説明

端縁部を研磨テープにより研磨仕上げした板ガラス並びに板ガラス端縁部の研磨方法及び研磨装置

【課題】端縁部が高精度に面取り加工され、高い強度を付与された板ガラス並びにその製造方法、研磨方法及び研磨装置を提供することを課題とする。
【解決手段】上面、下面及びその両面の間に端面を有する矩形の板ガラスであって、前記上面又は前記下面と前記端面との境界にある稜部のうち少なくとも1辺の稜部又は少なくともひとつの端面が研磨テープで研磨され仕上がり面に形成された板ガラスであって、該仕上がり面の平均表面粗さRaが20nm以下であり且つ最大谷深さRvが200nm以下である板ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話表示窓、液晶パネル、有機ELパネル、プラズマパネル、太陽電池パネルなどのフラットディスプレイや電子部品用のカバーガラス、光学フィルター等に使用される板ガラスであって、少なくとも一辺の稜部又はひとつの端面を研磨テープで研磨することにより強度が向上した板ガラス並びにその製造方法、研磨方法及び研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板ガラスの割れは、板ガラスの端縁部(稜部又は端面)に始めから存在する微細な傷を起点に生ずることが多く、板ガラスの端縁部に傷があると、それが微細なものであっても、製品の製造中や製品の操作中、機械的応力や熱応力が加わったときに、傷が伸長して板ガラスの破損につながることがある。
【0003】
また、端縁部に角を有する板ガラスはガラス屑を生じ易く、このガラス屑が板ガラスの主表面(上面又は下面)に汚染や傷を発生させる原因となる。特に、板ガラスの用途が電子部品用のカバーガラス(例えば、撮像装置用のカバーガラス)や光学フィルター(例えば、撮像装置の近赤外補正フィルター)等であった場合、ガラス屑による汚染や傷が大きな問題になることがある。
【0004】
このため、従来から、各種フラットディスプレイやカバーガラス等に使用される板ガラスは、ガラス屑による傷や端縁部の微細な傷、チッピング(欠け)による破損、又はそれに伴う作業時の危険を防止するために、端縁部がいわゆるC面取り加工やR面取り加工を施され面取りされていた。面取りによって、端縁部の微細な傷を減少させることができ、板ガラスの強度を向上させることができる。
【0005】
従来、板ガラスの端縁部を面取りするため、略円盤状の研削砥石が使用されていた。すなわち、略円盤状の研削砥石を回転させ、研削砥石の円盤面又は端面を板ガラスの端縁部に押し当てることにより面取り加工が行われていた。
【0006】
例えば、略円盤状の研削砥石の円盤面を傾けて板ガラスの稜部に押し当てることにより稜部のみを除去するC面取り加工が行われていた(特開2000−233351公報:特許文献1)。また、研削砥石の端面に傾斜面を設け、該傾斜面を板ガラスの稜部に押し当てて稜部のみを除去するC面取り加工が行われていた(特開2003−231046公報:特許文献2、特開2011−51068公報:特許文献3)。
【0007】
さらに、研削砥石の端面に円弧状の凹部又は所望の形状の凹部を形成して、板ガラスの端面を研削砥石の端面形状に倣って除去する、R面取り加工又は総形加工が行われていた(特開2002−59346公報:特許文献4、特開2001−85710公報:特許文献5)。
【0008】
上記のような従来の面取り加工では、研削砥石として、金属の粉末を固めて焼結しダイヤモンド砥粒を固定したメタルボンドのダイヤモンドホイール等が使用され、砥粒のサイズが異なるホイール(砥石)を使用して、一次加工と二次加工が行われた。一次加工には、メッシュサイズで#325〜#600のダイヤモンド粒子を用いたホイールが使用され、加工した板ガラス端縁部の平均表面粗さRaは、概して、0.5μm〜1.0μmの範囲にあった。この表面粗さを小さくするために、二次加工には、一次加工用のホイールと同じ断面形状に成形された、メッシュサイズで#1000〜#2000のダイヤモンド粒子を用いた仕上げ加工用のホイールが使用された。
【0009】
また、上記のようなメタルボンドのダイヤモンドホイールに代えて、繊維間が樹脂で充填された繊維構成体の面取りホイール、又はメッシュサイズで#500〜#2000の炭化ケイ素、アルミナ等の研磨砥粒が配された樹脂構成体の面取りホイールが提案された(特開2002−160147公報:特許文献6)。この面取りホイール(砥石)を回転させながら、断面凹状に形成されたホイールの周縁部を液晶ディスプレイ用板ガラス等の端面に押し当てることにより、加工が行われた。加工むらをなくし均一な研磨を行うために、面取りホイールは、回転軸を板ガラスの表面に立てた垂線に対して所定の角度傾けて使用された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−233351公報
【特許文献2】特開2003−231046公報
【特許文献3】特開2011−51068公報
【特許文献4】特開2002−59346公報
【特許文献5】特開2001−85710公報
【特許文献6】特開2002−160147公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような砥石(ホイール)を板ガラスの端縁部に押し当てて回転させながら面取りを行うと、砥石の目詰まりや砥石の磨耗が徐々に進行するという問題があった。目詰まりや摩耗により砥石の加工部の形状等が悪くなると、板ガラスの端縁部に研削傷が発生するようになり、砥石が板ガラスの端縁部の一部に接触しないことにより未加工部(加工むら)を生じ、また、加工圧力の不均一により焼け等を生ずることがあった。
【0012】
砥石の加工部の形状等が悪くなった場合、ドレッシングやツルーイングが行われるが、ダイヤモンドホイールには、高度な成形精度が不可欠とされ、ドレッシング等や砥石の位置調整に時間を要するため、作業効率が低下した。また、砥石の未使用領域が多く残ったまま加工部のドレッシング等を行ったり、寿命として砥石の交換を行ったりする必要があるため、コストが増大するという問題があった。
【0013】
また、砥石を使用して板ガラスの端縁部の面取りを行うと、砥石を加工物に当接するときに機械的衝撃が加わり、その衝撃で板ガラスが破損し、加工歩留りが悪くなるという問題があった。
【0014】
メタルボンドのダイヤモンドホイールと比べて剛性が低い樹脂構成体等の面取りホイール(特許文献6)では、板ガラスの端縁部への衝撃が減少し、欠けや傷の発生は減少した。しかし、砥石の磨耗が激しくなって加工部の形状変化が速く、目詰まりも起こるため、砥石のドレッシング(又はツルーイング)の頻度が高いという問題があった。
【0015】
さらに近年、液晶ディスプレイ用の板ガラスや厚みの薄い(1mm以下)電子部品用の板ガラス等では、より高精度に端縁部(稜部や端面)が面取り加工されることが要求されるようになった。しかし、従来の研削砥石を使用して板ガラスの端縁部を面取りした場合、得られる加工面の精度が不十分で、板ガラス端縁部に微細な傷又はチッピングが残ってしまい、十分な割れ防止にならなかった。
【0016】
上記の問題に鑑みて、本発明は、端縁部が高精度に加工され、高い強度を付与された板ガラス並びにその製造方法、研磨方法及び研磨装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する本発明に係る板ガラスは、上面、下面及びその両面の間に端面を有する矩形の板ガラスの上面又は下面と端面との境界にある稜部のうち少なくとも1辺の稜部、又は、少なくともひとつの端面が、研磨テープで研磨され仕上がり面に形成された板ガラスであって、該仕上がり面の平均表面粗さRaが20nm以下であり且つ最大谷深さRvが200nm以下であることを特徴とする。
【0018】
研磨テープを使用する方法で板ガラスの稜部又は端面を研磨することより、板ガラスの稜部又は端面に高精度な表面性状を有する仕上がり面が形成される。稜部又は端面が上記の表面粗さRa及び最大谷深さRvの仕上がり面に形成されることにより、板ガラスの強度が著しく向上する。本発明に係る板ガラスは、周縁部の微細な傷や欠けを起点にした割れの発生を防ぎ、機械的応力や熱ショックによる破損を防止することができるものである。また、後工程の加工歩留まりを改善し、板ガラスが組み込まれた製品の信頼性を向上させることができる。
【0019】
本発明に係る、稜部が所定の表面性状を有する仕上がり面に形成された板ガラスを製造するための製造方法は、研磨テープの裏面に弾性のあるパッド部材の表面を配置し板ガラスの少なくとも1辺の稜部をC面取りするために研磨テープの表面と板ガラスの1辺の稜部を対向させて配置する工程と、パッド部材を介して研磨テープに所定の押圧力を加えることにより研磨テープの表面を1辺の稜部に当接・押圧する工程と、板ガラスを直線的な移動軸線に沿って移動させることにより1辺の稜部を研磨する工程と、を含んで成る。ここで、研磨テープの表面は砥粒を含む研磨層から成り、砥粒の平均粒径は0.2μm以上3.0μm以下の範囲にある。研磨する工程において、研磨テープは走行せず停止していてもよく、走行していてもよい。
【0020】
このように、板ガラスの上面又は下面の1辺の稜部を研磨テープ表面に対向して配置し、当接、押圧して研磨(C面研磨)することにより、破損の原因に最もなりやすい稜部の割れや欠けを除去することができる。
【0021】
微細な砥粒を表面に含む、柔軟性のある研磨テープと弾性のあるパッド部材とを使用することによって、稜部がC面取りされた面(仕上がり面)の端部(エッジ部)が鋭角にならず、また、板ガラスの端縁部に傷や欠けを新たに生ずることなく高精度に研磨仕上げされた仕上がり面を形成することができる。このような仕上がり面が形成された板ガラスは強度が著しく向上し、亀裂や破損が生じにくい。
【0022】
研磨する工程において、板ガラスと研磨テープの表面は相対移動し、好適に板ガラスが、直線的な移動軸線に沿って往復移動する。研磨テープ、パッド部材の柔軟性、弾力性及び板ガラスの強度により、研磨体(研磨テープの表面)に対して被研磨体(板ガラス)を移動して研磨を行っても、研磨中に被研磨体が破損することはない。
【0023】
好適に、板ガラスが移動軸線に沿って移動するとき、1辺の稜部は移動軸線に関して所定の角度(θ)だけ傾斜している。稜部が移動軸線に対して傾斜していることにより、研磨テープ表面の微細な砥粒を効率的に稜部に作用させることができる。また、研磨テープの幅(面積)を有効に利用して、短時間で効率よく研磨することができる。
【0024】
上記所定の角度(θ)は、5度〜60度の範囲にあることが好ましい。この範囲で研磨テープの幅によって角度(θ)を調整することが、コスト面から好ましい。
【0025】
さらに、移動軸線は、研磨テープの長手方向に平行であってもよく、研磨テープの長手方向に対し所定の角度(β)だけ傾斜していてもよい。研磨テープの幅や走行の状態によって、移動軸線が研磨テープの長手方向に対し傾斜していることが効率的である。
【0026】
また、本発明に係る、端面が所定の表面性状を有する仕上がり面に形成された板ガラスを製造するための製造方法は、研磨テープの裏面に弾性のあるパッド部材の表面を配置し研磨テープの表面と板ガラスのひとつの端面を対向させて配置する工程と、パッド部材を介して研磨テープに所定の押圧力を加えることにより研磨テープの表面をひとつの端面に当接・押圧する工程と、板ガラスを直線的な移動軸線に沿って移動させることによりひとつの端面を研磨する工程と、を含んで成る。ここで、研磨テープの表面は砥粒を含む研磨層から成り、砥粒の平均粒径は0.2μm以上3.0μm以下の範囲にある。研磨する工程において、研磨テープは走行せず停止していてもよく、走行していてもよい。
【0027】
上記の製造方法により、端面全体が仕上がり面に形成された板ガラスを製造することができる。稜部を仕上がり面に形成したのちに、端面の残部を上記の方法により仕上がり面に形成してもよい。端面全体を研磨することにより、研磨残りがなく、汚れや研磨屑の除去が十分行われるため、板ガラス主表面に汚染や傷が発生することを防止することができる。
【0028】
上記のパッド部材の表面は、平坦面であってよい。パッドの表面が平坦面であることにより、1辺の稜部全体をパッドの表面に配置された研磨テープの表面に当接し、研磨することができる。
【0029】
また、パッド部材の表面は、平坦ではない凸状の曲面であってもよい。板ガラスの角部(ひとつの端面と他の端面との間に形成される部分)の研磨テープ表面への接触を制限し、研磨テープを保護しながら研磨することができるからである。
【0030】
パッド部材としては、ショアA硬さが20ないし50の範囲にある第1のパッド部材を使用することが好ましい。弾性のあるパッド部材により、研磨テープと板ガラス端縁部の接触による機械的衝撃を緩和することができ、研磨とともに端縁部の形状が変化しても追従して加工することができる。
【0031】
さらに本発明に係る製造方法において、研磨テープと第1のパッド部材との間にショアA硬さが90以下である第2のパッド部材が配置されてもよい。板ガラスの材質、厚さ等の仕様に応じて適切なパッド部材とするためである。
【0032】
本発明に係る板ガラスは、柔軟性のある研磨テープと弾性のあるパッド部材を使用して稜部又は端面が研磨され仕上がり面に形成されたものであるため、稜部がC面取りされた仕上がり面も、断面がR形状の曲面を有する。稜部の仕上がり面が上記の最大谷深さ等の表面性状を満たし、断面形状が曲面を有するように形成されることにより、欠けや割れの発生要因が極めて少ない板ガラスとすることができる。
【0033】
研磨中、研磨テープは停止していてもよく、連続的又は断続的に走行してもよい。短時間で研磨仕上げする場合は、研磨テープを停止した状態で研磨することによって、研磨テープの使用量が少なくなるため、経済的である。研磨時間が比較的長い場合は、新しい研磨テープを順次送ることによって研磨効率を高めることができる。
【0034】
研磨テープの表面を板ガラスの稜部又は端面に押圧するための押圧力は、板ガラスの状態によって、研磨初期は小さく、研磨の進行とともに次第に大きくしてよい。例えば、板ガラスによっては、角部や稜部に鋭角な部分があり、この場合、研磨初期から強い押圧力を加えると、鋭角な部分によって研磨テープに傷がついたり、研磨テープが破損したりする場合がある。押圧力を調節することにより、研磨テープ表面を保護しながら研磨を行うことができる。
【0035】
研磨は、乾式又は湿式いずれでも行うことができる。湿式の場合は、研磨テープの表面に水又は界面活性剤を加えた水溶液を供給しながら研磨が行われる。
【0036】
また、本発明は、板ガラスの稜部又は端面を高精度な仕上がり面に形成するための研磨装置に係る。本発明に係る研磨装置は、上面、下面及びその両面の間に端面を有する矩形の板ガラスの上面又は下面と端面との境界にある稜部のうち少なくとも1辺の稜部又は少なくともひとつの端面を研磨テープで研磨し仕上がり面に形成するための研磨装置であって、ベースと、板ガラスを配置するためのワークユニットであって、板ガラスをベースに平行な移動軸線に沿って移動可能に前記ベース上に設けられたワークユニットと、研磨テープを配置するための研磨テープユニットであって、前記ワークユニットと対向して前記ベース上に設けられた研磨テープユニットとから成る。ワークユニットは、板ガラスのひとつの端面が移動軸線に平行になり且つ板ガラスの上面又は下面がベースと平行になるよう板ガラスを保持するための保持台と、保持台を、移動軸線を中心に枢動させることにより板ガラスの上面又は下面をベースに対して所定の角度(α)だけ傾斜させるための第1の傾斜手段と、保持台を移動軸線と垂直且つ前記ベースと平行な回動軸線を中心に回動させることにより板ガラスの上面又は下面をベースに対して所定の角度(θ)だけ傾斜させるための第2の傾斜手段と、を有して成る。研磨テープユニットは、研磨テープの砥粒を含む表面が板ガラスの1辺の稜部又は前記ひとつの端面と対向するよう研磨テープを配置するためのパッドと、パッドを取り付けるためのベースに垂直な研磨プレートと、研磨テープの表面が1辺の稜部又はひとつの端面に当接・押圧されるよう研磨プレートをベースと平行且つ移動軸線と垂直な方向に移動させるための押圧手段と、研磨テープを走行させるための研磨テープ走行手段と、を有して成る。
【0037】
本発明において、研磨テープが上記のパッドに配置されると、好適に、研磨テープの長手方向が移動軸線と平行になる。
【0038】
また、研磨テープの幅や走行の状態等によって、パッドに配置された研磨テープの長手方向(走行方向)が移動軸線に対して所定の角度(β)だけ傾斜してもよい。研磨テープの長手方向を移動軸線に対して傾けるために、研磨テープユニットは、好適に、研磨プレートを傾斜するための研磨プレート傾斜手段を含む。
【0039】
さらに、本発明は、上面、下面及びその両面の間に端面を有する矩形の板ガラスを水平な移動軸線に沿って移動させ、該板ガラスの上面又は下面と端面との境界にある稜部のうち少なくとも1辺の稜部を研磨テープの砥粒を有する表面で研磨し仕上がり面に形成するための研磨方法に係る。本発明に係る研磨方法は、板ガラスのひとつの端面が移動軸線に平行になるよう且つ板ガラスの上面又は下面が水平になるよう板ガラスを配置する工程と、板ガラスを、移動軸線を中心に枢動させることにより板ガラスの上面又は下面を水平に対して所定の角度(α)だけ傾斜させる第1の傾斜工程と、板ガラスを、水平且つ移動軸線と垂直な回動軸線を中心に回動させることにより板ガラスの上面又は下面を水平に対して所定の角度(θ)だけ傾斜させる第2の傾斜工程と、研磨テープの表面が板ガラスの1辺の稜部に対向するよう研磨テープをパッド部材の表面に配置する工程と、パッド部材を介して研磨テープに所定の押圧力を加え研磨テープの表面を1辺の稜部に当接・押圧する工程と、板ガラスを移動軸線に沿って移動させることにより1辺の稜部を研磨する工程と、を含んで成る。
【0040】
上記の研磨方法においても、パッド部材に配置された研磨テープの長手方向は移動軸線と平行であってもよく、移動軸線に対し所定の角度(β)だけ傾斜していてもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、携帯電話表示窓、液晶パネル、有機ELパネル、プラズマパネル、太陽電池パネルなどのフラットディスプレイや電子部品用のカバーガラス、光学フィルター等の製造に使用される、稜部又は端面が高精度に加工されて強度が向上した板ガラスを得ることができる。板ガラスの稜部又は端面の研磨を、研磨テープを使用して行うことにより、破損の原因となる端縁部の傷や欠けを十分に除去することができ、高精度な仕上がり面を形成することができる。本発明に係る板ガラスを実施することにより、各種フラットディスプレイ等製品の製造歩留まりを改善し、該板ガラスが組み込まれた商品の品質及び精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は板ガラスを模式的に示す図である。
【図2】図2(A)及び(B)は板ガラスの端縁部に仕上がり面が形成されるプロセスと形成された仕上がり面の側面形状を模式的に示す図である。図2(C)は図2(A)の仕上がり面を形成するプロセスにおける板ガラスと研磨テープの表面の角度等を示す図である。
【図3】図3は本発明に係るひとつの態様の研磨装置を示す平面図である。
【図4】図4は本発明に係る研磨装置を模式的に示す図である。
【図5】図5は本発明に係るひとつの態様の研磨装置を示す側面図である。
【図5A】図5Aは本発明に係る研磨装置の可動プレートの模式図である。
【図5B】図5Bは本発明に係る研磨装置の傾斜プレート35の中央横断面の模式図である。
【図6】図6は本発明に係るひとつの態様の研磨装置を示す正面図である。
【図7A】図7Aは本発明に係るひとつの態様の研磨テープユニットを示す正面図である。
【図7B】図7Bは本発明に係るひとつの態様の研磨テープユニットが傾斜した状態を示す正面図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は本発明に係るひとつの態様の板ガラスの製造方法、研磨方法、研磨装置における板ガラス、研磨テープ表面及び移動軸線を模式的に示す図である。
【図9】図9は本発明に係る他の態様の板ガラスの製造方法、研磨方法、研磨装置における板ガラス、研磨テープ表面及び移動軸線等を模式的に示す図である。
【図10】図10(a)及び(b)は本発明に係るもうひとつの他の態様の板ガラスの製造方法、研磨方法、研磨装置における板ガラス、研磨テープ表面及びその移動方向を模式的に示す図である。
【図11】図11(A)ないし(D)は本発明に係る実施例の板ガラス及び比較例の板ガラスの各々の仕上がり面の拡大写真である。
【図12】図12は、砥石を使用した比較例4に係る板ガラスの仕上がり面の拡大写真である。
【図13】図13は板ガラスのエッジ強度を測定するための4点曲げ試験方法を模式的に示す図である。
【図14】図14は比較例4に係る砥石を使用した板ガラスの稜部の研磨方法を示す模式図である。
【図15】図15(a)及び(b)は各々板ガラスの角部の形状とパッドの形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下図面を参照しながら、本発明のさまざまな特徴が、本発明の限定を意図するものではない好適な実施例とともに説明される。図面は説明の目的で単純化され、尺度も必ずしも一致しない。
【0044】
図1に、板ガラスWが模式的に示されている。板ガラスWは概して、上面又は下面(主表面)と端面との境界に稜部を有し、また、ひとつの端面と他の端面との境界に角部を有する。本発明に係る板ガラスは、この稜部や端面が研磨テープにより研磨され、高精度な仕上がり面に形成されたものである。
【0045】
図2に、板ガラスWを面取りするプロセスと形成された仕上がり面の側面の形状が模式的に示されている。図2(A)は、いわゆるC面取りにより、稜部が仕上がり面30aに形成されたものである。図2(B)は、いわゆるR面取りにより、稜部から端面にかけて全体が仕上がり面30bに形成されたものである。
【0046】
板ガラスWの強度を向上させるためには、端縁部を研磨して傷やチッピングを稜部を取り除き、稜部を取り除くことにより形成される仕上がり面30a又は30bの表面粗さや最大谷深さを小さくすることが重要である。板ガラスWに十分な機械的強度を付与するためには、仕上がり面30a又は30bの平均表面粗さRaを20nm以下、粗さ曲線の最大谷深さRvを200nm以下とすることが有効である。
【0047】
このような高精度な仕上がり面を得るために、本発明では、板ガラスWの稜部又は端面(端縁部)を、表面に微細な砥粒を含む研磨層を有する研磨テープで研磨仕上げすることを特徴とする。高精度な仕上がり面30a又は30bを得るため、研磨を、粗研磨、中研磨及び鏡面仕上げの工程に分けて行うことができる。また、予め、加工歪みの少ない樹脂ボンドの砥石を使用して角部(図1)の面取り加工を行った後、研磨テープによる研磨を行うことで、効率の良い研磨を行うことができる。
【0048】
研磨テープの表面に含まれる砥粒の平均粒径は、好適に、0.2μm以上(#20000)、3μm以下(#4000)の範囲にある。平均粒径が3μmを超えると、研磨前の比較的大きな傷や欠けは除去できるが、仕上がり面に新たに微細な傷や欠けが発生し、板ガラスWに十分な強度を与えることができないため好ましくない。平均粒径が0.2μm未満であると、研磨効率が極端に下がり生産性が悪くなるため、工業上、実用的ではない。
【0049】
以下、図面を参照し、板ガラスWの稜部(又は端面)を研磨テープで研磨して
所定の表面性状を有する仕上がり面とするための本発明に係る研磨装置のひとつの態様を説明する。
【0050】
図3は研磨装置1の平面図であり、図5は研磨装置1の側面図である。本発明に係る研磨装置1は、ベース2上に対向して設けられたワークユニット3及び研磨テープユニット4とから成る。
【0051】
ワークユニット3はベース2上に設けられた往復移動機構に取り付けられている。図3を参照して、往復移動機構は、ベース2に平行なレール32を有するLMガイド6、及びレール32と平行なレール(ボックス)31を有する単軸ロボット5を含む。図5によく示されているように、LMガイド6及び単軸ロボット5上に、ベース2に平行な走行体7が連結されている。ワークユニット3は走行体7に取り付けられており、これにより、ワークユニット3はLMガイド6のレール32に沿って移動が可能である。レール32によりワークユニット3の移動軸線13が画成される。
【0052】
単軸ロボット5は、レール31内のボールネジをモータで回転させることにより、ナット(可動部)が、所定の間隔(ストローク)でボールネジに沿って直線的に往復移動するものである。走行体7が単軸ロボット5の可動部と連結されていることにより、走行体7が駆動され、往復運動することができる。なお、単軸ロボット5は、モータがナット(可動部)と同軸上に配置されて連結されることにより、固定されたボールネジに対しナットが回転し直線的に往復移動するものであってもよく、他の構成により走行体7に直線的な駆動を与えるものであってもよい。
【0053】
走行体7が正確に移動軸線13(図3)に沿って往復運動をするために、単軸ロボット5とLMガイド6を併用することが好ましいが、走行体7は、単軸ロボット5又はアクチュエータとして機能するLMガイドにより往復運動されてもよい。
【0054】
図5を参照し、ワークユニット3は、走行体7に垂直に取り付けられた正面プレート14、正面プレート14に平行に取り付けられた傾斜プレート37、傾斜プレート37に垂直に取り付けられた傾斜プレート35及び傾斜プレート35の可動プレート35’により保持される保持台12から成る。保持台12は、傾斜プレート(35又は37)により傾斜されていない状態では、正面プレート14に対し垂直でありベース2に平行である。
【0055】
図3によく示されているように、保持台12の上面に板ガラスWが研磨テープによる仕上げ研磨のために配置される。板ガラスWは、そのひとつの端面が移動軸線13に平行になるよう保持台12に配置され、固定される。板ガラスWは固定板33及び固定レバー34により固定される。板ガラスWが配置される保持台12の表面及び固定板33の裏面には、板ガラス面に傷が発生しないように布類やゴム等の弾性シートが貼り付けられる。その他、板ガラスWは、真空吸着法、バンド固定等により保持台12に固定されてもよい。
【0056】
図6にワークユニット3の正面図が、研磨テープユニット4に一部重ねて示されている。上向きに開口部を持つ略U字形の正面プレート14が、ベース2に平行な走行体7に垂直且つ移動軸線13に平行に伸張している。この正面プレート14に、略U字形の傾斜プレート37が平行に取り付けられている。図では、傾斜プレート37と重なっている正面プレート14の開口部は点線で示されている。傾斜プレート37の開口部の内側に、左右に対面するように一対の傾斜プレート35、35が傾斜プレート37に対して垂直に設けられている。
【0057】
傾斜プレート37は左右に円弧状のネジ溝と下部に円弧状のガイド溝39を有する。ネジ溝及びガイド溝39は各々、中心をCとする円の円周の一部を画成するように形成されている。左右のネジ溝には、傾斜プレート37を正面プレート14に所定の角度で固定するための固定ネジ38が貫通している。ワッシャー等(図示せず)を介して固定ネジ38を締付けることにより、傾斜プレート37が正面プレート14に固定される。ガイド溝39には正面プレート14に固定されたロッド(ガイドローラー)39aが通っており、固定ネジ38を緩めた状態で、傾斜プレート37はガイド溝39及びロッド39aに沿って、ベース2に垂直な面内で回動可能である。言い換えると、傾斜プレート37は、移動軸線13に垂直且つベース2に平行な、中心Cを通る軸を中心にして、回動可能である。
【0058】
傾斜プレート37の回動に従って傾斜プレート37と一体的に設けられた傾斜プレート35も回動し、左右に位置する可動プレート35’の間に保持された保持台12が一点鎖線で示されたように回動してベース2に平行な移動軸線13に対し傾斜する。保持台12が移動軸線13に対して所望の角度だけ傾斜したところで、傾斜プレート37は、固定ネジ38により正面プレート14に対して固定される。
【0059】
傾斜プレート37に垂直に一体的に設けられた傾斜プレート35は、左右対称の構成を有する。左右一対の傾斜プレート35、35の内側に、傾斜プレート35と平行な左右一対の可動プレート35’、35’が設けられている。可動プレート35’は保持台12を保持している。
【0060】
図5を参照して、傾斜プレート35は、円弧状のネジ溝35a(実線部分)を有する。該ネジ溝35aは、固定ネジ36を外側から可動プレート35’に差し込んで締付けるために、傾斜プレート35を貫通している。固定ネジ36は、効率よく締め付けができるように、クランプレバー等ハンドルやノブを有するものが好ましい。
【0061】
傾斜プレート35の内側には、上記のネジ溝35aに沿って、ネジ溝とほぼ同形状の円弧状のガイド溝35b(点線部分)が形成されている。図5Bに、傾斜プレート35の中央の横断面が模式的に示されている。内側のガイド溝35bはネジ溝35aよりも幅が広く、傾斜プレート35を貫通しないように形成されている。
【0062】
図5によく示されているように、ネジ溝35a及びガイド溝35bは各々、中心をC’とする円の円周の一部を画成するように形成されている。可動プレート35’のロッド(ガイドローラー)35’a(図15A)がガイド溝35bに従って摺動する。すなわち、傾斜プレート35の可動プレート35’が、正面プレート14に垂直な面内で、C’を中心として枢動し、可動プレート35’の枢動により、可動プレート35’、35’の間に固定された保持台12が、中心C’を通る移動軸線13を軸として枢動し、ベース2に対して傾斜する。保持台12がベース2に対して所望の角度だけ傾斜したところで、傾斜プレート35の外側から固定ネジ36を締付けることにより、可動プレート35’が傾斜プレート35に対して固定される。
【0063】
上記のように、保持台12を傾斜プレート35により(ベース2に平行な状態から)移動軸線13を軸にして枢動させて傾斜させ、又は、保持台12を傾斜プレート37により(ベース2に平行な状態から)移動軸線13に垂直且つベース2に平行な軸を中心に回動させて傾斜させる、傾斜角度の調節は、どちらを先に行ってもよいものである。
【0064】
図5に研磨テープユニット4の側面図が示されている。研磨テープユニット4は、ベース2から垂直に伸張して対面する一対の固定プレート50、50を有する。この固定プレート50、50に平行に、ロッド(ガイドローラー)49a(図7A)を介して一対の傾斜プレート46、46が取り付けられている。傾斜プレート46、46の間に、シャフト(軸)とナット(軸受)とから成るガイド軸受48が伸張している。図7Aの正面図に示されているように、左右一対のガイド軸受48、48が傾斜プレート46、46の間に伸張し連結部材(符号なし)により一体的に連結されている。ガイド軸受48は、シャフトと円柱状のナットとから成るリニアブッシュ、ボールスプライン又はボールベアリングガイド等であってよい。
【0065】
図5を参照して、このガイド軸受48の上にベース2に平行に移動プレート42が載置されている。この移動プレート42から研磨プレート27が垂直に伸張している。研磨プレート27にパッド26がベース2に垂直に取り付けられる。
【0066】
エアシリンダー43のロッドが空気圧又はバネにより押し出され、又は引き込まれることで、ガイド軸受48のナット(可動部)が、シャフトに沿って矢印28の方向に往復移動する。エアシリンダー43に代えて、ナット(可動部)に往復移動を与えるための他の押圧手段を使用してもよい。ガイド軸受48のナット(可動部)が往復移動すると、移動プレート42及び移動プレート42に取り付けられた研磨プレート27が矢印28に沿って往復移動し、パッド26に配置される研磨テープTの表面が、ワークユニット3に近づき所定の押圧力(推力)で被研磨体(板ガラスW)に押圧され、またはワークユニット3から遠ざかることができる。
【0067】
図7Aに傾斜プレート46が示されている。図では固定プレート50は点線で示されている。傾斜プレート46は、左右に固定ネジ47を通すための円弧状のネジ溝を有し、円弧状のガイド溝49を有する。左右のネジ溝及びガイド溝49は各々、好適に、パッド26に配置される研磨テープTの中心C”を中心とする円の円周の一部を画成するように形成されている。該構成により、傾斜プレート46は、固定ネジ47を緩めた状態で、ガイド溝49及びガイド溝を通るロッド(ガイドローラー)49aに沿って回動することができる。
【0068】
図7Bによく示されているように、傾斜プレート46が回動すると、移動プレート42がベース2に平行な状態から傾き、研磨プレート27も傾く。研磨プレート27が傾くと、パッド26を介して研磨プレート27に取り付けられた研磨テープTの長手方向が、ベース2(ワークユニット3の移動軸線13)に対して傾く。言い換えると、研磨テープTの長手方向は、移動軸線13に垂直且つベース2に平行な、C”を通る軸を中心に回動して、移動軸線13に対して傾斜することができる。研磨テープTの長手方向が移動軸線13に対し所望の角度だけ傾斜したところで、傾斜プレート46は、固定ネジ47により固定プレート50に固定される。
【0069】
このような研磨テープユニット4のパッド26に研磨テープT(図3)が走行可能に配置される。
【0070】
パッド26を研磨テープTの裏面に対置することによって、研磨テープTの表面が板ガラスWの被研磨部(稜部)にパッドを介して押圧される。パッド26が弾性を有することにより、仕上がり面(30a)を曲面に、すなわち断面がR形状となるように形成することができ、板ガラスの強度をより向上させることができる。パッド26として、ゴム、発泡樹脂又はその複合材の弾性体を使用することができる。
【0071】
パッド26の弾性は、微細な砥粒を表面に有する研磨テープを使用して高精度な仕上がり面を形成するために、適切に選択されることが好ましい。
【0072】
パッド26の弾性があまりに大きいと(例えば、ショアA硬度が20未満)、板ガラスWの仕上がり面がだれてしまい、エッジ部の直線性が失われるため好ましくない。逆に弾性があまりに小さいと(例えば、ショアA硬度が90を超える)、仕上がり面のエッジ部の直線性は十分だが、機械的衝撃によって被研磨物に発生する傷や欠けの除去が不十分となり、板ガラスWの強度が低下するため、好ましくない。
【0073】
このため、パッド26は、機械的衝撃を緩和するために、ショアA硬度が20ないし50の範囲の発泡樹脂板であってよい。また、研磨テープTの表面に含まれる砥粒の平均粒径が1μm以下(#8000)である場合は、弾性の大きい発泡樹脂板では研磨速度が急激に遅くなって実用的でないため、パッド26は、上記の発泡樹脂板と、ショアA硬度が80ないし90の範囲にあるゴム板とを組み合わせたものが好ましい。このようにすることで、平均粒径が極めて微細な(例えば、1μm以下)砥粒の研磨テープを使用しても、研磨速度をあまり遅くすることなく、高精度な表面性状(Ra、Rv)を有する仕上がり面であってエッジ部の直線性に優れた仕上がり面を形成できる。
【0074】
図4に、弾性のあるパッド26A、26Bを配置した研磨テープユニット4が模式的に示されている。例えば、パッド26Aは弾性が比較的小さいゴム板であり、パッド26Bは弾性が比較的大きい発泡樹脂板であってよい。
【0075】
図15に、移動軸線13と研磨テープTの表面との配置に係るひとつの態様と他の態様が示されている。図16(a)のように、板ガラスWの角部が予めR状に面取りされている場合は、研磨テープTの表面と移動軸線13が平行な状態で板ガラスWを往復移動させて研磨が行われる。
【0076】
図16(b)のように、板ガラスWが、予め面取りされていない、または面取りが少ない角部(以下、角部R’という)を有する場合には、図16(a)のように研磨テープTの表面と板ガラスWの移動軸線13が平行な状態にあると、研磨テープTに進入する角部R’が研磨テープTに傷を付け、そのために研磨テープTが破れて研磨を中断しなければならないことがある。
【0077】
このため、角部R’を有する板ガラスWを研磨テープTで研磨する場合には、研磨テープTの表面が板ガラスWに対して凸状の曲面を有することが好ましい。このように研磨テープTの表面を配置するために、板ガラスWに対向する面に凸状の曲面を有する研磨プレート27の曲面に沿ってパッド26を取り付けることが好ましい。または、平坦な研磨プレート27に、板ガラスWに対して凸状の曲面を有するパッド26を取り付けても良い。このようにすれば、研磨テープTに進入する角部R’の研磨テープTの表面との接触が制限されるため、研磨テープTに傷を形成することがなく、研磨テープTの耐久性が向上する。
【0078】
上記の凸状の曲面は、曲率半径の大きい円弧状の曲面であって、平坦面に近い曲面であることが好ましい。研磨テープTの表面の曲率が必要以上に大きくなると、研磨テープTの表面と板ガラスWとの接触面積が小さくなって研磨効率が低下し、好ましくないからである。また、板ガラスWの往復移動の間隔(ストローク)が小さい場合、板ガラスWの被研磨部分(1辺の稜部)の中央部と両端部に研磨差(中央部より両端部の研磨量が少なくなってしまう)が生じ、好ましくないからである。
【0079】
図3を参照して、研磨テープユニット4は、研磨テープTを供給する供給ロール22、研磨テープを巻き取る巻取りロール23を有する。供給リール22は、研磨テープTに適度な張力を与えるため、トルクモータ(図示せず)に接続されている。巻取りリール23はステッピングモータ(図示せず)に接続され、供給リール22から供給された研磨テープTを巻き取る。巻取りリール23側には、研磨テープTに適度な張力を与えるためのストッパーローラ(図示せず)が設けられている。また、研磨テープユニット4は、研磨テープTを研磨プレート27の上に配置されたパッド26に適切に配置するための補助ローラ24、25を有してもよい。
【0080】
研磨中、研磨テープTは静止した状態でもよく、研磨テープ走行手段により、連続的または断続的に走行されてもよい。短時間で研磨が終了する場合は、研磨テープTを走行させずに静止した状態で使用し、研磨後に次の研磨のために新しい研磨テープTの表面を供給するようにしてよい。研磨が長時間に及ぶ場合は、継続して高精度で安定した研磨面、すなわち砥粒を含む研磨テープの表面を供給するために、連続的または断続的に研磨テープを走行させることが好ましい。
【0081】
研磨装置1は、さらに、ワークユニット3及び研磨テープユニット4を制御するための制御装置を含む。また、湿式で研磨を行うときに研磨テープTの表面に水又は界面活性剤を加えた水溶液を供給するための水供給機や水パイプを有していてよい。
【0082】
上記のような構成を有する研磨装置1により、板ガラスWの稜部(又は端面)が、好適に移動軸線13に対して所定の角度傾いた状態で、研磨テープTの表面に当接、押圧され、板ガラスWが移動軸線13に沿って往復移動して研磨が行われる。
【0083】
図8(a)及び(b)に、上記の第1、第2の傾斜手段(35、37)による板ガラスWの傾斜角度α又は傾斜角度θと研磨テープの表面又は移動軸線13の側面又は正面から見た配置が、各々模式的に図示されている。
【0084】
図8(a)に点線で示されているように、保持台12が傾斜していない状態では、板ガラスWは、上面又は下面が研磨テープTの表面に垂直であり、端面が研磨テープTの表面に平行である。板ガラスW1は、第1の傾斜手段35により角度αだけ傾斜したものである。図2(C)に示されているとおり、角度αは、いわゆるC面取りの角度に対応するものである。
【0085】
図8(b)は、板ガラスWが、第2の傾斜手段37により、移動軸線13に対して角度θだけ傾斜された状態を示す。角度θは、5度〜60度の範囲にあることが好ましい。角度θの選択は、使用される研磨テープTの幅及び板ガラスWの被研磨部(1辺の稜部)の長さによって規制されるが、角度θが5度未満では研磨効率があまり向上しない。角度θが60度を越えると研磨効率は向上するが、板ガラスWの往復運動による研磨テープTの表面との接触抵抗が大きくなり、安定した研磨が困難となる。また、薄い板ガラスWの場合、ガラスが割れてしまうことがある。なお、角度θが小さい場合は、板ガラスWを順次未使用の研磨テープTの幅方向に移動させることにより、研磨テープを有効に利用することができる。
【0086】
研磨方法として、板ガラスW1の状態(稜部が移動軸線に平行な状態)で板ガラスW1を移動軸線に沿って往復移動させて研磨してもよく、角度αと角度θが組み合わされた状態(稜部が移動軸線に対し角度θだけ傾いた状態)で研磨してもよい。板ガラスW1の状態では研磨効率が十分でない場合もあるが、研磨テープの走行方向(長手方向)を移動軸線に対して傾斜させる等により、効率のよい研磨を行うことができる。また、角度αと角度θが組み合わされた状態で研磨すると、研磨テープの幅を広く使用して砥粒を稜部に有効に作用させることができ、研磨速度を向上させることができ、コスト面でも有利である。
【0087】
図9には、板ガラスWの他の研磨方法が示されている。研磨テープTの幅Twは、板ガラスWの厚さ(端面の幅)以上であれば使用することが可能であるが、板ガラスWの端縁部をその移動軸線13に対して所定の角度だけ傾けて研磨テープTの表面に押圧し、往復移動させて研磨を行う場合には、その往復移動の面積を考慮して、研磨テープTの幅が選択される。研磨は、研磨テープTの幅内で行うことが好ましい。
【0088】
図9(a)のように、板ガラスWの端面(又は稜部)が移動軸線13に対してθ’傾いている状態で、研磨テープTが所定の速度で矢印21の方向に走行している場合、研磨テープTの幅Twに対し、研磨に使用される幅Tw’が小さいため、研磨テープTの表面に未使用部分があり、経済的でない。図9(b)のように、研磨テープTを、移動軸線13に対して角度βだけ傾けて走行させると、研磨テープTの走行に従って、順次、研磨テープTの幅Tw全体が板ガラスWの被研磨部分に接触するため、実質的に、研磨テープTの幅Twが研磨に使用される幅Tw’に等しくなる。また、研磨テープTの長手方向が移動軸線13に対して角度βだけ傾いた状態で、研磨テープTを矢印21の方向へ走行させながら、板ガラスWを移動軸線13に沿って所定の往復間隔(ストローク)Lで往復移動させると、研磨テープTの表面に対する板ガラスWの動きが上下にジグザグを描く形になり、研磨テープTの幅Twを有効に利用することができる。
【0089】
角度(θ’+β)は、5度〜60度の範囲にあることが好ましい。この範囲で、往復移動中に板ガラスWの被研磨部分が研磨テープTの幅からはみ出ないように調節することが好ましい。研磨テープTの幅方向の端部の段差に接触して板ガラスWの端縁部に傷を発生することを防止するためである。
【0090】
図10に、板ガラスWのもうひとつの他の研磨方法が示されている。図10(a)のように板ガラスWの上面又は下面を研磨テープTの表面に垂直且つ研磨テープTの長手方向に平行になるように当接し、図10(b)のように研磨プレート27を板ガラスWの上面の稜部から下面の稜部にかけて、円弧状に往復運動させることによって、板ガラスの端面全体を円弧状にR面研磨してもよい。
【0091】
本発明に使用される研磨テープは、プラスチック製の基材フィルムに樹脂バインダーに砥粒を分散させた溶液を塗布し、乾燥、硬化させたシートを必要幅にスリットし、リールに巻かれたものである。
【0092】
基材フィルムとして、柔軟性を有する合成樹脂製のプラスチックフィルムが使用される。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール又はメタクリルアルコールを主成分とするアクリル系樹脂等から成るフィルムが基材フィルムとして使用される。
【0093】
砥粒(研磨粒子)としては、アルミナ(Al)、酸化セリウム(CeO)、シリカ(SiO)、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)、酸化クロム(Cr)、ジルコニア(ZrO)、立方晶窒化ホウ素(cBN)等及びその混合物であって、上で述べた粒径の範囲にあるものが使用できる。
【0094】
実施例1
本発明の実施例1の製造方法により、稜部に高精度な仕上がり面を有する板ガラスが製造された。板ガラスとして、長さ700mm、幅400mm、厚さ0.8mmの長方形のソーダライムガラスが使用された。この板ガラスの4つの角部が予め砥石によりR面取りされ、その後研磨テープにより、8辺の稜部が研磨されて仕上がり面に形成された。研磨において、板ガラスの往復移動は、稜部が移動軸線に対して10度傾いた状態(θ=10°)で行われ、板ガラスは45度の角度(α=45°)で研磨テープの表面に当接され、研磨量(図2Cのh)は50μmであった。このように一定の研磨量とするために、研磨テープの表面に含まれる砥粒径によって、板ガラスの往復回数(1往復=1パス)が調節された。研磨テープの表面は板ガラスの移動軸線に対して平行であり、静止した状態であった。また、研磨テープの表面に小量の水を供給しながら研磨が行われた。
【0095】
実施例1の製造方法における条件をまとめると、以下のとおりである。
【0096】
研磨条件(1辺)
研磨テープの状態:静止
板ガラスの研磨テープ表面に垂直な面に対する傾斜角度(α):45°
研磨量(h):50μm
稜部の移動軸線に対する傾斜角度(θ):10°
往復運動のストローク長さ(L):150mm
研磨テープの幅(Tw):30mm
研磨テープの押圧力(推力):15N
【0097】
研磨テープとして、GC(グリーンカーボランダム)#4000(SiC:平均砥粒径3μm)が使用され、パッド部材として、ショアA硬さ30の発泡樹脂パッドが使用された。板ガラスの往復回数は21パスであった。
【0098】
実施例2
実施例2の製造方法において、研磨テープとして、GC#6000(平均砥粒径2μm)が使用された。板ガラスの往復回数は24パスであった。そのほかの条件は実施例1と同様であった。
【0099】
実施例3
実施例3の製造方法において、研磨テープとして、GC#10000(平均砥粒径0.5μm)が使用された。パッド部材として、ショアA硬さ80のゴム板及びショアA硬さ30の発泡樹脂板が使用された。板ガラスの往復回数は31パスであった。そのほかの条件は実施例1と同様であった。
【0100】
比較例1
比較例1の製造方法において、研磨テープとして、GC#1000(平均砥粒径16μm)が使用された。板ガラスの往復回数は7パスであった。そのほかの条件は実施例1と同様であった。
【0101】
比較例2
比較例2の製造方法において、研磨テープとして、GC#2000(平均砥粒径9μm)が使用された。板ガラスの往復回数は11パスであった。そのほかの条件は実施例1と同様であった。
【0102】
比較例3
比較例3の製造方法において、研磨テープとして、GC#3000(平均砥粒径5μm)が使用された。板ガラスの往復回数は17パスであった。そのほかの条件は実施例1と同様であった。
【0103】
比較例4
比較例4の製造方法において、メッシュサイズ#1000のダイヤモンド砥粒(平均粒径14〜22μm)をメタルボンドした砥石が使用された。図14に示すように、砥石と板ガラスの端縁部を配置し、砥石を回転させることにより稜部の面取り研磨が行われた。
【0104】
上記のように仕上げ研磨された実施例、比較例の平均表面粗さRa及び粗さ曲線の最大谷深さRvが、以下の表1に示されている。平均表面粗さRa及び最大谷深さRvは表面粗さ計(製品名NewView5000:Zygo社製)により測定された。
【0105】
【表1】

【0106】
実施例1ないし4の製造方法により、稜部が高精度な仕上がり面(平均表面粗さRa:1.7nm〜11.5nm、最大谷深さRv:32nm〜162nm)に形成された板ガラスが得られた。往復パス回数は20回から30回程度で、研磨速度も十分であった。比較例の製造方法による板ガラスの仕上がり面は、最大谷深さが1000nmを超えたものが多かった。
【0107】
実施例、比較例の仕上がり面の拡大写真が図11に示されている。左側はデジタルマイクロスコープ(製品名VHX500:KEYENCE社製)による光学写真であり、右側は表面粗さ計(製品名NewView5000:Zygo社製)よるものである。図11(A)は比較例1、(B)は比較例2、(C)は実施例1、(D)は実施例3による仕上がり面である。
【0108】
比較例に係る(A)、(B)は、表面の凹凸が多く仕上がり面の表面性状として不十分であった。実施例に係る(C)、(D)は、凹凸や傷がない高精度の仕上がり面となっていた。また、研磨テープを使用したことにより、仕上がり面が曲面を有しており、エッジ部の直線性にも優れていた。
【0109】
図12は、比較例4の製造方法で得られた板ガラスの仕上がり面の拡大写真である。砥石で研磨したことにより、仕上がり面は曲面に形成されていない。また、表面に研磨痕(ホイールマーク)があり、傷が多く見られた。
【0110】
実施例、比較例の各板ガラスのエッジ強度(MPa)が測定された。エッジ強度とは、ガラスの端縁部の強度を指すものである。エッジ強度は、室温曲げ強さ試験方法(JIS R1601)に基づいて、市販の4点曲げ試験機を使用して測定された。エッジ強度試験(4点曲げ)の方法が図13に模式的に示されている。負荷治具間隔が10mm、支持治具間隔が30mm、負荷速度が5mm/minの条件で試験が行われた。
【0111】
表1に、実施例、比較例の板ガラスを各10枚試験し、得られたエッジ強度を平均した値が記載されている。本発明に係る、微細な砥粒を表面に含む研磨テープを使用して端縁部が研磨され仕上がり面に形成された板ガラスは、仕上がり面の平均表面粗さRa及び最大谷深さRv値を大幅に低減することができた結果、従来の砥石による加工と比較して、エッジ強度が3倍以上に向上した。このように、本発明に係る板ガラスは、エッジ強度が著しく向上しているため、当該板ガラスを使用する製品の製造工程で、板ガラスが機械的応力や熱ショックにより破損することを防ぐことができるものである。また、板ガラスが製品に組み込まれた後も破損しにくく、製品の信頼性を向上させることができるものである。
【0112】
本発明の思想及び態様から離れることなく多くのさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、言うまでもなく、本発明の態様は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0113】
W 板ガラス(被研磨体)
T 研磨テープ
Tw 研磨テープ幅
Tw’ 研磨幅
1 研磨装置
2 ベース
3 ワークユニット
4 研磨テープユニット
5 単軸ロボット
6 LMガイド
7 走行体
12 保持台
13 移動軸線
21 研磨テープ走行方向
22 供給ロール
23 巻取りロール
24 補助ローラ1
25 補助ローラ2
26 パッド
26A 第2のパッド手段
26B 第1のパッド手段
27 研磨プレート
28 研磨プレートの移動方向1
29 研磨プレートの移動方向2
30a 仕上がり面(稜部)
30b 仕上がり面(端面)
31 レール1
32 レール2
33 固定板
34 固定レバー
35 傾斜プレート1
35a ネジ溝
35b ガイド溝
35’ 可動プレート
35’a ロッド1
35’b ネジ孔
36 固定ネジ1
37 傾斜プレート2
38 固定ネジ2
39 ガイド溝1
39a ロッド2
40 砥石
42 移動プレート
43 エアシリンダー
46 傾斜プレート3
47 固定ネジ3
48 ガイド軸受
49 ガイド溝2
49a ロッド3
50 固定プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、下面及びその両面の間に端面を有する矩形の板ガラスであって、前記上面又は前記下面と前記端面との境界にある稜部のうち少なくとも1辺の稜部が研磨テープで研磨され仕上がり面に形成された板ガラスであって、該仕上がり面の平均表面粗さRaが20nm以下であり且つ最大谷深さRvが200nm以下である板ガラス。
【請求項2】
上面、下面及びその両面の間に端面を有する矩形の板ガラスであって、少なくともひとつの端面が研磨テープで研磨され仕上がり面に形成された板ガラスであって、該仕上がり面の平均表面粗さRaが20nm以下であり且つ最大谷深さRvが200nm以下である板ガラス。
【請求項3】
請求項1に記載された板ガラスの製造方法であって、
前記研磨テープの裏面に弾性のあるパッド部材の表面を配置し前記板ガラスの少なくとも1辺の稜部をC面取りするために前記研磨テープの表面と前記板ガラスの1辺の稜部を対向させて配置する工程であって、前記研磨テープの表面が砥粒を含む研磨層から成る、ところの工程と、
前記パッド部材を介して前記研磨テープに所定の押圧力を加えることにより前記研磨テープの表面を前記1辺の稜部に当接・押圧する工程と、
前記板ガラスを直線的な移動軸線に沿って移動させることにより前記1辺の稜部を研磨する工程と、を含み、
前記砥粒の平均粒径が0.2μm以上3.0μm以下の範囲にあり、
前記研磨する工程において、前記研磨テープが走行せず停止している又は走行している、
ことを特徴とする板ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記研磨する工程において、前記1辺の稜部が前記移動軸線に関して所定の角度(θ)だけ傾斜した状態で前記板ガラスを前記移動軸線に沿って往復移動させる、
ことを特徴とする請求項3に記載された板ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記所定の角度(θ)が5度以上60度以下の範囲にある、
ことを特徴とする請求項4に記載された板ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記パッド部材の表面が平坦面である、
ことを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載された板ガラスの製造方法。
【請求項7】
前記パッド部材の表面が凸状の曲面である、
ことを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載された板ガラスの製造方法。
【請求項8】
前記移動軸線が前記研磨テープの長手方向に平行である、
ことを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載された板ガラスの製造方法。
【請求項9】
前記移動軸線が前記研磨テープの長手方向に対し所定の角度(β)だけ傾斜している、
ことを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載された板ガラスの製造方法。
【請求項10】
請求項2に記載された板ガラスの製造方法であって、
前記研磨テープの裏面に弾性のあるパッド部材の表面を配置し前記研磨テープの表面と前記板ガラスのひとつの端面を対向させて配置する工程であって、前記研磨テープの表面が砥粒を含む研磨層から成る、ところの工程と、
前記パッド部材を介して前記研磨テープに所定の押圧力を加えることにより前記研磨テープの表面を前記ひとつの端面に当接・押圧する工程と、
前記板ガラスを直線的な移動軸線に沿って移動させることにより前記ひとつの端面を研磨する工程と、を含み、
前記砥粒の平均粒径が0.2μm以上3.0μm以下の範囲にあり、
前記研磨する工程において、前記研磨テープが走行せず停止している又は走行している、
ことを特徴とする板ガラスの製造方法。
【請求項11】
前記パッド部材が、ショアA硬さが20ないし50の範囲にある第1のパッド部材である、
ことを特徴とする請求項3ないし10のいずれかに記載された板ガラスの製造方法。
【請求項12】
前記研磨テープと前記第1のパッド部材との間にショアA硬さが90以下である第2のパッド部材が配置されている、
ことを特徴とする請求項11に記載された板ガラスの製造方法。
【請求項13】
前記仕上がり面が曲面を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載された板ガラス、又は請求項3ないし12のいずれかに記載された板ガラスの製造方法。
【請求項14】
前記研磨する工程において、前記研磨テープが連続的又は断続的に走行する、
ことを特徴とする請求項3ないし13のいずれかに記載された板ガラスの製造方法。
【請求項15】
前記所定の押圧力を、研磨の進行とともに次第に大きくする、
ことを特徴とする請求項3ないし14のいずれかに記載された板ガラスの製造方法。
【請求項16】
上面、下面及びその両面の間に端面を有する矩形の板ガラスの前記上面又は前記下面と前記端面との境界にある稜部のうち少なくとも1辺の稜部又は少なくともひとつの端面を研磨テープで研磨し仕上がり面に形成するための研磨装置であって、
ベースと、
前記板ガラスを配置するためのワークユニットであって、前記板ガラスを前記ベースに平行な移動軸線に沿って移動可能に前記ベース上に設けられたワークユニットと、
前記研磨テープを配置するための研磨テープユニットであって、前記ワークユニットと対向して前記ベース上に設けられた研磨テープユニットと、から成り、
前記ワークユニットは、
前記板ガラスのひとつの端面が前記移動軸線に平行になり且つ前記板ガラスの前記上面又は前記下面が前記ベースと平行になるよう前記板ガラスを保持するための保持台と、
前記保持台を、前記移動軸線を中心に枢動させることにより前記板ガラスの前記上面又は前記下面を前記ベースに対して所定の角度(α)だけ傾斜させるための第1の保持台傾斜手段と、
前記保持台を前記移動軸線と垂直且つ前記ベースと平行な回動軸線を中心に回動させることにより前記板ガラスの前記上面又は前記下面を前記ベースに対して所定の角度(θ)だけ傾斜させるための第2の保持台傾斜手段と、を含み、
前記研磨テープユニットは、
前記研磨テープの砥粒を含む表面が前記板ガラスの1辺の稜部又は前記ひとつの端面と対向するよう前記研磨テープを配置するためのパッドと、
前記パッドを取り付けるための前記ベースに垂直な研磨プレートと、
前記研磨テープの表面が前記1辺の稜部又は前記ひとつの端面に当接・押圧されるよう前記研磨プレートを前記ベースと平行且つ前記移動軸線と垂直な方向に移動させるための押圧手段と、
前記研磨テープを走行させるための研磨テープ走行手段と、
を含む、
ことを特徴とする研磨装置。
【請求項17】
前記パッドに配置された前記研磨テープの長手方向が前記移動軸線と平行である、
ことを特徴とする請求項16に記載された研磨装置。
【請求項18】
前記研磨テープユニットが、前記研磨テープの長手方向が前記移動軸線に対して所定の角度(β)だけ傾斜するよう前記研磨プレートを傾斜するための研磨プレート傾斜手段を含む、
ことを特徴とする請求項17に記載された研磨装置。
【請求項19】
前記パッドの前記研磨テープが配置される表面が平坦面である、
ことを特徴とする請求項16ないし18のいずれかに記載された研磨装置。
【請求項20】
前記パッドの前記研磨テープが配置される表面が凸状の曲面である、
ことを特徴とする請求項16ないし18のいずれかに記載された研磨装置。
【請求項21】
上面、下面及びその両面の間に端面を有する矩形の板ガラスを水平な移動軸線に沿って移動させ該板ガラスの前記上面又は前記下面と前記端面との境界にある稜部のうち少なくとも1辺の稜部を研磨テープの砥粒を有する表面で研磨し仕上がり面に形成するための研磨方法であって、
前記板ガラスのひとつの端面が前記移動軸線に平行になるよう且つ前記板ガラスの前記上面又は前記下面が水平になるよう前記板ガラスを配置する工程と、
前記板ガラスを、前記移動軸線を中心に枢動させることにより前記板ガラスの前記上面又は前記下面を水平に対して所定の角度(α)だけ傾斜させる第1の傾斜工程と、
前記板ガラスを、水平且つ前記移動軸線と垂直な回動軸線を中心に回動させることにより前記板ガラスの前記上面又は前記下面を水平に対して所定の角度(θ)だけ傾斜させる第2の傾斜工程と、
前記研磨テープの表面が前記板ガラスの1辺の稜部に対向するよう前記研磨テープをパッド部材の表面に配置する工程と、
前記パッド部材を介して前記研磨テープに所定の押圧力を加え前記研磨テープの表面を前記1辺の稜部に当接・押圧する工程と、
前記板ガラスを前記移動軸線に沿って移動させることにより前記1辺の稜部を研磨する工程と、を含む、
ことを特徴とする研磨方法。
【請求項22】
前記パッド部材に配置された前記研磨テープの長手方向が前記移動軸線と平行である、
ことを特徴とする請求項21に記載された研磨方法。
【請求項23】
前記パッド部材に配置された前記研磨テープの長手方向が前記移動軸線に対し所定の角度(β)だけ傾斜している、
ことを特徴とする請求項20に記載された研磨方法。
【請求項24】
前記パッド部材の表面が平坦である、
ことを特徴とする請求項21ないし23のいずれかに記載された研磨方法。
【請求項25】
前記パッド部材の表面が凸状の曲面である、
ことを特徴とする請求項21ないし23のいずれかに記載された研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−99821(P2013−99821A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244787(P2011−244787)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(390037165)日本ミクロコーティング株式会社 (79)
【Fターム(参考)】