説明

端末に蓋部を有する長尺トリム材の製造方法

【課題】
長尺トリム材を構成する本体部の端末を裏側に折り曲げて形成された蓋部の折曲げ稜線が前記長尺トリム材の軸線と非直角で交叉する形状であるときに不可避的に発生する特有の不具合を防止して蓋部を成形可能にすることである。
【解決手段】
雄型F1 と雌型F2 とが型合わせされる途中において、雄型F1 の型上面に支持されたモール本体部1の端末の折曲げ予定部C’を雌型F2 に接触させて裏側に折り曲げながら、両型F1 ,F2 により形成される蓋部成形空間V1 に収容する際に、折曲げ稜線(L0 )と鋭角(α)をなす側の折曲げ予定部C’のポリマー材料を前記鈍角(β)の側に流動させて成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のルーフモール等の熱可塑性ポリマー材料から直線長尺状に成形されたトリム材の端末の先端をプレス加工により裏面側に折り曲げて、端末を塞ぐように蓋部を成形する長尺トリム材の製造方法に関し、更に詳しくは、トリム材の本体部の長手方向に対する蓋部の折曲げ稜線が非直角である端末に蓋部を有する長尺トリム材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、長尺トリム材の一つとして、車両のルーフパネルの巾方向(横方向)の両端部に前後方向に沿って形成されたルーフ溝に沿って取付けられるルーフモールがある。このルーフモールの主体となる部分である厚板状の本体部の先端側の端末には、該端末を塞ぐために蓋部が裏側に向けてほぼ直角に折り曲げられている。トリム材の本体部の先端端末部(折曲げ予定部)を加熱により軟化させておき、この状態で前記先端端末部をプレス成形により裏側に折り曲げて蓋部を一体に成形する方法に関しては、各種の方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に開示のルーフモールの製造方法は、その蓋部の折曲げ稜線がルーフモールの本体部の長手方向と直交した形状のものである。従って、特許文献1に開示の製造方法によって、本体部の端末の折曲げ予定部を予め加熱して軟化させた状態で、プレス型を構成する雄型(固定型)と雌型(可動型)とによって、軟化された前記折曲げ予定部を本体部の裏側にそのまま折り曲げて蓋部を形成できる。換言すると、上記のように折曲げ予定部を本体部の裏側に折り曲げても、折曲げ予定部の両側縁が本体部の巾方向にずれない。
【0004】
ここで、長尺トリム材(例えば、上記ルーフモール)において、その長手方向の端末蓋部をルーフ溝の端末形状と整合又は一致させるために、折曲げ予定部を裏面側に折り曲げて成形された蓋部の長手方向軸線がルーフモールの軸線(長尺トリム材の長手方向に沿った線)と同一方向を保つこと(第1条件)、及び蓋部の折曲げ稜線と前記軸線とが非直角をなすこと〔図13及び図14に示されるように、折曲げ稜線(L0 )とルーフモールの巾方向の一方の側縁(L11)との交叉角度が鋭角(α)であって、他方の側縁(L12)との交叉角度が鈍角(β)であること〕(第2条件)の2つの形状的な条件を満たして成形することが求められる場合がある。
【0005】
上記の場合、図13及び図14に示されるように、折曲げ稜線(L0 )が軸線(L10)と非直角をなすようにして長尺トリム材の先端端末を裏側に折り曲げると、折り曲げられた部分の先端縁(L13)は軸線(L10)から外れた方向に曲がって変位する。即ち、折り曲げられた先端部分は、前記鋭角(α)側に向けて変位し、第2条件である「蓋部の折曲げ稜線と軸線とルーフモールのが非直角をなすこと」の条件は満たされるが、第1条件である「蓋部の長手方向軸線がルーフモールの軸線(長手方向と同一)と同一方向を保つこと」の条件は満たされない。
【特許文献1】特開2004−195745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長尺トリム材を構成する本体部の端末を裏側に折り曲げて形成された蓋部の折曲げ稜線が前記長尺トリム材の軸線と非直角で交叉する形状であるときに不可避的に発生する特有の上記不具合を生じないで蓋部の成形を可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために請求項1の発明は、熱可塑性ポリマー材料から直線状の長尺材に押出成形されたトリム材の表裏両面を有する本体部の長手方向の端末を、雄型と雌型を有し開閉可能なプレス型を用いて前記本体部の長手方向の軸線と同一の延長線上で裏面側に向けて折り曲げて塑性変形させ、前記本体部の端末に折曲げ稜線部を形成すると共に、前記端末を外側から覆う蓋部を本体部と一体に成形する長尺トリム材の製造方法であって、前記トリム材の蓋部を形成する折曲げ予定部を除く端末部の裏面を支持する裏面受部が形成されていると共に、前記裏面受部の長手方向端末に前記軸線と非直角に交叉して前記トリム材の一方の側縁と鈍角に、他方の側縁と鋭角に各々交叉する凸縁部を備えた型上面と、前記裏面受部の凸縁部から連続して前記折曲げ方向に延在する蓋部裏面成形部が形成された型側面を有する雄型と、前記雄型の裏面受部と凸縁部及び蓋部裏面成形部の各々の形状と略反転した形状の凹溝状の表面受部と、前記表面受部の長手方向端末に凹縁部を備えた型下面と、前記凹縁部から連続して前記折曲げ方向に延在する凹状の蓋部表面成形部が形成された型側面を有する雌型とから成り、両型を閉じたとき、前記裏面受部と表面受部との間にトリム材を挟持する溝状の挟持空間が、前記蓋部裏面成形部と蓋部表面成形部との間に蓋部を成形する蓋部成形空間が各々形成されるプレス型を用い、前記本体部の折曲げ予定部を加熱して軟化させる工程と、前記両型が開いているとき、前記本体部の折曲げ予定部を雄型の凸縁部から突出させ、端末部の裏面を裏面受部に支持させてトリム材を雄型に配置する工程と、両型を閉じる途中に前記折曲げ予定部を雌型に接触させて、雄型の凸縁部から突出した折曲げ予定部が幅方向に変位するのを阻止した状態で凸縁部を折曲げ中心として前記折曲げ予定部を裏面側に折り曲げる工程と、両型を閉じきるまでの間に、前記鋭角で交叉する側の折曲げ予定部の軟化したポリマー材料を雄型の蓋部裏面成形部と雌型の蓋部表面成形部とで挟んで折曲げ予定部の厚さ方向に圧縮して、前記鈍角で交叉する側に向けて折曲げ予定部の幅方向に流動させ、流動したポリマー材料で前記鈍角側の成形空間を埋めて前記蓋部を本体部と一体に成形すると共に、前記折曲げ中心部では雄型の凸縁部と雌型の凹縁部とで挟んで蓋部の根元側にトリム材の軸線と非直角に交叉する折曲げ稜線を成形する工程と、を含むことを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、プレス型の両型を閉じる迄の間で、折曲げ稜線と本体部の長手方向の一方の側縁とが鋭角で交叉する側の折曲げ予定部の軟化したポリマー材料が折曲げ予定部の厚さ方向に圧縮されて、前記折曲げ稜線と本体部の長手方向の他方の側縁とが鈍角で交叉する側に向けて巾方向に流動させられ、その結果流動されたポリマー材料により前記鈍角の側に形成される成形空間が埋められて、本体部の長手方向と非直角の折曲げ稜線を有する蓋部を本体部と一体に成形できる。この結果、本体部の折曲げ予定部を裏面側に折り曲げられて成形された蓋部がルーフモールの軸線(長手方向と同一)と同一方向を保つこと(第1条件)、及び蓋部の折曲げ稜線と前記軸線とが非直角をなすこと(第2条件)の2つの形状的な条件を満たして、長尺トリム材の本体部の端末に蓋部を成形できる。
【0009】
また、本体部の長手方向と折曲げ稜線との非直角の交叉角度とは無関係に上記した折曲げ予定部を成形するポリマー材料が成形空間の生じている側に流動するために、前記交叉角度の制限を受けることなく、折曲げ稜線が本体部の長手方向の非直角な蓋部を有する長尺トリム材を成形できる。従って、折曲げ稜線が本体部の長手方向と非直角な蓋部を有する長尺トリム材の端末成形の自由度が高まる。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記本体部の折曲げ予定部を加熱して軟化させる工程の前に、トリム材の長手方向の端末の一部を除去して、残部で略平板状の折曲げ予定部を成形する工程を含むことを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の上記作用効果に加えて、端末の一部分を切除することにより、折曲げ予定部を略板状にするので、後工程の折曲げを容易にできる。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、プレス型の両型を閉じて折曲げ予定部を折り曲げて蓋部を成形する工程において、前記鋭角側において折曲げ予定部の厚さを元の厚さよりも減少させ、鈍角側で元の厚さよりも増大させることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明の上記作用効果に加えて、プレス型の両型を閉じて折曲げ予定部を折り曲げて蓋部を成形する工程において、鋭角側から鈍角側への軟化したポリマー材料の流動量が多くなって、前記成形空間を流動により移動した材料で確実に埋められる。その結果、鈍角側において材料不足による欠損部を有する蓋部の発生がなくなって、成形歩留りが高まる。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記長尺トリム材は、車両用のルーフ溝に装着されるルーフモールであって、前記鋭角(α)は、70°ないし82°であって、前記鈍角(β)は、(180°−α)であることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかの発明の作用効果に加えて、車両のルーフパネルの巾方向の両端部の溝に嵌め込んで取付けられるルーフモールの本体部の先端側の端末には蓋部が一体に形成されていて、本体部の長手方向に対する前記蓋部の折曲げ稜線の角度は、70°ないし82°の範囲のものが多く、このような角度であっても容易に成形できる。
【0016】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記折曲げ予定部を裏側に折り曲げて成形した後に、前記蓋部の不要な周縁部をトリムする工程を含むことを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかの発明の作用効果に加えて、折り曲げて成形された蓋部の周縁部をトリムすることにより、蓋部を所望の形状に簡単に形成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プレス型の両型を閉じる迄の間で、折曲げ稜線と本体部の長手方向の一方の端縁とが鋭角で交叉する側の折曲げ予定部の軟化したポリマー材料が折曲げ予定部の厚さ方向に圧縮されて、前記折曲げ稜線と本体部の長手方向の他方の端縁とが鈍角で交叉する側に向けて巾方向に流動させられ、その結果流動されたポリマー材料により前記鈍角の側に形成される成形空間が埋められて、本体部の長手方向と非直角の折曲げ稜線を有する蓋部を本体部と一体に成形できる。このため、蓋部の長手方向軸線がルーフモールの軸線(長手方向と同一)と同一方向を保つこと(第1条件)、及び蓋部の折曲げ稜線と前記軸線とが非直角をなすこと(第2条件)の2つの形状的な条件を満たして、長尺トリム材の本体部の端末に蓋部を成形できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態、及び他の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1は、長手方向と非直角な折曲げ稜線(L0 )を有する蓋部Cを端末部に成形する前の中間製品であるルーフモールM’の一般部63、端末部近傍(一部欠落脚部2’を有する部分)62、及び端末部61を示す側面図である。図2は、図1のX1 −X1 線断面図である。図3は、図1のX2 −X2 線断面図である。図4は、図1のX3 −X3 線断面図である。図5は、プレス型の雄型(固定型)F1 の裏面受面22にルーフモールM’の端末部近傍62がセットされた折曲げ成形前の状態の側面断面図である。図6は、プレス型の雄型F1 に対して雌型F2 が型閉めされて、装飾体1の折曲げ予定部C’が裏側に折り曲げられた状態を示す側面断面図である。図7は、図6の部分拡大図である。図8は、図7のY−Y線断面図である。図9Aは、雌型F2 の斜視図及び図9Bは、雄型F1 の斜視図である。図10は、ルーフモールMの端末部近傍62の端末に裏側に向けて蓋部Cが一体に成形された製品としてのルーフモールMの斜視図である。図11は、蓋部C及び端末部近傍62の平面図である。なお、図5において、ルーフモールM’は、一部破断表示してあり、図6において、ルーフモールM)は断面表示していない。
【0020】
最初に、図1ないし図4を参照して、長手方向と非直角な折曲げ稜線L0 を有する蓋部Cを端末部に成形する前の中間製品であるルーフモールM’について説明する。ルーフモールM’は押出成形により直線長尺状に成形されて、全長に亘って同一断面形状の長尺材を所定長で切断したものである。ルーフモールM’は、モール本体部110よりなり、一般部61において、モール本体部10は、ルーフ溝(図示せず)の全体を覆う略板状の装飾体1と、この装飾体1の裏面であって、その巾方向の中央部にルーフ溝の底面の側に向けて一体成形された脚部2と、この脚部2の下端部の巾方向に張出し部3を介して突出して一体に成形されて、ルーフ溝の両内側面に弾接する左右一対の弾性リップ部4とを有している。前記装飾体1及び脚部2は、硬質(JIS−K7215によるデュロメータ硬さがHDA80〜100程度)の熱可塑性エラストマーにより成形され、前記張出し部3及び弾性リップ部4は、弾性に富む軟質(JIS−K7215によるデュロメータ硬さがHDA60〜80程度)の熱可塑性エラストマーにより成形される。装飾体1の表層部には、硬質(JIS−K7215によるデュロメータ硬さがHDD40〜60程度)の熱可塑性エラストマーにより成形された意匠層5が一体に形成されている。なお、脚部2には、補強と直線性維持のための金属製の芯材6が埋設され、更に脚部2の両側面には、製品であるルーフモールMがルーフ溝に嵌め込まれた状態で、その長手方向の両端部をクリップを介してルーフ溝の底面に固定させるための突部2aが長手方向に沿って形成され、脚部2の底面には、ルーフ溝の底部に形成される左右の各パネルの接合部をシールするシーラー(図示せず)との干渉を避けるための凹溝2bが形成されている。
【0021】
図1において、中間製品であるルーフモールM’は、端末から長さL1 である端末部61においてモール本体部10の脚部2の全体が切除され、長さL2 である端末部近傍62では、モール本体部10の脚部2の略下半部が切除されて残った一部欠落脚部2’が後述の雄型F1 の巾方向位置決め溝23に嵌合されて、ルーフモールM’の巾方向の位置決めを行う第1位置決め部11となる。端末部近傍62との境界部における一般部63の脚部2の略下半部の先端面2cは、前記雄型F1 の型合せ面26(図9参照)と反対側の面25(図5参照)に当接してルーフモールM’の長手方向の位置決めを行う第2位置決め部12となっている。端末部61では、脚部2の全部が切除されて装飾体1のみが残っていて、この部分が折曲げ予定部C’となる。
【0022】
図10及び図11に示されるように、製品であるルーフモールMの蓋部Cの折曲げ稜線(L0 )は、直線長尺状のルーフモールMの軸線(長手方向)〔L10〕と非直角であって、ルーフモールの一方の側縁(L11)と鋭角(α)で交叉し、他方の側縁(L12)と鈍角(β=180°−α)で交叉している。ここで、前記鋭角(α)〔その結果として鈍角(β)〕は、車両の窓開口の上縁の平面形状に大きく左右されるものでって、一般の車両では前記鋭角(α)は70°ないし82°〔その結果とし、前記鈍角(β)は、110°ないし98°〕である。装飾体1の折曲げ予定部C’を裏面側に折り曲げて前記蓋部Cを成形するためのプレス型は、雄型(固定型)F1 と雌型(可動型)F2 とから成って、雄型F1 の蓋部裏面成形面24と雌型F2 の蓋部表面成形面32とは、いずれも成形面自体は平面状であると共に、それぞれ雄型F1 の後述する嵌合突部21の側面28及び雌型F2 の内側壁面39と前記鋭角(α)〔又は鈍角(β)〕となるように交叉して非直角となっている。
【0023】
次に、図5ないし図9A.9Bを参照して、本発明の製造方法に使用されるプレス型について簡単に説明する。プレス型は、型上面の裏面受面22に中間製品であるルーフモールM’を位置決めして支持する雄型(固定型、下型)F1 と、この雄型F1 の上面に支持されたルーフモールM’を上方から覆って、端末部61の折曲げ予定部C’を折曲げ成形するための雌型(可動型、上型)F2 とで構成される。ブロック状をした雄型F1 は、その先端部に他の部分よりも巾の狭い嵌合突部21が突出して形成されている。雄型F1 の型上面は全体が同一の平面状に形成された裏面受面(モール支持面)22となっている。裏面受面22には、中間製品であるルーフモールM’の端末部近傍62の一部欠落脚部2’を嵌合して前記ルーフモールM’の巾方向の位置決めを行う直線状の巾方向位置決め溝23が全長に亘って長手方向に沿って形成されている。前記嵌合突部21の先端面は、製品であるルーフモールMの蓋部Cの折曲げ稜線(L0 )がルーフモールMの軸線(長手方向)〔L10〕に対して非直角であるのに対応し、前記嵌合突部21の側面28に対して非直角に傾斜して形成されていて、蓋部裏面成形面24となっている。雄型F1 の裏面受面22と蓋部裏面成形面24との接続部は凸縁部27となっていて、前記凸縁部27は、裏面受面22で支持されるモール本体部の一方の側縁(L11)に対して鋭角(α)で、他方の側縁(L12)に対して鈍角(β)で各々交叉している。また、雄型F1 の嵌合突部21の蓋部裏面成形面24と反対側の端面は、ルーフモールM’の一般部63と端末部近傍62の境界部の脚部2の先端面2cを当接させて、雄型F1 に対するルーフモールM’の長手方向の位置決めを行う長手方向位置決め面25となっている。雄型F1 の嵌合突部21の巾(W1 )は、ルーフモールM’の装飾体1の巾(W1 )〔図11参照〕と同一であり、雄型F1 の残りの部分の巾(W2 )は前記巾(W1 )よりも広くなっていて、巾の異なる2つの部分の接続部は、前記巾方向位置決め溝23の長手方向に対して直交する型合せ面26となっている。
【0024】
一方、雌型F2 は前記雄型F1 に対して型合せされて、端末部61の折曲げ予定部C’を裏側に折り曲げて蓋部Cを成形すると、前記蓋部Cの折曲げ稜線(L0 )が前記ルーフモールM’の軸線(長手方向)に対して非直角となって成形可能な形状になっている。即ち、雌型F2 の長手方向の一端部には、雄型F1 の嵌合突部21を嵌合可能な嵌合凹部31が形成されている。前記嵌合凹部31の先端側の内壁面は、雄型F1 の長手方向(ルーフモールM’の軸線方向)に対して傾斜して非直角となっていて、蓋部表面成形面32となっていて、雄型F1 の蓋部裏面成形面24の雄型F1 の型合せ面26に対する傾斜角度より緩やかになっている。即ち、雄型F1 の蓋部裏面成形面24の雄型F1 の型合せ面26との交叉角度よりも、雌型F2 の蓋部表面成形面32の雄型F1 の型合せ面26との交叉角度の方が小さくなっている。図8に示されるように、雄型F1 と雌型F2 が型合わせされたとき、雄型F1 の蓋部裏面成形面24と雌型F2 の蓋部表面成形面32とで囲まれて形成される空間が蓋部成形空間V1 となる。雌型F2 の下面には、嵌合凹部31の部分まで連続して、ルーフモールM’の装飾体1が嵌合されてその表面に密着する巾(W1 )の溝状の表面受面33が全長に亘って形成されている。雄型F1 と雌型F2 が型合わせされたとき、雄型F1 の型上面である裏面受面22と雌型F2 の型下面である表面受面33とで、装飾体1を上下から挟持する挟持空間V2 (図6参照)が形成される。雌型F2 の嵌合凹部31が形成された部分と、残りの部分とは、その厚さ(高さ方向の寸法)が大きく異なっていて、この厚さが異なる部分に、雄型F1 の型合せ面26に当接して両型F1 ,F2 の型合せを行うための型合せ面34が形成されている。
【0025】
「背景技術」の項目で詳述したように、蓋部Cの折曲げ稜線(L0 )がルーフモールM’の軸線と非直角となるようにして、装飾体1の折曲げ予定部C’を裏側にそのまま折り曲げる場合には、ルーフモールM’の側縁(L12)と鈍角(β)をなす側に、成形材料が充填されなくて空間のまま残る余剰空間部V1a(図8参照)が形成されてしまう。このため、図8に示されるように、前記蓋部成形空間V1 は、蓋部Cの折曲げ稜線(L0 )とルーフモールM’の側縁(L11)とが鋭角(α)をなす側において薄く、一方折曲げ稜線(L0 )とルーフモールM’の側縁(L12)とが鈍角(β)をなす側において厚く形成されていて、装飾体1の折曲げ予定部C’の折曲げ途中において、折曲げ予定部C’を成形している軟化した熱可塑性ポリマー材料を鈍角(β)側の方から前記余剰空間部V1aの側に流動させて、流動された材料により埋めることにより、目的形状の蓋部Cを成形する。
【0026】
また、雌型F2 の蓋部表面成形面32には、トリミング用突部35が形成され、折曲げ予定部C’を裏側に折り曲げられて形成された蓋部Cの全体のうち前記トリミング用突部35により薄肉に形成された部分から外側の部分を切除することにより、最終形状の蓋部Cが成形される。図9A.図9B及び図10に示されるように、本実施例の蓋部Cは、装飾体1の折曲げ予定部C’を裏側に折り曲げて形成された蓋部Cの下端部と左右方向の一方の端部とが切除されて形成される。
【0027】
図5及び図6に示されるように、前記雌型F2 は、上下動可能な可動盤41の下面の案内レール42に水平に支持されて、空圧シリンダ(図示せず)等の駆動ロッド43により前記可動盤41に対して水平方向に移動可能に支持されている。型開き時においては、図5に示されるように、雌型F2 は雄型F1 の斜上方に配置されていて、雌型F2 は、前記可動盤41の下降速度(K1 )と可動盤41に対する雌型F2 の水平移動速度(K2 )とで合成された大きさ及び方向を有する速度(K)で斜め方向に移動して、型上面である裏面受面22にルーフモールM’が支持されている雄型F1 に型合せされる。
【0028】
また、図5に示されるように、中間製品であるルーフモールM’の一部欠落脚部2’(第1位置決め部11)を雄型F1 の巾方向位置決め溝23に嵌合させると共に、完全脚部2の先端面2c(第2位置決め部12)を雄型F1 の位置決め面25に当接させると、雄型F1 に対してルーフモールM’は、巾方向及び長手方向の双方の位置決めが行われて、装飾体1の先端部の折曲げ予定部C’は、雄型F1 の前端から突出して片持ち状となって支持される。なお、ルーフモールM’の端末部近傍62の一部欠落脚部2’から巾方向に延びる突部を、射出成形等により形成することで、長手方向の位置決めを行ってもよい。本実施例においては、装飾体1の折曲げ予定部C’を上記片持ち状態において加熱して軟化させるために、片持ち状態の折曲げ予定部C’の直下には、近赤外線加熱装置Hが配置されている。この近赤外線加熱装置Hは、近赤外線ランプ(例えば、ハロゲンランプ)51と、この近赤外線ランプ51の光を集めて焦点を形成するように反射する反射鏡52とを備えている。これにより、折曲げ予定部C’の加熱を必要とする領域だけ照射して流動可能な状態にまで軟化させ、他の加熱不要部分を加熱することが防止されるようになっている。
【0029】
次に、上記した雄型F1 と雌型F2 とから成るプレス型を使用して、中間製品であるルーフモールM’の折曲げ予定部C’を裏側に折り曲げる方法について、工程毎に説明する。まず、図5に示されるように、雌型F2 が雄型F1 の斜上方に配置されて、両型F1 ,F2 が開いている状態において、中間製品であるルーフモールM’の端末部近傍62の一部欠落脚部2’(第1位置決め部11)を雄型F1 の巾方向位置決め溝23に嵌合させると共に、ルーフモールM’の一般部63と端末部近傍62の境界部の脚部2の先端面2c(第2位置決め部12)を雄型F1 の長手方向位置決め面25に当接させる。これにより、雄型F1 に対するルーフモールM’の巾方向及び長手方向の双方の位置決めが行われて、ルーフモールM’の一部欠落脚部2’を有する端末部近傍62の装飾体1が雄型F1 の裏面受面22に密着して支持されると共に、ルーフモールM’の端末部61の折曲げ予定部C’の全体が雄型F1 に対して長手方向に突出して片持ち状に支持される。
【0030】
上記のように、ルーフモールM’の端末部61の折曲げ予定部C’が雄型F1 から片持ち状となって突出している状態において、近赤外線加熱装置Hにより折曲げ予定部C’の要加熱領域だけ照射して軟化させる。
【0031】
次に、図5に示されるように、雌型F2 を取付けている可動盤41を下方に移動させると共に、可動盤41に対して雌型F2 を水平方向に移動させると、方向が90°異なる2つの速度が合成されて、雄型F1 に対して雌型F2 は、斜上方から斜下方に向けて移動する。例えば、可動盤41の下降速度と、可動盤41に対する雌型F2 の水平移動速度とが一定の場合には、雄型F1 に対して雌型F2 は斜下方に向けて直線的に移動し、可動盤41の下降速度と、可動盤41に対する雌型F2 の水平移動速度とが等しい場合には、雌型F2 は斜下方に向けて45°の角度で直線移動する。
【0032】
ここで、雄型F1 に対して片持ち状に支持されて突出しているルーフモールM’の端末部61の折曲げ予定部C’は、軟化されていても外力が作用しない限り大きく撓むことはないので、ルーフモールM’の軸線(長手方向)にほぼ沿っている。このため、雌型F2 が上記のように斜下方に向けて移動すると、折曲げ予定部C’の外側折曲げ部7よりも先端側に所定距離だけ離れた折曲げ予定部C’の先端表面に雌型F2 の下側の先端部37が当接し、折曲げ予定部C’は、雄型F1 の凸縁部27を折曲中心として裏側に折り曲げられ始める。最終的に、図6ないし図8に示されるように、雄型F1 と雌型F2 の各型合せ面26,34が互いに密着して、両型F1 ,F2 が型合せされて、雌型F2 の嵌合凹部31に雄型F1 の嵌合突部21が嵌合されると、雄型F1 の蓋部裏面成形面24と雌型F2 の蓋部表面成形面32と雌型F2 の内壁面36(図8参照)とで形成される蓋部成形空間V1 内に軟化した折曲げ予定部C’の材料が流動して入り込む。また、上記のようにして折曲げ予定部C’が折り曲げられると、折曲げ予定部C’は、折曲げ途中においてルーフモールM’の巾方向にずれようとするが、折曲げ予定部C’のずれようとする側縁部は、雌型F2 の内壁面36の存在によって前記「ずれ」が確実に防止される。
【0033】
また、図8に示されるように、前記蓋部成形空間V1 の横断面は、折曲げ稜線(L0 )と側縁(L12)とのなす角が鈍角(β)となる側に向けて徐々に厚く形成されている。このため、鋭角(α)の側の成形材料は、蓋部成形空間V1 に対して材料が余剰となり、雄型F1 の蓋部裏面成形面24と雌型F2 の蓋部表面成形面32との間で厚さ方向に押圧されるが、鈍角(β)の側の成形材料は蓋部成形空間V1 に対して材料が不足して、雄型F1 の蓋部裏面成形面24と雌型F2 の蓋部表面成形面32との間で厚さ方向に僅かに圧縮(押圧)されるか、或いは全く圧縮(押圧)されない。このため、鋭角(α)の側の余剰材料は、鈍角(β)の側(即ち、蓋部成形空間V1 の余剰空間部V1aの側)に向けてルーフモールM’の巾方向に流動する。この結果、前記余剰空間部V1aが流動した材料により充填されて、蓋部Cに材料欠損による欠落部の発生がなくなる。また、図7で拡大して示されているように、雌型F2 の嵌合凹部31における蓋部Cの外側折曲げ部7(図10参照)を成形する部分は円弧状の凹縁部38に形成されているため、圧縮成形(プレス成形)された蓋部Cの外側折曲げ部7は、その断面が対応する凹縁部38の円弧形状に成形される。なお、図7において、7a,7bは各々外側折曲げ部7の始点及び終点を示す。また、図8において、2点鎖線は、プレス成形前の折曲げ予定部C’の横断面形状を示し、折曲げ予定部C’の上記圧縮成形(プレス成形)により、鋭角(α)の側の材料が鈍角(β)の側に流動して余剰空間部V1aが充填されることが分かる。
【0034】
次に、圧縮成形されて形成された蓋部Cが冷却固化して、各成形型F1 ,F2 を開いても全体形状を維持できる状態に至ったときに各成形型F1 ,F2 を開くと、図10で2点鎖線で示されるように、蓋部Cに雌型F2 のトリミング用突部35の全体形状に対応した薄肉の切除溝8が形成される。この切除溝8よりも外側の不要部9を前記切除溝8の部分で切除すると、図10及び図11で実線で示されるように、製品であるルーフモールMの端末近傍部62の端末に、ルーフモールMの軸線(長手方向)と非直角の折曲げ稜線(L0 )を有する目的形状の蓋部CがルーフモールMの軸線の方向に沿って一体に成形される。なお、本実施例では雄型F1 を固定型(下型)、雌型F2 を可動型(上型)としたが、雌型が固定型(下型)、雄型が可動型(上型)であってもよく、両方の型が可動型であってもよい。
【0035】
また、図12は、半径の大きな凹縁部38’を備えた雌型F2'と前記雄型F1 とで、ルーフモールM’の折曲げ予定部C’を裏側に向けて折り曲げた状態の断面図である。雌型F2'の凹縁部38’が前記凹縁部38よも半径が大きいために、成形された蓋部Cの外周側の折曲げ長(わん曲部の長さ)が長くなって、樹脂材料が雌型F2 ’の凹縁部38’により圧接されるために、蓋部Cの折曲げ部7’の外側の表面にへこみ等が発生しなくなる。なお、図12において、7a’、7b’は、各々折曲げ部7’の始点及び終点を示す。なお、ルーフモールMの材料、材質、硬度等は上記実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】長手方向と非直角な折曲げ稜線(L0 )を有する蓋部Cを端末部に成形する前の中間製品であるルーフモールM’の一般部63、端末部近傍62、及び端末部61を示す側面図である。
【図2】図1のX1 −X1 線断面図である。
【図3】図1のX2 −X2 線断面図である。
【図4】図1のX3 −X3 線断面図である。
【図5】プレス型の雄型F1 の裏面受面(モール支持面)22にルーフモールM’の端末部近傍62がセットされた折曲げ成形前の状態の側面断面図である。
【図6】プレス型の雄型F1 に対して雌型F2 が型閉めされて、ルーフモールM’の折曲げ予定部C’が裏側に向けて折り曲げられた状態を示す側面断面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】図7のY−Y線断面図である。
【図9A】雌型F2 を雄型F1 の側から斜めに見た斜視図である。
【図9B】雄型F1 を雌型F2 の側から斜めに見た斜視図である。
【図10】ルーフモールMの端末部近傍62の端末に裏側に向けて蓋部Cが一体に成形された製品としてのルーフモールMの斜視図である。
【図11】製品としてのルーフモールMの蓋部C及び端末部近傍62の平面図である。
【図12】折曲げ半径の大きな折曲げ部7’を有する別のルーフモールM”の図7に相当する図である。
【図13】折曲げ稜線(L0 )が軸線(L10)と非直角をなすようにして自由状態で端末部を裏側に向けて折り曲げた長尺トリム材の平面図である。
【図14】図13のZ矢視図である。
【符号の説明】
【0037】
C:蓋部
C’:装飾体の折曲げ予定部
1 :雄型
2 :雌型
M:ルーフモール(長尺トリム材)
M’:ルーフモールの中間品
0 :折曲げ稜線
10:装飾体の軸線
1 :蓋部成形空間
2 :挟持空間
1:装飾体
22:雄型の裏面受面(型上面)
24:蓋部裏面成形面
27:凸縁部
32:蓋部表面成形面
33:表面受面(型下面)
38:凹縁部
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のルーフモール等の熱可塑性ポリマー材料から直線長尺状に成形されたトリム材の端末の先端をプレス加工により裏面側に折り曲げて、端末を塞ぐように蓋部を成形する長尺トリム材の製造方法に関し、更に詳しくは、トリム材の本体部の長手方向に対する蓋部の折曲げ稜線が非直角である端末に蓋部を有する長尺トリム材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、長尺トリム材の一つとして、車両のルーフパネルの巾方向(横方向)の両端部に前後方向に沿って形成されたルーフ溝に沿って取付けられるルーフモールがある。このルーフモールの主体となる部分である厚板状の本体部の先端側の端末には、該端末を塞ぐために蓋部が裏側に向けてほぼ直角に折り曲げられている。トリム材の本体部の先端端末部(折曲げ予定部)を加熱により軟化させておき、この状態で前記先端端末部をプレス成形により裏側に折り曲げて蓋部を一体に成形する方法に関しては、各種の方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に開示のルーフモールの製造方法は、その蓋部の折曲げ稜線がルーフモールの本体部の長手方向と直交した形状のものである。従って、特許文献1に開示の製造方法によって、本体部の端末の折曲げ予定部を予め加熱して軟化させた状態で、プレス型を構成する雄型(固定型)と雌型(可動型)とによって、軟化された前記折曲げ予定部を本体部の裏側にそのまま折り曲げて蓋部を形成できる。換言すると、上記のように折曲げ予定部を本体部の裏側に折り曲げても、折曲げ予定部の両側縁が本体部の巾方向にずれない。
【0004】
ここで、長尺トリム材(例えば、上記ルーフモール)において、その長手方向の端末蓋部をルーフ溝の端末形状と整合又は一致させるために、折曲げ予定部を裏面側に折り曲げて成形された蓋部の長手方向軸線がルーフモールの軸線(長尺トリム材の長手方向に沿った線)と同一方向を保つこと(第1条件)、及び蓋部の折曲げ稜線と前記軸線とが非直角をなすこと〔図13及び図14に示されるように、折曲げ稜線(L0 )とルーフモールの巾方向の一方の側縁(L11)との交叉角度が鋭角(α)であって、他方の側縁(L12)との交叉角度が鈍角(β)であること〕(第2条件)の2つの形状的な条件を満たして成形することが求められる場合がある。
【0005】
上記の場合、図13及び図14に示されるように、折曲げ稜線(L0 )が軸線(L10)と非直角をなすようにして長尺トリム材の先端端末を裏側に折り曲げると、折り曲げられた部分の先端縁(L13)は軸線(L10)から外れた方向に曲がって変位する。即ち、折り曲げられた先端部分は、前記鋭角(α)側に向けて変位し、第2条件である「蓋部の折曲げ稜線とルーフモールの軸線とが非直角をなすこと」の条件は満たされるが、第1条件である「蓋部の長手方向軸線がルーフモールの軸線(長手方向と同一)と同一方向を保つこと」の条件は満たされない。
【特許文献1】特開2004−195745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長尺トリム材を構成する本体部の端末を裏側に折り曲げて形成された蓋部の折曲げ稜線が前記長尺トリム材の軸線と非直角で交叉する形状であるときに不可避的に発生する特有の上記不具合を生じないで蓋部の成形を可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために請求項1の発明は、熱可塑性ポリマー材料から直線状の長尺材に押出成形されたトリム材の表裏両面を有する本体部の長手方向の端末を、雄型と雌型を有し開閉可能なプレス型を用いて前記本体部の長手方向の軸線と同一の延長線上で裏面側に向けて折り曲げて塑性変形させ、前記本体部の端末に折曲げ稜線部を形成すると共に、前記端末を外側から覆う蓋部を本体部と一体に成形する長尺トリム材の製造方法であって、前記トリム材の蓋部を形成する折曲げ予定部を除く端末部の裏面を支持する裏面受部が形成されていると共に、前記裏面受部の長手方向端末に前記軸線と非直角に交叉して前記トリム材の一方の側縁と鈍角に、他方の側縁と鋭角に各々交叉する凸縁部を備えた型上面と、前記裏面受部の凸縁部から連続して前記折曲げ方向に延在する蓋部裏面成形部が形成された型側面を有する雄型と、前記雄型の裏面受部と凸縁部及び蓋部裏面成形部の各々の形状と略反転した形状の凹溝状の表面受部と、前記表面受部の長手方向端末に凹縁部を備えた型下面と、前記凹縁部から連続して前記折曲げ方向に延在する凹状の蓋部表面成形部が形成された型側面を有する雌型とから成り、両型を閉じたとき、前記裏面受部と表面受部との間にトリム材を挟持する溝状の挟持空間が、前記蓋部裏面成形部と蓋部表面成形部との間に蓋部を成形する蓋部成形空間が各々形成されるプレス型を用い、前記本体部の折曲げ予定部を加熱して軟化させる工程と、前記両型が開いているとき、前記本体部の折曲げ予定部を雄型の凸縁部から突出させ、端末部の裏面を裏面受部に支持させてトリム材を雄型に配置する工程と、両型を閉じる途中に前記折曲げ予定部を雌型に接触させて、雄型の凸縁部から突出した折曲げ予定部が幅方向に変位するのを阻止した状態で凸縁部を折曲げ中心として前記折曲げ予定部を裏面側に折り曲げる工程と、両型を閉じきるまでの間に、前記鋭角で交叉する側の折曲げ予定部の軟化したポリマー材料を雄型の蓋部裏面成形部と雌型の蓋部表面成形部とで挟んで折曲げ予定部の厚さ方向に圧縮して、前記鈍角で交叉する側に向けて折曲げ予定部の幅方向に流動させ、流動したポリマー材料で前記鈍角側の成形空間を埋めて前記蓋部を本体部と一体に成形すると共に、前記折曲げ中心部では雄型の凸縁部と雌型の凹縁部とで挟んで蓋部の根元側にトリム材の軸線と非直角に交叉する折曲げ稜線を成形する工程と、を含むことを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、プレス型の両型を閉じる迄の間で、折曲げ稜線と本体部の長手方向の一方の側縁とが鋭角で交叉する側の折曲げ予定部の軟化したポリマー材料が折曲げ予定部の厚さ方向に圧縮されて、前記折曲げ稜線と本体部の長手方向の他方の側縁とが鈍角で交叉する側に向けて巾方向に流動させられ、その結果流動されたポリマー材料により前記鈍角の側に形成される成形空間が埋められて、本体部の長手方向と非直角の折曲げ稜線を有する蓋部を本体部と一体に成形できる。この結果、本体部の折曲げ予定部を裏面側に折り曲げられて成形された蓋部がルーフモールの軸線(長手方向と同一)と同一方向を保つこと(第1条件)、及び蓋部の折曲げ稜線と前記軸線とが非直角をなすこと(第2条件)の2つの形状的な条件を満たして、長尺トリム材の本体部の端末に蓋部を成形できる。
【0009】
また、本体部の長手方向と折曲げ稜線との非直角の交叉角度とは無関係に上記した折曲げ予定部を成形するポリマー材料が成形空間の生じている側に流動するために、前記交叉角度の制限を受けることなく、折曲げ稜線が本体部の長手方向の非直角な蓋部を有する長尺トリム材を成形できる。従って、折曲げ稜線が本体部の長手方向と非直角な蓋部を有する長尺トリム材の端末成形の自由度が高まる。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記本体部の折曲げ予定部を加熱して軟化させる工程の前に、トリム材の長手方向の端末の一部を除去して、残部で略平板状の折曲げ予定部を成形する工程を含むことを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の上記作用効果に加えて、端末の一部分を切除することにより、折曲げ予定部を略板状にするので、後工程の折曲げを容易にできる。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、プレス型の両型を閉じて折曲げ予定部を折り曲げて蓋部を成形する工程において、前記鋭角側において折曲げ予定部の厚さを元の厚さよりも減少させ、鈍角側で元の厚さよりも増大させることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明の上記作用効果に加えて、プレス型の両型を閉じて折曲げ予定部を折り曲げて蓋部を成形する工程において、鋭角側から鈍角側への軟化したポリマー材料の流動量が多くなって、前記成形空間を流動により移動した材料で確実に埋められる。その結果、鈍角側において材料不足による欠損部を有する蓋部の発生がなくなって、成形歩留りが高まる。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記長尺トリム材は、車両用のルーフ溝に装着されるルーフモールであって、前記鋭角(α)は、70°ないし82°であって、前記鈍角(β)は、(180°−α)であることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかの発明の作用効果に加えて、車両のルーフパネルの巾方向の両端部の溝に嵌め込んで取付けられるルーフモールの本体部の先端側の端末には蓋部が一体に形成されていて、本体部の長手方向に対する前記蓋部の折曲げ稜線の角度は、70°ないし82°の範囲のものが多く、このような角度であっても容易に成形できる。
【0016】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記折曲げ予定部を裏側に折り曲げて成形した後に、前記蓋部の不要な周縁部をトリムする工程を含むことを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかの発明の作用効果に加えて、折り曲げて成形された蓋部の周縁部をトリムすることにより、蓋部を所望の形状に簡単に形成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プレス型の両型を閉じる迄の間で、折曲げ稜線と本体部の長手方向の一方の端縁とが鋭角で交叉する側の折曲げ予定部の軟化したポリマー材料が折曲げ予定部の厚さ方向に圧縮されて、前記折曲げ稜線と本体部の長手方向の他方の端縁とが鈍角で交叉する側に向けて巾方向に流動させられ、その結果流動されたポリマー材料により前記鈍角の側に形成される成形空間が埋められて、本体部の長手方向と非直角の折曲げ稜線を有する蓋部を本体部と一体に成形できる。このため、蓋部の長手方向軸線がルーフモールの軸線(長手方向と同一)と同一方向を保つこと(第1条件)、及び蓋部の折曲げ稜線と前記軸線とが非直角をなすこと(第2条件)の2つの形状的な条件を満たして、長尺トリム材の本体部の端末に蓋部を成形できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態、及び他の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1は、長手方向と非直角な折曲げ稜線(L0 )を有する蓋部Cを端末部に成形する前の中間製品であるルーフモールM’の一般部63、端末部近傍(一部欠落脚部2’を有する部分)62、及び端末部61を示す側面図である。図2は、図1のX1 −X1 線断面図である。図3は、図1のX2 −X2 線断面図である。図4は、図1のX3 −X3 線断面図である。図5は、プレス型の雄型(固定型)F1 の裏面受面22にルーフモールM’の端末部近傍62がセットされた折曲げ成形前の状態の側面断面図である。図6は、プレス型の雄型F1 に対して雌型F2 が型閉めされて、装飾体1の折曲げ予定部C’が裏側に折り曲げられた状態を示す側面断面図である。図7は、図6の部分拡大図である。図8は、図7のY−Y線断面図である。図9Aは、雌型F2 の斜視図及び図9Bは、雄型F1 の斜視図である。図10は、ルーフモールMの端末部近傍62の端末に裏側に向けて蓋部Cが一体に成形された製品としてのルーフモールMの斜視図である。図11は、蓋部C及び端末部近傍62の平面図である。なお、図5において、ルーフモールM’は、一部破断表示してあり、図6において、ルーフモールM’は断面表示していない。
【0020】
最初に、図1ないし図4を参照して、長手方向と非直角な折曲げ稜線L0 を有する蓋部Cを端末部に成形する前の中間製品であるルーフモールM’について説明する。ルーフモールM’は押出成形により直線長尺状に成形されて、全長に亘って同一断面形状の長尺材を所定長で切断したものである。ルーフモールM’は、モール本体部10よりなり、一般部63において、モール本体部10は、ルーフ溝(図示せず)の全体を覆う略板状の装飾体1と、この装飾体1の裏面であって、その巾方向の中央部にルーフ溝の底面の側に向けて一体成形された脚部2と、この脚部2の下端部の巾方向に張出し部3を介して突出して一体に成形されて、ルーフ溝の両内側面に弾接する左右一対の弾性リップ部4とを有している。前記装飾体1及び脚部2は、硬質(JIS−K7215によるデュロメータ硬さがHDA80〜100程度)の熱可塑性エラストマーにより成形され、前記張出し部3及び弾性リップ部4は、弾性に富む軟質(JIS−K7215によるデュロメータ硬さがHDA60〜80程度)の熱可塑性エラストマーにより成形される。装飾体1の表層部には、硬質(JIS−K7215によるデュロメータ硬さがHDD40〜60程度)の熱可塑性エラストマーにより成形された意匠層5が一体に形成されている。なお、脚部2には、補強と直線性維持のための金属製の芯材6が埋設され、更に脚部2の両側面には、製品であるルーフモールMがルーフ溝に嵌め込まれた状態で、その長手方向の両端部をクリップを介してルーフ溝の底面に固定させるための突部2aが長手方向に沿って形成され、脚部2の底面には、ルーフ溝の底部に形成される左右の各パネルの接合部をシールするシーラー(図示せず)との干渉を避けるための凹溝2bが形成されている。
【0021】
図1において、中間製品であるルーフモールM’は、端末から長さL1 である端末部61においてモール本体部10の脚部2の全体が切除され、長さL2 である端末部近傍62では、モール本体部10の脚部2の略下半部が切除されて残った一部欠落脚部2’が後述の雄型F1 の巾方向位置決め溝23に嵌合されて、ルーフモールM’の巾方向の位置決めを行う第1位置決め部11となる。端末部近傍62との境界部における一般部63の脚部2の略下半部の先端面2cは、前記雄型F1 の型合せ面26(図9参照)と反対側の面25(図5参照)に当接してルーフモールM’の長手方向の位置決めを行う第2位置決め部12となっている。端末部61では、脚部2の全部が切除されて装飾体1のみが残っていて、この部分が折曲げ予定部C’となる。
【0022】
図10及び図11に示されるように、製品であるルーフモールMの蓋部Cの折曲げ稜線(L0 )は、直線長尺状のルーフモールMの軸線(長手方向)〔L10〕と非直角であって、ルーフモールの一方の側縁(L11)と鋭角(α)で交叉し、他方の側縁(L12)と鈍角(β=180°−α)で交叉している。ここで、前記鋭角(α)〔その結果として鈍角(β)〕は、車両の窓開口の上縁の平面形状に大きく左右されるものでって、一般の車両では前記鋭角(α)は70°ないし82°〔その結果とし、前記鈍角(β)は、110°ないし98°〕である。装飾体1の折曲げ予定部C’を裏面側に折り曲げて前記蓋部Cを成形するためのプレス型は、雄型(固定型)F1 と雌型(可動型)F2 とから成って、雄型F1 の蓋部裏面成形面24と雌型F2 の蓋部表面成形面32とは、いずれも成形面自体は平面状であると共に、それぞれ雄型F1 の後述する嵌合突部21の側面28及び雌型F2 の内側壁面39と前記鋭角(α)〔又は鈍角(β)〕となるように交叉して非直角となっている。
【0023】
次に、図5ないし図9A.9Bを参照して、本発明の製造方法に使用されるプレス型について簡単に説明する。プレス型は、型上面の裏面受面22に中間製品であるルーフモールM’を位置決めして支持する雄型(固定型、下型)F1 と、この雄型F1 の上面に支持されたルーフモールM’を上方から覆って、端末部61の折曲げ予定部C’を折曲げ成形するための雌型(可動型、上型)F2 とで構成される。ブロック状をした雄型F1 は、その先端部に他の部分よりも巾の狭い嵌合突部21が突出して形成されている。雄型F1 の型上面は全体が同一の平面状に形成された裏面受面(モール支持面)22となっている。裏面受面22には、中間製品であるルーフモールM’の端末部近傍62の一部欠落脚部2’を嵌合して前記ルーフモールM’の巾方向の位置決めを行う直線状の巾方向位置決め溝23が全長に亘って長手方向に沿って形成されている。前記嵌合突部21の先端面は、製品であるルーフモールMの蓋部Cの折曲げ稜線(L0 )がルーフモールMの軸線(長手方向)〔L10〕に対して非直角であるのに対応し、前記嵌合突部21の側面28に対して非直角に傾斜して形成されていて、蓋部裏面成形面24となっている。雄型F1 の裏面受面22と蓋部裏面成形面24との接続部は凸縁部27となっていて、前記凸縁部27は、裏面受面22で支持されるモール本体部の一方の側縁(L11)に対して鋭角(α)で、他方の側縁(L12)に対して鈍角(β)で各々交叉している。また、雄型F1 の嵌合突部21の蓋部裏面成形面24と反対側の端面は、ルーフモールM’の一般部63と端末部近傍62の境界部の脚部2の先端面2cを当接させて、雄型F1 に対するルーフモールM’の長手方向の位置決めを行う長手方向位置決め面25となっている。雄型F1 の嵌合突部21の巾(W1 )は、ルーフモールM’の装飾体1の巾(W1 )〔図11参照〕と同一であり、雄型F1 の残りの部分の巾(W2 )は前記巾(W1 )よりも広くなっていて、巾の異なる2つの部分の接続部は、前記巾方向位置決め溝23の長手方向に対して直交する型合せ面26となっている。
【0024】
一方、雌型F2 は前記雄型F1 に対して型合せされて、端末部61の折曲げ予定部C’を裏側に折り曲げて蓋部Cを成形すると、前記蓋部Cの折曲げ稜線(L0 )が前記ルーフモールM’の軸線(長手方向)に対して非直角となって成形可能な形状になっている。即ち、雌型F2 の長手方向の一端部には、雄型F1 の嵌合突部21を嵌合可能な嵌合凹部31が形成されている。前記嵌合凹部31の先端側の内壁面は、雄型F1 の長手方向(ルーフモールM’の軸線方向)に対して傾斜して非直角となっていて、蓋部表面成形面32となっていて、雄型F1 の蓋部裏面成形面24の雄型F1 の型合せ面26に対する傾斜角度より緩やかになっている。即ち、雄型F1 の蓋部裏面成形面24の雄型F1 の型合せ面26との交叉角度よりも、雌型F2 の蓋部表面成形面32の雄型F1 の型合せ面26との交叉角度の方が小さくなっている。図8に示されるように、雄型F1 と雌型F2 が型合わせされたとき、雄型F1 の蓋部裏面成形面24と雌型F2 の蓋部表面成形面32とで囲まれて形成される空間が蓋部成形空間V1 となる。雌型F2 の下面には、嵌合凹部31の部分まで連続して、ルーフモールM’の装飾体1が嵌合されてその表面に密着する巾(W1 )の溝状の表面受面33が全長に亘って形成されている。雄型F1 と雌型F2 が型合わせされたとき、雄型F1 の型上面である裏面受面22と雌型F2 の型下面である表面受面33とで、装飾体1を上下から挟持する挟持空間V2 (図6参照)が形成される。雌型F2 の嵌合凹部31が形成された部分と、残りの部分とは、その厚さ(高さ方向の寸法)が大きく異なっていて、この厚さが異なる部分に、雄型F1 の型合せ面26に当接して両型F1 ,F2 の型合せを行うための型合せ面34が形成されている。
【0025】
「背景技術」の項目で詳述したように、蓋部Cの折曲げ稜線(L0 )がルーフモールM’の軸線と非直角となるようにして、装飾体1の折曲げ予定部C’を裏側にそのまま折り曲げる場合には、ルーフモールM’の側縁(L12)と鈍角(β)をなす側に、成形材料が充填されなくて空間のまま残る余剰空間部V1a(図8参照)が形成されてしまう。このため、図8に示されるように、前記蓋部成形空間V1 は、蓋部Cの折曲げ稜線(L0 )とルーフモールM’の側縁(L11)とが鋭角(α)をなす側において薄く、一方折曲げ稜線(L0 )とルーフモールM’の側縁(L12)とが鈍角(β)をなす側において厚く形成されていて、装飾体1の折曲げ予定部C’の折曲げ途中において、折曲げ予定部C’を成形している軟化した熱可塑性ポリマー材料を鈍角(β)側の方から前記余剰空間部V1aの側に流動させて、流動された材料により埋めることにより、目的形状の蓋部Cを成形する。
【0026】
また、雌型F2 の蓋部表面成形面32には、トリミング用突部35が形成され、折曲げ予定部C’を裏側に折り曲げられて形成された蓋部Cの全体のうち前記トリミング用突部35により薄肉に形成された部分から外側の部分を切除することにより、最終形状の蓋部Cが成形される。図9A.図9B及び図10に示されるように、本実施例の蓋部Cは、装飾体1の折曲げ予定部C’を裏側に折り曲げて形成された蓋部Cの下端部と左右方向の一方の端部とが切除されて形成される。
【0027】
図5及び図6に示されるように、前記雌型F2 は、上下動可能な可動盤41の下面の案内レール42に水平に支持されて、空圧シリンダ(図示せず)等の駆動ロッド43により前記可動盤41に対して水平方向に移動可能に支持されている。型開き時においては、図5に示されるように、雌型F2 は雄型F1 の斜上方に配置されていて、雌型F2 は、前記可動盤41の下降速度(K1 )と可動盤41に対する雌型F2 の水平移動速度(K2 )とで合成された大きさ及び方向を有する速度(K)で斜め方向に移動して、型上面である裏面受面22にルーフモールM’が支持されている雄型F1 に型合せされる。
【0028】
また、図5に示されるように、中間製品であるルーフモールM’の一部欠落脚部2’(第1位置決め部11)を雄型F1 の巾方向位置決め溝23に嵌合させると共に、完全脚部2の先端面2c(第2位置決め部12)を雄型F1 の位置決め面25に当接させると、雄型F1 に対してルーフモールM’は、巾方向及び長手方向の双方の位置決めが行われて、装飾体1の先端部の折曲げ予定部C’は、雄型F1 の前端から突出して片持ち状となって支持される。なお、ルーフモールM’の端末部近傍62の一部欠落脚部2’から巾方向に延びる突部を、射出成形等により形成することで、長手方向の位置決めを行ってもよい。本実施例においては、装飾体1の折曲げ予定部C’を上記片持ち状態において加熱して軟化させるために、片持ち状態の折曲げ予定部C’の直下には、近赤外線加熱装置Hが配置されている。この近赤外線加熱装置Hは、近赤外線ランプ(例えば、ハロゲンランプ)51と、この近赤外線ランプ51の光を集めて焦点を形成するように反射する反射鏡52とを備えている。これにより、折曲げ予定部C’の加熱を必要とする領域だけ照射して流動可能な状態にまで軟化させ、他の加熱不要部分を加熱することが防止されるようになっている。
【0029】
次に、上記した雄型F1 と雌型F2 とから成るプレス型を使用して、中間製品であるルーフモールM’の折曲げ予定部C’を裏側に折り曲げる方法について、工程毎に説明する。まず、図5に示されるように、雌型F2 が雄型F1 の斜上方に配置されて、両型F1 ,F2 が開いている状態において、中間製品であるルーフモールM’の端末部近傍62の一部欠落脚部2’(第1位置決め部11)を雄型F1 の巾方向位置決め溝23に嵌合させると共に、ルーフモールM’の一般部63と端末部近傍62の境界部の脚部2の先端面2c(第2位置決め部12)を雄型F1 の長手方向位置決め面25に当接させる。これにより、雄型F1 に対するルーフモールM’の巾方向及び長手方向の双方の位置決めが行われて、ルーフモールM’の一部欠落脚部2’を有する端末部近傍62の装飾体1が雄型F1 の裏面受面22に密着して支持されると共に、ルーフモールM’の端末部61の折曲げ予定部C’の全体が雄型F1 に対して長手方向に突出して片持ち状に支持される。
【0030】
上記のように、ルーフモールM’の端末部61の折曲げ予定部C’が雄型F1 から片持ち状となって突出している状態において、近赤外線加熱装置Hにより折曲げ予定部C’の要加熱領域だけ照射して軟化させる。
【0031】
次に、図5に示されるように、雌型F2 を取付けている可動盤41を下方に移動させると共に、可動盤41に対して雌型F2 を水平方向に移動させると、方向が90°異なる2つの速度が合成されて、雄型F1 に対して雌型F2 は、斜上方から斜下方に向けて移動する。例えば、可動盤41の下降速度と、可動盤41に対する雌型F2 の水平移動速度とが一定の場合には、雄型F1 に対して雌型F2 は斜下方に向けて直線的に移動し、可動盤41の下降速度と、可動盤41に対する雌型F2 の水平移動速度とが等しい場合には、雌型F2 は斜下方に向けて45°の角度で直線移動する。
【0032】
ここで、雄型F1 に対して片持ち状に支持されて突出しているルーフモールM’の端末部61の折曲げ予定部C’は、軟化されていても外力が作用しない限り大きく撓むことはないので、ルーフモールM’の軸線(長手方向)にほぼ沿っている。このため、雌型F2 が上記のように斜下方に向けて移動すると、折曲げ予定部C’の外側折曲げ部7よりも先端側に所定距離だけ離れた折曲げ予定部C’の先端表面に雌型F2 の下側の先端部37が当接し、折曲げ予定部C’は、雄型F1 の凸縁部27を折曲中心として裏側に折り曲げられ始める。最終的に、図6ないし図8に示されるように、雄型F1 と雌型F2 の各型合せ面26,34が互いに密着して、両型F1 ,F2 が型合せされて、雌型F2 の嵌合凹部31に雄型F1 の嵌合突部21が嵌合されると、雄型F1 の蓋部裏面成形面24と雌型F2 の蓋部表面成形面32と雌型F2 の内壁面36(図8参照)とで形成される蓋部成形空間V1 内に軟化した折曲げ予定部C’の材料が流動して入り込む。また、上記のようにして折曲げ予定部C’が折り曲げられると、折曲げ予定部C’は、折曲げ途中においてルーフモールM’の巾方向にずれようとするが、折曲げ予定部C’のずれようとする側縁部は、雌型F2 の内壁面36の存在によって前記「ずれ」が確実に防止される。
【0033】
また、図8に示されるように、前記蓋部成形空間V1 の横断面は、折曲げ稜線(L0 )と側縁(L12)とのなす角が鈍角(β)となる側に向けて徐々に厚く形成されている。このため、鋭角(α)の側の成形材料は、蓋部成形空間V1 に対して材料が余剰となり、雄型F1 の蓋部裏面成形面24と雌型F2 の蓋部表面成形面32との間で厚さ方向に押圧されるが、鈍角(β)の側の成形材料は蓋部成形空間V1 に対して材料が不足して、雄型F1 の蓋部裏面成形面24と雌型F2 の蓋部表面成形面32との間で厚さ方向に僅かに圧縮(押圧)されるか、或いは全く圧縮(押圧)されない。このため、鋭角(α)の側の余剰材料は、鈍角(β)の側(即ち、蓋部成形空間V1 の余剰空間部V1aの側)に向けてルーフモールM’の巾方向に流動する。この結果、前記余剰空間部V1aが流動した材料により充填されて、蓋部Cに材料欠損による欠落部の発生がなくなる。また、図7で拡大して示されているように、雌型F2 の嵌合凹部31における蓋部Cの外側折曲げ部7(図10参照)を成形する部分は円弧状の凹縁部38に形成されているため、圧縮成形(プレス成形)された蓋部Cの外側折曲げ部7は、その断面が対応する凹縁部38の円弧形状に成形される。なお、図7において、7a,7bは各々外側折曲げ部7の始点及び終点を示す。また、図8において、2点鎖線は、プレス成形前の折曲げ予定部C’の横断面形状を示し、折曲げ予定部C’の上記圧縮成形(プレス成形)により、鋭角(α)の側の材料が鈍角(β)の側に流動して余剰空間部V1aが充填されることが分かる。
【0034】
次に、圧縮成形されて形成された蓋部Cが冷却固化して、各成形型F1 ,F2 を開いても全体形状を維持できる状態に至ったときに各成形型F1 ,F2 を開くと、図10で2点鎖線で示されるように、蓋部Cに雌型F2 のトリミング用突部35の全体形状に対応した薄肉の切除溝8が形成される。この切除溝8よりも外側の不要部9を前記切除溝8の部分で切除すると、図10及び図11で実線で示されるように、製品であるルーフモールMの端末近傍部62の端末に、ルーフモールMの軸線(長手方向)と非直角の折曲げ稜線(L0 )を有する目的形状の蓋部CがルーフモールMの軸線の方向に沿って一体に成形される。なお、本実施例では雄型F1 を固定型(下型)、雌型F2 を可動型(上型)としたが、雌型が固定型(下型)、雄型が可動型(上型)であってもよく、両方の型が可動型であってもよい。
【0035】
また、図12は、半径の大きな凹縁部38’を備えた雌型F2'と前記雄型F1 とで、ルーフモールM’の折曲げ予定部C’を裏側に向けて折り曲げた状態の断面図である。雌型F2'の凹縁部38’が前記凹縁部38よも半径が大きいために、成形された蓋部Cの外周側の折曲げ長(わん曲部の長さ)が長くなって、樹脂材料が雌型F2 ’の凹縁部38’により圧接されるために、蓋部Cの折曲げ部7’の外側の表面にへこみ等が発生しなくなる。なお、図12において、7a’、7b’は、各々折曲げ部7’の始点及び終点を示す。なお、ルーフモールMの材料、材質、硬度等は上記実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】長手方向と非直角な折曲げ稜線(L0 )を有する蓋部Cを端末部に成形する前の中間製品であるルーフモールM’の一般部63、端末部近傍62、及び端末部61を示す側面図である。
【図2】図1のX1 −X1 線断面図である。
【図3】図1のX2 −X2 線断面図である。
【図4】図1のX3 −X3 線断面図である。
【図5】プレス型の雄型F1 の裏面受面(モール支持面)22にルーフモールM’の端末部近傍62がセットされた折曲げ成形前の状態の側面断面図である。
【図6】プレス型の雄型F1 に対して雌型F2 が型閉めされて、ルーフモールM’の折曲げ予定部C’が裏側に向けて折り曲げられた状態を示す側面断面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】図7のY−Y線断面図である。
【図9A】雌型F2 を雄型F1 の側から斜めに見た斜視図である。
【図9B】雄型F1 を雌型F2 の側から斜めに見た斜視図である。
【図10】ルーフモールMの端末部近傍62の端末に裏側に向けて蓋部Cが一体に成形された製品としてのルーフモールMの斜視図である。
【図11】製品としてのルーフモールMの蓋部C及び端末部近傍62の平面図である。
【図12】折曲げ半径の大きな折曲げ部7’を有する別のルーフモールM”の図7に相当する図である。
【図13】折曲げ稜線(L0 )が軸線(L10)と非直角をなすようにして自由状態で端末部を裏側に向けて折り曲げた長尺トリム材の平面図である。
【図14】図13のZ矢視図である。
【符号の説明】
【0037】
C:蓋部
C’:装飾体の折曲げ予定部
1 :雄型
2 :雌型
M:ルーフモール(長尺トリム材)
M’:ルーフモールの中間品
0 :折曲げ稜線
10:装飾体の軸線
1 :蓋部成形空間
2 :挟持空間
1:装飾体
22:雄型の裏面受面(型上面)
24:蓋部裏面成形面
27:凸縁部
32:蓋部表面成形面
33:表面受面(型下面)
38:凹縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー材料から直線状の長尺材に押出成形されたト
ム材の表裏両面を有する本体部の長手方向の端末を、雄型と雌型を有し開閉可能なプレス型を用いて前記本体部の長手方向の軸線と同一の延長線上で裏面側に向けて折り曲げて塑性変形させ、前記本体部の端末に折曲げ稜線部を形成すると共に、前記端末を外側から覆う蓋部を本体部と一体に成形する長尺トリム材の製造方法であって、
前記トリム材の蓋部を形成する折曲げ予定部を除く端末部の裏面を支持する裏面受部が形成されていると共に、前記裏面受部の長手方向端末に前記軸線と非直角に交叉して前記トリム材の一方の側縁と鈍角に、他方の側縁と鋭角に各々交叉する凸縁部を備えた型上面と、前記裏面受部の凸縁部から連続して前記折曲げ方向に延在する蓋部裏面成形部が形成された型側面を有する雄型と、
前記雄型の裏面受部と凸縁部及び蓋部裏面成形部の各々の形状と略反転した形状の凹溝状の表面受部と、前記表面受部の長手方向端末に凹縁部を備えた型下面と、前記凹縁部から連続して前記折曲げ方向に延在する凹状の蓋部表面成形部が形成された型側面を有する雌型とから成り、
両型を閉じたとき、前記裏面受部と表面受部との間にトリム材を挟持する溝状の挟持空間が、前記蓋部裏面成形部と蓋部表面成形部との間に蓋部を成形する蓋部成形空間が各々形成されるプレス型を用い、
前記本体部の折曲げ予定部を加熱して軟化させる工程と、
前記両型が開いているとき、前記本体部の折曲げ予定部を雄型の凸縁部から突出させ、端末部の裏面を裏面受部に支持させてトリム材を雄型に配置する工程と、
両型を閉じる途中に前記折曲げ予定部を雌型に接触させて、雄型の凸縁部から突出した折曲げ予定部が幅方向に変位するのを阻止した状態で凸縁部を折曲げ中心として前記折曲げ予定部を裏面側に折り曲げる工程と、
両型を閉じきるまでの間に、前記鋭角で交叉する側の折曲げ予定部の軟化したポリマー材料を雄型の蓋部裏面成形部と雌型の蓋部表面成形部とで挟んで折曲げ予定部の厚さ方向に圧縮して、前記鈍角で交叉する側に向けて折曲げ予定部の幅方向に流動させ、流動したポリマー材料で前記鈍角側の成形空間を埋めて前記蓋部を本体部と一体に成形すると共に、前記折曲げ中心部では雄型の凸縁部と雌型の凹縁部とで挟んで蓋部の根元側にトリム材の軸線と非直角に交叉する折曲げ稜線を成形する工程と、
を含むことを特徴とする端末に蓋部を有する長尺トリム材の製造方法。
【請求項2】
前記本体部の折曲げ予定部を加熱して軟化させる工程の前に、トリム材の長手方向の端末の一部を除去して、残部で略平板状の折曲げ予定部を成形する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の端末に蓋部を有する長尺トリム材の製造方法。
【請求項3】
プレス型の両型を閉じて折曲げ予定部を折り曲げて蓋部を成形する工程において、前記鋭角側において折曲げ予定部の厚さを元の厚さよりも減少させ、鈍角側で元の厚さよりも増大させることを特徴とする請求項1又は2に記載の端末に蓋部を有する長尺トリム材の製造方法。
【請求項4】
前記長尺トリム材は、車両のルーフ溝に装着されるルーフモールであって、前記鋭角(α)は、70°ないし82°であって、前記鈍角(β)は、(180°−α)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の端末に蓋部を有する長尺トリム材の製造方法。
【請求項5】
前記折曲げ予定部を裏側に折り曲げて成形した後に、前記蓋部の不要な周縁部をトリムする工程を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の端末に蓋部を有する長尺トリム材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−305746(P2006−305746A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127570(P2005−127570)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】