説明

窒化物半導体テンプレート及び発光ダイオード

【課題】低抵抗(表面比抵抗が20Ω/□以下)であり、結晶性が良好(XRD半値幅が50秒以上100秒以下)な窒化物半導体テンプレート、及びそれを用いた発光ダイオードを提供する。
【解決手段】窒化物半導体テンプレート10は、基板11と、基板11上にO(酸素)が添加されたO添加層としてOドープGaN層13を形成し、OドープGaN層13上にSiが添加されたSi添加層としてのSiドープGaN層14を形成してなるIII族窒化物半導体層22とを備え、III族窒化物半導体層の全体の膜厚が4μm以上10μm以下であり、SiドープGaN層14におけるSiの平均キャリア濃度が1×1018cm-3以上5×1018cm-3以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体テンプレート及び発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)などの窒化物ガリウム化合物半導体は、赤色から紫外の発光が可能な発光素子用材料として注目を集めている。これらの窒化物系化合物半導体の結晶成長法の一つに、金属塩化物ガスとアンモニアを原料とするハイドライド気相成長法(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)がある。
【0003】
HVPE法の特徴としては、他の成長法(有機金属気相成長法(MOVPE:Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)や分子線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy法)で典型的な数μm/hrの成長速度と比較して格段に大きな10μm/hr以上から100μm/hr以上の成長速度が得られる点が挙げられる。このため、GaN自立基板(特許文献1参照)やAlN自立基板の製造に良く用いられる。ここで、「自立基板」とは、自らの形状を保持でき、ハンドリングに不都合が生じない程度の強度を有する基板をいう。
【0004】
また、窒化物半導体からなる発光ダイオード(LED)は、通常サファイア上に形成されるが、その結晶成長に際しては、基板の表面にバッファ層を形成した後、その上にn型層を含む10〜15μm程度の厚いGaN層を成長し、その上にInGaN/GaN多重量子井戸の発光層(合計で数100nm厚)、p層(200〜500nm厚)の順に成長が行われる。発光層の下側のGaN層が厚いのは、サファイア基板上のGaNの結晶性を改善するなどのためである。その後、電極形成などを行い最終的には後述する図3のような素子構造が形成される。MOVPE法での成長の場合、結晶成長工程は典型的には6時間程度の時間を要するが、このうちの半分程度は、テンプレート部分と呼ばれる発光層の下側のGaN層を成長するために必要な時間である。
【0005】
以上のことから、テンプレート部分の成長に成長速度の格段に速いHVPE法を適用できれば、大幅な成長時間の短縮が可能となり、LEDウエハの製造コストを劇的に低減することが可能となる。
【0006】
一方発光ダイオード(半導体発光素子)の内部への光閉じ込めを低減させて光取り出し効率を改善する方法として、例えば特許文献2が挙げられる。
【0007】
特許文献2では、第1層に凹凸加工を施して光取り出し効率をアップして高輝度化している。また特許文献2では、基板に凹凸加工を施して、前記と同じ効果を出している。この特許文献2が、いわゆるPSS基板(Patterned Sapphire Substrate)を用いて光取り出し効率をアップして高輝度化している。
【0008】
また、上記テンプレート部分は横方向に電流が流れる部分であるため、低抵抗である必要がある。何故ならば、低抵抗でなければLEDの駆動電圧(順方向電圧)が高くなってしまうからである。つまりテンプレート部分は、結晶性を良くして活性層での欠陥を少なくして内部量子効率を高める役割と、順方向電圧を低くする役割をもつ重要な部分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3886341号公報
【特許文献2】特開2002−280611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般的な低抵抗化としては、添加する不純物の量を多くしてキャリア濃度を高くする方法がある。しかし、添加する不純物の量を多くし過ぎると、結晶性が悪化してしまい、また移動度が悪化して、逆に抵抗が高くなる。このため、添加する不純物量を多くし過ぎることなく、低抵抗化するのが望ましい。すなわち、キャリア濃度を高くせずに、低抵抗化できるのが望ましい。特に製造コストを低くできるHVPE法で、低キャリア濃度で低抵抗化するのは難しいのが現状である。
【0011】
本明細書や請求項において、「窒化物半導体テンプレート」あるいは単に「テンプレート」とは、基板と発光層の下側を構成するGaN層やバッファ層などの窒化物半導体層を含んだものを意味する。さらに、テンプレート部分とは、「窒化物半導体テンプレート」中の窒化物半導体層を意味する。
【0012】
本発明の目的は、低抵抗(表面比抵抗が20Ω/□以下)であり、結晶性が良好(X線回折(XRD)測定による(0004)面の半値幅(FWHM)が50秒以上100秒以下)な窒化物半導体テンプレート、及びそれを用いた発光ダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上述の課題を達成すべく鋭意検討を行った結果、窒化物ガリウム半導体を初期成長において島状に成長させることで転位密度を低減できることを見出した。また、島状に成長させている間は、様々な方位の面が現れ、その面が傾斜面であるときは、O(酸素)の添加効率が良いことも見出した。このような知見に基づき欠陥形成の一つの原因となる添加物の量を少なくできた。n型添加物であるO(酸素)を結晶性を悪化させずに良好な状態で添加できたことにより、ある程度の低抵抗化ができた。このため、更に積極的に添加するn型添加層の添加物量も減らすことができ、それらによっても転位密度を低減できた。すなわち、HVPE法を用いて、低抵抗であり、かつ欠陥の少ない窒化物半導体テンプレートを提供することに成功した。
【0014】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の窒化物半導体テンプレート及び発光ダイオードを提供する。
【0015】
[1]基板と、前記基板上にO(酸素)が添加されたO添加層を形成し、前記O添加層上にSiが添加されたSi添加層を形成してなるIII族窒化物半導体層とを備え、前記III族窒化物半導体層の全体の膜厚が4μm以上10μm以下であり、前記III族窒化物半導体層の前記Si添加層におけるSiの平均キャリア濃度が1×1018cm-3以上5×1018cm-3以下である窒化物半導体テンプレート。
【0016】
[2]前記III族窒化物半導体層の前記O添加層におけるOの不純物濃度は、1×1016cm-3以上3×1019cm-3以下であり、前記O添加層の平均キャリア濃度は、0.8×1018cm-3以上1×1018cm-3以下である前記[1]に記載の窒化物半導体テンプレート。
【0017】
[3]表面比抵抗が10Ω/□以上20Ω/□以下である前記[1]又は[2]に記載の窒化物半導体テンプレート。
【0018】
[4]前記III族窒化物半導体層は、X線回折(XRD)の(0004)面の半値幅(FWHM)が50秒以上100秒以下である前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の窒化物半導体テンプレート。
【0019】
[5]前記III族窒化物半導体層は、GaNを主成分とした層である前記[1]乃至[4]のいずれかに記載の窒化物半導体テンプレート。
【0020】
[6]前記GaNを主成分とした層と前記基板との間にバッファ層としてAlNが設けられている前記[5]に記載の窒化物半導体テンプレート。
【0021】
[7]前記AlNバッファ層の厚さは、10nm以上100nm以下である前記[6]に記載の窒化物半導体テンプレート。
【0022】
[8]前記基板は、表面に複数の凸部が形成された前記[1]乃至[7]のいずれかに記載の窒化物半導体テンプレート。
【0023】
[9]前記III族窒化物半導体層は、ハイドライド気相成長法(HVPE)によって成長された前記[1]乃[8]のいずれかに記載の窒化物半導体テンプレート。
【0024】
[10]サファイア基板と、前記サファイア基板上に形成されたAlNバッファ層と、前記AlNバッファ層上に形成されたn型のIII族窒化物半導体層と、前記n型のIII族窒化物半導体層上に形成されたMQW活性層を含む発光領域と、 前記発光領域上に形成されたp型窒化物半導体層と、前記p型窒化物半導体層側からn型のIII族窒化物半導体層までエッチングが施されて形成された前記n型のIII族窒化物半導体層の露出部と、前記n型のIII族窒化物半導体層の前記露出部上に形成されたn型電極と、前記p型窒化物半導体層側に形成されたp型電極とを備え、前記n型のIII族窒化物半導体層は、前記AlNバッファ層上にO(酸素)が添加されたO添加層と、前記O添加層上にSiが添加されたSi添加層を形成してなり、前記III族窒化物半導体層全体の膜厚が4μm以上10μm以下であり、前記Si添加層におけるSiの平均キャリア濃度が1×1018cm-3以上5×1018cm-3以下の積層構造を有する発光ダイオード。
【0025】
なお、本発明の一態様は、上記の窒化物半導体テンプレートにおいて、以下の構成を有するものでもよい。前記基板の前記複数の凸部の形状は、ピラミッド状、円錐状又は半球状でもよい。前記基板の前記凸部は図1の(b)に示すように、ピッチ(p)が0.5〜6.0μmであり、高さ(h)が0.5〜3.0μmが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、低抵抗(表面比抵抗が20Ω/□以下)であり、結晶性が良好(X線回折(XRD)測定による(0004)面の半値幅(FWHM)が50秒以上100秒以下)な窒化物半導体テンプレート、及びそれを用いた発光ダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体テンプレートの断面図、図1(b)は、基板の表面の状態を示す要部断面図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施の形態に係る発光ダイオード(半導体発光素子)子用エピタキシャルウエハの断面図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施の形態に係る発光ダイオード(半導体発光素子)の断面図である。
【図4】図4は、実施例に係るHVPE装置の概略の構成例を示す図である。
【図5】図5は、第1層(Oドープ)及び第2層(Siドープ)のGaN層におけるSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)分析によるO(酸素)濃度のプロファイルを示す図である。
【図6】図6は、第1層(Oドープ)及び第2層(Siドープ)のGaN層におけるSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)分析によるSi(珪素)濃度のプロファイルを示す図である。
【図7】図7は、AlNバッファ層の膜厚とXRD半値幅との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例1のテンプレートのClのSIMS分析結果を示すグラフである。
【図9】図9は、比較例1に係る窒化物半導体テンプレートを示す断面図である。
【図10】図10は、比較例2に係る窒化物半導体テンプレートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施の形態の要約]
本実施の形態の窒化物半導体テンプレートは、基板と、前記基板上にO(酸素)が添加されたO添加層を形成し、前記O添加層上にSiが添加されたSi添加層を形成してなるIII族窒化物半導体層とを備えた窒化物半導体テンプレートにおいて、前記III族窒化物半導体層の全体の膜厚が4μm以上10μm以下であり、前記III族窒化物半導体層の前記Si添加層におけるSiの平均キャリア濃度が1×1018cm-3以上5×1018cm-3以下である。
【0029】
窒化物半導体テンプレートは、異種基板上に、異種基板とは異なる材料であって、互いに同種の材料からなる複数の窒化物半導体層を形成したものである。III族窒化物半導体層の全体の膜厚を4μm以上10μm以下とすることで、キャリア濃度が低くても十分に低抵抗化が可能となる。Si添加層の平均キャリア濃度を1×1018cm-3以上5×1018cm-3以下と低濃度にすることで、結晶性の低下を抑制できる。
【0030】
[第1の実施の形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体テンプレートの断面図、図1(b)は、基板の表面の状態を示す要部断面図である。
【0031】
この窒化物半導体テンプレート10は、表面がパターニングされたサファイア基板、すなわちPSS基板(Patterned Sapphire Substrate)11上に予め窒化アルミニウム(AlN)バッファ層12が形成されたバッファ層付きPSS基板21を有し、このバッファ層付きPPS基板21上に第1層として酸素(O)をドープしたO添加層としてのOドープGaN層13を形成し、OドープGaN層13上に第2層として珪素(Si)をドープしたSi添加層としてのSiドープGaN層14を形成したものである。OドープGaN層13及びSiドープGaN層14は、III族窒化物半導体層22(GaNテンプレート部分)の一例である。
【0032】
PSS基板11は、島状成長に基づく転位密度の低減等の観点より、図1(b)に示すように、表面に複数の凸部11aを有する。凸部11aのピッチpは、0.5〜6.0μmが好ましく、1.0〜5.0μmがより好ましい。凸部11aの高さhは、0.5〜3.0μmが好ましく、1.0〜2.5μmがより好ましい。凸部11aの形状は、凸状であれば良く、例えばピラミッド状、円錐状、半球状でもよい。凸部11aの数値範囲の意義については、後述する。
【0033】
AlNバッファ層12の膜厚は、結晶欠陥の抑制等の観点より、10〜100nmが好ましい。この膜厚の数値範囲の意義については、後述する。
【0034】
第1層及び第2層のGaN層(OドープGaN層13、SiドープGaN層14)の総膜厚は、結晶性、低抵抗化等の観点より、4μm以上10μm以下が好ましく、5μm以上9μm以下がより好ましい。また、窒化物半導体テンプレート10全体(エピ層全体)の表面比抵抗は、動作電圧の低電圧化等の観点より、10Ω/□以上20Ω/□以下が好ましい。
【0035】
OドープGaN層13中のO(酸素)不純物濃度は、結晶性、低抵抗化等の観点より、1×1016〜3×1019cm-3が好ましく、0.9×1018〜3×1019cm-3がより好ましい。特には、OドープGaN層13に含まれるO(酸素)の最大不純物濃度が0.9×1018〜3×1019cm-3であると良い。OドープGaN層13の平均キャリア濃度は、0.8×1018〜1×1018cm-3が好ましい。
【0036】
SiドープGaN層14の平均キャリア濃度は、結晶性、低抵抗化等の観点より、1×1018〜5×1018cm-3が好ましく、1×1018〜4×1018cm-3がより好ましい。
【0037】
(基板の凸部の数値範囲の意義)
PSS基板11の表面の凸部11aのピッチpが狭過ぎると、結晶性の指標となる、X線回折(XRD)測定による(0004)面の半値幅(FWHM)(以下「XRD半値幅」という。)が狭くなりにくい。これは初期の島状成長が少なくなり、平坦化が早いためである。また、凸部11aのピッチpが広過ぎると、ピットが発生し易くなる。
【0038】
凸部11aの高さhは、低過ぎると、XRD半値幅が狭くなりにくい。これは凸部11aの高さhが高い方が、島状成長時と同様の効果が生じるためである。逆に凸部11aの高さhが高過ぎると、今度は平坦化しにくくなってしまうため、ピットが発生し易くなる。このため、ピットを無くそうとして膜厚を、厚く成長しなければならなくなる。膜厚を厚くすると、ウエハの反りが大きくなるという問題が生じる。
【0039】
よって、凸部11aのピッチpは、0.5〜6.0μmが好ましく、1.0〜5.0μmがより好ましい。また、凸部11aの高さhは、0.5〜3.0μmが好ましく、1.0〜2.5μmがより好ましい。
【0040】
(AlNバッファ層に関する数値範囲の意義)
AlNバッファ層12の膜厚が薄過ぎたり、厚過ぎすると、結晶欠陥数が増え、結晶性の指標となる、XRD半値幅が広くなる傾向(結晶性低下)がある。このため、AlNバッファ層12の膜厚には、上述した適正値がある。
【0041】
(膜厚の数値範囲の意義)
第1層及び第2層のGaN層(OドープGaN層13、SiドープGaN層14)の総膜厚を規定したのは、以下の理由による。すなわち、第1層及び第2層のGaN層(OドープGaN層13、SiドープGaN層14)の総膜厚が4μmよりも薄いと、表面にピット状の凹みが形成される問題が生じ、また、高濃度の添加物を入れなければ、低抵抗になりにくい。すなわち、順方向電圧が十分に低い発光ダイオード(半導体発光素子)を製造することができない。順方向電圧を十分に低くするために、添加物の量を増加して高キャリア濃度にすれば、低抵抗化が可能であるが、添加物量の増加により、結晶性が悪化してしまう問題がある。これはXRD半値幅が、100秒より大きくなることからも、欠陥の低減が不十分であることが覗える。
【0042】
一方、第1層及び第2層のGaN層(OドープGaN層13、SiドープGaN層14)の総膜厚を10μmよりも厚くすると、添加物量を増加することなく、つまりキャリア濃度を高くすることなく、順方向電圧が高くならないような低抵抗化ができる。また、第1層及び第2層のGaN層13、14の総膜厚を10μmよりも厚くすることにより、XRD半値幅を50秒以上100秒以下にすることができ、結晶性が良好な窒化物発光ダイオード(半導体発光素子)用テンプレートを製造することができる。しかし、膜厚が厚いことが原因によるウエハの反りが大きくなる問題がある。この反りは、基板とエピ層とが異種材料であることによる。テンプレートの反りが大きくなると、テンプレート上に成長する発光部の成長に問題が生じる。この問題は、例えば発光出力の低下である。また、反りの影響で発光ダイオード(半導体発光素子)の発光波長の面内分布が悪化し、歩留まりの低下が起きる。これはテンプレートの反りによって、活性層であるMQW層に使用するIn濃度が面内で不均一になるためである。更にまた、膜厚を厚くするので、当然製造コストがアップするという問題もある。
【0043】
以上のことから、第1層及び第2層のGaN層13、14の総膜厚は、4μm〜10μmが好ましく、再現性等を考慮すると、5〜9μmがより好ましい。
【0044】
(キャリア濃度及び不純物濃度の数値範囲の意義)
キャリア濃度すなわち不純物濃度が高過ぎると、結晶性が悪化する原因となり、XRD半値幅が狭くならない。つまり結晶欠陥の低減が不十分になる。一方、キャリア濃度が低過ぎると、表面比抵抗が低くならない。よって第1層のOドープGaN層13と第2層のSiドープGaN層14の平均キャリア濃度は、上記範囲が好ましい。この平均キャリア濃度は、パウ法による評価に基づくものである。パウ法は、膜全体のキャリア濃度値である。つまりエピ層全体の平均のキャリア濃度になる。例えば膜中でキャリア濃度が変化している場合、パウ法で評価した場合は、その膜中の平均キャリア濃度となる。第2層のSiドープGaN層14のキャリア濃度は、上記の範囲が好ましい。また、不純物濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)分析から算出することができる。
【0045】
(テンプレートの表面比抵抗の数値範囲の意義)
窒化物半導体テンプレート10全体(エピ層全体)の表面比抵抗は、20Ω/□以下が好ましいが、上記キャリア濃度と上記膜厚の好ましい範囲内で20Ω/□以下にするのが良い。また、窒化物半導体テンプレート10全体のより好ましい表面比抵抗は、10〜20Ω/□である。表面比抵抗が低過ぎると、結晶性が悪化する。
【0046】
(製造方法)
窒化物半導体テンプレート10は、HVPE法によって成長されることが好ましく、成長速度は、30〜300μm/hrが好ましい。HVPE法で成長することによって、原材料費が安く、且つ成長速度が速い(MOVPE法との比較)ので、低コスト化できる。成長速度を30〜300μm/hrとしたのは、あまり速過ぎると、制御するのが難しくなり、再現性が乏しくなるためである。よって最も望ましい成長速度は、50〜200μm/hrである。HVPE法で成膜した場合には、原料として塩化水素(HCl)等のガスを用いてGaClを生成し、これをGa源としている。このためHVPE法で成長した場合には、どうしてもエピ層膜中に若干のClが混入してしまう。このためエピ層中のClを分析すれば、HVPE法で成膜されたことは確認できる。何故ならば、MOVPE法で成長した場合はClは混入しないので、区別することができる。
【0047】
(実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)低抵抗と欠陥低減を達成できるため、順方向電圧が低く、かつ光取り出し効率を高めることができる。このため、高効率の発光ダイオード(半導体発光素子)用途において、好適に用いることができる窒化物半導体テンプレートを製造することができる。
(b)窒化物半導体テンプレートをHVPE法で作製していることから、成長時間を格段に短縮することができる。このため、低コストで高性能の窒化物半導体テンプレートを提供することができる。すなわち、この窒化物半導体テンプレートは、高輝度の半導体発光素子(発光ダイオード)に有用なテンプレートである。
【0048】
[第2の実施の形態]
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る発光ダイオード用エピタキシャルウエハの断面図である。本実施の形態の発光ダイオード用エピタキシャルウエハ30は、図1に示す窒化物半導体テンプレート10上にn型GaN層31を成長し、更にその上にInGaN/GaN多重量子井戸層32を6ペア成長し、更にまたその上にp型AlGaN層33及びp型GaNコンタクト層34を成長したものである。ここで、OドープGaN13及びSiドープGaN層14は、n型GaNテンプレート層の一例である。p型AlGaN層33及びp型GaNコンタクト層34は、p型窒化物半導体層の一例である。
【0049】
[第3の実施の形態]
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る発光ダイオードの断面図である。この発光ダイオードとしての発光ダイオード(青色LED素子)40は、図2に示す発光ダイオード用エピタキシャルウエハ30の表面を部分的に除去し、窒化物半導体テンプレート10のn型GaN層(SiドープGaN層14)の一部を露出させた露出部上にn型電極としてのTi/Al電極41を形成し、p型GaNコンタクト層34上にp型電極としてのNi/Au半透明電極42及び電極パッド43を形成したものである。
【0050】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0051】
図4は、実施例1に係るHVPE装置の概略の構成例を示す図である。実施例1においては、図4に示す構成のHVPE装置1を用いてバッファ層付きPSS基板21上に、OドープGaN層13を約6μm成長し、OドープGaN層13上にSiドープGaN層14を約2μm成長した。HVPE装置1は、上流部の原料部3aと下流部の成長部3bに分かれており、それぞれが別々の原料部ヒータ4a、成長部ヒータ4bによりそれぞれ約850℃、1100℃に加熱される。
【0052】
原料部3aから成長部3bに向けて、V族ライン61、III族ライン62、ドーピングライン63の3系統のガス供給ライン6が設置されている。V族ライン61からは、窒素原料としてのアンモニア(NH3)とともに、キャリアガスとして水素、窒素、又はこれらの混合ガスが供給される。III族ライン62からは、塩化水素(HCl)とともに、キャリアガスとして水素、窒素、又はこれらの混合ガスが供給される。III族ライン62の途中にはガリウム(Ga)融液7aを収容したタンク7が設置されており、ここでHClガスと金属ガリウムが反応しIII族原料としてのGaClガスが生成され、GaClガスが成長部3bへと送り出される。ドーピングライン63からは、ドーピングを行わない場合など、例えばアンドープGaN層(un−GaN層)成長時には水素/窒素の混合ガスが導入され、n型GaN層成長時にはSi源であるジクロロシラン(水素希釈、100ppm)とHClガスと水素、窒素が導入される。
【0053】
また、成長後にHVPE装置1内に付着したGaN系の付着物を除去するために行うベーキング時には、ドーピングライン63から塩酸ガス、水素及び窒素が導入される。成長部3bには、3〜100rpm程度の回転数で回転するトレー5が設置され、そのガス供給ライン6の出口と対向した面(設置面)5a上にバッファ層付きPSS基板21が設置される。バッファ層付きPSS基板21以降に流れた原料ガスは、最下流部から排気管9を介して排気される。本実施例1での成長は全て常圧(1気圧)にて実施した。
【0054】
各ライン61,62,63の配管、タンク7、トレー5の回転軸5bは、高純度石英製であり、トレー5は、SiCコートのカーボン製である。
【0055】
(1)基板の準備
バッファ層付きPSS基板21は、厚さ900μm、直径100mm(4インチ)、凸部11aのピッチpは2.5μm、高さhは1.5μmのものを用いた。
【0056】
(2)HVPE成長
HVPE成長は、以下のように実施した。バッファ層付きPSS基板21をHVPE装置1のトレー5にセットした後、純窒素を流し、反応炉2内の大気を追い出す。次に、水素3slmと窒素7slmの混合ガス中で基板温度を1100℃とし、10分間保持した。その後、OドープGaN層13を60μm/hrの成長速度で成長した。この際に流すガスとしては、III族ライン62からHClを50sccm、水素を2slm、窒素を1slm、V族ライン61からNH3を2slmと水素を1slmとした。また、ドーピングライン63からは、O(酸素)を導入した。OドープGaN層13を約2μm成長させたところで、O(酸素)の供給を止めた。
【0057】
成長時間は、6min間である。第1層のOドープGaN層13の成長後、基本の成長
条件は同じで、ドーピングライン63からSiを導入して2min間第2の層のSiドープGaN層14を成長した。その後、NH3を2slmと窒素を8slm流しつつ、基板温度を室温付近まで冷却した。その後、数10分間窒素パージを行い、反応炉2内を窒素雰囲気としてから、図1に示す窒化物半導体テンプレート10を取り出した。
【0058】
上記のように製作された窒化物半導体テンプレート10のXRD半値幅は、73.8秒であった。また、窒化物半導体テンプレート10の表面比抵抗を、非接触の比抵抗測定機を用いて測定した結果、表面比抵抗は15Ω/□であった。
【0059】
更に窒化物半導体テンプレート10の第1層のOドープGaN層13のみ及び第2層のSiドープGaN層14のみの成長も実施し、パウ法にて平均キャリア濃度の確認を実施した。第1層のみの成長では、平均キャリア濃度が1×1018cm-3であることが確認できた。また第2層のみの成長では、平均キャリア濃度が4.5×1018cm-3であることが確認できた。
【0060】
図5は、第1層及び第2層のGaN層13、14におけるSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)分析によるO(酸素)不純物濃度のプロファイルを示す。図6は、第1層及び第2層のGaN層13、14におけるSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)分析によるSi(珪素)不純物濃度のプロファイルを示す。O不純物濃度は、図5に示すように、3×1019cm-3以下となった。Si不純物濃度は、図6に示すように、5×1018cm-3以下となった。
【0061】
図7は、AlNバッファ層の膜厚とXRD半値幅との関係を示すグラフである。AlNバッファ層12の膜厚10〜100nmにおいてXRD半値幅が小さくなっていることが分かる。
【0062】
図8は、実施例1の窒化物半導体テンプレートのClのSIMS分析結果を示す。エピ層中にClが現れているので、窒化物半導体テンプレート10がHVPE法によって製造されたことが分かる。
【0063】
(3)発光ダイオード用のエピタキシャル成長
図1に示す窒化物半導体テンプレート10上に、MOVPE法にて発光ダイオード用のエピタキシャル成長を行った。
【0064】
具体的には窒化物半導体テンプレート10上にn型GaN層31を成長し、更にその上にInGaN/GaN多重量子井戸層32を6ペア成長した。更にまたその上にp−AlGaN層33及びp型GaNコンタクト層34を成長し、上記の積層構造成長後に、反応炉2の温度を室温付近に下げ、図2に示す発光ダイオード用エピタキシャルウエハ30が得られた。
【0065】
(4)発光ダイオード(青色LED素子)の形成
その後、図3に示すように、得られた発光ダイオード用エピタキシャルウエハ30の表面をRIE(Reactive Ion Etching)により部分的に除去し、窒化物半導体テンプレート10のSiドープGaN層14の一部を露出させてTi/Al電極41を形成した。さらにp型GaNコンタクト層34上にNi/Au半透明電極42及び電極パッド43を形成して、発光ダイオード(青色LED素子)40を作製した。
【0066】
発光ダイオード(青色LED素子)40の発光特性を通電電流20mAにて評価した所、発光ピーク波長は約450nmであり、順方向電圧3.25V、発光出力30mWを達成した。また、発光ダイオード(青色LED素子)40の信頼性試験を、室温、50mA通電の条件で1000hrの通電試験を実施した。その結果、相対出力は98%であり、十分に良い信頼性特性を有していることも確認された。ただし、相対出力=(168時間通電後の発光出力/初期発光出力)×100である。
【実施例2】
【0067】
OドープGaN層13及びSiドープGaN層14成長時のIII族ラインガスをHCl50sccm、水素3.0slm、窒素なし(又は0slm)とした以外は実施例1と同様の条件で、かつ、窒化物半導体層22の全体膜厚を、約10μmに作製して実施例1と同様の実験を行った。その結果、実施例2の窒化物半導体テンプレート10のXRD半値幅は50秒と狭く、表面比抵抗率については15Ω/□と実施例1と同様であった。第1層及び第2層のGaN層13、14におけるSIMSによるO不純物濃度は1.0×1019cm-3以下、Si濃度は4.0×1018cm-3と実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【実施例3】
【0068】
PSS基板11の凸部11aのピッチpを0.5〜6.0μm、高さhを0.5〜3.0μmとして実施例1と同様の実験を行った。その結果、実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【0069】
(比較例1)
図9は、比較例1に係る窒化物半導体テンプレート100を示す。比較例1に係る窒化物半導体テンプレート100の基本構造は、図1に示す実施例1の構造と同じである。また、成長条件等も同じである。よって、以下には実施例1と異なる項目についてのみ述べることとする。
【0070】
第1層のアンドープGaN層130を約6μm成長し、その上に第2層のSiドープGaN層140を2μm成長した。このときのSiドープGaN層140の平均キャリア濃度は、8.5×1018cm-3になるように設計した。SiドープGaN層140の平均キャリア濃度をチェックしたところ、8.5×1018cm-3であることを確認した。
【0071】
比較例1では、窒化物半導体テンプレート10の第1層をアンドープGaN層130としたのは、一般的に結晶欠陥を低減するためにはアンドープGaN層が良いとされているためである。また、第2層のSiドープGaN層140のキャリア濃度を高くしているのは、第1層がアンドープであるため、第2層のSiドープGaN層140のキャリア濃度を高くしなければ、表面比抵抗が高くなってしまい、発光ダイオードに用いた場合に、順方向電圧が高くなってしまうという問題があるからである。
【0072】
上記のように製作された窒化物半導体テンプレート10のXRD半値幅は、117.6秒であった。つまり実施例1は、比較例1に比べて約44秒半値幅が狭くなり、比較例1の約60%になっている。また、窒化物半導体テンプレート10を、非接触の比抵抗測定機を用いて測定した。その結果、表面比抵抗は16Ω/□であり、実施例1と同等であることが確認できた。
【0073】
窒化物半導体テンプレート10上に、MOVPE法にて発光素子用のエピタキシャル成長を行った。このMOVPE法による成長も、実施例1と同じ条件である(比較例と実施例1の窒化物半導体テンプレート10上のMOVPE法による成膜は、多数枚のMOVPE装置にて同時成長)。
【0074】
比較例1の発光ダイオード(青色LED素子)の発光特性を通電電流20mAにて評価した所、発光ピーク波長は約450nmであり、順方向電圧は3.22V、発光出力は18mWであった。つまりXRD半値幅が広かったことからも、結晶欠陥によって内部量子効率が悪化しているため、言い換えれば実施例1によって、内部量子効率がアップして、発光出力が高まったことが分かる。
【0075】
また、比較例1についても発光ダイオード(青色LED素子)の信頼性試験を、室温、50mA通電の条件で1000hrの通電試験を実施した。その結果、相対出力は87%であり、信頼性があまり良くないことが確認された。ただし、相対出力=(168時間通電後の発光出力/初期発光出力)×100。
【0076】
(比較例2)
図10は、比較例2に係る窒化物半導体テンプレート200を示す。比較例2に係る窒化物半導体テンプレート200の基本構造は、図1に示す実施例1や比較例1の構造と同じである。また成長条件等も同じである。よって、以下には実施例1と異なる項目についてのみ述べることとする。
【0077】
比較例1では、結晶性向上に有利になるという観点から、第1層をアンドープGaN層130約6μm成長し、その上にSiドープGaN層140を2μm成長した。このときのSiドープGaN層140の平均キャリア濃度は、8.5×1018cm-3であり、最上層のSiドープGaN層140の平均キャリア濃度が、あまりにも高過ぎて結晶性が悪化したと考えられる。つまり第2層のSiドープGaN層140が高キャリアのために、結晶が悪化してXRD半値幅が広くなったと考えられる。
【0078】
そこで最上層のSiドープGaN層240のキャリア濃度を低く抑える、一般的な方法でも比較の実験(比較例2)を実施することにした。
【0079】
最上層のSiドープGaN層240のキャリア濃度を低くして表面比抵抗を低くするには、第1層にもSiを添加して、その分最上層のSiドープGaN層240のキャリア濃度低くすれば良い。そこで比較例2では、窒化物半導体テンプレート10の第1層にもSiを添加したSiドープGaN層230とした。このときの第1層の平均キャリア濃度は、1.0×1018cm-3になるように設計した。また同時に、第2層のSiドープGaN層240の平均キャリア濃度は、1.0×1018cm-3になるように設計した。つまり、平均キャリア濃度が1.0×1018cm-3のSiドープGaN層を約8μm成長した構造である。当然、キャリア濃度が設計値になっていることは、確認した。
【0080】
上記のように製作された窒化物半導体テンプレート10のXRD半値幅は、125.8秒であった。つまり結晶性は、比較例1よりも却って悪化した。また、非接触の比抵抗測定機を用いて測定した表面比抵抗は、16Ω/□であり、実施例1や比較例1と同等であった。
【0081】
窒化物半導体テンプレート10上に、MOVPE法にて発光素子用のエピタキシャル成
長を行った。このMOVPE法による成長も、実施例1と同じ条件である(比較例1及び2と実施例1の窒化物半導体テンプレート10上のMOVPE法による成膜は、多数枚のMOVPE装置にて同時成長)。
【0082】
発光ダイオード(青色LED素子)の発光特性を通電電流20mAにて評価した所、発光ピーク波長は約450nmであり、順方向電圧は3.23Vであった。このため発光ピーク波長と順方向電圧は、実施例1及び比較例1と同じであることが確認された。しかし、発光出力は16mWであり、実施例1よりも低く、比較例1よりも劣る結果となった。
【0083】
また、比較例2についても発光ダイオード(青色LED素子)の信頼性試験を、室温、50mA通電の条件で1000hrの通電試験を実施した。その結果、相対出力は82%であり、信頼性は比較例1よりも悪化した。ただし、相対出力=(168時間通電後の発光出力/初期発光出力)×100。発光出力と信頼性特性の悪化は、XRD半値幅が広くなったことから、結晶欠陥が増加(結晶性悪化)したことで各特性が悪化したものと考えられる。
【0084】
(変形例1)
本発明は、基本的に窒化物半導体テンプレートであり、特に構造及び成膜条件による物である。このためPSS基板11の凸部11aの形状が変化しても同様の効果が得られることは明白である。
【0085】
(変形例2)
本発明は、成長速度として60μm/hrであるが、成長速度は300μm/hr程度まで上げても、適用可能であることは明白である。
【0086】
(変形例3)
本発明は、基板上に設けるGaN系膜に関するものであるため、平坦基板を用いても本発明の意図する効果が得られることは容易推考である。
【0087】
(変形例4)
本発明は、基板上に設けるGaN系膜に関するものであるため、バッファ層がAlNではなくても本発明の意図する効果が得られることは容易推考である。
【0088】
(変形例5)
III族窒化物半導体層では、酸素濃度とSi濃度を徐々に変化させてもよい。また、OドープGaN層13全体において、酸素を均一にドープしても良い。
【0089】
なお、本発明は、上記実施の形態及び上記実施例に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲で種々に変形実施が可能である。第1のIII族窒化物半導体の厚さ方向におけるOの不純物濃度は、第1のIII族窒化物半導体におけるSiの平均キャリア濃度よりも低くしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…HVPE装置、2…反応炉、3a…原料部、3b…成長部、4a…原料部ヒータ、4b…成長部ヒータ、5…トレー、5a…設置面、5b…回転軸、6…ガス供給ライン、7…タンク、7a…Ga融液、9…排気管、10、100、200…窒化物半導体テンプレート、11…PSS基板、11a…凸部、12…AlNバッファ層、13…OドープGaN層、14…SiドープGaN層、21…バッファ層付きPSS基板、22…III族窒化物半導体層、30…発光ダイオード用エピタキシャルウエハ、30…発光ダイオード用エピタキシャルウエハ、31…n型GaN層、32…発光領域(InGaN/GaN MQW活性層(多重量子井戸層))、33…p型AlGaN層、34…p型GaNコンタクト層、40…発光ダイオード(青色LED素子)、41…Ti/Al電極、42…Ni/Au半透明電極、43…電極パッド、61…V族ライン、62…III族ライン、63…ドーピングライン、130…アンドープGaN層、140、230、240…SiドープGaN層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上にO(酸素)が添加されたO添加層を形成し、前記O添加層上にSiが添加されたSi添加層を形成してなるIII族窒化物半導体層とを備え、前記III族窒化物半導体層の全体の膜厚が4μm以上10μm以下であり、前記III族窒化物半導体層の前記Si添加層におけるSiの平均キャリア濃度が1×1018cm-3以上5×1018cm-3以下である窒化物半導体テンプレート。
【請求項2】
前記III族窒化物半導体層の前記O添加層におけるOの不純物濃度は、1×1016cm-3以上3×1019cm-3以下であり、前記O添加層の平均キャリア濃度は、0.8×1018cm-3以上1×1018cm-3以下である請求項1に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項3】
表面比抵抗が10Ω/□以上20Ω/□以下である請求項1又は2に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項4】
前記III族窒化物半導体層は、X線回折(XRD)の(0004)面の半値幅(FWH
M)が50秒以上100秒以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項5】
前記III族窒化物半導体層は、GaNを主成分とした層である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項6】
前記GaNを主成分とした層と前記基板との間にバッファ層としてAlNが設けられている請求項5に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項7】
前記AlNバッファ層の厚さは、10nm以上100nm以下である請求項6に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項8】
前記基板は、表面に複数の凸部が形成された請求項1乃至7のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項9】
前記III族窒化物半導体層は、ハイドライド気相成長法(HVPE)によって成長された請求項1乃至8のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項10】
サファイア基板と、前記サファイア基板上に形成されたAlNバッファ層と、前記AlNバッファ層上に形成されたn型のIII族窒化物半導体層と、前記n型のIII族窒化物半導体層上に形成されたMQW活性層を含む発光領域と、 前記発光領域上に形成されたp型窒化物半導体層と、前記p型窒化物半導体層側からn型のIII族窒化物半導体層までエッチングが施されて形成された前記n型のIII族窒化物半導体層の露出部と、前記n型のIII族窒化物半導体層の前記露出部上に形成されたn型電極と、前記p型窒化物半導体層側に形成されたp型電極とを備え、前記n型のIII族窒化物半導体層は、前記AlNバッファ層上にO(酸素)が添加されたO添加層と、前記O添加層上にSiが添加されたSi添加層を形成してなり、前記III族窒化物半導体層全体の膜厚が4μm以上10μm以下であり、前記Si添加層におけるSiの平均キャリア濃度が1×1018cm-3以上5×1018cm-3以下の積層構造を有する発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−62492(P2013−62492A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174593(P2012−174593)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】