説明

粘着剤組成物及び光学部材、表面保護シート

【課題】エージング時間が短く生産性に優れ、良好な帯電防止性能を有する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを備えた光学部材、表面保護シートを提供する。
【解決手段】水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミドと、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルとが少なくとも共重合されてなる共重合体ポリマーと、イオン性化合物からなる帯電防止剤とが含有されてなる粘着剤組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び光学部材、表面保護シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネル、有機エレクトロルミネッセンス等の所謂フラットディスプレイパネルには、一般に、偏光板、位相差板、反射防止フィルムなどの各種光学フィルムが粘着層を介して積層されている。また、こうした光学フィルムには、流通、製造過程において傷や汚れを防止することを目的として、離形フィルムや表面保護フィルムが貼り合わされている。
例えば表面保護フィルムは、フラットディスプレイパネルをテレビ受信機や携帯電話機の筐体に組み込む工程や、フラットディスプレイパネルに配線を取り付ける工程において、ディスプレイパネルに貼り合わされた偏光板を保護するために、偏光板等に貼り合わされている。
【0003】
ところで、フラットディスプレイパネルは、CRTの場合と同様に、表面に静電気が帯電されやすい。パネル表面に静電気が帯電すると、フラットディスプレイパネルの表示面に空気中の埃が引き付けられる場合がある。また、静電気が、フラットディスプレイパネルを構成する基板の表示回路に悪影響を及ぼすか、または、液晶ディスプレイパネルにおいて液晶分子の配向性に悪影響を及ぼすことにより、表示不良を引き起こす原因にもなり得る。
【0004】
また、フラットディスプレイパネルの表示性能を検査する際には、光学的な阻害要因となる表面保護フィルムを取り除いた上で、検査を行う必要がある。表面保護フィルムを取り除く際には、工程時間を短縮するために、10m/分程度のスピードで表面保護フィルムを剥離している。このような比較的速いスピードで表面保護フィルムを剥離すると、表示面に静電気が帯電されやすくなる。
例えば液晶ディスプレイパネルの表示面に静電気が帯電すると、帯電した静電気が液晶層中の液晶分子の配向状態を乱してしまい、本来には表示性能が合格水準に達しているはずのものが、合格水準を満たさずに不良品と判定されるおそれがある。
【0005】
そこで従来から、光学フィルムや表面保護フィルムの粘着層に帯電防止剤を含有させたり、光学フィルムや表面保護フィルムとは別に帯電防止層をフラットディスプレイパネルに積層したりすることが行われている。
【0006】
例えば、下記特許文献1には、コレステリック液晶層の片側又は両側に1/4波長板、二色性偏光板及び帯電防止層を有する偏光部材が開示されている。
また特許文献2には、基材フィルムと、基材フィルムに積層された第四級アンモニウム塩を含む帯電防止層と、帯電防止層に積層された粘着剤層からなる帯電防止性粘着シートが開示されている。
【特許文献1】特開2001−318230公報
【特許文献2】特開2000−273417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、帯電防止層と粘着層とを別個に形成するため、帯電防止層を形成するための工程が必要であり、生産性を低下させてしまうおそれがあった。
また、光学フィルムや表面保護フィルムの粘着層に帯電防止剤を含有させた場合には、帯電防止性能を有する粘着層となるので粘着層と別個に帯電防止層を形成する必要はないが、光学フィルムや保護フィルムに粘着剤組成物を塗布して粘着層としたときに、十分な帯電防止性能が得られない場合や、粘着層を形成するためのエージング時間が長く、生産性を低下させてしまう場合があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、エージング時間が短く生産性に優れ、良好な帯電防止性能を有する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを備えた光学部材、表面保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の粘着剤組成物は、水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミドと、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルとが少なくとも共重合されてなる共重合体ポリマーと、イオン性化合物からなる帯電防止剤とが含有されてなることを特徴とする。
また、本発明の粘着剤組成物においては、前記水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミドが、HC=C(R1)ACONHCHCHOH(但し、R1は、HまたはCHであり、Aは、(COOCHCH、COOCHCHOOC−CHCH、単結合、下記一般式で示される化合物(1)から選ばれる1種である(nは1〜2の自然数である)。)であるものとすることができる。
【0010】
【化1】

【0011】
更にまた、本発明の粘着剤組成物は、前記共重合体ポリマーが架橋されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の光学部材は、先のいずれか一項に記載の粘着剤組成物が、光学シートの一面または両面に塗布されてなることを特徴とする。
また、本発明の表面保護シートは、保護フィルムと、前記保護フィルムの一面または両面に形成された粘着層とが備えられてなり、前記粘着層が、先のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着剤組成物は、水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミドと、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルとが少なくとも共重合されてなる共重合体ポリマーと、イオン性化合物からなる帯電防止剤とが含有されてなるものであるので、エージング時間が短く生産性に優れ、良好な帯電防止性能を有する粘着層を形成できる粘着剤組成物を提供できる。
【0014】
また、本発明の光学部材は、本発明の粘着剤組成物が、光学シートの一面または両面に塗布されてなるものであるので、エージング時間が短く生産性に優れ、良好な帯電防止性能を有するものとなる。
また、本発明の表面保護シートは、保護フィルムと、前記保護フィルムの一面または両面に形成された粘着層とが備えられてなり、前記粘着層が、本発明の粘着剤組成物からなるものであるので、エージング時間が短く生産性に優れ、良好な帯電防止性能を有するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
「粘着剤組成物」
本実施形態の粘着剤組成物は、水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミドと、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルとが少なくとも共重合されてなる共重合体ポリマー{以下ベースポリマーと称す。}と、イオン性化合物からなる帯電防止剤とが含有されてなるものである。
ベースポリマーは架橋剤によって架橋されていることが好ましい。ベースポリマーに帯電防止剤が添加されることによって、光学シートや保護フィルム等の基材に粘着剤組成物を塗布して粘着層とした場合の粘着層の表面抵抗値が、例えば、1×108〜1×1011(Ω/□)程度になる。
【0016】
[帯電防止剤]
帯電防止剤は、イオン性化合物で構成されることが好ましい。イオン性化合物は、ベースポリマーに対する相溶性を有するとともに、粘着剤組成物の調製時に使用する有機溶媒に対する相溶性を有し、かつ、ベースポリマーに添加された場合に粘着剤組成物の透明性を維持できるものから選択される。また、光学シートや保護フィルム等の基材に粘着剤組成物を塗布して粘着層とした場合の粘着層の表面抵抗値を、1×1011(Ω/□)以下にできるものから選択される。
【0017】
イオン性化合物は、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジウム塩、アルキルホスホニウム塩のうちのいずれか一種以上が好ましい。
イミダゾリウム塩としては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ブチル−1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−メチルイミダゾリウムクロライド、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−アリール−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等を例示できる。
【0018】
また、ピリジニウム塩としては、1−ブチル−3−メチルピリジニウムブロマイド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロマイド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロライド、1−ブチルピリジニウムブロマイド、1−ブチルピリジニウムクロライド、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホシフェート、1−エチルピリジニウムブロマイド、1−エチルピリジニウムクロライド等を例示できる。
【0019】
更に、アルキルアンモニウム塩としては、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタンスルフェート、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムトリフルオロアセテート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムブロマイド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラオクチルアンモニウムクロライド、テトラオクチルアンモニウムブロマイド、テトラヘプチルアンモニウムブロマイド、テトラペンチルアンモニウムブロマイド、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート等を例示できる。
【0020】
また、アルキルピロリジウム塩としては、1−ブチル−1−メチルピロリジウムブロマイド、1−ブチル−1−メチルピロリジウムクロライド、1−ブチル−1−メチルピロリジウムテトラフルオロボレート等を例示できる。
【0021】
更に、アルキルホスホニウム塩としては、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラブチルホスホニウムp−トルエンスルホネート、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド等を例示できる。
【0022】
また、イオン性化合物としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、または含リンオニウム塩を好ましく用いることができる。具体例としては、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−へキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−メチル−1−ピロリンテトラフルオロボレート、1−エチル−2−フェニルインドールテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルインドールテトラフルオロボレート、1−エチルカルバゾールテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、3−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが挙げられる。
【0023】
[ベースポリマー(共重合体ポリマー)]
本実施形態のベースポリマーは、水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミド{以下水酸基を有する(メタ)アクリルアミドと称す。}と、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステル{以下(メタ)アクリレートと称す。}とが、少なくとも共重合されてなるものである。
【0024】
本実施形態の粘着剤組成物を光学部材に用いる場合には、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドは、ベースポリマー全質量中に0.1〜5質量%含有されることが好ましい。ベースポリマー全質量中における水酸基を有する(メタ)アクリルアミドの含有量が0.1質量%未満であると、帯電防止性能を向上させる効果が十分に得られない恐れがある。また、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドの含有量が5質量%を超えると、耐久性が不十分となる恐れがある。
【0025】
また、本実施形態の粘着剤組成物を表面保護シートに用いる場合には、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドは、ベースポリマー全質量中に0.1〜10質量%含有されることが好ましい。ベースポリマー全質量中における水酸基を有する(メタ)アクリルアミドの含有量が0.1質量%未満であると、帯電防止性能を向上させる効果が十分に得られない恐れがある。また、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドの含有量が10質量%を超えると、保護フィルムに対する密着性が不十分となったり、接着層の透明性が不十分となったりする場合がある。
【0026】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、HC=C(R1)ACONHCHCHOH(但し、R1は、HまたはCHであり、Aは、(COOCHCH、COOCHCHOOC−CHCH、単結合、下記一般式で示される化合物(1)から選ばれる1種である(nは1〜2の自然数である)。)であるものなどが挙げられる。
【0027】
【化2】

【0028】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミドとしては、より具体的には、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)などが挙げられる。
【0029】
また、(メタ)アクリレートは、ベースポリマーの主成分であり、ベースポリマー全質量中に50〜99.1質量%含有されることが好ましい。また、(メタ)アクリレートは、一種のみでもよいが、2種以上含まれていてもよい。
(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
光学部材用の粘着剤組成物のベースポリマーには、(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレートを主成分として含有することが、高い粘着性を発揮できる点で、特に好ましい。
また、表面保護シート用の粘着剤組成物のベースポリマーには、(メタ)アクリレートとして、2−エチルヘキシルアクリレートを主成分として含有することが、容易に剥離可能な程度の粘着性を発揮できる点で特に好ましい。
【0031】
ベースポリマーは、イオン性化合物との相溶性に優れ、かつ優れた粘着特性が得られることから、(メタ)アクリレートの一種以上を主成分とするアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0032】
本実施形態の粘着剤組成物を光学部材に用いる場合には、ベースポリマーの重量平均分子量は、100万以上200万以下の範囲が好ましい。重量平均分子量が100万〜200万の範囲であれば、光学部材の粘着層を構成する粘着剤組成物として十分な粘着力が得られる。
また、本実施形態の粘着剤組成物を表面保護シートに用いる場合には、ベースポリマーの重量平均分子量は、30万以上100万以下の範囲が好ましい。重量平均分子量が30万〜100万の範囲であれば、表面保護シートの粘着層を構成する粘着剤組成物として十分な粘着力が得られる。
尚、ベースポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによってポリスチレン換算で求められる。
【0033】
また、ベースポリマーは、0℃以下のガラス転移温度Tgを有するものであることが好ましく、Tgが−100℃〜−5℃であることがより好ましく、Tgが−80℃〜−10℃であるとさらに好ましい。ガラス転移温度Tgが0℃以下であると、イオン性化合物を含有する場合に高い粘着力が得られる。
【0034】
また、ベースポリマーには、上記の水酸基を有する(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリレート以外の成分として、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分としては、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物などの凝集力・耐熱性向上成分や、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等の接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有す成分などを用いることができる。その他の成分は1種または2種以上併用して用いることができる。
【0035】
スルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等を例示できる。
【0036】
リン酸基含有モノマーとしては2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートを例示できる。シアノ基含有モノマーとしてはアクリロニトリルを例示できる。ビニルエステル類としては酢酸ビニルを例示できる。芳香族ビニル化合物としてはスチレンを例示できる。
【0037】
カルボキシル基含有モノマーとしては(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、2−カルボキシエチルアクリレートなどを例示できる。酸無水物基含有モノマーとしては無水マレイン酸、無水イタコン酸などを例示できる。
【0038】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどを例示できる。
【0039】
アミド基含有モノマーとしてはアクリルアミド、ジエチルアクリルアミドがあげられる。アミノ基含有モノマーとしてはN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートがあげられる。エポキシ基含有モノマーとしてはグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどを例示できる。ビニルエーテル類としてはビニルエチルエーテルを例示できる。
【0040】
ベースポリマーを重合する方法としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などアクリル系ポリマーの合成手法として一般的に用いられる重合方法を用いることができる。
ベースポリマーの重合には重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスバレロニトリルなどのアゾビス化合物などを使用することができる。
【0041】
[架橋剤]
本実施形態の粘着剤組成物は、ベースポリマー、特にベースポリマーの主成分であるアクリル系ポリマーを適宜架橋することで、耐熱性に優れた粘着層が得られる。架橋方法の具体的手段としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレートなどアクリル系ポリマーに適宜架橋化基点として含ませたカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基などと反応しうる基を有する化合物を添加し反応させるいわゆる架橋剤を用いる方法がある。
【0042】
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。中でも、主に適度な凝集力を得る観点から、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が特に好ましく用いられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
より具体的には、イソシアネート化合物としては、たとえばブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名コロネートHX)[いずれも日本ポリウレタン工業(株)製]などのイソシアネート付加物などが挙げられる。
【0044】
エポキシ化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD−C)[いずれも三菱瓦斯化学(株)製]などが挙げられる。
【0045】
これらの架橋剤は単独で、または2種以上の混合系で使用される。架橋剤の使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、さらには、光学部材の使用用途によって適宜選択される。アクリル粘着剤の凝集力により充分な耐熱性を得るには一般的には、上記ベースポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上配合するのが好ましい。また柔軟性、接着性の点から上記ベースポリマー100質量部に対して、5質量部以下で配合するのが好ましい。
【0046】
本実施形態の粘着剤組成物を光学部材に用いる場合には、粘着剤組成物におけるベースポリマーの架橋度は、ゲル分率で50〜80%の範囲が好ましく、70%程度がより好ましい。ゲル分率がこの範囲であれば、粘着剤組成物の粘着力を高めることができる。
また、本実施形態の粘着剤組成物を表面保護シートに用いる場合には、粘着剤組成物におけるベースポリマーの架橋度は、ゲル分率で90〜100%の範囲が好ましい。ゲル分率がこの範囲であれば、粘着剤組成物の粘着力を、剥離が容易な程度に弱めることができる。
尚、ゲル分率は、粘着剤組成物を、25℃の酢酸エチルに1日間浸漬した場合の、初期質量(浸漬前)と浸漬乾燥後の質量より、「ゲル分率=浸漬乾燥後の質量/初期質量×100」の式で求められる。
【0047】
[配合比]
ベースポリマーと帯電防止剤との合計量に対する帯電防止剤の配合比は、0.01質量%以上2質量%以下の範囲が好ましい。配合比が0.01質量%未満だと十分な帯電防止効果が得られず、2質量%を超えると被着体への汚染性が増大する恐れがある。
【0048】
[その他の添加成分]
さらに本実施形態の粘着剤組成物には、従来公知の各種の粘着付与剤や表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、無機または有機の充項剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状、箔状物などの従来公知の各種の添加剤を使用する用途に応じて適宜添加することが出来る。
【0049】
「粘着剤組成物の製造方法」
本実施形態の粘着剤組成物の製造方法としては、例えば、次の二通りの製造方法を例示できる。
第1の方法として例えば、ベースポリマーの原料である各種モノマーを、酢酸エチル、トルエン、アセトン、ヘキサン類、ケトン類、アルコール類等の沸点が120℃以下程度の有機溶媒に混合し、更に重合開始剤等を添加してモノマーを重合反応させることによって、ベースポリマーを調製する。得られたベースポリマーは、有機溶媒に溶解した状態か、あるいは有機溶媒に膨潤された状態で得られる。
次に、ベースポリマーが含まれる有機溶媒に、イオン性化合物からなる帯電防止剤を添加して、ベースポリマーと帯電防止剤とを混合する。
次に、架橋剤を添加してベースポリマーを架橋させ、更に必要に応じてシランカップリング剤等の各種添加剤を添加する。このようにして粘着剤組成物が得られる。
得られた粘着剤組成物は、例えば光学シートや保護フィルム等の基材上に塗布した後に乾燥することによって粘着層となる。
【0050】
第2の方法として例えば、ベースポリマーの原料である各種モノマーを酢酸エチル等の有機溶媒に混合するとともに、イオン性化合物からなる帯電防止剤を添加し、更に重合開始剤等を添加してモノマーを重合反応させることによって、帯電防止剤を含有するベースポリマーを調製する。得られたベースポリマーは、第1の方法と同様に、有機溶媒に溶解した状態か、あるいは有機溶媒に膨潤された状態で得られる。
次に、ベースポリマー及び帯電防止剤が含まれる有機溶媒に、架橋剤を添加してベースポリマーを架橋させ、更に必要に応じてシランカップリング剤等の各種添加剤を添加する。このようにして粘着剤組成物が得られる。
得られた粘着剤組成物は、第1の方法と同様に、例えば光学シートや保護フィルム等の基材上に塗布した後に乾燥することによって粘着層となる。
【0051】
以上のように、本実施形態の粘着剤組成物を製造する際には、ベースポリマーを調製してから帯電防止剤を添加してもよく、ベースポリマーの調製と同時に帯電防止剤を添加してもよい。ベースポリマーに帯電防止剤を均質に添加するためには、帯電防止剤が酢酸エチル等の有機溶媒に対して可溶なものがよい。
【0052】
「光学部材」
本実施形態の光学部材は、本実施形態の粘着剤組成物が、光学シートの一面または両面に塗布されてなるものである。本実施形態の光学部材は、本実施形態の粘着剤組成物を含有する粘着層を、通常厚み3〜200μm、好ましくは10〜100μm程度となるように、光学シートの片面又は両面に形成することにより得られる。粘着層の形成は、光学シートに直接塗布する方法や、一旦別の基材(例えば剥離ライナーなど)に塗布形成したものを転写する方法等によって行うことができる。
【0053】
粘着層の塗布形成方法としては、粘着テープの製造に用いられる公知の方法が用いられ、具体的にはロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、ダイコート法などが挙げられる。
【0054】
光学シートとしては、各種の表示装置等の製造に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されないが、例えば偏光板、位相差板、輝度向上板、又は防眩シートなどを含むものである。なお、光学シートは、偏光板と位相差板を積層したものや位相差板の積層体、偏光板と輝度向上板または防眩シートの積層体など、光学素材を2層以上積層したものであってもよい。
【0055】
光学シートに形成された粘着層(粘着剤組成物)の粘着力は、1(N/25mm)〜15(N/25mm)程度が好ましく、5(N/25mm)〜10(N/25mm)程度がより好ましい。粘着力が1〜15(N/25mm)の範囲であれば、光学部材の粘着層の粘着力として十分な強度になる。尚、粘着力は、JIS Z0237の粘着テープ・粘着シート試験方法に準じて測定することによって求められる。具体的には、粘着剤層を備えた光学部材を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日間放置した後に、25mm幅に裁断し、例えば偏光板に貼り合わせ、温度50℃で、5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行い、その後、引っ張り試験機を用いて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で剥離角180度、剥離速度0.3m/分でJIS Z0237に準じて粘着力の測定を行い、粘着力を評価すればよい。
【0056】
「表面保護シート」
本実施形態の光学部材用の表面保護シートは、保護フィルムと、前記保護フィルムの一面または両面に形成された粘着層とが備えられてなり、前記粘着層が、本実施形態の粘着剤組成物からなるものである。粘着剤組成物である粘着層は、通常厚み3〜200μm、好ましくは10〜100μm程度となるように、保護フィルムの片面又は両面に形成されている。
【0057】
保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレンなどのフィルムあるいはこれらの複合フィルム等の樹脂フィルムを用いることができるが、特に、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、保護フィルムは、例えば15〜50μm程度の厚みを有するものを用いることができる。
【0058】
保護フィルムへの粘着層の形成は、保護フィルムに直接塗布する方法や、一旦別の基材(例えば剥離ライナーなど)に塗布形成したものを転写する方法等によって行うことができる。
粘着層の塗布形成方法としては粘着テープの製造に用いられる公知の方法が用いられ、具体的にはロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、ダイコート法などが挙げられる。
【0059】
本実施形態の表面保護シートは、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネル等の所謂フラットディスプレイパネルに貼り合わされる光学部材を保護する用途に用いることができる。
また、本実施形態の表面保護シートは、光学部材が単独で流通する場合のみならず、光学部材がフラットディスプレイパネルに貼り合わされた状態で流通される場合にも使用される。
【0060】
保護フィルムに形成された粘着層(粘着剤組成物)の粘着力は、0.05(N/25mm)〜0.2(N/25mm)程度が好ましく、0.1(N/25mm)程度がより好ましい。粘着力が0.05〜0.2(N/25mm)の範囲であれば、表面保護シートを偏光板等の光学部材から比較的容易に剥離させることができ、例えば10m/分程度のスピードで剥離することが可能になる。尚、粘着力は、JIS Z0237の粘着テープ・粘着シート試験方法に準じて測定することによって求められる。具体的には、粘着剤層を備えた光学部材を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日間放置した後に、25mm幅に裁断し、例えば偏光板に貼り合わせ、温度50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行い、その後、引っ張り試験機を用いて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で剥離角180度、剥離速度0.3m/分でJIS Z0237に準じて粘着力の測定を行い、粘着力を評価すればよい。
【0061】
本実施形態の粘着剤組成物によれば、水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミドと、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルとが少なくとも共重合されてなる共重合体ポリマーと、イオン性化合物からなる帯電防止剤とが含有されてなるものであるので、エージング時間が短く生産性に優れ、良好な帯電防止性能を有する粘着層を形成することができる粘着剤組成物を提供できる。
具体的には、本実施形態の粘着剤組成物を光学シートや保護フィルム等の基材に塗布して粘着層とした場合、得られた粘着層のシート抵抗は1×108〜1×1011(Ω/□)程度となり、良好な帯電防止性能が得られる。本実施形態の粘着剤組成物において、帯電防止性能を向上させる効果は、水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミドに含まれる窒素原子の孤立電子対の存在により、イオン性化合物が粘着層内を移動しやすくなることによって得られる。
また、本実施形態の粘着剤組成物のエージング時間が短時間であるのは、水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミドによって、共重合体ポリマーの末端の水酸基が活性化されて共重合体ポリマーの反応性が高まったことによると推定される。
【0062】
また、本実施形態の粘着剤組成物は、ベースポリマーが、(メタ)アクリレートの一種以上を主成分とするものであるので、粘着剤組成物の透明性が非常に高いものとなる。
【0063】
また、粘着剤組成物を構成するベースポリマーの重量平均分子量が100万〜200万の範囲であり、ゲル分率が50〜80%の範囲である場合には、粘着剤組成物を光学部材の粘着層としたときに、高い粘着力が得られ、光学部材の粘着層として好適に用いることができる。
【0064】
また、粘着剤組成物を構成するベースポリマーの重量平均分子量が30万〜100万の範囲であり、ゲル分率が90〜100%の範囲である場合には、粘着剤組成物を表面保護シートの粘着層としたときの粘着層の粘着力が弱められる。このような表面保護シートとした場合には、フラットディスプレイパネル等に貼られた偏光板等の表示面から比較的容易に剥離させることができ、例えば10m/分程度のスピードで容易に剥離できるものとすることができる。
【実施例】
【0065】
次に、本発明の試験例1〜15について説明する。まず最初に、試験例1〜15に対応する粘着剤組成物を調製し、次いで、粘着剤組成物を偏光板に塗布することによって試験例1〜15の光学部材を製造した。そして、各光学部材について、性能試験を行った。以下に詳細を説明する。
【0066】
(試験例1に対応する共重合体組成物の製造)
水酸基を有する(メタ)アクリルアミドとしてヒドロキシエチルアクリルアミドを1質量部と、ブチルアクリレートを98.99質量部と、溶媒として酢酸エチルを120質量部とを、還流器及び攪拌機が装着されたフラスコに仕込み、窒素置換を行いながら65℃まで加熱した。次いで、重合開始剤としてAIBNを0.04質量部加え、65℃を維持しつつ6時間かけて重合反応を行った。重合反応の終了後、イオン性化合物として1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェートを0.01質量部添加し、粘度調整のために酢酸エチルを更に280質量部添加し、室温まで冷却することにより、試験例1の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を得た。
共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度は20質量%であり、共重合体組成物溶液の粘度は4500mPa・sであった。表1に、粘着剤組成物の配合比と、共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度と、共重合体組成物溶液の粘度とを示す。
また、ベースポリマーの平均重量分子量を、GPC法によって測定した。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
(試験例2〜15に対応する共重合体組成物溶液の製造)
水酸基を有する(メタ)アクリルアミドとしてヒドロキシエチルアクリルアミドを配合し(または配合せずに)、ブチルアクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートと、アクリル酸と、アクリルアミドのうちのいずれか1種または2種以上と、溶媒として酢酸エチルとを、適宜配合するとともに、イオン性化合物として、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェートと、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドと、1−エチルピリジニウムブロマイドと、1−ブチル−3−メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホネートのうちいずれか一種を配合した(または配合しない)こと以外は、上記試験例1の場合と同様にして、実施例2〜10の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を得た。表1および表2に、試験例2〜15の粘着剤組成物の配合比と、各共重合体組成物溶液の粘度と、各共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度と、ベースポリマーの平均重量分子量とを合わせて示す。
【0069】
【表2】

【0070】
(試験例1〜15の光学部材の製造)
表1及び表2に示された、試験例1〜15の共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物100質量部に対し、架橋剤(B)としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート型架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートL)と、シランカップリング剤(C)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名信越シリコーンKBM−403)とを、表3及び4に示す配合比となるように添加し、充分に混合して粘着剤組成物溶液とした。得られた粘着剤組成物溶液を剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、商品名MRF38)に乾燥後の厚さが25μmになるように塗布し、90℃で3分間乾燥させて、粘着剤組成物からなる粘着層を形成した。そして、粘着層及び剥離PETフィルムを偏光板((株)美舘イメージング製、商品名MLPH)に貼り合わせることにより、試験例1〜15の光学部材を製造した。
【0071】
得られた光学部材について、表面抵抗値、金属腐食性、光漏れ、耐久性、粘着力、基材に対する密着性、被着体汚染性、低温安定性、リワーク性等の性能試験を行った。尚、性能試験の手順は、以下の通りである。
また、粘着剤組成物溶液における粘着剤組成物の濃度と、粘着剤組成物溶液の粘度を測定した。また、以下に示すようにして、ゲル分率と、ゲル分率が安定するまでの日数とを調べた。これらの結果を表3及び表4に示す。
【0072】
「ゲル分率」
試験例1〜15の光学部材で用いた偏光板の代わりに剥離処理したポリエステルフィルムを使用して試験例1〜15の試験体を作製し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で放置して、塗工後1、3、5、7、10、15日経過した試験体のゲル分率を測定した。
ゲル分率は、次式により算出した。
ゲル分率(重量%)=〔(W−W)/W〕×100
上記の式において、Wは、試験体から採取した粘着層の重量(g)である。Wは後述するステンレス製の金網の重量(g)である。Wは、試験体から採取した粘着層を入れたサンプル瓶に、酢酸エチルを約30g加え、採取した粘着層を一晩浸漬させた後、サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製の金網を用いて濾過し、90℃で1時間乾燥させて得られた金網上の膜(濾物)とステンレス製の金網の重量(g)である。
【0073】
「ゲル分率が安定するまでの日数」
上述したように、塗工後一定期間経過した試験体のゲル分率を測定し、ゲル分率に変化が見られなくなった日数をゲル分率が安定するまでの日数とした。
【0074】
<性能試験の試験方法>
「表面抵抗値」
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日間放置後の光学部材の粘着剤層の表面抵抗値を、マイクロエレクトロメーター((株)川口電機製作所製)を使用して温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で測定した。
「金属腐食性」
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日間放置後の光学部材の粘着剤層に、アルミホイルを貼り合わせて温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で2日間放置したときの腐食性を観察した。アルミホイルに変化がない場合は○とし、アルミホイルが白化した場合を×とした。
【0075】
「光漏れ」
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日間放置後の光学部材を120mm(偏光板MD方向)×60mm及び120mm(偏光板TD方向)×60mmの大きさにそれぞれ裁断し、ガラス板の両面に重なり合うように貼り合わせし、温度50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行った。その後、温度80℃の雰囲気下で120時間放置後の外観を観察した。光漏れが観察されなかった場合は○とし、光漏れが観察された場合を×とした。
「耐久性」
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日間放置後の光学部材を120mm(偏光板MD方向)×60mmの大きさに裁断し、ガラス板に貼り合わせし、温度50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行なった。その後、温度80℃雰囲気下および温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下で120時間放置した後の外観を観察した。発泡、浮き、または剥がれが観察されなかった場合を○とし、発泡、浮き、または剥がれが観察された場合を×とした。
【0076】
「粘着力及び基材に対する密着性」
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日間放置後の光学部材を25mm幅に裁断し、これをガラス板に貼り合わせ、温度50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行った。その後、引っ張り試験機を用いて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、剥離角180度、剥離速度0.3m/分の条件でJIS Z0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準じて粘着力の測定を行った。そして、偏光板(基材)に対する密着性を評価した。粘着層が偏光板からまったく剥がれない場合を○とし、粘着層が偏光板から剥がれた場合を×とした。
【0077】
「被着体汚染性」
上記粘着力測定前後のガラス板面の接触角を測定した。粘着力測定前後のガラス面の接触角に変化がない場合を○とし、粘着力測定前後のガラス面の接触角に変化あった場合を×とした。尚、接触角の測定は、JIS R3257(基板ガラス表面のぬれ性試験方法)に準じて行った。
「低温安定性」
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日間放置後の光学部材を120mm(偏光板MD方向)×60mmの大きさに裁断し、これをガラス板に貼り合わせし、温度50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行った。その後、温度−40℃雰囲気下で120時間放置した後の外観を観察した。発泡、浮き、剥がれ、または析出物が観察されなかった場合を○とし、発泡、浮き、剥がれ、または析出物が観察された場合を×とした。
【0078】
「リワーク性」
上記粘着力測定時に、剥離状態を観察した。界面破壊が観察された場合を○とし、ガラス板(被着体)に転着およびまたは凝集破壊が観察された場合を×とした。
【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
表3に示すように、試験例1〜10の粘着層の表面抵抗値は1011Ω/□以下であり良好な帯電防止性を示した。また、試験例1〜10については、ゲル分率が安定するまでの日数が3日であり、短かった。また、試験例1〜10の光学部材については、粘着力が4〜8(N/25mm)と適度な強度であった。さらに、試験例1〜10の光学部材については、金属腐食性、光漏れ、耐久性、基材に対する密着性、被着体汚染性、低温安定性およびリワーク性がいずれも良好であった。
【0082】
また、表4に示すように、試験例11については、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドも帯電防止剤も添加されていないため、表面抵抗値が1015(Ω/□)を示し、帯電防止性能が試験例1〜10に比べて劣る結果になった。また、試験例11については、ゲル分率が安定するまでの日数が10日であり、試験例1〜10に比べて長かった。
また、試験例12については、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドが添加されていないため、ゲル分率が安定するまでの日数が10日であり、試験例1〜10に比べて長かった。
【0083】
また、試験例13については、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドの添加量が少ないため、表面抵抗値が1014(Ω/□)を示し、帯電防止性能が試験例1〜10に比べて劣る結果になった。また、耐久性およびリワーク性の評価が×であった。
また、試験例14については、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドの添加量が多いため、耐久性の評価が×となった。
【0084】
また、試験例15については、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドの添加量が少ないため、耐久性およびリワーク性の評価が×であった。
【0085】
次に、試験例16〜30について説明する。まず最初に、試験例16〜30に対応する粘着剤組成物を調製し、次いで、粘着剤組成物を保護フィルムに塗布することによって試験例16〜30の表面保護シートを製造した。そして、各表面保護シートについて性能試験を行った。以下に詳細を説明する。
【0086】
(試験例16に対応する共重合体組成物の製造)
水酸基を有する(メタ)アクリルアミドとしてヒドロキシエチルアクリルアミドを1質量部と、ブチルアクリレートを40質量部と、2−エチルヘキシルアクリレートを58.99質量部と、溶媒として酢酸エチルを150質量部とを、還流器及び攪拌機が装着されたフラスコに仕込み、窒素置換を行いながら65℃まで加熱した。次いで、重合開始剤としてAIBNを0.1質量部加え、更に1時間後AIBNを0.05質量部加え、65℃を維持しつつ6時間かけて重合反応を行った。重合反応の終了後、イオン性化合物として1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェートを0.01質量部添加し、粘度調整のために酢酸エチルを更に36質量部添加し、室温まで冷却することにより、試験例16の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を得た。
共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度は35質量%であり、共重合体組成物溶液の粘度は3500mPa・sであった。表5に、粘着剤組成物の配合比と、共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度と、共重合体組成物溶液の粘度とを示す。
また、ベースポリマーの平均重量分子量を、GPC法によって測定した。結果を表5に示す。
【0087】
【表5】

【0088】
(試験例17〜30に対応する共重合体組成物溶液の製造)
水酸基を有する(メタ)アクリルアミドとしてヒドロキシエチルアクリルアミドを配合し(または配合せずに)、ブチルアクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートと、アクリル酸と、アクリルアミドのうちのいずれか1種または2種以上と、溶媒として酢酸エチルとを、適宜配合するとともに、イオン性化合物として、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェートと、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムブロマイドと、1−ブチル−3−メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホネートのうちいずれか一種を配合した(または配合しない)こと以外は、上記試験例16の場合と同様にして、試験例17〜30の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を得た。表5および表6に、試験例17〜30の粘着剤組成物の配合比と、各共重合体組成物溶液の粘度と、各共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度と、ベースポリマーの平均重量分子量とを合わせて示す。
【0089】
【表6】

【0090】
(試験例16〜30の表面保護シートの製造)
表5および表6に示された、試験例16〜30の共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物100質量部に対し、架橋剤(B)としてヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアネレート型架橋剤、日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートHX)を、表7および表8に示す配合比となるように添加し、充分に混合して粘着剤組成物溶液とした。
得られた粘着剤組成物溶液を剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、商品名MRF38)に乾燥後の厚さが25μmになるように塗布し、90℃で3分間乾燥させて、粘着剤組成物からなる粘着層を形成した。そして、粘着層及び剥離PETフィルムを保護フィルムであるPETフィルム(東レ(株)製、商品名ルミラーS10#25)に貼り合わせることにより、試験例16〜30の表面保護シートを製造した。
【0091】
得られた表面保護シートについて、試験例1と同様にして、表面抵抗値、金属腐食性、被着体汚染性、低温安定性等の性能試験を行った。ただし、被着体をガラス板から偏光板に変更して性能試験を行った。また、粘着力、基材に対する密着性、粘着剤層の透明性について、以下に示すように、性能試験を行った。
また、試験例1と同様にして、粘着剤組成物溶液における粘着剤組成物の濃度と、粘着剤組成物溶液の粘度と、ゲル分率と、ゲル分率が安定するまでの日数とを調べた。これらの結果を表7および表8に示す。
【0092】
「粘着力及び基材に対する密着性」
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日間放置後の光学部材を25mm幅に裁断し、これを偏光板に貼り合わせ、温度50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行った。その後、引っ張り試験機を用いて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、剥離角180度、剥離速度0.3m/分の条件でJIS Z0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準じて粘着力の測定を行った。そして、保護フィルム(基材)に対する密着性を評価した。粘着層が保護フィルムからまったく剥がれない場合を○とし、粘着層が保護フィルムから剥がれた場合を×とした。
【0093】
「粘着剤層の透明性」
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日間放置した後の表面保護シートの粘着剤層の透明性を、目視で確認した。粘着剤層の透明性が良好であった場合を○とし、粘着剤層に白濁が見られたものを×とした。
【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

【0096】
表7に示すように、試験例16〜25の表面保護シートは、粘着層の表面抵抗値が10〜1011Ω/□であり、良好な帯電防止性を示した。また、試験例16〜25の表面保護シートについては、粘着力が0.1〜0.15(N/25mm)と適度な強度であった。さらに、試験例16〜25の表面保護シートについては、金属腐食性、基材に対する密着性、被着体汚染性、低温安定性および粘着剤層の透明性がいずれも良好であった。
【0097】
一方、表8に示すように、試験例26の表面保護シートについては、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドも帯電防止剤も添加されていないため、表面抵抗値が1015(Ω/□)を示し、帯電防止性能が試験例16〜25に比べて劣る結果になった。また、試験例26については、ゲル分率が安定するまでの日数が10日であり、試験例16〜25に比べて長かった。
また、試験例27については、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドが添加されていないため、ゲル分率が安定するまでの日数が10日であり、試験例16〜25に比べて長かった。
【0098】
また、試験例28については、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドの添加量が少ないため、表面抵抗値が1014(Ω/□)を示し、帯電防止性能が試験例16〜25に比べて劣る結果になった。
また、試験例29については、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドの添加量が多いため、基材に対する密着性および粘着剤層の透明性の評価が×となった。
【0099】
また、試験例30については、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドの添加量が少ないため、被着体汚染性の評価が×であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミドと、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルとが少なくとも共重合されてなる共重合体ポリマーと、
イオン性化合物からなる帯電防止剤とが含有されてなることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記水酸基を有するアクリルアミド及び/またはメタアクリルアミドが、HC=C(R1)ACONHCHCHOH(但し、R1は、HまたはCHであり、Aは、(COOCHCH、COOCHCHOOC−CHCH、単結合、下記一般式で示される化合物(1)から選ばれる1種である(nは1〜2の自然数である)。)であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【化1】

【請求項3】
前記共重合体ポリマーが架橋されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物が、光学シートの一面または両面に塗布されてなることを特徴とする光学部材。
【請求項5】
保護フィルムと、前記保護フィルムの一面または両面に形成された粘着層とが備えられてなり、
前記粘着層が、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなることを特徴とする光学部材用の表面保護シート。

【公開番号】特開2009−126929(P2009−126929A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302702(P2007−302702)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】