説明

立体マーカを利用した位置計測システム

【課題】立体マーカの位置計測において、カメラの視線が平行に近い場合であっても奥行き方向の誤差を少なくして位置を計測する。
【解決手段】2台のカメラ(A、B)201で取得した計測対象に配置した複数の立体マーカCMの画像データのうち、一方のカメラ(A)201の画像データが立体マーカCMの1面を認識し、他方のカメラ(B)の画像データが立体マーカCMの2面を認識したものであるとき、前記他方のカメラが認識する2面のそれぞれの中心座標間の中間座標を算出し、算出した中間座標と前記他方のカメラのレンズ中心とを結ぶ視線L3と、前記一方のカメラ(A)201の視線L1との交点P(測定位置)を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体マーカを利用した位置計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、災害を未然に防止するなどのために、特定建造物や地盤など監視して、時間経過と共に発生するズレなどを検知することが知られている。現在広く用いられている位置検知方法としては、GPS(Global Positioning System)方式によるものがある(特許文献1参照)。
このGPS方式には、複数の衛星から発信されるGPS電波を受信して、受信した位置の位置情報(経度、緯度)を演算して求めるものであるが、簡易的なものでは精度が不十分であり、高精度なものは高価になってしまう。また、計測する対象全てにGPS受信機を搭載する必要があり、その分大きなコストがかかり、コストパーフォーマンスが低下する。さらに、GPS電波が届かない場所では当然のことながら利用することができないという問題がある。
【0003】
これとは別に、2台のカメラ(デジタルカメラ)で同一対象物を撮影し、撮影画像から対象物の位置を演算する方法も知られている(特許文献2、3参照)。撮影画像から対象物の位置を計測する場合においては、計測の信頼性を高めるため計測対象に何らかのマーカを付与し、かつ画像上でマーカを識別できるように、そのマーカにはある程度の大きさを持たせている。なお、計測精度から云えば、識別対象は点光源が理想であるが、現実的ではない。多くの場合、マーカは図20に示すように平板で構成されており、この場合、図21に示すように設置された2台のカメラ(Aカメラ、Bカメラ)は、全てのマーカを識別できるような位置に設置しなければならない。
【0004】
ところが、従来のようにマーカを平板で構成した場合、マーカの面が回転してしまうような場所においては計測することができないだけではなく、複数のカメラは計測精度から云えば、その視線が直角に交わる位置(図22A参照)で計測すれば、誤差(1画素分の誤差;量子化誤差)の範囲(ハッチングで示す範囲)が小さくなり精度が最も良好である。しかし、実際には視線が平行に近くなるように設置しなければならない場合が多い(図22B参照)。この場合、図示のように、カメラからみて奥行き方向の誤差の範囲が大きくなり、計測精度を欠く要因となってしまう。
また、従来のマーカは一般に全て同じで区別することができないため、複数のマーカが接近・交差するような場合は、正しい計測ができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−58245号公報
【特許文献2】特開2007−225423号公報
【特許文献3】特許第4006296号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の上記問題を解決すべくなされたものであって、平板状のマーカに代えて立体マーカを用い、従来のようにカメラの視線が平行に近い場合であっても、奥行き方向の誤差を少なくする位置計測が行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、計測対象に配置した複数の立体マーカと、前記複数の立体マーカを認識しその画像データを取得する2台のカメラと、前記取得した画像データに基づき、前記立体マーカの位置を算出する画像処理装置とからなる位置計測システムであって、各面毎に異なる識別パターンを備えた前記複数の立体マーカと、前記2台のカメラで取得した立体マーカの面の画像データに基づき前記立体マーカの3次元座標の重心の位置を求める算出処理を行う前記画像処理装置の探索部と、を有することを特徴とする位置計測システムである。
請求項2の発明は、請求項1に記載された位置計測システムにおいて、前記探索部は、立体マーカの面の識別パターンを識別する識別部と、前記識別部で識別した立体マーカの面情報に基づき前記立体マーカの重心位置を求める算出処理を行う3次元座標算出部と、を有することを特徴とする位置計測システムである。
請求項3の発明は、請求項2に記載された位置計測システムにおいて、2台のカメラのうち一方のカメラの画像データが立体マーカの1面を認識し、他方のカメラの画像データが立体マーカの2面を認識したものであるとき、前記3次元座標算出部は、前記他方のカメラが認識する2面のそれぞれの中心座標間の中間座標を算出し、算出した中間座標と前記他方のカメラのレンズの中心とを結ぶ視線と、前記一方のカメラの視線との交点を求める算出処理を行うことを特徴とする位置計測システムである。
請求項4の発明は、請求項2に記載された位置計測システムにおいて、前記立体マーカは前記各面が識別可能な識別マークを備えた立方体であり、前記識別部が2台のカメラの認識画像において同じ立体マーカの同じ面を識別したとき、前記3次元座標算出部は識別された立体マーカの面の4頂点座標からその中心座標を求め、かつ前記中心座標から重心Gに向かうベクトルを求める算出処理を行うことを特徴とする位置計測システムである。
請求項5の発明は、請求項2に記載された位置計測システムにおいて、前記立体マーカは前記各面が識別可能な識別マークを備えた立方体であり、前記識別部が2台のカメラの認識画像において同じ立体マーカの異なる面を識別したとき、前記3次元座標算出部は、前記異なる面に共通する共通辺の垂直二等分平面上で、前記辺の前記垂直二等分平面との交点を中心として前記立方体の重心を通る円を求め、前記2台のカメラの視線の交点である第1次計測点と前記共通辺を含む平面と、前記円との交点を求める算出処理を行うことを特徴とする位置計測システムである。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載された位置計測システムにおいて、前記複数の立体マーカは、それぞれが異なる識別マークを備えていることを特徴とする位置計測システムである。
【発明の効果】
【0008】
マーカ形状を立方体にすることで、計測対象が向いている方向やカメラの設置位置によらず精度よくその位置を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る位置計測システムのブロック図である。
【図2】本発明の立体マーカの識別模様を示す図である。
【図3】2台のカメラで立体マーカの面を認識した場合における計測誤差を説明する図である。
【図4】2台のカメラで立体マーカの面を認識した場合における他の計測誤差を説明する図である。
【図5】2台のカメラで立体マーカの面を認識した場合におけるさらに他の計測誤差を説明する図である。
【図6】図5の計測誤差を解消する方法を説明する図である。
【図7】立体マーカの識別模様の1例を示す図である。
【図8】位置算出する方法を説明するための図であって、求める立体マーカの面の中心を示す図である。
【図9】図8の中心と立体マーカの重心のベクトルを算出する算出方法を説明するための図である。
【図10】図8の中心と立体マーカの重心のベクトルを算出する他の算出方法を説明するための図である。
【図11】本発明の実施形態に係る立体マーカの位置の計測方法を説明する平面図である。
【図12】図11の3次元斜視図である。
【図13】本発明の実施形態に係る立体マーカの位置の計測方法を説明する平面図である。
【図14】図13の3次元斜視図である。
【図15】立体マーカの位置計測の手順を示すフロー図である。
【図16】2台のカメラが立体マーカの反対側面をそれぞれ認識する場合を説明する図である。
【図17】各面を識別可能にする識別マークを付与した立体マーカの展開図である。
【図18】直角にかつ上下に配置された二つの板状マーカを示す図である。
【図19】図18の板状マーカを用いた場合のマーカの位置計測方法を説明するための図である。
【図20】従来のマーカを示す図である。
【図21】従来の板状マーカと2台のカメラの配置を示す図である。
【図22】2台のカメラの配置と、当該配置における位置計測で生じる各画素分の誤差範囲を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の立体マーカを利用した位置計測システムを、その実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る位置計測システムのブロック図である。
本実施形態の位置計測システムは、位置検出の監視対象となる例えば、橋などの構造物や地盤の適所に配置した立体マーカを観察し、経時的な位置のずれを観測等に用いる。
本位置計測システム10は、外部機器20と画像処理装置30とから成る。
外部機器20は、2台のカメラ201と、入力装置202及び出力装置203等であり、画像処理装置30は、これら外部機器20との接続部であるインタフェース32と、RAM34と、CPU36とから成っている。
【0011】
カメラ201は電子カメラであり、撮像された画像データはインタフェース32を介して画像処理装置に取り込まれ、CPU36で2値化される。なお、カメラ201はアナログカメラでもデジタルカメラでもよく、アナログカメラの場合は、インタフェース32によってA/D変換される。
入力装置202は、本位置計測システム10における各種設定データの入力や、その指示又は操作を行うための例えばキーボードやタッチパネル等の入力手段からなっている。
出力装置203は、位置計測したマーカの計測結果や、入力データの確認などを行えるよう例えばLC(液晶)表示装置を備えている。或いは出力装置203に通信部を設けて、監視センタなどへ出力結果を送信するように構成してもよい。
【0012】
RAM34には、カメラ201からの立体マーカCMの撮影画像を記憶しておく取得画像領域34aと、3次元座標算出用の計算式データ(行列)を格納した3次元座標算出用行列領域34bと、画像処理装置30の各種の設定値を格納した各種設定値領域34cが設定されている。
CPU36は、図示しないROMに格納されたプログラムを実行することにより、RAM34に格納された取得画像と、同様に格納された3次元座標算出用の計算式データ(行列)に基づき立体マーカCMの位置(重心位置)を算出するためのマーカ探索部361としての機能を実現する。
また、CPU36は、同様にROMに格納されたプログラムを実行することにより、立体マーカCMのID認識部361a、3次元座標算出部361bとしての機能も実現する。
【0013】
本実施形態に係る位置計測システム10は、2台のカメラ201で撮影した立体マーカCMのそれぞれの画像データをインタフェース32を介して画像処理装置30に取り込み、2値化し、CPU36のマーカ探索部361の3次元座標算出部では、RAM34から読み出した3次元座標算出用の計算式に基づき立体マーカCMの3次元座標を算出する。算出した結果は、出力装置203の表示手段で表示する。
【0014】
立体マーカCMを用いた場合、立体マーカCMの計測対象となる位置はその重心の位置とするが、重心の位置自体を計測することが困難であるので、本実施形態では、できるだけ重心に近い位置を探索するための手法を説明する。
【0015】
即ち、本実施形態では、立体マーカCMの表面を2台のカメラ201で撮影(認識)し、その撮影画像における各カメラ201からの面の見え方(つまり画像データ取得の対象となった面が1面か2面か)に合わせて、精度よく立体マーカCMの重心の位置(座標)を求めようとするものである。
具体的には、2台のカメラ201で撮影された立体マーカCMの面が同一面の場合と、異なる面である場合とに分けて、それぞれ異なる手法でその位置の探索を行う。
本実施形態で使用する立体マーカCMは、それぞれ異なる識別マーク(IDマーク)が施されているが、それと共に、2台のカメラの撮影面が同じ面か否かを識別するため、各面にもそれぞれ異なる識別マーク(模様)が施されている。
【0016】
立体マーカCMにマーカ識別機能を持たせるためマークとしては、例えば、図2Aに示すように周りを黒縁で囲った枠内の正方形をさらに四等分割した正方形の領域を設け、この四等分割した領域を塗り分けることで、16種類に区別可能な構成を採用している。
図2Bに示す模様はその一つで、黒の縁で囲った枠内に小さな正方形を対角線上に2個配置した形状を示している。
このように、各面毎に独特の模様を付しておくことにより、カメラが撮影又は認識したのはどの立体マーカCMかを容易に識別することができる。
【0017】
次に、被計測面に配置された複数の立体マーカCMの位置をそれぞれ2台のカメラを用いて計測する計測方法について説明する。
2台のカメラを用いて対象物の位置を計測する計測方法としては、一般には3次元空間において二つの視点から同じ1点を見ているときの対応関係を記述する、エピポーラ幾何を用いる方法が知られている。しかし、エピポーラ幾何を用いる計測方法では、計測対象が厚みをもつ場合は計測結果に誤差が生じてしまうため、立体マーカCMの位置計測には適さない。
【0018】
例えば、図3に示すように、2台のカメラ(Aカメラ、Bカメラ)201が立体マーカCMの同じ面を認識する場合は、2台のカメラ201の視線L1、L2は立体マーカCMの同じ表面の中心(座標)S1に合わされている。そのため、認識画像から計算した立体マーカCMの位置(座標)Pも、立体マーカCMの同じ表面の中心座標S1となる。つまり、この計測システムでは、図示のように、実際の重心Gの位置とはかけ離れた立体マーカCMの表面上の位置Pを、立体マーカCMの位置に認識することになる。
【0019】
次に、図4に示すように、2台のカメラ(Aカメラ、Bカメラ)201がそれぞれ隣り合った別々の面を認識している場合(つまり、上記別々の面の中心座標S1、S2に視線L1、L2を合わせて認識する場合)、計算で求められる位置(座標)Pは、両者の視線L1、L2を延長した交点となる。その位置Pも、図示のように実際の重心Gからのずれが大きい。
【0020】
さらに、図5に示すように、Bカメラ201が立体マーカCMの2面を認識している場合に、よく見えている方(面が正方形の場合、より正方形に近い方)を選択して同様にAカメラ201とBカメラ201の視線L1、L2の交点、つまり立体マーカCMの位置(座標)Pを計算すると、計測された立体マーカCMの位置Pは図示の位置となり、実際の立体マーカCMの重心Gから大きく外れている。
【0021】
このように、立体マーカCMの表面を2台のカメラ201で認識した画像からその位置(重心位置)Pを計算で求める場合、エピポーラ幾何を用いて、各カメラ201の視線の交点からその位置Pを求めても、実際の重心Gとのずれが大きいため、計測精度上は問題がある。
そこで、本実施形態の位置計測システムでは、2台のカメラ201による立体マーカCMの認識結果に基づき、マーカの位置(座標)を精度良く求めるために、必要な補正を行う以下の方法を採用した。
【0022】
(計測方法1)
図6に示すように、2台のカメラ201のうち、Aカメラ201は立体マーカCMの一つの面を認識し、Bカメラ201は、二つの面(実際には、Aカメラが認識した面とその面に隣接した他の面となる)を認識しているときは、認識しているそれぞれの面の中心座標S1、S2と、その二つの中心座標S1、S2の中間の中間座標S3とBカメラ201のレンズの中心とを結ぶ視線L3を求め、その視線L3とAカメラ201の視線L1との交点を求め、これを立体マーカCMの位置Pとする。
この位置Pは図5に示す位置Pと比較すれば明らかなように、立体マーカCMの重心Gに極めて接近した位置にある。つまり、ほぼ、実際の立体マーカCMの位置を表していると云える。
【0023】
次に、上記とは別の計測方法として、立体マーカCMの各面毎に識別して各カメラ201が同じマーカ面の同一面を認識している場合と、それぞれ異なる面を認識している場合に適用する計測方法(計測方法2)について説明する。
即ち、立体マーカCMがIDマークにより個別に認識できることは既に述べたとおりであるが、その16種類のパターンのうちの何れかのパターンを用いて、即ち例えば図7に示すように1面おきに白と黒を反転させて区別すると、天井と底を除く4面の異なる面パターンが得られるのでこれを利用する。これにより、2値化処理などの途中工程において、白黒版とその反転版で検出処理を変えることで、それぞれの面を上記ID認識部361aにより容易に識別することができる。
以下、2台のカメラ201が認識する面を識別することで位置計測精度を上げる方法について説明する。
【0024】
(計測方法2の1)
上記立体マーカCMについて、上記マーカ探索部361のID認識部361aが、Aカメラ及びBカメラ201が認識した立体マーカCMの同じ面を識別するときは、まず、図8に示すように、計測システムのCPU36の探索部361(3次元座標算出部361b)は、認識した面の4頂点の3次元座標を求め、各頂点を結ぶ辺のベクトル和(式1)からその中心座標Mを求める。
【0025】
【数1】

【0026】
ここで、立体マーカCMの重心Gは、図9Aに示すように、面ABCDで構成する立方体の中心Mから、面ABCDに対して垂直に1辺の半分の長さだけ立体マーカCMの内側に入った点であるから、式(2)により、外積を利用したベクトル演算によって、図9Bに示すように中心Mからのベクトルを求め、立体マーカCMの重心座標Gを求めることができる。
【0027】
【数2】

即ち、図9において、得られるベクトルの大きさは平行四辺形ABCDの面積で、方向は辺ADを時計方向に回転させたときに右ネジが進行する方向(図中矢印の方向)である。
【0028】
または、この外積をベクトルAB、AD、BC、DCの複数の組み合わせで求め、その平均を採用する。例えば、図10に示すように、式(3)を用いて、外積により面ABCDの対角に垂線ベクトルを2本求めてその平均を取ることで、重心の位置を求めることができる。また、これにより量子化誤差を低減することができる。
【0029】
【数3】

【0030】
(計測方法2の2)
次に、識別部であるID識別部361aが2台のカメラの認識画像において同じ立体マーカの異なる面を識別した場合についてその位置Pを求める方法について説明する。
各カメラA、Bは、図11に示すように、それぞれが認識した異なる2つの面の共通する辺(図示の場合は線分CD)を認識している。立体マーカCMの重心Gは、図11と、図11の3次元斜視図である図12に示すように、線分CDの垂直二等分平面上の半径CD/21/2の円Rの円周上に存在する。
【0031】
ここで、図11のように隣接した2面を個別に認識するようカメラを設置した場合の各カメラA、Bの視線L1、L2は比較的90度に近い角度で交わっているため、図13と、図13の3次元斜視図である図14に示すように、各カメラ(Aカメラ、Bカメラ)201が認識した面の2次元の中心座標(S1、S2)を通る視線L1、L2の交点である1次計測点Paと共通線分CDを含む平面Sを求め、この平面Sと上記円Rとの交点(立体マーカCM内の交点)を求めれば、図示のように、立体マーカCMの重心Gに近い2次計測点Pbを得ることができる。
本実施形態では、CPU36の探索部361の3次元座標算出部361bがこの2次計測点を立体マーカCMの位置(座標)として算出する。
【0032】
なお、一台のカメラが同時に2つの面を認識したときは、二台のカメラで共通する面を選択し、その共通面と共通する辺を認識して上記手法を適用すればよい。
上記手法により、立体マーカCMが持つ厚みによる計測誤差を軽減し、立体マーカCMの重心Gの位置にごく近い位置を求めることができる。
【0033】
図15は、以上で説明した立体マーカCMの位置計測動作手順を示すフロー図である。
まず、2台のカメラ201の立体マーカCMの画像データを取得し(S101)、取得した画像データを2値化して(S102)、マーカの探索を行う(S103)、ここで、全てのマーカの探索が終了しておらず(S104、NO)、登録済みの立体マーカCMを発見したときは(S105、YES)、2台のカメラ201の認識した面が同じ面であれば(S106、YES)、既に述べたようにベクトル積から重心座標を求める処理を行う(S107)。
ステップS106で、2台のカメラ201の認識した面が同じ面でなければ(S106、NO)、上述のように、立体マーカCMの上記それぞれの面の共通の線分と1次計測点(各カメラ201が認識した面の2次元の中心座標を通る各カメラA、Bの視線の交点)に基づき重心座標を求める処理を行う(S108)。
本実施形態によれば、マーカにID機能を持たせることで、複数の計測対象が接近・交差するような場面においてもそれぞれの位置を正しく計測することができる。
また、画像認識により検出できるのはマーカの表面に限られているため、計測したいマーカの重心を求める際には或程度の誤差が不可避であるが、誤差を抑え精度を向上させることができる。
【0034】
なお、以上で述べた手法は、立体マーカCMに対して各カメラA、Bがほぼ同じ方向にあり、2台のカメラ201が認識する面の条件としては、同じ面または隣り合う2面であることが前提である。
したがって、この前提が崩れると、つまり2台のカメラ201が、図16に示すように立体マーカCMの向かい合った2面を認識するような場合は、計測精度を維持することはできない。
そこで、以下、これに対応する計測方法について説明する。
【0035】
第1の方法は、立体マーカCMの天井と底を除き、図17に示すように、他の4面それぞれに別のID表示を設けて、2台のカメラ201が同じ面または隣り合う面を認識した場合は既に説明した上記方法により計測し、互いに向かい合う面を認識した場合はその旨を計測者に通知すると共に、計測値を無効にすることで誤った計測を防止することができる。
【0036】
第2の方法は、マーカを立方体ではなく板を2枚並べたもので構成する。
大きさが分かっている2枚の板を、図18に示すように直角になるように上下に重ねて配置し、かつ、全ての面を識別できるようにした板を用いる。
2台のカメラ201の視線の位置が上下別のマーカとなる板を捉えているとき、どちらかの映像をシフトさせて同じ高さに合わせて交わるように補正する。即ち、例えば図19Aに示すように下の板に合わせて補正する場合は、上のマーカを捉えたカメラは、マーカ(板)の大きさは予め分かっているので、上の板が何画素見えているかを認識し、その画素数により補正量を決めて、視線が下の板で互いに交わるように補正する。上のマーカを認識した場合は、板の大きさだけ画像上で補正を加え、図19Bに示すように、カメラの視線が下の板と交わるようにする。
【0037】
板には立方体のような厚みがないため、2つのカメラが同じ点を認識していると考えることができ、それによって、誤差なくマーカの3次元位置を計測することができる。
【符号の説明】
【0038】
10・・・位置計測システム、20・・・外部機器、201・・・カメラ、202・・・入力装置、203・・・出力装置、30・・・画像処理装置、32・・・インタフェース、34・・・RAM、34a・・・取得画像領域、34b・・・3次元座標算出用行列領域、34c・・・各種設定値領域、36・・・CPU、361・・・マーカ探索部、361a・・・ID認識部、361b・・・3次元座標算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象に配置した複数の立体マーカと、前記複数の立体マーカを認識しその画像データを取得する2台のカメラと、前記取得した画像データに基づき、前記立体マーカの位置を算出する画像処理装置とからなる位置計測システムであって、
各面毎に異なる識別パターンを備えた前記複数の立体マーカと、前記2台のカメラで取得した立体マーカの面の画像データに基づき前記立体マーカの3次元座標の重心の位置を求める算出処理を行う前記画像処理装置の探索部と、を有することを特徴とする位置計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載された位置計測システムにおいて、
前記探索部は、立体マーカの面の識別パターンを識別する識別部と、前記識別部で識別した立体マーカの面情報に基づき前記立体マーカの重心位置を求める算出処理を行う3次元座標算出部と、を有することを特徴とする位置計測システム。
【請求項3】
請求項2に記載された位置計測システムにおいて、
2台のカメラのうち一方のカメラの画像データが立体マーカの1面を認識し、他方のカメラの画像データが立体マーカの2面を認識したものであるとき、前記3次元座標算出部は、前記他方のカメラが認識する2面のそれぞれの中心座標間の中間座標を算出し、算出した中間座標と前記他方のカメラのレンズの中心とを結ぶ視線と、前記一方のカメラの視線との交点を求める算出処理を行うことを特徴とする位置計測システム。
【請求項4】
請求項2に記載された位置計測システムにおいて、
前記立体マーカは前記各面が識別可能な識別マークを備えた立方体であり、
前記識別部が2台のカメラの認識画像において同じ立体マーカの同じ面を識別したとき、前記3次元座標算出部は識別された立体マーカの面の4頂点座標からその中心座標を求め、かつ前記中心座標から重心Gに向かうベクトルを求める算出処理を行うことを特徴とする位置計測システム。
【請求項5】
請求項2に記載された位置計測システムにおいて、
前記立体マーカは前記各面が識別可能な識別マークを備えた立方体であり、
前記識別部が2台のカメラの認識画像において同じ立体マーカの異なる面を識別したとき、前記3次元座標算出部は、前記異なる面に共通する共通辺の垂直二等分平面上で、前記辺の前記垂直二等分平面との交点を中心として前記立方体の重心を通る円を求め、前記2台のカメラの視線の交点である第1次計測点と前記共通辺を含む平面と、前記円との交点を求める算出処理を行うことを特徴とする位置計測システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載された位置計測システムにおいて、
前記複数の立体マーカは、それぞれが異なる識別マークを備えていることを特徴とする位置計測システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−179980(P2011−179980A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44664(P2010−44664)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】