説明

紙幣処理装置

【課題】紙幣の処理効率を向上させることができ、また違算の発生を抑制することができ、さらに、操作者が、通常モードの計数処理において集積部およびリジェクト部にそれぞれ集積された紙幣の枚数を区別して認識することができる紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】通常モードによって載置部14から繰出部16により筐体12内に取り込まれた紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られた後に、リジェクト部40に集積された紙幣を再度識別する際に、モード切換手段66により、通常モードから特定モードに切り換えられ、モード切換手段66により特定モードが設定されると、識別計数部20での識別要素の少なくとも一つを省略して紙幣の識別が行われる。また、通常モードでの紙幣の計数結果と特定モードでの紙幣の計数結果とが区別して操作表示部62の表示部62aに表示されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣の計数を行う紙幣処理装置に関し、とりわけ、紙幣の処理効率を向上させることができ、また違算の発生を抑制することができる紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙幣の計数を行う紙幣処理装置として、様々な種類のものが用いられている。このような紙幣処理装置として、例えば1つのスタッカおよび1つのリジェクト部のみが設けられたシンプルなタイプのものが用いられる場合がある。このタイプの紙幣処理装置では、多数の紙幣を積層状態で受入部(具体的には、例えばホッパ)に載せてセットし、この受入部に設けられた繰出機構により紙幣を1枚ずつ機体内部に取り込み、機体内部に取り込まれた紙幣について識別部により識別および計数を行い、識別結果に基づいて紙幣をスタッカおよびリジェクト部のうちいずれか一方に送るようになっている。
【0003】
上述のような紙幣処理装置では、識別部により識別することができなかった紙幣はリジェクト部に集積される。このようなリジェクト部に集積された紙幣を計数結果に反映させる方法として、リジェクト部に集積された紙幣に係る情報を操作者が手入力する方法が従来から用いられてきた。しかしながら、このような方法では、リジェクト部に集積された紙幣について操作者は目視にてその金種および枚数を確認して手入力する必要があり、効率が悪い上に入力ミス等により違算が発生するおそれがある。
【0004】
また、紙幣の計数を行う紙幣処理装置として、リジェクト部が設けられておらず、1つのスタッカのみが設けられたタイプのものもある(例えば、特許文献1等参照)。このようなタイプの紙幣処理装置では、識別部により識別することができない紙幣が当該識別部を通過した場合には装置全体の動作が強制的に停止させられ、操作者がこの紙幣の金種を目視にて確認して手入力するようになっている。しかしながら、このようなリジェクト部が設けられていない紙幣処理装置では、識別部により識別することができない紙幣が当該識別部を通過する度に装置全体の動作が停止してしまうので、紙幣の処理効率が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−184478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、紙幣の処理効率を向上させることができ、また違算の発生を抑制することができる紙幣処理装置を提供することを目的とする。また、本発明の紙幣処理装置では、表示部において、通常モードにおける紙幣の計数結果と特定モードにおける紙幣の計数結果とが区別して表示されるので、操作者は、通常モードの計数処理において集積部およびリジェクト部にそれぞれ集積された紙幣の枚数を区別して認識することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紙幣処理装置は、紙幣を1枚ずつ機体内部に取り込む受入部と、前記受入部により機体内部に取り込まれた紙幣を1枚ずつ搬送する搬送部と、前記搬送部に設けられ、当該搬送部により搬送される紙幣の識別および計数を行う識別部と、前記搬送部に接続され、前記識別部により所定の紙幣であると識別された紙幣を集積する1つの集積部と、前記搬送部に接続され、前記集積部に集積すべきでない紙幣を集積する1つのリジェクト部と、前記識別部による紙幣の計数結果を表示する表示部と、通常モードによって前記受入部により機体内部に取り込まれた紙幣が全て前記集積部または前記リジェクト部に送られた後に、前記リジェクト部に集積された紙幣を再度識別する際に、通常モードから特定モードに切り換えるモード切換手段と、前記モード切換手段により特定モードが設定されると、前記識別部での識別要素の少なくとも一つを省略して紙幣の識別を行い、その識別結果に基づいて前記集積部および前記リジェクト部のいずれか一方に紙幣を送るように前記搬送部を制御するとともに、前記通常モードでの紙幣の計数結果と前記特定モードでの紙幣の計数結果とを区別して前記表示部に表示させる制御を行う制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このような紙幣処理装置によれば、通常モードによって受入部により機体内部に取り込まれた紙幣が全て集積部またはリジェクト部に送られた後に、リジェクト部に集積された紙幣を再度識別する際に、モード切換手段により、通常モードから特定モードに切り換えられ、モード切換手段により特定モードが設定されると、識別部での識別要素の少なくとも一つを省略して紙幣の識別が行われるようになっている。このため、通常モードの計数処理においてリジェクト部に集積された紙幣について手入力を行う必要がなく自動的に計数を行うことができるようになり、紙幣の処理効率を向上させることができ、また違算の発生を抑制することができる。また、通常モードでの紙幣の計数結果と特定モードでの紙幣の計数結果とが区別して表示部に表示されるようになっている。このため、操作者は、通常モードの計数処理において集積部およびリジェクト部にそれぞれ集積された紙幣の枚数を区別して認識することができる。
【0009】
本発明の紙幣処理装置においては、前記通常モードにおいて、前記識別部が紙幣の金種および真偽を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、異なる金種の紙幣が混合して前記集積部に集積されるようになっている場合には、前記特定モードにおいて、前記識別部は紙幣の金種のみを識別するとともに紙幣の計数を行うようになっていてもよい。
【0010】
あるいは、前記通常モードにおいて、前記識別部が紙幣の金種および真偽を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、一つの金種の紙幣のみが前記集積部に集積されて他の金種の紙幣は前記リジェクト部に集積されるようになっている場合には、前記特定モードにおいて、前記識別部は紙幣の金種および真偽のうち少なくとも一つを識別しないとともに紙幣の計数を行うようになっていてもよい。
【0011】
あるいは、前記通常モードにおいて、前記識別部が紙幣の金種、真偽および正損を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、正券および損券のうち一方の種別である、異なる金種の紙幣が混合して前記集積部に集積されるようになっている場合には、前記特定モードにおいて、前記識別部は紙幣の真偽および正損のうち少なくとも一つを識別しないとともに紙幣の計数を行うようになっていてもよい。
【0012】
この際に、前記制御部は、前記通常モードでの正券および損券の各々の計数結果と、前記特定モードでの正券または損券の計数結果とをそれぞれ区別して前記表示部に表示させる制御を行うようになっていてもよい。
【0013】
あるいは、前記通常モードにおいて、前記識別部が紙幣の金種、真偽および正損を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、正券および損券のうち一方の種別である、一つの金種の紙幣のみが前記集積部に集積されて他の紙幣は前記リジェクト部に集積されるようになっている場合には、前記特定モードにおいて、前記識別部は紙幣の金種、真偽および正損のうち少なくとも一つを識別しないとともに紙幣の計数を行うようになっていてもよい。
【0014】
この際に、前記制御部は、前記通常モードでの正券および損券の各々の計数結果と、前記特定モードでの正券または損券の計数結果とをそれぞれ区別して前記表示部に表示させる制御を行うようになっていてもよい。
【0015】
本発明の紙幣処理装置においては、前記制御部は、前記特定モード時における紙幣の搬送速度が前記通常モード時における紙幣の搬送速度よりも小さくなるよう前記搬送部の制御を行うようになっていてもよい。
【0016】
本発明の紙幣処理装置においては、前記特定モードにおいて前記識別部により紙幣の搬送異常に係る識別が行われる際に、重送および長さ異常以外の紙幣の搬送異常が検出された場合でも前記制御部においてこの紙幣は搬送異常ではない紙幣として扱われるようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の紙幣処理装置によれば、紙幣の処理効率を向上させることができ、また違算の発生を抑制することができ、さらに、操作者は、通常モードの計数処理において集積部およびリジェクト部にそれぞれ集積された紙幣の枚数を区別して認識することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一の実施の形態による紙幣処理装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す紙幣処理装置の内部の概略的な構成を示す概略構成図である。
【図3】図1および図2に示す紙幣処理装置の制御ブロック図である。
【図4】図1等に示す紙幣処理装置の操作表示部の構成を示す図である。
【図5A】金種混合モード(MIXモード)における、図1等に示す紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図5B】金種混合モード(MIXモード)における、図1等に示す紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】金種混合モード(MIXモード)における、図4に示す操作表示部の表示部における表示内容を示す図である。
【図7A】単一金種モード(DDモード)における、図1等に示す紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図7B】単一金種モード(DDモード)における、図1等に示す紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】単一金種モード(DDモード)における、図4に示す操作表示部の表示部における表示内容を示す図である。
【図9】金種混合モード(MIXモード)および単一金種モード(DDモード)の各モードについて、通常モードおよび特定モードの各々における識別計数部の識別要素を示す表である。
【図10A】正損/金種混合モード(FIT(MIX)モード)における、図1等に示す紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10B】正損/金種混合モード(FIT(MIX)モード)における、図1等に示す紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10C】正損/金種混合モード(FIT(MIX)モード)における、図1等に示す紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】正損/金種混合モード(FIT(MIX)モード)における、図4に示す操作表示部の表示部における表示内容を示す図である。
【図12A】正損/単一金種モード(FIT(DD)モード)における、図1等に示す紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図12B】正損/単一金種モード(FIT(DD)モード)における、図1等に示す紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図12C】正損/単一金種モード(FIT(DD)モード)における、図1等に示す紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】正損/単一金種モード(FIT(DD)モード)における、図4に示す操作表示部の表示部における表示内容を示す図である。
【図14】正損/金種混合モード(FIT(MIX)モード)および正損/単一金種モード(FIT(DD)モード)の各モードについて、通常モードおよび特定モードの各々における識別計数部の識別要素を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図14は、本実施の形態に係る紙幣処理装置を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による紙幣処理装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示す紙幣処理装置の内部の概略的な構成を示す概略構成図である。また、図3は、図1および図2に示す紙幣処理装置の制御ブロック図である。
【0020】
図1および図2に示すように、紙幣処理装置10は、筐体12と、計数が行われるべき複数の紙幣が積層状態で載置される載置部(ホッパ)14と、載置部14に載置された複数の紙幣のうち最下層にある紙幣を筐体12の内部に1枚ずつ繰り出すための繰出部16と、筐体12の内部に設けられ、繰出部16により筐体12の内部に繰り出された紙幣を1枚ずつ搬送する搬送部18と、を備えている。また、搬送部18には、繰出部16により筐体12の内部に繰り出された紙幣の識別および計数を行うための識別計数部20が設けられている。
【0021】
繰出部16は、載置部14に積層状態で載置された複数の紙幣のうち最下層にある一の紙幣の表面に当接するキッカローラ16aと、紙幣の繰出方向においてキッカローラ16aの下流側に配置され当該キッカローラ16aにより蹴り出された紙幣について筐体12の内部への繰り出しを行うフィードローラ16bとを有している。また、フィードローラ16bに対向して逆転ローラ16c(ゲートローラ)が設けられており、フィードローラ16bと逆転ローラ16cとの間にゲート部Gが形成されている。キッカローラ16aにより蹴り出された紙幣はゲート部Gを通過して1枚ずつ筐体12内の搬送部18に繰り出されるようになっている。また、筐体12の内部には、繰出部16の駆動を行う繰出部駆動機構17(図3参照)が設けられている。
【0022】
また、図2に示すように、載置部14には紙幣有無センサ15が設けられている。この紙幣有無センサ15は載置部14における紙幣の有無を検出するようになっている。具体的には、紙幣有無センサ15は発光部と受光部が一体構成された反射型の光センサであり、載置部14に紙幣が存在する場合には、発光部から発せられた光が紙幣に反射して受光部に光が届き、紙幣が存在しない場合には反射することなく光が受光部に届かないようになり、このことにより紙幣有無センサ15は載置部14に紙幣が存在するか否かを検出する。
【0023】
なお、本実施の形態の紙幣処理装置10では、載置部14、紙幣有無センサ15および繰出部16により、複数枚の紙幣を受け入れて1枚ずつ紙幣を機体内部に取り込む受入部が構成されている。
【0024】
搬送部18は、複数の搬送ローラに張架された搬送ベルトおよびローラが複数組み合わせられたものから構成されており、これらの搬送ベルトとローラの間に紙幣が挟まれた状態で搬送ベルトが循環移動を行うことにより紙幣が搬送路に沿って搬送されるようになっている。また、筐体12の内部には、搬送部18の駆動を行う搬送部駆動機構19(図3参照)が設けられている。
【0025】
また、前述のように、搬送部18には、繰出部16により筐体12の内部に繰り出された紙幣の識別および計数を行うための識別計数部20が設けられている。図2に示すように、識別計数部20は、ラインセンサ20a、厚み検出センサ20bおよび磁気センサ20cを有している。ラインセンサ20aは、紙幣の搬送路を挟むよう設けられた発光部および受光部を有しており、発光部から発せられた光(例えば、赤外光)が受光部により受けられるようになっている。ここで、ラインセンサ20aに紙幣が送られた場合には、発光部から発せられた光が紙幣を透過して受光部まで到達するようになっており、受光部で受けられた光のデータに基づいて検出値が算出されるようになっている。また、厚み検出センサ20bは、この厚み検出センサ20bを通過する紙幣の厚みを検出するようになっており、検出された紙幣の厚みに基づいて、紙幣に札折れ部分があるか、2枚以上の紙幣の重送が行われたか、あるいは紙幣のある部分にテープ等が貼られているか等を検出することができるようになっている。また、磁気センサ20cは、この磁気センサ20cを通過する紙幣のインク等に含まれる磁気成分から発せられる磁気を検出するようになっており、このことにより磁気センサ20cにおいて紙幣の磁性に関する検出値が算出されるようになっている。識別計数部20は、ラインセンサ20a、厚み検出センサ20bおよび磁気センサ20cによるそれぞれの検出結果に基づいて、紙幣の真偽、正損、金種等の識別や、紙幣の搬送異常が発生しているか否か等の識別を行うとともに、紙幣の計数を行うようになっている。
【0026】
図2に示すように、識別計数部20よりも下流側の箇所において搬送部18は2つの搬送路に分岐しており、一方の搬送路の下流側端部には集積部30が接続されており、他方の搬送路の下流側端部にはリジェクト部40が接続されている。識別計数部20により識別および計数が行われた紙幣は、集積部30またはリジェクト部40に選択的に送られるようになっている。集積部30の前面(図2における左側の面)には開口が設けられており、操作者はこの開口を介して集積部30に集積された紙幣を取り出すことができるようになっている。また、リジェクト部40の前面にも開口が設けられており、操作者はこの開口を介してリジェクト部40に集積された紙幣を取り出すことができるようになっている。
【0027】
図2に示すように、搬送部18における2つの搬送路に分岐する箇所には、分岐部材とその駆動部(図示せず)とからなる分岐部22が設けられており、この分岐部22により、当該分岐部22の上流側から送られた紙幣が、分岐した2つの搬送路のうちいずれか一方の搬送路に選択的に送られるようになっている。
【0028】
集積部30において、筐体12の背面側の位置(図2の集積部30における右側の位置)には羽根車式集積機構32が設けられている。この羽根車式集積機構32は、羽根車32aとその駆動部(図示せず)とからなり、羽根車32aは、図2の紙面に対して直交する、略水平方向に延びる軸を中心として図2における反時計回りの方向(図2における矢印方向)に回転するようになっている。羽根車32aには、外周面から回転方向とは逆方向(図2における時計回りの方向)の外方に延びる複数の羽根32bが設けられている。これらの羽根32bは、図2に示すように羽根車32aの外周面において等間隔に設けられている。
【0029】
羽根車式集積機構32の羽根車32aは、紙幣処理装置10の動作中、駆動部により常に図2における反時計回りの方向に回転させられるようになっており、この羽根車32aには、搬送部18から紙幣が1枚ずつ送られるようになっている。そして、羽根車32aは、搬送部18から送られた紙幣を2枚の羽根32bの間に受け止めてこの羽根32b間に受け止められた紙幣を集積部30に送るようになっている。このようにして、集積部30には羽根車32aから紙幣が1枚ずつ送られ、この集積部30において複数の紙幣が整列された状態で集積される。
【0030】
図1および図2に示すように、紙幣処理装置10には、集積部30の前面に設けられた開口を閉止するためのシャッター34が設けられており、このシャッター34により集積部30の前面の開口が選択的に閉止されるようになっている。また、筐体12の内部には、シャッター34の駆動を行うシャッター駆動機構35(図3参照)が設けられている。シャッター34は、シャッター駆動機構35により、集積部30の下方に退避して当該集積部30の開口を開く開口位置(図2における点線参照)と、集積部30の前面の開口を閉止する閉止位置(図2における実線参照)との間で移動させられるようになっている。すなわち、シャッター34が図2の点線に示すような開口位置にあるときには、操作者は集積部30に集積された紙幣にアクセスすることができるようになる。一方、シャッター34が図2の実線に示すような閉止位置にあるときには、集積部30の前面の開口はシャッター34により閉止され、操作者は集積部30に集積された紙幣にアクセスすることができなくなる。
【0031】
また、集積部30には紙幣有無センサ36が設けられている。この紙幣有無センサ36は、集積部30における紙幣の有無を検出するようになっている。具体的には、紙幣有無センサ36は発光部と受光部とを有しており、集積部30に紙幣が集積されていない場合には発光部から発せられた光が受光部により受けられるようになっている。一方、集積部30に紙幣が存在する場合には、発光部から発せられた光がこの紙幣により遮られて受光部に光が届かないようになり、このことにより紙幣有無センサ36は集積部30に紙幣が集積されていることを検出する。
【0032】
一方、リジェクト部40には、このリジェクト部40の前面の開口を閉止するシャッターは設けられていない。図1および図2に示すように、リジェクト部40には左右一対の紙幣整列部材42が設けられており、各紙幣整列部材42は図2に示す位置から操作者が手動で筐体12の前方に(すなわち、図2における左方に)倒すことができるようになっている。このため、搬送部18からリジェクト部40に送られた紙幣は各紙幣整列部材42により整列された状態でリジェクト部40に集積されるようになる。また、各紙幣整列部材42を筐体12の前面に倒すことにより、操作者はリジェクト部40から紙幣を取り出すことができるようになる。
【0033】
また、リジェクト部40には紙幣有無センサ44が設けられている。この紙幣有無センサ44は、リジェクト部40における紙幣の有無を検出するようになっている。具体的には、紙幣有無センサ44は発光部と受光部とを有しており、リジェクト部40に紙幣が集積されていない場合には発光部から発せられた光が受光部により受けられるようになっている。一方、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、発光部から発せられた光がこの紙幣により遮られて受光部に光が届かないようになり、このことにより紙幣有無センサ44はリジェクト部40に紙幣が集積されていることを検出する。
【0034】
また、図1に示すように、筐体12の前面には操作表示部62が設けられている。この操作表示部62は、例えばLCD等からなる表示部62aと、複数の操作キー62bとを有している。表示部62aには、紙幣処理装置10による紙幣の処理状況、より具体的には例えば識別計数部20により計数された紙幣の金種毎の枚数や合計金額等の情報が表示されるようになっている。また、操作者が操作キー62bを押下することにより後述する制御部60に対して様々な指令を与えることができるようになっている。
【0035】
図2に示すように、筐体12の内部には、紙幣処理装置10の各構成要素を制御するための制御部60が設けられている。このような制御部60の構成の詳細について図3を用いて説明する。図3に示すように、制御部60には、繰出部16の駆動を行う繰出部駆動機構17、搬送部18の駆動を行う搬送部駆動機構19、識別計数部20、分岐部22、羽根車式集積機構32、シャッター34の駆動を行うシャッター駆動機構35、紙幣有無センサ15、36、44、操作表示部62等がそれぞれ接続されている。そして、識別計数部20による紙幣の識別結果や計数結果が制御部60に送られるとともに、制御部60は繰出部駆動機構17、搬送部駆動機構19、分岐部22、羽根車式集積機構32、シャッター駆動機構35、操作表示部62等に指令信号を送りこれらの構成要素の制御を行うようになっている。また、制御部60には、紙幣有無センサ15、36、44による検出結果がこれらのセンサから送られるようになっている。
【0036】
また、図3に示すように、制御部60には記憶部64が接続されている。この記憶部64には、例えば、紙幣処理装置10による紙幣の処理状況、より具体的には例えば識別計数部20により計数された紙幣の金種毎の枚数や合計金額等の情報が記憶されるようになっている。
【0037】
また、図3に示すように、制御部60にはモード切換手段66が接続されている。このモード切換手段66は、後述する通常モードによって載置部14に載置された紙幣が繰出部16により筐体12の内部に取り込まれ、集積部30またはリジェクト部40に送られた後に、リジェクト部40に集積された紙幣を再度識別する際に、通常モードから後述する特定モードに切り換える機能を有している。ここで、本実施の形態の紙幣処理装置10では、通常モードとは最初に紙幣の計数処理で行われるモードのことをいい、特定モードとは通常モードが行われた後に紙幣の計数処理で行われるモードのことをいう。これらの通常モードおよび特定モードのより具体的な内容については後述する。
【0038】
制御部60は、モード切換手段66により特定モードが設定されると、識別計数部20での識別要素の少なくとも一つを省略して紙幣の識別を行い、その識別結果に基づいて集積部30またはリジェクト部40のいずれか一方に紙幣を送るように搬送部18における分岐部22の制御を行うようになっている。このような制御内容の具体的な例については後述する。また、制御部60は、通常モードでの計数結果と特定モードでの計数結果とを区別して操作表示部62における表示部62aに表示させるようになっている。
【0039】
次に、このような構成からなる紙幣処理装置10の基本的な動作について説明する。なお、以下に示す紙幣処理装置10の動作は、制御部60が紙幣処理装置10の各構成要素を制御することにより行われる。
【0040】
最初に、操作者は、計数が行われるべき紙幣を載置部14に積層状態で載置する。その後、操作者が操作表示部62の操作キー62b(具体的には、「START/STOP」キー)を押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送される。
【0041】
そして、搬送部18により搬送される紙幣は識別計数部20により識別および計数が行われ、識別計数部20による紙幣の識別結果が制御部60に送られる。制御部60に送られた紙幣の識別結果において、この紙幣が所定の紙幣である場合には、当該紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる。この際に、搬送部18から羽根車式集積機構32の羽根車32aに紙幣が1枚ずつ送られ、この羽根車32aは、搬送部18から送られた紙幣を2枚の羽根32bの間に受け止めてこの羽根32b間に受け止められた紙幣を集積部30に送る。このようにして、羽根車式集積機構32により集積部30に紙幣を整列された状態で集積させることができる。一方、制御部60に送られた紙幣の識別結果において、この紙幣が集積部30に集積すべきでない紙幣である場合には、当該紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる。リジェクト部40に紙幣が存在することが紙幣有無センサ44により検出されると、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯するようになっている。
【0042】
なお、上述のような紙幣処理装置10による紙幣の計数処理が行われている間は、図2の実線に示すように集積部30の前面の開口はシャッター34により閉じられている。そして、載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による紙幣の計数処理が終了すると、図2の点線に示すようにシャッター34は退避位置に移動して集積部30の前面の開口が開かれる。このようにして、操作者は集積部30から紙幣を取り出すことができるようになる。また、リジェクト部40の前面の開口は常に開かれた状態にあるので、操作者は各紙幣整列部材42を筐体12の前面に倒すことによりリジェクト部40から紙幣を取り出すことができるようになる。
【0043】
次に、本実施の形態の紙幣処理装置10における紙幣の各処理モード毎の具体的な動作について説明する。
【0044】
まず、異なる金種の紙幣が混合して集積部30に集積されるような金種混合モード(以下、MIXモードともいう)について図5Aおよび図5Bに示すフローチャートを用いて説明する。
【0045】
図4に示すような操作表示部62の表示部62aの表示画面(初期画面)および各々の操作キー62bにおいて、操作者が「MIX」キー62bを1回押下すると、制御部60においてMIXモードが設定される。次に、操作者は、計数が行われるべき紙幣を載置部14に積層状態で載置した後、操作表示部62の操作キー62bを押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される(図5AのSTEP1)。なお、本実施の形態の紙幣処理装置10において、以下に示すような1回目の紙幣の計数処理は、通常モードにて行われるようになっている。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により、紙幣の金種および真偽が識別されるとともに紙幣の計数が行われ(図5AのSTEP2)、紙幣の識別結果および計数結果が制御部60に送られる。
【0046】
ここで、識別計数部20により識別された紙幣が搬送異常券である場合には(図5AのSTEP3の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図5AのSTEP7)。また、識別計数部20における紙幣の金種判定においてどの金種の紙幣でもないと判定された場合には(図5AのSTEP4の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図5AのSTEP7)。また、識別計数部20における紙幣の真偽判定において真券であると判断された場合には(図5AのSTEP5の「YES」)、当該紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる(図5AのSTEP6)。この際に、異なる金種の紙幣が混合して集積部30に集積されるようになる。一方、識別計数部20における紙幣の真偽判定において真券ではないと判断された場合には(図5AのSTEP5の「NO」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図5AのSTEP7)。
【0047】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による1回目の紙幣の計数処理(通常モード)が終了すると(図5AのSTEP8の「YES」)、操作表示部62の表示部62aにおける表示内容は例えば図6(a)に示すようなものとなる。図6(a)に示すように、表示部62aには、紙幣の計数結果が金種毎に表示される。具体的には、図6(a)に示すような表示部62aの表示において、例えば「50× 3+0」という表示は、50ユーロ札が通常モード(1回目の計数処理)で3枚計数されたということを意味する。なお、右端の「0」は、後述する特定モード(2回目の計数処理)で計数される紙幣の枚数を意味する。また、図6(a)に示すような表示部62aの表示において、操作者が「PCS/AMT」キー(図4参照)を押下すると、表示部62aにおける表示内容が、紙幣の金種毎の枚数と、紙幣の金種毎の合計金額との間で切り換わるようになる。また、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯する。
【0048】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30に集積され、リジェクト部40には紙幣が存在しない場合には(図5AのSTEP9の「NO」)、操作表示部62の操作キー62bにおける確定(ACCEPT)キーが押下されると、または集積部30から紙幣が取り出されると(図5AのSTEP19の「YES」)、制御部60において、識別計数部20により計数され集積部30に送られた紙幣の枚数が確定され(図5AのSTEP20)、紙幣の計数処理が終了する。
【0049】
一方、1回目の紙幣の計数処理が終了した後、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には(図5AのSTEP9の「YES」)、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置することによって(図5BのSTEP10)、リジェクト部40に集積された紙幣を再度識別する。この際に、モード切換手段66は、紙幣の処理モードを、図5AのSTEP1〜STEP8に示すような通常モードから特定モードに切り換える(図5BのSTEP11)。モード切換手段66により特定モードが設定されると、リジェクト部40に集積された紙幣について2回目の計数処理を行う際に、識別計数部20での識別要素の少なくとも一つが省略されて紙幣の識別が行われる。すなわち、通常モードが行われる1回目の紙幣の計数処理では、識別計数部20で紙幣の金種および真偽が識別されるようになっているが、特定モードが行われる2回目の紙幣の計数処理では、識別計数部20で紙幣の金種のみが識別されるようになり、紙幣の真偽は識別されなくなる。なお、本実施の形態による紙幣処理装置10では、通常モードおよび特定モードのうちどちらのモードが行われる場合でも、識別計数部20において紙幣の計数は必ず行われるようになっている。
【0050】
リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて真偽を確認する。ここで、操作者により真券ではないと判断された紙幣は、載置部14に載置されず操作者により回収される。
【0051】
また、操作者が、表示部62aに表示された「MANUAL」という文字(図6(a)参照)に対応するF1キー(図4参照)を押下すると、モード切換手段66により、紙幣の処理モードが通常モードから特定モードに切り換えられるようになっている(図5BのSTEP11)。
【0052】
その後、操作者が操作表示部62の操作キー62bを押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される(図5BのSTEP12)。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により、紙幣の金種が識別されるとともに紙幣の計数が行われる(図5BのSTEP13)。この際に、紙幣の真偽の識別は行われない。なぜならば、モード切換手段66により、紙幣の処理モードが通常モードから特定モードに切り換えられ、識別計数部20において識別対象となる識別要素から真偽が省略されたからである。
【0053】
より詳細に説明すると、識別計数部20により識別された紙幣が搬送異常券である場合には(図5BのSTEP14の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図5BのSTEP17)。また、識別計数部20における紙幣の金種判定においてどの金種の紙幣でもないと判定された場合には(図5BのSTEP15の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図5BのSTEP17)。また、搬送異常券ではなく、金種の判定を行うことができるような紙幣は(図5BのSTEP14の「NO」および図5BのSTEP15の「NO」)、搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる(図5BのSTEP16)。この際に、異なる金種の紙幣が混合して集積部30に集積されるようになる。
【0054】
上述のような特定モードが設定されている場合には、制御部60は、搬送部18において特定モード時における紙幣の搬送速度が通常モード時における紙幣の搬送速度よりも小さくなるよう搬送部駆動機構19の制御を行うようにしてもよい。このことにより、特定モード時において紙幣が識別計数部20を通過する際の紙幣の速度も小さくなり、識別計数部20はより精度良く紙幣の識別を行うことができるようになる。
【0055】
また、特定モードにおいて識別計数部20により紙幣の搬送異常に係る識別が行われる際に、重送および長さ異常以外の紙幣の搬送異常が検出された場合でも、制御部60においてこの紙幣は搬送異常ではない紙幣として扱われるようになっていてもよい。このことにより、例えば識別計数部20により識別および計数が行われる紙幣について、斜行等の軽微な搬送異常が生じている場合でも、この紙幣は搬送異常ではない紙幣として扱われるようになる。ここで、処理モードが通常モードから特定モードに切り換えられると、識別計数部20において識別対象となる識別要素から真偽が省略されるので、斜行等の軽微な搬送異常が生じているような紙幣でも、識別計数部20において特定モードにおける紙幣の所定の識別(搬送異常券か否か等)および紙幣の計数を行うことができるようになる。このため、このような紙幣でも、当該紙幣の識別結果や計数結果を制御部60において有効なものとすることができる。
【0056】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による2回目の紙幣の計数処理が終了すると(図5BのSTEP18の「YES」)、操作表示部62の表示部62aにおける表示内容は例えば図6(b)に示すようなものとなる。図6(b)に示すように、表示部62aには、各金種の紙幣について、通常モード(1回目の計数処理)での計数結果と特定モード(2回目の計数処理)での計数結果とが区別して表示されるようになる。具体的には、図6(b)に示すような表示部62aの表示において、例えば「50× 3+1」という表示は、50ユーロ札が通常モード(1回目の計数処理)で3枚計数され、特定モード(2回目の計数処理)で1枚計数されたということを意味する。また、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯する。
【0057】
その後、操作表示部62の操作キー62bにおける確定(ACCEPT)キーが押下されると、または集積部30から紙幣が取り出されると(図5AのSTEP19の「YES」)、制御部60において、1回目の計数処理および2回目の計数処理でそれぞれ識別計数部20により計数され集積部30に送られた紙幣の枚数が確定され(図5AのSTEP20)、紙幣の計数処理が終了する。
【0058】
次に、単一の金種の紙幣が集積部30に集積されるような単一金種モード(以下、DDモードともいう)について図7Aおよび図7Bに示すフローチャートを用いて説明する。このような単一金種モードでは、概して同一の金種の複数の紙幣が紙幣処理装置10により計数されるようになっている。
【0059】
図4に示すような操作表示部62の表示部62aの表示画面(初期画面)および各々の操作キー62bにおいて、操作者が「DD」キー62bを1回押下すると、制御部60においてDDモードが設定される。次に、操作者は、計数が行われるべき紙幣を載置部14に積層状態で載置した後、操作表示部62の操作キー62bを押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される(図7AのSTEP1)。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により、紙幣の金種および真偽が識別されるとともに紙幣の計数が行われ(図7AのSTEP2)、紙幣の識別結果および計数結果が制御部60に送られる。
【0060】
識別計数部20により識別された紙幣が、載置部14に載置された複数の紙幣のうち最初に筐体12内に繰り出されて識別計数部20により最初に識別された紙幣である場合には(図7AのSTEP3の「YES」)、この1枚目の紙幣の金種を所定の金種に設定する(図7AのSTEP4)。すなわち、例えば最初に識別計数部20により識別が行われた紙幣の金種が10ユーロ紙幣である場合には、10ユーロ紙幣が所定の金種として設定される。
【0061】
識別計数部20により識別された紙幣が搬送異常券である場合には(図7AのSTEP5の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図7AのSTEP9)。また、識別計数部20における紙幣の金種判定において所定の金種ではないと判断された紙幣は(図7AのSTEP6の「NO」)、この紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図7AのSTEP9)。また、識別計数部20における紙幣の金種判定において所定の金種であると判断されるとともに紙幣の真偽判定において真券であると判断された場合には(図7AのSTEP6の「YES」およびSTEP7の「YES」)、当該紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる(図7AのSTEP8)。また、識別計数部20における紙幣の真偽判定において真券ではないと判断された場合には(図7AのSTEP7の「NO」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図7AのSTEP9)。すなわち、10ユーロ紙幣が所定の金種として設定されている場合には、搬送異常券ではない、真券である10ユーロ紙幣のみが集積部30に送られるようになる。
【0062】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による1回目の紙幣の計数処理(通常モード)が終了すると(図7AのSTEP10の「YES」)、操作表示部62の表示部62aにおける表示内容は例えば図8(a)に示すようなものとなる。図8(a)に示すように、表示部62aには、所定の金種(例えば10ユーロ紙幣)の紙幣の計数結果が表示される。具体的には、図8(a)に示すような表示部62aの表示において、例えば「10× 5+0」という表示は、10ユーロ札が通常モード(1回目の計数処理)で5枚計数されたということを意味する。なお、右端の「0」は、後述する特定モード(2回目の計数処理)で計数される紙幣の枚数を意味する。また、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯する。
【0063】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30に集積され、リジェクト部40には紙幣が存在しない場合には(図7AのSTEP11の「NO」)、操作表示部62の操作キー62bにおける確定(ACCEPT)キーが押下されると、または集積部30から紙幣が取り出されると(図7AのSTEP20の「YES」)、制御部60において、識別計数部20により計数され集積部30に送られた紙幣の枚数が確定され(図7AのSTEP21)、紙幣の計数処理が終了する。
【0064】
一方、1回目の紙幣の計数処理が終了した後、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には(図7AのSTEP11の「YES」)、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置することによって(図7BのSTEP12)、リジェクト部40に集積された紙幣を再度識別する。この際に、操作者が、表示部62aに表示された「MANUAL」という文字(図8(a)参照)に対応するF1キー(図4参照)を押下することによって、モード切換手段66により、紙幣の処理モードが通常モードから特定モードに切り換えられる(図7BのSTEP12)。モード切換手段66により特定モードが設定されると、リジェクト部40に集積された紙幣について2回目の計数処理を行う際に、識別計数部20での識別要素の少なくとも一つが省略されて紙幣の識別が行われる。すなわち、通常モードが行われる1回目の紙幣の計数処理では、識別計数部20で紙幣の金種および真偽が識別されるようになっているが、特定モードが行われる2回目の紙幣の計数処理では、識別計数部20で紙幣の金種の識別が行われなくなり、または紙幣の真偽の識別が行われなくなり、あるいは紙幣の金種および真偽の両方の識別が行われなくなる。
【0065】
以下、特定モードにおいて、識別計数部20で紙幣の金種および真偽の両方の識別が行われなくなる場合について説明する。この場合、特定モードにおいて識別計数部20は紙幣が搬送異常であるか否かの識別および紙幣の計数のみを行うようになる。また、この場合には、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて真偽および金種を確認する。ここで、操作者により真券ではないと判断された紙幣や、所定の金種(すなわち、1回目の紙幣の計数処理において最初に識別計数部20により識別および計数が行われた紙幣の金種)の紙幣ではないと判断された紙幣は、載置部14に載置されず操作者により回収される。
【0066】
その後、操作者が操作表示部62の操作キー62bを押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される(図7BのSTEP14)。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により紙幣の識別および計数が行われる(図7BのSTEP15)。この際に、紙幣の真偽や金種の識別は行われない。なぜならば、モード切換手段66により、紙幣の処理モードが通常モードから特定モードに切り換えられ、識別計数部20において識別対象となる識別要素から真偽および金種が省略されたからである。
【0067】
より詳細に説明すると、識別計数部20により識別された紙幣が搬送異常券である場合には(図7BのSTEP16の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図7BのSTEP18)。また、搬送異常券ではない紙幣は(図7BのSTEP16の「NO」)、搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる(図7BのSTEP17)。
【0068】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による2回目の紙幣の計数処理が終了すると(図7BのSTEP19の「YES」)、操作表示部62の表示部62aにおける表示内容は例えば図8(b)に示すようなものとなる。図8(b)に示すように、表示部62aには、所定の金種(例えば10ユーロ紙幣)の紙幣について、通常モード(1回目の計数処理)での計数結果と特定モード(2回目の計数処理)での計数結果とが区別して表示されるようになる。具体的には、図8(b)に示すような表示部62aの表示において、「10× 5+2」という表示は、10ユーロ札が通常モード(1回目の計数処理)で5枚計数され、特定モード(2回目の計数処理)で2枚計数されたということを意味する。また、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯する。
【0069】
その後、操作表示部62の操作キー62bにおける確定(ACCEPT)キーが押下されると、または集積部30から紙幣が取り出されると(図7AのSTEP20の「YES」)、制御部60において、1回目の計数処理および2回目の計数処理でそれぞれ識別計数部20により計数され集積部30に送られた紙幣の枚数が確定され(図7AのSTEP21)、紙幣の計数処理が終了する。
【0070】
なお、単一の金種の紙幣が集積部30に集積されるようなDDモードが行われる場合、特定モードにおいて、識別計数部20で紙幣の金種および真偽の両方の識別が行われなくなることに限定されることはない。特定モードにおいて、識別計数部20で紙幣の金種または真偽のいずれか一方のみの識別が行われなくなるようになっていてもよい。例えば、特定モードにおいて、紙幣の真偽の識別が行われなくなる場合には、識別計数部20で紙幣の金種が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになる。この場合には、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて真偽を確認する。ここで、操作者により真券ではないと判断された紙幣は、載置部14に載置されず操作者により回収される。そして、2回目の紙幣の計数処理において、繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により、紙幣の金種が識別されるとともに紙幣の計数が行われる。ここで、所定の金種(すなわち、1回目の紙幣の計数処理において最初に識別計数部20により識別および計数が行われた紙幣の金種)の紙幣は集積部30に送られるが、所定の金種以外の金種の紙幣はリジェクト部40に送られるようになる。このような特定モードが行われる場合でも、表示部62aには、通常モード(1回目の計数処理)での計数結果と特定モード(2回目の計数処理)での計数結果とが区別して表示されるようになる。
【0071】
また、単一の金種の紙幣が集積部30に集積されるようなDDモードが行われる場合、特定モードにおいて、識別計数部20で紙幣の金種の識別が行われなくなるようになっていてもよい。特定モードにおいて、紙幣の金種の識別が行われなくなる場合には、識別計数部20で紙幣の真偽が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになる。この場合には、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて金種を確認する。ここで、操作者により所定の金種(すなわち、1回目の紙幣の計数処理において最初に識別計数部20により識別および計数が行われた紙幣の金種)の紙幣ではないと判断された紙幣は、載置部14に載置されず操作者により回収される。そして、2回目の紙幣の計数処理において、繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により、紙幣の真偽が識別されるとともに紙幣の計数が行われる。ここで、真券は集積部30に送られるが、真券以外の偽券等の紙幣はリジェクト券としてリジェクト部40に送られるようになる。このような特定モードが行われる場合でも、表示部62aには、通常モード(1回目の計数処理)での計数結果と特定モード(2回目の計数処理)での計数結果とが区別して表示されるようになる。
【0072】
図9に、上述したMIXモードおよびDDモードにおける、通常モードおよび特定モードの各々における識別計数部20の識別要素を示す。図9に示すように、MIXモードでは、通常モードにおいて識別計数部20により紙幣の金種および真偽が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになっているが、特定モードにおいて識別計数部20での識別要素のうち真偽が省略され、識別計数部20により紙幣の金種が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになる。この場合、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて真偽を確認するようになる。
【0073】
また、図9に示すように、DDモードでは、通常モードにおいて識別計数部20により紙幣の金種および真偽が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになっているが、特定モードにおいて識別計数部20での識別要素のうち金種および真偽のうち少なくとも一つが省略されるようになる。具体的には、特定モード1では、識別計数部20での識別要素のうち金種が省略され、識別計数部20により紙幣の真偽が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになる。この場合、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて金種を確認するようになる。また、特定モード2では、識別計数部20での識別要素のうち真偽が省略され、識別計数部20により紙幣の金種が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになる。この場合、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて真偽を確認するようになる。また、特定モード3では、識別計数部20での識別要素のうち真偽および金種の両方が省略されるようになる。この場合、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて真偽および金種を確認するようになる。このような特定モード1〜3のうち、紙幣処理装置10の導入時において初期設定により予めいずれか一つのモードが選択されるようになっている。あるいは、特定モード1〜3は、操作者が操作表示部62により設定や変更を行うことができるようになっていてもよい。
【0074】
次に、正券および損券の各種別について紙幣の計数が行われ、かつ、異なる金種の紙幣が混合して集積部30に集積されるような正損/金種混合モード(以下、FIT(MIX)モードともいう)について図10A〜図10Cに示すフローチャートを用いて説明する。
【0075】
図4に示すような操作表示部62の表示部62aの表示画面(初期画面)および各々の操作キー62bにおいて、操作者が「FIT」キー62bを1回押下するとともに、「MIX」キー62bを1回押下すると、制御部60においてFIT(MIX)モードが設定される。次に、操作者は、計数が行われるべき紙幣を載置部14に積層状態で載置した後、操作表示部62の操作キー62bを押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される(図10AのSTEP1)。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により、紙幣の金種、真偽および正損が識別されるとともに紙幣の計数が行われ(図10AのSTEP2)、紙幣の識別結果および計数結果が制御部60に送られる。
【0076】
ここで、識別計数部20により識別された紙幣が搬送異常券である場合には(図10AのSTEP3の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図10AのSTEP8)。また、識別計数部20における紙幣の金種判定においてどの金種の紙幣でもないと判定された場合には(図10AのSTEP4の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図10AのSTEP8)。また、識別計数部20における紙幣の真偽判定において真券ではないと判断された場合には(図10AのSTEP5の「NO」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図10AのSTEP8)。また、識別計数部20における紙幣の正損判定において正券であると判断された場合には(図10AのSTEP6の「YES」)、当該紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる(図10AのSTEP7)。この際に、異なる金種の紙幣が混合して集積部30に集積されるようになる。一方、識別計数部20における紙幣の正損判定において正券ではないと判断された場合には(図10AのSTEP6の「NO」)、この紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図10AのSTEP8)。
【0077】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による1回目の紙幣の計数処理(通常モード)が終了すると(図10AのSTEP9の「YES」)、操作表示部62の表示部62aにおける表示内容は例えば図11(a)に示すようなものとなる。図11(a)に示すように、表示部62aには、紙幣の計数結果が正券(図11において「FIT」で表示)および損券(図11において「UNF」で表示)で区分けされた状態で金種毎に表示される。具体的には、図11(a)に示すような表示部62aの表示において、例えば「20FIT× 3」という表示は、正券の20ユーロ札が通常モード(1回目の計数処理)で3枚計数されたということを意味する。なお、「20UNF× 0+0」等という表示の内容については後述する。また、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯する。
【0078】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30に集積され、リジェクト部40には紙幣が存在しない場合には(図10AのSTEP10の「NO」)、操作表示部62の操作キー62bにおける確定(ACCEPT)キーが押下されると、または集積部30から紙幣が取り出されると(図10AのSTEP31の「YES」)、制御部60において、識別計数部20により計数され集積部30に送られた紙幣の枚数が確定され(図10AのSTEP32)、紙幣の計数処理が終了する。
【0079】
一方、1回目の紙幣の計数処理が終了した後、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には(図10AのSTEP10の「YES」)、集積部30に集積された紙幣(正券)をこの集積部30から取り出すとともに、リジェクト部40に集積された紙幣を載置部14に載置する(図10BのSTEP11)。ここで、FIT(MIX)モードでは、1回目の紙幣の計数処理が終了した後、集積部30から紙幣を取り出すことにより、制御部60において、損券を集積部30に集積させるとともに正券をリジェクト部40に集積させるようなセカンド処理に切り換えられる。そして、操作者が操作表示部62の操作キー62bを押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される(図10BのSTEP12)。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により、紙幣の金種、真偽および正損が識別されるとともに紙幣の計数が行われ(図10BのSTEP13)、紙幣の識別結果および計数結果が制御部60に送られる。
【0080】
識別計数部20により識別された紙幣が搬送異常券である場合には(図10BのSTEP14の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図14AのSTEP19)。また、識別計数部20における紙幣の金種判定においてどの金種の紙幣でもないと判定された場合には(図10BのSTEP15の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図10BのSTEP19)。また、識別計数部20における紙幣の真偽判定において真券ではないと判断された場合には(図10BのSTEP16の「NO」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図10BのSTEP19)。また、識別計数部20における紙幣の正損判定において損券であると判断された場合には(図10BのSTEP17の「YES」)、当該紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる(図10BのSTEP18)。この際に、異なる金種の紙幣が混合して集積部30に集積されるようになる。一方、識別計数部20における紙幣の正損判定において損券ではないと判断された場合には、すなわち正券であると判断された場合には(図10BのSTEP17の「NO」)、この紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図10BのSTEP19)。
【0081】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による2回目の紙幣の計数処理が終了すると(図10BのSTEP20の「YES」)、操作表示部62の表示部62aにおける表示内容は例えば図11(b)に示すようなものとなる。図11(b)に示すような表示部62aの表示において、例えば「20UNF× 1+0」という表示は、損券の20ユーロ札が通常モード(2回目の計数処理)で1枚計数されたということを意味する。なお、この表示において、右端の「0」は、後述する特定モード(3回目の計数処理)で計数される紙幣の枚数を意味する。また、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯する。
【0082】
2回目の紙幣の計数処理が終了した後、載置部14に載置された紙幣が全て集積部30に集積され、リジェクト部40には紙幣が存在しない場合には(図10BのSTEP21の「NO」)、操作表示部62の操作キー62bにおける確定(ACCEPT)キーが押下されると、または集積部30から紙幣が取り出されると(図10AのSTEP31の「YES」)、制御部60において、識別計数部20により計数され集積部30に送られた紙幣の枚数が確定され(図10AのSTEP31)、紙幣の計数処理が終了する。
【0083】
一方、2回目の紙幣の計数処理が終了した後、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には(図10AのSTEP21の「YES」)、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置することによって(図10CのSTEP22)、リジェクト部40に集積された紙幣を再度識別する。この際に、操作者が、表示部62aに表示された「MANUAL」という文字(図11(b)参照)に対応するF1キー(図4参照)を押下することによって、モード切換手段66により、紙幣の処理モードが通常モードから特定モードに切り換えられる(図10CのSTEP23)。モード切換手段66により特定モードが設定されると、リジェクト部40に集積された紙幣について3回目の計数処理を行う際に、識別計数部20での識別要素の少なくとも一つが省略されて紙幣の識別が行われる。すなわち、通常モードが行われる1回目および2回目の紙幣の計数処理では、識別計数部20で紙幣の金種、真偽および正損が識別されるようになっているが、特定モードが行われる3回目の紙幣の計数処理では、識別計数部20で紙幣の真偽の識別が行われなくなり、または紙幣の正損の識別が行われなくなり、あるいは紙幣の真偽および正損の両方の識別が行われなくなる。
【0084】
以下、特定モードにおいて、識別計数部20で紙幣の真偽および正損の両方の識別が行われなくなる場合について説明する。この場合、特定モードにおいて識別計数部20は紙幣の金種の識別および紙幣の計数を行うようになる。また、この場合には、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて真偽を確認する。ここで、操作者により真券ではないと判断された紙幣は、載置部14に載置されず操作者により回収される。
【0085】
その後、操作者が操作表示部62の操作キー62bを押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される(図10CのSTEP24)。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により紙幣の金種の識別および紙幣の計数が行われる(図10CのSTEP25)。この際に、紙幣の真偽や正損の識別は行われない。
【0086】
より詳細に説明すると、識別計数部20により識別された紙幣が搬送異常券である場合には(図10CのSTEP26の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図10CのSTEP29)。また、識別計数部20における紙幣の金種判定においてどの金種の紙幣でもないと判定された場合には(図10CのSTEP27の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図10CのSTEP29)。また、搬送異常券ではなく、金種の判定を行うことができるような紙幣は(図10CのSTEP26の「NO」および図10CのSTEP27の「NO」)、搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる(図10CのSTEP28)。この際に、異なる金種の紙幣が混合して集積部30に集積されるようになる。
【0087】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による3回目の紙幣の計数処理が終了すると(図10CのSTEP30の「YES」)、操作表示部62の表示部62aにおける表示内容は例えば図11(c)に示すようなものとなる。図11(c)に示すように、表示部62aには、各金種の正券について通常モード(1回目の計数処理)での計数結果が表示されるとともに、各金種の損券について、通常モード(2回目の計数処理)での計数結果と特定モード(3回目の計数処理)での計数結果とが区別して表示されるようになる。具体的には、図11(c)に示すような表示部62aの表示において、「20FIT× 3」という表示は、20ユーロ札の正券が通常モード(1回目の計数処理)で3枚計数され、「20UNF× 1+1」という表示は、20ユーロ札の損券が通常モード(2回目の計数処理)で1枚計数され、特定モード(3回目の計数処理)で1枚計数されたということを意味する。なお、特定モードにおいて識別計数部20における識別で正損判定を省略した場合には、識別計数部20により識別および計数が行われ集積部30に送られた紙幣は損券として扱われるようになる。しかしながら、このことに限定されることはなく、特定モードにおいて識別計数部20における識別で正損判定を省略した場合において、識別計数部20により識別および計数が行われ集積部30に送られた紙幣を正券として扱ってもよい。また、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯する。
【0088】
その後、操作表示部62の操作キー62bにおける確定(ACCEPT)キーが押下されると、または集積部30から紙幣が取り出されると(図10AのSTEP31の「YES」)、制御部60において、1回目〜3回目の計数処理でそれぞれ識別計数部20により計数され集積部30に送られた紙幣の枚数が確定され(図10AのSTEP32)、紙幣の計数処理が終了する。
【0089】
なお、FIT(MIX)モードが行われる場合、特定モードにおいて、識別計数部20で紙幣の真偽および正損の両方の識別が行われなくなることに限定されることはない。特定モードにおいて、識別計数部20で紙幣の真偽または正損のいずれか一方のみの識別が行われなくなるようになっていてもよい。例えば、特定モードにおいて、紙幣の真偽の識別が行われなくなる場合には、識別計数部20で紙幣の金種および正損が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになる。また、特定モードにおいて、紙幣の正損の識別が行われなくなる場合には、識別計数部20で紙幣の金種および真偽が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになる。
【0090】
次に、正券および損券の各種別について紙幣の計数が行われ、かつ、単一の金種の紙幣が集積部30に集積されるような正損/単一金種モード(以下、FIT(DD)モードともいう)について図12A〜図12Cに示すフローチャートを用いて説明する。このような単一金種モードでは、概して同一の金種の複数の紙幣が紙幣処理装置10により計数されるようになっている。
【0091】
図4に示すような操作表示部62の表示部62aの表示画面(初期画面)および各々の操作キー62bにおいて、操作者が「FIT」キー62bを1回押下するとともに、操作者が「DD」キー62bを1回押下すると、制御部60においてFIT(DD)モードが設定される。次に、操作者は、計数が行われるべき紙幣を載置部14に積層状態で載置した後、操作表示部62の操作キー62bを押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される(図12AのSTEP1)。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により、紙幣の金種、真偽および正損が識別されるとともに紙幣の計数が行われ(図12AのSTEP2)、紙幣の識別結果および計数結果が制御部60に送られる。
【0092】
識別計数部20により識別された紙幣が、載置部14に載置された複数の紙幣のうち最初に筐体12内に繰り出されて識別計数部20により最初に識別された紙幣である場合には(図12AのSTEP3の「YES」)、この1枚目の紙幣の金種を所定の金種に設定する(図12AのSTEP4)。すなわち、例えば最初に識別計数部20により識別が行われた紙幣の金種が20ユーロ紙幣である場合には、20ユーロ紙幣が所定の金種として設定される。
【0093】
識別計数部20により識別された紙幣が搬送異常券である場合には(図12AのSTEP5の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図12AのSTEP10)。また、識別計数部20における紙幣の金種判定において所定の金種ではないと判断された紙幣は(図12AのSTEP6の「NO」)、この紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図12AのSTEP10)。また、識別計数部20における紙幣の真偽判定において真券ではないと判断された場合には(図12AのSTEP7の「NO」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図12AのSTEP10)。また、識別計数部20における紙幣の正損判定において正券であると判断された場合には(図12AのSTEP8の「YES」)、当該紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる(図12AのSTEP9)。一方、識別計数部20における紙幣の正損判定において正券ではないと判断された場合には(図12AのSTEP8の「NO」)、この紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図12AのSTEP10)。すなわち、20ユーロ紙幣が所定の金種として設定されている場合には、搬送異常券ではなく、真券でありかつ正券である20ユーロ紙幣のみが集積部30に送られるようになる。
【0094】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による1回目の紙幣の計数処理(通常モード)が終了すると(図12AのSTEP11の「YES」)、操作表示部62の表示部62aにおける表示内容は例えば図13(a)に示すようなものとなる。図13(a)に示すように、表示部62aには、所定の金種(例えば20ユーロ紙幣)の紙幣の計数結果が正券(図13において「FIT」で表示)および損券(図13において「UNF」で表示)で区分けされた状態で表示される。具体的には、図13(a)に示すような表示部62aの表示において、例えば「20FIT× 5」という表示は、正券の20ユーロ札が通常モード(1回目の計数処理)で5枚計数されたということを意味する。なお、「20UNF× 0+0」等という表示の内容については後述する。また、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯する。
【0095】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30に集積され、リジェクト部40には紙幣が存在しない場合には(図12AのSTEP12の「NO」)、操作表示部62の操作キー62bにおける確定(ACCEPT)キーが押下されると、または集積部30から紙幣が取り出されると(図12AのSTEP32の「YES」)、制御部60において、識別計数部20により計数され集積部30に送られた紙幣の枚数が確定され(図12AのSTEP33)、紙幣の計数処理が終了する。
【0096】
一方、1回目の紙幣の計数処理が終了した後、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には(図12AのSTEP12の「YES」)、集積部30に集積された紙幣(正券)をこの集積部30から取り出すとともに、リジェクト部40に集積された紙幣を載置部14に載置する(図12BのSTEP13)。ここで、FIT(DD)モードでは、1回目の紙幣の計数処理が終了した後、集積部30から紙幣を取り出すことにより、制御部60において、損券を集積部30に集積させるとともに正券をリジェクト部40に集積させるようなセカンド処理に切り換えられる。そして、操作者が操作表示部62の操作キー62bを押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される(図12BのSTEP14)。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により、紙幣の金種、真偽および正損が識別されるとともに紙幣の計数が行われ(図12BのSTEP15)、紙幣の識別結果および計数結果が制御部60に送られる。
【0097】
識別計数部20により識別された紙幣が搬送異常券である場合には(図12BのSTEP16の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図12BのSTEP21)。また、識別計数部20における紙幣の金種判定において所定の金種ではないと判断された紙幣は(図12BのSTEP17の「NO」)、この紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図12BのSTEP21)。ここで、所定の金種とは、前述のように、載置部14に載置された複数の紙幣のうち最初に筐体12内に繰り出されて識別計数部20により最初に識別および計数が行われた紙幣の金種のことをいう。また、識別計数部20における紙幣の真偽判定において真券ではないと判断された場合には(図12BのSTEP18の「NO」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図12BのSTEP21)。また、識別計数部20における紙幣の正損判定において損券であると判断された場合には(図12BのSTEP19の「YES」)、当該紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる(図12BのSTEP20)。一方、識別計数部20における紙幣の正損判定において損券ではないと判断された場合には、すなわち正券であると判断された場合には(図12BのSTEP19の「NO」)、この紙幣は搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図12BのSTEP21)。すなわち、20ユーロ紙幣が所定の金種として設定されている場合には、搬送異常券ではなく、真券でありかつ損券である20ユーロ紙幣のみが集積部30に送られるようになる。
【0098】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による2回目の紙幣の計数処理が終了すると(図12BのSTEP22の「YES」)、操作表示部62の表示部62aにおける表示内容は例えば図13(b)に示すようなものとなる。図13(b)に示すような表示部62aの表示において、例えば「20UNF× 1+0」という表示は、損券の20ユーロ札が通常モード(2回目の計数処理)で1枚計数されたということを意味する。なお、この表示において、右端の「0」は、後述する特定モード(3回目の計数処理)で計数される紙幣の枚数を意味する。また、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯する。
【0099】
2回目の紙幣の計数処理が終了した後、載置部14に載置された紙幣が全て集積部30に集積され、リジェクト部40には紙幣が存在しない場合には(図12BのSTEP23の「NO」)、操作表示部62の操作キー62bにおける確定(ACCEPT)キーが押下されると、または集積部30から紙幣が取り出されると(図12AのSTEP32の「YES」)、制御部60において、識別計数部20により計数され集積部30に送られた紙幣の枚数が確定され(図12AのSTEP33)、紙幣の計数処理が終了する。
【0100】
一方、2回目の紙幣の計数処理が終了した後、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には(図12BのSTEP23の「YES」)、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置することによって(図12CのSTEP24)、リジェクト部40に集積された紙幣を再度識別する。この際に、操作者が、表示部62aに表示された「MANUAL」という文字(図13(b)参照)に対応するF1キー(図4参照)を押下することによって、モード切換手段66により、紙幣の処理モードが通常モードから特定モードに切り換えられる(図12CのSTEP25)。モード切換手段66により特定モードが設定されると、リジェクト部40に集積された紙幣について3回目の計数処理を行う際に、識別計数部20での識別要素の少なくとも一つが省略されて紙幣の識別が行われる。すなわち、通常モードが行われる1回目および2回目の紙幣の計数処理では、識別計数部20で紙幣の金種、真偽および正損が識別されるようになっているが、特定モードが行われる3回目の紙幣の計数処理では、識別計数部20で紙幣の金種、真偽および正損のうち少なくとも一つの識別要素の識別が行われなくなる。
【0101】
以下、特定モードにおいて、識別計数部20で紙幣の金種、真偽および正損の識別が行われなくなる場合について説明する。この場合、特定モードにおいて識別計数部20は紙幣が搬送異常であるか否かの識別および紙幣の計数のみを行うようになる。また、この場合には、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて真偽および金種を確認する。ここで、操作者により真券ではないと判断された紙幣や、所定の金種(すなわち、1回目の紙幣の計数処理において最初に識別計数部20により識別および計数が行われた紙幣の金種)の紙幣ではないと判断された紙幣は、載置部14に載置されず操作者により回収される。
【0102】
その後、操作者が操作表示部62の操作キー62bを押下することにより、紙幣の計数の開始の指令を制御部60に与えると、載置部14に積層状態で載置された紙幣は、最下層にある紙幣から順に1枚ずつ繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出される(図12CのSTEP26)。繰出部16により筐体12内の搬送部18に繰り出された紙幣は、当該搬送部18により搬送され、識別計数部20により紙幣の識別および計数が行われる(図12CのSTEP27)。
【0103】
より詳細に説明すると、識別計数部20により識別された紙幣が搬送異常券である場合には(図12CのSTEP28の「YES」)、この紙幣はリジェクト券として搬送部18により更に搬送されて分岐部22によりリジェクト部40に送られる(図12CのSTEP30)。また、搬送異常券ではない紙幣は(図12CのSTEP28の「NO」)、搬送部18により更に搬送されて分岐部22により集積部30に送られる(図12CのSTEP29)。
【0104】
載置部14に載置された紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られ、紙幣処理装置10による3回目の紙幣の計数処理が終了すると(図12CのSTEP31の「YES」)、操作表示部62の表示部62aにおける表示内容は例えば図13(c)に示すようなものとなる。図13(c)に示すように、表示部62aには、単一の金種の正券について通常モード(1回目の計数処理)での計数結果が表示されるとともに、単一の金種の損券について、通常モード(2回目の計数処理)での計数結果と特定モード(3回目の計数処理)での計数結果とが区別して表示されるようになる。具体的には、図13(c)に示すような表示部62aの表示において、「20FIT× 3」という表示は、20ユーロ札の正券が通常モード(1回目の計数処理)で3枚計数され、「20UNF× 1+1」という表示は、20ユーロ札の損券が通常モード(2回目の計数処理)で1枚計数され、特定モード(3回目の計数処理)で1枚計数されたということを意味する。前述のように、特定モードにおいて識別計数部20における識別で正損判定を省略した場合には、識別計数部20により識別および計数が行われ集積部30に送られた紙幣は損券として扱われるようになる。また、リジェクト部40に紙幣が存在する場合には、操作表示部62に設けられたリジェクトランプ62c(図4参照)が点灯する。
【0105】
その後、操作表示部62の操作キー62bにおける確定(ACCEPT)キーが押下されると、または集積部30から紙幣が取り出されると(図10AのSTEP31の「YES」)、制御部60において、1回目〜3回目の計数処理でそれぞれ識別計数部20により計数され集積部30に送られた紙幣の枚数が確定され(図10AのSTEP32)、紙幣の計数処理が終了する。
【0106】
なお、FIT(DD)モードが行われる場合、特定モードにおいて、識別計数部20で紙幣の金種、真偽、正損の全ての識別が行われなくなることに限定されることはない。特定モードにおいて、識別計数部20で紙幣の金種、真偽、正損の3つの識別要素のうち一つまたは二つの識別要素の識別が行われなくなるようになっていてもよい。
【0107】
図14に、上述したFIT(MIX)モードおよびFIT(DD)モードにおける、通常モードおよび特定モードの各々における識別計数部20の識別要素を示す。図14に示すように、FIT(MIX)モードでは、通常モードにおいて識別計数部20により紙幣の金種、真偽および正損が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになっているが、特定モードにおいて識別計数部20での識別要素のうち真偽および正損のうち少なくとも一つの識別要素が省略されるようになる(図14におけるFIT(MIX)モードの特定モード1〜3参照)。この場合、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて真偽を確認するようになる。図14におけるFIT(MIX)モードの特定モード1〜3のうち、紙幣処理装置10の導入時において初期設定により予めいずれか一つのモードが選択されるようになっている。あるいは、FIT(MIX)モードの特定モード1〜3は、操作者が操作表示部62により設定や変更を行うことができるようになっていてもよい。
【0108】
また、図14に示すように、FIT(DD)モードでは、通常モードにおいて識別計数部20により紙幣の金種、真偽および正損が識別されるとともに紙幣の計数が行われるようになっているが、特定モードにおいて識別計数部20での識別要素のうち金種、真偽および正損のうち少なくとも一つの識別要素が省略されるようになる(図14におけるFIT(DD)モードの特定モード1〜7参照)。この場合、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて金種および/または真偽を確認するようになる。具体的には、特定モードにおいて識別計数部20での識別要素のうち金種が省略されるような特定モード1、3、5、7では、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて金種を確認するようになる。また、特定モードにおいて識別計数部20での識別要素のうち真偽が省略されるような特定モード2、3、6、7では、リジェクト部40に集積された紙幣をこのリジェクト部40から取り出し、載置部14に載置する際に、操作者は各々の紙幣について目視にて真偽を確認するようになる。図14におけるFIT(DD)モードの特定モード1〜7のうち、紙幣処理装置10の導入時において初期設定により予めいずれか一つのモードが選択されるようになっている。あるいは、FIT(DD)モードの特定モード1〜7は、操作者が操作表示部62により設定や変更を行うことができるようになっていてもよい。
【0109】
なお、上述したようなFIT(MIX)モードやFIT(DD)モードでは、1回目の紙幣の計数処理で正券および損券のうち正券が集積部30に集積され、損券がリジェクト部40に集積されるようになっているが、このような態様に限定されるものではない。他の態様として、識別計数部20が紙幣の金種、真偽および正損の識別を行うとともに紙幣の計数を行うようになっている場合、1回目の紙幣の計数処理で損券を集積部30に集積し、正券をリジェクト部40に集積するような処理モードを選択することができるようになっていてもよい。このような処理モードが選択された場合、2回目の紙幣の計数処理では、1回目の紙幣の計数処理でリジェクト部40に集積された正券を載置部14に載置し、この正券について識別計数部20により紙幣の金種、真偽および正損の識別を行うとともに紙幣の計数を行う。そして、2回目の紙幣の計数処理が終了した後、モード切換手段66により通常モードから特定モードに切り換えられ、2回目の紙幣の計数処理でリジェクト部40に集積された紙幣を載置部14に載置し、この紙幣について特定モードで3回目の紙幣の計数処理を行う。この際に、識別計数部20は紙幣の金種、真偽および正損のうち少なくとも一つを識別しないとともに紙幣の計数を行うようになる。
【0110】
以上のように本実施の形態の紙幣処理装置10によれば、通常モードによって載置部14から繰出部16により筐体12内に取り込まれた紙幣が全て集積部30またはリジェクト部40に送られた後に、リジェクト部40に集積された紙幣を再度識別する際に、モード切換手段66により、通常モードから特定モードに切り換えられ、モード切換手段66により特定モードが設定されると、識別計数部20での識別要素の少なくとも一つを省略して紙幣の識別が行われるようになっている。このため、通常モードの計数処理においてリジェクト部40に集積された紙幣について手入力を行う必要がなく自動的に計数を行うことができるようになり、紙幣の処理効率を向上させることができ、また違算の発生を抑制することができる。また、通常モードでの紙幣の計数結果と特定モードでの紙幣の計数結果とが区別して操作表示部62の表示部62aに表示されるようになっている。このため、操作者は、通常モードの計数処理において集積部30およびリジェクト部40にそれぞれ集積された紙幣の枚数を区別して認識することができる。
【0111】
また、本実施の形態の紙幣処理装置10においては、図9におけるMIXモードの欄に示すように、通常モードにおいて、識別計数部20が紙幣の金種および真偽を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、異なる金種の紙幣が混合して集積部30に集積されるようになっている場合には、特定モードにおいて、識別計数部20は紙幣の金種のみを識別するとともに紙幣の計数を行うようになっている。また、図9におけるDDモードの欄に示すように、通常モードにおいて、識別計数部20が紙幣の金種および真偽を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、一つの金種の紙幣のみが集積部30に集積されて他の金種の紙幣はリジェクト部40に集積されるようになっている場合には、特定モードにおいて、識別計数部20は紙幣の金種および真偽のうち少なくとも一つを識別しないとともに紙幣の計数を行うようになっている。
【0112】
また、本実施の形態の紙幣処理装置10においては、図14におけるFIT(MIX)モードの欄に示すように、通常モードにおいて、識別計数部20が紙幣の金種、真偽および正損を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、正券および損券のうち一方の種別である、異なる金種の紙幣が混合して集積部30に集積されるようになっている場合には、特定モードにおいて、識別計数部20は紙幣の真偽および正損のうち少なくとも一つを識別しないとともに紙幣の計数を行うようになっている。また、図14におけるFIT(DD)モードの欄に示すように、通常モードにおいて、識別計数部20が紙幣の金種、真偽および正損を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、正券および損券のうち一方の種別である、一つの金種の紙幣のみが集積部30に集積されて他の紙幣はリジェクト部40に集積されるようになっている場合には、特定モードにおいて、識別計数部20は紙幣の金種、真偽および正損のうち少なくとも一つを識別しないとともに紙幣の計数を行うようになっている。
【0113】
また、本実施の形態の紙幣処理装置10においては、上述のように、制御部60は、特定モード時における紙幣の搬送速度が通常モード時における紙幣の搬送速度よりも小さくなるよう搬送部駆動機構19の制御を行うようになっていてもよい。このことにより、特定モード時において紙幣が識別計数部20を通過する際の紙幣の速度も小さくなり、識別計数部20はより精度良く紙幣の識別を行うことができるようになる。
【0114】
また、本実施の形態の紙幣処理装置10においては、上述のように、特定モードにおいて識別計数部20により紙幣の搬送異常に係る識別が行われる際に、重送および長さ異常以外の紙幣の搬送異常が検出された場合でも制御部60においてこの紙幣は搬送異常ではない紙幣として扱われるようになっていてもよい。このことにより、例えば識別計数部20により識別および計数が行われる紙幣について、斜行等の軽微な搬送異常が生じている場合でも、この紙幣は搬送異常ではない紙幣として扱われるようになる。ここで、処理モードが通常モードから特定モードに切り換えられると、識別計数部20において識別対象となる識別要素から真偽が省略される場合には、斜行等の軽微な搬送異常が生じているような紙幣でも、識別計数部20において特定モードにおける紙幣の所定の識別(搬送異常券か否か等)および紙幣の計数を行うことができるようになる。このため、このような紙幣でも、当該紙幣の識別結果や計数結果を制御部60において有効なものとすることができる。
【0115】
なお、本実施の形態の紙幣処理装置10は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0116】
例えば、識別計数部20により識別される紙幣の識別要素は、金種、真偽および/または正損に限定されることはない。識別計数部20により識別される紙幣の識別要素として、新旧、表裏、向き等を用いることもできる。この場合、モード切換手段66により特定モードが設定されると、識別計数部20でのこれらの新旧、表裏、向き等の識別要素の少なくとも一つが省略されて紙幣の識別が行われるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0117】
10 紙幣処理装置
12 筐体
14 載置部
15 紙幣有無センサ
16 繰出部
16a キッカローラ
16b フィードローラ
16c 逆転ローラ
17 繰出部駆動機構
18 搬送部
19 搬送部駆動機構
20 識別計数部
20a ラインセンサ
20b 厚み検出センサ
20c 磁気センサ
22 分岐部
30 集積部
32 羽根車式集積機構
32a 羽根車
32b 羽根
34 シャッター
35 シャッター駆動機構
36 紙幣有無センサ
40 リジェクト部
42 紙幣整列部材
44 紙幣有無センサ
60 制御部
62 操作表示部
62a 表示部
62b 操作部
62c リジェクトランプ
64 記憶部
66 モード切換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を1枚ずつ機体内部に取り込む受入部と、
前記受入部により機体内部に取り込まれた紙幣を1枚ずつ搬送する搬送部と、
前記搬送部に設けられ、当該搬送部により搬送される紙幣の識別および計数を行う識別部と、
前記搬送部に接続され、前記識別部により所定の紙幣であると識別された紙幣を集積する1つの集積部と、
前記搬送部に接続され、前記集積部に集積すべきでない紙幣を集積する1つのリジェクト部と、
前記識別部による紙幣の計数結果を表示する表示部と、
通常モードによって前記受入部により機体内部に取り込まれた紙幣が全て前記集積部または前記リジェクト部に送られた後に、前記リジェクト部に集積された紙幣を再度識別する際に、通常モードから特定モードに切り換えるモード切換手段と、
前記モード切換手段により特定モードが設定されると、前記識別部での識別要素の少なくとも一つを省略して紙幣の識別を行い、その識別結果に基づいて前記集積部および前記リジェクト部のいずれか一方に紙幣を送るように前記搬送部を制御するとともに、前記通常モードでの紙幣の計数結果と前記特定モードでの紙幣の計数結果とを区別して前記表示部に表示させる制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記通常モードにおいて、前記識別部が紙幣の金種および真偽を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、異なる金種の紙幣が混合して前記集積部に集積されるようになっている場合には、前記特定モードにおいて、前記識別部は紙幣の金種のみを識別するとともに紙幣の計数を行うことを特徴とする請求項1記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記通常モードにおいて、前記識別部が紙幣の金種および真偽を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、一つの金種の紙幣のみが前記集積部に集積されて他の金種の紙幣は前記リジェクト部に集積されるようになっている場合には、前記特定モードにおいて、前記識別部は紙幣の金種および真偽のうち少なくとも一つを識別しないとともに紙幣の計数を行うことを特徴とする請求項1記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記通常モードにおいて、前記識別部が紙幣の金種、真偽および正損を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、正券および損券のうち一方の種別である、異なる金種の紙幣が混合して前記集積部に集積されるようになっている場合には、前記特定モードにおいて、前記識別部は紙幣の真偽および正損のうち少なくとも一つを識別しないとともに紙幣の計数を行うことを特徴とする請求項1記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記通常モードでの正券および損券の各々の計数結果と、前記特定モードでの正券または損券の計数結果とをそれぞれ区別して前記表示部に表示させる制御を行うことを特徴とする請求項4記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
前記通常モードにおいて、前記識別部が紙幣の金種、真偽および正損を識別するとともに紙幣の計数を行うようになっており、かつ、正券および損券のうち一方の種別である、一つの金種の紙幣のみが前記集積部に集積されて他の紙幣は前記リジェクト部に集積されるようになっている場合には、前記特定モードにおいて、前記識別部は紙幣の金種、真偽および正損のうち少なくとも一つを識別しないとともに紙幣の計数を行うことを特徴とする請求項1記載の紙幣処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記通常モードでの正券および損券の各々の計数結果と、前記特定モードでの正券または損券の計数結果とをそれぞれ区別して前記表示部に表示させる制御を行うことを特徴とする請求項6記載の紙幣処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記特定モード時における紙幣の搬送速度が前記通常モード時における紙幣の搬送速度よりも小さくなるよう前記搬送部の制御を行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の紙幣処理装置。
【請求項9】
前記特定モードにおいて前記識別部により紙幣の搬送異常に係る識別が行われる際に、重送および長さ異常以外の紙幣の搬送異常が検出された場合でも前記制御部においてこの紙幣は搬送異常ではない紙幣として扱われるようになっていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−68820(P2012−68820A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212224(P2010−212224)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】