説明

細胞内浸透を促進する脂肪族モノアミン又はカチオン性ポリマーを含む、水和ラメラ相又はリポソーム、及び、これを含む化粧組成物又は医薬組成物、及び、この物質のスクリーニング法

【課題】有利には皮膚又は毛髪の細胞中への、物質又は有効成分の細胞内浸透を増加させることができ、かつ、細胞毒性又は上記細胞の細胞死誘導を抑制する新規の水和ラメラ相又はリポソームを提供する。
【解決手段】
本発明は、
有効成分の細胞内浸透を局所的な塗布によって刺激するためのリポソームであって、
少なくともその構造の一部に、
a)C10〜C13の脂肪鎖を1つ有する1級、2級、3級又は4級脂肪族モノアミン;
b)ステアリン酸アルコニウムクロライド又はココアルコニウムクロライド;並びに
c)式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質
式中、Rは植物タンパク質分子を記号化したものである;R及びRは独立してC1〜C6の炭化水素基であり、Rは炭素数10〜18のアルキル基である
からなる群より選択される物質又はその混合物を含む
ことを特徴とするリポソーム
に関する。
上記リポソームは、物質又は有効成分の細胞内浸透を刺激するための化粧品又は医薬品において非常に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は本質的に、
水和ラメラ相又はリポソームであって、
上記水和ラメラ相又はリポソームに保持される物質又は有効成分の細胞内浸透を促進する物質を含む、
水和ラメラ相又はリポソーム
に関する。
より具体的には、本発明は、
水和ラメラ相又はリポソームであって、
上記水和ラメラ相又はリポソーム中に存在する又は保持される有効成分の少なくとも1種の細胞内浸透を刺激できる(ポリエチレンイミン、又は、本明細書及び特許請求の範囲における炭素含有鎖長C10〜C18の脂肪族モノアミン、又は、本明細書及び特許請求の範囲におけるカチオン性ポリマーからなる群より選択される)物質又はその混合物を(少なくともその構造の一部に)含み、かつ、
細胞内浸透に対して本質的に不活性であって、特に細胞内浸透の促進に対して潜在的に活性を有する物質のスクリーニング法の範囲においてこの浸透を視覚化できる蛍光化合物(例えばペンタフルオロベンゾイルアミンフルオレセイン(pentafluorobenzoylamine fluorescein))を任意に含む、
水和ラメラ相又はリポソーム
に関する。
【0002】
本発明はまた、
上記水和ラメラ相又はリポソームを含む化粧品組成物又は皮膚化粧組成物、又は、医薬組成物又は皮膚医薬組成物
に関する。
【0003】
本発明はまた、
本発明の化粧品組成物又は皮膚化粧組成物を皮膚又は毛髪の患部上に塗布することを含む
化粧処置の方法
に関する。本発明はまた、
水和ラメラ相又はリポソームの化粧剤としての使用であって、
特に(上記水和ラメラ相又はリポソーム中に保持される物質又は有効成分の性質に応じて、特に、抗皺効果、抗酸化効果、スリミング効果、皮膚再生効果、皮膚又は毛髪の着色効果を有する)化粧組成物を製造するための使用
に関する。
【0004】
本発明はまた、
細胞内浸透の促進に対して潜在的に活性を有する物質を検出するためのスクリーニング法
に関する。
【背景技術】
【0005】
近年、特許文献1中に、周囲の培地のpHとイオン強度とに対する感度が非常に高いCATESOMES(商標)という名称のカチオン性リポソームが記載されている。この物質は、N,N−ジメチル−1,n−ジアミノアルキル型であるジアミン脂肪アルキルアンモニウム脂肪族アシル塩から構成されている。この文献において、ADDAと称される物質は、DDAと称されるジアミン、炭素数nが2〜8のアルキル部(5段落37〜39行目参照)、炭素数10〜30の脂肪酸に由来する脂肪族アシル化部(5段落41〜48行目)からつくられている。
【0006】
上記物質ADDAは、CATEMOL 220及び260等のCATEMOLの商品名でPhoenix Chemical社(サマヴィル、ニュージャージー州、アメリカ)から市販されていると言われる。
【0007】
CATESOMESは、炭素数10〜28の脂肪酸(例えばベヘン酸)と組み合わさってA−ADDA塩という塩を形成するが、この混合物は等モルずつの混合物で、pH6〜10においてつくられ、ADDAの4級アミン基と上記脂肪酸のカルボキシル基との間で塩が形成されたものである(5段落66行目〜6段落4行目参照)
【0008】
このHaywardの文献は、二分子層がトリ塩型ヘミコハク酸ステロール等の有機酸ステロール塩を含むような従来のリポソームに関する特許文献2も引用している(5段落13〜18行目)。
【特許文献1】アメリカ特許6,071,535A(Hayward)
【特許文献2】アメリカ特許4,721,612A
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の要約
本発明の主要な目的は、有利には皮膚又は毛髪の細胞中への、物質又は有効成分の細胞内浸透を増加させることができ、かつ、細胞毒性又は上記細胞の細胞死誘導を抑制する新規の水和ラメラ相又はリポソームを提供するという新しい技術的な問題を予想外の方法で解決することである。
【0010】
本発明の別の主要な目的は、有利には皮膚又は毛髪の細胞中への、物質又は有効成分の細胞内浸透を促進し、かつ、比較的高い比率で水和ラメラ相又はリポソーム中に上記物質又は有効成分を封入できる新規の水和ラメラ相又はリポソームを提供するという技術的な問題を予想外の方法で解決することである。
【0011】
本発明の別の主要な目的は、有利には皮膚又は毛髪の細胞中へ、物質又は有効成分を良好に細胞内浸透させ、かつ、細胞毒性又は上記細胞の細胞死(アポトーシス)誘導を抑制する水和ラメラ相又はリポソームを含む新規の化粧品組成物又は皮膚化粧組成物、又は、医薬組成物又は皮膚医薬組成物を提供するという新しい技術的な問題を予想外の方法で解決することである。
【0012】
本発明の別の主要な目的は、有利には皮膚又は毛髪の細胞中へ、物質又は有効成分の細胞内浸透の改善に対して潜在的に活性を有する物質をスクリーニングする新規の方法、また、好ましくは、細胞毒性又は上記細胞のアポトーシス誘導を評価する新規の方法を提供するという新しい技術的な問題を予想外の方法で解決することである。
【0013】
上記技術的な問題は全て、化粧品又は医薬品の工業規模で使用できる安全で信頼できる方法によって初めて同時に解決できる。
【0014】
従って、第一の態様によれば、本発明は、
水和ラメラ相又はリポソームであって、
少なくともその構造の一部に、上記水和ラメラ相又はリポソーム中に存在する又は保持される有効成分の少なくとも1種の細胞内浸透を刺激できる、以下の群:
a)ポリエチレンイミン;
b)炭素含有鎖長C10〜C18の1級、2級、3級又は4級脂肪族モノアミン、有利にはC10〜C18の脂肪鎖を1つ有するモノアミン、好ましくはC10〜C18の脂肪鎖を1つ有する1級又は4級モノアミン;
c)カチオン性ポリマー、特にカチオン性天然ポリマー又は任意にカチオン化された天然ポリマー又はカチオン性合成ポリマー:
より選択される物質又はその混合物を含み、かつ、
上記水和ラメラ相又はリポソームは、細胞内浸透に対して本質的に不活性であってこの浸透を視覚化できる蛍光化合物(例えばペンタフルオロベンゾイルアミノフルオレセイン(pentafluorobenzoylamino fluorescein))の少なくとも1種を任意に含む
ことを特徴とする水和ラメラ相又はリポソーム
を提供する。
【0015】
特定の実施形態によれば、
上記ラメラ相又はリポソームは、
上記任意にカチオン化された天然ポリマーが、キトサン、4級化蜂蜜ポリマー;植物タンパク質、特に小麦タンパク質又は4級化小麦タンパク質、米タンパク質又は4級化米タンパク質、大豆タンパク質又は4級化大豆タンパク質;コラーゲン又は4級化コラーゲン、ケラチン又は4級化ケラチン、カゼイン又は4級化カゼイン、セルロース又は4級化セルロース、ガール又は4級化ガールからなる群より選択される
ことを特徴とする。
上記の4級化ポリマーは一般に市販されており、4級化は一般に、元々のポリマーの化学基上に3級アミンをグラフトして得られる。
【0016】
別の有利な実施形態によれば、
上記ラメラ相又はリポソームは、
上記1級モノアミンが、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、オクタデシルアミンからなる群より選択されるものであるか、又は、C8〜C18の炭化水素鎖を有するコプラアミンの混合物等の1級アミンの混合物である
ことを特徴とする。
【0017】
ある特定の実施形態によれば、
上記ラメラ相又はリポソームはポリエチレンイミンを含む。
【0018】
別の特定の実施形態によれば、
上記ラメラ相又はリポソームは、例えば、トリグリセリド、極性リン脂質及び極性スフィンゴ脂質からなる群より選択される極性脂質等の、リポソーム膜を改変する物質の少なくとも1種を単独で又は混合物として脂質相中に含む。
【0019】
別の特定の実施形態によれば、
上記極性リン脂質は、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、ホスファチジルイノシトールから選択される1種又はこれらの混合物である。
【0020】
有利には、上記極性リン脂質は、セラミド、スフィンゴリン脂質、グリコスフィンゴ脂質から選択される1種又はこれらの混合物である。
【0021】
別の変形形態によれば、
上記ラメラ相又はリポソームは、極性脂質又は極性スフィンゴ脂質の少なくとも1種を、特にトリ塩型ヘミコハク酸ステロール等の有機酸ステロール塩として含む。
【0022】
本発明の別の有利な実施形態によれば、
上記ラメラ相又はリポソームは、大豆、ナタネ、ヒマワリ、ルピナス、ピーナッツ、ゴマ、マロー(marrow)、ヌカ油、ビッグシードファルスフラックス(bigseed falseflax)、キンセンカ、亜麻及び麻からなる群より選択される天然物から抽出したレシチンの少なくとも1種を単独で又は混合物として脂質相中に含む。
【0023】
別の変形形態によれば、
上記ラメラ相又はリポソームは、コレステロール又はヘミコハク酸コレステロール等のコレステロール誘導体を含む脂質相を膜強化剤として更に含んでいてもよい。
【0024】
本発明の別の有利な実施形態によれば、
上記ラメラ相又はリポソームは、界面活性物質又は界面活性剤の少なくとも1種を、上記ラメラ相又はリポソーム膜を流体化する物質として脂質相中に含んでいてもよい。
【0025】
本発明の別の特定の実施形態によれば、
上記ラメラ相又はリポソームは、細胞内浸透(特に皮膚又は毛髪の細胞内浸透)に対して本質的に不活性な蛍光物質を含む。一般的に好ましく用いられる上記蛍光物質は、特に上記ラメラ相又はリポソームを含む組成物の約0.01重量%の割合で、5−ペンタフルオロベンゾイルアミンフルオレセインを含む、又は、この物質から構成される。
【0026】
本発明の有利な実施形態によれば、
細胞内浸透を刺激する物質の濃度は、水和ラメラ相又はリポソームを含む組成物の0.05重量%〜25重量%、好ましくは上記組成物の0.5重量%〜2.5重量%である。
【0027】
本発明の更に別の有利な実施形態によれば、
上記脂肪族モノアミンはC10〜C13の炭素含有鎖を有する。
有利には、上記脂肪族モノアミンは、C10〜C18、好ましくはC10〜C13の脂肪族炭素含有鎖を1つ含む4級化した1級モノアミンである。
【0028】
本発明の更に別の有利な実施形態によれば、
有効成分の細胞内浸透を促進する上記4級化分子は、式R−N(R)型に4級化された4級化植物タンパク質(好ましくは大豆タンパク質)の溶液から選択される。
式中、Rは加水分解されている又はされていない、ヒドロキシアルキル化、特にヒドロキシプロピル化されている又はされていない植物タンパク質分子を記号化したものである;R及びRは独立してC1〜C6の炭化水素基、好ましくはメチル基又はエチル基であり、Rは炭素数10〜18のアルキルラジカル、好ましくは主として炭素数12のアルキル(ラウリル)ラジカルである。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、
上記水和ラメラ相又はリポソーム中に存在する又は保持される物質又は有効成分は、ビタミンE、フラボノイド、カロテノイド、ビタミンC又はそれらの誘導体等の抗ラジカル剤;カテキン、ヒドロキノン、アルブチン、フィチン酸、エラグ酸、ビタミンC又はそれらの誘導体等の脱色素剤;キサンチン誘導体の少なくとも1種等のスリミング剤、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、コレウス(Coleus)抽出物又はそれらの誘導体等の皮膚又は毛髪の着色剤からなる群より選択される。
【0030】
第二の態様によれば、本発明はまた、
細胞内浸透を刺激する物質を少なくとも1種含む水和ラメラ相又はリポソームを、任意的に化粧品、皮膚化粧品、医薬品又は皮膚医薬品に許容される賦形剤中に含む、化粧組成物又は皮膚化粧組成物;医薬組成物又は皮膚医薬組成物
に関する。
【0031】
上記賦形剤は当業者に公知のものであり、背景技術の記載中に示す従来技術文献2件の中に引用されている。
【0032】
他の賦形剤は、単なる説明であって本発明の範囲を何ら制限するものではない、以下に記載する化粧組成物、皮膚化粧組成物、医薬組成物又は皮膚医薬組成物の例に由来する。
【0033】
第三の態様によれば、本発明はまた、
上記の、又は、本発明に不可欠な部分である実施例に関連する以下の記載に由来する水和ラメラ相又はリポソームを含む組成物を皮膚又は毛髪上に局所的に塗布することを含む化粧処置の方法
に関する。
【0034】
第四の態様によれば、本発明はまた、
上記の、又は、本発明に不可欠な部分である実施例に由来する水和ラメラ相又はリポソームを含む組成物を、所望の治療処置を行うのに十分な量、皮膚又は毛髪上に局所的に塗布することを含む
ことを特徴とする治療処置の方法
を含む。
一般に、上記水和ラメラ相又はリポソームは、上記水和ラメラ相又はリポソーム中に存在する又は保持される、所望の治療処置に関連する効果を有する有効成分を少なくとも1種含む。
【0035】
化粧処置の範囲において、本発明は、抗皺処置、抗酸化処置、スリミング処置、皮膚再生処置、皮膚又は毛髪の着色処置からなる群より選択される化粧処置の実施を提供する。
【0036】
治療処置の範囲において、本発明は、治療する病状に応じて皮膚又は毛髪の適切な治療処置の実施を提供する。
【0037】
本発明はまた、
特に(特に、抗皺効果、抗酸化効果、スリミング効果、皮膚再生効果、皮膚又は毛髪の着色効果を有する)化粧組成物を製造するための、又は、医薬組成物を製造するための、水和ラメラ相又はリポソームの化粧剤としての使用
に関する。
いずれの組成物の場合においても、局所経路用であることが好ましい。
【0038】
第五の態様によれば、本発明はまた、
水和ラメラ相又はリポソームに保持される物質又は有効成分の細胞内浸透を刺激する能力を潜在的に有する物質の少なくとも1種のスクリーニング法であって、
a)上記水和ラメラ相又はリポソームを形成できる水脂混合物を調製すること;
b)この水脂混合物中への分散工程の前に、好ましくは細胞内浸透に対して本質的に不活性な、蛍光化合物を配合すること;
c)この水脂混合物中への分散工程の前又はその間に、潜在的に活性を有していて細胞内浸透を刺激できる物質から選択される試験物質、及び、基準物質を任意に配合すること;
d)上記段階b)又は段階c)のいずれかにおいて得られる水脂混合物から上記水和ラメラ相又はリポソームを形成する任意の適切な方法によって、上記水和ラメラ相又はリポソームを調製すること;
e)細胞内の蛍光を測定することによって、少なくとも蛍光化合物の細胞内浸透を検出すること;
を含む
ことを特徴とするスクリーニング法
にも関する。
【0039】
別の実施形態によれば、
蛍光化合物の細胞内浸透の結果を、(特にポリエチレンイミンを含む)基準物質について得られた細胞内浸透と比較する。
【0040】
更に別の実施形態によれば、
潜在的に活性を有する物質による細胞毒性及び/又はアポトーシス誘導を、特に繊維芽細胞の、好ましくは正常ヒト繊維芽細胞の培養細胞において測定する。
【0041】
更に別の実施形態によれば、
細胞内浸透に関して本質的に不活性な蛍光化合物は、上記繊維芽細胞の培養細胞中に自発的に浸透しない蛍光化合物である。
【0042】
更に別の実施形態によれば、
上記蛍光化合物は、ペンタフルオロベンゾイルアミノフルオレセインを含む、又は、この物質であり、
この物質は、細胞内浸透の評価に使用する水和ラメラ相又はリポソームを含む最終組成物に対して0.01重量%の濃度で使用される。
【0043】
上記方法の別の有利な実施形態によれば、
上記蛍光化合物はポリエチレンイミンの存在下で配合し、
上記蛍光化合物及びポリエチレンイミンの濃度は細胞毒性を有さない濃度である。
【0044】
本発明の更に別の有利な実施形態によれば、
上記細胞内浸透を潜在的に刺激できる物質は、上記に記載する、又は、本発明に不可欠な実施例を参照して以下に記載する、上記ラメラ相又はリポソーム中に配合した、アルキル鎖長C10〜C18、好ましくはC10〜C13の1級脂肪族モノアミン、又は、カチオン性ポリマー、特に任意にカチオン化された天然ポリマー若しくはカチオン性合成ポリマーから選択される。
【0045】
第六の態様によれば、本発明はまた、
上記に記載の、又は、本発明に不可欠な実施例に由来する水和ラメラ相又はリポソームの、化粧剤としての、又は、化粧組成物を製造するための、特に、抗皺効果、抗酸化効果、スリミング効果、皮膚再生効果、皮膚若しくは毛髪の着色効果のための使用
に関する。
【0046】
上述の態様のうちのいずれの範囲内においても、界面活性剤を有利に水脂混合物中に添加して、リポソームの膜を流体化できる。
【0047】
本発明には、例えば繊維芽細胞の培養細胞中に自発的に浸透せず、かつ、それ自身又はリポソーム中に封入した後で細胞毒性をほとんど誘導せず、例えば大豆レシチンに基づくリポソーム中に高率(約80%)で配合され、封入後も(放出及び蛍光が変化せず)安定であり、かつ、リポソームの不安定化を誘導しない蛍光性トレーサーの選択が必要である。選択したトレーサーは有利には、濃度0.01%、すなわち最終185μMの5−ペンタフルオロベンゾイルアミノフルオレセイン(PFB−F)である。
【0048】
有利には、上記リポソームを調製するための分散法は、剪断、超音波、押し出し、水和/脱水和(凍結乾燥)、凍結/解凍、逆相蒸発から選択されることが好ましい。
【0049】
リポソーム(ラメラ構造)の存在を、透過型電子顕微鏡を用いて証明する。リポソームの大きさを、透過型電子顕微鏡及びレーザー粒径分析によって測定する。
【0050】
有利には、リポソームの調製はpH4〜8、好ましくはpH6で行う。
【0051】
有利には、所望の有効成分の細胞内浸透は皮膚細胞中におけるものである。
【0052】
有利には、有効成分の皮膚細胞中への細胞内浸透は、主として繊維芽細胞、ケラチノサイト及びメラノサイトを標的とする。
【0053】
細胞内浸透を検出する手段は、定量及び視覚化による方法から選択されることが好ましく、分光蛍光計による蛍光強度の定量、及び、エピ蛍光(epifluorescence)光学顕微鏡による視覚化が好ましい。
【0054】
有利には、効果を有する分子とは、第一に、蛍光性トレーサーの細胞内浸透に対する刺激を、(カチオン性分子を全く含まない)ネガティブコントロールより10%を超えて多く、有利には(基準カチオン性分子(50μMで使用するポリエチレンイミン)を含む)ポジティブコントロールと同程度又はこれより多く、することができる分子とする。第二に、選択した分子は、好ましくは、細胞毒性及び/若しくはアポトーシス現象を誘導してはならないか、又は,細胞毒性及び/若しくはアポトーシス現象を誘導する場合でも、基準カチオン性分子(50μMで使用するポリエチレンイミン)のそれよりも小さいものでなければならない。
【0055】
有利には、細胞内浸透を刺激するために選択される活性分子は以下からなる群:
a)様々な炭素含有鎖長の1〜4級アミン、有利には、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、オクタデシルアミン、ベンジルジメチル(オクタデシル)塩化アンモニウム(又は塩化ステアリルアルコニウム(stearylalkonium chloride))、1級アミン(例えばC8〜C18のコプラアミン)の混合物、ポリクオタニウム16;
b)カチオン性ポリマー、有利には、キトサン、4級化蜂蜜タンパク質、植物タンパク質、特に小麦タンパク質、米タンパク質、大豆タンパク質又はこれらの4級化誘導体;4級化セルロース又はガール:
より選択される。
【0056】
有利には、使用するカチオン性物質の濃度は0.05%〜25%、好ましくは0.5〜2.5%、好ましくは1%である。
【0057】
有利には、細胞内浸透の刺激効果は、中鎖(C10〜C13)の炭素含有鎖が最も高く、長鎖(C15〜C18)は中程度であり、短鎖(C10未満)は小さい。
【0058】
有利には、細胞内浸透の刺激効果は、立体障害が誘導されるため、例えば同一炭素含有鎖を2本含む2級アミン(C10−NH−C10)と比較して、1級アミン(例えばC10−NH)が最も高い。
【0059】
有利には、ある特定の4級化ポリマーにより、そのポリマーそのものの性質に起因して、細胞内浸透の刺激率を良好にできる。例えば、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解(lauryldimonium hydroxypropyl hydrolysed)小麦タンパク質はラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質の約6分の1の効果しかない。
【0060】
有利には、選択したカチオン性分子は、使用する基準分子(50μMで使用するポリエチレンイミン)より、細胞毒性が低く、かつ/又は、アポトーシス誘導が少ない。
【0061】
有利には、細胞毒性の定量は、細胞のアルカリフォスファターゼ活性の評価による細胞生存率確認試験、及び、インターロイキン1α測定によって行う。アポトーシスはカスパーゼ−1の定量によって行う。
【0062】
有利には、上記画期的方法で調製したリポソームを使用すれば、上記の蛍光性トレーサーを化粧品、皮膚化粧品又は医薬品の有効成分で置き換えることにより、この有効成分の細胞内浸透の増加を誘導できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
当業者には、本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の実施例を参照した説明から明らかであろう。実施例は本発明に不可欠であり、また、実施例を含む本明細書全体の中に記載される従来技術に照らして新規の特徴は全て、その機能、概略共に本発明に不可欠である。上記より、実施例は全て、一般的な範囲を示す。また、実施例において、特に指示のない限り、割合は重量で、温度は摂氏で、圧力は大気圧で表す。
【0064】
図面の説明
添付する図1〜4は、本発明による、あらかじめ選択したトレーサー2種、それぞれPBF−F及びTRITCの細胞内浸透を視覚化したものである:
−図1は、10倍の対物レンズを用いて見た、PBF−Fを0.01%有するリポソームとともに24時間インキュベートした繊維芽細胞を表す。
−図2は、40倍の対物レンズを用いて見た、PBF−Fを0.01%有するリポソームとともに24時間インキュベートした繊維芽細胞を表す。
−図3は、100倍の対物レンズを用いて見た、TRITCを0.01%有するリポソームとともに24時間インキュベートした繊維芽細胞を表す。
−図4は、100倍の対物レンズを用いて見た、TRITCを0.01%及びPEIを3%有するリポソームとともに24時間インキュベートした繊維芽細胞を表す。
【実施例1】
【0065】
<蛍光性トレーサーを封入したリポソームの調製及び精製>
蛍光性トレーサーは、例えば放射能という点で安全なだけでなく、定量の際、及び、細胞培養モデルにおける細胞内浸透を視覚的に明らかにする際、非常に簡単に使用できるという利点がある。トレーサーを選抜するために、様々な水溶性又は脂溶性トレーサーを0.01%含むリポソームを調製し、正常ヒト繊維芽細胞上にこれを塗布する前に精製して未封入のトレーサーを除去する。同時に、蛍光性トレーサーを用いずにリポソームコントロールを調製する。
【0066】
a)リポソーム調製プロトコールの選択
リポソームを、pH5に調節したTrizma希釈バッファー(シグマ社、フランス)55mM−27mMNaCl中に濃度20%で溶解した大豆レシチンを用いて調製する。常温で磁気により30分間撹拌した後、混合物を10分間非常に激しくホモジナイズする。その後、リポソームをDF培地[仔ウシ血清10%、ペニシリン最終濃度100UI/mL、ゲンタマイシン最終濃度1μg/mL、アンフォテリシンB最終濃度1μg/mLを添加した、50/50(v/v)のDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium))/Ham F12 glutamax]中に希釈して、大豆レシチンの濃度を変える(0.5、1、2、3、4、5、7.5、10%)。
【0067】
腹部の生検(plasy)から抽出して96ウェルプレート中で培養した正常ヒト繊維芽細胞培養細胞上に、リポソーム懸濁液250μLを添加する。それぞれの濃度について、6つの異なるウェル上で試験する。pH7.4のリン酸バッファーで3回洗浄した後、細胞生存率を、パラニトロフェニルリン酸を用いて細胞内のアルカリフォスファターゼ活性を測定する試験によって評価する。培養ウェル中にリポソームを添加せずに作成したコントロールに対して、生細胞の割合を計算する(n=6)。この結果から、上限7.5%までのレシチン濃度において、細胞生存率が85%を超えることが分かる。レシチン10%においては、生存率が、許容される閾値75%を下回る。細胞生存率が90%を超えることを可能にする濃度である5%を選択する。
【0068】
b)蛍光性トレーサーを封入した5%大豆レシチンリポソームの調製
大豆レシチン0.5g、製造者の推奨によりあらかじめ可溶化した蛍光性トレーサー0.01%をディッシュ中に導入し、Trizmaバッファー10mL中に希釈する。常温で磁気により30分間撹拌した後、混合物を10分間非常に激しくホモジナイズしてリポソーム溶液を得る。この溶液中においてリポソームは平均的な大きさである。平均的な大きさとは、正確なホモジナイズ条件に応じて100〜800nmの範囲内である。
【0069】
リポソーム中に封入されていないトレーサーの画分をリポソーム中に封入されたトレーサーの画分から分けるために、精製する。精製は、リポソーム溶液を常温において円錐管中で10分間、1790gにて遠心分離して行う。その後プラグ(plug)を回収し、培地10mL中に可溶化する。リポソームネガティブコントロールを、上記プロトコールによって蛍光性トレーサーを用いずにつくる。試料を遮光状態で4℃において24時間保持する。様々な種類の蛍光性トレーサー、すなわちpH感受性トレーサー、カルシウム感受性トレーサー等を用いて、リポソームを26種作る。
【実施例2】
【0070】
<リポソーム中に封入でき、正常ヒト繊維芽細胞培養細胞中に自発的に浸透しない蛍光性トレーサーの選択>
トレーサーを選抜するために、実施例1に記載のプロトコールにより、多様な水溶性又は脂溶性トレーサーを様々な濃度で含むリポソームを調製して精製する(表1)。
【0071】
表1:トレーサーとしての蛍光性プローブの選択
【0072】
【表1】

【0073】
コントロール(フリーの蛍光性トレーサー)を、上記と同じ濃度で蛍光性トレーサーを希釈バッファー中に溶解してつくり、細胞毒性及び繊維芽細胞への自発的浸透を定量する。並行して、蛍光性トレーサーを全く含まないネガティブコントロールとしてのリポソームとの比較を行う。実際には、腹部の形成外科手術に由来する生検から繊維芽細胞を抽出し、DF培地中で増殖させる。DF培地とはすなわち、仔ウシ血清10%、ペニシリン最終濃度100UI/mL、ゲンタマイシン最終濃度1μg/mL、アンフォテリシンB最終濃度1μg/mLを添加した、50/50(v/v)のDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)/Ham F12 glutamaxである。
【0074】
まず、遠心分離により精製したリポソームをDF培地中に添加後、ボルテックスを用いてホモジナイズし、24ウェルプレート(Costar社、MW24)中で培養した繊維芽細胞上に1mL/ウェルの割合で注入する。同様の条件でコントロールをつくる。無処理コントロールもつくる。繊維芽細胞をリポソームの存在下で37℃において24時間インキュベートした後、pH7.4のリン酸バッファー中で3回洗浄する。そしてまず、蛍光を、分光蛍光計によりCytofluor4000(R)(ミリポア社)を用いて乾燥状態で測定する。次に、目的の分子についての細胞内の蛍光を、オリンパス社製倒立顕微鏡(reverse microscope)(IX70)により、対応する励起フィルターを用いて観察する(対物10倍、40倍及び100倍)。最後に、実施例1に記載するように、蛍光性トレーサーの細胞毒性を96ウェルプレート中で24時間インキュベートすることにより測定する。
【0075】
得られた結果から、試験した分子25種のうち、ペンタフルオロベンゾイルアミノフルオレセインPFB−F(P12925分子プローブ)及びテトラメチルローダミンイソチオシアネートTRITC(T−490分子プローブ)だけが、リポソーム中への封入、繊維芽細胞上への24時間の投与、及び、リポソーム内容物の浸透の定量の結果、興味深いポジティブな結果を示すことが分かった。
【0076】
添付する図1〜4は、あらかじめ選択したトレーサー2種、PBF−F及びTRITCを濃度0.01%でリポソーム中に封入して、繊維芽細胞とともに24時間インキュベートした後、その細胞内浸透を視覚化した写真である。
【0077】
表2:トレーサーのスクリーニングの結果
【0078】
【表2】

【0079】
TRITCは、標識は強いが(表1及び添付図1〜4)、わずかではあるが細胞毒性を有し、培地中にフリーの状態で添加した場合にわずかに浸透する。従って、PFB−Fの方がより良好なトレーサーであるようである。
【実施例3】
【0080】
<ポリエチレンイミンが存在する場合又は存在しない場合の、PFB−F(ペンタフルオロベンゾイルアミノフルオレセイン)又はTRITC(テトラメチルローダミンイソチオシアネート)存在下における細胞内浸透に関する研究>
大豆レシチンを5%、及び、PFB−F又はTRITCを0.01%含み、ポリエチレンイミン(PEI)(25kDa)を0.5%含む又は含まないリポソームを実施例1に記載するプロトコールによって調製し、実施例2に記載するように、24ウェルプレート中で培養したヒト繊維芽細胞上に添加して24時間インキュベートした後で、その細胞内浸透を調べる。
【0081】
得られた結果から、PEIを添加すると、PFB−Fリポソームの浸透が13.7倍刺激され、一方、TRITCリポソームの浸透が16分の1に減少することが分かる(添付図1〜4の写真を参照)。従って、トレーサーとして最後まで保留できるのは、リポソーム中に0.01%の濃度で封入したPFB−F(ペンタフルオロベンゾイルアミノフルオレセイン)である。
【実施例4】
【0082】
<ペンタフルオロベンゾイルアミノフルオレセイン(PFB−F)を含むリポソームの安定性に関する研究>
リポソームの安定性を、DF培地中への蛍光性トレーサーの放出を分光蛍光計を用いて調べることによって評価する。この研究は、pH、イオン強度、及び、界面活性剤の存在について行う。実際には、大豆レシチンを5%、PFB−Fを0.01%、及び、PEI(25kDa)を50μM含むリポソームを調製する。リポソーム溶液のpHを6、7、8、9に調節する;塩化ナトリウム(NaCl)の濃度を50、100、150、200mMに調節し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又はTriton X−100の濃度を0.1、0.5、1、3%に調節する。得られた結果を表3中に示す。
【0083】
表3:放出と、界面活性剤の存在、イオン強度及びpHとの関係に関する研究
【0084】
【表3】

【0085】
結果から、PEI(25kDa)を50μM含むリポソームが不安定になり始めるのは、NaClの濃度が200mMの時、Triton X−100又はSDSの濃度が0.5%の時、pHが7より高い時であることが示唆される。
【実施例5】
【0086】
<蛍光性トレーサーPFB−Bの封入率とポリエチレンイミン濃度>
リポソームを、実施例5に記載する方法に従い、PEI(25kDa)の濃度を0〜100μMの範囲で増加させて調製する。1790gで10分間遠心分離した後、上清を分光蛍光計によって定量する。封入率を初期濃度に対して計算する。結果を表4中に示す。
【0087】
表4:PFB−Fの封入率とPEI濃度
【0088】
【表4】

【0089】
封入率は、PEI濃度上昇の影響を受けないことが分かる。
【実施例6】
【0090】
<様々な濃度のポリエチレンイミンを含む蛍光性リポソームのスクリーニング条件の開発>
リポソームを、実施例1に記載するプロトコールに従い、ポリエチレンイミン(6N塩酸で中和したPEI(25kDa))の濃度を変えて、すなわち0、5、10、50μMの濃度で、かつ、PFB−Fの濃度は0.01%で調製する。24ウェルプレート中で単層培養した繊維芽細胞上にリポソームを添加して2、4、6、24及び48時間インキュベートし、pH7.4のリン酸バッファー中で3回洗浄した後、無処理の繊維芽細胞ブランクを基準として、かつ、同じ濃度のフリーのPFB−Fを基準として分光蛍光計によって定量する。結果を表5中に示す。
【0091】
表5:PFB−Fの細胞内浸透と、時間及びPEI濃度との関係に関する研究(各条件につきn=4)(任意の蛍光単位で表す)
【0092】
【表5】

【0093】
PEI濃度が50μMで、かつ、繊維芽細胞上で24時間以上インキュベートする場合に最も良い結果が得られる。この条件は、細胞内浸透を刺激する分子をスクリーニングするために使用することとする。上記結果は、フリーのプローブコントロール(p<0.05)に対して、濃度が5μM以上の全ての試験において統計的に有意である。
【実施例7】
【0094】
<ポリエチレンイミンを50μM含む蛍光性リポソームの、時間経過による細胞内浸透及び細胞毒性の調査>
実験は、PEI濃度0〜100μMについて実施例6に従って行う。蛍光の定量は実施例6に従って行う。細胞内浸透の刺激は、PEIを含まないリポソームに対する刺激率として表す。
【0095】
細胞生存率は、96ウェルプレート中(1ウェル当たりリポソーム溶液250μL)において、アルカリフォスファターゼ活性を細胞層について評価する試験(パラニトロフェニルリン酸を用いた試験、n=6)によって行う。細胞生存率確認試験の結果を、PEIを含まない蛍光性リポソームコントロールに対して、生細胞の割合として表す。IL1αの測定(Quantikineキット、R&D System社)を、24時間インキュベート後に採取した培地について行い、並行して、総タンパク質の測定(Bradford、シグマ社)も行う。結果を表6及び表7中に示す。
【0096】
表6:PFB−Fの細胞内浸透率及び細胞毒性と、時間及びPEI濃度(各条件につきn=4)
【0097】
【表6】

【0098】
表7:IL1α(pg)/総タンパク質(mg)の測定
【0099】
【表7】

【0100】
結果から、この実験においてPEIの存在下で、蛍光性トレーサーの浸透率を34倍まで上昇可能であることが分かる。しかしながら、PEI(25kDa)濃度が50μMの際に、無視できない細胞毒性現象が24時間後から観察され、48時間後には、半数を超える細胞が死んだことが観察されている。IL1αの合成については、濃度50μMにおける刺激が1.6倍であり、100μMにおいては2.6倍である。従ってこの分子は、顕著な炎症性ストレスを引き起こす。
【実施例8】
【0101】
<リポソーム中に封入した蛍光性トレーサーの細胞内浸透を刺激する分子のスクリーニング>
リポソームを、実施例5に記載するように、大豆レシチン5%、PFB−F0.01%、及び、塩酸でpH7に中和した試験分子1、0.1、0.01%を用いて、必要であればTrizma希釈バッファー中で、調製する。
【0102】
まず分子55種を3項目について試験し、50μMのPEI(25kDa)と比較する。細胞内浸透を、実施例2に記載するように、24ウェルプレートの中で培養した正常ヒト繊維芽細胞上で24時間インキュベートした後、定量する。細胞生存率を、96ウェルプレート中でリポソーム懸濁液200μLについて測定する。1%の濃度について得られた結果を表8中に示す。
【0103】
【表8−1】

【0104】
【表8−2】

【0105】
スクリーニングを行った結果、蛍光性トレーサーの細胞内浸透を10%を超えて刺激できる分子15種を選抜した。濃度1%において細胞生存率は多様である(37〜99%)。蛍光性トレーサーの視覚化により、浸透を32%を超えて刺激する分子の浸透が確認された。これらの分子を優先的に保留する。
【実施例9】
【0106】
<細胞内浸透の刺激に及ぼす分子構造の影響>
上述の実施例の記載に従って、アルキル鎖長3〜18の1級脂肪族モノアミンを含むリポソームの調製、及び、蛍光標識の細胞内浸透の定量を行う。結果を表9中に示す。
【0107】
表9:細胞内浸透の刺激と炭素含有鎖長
【0108】
【表9】

【0109】
長さの異なる脂肪鎖を有する脂肪族アミンをリポソーム膜中に封入して調べることにより、炭素含有鎖の長さが、レシチンを5%含むリポソーム中に封入したPFB−Fの細胞内浸透を刺激する活性に及ぼす影響が明らかになる。脂肪酸は鎖長の観点から大まかに、短鎖(炭素数8未満)、中鎖(炭素数10〜18)及び長鎖(炭素数18超)に分類される。この分類法を適用すると、本研究の範囲内で試験した1級脂肪族アミンは、中鎖である場合に、細胞内浸透を刺激する特性をリポソームに付与するようである。
【実施例10】
【0110】
<細胞内浸透に及ぼす立体障害の影響>
レシチン5%を含むリポソーム中に封入した蛍光性トレーサーの細胞内浸透を刺激できる分子の特徴を十分定義するために、本発明者らは、これらの分子の潜在的な刺激活性に及ぼす立体障害の影響を観察した。従って、本発明者らは、1級脂肪族モノアミンの存在下におけるリポソーム中に封入したPFB−Fの細胞内浸透について調べ、また、2級脂肪族モノアミンについても調べた。実施例8に記載するように、1級又は2級脂肪族アミンを含むリポソームの調製、及び、蛍光マーカーの細胞内浸透の定量を行う。結果を表10中に示す。ジアミンでは、マーカーの細胞内浸透がそれほど良好ではない。
【0111】
表10:細胞内浸透の刺激と炭素含有鎖の数
【0112】
【表10】

【実施例11】
【0113】
<細胞内浸透に及ぼす立体障害の影響>
特に実施例9又は10に記載するように進行するにつれ、炭素含有鎖の長さは、リポソーム内容物の細胞内浸透の刺激において介在する唯一の因子ではないことが分かる。実際、リポソーム中に封入される下記化1中の化学構造を比較すると、特定のR基によってC12の炭素含有鎖が干渉されることが分かる。
【0114】
【化1】

【0115】
4級化分子Y及びAは当業者に公知の物質である。封入された4級化分子(市販の分子)の立体障害は、レシチンを含むリポソームの細胞内浸透の刺激に関与している。次の種類の分子(表11)は、例えば、1%で使用して、細胞内浸透を上限+39%の範囲で刺激できる。その他、アーモンド、エンドウ豆、ジャガイモ又は藻類から抽出した分子の4級化加水分解物も使用できる。
【0116】
【表11】

【実施例12】
【0117】
<(細胞内浸透を刺激する)機能性分子の最適な濃度>
蛍光性トレーサーの細胞内浸透の刺激を、異なる濃度の機能性分子について試験し、最適な濃度を選抜する。実際には、Trizma希釈バッファー中に、大豆レシチン5%、PFB−F0.01%、及び、0.5〜2.5%4級化大豆溶液を溶解してリポソームを形成する。実施例2に記載するように、細胞内浸透及び細胞毒性を測定する。得られた結果を表12中に示す。
【0118】
表12:細胞内浸透を刺激する分子の濃度、刺激率、及び、細胞生存率に関する研究
【0119】
【表12】

【0120】
これより、所望の細胞内浸透は、機能性分子の濃度、及び、許容される最大の細胞毒性によって変わる。
【実施例13】
【0121】
<ポリエチレンイミンと選択した4級化大豆との炎症作用の比較>
インターロイキン1α合成の刺激を、50μMのPEIで機能化したリポソーム、及び、様々な濃度の4級化大豆溶液について比較する。実際には、Trizma希釈バッファー中に、大豆レシチン5%、PFB−F0.01%、及び、0.5〜2.5%4級化大豆溶液又はPEI50μMを溶解してリポソームを形成する。IL1α濃度を、実施例7に記載するようにキット(Quantikine、R&D System社)を用いて測定する。並行して、パラニトロフェニルリン酸(PNPP)を用いた試験により、ウェル当たりの細胞数を測定する。IL1α濃度の結果を、得られたPNPPの光学密度と比較する。得られた結果を表13中に示す。
【0122】
表13:インターロイキン1αの合成に及ぼす機能性分子(PEI及び4級化大豆)の影響
【0123】
【表13】

【0124】
得られた結果から、上記で選択した4級化大豆の溶液が、細胞毒性、及び、(基準分子PEIに関しては非常に小さい)炎症性ストレスを誘導することが分かる。
【実施例14】
【0125】
<ポリエチレンイミンと選択した4級化大豆とのアポトーシス効果の比較>
インターロイキン1αの合成の刺激を、50μMのPEIで機能化したリポソーム、及び、様々な濃度の4級化大豆溶液について比較する。実際には、Trizma希釈バッファー中に、大豆レシチン5%、PFB−F0.01%、及び、0.5〜2.5%4級化大豆溶液又はPEI50μMを溶解してリポソームを形成する。カスパーゼ−1の濃度をキット(Caspase−1 Colorimetric Assay、R&D System社)を用いて測定する。並行して、パラニトロフェニルリン酸(PNPP)を用いた試験により、ウェル当たりの細胞数を測定する。カスパーゼ−1の濃度の結果を、得られたPNPPの光学密度と比較する。得られた結果を表14中に示す。
【0126】
表14:カスパーゼ−1の濃度に及ぼす機能性分子の影響
【0127】
【表14】

【0128】
得られた結果から、上記で選択した4級化大豆の溶液が、細胞毒性、及び、(基準分子PEIに関しては非常に小さい)アポトーシスストレスを誘導することが分かる。
【実施例15】
【0129】
<透過型電子顕微鏡を用いた実施例14のリポソーム組成物の構造の観察>
4級化大豆溶液2%を用い、有効成分及び蛍光性トレーサーを添加せずに調製したリポソームを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した。リポソームのネガティブ染色を、重金属塩で多重ラメラ小胞の二分子層間を満たすことにより行う。フィリップス社CM120電子顕微鏡を倍率30〜60000で用いて観察する。この観察から、多重ラメラ構造に特徴的な同心円状の脂質層の存在が明らかである。観察されたリポソームの大きさの平均値は150〜250nmである。
【実施例16】
【0130】
<実施例11の4級化大豆溶液を用いることによる、抗ラジカル保護に及ぼす刺激>
リポソームを、大豆レシチン5%、天然ビタミンE0.2%、及び、実施例11の2%4級化大豆溶液(分子Y)を用いて調製する。実際には、天然ビタミンE0.4gを、大豆レシチン10g及び96%エタノール10mLに添加する。この溶液を、磁気により撹拌しながら、常温で遮光状態において1晩蒸発させる。エタノールを蒸発させた後、脱イオン水100mLを添加する。この混合物を完全に溶解するまで撹拌する。
【0131】
次に、リポソームを、レシチン−ビタミンE溶液5mL、4級化大豆溶液190μL(すなわち2%)及びTrizma希釈バッファー(55mM)4.80mLを加えて調製し、pH5に調節したNaCl(27mM)を磁気により撹拌しながら遮光状態で30分間かけて混合する。その後、この溶液を最高速度で10分間ホモジナイズし、変性リポソームを形成する。一方でこの同じ溶液をホモジナイズせずに調製し、フリーのビタミンEコントロールとする。
【0132】
天然ビタミンEを基盤とするリポソームを、細胞毒性を防ぐためにPEI(25kDa)10μMの存在下で、かつ、機能性分子なしで調製する。正常ヒト繊維芽細胞を24ウェルプレート中に播種し、コンフルエントになるまで培養する。カルシウム及びマグネシウムを含むpH7.4のリン酸バッファー(インビトロジェン社)で3回洗浄した後、それぞれの溶液を培地中に二倍希釈して少なくとも2時間インキュベートする(すなわちビタミンEの最終濃度0.1%)。ウェルに培地のみを注入してインキュベートしたものを以下でプローブコントロールとして用いる。カルシウム及びマグネシウムを含むpH7.4のリン酸バッファー中で3回洗浄してリポソーム及びフリーのビタミンEを除去した後、細胞層を、次のように調製したジヒドロローダミン123(Molecular Probes社)溶液200μL/ウェルの存在下でインキュベートする:1mMのジヒドロローダミン123溶液150μLをHBSSバッファー15mLに溶解して調製。プレートは490〜530nmにおいて蛍光を読み取り、912nmのUVBを0.8J/cmで照射して、蛍光を同じ波長で再度読み取る。結果を比率で表す。
A=照射/非照射(I/NI)。
B=(I/NIリポソーム)/(I/NIプローブコントロール)
C=リポソーム化ビタミンE/フリーのビタミンE
【0133】
使用した蛍光性プローブにより、細胞内反応性酸素媒体の存在を調べることができる。というのは、細胞内反応性酸素媒体は細胞膜を通って受動分散し、そこでカチオン性ローダミンに酸化され得るからである。蛍光性プローブは、例えば過酸化水素及びペルオキシ亜硝酸と能動的に反応する。得られた結果を表15中に示す。
【0134】
表15:改変リポソームによる抗ラジカル保護
【0135】
【表15】

【0136】
これらの結果から、4級化大豆タンパク質によって機能化されたリポソームにより、非機能性リポソームと比較してラジカルストレスに対する保護効果が20%を超えて大きくなるが、一方、基準分子PEIによって機能化されたリポソームについては保護効果が観察できないだけでなく、別のストレスが発生していることが示される。
【実施例17】
【0137】
<本発明の物質による脱色素作用に及ぼす刺激>
リポソームを次のプロトコールに従って調製した:大豆レシチン5%に、2%4級化大豆溶液又はPEI10μMを添加する、又は、添加しない。ここに、有効成分も共に封入する:防腐剤0.05%を含まないPhytolight(R)(コレティカ社、リヨン、フランス)(植物有効成分の混合物)、アルブチン0.05%及びカテキン(シグマ社)1mM。この分子を、フリーの状態で、又は、レシチン5%リポソーム中に封入して、又は、PEI10μMで若しくは4級化大豆2%で機能化したリポソーム中に封入して、24ウェルプレート中でプレコンフルエントまで培養した正常ヒトメラノサイト上に添加した。リポソーム化した又はしていない有効成分を、5%CO雰囲気下で37℃において66時間、MMK2培地(シグマ社)中でインキュベートする。カルシウム及びマグネシウムを含むリン酸バッファー(インビトロジェン社)で3回洗浄して、Triton X−100を0.5%含むリン酸バッファー中に抽出した後、チロシナーゼ活性を、L−DOPA及びMBTH(3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン)の存在下で測定することにより定量する。MBTH−o−キノン化合物の形成を、速度論的に測定した490nmにおける吸光度の値により明らかにする。チロシナーゼ活性を、酵素反応の傾斜(割合)によって表す。結果を表16中に示す。
【0138】
表16:リポソーム化又は非リポソーム化有効成分の脱色素効果(酵素反応速度で表す)
【0139】
【表16】

【0140】
これらの結果から、共に封入した有効成分は、機能化されると、in vitroにおける正常ヒトメラノサイトのチロシナーゼ活性の阻害を増大できることが分かる。4級化大豆による機能化は、PEIの添加によるものと比較して、植物抽出物の複合体についてはより効果が大きく、アルブチンについては同等であり、カテキンについてはわずかに効果が小さい。全ての場合において、活性は、非機能性リポソームと比較して少なくとも2.3倍大きい。
【実施例18】
【0141】
<本発明の物質の大きさを小さくする方法>
リポソームの大きさを、高圧ホモジナイザーを使用することによって小さくできる(作業圧力は1000バール超、好ましくは2000バール超、より好ましくは3000バール超)。この装置を用い、3000バールにおいて約50nmのリポソームが得られる。リポソームの大きさを、実施例15に記載するように、レーザー粒径測定器(ベックマンコールター社、N4 plus(サブミクロン粒子アナライザー)及び透過型電子顕微鏡を用いて調べた。
【実施例19】
【0142】
<経皮浸透後に本発明の物質によって保持される物質の浸透の立証:蛍光性トレーサー、ビタミンE又は遺伝物質についての実施例>
フリーの形態の、又は、実施例11中で選択した2%4級化大豆溶液を含む若しくは含まない実施例12に記載のリポソーム中に封入した形態の、蛍光性分子(0.01%PFP−F)の浸透を、ヒト皮膚上における経皮浸透によって定量した。分散速度を分光蛍光計によって3〜24時間測定した。また、更に24時間後の放出量を測定した。そして貯蔵量も測定した。1条件について、5つの試料を試験した。これから得られた表17中に示す結果から、ベクトル化(vectorised)していない形態又は4級化物質なしでベクトル化した形態と比較して、4級化大豆の存在下で調製したリポソームを使用すると、蛍光性トレーサーの分散、放出及び貯蔵を著しく刺激できることが分かる。
【0143】
【表17】

【0144】
フリーの形態の、又は、実施例11中で選択した2%4級化大豆溶液を含む若しくは含まない実施例12に記載のリポソーム中に封入した形態の、ビタミンE分子(0.5%)の浸透を、ヒト皮膚における経皮浸透によって定量した。分散速度を高速液体クロマトグラフィーによって5〜24時間測定した。また、更に24時間後の放出量を測定した。そして貯蔵量も測定した。得られた結果から、ベクトル化していない形態又は4級化物質なしでベクトル化した形態と比較して、4級化大豆の存在下で調製したリポソームを使用すると、ビタミンEの分散、放出及び貯蔵を著しく刺激できることが分かる。
【0145】
経皮浸透について、上記と同じ実験を、2%大豆溶液の存在下における実施例12に記載のリポソーム中に蛍光性遺伝物質(200mM)を封入して又は封入せずに実施した。エピ蛍光光学顕微鏡による皮膚断面の観察から、4級化大豆の存在下で調製したリポソームを使用すると、遺伝物質を真皮深層へ分散させることができることが分かる。
【0146】
二重鎖エラスチン19−20の蛍光性プローブの配列:
センス:5’−(FITC)AGCUGCUAAGGCUGGCGCUTT−3’
アンチセンス:5’−AGCGCCAGCCUUAGCAGCUTT−3’
【実施例20】
【0147】
<水中油エマルション型の化粧製剤又は医薬製剤における本発明の物質の使用>
「製剤20a」

水 qsp 100
ブチレングリコール 2
グリセリン 3
ジヒドロキシセチルリン酸ナトリウム 2
イソプロピルヒドロキシセチルエーテル

ステアリン酸グリコールSE 14
トリイソノナオイン(Triisononaoine) 5
ヤシ油脂肪酸オクチル 6

pH5.5に調整したブチレングリコール、 2
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン

本発明の物質 0.01〜10%
【0148】
「製剤20b」

水 qsp 100
ブチレングリコール 2
グリセリン 3
ポリアクリルアミド、イソパラフィン、 2.8
ラウレス−7

ブチレングリコール、 2
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン

フェノキシエタノール、
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン 0.5
ブチレングリコール

本発明の物質 0.01〜10%
【0149】
「製剤20c」

カルボマー 0.50
プロピレングリコール 3
グリセリン 5
水 qsp 100

ヤシ油脂肪酸オクチル 5
ビサボロール(Bisabolol) 0.30
ジメチコン 0.30

水酸化ナトリウム 1.60

フェノキシエタノール、 0.50
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

香料 0.30

本発明の物質 0.01〜10%
【実施例21】
【0150】
<油中水型の製剤における本発明の物質の使用>

PEG30−ジポリヒドロキシステアリン酸 3
カプリン酸トリグリセリド 3
オクタン酸セテアリル 4
アジピン酸ジブチル 3
ブドウ種子油 1.5
ホホバ油 1.5
フェノキシエタノール、 0.5
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

グリセリン 3
ブチレングリコール 3
硫酸マグネシウム 0.5
EDTA 0.05
水 qsp 100

シクロメチコン 1
ジメチコン 1

香料 0.3

本発明の物質 0.01〜10%
【実施例22】
【0151】
<三層エマルション型の製剤における本発明の物質の使用>
「第一のエマルション W1/O」

PEG30−ジポリヒドロキシステアリン酸 4
カプリン酸トリグリセリド 7.5
イソヘキサデカン 15
PPG−15ステアリルエーテル(Stearul ether) 7.5

水 65.3

フェノキシエタノール、 0.7
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン
【0152】
「第二のエマルション W1/O/W2」

第一のエマルション 60

ポロキサマー(Poloxamer)407 2
フェノキシエタノール、 0.3
メチルパラベン、
プロピルパラベン、
2−ブロモ−2ニトロプロパン−1,3ジオール
水 qsp100

カルボマー 15

トリエタノールアミン PH6.0〜6.5

本発明の物質 0.01〜10%
【実施例23】
【0153】
<口紅等の無水製品状の製剤における本発明の物質の使用>

ミネラルワックス 17.0
イソステアリン酸イソステアリル 31.5
プロピレングリコールジペラルゴン 2.6
イソステアリン酸プロピレングリコール 1.7
PEG−8ミツロウ 3.0
水添パーム核油脂肪酸グリセリド、 3.4
水添パーム油脂肪酸グリセリド
ラノリン油 3.4
ゴマ油 1.7
乳酸セチル 1.7
鉱物油、ラノリンアルコール 3.0

ヒマシ油 qsp 100
二酸化チタン 3.9
CI 15850:1 0.616
CI 45410:1 0.256
CI 19140:1 0.048
CI 77491 2.048

本発明の物質 0.01〜5%
【実施例24】
【0154】
<水性ゲル(アイライナー、スリミング剤等)の製剤における本発明の物質の使用>

水 qsp 100
カルボマー 0.5
ブチレングリコール 15
フェノキシエタノール、メチルパラベン、 0.5
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

本発明の物質 0.01〜10%
【実施例25】
【0155】
<本発明の物質を含む医薬製剤の調製>
「製剤25a:錠剤の調製」

賦形剤 1錠当たりのg
ラクトース 0.359
スクロース 0.240

本発明の物質 0.001〜0.1
【0156】
「製剤25b:軟膏の調製」

賦形剤
低密度ポリエチレン 5.5
流動パラフィン qsp100

本発明の物質 0.001〜0.1
【0157】
「製剤25c:注射用製剤の調製」

賦形剤
等張食塩水 5mL

本発明の物質 0.001〜0.1g
A相及びB相は別々のアンプル中に封入し、使用前に混合する。
【実施例26】
【0158】
<本発明の物質の化粧品としての許容性の評価>
(活性成分を封入していない)実施例15によって得られた化合物について、ウサギにおける皮膚及び眼刺激試験、ラットに1回経口投与した際に異常毒性がないことの確認試験、並びに、モルモットにおける感作性試験によって毒性試験を行った。
【0159】
<ウサギの皮膚における一次刺激の評価>
上記製剤を、ウサギ3匹の皮膚に、≪皮膚に対する急性刺激/腐食性≫の研究に関するOECD推奨の方法に従って、希釈せずに0.5mLずつ塗布した。上記物質を、1982年2月21日のフランス共和国の公式機関紙(「JORF」)で公表された、1982年2月1日の決議で定義された基準に従って分類した。上記試験結果から、実施例12によって得られた化合物を含む製剤は、皮膚に対して刺激がないと結論づけることができた。
【0160】
<ウサギにおける眼刺激試験>
上記製剤を純粋な状態で、≪眼に対する急性刺激/腐食性≫の研究に関して1987年2月24日にOECD指令書405番によって推奨されている方法に従い、ウサギ3匹の眼中に0.1mLを1回で滴下した。この試験の結果から、これらの製剤は、眼に対して刺激がないものと考えることができる。
【0161】
<ラットに1回経口投与した際に異常毒性がないことの確認試験>
上記製剤を、1987年2月24日のOECD指令書401番から着想して化粧品に適用したプロトコールに従って、雄ラット5匹及び雌ラット5匹に、5g/体重1kgの量を1回で経口投与した。LD0及びLD50は、5000mg/kgを超えることが分かった。従って、試験した製剤は、経口摂取が危険な製剤には分類されない。
【0162】
<モルモットにおける潜在的皮膚感作性の評価>
上記製剤に対して、OECD指令書406番に従ったプロトコールであるMagnusson−Kligmann極大試験を行った。これらの製剤は、皮膚との接触において感作性がないものとして分類される。
【0163】
<潜在的突然変異誘発性の評価>
プロトコールは、OECD指令書471番に従う(指令書92/69/EEC)。突然変異誘発試験を、≪ネズミチフス菌≫及び≪大腸菌≫について、エームスらの方法に従って実施した(Mutation Research、1975年、31、347−364)。5つの菌株を最小培地中で本発明の物質に、(変異原前駆体及び変異原を直接識別するために)外因性代謝活性システムを使用して又は使用せずに、暴露した。インキュベートした後、変異したコロニーを数え、コントロールのうちで自発的に変異したコロニーの数と比較した。本発明の物質は、指令書92/69/EECの意味において、突然変異活性を有していない。
【0164】
<健康な志願者に対する潜在的感作性の評価>
本発明の物質の潜在的アレルギー性を、志願者の群に対して評価する。プロトコールは、誘導過程及び誘引試験を含むMarzulli及びMaibachの方法(Contact Dermatitis、1976年、2、1−17)に従う。この試験は、18〜65歳で任意の肌質の、健康な女性及び/又は男性志願者100人の群に対して実施する。本発明の物質を20%に希釈して含む閉塞パッチを、各志願者の肩において実施した。パッチは皮膚に直接24時間接触させておき、2日毎に取り替えて3週間、合計9回実施した。各パッチを除去した後、刺激及び皮膚感作の臨床的徴候を評価した=誘導過程。
【0165】
2週間後、上記とは別に、本発明の物質を20%に希釈して含むパッチを、各志願者の皮膚に貼り、皮膚表面に直接24時間接触させた。刺激及び皮膚感作の臨床的徴候を、パッチを除去して24、48及び72時間後に評価した=「攻撃」過程。この研究の志願者100人中誰も、誘導過程及び「攻撃」過程のどちらにおいても刺激及び皮膚感作の臨床的徴候を示さなかった。上記で保留していた実験条件下において、20%に希釈した本発明の物質は潜在的なアレルギー性を有していない。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】10倍の対物レンズを用いて見た、PBFFを0.01%有するリポソームとともに24時間インキュベートした繊維芽細胞を表す。
【図2】40倍の対物レンズを用いて見た、PBFFを0.01%有するリポソームとともに24時間インキュベートした繊維芽細胞を表す。
【図3】100倍の対物レンズを用いて見た、TRITCを0.01%有するリポソームとともに24時間インキュベートした繊維芽細胞を表す。
【図4】100倍の対物レンズを用いて見た、TRITCを0.01%及びPEIを3%有するリポソームとともに24時間インキュベートした繊維芽細胞を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分の細胞内浸透を局所的な塗布によって刺激するためのリポソームであって、
少なくともその構造の一部に、
a)C10〜C13の脂肪鎖を1つ有する1級、2級、3級又は4級脂肪族モノアミン;
b)ステアリン酸アルコニウムクロライド又はココアルコニウムクロライド;並びに
c)式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質
式中、Rは植物タンパク質分子を記号化したものである;R及びRは独立してC1〜C6の炭化水素基であり、Rは炭素数10〜18のアルキル基である
からなる群より選択される物質又はその混合物を含む
ことを特徴とするリポソーム。
【請求項2】
抗皺効果、抗酸化効果、スリミング効果、皮膚再生効果、又は、皮膚又は毛髪の着色効果のための請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質のRは、小麦タンパク質、米タンパク質、及び大豆タンパク質からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項4】
前記1級モノアミンが、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、及び、トリデシルアミンからなる群より選択されるものであるか、又は、C10〜C13の炭化水素鎖を有するコプラアミンの混合物である
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項5】
リポソームは、リポソーム膜を改変する物質の少なくとも1種を脂質相中に含む
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項6】
前記リポソーム膜を改変する物質は、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、及び、ホスファチジルイノシトールから選択される1種又はこれらの混合物である
ことを特徴とする請求項5に記載のリポソーム。
【請求項7】
前記リポソーム膜を改変する物質は、セラミド、スフィンゴリン脂質、及び、グリコスフィンゴ脂質から選択される1種又はこれらの混合物である
ことを特徴とする請求項5に記載のリポソーム。
【請求項8】
前記リポソームは、大豆、ナタネ、ヒマワリ、ルピナス、ピーナッツ、ゴマ、マロー(marrow)、ヌカ油、ビッグシードファルスフラックス(bigseed falseflax)、キンセンカ、亜麻及び麻からなる群より選択される天然物から抽出したレシチンの少なくとも1種を単独で又は混合物として脂質相中に含む
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項9】
前記リポソームは、コレステロール又はヘミコハク酸コレステロールを膜強化剤として脂質相中に含む
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項10】
前記リポソームは、界面活性物質又は界面活性剤の少なくとも1種を、前記リポソーム膜を流体化する物質として脂質相中に含む
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項11】
前記リポソームは、前記リポソームを含む組成物の0.01重量%の割合で5−ペンタフルオロベンゾイルアミンフルオレセインを含む蛍光物質を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項12】
細胞内浸透を刺激する物質の濃度は、リポソームを含む組成物の0.05重量%〜25重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項13】
細胞内浸透を刺激する物質の濃度は、リポソームを含む組成物の0.5重量%〜2.5重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項14】
式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質が、加水分解、ヒドロキシアルキル化、または加水分解されかつヒドロキシアルキル化若しくはヒドロキシプロピル化されている
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項15】
前記式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質のRは炭素数10〜13のアルキル基である
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項16】
は炭素数12の基(ラウリル)である
ことを特徴とする請求項15に記載のリポソーム。
【請求項17】
式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質が、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質、又は、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質である
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項18】
前記リポソーム中に存在する又は保持される物質又は有効成分は、抗ラジカル剤、ビタミンE、フラボノイド、カロテノイド、ビタミンC、脱色素剤、カテキン、ヒドロキノン、アルブチン、フィチン酸、エラグ酸、スリミング剤、キサンチン、皮膚又は毛髪の着色剤、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、及びコレウス(Coleus)抽出物からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項19】
前記リポソームは蛍光化合物の少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
【請求項20】
前記蛍光化合物は、ペンタフルオロベンゾイルアミノフルオレセイン(pentafluorobenzoylamino fluorescein)である
ことを特徴とする請求項19に記載のリポソーム。
【請求項21】
a)リポソーム中に存在する又は保持される少なくとも1種の有効成分;
b)極性リン脂質、及び;
c)少なくともその構造の一部に、前記有効成分の細胞内浸透を刺激する物質又はその混合物であって、前記物質又はその混合物が式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質であるもの
式中、Rは米タンパク質又は大豆タンパク質から選択される植物タンパク質分子を記号化したものである;R及びRは独立してC1〜C6の炭化水素基であり、Rは炭素数10〜18のアルキル基である
を含むことを特徴とするリポソーム。
【請求項22】
前記式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質が、加水分解、ヒドロキシアルキル化、または加水分解されかつヒドロキシアルキル化若しくはヒドロキシプロピル化されている
ことを特徴とする請求項21に記載のリポソーム。
【請求項23】
前記式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質のRは、炭素数10〜13のアルキル基である
ことを特徴とする請求項21に記載のリポソーム。
【請求項24】
前記式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質のRは、炭素数12のアルキル基、ラウリル基である
ことを特徴とする請求項21に記載のリポソーム。
【請求項25】
式R−N(R)型に4級化された植物タンパク質が、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質、又は、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解大豆タンパク質である
ことを特徴とする請求項21に記載のリポソーム。
【請求項26】
請求項1又は21記載のリポソームを、化粧品に許容される賦形剤との混合物として含む
ことを特徴とする化粧組成物又は皮膚化粧組成物。
【請求項27】
細胞内浸透を刺激する物質の濃度は、最終組成物の0.05重量%〜25重量%である
ことを特徴とする請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
細胞内浸透を刺激する物質の濃度は、最終組成物の0.5重量%〜2.5重量%である
ことを特徴とする請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
抗皺効果、抗酸化効果、スリミング効果、皮膚再生効果、又は、皮膚又は毛髪の着色効果を有する、局所的に塗布する化粧組成物又は皮膚化粧組成物であって、
請求項1又は21記載のリポソームを含む
ことを特徴とする化粧組成物又は皮膚化粧組成物。
【請求項30】
請求項1又は21記載のリポソームを、医薬品に許容される賦形剤との混合物として含む
ことを特徴とする、局所的に塗布する医薬組成物又は皮膚医薬組成物。
【請求項31】
請求項1記載のリポソームに保持される物質又は有効成分の細胞内浸透を刺激する物質の少なくとも1種のスクリーニング法であって、
a)請求項1記載のリポソームを形成できる水脂混合物を調製すること;
b)この水脂混合物中への分散工程の前に、蛍光化合物を配合すること;
c)この水脂混合物中への分散工程の前又はその間に、細胞内浸透を刺激する活性についてスクリーニングされる試験物質、及び、基準物質を配合すること;
d)前記段階b)又は段階c)のいずれかにおいて得られる水脂混合物からリポソームを形成する方法によって、前記リポソームを調製すること;
e)細胞内の蛍光を測定することによって、少なくとも蛍光化合物の細胞内浸透を検出すること;
を含む
ことを特徴とするスクリーニング法。
【請求項32】
請求項21記載のリポソームに保持される物質又は有効成分の細胞内浸透を刺激する物質の少なくとも1種のスクリーニング法であって、
a)請求項21記載のリポソームを形成できる水脂混合物を調製すること;
b)この水脂混合物中への分散工程の前に、蛍光化合物を配合すること;
c)この水脂混合物中への分散工程の前又はその間に、細胞内浸透を刺激する活性についてスクリーニングされる試験物質、及び、基準物質を配合すること;
d)前記段階b)又は段階c)のいずれかにおいて得られる水脂混合物からリポソームを形成する方法によって、前記リポソームを調製すること;
e)細胞内の蛍光を測定することによって、少なくとも蛍光化合物の細胞内浸透を検出すること;
を含む
ことを特徴とするスクリーニング法。
【請求項33】
蛍光化合物の細胞内浸透の結果を、ポリエチレンイミンを含む基準物質について得られた細胞内浸透と比較する
ことを特徴とする請求項31または32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−108056(P2009−108056A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267866(P2008−267866)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【分割の表示】特願2004−370552(P2004−370552)の分割
【原出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(500226948)ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス (21)
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean−de−Dieu 69007 LYON, FRANCE
【Fターム(参考)】