説明

空冷式熱交換器

【課題】伝熱管とフィンとの間の接触熱抵抗を極限にまで低減させた比較的単純な製造工程で製造することの出来る高性能な空冷式熱交換器を提供する。
【解決手段】伝熱管内部に熱交換媒体を流通せしめる一方、伝熱管外部に設けられたフィン部において伝熱管外部を流通せしめられる空気との間で熱交換するようにした空冷式熱交換器において、かかる伝熱管を、外面フィン14が一体成形により管外周面に一体的に形成されてなる外面フィン付き管10にて構成すると共に、かかる外面フィン付き管10を、その外面フィン14を含む外表面の表面積(A1 )と熱交換媒体の流通せしめられる管内面の平滑な形態としたときの表面積(A0 )との比(A1/A0)が、10以上、25以下となるように、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換媒体と空気との間で熱交換を行なう空冷式熱交換器に係り、特に、家庭用エアコン、自動車用エアコン、パッケージエアコン等の空調用機器や、冷蔵庫、ヒートポンプ式給湯機等に用いられる、空気と冷媒等との間で熱交換を行なう形式の空冷式熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、家庭用エアコン、自動車用エアコン、パッケージエアコン等の空調用機器や冷蔵庫等には、蒸発器又は凝縮器として作動する熱交換器が用いられており、その中で、家庭用室内エアコンや業務用パッケージエアコンにおいては、特許文献1、2等に明らかにされているようなクロスフィンチューブ型の熱交換器が、最も一般的に用いられて来ている。
【0003】
また、近年、熱交換媒体として、従来のフロン系冷媒に代えて、オゾン層保護や地球温暖化防止の観点から、温暖化係数の低い自然冷媒を利用した熱交換器の開発も行なわれて来ており、中でも、炭酸ガスを主体とする冷媒を用いた給湯機が開発されているが、そのような空気熱交換器にも、上記と同様なクロスフィンチューブ型の熱交換器が用いられている。
【0004】
そして、そのようなクロスフィンチューブ型熱交換器を構成するクロスフィンチューブは、通常、空気側のアルミニウムフィンと熱交換媒体(冷媒)側の伝熱管とが一体に組み付けられて、構成されてなる構造を有しており、そこにおいて、伝熱管としては、その内面に、多数の溝、例えば管軸に対して所定のリード角をもって延びるように、螺旋状の溝を多数形成して、それらの溝間に所定高さの内面フィンが形成されるようにした、所謂内面溝付き伝熱管が、多く用いられている一方、アルミニウムフィンとしては、その表面に、特許文献3、4等に明らかにされている如きスリットやルーバー、切起し等の、伝熱促進効果のある形状を、加工により形成してなるものが用いられている。
【0005】
また、かくの如きクロスフィンチューブ型熱交換器は、良く知られた工程によって、以下の如くして製作されることとなる。即ち、先ず、プレス加工等により、所定の組付け孔が複数形成されたアルミニウムプレートフィンが成形され、次いで、この得られたアルミニウムプレートフィンを積層した後に、その組付け孔内に、別途製作した伝熱管が挿通されることとなる。なお、伝熱管としては、転造加工等によって内面に溝付き加工を施す等の加工が施されたものに対して、定尺切断・ヘアピン曲げ加工を施して得られたものが、用いられることとなる。そして、その後、かかる伝熱管を、アルミニウムプレートフィンに拡管固着し、更にヘアピン曲げ加工を施した側とは反対側の伝熱管端部に、Uベンド管をろう付け加工する工程を経て、目的とする熱交換器が製作されるのである。
【0006】
ところで、かかるクロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱性能を向上させるために、これまでに、様々な取組みが為されてきており、特に、伝熱管については、その内面に施した溝の形態に、様々な改良を加えることにより、管内熱伝達率の大幅な向上が実現されているが、そのために、例えば、伝熱管の内面溝間に形成されるフィンを高くした場合において、そのようなフィンをスリムにすればする程、伝熱管とアルミニウムプレートフィンの組付け・拡管工程において、フィン潰れやフィン倒れ等のフィンの変形による管内熱伝達率の低下の問題が大きくなって来ているのである。
【0007】
このため、そのような問題に対して、拡管時のフィン潰れやフィン倒れ等の、フィンの変形を効果的に抑制することの出来る内面溝付き管の提案(特許文献5)も為されてはいるが、そのような技術においては、フィン変形抑制効果は発揮されるものの、フィン変形を皆無にすることは難しく、また、ヘアピン曲げ加工時におけるフィン潰れやフィン倒れの問題も同様であって、更なる内面溝形状の改良による管内熱伝達率の向上は、難しくなって来ているのである。
【0008】
一方、アルミニウムプレートフィンにおける問題も、特に、フィンプレスや拡管工程において生じることが多いことが認められている。中でも、近年、フィンの薄肉化が進み、複雑なスリットやルーバーのパターンの切起し加工を行なうフィンプレス工程では、カラー飛び、カラー割れ、切断部のバリ発生等が惹起され易く、そして、それらの発生によって、空気側の熱伝達率の低下が引き起こされる問題があり、また拡管工程においては、僅かな拡管条件のバラツキにより、フィンから根元部の角度が変化してしまうことが多く、そのために、アルミニウムプレートフィンと伝熱管との接触熱抵抗が増大すること等により、熱伝達性能の低下が惹起される問題も内在している。
【0009】
加えて、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器においては、アルミニウムプレートフィンと伝熱管との二つのパーツが用いられており、それら二つのパーツの組付けによる接触熱抵抗が本質的に存在するという、潜在的な問題を内在している。
【0010】
このように、伝熱管の管内熱伝達率の向上が図られて来ている現在、クロスフィンチューブ型熱交換器において、熱交換器トータルの熱交換性能を向上させるには、アルミニウムプレートフィンと伝熱管の接触熱抵抗を更に低減することが重要となって来ているのであり、そこで、そのような接触熱抵抗を極限にまで低減した空冷式熱交換器が、望まれているのである。
【0011】
【特許文献1】特開2000−39283号公報
【特許文献2】特開平11−190597号公報
【特許文献3】特開平2−203199号公報
【特許文献4】特開平11−108575号公報
【特許文献5】特開2002−90086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここにおいて、本発明は、かくの如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、伝熱管とフィンとの間の接触熱抵抗を極限にまで低減させた、比較的単純な製造工程で製造することの出来る、高性能な空冷式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そして、本発明は、上記した課題又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいても採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0014】
(1) 伝熱管内部に熱交換媒体を流通せしめる一方、伝熱管外部に設けられたフィン部において伝熱管外部を流通せしめられる空気との間で熱交換するようにした空冷式熱交換器において、該伝熱管を、前記フィン部が一体成形により管外周面に一体的に形成されてなる外面フィン付き管にて構成すると共に、該外面フィン付き管を、そのフィン部を含む外表面の表面積(A1 )と熱交換媒体の流通せしめられる管内面の平滑な形態としたときの表面積(A0 )との比(A1/A0)が10以上、25以下となるように、構成したことを特徴とする空冷式熱交換器。
【0015】
(2) 前記伝熱管の内部に、伝熱促進手段が設けられていることを特徴とする上記態様(1)に記載の空冷式熱交換器。
【0016】
(3) 前記伝熱促進手段が、前記伝熱管の内面に形成された多数の溝であることを特徴とする上記態様(2)に記載の空冷式熱交換器。
【0017】
(4) 前記伝熱促進手段が、前記伝熱管内に挿入、配置された伝熱促進挿入体であることを特徴とする上記態様(2)に記載の空冷式熱交換器。
【0018】
(5) 前記伝熱管が、所定の間隔を隔てて配列された互いに平行な複数のストレート管部と、該複数のストレート管部の隣り合う端部同士を交互に連結する、U字状に湾曲せしめられた、外表面が平滑なヘアピン形状管部とから、蛇行形状に、且つ一体形状に形成され、そして該複数のストレート管部の外周面にのみ、前記外面フィンが一体的に形成されていることを特徴とする上記態様(1)乃至(4)の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【0019】
(6) 所定の間隔を隔てて配列された互いに並行な複数のストレート管部と、該複数のストレート管部の隣り合う端部同士を交互に連結して、それら複数のストレート管部を直列に接続するヘッダー管部とを有し、且つそれらストレート管部とヘッダー管部とが、それぞれ、前記外面フィン付き管にて構成されていることを特徴とする上記態様(1)乃至(5)の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【0020】
(7) 前記伝熱管が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる材質にて構成されていることを特徴とする上記態様(1)乃至(6)の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【0021】
(8) 前記伝熱管が、銅又は銅合金からなる材質にて構成されていることを特徴とする上記態様(1)乃至(6)の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【0022】
(9) 前記外面フィン付き管の外面フィンが、転造によって螺旋状に形成されている上記態様(1)乃至(8)の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【0023】
(10) 矩形角筒形状の対向する一方の開口端に空気入口部が、そして他方の開口端に空気出口部が、それぞれ形成されて、内部に熱交換されるべき空気が流通せしめられるようにした箱体状のシェルを備え、該シェルの内部空間内に、前記伝熱管が収容されていることを特徴とする上記態様(1)乃至(9)の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【発明の効果】
【0024】
このような本発明に従う空冷式熱交換器の構成によれば、外周面にフィンが一体成形されてなる外面フィン付き管を、伝熱管として用いて、熱交換器の主要構成要素としているところから、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器において問題となっていた、伝熱管とその外周面に設けられるフィンとの間の接触熱抵抗がゼロとなるのであり、これによって、熱交換性能を大幅に向上させることが出来ることに加えて、熱交換媒体が流通せしめられる外面フィン付き管における管内面の表面積に対して、フィンを含む管外表面の表面積が、10倍以上となるように構成されて、空気側の伝熱面積が充分に大きくなる構成とされているために、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器と同様に、空気側の熱交換性能を高く保つことが出来るという特徴を有している。
【0025】
しかも、そのような空冷式熱交換器においては、用いられる外面フィン付き管が一体成形されるものであるところから、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器の製作工程においては必然的に採用されることとなる、伝熱管とプレートフィンを一体化する拡管工程が全く不要となるのであり、また、そのような拡管工程の省略によって、製造工程が簡略化され得、以てコストダウンに寄与するのみならず、特に、内面に溝が形成された内面溝付き管を使用した場合において、拡管工程で惹起される内面フィンのフィン潰れやフィン倒れ等の、フィンの変形による管内熱伝達率の低下の問題が、悉く解消され得ることとなるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0027】
先ず、図1には、本発明に従う空冷式熱交換器に用いられる、伝熱管としての外面フィン付き管10が、斜視図の形態において、部分的に示されており、また図2には、そのような外面フィン付き管10が、管軸方向と平行な断面となる縦断面形態において、部分的に示されている。それらの図において、外面フィン付き管10は、管内面が平滑なチューブ部12の外周面に、螺旋状の外面フィン14が、一体的に形成されてなる一体成形品によって、構成されている。そして、かかるチューブ部12内には、熱交換媒体が流通せしめられる一方、管外面の外面フィン14間には空気が流通せしめられて、熱交換媒体の熱が外面フィン14を介してこれと接触する空気側へ放出されるようになっている。
【0028】
また、かかる外面フィン付き管10は、伝熱管として公知の材質、中でもアルミニウム、銅、及びそれらの合金等の、熱伝導性が良好で且つ加工性が良好な金属材料を用いて、形成されていることが望ましく、そして、そのような金属材質の素管に対して、公知の各種の加工手法に従って、望ましくは転造加工手法を用いて、その外周面に、外面フィン14が容易に一体的に形成されることとなる。
【0029】
そして、そのような外面フィン14が一体的に形成されてなる外面フィン付き管10は、単に、1種類の、またリサイクル性に優れた金属材料で構成されることとなるところから、そのライフサイクルコストを効果的に低減させることが可能となるのであり、環境負荷という観点からも、従来の銅管とアルミニウムプレートフィンにて構成される2つのパーツの組付け構造の熱交換器よりも、優れたものとなるのである。しかも、従来のようなクロスフィンチューブ型熱交換器にあっては、それを製作する場合に、その拡管工程において内面に設けた溝やフィンを潰してしまう問題があり、更にその問題は、伝熱管の材質として、アルミニウムや銅、或いはそれらの合金等の、加工性の良好な金属材料を用いた場合においては、より顕著となるものであったが、上述の如く、一体成形の外面フィン付き管10とすることで、そのような問題は全く生じることがなくなったのである。
【0030】
また、かかる外面フィン付き管10にあっては、その外面フィン14を含む外表面の表面積(A1 )と、所定の熱交換媒体の流通せしめられるチューブ部12における管内面の平滑な形態としたときの表面積(A0 )との比(A1/A0)が、10以上、25以下となるように構成されている。ここで、そのような比(A1/A0)が、10以上とされていることにより、外面フィン付き管10の外部を流通せしめられる空気側の伝熱面積が充分に大きくされているところから、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器と同様に、空気側の熱交換性能を高く保つことが出来る。なお、その比(A1/A0)が、10未満となると、外面フィン付き管10のチューブ部12内を流通せしめられる熱交換媒体から、外部の空気への熱交換を効果的に行なうことが困難となり、熱交換能力を充分に発揮し得なくなるのであり、またその比(A1/A0)が25を超えるようになると、目的とする外面フィン付き管10を一体成形することが難しくなるため、比較的容易に且つ低コストで製作する上において、本発明では、かかる比(A1/A0)は、25以下とされることとなる。
【0031】
特に、かくの如き外面フィン付き管10において、その外面フィン14のフィン高さを高くしたり、フィンピッチを小さくしたりする等によって、上記した比(A1/A0)の値が25を超えるようになると、また、その製造上において困難となるのみならず、フィン高さが高過ぎる場合には、フィン先端にまで熱伝導が充分でなくなり、フィン表面積の増大の割に放熱性能が良くない、換言すれば、フィン効率が悪くなる問題があり、更にフィンピッチが小さ過ぎる場合には、着霜による閉塞等が惹起され易くなる問題も内在しているのである。
【0032】
なお、かかる外面フィン付き管10において、そのチューブ部12の外表面に一体的に形成される外面フィン14を含む管外径:Do、管内径:Di、外面フィン14の高さ:h、外面フィン14と外面フィン14との間の間隔(ピッチ):p、外面フィン14の平均肉厚:tf、外面フィン14の無い部分におけるチューブ部12の肉厚(底肉厚):tは、上記した比(A1/A0)の条件を満たし、本発明の目的が有利に達成され得るように、適宜に選定されることとなるが、特に、好ましくは、Do=6〜30mm、Di=1〜10mm、h=1〜10mm、p=1.0〜3.0mm、tf=0.1〜1.0mm、t=0.1〜1.0mm程度の範囲内において選定されることが、望ましい。
【0033】
ここで、外面フィン14を含む管外表面の表面積(A1 )とは、管外面の平滑部(A)と外面フィン14の先端部(B)と外面フィン14の側面部(C)の、全ての表面積の和であり、伝熱管としての外面フィン付き管10の単位長さ当たりの表面積にて表されるものである。また、熱交換媒体の流通せしめられる管内面の平滑な形態としたときの表面積(A0 )とは、外面フィン付き管10のチューブ部12の管内面が、図2に示される如く、平滑な内面とされている場合には、その管内面の表面積そのものであり、更に後述するように、チューブ部12の管内に所定の伝熱促進手段(図3、図4参照)が設けられている場合には、そのような伝熱促進手段の表面積は考慮せず、かかる伝熱促進手段を除いた形態における管内径:Diと同じ内径を有する内面平滑管の内表面積にて、表されるものである。
【0034】
ところで、本発明に従う空冷式熱交換器に用いられる外面フィン付き管10において、その管内を流通せしめられる熱交換媒体側の伝熱促進を目的として、管内部に伝熱促進手段を設けるようにした構成が、また、有利に採用されることとなる。そして、そのような伝熱促進手段としては、例えば、図3に示される如く、外面フィン付き管10自身に、従来の内面溝付き管と同様な螺旋状の溝16を形成して、その溝16間に位置する部位を所定高さの内面フィン18として形成する構造の他、図4に示される如く、捩りテープ20等の公知の伝熱促進挿入物を、チューブ部12の管内に挿入配置せしめる構造等、従来から公知の各種の構造が、適宜に採用されることとなる。
【0035】
また、本発明に従う空冷式熱交換器においては、所定の間隔を隔てて配列された、互いに平行な複数のストレート管部と、このストレート管部の隣り合う端部同士を交互に連結する、U字状に湾曲せしめられた、外表面が平滑なヘアピン形状管部とから、蛇行形状に且つ一体形状に形成され、そして、該複数のストレート管部の外周面にのみ、前記外面フィンが一体的に形成されている構造の伝熱管も、有利に用いられるところであり、その一例が、図5に示されている。そこにおいて、8本のストレート管部22が、同一平面上に互いに平行に配列されていると共に、それらが直列に接続されるように、それらの両端部において、隣り合うストレート管部22同士が交互にU字状のヘアピン形状管部24にて連結されてなる一方、各ストレート管部22の外周面には、所定高さの外面フィン26が、螺旋状に一体成形されて、目的とする伝熱管が構成されているのである。なお、そこにおいて、ストレート管部22と外面フィン26の一体的な構成部位は、図1に示される外面フィン付き管10に相当する構成とされているのである。
【0036】
このような構造の伝熱管においては、ストレート管部22とヘアピン形状部24とが一体的に形成されているところから、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器の如きろう付け接合部が存在せず、それによって、伝熱管の外周面の面積増加による伝熱性能の向上効果が阻害される問題も、効果的に解消され、また、熱交換効率も低下してしまう等の問題も、有利に回避し得ることとなったのである。更に、それぞれのストレート管部22における外面フィン26は、相互に独立フィンとして構成されるものであるところから、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器の如く、1枚のフィンに多数の伝熱管が挿通されてなる構造における問題も、有利に回避され得ることとなるのである。即ち、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器においては、1枚のフィンに多数の伝熱管が挿通されているために、伝熱管の上流側と下流側で熱交換媒体の温度が異なることによって、高温側から低温側へフィンを介して熱が伝わり、熱交換媒体から空気側へ熱が伝わり難くなるという問題が内在しているのであるが、図5に示される構造においては、そのような問題は、何等惹起されることがないのである。
【0037】
なお、かかる図5に示される伝熱管の如く、外面フィン(26)が形成された箇所(22)と形成されていない箇所(24)とが交互に設けられてなる伝熱管を形成するに際しては、例えば、直管状の外周面が平滑とされた管体(素材)に対して、必要な箇所のみ所定の転造加工を施し、部分的に外面フィン(26)を形成した後、そのような外面フィン(26)の設けられていない部位をヘアピン形状に曲げ加工する方法の他、管体(素材)の全長に亘って転造加工にて外面フィンを形成した伝熱管を作製し、その後、蛇行形状に曲げ加工する際に、ヘアピン形状管部24となる部分の外面フィンを切削加工によって削り落として、外周面を平滑とすることにより、外面フィンが形成された部位と形成されていない部位とが交互に存在する伝熱管を形成する方法等、公知の各種の方法が採用可能である。
【0038】
また、本発明に従う空冷式熱交換器においては、図6に示される如く、複数本の外面フィン付き管10を一平面上に相互に平行に配列すると共に、その両側の管端を交互にヘッダー管30にて連結せしめ、それら複数本の外面フィン付き管10が直列に接続されてなる構造の伝熱管構造を採用することも、可能である。なお、ヘッダー管30は、外面フィン付き管10と同様に、その外表面に、外面フィン32が一体成形によって一体的に形成されている。
【0039】
このように、伝熱管(外面フィン付き管10)を可及的に密に配置せしめることにより、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器の場合と比較して、空気側の伝熱に寄与するフィンの面積を著しく減少させることのない熱交換器とすることが可能となるのであり、加えて、フィンと伝熱管との間の接触熱抵抗減少部の寄与により、トータルとしての熱交換性能の向上を図ることが出来るのである。特に、ここでは、ヘッダー管30にも、外面フィン32を一体に設けて、外面フィン付き管構造としていることによって、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器では熱交換器に寄与していなかったリターン部での熱交換も、有効に活用することが出来ることとなり、これによって、更に熱交換性能を向上させることが出来るようになっている。
【0040】
なお、図6に示される空冷式熱交換器においては、伝熱管を1段に配置した構造が採用されているが、そのような伝熱管を複数段において配置せしめてなる構造も、採用可能であり、例えば、熱交換器の厚さ方向に2段配置の構成を採用する場合にあっては、図7に示される如く、上段の伝熱管34と下段の伝熱管36とが、熱交換器の幅方向における伝熱管中心位置を1/2ピッチずらすようにして、配置されることが望ましく、それによって、上段と下段の伝熱管34,36の配置間隔がより密となるように、構成することが可能である。
【0041】
さらに、本発明にあっては、上記した伝熱管を、所定の箱体形状のシェルの内部空間内に収容せしめて、目的とする空冷式熱交換器を構成することも、可能である。そこにおいて、箱体形状のシェルは、一般に、矩形角筒形状の対向する一方の開口端に、空気入口部が形成され、また他方の開口端には、空気出口部が形成されて、内部に熱交換されるべき空気が流通せしめられるようにしたものである。
【0042】
そのような構成の空冷式熱交換器の一例を示す図8において、矩形箱体形状を呈するシェル40の内部空間内に、図5に示される如き一体成形された外面フィン付き管構造の伝熱管が収容配置せしめられてなる構造において、そのような箱体形状のシェル40内へ、その一方の開口端部から空気を強制的に送り込むようにすることによって、伝熱管42の外面に設けられた外面フィン26を介して、伝熱管42内部を流通する熱交換媒体とシェル40内を流通する空気との間で効率良く熱交換せしめられ、そして、シェル40の他方の開口端に設けた空気出口部から、熱交換された空気が取り出されるようにされるのである。
【0043】
なお、このように、箱体形状のシェル40を設けた空冷式熱交換器においては、必要に応じて、シェル40内に冷却水を流通させるようにすることにより、より熱交換効率の良好な水冷式熱交換器として運転することも可能であるところから、必要なときに、その運転を切り換えることが出来るように構成することも、可能である。そして、そのような水冷式熱交換器としても運転が可能な構造とする場合にあっては、シェル40内部に水を流通することになり、この水と接触する部分であるシェル内面や外面フィン付き管外面は、水に対する耐食性の良好な銅又は銅合金にて構成することが望ましく、更に必要に応じて、それらの水との接触面の銅又は銅合金材の表面には、錫めっきを施し、更に耐食性の向上を図るようにすることが、望ましいのである。
【0044】
また、かかる箱体形状のシェル40の内部空間内への伝熱管(外面フィン付き管)の配置の形態については、その外面フィン26が伝熱管本体であるストレート管部22から延びる方向、即ち、ストレート管部22の管長方向と垂直な方向が、シェル40内部を流通せしめられる流体の流れの方向と略一致するように構成することが望ましく、そのような配置によって、流体の流れに対する抵抗を低く、その圧損を低下せしめることが可能となるのである。
【0045】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述して来たが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等、限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において、実施されるものであり、またそのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の代表的な実施例の一つを示し、本発明の特徴を更に明確にすることとするが、本発明が、また、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことが、理解されるべきである。
【0047】
先ず、本発明に従う空冷式熱交換器を構成する冷媒(熱交換媒体)側流路として用いる伝熱管として、図2に示される寸法が、Do=21mm、Di=6mm、h=7mm、p=1.6mm、t=0.5mm、tf=0.5mm、外面フィン14の無いチューブ部12の管外径=7mm、A1 =0.428mm2/m、A0 =0.019mm2/m、A1 /A0 =22.5となる図5に示される如き形態の伝熱管を、公知の転造加工によって製作した。なお、その材質としては、りん脱酸銅(JIS−H−3300−C1220)を用いた。
【0048】
かかる製作された伝熱管(熱交換器)において、外面フィン先端の間隔(A)が1mmとなるようにして、フィン形成部(ストレート管部)を互いに平行となるように、1段8列配置とする一方、フィン形成部(ストレート管部)には、フィンが71条、その幅(図5(a)において、フィンが形成された左右方向の幅)を112mmとし、長さ(図5(a)において、上下方向の長さ)が175mmとなるように構成した。
【0049】
一方、比較例として、従来のクロスフィンチューブ型熱交換器を製作した。伝熱管材質としては、りん脱酸銅が用いられ、伝熱管の外径=7mm、内径=6mm、肉厚=0.5mmのベアー管を用いる一方、フィンは純アルミニウム製として、その板圧=1.6mmとして、フィンの枚数は、上記と同じく71枚とした。
【0050】
そして、このように準備された二つの熱交換器(伝熱管)を用いて、数値流体シミュレーションによる伝熱性能の評価を行なったところ、本発明に従う熱交換器にあっては、比較例のものに対して、フィンの伝熱面積が減少しているにも拘わらず、接触熱抵抗の低減等によって、伝熱量が25%増大することが、確認された。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に従う空冷式熱交換器に用いられる外面フィン付き管の一例を示す斜視説明図である。
【図2】図1に示される外面フィン付き管の縦断面の一部を示す説明図である。
【図3】本発明に従う空冷式熱交換器に用いられる外面フィン付き管の他の一例を示す、図2に対応する断面説明図である。
【図4】本発明に従う空冷式熱交換器に用いられる外面フィン付き管の別の一例を示す、図2に対応する断面説明図である。
【図5】本発明に従う空冷式熱交換器に用いられる伝熱管の異なる一例を示すものであって、(a)は、その平面説明図であり、(b)は、その右側面説明図である。
【図6】本発明に従う空冷式熱交換器に用いられる伝熱管の配設形態の別の一例を示す説明図であって、(a)は、その正面説明図、(b)は、その平面説明図、(c)は、(b)におけるC−C断面説明図である。
【図7】図6に示される伝熱管の配設構造を上下2段に構成してなるものの、図6(c)に相当する断面説明図である。
【図8】本発明に従う空冷式熱交換器の他の異なる一例において、そのシェルの一部を切り欠いた状態で示す説明図であって、(a)は、平面図の形態において、(b)は、背面図の形態において、それぞれ、示されている。
【符号の説明】
【0052】
10 外面フィン付き管 12 チューブ部
14,26,32 外面フィン 16 溝
18 内面フィン 20 捩りテープ
22 ストレート管部 24 ヘアピン形状管部
30 ヘッダー管 34,36 伝熱管
40 シェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管内部に熱交換媒体を流通せしめる一方、伝熱管外部に設けられたフィン部において伝熱管外部を流通せしめられる空気との間で熱交換するようにした空冷式熱交換器において、
該伝熱管を、前記フィン部が一体成形により管外周面に一体的に形成されてなる外面フィン付き管にて構成すると共に、該外面フィン付き管を、そのフィン部を含む外表面の表面積(A1 )と熱交換媒体の流通せしめられる管内面の平滑な形態としたときの表面積(A0 )との比(A1/A0)が10以上、25以下となるように、構成したことを特徴とする空冷式熱交換器。
【請求項2】
前記伝熱管の内部に、伝熱促進手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の空冷式熱交換器。
【請求項3】
前記伝熱促進手段が、前記伝熱管の内面に形成された多数の溝であることを特徴とする請求項2に記載の空冷式熱交換器。
【請求項4】
前記伝熱促進手段が、前記伝熱管内に挿入、配置された伝熱促進挿入体であることを特徴とする請求項2に記載の空冷式熱交換器。
【請求項5】
前記伝熱管が、所定の間隔を隔てて配列された互いに平行な複数のストレート管部と、該複数のストレート管部の隣り合う端部同士を交互に連結する、U字状に湾曲せしめられた、外表面が平滑なヘアピン形状管部とから、蛇行形状に、且つ一体形状に形成され、そして該複数のストレート管部の外周面にのみ、前記外面フィンが一体的に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【請求項6】
所定の間隔を隔てて配列された互いに並行な複数のストレート管部と、該複数のストレート管部の隣り合う端部同士を交互に連結して、それら複数のストレート管部を直列に接続するヘッダー管部とを有し、且つそれらストレート管部とヘッダー管部とが、それぞれ、前記外面フィン付き管にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【請求項7】
前記伝熱管が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる材質にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【請求項8】
前記伝熱管が、銅又は銅合金からなる材質にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【請求項9】
前記外面フィン付き管の外面フィンが、転造によって螺旋状に形成されている請求項1乃至請求項8の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。
【請求項10】
矩形角筒形状の対向する一方の開口端に空気入口部が、そして他方の開口端に空気出口部が、それぞれ形成されて、内部に熱交換されるべき空気が流通せしめられるようにした箱体状のシェルを備え、該シェルの内部空間内に、前記伝熱管が収容されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか一つに記載の空冷式熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−121738(P2009−121738A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295650(P2007−295650)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】