説明

立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜の製造方法及び半導体装置

【課題】低コストの立方晶炭化ケイ素(3C−SiC)単結晶薄膜を得るための立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜の製造方法及び半導体装置を提供する。
【解決手段】立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜の製造方法において、基板101の表面に犠牲層102を形成する第1の工程と、犠牲層の表面に少なくとも表面層が立方晶構造である立方晶半導体層103を形成する第2の工程と、立方晶半導体層の表面に立方晶炭化ケイ素単結晶層104を形成する第3の工程と、犠牲層をエッチング除去して、立方晶半導体層と立方晶炭化ケイ素単結晶層との積層体を剥離する第4の工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化ケイ素(以後、SiCと称す)を母材とするデバイスは、SiC基板上に形成されていた。n型6H−SiC基板上に、n型6H−SiCエピタキシャル成長層、及び、p型6H−SiCエピタキシャル層を形成し発光ダイオードを形成している。また、別の結晶構造のSiC基板(4H−SiC基板)等を使ったデバイス例が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−319099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SiCは、融点が高く融液の再結晶化によるバルク結晶の成長が困難であり、Si基板やGaAs基板のような高品質なバルク基板の作製が困難である。そのため、SiC基板の価格は、Si基板やGaAs基板と比べて、極めて高価で大面積化も難しい。
【0005】
しかしながら、従来のSiCデバイスでは、SiC基板上に複数のデバイスを形成しているため、個別のデバイスに分離(ダイシング)する際に、高価なSiC基板と共に分割する必要があった。したがって、使用する高品質なSiC基板を再利用することができないため、コストアップに対応する画期的な技術開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、低コストの立方晶炭化ケイ素(3C−SiC)単結晶薄膜を得るための立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の立方晶炭化ケイ素(3C−SiC)単結晶薄膜の製造方法は、基板(第1の基板)の表面に犠牲層を形成する第1の工程と、前記犠牲層の表面に少なくとも表面層が立方晶構造である立方晶半導体層を形成する第2の工程と、前記立方晶半導体層の表面に立方晶炭化ケイ素単結晶層を形成する第3の工程と、前記犠牲層をエッチング除去して、前記立方晶半導体層と前記立方晶炭化ケイ素単結晶層との積層体を剥離する第4の工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記目的を達成するために、本発明の半導体装置は、AlGa1−xAs(0.6>x≧0)層と立方晶炭化ケイ素単結晶層とが積層された立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜と、表面に金属層が形成された基板とを備え、前記AlGa1−xAs(0.6>x≧0)層の表面と前記金属層の表面とが直接接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低コストの立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜を得るための立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜の製造方法及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の基板及び結晶成長層の構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態の窒化物層の構成例を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態における分離島の形成工程乃至剥離工程を説明するための工程断面図である。
【図4】第1の実施形態における他の島状パターンの形成方法例を示す断面図である。
【図5】第1の実施形態における接合形態を説明するための断面図である。
【図6】第1の実施形態における他の接合形態を説明するための断面図である。
【図7】第1の実施形態の製造方法を説明するための主な製造工程のフローチャートを示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の基板及び結晶成長層の構成を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態基板及び結晶成長層の構成、分離島の形成工程、及び剥離工程を説明するための工程断面図である。
【図10】第3の実施形態の結晶成長層の構成の変形例(その1)を示す図である。
【図11】第3の実施形態の結晶成長層の構成の変形例(その2)を示す図である。
【図12】第3の実施形態の結晶成長層の構成の変形例(その3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の立方晶炭化ケイ素(3C−SiCと称する)単結晶薄膜の製造方法及び半導体装置について、主に製造方法を中心に、図1乃至図12を参照して、第1の実施形態乃至第3の実施形態を説明する。なお、これらの図は、本発明の実施形態を概略的に示したものであり、各構成部分の形状や寸法の関係等は、本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。また、実施形態を説明するにあたり、同様な構成又は機能を示す部位については、同様の符号を付し、その説明の重複を省略することもある。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図1乃至図7を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を模式的に示した図である。図1(a)に示すように、第1の基板としてSiC基板101を用いる。例えば、このSiC基板101は、六方晶の結晶構造を備えたSiC基板が望ましい。すなわち、SiC基板101は、4H−SiC基板、あるいは、6H−SiC基板を用いる。ここで、4H−は、六方晶で4層の原子層の周期構造であることを示し、6H−は、六方晶で6層の原子層の周期構造であることを示している。
【0013】
そして、図1(b)に示すように、SiC基板101の上に、犠牲層として酸化物層102を形成する。この酸化物層102は、酸化亜鉛(ZnO)単結晶層であることが望ましい。ZnO単結晶層102は、例えば、分子線エピタキシ(MBE)法あるいは有機金属気相化学気相成長(MOCVD)法による結晶成長法を用いて形成する。ZnO単結晶は、六方晶であるため、SiC基板101として同様の六方晶SiC基板を用い、このSiC基板101の表面に、ZnO単結晶層102を形成することにより、高品質のZnO単結晶層102を形成することができる。
【0014】
4H−SiCの格子定数は、a=3.073Å、c=10.053Å、であり、6H−SiCの格子定数は、a=3.080、c=15.12Åである。そして、ZnOの格子定数は、a=3.2496Å、c=5.2065Åである。これらの格子定数を比較すると、ZnO単結晶層を形成するために六方晶SiC基板を使用することは、格子定数の差異が5%以下と比較的小さいので、好適である。
【0015】
ZnO単結晶層102の厚さは、後記する選択エッチング工程を考慮して、5nm〜200nmが望ましい。このZnO単結晶層102の厚さの限定範囲の根拠は、5nmより薄い場合には、選択エッチングのための薬液の浸透が遅く、エッチング速度が低下する。あるいは、途中でエッチングが進行しない事態が発生することによる。また、ZnO単結晶層102の厚さが、200nmよりも厚い場合には、薬液が接する面積が大きくなるために反応速度が低下し、エッチング速度が低下する、あるいは、途中でエッチングが進行しない事態が発生することによる。
【0016】
エッチング速度が遅い状態で長時間エッチングを行うことは、エッチング物(エッチング液に溶解した元素や反応生成物)の析出を誘発し、選択エッチング表面(SiC基板101の表面、及び、後記するZnO単結晶層102の上に形成する窒化物層103の表面)の汚染をもたらす。この選択エッチング表面の汚染発生は、選択エッチング表面の表面粗さ(例えば、原子間力顕微鏡(AFM)で測定される表面粗さ)の増加をもたらす。
【0017】
次いで、図1(c)に示すように、ZnO単結晶層102の表面に立方晶半導体層として窒化物層103を形成する。窒化物層103は、例えば、Al1−xGaN(1≧x≧0)層、AlIn1−xN(1≧x≧0)層、InGa1−xN(1≧x≧0)層等の単結晶層である。
【0018】
この窒化物層103の構成として、例えば、図2(a)に示すように、第1の窒化物層103(1)と第2の窒化物層103(2)との2層の積層構造とすることが好ましい。第1の窒化物層103(1)と第2の窒化物層103(2)とは、何れも、MBE法あるいはMOCVD法等の結晶成長法により形成することができる。第1の窒化物層103(1)と第2の窒化物層(2)とを、互いに、異なる成長方法で形成してもよい。例えば、第1の窒化物層103(1)を、窒素ラジカル源とGa源を使ったMBE法で形成し、第2の窒化物層103(2)を、アンモニア(NH)ガスを窒素源とし、トリメチルガリウム(TMG)をGa源としたMOCVD法で形成することもできる。第1の窒化物層103(1)を第2の窒化物層103(2)よりも低い温度で形成することもできる。
【0019】
また、窒化物層103を、図2(b)のように、第1の窒化物層103(a)と、第1の窒化物層と異なる材料の第2の窒化物層103(b)との2層の積層構造としてもよい。第1の窒化物層103(a)と第2の窒化物層103(b)とは、例えば、Al1−xGaN(1≧x≧0)層、AlIn1−xN(1≧x≧0)層、InGa1−xN(1≧x≧0)層等から選択される互いに異なる窒化物層とすることができる。より具体的な例として、例えば、第1の窒化物層103aをAlN層とし、第2の窒化物層103(b)をGaN層とすることができる。ここで、前記第1の窒化物層103(1)と第2の窒化物層103(2)の形成温度と同様に、第1の窒化物層103(a)を、第2の窒化物層103(b)よりも低い温度で形成することもできる。
【0020】
第1の窒化物層103(a)と第2の窒化物層103(b)との2層を積層する例を示したが、窒化物層103(b)として多層の積層構造であってもよい。例えば、第1の窒化物層103(a)をAlN層とし、第2の窒化物層103(b)をAlNとGaNとの複数層積層(GaN/・・・AlN/GaN)とした層構造であってもよい。
【0021】
また、ここでは、窒化物層103を成長温度が異なる層で形成する例を述べたが、窒化物層103は、同一の成長温度で形成した単層あるいは積層層の構成の窒化物層103であってもよい。
【0022】
窒化物層103は、より望ましくは、次工程において、その表面に形成する3C−SiC層と接する表面を含む窒化物層103の少なくとも一部の表面層は、立方晶(3C−)の結晶構造を備えた立方晶半導体層としての窒化物層であることが望ましい。格子整合の観点からは、立方晶GaNの格子定数は、4.52Åであり、立方晶SiCの格子定数は4.36Å、である。これら窒化物層103とその表面に形成するSiC層104とを、同じ立方晶とすることによって格子定数の差異は約3.5%と比較的小さくすることができる。したがって、本実施形態では、窒化物層103の表面に、結晶欠陥が少ない立方晶SiC層104を形成することとする。
【0023】
窒化物層103の上に、図3(a)に示すように、3C−SiC層104を形成する。3C−SiC層104は、例えば、プラズマCVD法によって形成する。この3C−SiC層104の形成温度は、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下の温度で形成される。この温度において、3C−SiC層104を形成することによって、先に形成した窒化物層103とZnO単結晶層102との界面の反応が抑制された、欠陥の少ない3C−SiC層104を形成することができる。
【0024】
次いで、図3(b)に示すように、3C−SiC層104と窒化物層103とをエッチングして所定の大きさの島状パターンに形成し、それぞれ、3C−SiC層104aと窒化物層103aとする。この工程では、少なくともZnO単結晶層102が露出するように、3C−SiC層104aと窒化物層103aとをパターン形成する。図3(b)では、島状パターンが窒化物層103aと3C−SiC層104aとで構成されているが、図4(a)、図4(b)に示すように、島状パターンが、ZnO単結晶層102aを含んでパターン形成してもよいし、さらにSiC基板101aまでのエッチングにより形成されてもよい。
【0025】
そして、図3(c)に示すように、犠牲層であるZnO単結晶層102のみを、選択的にエッチングする。ここで、ZnO単結晶層102を、選択的にエッチングするとは、SiC基板101、窒化物層103a、及び、3C−SiC層104aはエッチングされず、ZnO単結晶層102のみをエッチング除去することを意味する。
【0026】
エッチング速度の観点からは、使用するエッチング液の、SiC基板101と、窒化物層103層及び3C−SiC層104とに対するエッチング速度に対して、ZnO単結晶層102に対するエッチング速度が大きいことを意味する。例えば、使用するエッチング液としては、沸酸、塩酸から選択される薬液を含む酸や、水酸化カリウム(KOH)、TMAH(Tetra-Methyl-Ammonium-Hydroxide)から選択される薬液を含むアルカリ等のエッチング液とすることができる。
【0027】
そして、図3(d)に示すように、ZnO単結晶層102を選択的にエッチング除去することによって、窒化物層103a及び3C−SiC層104aをSiC基板101から剥離することができる。剥離され分離された窒化物層103a及び3C−SiC層104aを分離島110とする。そして、この分離島110を構成する窒化物層103aの剥離された側の面を剥離面Aとする。
【0028】
次に、図5(a)、図5(b)に示すように、剥離した分離島110の剥離面Aを、第2の基板(別の基板)201の表面に加圧・密着させ、密着した面の間に働く分子間力によって接合(B)させる。この接合工程に先立って、接合させる剥離面Aと第2の基板(別の基板)201の表面とをプラズマ処理等によって活性化させる。分子間力による接合(分子間力接合)とは、接着剤、半田、ペースト等を使わずに、水素結合、分極、誘導電荷等の相互作用(引力)によって、接合させる面同士を直接接合することを意味する。
【0029】
第2の基板(別の基板)201は、例えば、六方晶SiC基板と比較してより安価な3C−SiC単結晶基板、SiC多結晶基板、Si基板等の熱伝導性がよい半導体基板、銅、アルミニウム、真鍮等の熱伝導率が高い金属基板、Al(サファイア)、AlN、SiN等の熱伝導率が高い誘電体基板を使用することにより、分離島110が備える素子形成領域の放熱性が高くなり、高い性能と信頼性を実現できる。したがって、この第2の基板(別の基板)201は、高価ではあるものの、高熱伝導基板として、ダイヤモンド基板、ナノダイヤモンド基板を使うこともできる。放熱性が重要ではない用途では、ガラス基板、プラスティック基板、等の基板を用いることもできる。
【0030】
分離島110は、図6(a)、図6(b)に示すように、第2の基板(別の基板)201の表面に形成された接合層202の表面に、接合することもできる。接合層202は、Au、Ge、Ni、Ti、Pt、A1、Pd、Cu、等から選択される元素を少なくとも1つ含む金属層、例えば、Al、AlN、SiN、SiON、SiO、ダイヤモンドライクカーボン層等の無機誘電体層を使うことができる。
【0031】
また、この接合層202として、熱伝導性が重要ではない用途では、有機物層を使うこともできる。有機物層を使う場合であっても、薄い有機物層、例えば、200nm以下の有機物層を使うことによって、1μmを超えるような有機物層を使う場合と比較して、分離島110が備える素子形成領域の放熱効果を大きく向上させることができる。
【0032】
接合工程の好適例として分子間力接合を説明した。分子間力接合によれば、例えば、一般的なSiデバイスやSiデバイスを実装したパッケージのような場合、動作保障温度が150℃を超えるような高温の温度領域においても、接合が破壊されず強固な接合を維持できることを確認した。接合が破壊されるとは、接合した薄膜にクラックが発生したり、接合面から剥離したりする状態を意味する。
【0033】
高温での使用が仕様上重要ではない場合には、分子間力接合の形態をとらずとも、接着剤や半田等の接着層を使った接合、半導体/金属層間の接合界面を介した元素の相互拡散による化合物形成による接合、又は、接合表面を構成する元素間の共有結合形成による接合等の接合形態をとってもよい。
【0034】
第2の基板(別の基板)201へ接合する分離島110の3C−SiC層104aは、剥離工程の前に既に素子や配線層を備える構造であってもよい。
【0035】
ここで、本実施形態の主な製造工程のフローチャートを、図7を参照して説明する。主な製造工程は、第1の基板であるSiC基板101の表面に、ZnO単結晶層102と窒化物層103と、3C−SiC層104とを順次形成する(ステップS1)、窒化物層と3C−SiC層とをパターン形成する(ステップS2)、ZnO単結晶層をエッチング除去して分離島をSiC基板から剥離する(ステップS3)、そして、剥離した分離島を第2の基板(別の基板)201表面へ接合する(ステップS4)、である。
【0036】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、第1の基板であるSiC基板上に、ZnO単結晶層を形成する工程と、ZnO単結晶層の表面に少なくとも表面が立方晶半導体層である窒化物層を形成する工程と、この窒化物層の表面に1000℃以下の温度で3C−SiC層を形成する工程と、そして、犠牲層であるZnO単結晶層をエッチングして除去し、窒化物層と3C−SiC層とからなる分離島を第1の基板であるSiC基板から剥離する工程と、分離島の剥離面を第2の基板(別の基板)の表面、あるいは、第2の基板(別の基板)の表面上に形成した接合層の表面に直接密着させ接合し固定する工程とを備えているので、以下の効果を奏する。
(1)高品質で高価な単結晶SiC基板の再利用が可能となる。
(2)高品質の3C−SiC層の薄膜を製造することができる。
(3)150℃を超える高温動作領域でも耐性を有する接合の形成が可能となる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態では第1の基板が単結晶SiC基板(六方晶SiC基板)101であるのに対して、第2の実施形態では第1の基板として、サファイア基板を使用した点にある。
【0038】
以下、第2の実施形態において、第1の実施形態と異なる点を中心に、図8(a)乃至図8(d)を参照して説明する。
【0039】
図8(a)は、本実施形態の第1の基板であるサファイア基板211である。サファイア基板211の面方位として、(11−21)面を使うことがより好適である。この場合には、サファイア基板211の表面にZnO単結晶層102を形成するにあたり、ZnO単結晶層102とサファイア基板211との格子定数が整合するので、格子不整合に伴う欠陥の発生を防止することができる。
【0040】
次いで、図8(b)に示すように、サファイア基板211の表面に犠牲層としてのZnO単結晶層102を形成する。このとき、サファイア基板211の面方位を前記した格子整合を考慮して選択することによって、より高品質のZnO単結晶層102を形成することができる。ZnO単結晶層102の形成については、第1の実施形態で述べた形成方法や層厚等の条件を適用することができる。
【0041】
次に、図8(c)に示すように、ZnO単結晶層102の表面に窒化物層103を形成する。ZnO単結晶層102の表面に窒化物層103を形成する工程では、第1の実施形態で述べた窒化物層103の構成や形成条件等を適用することができる。第1の実施形態同様に、この窒化物層103は、少なくとも表面に立方晶の窒化物層を備えた立方晶半導体層であることが望ましい。前記したようにZnO単結晶層102は、高品質のZnO単結晶層を形成することができるので、ZnO単結晶層102の表面に形成する窒化物層103においても、立方晶半導体層として格子欠陥が少ない高品質の窒化物層103を形成することができる。
【0042】
次に、図8(d)に示すように、窒化物層103の表面に3C−SiC層104を形成する。3C−SiC層104の形成方法は、第1の実施形態で述べた構成や形成方法お及び形成条件を適用することができる。
【0043】
そして、前記一連の工程で作製した構成の成長層を有するサファイア基板211を、第1の実施形態で述べた工程と同様に、犠牲層であるZnO単結晶層102を選択的にエッチング除去して、窒化物層103a及び3C−SiC層104aをサファイア基板211から剥離して分離島110とする。
【0044】
さらに、この分離島110を第1の実施形態で述べた接合方法を適用することによって、第2の基板(別の基板)上に接合することができる。一連の剥離工程、及び、分離島110の第2の基板(別の基板)への接合工程については、ここでの説明を省略する。
【0045】
(変形例)
第2の実施形態では、第1の基板としてサファイア基板211を使用したが、サファイア基板に代えて、窒化物半導体基板、例えば、A1Ga1−xN(1≧x≧0)基板、InGa1−xN(1≧x≧0)基板、AlIn1−xN(1≧x≧0)基板等を使うことができる。窒化物半導体基板を使用する場合には、窒化物半導体基板の上にZnO単結晶層を形成する工程に先立って、窒化物半導体基板上にAlGa1−xN(1≧x≧0)層、例えば、AlN層あるいはGaN層をバッファ層として形成することもできる。窒化物半導体基板を使用することにより、ZnO単結晶層との格子定数の整合がよいので、より欠陥が少ない高品質なZnO単結晶層の形成が可能となる。
【0046】
本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、第1の基板として安価なサファイア基板上に高品質3C−SiC層を形成することができる。なお、第1の基板として使用したサファイア基板の再利用が可能であることは言うまでもない。
【0047】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を図9乃至図12を参照して説明する。第3の実施形態が第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる点は、第1の実施形態及び第2の実施形態では、第1の基板として六方晶と結晶系が整合する基板を使用したが、第3の実施形態では立方晶の基板を使用する点にある。以下、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる点を中心に、本実施形態について述べる。
【0048】
図9(a)乃至図9(d)を参照して、本実施形態の製造方法を説明する。
図9(a)において、立方晶の基板としてGaAs基板401を使用する。このGaAs基板401の表面に、GaAsバッファ層402、AlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403、GaAs層404を順次形成する。AlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403は、本発明の製造方法の犠牲層であり、その層厚は、5nm〜200nmが望ましい。
【0049】
この犠牲層であるAlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403の層厚の限定範囲の根拠は、下限値の層厚として、5nmより薄い場合には、AlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403を選択エッチングするための薬液の浸透が遅く、エッチング速度が低下する、あるいは、途中でエッチングが進行しない事態が発生することによる。また、上限値の層厚の根拠としては、200nmよりも厚い場合には、薬液が接する面積が大きくなるため反応速度が低下し、エッチング速度が低下する、あるいは、途中でエッチングが進行しない事態が発生することによる。
【0050】
エッチング速度が遅い状態で長時間エッチングを行うことは、エッチング物(エッチング液に溶解した元素や反応生成物)の析出を誘発し、選択エッチング表面(GaAsバッファ層402のAlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403に接する表面、及び、GaAs層404のAlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403に接する表面)の汚染をもたらすことになる。その結果、選択エッチング表面の汚染発生は、選択エッチング表面の表面粗さ(例えば、原子間力顕微鏡(AFM)で測定される表面粗さ)の増加をもたらすことになる。
【0051】
次に、図9(b)に示すように、3C−SiC層104をGaAs層404の表面に形成する。3C−SiC層104の構成、形成方法、形成条件は、第1の実施形態で述べた3C−SiC層104の構成、形成方法、形成条件を適用することができる。
【0052】
次に、図9(c)に示すように、少なくとも犠牲層であるAlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403aが露出するように、3C−SiC層104a、GaAs層404a、AlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403a、GaAsバッファ層402a、及び、GaAs基板401の一部のGaAs基板401aを除去した部分となるように、所定のサイズの島状パターンを形成する。島状パターン形成のためのパターン形成方法は、適宜ドライエッチング、又は、ウェットエッチングによることができる。
【0053】
そして、図9(d)に示すように、犠牲層であるAlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403aが選択的にエッチングされる途中の部分を、AlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403bとして記載してある。AlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403の選択エッチングは、酸を使ったウェットエッチングによって行うことができる。
【0054】
AlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403bが完全にエッチング除去されることによって、3C−SiC層104aとGaAs層404aとを含む分離島410は、GaAs基板401上のGaAsバッファ層402aから剥離される(図9(e))。
【0055】
そして、接合工程は、剥離された分離島410のGaAs層404aの剥離面A(図9(e)参照)を第2の基板(別の基板)(201)の表面に接合する。この接合工程は、第1の実施形態で述べた方法、形態を適用できるので、ここでは説明を省略する。
【0056】
本実施形態においては、前記したように、分離島410の第2の基板(別の基板)上への接合面となる面は、GaAs層404aで構成される。このGaAs層404aの導電型の制御、すなわち、ドーピング制御は容易である。したがって、図6に示すように、第2の基板(別の基板)201上の接合層202が金属層である場合は、は、GaAs層404aは、この金属層とオーミック接触を形成することが可能となる。この金属層としての金属材料として、例えば、Ti、AuGeNi、Ni/Ge等を選択することによって、低抵抗のオーミック接触を形成することができる。
【0057】
また、島状パターン形成は、図9(c)に示すように、必ずしもGaAs基板401に到達するする必要はない。例えば、図10に示すようにエッチング停止層として、InGaP層420層を設け、GaAs基板401にエッチングを停止させるように加工すれば、GaAs基板401の再利用のための表面処理が容易になる。
【0058】
上記説明では、GaAs層404上に3C−SiC層104を形成する形態を説明したが、図11に示すように、GaAs層404と3C−SiC層104との間に、緩衝層430を設けることもできる。この緩衝層430としては、例えば、アモルファスSi層、多結晶Si層、アモルファスSiC層、多結晶SiC層等を用いることができる。
また、別の変形例では、図12に示すように、GaAs層404上に立方晶窒化物層440、例えば、立方晶AlGa1−xN層を設けることもできる。
【0059】
本発明の第3の実施形態は、GaAs基板401上にGaAsバッファ層402とAlGa1−xAs層403とGaAs層404と3C−SiC層104とを順次形成する工程と、次いで、前記各層をエッチング成形した後、犠牲層であるAlGa1−xAs層403aを選択的にエッチング除去してGaAs層404aと3C−SiC層104aとの積層構造である分離島410をGaAsバッファ層402aから剥離する工程と、剥離したGaAs層と3C−SiC層との積層構造の分離島410のGaAs層404a側の面を接合面として第2の基板(別の基板)上へ接合する工程とを備えた形態である。したがって、第1の実施形態及び第2の実施形態で得られる効果に加えて、GaAs層404aのキャリア濃度を制御することにより、所望の導電型、すなわち、p型半導体層及びn型半導体層の何れの導電型の半導体層であっても、GaAs層404aは、(第2)別の基板201上の接合層202が金属層である場合には、金属層の材料を選択することにより、接合工程における接合面で低抵抗のコンタクト抵抗を得ることができる効果を奏する。
【0060】
ここで、低抵抗のコンタクト抵抗とは、少なくともGaAs層404aと金属層である接合層202との接合におけるコンタクト抵抗が、GaAs層404aの表裏両面間の抵抗よりも小さいことを意味する。あるいは、GaAs層404aと金属層である接合層202との接合における電圧降下が、GaAs層404aの表裏両面間の電圧降下よりも小さいことを意味する。
【0061】
なお、本実施形態において、ドーピング制御可能なGaAs層404aは、AlGa1−tAs層としてもよい。この場合、Al混晶比tは、犠牲層のAlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403aのAl混晶比xに対して、少なくとも、x>tとなるように設定することが好適である。すなわち、AlGa1−xAs(0.6>x≧0)層404aとすることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は、前記説明した実施形態の範囲に限らず、特許請求の範囲に記載した各請求項の技術的範囲に及ぶものである。
【符号の説明】
【0063】
101 SiC基板(第1の基板、基板)
101a 島状パターンエッチング除去されたSiC基板101の部分
102 ZnO単結晶層(酸化物層、犠牲層)
102a エッチング除去されるZnO単結晶層102の部分
103 窒化物層
103(1)、103(2)、103(a)、103(b) 窒化物層
103a 分離島の窒化物層103
104 3C−SiC層
104a 分離島の3C−SiC層104
110 分離島
201 第2の基板(別の基板)
202 接合層
211 サファイア基板(第1の基板、基板)
401 GaAs基板(第1の基板、基板)
401a 島状パターンエッチング除去されたGaAs基板401の部分
402 GaAsバッファ層
402a 島状パターンエッチングされたGaAsバッファ層402
403 AlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層(犠牲層)
403a 島状パターンエッチングされたAlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403の部分
403b エッチング除去途中のAlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層403aの部分
404 GaAs層
404a 分離島のGaAs層
410 分離島
420 InGaP(エッチング停止層)
430 緩衝層
440 立方晶窒化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に犠牲層を形成する第1の工程と、
前記犠牲層の表面に少なくとも表面層が立方晶構造である立方晶半導体層を形成する第2の工程と、
前記立方晶半導体層の表面に立方晶炭化ケイ素単結晶層を形成する第3の工程と、
前記犠牲層をエッチング除去して、前記立方晶半導体層と前記立方晶炭化ケイ素単結晶層との積層体を剥離する第4の工程と
を備えることを特徴とする立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記剥離された立方晶半導体層の剥離面を別の基板の表面に接合する工程をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記犠牲層は、AlGa1−xAs(1≧x≧0.6)層であり、
前記基板は、GaAs基板であり、
前記立方晶半導体層は、AlGa1−xAs(0.6>x≧0)層である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記犠牲層は、ZnO単結晶層であり、
前記基板は、SiC基板、サファイア基板、AlGa1−xN(1≧x≧0)基板、InGa1−xN(1≧x≧0)基板、及び、AlIn1−xN(1≧x≧0)基板から選択される一つの基板であり、
前記立方晶半導体層は、AlGa1−xN(1≧x≧0)層、InGa1−xN(1≧x≧0)層、及び、AlIn1−xN(1≧x≧0)層から選択される一つの窒化物層である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜の製造方法。
【請求項5】
AlGa1−xAs(0.6>x≧0)層と立方晶炭化ケイ素単結晶層とが積層された立方晶炭化ケイ素単結晶薄膜と、
表面に金属層が形成された基板とを備え、
前記AlGa1−xAs(0.6>x≧0)層の表面と前記金属層の表面とが直接接合されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記直接接合におけるコンタクト抵抗は、少なくとも前記AlGa1−xAs(0.6>x≧0)層の表裏両面間の抵抗よりも小さい
ことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−258351(P2010−258351A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109281(P2009−109281)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】