説明

粒子状組成物およびその製造方法

【課題】 本発明は、酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカル等に対して不安定な脂溶性活性成分、なかでも特に、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等の分野において有用性が期待できるが安定性の低い脂溶性活性成分を、長期にわたり安定化できる粒子状組成物およびその製造方法を提案することを課題とする。
【解決手段】 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、水溶性賦形剤と脂溶性活性成分を含有する粒子状組成物であって、粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重が1.25以上、かつ粒子状組成物の球形度が0.9以上である粒子状組成物が、不安定な脂溶性活性成分を長期間にわたり安定化できること、およびそのような粒子状組成物を得るための製法を見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状組成物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカルに対して不安定な脂溶性活性成分を長期間にわたり安定化できる粒子状組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、食品、機能性食品、医薬品、あるいは化粧品等の分野においては、種々の目的において、生体に有効な機能を発現する有用成分の開発が推進されている。しかしながら、それらの有用成分の中には、大気中の酸素、あるいは光(紫外線、可視光線、赤外線)、酸や塩基の共存、またはラジカル等の活性物質の作用等により分解する、いわゆる安定性の低い物質も少なくない。例えば、機能性食品素材および医薬品として知られている補酵素Q10は、光や酸素、あるいは酸化還元性物質等に対する安定性が低く、特に、その還元型である還元型補酵素Q10は、大気中の酸素に容易に酸化され、酸化型の補酵素Q10に変化してしまう。これ以外にも、大気中の酸素で分解を受ける機能性物質として、例えば、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、α−リノレン酸等に代表される高度不飽和脂肪酸、牛脂、豚脂、魚油、菜種油、パーム油、大豆油、ごま油等の天然動植物油脂、およびそれらの硬化油、エステル交換油、ウィンタリング油等、さらにはトコフェロール等の天然あるいは合成添加剤などが挙げられる。また、香料の分野においても、香料を構成する化合物は、その分子量、官能基、分子構造により揮発性や安定性がそれぞれ異なるため、最終製品に加工化された後の残留性、安定性が課題となっている。
【0003】
これらに代表される安定性の低い脂溶性成分(以下、脂溶性活性成分と記述する)を安定化する技術については、古くから検討が実施され、特に、マイクロカプセル化による粉末油脂化技術が、その代表例として挙げられる。通常、脂溶性活性成分の粉末油脂化では、水溶性賦形剤を含有する水溶液に不安定な脂溶性活性成分を乳化し、それにより得た水中油型乳化組成物を噴霧乾燥する手法が広く用いられている(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、これらの方法で得られる多核型マイクロカプセル化粉末油脂粒子は、通常、粒子形態が不定形となり、粒子径も小さくなりがちで、脂溶性活性成分の安定性はマイクロカプセル化前と比較すると大幅に向上するものの、実用に耐えうるレベルの長期的な安定性確保の面では到底満足できるものではない。また近年、噴霧乾燥法で得た粉末の上記不備を解消する目的で、流動層レイヤリング造粒法が提案されている(特許文献2)。この方法では、噴霧乾燥法により得た微細な粉末油脂を、流動層中で脂溶性活性成分の乳化液でコーティングすることで、比較的球形度の高い粒子径の大きな粉末油脂が得られるとされている。しかしながら、例えば該文献を見る限り、生成粒子の形態は依然として球形とは言い難く、また、それによる脂溶性活性成分の安定性向上効果についても言及されていない。
【0005】
一方、噴霧乾燥以外の方法で、多核型マイクロカプセル化粉末油脂を得る手法としては、スプレークーラー法、液中硬化法、凍結乾燥−粉砕法等が知られている。スプレークーラー法および液中硬化法は、ゼラチン等、温度変化により可逆的にゾル−ゲル変化を起こす賦形剤を含有する水溶液に脂溶性活性成分を乳化し、それにより得た水中油型乳化組成物を、低温下でゲル化固化させ、これにより得た水分を含むゲル状の粒子をゲル化温度以下の低温下で乾燥させる手法である(特許文献3)。この手法により得られる多核型マイクロカプセル化粉末油脂は、噴霧乾燥で得られる粉末油脂よりも粒子形状は良好であるものの、ゼラチン等のゲル化特性を有する賦形剤の使用が不可欠であり、脂溶性活性成分の安定化を目的とした賦形剤成分の選択肢が極めて狭くなる欠点を有していた。また、凍結乾燥−粉砕法では、得られる粒子の形態が必然的に歪となり、粉砕位置によっては脂溶性活性成分が粒子表面に暴露してしまうなど、脂溶性活性成分の安定化を目的においては満足なものとは言い難い。
【0006】
さらに、多核型ではなく単核型のマイクロカプセルを得る脂溶性活性成分の安定化技術として、2重ノズルを用いたシームレスカプセル化技術が知られている(特許文献4)。この方法では、不安定な脂溶性活性成分をマイクロカプセルの中心部付近に位置させることが可能となるため、カプセルの皮膜厚みを多核型カプセルよりも厚くでき、それにより、より安定性の高いマイクロカプセルを得ることが期待できる。しかしながら、この方法でも、上記のスプレークーラー法や液中硬化法同様に、ゲル化性を有するゼラチン等の賦形剤の使用が必須である、さらには安定的なカプセルの製造の面で粒子径が約1.5mm以上の範囲が好ましい等、脂溶性活性成分の安定化を目的とした賦形剤成分の選択肢が極めて狭くなる、あるいは、1000μm以下の粒子状組成物の製造が困難となる等、満足できるものではない。
【特許文献1】特開平7−313055
【特許文献2】特開2003−24001
【特許文献3】特開2006−089381
【特許文献4】特開2003−325638
【非特許文献1】Biosci. Biotechnol. Biochem.,66巻,p1829−1834,2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に解決を与えるため、酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカル等に対して不安定な脂溶性活性成分、なかでも特に、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等の分野において有用性が期待できるが安定性の低い脂溶性活性成分を、長期にわたり安定化できる粒子状組成物およびその製造方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、水溶性賦形剤と脂溶性活性成分を含有する粒子状組成物であり、水溶性賦形剤成分の真比重が高く、かつ粒子状組成物の球形度が高い粒子状組成物が、不安定な脂溶性活性成分を長期間にわたり安定化できること、およびそのような粒子状組成物を得るための製法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明が、提供するのは以下の通りである:
[1] 水溶性賦形剤と脂溶性活性成分を含有する粒子状組成物であって、粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重が1.25以上、かつ粒子状組成物の球形度が0.9以上である粒子状組成物。
[2] 体積平均粒子径が50〜1000μmである[1]の粒子状組成物。
[3] 水溶性賦形剤から成るマトリックス中に、脂溶性活性成分を5〜100重量%含有する油性成分(A)がドメインを形成して多分散していることを特徴とする、[1]または[2]の粒子状組成物。
[4] 油性成分(A)が形成するドメインの体積平均粒子径が0.01〜10μmである、[3]の粒子状組成物。
[5] 脂溶性活性成分が、酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカルに対して不安定な脂溶性活性成分である[1]〜[4]いずれかの粒子状組成物。
[6] 脂溶性活性成分が、還元型補酵素Q10、酸化型補酵素Q10、高度不飽和脂肪酸、又はそれらの混合物である[1]〜[4]いずれかの粒子状組成物。
[7] 脂溶性活性成分が、香料であることを特徴とする[1]〜[4]いずれかの粒子状組成物。
[8] 脂溶性活性成分が、生理活性物質であることを特徴とする[1]〜[4]いずれかの粒子状組成物。
[9] 水溶性賦形剤が、水溶性高分子、界面活性剤(C)、糖、および酵母細胞壁からなる群より選択される1種以上である[1]〜[8]いずれかの粒子状組成物。
[10] 水溶性賦形剤成分の20〜100重量%がアラビアガムであることを特徴とする[1]〜[9]いずれかの粒子状組成物。
[11] 界面活性剤(C)が、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、レシチン類およびサポニン類からなる群より選択される1種以上である、[9]または[10]の粒子状組成物。
[12] 糖が、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、および糖アルコール類からなる群より選択される1種以上である、[9]または[10]の粒子状組成物。
[13] 粒子状組成物中に、0.1〜20重量%の還元剤を含有することを特徴とする、[1]〜[12]いずれかの粒子状組成物。
[14] 還元剤が、脂溶性アスコルビン酸類、水溶性アスコルビン酸類、トコフェロール及びポリフェノールからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、[13]の粒子状組成物。
[15] 還元剤が、L−アスコルビン酸及び/又はD−arabo−アスコルビン酸であることを特徴とする、[13]の粒子状組成物。
[16] 0.01〜30重量%の水分を含有することを特徴とする、[1]〜[15]いずれかの粒子状組成物。
[17] 粒子状組成物中の脂溶性活性成分の含有量が1〜70重量%の範囲である、[1]〜[16]いずれかの粒子状組成物。
[18] 40℃、空気中、遮光条件下に30日間保存後における、粒子状組成物中の脂溶性活性成分の保持率が、90重量%以上である、[1]〜[17]いずれかの粒子状組成物。
[19] 水溶性賦形剤を含有する水溶液と脂溶性活性成分を含有する油性成分(A)から調製した水中油型乳化組成物を、油性成分(B)中に分散あるいは懸濁させた後、油性成分(B)中で乳化組成物中の水分を除去することによって得られることを特徴とする[3]又は[4]の粒子状組成物
[20] 油性成分(B)として、油脂5〜100重量%および界面活性剤(D)0〜95重量%からなる油性成分を使用することを特徴とする、[19]の粒子状組成物。
[21] 界面活性剤(D)として、レシチン類を使用することを特徴とする、[20]の粒子状組成物。
[22] 粒子状組成物中の水分含量が10重量%以下となるまで、水分を除去して得られる[19]〜[21]いずれかの粒子状組成物。
[23] [1]〜[22]いずれかの粒子状組成物を含有することを特徴とする、食品、飲料、化粧品、又は医薬品。
[24] [1]〜[22]いずれかの粒子状組成物を水性媒体に溶解させた、食品、飲料、化粧品、又は医薬品。
[25] [1]〜[22]いずれかの粒子状組成物及び/又はその破砕粉末を含有することを特徴とするソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤又はチュアブル剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカル等に対して不安定な脂溶性活性成分、なかでも特に、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等の分野において有用性が期待できるが安定性の低い脂溶性活性成分を、長期間にわたり安定化できる粒子状組成物およびその製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、本発明の粒子状組成物について説明する。本発明の粒子状組成物は、水溶性賦形剤と脂溶性活性成分を含有する粒子状組成物であって、粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重が1.25以上、かつ粒子状組成物の球形度が0.9以上である粒子状組成物である。
【0012】
本発明の粒子状組成物に含有させることの出来る脂溶性活性成分としては、脂溶性又は難水溶性の有用成分であれば特に限定されないが、酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカル等に対する安定性に課題を有する脂溶性活性成分であるのが、本発明の効果が発揮できる点で好ましい。そのような脂溶性活性成分としては、例えば、還元型補酵素Q10、酸化型補酵素Q10等の補酵素Q類;ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、α−リノレン酸等の高度不飽和脂肪酸;牛脂、豚脂、魚油、菜種油、パーム油、大豆油、ごま油等の天然動植物油脂、およびそれらの硬化油、エステル交換油、ウィンタリング油等の油脂類の他、香料、種々の生理活性物質が相当する。香料としては、具体的に、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等の柑橘類精油;花精油;ペパーミント油、スペアミント油、スパイス油等の植物精油;コーラナッツ、コーヒー、バニラ、ココア、紅茶、緑茶、ウーロン茶、スパイス類、ハーブ類、節類、煮干し類等の粉砕物のエキストラクト類、オレオレジン類、エッセンス類や回収香;オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等の果汁;ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキス、ホタテエキス、カニエキス等の動物エキス類;ニンニクエキス、玉ねぎエキス、セロリエキス等の植物エキス類;合成香料化合物、調合香料組成物及びこれらの任意の混合物等が挙げられる。生理活性物質としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、トコトリエノール及びそれらの誘導体等の脂溶性ビタミン類;甘草、ウコン、シソ、クローブ、シナモン、ショウガ、レモングラス、ペパーミント、ドクダミ、ヨクイニン、米糠、コーンフラワー、フェンネル、クコ、サンショウ、キンレンカ、サンヤク、サンリョウ、キンカラン、アマチャヅル、ソクハクヨウ、ハクトウオウ、パセリ、オニオン、ナツメグ、ワイルドライス、グルテンフィード、コンニャク飛粉、パプリカ、ホースラディッシュ、レモン、唐辛子、ゴマ、スペアミント、または高菜などの植物やその加工品を、エタノール、アセトン、ヘキサン等の有機溶媒を用いて抽出して得られる疎水性抽出物やそれに含まれる成分(ポリフェノール類、テルペン類等)の他、αカロチン、βカロチン、γカロチン、δカロチン、εカロチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、フコキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン、アスタキサンチン等のカロチン類、キサントフィル類、及びそれらの誘導体等を例示することができる。
【0013】
これらの中でも、特に、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等の分野において有用性が期待できるが、酸素、光、酸・塩基、及び/又はラジカル等に対する不安定さが課題である脂溶性活性成分であることが、本発明の目的においてより好ましく、その代表例として、還元型補酵素Q10が好ましい例として挙げられる。
【0014】
還元型補酵素Q10は、下記式(1)で示される化合物である。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、n=10である)
上述したように、補酵素Q10には還元型と酸化型が存在するが、本発明においては、特に、補酵素Q10として還元型補酵素Q10を対象とした場合に、その酸化に対する不安定性を飛躍的に改善できるため好ましい。その場合の、還元型補酵素Q10は還元型単独であってもよいし、酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物である補酵素Q10であっても良い。本発明の粒子状組成物中に、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10の両者を含む場合、還元型補酵素Q10が補酵素Q10の総量(すなわち、還元型補酵素Q10及び酸化型補酵素Q10の合計量)に占める割合は、特に制限されないが、例えば約20重量%以上、普通約40重量%以上、好ましくは約60重量%以上、より好ましくは約80重量%以上、とりわけ約90重量%以上、なかんずく約96重量%以上である。上限は100重量%であり、特に限定されないが、通常は約99.9重量%以下である。
【0017】
還元型補酵素Q10は、特開平10−109933号公報に記載されているように、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物である補酵素Q10を得た後、クロマトグラフィーを用いて、流出液中の還元型補酵素Q10区分を濃縮する方法等により製造できる。この場合には、上記補酵素Q10中に含まれる酸化型補酵素Q10を、水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)等の一般的な還元剤を用いて還元した後、クロマトグラフィーによる濃縮を行っても良い。また、還元型補酵素Q10は、既存の高純度酸化型補酵素Q10に上記還元剤を作用させて得ることもできる。
好ましくは、既存の高純度酸化型補酵素Q10、あるいは酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物である補酵素Q10を、一般的な還元剤、例えば、ハイドロサルファイトナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸類等を用い、還元することにより得られたものであり、より好ましくは、既存の高純度酸化型補酵素Q10、あるいは酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物である補酵素Q10を、アスコルビン酸類を用いて還元することにより得られたものである。
本発明においては、上記のような不安定な脂溶性活性成分を、水溶性賦形剤とともに粒子状の組成物とすることで、安定化することができる。本発明で用いることのできる水溶性賦形剤成分としては、特に限定されないが、水溶性高分子、界面活性剤(C)、糖、および酵母細胞壁からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。本発明においては、これら水溶性高分子、界面活性剤(C)、糖、酵母細胞壁等の水溶性賦形剤を任意に組み合わせ、その組成を調整することで、後述する「水分含量が3%重量以下の条件下における、水溶性賦形剤成分の真比重が1.25以上」という条件を満たすことができる。また、上記、水溶性賦形剤は、食品、化粧品、医薬品用途に許容できるものであれば特に制限されないが、特に食品に許容できるものが好ましい。
【0018】
上記水溶性高分子としては、例えば、アラビアガム、ゼラチン、寒天、澱粉、ペクチン、ガティーガム、カラギーナン、カゼイン、カゼイン化合物、乾燥卵白、カードラン、アルギン酸類、大豆多糖類、プルラン、セルロース類、キサンタンガム、カルメロース塩(カルメロースナトリウムまたはカルメロースカルシウムなど)、高級脂肪酸の糖エステル、トラガンド、ミルクなどの、アミノ酸または/および糖等を主成分とする水溶性の高分子、あるいはポリビニルピロリドン等を、単独であるいは2種類以上の混合物として用いることができる。中でも、アラビアガム、ゼラチン、ガティーガム、寒天、澱粉、ペクチン、カラギーナン、カゼイン、乾燥卵白、カードラン、アルギン酸類、大豆多糖類、プルラン、セルロース類、キサンタンガム、カルメロース塩、ポリビニルピロリドン等がより好ましく、さらにはアラビアガムが最も好ましく使用され得る。本発明においては、水溶性賦形剤成分としてアラビアガムを単独で、あるいは他の賦形剤成分と併用して使用した場合に、特に、脂溶性活性成分を長期間にわたり安定化することができる。その場合の水溶性賦形剤成分中のアラビアガムの使用量は、20〜100重量%の範囲が好ましく、30〜90重量%の範囲がより好ましく、40〜80重量%の範囲が特に好ましい。
上記面活性剤(C)としては、食品、化粧品、医薬品用途に許容できるものであれば特に制限されないが、特に食品に許容できるものが好ましく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、レシチン類およびサポニン類が挙げられる。言うまでもなく、本発明では、これらは、単独であるいは2種類以上の混合物として用いることができる。
【0019】
前記グリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、モノグリセリン脂肪酸有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等が挙げられる。モノグリセリン脂肪酸有機酸エステルとしては、例えば、モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸酢酸エステル、モノグリセリンステアリン酸コハク酸エステル、モノグリセリンカプリル酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸乳酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリグリセリンの平均重合度が2〜10であり、構成脂肪酸が炭素数6〜22の脂肪酸であるものが挙げられる。前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては、例えば、ポリグリセリンの平均重合度が2〜10、ポリリシノレイン酸の平均縮合度(リシノレイン酸の縮合数の平均)が2〜4であるものが挙げられる。
【0020】
前記ショ糖脂肪酸エステル類としては、ショ糖の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。
前記ソルビタン脂肪酸エステル類としては、ソルビタン類の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。
前記レシチン類としては、例えば、卵黄レシチン、精製大豆レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ステアリルアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールアミン、カルジオリピン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、及び、これらの混合物等を挙げることができる。
【0021】
前記サポニン類としては、例えば、エンジュサポニン、キラヤサポニン、大豆サポニン、ユッカサポニン等が挙げられる。
【0022】
上記界面活性剤(C)においては、特に、親水性の界面活性剤であることが本発明の目的を達成する上で好ましく、例えば、HLBが4以上、通常HLBが6以上、好ましくはHLBが8以上の界面活性剤が好適に使用され得る。そのような界面活性剤としては具体的には、モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル等のモノグリセリン脂肪酸有機酸エステル類;トリグリセリンモノラウリン酸エステル、トリグリセリンモノミリスチン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸エステル、トリグリセリンモノステアリン酸エステル、ペンタグリセリンモノミリスチン酸エステル、ペンタグリセリントリミリスチン酸エステル、ペンタグリセリンモノオレイン酸エステル、ペンタグリセリントリオレイン酸エステル、ペンタグリセリンモノステアリン酸エステル、ペンタグリセリントリステアリン酸エステル、ペンタグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノカプリル酸エステル、ヘキサグリセリンジカプリル酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンジステアリン酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ペンタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ジグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル;ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル類;ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル類;大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチン等のレシチン類;エンジュサポニン、キラヤサポニン、大豆サポニン、ユッカサポニン等のサポニン類が挙げられる。
【0023】
上記水溶性賦形剤の成分として使用できる糖としては、食品に許容できるものであれば特に制限はなく、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、ラクトース等の二糖類;フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、シクロデキストリン等のオリゴ糖類;ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトール等の糖アルコール類;等を用いることができる。
【0024】
上記水溶性賦形剤の成分として使用できる酵母細胞壁としては、ビール酵母の細胞壁等が挙げられる。
【0025】
本発明の粒子状組成物においては、粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重が1.25以上である必要がある。水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重のより好ましい範囲は、1.27以上であり、1.30以上であることが最も好ましい。尚、ここで「水分含量が3重量%以下の条件下における」とした理由は、水溶性賦形剤の真比重が、水分含量により変化するためである。また、「水分含量が3重量%以下の条件下」とは、水分含量が0〜3重量%の範囲内のどこかで設定された真比重値を満たせばよく、水分含量が3重量%以下という全ての条件下で設定された真比重値を満たす必要はない。水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重が、1.25よりも小さい場合は、後述する理由により、たとえ酸化安定性付与の面で有効な水溶性賦形剤成分を用いた場合においても、マイクロカプセル化後の脂溶性活性成分の安定性が低下してしまう。一方、水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重の上限値は、本発明の目的を達成できる限り特に制限されないが、現実的には1.50程度以下である。
【0026】
真比重の測定は、液相置換法あるいは気相置換法等、既知の測定方法により実施することができる。本発明における、「水分含量が3%重量以下の条件下における水溶性賦形剤の真比重」の測定方法は、後述する実施例に準じる。粒子状組成物の水分含量を算出するためには、完全に水分を除去した後の粒子状組成物の絶乾重量の値が必要となる。本発明においては、熱重量分析装置において、120℃で加熱を継続した際に重量減少が1分間以上観測されなくなる重量を絶乾重量(水分含量0%)として、粒子状組成物の水分含量を算出する。水溶性賦形剤の真比重は、粒子状組成物中に含まれる油性成分(A)の密度、およびその含量(重量%)から、計算によりその値を換算することが出来る。
【0027】
なお、本発明において粒子状組成物全体の真比重は、脂溶性活性成分の比重や粒子状組成物中の水溶性賦形剤の含有割合に影響されるため特に限定されないが、例えば、脂溶性活性成分として還元型補酵素Q10を粒子状組成物中15〜30重量%程度含有する場合、通常1.1以上、好ましくは1.2以上となる。
【0028】
また、本発明の粒子状組成物の球形度は、0.9以上である必要があり、0.95以上であることが好ましく、0.96以上であることがより好ましい。粒子状組成物の球形度が、0.9よりも小さい場合は、後述する理由により、脂溶性活性成分の安定化効果が低下してしまう。尚、粒子状組成物の球形度は、対象となる粒子状組成物を電子顕微鏡等で撮影し、その画像を画像解析ソフトWinROOF Ver.3.30等を用い、同じ面積を持つ円の直径と外接する最小円の直径比から求めることができる。
さらに、本発明の粒子状組成物の体積平均粒子径は、50〜1000μmであることが好ましく、70〜750μmであることがより好ましく、100〜500μmであることが最も好ましい。粒子状組成物の体積平均粒子径が、50μmよりも小さい場合は、粒子状組成物単位重量当たりの総表面積が大きくなり、脂溶性活性成分の安定化作用が低下する場合がある。また、粒子状組成物の体積平均粒子径の上限については、本発明の目的を達成できる限り特に制限はないが、いわゆる粉体として取り扱いが可能となるレベルである1000μm程度が好ましい。尚、本発明の粒子状組成物の体積平均粒子径は、市販のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置において、例えばエタノール溶媒下で測定することができる。
【0029】
本発明の粒子状組成物においては、水溶性賦形剤を主成分とするマトリックス中に、脂溶性活性成分を含有する油性成分(A)が、ドメインを形成して多分散していることが好ましい。ここでいう「主成分」とは、少なくとも80重量%以上、好ましくは90重量%以上の水溶性賦形剤でマトリックスが形成されていることをいう。また、この場合の油性成分(A)としては、(a)脂溶性活性成分単独、あるいは2種以上の脂溶性活性成分の混合物単独であってもよいし、(b)脂溶性活性成分と、油脂または/および界面活性剤(E)の混合物であっても良い。
【0030】
上記、脂溶性活性成分に添加できる油脂成分(油性成分(A)の構成成分)としては、その目的を達成できる限り特に制限はないが、例えば、動植物からの天然油脂であってもよく、合成油脂や加工油脂であってもよい。より好ましくは、食品、化粧品又は医薬用に許容されるものであり、例えば、植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油等を挙げることができ、動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚油、牛脂等を挙げることができ、更に、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば、硬化油)も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)も使用しうる。また、これらの混合物を使用しても良い。中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜12、好ましくは8〜12のトリグリセリドを挙げることができる。
【0031】
上記、油脂成分のうち、取り扱い易さ、臭気等の面から植物油脂、合成油脂や加工油脂等が好ましい。例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、MCT等を挙げることができる。
【0032】
上記、界面活性剤(E)としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリンエステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、レシチン類等の内、脂溶性の界面活性剤が好ましいが、これらに限定されない。
【0033】
そのようなグリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12のモノグリセリドやジグリセリドを挙げることができる。ポリグリセリンエステル類としては、例えば、重合度が2から10のポリグリセリンを主成分とするポリグリセリンに、ポリグリセリンの水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。ショ糖脂肪酸エステル類としては、ショ糖の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステル類としては、ソルビタン類の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。プロピレングリコール脂肪酸エステル類としては、例えば、脂肪酸の炭素数が、各々6〜18、好ましくは6〜12のモノグリセリドやジグリセリドを挙げることができる。レシチン類としては、例えば、卵黄レシチン、精製大豆レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ステアリルアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールアミン、カルジオリピン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、及び、これらの混合物等を挙げることができる。
【0034】
上記界面活性剤(E)の中でも、脂溶性の活性成分と良好な相溶性を示す点、あるいは本発明の目的である酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカル等に対して不安定な脂溶性活性成分を長期間にわたり安定化できる粒子状組成物が得られる点から、親油性の界面活性剤が好ましく、例えばHLBが10以下の界面活性剤が使用できる。このような界面活性剤としては具体的には、モノグリセリンモノステアリン酸エステル、モノグリセリンモノオレイン酸エステル、モノグリセリンモノミリスチン酸エステル、モノグリセリンモノカプリル酸エステル、モノグリセリンモノラウリン酸エステル、モノグリセリンモノベヘニン酸エステル、モノグリセリンモノエルカ酸エステル等のモノグリセリンモノ脂肪酸エステル;モノグリセリンジステアリン酸エステル、モノグリセリンジオレイン酸エステル、モノグリセリンジカプリル酸エステル、モノグリセリンジラウリン酸エステル等のモノグリセリンジ脂肪酸エステル;モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸酢酸エステル、モノグリセリンヤシ硬化油酢酸エステル、モノグリセリンステアリン酸コハク酸エステル、モノグリセリンカプリル酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸乳酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル等のモノグリセリン脂肪酸有機酸エステル;モノグリセリン牛脂硬化油脂肪酸エステル、モノグリセリン菜種硬化油脂肪酸エステル、モノグリセリン大豆硬化油脂肪酸エステル、モノグリセリン綿実油脂肪酸エステル、モノグリセリンサフラワー油脂肪酸エステル等の種々の油脂を用いて得られるモノグリセリン脂肪酸エステル;平均重合度2〜10のポリグリセリンと炭素数6〜22の脂肪酸とのエステル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び平均重合度2〜10のポリグリセリンと縮合度2〜4のポリリシノレイン酸とのエステル等のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類;プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノオレイン酸エステル、及びプロピレングリコールモノラウリン酸エステル等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ソルビタンジステアリン酸エステル、ソルビタントリステアリン酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ソルビタンジオレイン酸エステル、及びソルビタントリオレイン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル類;並びに大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチン等のレシチン類から選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる。中でも、好ましくはグリセリン脂肪酸エステル類および/またはレシチン類から選ばれる1種または2種以上の混合物であり、より好ましくはモノグリセリンモノ脂肪酸エステル、モノグリセリンジ脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸有機酸エステル(特にモノグリセリン脂肪酸酢酸エステル、モノグリセリンヤシ硬化油酢酸エステル)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(特に平均重合度2〜10のポリグリセリンと炭素数6〜22の脂肪酸とのエステル)及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(特に平均重合度2〜10のポリグリセリンと縮合度2〜4のポリリシノレイン酸とのエステル)から選ばれる1種または2種以上の混合物であり、更に好ましくはモノグリセリン脂肪酸有機酸エステル(特にモノグリセリン脂肪酸酢酸エステル、モノグリセリンヤシ硬化油酢酸エステル)であり、具体例としてモノグリセリンモノステアリン酸エステルの50%アセチル化物、ヤシ硬化油モノグリセリドの完全アセチル化物、大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチンが挙げられる。以上の親油性多価アルコール脂肪酸エステルは、いずれも単独で若しくは2種以上混合して用いることができる。
【0035】
上記以外にも、本発明においては、種々の目的に応じ、固形油脂、脂肪酸およびそのエステル誘導体等の油溶性の成分を、油性成分(A)に含有させることができる。
【0036】
前記固形油脂としては、例えば、ミツロウ、モクロウ、キャディラロウ、米ぬかロウ、カルマウバロウ、雪ロウ等の食品用ワックス類が挙げられる。
前記脂肪酸およびそのエステル誘導体としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸およびこれらのエステル類、例えば、これらのメチルエステル、エチルエステル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明において、油性成分(A)中の脂溶性活性成分の割合は、5〜100重量%の範囲が好ましい。そのような観点から、油性成分(A)は、5〜100重量%の脂溶性活性成分、0〜95重量%の油脂、および0〜95重量%の界面活性剤(E)を含有していることが好ましく、25〜100重量%の脂溶性活性成分、0〜75重量%の油脂、および0〜75重量%の界面活性剤(E)から成ることがより好ましく、50〜100重量%の脂溶性活性成分、0〜50重量%の油脂、および0〜50重量%の界面活性剤(E)から成ることが最も好ましい。油性成分(A)中の脂溶性活性成分が、5重量%未満の場合は、最終的に得られる粒子状組成物中の脂溶性活性成分の含有量が低下し、例えば、所定量の脂溶性活性成分を経口投与する際に、多量の粒子状組成物を摂取することが必要となる。
【0038】
本発明の粒子状組成物において、水溶性賦形剤を主成分とするマトリックス中に脂溶性活性成分を含有する油性成分(A)が多分散している場合の、油性成分(A)が形成するドメインの体積平均粒子径は、本発明の目的を達成できる限り、特に制限はないが、0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、0.01〜5μmの範囲であることがより好ましく、0.01〜3μmの範囲であることが最も好ましい。脂溶性活性成分を含有する油性成分(A)が形成するドメインの体積平均粒子径が、10μmより大きい場合は、例えば、粒子状組成物を経口摂取した場合、経口吸収性が低下する傾向にある。一方、脂溶性活性成分を含有する油性成分(A)が形成するドメインの平均粒子径の下限値には特に制限はないが、0.01μmよりも小さい場合は、製造過程における乳化液滴の安定性を維持することが困難となる傾向となる。
【0039】
尚、脂溶性活性成分を含有する油性成分(A)が形成するドメインの体積平均粒子径は、粒子組成物を半球状に破断し、その破断面の電子顕微鏡画像から、画像解析により求めることができる。
【0040】
さらに、本発明においては、脂溶性活性成分として酸素に対して不安定な成分を使用する場合、本発明の粒子状組成物中に、還元剤を含有させることで、脂溶性活性成分の酸化安定性をさらに向上させることができる。
その場合に用いることのできる還元剤としては、アスコルビン酸パルミートやアスコルビン酸ステアレート等の脂溶性アスコルビン酸類の他、トコフェロール、ポリフェノール、及びこれらを含有する抽出物等の脂溶性還元剤;および水溶性の還元剤である水溶性アスコルビン酸類;等が挙げられる。本発明において脂溶性の還元剤を用いる場合は、油性成分(A)に添加するのが最も簡便であり好ましい。また、水溶性の還元剤を用いる場合は、水溶性賦形剤を溶解させた賦形剤水溶液に添加溶解させて用いるのが、簡便であり好ましい。
【0041】
これらの内、好ましい還元剤は水溶性の還元剤であり、中でも水溶性アスコルビン酸類を用いた場合、本発明の粒子状組成物において、特に酸化に対して不安定な脂溶性活性成分の安定性を効果的に向上させることができる点からより好ましい。本発明で使用され得る水溶性のアスコルビン酸類としては、例えば、アスコルビン酸のみならず、rhamo−アスコルビン酸、arabo−アスコルビン酸、gluco−アスコルビン酸、fuco−アスコルビン酸、glucohepto−アスコルビン酸、xylo−アスコルビン酸、galacto−アスコルビン酸、gulo−アスコルビン酸、allo−アスコルビン酸、erythro−アスコルビン酸、6−デスオキシアスコルビン酸等のアスコルビン酸に類するもの、更にそれらの塩が好ましい。またこれらはL体、D体、あるいは、ラセミ体であっても良い。具体的には、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カルシウム、D−arabo−アスコルビン酸等を挙げることができる。これらの中でも、本発明の目的である、例えば酸素に対して不安定な脂溶性活性成分の安定化の面では、L−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸がより好ましく使用され得る。言うまでもなく、これら水溶性のアスコルビン酸類は単独あるいは複数用いても良い。
【0042】
上記還元剤の使用量としては、本発明の目的を達成する上においては特に制限されないが、通常、粒子状組成物中に、0.1〜20重量%の還元剤を含有させることが好ましく、0.1〜15重量%含有させることがより好ましく、0.5〜10重量%含有させることが最も好ましい。尚、本発明の粒子状組成物は、従来の製法で得られる粉末油脂よりも脂溶性活性成分に極めて高い安定化効果を付与できるため、還元剤を必ずしも使用する必要はないが、還元剤を0.1重量%以上添加することでより高い効果を期待できる。一方、還元剤使用量の上限については、本発明の目的を達成できる限り制限はないが、通常、20重量%である。
【0043】
尚、本発明においては、特に還元剤を含有する場合、粒子状組成物に水分が存在しても、従来の粉末油脂組成物と比較して、脂溶性活性成分の高い安定性化効果を実現することができる。そのような観点から、本発明の粒子状組成物は0.01〜30重量%の水分を含有していても差し支えなく、好ましい水分含有量としては0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜15重量%の範囲であるが、本発明の目的を達成できる限り制限されない。本発明においては、特に上記水溶性還元剤を用いた場合に、特に粒子状組成物中に水分を含有させた場合における、脂溶性活性成分のより高い安定化効果が得られやすくなる傾向がある。
【0044】
本発明の粒子状組成物中の脂溶性活性成分の含有量は、1〜70重量%の範囲であるのが好ましく、5〜60重量%の範囲であるのがより好ましく、10〜55重量%の範囲であるのが最も好ましい。粒子状組成物中の脂溶性活性成分の含有量が1重量%より少ない場合は、例えば、所定量の脂溶性活性成分を経口投与する際に、多量の粒子状組成物を摂取することが必要となる。一方、粒子状組成物中の脂溶性活性成分の含有量の上限は、本発明の目的を達成できる限り特に制限はないが、通常70重量%以下が好ましい。粒子状組成物中の脂溶性活性成分の含有量が70重量%より多い場合は、種々の目的において高い安定性を維持しにくくなる傾向にある。
【0045】
その他、本発明の粒子状組成物には、食品、化粧品、医薬品の各用途において、種々の目的で使用され得る各種添加物や脂溶性活性成分以外の活性成分を、それぞれの目的に応じ添加することができる。
【0046】
例えば、上記の化合物以外に、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等の賦形剤、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、トラガント、アルギン酸等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化油等の滑沢剤、酸化チタン、食用色素、ベンガラ色素、ベニバナ色素、カラメル色素、クチナシ色素、タール色素、クロロフィル等の色素、ステアリン酸、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸等の凝集防止剤、高級アルコール類、高級脂肪酸類等の吸収促進剤、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸等の溶解補助剤、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、蜜蝋等の安定化剤を挙げることができる。
【0047】
本発明の粒子状組成物においては、40℃、空気中、遮光条件下に30日間保存後の脂溶性活性成分の保持率(%)(初発の脂溶性活性成分の重量に対する比率)は、90重量%以上であるのが好ましく、95%重量以上であるのがより好ましく、98%重量以上であるのが特に好ましい。保存雰囲気中の湿度は、特に限定されないが、普通相対湿度約90%以下、好ましくは相対湿度約75%以下、更に好ましくは相対湿度約60%以下、特に好ましくは相対湿度約40%以下である。
【0048】
次に、本発明の粒子状組成物の好ましい製造方法について説明する。本発明の粒子状組成物は下記製造方法によって得られるのが好ましいが、他の製造方法によって同様の粒子状組成物が得られるなら製造方法は下記に限定されない。
【0049】
本発明の粒子状組成物は、好ましくは、脂溶性活性成分を含有する油性成分(A)と水溶性賦形剤を含有する水溶液から調製した水中油型乳化組成物を、油性成分(B)中に分散または懸濁させた後、油性成分(B)中で乳化組成物中の水分を除去する方法により、製造することができる。
【0050】
上記製造法において、水溶性賦形剤は、水に溶解させた水溶液の形態で用いられ、その濃度には特に制限はないが、水溶液の粘度が1Poiseを超えない程度の濃度で取り扱うのが、移液性等を確保する上で好ましい。この時の水溶性賦形剤の具体例や好ましい例は、上記粒子状組成物の説明で述べたものと同じである。
【0051】
上記製造法において、脂溶性活性成分を含有する油性成分(A)の調製方法としては、脂溶性活性成分が液状の場合は常温で、また脂溶性活性成分が常温で結晶あるいは非晶状態(液体状態でない)である場合は、脂溶性活性成分の融点以上に加熱し融解したものをそのまま使用するか、あるいは脂溶性活性成分に油脂または界面活性剤(E)あるいはそれらの混合物を添加し、視覚的に均一となるよう混合したものを使用することができる。このときの油性成分(A)の各成分の具体例や好ましい例は、上記粒子状組成物の説明で述べたものと同じである。
【0052】
次に、本発明の製造法においては、上記油性成分(A)、および水溶性賦形剤を含有する水溶液から水中油型乳化組成物を調製する。上記、水中油型乳化組成物の調製法としては、例えば、上記水溶性賦形剤水溶液に、油性成分(A)を添加し、好ましくは脂溶性活性成分の融点以上の温度で、高圧ホモジナイザー等、公知の乳化機器を用いて所望の平均粒子径まで油性成分(A)を微細に分散・乳化させることにより調整するのが、最も簡便であり好ましい。
【0053】
本発明の製造方法における、上記水中油型乳化組成物の油性成分(A)の乳化粒子径は、0.01〜3μmの範囲であることが好ましく、0.01〜2μmの範囲であることがより好ましく、0.01〜1.5μmの範囲であることが最も好ましい。該水中油型乳化組成物の乳化粒子径は、得られる粒子状組成物中の脂溶性活性成分を含有する油性成分(A)が形成するドメインの平均粒子径と相関するため、乳化粒子径が、3μmより大きい場合は、例えば、粒子状組成物を経口摂取した場合、経口吸収性が低下する傾向にある。一方、乳化粒子径の下限値には特に制限はないが、0.01μmよりも小さい場合は、製造過程における乳化液滴の安定性を維持することが困難となる傾向にある。本工程における乳化液滴の粒子径を制御することで、得られる粒子状組成物中のドメイン粒子径をコントロールすることができる。
【0054】
上記、水中油型乳化組成物の油性成分(A)の乳化粒子径は、市販のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0055】
本発明の製造法における、油性成分(A)と水溶性賦形剤水溶液から水中油型乳化組成物を調製する工程は、油性成分(A)中に含有される脂溶性活性成分の融点よりも高い温度で実施するのが好ましく、通常は50〜100℃の範囲である。乳化工程における温度の上限は、装置の仕様により異なるが、通常は120℃以下が好ましい。
【0056】
本発明の製造法においては、上記水中油型乳化組成物を、さらに別の油性成分(B)と混合し、所望の粒子径となるよう、油性成分(B)中に水中油型乳化組成物を懸濁させて、O/W/O型の乳化物とする。上記、混合操作は、例えば、あらかじめ50℃以上に加温しておいた油性成分(B)に、上記水中油型乳化組成物を添加するのが、最も簡便であり好ましいが、これに限定されない。油性成分(B)中における水中油型乳化組成物の懸濁粒子径の調整は、撹拌等、混合液にせん断を付与することにより達成され得る。水中油型乳化組成物の油性成分(B)中における懸濁粒子径は、水分の除去後に目標粒子径(例えば、50〜1000μm)の粒子状組成物が得られれば特に制限されないが、通常は60〜1200μmの範囲に調整するのが好ましい。混合液を調製する際の油性成分(B)の温度は、急激な水分の蒸発を避けるため、通常は50〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0057】
本発明の製造法における、水中油型乳化組成物と油性成分(B)との混合比には、特に制限はないが、水中油型乳化組成物と油性成分(B)の全混合液中の水中油型乳化組成物の重量%が、1〜70重量%であることが好ましく、10〜60重量%であることがより好ましく、15〜55重量%であることが最も好ましい。水中油型乳化組成物と油性成分(B)の混合液中の水中油型乳化組成物の量が1重量%未満の場合は、生産効率が低下するため好ましくない。また、水中油型乳化組成物と油性成分(B)の混合液中の水中油型乳化組成物の量が70重量%以上の場合は、水中油型乳化組成物を油性成分(B)中に懸濁させることが困難となる傾向にある。
【0058】
本発明の製造法における油性成分(B)としては、上記水中油型乳化組成物を懸濁させることができる油脂であれば特に制限はなく、例えば動植物からの天然油脂であってもよく、合成油脂や加工油脂であってもよい。より好ましくは、食品、化粧品又は医薬用に許容されるものである。例えば、植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油等を挙げることができ、動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚油、牛脂等を挙げることができ、更に、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば、硬化油)も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)も使用しうる。又、これらの混合物を使用しても良い。中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜12、好ましくは8〜12のトリグリセリドを挙げることができる。
【0059】
上記、油脂のうち、取り扱い易さ、臭気等の面から植物油脂、合成油脂や加工油脂等が好ましい。例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、MCT等を挙げることができる。
【0060】
本発明の、製造法においては、油性成分(B)中に分散した水中油型乳化組成物液滴の分散安定性を確保する目的において、必要に応じ、油性成分(B)中に界面活性剤(D)を添加することができる。水中油型乳化組成物の液滴は、乾燥が進行するに従って、徐々に粘着性が増大し、粒子間で凝集しやすくなる傾向にある。しかし、油性成分(B)中に界面活性剤(D)を共存させておくと、粘着性の増した乾燥途中の水中油型乳化組成物液滴間の凝集が大幅に緩和され、その結果、所望の体積平均粒子径を有する粒子状組成物の回収率を飛躍的に向上させることができる。
【0061】
油性成分(B)中の界面活性剤(D)の含有量には特に制限はないが、油性成分(B)の組成が、油脂5〜99.99重量%に対し、界面活性剤(D)が0.01〜95重量%の範囲内となるよう任意に調整するのが好ましい。界面活性剤(D)の添加量が、0.01重量%よりも少ない場合は、乾燥途中の水中油型乳化組成物の液滴間の凝集抑制効果が得られにくくなる傾向にある。しかし場合によっては界面活性剤(D)を使用せず油脂100重量%を油性成分(B)とすることも出来る。
【0062】
上記、界面活性剤(D)としては、食品、化粧品、医薬品用途に許容できるものであれば特に制限されないが、特に食品に許容できるものが好ましく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリンエステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、レシチン類が挙げられる。言うまでもなく、本発明では、これらは、単独であるいは2種類以上の混合物として用いることができる。
グリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜18、好ましくは12〜18のモノグリセリドやジグリセリドを挙げることができる。
【0063】
ポリグリセリンエステル類としては、例えば、重合度が2から10のポリグリセリンを主成分とするポリグリセリンに、ポリグリセリンの水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは12〜18の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステル類としては、ショ糖の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは12〜18の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、ソルビタン類の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは12〜18の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。
【0064】
レシチン類としては、例えば、卵黄レシチン、精製大豆レシチン、酵素分解レシチン、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0065】
上記、界面活性剤(D)の中でも、本発明の製造法において、乾燥途中の水中油型乳化組成物液滴間の凝集を効率的に抑制できる点から、具体的には、モノグリセリンモノステアリン酸エステル、モノグリセリンモノオレイン酸エステル、モノグリセリンモノミリスチン酸エステル、モノグリセリンモノカプリル酸エステル、モノグリセリンモノラウリン酸エステル、モノグリセリンモノベヘニン酸エステル、モノグリセリンモノエルカ酸エステル等のモノグリセリンモノ脂肪酸エステル;モノグリセリンジステアリン酸エステル、モノグリセリンジオレイン酸エステル、モノグリセリンジカプリル酸エステル、モノグリセリンジラウリン酸エステル等のモノグリセリンジ脂肪酸エステル;モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸酢酸エステル、モノグリセリンヤシ硬化油酢酸エステル、モノグリセリンステアリン酸コハク酸エステル、モノグリセリンカプリル酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸乳酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル等のモノグリセリン脂肪酸有機酸エステル;モノグリセリン牛脂硬化油脂肪酸エステル、モノグリセリン菜種硬化油脂肪酸エステル、モノグリセリン大豆硬化油脂肪酸エステル、モノグリセリン綿実油脂肪酸エステル、モノグリセリンサフラワー油脂肪酸エステル等の種々の油脂を用いて得られるモノグリセリン脂肪酸エステル;平均重合度2〜10のポリグリセリンと炭素数6〜22の脂肪酸とのエステル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び平均重合度2〜10のポリグリセリンと縮合度2〜4のポリリシノレイン酸とのエステル等のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類;プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノオレイン酸エステル、及びプロピレングリコールモノラウリン酸エステル等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ソルビタンジステアリン酸エステル、ソルビタントリステアリン酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ソルビタンジオレイン酸エステル、及びソルビタントリオレイン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル類;並びに大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチン等のレシチン類から選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる。中でも、好ましくはグリセリン脂肪酸エステル類および/または大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチン等のレシチン類から選ばれる1種または2種以上の混合物であり、より好ましくはモノグリセリンモノ脂肪酸エステル、モノグリセリンジ脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸有機酸エステル(特にモノグリセリン脂肪酸酢酸エステル、モノグリセリンヤシ硬化油酢酸エステル)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(特に平均重合度2〜10のポリグリセリンと炭素数6〜22の脂肪酸とのエステル)、及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(特に平均重合度2〜10のポリグリセリンと縮合度2〜4のポリリシノレイン酸とのエステル)、及び大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチンから選ばれる1種または2種以上の混合物であり、更に好ましくはモノグリセリン脂肪酸有機酸エステル(特にモノグリセリン脂肪酸酢酸エステル、モノグリセリンヤシ硬化油酢酸エステル)であり、具体例としてモノグリセリンモノステアリン酸エステルの50%アセチル化物、ヤシ硬化油モノグリセリドの完全アセチル化物、大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチンの1種または2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチン等のレシチン類が、上記目的を達成する上でより好適に用いることができる。
【0066】
本発明の製造法においては、上記O/W/O型の乳化物とした後、油性成分(B)中に懸濁させた水中油型乳化組成物から水分を除去する。水中油型乳化組成物から水分を除去する手法としては、例えば、大気圧下で80℃以上、好ましくは100℃以上に加熱して、水分を蒸発させる。あるいは、任意の減圧下で、その圧力下での水の沸点近傍以上の温度に設定し、水分を蒸発させる等の手法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
本発明の製造法において、水中油型乳化組成物液滴から水分を除去する所要時間には特に制限はないが、好ましくは5秒〜24時間、より好ましくは10秒〜12時間、最も好ましくは15秒〜6時間の範囲である。水分を除去する所要時間が5秒未満の場合は、水中油型乳化組成物液滴から急激に水分が蒸発することにより、、粒子形状の歪な球形度の低い粒子状組成物が得られやすくなるため好ましくない。一方、水分を除去する所要時間が24時間より長い場合は、本発明の目的を達成できる限り特に制限はないが、生産性が低下する傾向にある。
【0068】
尚、本発明の製造法における水分の除去とは、水分が完全に除去されていない状態であっても、水中油型乳化組成物液滴の乾燥が進行し、粒子形態での回収が可能な状態であれば良い。残存水分量は、通常、回収後粒子重量の10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが最も好ましい。
【0069】
上記製造法において、水分除去後の粒子状組成物の回収方法としては特に限定されないが、固液分離により油性成分(B)を除去後、得られた粒子組成物を有機溶剤等で洗浄して油性成分(B)の大部分を流去し、さらに有機溶剤や水分を乾燥により除去し、粉体として回収するのが最も簡便であり好ましい。
【0070】
油性成分(B)を洗浄する有機溶剤としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、ヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等を挙げることができるがこれに限定されない。上記、有機溶剤の乾燥方法としては、真空乾燥、加熱乾燥、風乾、流動乾燥等を用いることができるが、これらに限定されない。尚、回収後の粒子状組成物は、所定の製品として望ましい粒子径に揃えるために、分級操作を実施することもできる。
【0071】
本発明の製造法においては、油性成分(B)中に、ほぼ球形で懸濁した個々の水中油型乳化組成物液滴が、球形状の形態を保持した状態で徐々に水分の除去が進行する。従って、得られる粒子の球形度は必然的に極めて高くなる。また、得られる粒子の粒子径は、油性成分(B)中に懸濁させた上記水中油型乳化組成物の液滴径を、例えば撹拌強度により調整することで、本発明の範囲内で任意に調整することができる。つまり、これらの操作により、得られる粒子状組成物単位重量当りの総表面積を、噴霧乾燥法と比較して、極めて小さくすることが可能となる。
【0072】
従来、水溶性賦形剤をカプセル壁とした脂溶性活性成分を内包した多核型マイクロカプセルとして、噴霧乾燥法に代表される製法により製造される粉末油脂組成物が広く知られている。このような粉末油脂組成物は、本発明と同じく脂溶性活性成分が水溶性賦形剤マトリックスの中に多分散してカプセル化された粒子状組成物である。従来の噴霧乾燥法では、水溶性賦形剤を溶解させた水溶液に脂溶性活性成分を乳化し、それにより得た水中油型乳化組成物を、例えば150〜200℃の熱風中に液滴状に噴霧して乾燥し、マイクロカプセル化が実施される。乾燥過程においては、水中油型乳化組成物液滴から数秒程度で水分が一気に蒸発するため、中心部に大きな穴を有したり、粒子形状が不定形となったり、粒子表面が凸凹と荒くなる等の現象が誘発される。また、チャンパーへの付着等による収率低下を抑制するため、噴霧液滴径をできる限り小さく設定し短時間で乾燥を完了させることが好ましく、通常生産の場合、得られる乾燥粒子の体積平均粒子径は5〜30μm程度となる。つまり、噴霧乾燥法により得られる粉末油脂は、粒子径が小さく、不定形となるため、回収粒子単位重量当たりの総表面積が極めて大きいという特徴を有する。
【0073】
一方、例えば、大気中の酸素に対して不安定な脂溶性活性成分を含有する粉末油脂の酸化に対する安定性を考慮した場合、水溶性賦形剤カプセル壁の物理的な酸素分子の遮蔽効果が重要である点は容易に想像できる。一般的に、固体物質中(水溶性賦形剤成分を想定)への気体(酸素分子を想定)の拡散現象では、固体物質の表面積、固体物質外部と内部の気体の濃度差、および固体物質の密度の関数となることが知られている。それぞれの因子をさらに解説すると、(I)固体物質(カプセル壁)の表面積が大きいほど、外部の気体と直接接触している部位が多くなり、固体物質内に気体が侵入する確率が高くなる、(II)固体物質内外の気体の濃度差が高いほど、その濃度勾配により気体が固体物質内に侵入しやすくなる、(III)固体物質の密度が高いほど、気体分子が移動できる空隙が少なくなり拡散速度が低下する、である。
【0074】
これらの因子を、酸素に対して不安定な脂溶性活性成分を含有する粉末油脂の酸化安定性に当てはめ考察すると、(I)については、粒子状組成物の粒子径が大きく球形度が高いほど安定性が良好となること、(II)については、酸素濃度の低い雰囲気下で保存すること、(III)については、固体物質(水溶性賦形剤)の密度すなわち真比重をできる限り高くすること、が酸化安定性確保の面で重要であることをそれぞれ示唆される。
【0075】
上述の考え方に基づき、従来の製造方法で得られる粉末油脂の酸化安定性に対するポテンシャルについて、続いて記述する。上述したように、噴霧乾燥法により製造される多核型マイクロカプセル粉末油脂組成物は、粒子径が小さくしかも不定形となるため、上記(I)の理由により、酸化安定性が低下する。
一方、スプレークーラー法、あるいは液中硬化法で得られる多核型マイクロカプセル粉末油脂組成物は、粒子径は任意の大きさに調整可能で、かつ球形度に代表される粒子形状は比較的良好なものの、水溶性賦形剤としてゼラチンの使用が必須となり、また得られるマイクロカプセルにおける水溶性賦形剤成分の真比重は高くなく、通常1.25より低くなる。スプレークーラー法あるいは液中硬化法では、冷却により形成させたゲル状態にあるゼラチンから、低温で徐々に水分を除去し乾燥粒子が製造される。しかしながら、ゲル状態にあるゼラチンは、高分子量のゼラチン分子鎖間に物理架橋を形成した状態にあり、乾燥過程においては、賦形剤成分の分子レベルでの自由度は制限され、その結果、スプレークーラー法や液中硬化法で得られる、ゼラチンを主成分とした粒子状組成物の真比重は低く、上記(III)の点で、内包する脂溶性活性成分の安定化効果に劣ると推定される。
【0076】
本発明の粒子状組成物は、従来技術の限界を、特に上記(III)の真比重の項目において初めて超越したものであり、それにより酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカル等に対して不安定な脂溶性活性成分の長期的な安定性付与を実現できる。特に、本発明の製造法では、油性成分(B)中に懸濁させた上記水中油型乳化組成物の液滴中の賦形剤成分は、徐々に進行する乾燥、すなわち水分の減少に伴って、より安定な密なパッキング状態を形成する(高い真比重を実現できる)ための時間的猶予が与えられる。特に、ゲル状態にないアラビアガム等を賦形剤成分として用いた場合は、乾燥過程において賦形剤成分高分子鎖は自由に、より安定な密なパッキング状態を形成することが可能となる。これに対し、噴霧乾燥法やレイヤリング造粒法の場合は、高温の気相中に噴霧された水中油型乳化組成物液滴から、数秒以内に(1〜3秒程度)一気に水分が蒸発するため、賦形剤成分は密なパッキング状態を形成するための時間的猶予がなく、つまり疎なパッキング状態(真比重の低い状態)のまま、固化されてしまうと推定される。水溶性賦形剤の真比重は、上記の乾燥条件の違いによる水溶性賦形剤成分のパッキング状態の差異に起因すると考えられる。
【0077】
以上のことから、本発明の粒子状組成物が、「水分含量が3%重量以下の条件下における水溶性賦形剤の真比重が1.25以上」という条件を満たし、かつ「球形度が0.9以上」という条件をも満たすことで、従来の粉末油脂等にはない格段の安定化効果を示すことが可能となる。
【0078】
次に、本発明の粒子状組成物の安定化方法及び取り扱い方法について説明する。
【0079】
本明細書で述べる安定化とは、粒子状組成物中の脂溶性活性成分が、酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカル等により分解されることを抑制することを示す。又、本明細書にて述べる取り扱いとは、ある物に対して外的な作用を施すことにより、その物の機能を維持、または発揮させることである。取り扱いの例は、限定されないが、分級、包装、梱包、保存、貯蔵、移送を含み得る。好ましくは保存である。
【0080】
本発明の粒子状組成物の安定化方法及び取り扱い方法での温度の上限は、普通約100℃以下、好ましくは約80℃以下、より好ましくは約60℃以下、更に好ましくは約40℃以下、特に好ましくは約20℃以下で実施できる。この場合、温度の下限は、普通約−100℃以上、好ましくは約−80℃以上、より好ましくは約−60℃以上、更に好ましくは約−40℃以上、特に好ましくは−20℃以上である。
【0081】
また、本発明の粒子状組成物中に、特に還元剤として、水溶性アスコルビン酸類を用いた場合において、保存雰囲気中の湿度の影響を小さくすることができる。しかしながら、長期の保存安定性を勘案すると、保存雰囲気条件は、より低湿度であることが好ましく、相対湿度の相対湿度約90%以下、好ましくは相対湿度約80%以下、より好ましくは相対湿度約70%以下、特に好ましくは相対湿度約60%以下に調整された環境下で、本発明の脂溶性活性成分を含有する粒子状組成物を、さらに安定に取り扱うことができる。相対湿度の下限は0%である。
【0082】
上記の様に保存雰囲気中の湿度を調製した、好ましい実施態様での40℃、空気中、遮光条件下に30日間保存後の粒子状組成物中の脂溶性活性成分の保持率(%)は、90重量%以上、より好ましくは95%重量以上、さらに好ましくは98%重量以上、最も好ましくは99%重量以上であることが期待できる。
上記、相対湿度が調整された環境は、環境からの除湿、或いは、除湿された気体(空気でもよいが、好ましくは、乾燥不活性ガス)の環境への導入等により与えられる。上記除湿は、特に制限されないが、湿気の氷結、除湿機や乾燥剤(シリカゲル、塩化カルシウム、合成ゼオライト等)等の使用により達成される。言うまでもなく、相対湿度が調整された環境が与えられれば、その方法は特に問わない。
【0083】
また、本発明の効果を最大限に発揮するために、脂溶性活性成分の安定性の観点から、脂溶性活性成分は酸素に対して不安定な場合は、当然のことながら本発明の粒子組成物の製造や保存は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気で、実施することが好ましい。
【0084】
尚、本発明で得られた粒子状組成物は、ガラス製のボトル、プラスチック製のボトル、プラスチック袋、アルミラミネート袋等を用いて取り扱い、例えば包装、梱包を行うことができる。上記の取り扱い、例えば包装、梱包においては、資材として例えばガラス、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の素材が挙げられ、また、上記ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等にアルミ等の金属フィルムをラミネートした素材も好適に使用しうる。尚、ポリエチレン等の比較的ガスバリア性、防湿性が低い素材を用いた場合、外袋にアルミラミネート等のガスバリア性、防湿性に優れた素材にて2重以上の包装、梱包を行うことが好ましい。また、上記の資材を用いて、PTP包装、三方シール包装、四方シール包装、ピロー包装、ストリップ包装、アルミ成型包装、スティック包装等とすることもできる。包装、梱包後には、必要に応じて、鋼鉄製のドラム、樹脂製のドラム、ファイバードラム、ダンボール等に入れて輸送、保管を行うことができる。又、言うまでもなく、シリカゲル、塩化カルシウム、合成ゼオライト等の防湿剤を同封することもできる。
【0085】
本発明においては、上記本発明の粒子状組成物を、油性成分(F)中に懸濁させた混合スラリーとし、これを、ゼラチン等のソフトカプセルに充填することにより、脂溶性活性成分のより高い安定性と高い経口吸収性を実現できるソフトカプセル製剤とすることが可能である。
【0086】
従来、例えば酸化安定性に乏しい還元型補酵素Q10を含有するソフトカプセル製剤としては、植物油及び/又は界面活性剤を主成分とする油性成分に還元型補酵素Q10粉末をスラリー状に分散あるいは溶解させた組成物を、ゼラチンソフトカプセルに充填した製剤が知られている。しかしながら、この製剤においては、ゼラチンカプセル壁のみで物理的に外部からの酸素の侵入を遮蔽しているに過ぎず、製剤化後においても充填された還元型補酵素Q10は、特に加湿条件下において徐々に酸化が進行する傾向がある。
【0087】
一方、本発明において、脂溶性活性成分として還元型補酵素Q10を使用して、還元型補酵素Q10を含有する粒子状組成物とし、これを油性成分(F)中に懸濁させた混合スラリーを、ゼラチン等のソフトカプセルに充填することにより得られるソフトカプセル製剤では、還元型補酵素Q10は、ゼラチンカプセル壁だけでなく、真比重が1.25以上の水溶性賦形剤壁と合わせ二重の皮膜で外部からの酸素の侵入を物理的に遮蔽することが可能となり、より安定性の良好な製剤を得ることが可能となる。
【0088】
また、本発明のソフトカプセル製剤は、経口吸収性の面においても、従来のソフトカプセル製剤よりも高い経口吸収性を示す傾向がある。これは、胃又は腸において、本発明の粒子状組成物が崩壊し、ドメインを構成している油性成分(A)が消化管への吸収に有利となる微細な粒子径を維持した状態で生体内に放出されるためであると推定される。
【0089】
上記ソフトカプセル製剤等において使用される油性成分(F)としては、菜種油、サフラワー油、中鎖脂肪酸等の植物油、レシチン類、酵素分解レシチン類、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル類等の食品用乳化剤、ミツロウ等の固形油脂類等を、単独で又は2種以上の混合物で用いることができるが、これらに限定されず、本発明の粒子状組成物の経口吸収性が良好となるように任意に設定できる。
【0090】
また、本発明においては、上記本発明の粒子状組成物を、そのままあるいは一般的な製剤成分と混合して得られる粉末として、あるいは上記油性成分(F)中に懸濁させたスラリーとして、ゼラチン等のハードカプセルに充填するにより、高い安定性と高い経口吸収性を実現できるハードカプセル製剤とすることが可能である。
通常、例えば還元型補酵素Q10を含有するハードカプセル製剤としては、還元型補酵素Q10粉末を含有する粉末組成物を、ゼラチン等のハードカプセルに充填して得た製剤が想定される。しかしながら、この製剤においても、上記ソフトカプセル製剤と同様に、ゼラチンカプセル壁のみで物理的に外部からの酸素の侵入を遮蔽しているに過ぎず、製剤化後においても充填された還元型補酵素Q10は容易に酸化され得る。
【0091】
一方、例えば、脂溶性活性成分として還元型補酵素Q10を使用した本発明の粒子状組成物を、ゼラチン等のハードカプセルに充填することにより得られるハードカプセル製剤では、還元型補酵素Q10は、ゼラチンカプセル壁だけでなく、真比重が1.25以上の水溶性賦形剤壁と合わせ二重の皮膜で外部からの酸素の侵入を物理的に遮蔽することが可能となり、より酸化安定性の良好な還元型補酵素Q10製剤を得ることが可能となる。
【0092】
また、本発明のハードカプセル製剤では、経口吸収性の面においても、通常体積平均粒子径が10μm程度の油性活性成分の粉末を充填したハードカプセル製剤に比べ、本発明の粒子状組成物が崩壊した際に、ドメインを構成している油性成分(A)が消化管への吸収に有利となる微細な粒子径を維持した状態で生体内に放出されるため、良好な経口吸収性を示す傾向にある。
【0093】
また、本発明においては、上記本発明の粒子状組成物は、乳糖等、任意の賦形剤粉末と共に、錠剤又はチュアブル剤に加工することができる。通常、例えば還元型補酵素Q10を含有する錠剤あるいはチュアブル剤としては、還元型補酵素Q10粉末を含有する粉末組成物を打錠等により加工した製剤が想定される。しかしながら、この製剤においては、乳糖等の賦形剤粉末中に、裸の還元型補酵素Q10粉末が分散して分布した形態となり、必然的に酸化に対する安定性は低いレベルとなる。しかしながら、本発明の、粒子状組成物を加工して得た錠剤あるいはチュアブル剤は、真比重が1.25以上の水溶性賦形剤壁で覆われており、外部からの酸素の侵入を物理的に遮蔽することで、より酸化安定性の良好な製剤を得ることが可能となる。尚、当然ながら、本発明の錠剤あるいはチュアブル剤は、必要に応じ、糖衣等のコーティングを施すことができる。また、経口吸収性の面においても、上記のソフトカプセルおよびハードカプセルと同様の効果により、良好な製剤となる。
【0094】
尚、上記の本発明の粒子状組成物を含有するソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル剤においては、製剤加工時のせん断や圧力により、粒子状組成物が破砕される場合がある。しかしながら、このような場合においても、本発明の粒子状組成物が有する酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカルに対して不安定な脂溶性成分の安定化効果が極端に損なわれることはなく、本発明の粒子状組成物を含有するソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル剤等の製剤においては、本発明の粒子状組成物の破砕物を含有しても良い。
【0095】
また、本発明の粒子状組成物は、粉体の状態で、カレールー、ガム、ゼリー、ヨーグルト、あるいは即席麺等に広く用いられている粉末調味料等、食品分野に広く用いることができる。また、上記の製剤として機能性食品や医薬品に、さらには化粧品や日焼け止め等への添加剤としても広く用いることができる。
【0096】
さらに、本発明の粒子状組成物においては、粒子状組成物を水性媒体に溶解させることで得られる油性成分(A)が水性媒体中に微分散した乳化液を、ゼリー、ヨーグルト等の食品、あるいは飲料、又は化粧品や医薬品等に添加することが出来る。
【0097】
尚、本発明の粒子状組成物は、上記に例示した以外に、食品(一般食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤)、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等或いはそれらの素材や組成物に加工する等の用途で広範に使用され得る。
【実施例】
【0098】
次に本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。下記実施例および比較例では、脂溶性活性成分として、特に大気中の酸素に対して不安定な還元型補酵素Q10をモデル物質として用いた。還元型補酵素Q10は、下記製造例に従って調整した。
【0099】
(還元型補酵素Q10の純度)
還元型補酵素Q10の純度及び還元型補酵素Q10の重量比(%)は下記HPLC分析により求めた(重量比(%)=還元型補酵素Q10/(酸化型補酵素Q10+還元型補酵素Q10)×100)。以下、HPLC分析条件を記載する。
【0100】
カラム:SYMMETRY C18(Waters製)250mm(長さ)4.6mm(内径)、移動相;COH/CHOH=4/3(v/v)、検出波長;210nm、流速;1.0ml/min、還元型補酵素Q10の保持時間;9.1min、酸化型補酵素Q10の保持時間;13.3min。
【0101】
(球形度)
実施例、比較例、および参考例で得られた粒子状組成物の球形度は、回収後の粒子の電子顕微鏡観察で得た画像を、画像解析ソフト(WinROOF Ver.3.30)で解析し、同じ面積を持つ円の直径と外接する最小円の直径比から求めた。尚、解析では、20サンプルを解析し、その平均値を求めた。
【0102】
(保存安定性)
実施例および比較例で得られた粒子状組成物を、40℃、空気中、遮光条件下に30日間保存し、保存前後における脂溶性活性成分の保持率(%)を、下記式1に従って算出した。
【0103】
保持率(%)=(保存後の脂溶性活性成分の純度
/保存前の脂溶性活性成分の純度)×100 (式1)
(真比重の測定)
実施例、比較例、および参考例で得られた粒子状組成物の真比重の測定を、液相置換法により測定した。液相置換法では、AUTO TRUE DENSER MAT−7000(株式会社セイシン企業社製)を用い、乾燥エタノール溶媒、25±2℃の条件で測定を行った。
【0104】
(還元型補酵素Q10の密度)
60℃で加熱溶解させた還元型補酵素Q10を、20ccのメスフラスコに60℃雰囲気下でメスアップし、液体状態にある還元型補酵素Q10の重量を測定した。得られた重量値から、液体状態にある還元型補酵素Q10の密度を算出した結果、0.925g/cmであった。実施例および比較例で得られた粒子状組成物における粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重の計算に必要となる還元型補酵素Q10の密度は、上記値を代表値として用いた。
【0105】
(粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重)
実施例、比較例、および参考例で得られた粒子状組成物を、100℃で2時間加熱し、粒子状組成物の水分含量(揮発分含量)を3重量%以下に調整した。尚、水分含量の測定方法は、熱重量分析装置(セイコーインスツルメンツ社製TG/DTA220)において、120℃で加熱を継続した際に重量減少が1分間以上観測されなくなる重量を絶乾重量W(水分含量0%)とし、測定前の重量W2から、下記式2に従って算出した。
【0106】
水分含量(重量%)=100×[(W2−W)/W] (式2)
水分含量を3重量%以下に調整した粒子状組成物の真比重を、上記の条件で測定し、各粒子状組成物の真比重dを得た。水溶性賦形剤成分の真比重は、粒子状組成物の真比重d、油性成分(A)の密度(油性成分(A)が還元型補酵素Q10単独の場合は0.925g/cm)、粒子状組成物中の油性成分(A)の含有量c(重量%)より、下記式3に従って算出した。
【0107】
水溶性賦形剤成分の真比重=[d−{(c/100)×0.925}]
/[(100−c)/100] (式3)
【0108】
(製造例)
1000gのエタノール中に、100gの酸化型補酵素Q10結晶(株式会社カネカ製)と、60gのL−アスコルビン酸を加え、78℃にて撹拌し、還元反応を行った。30時間後、50℃まで冷却し、同温を保持しながらエタノール400g、水100gを添加した。このエタノール溶液を撹拌しながら、10℃/時間の冷却速度で2℃まで冷却し、冷エタノール、冷水の順で洗浄し、得られた湿結晶を減圧乾燥することにより、白色の乾燥結晶95gを得た(有姿収率95モル%)。なお、減圧乾燥を除くすべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られた結晶の純度は99.1%、補酵素Q総量に対する還元型補酵素Q10の重量比(%)は99.0%であった。
【0109】
(実施例1)
110gの蒸留水に、アラビアガム(伊那食品工業株式会社製;アラビアガムA)60gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。この水溶液を60℃に保持し、上記製造例で得られた還元型補酵素Q10粉末25.6gを油性成分(A)として添加し溶融させた後、TKホモミキサーMarkII(プライミクス株式会社製)で10000回転×30分間乳化し、水中油型乳化組成物を得た。水中油型乳化組成物中の、還元型補酵素Q10の乳化粒子径は約1μmであった。ここで得た水中油型乳化組成物75gを、あらかじめ90℃に加熱しておいた、MCT(理研ビタミン社製;アクターM−2)100g及びペーストレシチン(エー・ディー・エム・ファーイースト株式会社製;YelkinTS)1gからなる油性成分(B)に添加し、水中油型乳化組成物懸濁液滴の粒子径が約300μmとなるよう、攪拌回転数を調整した。同攪拌数での攪拌を継続しながら、懸濁液の温度を105℃に調整することで、水中油型乳化組成物懸濁液滴からの水分の除去が進行し、約30分間で大部分の水が蒸発した。その後は、常法に従って、固液分離により油性成分(B)をろ別し、約500gのエタノールで粒子に付着した油性成分(B)を洗浄後、50℃で乾燥して、還元型補酵素Q10を含有する粒子状組成物を得た。
【0110】
得られた粒子状組成物の球形度は0.97、体積平均粒子径は約250μm、水分含量が3重量%以下の条件下における粒子状組成物の真比重は1.24、算出された水溶性賦形剤成分の真比重は1.37であった。また、40℃、空気中、遮光条件下に30間保存後の還元型補酵素Q10の保持率は、99.0%であった。
【0111】
図1には、得られた粒子状組成物の外観の走査型電子顕微鏡(日立社製S−4800)写真を示した。また、図2には粒子状組成物の破断後、ヘキサンに浸して還元型補酵素Q10(油性成分(A))を溶解除去した後、走査型電子顕微鏡写真を示した。図1および2より、本発明の粒子状組成物は、極めて球形度が高く、また、油性成分(A)が水溶性マトリックス中に微細かつ明瞭なドメインを形成して分散していることがわかる。
【0112】
(実施例2)
110gの蒸留水に、アラビアガム(伊那食品工業株式会社製;アラビアガムA)60g、スクロース(和光純薬工業社一般試薬)10gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。この水溶液を60℃に保持し、上記製造例で得られた還元型補酵素Q10粉末30gを油性成分(A)として添加し溶融させた後、TKホモミキサーMarkII(プライミクス株式会社製)で10000回転×30分間乳化し、水中油型乳化組成物を得た。水中油型乳化組成物中の、還元型補酵素Q10の乳化粒子径は約1μmであった。ここで得た水中油型乳化組成物75gを、あらかじめ90℃に加熱しておいた、MCT(理研ビタミン社製;アクターM−2)100g及びペーストレシチン(エー・ディー・エム・ファーイースト株式会社製;YelkinTS)1gからなる油性成分(B)に添加し、水中油型乳化組成物懸濁液滴の粒子径が約300μmとなるよう、攪拌回転数を調整した。同攪拌数での攪拌を継続しながら、懸濁液の温度を105℃に調整することで、水中油型乳化組成物懸濁液滴からの水分の除去が進行し、約30分間で大部分の水が蒸発した。その後は、常法に従って、固液分離により油性成分(B)をろ別し、約500gのエタノールで粒子に付着した油性成分(B)を洗浄後、50℃で乾燥して、還元型補酵素Q10を含有する粒子状組成物を得た。
【0113】
得られた粒子状組成物の球形度は0.97、体積平均粒子径は約250μm、水分含量が3重量%以下の条件下における粒子状組成物の真比重は1.30、算出された水溶性賦形剤成分の真比重は1.46であった。また、40℃、空気中、遮光条件下に30間保存後の還元型補酵素Q10の保持率は、99.5%であった。
【0114】
(実施例3)
180gの蒸留水に、ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製;APH−250)20gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。この水溶液を60℃に保持し、上記製造例で得られた還元型補酵素Q10粉末8.6gを油性成分(A)として添加し溶融させた後、TKホモミキサーMarkII(プライミクス株式会社製)で10000回転×30分間乳化し、水中油型乳化組成物を得た。水中油型乳化組成物中の、還元型補酵素Q10の乳化粒子径は約1μmであった。ここで得た水中油型乳化組成物75gを、あらかじめ90℃に加熱しておいた、MCT(理研ビタミン社製;アクターM−2)100g及びペーストレシチン(エー・ディー・エム・ファーイースト株式会社製;YelkinTS)1gからなる油性成分(B)に添加し、水中油型乳化組成物懸濁液滴の粒子径が約300μmとなるよう、攪拌回転数を調整した。同攪拌数での攪拌を継続しながら、懸濁液の温度を105℃に調整することで、水中油型乳化組成物懸濁液滴からの水分の除去が進行し、約30分間で大部分の水が蒸発した。その後は、常法に従って、固液分離により油性成分(B)をろ別し、約500gのエタノールで粒子に付着した油性成分(B)を洗浄後、50℃で乾燥して、還元型補酵素Q10を含有する粒子状組成物を得た。
【0115】
得られた粒子状組成物の球形度は0.97、体積平均粒子径は約250μm、水分含量が3重量%以下の条件下における粒子状組成物の真比重は1.17、算出された水溶性賦形剤成分の真比重は1.28であった。また、40℃、空気中、遮光条件下に30間保存後の還元型補酵素Q10の保持率は約94%であった。
【0116】
(実施例4)
実施例1で得られた粒子状組成物を、目開き45μmおよび90μmの篩を用いて分級し、体積平均粒子径約75μmの粒子状組成物を得た。
【0117】
得られた粒子状組成物の球形度は0.97、水分含量が3重量%以下の条件下における粒子状組成物の真比重は1.24、算出された水溶性賦形剤成分の真比重は1.37であった。また、40℃、空気中、遮光条件下に30間保存後の還元型補酵素Q10の保持率は95%であった。
【0118】
(比較例1)
110gの蒸留水に、アラビアガム(伊那食品工業株式会社製;アラビアガムA)60gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。この水溶液を60℃に保持し、上記製造例で得られた還元型補酵素Q10粉末25.6gを添加し溶融させた後、TKホモミキサーMarkII(プライミクス株式会社製)で10000回転×30分間乳化し、水中油型乳化組成物を得た。水中油型乳化組成物中の、還元型補酵素Q10の乳化粒子径は約1μmであった。ここで得た水中油型乳化組成物を、スプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社製;B−290)を用いて熱風入り温度200℃の条件で噴霧乾燥し、還元型補酵素Q10を含有する粒子状組成物を得た。
【0119】
得られた粒子状組成物の球形度は0.87、体積平均粒子径は約15μm、水分含量が3重量%以下の条件下における粒子状組成物の真比重は1.24、算出された水溶性賦形剤成分の真比重は1.37であった。また、40℃、空気中、遮光条件下に30間保存後の還元型補酵素Q10の保持率は約70%であった。
【0120】
(比較例2)
180gの蒸留水に、ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製;APH−250)20gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。この水溶液を60℃に保持し、上記製造例で得られた還元型補酵素Q10粉末8.6gを添加し溶融させた後、TKホモミキサーMarkII(プライミクス株式会社製)で10000回転×30分間乳化し、水中油型乳化組成物を得た。水中油型乳化組成物中の、還元型補酵素Q10の乳化粒子径は約1μmであった。ここで得た水中油型乳化組成物を、スプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社製;B−290)を用いて熱風入り温度200℃の条件で噴霧乾燥し、還元型補酵素Q10を含有する粒子状組成物を得た。
【0121】
得られた粒子状組成物の球形度は0.83、体積平均粒子径は約10μm、水分含量が3重量%以下の条件下における粒子状組成物の真比重は1.05、算出された水溶性賦形剤成分の真比重は1.10であった。また、40℃、空気中、遮光条件下に30間保存後の還元型補酵素Q10の保持率は約60%であった。
【0122】
(比較例3)
180gの蒸留水に、ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製;APH−250)20gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。この水溶液を60℃に保持し、上記製造例で得られた還元型補酵素Q10粉末8.6gを添加し溶融させた後、TKホモミキサーMarkII(プライミクス株式会社製)で10000回転×30分間乳化し、水中油型乳化組成物を得た。水中油型乳化組成物中の、還元型補酵素Q10の乳化粒子径は約1μmであった。ここで得た水中油型乳化組成物75gを、あらかじめ60℃に加熱しておいた、MCT(理研ビタミン社製;アクターM−2)100g及びペーストレシチン(エー・ディー・エム・ファーイースト株式会社製;YelkinTS)1gからなる油性成分(B)に添加し、水中油型乳化組成物懸濁液滴の粒子径が約400μmとなるよう、攪拌回転数を調整した。同攪拌数での攪拌を継続しながら、懸濁液の温度を5℃まで冷却することで、水中油型乳化組成物懸濁液滴がゲル化し、ゲル状の粒子が形成した。その後は、慎重に固液分離により油性成分(B)をろ別し、約500gのエタノールで粒子に付着した油性成分(B)を洗浄後、25℃の乾燥デシケーター内で乾燥操作を実施し、さらに十分に粉末としての取り扱いが可能となってから60℃で一昼夜乾燥し大部分の水分を除去し、還元型補酵素Q10を含有する粒子状組成物を得た。
得られた粒子状組成物の球形度は0.97、体積平均粒子径は約350μm、水分含量が3重量%以下の条件下における粒子状組成物の真比重は1.13、算出された水溶性賦形剤成分の真比重は1.22であった。また、40℃、空気中、遮光条件下に30間保存後の還元型補酵素Q10の保持率は約78%であった。
【0123】
(参考例1)
110gの蒸留水に、アラビアガム(伊那食品工業株式会社製;アラビアガムA)60gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。油性成分(A)を添加せず、該水溶性賦形剤水溶液75gを、あらかじめ90℃に加熱しておいた、MCT(理研ビタミン社製;アクターM−2)100g及びペーストレシチン(エー・ディー・エム・ファーイースト株式会社製;YelkinTS)1gからなる油性成分(B)に添加し、賦形剤水溶液懸濁液滴の粒子径が約300μmとなるよう、攪拌回転数を調整した。同攪拌数での攪拌を継続しながら、懸濁液の温度を105℃に調整することで、賦形剤水溶液懸濁液滴からの水分の除去が進行し、約30分間で大部分の水が蒸発した。その後は、常法に従って、固液分離により油性成分(B)をろ別し、約500gのエタノールで粒子に付着した油性成分(B)を洗浄後、50℃で乾燥して、水溶性賦形剤のみからなる粒子状組成物を得た。
【0124】
得られた粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における真比重は1.32であった。
【0125】
(参考例2)
180gの蒸留水に、ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製;APH−250)20gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。油性成分(A)添加せず、該水溶性賦形剤水溶液75gを、あらかじめ90℃に加熱しておいた、MCT(理研ビタミン社製;アクターM−2)100g及びペーストレシチン(エー・ディー・エム・ファーイースト株式会社製;YelkinTS)1gからなる油性成分(B)に添加し、賦形剤水溶液懸濁液滴の粒子径が約400μmとなるよう、攪拌回転数を調整した。同攪拌数での攪拌を継続しながら、懸濁液の温度を105℃に調整することで、賦形剤水溶液懸濁液滴からの水分の除去が進行し、約30分間で大部分の水が蒸発した。その後は、常法に従って、固液分離により油性成分(B)をろ別し、約500gのエタノールで粒子に付着した油性成分(B)を洗浄後、50℃で乾燥して、水溶性賦形剤のみからなる粒子状組成物を得た。
【0126】
得られた粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における真比重は1.32であった。
【0127】
(参考例3)
110gの蒸留水に、アラビアガム(伊那食品工業株式会社製;アラビアガムA)60gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。該水溶性賦形剤水溶液75gを、スプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社製;B−290)を用いて熱風入り温度200℃の条件で噴霧乾燥し、水溶性賦形剤のみからなる粒子状組成物を得た。
得られた粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における真比重は1.12であった。
【0128】
(参考例4)
180gの蒸留水に、ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製;APH−250)20gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。該水溶性賦形剤水溶液75gを、スプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社製;B−290)を用いて熱風入り温度200℃の条件で噴霧乾燥し、水溶性賦形剤のみからなる粒子状組成物を得た。
【0129】
得られた粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における真比重は0.47であった。
【0130】
(参考例5)
180gの蒸留水に、ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製;APH−250)20gを60℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作成した。該水溶性賦形剤水溶液75gを、あらかじめ60℃に加熱しておいた、MCT(理研ビタミン社製;アクターM−2)100g及びペーストレシチン(エー・ディー・エム・ファーイースト株式会社製;YelkinTS)1gからなる油性成分(B)に添加し、賦形剤水溶液懸濁液滴の粒子径が約400μmとなるよう、攪拌回転数を調整した。同攪拌数での攪拌を継続しながら、懸濁液の温度を5℃まで冷却することで、賦形剤水溶液懸濁液滴がゲル化し、ゲル状の粒子が形成した。その後は、慎重に固液分離により油性成分(B)をろ別し、約500gのエタノールで粒子に付着した油性成分(B)を洗浄後、25℃の乾燥デシケーター内で乾燥操作を実施し、さらに十分に粉末としての取り扱いが可能となってから60℃で一昼夜乾燥し大部分の水分を除去し、還元型補酵素Q10を含有する粒子状組成物を得た。
【0131】
得られた粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における真比重は1.16であった。
【0132】
実施例、比較例、および参考例で得られた粒子状組成物の組成、製造方法、球形度、体積平均粒子径、粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重、および40℃、空気中、遮光条件下に30間保存後の還元型補酵素Q10の保持率を、表1に示した。
【0133】
【表1】

【0134】
表1より、本発明の、粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重が1.25以上、かつ粒子状組成物の球形度が0.9以上、体積平均粒子径が50〜1000μmの全ての条件を満足する粒子状組成物(実施例1〜4)のみが、40℃、空気中、遮光条件下に30間保存後の還元型補酵素Q10の保持率90重量%以上を実現できることがわかる。
【0135】
具体的には、粒子径が小さく球形度の低い噴霧乾燥法で作成した粒子状組成物(比較例1および2)は、例え水溶性賦形剤成分真比重が1.25以上であっても、脂溶性活性成分の安定化効果は極めて低いレベルとなっている。また、球形度および粒子径で本発明の粒子状組成物の条件を満足している液中硬化法で作成した粒子状組成物(比較例3)は、水溶性賦形剤成分の真比重が1.25よりも大幅に小さいため、脂溶性活性成分の安定化効果は低いレベルとなっていることが確認できる。つまり、本発明が目標としている、極めて高いレベルでの脂溶性活性成分の安定化効果を実現するためには、請求項1に記載の条件を満足する必要がある。また、その様な粒子状組成物は、本発明の好ましい製造方法でのみ作成できることがわかる。
【0136】
本発明の好ましい製造方法の優位性については、特に、油性成分(A)を含まない水溶性賦形剤成分の真比重の比較(参考例1〜5)より、他の製造方法に対する明瞭な優位性が確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】実施例1で得られた粒子状組成物の外観の走査型電子顕微鏡写真。
【図2】実施例1で得られた粒子状組成物の破断面の走査型電子顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性賦形剤と脂溶性活性成分を含有する粒子状組成物であって、粒子状組成物の水分含量が3重量%以下の条件下における水溶性賦形剤成分の真比重が1.25以上、かつ粒子状組成物の球形度が0.9以上である粒子状組成物。
【請求項2】
体積平均粒子径が50〜1000μmである請求項1記載の粒子状組成物。
【請求項3】
水溶性賦形剤を主成分とするマトリックス中に、脂溶性活性成分を5〜100重量%含有する油性成分(A)がドメインを形成して多分散していることを特徴とする、請求項1または2記載の粒子状組成物。
【請求項4】
油性成分(A)が形成するドメインの体積平均粒子径が0.01〜10μmである、請求項3記載の粒子状組成物。
【請求項5】
脂溶性活性成分が、酸素、光、酸・塩基及び/又はラジカルに対して不安定な脂溶性活性成分である、請求項1〜4いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項6】
脂溶性活性成分が、還元型補酵素Q10、酸化型補酵素Q10、高度不飽和脂肪酸、又はそれらの混合物である、請求項1〜4いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項7】
脂溶性活性成分が、香料であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項8】
脂溶性活性成分が、生理活性物質であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項9】
水溶性賦形剤が、水溶性高分子、界面活性剤(C)、糖、および酵母細胞壁からなる群より選択される1種以上である、請求項1〜8いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項10】
水溶性賦形剤成分の20〜100重量%がアラビアガムであることを特徴とする、請求項1〜9いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項11】
界面活性剤(C)が、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、レシチン類およびサポニン類からなる群より選択される1種以上である、請求項9または10に記載の粒子状組成物。
【請求項12】
糖が、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、および糖アルコール類からなる群より選択される1種以上である、請求項9または10に記載の粒子状組成物。
【請求項13】
粒子状組成物中に、0.1〜20重量%の還元剤を含有することを特徴とする、請求項1〜12いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項14】
還元剤が、脂溶性アスコルビン酸類、水溶性アスコルビン酸類、トコフェロール及びポリフェノールからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項13に記載の粒子状組成物。
【請求項15】
還元剤が、L−アスコルビン酸及び/又はD−arabo−アスコルビン酸であることを特徴とする、請求項13に記載の粒子状組成物。
【請求項16】
0.01〜30重量%の水分を含有することを特徴とする、請求項1〜15いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項17】
粒子状組成物中の脂溶性活性成分の含有量が1〜70重量%の範囲である、請求項1〜16いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項18】
40℃、空気中、遮光条件下に30日間保存後における、粒子状組成物中の脂溶性活性成分の保持率が、90重量%以上である、請求項1〜17いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項19】
水溶性賦形剤を含有する水溶液と脂溶性活性成分を含有する油性成分(A)から調製した水中油型乳化組成物を、油性成分(B)中に分散あるいは懸濁させた後、油性成分(B)中で乳化組成物中の水分を除去することによって得られることを特徴とする請求項3又は4記載の粒子状組成物。
【請求項20】
油性成分(B)として、油脂5〜100重量%および界面活性剤(D)0〜95重量%からなる油性成分を使用することを特徴とする、請求項19に記載の粒子状組成物。
【請求項21】
界面活性剤(D)として、レシチン類を使用することを特徴とする、請求項20に記載の粒子状組成物。
【請求項22】
粒子状組成物中の水分含量が10重量%以下となるまで、水分を除去して得られる、請求項19〜21いずれか1項に記載の粒子状組成物。
【請求項23】
請求項1〜22いずれか1項に記載の粒子状組成物を含有することを特徴とする、食品、飲料、化粧品、又は医薬品。
【請求項24】
請求項1〜22いずれか1項に記載の粒子状組成物を水性媒体に溶解させた、食品、飲料、化粧品、又は医薬品。
【請求項25】
請求項1〜22いずれか1項に記載の粒子状組成物及び/又はその破砕粉末を含有することを特徴とするソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤又はチュアブル剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−297237(P2008−297237A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144479(P2007−144479)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】