説明

粘着基板、回路基板の製造方法および回路板

【課題】剛性の低い粘着材付き基材であっても、高歩留りかつ生産性を低下させることのない、粘着基板、回路基板の製造方法および回路板を提供することを課題とする。
【解決手段】基材101と、粘着層102と、保護層103と、がこの順に積層され、回路基板120に貼着するのに用いられる粘着基板100であって、保護層103が粘着基板100の所定の辺より延在105していること、また、保護層103には、位置決め孔106を囲むように、保護層103を貫通するように切り込み111が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着基板、回路基板の製造方法および回路板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、パソコンを代表として電子機器の高密度化が進み、それによって、用いられる回路基板の要求品質も千差万別となってきている。こういったなかで、薄くて、軽くて、小さくできるフレキシブルプリント回路基板の需要はますます伸びてきている。
【0003】
フレキシブルプリント回路基板の一般的な製造方法は、基材の少なくとも一方の面側に金属箔を積層した金属張積層板を用いる。まず、金属層に配線回路を形成した後、表面被覆層を形成し、次いで表面被覆層が選択的に除去され、部品実装などに用いられるランド部に表面処理を行なう。その後、導通検査や裏打ちといわれているフレキシブルプリント回路基板を部分的に補強する補強板などを貼り合わせ、外径を打抜き加工することによってフレキシブルプリント回路基板が完成する。製品仕様により、異種・複数の被覆層の形成や、電磁波遮断層の形成の工程が適宜追加される。
【0004】
また製造中には、1枚の導体張積層板もしくはロール状の導体張積層板に、複数個の製品を配置し、途中工程で適宜最適な大きさに裁断し、最終的に外形加工工程にて製品の個片となる。部品実装などを行う場合には、製品を完全に個片とするのではなく、複数個の製品を繋げた状態としておき、部品実装後に個片に加工することもある。
【0005】
ここで、被覆層形成工程や電磁波遮蔽層の形成工程は、液状の材料を印刷などの方法により塗布形成することもあるが、一般的には補強板と同様にシート及びフィルム状の材料を粘着材を介して貼り付けし、形成することが多い(例えば特許文献1)。
【0006】
また、貼り付け工程では、回路基板と被覆層や電磁波遮蔽層、補強板などの接着体を、位置決めするためのガイドピンが設けられた治具板を用いて位置決めし、貼り付けを行う方法が一般的である。この時、被覆層や電磁波遮蔽層、補強板などの粘着材付き基材は、予め所定の位置への開口や外形形状に加工されるとともに、位置決め用の開口が設けられている。また、回路基板にも同様に位置決め用の開口が設けられている。
【0007】
ガイドピン付き治具板を用いて貼り付けを行う場合、回路基板に設けられた位置決め用孔に治具板のガイドピンが挿入されるように回路基板を設置し、その上から保護層を剥離した粘着材付き基材の位置決め用孔に治具板のガイドピンが挿入されるように接着体を置いて位置決めした後、貼り付けを行う。
【0008】
しかし、粘着材付き基材に十分な剛性がない場合には、粘着材付き基材にシワや折れが発生しやすく、貼り合わせるのに時間がかかるばかりは、貼り直しをする際に回路基板に折れやシワが発生し歩留低下の要因ともなっている。
【特許文献1】特開平07−170030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情にかんがみてなされたものであり、剛性の低い粘着材付き基材であっても、高歩留りかつ生産性を低下させることのない、粘着基板、回路基板の製造方法および回路板を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る粘着基板は、基材と、粘着層と、保護層と、がこの順に積層され、回路基板に貼着するのに用いられる粘着基板であって、保護層が、粘着基板の所定の辺より延在していることを特徴としている。
【0011】
また、粘着基板および回路基板には、所定の位置に対向させて、位置決めして貼着するための位置決め孔が形成されるようにすることができる。
【0012】
また、保護層には、位置決め孔を囲むように、保護層を貫通するように切り込みが設けるようにすることができる。
【0013】
このような構成により、粘着基材を貼着するとき、保護層が延在した部分を把持することができるので、粘着材を容易に剥がすことが可能となり、また、保護層をはがしたとき、位置決め孔を囲むように切り込みが保護層に入っているため、位置決め孔周辺の保護層が粘着材面に残ったままとなり、位置決めガイドピンに粘着材が絡まることのない粘着基材とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、剛性の低い粘着材付き基材であっても、高歩留りかつ生産性を低下させることのない、粘着基板、回路基板の製造方法および回路板を提供すること
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る粘着基板、回路基板の製造方法および回路板の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、共通する構成要素には同一符号を付し、以下の説明において詳細な説明を適宜省略する。
【0016】
本発明の一実施形態である粘着基板100は図1に示すように、基材101と、粘着層102と、保護層103と、がこの順に積層され、回路基板120に貼着するのに用いられる粘着基板100であって、保護層103が粘着基板100の所定の辺より延在105している。
図2に示す従来例では、保護層203が、粘着層202と同一切断面にあるため、保護層203を剥離する際誤って粘着層202も剥離してしまうことがあり、そうした場合、最終製品となる回路板140に粘着層202の欠如した領域を加工することがあった。それにたいして、図1に示すように、保護層103が、粘着基板100の所定の辺より延在しているため、その延在部105を把持し、簡単に保護層103を剥離することが可能となる。
【0017】
また、粘着基板100には、所定の位置に対向させて、位置決めして貼着するための位置決め孔106が形成されていてもよい。同様に、回路基板120にも、対応するように位置決め孔106が形成されていてもよい。こうすることにより、より精度の高い位置精度で粘着基板100と回路基板120を貼着することができるため好ましい。
【0018】

基材101は、特に限定はされないが、用途に応じて、紙、金属板、不織布や織布に熱硬化性エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを含浸させ硬化させた基材いり補強板、および樹脂フィルムなどの中から選択すればよい。これらのなかで、回路基板120に貼着後基材101を剥離し、新たに他の基材を貼着する場合には、基材101の粘着層102面には、剥離しやすいように離型処理を施していることが好ましい。他の基材としては、上述の基材101と同様選択すればよい。基材101の厚さも、特に限定はされず適宜選択すればよい。樹脂フィルムとしては、例えばポリイミド樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、ポリアミドイミド樹脂フィルム等のポリイミド樹脂系樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム等のポリアミド樹脂系フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等のポリエステル樹脂系フィルムの中から選択される一種類を用いることが好ましい。また、金属板としては、例えば鉄板、ステンレス板、アルミ板、銅板などの中から選択される一種類を用いることが好ましい。
【0019】
粘着層102は、特に限定はされないが、例を挙げるとすれば、アクリル系の粘着材が好ましい。粘着材の厚さは、特に限定はされないが、25μm以上、150μm以下が好ましい。
【0020】
保護層103についても、特に限定はされないが、紙、樹脂フィルムなどから選択することが好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルムなどが好ましい。また、保護層103は、回路基板120に貼着する前に、予め剥離して用いるため、粘着層102に離型処理を施していることが好ましい。
【0021】
また、粘着層102の粘着力は、保護層103に対するよりも、基材101に対する方が大きい方が好ましい。こうすることによって、保護層103を剥離する際に、基材101側で粘着層102が剥がれなくなり作業性を向上することができる。
【0022】
保護層103には、位置決め孔106を囲むように、保護層103を貫通するように切り込み111が設けられていることが好ましい。こうすることにより、保護層103を剥離した際、位置決め孔106周辺には保護層103が残るため、後述するが、粘着基板100を回路基板120と貼着するため、予め位置決めピン161が設けられた治具板160に挿入した際、位置決めピン161の周囲は保護層103が残っているため粘着層102で位置決めピン161を汚染することがなくなる。
【0023】
次に、回路基板の製造方法について説明する。
【0024】
本発明の一実施形態に係る回路基板の製造方法は、図3に示すように、粘着基板100を用意し、治具板160に位置決めピン161にそって粘着基板100をセットする(図3(a))。次に、粘着基板100の保護層103を、延在部105を把持して引き剥がす。この時、位置決めピン161の周りの保護層103が残っているので位置決めピン161を汚染することがない(図3(b))。次に、回路基板120を用意し、位置決めピン161に沿って粘着基板100と貼着するまで回路基板120を挿入する(図3(c))。貼着したのち、治具板160より製品を取り外す(図3(d))。
【0025】
最後に、製品領域121に沿って外径の加工を行ない回路板140を得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による粘着体付き基材の構造を示す模式図
【図2】従来の方法による補強板付き基材の構造を示す模式図
【図3】本発明による粘着体付き基材と回路基板の貼り合せ方法を示す模式図
【図4】従来の方法による補強板と回路基板の貼り合せ方法を示す模式図
【符号の説明】
【0027】
100、200:粘着基板
101、201:基材
102、202:粘着層
103、203:保護層
105:延在部
106、206:位置決め孔
111:切り込み
120:回路基板
121:製品領域
140:回路板
160:治具板
161:位置決めピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材・粘着層・保護層がこの順に積層され、回路基板に貼着するのに用いられる粘着基板であって、前記保護層が前記粘着基板の所定の辺より延在していることを特徴とする粘着基板。
【請求項2】
前記粘着基板および前記回路基板には、所定の位置に対向させて、位置決めして貼着するための位置決め孔が形成されている請求項1に記載の粘着基板。
【請求項3】
前記保護層には、前記位置決め孔を囲むように、保護層を貫通するように切り込みが設けられている請求項1または2に記載の粘着基板。
【請求項4】
前記粘着層の粘着力は、前記保護層に対するよりも、前記基材に対する方が大きい請求項1ないし3のいずれかに記載の粘着基板。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の粘着基板を用意する工程と、
回路基板を用意する工程と、
前記保護層を除去する工程と、
前記保護層が除去された前記粘着基板の粘着層側と、
前記回路基板を所定の位置に対向させ、前記位置決め孔を用いて貼着する工程と、
を含むことを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法で得られた回路板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−220784(P2007−220784A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37797(P2006−37797)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】