説明

端子間の接続方法

【課題】端子間の良好な電気的接続と隣接端子間の高い絶縁信頼性を得ることを可能にする対向する端子間の接続方法を提供する。
【解決手段】樹脂組成物120と半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔110とから構成される積層構造を有する導電接続材料100を用い、導電接続材料100を対向する端子11,21間に配置する配置工程と、導電接続材料100を金属箔110の融点未満の温度で加熱し、対向する端子11,21間の最短離隔距離xを所定の範囲に調整する調整工程と、最短離隔距離xを前記所定の範囲に保持しながら、金属箔110の融点以上の温度で、樹脂組成物120の硬化が完了しないように導電接続材料100を加熱する加熱工程と、金属箔110の融点未満の温度で樹脂組成物120を硬化させる硬化工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気、電子部品において電子部材同士を電気的に接続する方法であって、対向する端子間を電気的に接続する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化及び小型化の要求に伴い、電子材料における接続端子間の狭ピッチ化がますます進む方向にある。これに伴い、微細な配線回路における端子間接続も高度化している。端子間の接続方法としては、例えば、ICチップを回路基板に電気的に接続する際に異方性導電接着剤又は異方性導電フィルムを用いて多数の端子間を一括で接続するフリップチップ接続技術が知られている。異方性導電接着剤又は異方性導電フィルムは、熱硬化性樹脂を主成分とする接着剤に導電性粒子を分散させたフィルム又はペーストである(例えば、特開昭61−276873号公報(特許文献1)及び特開2004−260131号公報(特許文献2)参照)。これを接続すべき電子部材の間に配置して熱圧着することにより、対向する多数の端子間を一括で接続することができ、接着剤中の樹脂により隣接する端子間の絶縁性を確保することを可能にする。
【0003】
しかし、導電性粒子の凝集を制御することは難しく、(1)導電性粒子と端子、或いは、導電性粒子同士が十分に接触せずに対向する端子間の一部が導通しない場合や、(2)対向する端子間(導通性領域)以外の樹脂中(絶縁性領域)に導電性粒子が残存してリーク電流が発生し、隣接端子間の絶縁性が十分に確保できない場合があった。このため、従来の異方性導電接着剤や異方性導電フィルムでは、端子間の更なる狭ピッチ化に対応することが困難な状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−276873号公報
【特許文献2】特開2004−260131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況の下、接続端子間において良好な電気的接続と隣接端子間において高い絶縁信頼性を得ることを可能にする端子間を電気的に接続する方法の提供が求められている。また、このような端子間の接続を簡便に行う方法の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するべく、本発明者は鋭意検討した結果、導電接続材料において導電性粒子に代えて半田箔又は錫箔を用いることで、半田又は錫の端子間への凝集が容易になり、樹脂中に半田又は錫が残存することを抑制できることを見出した。さらに、本発明者は、金属箔を溶融させる前に金属箔の融点未満の温度で該導電接続材料を加熱して樹脂組成物の粘度を低下させ、端子間のギャップをあらかじめ所定の範囲に調整してから金属箔を溶融させることで、樹脂及び溶融金属の挙動を制御することができ、端子間における電気的接続をより確実なものとすることができることを見出して本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下に示した導電接続材料を用いた端子間の接続方法を提供するものである。
[1]樹脂組成物と半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔とから構成される積層構造を有する導電接続材料を用いて対向する端子間を電気的に接続する方法であって、
前記導電接続材料を対向する端子間に配置する配置工程と、
前記導電接続材料を前記金属箔の融点未満の温度で加熱し、対向する端子間の最短離隔距離を所定の範囲に調整する調整工程と、
前記最短離隔距離を前記所定の範囲に保持しながら、前記金属箔の融点以上の温度で、前記樹脂組成物の硬化が完了しないように前記導電接続材料を加熱する加熱工程と、
前記金属箔の融点未満の温度で前記樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、を含む方法。
[2]前記調整工程において、前記対向する端子間の最短離隔距離を、金属箔の厚みより大きく、且つ、導電接続材料の厚みより小さい範囲に調整する、[1]記載の方法。
[3]前記調整工程において、前記対向する端子間の最短離隔距離を、金属箔の厚み以下であり、且つ、前記対向する端子間が互いに接触しない範囲に調整する、[1]記載の方法。
[4]前記加熱工程において、前記金属箔が溶融し、溶融金属が対向する端子間に凝集して対向する端子間を電気的に接続する、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]前記溶融金属と前記端子との金属結合により対向する端子間を電気的に接続する、[4]記載の方法。
[6]前記調整工程において、前記対向する端子間の最短離隔距離を、隣接する端子間の最短離隔距離よりも小さい範囲に調整する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7]前記調整工程における樹脂組成物の溶融粘度が0.1Pa・s〜10000Pa・sである、[1]〜[6]のいずれか1項記載の方法。
[8]前記加熱工程における樹脂組成物の溶融粘度が0.01Pa・s〜100Pa・sである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9]前記金属箔の融点が100℃〜330℃である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10]前記調整工程における導電接続材料の加熱温度が60℃〜200℃である、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[11]前記加熱工程における導電接続材料の加熱温度が、前記金属箔の融点より50℃高い温度未満である、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12]前記加熱工程における導電接続材料の加熱温度が140℃〜340℃である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の方法。
[13]前記硬化工程における導電接続材料の加熱温度が80℃〜310℃である、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14]前記導電接続材料が樹脂組成物層/金属箔層/樹脂組成物層からなる積層構造を含むものである、[1]〜[13]のいずれか1項に記載の方法。
[15]前記導電接続材料が樹脂組成物層/金属箔層からなる積層構造を含むものである、[1]〜[13]のいずれか1項に記載の方法。
[16]前記樹脂組成物が、エポキシ樹脂、硬化剤ならびにフェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物を含むものである、[1]〜[15]のいずれか1項記載の方法。
[17]前記樹脂組成物が、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれるフィルム形成性樹脂をさらに含む、[16]記載の方法。
[18]前記樹脂組成物が、樹脂組成物の全重量に対し、エポキシ樹脂10〜90重量%、硬化剤0.1〜50重量%、フィルム形成性樹脂5〜50重量%ならびにフェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物1〜50重量%を含むものである、[1]〜[17]のいずれか1項記載の方法。
[19]前記フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物が、下記一般式(1)で示される化合物を含む、[16]〜[18]のいずれか1項に記載の方法。
HOOC−(CH2)n−COOH (1)
[式中、nは、1〜20の整数である。]
[20]前記フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物が、下記一般式(2)及び/又は(3)で示される化合物を含む、[16]〜[19]のいずれか1項に記載の方法。
【化1】

[式中、R1〜R5は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、但し、R1〜R5の少なくとも一つは水酸基である。]
【化2】

[式中、R6〜R20は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、但し、R6〜R20の少なくとも一つは水酸基又はカルボキシル基である。]
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属箔を用いることで、溶融した半田又は錫が凝集しやすくなり、樹脂中に金属が残存することを抑制できるので、良好な電気的接続及び高い絶縁信頼性を得ることができる。
また本発明によれば、導電接続材料を段階的に加熱することで、溶融した半田又は錫の樹脂組成物中における移動距離を最小限に抑えることができるので、所望の領域に樹脂及び溶融金属を凝集させることがより容易になる。本発明の好ましい態様によれば、より効率的に対向する端子間に導通性領域を形成することができるので、目的及び用途に応じて金属箔の使用量を決定することができる。
本発明によれば端子間の電気的接続をより確実に行うことができるので、半導体装置などの微細な配線回路における多数の端子間を一括で接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好ましい実施態様を説明するための概略工程図である。
【図2】本発明の好ましい実施態様を説明するための概略工程図である。
【図3】本発明に用いる金属箔層の形状の一例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の端子間を電気的に接続する方法について具体的に説明する。
【0011】
本発明の端子間を電気的に接続する方法(以下「本発明の接続方法」ともいう。)は、樹脂組成物と半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔とから構成される積層構造を有する導電接続材料を用いて対向する端子間を電気的に接続する方法であって、
前記導電接続材料を対向する端子間に配置する配置工程と、
前記導電接続材料を前記金属箔の融点未満の温度で加熱し、対向する端子間の最短離隔距離を所定の範囲に調整する調整工程と、
前記最短離隔距離を前記所定の範囲に保持しながら、前記金属箔の融点以上の温度で、前記樹脂組成物の硬化が完了しないように前記導電接続材料を加熱する加熱工程と、
前記金属箔の融点未満の温度で前記樹脂組成物を硬化させる硬化工程を含む。
【0012】
本発明の接続方法では、導電接続材料における金属成分を金属箔の形態で用いる。これにより、金属箔が溶融したときに溶融金属が凝集しやすくなり、端子間の電気的接続をより確実に行うことができる。また、溶融金属が凝集しやすいために樹脂中に金属が残存し難くなり、隣接する端子間の絶縁性を確保してリーク電流の発生を抑制することができる。
さらに、本発明の接続方法では、調整工程及び加熱工程において加熱温度を制御しながら導電接続材料を段階的に加熱する。具体的に、本発明の接続方法では、まず、導電接続材料を金属箔の融点未満の温度で加熱することで、金属箔を溶解させずに樹脂組成物の粘度を低下させて端子間のギャップを所定の範囲に調整し、次いで、金属箔の融点以上の温度で、樹脂組成物の硬化が完了しないように導電接続材料を加熱することで金属箔を溶融させる。このように、あらかじめ端子間のギャップを所定の範囲に調整した後で金属箔を溶融させることで、樹脂組成物中における溶融金属の移動距離を最小限に抑えることができ、所望の領域に樹脂及び溶融金属が凝集することをより容易にすることができる。
【0013】
本発明の接続方法は、例えば、調整工程において、対向する端子間の最短離隔距離を、金属箔の厚みより大きく、且つ、導電接続材料の厚みより小さい範囲に調整する方法(第1実施態様)と、対向する端子間の最短離隔距離を、金属箔の厚み以下であり、且つ、前記対向する端子間が互いに接触しない範囲に調整する方法(第2実施態様)とが挙げられる。以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施態様について具体的に説明するが、本発明はこれらの図面によって何ら制限されるものではない。
【0014】
1.第1実施態様
まず、本発明の第1実施態様について、図1を参照しながら説明する。本発明の第1実施態様は、導電接続材料を対向する端子間に配置する配置工程と、前記導電接続材料を前記金属箔の融点未満の温度で加熱し、対向する端子間の最短離隔距離を所定の範囲に調整する調整工程と、前記最短離隔距離を前記所定の範囲に保持しながら、前記金属箔の融点以上の温度で、前記樹脂組成物の硬化が完了しないように前記導電接続材料を加熱する加熱工程と、前記金属箔の融点未満の温度で前記樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む端子間の接続方法であって、調整工程において、対向する端子間の最短離隔距離を、金属箔の厚みより大きく、且つ、導電接続材料の厚みより小さい範囲に調整する方法である。以下、各工程について説明する。
【0015】
(a)配置工程
配置工程では、図1(a)に示すように、端子11が設けられた基板10と端子21が設けられた基板20とを、端子11と端子21とが対向するように位置あわせし、これらの端子間に、金属箔110と金属箔の両面に設けられた樹脂組成物120とを含む導電接続材料100を配置する。この時、導電接続材料100は、ロールラミネータ又はプレス等の装置を使用して、あらかじめ基板10又は基板20の片側、あるいは、基板10及び基板20の双方に熱圧着されていてもよい。また、前記端子11及び21の表面には、電気的な接続を良好にするために、必要により、洗浄、研磨、めっき及び表面活性化などの処理が施されていてもよい。
【0016】
(b)調整工程
調整工程では、導電接続材料を金属箔の融点未満の温度で加熱し、対向する端子間の最短離隔距離を所定の範囲に調整する。なお「対向する端子間の最短離隔距離」において、「最短」という用語を用いているのは、端子間の距離が一定でない場合に最も近接した離隔距離を表現する意図である。
【0017】
調整工程では、導電接続材料100を金属箔110の融点未満の温度で加熱することで、樹脂組成物120を変形可能な程度にまで軟化させ、対向する端子間の最短離隔距離を所定の範囲に調整する。本発明の第1実施態様では、対向する端子間の最短離隔距離xを、金属箔110の厚みより大きく、且つ、導電接続材料100の厚みより小さい範囲に調整する(図1(b)参照)。
【0018】
本工程では、加熱温度を金属箔の融点未満に制御し、金属箔を溶融させずに樹脂組成物120を変形させて、対向する端子間の離隔距離xを調整することで、所望の領域に樹脂及び溶融金属を凝集させることが容易になる。本発明の好ましい態様によれば、より確実に溶融した金属を所望の領域に凝集させることができるので、対向する端子間の電気的接続に必要十分な金属箔の使用量をあらかじめ設計することができる。なお、対向する端子間の最短離隔距離は、隣接する端子間の最短離隔距離よりも小さい範囲に調整することが好ましい。対向する端子間の最短離隔距離を隣接する端子間の最短離隔距離よりも小さい範囲に調整することで、対向する端子間に溶融した金属がさらに凝集されやすくなる。なお、「隣接する端子間の最短離隔距離」において、「最短」という用語を用いているのは、端子間の距離が一定でない場合に最も近接した離隔距離を表現する意図である。
【0019】
対向する端子間の最短離隔距離は、目的及び用途などに応じて適宜決定される。例えば、半導体チップと基板を接続する場合、対向する端子間の最短離隔距離は、金属箔の厚みから基板上の隣接端子間のピッチ(最短離隔距離)の範囲内が好ましく、金属箔の厚みから基板上の隣接端子間のピッチの3/4以下の範囲内がより好ましく、金属箔の厚みから基板の隣接端子間のピッチの2/3以下の範囲内がさらに好ましい。
【0020】
対向する端子間の最短離隔距離は、例えば、熱プレス又は圧着装置を用いて、熱盤間の間隔を制御することにより調整することができる。また、例えば、あらかじめ最終所望厚みとなるスペーサーを被着体の周囲に配置することにより調整してもよい。調整方法は、本発明の目的から逸脱しないものであれば特に制限されない。
【0021】
本発明の好ましい態様において、樹脂組成物120がフラックス機能を有する化合物を含む場合、加熱によって該化合物が活性化し、金属箔及び端子の表面酸化膜を除去することができるので、次の加熱工程において溶融金属同士の金属結合による凝集及び溶融金属と端子との金属結合による電気的接続がさらに促進される。
【0022】
本発明に用いられる金属箔の融点は、100℃〜330℃が好ましく、140℃〜300℃がより好ましく、180℃〜250℃がさらに好ましい。したがって、調整工程において、加熱温度は、上記金属箔の融点未満であり、60℃〜200℃が好ましく、65℃〜180℃がより好ましく、70℃〜150℃がさらに好ましい。このときの樹脂組成物の溶融粘度は、0.1Pa・s〜10000Pa・sが好ましく、0.5〜5000Pa・sがより好ましく、1〜2000Pa・sがさらに好ましい。
【0023】
(c)加熱工程
加熱工程では、前記調整工程で調整した対向する端子間の最短離隔距離xを前記所定の範囲に保持しながら、金属箔の融点以上の温度で、樹脂組成物の硬化が完了しないように導電接続材料を加熱する。第1実施態様では、対向する端子間の最短離隔距離xを、調整工程で調整したように対向する端子間の最短離隔距離を金属箔の厚みより大きく、且つ、導電接続材料の厚みより小さい範囲に保持しながら、金属箔の融点以上の温度で導電接続材料を加熱する。
【0024】
図1(c)に示すように、金属箔の融点以上の温度で導電接続材料を加熱することで、金属箔が溶融し、対向する端子間に溶融金属が凝集して導通性領域110aが形成され、対向する端子間を電気的に接続することができる。また、樹脂組成物が導通性領域110aの周囲の間隙を埋めることにより絶縁性領域120aが形成され、隣接する端子間の絶縁性が確保される。金属箔の融点以上の温度で導電接続材料を加熱する前に対向する端子間の最短離隔距離が調整されていることで、加熱により溶融した樹脂及び金属が流れ出すことを抑制することができる。
【0025】
好ましくは、加熱工程において金属箔が溶融し、溶融金属が対向する端子間に凝集し、溶融金属同士及び溶融金属と端子とが金属結合することにより、より良好な電気的接続を得ることができる。
【0026】
本発明の好ましい態様において、導電接続材料に含まれる樹脂組成物がフラックス機能を有する化合物を含む場合、その還元作用により、半田又は錫の表面酸化膜が除去されて半田又は錫は濡れ性が高められた状態になり、金属結合が促されて対向する端子間に凝集しやすくなる。また、フラックス機能を有する化合物の還元作用により端子11及び21の表面酸化膜も除去されて濡れ性が高められているため、半田又は錫との金属結合が容易になる。
【0027】
本発明では、あらかじめ端子間の最短離隔距離が所定の範囲に調整されていることで、溶融した金属が樹脂中を流動する距離を最小限にすることができるので、より確実に所望の領域に溶融金属を凝集させて対向する端子間の電気的接続を行うことができる。また、樹脂中に金属が残存することを抑制することができる。
【0028】
加熱工程では、溶融した金属が樹脂中を流動できるように、樹脂組成物の硬化が完了しないように導電接続材料を加熱する。例えば、加熱時間を短くするなど、加熱時間を調整することによって、半田又は錫が硬化性樹脂中を移動できる範囲、すなわち「硬化性樹脂組成物の硬化が完了しない」ように調整する。
【0029】
加熱温度は、金属箔及び樹脂組成物の組成などによっても異なるが、例えば、140℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。また、接続しようとする基板などの熱劣化を防止するなどの理由により、金属箔の融点より50℃高い温度未満であることが好ましい。具体的には、加熱温度は340℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、260℃以下が特に好ましい。
【0030】
また、樹脂成分が流れ出すことを防ぐとともに、溶融した金属が樹脂中を流動できるように、上記加熱温度において樹脂組成物の溶融粘度は一定の範囲内であることが好ましい。具体的に加熱工程における樹脂組成物の溶融粘度は0.01Pa・s以上が好ましく、0.05Pa・s以上がより好ましく、0.1Pa・s以上がさらに好ましい。また、溶融粘度は、100Pa・s以下が好ましく、90Pa・s以下がより好ましく、80Pa・s以下がさらに好ましい。
【0031】
加熱の方法は、電気、電子部品の製造に通常用いられている加熱装置を用いて行うことができる。例えば、ダイボンダー、フリップチップボンダー、ウェハボンダー、位置制御が可能な熱プレス及び圧着機などを用いることができる。加熱する際に超音波や電場などを加えたり、レーザーや電磁誘導などの特殊加熱を適用してもよい。
【0032】
(d)硬化工程
硬化工程では、図1(d)に示すように、金属箔の融点未満の温度で樹脂組成物を硬化させ、前記加熱工程で形成された絶縁性領域を固定する(図中、硬化絶縁性領域120b参照)。このように絶縁性領域を固定することで、その絶縁性領域に周囲を囲まれた導通性領域110aを固定することができ、対向する端子間の電気的接続の熱安定性が確保される。
【0033】
本発明では、金属箔の融点未満の温度で樹脂組成物を硬化させる。そうすることによって、加熱工程で形成された導通性領域が大きく変形することを抑制し、端子間の接続信頼性を高めることができる。
【0034】
硬化工程では、例えば導電接続材料を加熱することによって樹脂組成物を硬化させる。硬化工程における導電接続材料の加熱温度は、樹脂組成物を硬化できる範囲であれば特に制限されないが、通常、80℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。また、通常、310℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
【0035】
2.第2実施態様
次に、本発明の第2実施態様について、図2を参照しながら説明する。本発明の第2実施態様は、導電接続材料を対向する端子間に配置する配置工程と、前記導電接続材料を前記金属箔の融点未満の温度で加熱し、対向する端子間の最短離隔距離を所定の範囲に調整する調整工程と、前記最短離隔距離を前記所定の範囲に保持しながら、前記金属箔の融点以上の温度で、前記樹脂組成物の硬化が完了しないように前記導電接続材料を加熱する加熱工程と、前記金属箔の融点未満の温度で前記樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む方法であって、対向する端子間の最短離隔距離を、金属箔の厚み以下であり、且つ、前記対向する端子間が互いに接触しない範囲に調整する方法である。以下、各工程について説明する。
【0036】
(a)配置工程
第2実施態様の配置工程は、第1実施態様の配置工程と同様であり、図2(a)に示すように、端子11が設けられた基板10と端子21が設けられた基板20とを、端子11と端子21とが対向するように位置あわせし、これらの端子間に、金属箔110と金属箔の両面に設けられた樹脂組成物120とからなる導電接続材料100を配置する。
【0037】
(b)調整工程
第2実施態様の調整工程では、図2(b)に示すように、対向する端子間の最短離隔距離yを、金属箔110の厚み以下であり、且つ、前記対向する端子間が互いに接触しない範囲に調整する。対向する端子間の最短離隔距離yを金属箔110の厚みと同じか、それよりも小さくすることで、溶融した金属の凝集力をさらに高めることができる。また、金属が樹脂中に残存することを抑制することができる。また、あらかじめ金属箔を上下端子と接触させておくことで、次の加熱工程で形成される導通性領域における金属と端子間表面との接触面積を増やすことができ、機械的強度及び接続信頼性をより高めることができる。
【0038】
対向する端子間の最短離隔距離は、目的及び用途などに応じて適宜決定される。例えば、基板と基板とを接続する場合、対向する端子間の最短離隔距離は、金属箔の厚みから金属箔の厚みの1/4の範囲内が好ましく、金属箔の厚みから金属箔の厚みの1/3の範囲内がより好ましい。
【0039】
対向する端子間の最短離隔距離は、例えば、熱プレスや圧着装置を用いて、熱盤間の間隔を制御することにより調整することができる。また、例えば、あらかじめ最終所望厚みとなるスペーサーを被着体の周囲に配置することにより調整することができる。調整方法は、本発明の目的から逸脱しないものであれば特に制限されない。
【0040】
本発明の好ましい態様において、樹脂組成物120がフラックス機能を有する化合物を含む場合、加熱によって該化合物が活性化し、金属箔及び端子の表面酸化膜を除去することができるので、次の加熱工程において溶融金属同士の金属結合による凝集及び溶融金属と端子との金属結合による電気的接続が促進される。
【0041】
本発明に用いられる金属箔の融点、調整工程における加熱温度及びこのときの樹脂組成物の溶融粘度は、第1実施態様において述べたとおりである。
【0042】
(c)加熱工程
第2実施態様の加熱工程では、調整工程で調整した対向する端子間の最短離隔距離yを前記所定の範囲に保持しながら、金属箔の融点以上の温度で、樹脂組成物の硬化が完了しないように導電接続材料を加熱する。第2実施態様では、対向する端子間の最短離隔距離yを、調整工程で調整したように、金属箔の厚み以下であり、且つ、前記対向する端子間が互いに接触しない範囲に保持しながら、金属箔の融点以上の温度で導電接続材料を加熱する。
【0043】
図2(c)に示すように、金属箔の融点以上の温度で導電接続材料を加熱することで、対向する端子間に溶融金属が凝集して導通性領域110aが形成され、対向する端子間を電気的に接続することができる。また、樹脂組成物が導通性領域110aの周囲の間隙を埋めることにより絶縁性領域120aが形成され、隣接する端子間の絶縁性が確保される。
【0044】
好ましくは、加熱工程において金属箔が溶融し、溶融金属が対向する端子間に凝集し、溶融金属同士及び溶融金属と端子とが金属結合することにより、より良好な電気的接続を得ることができる。第2実施態様においても、導電接続材料に含まれる樹脂組成物がフラックス機能を有する化合物を含む場合、その還元作用により、半田又は錫の表面酸化膜が除去されて半田又は錫は濡れ性が高められた状態になり、金属結合が促されて対向する端子間に凝集しやすくなる。また、フラックス機能を有する化合物の還元作用により端子11及び21の表面酸化膜も除去されて濡れ性が高められているため、半田又は錫との金属結合が容易になる。
【0045】
金属箔の融点以上の温度で導電接続材料を加熱する前に対向する端子間の最短離隔距離が調整されていることで、加熱により溶融した樹脂及び金属が流れ出すことを抑制することができる。
【0046】
第2実施態様では、あらかじめ導電性材料における金属箔と端子間表面とが接触しており、溶融した金属が樹脂中を流動する距離を第1実施態様よりも小さくすることができること、および、あらかじめ金属箔と端子が接しているため、金属箔の溶融と同時に溶融金属の端子表面への搭載が始まるので、より確実に所望の領域に溶融金属を凝集させて対向する端子間の電気的接続を行うことができる。また、樹脂中に金属が残存することを抑制することができる。
【0047】
また、第2実施態様では、図2(c)に示すように、導通性領域と端子との接触面積を大きくすることができるため、機械的強度及び接続信頼性をより高めることができる。
【0048】
第1実施態様で述べたとおり、加熱工程では、溶融した金属が樹脂中を流動できるように、樹脂組成物の硬化が完了しないように導電接続材料を加熱する。例えば、加熱時間を短くするなど、加熱時間を調整することによって、半田又は錫が硬化性樹脂中を移動できる範囲すなわち「硬化性樹脂組成物の硬化が完了しない」ように調整する。
【0049】
加熱温度及び樹脂組成物の溶融粘度は、第1実施態様で説明したものと同様である。加熱の方法などについても第1実施態様と同様である。
【0050】
(d)硬化工程
硬化工程では、図2(d)に示すように、金属箔の融点未満の温度で樹脂組成物を硬化させ、前記加熱工程で形成された絶縁性領域を固定する(図中、硬化絶縁性領域120b参照)。このように絶縁性領域を固定することで、その絶縁性領域に周囲を囲まれた導通性領域110aを固定することができ、対向する端子間の電気的接続の耐熱安定性が確保される。金属箔の融点未満の温度で樹脂組成物を硬化させることで、加熱工程で形成された導通性領域が大きく変形または流動することを抑制し、端子間の接続信頼性を高めることができる。硬化工程における導電接続材料の加熱温度は、第1実施態様の説明で述べたとおりである。
【0051】
3.導電接続材料
本発明の接続方法に用いられる導電接続材料は、樹脂組成物と半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔とから構成される。その形態は、樹脂組成物層と金属箔層とからなる多層構造を有する積層体であり、樹脂組成物層及び金属箔層は各々一層であっても複数層であってもよい。導電接続材料の積層構造は特に制限されなく、樹脂組成物層と金属箔層との二層構造(樹脂組成物層/金属箔層)でもよいし、樹脂組成物層あるいは金属箔層の何れか又は両方を複数含む三層構造又はそれ以上の多層構造でもよい。なお、樹脂組成物層又は金属箔層を複数用いる場合、各層の組成は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0052】
本発明の一実施形態では、金属箔の表面酸化膜を、フラックス機能を有する化合物で還元する観点から、金属箔層の上下層は樹脂組成物層であることが好ましい。例えば、三層構造(樹脂組成物層/金属箔層/樹脂組成物層)が好ましい。この場合、金属箔層の両側にある樹脂組成物層の厚みは、同一でもよく、異なっていてもよい。樹脂組成物層の厚みは、接続しようとする端子の導体厚みなどによって適宜調整すればよい。例えば、金属箔層の両側にある樹脂組成物層の厚みが異なる導電接続材料を用いて接続端子を製造する場合、厚みが薄い方を接続端子側(電極側)に配置することが好ましい。金属箔と接続端子との距離を短くすることで、接続端子部分への半田又は錫の凝集を制御しやすくなる。
【0053】
次に、本発明に用いられる樹脂組成物及び金属箔についてそれぞれ説明する。
【0054】
(1)樹脂組成物
まず、樹脂組成物について具体的に説明する。本発明において導電接続材料の樹脂組成物層を構成する樹脂組成物は、加熱または化学線を照射することにより硬化する硬化性樹脂組成物が好ましい。中でも、硬化後の線膨張率や弾性率等の機械特性に優れるという点で、熱硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0055】
本発明に用いられる樹脂組成物は、常温で液状又は固形状のいずれの形態であってもよい。ここで「常温で液状」とは、常温(25℃)で一定の形態を持たない状態を意味する。ペースト状も液状に含まれる。
【0056】
本発明で用いられる樹脂組成物には、硬化性樹脂のほか、必要に応じて、フィルム形成性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物、シランカップリング剤などが含まれる。以下、各成分について説明する。
【0057】
(i)硬化性樹脂
本発明で用いられる硬化性樹脂は、通常、半導体装置製造用の接着剤成分として使用できるものであれば特に限定されない。例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂(ポリイミド前駆体樹脂)、ビスマレイミド−トリアジン樹脂などが挙げられる。特に、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。中でも、硬化性と保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れるという観点からエポキシ樹脂を用いることが好ましい。これらの硬化性樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
硬化性樹脂の含有量は樹脂組成物の形態に応じて適宜設定することができる。
例えば、樹脂組成物が液状の場合、硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましく、25重量%以上がさらにより好ましく、30重量%以上がなお好ましく、35重量%以上が特に好ましい。また、100重量%未満が好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下がさらにより好ましく、65重量%以下がなお好ましく、55重量%以下が特に好ましい。
樹脂組成物が固形状の場合は、硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましく、20重量%以上が特に好ましい。また、90重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましく、80重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下がさらにより好ましく、65重量%以下がなお好ましく、55重量%以下が特に好ましい。
硬化性樹脂の含有量が前記範囲内にあると端子間の電気的接続強度及び機械的接着強度を十分に確保することができる。
【0059】
本発明では、室温で液状及び室温で固形状のいずれのエポキシ樹脂を使用してもよい。室温で液状のエポキシ樹脂と室温で固形状のエポキシ樹脂とを併用してもよい。樹脂組成物が液状の場合には、室温で液状のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、樹脂組成物が固形状の場合には、液状及び固形状のいずれのエポキシ樹脂を使用してもよいが、固形状のエポキシ樹脂を使用する場合はフィルム形成性樹脂を適宜併用することが好ましい。
【0060】
室温(25℃)で液状のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などが好ましく挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを併用してもよい。
室温で液状のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、150〜300g/eqが好ましく、160〜250g/eqがより好ましく、170〜220g/eqが特に好ましい。前記エポキシ当量が上記下限未満になると硬化物の収縮率が大きくなる傾向があり、反りが生じることがある。他方、前記上限を超えると、フィルム形成性樹脂を併用した場合に、フィルム形成性樹脂、特にポリイミド樹脂との反応性が低下する傾向にある。
【0061】
室温(25℃)で固形状のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、3官能エポキシ樹脂、4官能エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、固形3官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが好ましい。これらのエポキシ樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
室温で固形状のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、150〜3000g/eqが好ましく、160〜2500g/eqがより好ましく、170〜2000g/eqが特に好ましい。
室温で固形状のエポキシ樹脂の軟化点は、40〜120℃が好ましく、50〜110℃がより好ましく、60〜100℃が特に好ましい。前記軟化点が前記範囲内にあると、タック性を抑えることができ、容易に取り扱うことが可能となる。
【0062】
硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合、その含有量は樹脂組成物の形態に応じて適宜設定することができる。
例えば、エポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましく、25重量%以上がさらにより好ましく、30重量%以上がなお好ましく、35重量%以上が特に好ましい。また、90重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましく、80重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下がさらにより好ましく、65重量%以下がなお好ましく、55重量%以下が特に好ましい。
エポキシ樹脂の含有量が前記範囲内にあると端子間の電気的接続の信頼性及び機械的接着強度を十分に確保することができる。
【0063】
(ii)フィルム形成性樹脂
固形状の樹脂組成物を使用する場合、前記硬化性樹脂とフィルム形成性樹脂とを併用することが好ましい。本発明で用いられるフィルム形成性樹脂としては、有機溶媒に可溶であり、単独で製膜性を有するものであれば特に制限はない。熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれのものも使用することができ、また、これらを併用することもできる。具体的に、フィルム形成性樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂(飽和ポリエステル樹脂)、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロンなどが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリイミド樹脂が好ましい。フィルム形成性樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0064】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリル酸及びその誘導体の重合体、又は(メタ)アクリル酸及びその誘導体と他の単量体との共重合体を意味する。「(メタ)アクリル酸」などと表記するときは、「アクリル酸又はメタクリル酸」などを意味する。
【0065】
本発明で用いられる(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸−2−エチルヘキシルなどのポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチルなどのポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリルアミド、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル−α−メチルスチレン共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エチル−アクリロニトリル−N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体などが挙げられる。中でも、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エチル−アクリロニトリル−N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましい。これらの(メタ)アクリル系樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0066】
これらの(メタ)アクリル系樹脂の中でも、被着体への密着性及び他の樹脂成分との相溶性を向上させることができることから、ニトリル基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基などの官能基を有する単量体を共重合させて得られた(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。このような(メタ)アクリル系樹脂において、前記官能基を有する単量体の含有量は特に限定されないが、(メタ)アクリル系樹脂合成時の全単量体100モル%に対して0.1〜50モル%が好ましく、0.5〜45モル%がより好ましく、1〜40モル%が特に好ましい。前記官能基を有する単量体の含有量が前記下限値未満になると密着性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると粘着力が強すぎて作業性が十分に向上しない傾向にある。
【0067】
本発明で用いられるフェノキシ樹脂の骨格は、特に制限されないが、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプ、ビフェニルタイプなどが好ましく挙げられる。飽和吸水率が1%以下であるフェノキシ樹脂は、接着時や半田実装時の高温下において、発泡又は剥離などの発生を抑えることができるため好ましい。なお、飽和吸水率は、フェノキシ樹脂を25μm厚のフィルムに加工し、100℃雰囲気中で1時間乾燥(絶乾状態)し、さらに、そのフィルムを40℃、90%RH雰囲気の恒温恒湿槽に放置し、質量変化を24時間おきに測定し、質量変化が飽和した時点の質量を用いて、下記式により算出することができる。
飽和吸水率(%)={(飽和した時点の質量)−(絶乾時点の質量)}/(絶乾時点の質量)×100
【0068】
本発明で用いられるポリイミド樹脂としては、繰り返し単位中にイミド結合を持つ樹脂であれば特に制限されない。例えば、ジアミンと酸二無水物を反応させ、得られたポリアミド酸を加熱、脱水閉環することにより得られるものが挙げられる。
【0069】
前記ジアミンとしては、例えば、3,3'−ジメチル−4,4'ジアミノジフェニル、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)―1,1,3,3―テトラメチルジシロキサンなどのシロキサンジアミンが挙げられる。ジアミンは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0070】
また、前記酸二無水物としては、3,3,4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物などが挙げられる。酸二無水物は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0071】
ポリイミド樹脂は、溶剤に可溶なものでも、不溶なものでもよいが、他の成分と混合する際のワニス化が容易であり、取扱性に優れている点で溶剤可溶性のものが好ましい。特に、様々な有機溶媒に溶解できる点でシロキサン変性ポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
【0072】
本発明で用いられるフィルム形成性樹脂の重量平均分子量は8,000〜1,000,000が好ましく、8,500〜950,000がより好ましく、9,000〜900,000がさらに好ましい。フィルム形成性樹脂の重量平均分子量が上記の範囲であると、製膜性を向上させることが可能で、且つ、硬化前の導電接続材料の流動性を抑制することができる。なお、フィルム形成性樹脂の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0073】
本発明においては、このようなフィルム形成性樹脂として市販品を使用することができる。さらに、本発明の効果を損ねない範囲で、フィルム形成性樹脂に、可塑剤、安定剤、無機フィラー、帯電防止剤、酸化防止剤及び顔料などの各種添加剤を配合したものを使用してもよい。
【0074】
本発明に用いられる導電接続材料において、前記フィルム形成性樹脂の含有量は、使用する硬化性樹脂組成物の形態に応じて適宜設定することができる。
例えば、固形状の樹脂組成物の場合には、フィルム形成性樹脂の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることが特に好ましい。また、50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがより好ましく、40重量%以下であることが特に好ましい。フィルム形成性樹脂の含有量が前記範囲内にあると溶融前の樹脂組成物の流動性を抑制することができ、導電接続材料を容易に取り扱うことが可能となる。
【0075】
(iii)硬化剤
本発明で用いられる硬化剤としては、フェノール類、酸無水物及びアミン化合物が好ましく挙げられる。硬化剤は、硬化性樹脂の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂との良好な反応性、硬化時の低寸法変化及び硬化後の適切な物性(例えば、耐熱性、耐湿性など)が得られる点で硬化剤としてフェノール類を用いることが好ましく、硬化性樹脂の硬化後の物性が優れている点で2官能以上のフェノール類がより好ましい。また、このような硬化剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリスフェノール、テトラキスフェノール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などが挙げられる。中でも、エポキシ樹脂との反応性が良好であり、硬化後の物性が優れている点でフェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂が好ましい。
【0077】
硬化剤の含有量は、使用する硬化性樹脂や硬化剤の種類及び後述するフラックス機能を有する化合物が硬化剤として機能する官能基を有する場合、その官能基の種類や使用量によって適宜選択することができる。
例えば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合、硬化剤の含有量は樹脂組成物の全重量に対して、0.1〜50重量%が好ましく、0.2〜40重量%がより好ましく、0.5〜30重量%が特に好ましい。硬化剤の含有量が前記範囲内にあると端子間の電気的接続の信頼性及び機械的強度を十分に確保することができる。
【0078】
本発明では、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂を使用することが好ましい。例えば、フェノールノボラック樹脂を使用する場合、その含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上が特に好ましく、また、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下が特に好ましい。フェノールノボラック樹脂の含有量が前記下限未満になると硬化性樹脂が十分に硬化しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると未反応のフェノールノボラック樹脂が残存してイオンマイグレーションが発生しやすい傾向にある。
【0079】
硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合、フェノールノボラック樹脂の含有量はエポキシ樹脂に対する当量比で規定してもよい。例えば、エポキシ樹脂に対するフェノールノボラック樹脂の当量比は0.5〜1.2であることが好ましく、0.6〜1.1であることがより好ましく、0.7〜0.98であることが特に好ましい。前記当量比が前記下限未満になると、エポキシ樹脂の硬化後の耐熱性、耐湿性が低下しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると未反応のフェノールノボラック樹脂が残存し、イオンマイグレーションが発生しやすい傾向にある。
【0080】
(iv)硬化促進剤
本発明で用いられる硬化促進剤としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4−メチルイミダゾリル(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル(1')]−エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物が挙げられる。
【0081】
これらの硬化促進剤の中でも、樹脂組成物の硬化が完了する前に半田又は錫が端子の表面に移動することができるという観点から、融点が150℃以上のイミダゾール化合物が好ましい。融点が150℃以上のイミダゾール化合物としては、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4−メチルイミダゾリル(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル(1')]−エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。硬化促進剤は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0082】
硬化促進剤の含有量は、使用する硬化促進剤の種類に応じて適宜設定することができる。
例えば、イミダゾール化合物を使用する場合には、イミダゾール化合物の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、0.001重量%以上が好ましく、0.003重量%以上がより好ましく、0.005重量%以上が特に好ましい。また、1.0重量%以下が好ましく、0.7重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下が特に好ましい。イミダゾール化合物の含有量が前記下限未満になると硬化促進剤としての作用が十分に発揮されず、硬化性樹脂組成物を十分に硬化できない場合がある。他方、イミダゾール化合物の含有量が前記上限を超えると、樹脂組成物の硬化が完了する前に半田又は錫が端子表面に十分に移動せず、絶縁性領域に半田又は錫が残り絶縁性が十分に確保できない場合がある。また、導電接続材料の保存安定性が低下する場合がある。
【0083】
(v)フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物
本発明で用いられるフェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物は、端子及び金属箔の表面酸化膜など金属酸化膜を還元する作用を有するものである。フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、2,6−キシレノール、p−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、m−エチルフェノール、2,3−キシレノール、メジトール、3,5−キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、カテコール、p−tert−アミルフェノール、レゾルシノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビフェノール、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビスフェノールA、トリスフェノール、テトラキスフェノールなどのフェノール性水酸基を含有するモノマー類、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールFノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂などのフェノール性水酸基を含有する樹脂が挙げられる。
【0084】
カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸などが挙げられる。前記脂肪族酸無水物としては、無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物などが挙げられる。前記脂環式酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などが挙げられる。前記芳香族酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテートなどが挙げられる。
【0085】
前記脂肪族カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ピメリン酸などが挙げられる。中でも、下記式(1):
HOOC−(CH2n−COOH (1)
(式(1)中、nは1〜20の整数である。)
で表される脂肪族カルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸がより好ましい。
【0086】
芳香族カルボン酸の構造は特に制限されないが、下記式(2)又は(3)で表される化合物が好ましい。
【化3】

[式中、R1〜R5は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、R1〜R5の少なくとも一つは水酸基である。]
【化4】

[式中、R6〜R20は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、R6〜R20の少なくとも一つは水酸基又はカルボキシル基である。]
【0087】
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレートニ酸、ピロメリット酸、メリット酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、トルイル酸、ケイ皮酸、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、浸食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−2−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸などのナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;ジフェノール酸などが挙げられる。
【0088】
これらの中でも、本発明では、フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物として、フラックス機能を有し、且つ、硬化性樹脂の硬化剤として作用する化合物であることが好ましい。すなわち、金属箔及び端子などの金属の表面酸化膜を還元する作用を示し、且つ、硬化性樹脂と反応可能な官能基を有する化合物を用いることが好ましい。該官能基は、硬化性樹脂の種類によって適宜選択する。例えば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、該官能基は、カルボキシル基、水酸基及びアミノ基などのエポキシ基と反応可能な官能基が好ましい。フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物が硬化剤として作用することで、金属箔及び端子などの金属の表面酸化膜を還元して金属表面の濡れ性を高め、導通性領域の形成を容易にすると共に、導通性領域を形成した後は、硬化性樹脂に付加して樹脂の弾性率又はTgを高めることができる。また、フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物が硬化剤として作用することで、フラックス洗浄が不要となり、フラックス成分が残存することによるイオンマイグレーションの発生を抑制することができるといった利点がある。
【0089】
このようなフェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物としては、カルボキシル基を少なくとも1つ有していることが好ましい。例えば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、該化合物としては、脂肪族ジカルボン酸又はカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、脂肪族炭化水素基にカルボキシル基が2個結合した化合物が好ましく挙げられる。脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和の非環式であってもよいし、飽和又は不飽和の環式であってもよい。また、脂肪族炭化水素基が非環式の場合には直鎖状でも分岐状でもよい。
【0090】
このような脂肪族ジカルボン酸としては、前記式(1)においてnが1〜20の整数である化合物が好ましく挙げられる。前記式(1)中のnが上記範囲内であると、フラックス機能、接着時のアウトガス、導電接続材料が硬化した後の弾性率及びガラス転移温度のバランスが良好なものとなる。特に、導電接続材料の硬化後の弾性率の増加を抑制し、被接着物との接着性を向上させることができることから、nは3以上が好ましい。また、弾性率の低下を抑制し、接続信頼性をさらに向上させることができることから、nは10以下が好ましい。
【0091】
前記式(1)で示される脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸などが挙げられる。中でも、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデンカン二酸が好ましく、セバシン酸が特に好ましい。
【0092】
前記カルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物としては、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、浸食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)などの安息香酸誘導体;1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸などのナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;ジフェノール酸などが挙げられる。中でも、フェノールフタリン、ゲンチジン酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸が好ましく、フェノールフタリン、ゲンチジン酸が特に好ましい。
【0093】
フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、いずれの化合物も吸湿しやすく、ボイド発生の原因となるため、フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物を使用前に予め乾燥させておくことが好ましい。
【0094】
フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物の含有量は、使用する樹脂組成物の形態に応じて適宜設定することができる。
例えば、樹脂組成物が液状の場合、フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、1重量%以上が好ましく、2重量部%以上がより好ましく、3重量%以上が特に好ましい。また、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、25重量%以下が特に好ましい。
固形状の樹脂組成物の場合には、フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、3重量%以上が特に好ましい。また、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、25重量%以下が特に好ましい。
フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物の含有量が上記範囲内であると、金属箔及び端子の表面酸化膜を電気的に接合できる程度に除去することができる。さらに、硬化時に樹脂に効率よく付加して樹脂の弾性率又はTgを高めることができる。また、未反応のフラックス機能を有する化合物に起因するイオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0095】
(vi)シランカップリング剤
本発明で用いられるシランカップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤などが挙げられる。シランカップリング剤を添加することにより、接合部材と導電接続材料との密着性を高めることができる。シランカップリング剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
シランカップリング剤の含有量は、接合部材や硬化性樹脂などの種類に応じて適宜選択することができる。例えば、シランカップリング剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の全重量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上が特に好ましく、また、2重量%以下が好ましく、1.5重量%以下がより好ましく、1重量%以下が特に好ましい。
【0097】
本発明で用いられる樹脂組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、可塑剤、安定剤、粘着付与剤、滑剤、酸化防止剤、無機フィラー等の充填材、帯電防止剤及び顔料などを配合してもよい。
【0098】
本発明において、前記樹脂組成物は、上記各成分を混合・分散させることによって調製することができる。各成分の混合方法や分散方法は特に限定されず、従来公知の方法で混合、分散させることができる。
【0099】
また、本発明においては、前記各成分を溶媒中で又は無溶媒下で混合して液状の樹脂組成物を調製してもよい。このとき用いられる溶媒としては、各成分に対して不活性なものであれば特に限定はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(DAA)などのケトン類;ベンゼン、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、二塩基酸エステル(DBE)、3−エトキシプロピオン酸エチル(EEP)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。また、溶媒の使用量は、溶媒に混合した成分の固形分濃度が10〜60重量%となる量であることが好ましい。
【0100】
本発明の好ましい形態では、樹脂組成物の全重量に対して、エポキシ樹脂10〜90重量%、硬化剤0.1〜50重量%、フィルム形成性樹脂5〜50重量%及びフェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物1〜50重量%を含むものがより好ましい。また、樹脂組成物の全重量に対して、エポキシ樹脂20〜80重量%、硬化剤0.2〜40重量%、フィルム形成性樹脂10〜45重量%及びフェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物2〜40重量%を含むものがさらに好ましい。また、樹脂組成物の全重量に対して、エポキシ樹脂35〜55重量%、硬化剤0.5〜30重量%、フィルム形成性樹脂15〜40重量%及びフェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物3〜25重量%を含むものが特に好ましい。
【0101】
本発明の導電接続材料における樹脂組成物の含有量は、樹脂組成物の形態に応じて適宜設定することができる。
例えば、樹脂組成物が液状の場合、樹脂組成物の含有量は、導電接続材料の全重量に対して、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、25重量%以上が特に好ましい。また、95重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、75重量%以下が特に好ましい。
樹脂組成物が固形状の場合、樹脂組成物の含有量は、導電接続材料の全重量に対して、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20重量%以上が特に好ましい。また、95重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、75重量%以下が特に好ましい。
【0102】
本発明の導電接続材料において樹脂組成物層の各々の厚みは、特に制限されないが、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上が特に好ましい。また、樹脂組成物層の厚みは、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。樹脂組成物層の厚みが前記範囲内にあると、隣接する端子間の間隙に樹脂組成物を十分に充填することができ、樹脂組成物の硬化後、固化後の機械的接着強度及び対向する端子間の電気的接続を十分に確保することができ、接続端子の製造も可能にすることができる。
【0103】
本発明の導電接続材料が樹脂組成物層を複数含む場合、各樹脂組成物層の組成は同一でもよいし、用いる樹脂成分の種類や配合処方の違いなどにより異なっていてもよい。樹脂組成物層の溶融粘度や軟化温度などの物性も同一でもよいし異なっていてもよい。例えば液状の樹脂組成物層と固形状の樹脂組成物層とを組み合わせて用いてもよい。
【0104】
(2)金属箔
本発明において金属箔層は、半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔で構成される層である。金属箔層は平面視で樹脂組成物層の少なくとも一部に形成されていればよく、樹脂組成物層の全面に形成されていてもよい。
【0105】
金属箔層の形状は特に制限されなく、一定の形状が繰り返しパターン状に形成されていてもよいし、形状が不規則であってもよい。規則的な形状と不規則な形状とが混在していてもよい。図3は、金属箔層の形状の一例を示す平面模式図である。樹脂組成物層120の上に様々な形状をもつ金属箔層110が形成されている。金属箔層の形状としては、例えば、図3に示されるような点線の抜き模様状(a)、縞模様状(b)、水玉模様状(c)、矩形模様状(d)、チェッカー模様状(e)、額縁状(f)、格子模様状(g)又は多重の額縁状(h)などが挙げられる。これらの形状は一例であり、目的や用途に応じてこれらの形状を組み合わせたり、変形させて用いることができる。
【0106】
本発明の一実施態様において、接続しようとする電極が被着体の接続面全体に配置されているようなフルグリッド型の被着体を接続する場合、樹脂組成物の全面にシート状の金属箔を形成することが好ましい。
【0107】
また、接続しようとする電極が被着体の接続面の周辺部に配置されるようなペリフェラル型の被着体を接続する場合、金属箔を有効に利用する観点、及び、隣接する電極間に金属箔を残存させないという観点から、樹脂組成物の少なくとも一部に繰り返しパターン状の金属箔を形成することが好ましい。このとき、金属箔の形状は電極のピッチや形態等によって適宜選択することができる。
【0108】
本発明に使用する金属箔は、フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物の還元作用により除去可能な表面酸化膜を有するものであれば特に制限はないが、錫(Sn)、鉛(Pb)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、金(Au)、ゲルマニウム(Ge)及び銅(Cu)からなる群から選択される少なくとも2種以上の金属の合金、又は錫単体からなることが好ましい。
【0109】
これらのうち、溶融温度及び機械的物性を考慮すると、金属箔は、Sn−Pbの合金、鉛フリー半田であるSn−Biの合金、Sn−Ag−Cuの合金、Sn−Inの合金、Sn−Agの合金などのSnを含む合金からなる半田箔がより好ましい。Sn−Pbの合金を用いる場合、錫の含有率は、30重量%以上100重量%未満が好ましく、35重量%以上100重量%未満がより好ましく、40重量%以上が特に好ましい。また、100重量%未満が好ましい。また、鉛フリー半田の場合の錫の含有率は、15重量%以上100重量%未満が好ましく、20重量%以上100重量%未満がより好ましく、25重量%以上100重量%未満が特に好ましい。例えば、Sn−Pbの合金としては、Sn63−Pb(融点183℃)、Sn−3.0Ag−0.5Cu(融点217℃)、Sn−3.5Ag(融点221℃)、Sn−58Bi(融点139℃)、Sn−9.0Zn(融点199℃)、Sn−3.5Ag−0.5Bi−3.0In(融点193℃)、Au−20Sn(融点280℃)、等が好ましく挙げられる。
【0110】
金属箔は、接続しようとする電子部材や半導体装置の耐熱性に応じて適宜選択すればよい。例えば、半導体装置における端子間接続においては、半導体装置の部材が熱履歴により損傷するのを防止するため、融点が330℃以下(より好ましくは300℃以下、特に好ましくは280℃以下、さらに好ましくは260℃以下)である金属箔を用いることが好ましい。また、端子間接続後の半導体装置の耐熱性を確保するためには、融点が100℃以上(より好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上)である金属箔を用いることが好ましい。なお、金属箔の融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0111】
金属箔の厚みは、対向する端子間のギャップ、隣接する端子間の離隔距離などに応じて適宜選択することができる。例えば、半導体装置における半導体チップ、基板、半導体ウエハなどの各接続端子間の接続の場合、金属箔の厚みは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上が特に好ましく、また、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。金属箔の厚みが前記下限未満になると半田又は錫不足により未接続の端子が増加する傾向にあり、他方、前記上限を超えると半田又は錫余剰により隣接端子間でブリッジを起こし、ショートしやすくなる傾向にある。
【0112】
金属箔の作製方法としては、例えば、インゴットなどの塊から圧延により作製する方法、樹脂組成物層へ直接蒸着、スパッタ、めっきなどにより金属箔層を形成する方法が挙げられる。また、繰り返しパターン状の金属箔の作製方法としては、例えば、金属箔を所定のパターンに打抜く方法、エッチングなどにより所定のパターンを形成する方法、また、遮蔽板やマスクなどを使用することにより蒸着、スパッタ、めっきなどで形成する方法が挙げられる。
【0113】
金属箔の含有量は、導電接続材料の全重量に対して、5重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上が特に好ましい。また、100重量%未満が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下が特に好ましい。金属箔の含有量が上記下限未満になると半田又は錫不足により未接続の端子が増加する場合がある。他方、金属箔の含有量が上記上限を超えると半田又は錫余剰により隣接端子間でブリッジを起こしやすくなる。
【0114】
あるいは、金属箔の含有量を導電接続材料に対する体積比率で定義してもよい。例えば、金属箔の含有量は、導電接続材料に対して1体積%以上が好ましく、5体積%以上がより好ましく、10体積%以上が特に好ましい。また、90体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましく、70体積%以下が特に好ましい。金属箔の含有量が上記下限未満になると半田又は錫不足により未接続の端子が増加する場合がある。他方、金属箔の含有量が上記上限を超えると半田又は錫余剰により隣接端子間でブリッジを起こしやすくなる。
【0115】
本発明において導電接続材料の形態は、樹脂組成物の形態などに応じて適宜選択することができる。例えば、樹脂組成物が液状の場合は、金属箔の両面に樹脂組成物を塗布したもの、ポリエステルシート等の剥離基材上に樹脂組成物を塗布し、所定温度で半硬化(Bステージ化)等の目的で乾燥、製膜させた後に金属箔を張り合わせてフィルム状にしたもの等を導電接続材料として供することができる。樹脂組成物が固形状の場合は、有機溶剤に溶解した樹脂組成物のワニスをポリエステルシート等の剥離基材上に塗布し、所定の温度で乾燥させた後に金属箔を張り合わせ、又は、蒸着などの手法を使いフィルム状に形成したものを導電接続材料として供することができる。
【0116】
また、本発明の導電接続材料及びこれに用いられる金属箔は、端子との接触を高めるためにエンボス加工を施したものを用いることもできる。
【0117】
本発明の導電接続材料の厚みは、特に制限されないが、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上が特に好ましく、また、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。導電接続材料の厚みが前記範囲内にあると隣接する端子間の間隙に樹脂組成物を十分に充填することができる。また、樹脂成分の硬化後又は固化後の機械的接着強度及び対向する端子間の電気的接続を十分に確保することができる。また、目的や用途に応じた接続端子の製造も可能にすることができる。
【0118】
本発明で用いられる樹脂組成物が25℃で液状の場合、例えば、金属箔を液状の樹脂組成物に浸漬させ、金属箔の両面に液状の樹脂組成物を付着させて、本発明の導電接続材料を製造することができる。樹脂組成物の厚み制御が必要な場合は、液状の樹脂組成物に浸漬させた金属箔を一定の間隙を有するバーコーターを通過させる方法や液状の樹脂組成物をスプレーコーター等により吹き付ける方法により作製することができる。
【0119】
また、本発明で用いられる樹脂組成物が25℃でフィルム状の場合は、例えば、次のようにして導電接続材料を製造することができる。まず、有機溶剤に溶解した樹脂組成物のワニスをポリエステルシート等の剥離基材上に塗布し、所定の温度で乾燥させ製膜させてフィルム状の樹脂組成物を作製する。次に、剥離基材上に製膜させた樹脂組成物を2枚準備し金属箔を挟んで熱ロールでラミネートすることで、金属箔の上下に樹脂組成物を配置した時樹脂組成物/金属箔/樹脂組成物からなる3層の導電接続材料を作製することができる。また、上述のラミネート方式により、金属箔の片面に樹脂組成物を配置することで樹脂組成物/金属箔からなる2層の導電接続材料を作製することができる。
【0120】
また、巻重状の金属箔を使用する場合は、金属箔をベース基材として、金属箔の上下又は片側に前記フィルム状の樹脂組成物を熱ロールでラミネートすることで、巻重状の導電接続材料を得ることもできる。さらに、巻重状の金属箔を使用する場合、金属箔の上下又は片側に、ワニス状の樹脂組成物を直接塗布し、溶剤を揮散させることにより巻重状の導電接続材料を作製することができる。
【0121】
パターン状の金属箔を使用して導電接続材料を作製する場合、剥離基材上に金属箔を配置し、金属箔側から金型で金属箔をハーフカットし、余分な金属箔を除去することによりパターン状の金属箔を作製し、前記フィルム状の樹脂組成物を熱ロールでラミネートすればよい。パターン状の金属箔の両面に樹脂組成物を設ける場合は、前記剥離基材を剥がし、樹脂組成物が形成された面とは反対側のパターン状の金属箔の面に、フィルム状の樹脂組成物をさらにラミネートすればよい。
【0122】
本発明では、このようにして得られた導電接続材料を対向する端子間に配置し、これを調整工程及び加熱工程において段階的に温度を制御しながら加熱することで、所望の領域に導通性領域及び絶縁性領域を形成することができる。さらに、樹脂を硬化させて絶縁性領域を固定することで絶縁性領域に囲まれた導通性領域を固定することで、接続信頼性を確保すると共に、耐熱性に優れた電気的接続を実現することができる。本発明によれば、対向する端子間において導通性領域と絶縁性領域とを所望の領域に高精度に形成することができるので、微細な配線回路における多数の端子間を一括で接続することも可能である。
【0123】
本発明の接続方法は、例えば、半導体ウエハ、半導体チップ、リジッド基板、フレキシブル基板、その他の電気、電子部品に形成されている端子同士を接続する際などに用いることができる。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0125】
[実施例1]
(1)硬化性樹脂組成物の調製
表1に示した各成分を、メチルエチルケトン(MEK)に溶解して樹脂固形分40重量%の樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを、コンマコーターを用いて、ポリエステルシートに塗布し、90℃で5分間乾燥させてフィルム状の30μm厚みの硬化性樹脂組成物を得た。
【0126】
(2)硬化性樹脂組成物の溶融粘度
上記(1)で得られた硬化性樹脂組成物を3枚重ねて厚み90μmのサンプルを作製し、粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製「アレス粘弾性測定システム」)を用い、パラレルプレート25mmφ、ギャップ60μm、周波数10rad/s、昇温速度20℃/分の条件で溶融粘度を測定した。ここでは、各実施例及び比較例の調整工程と加熱工程の温度における溶融粘度を測定値とした。
【0127】
(3)導電接続材料の製造
上記(1)で得られたフィルム状の硬化性樹脂組成物を60℃、0.2MPa、0.3m/minの条件で、表1に示した組成の半田箔(5μm)の両面にラミネートし、厚み65μmの導電接続材料を製造した。
【0128】
(4)基板−基板積層体の作製
a.配置工程
上記(1)得られた導電接続材料をFR−4基材(厚み0.1mm)と回路層(銅回路、厚み12μm)からなり、銅回路上にNi/Auメッキ(厚み3μm)を施して形成される接続端子(端子径(円柱状端子の直径)50μm、隣接する端子の中心間距離100μm、隣接する端子間の最短離隔距離50μm)を有する基板に100℃、5秒の条件で仮接着(配置)した。
次に、配置工程で使用した基板と同じ仕様の基板を準備し、導電接続材料が仮接着された基板の接続端子と準備した基板の接続端子を対向して位置合わせを行い、準備した基板を導電接続材料が仮接着された基板に搭載した。
b.調整工程
次いで、熱圧着装置((株)筑波メカニクス製「TMV1−200ASB」)を用い、表1に示すように最短離隔距離(対向する端子間距離)を調整した。この時の加熱温度は100℃、加熱時間は10秒であった。
c.加熱工程
次に、熱圧着装置((株)筑波メカニクス製「TMV1−200ASB」)を用い、調整工程と同じ最短離隔距離の状態で、230℃、20秒の条件で加熱を行い対向する基板の接続端子の接続を行い基板の積層体を得た。
d.硬化工程
次に、得られた積層体を180℃、1時間の条件で加熱することにより硬化性樹脂組成物を硬化させた。
【0129】
(5)基板−基板積層体における対向する端子間の接続抵抗測定
接続抵抗は、上記(4)で得られた積層体において対向する端子間の接続抵抗を4端子法(抵抗計:岩崎通信機(株)製「デジタルマルチメータVOA7510」、測定プローブ:日置電機(株)製「ピン型リード9771」)により12点測定した。その平均値が30mΩ未満の場合を「A」、30mΩ以上100mΩ未満の場合を「B」、100mΩ以上の場合を「C」と判定した。
【0130】
(6)基板−基板積層体における対向する端子間の導通路形成性
上記(4)で得られた積層体において対向する端子10組について、その端子間の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製「JSM−7401F」)で観察し、10組全てにおいて半田により円柱状、または楕円状の導通路が形成されている場合を「A」、1組でも導通路が形成されていない端子が存在する場合を「B」、隣接している端子とショート接触している場合を「C」と判定した。
【0131】
(7)基板−基板積層体における対向する端子間の最短離隔距離測定
調整工程後及び加熱工程後の積層体の厚みをそれぞれマイクロメーターで測定し、その測定値から基板の厚み(基材100μm+銅回路12μm+Ni/Auメッキ3μm)を差し引き、調整工程後及び加熱工程後の最短離隔距離とし、硬化工程後の最短離隔距離の変化率({1−[硬化工程後の最短離隔距離]/[調整工程後の最短離隔距離]}×100)を算出した。変化率が10%未満の場合を「A」、10%以上20%未満の場合を「B」、変化率が20%以上、または半田箔が破損した場合を「C」とした。
【0132】
[実施例2]
調整工程及び加熱工程における最短離隔距離を4μmに調整した以外は、実施例1と同様にして導電接続材料の作製、基板−基板積層体の作製及び評価を行った。
【0133】
[比較例1]
調整工程及び加熱工程において端子間の最短離隔距離の制御を行わず、導電接続材料が仮接着された基板の接続端子と、準備した基板の接続端子を対向させて位置合わせし、熱圧着装置((株)筑波メカニクス製「TMV1−200ASB」)を用いて100℃、0.2MPa、30秒間圧着し、さらにこれを同じ熱圧着装置((株)筑波メカニクス製「TMV1−200ASB」)を用いて230℃、0.5MPa、120秒間圧着したこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。その後、実施例1と同様にして、得られた積層体を180℃で1時間加熱して硬化性樹脂組成物を硬化させて基板−基板積層体を得た。
比較例1で作製した基板−基板積層体に対して、実施例1及び2と同様に接続抵抗及び硬化前の積層体における対向する端子間の最短離隔距離を評価した。硬化後の積層体における対向する端子間の最短離隔距離については評価しなかった。
【0134】
結果を表1に示す。
【表1】

【0135】
表1における樹脂組成物の成分及び金属箔は以下に示したものを用いた。
(a)エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、大日本インキ化学工業(株)製「EPICLON−840S」、エポキシ当量185g/eq
(b)硬化剤:フェノールノボラック、住友ベークライト(株)製「PR−53647」
(c)フィルム形成性樹脂:変性ビフェノール型フェノキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX−6954」、重量平均分子量39,000
(d)フラックス機能を有する化合物:セバシン酸、東京化成工業(株)製「セバシン酸」
(e)シランカップリング剤:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製「KBM−303」
(f)イミダゾール:2−フェニル−4−メチルイミダゾール、四国化成工業(株)製「キュアゾール2P4MZ」
(g)半田箔:Sn/Ag/Cu=96.5/3.0/0.5(融点:217℃)、厚み5μm
【0136】
表1に示されるように、本発明の方法に従って作製した実施例1及び2の基板−基板積層体では、対向する端子間の接続抵抗が小さく、10組全てにおいて円柱状または楕円状の導通路が形成されており、対向する端子間において良好な電気的接続が得られた。
これに対して、調整工程及び加熱工程において端子間の最短離隔距離を制御しない比較例1の場合では、接続抵抗の平均値が100mΩ以上となり、良好な電気的接続が得られなかった。なお、比較例1では、接続抵抗が大きく、ショート及び断線部があることが推察されるため、導通路形成性の評価に関しては、表1中「B」または「C」とした。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の接続方法を用いることにより、電気、電子部品において電子部材間の電気的接続をより確実に行うことができる。本発明によれば、電子部材間の良好な電気的接続と高い絶縁信頼性とを両立させることができ、信頼性の高い電気的接続を実現することができる。本発明の接続方法を用いることで微細な配線回路における端子間接続を一括で行うこともできる。本発明の接続方法を用いることで、電子機器の高機能化及び小型化の要求にも対応することができる。
【符号の説明】
【0138】
10、20 …基板
11、21 …端子
110 …金属箔
120 …樹脂組成物
110a …導通性領域
120a …絶縁性領域
120b …硬化絶縁性領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物と半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔とから構成される積層構造を有する導電接続材料を用いて対向する端子間を電気的に接続する方法であって、
前記導電接続材料を対向する端子間に配置する配置工程と、
前記導電接続材料を前記金属箔の融点未満の温度で加熱し、対向する端子間の最短離隔距離を所定の範囲に調整する調整工程と、
前記最短離隔距離を前記所定の範囲に保持しながら、前記金属箔の融点以上の温度で、前記樹脂組成物の硬化が完了しないように前記導電接続材料を加熱する加熱工程と、
前記金属箔の融点未満の温度で前記樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記調整工程において、前記対向する端子間の最短離隔距離を、金属箔の厚みより大きく、且つ、導電接続材料の厚みより小さい範囲に調整する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記調整工程において、前記対向する端子間の最短離隔距離を、金属箔の厚み以下であり、且つ、前記対向する端子間が互いに接触しない範囲に調整する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記加熱工程において、前記金属箔が溶融し、溶融金属が対向する端子間に凝集して対向する端子間を電気的に接続する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融金属と前記端子との金属結合により対向する端子間を電気的に接続する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記調整工程において、前記対向する端子間の最短離隔距離を、隣接する端子間の最短離隔距離よりも小さい範囲に調整する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記調整工程における樹脂組成物の溶融粘度が0.1Pa・s〜10000Pa・sである、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記加熱工程における樹脂組成物の溶融粘度が0.01Pa・s〜100Pa・sである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属箔の融点が100℃〜330℃である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記調整工程における導電接続材料の加熱温度が60℃〜200℃である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱工程における導電接続材料の加熱温度が、前記金属箔の融点より50℃高い温度未満である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱工程における導電接続材料の加熱温度が140℃〜340℃である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化工程における導電接続材料の加熱温度が80℃〜310℃である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記導電接続材料が樹脂組成物層/金属箔層/樹脂組成物層からなる積層構造を含むものである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記導電接続材料が樹脂組成物層/金属箔層からなる積層構造を含むものである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記樹脂組成物が、エポキシ樹脂、硬化剤ならびにフェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物を含むものである、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記樹脂組成物が、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれるフィルム形成性樹脂をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記樹脂組成物が、樹脂組成物の全重量に対し、エポキシ樹脂10〜90重量%、硬化剤0.1〜50重量%、フィルム形成性樹脂5〜50重量%ならびにフェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物1〜50重量%を含むものである、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物が、下記一般式(1)で示される化合物を含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
HOOC−(CH2)n−COOH (1)
[式中、nは、1〜20の整数である。]
【請求項20】
前記フェノール性水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物が、下記一般式(2)及び/又は(3)で示される化合物を含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【化5】

[式中、R1〜R5は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、但し、R1〜R5の少なくとも一つは水酸基である。]
【化6】

[式中、R6〜R20は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、但し、R6〜R20の少なくとも一つは水酸基又はカルボキシル基である。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−165879(P2011−165879A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26754(P2010−26754)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】