説明

穴かがりミシン

【課題】多様な穴かがり縫い目を形成することができる穴かがりミシンを実現する。
【解決手段】穴かがりミシン10は、被縫製物に形成する穴かがり縫い目に関する穴かがり縫い目データと、その穴かがり縫い目に付加する変形縫い目に関する周縁部縫い目データとをRAM103やEEPROM104に記憶するとともに、その穴かがり縫い目データと周縁部縫い目データを対応つけ合成するようにして作成した縫い目データに基づき、メス機構70が形成したボタン穴の周囲に、周縁部の形状が装飾された変形穴かがり縫い目を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴かがりミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被縫製物に対してボタン穴を形成するとともに、その周囲に穴かがり縫い目を形成する穴かがりミシンが知られている。
穴かがり縫い目は、ボタン穴の左右両側に形成される平行部、ボタン穴の上部に形成される第一閂止め部、ボタン穴の下部に形成される第二閂止め部から構成されている。そして、第一閂止め部及び第二閂止め部の閂止め形状としては、例えば、角型、放射型、半月型等の種々の形状が存在し、これら閂止め形状が組み合わされてなる様々な形状の穴かがり縫い目を形成することができる穴かがりミシンが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−326015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の場合、穴かがり縫い目における各閂止め部の閂止め形状を変化させることはできるが、平行部に関しては、かがり幅のパラメータを調整することにより、その平行部の太さを変化させることはできるものの、平行部の形状としては直線状の縫い目を形成することに限られていた。
【0004】
本発明の目的は、多様な穴かがり縫い目を形成することができる穴かがりミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、縫い針の上下駆動を行う針駆動手段と、被縫製物を保持する布押さえ手段と、縫い針と布押さえ手段とを相対的に移動させる移動手段と、布押さえ手段に保持された被縫製物に対してメスによりボタン穴を形成する布切り手段と、被縫製物におけるボタン穴の長手方向両端側に形成される一対の閂止め部に関する閂止め縫いデータと、一対の閂止め部間を亘るようにボタン穴の両側に形成される一対の平行部に関する平行縫いデータとからなる穴かがり縫い目に関する穴かがり縫い目データを複数記憶する縫い目データ記憶手段と、縫い目データ記憶手段に記憶されている穴かがり縫い目データに基づき、ボタン穴の周囲に穴かがり縫い目を形成する縫製制御手段と、を備える穴かがりミシンにおいて、縫い目データ記憶手段は、穴かがり縫い目データに付加されることで、穴かがり縫い目の周縁部の形状を変化させる複数の周縁部縫い目データを記憶し、縫製制御手段は、周縁部縫い目データが付加された穴かがり縫い目データに基づき、穴かがり縫い目部分に変形縫い目部分が付加された変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、穴かがりミシンは、被縫製物に形成する縫い目形状に関する複数の縫い目データを記憶する縫い目データ記憶手段に、閂止め部に関する閂止め縫いデータと平行部に関する平行縫いデータとからなる穴かがり縫い目データと、その穴かがり縫い目データに付加されることで穴かがり縫い目の周縁部の形状を変化させる周縁部縫い目データとを記憶している。そして、穴かがりミシンは、布切り手段が形成するボタン穴の周囲に、変形縫い目に関する周縁部縫い目データが付加された穴かがり縫い目データに基づき、穴かがり縫い目の周縁部の形状が変化された変形穴かがり縫い目を形成することができる。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の穴かがりミシンにおいて、周縁部縫い目データは平行縫いデータに付加され、縫製制御手段は、平行部の外縁の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、穴かがりミシンは、平行部の外縁の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することができる。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の穴かがりミシンにおいて、平行部の外縁と閂止め部の側端とが一直線状に連なる場合、周縁部縫い目データは平行縫いデータ及び/又は閂止め縫いデータに付加され、縫製制御手段は、平行部の外縁及び/又は閂止め部の側端の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、穴かがりミシンは、平行部の外縁及び/又は閂止め部の側端の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することができる。つまり、穴かがりミシンは、平行部の外縁や、閂止め部の側端や、平行部の外縁と閂止め部の側端の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の穴かがりミシンにおいて、縫製制御手段は、一つの穴かがり縫い目データに対し複数の周縁部縫い目データが付加された、複数の変形縫い目部分を有する変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、穴かがりミシンは、一つの穴かがり縫い目データに対し複数の周縁部縫い目データが付加された、複数の変形縫い目部分を有する変形穴かがり縫い目を形成することができる。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の穴かがりミシンにおいて、穴かがり縫い目データに付加する周縁部縫い目データの数を設定する付加縫い目データ数設定手段を備えるとともに、縫製制御手段は、付加縫い目データ数設定手段により設定された周縁部縫い目データの数に応じて、穴かがり縫い目部分に付加される複数の変形縫い目部分が同じサイズになるように変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、穴かがりミシンは、設定された周縁部縫い目データの数に応じて、穴かがり縫い目部分に付加される複数の変形縫い目部分が同じサイズになるように変形穴かがり縫い目を形成することができる。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の穴かがりミシンにおいて、穴かがり縫い目データに付加する周縁部縫い目データに基づく変形縫い目の縦横比率を設定する変形縫い目縦横比率設定手段を備えるとともに、縫製制御手段は、変形縫い目縦横比率設定手段により設定された変形縫い目の縦横比率に応じて、穴かがり縫い目部分に付加される変形縫い目部分の形状を調整して変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、穴かがりミシンは、設定された変形縫い目の縦横比率に応じて、穴かがり縫い目部分に付加される変形縫い目部分の形状を調整して変形穴かがり縫い目を形成することができる。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の穴かがりミシンにおいて、穴かがり縫い目部分に付加する変形縫い目に関する周縁部縫い目データを、ボタン穴に対するいずれか一方側に対して設定する付加縫い目片側設定手段と、付加縫い目片側設定手段により設定された一方側の周縁部縫い目データを左右対称に反転させるようにしてボタン穴に対する他方側の周縁部縫い目データを設定する付加縫い目対称設定手段と、を備えるとともに、縫製制御手段は、付加縫い目片側設定手段により設定された一方側の周縁部縫い目データと、付加縫い目対称設定手段により設定された他方側の周縁部縫い目データとに基づく変形縫い目部分が付加された変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、穴かがりミシンは、ボタン穴に対するいずれか一方側に対して設定された一方側の周縁部縫い目データと、その一方側の周縁部縫い目データが左右対称に反転させるようにして設定されたボタン穴に対する他方側の周縁部縫い目データとに基づく変形縫い目部分が付加された変形穴かがり縫い目を形成することができる。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の穴かがりミシンにおいて、周縁部縫い目データに基づく変形縫い目の形状に、その変形縫い目形状を特徴付ける形状変化点がある場合、縫製制御手段は、形状変化点に縫い針を針落ちさせるように変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明によれば、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発明と同様の作用を奏するとともに、穴かがりミシンは、周縁部縫い目データに基づく変形縫い目の形状に、その変形縫い目形状を特徴付ける形状変化点がある場合、その形状変化点に縫い針を針落ちさせるように変形穴かがり縫い目を形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、穴かがりミシンは、被縫製物に形成する縫い目形状に関する複数の縫い目データを記憶する縫い目データ記憶手段に、閂止め部に関する閂止め縫いデータと平行部に関する平行縫いデータとからなる穴かがり縫い目データと、その穴かがり縫い目データに付加されることで穴かがり縫い目の周縁部の形状を変化させる周縁部縫い目データとを記憶している。そして、穴かがりミシンは、布切り手段が形成するボタン穴の周囲に、変形縫い目に関する周縁部縫い目データが付加された穴かがり縫い目データに基づき、穴かがり縫い目の周縁部の形状が変化された変形穴かがり縫い目を形成することができる。
つまり、穴かがりミシンは、穴かがり縫い目の周縁部の形状を様々に変化させた変形穴かがり縫い目を形成することによって、穴かがり縫い目の周囲に装飾性を付与することができ、多様な穴かがり縫い目を形成することができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、穴かがりミシンは、平行部の外縁の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することができる。
よって、穴かがりミシンは、穴かがり縫い目における平行部の外縁の形状が様々に異なる多様な穴かがり縫い目を形成することができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、穴かがりミシンは、平行部の外縁及び/又は閂止め部の側端の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することができる。つまり、穴かがりミシンは、平行部の外縁や、閂止め部の側端や、平行部の外縁と閂止め部の側端の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することができる。
よって、穴かがりミシンは、穴かがり縫い目における平行部の外縁や、閂止め部の側端や、平行部の外縁と閂止め部の側端の形状が様々に異なる多様な穴かがり縫い目を形成することができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、穴かがりミシンは、一つの穴かがり縫い目データに対し複数の周縁部縫い目データが付加された、複数の変形縫い目部分を有する変形穴かがり縫い目を形成することができる。
よって、穴かがりミシンは、穴かがり縫い目の周縁部に様々な形状の変形縫い目が複数付加されてなる多様な穴かがり縫い目を形成することができる。
【0025】
請求項5記載の発明によれば、穴かがりミシンは、設定された周縁部縫い目データの数に応じて、穴かがり縫い目部分に付加される複数の変形縫い目部分が同じサイズになるように変形穴かがり縫い目を形成することができる。
つまり、穴かがりミシンは、穴かがり縫い目データに付加する周縁部縫い目データの数を設定することにより、穴かがり縫い目部分に付加される周縁部縫い目データに基づく複数の変形縫い目部分が、自動的に均等なサイズとなるように穴かがり縫い目部分に割り付けられるので、その変形縫い目部分のサイズに関する設定操作が不要となる。
よって、穴かがりミシンにおいて変形穴かがり縫い目を容易に形成することができる。
従って、穴かがりミシンは、多様な穴かがり縫い目を形成することができる。
【0026】
請求項6記載の発明によれば、穴かがりミシンは、設定された変形縫い目の縦横比率に応じて、穴かがり縫い目部分に付加される変形縫い目部分の形状を調整して変形穴かがり縫い目を形成することができる。
つまり、穴かがりミシンは、穴かがり縫い目データに付加する周縁部縫い目データに基づく変形縫い目の縦横比率を設定することにより、穴かがり縫い目部分に付加される周縁部縫い目データに基づく変形縫い目部分が、その形状を縮めたり伸ばしたりするように調整されて穴かがり縫い目に割り付けられるので、その変形縫い目部分のサイズに関する設定操作が不要となる。
よって、穴かがりミシンにおいて変形穴かがり縫い目を容易に形成することができる。
従って、穴かがりミシンは、多様な穴かがり縫い目を形成することができる。
【0027】
請求項7記載の発明によれば、穴かがりミシンは、ボタン穴に対するいずれか一方側に対して設定された一方側の周縁部縫い目データと、その一方側の周縁部縫い目データが左右対称に反転させるようにして設定されたボタン穴に対する他方側の周縁部縫い目データとに基づく変形縫い目部分が付加された変形穴かがり縫い目を形成することができる。
つまり、穴かがりミシンにおいて、ボタン穴に対するいずれか一方側に対して周縁部縫い目データを設定することによって、他方側の周縁部縫い目データが自動的に設定されるので、その変形穴かがり縫い目に関する縫い目データの設定操作が容易になる。そして、左右対称となる変形穴かがり縫い目の形成が可能になる。
よって、穴かがりミシンにおいて変形穴かがり縫い目を容易に形成することができる。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、穴かがりミシンは、周縁部縫い目データに基づく変形縫い目の形状に、その変形縫い目形状を特徴付ける形状変化点がある場合、その形状変化点に縫い針を針落ちさせるように変形穴かがり縫い目を形成することができる。
つまり、穴かがりミシンにおいて形成される変形穴かがり縫い目における変形縫い目部分に、その変形縫い目形状を特徴付ける形状変化点が存在する際に、その形状変化点に縫い針を針落ちさせることによって、形状変化点における縫い目の形状をはっきりと明確に形成することができる
よって、穴かがりミシンにおいて、変形穴かがり縫い目の形状の特徴をより認識しやすく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態たる穴かがりミシン10について説明する。
図1は穴かがりミシン10の外観斜視図であり、図2は穴かがりミシン10の内部構造を示す概略斜視図である。
【0030】
図1に示すように、穴かがりミシン10は、外形が側面視にて略コ字状を呈するミシンフレーム2を備えている。このミシンフレーム2は、穴かがりミシン10の上部をなし前後方向に延びるミシンアーム部2aと、穴かがりミシン10の下部をなし前後方向に延びるミシンベッド部2bと、ミシンアーム部2aとミシンベッド部2bとを連結する縦胴部2cとを有している。
【0031】
この穴かがりミシン10は、図1、図2に示すように、縫い針1の上下駆動を行う針駆動手段30と、被縫製物たる布地を押さえて保持する布押さえ手段40と、縫い針1と布押さえ手段40とを相対的に移動させる移動手段50と、ミシンベッド部2b内に設けられた釜機構60と、布地にボタン穴を形成する布切り手段であるメス機構70と、を備えている。
【0032】
針駆動手段30は、図2に示すように、ミシンアーム部2aの内部において前後方向に沿った状態で回転可能に支持される上軸31と、上軸31の一端部に連結されるミシンモータ32と、上軸31の他端部に設けられるクランク機構33と、ミシンアーム部2aの先端部においてクランク機構33により上下駆動力が伝達される針棒34とを備えている。
針棒34は、その下端部において縫い針1を交換可能に保持しており、また、針棒34は後述する移動手段50によりミシンアーム部2aの内部において左右方向に揺動自在に支持されている。
そして、針駆動手段30は、上記構成により、ミシンモータ32の出力回転数と同じ周期で縫い針1の上下動駆動を行う。
【0033】
布押さえ手段40は、図2に示すように、ミシンベッド部2bの上面において前後方向に移動可能に載置された布保持板41と、この布保持板41の上方から布地を押さえて布保持板41との間に布地を挟持する布押さえ枠42と、布押さえ枠42の上面に設けられた枠支持体43と、布押さえ枠42を昇降させることによって布地を保持する押さえ状態と解除状態とに切り替える押さえ上げソレノイド44(図4参照)とを備えている。
【0034】
布押さえ枠42は、長方形状の枠体であり、布押さえ枠42の内側は上下に貫通しており、当該枠の内側領域において穴かがり縫い目の縫製が行われる。即ち、縫い針1は布押さえ枠42の内側において上下動を行う配置となっている。同様に、メス機構70の後述するメス71も布押さえ枠42の内側において上下動を行う配置となっている。
また、布押さえ枠42は、複数種の異なる大きさのものと交換することが可能である。つまり、より大きな布押さえ枠42を使用することで、布地のセットし直しによる位置調節を不要とし、布押さえを行ったまま布押さえ枠42の内側におけるより大きな貫通穴の広範囲に複数の穴かがり縫い目や装飾用の縫い目などの形成を行うことが可能となる。
また、布押さえ枠42と布保持板41とで布地を挟持するので、布保持板41には縫い針1及びメス71を下方に挿通させる貫通穴が形成されている。
【0035】
また、布押さえ枠42は、後述する移動手段50の支持アーム51により昇降可能に支持され、押さえ上げソレノイド44はかかる支持状態にある布押さえ枠42に対して昇降動作の付与を行う。かかる押さえ上げソレノイド44は、穴かがりミシン10の使用者により入力操作が行われる押さえ上げ入力ペダル44b(図4参照)により、押さえ方向の駆動と解除方向の駆動との切り替えが行われる。
【0036】
移動手段50は、図2に示すように、その先端部において枠支持体43を介して布押さえ枠42を支持する支持アーム51と、支持アーム51の後端部と布保持板41の後端部とを支持する支持体52と、支持体52を前後方向に移動させるための駆動源となるステッピングモータからなる送りモータ53と、送りモータ53の出力軸に設けられたピニオンギヤに噛合するラックが形成され、前後方向に駆動される駆動伝達軸54と、ミシンアーム部2aの上部において前後方向に沿った軸線を中心に揺動可能に支持されると共に針棒34を上下動可能に支持する針棒支持体55と、その先端部に設けられたアームを介して針棒支持体55に揺動動作を付与する揺動駆動軸56と、揺動駆動軸56を任意の揺動角度で揺動駆動可能な図示しない周知の揺動駆動機構と針振りモータ57(図4参照)とを備えている。
【0037】
支持アーム51は、その後端部において支持部材52により左右方向の軸線を中心に回動自在に支持されており、これにより、前端部側の布押さえ枠42を布保持板41に対して昇降させて、布地の保持と解除を切り替えることを可能としている。
そして、支持アーム51及び支持体52を介して布押さえ枠42及び布保持板41はいずれも同じ移動量で前後方向に移動されて位置決めされる。また、針棒34を支持する針棒支持体55が揺動駆動軸56を介して前後方向に沿った軸線を中心として揺動することで縫い針1の先端部は左右方向に移動されて位置決めされる。従って、布押さえ枠42と布保持板41とで保持される布地の平面上に対して縫い針1を任意の位置に針落ちさせることが可能である。
【0038】
釜機構60は、図2に示すように、縦胴部2c内に配設され、上軸31からベベルギヤを介してトルク伝達される縦軸61と、ミシンベッド部2b内に配設され、縦軸61からベベルギヤを介してトルク伝達される下軸62と、下軸62の前端部において回転駆動される釜63とを備えている。かかる釜63は、縫い針1の上下動周期と同期して回転駆動され、縫い針1と釜63との協働により布地に縫い目の形成を行う。なお、釜63は、従来公知のものと同様であるので、その構造について詳述しない。
【0039】
メス機構70は、図2に示すように、布地にボタン穴を形成するメス71と、メス71をその下端部で保持すると共にミシンアーム部2aの前端部において上下動可能に支持されたメス保持体72と、メス保持体72を常時上方に張力を付勢する図示しない引っ張りバネと、その駆動により引っ張りバネ(図示省略)に抗してメス保持体72を下方に移動させるメス駆動ソレノイド74とを備えている。
かかるメス機構70では、後述する制御部100の制御によりメス駆動ソレノイド74がメス保持体72を下方に駆動し、メス71を布押さえ枠42の内側領域に下降させ、保持されている布地にメス71を突き通して布地を切り裂くようにボタン穴を形成する。
また、移動手段50により布押さえ枠42を前後方向に移動位置決めすることができるため、当該前後方向についてボタン穴形成位置の位置決めを行うことが可能となっている。
なお、穴かがりミシン10において、布地に穴かがり縫い目を形成した後にボタン穴を形成することが一般的であるが、布地にボタン穴を形成した後に穴かがり縫い目を形成するようにしてもよい。
【0040】
また、穴かがりミシン10は、オペレータが縫製に必要な各種設定や操作を行う操作パネル20を有している。図3は操作パネル20の外観正面図である。
この操作パネル20とミシン本体(制御部100)とは、図示しない有線又は無線の回線により接続されている。図3に示すように、この操作パネル20には、ミシンの各種設定、操作状態を表示する表示部20aを備えている。かかる表示部20aはいわゆるタッチパネルスイッチとなっており、表示される各種のキーやボタンによって後述する様々な設定入力が行われるとともに、各種設定値や設定条件等が表示されるようになっている。
【0041】
操作パネル20により設定される項目としては、例えば、ボタン穴Hの長手方向両端側に形成される一対の閂止め部5u,5d(ボタン穴Hの上部の第一閂止め部5uと、ボタン穴Hの下部の第二閂止め部5d)と、一対の閂止め部5u,5d間を亘るようにボタン穴Hの左右両側に形成される一対の平行部6l,6rとから構成される穴かがり縫い目7の形状(例えば、角型、丸型、放射角型、放射型、放射直線閂止め型、放射流れ閂止め型、鳩目角型、鳩目放射型、鳩目直線閂止め型、鳩目流れ閂止め型、半月型、丸角型、半月角型・・・など)や、その穴かがり縫い目7に付加する変形縫い目8に関する形状などがある。
また、操作パネル20により設定される主要な各パラメータは、例えば、穴かがり縫い目7の形状に応じた穴かがり縫い目データに関する設定値や、穴かがり縫い目7に付加する変形縫い目8の形状に応じた周縁部縫い目データに関する設定値や、ミシンスピード(ミシンモータ32の回転数)や上糸張力等ミシンの動作に関する設定値などがある。
【0042】
ここで、穴かがり縫い目データとは、ボタン穴Hに対する穴かがり縫いを行うための穴かがり縫い目7の縫い目形状に関するデータをいう。
より具体的には、穴かがり縫い目データは、ボタン穴Hの左右両側の平行部6l,6rと、角型、丸型、放射型、鳩目型、半月型、直線閂止め型、流れ閂止め型のいずれかを有する第一閂止め部5uと第二閂止め部5dとが組み合わされてなる縫い目形状を形成するための針落ち点や針落ち座標に関する針落ち位置データと、その針落ち位置データや穴かがり縫い目データ自体を調整するためのパラメータである、布切り長さ(ボタン穴長さ、メス幅;メス71は交換可能であって現在装着されているメス71の幅が入力される)、メス溝右幅、メス溝左幅、かがり幅、平行部ピッチ、第一閂止め長さ、第二閂止め長さ、閂止め部ピッチ、閂止め部とボタン穴とのスキマ幅等の縫い目調整データとを有する。
【0043】
また、周縁部縫い目データとは、穴かがり縫い目7の形状を変形するように、その穴かがり縫い目7に付加する変形縫い目8の縫い目形状に関するデータをいう。
より具体的には、周縁部縫い目データは、穴かがり縫い目データに付加することで、穴かがり縫い目7の形状を変形させるように、穴かがり縫い目データにおける針落ち点や針落ち座標、縫い目ピッチ等に関する縫い目データを変更するための変形縫い目データと、穴かがり縫い目7に対する変形縫い目8のサイズや縦横比率、穴かがり縫い目7に対する変形縫い目8の配置に関する設定データとを有する。
なお、変形縫い目8の縫い目形状は、穴かがり縫い目を趣向性や装飾性を有する穴かがり縫い目とするための縫い目形状を呈しており、例えば、円形、半円型、三角型、ジグザグ型などの形状がある。
【0044】
これら縫い目形状に関する設定値やパラメータなどは、ミシンの使用者が操作パネル20において個別に設定し、かかる設定入力により作成された縫い目形状に応じた縫製パターンデータとして後述するRAM103又はEEPROM104などに記憶し登録することが可能である。また、予め各設定値やパラメータなどが設定されてなる既成の縫製パターンデータを外部機器や外部記憶装置を介してRAM103やEEPROM104に入力して登録してもよい。
なお、各種の縫製パターンデータとしては、穴かがり縫い目7のみの縫製データや、穴かがり縫い目7に変形縫い目8が関連付けられてなる変形穴かがり縫い目9の縫製データなどがあり、それら縫製パターンデータの登録時にそれぞれ縫製パターンNo.が特定され、その縫製パターンNo.とともに記憶される。そして、操作パネル20において、その縫製パターンNo.により所望する縫い目に関する縫製パターンデータや縫い目データの読み出しが行われる。
【0045】
ここで、図3に示す操作パネル20について説明する。
図3に示す操作パネル20の表示部20aには、通常画面が表示されている。
この操作パネル20の表示部に20aにおける通常画面には、パターンデータ選択ボタン21、穴かがり縫い目形状選択ボタン22、上糸張力設定ボタン23、布切り長さ設定ボタン24、左かがり幅設定ボタン25、メス溝左幅設定ボタン26l、メス溝右幅設定ボタン26r、縫製データ変更ボタン27、変形穴かがり縫い準備ボタン28、準備ボタン29等が表示されて備えられている。
【0046】
パターンデータ選択ボタン21は、所望する縫製パターンデータに対応つけられた縫製パターンNo.を選択し、その縫製パターンNo.に応じた縫製パターンデータに関する縫い目データを表示部20aに表示するためのボタンである。
穴かがり縫い目形状選択ボタン22には、現在選択されている穴かがり縫い目形状(図中、角型の穴かがり縫い目形状)が表示されており、この穴かがり縫い目形状選択ボタン22上に表示されている穴かがり縫い目データに関するパラメータ等の設定変更を行う際に押下するボタンである。この穴かがり縫い目形状選択ボタン22が押下されると、穴かがり縫い目データに関するパラメータ等の設定変更を行う設定変更画面が表示されるようになっている。
上糸張力設定ボタン23には、現在設定されている上糸張力値(図中、120)が表示されており、この上糸張力設定ボタン23が押下されると、上糸張力値の設定変更を行う設定変更画面が表示されるようになっている。
布切り長さ設定ボタン24には、現在設定されている布切り長さ(図中、6.4mm)が表示されており、この切り長さ設定ボタン24が押下されると、布切り長さの設定変更を行う設定変更画面が表示されるようになっている。
左かがり幅設定ボタン25には、現在設定されている左かがり幅(図中、1.7mm)が表示されており、この左かがり幅設定ボタン25が押下されると、左かがり幅の設定変更を行う設定変更画面が表示されるようになっている。
メス溝左幅設定ボタン26lには、現在設定されているメス溝左幅(図中、0.1mm)が表示されており、このメス溝左幅設定ボタン26lが押下されると、メス溝左幅の設定変更を行う設定変更画面が表示されるようになっている。
メス溝右幅設定ボタン26rには、現在設定されているメス溝右幅(図中、0.1mm)が表示されており、このメス溝左幅設定ボタン26rが押下されると、メス溝右幅の設定変更を行う設定変更画面が表示されるようになっている。
縫製データ変更ボタン27は、縫製データ一覧画面を表示するためのボタンであり、この縫製データ変更ボタン27が押下されると、縫製データに関するより詳細なデータや設定値の変更を行う設定変更画面が表示されるようになっている。
変形穴かがり縫い準備ボタン28は、現在選択されている穴かがり縫い目に対して付加する変形縫い目に関する周縁部縫い目データを選択して対応つける設定を行うためのボタンであり、この変形穴かがり縫い準備ボタン28が押下されると、穴かがり縫い目データに対して周縁部縫い目データを選択し対応つける設定画面が表示されるようになっている。
準備ボタン29は、ミシンの縫製動作を実行するための縫製画面に移行するためのボタンであり、この準備ボタン29が押下されると、縫製画面が表示されるようになっている。
【0047】
次に、穴かがりミシン10の制御部100について説明する。
図4に示すように、この穴かがりミシン10は、ミシンモータ32、送りモータ53、針振りモータ57、メス駆動ソレノイド74、押さえ上げソレノイド44、押さえ上げ入力ペダル44b、操作パネル20等に接続される制御部100を有している。
制御部100は、ミシンモータ32の回転速度、送りモータ53による布地の送り量、針振りモータ57の駆動タイミング及び振り幅、メス71の下降タイミング、布押さえ枠42の昇降切り替え等を制御している。この制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104及びI/Oインターフェース105を備えている。CPU101には、バスを介して、ROM102、RAM103、EEPROM104及びI/Oインターフェース105が接続される。
【0048】
I/Oインターフェース105には、ミシンモータドライバ32aを介してミシンモータ32が接続される。このミシンモータドライバ32aには、ミシンモータ5の回転数を検出するエンコーダ32bが接続され、フィードバック制御が可能となっている。
さらに、ミシンモータドライバ32aには、縫い針1が上昇したことを検知する針上位置センサ32cが接続される。これにより、縫い針1により縫い目が形成される際の縫い針数が、制御部100によりカウントされるようになっている。
【0049】
また、I/Oインターフェース105には、送りモータドライバ53aを介して送りモータ53が接続される。また、I/Oインターフェース105には、針振りモータドライバ57aを介して針振りモータ57が接続される。また、I/Oインターフェース105には、メス駆動回路74aを介してメス駆動ソレノイド74が接続される。
さらに、I/Oインターフェース105には、押さえ上げ駆動回路44aを介して押さえ上げソレノイド44が接続されると共に、I/Oインターフェース105には押さえ上げペダル44bが接続される。
【0050】
また、入力手段としてのI/Oインターフェース105には、パソコンなどの外部機器において作成された縫い目データ(特に、周縁部縫い目データ)を記憶する不揮発性のフラッシュメモリーなどからなる外部記憶装置200が接続され、その外部記憶装置200に記憶されている縫い目データが入力されるようになっている。
【0051】
制御部100は、ROM102に記憶された各種のプログラムをRAM103のワークエリアを用いてCPU101が処理することで縫製パターンに関する縫い目データの設定入力を受け付けることや、その設定された縫い目データや縫い目データが組み合わされてなる縫製パターンデータに基づきミシン各部を制御して縫製を実行する。
【0052】
この制御部100におけるRAM103やEEPROM104は縫い目データ記憶手段として機能し、穴かがり縫い目7の形状に応じた穴かがり縫い目データや、変形縫い目8の形状に応じた周縁部縫い目データや、穴かがり縫い目データと周縁部縫い目データとが関連付けられた変形穴かがり縫い目9に関する縫製パターンデータなどを記憶している。
なお、縫い目データ記憶手段としてのRAM103やEEPROM104は、ボタン穴Hの長手方向両端側に形成される一対の閂止め部5u,5dに関する閂止め縫いデータと、それら閂止め部5u,5d間を亘るようにボタン穴Hの左右両側に形成される一対の平行部6l,6rに関する平行縫いデータとからなる穴かがり縫い目7に関する穴かがり縫い目データを複数記憶している。
【0053】
そして、制御部100は、RAM103やEEPROM104に記憶されている縫い目データにおける穴かがり縫い目データに基づきミシン各部を制御して、ボタン穴の周囲に穴かがり縫い目を形成する縫製制御手段として機能する。
【0054】
特に、縫製制御手段としての制御部100は、RAM103やEEPROM104に記憶されている縫い目データにおける穴かがり縫い目データと周縁部縫い目データとに基づき、ボタン穴Hの周囲に、穴かがり縫い目データに基づく穴かがり縫い目7部分に周縁部縫い目データに基づく変形縫い目8部分が付加された変形穴かがり縫い目9を縫製する機能を有する。また、縫製制御手段としての制御部100は、RAM103やEEPROM104に記憶されている穴かがり縫い目データと周縁部縫い目データとが対応つけられた変形穴かがり縫い目9に関する縫製パターンデータに基づき、ボタン穴Hの周囲に変形穴かがり縫い目9を縫製する機能を有する。
【0055】
このように、縫製制御手段としての制御部100は、穴かがり縫い目データと周縁部縫い目データとを合成させるようにして作成した縫い目データに基づき、穴かがり縫い目7に変形縫い目8を付加した変形穴かがり縫い目9を形成する機能を有する。つまり、縫製制御手段としての制御部100は、穴かがり縫い目7の周縁部の形状を周縁部縫い目データに基づく変形縫い目形状によって変化させた変形穴かがり縫い目9を形成する機能を有する。
なお、縫製制御手段としての制御部100の制御に基づき形成される変形穴かがり縫い目9は、周縁部縫い目データによって穴かがり縫い目データにおける縫い目ピッチや針落ち位置データの設定パラメータが変更された縫い目データに応じて形成される縫い目であり、穴かがり縫い目7部分と変形縫い目8部分とは一連の縫製によって一体的に形成され、変形穴かがり縫い目9が形成されるようになっている。
【0056】
また、縫製制御手段としての制御部100は、周縁部縫い目データが平行縫いデータに付加された変形穴かがり縫い目に関する縫製パターンデータに基づき、平行部6l,6rの外縁の形状を変化させた変形穴かがり縫い目9を形成する機能を有する。
また、縫製制御手段としての制御部100は、穴かがり縫い目7の形状において平行部6l,6rの外縁と閂止め部5u,5dの側端とが一直線状に連なる場合、具体的には穴かがり縫い目7の形状が角型や角直線閂止め型などの場合、周縁部縫い目データが平行縫いデータや閂止め縫いデータに付加された変形穴かがり縫い目に関する縫製パターンデータに基づき、平行部6l,6rの外縁や、閂止め部5u,5dの側端の形状を変化させた変形穴かがり縫い目9を形成する機能を有する。なお、この場合の変形穴かがり縫い目は、平行部6l,6rの外縁の形状のみを変化させたもの、閂止め部5u,5dの側端の形状のみを変化させたもの、平行部6l,6rの外縁と閂止め部5u,5dの側端の形状をともに変化させたものがある。
【0057】
また、縫製制御手段としての制御部100は、一つの穴かがり縫い目データに対し複数の周縁部縫い目データが付加された場合、複数の変形縫い目8部分を有する変形穴かがり縫い目9を形成するように機能する。
【0058】
また、制御部100は、RAM103やEEPROM104に記憶されている穴かがり縫い目データと周縁部縫い目データとを関連付けるとともに、その穴かがり縫い目データに付加する周縁部縫い目データ(変形縫い目)の数を設定する付加縫い目データ数設定手段の一部として機能する。
そして、縫製制御手段としての制御部100は、付加縫い目データ数設定手段としての制御部100により設定された周縁部縫い目データの数に応じて、穴かがり縫い目7部分に付加される複数の変形縫い目8部分が同じサイズになるように変形穴かがり縫い目9を形成する機能を有する。
【0059】
また、制御部100は、RAM103やEEPROM104に記憶されている穴かがり縫い目データと周縁部縫い目データとを関連付けるとともに、その穴かがり縫い目データに付加する周縁部縫い目データに基づく変形縫い目8の縦横比率を設定する変形縫い目縦横比率設定手段の一部として機能する。
そして、縫製制御手段としての制御部100は、変形縫い目縦横比率設定手段としての制御部100により設定された変形縫い目8の縦横比率に応じて、穴かがり縫い目7部分に付加される変形縫い目8部分の形状を調整して変形穴かがり縫い目9を形成する機能を有する。
【0060】
また、制御部100は、RAM103やEEPROM104に記憶されている穴かがり縫い目データと周縁部縫い目データとを関連付けるとともに、その穴かがり縫い目データに付加する周縁部縫い目データをボタン穴Hに対するいずれか一方側に対して設定する付加縫い目片側設定手段の一部として機能する。
また、制御部100は、付加縫い目片側設定手段としての制御部100により設定された一方側の周縁部縫い目データを、ボタン穴Hに対して左右対称に反転させるようにして、そのボタン穴Hに対する他方側の周縁部縫い目データを設定する付加縫い目対称設定手段として機能する。
そして、縫製制御手段としての制御部100は、付加縫い目片側設定手段としての制御部100により設定された一方側の周縁部縫い目データと、付加縫い目対称設定手段としての制御部100により設定された他方側の周縁部縫い目データとに基づく変形縫い目部分が付加された変形穴かがり縫い目9を形成する機能を有する。
【0061】
また、制御部100は、周縁部縫い目データに基づく変形縫い目8の形状に、その変形縫い目形状を特徴付ける形状変化点Pがある場合、その形状変化点Pに縫い針1を針落ちさせるように、縫い目ピッチ等を調整し、針落ち位置データを変更する針落ち位置変更手段として機能する。
そして、縫製制御手段としての制御部100は、針落ち位置変更手段としての制御部100によって変更された縫い目ピッチや針落ち位置データに基づき、その形状変化点Pに縫い針1を針落ちさせるようにして変形穴かがり縫い目9を形成する機能を有する。
【0062】
なお、針落ち位置変更手段としての制御部100が、縫い目ピッチを調整して針落ち位置を変更する方法としては、例えば、形状変化点P間を所定の間隔に等分するように縫い目ピッチを設定することによって、その形状変化点Pに必ず針落ちを行うようにする方法や、予め設定されている縫い目ピッチで縫製を行いつつ、形状変化点Pの直前の縫い目ピッチのみ変化させて、その形状変化点Pに必ず針落ちを行うようにする方法などがある。
【0063】
また、制御部100は、I/Oインターフェース105に接続された外部記憶装置200によって、I/Oインターフェース105を介して入力された縫い目データ(特に、周縁部縫い目データ)を、RAM103やEEPROM104に記憶させる記憶制御手段として機能する。
【0064】
次に、本実施の形態における穴かがりミシン10において、穴かがり縫い目に対して変形縫い目を対応付ける設定処理動作について、図5に示すフローチャートに基づき説明する。
【0065】
穴かがりミシン10の操作パネル20の表示部20aに、図3に示すような通常画面が表示されている状態において、制御部100は、その表示部20aにおける変形穴かがり縫い準備ボタン28が押下されたか否かを判断する(ステップS101)。
【0066】
制御部100が、変形穴かがり縫い準備ボタン28が押下されたと判断すると(ステップS101;Yes)、制御部100は、図6に示すような穴かがり準備画面を操作パネル20の表示部20aに表示する(ステップS102)。
なお、この穴かがり準備画面には、縫い目データ表示領域20bと、変形穴かがり縫い目入力ボタン11や初期画面キー12が表示され、備えられている。図6に示す穴かがり準備画面における縫い目データ表示領域20bには、縫製パターンNo.1に応じた縫製パターンデータにおける穴かがり縫い目データが示す、閂止め部5u,5dと平行部6l,6rからなる角型の穴かがり縫い目7の形状が表示されている。
【0067】
次いで、制御部100は、変形穴かがり縫い目入力ボタン11が押下されたか否かを判断する(ステップS103)。
制御部100が、変形穴かがり縫い目入力ボタン11が押下されたと判断すると(ステップS103;Yes)、ステップS105へ進む。
一方、制御部100が、変形穴かがり縫い目入力ボタン11は押下されていないと判断すると(ステップS103;No)、制御部100は、初期画面キー12が押下されたか否かを判断する(ステップS104)。
制御部100が、初期画面キー12が押下されたと判断すると(ステップS104;Yes)、ステップS101に戻り、表示部20aには通常画面が表示される。
一方、制御部100が、初期画面キー12は押下されていないと判断すると(ステップS104;No)、ステップS102に戻り、表示部20aには穴かがり準備画面が表示される。
【0068】
ステップS105において、制御部100は、図7に示すような変形縫い目形状選択画面を操作パネル20の表示部20aに表示する(ステップS105)。
なお、この変形縫い目形状選択画面には、変形縫い目形状キー表示領域20cが表示されており、この変形縫い目形状キー表示領域20cには、変形縫い目形状キー13(半円型変形縫い目形状キー13a、四分円型変形縫い目形状キー13b、三角型変形縫い目形状キー13c、二分三角型変形縫い目形状キー13d)と、キャンセルキー14と、確定キー15が表示され、備えられている。
【0069】
次いで、制御部100は、変形縫い目形状キー13が押下されたか否かを判断する(ステップS106)。
制御部100が、変形縫い目形状キー13が押下され、確定キー15が押下されたと判断すると(ステップS106;Yes)、ステップS108へ進む。
一方、制御部100が、変形縫い目形状キー13は押下されていないと判断すると(ステップS106;No)、制御部100は、キャンセルキー14が押下されたか否かを判断する(ステップS107)。
制御部100が、キャンセルキー14が押下されたと判断すると(ステップS107;Yes)、ステップS102に戻り、表示部20aには穴かがり準備画面が表示される。
一方、制御部100が、キャンセルキー14は押下されていないと判断すると(ステップS107;No)、ステップS105に戻り、表示部20aには変形縫い目形状選択画面が表示される。
【0070】
ステップS108において、制御部100は、図8に示すような変形穴かがり縫い目設定画面を操作パネル20の表示部20aに表示する(ステップS108)。なお、この変形穴かがり縫い目設定画面は、図7に示す変形縫い目形状選択画面における半円型変形縫い目形状キー13aが押下されたことに基づく画面である。
この変形穴かがり縫い目設定画面には、変形穴かがり縫い目設定領域20dが表示されており、この変形穴かがり縫い目設定領域20dには、縫製パターンNo.1に応じた縫製パターンデータにおける穴かがり縫い目データが示す、閂止め部5u,5dと平行部6l,6rからなる角型の穴かがり縫い目7の形状が表示されている。
また、変形穴かがり縫い目設定画面には、変形穴かがり縫い目入力ボタン11と、初期画面キー12と、半円型変形縫い目形状キー13aと、キャンセルキー14と、確定キー15と、穴かがり縫い目7に対して変形縫い目8を付加して配置する対象領域(例えば、平行部6l,6rの外縁に変形縫い目8を配置する対象領域Aと、平行部6l,6rの外縁と閂止め部5u,5dの側端に変形縫い目8を配置する対象領域B)を設定する対象領域設定キー16と、穴かがり縫い目7に対して付加する変形縫い目8の個数を設定する変形縫い目個数設定キー17と、穴かがり縫い目7に対して付加する変形縫い目8の縦横比率を設定する縦横比率設定キー18と、穴かがり縫い目に対して付加する変形縫い目8に関し、ボタン穴Hに対するいずれか一方側に対して設定された周縁部縫い目データを、そのボタン穴Hに対して左右対称に反転させるようにして、そのボタン穴Hに対する他方側の周縁部縫い目データを設定するための左右対称キー19と、準備ボタン29が表示され、備えられている。
なお、この操作パネル20における変形縫い目個数設定キー17は付加縫い目データ数設定手段の一部として機能し、操作パネル20における縦横比率設定キー18は変形縫い目縦横比率設定手段の一部として機能し、操作パネル20における左右対称キー19は付加縫い目片側設定手段や付加縫い目対称設定手段の一部として機能する。
【0071】
そして、制御部100は、オペレータによる変形穴かがり縫い目設定画面の変形穴かがり縫い目設定領域20dにおける各設定キー(16、17、18、19)の操作入力や設定入力を受け付け、変形穴かがり縫い目9に関する設定が行われる(ステップS109)。
【0072】
次いで、制御部100は、キャンセルキー14が押下されたか否かを判断する(ステップS110)。
制御部100が、キャンセルキー14が押下されたと判断すると(ステップS110;Yes)、ステップS105に戻り、表示部20aには変形縫い目形状選択画面が表示される。
一方、制御部100が、キャンセルキー14は押下されていないと判断すると(ステップS110;No)、制御部100は、確定キー15が押下されたか否かを判断する(ステップS111)。
制御部100が、確定キー15が押下されたと判断すると(ステップS111;Yes)、ステップS112へ進む。
一方、制御部100が、確定キー15は押下されていないと判断すると(ステップS111;No)、ステップS108に戻り、表示部20aには変形縫い目形状設定画面が表示される。
【0073】
ステップS112において、制御部100は、図9に示すような穴かがり準備画面を操作パネル20の表示部20aに表示する(ステップS112)。
なお、この穴かがり準備画面には、縫い目データ表示領域20bと、変形穴かがり縫い目入力ボタン11、初期画面キー12、準備ボタン29が表示され、備えられている。図9に示す穴かがり準備画面における縫い目データ表示領域20bには、縫製パターンNo.1に応じた縫製パターンデータにおける穴かがり縫い目データが示す、閂止め部5u,5dと平行部6l,6rからなる角型の穴かがり縫い目に、選択されて設定された半円型の変形縫い目8が付加された変形穴かがり縫い目9の形状が表示されている。
なお、図9に示す穴かがり準備画面における表示部20aの縫い目データ表示領域20bに表示されている変形穴かがり縫い目9は、角型の穴かがり縫い目における平行部6l,6rの外縁(対象領域A)に半円型の変形縫い目8を左右3個ずつ計6個配置した縫い目形状を示している。
【0074】
次いで、制御部100は、初期画面キー12が押下されたか否かを判断する(ステップS113)。
制御部100が、初期画面キー12が押下されたと判断すると(ステップS113;Yes)、ステップS101に戻り、表示部20aには通常画面が表示される。
一方、制御部100が、初期画面キー12は押下されていないと判断すると(ステップS113;No)、制御部100は、準備ボタン29が押下されたか否かを判断する(ステップS114)。
制御部100が、準備ボタン29は押下されていないと判断すると(ステップS114;No)、ステップS112に戻り、表示部20aには穴かがり準備画面が表示される。
一方、制御部100が、準備ボタン29が押下されたと判断すると(ステップS114Yes)、制御部100は、縫製パターンNo.1における角型の穴かがり縫い目データに対して選択設定された半円型の変形縫い目に関する周縁部縫い目データが関連付けられ、角型の穴かがり縫い目に半円型の変形縫い目が6個対応つけられた変形穴かがり縫い目に関する縫製パターンデータをEEPROM104に記憶して登録する(ステップS115)。なお、ここで、角型の穴かがり縫い目に半円型の変形縫い目が対応つけられた変形穴かがり縫い目に関する縫製パターンデータを登録する際、その縫製パターンデータに縫製パターンNo.1を付与してもよく、また新たな縫製パターンNo.を付与するようにしてもよい。
【0075】
次いで、制御部100は、その登録した縫製パターンデータ(ここでは角型の穴かがり縫い目に半円型の変形縫い目が6個対応つけられた変形穴かがり縫い目に関する縫製パターンデータ)に応じた縫製画面を操作パネル20の表示部20aに表示する(ステップS116)。
そして、その縫製画面において、オペレータによる所定の操作が行われることによって、穴かがりミシン10は、この縫製パターンデータに基づいて、変形穴かがり縫い目9の縫製を行い、ミシンの動作を終了する。
【0076】
次に、ステップS109における変形穴かがり縫い目設定処理について、図10に示すフローチャートに基づき説明する。
【0077】
穴かがりミシン10の操作パネル20の表示部20aに、図8に示すような変形穴かがり縫い目設定画面が表示されている状態において、対象領域設定キー16が押下されたことに応じて、ボタン穴Hの左側における変形縫い目を施す対象領域の設定が行われる(ステップS201)。本実施形態においては、対象領域「A」が設定されている。
なお、穴かがり縫い目が丸型の穴かがり縫い目形状などであり、平行部6l,6rの外縁と閂止め部5u,5dの側端とが一直線状とならない穴かがり縫い目が選択されている場合、対象領域は「A」のみとなる。
【0078】
次いで、図8に示す変形穴かがり縫い目設定画面において、変形縫い目個数設定キー17が押下されたことに応じて、ボタン穴Hの左側に施す変形縫い目の個数の設定が行われる(ステップS202)。本実施形態においては、「3個」と設定されている。
【0079】
次いで、図8に示す変形穴かがり縫い目設定画面において、縦横比率設定キー18が押下されたことに応じて、ボタン穴Hの左側に施す変形縫い目の縦横比率の設定が行われる(ステップS203)。本実施形態においては、縦横比率「1:1」と設定されている。
なお、縦横比率「1:1」の設定に関しては、付加縫い目データ数設定手段としての制御部100の設定によって変形縫い目のサイズが設定されることに伴い、自動的に「1:1」と設定されるようになっている。
【0080】
次いで、制御部100は、左右対称キー19が押下されたか否かを判断する(ステップS204)。
制御部100が、左右対称キー19が押下されたと判断すると(ステップS204;Yes)、制御部100は、設定されたボタン穴Hの左側における変形縫い目に関する周縁部縫い目データに基づき、ボタン穴Hの右側における変形縫い目に関する周縁部縫い目データを設定し(ステップS205)、ステップS209へ進む。
一方、制御部100が、左右対称キー19は押下されていないと判断すると(ステップS204;No)、ステップS206へ進む。
【0081】
ステップS206において、対象領域設定キー16が押下されたことに応じて、ボタン穴Hの右側における変形縫い目を施す対象領域の設定が行われる(ステップS206)。本実施形態においては、対象領域「A」が設定されている。なお、穴かがり縫い目が丸型の穴かがり縫い目形状などであり、平行部6l,6rの外縁と閂止め部5u,5dの側端とが一直線状とならない穴かがり縫い目が選択されている場合、対象領域は「A」のみとなる。
次いで、図8に示す変形穴かがり縫い目設定画面において、変形縫い目個数設定キー17が押下されたことに応じて、ボタン穴Hの右側に施す変形縫い目の個数の設定が行われる(ステップS207)。本実施形態においては、「3個」と設定されている。
次いで、図8に示す変形穴かがり縫い目設定画面において、縦横比率設定キー18が押下されたことに応じて、ボタン穴Hの右側に施す変形縫い目の縦横比率の設定が行われ(ステップS208)、ステップS209へ進む。本実施形態においては、縦横比率「1:1」と設定されている。なお、縦横比率「1:1」の設定に関しては、付加縫い目データ数設定手段としての制御部100の設定によって変形縫い目のサイズが設定されることに伴い、自動的に「1:1」と設定されるようになっている。
【0082】
ステップS209において、周縁部縫い目データに基づく変形縫い目の形状に、その変形縫い目形状を特徴付ける形状変化点Pがある場合、その形状変化点Pに縫い針1を針落ちさせるように、縫い目ピッチ等を調整して針落ち位置データを変更するか否かの設定が行われ(ステップS209)、変形穴かがり縫い目設定処理を終了する。
【0083】
このように、穴かがりミシン10において、図9に示すような、角型の穴かがり縫い目における平行部6l,6rの外縁に半円型の変形縫い目8を左右3個ずつ計6個配置した変形穴かがり縫い目9に関する縫い目データを設定することができ、その変形穴かがり縫い目9を被縫製物に縫製して形成することができる。
【0084】
また、穴かがりミシン10の操作パネル20の表示部20aに表示される、図8に示すような変形穴かがり縫い目設定画面において、対象領域設定キー16を押下することに応じて、ボタン穴Hの左右両側において変形縫い目を施す対象領域「B」を設定し、変形縫い目個数設定キー17を押下することに応じて、ボタン穴Hの左右両側に施す変形縫い目の個数をそれぞれ「4個」と設定し、縦横比率設定キー18を押下することに応じて、ボタン穴Hの左右両側に施す変形縫い目の縦横比率を上側から「4:4」、「3:3」、「2:2」、「1:1」(各変形縫い目の縦横比率は1:1であるが、各変形縫い目の半円の径が「4:3:2:1」の割合)と、設定することによって、図11に示すような、角型の穴かがり縫い目における平行部6l,6rの外縁と閂止め部5u,5dの側端にかけて、大きさが異なる半円型の変形縫い目8aを左右4個ずつ計8個配置した変形穴かがり縫い目9aに関する縫い目データを設定することができ、その変形穴かがり縫い目9aを被縫製物に縫製して形成することができる。
【0085】
また、穴かがりミシン10の操作パネル20の表示部20aに表示される、図8に示すような変形穴かがり縫い目設定画面において、対象領域設定キー16を押下することに応じて、ボタン穴Hの左右両側において変形縫い目を施す対象領域「B」を設定し、変形縫い目個数設定キー17を押下することに応じて、ボタン穴Hの左右両側に施す変形縫い目の個数をそれぞれ「4個」と設定し、縦横比率設定キー18を押下することに応じて、ボタン穴Hの左右両側に施す変形縫い目の縦横比率を上側から「4:4」、「3:4」、「2:4」、「1:4」(各変形縫い目の横方向の長さが一定(4単位)であり、各変形縫い目の半円の径が「4:3:2:1」の割合)と、設定することによって、図12に示すような、角型の穴かがり縫い目における平行部6l,6rの外縁と閂止め部5u,5dの側端にかけて、大きさが異なる半円型の変形縫い目8bを左右4個ずつ計8個配置した変形穴かがり縫い目9bに関する縫い目データを設定することができ、その変形穴かがり縫い目9bを被縫製物に縫製して形成することができる。
【0086】
また、穴かがりミシン10の操作パネル20の表示部20aに表示される、図7に示すような変形縫い目形状選択画面において、半円型変形縫い目形状キー13aと三角型変形縫い目形状キー13cが押下されたことに伴い、穴かがりミシン10の操作パネル20の表示部20aに表示される変形穴かがり縫い目設定画面において、対象領域設定キー16を押下することに応じて、ボタン穴Hの左右両側において変形縫い目を施す対象領域「B」を設定し、変形縫い目個数設定キー17を押下することに応じて、ボタン穴Hの左右両側に施す変形縫い目の個数をそれぞれ「半円型2個、三角型3個(上から半円、三角、三角、三角、半円の順)の計5個」と設定し、縦横比率設定キー18を押下することに応じて、ボタン穴Hの左右両側に施す変形縫い目の縦横比率を「1:1」と、設定することによって、図13に示すような、角型の穴かがり縫い目における平行部6l,6rの外縁と閂止め部5u,5dの側端にかけて、半円型と三角型が混在する変形縫い目8cを有する変形穴かがり縫い目9cに関する縫い目データを設定することができ、その変形穴かがり縫い目9cを被縫製物に縫製して形成することができる。
【0087】
図13に示す変形穴かがり縫い目9cに付加された変形縫い目8cにおける三角型変形縫い目には、図14に示すように、その三角型変形縫い目形状を特徴付ける形状変化点Pが存在する。この形状変化点Pは、三角形の頂点(角部)に対応しており、その三角形の頂点(角部)が尖がることによって、三角形の形状が特徴付けられる。
そして、変形穴かがり縫い目設定処理(図10に示すフローチャート参照)におけるステップS209において、縫い目ピッチを調整して針落ち位置データを変更する設定が行われなければ、予め穴かがり縫い目7に対して設定されている縫い目ピッチに応じて、図14(a)に示すような縫い目を形成するように、針振りや針落ちが行われる。
一方、ステップS209において、縫い目ピッチを調整して針落ち位置データを変更する設定が行われることによって、図14(b)に示すような縫い目を形成するように、縫い目ピッチが変更されて針振りや針落ちが行われる。この図14(b)に示す変形穴かがり縫い目9cにおいては、形状変化点Pに針落ちが行われることによって、三角形の頂点(角部)がよりシャープに形成されるように変形穴かがり縫い目9cが縫製される。
【0088】
このように、穴かがりミシン10は、穴かがり縫い目に関する穴かがり縫い目データに、変形縫い目に関する周縁部縫い目データを付加することによって、穴かがり縫い目の周縁部の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することができる。
そして、穴かがり縫い目の周縁部の形状を様々に変化させることによって、穴かがり縫い目の周囲に装飾性やデザイン性を付与することができるので、穴かがりミシン10は、多様な穴かがり縫い目を形成することができる。
【0089】
また、穴かがりミシン10において、穴かがり縫い目(穴かがり縫い目データ)に付加する周縁部縫い目データに基づく変形縫い目は、その個数や縦横比率、サイズなどが設定されることに応じて、自動的に穴かがり縫い目に合成されるようにして変形穴かがり縫い目に関する縫い目データが作成されるので、縫い目データの作成や編集が容易に行える。
また、穴かがりミシン10において、穴かがり縫い目に付加する変形縫い目に関する周縁部縫い目データを、ボタン穴Hに対する一方側に対して設定することによって、自動的にボタン穴Hの他方側に対する周縁部縫い目データが設定されるようにして変形穴かがり縫い目に関する縫い目データが作成されるので、縫い目データの作成や編集が容易に行える。
【0090】
また、穴かがりミシン10において、変形穴かがり縫い目の形成を行う際、その変形穴かがり縫い目の変形縫い目部分の形状に、その変形縫い目形状を特徴付ける形状変化点Pがある場合、その形状変化点Pに縫い針1を針落ちさせるように変形穴かがり縫い目を形成することができるので、その形状変化点Pにおける縫い目の形状をはっきりと明確に形成することができ、穴かがりミシンにより形成された変形穴かがり縫い目の形状の特徴が認識しやすくなる。
【0091】
なお、以上の実施の形態においては、変形縫い目の形状を半円型、四分円型、三角型、二分三角型を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、穴かがりミシン10は任意の変形縫い目に関する設定を行うことができ、その変形縫い目に関する周縁部縫い目データは、操作パネル20において作成したり、外部機器において作成したものをI/Oインターフェース105を介して入力したりするようにすればよい。
また、穴かがり縫い目の形状や、その穴かがり縫い目に対する変形縫い目のサイズや配置、また変形縫い目の数は、本実施形態に限られず、任意に設定することができる。
【0092】
また、以上の実施の形態においては、パソコンなどの外部機器において作成された縫い目データ(特に、周縁部縫い目データ)を記憶する外部記憶装置200を、I/Oインターフェース105に接続するようにして、新たな縫い目データを入力するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、外部機器とI/Oインターフェース105とを有線又は無線の回線で接続し、外部機器において作成された縫い目データをI/Oインターフェース105に直接入力するようにしてもよい。
【0093】
また、変形穴かがり縫い目は、穴かがり縫い目データに周縁部縫い目データが付加されることによって設定変更された縫い目データに応じて、穴かがり縫い目部分と変形縫い目部分とが一連の縫製によって一体的に形成されることに限らず、穴かがり縫い目と変形縫い目とをそれぞれ別体ではあるが近接した位置に縫製して形成することによって、変形穴かがり縫い目を表現するようにしてもよい。
【0094】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明にかかる穴かがりミシンを示す外観斜視図である。
【図2】本発明にかかる穴かがりミシンの内部構造を示す概略斜視図である。
【図3】操作パネルを示す外観正面図である。
【図4】本発明にかかる穴かがりミシンの制御部を示すブロック図である。
【図5】穴かがりミシンにおいて穴かがり縫い目に対して変形縫い目を対応付ける設定処理を示すフローチャートである。
【図6】操作パネルの表示部の表示例を示す説明図である。
【図7】操作パネルの表示部の表示例を示す説明図である。
【図8】操作パネルの表示部の表示例を示す説明図である。
【図9】操作パネルの表示部の表示例を示す説明図である。
【図10】穴かがりミシンにおける変形穴かがり縫い目の設定処理を示すフローチャートである。
【図11】操作パネルの表示部の表示例を示す説明図である。
【図12】操作パネルの表示部の表示例を示す説明図である。
【図13】操作パネルの表示部の表示例を示す説明図である。
【図14】形状変化点に対する針落ちについての説明図であり、形状変化点に針落ちしない場合(a)と、形状変化点に針落ちする場合(b)を示している。
【符号の説明】
【0096】
1 縫い針
2 ミシンフレーム
5u、5d 閂止め部
6l、6r 平行部
7 穴かがり縫い目
8、8a、8b、8c 変形縫い目
9、9a、9b、9c 変形穴かがり縫い目
10 穴かがりミシン
20 操作パネル(付加縫い目データ数設定手段、変形縫い目縦横比率設定手段、付加縫い目片側設定手段、付加縫い目対称設定手段)
16 対象領域設定キー
17 変形縫い目個数設定キー
18 縦横比率設定キー
19 左右対称キー
20a 表示部
30 針駆動手段
32 ミシンモータ
34 針棒
40 布押さえ手段
41 布保持板
42 布押さえ枠
44 押さえ上げソレノイド
44b 押さえ上げ入力ペダル
50 移動手段
53 送りモータ
57 針振りモータ
70 メス機構(布切り手段)
71 メス
100 制御部(縫製制御手段、付加縫い目データ数設定手段、変形縫い目縦横比率設定手段、付加縫い目片側設定手段、付加縫い目対称設定手段)
101 CPU
102 ROM
103 RAM(縫い目データ記憶手段)
104 EEPROM(縫い目データ記憶手段)
105 I/Oインターフェース
200 外部記憶装置
H ボタン穴
P 形状変化点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫い針の上下駆動を行う針駆動手段と、
被縫製物を保持する布押さえ手段と、
前記縫い針と前記布押さえ手段とを相対的に移動させる移動手段と、
前記布押さえ手段に保持された被縫製物に対してメスによりボタン穴を形成する布切り手段と、
前記被縫製物における前記ボタン穴の長手方向両端側に形成される一対の閂止め部に関する閂止め縫いデータと、前記一対の閂止め部間を亘るように前記ボタン穴の両側に形成される一対の平行部に関する平行縫いデータとからなる穴かがり縫い目に関する穴かがり縫い目データを複数記憶する縫い目データ記憶手段と、
前記縫い目データ記憶手段に記憶されている穴かがり縫い目データに基づき、前記ボタン穴の周囲に穴かがり縫い目を形成する縫製制御手段と、を備える穴かがりミシンにおいて、
前記縫い目データ記憶手段は、前記穴かがり縫い目データに付加されることで、前記穴かがり縫い目の周縁部の形状を変化させる複数の周縁部縫い目データを記憶し、前記縫製制御手段は、前記周縁部縫い目データが付加された穴かがり縫い目データに基づき、前記穴かがり縫い目部分に変形縫い目部分が付加された変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項2】
前記周縁部縫い目データは前記平行縫いデータに付加され、前記縫製制御手段は、前記平行部の外縁の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする請求項1に記載の穴かがりミシン。
【請求項3】
前記平行部の外縁と前記閂止め部の側端とが一直線状に連なる場合、前記周縁部縫い目データは前記平行縫いデータ及び/又は前記閂止め縫いデータに付加され、前記縫製制御手段は、前記平行部の外縁及び/又は前記閂止め部の側端の形状を変化させた変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする請求項1に記載の穴かがりミシン。
【請求項4】
前記縫製制御手段は、一つの穴かがり縫い目データに対し複数の周縁部縫い目データが付加された、複数の変形縫い目部分を有する変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の穴かがりミシン。
【請求項5】
前記穴かがり縫い目データに付加する前記周縁部縫い目データの数を設定する付加縫い目データ数設定手段を備えるとともに、前記縫製制御手段は、前記付加縫い目データ数設定手段により設定された前記周縁部縫い目データの数に応じて、前記穴かがり縫い目部分に付加される複数の変形縫い目部分が同じサイズになるように変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の穴かがりミシン。
【請求項6】
前記穴かがり縫い目データに付加する前記周縁部縫い目データに基づく変形縫い目の縦横比率を設定する変形縫い目縦横比率設定手段を備えるとともに、前記縫製制御手段は、前記変形縫い目縦横比率設定手段により設定された前記変形縫い目の縦横比率に応じて、前記穴かがり縫い目部分に付加される変形縫い目部分の形状を調整して変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の穴かがりミシン。
【請求項7】
前記穴かがり縫い目部分に付加する変形縫い目に関する前記周縁部縫い目データを、前記ボタン穴に対するいずれか一方側に対して設定する付加縫い目片側設定手段と、前記付加縫い目片側設定手段により設定された一方側の周縁部縫い目データを左右対称に反転させるようにして前記ボタン穴に対する他方側の周縁部縫い目データを設定する付加縫い目対称設定手段と、を備えるとともに、前記縫製制御手段は、前記付加縫い目片側設定手段により設定された一方側の周縁部縫い目データと、前記付加縫い目対称設定手段により設定された他方側の周縁部縫い目データとに基づく変形縫い目部分が付加された変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の穴かがりミシン。
【請求項8】
前記周縁部縫い目データに基づく変形縫い目の形状に、その変形縫い目形状を特徴付ける形状変化点がある場合、前記縫製制御手段は、前記形状変化点に前記縫い針を針落ちさせるように変形穴かがり縫い目を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の穴かがりミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−325624(P2006−325624A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149123(P2005−149123)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】