実施形態2に係る積層型撮像素子と同様である。
【0061】
図5(B)に示すように、実施形態3に係る積層型撮像素子の色用素子74は、3N×M個のサブピクセル75を備えており、各サブピクセル75は、輝度用素子14のピクセル15の面積の4倍の面積を有している。また、色用素子74のサブピクセル75は、縦方向に隣接する輝度用素子14のピクセル15の4個分をまとめたものに相当し、縦:横=4:1の縦長の長方形となっている。そして、各列は、同じ色用のサブピクセル75が配置され、全体としては、RGBストライプ方式と同様の配置方式となっている。
【0062】
このように、色用素子74のサブピクセル75を、輝度用素子14のピクセル15を縦方向に4個まとめて、4倍の面積として構成してもよい。色用素子74の1つのサブピクセル75で利用する光量を、輝度用素子14と同じ面積のピクセルを用いた場合の4倍とすることができ、光の利用率を高めることができる。
【0063】
例えば、輝度用素子14の光透過率を50%とすると、光吸収率も50%であるので、輝度用素子14で利用できる入射光の光量は1/2となる。よって、色用素子74は、輝度用素子14を透過した透過光を受光するので、入射する光量は輝度用素子14に入射する入射光の光量の1/2となる。また、各色のフィルタでは、他の2色の波長を遮蔽するので、各色のサブピクセル75は、受光した光量の1/3を利用するが、サブピクセル75の面積が4倍となっているので、結局、各サブピクセル75は、輝度用素子に入射する入射光の(1/2)×(1/3)×4=2/3を利用することができる。
【0064】
なお、図5(A)に示すように、本実施形態に係る積層型撮像素子の画素数を3N×4Mとしたときに、従来の方式で3N×4M画素のカラー撮像画像を得るためには、3N×4M×3個のサブピクセルが必要となる。本実施形態に係る積層型撮像素子では、3N×4M画素のカラー撮像画像を得るために必要なサブピクセル数は、3N×4M(輝度用素子14)+3N×M(色用素子74)=3N×5Mとなる。
【0065】
また、図5(A)においては、輝度用素子14の縦に隣接するピクセル15の4個分と、色用素子74のサブピクセル75が重なって1対1に対応し、サブピクセル75間の境界線がピクセル15間の対応箇所の境界線に一致している例を挙げて説明したが、このような構成が必須でない点は、実施形態1及び実施形態2と同様である。
【0066】
また、実施形態1乃至3においては、色用素子70、72、74のサブピクセル71、73、75の各色の配列を、同一色が同一列に配置されるRGBストライプ方式となる配置を例に挙げて説明したが、他の配列方法で配置してもよい。例えば、2行2列の4個のサブピクセル71、73、75を1画素とし、2個のGを一方の対角線上、他方の対角線上にRとBを1個ずつ配置したベイヤー配列としてもよい。その他、インターライン配列、斜めストライプ配列、GストライプRB市松配列等の原色配列や、フィールド色差順次配列、フレーム色差順次配列、フレーム色差順次配列、フレームインターリーブ配列、フィールドインターリーブ配列の補色配列方式等、単板用のカラーフィルタ配列で用いられる各種の配列方式を適用することができる。
【0067】
〔実施形態4〕
図6は、本発明の実施形態4に係る積層型撮像素子の一例の断面構成を示した図である。実施形態1乃至3においては、輝度用素子10、12、14及び色用素子70、72、74の平面的な画素構成を中心に説明したが、実施形態4以降においては、輝度用素子10、12、14及び色用素子70、72、74の、信号処理を行うための構成も含めた全体構成について説明する。よって、実施形態4以降に説明する積層型撮像素子には、実施形態1乃至3に係る輝度用素子10、12、14及び色用素子70、72、74の画素構成を総て適用することができる。
【0068】
図6において、実施形態4に係る積層型撮像素子は、輝度用素子16と、色用素子76とを有し、色用素子76上に輝度用素子16が配置される。輝度用素子16は、光の入射側から、透明電極20と、光電変換膜30と、画素電極40と、信号読み出し回路50と、透明基板60とを有する。
【0069】
透明電極20は、光電変換膜30に電圧を印加するための電極であり、可視光が透過する透明性の高い材料から構成される。一例としては、インジウム錫酸化膜(ITO、Indium Tin Oxide)等の無機透明電極、又はPolyethylene dioxythiophene polystyrene sulphonate(PED/PSS)等の有機導電膜が用いられてよい。透明電極20に印加する電圧は、光電変換膜30にかかる電界として、10〜10V/cmの範囲がよく、一般的には10〜10V/cmの範囲で用いることが好ましい。
【0070】
光電変換膜30の材料は、可視光の光(380〜780nm)を、50%程度の吸収率で吸収し、吸収した光量に応じた電荷を発生する一方、吸収しなかった光は透過する材料であり、一例を挙げると、有機系の材料を用いた膜が好ましい。具体的には、ポリフィリン、ペリレン、フタロシアニン、アクリジン、クマリン、キナクリドン、シアニン、スクエアリリウム、オキサジン、キサンテントリフェニルアミン、ベンジジン、ピラゾリン、スチリルアミン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、カルバゾール、ポリシラン、チオフェン、ポリアミン、オキサジアゾール、トリアゾール、トリアジン、キノキサリン、フェナンスロリン、フラーレン、アルミニウムキノリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾール、ポリチオール、ポリピロール、ポリチオフェン及びこれらの誘導体等を単独で、若しくは、これらに代表される有機材料を2種類以上混合又は積層することで、光電変換膜30を形成することが可能である。
【0071】
一方、アモルファスセレン、アモルファスシリコン、化合物半導体等に代表される無機光電変換膜を用いることもできる。
【0072】
これら光電変換膜30の膜厚は、10nm〜5μmが好ましく、50nm〜1μmが更に好ましいが、上述の通り、光電変換膜30の透過率を30〜60%、例えば、50%程度に制御する必要がある。
【0073】
光電変換膜30の下面には、画素電極40が設けられる。画素電極40も、可視光が透過する透明性の高い材料で構成される。一例としては、インジウム錫酸化膜(ITO)等の無機透明電極、又はPolyethylene dioxythiophene polystyrene sulphonate(PED/PSS)等の有機導電膜が好ましい。
【0074】
信号読み出し回路50は、各画素に蓄積された信号を読み出す手段である。信号読み出し回路50の一例としては、薄膜トランジスタ(TFT、Thin Film Transistor)を用いた回路が挙げられる。薄膜トランジスタは、ガラス基板上に形成される一般的なものであってよい。電極及び配線には金属材料、半導体層にはアモルファスシリコンや多結晶シリコン等が用いられるが、薄膜トランジスタの開口率(透過率)を高めたい場合には、電極及び配線材料としてITO等の透明電極材料、半導体層としてZnOやInGaZnO等、結晶系又は非晶質系の透明半導体材料を用いてよい。
【0075】
なお、実施形態1乃至3において説明した輝度用素子16のピクセル11、13、15の単位は、信号読み出し回路50の単位で定められる。つまり、1画素に対して、信号読み出し用の薄膜トランジスタ等の素子が1個設けられることになる。
【0076】
透明基板60は、一般的にはガラス基板が用いられるが、透明基板60上の信号読み出し回路50、光電変換膜30、透明電極20等が150℃乃至200℃以下の温度条件で作製できる場合には、種々のプラスチック基板を用いることも可能である。
【0077】
色用素子76は、カラーフィルタ80と、色用素子用撮像素子90とを有して構成される。色用素子用撮像素子90には、通常の撮像素子として一般的に用いられている電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)や、相補型金属−酸化物半導体(Complementary Metal-Oxide Semiconductor:CMOS)等を用いた固体撮像素子が好適である。また、アモルファスシリコン、アモルファスセレン、化合物半導体材料等の無機材料、可視領域全域に亘って感度を有する有機材料等を光電変換膜として用い、これらの膜を積層し、信号読み出し部としてCCD、CMOS、TFT回路等を用いるようにしてもよい。
【0078】
また、色用素子76における実施形態1乃至3で説明したピクセル71、73、75の単位は、輝度用素子16と同様に、固体撮像素子のCCD、CMOS等の素子の単位、光電変換膜の信号読み出し部のCCD、CMOS、TFT回路等の素子の単位により定められる。つまり、1ピクセル71、73、75に対し、1個の素子が設けられる。
【0079】
かかる構成により、輝度用素子16の光電変換膜30で受光した光信号を信号読み出し回路50で読み出し、色用素子76で受光した透過光を色用素子用撮像素子90に設けられた信号読み出し部で読み出すことにより、高感度で色再現性の高い撮像を行うことができる。
【0080】
なお、図6においては、透明基板60とカラーフィルタ80の間に隙間を設けた配置としているが、用途と焦点調整に応じて、透明基板60とカラーフィルタ80を密着させた配置としてもよい。
【0081】
〔実施形態5〕
図7は、本発明の実施形態5に係る積層型撮像素子の一例の断面構成を示した図である。実施形態5に係る積層型撮像素子は、色用素子77の上に輝度用素子17が配置されている点は、実施形態4に係る積層型撮像素子と同様であるが、色用素子77のカラーフィルタ80の上に層間絶縁膜61が付設されており、層間絶縁膜61上に輝度用素子17が設けられている点で、実施形態4に係る積層型撮像素子と異なっている。そして、層間絶縁膜61上に、信号読み出し回路50、画素電極40、光電変換膜30及び透明電極20が順次形成され、輝度用素子17を構成している。
【0082】
輝度用素子17の透明電極20、光電変換膜30、画素電極40及び信号読み出し回路50は、実施形態4に係る積層型撮像素子の輝度用素子16と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0083】
色用素子77のカラーフィルタ80及び色用素子用撮像素子90も、実施形態4に係る積層型撮像素子の色用素子76と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0084】
層間絶縁膜61は、高い透過性が要求され、酸化珪素、窒化珪素、各種樹脂等を用いることができる。
【0085】
このように、実施形態4のように、透明基板60の上に輝度用素子16を独立して形成した後、色用素子76の上に配置するのではなく、実施形態5のように、色用素子77を最初に形成し、その上に層間絶縁膜61を形成し、層間絶縁膜61上に輝度用素子17を一体的に積層形成するようにしてもよい。一体化して構成することにより、積層型撮像素子の全体の体積を小型化することができる。
【0086】
なお、実施形態5に係る積層型撮像素子は、輝度用素子17の信号読み取りは、信号読み取り回路50で行い、色用素子77の信号読み出しは、色用素子用撮像素子90の信号読み出し部で行い、両者が独立して信号読み出しを行う点は、実施形態4に係る積層型撮像素子と同様である。
【0087】
〔実施形態6〕
図8は、本発明の実施形態6に係る積層型撮像素子の一例の断面構成を示した図である。
実施形態6に係る積層型撮像素子は、輝度用素子18と色用素子28の信号読み出し回路(図示せず)が同一箇所に配置されている点で、実施形態4及び実施形態5に係る積層型撮像素子と異なっている。
【0088】
実施形態6に係る積層型撮像素子は、色用素子28と、色用素子28の上に積層された輝度用素子18とを有する。輝度用素子18は、透明電極20と、光電変換膜30と、画素電極41とを備える。色用素子28は、カラーフィルタ81と、色用素子用撮像素子91とを有し、カラーフィルタ81には、ビアプラグ82が形成されて設けられている。
【0089】
色用素子28の色用素子用撮像素子91は、色用素子28の信号読み取り手段のみならず、輝度用素子18の信号読み出し回路も備えており、輝度用素子18の画素電極41とビアプラグ82を介して接続されている。色用素子用撮像素子91は、色用素子28の受光部、信号読み出し部に加えて、輝度用素子18の信号読み出し回路も備える必要があることから、CCDやCMOSイメージセンサを用いることが好ましい。輝度用素子18を構成する透明電極20、光電変換膜30、画素電極41及び輝度用素子18と色用素子28とを隔てる層間絶縁膜材料は、実施形態4で述べた材料と同様の材料を使用することができる。
【0090】
このように、実施形態6に係る積層型撮像装置によれば、輝度用素子18と色用素子28の信号読み出し回路を共通回路とし、1箇所に設けることにより、積層型撮像素子を薄型化して構成することができる。
【0091】
〔実施例〕
次に、本実施形態に係る積層型撮像装置について、シミュレーション実験を行った結果の実施例について説明する。
【0092】
条件としては、実施形態4で説明した実施形態と同様に、透明基板60上に輝度用素子16を形成し、輝度用素子16と色用素子76の信号読み出し回路は独立に設けた。輝度用素子16と、色用素子76の撮像面との距離は約0.4mmとし、透明基板60の厚さと同等とした。なお、本実施例においては、理解の容易のため、実施形態4に対応する構成要素については、実施形態4で用いた参照符号と同一の符号を付して説明する。
【0093】
輝度用素子16は、ピクセル数を、水平128×垂直96とし、ピクセルサイズを、100×100μmとした。また、透明電極20には、膜厚30nmのITOを用いた。光電変換膜30は、キナクリドン誘電体にフラーレンを25%添加した膜厚75nmの薄膜を真空蒸着法にて成膜して形成した。波長が530nmの緑色の波長領域では、透過率が56%であった。画素電極40には、膜厚50nmのITO透明電極を用いた。信号読み出し回路50には、アモルファスシリコンTFTを用いた。透明基板60は、厚さ0.4mmの無アルカリガラスを用いた。
【0094】
色用素子76は、サブピクセル数を、水平128×垂直32とし、サブピクセルサイズを、100×300μmとした。これは、実施形態1において説明した、色用素子76の画素の面積を、輝度用素子16の3倍の面積とした場合に相当する。よって、画素数は、垂直方向において96の1/3の32となり、面積は、垂直方向において100μmの3倍の300μmとなっている。カラーフィルタ80の配列も、実施形態1と同様に、ストライプ配列とした。また、色用素子用撮像素子90としては、CMOSイメージセンサを用いた。
【0095】
また、比較例として、従来から一般的に用いられている、本実施例の輝度用素子16と同画素数、同画素サイズのイメージセンサを用いた。よって、画素数は、水平128×垂直96であり、画素サイズは、100×100μmである。また、カラーフィルタの配列は、ストライプ配列とし、同一条件とした。
【0096】
本実施例に係る積層型撮像素子及び比較例に係る撮像素子について、10ルクス(lx)の白色光(色温度3300K)を撮像面に照射したときの出力信号電流の総和を求めたところ、本実施例に係る積層型撮像素子は35nA/lx、比較例に係る撮像素子は23nA/lxとなった。かかる結果から、本実施例に係る積層型撮像素子は、同一の入射光から高い信号電流を出力することができ、入射光の利用率が比較例よりも向上したことを示す結果が得られた。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、デジタルカメラ、ビデオ等の静止画や動画を撮像する撮像装置全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
10、12、14、16、17、18 輝度用素子
11、13、15 ピクセル(画素)
20 透明電極
30 光電変換膜
40、41 画素電極
50 信号読み出し回路
60 透明基板
70、72、72、76、77、78 色用素子
71、73、75 サブピクセル(副画素)
80 カラーフィルタ
90 色用素子用撮像素子
100 撮影レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を受光し、光学像の輝度成分を取得する第1の撮像素子と、
該第1の撮像素子の背面側に配置され、該第1の撮像素子を透過した透過光を受光し、前記光学像の色成分を取得する第2の撮像素子とを有し、
前記第2の撮像素子のサブピクセルの面積は、前記第1の撮像素子のピクセルの面積の2倍、3倍又は4倍であることを特徴とする積層型撮像素子。
【請求項2】
前記第2の撮像素子の前記サブピクセル間の境界線が、前記第1の撮像素子の前記ピクセル間の境界線に重なるように前記第2の撮像素子の前記サブピクセルが配置されたことを特徴とする請求項1に記載の積層型撮像素子。
【請求項3】
前記第2の撮像素子の前記サブピクセルは、垂直方向のサイズが水平方向のサイズの2倍、3倍又は4倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型撮像素子。
【請求項4】
前記第2の撮像素子の前記サブピクセルは、同一色用の前記サブピクセルが同一列に配置されたストライプ配列であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層型撮像素子。
【請求項5】
前記第1の撮像素子の光透過率は、30〜60%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の積層型撮像素子。
【請求項6】
前記第1の撮像素子は、可視領域の総ての波長領域において感度を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型撮像素子。
【請求項7】
前記第1の撮像素子は、光電変換膜を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層型撮像素子。
【請求項8】
前記第1の撮像素子よりも前記入力光の入射側寄りに撮影レンズを更に有し、
該撮影レンズの焦点は、前記第1の撮像素子に合わせたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層型撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−84649(P2012−84649A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228542(P2010−228542)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】