説明

終点検出装置、プラズマ処理装置および終点検出方法

【課題】正確な終点検出を行うことができる終点検出装置および終点検出方法を提供する。
【解決手段】プラズマ処理を実行した際に発生した光を分光分析する分光分析部3と、前記分光分析部3から提供された複数の波長に対する発光強度に関する情報に基づいて主成分得点または残差を求める主成分演算部4と、前記求められた主成分得点または残差に基づいてプラズマ処理の終点を判定する終点判定部5とを備えた終点検出装置およびそれを用いた終点検出方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、終点検出装置、プラズマ処理装置および終点検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを利用したドライプロセス(以下、プラズマ処理と称する)は、半導体装置の製造、金属部品の表面硬化、プラスチック部品の表面活性化、無薬剤殺菌など、幅広い技術分野において活用されている。例えば、半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの製造に関しては、アッシング、エッチング、薄膜堆積あるいは表面改質などの各種の工程においてプラズマ処理が行われている。
ここで、プラズマ処理によりエッチング、薄膜堆積などを行うと処理容器の内部に反応生成物などが堆積物として堆積する。この様な堆積物が剥がれ落ちるとパーティクルが発生するので、製品の歩留まりが低下する要因となる。また、堆積物があると処理レートなどの処理特性が変動する要因ともなる。そのため、堆積物の量に応じて、あるいは定期的に、処理容器の内部に堆積した堆積物の除去(クリーニング)が行われる。そして、この様なクリーニングにおいてもプラズマ処理による堆積物の除去(いわゆるドライクリーニング)が行われている。プラズマ処理は、低コストで、高速であり、薬剤を用いないために環境汚染を低減できる点でも有利である。
【0003】
この様なプラズマ処理においては、適切な処理が行われるようにするためにプラズマ処理の終点を検出する技術が提案されている。例えば、エッチングにより除去される層の化学的組成が変化するとプラズマから放出される光のスペクトルが変化するので、この変化を発光分光分析法(OES;Optical Emission Spectroscopy)を用いて検知し、プラズマ処理の終点を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術のように終点検出のために1種類の波長(例えば、除去対象物に関する光の波長)における発光強度の変化量、変化率、変曲点などを判定指標とすれば、精密な終点検出ができなくなるおそれがある。また、各プラズマ処理装置間における発光強度の個別的な差の影響を排除することができないので、終点の検出誤差が大きくなるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−250812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、正確な終点検出を行うことができる終点検出装置、プラズマ処理装置および終点検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、プラズマ処理を実行した際に発生した光を分光分析する分光分析部と、前記分光分析部から提供された複数の波長に対する発光強度に関する情報に基づいて主成分得点または残差を求める主成分演算部と、前記求められた主成分得点または残差に基づいてプラズマ処理の終点を判定する終点判定部と、を備えたことを特徴とする終点検出装置が提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、処理容器と、前記処理容器内にプラズマを発生させるための電極と、プラズマ処理を実行した際に発生した光を分光分析する分光分析部と、前記分光分析部から提供された複数の波長に対する発光強度に関する情報に基づいて主成分得点または残差を求める主成分演算部と、前記求められた主成分得点または残差に基づいてプラズマ処理の終点を判定する終点判定部と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、プラズマ処理において複数の波長に対する発光強度を逐次求める手順と、前記発光強度に関する情報に基づいて主成分得点または残差を求める手順と、前記求められた主成分得点または残差に基づいてプラズマ処理の終点を判定する手順と、を備えたことを特徴とする終点検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、正確な終点検出を行うことができる終点検出装置、プラズマ処理装置および終点検出方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係るプラズマ処理装置を例示するための模式図。
【図2】光のスペクトルが変化する様子を例示するための模式図。
【図3】光のスペクトルが変化する様子を例示するための模式図。
【図4】主成分である主成分得点、残差の算出を例示するための模式図。
【図5】主成分である主成分得点、残差の算出を例示するための模式図。
【図6】残差に基づく終点検出モデルの構築を例示するための模式図。
【図7】残差に基づく終点検出の様子を例示するための模式図。
【図8】本実施の形態に係る終点検出方法について例示をするためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。
図1は、本実施の形態に係る終点検出装置を例示するための模式図である。
なお、図1は、本実施の形態に係る終点検出装置1が設けられるプラズマ処理装置40をいわゆる平行平板型の反応性イオンエッチング(RIE;Reactive Ion Etching)装置とした場合である。ただし、プラズマ処理装置は平行平板型の反応性イオンエッチング装置に限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0013】
まず、プラズマ処理装置40について例示をする。
図1に示すように、プラズマ処理装置40には、処理容器42、プラズマ発生部43、電源部44、減圧部50、ガス供給部53、制御部41などが設けられている。
処理容器42は、両端が閉塞された略円筒形状を呈し、減圧雰囲気が維持可能な気密構造となっている。
【0014】
処理容器42の内部にはプラズマPを発生させるプラズマ発生部43が設けられている。 プラズマ発生部43には、下部電極48、上部電極49が設けられている。
下部電極48は、処理容器42内のプラズマPを発生させる領域の下方に設けられている。下部電極48には、被処理物Wを保持するための図示しない保持部が設けられている。図示しない保持部は、例えば静電チャックなどとすることができる。そのため、下部電極48は、上面(載置面)に被処理物Wを載置、保持する載置部ともなる。
【0015】
上部電極49は、下部電極48に対向させるようにして設けられている。そして、下部電極48にはブロッキングコンデンサ46を介して電源45が接続され、上部電極49は接地されている。そのため、プラズマ発生部43は、プラズマPを発生させる領域に電磁エネルギーを供給することでプラズマPを発生させることができる。
【0016】
電源部44には、電源45、ブロッキングコンデンサ46が設けられている。
電源45は、100KHz〜100MHz程度の高周波電力を下部電極48に印加する。ブロッキングコンデンサ46は、プラズマPの中で発生し下部電極48に到達した電子の移動を阻止するために設けられている。
【0017】
処理容器42の底面には、圧力制御部(Auto Pressure Controller:APC)51を介してターボ分子ポンプ(TMP)などの減圧部50が接続されている。減圧部50は、処理容器42の内部を所定の圧力まで減圧する。圧力制御部51は、処理容器42の内圧を検出する図示しない真空計の出力に基づいて、処理容器42の内圧が所定の圧力となるように制御する。すなわち、処理容器42は、内部にプラズマPを発生させる領域を有し、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持できるようになっている。
【0018】
処理容器42の側壁上部には、流量制御部(Mass Flow Controller:MFC)52を介してガス供給部53が接続されている。そして、ガス供給部53から流量制御部52を介して処理容器42内のプラズマPを発生させる領域にガスG(例えば、エッチングガスやクリーニングガスなど)を供給することができるようになっている。また、制御部41により流量制御部52を制御することで、ガスGの供給量が調整できるようになっている。
【0019】
処理容器42の側壁上部には、窓54が設けられている。窓54は石英などの透明材料から形成され光が透過できるようになっている。なお、窓54を設ける位置は処理容器42の側壁上部に限定されるわけではなく適宜変更することができる。
制御部41は、減圧部50、ガス供給部53、電源45、圧力制御部51、流量制御部52などを制御してプラズマ処理を行う。また、後述する終点判定部5からの終点検出信号に基づいてプラズマ処理の終了動作を制御する。
【0020】
次に、本実施の形態に係る終点検出装置1について例示をする。
図1に示すように、終点検出装置1には、受光部2、分光分析部3、主成分演算部4、終点判定部5が設けられている。
受光部2は、窓54に面するようにして設けられている。また、受光部2と分光分析部3とは光ケーブルなどで光学的に接続されている。そのため、窓54を介して受光部2に入射した光を分光分析部3に伝送することができるようになっている。
【0021】
また、分光分析部3と主成分演算部4とが電気的に接続され、主成分演算部4と終点判定部5とが電気的に接続されている。
分光分析部3は、プラズマ処理を実行した際に発生した光を分光分析する。すなわち、分光分析部3は、受光部2から伝送されてきた光(処理容器42の内部で発生した光)を発光分光分析法(OES;Optical Emission Spectroscopy)を用いて分析する。また、発光分光分析法により求められた複数の波長に対する発光強度を電気信号に逐次変換し、これを主成分演算部4に提供する。
【0022】
主成分演算部4は、分光分析部3から提供された複数の波長に対する発光強度に関する情報に基づいて主成分得点PCまたは残差Qを求める。すなわち、主成分演算部4は、分光分析部3から提供された複数の波長に対する発光強度に関する情報と、対象となるプラズマ処理の終点における複数の波長に対する発光強度に関する情報と、に基づいて主成分得点PCまたは残差Qを求める。そして、求めた主成分得点PCまたは残差Qに関する情報を終点判定部5に提供する。なお、対象となるプラズマ処理の終点における複数の波長に対する発光強度に関する情報は、主成分演算部4に設けられた図示しない格納部に予め格納されているようにしてもよいし、外部から提供されるようにしてもよい。
終点判定部5は、主成分演算部4から提供された主成分得点PCまたは残差Qに関する情報に基づいてプラズマ処理の終点を判定する。
【0023】
ここで、終点判定部5において行われる終点の判定に関してさらに例示をする。
終点検出のために1種類の波長(例えば、除去対象物に関する光の波長)に対する発光強度の変化量、変化率、変曲点などを判定指標とすれば、精密な終点検出ができなくなるおそれがある。また、各処理装置間における発光強度の個別的な差の影響を排除することができないので、終点の検出誤差が大きくなるおそれもある。
そのため、終点判定部5においては、複数の波長に対する発光強度の変化を考慮して終点の判定を行うようにしている。
【0024】
以下に、一例として、2種類の波長(波長X1、波長X2)に対する発光強度の変化を考慮して終点の判定を行う場合を例示する。
図2は、光のスペクトルが変化する様子を例示するための模式図である。
なお、図2は、光のスペクトルにおける波長と発光強度との相関関係がほぼ一定のままスペクトルが変化していく場合である。
例えば、プラズマ処理の終点におけるスペクトルS1とプラズマ処理の開始時におけるスペクトルS2とが、図2(a)に示すもののようになる場合である。
このような場合、波長X1の発光強度と波長X2の発光強度との関係は図2(b)に示すもののようになる。この場合、スペクトルS1における波長X1の発光強度と波長X2の発光強度との関係を点P1に示し、スペクトルS2における波長X1の発光強度と波長X2の発光強度との関係を点P2に示している。
この様なものの場合には、原点と点P1とを通る線上に点P2がある。そして、プラズマ処理が進み終点に近づくにつれて、原点と点P1とを通る線上を点P2が点P1に向けて移動する。すなわち、図2(b)中に示す主成分得点PC2の値が主成分得点PC1の値に近づくように変化する。しかしながら、この様なものの場合には、後述する残差Qはほとんど生じない。この場合、主成分得点PCや残差Qは、主成分分析(PCA; Principal Component Analysis)により求めることができる。なお、主成分分析による主成分得点PCや残差Qの算出に関しては後述する。
【0025】
図3も、光のスペクトルが変化する様子を例示するための模式図である。
なお、図3は、光のスペクトルにおける波長と発光強度との相関関係が変動しながらスペクトルが変化していく場合である。
例えば、プラズマ処理の終点におけるスペクトルS1とプラズマ処理の開始時におけるスペクトルS3とが、図3(a)に示すもののようになる場合である。
このような場合、波長X1の発光強度と波長X2の発光強度との関係は図3(b)に示すもののようになる。この場合、スペクトルS1における波長X1の発光強度と波長X2の発光強度との関係を点P1に示し、スペクトルS3における波長X1の発光強度と波長X2の発光強度との関係を点P3に示している。
この様なものの場合には、原点と点P1とを通る線上に点P3がなく、残差Qが生じることになる。そして、プラズマ処理が進み終点に近づくにつれて、点P3が点P1に近づくように移動する。すなわち、図3(b)中に示す残差Qの値が小さくなるように変化する。
【0026】
以上に例示をしたように、複数の波長に対する発光強度の変化を考慮して終点の検出を行う場合には、主成分得点PC、残差Qのいずれかを判定指標とすることができる。そして、主成分得点PCの値(逐次求められた主成分得点PC’と予め求められた終点における主成分得点PC”との差)、残差Qの値が所定の範囲内となった時点をプラズマ処理における終点と判定するようにすることができる。この場合、一般的には、光のスペクトルにおける波長と発光強度との相関関係が変動しながらスペクトルが変化していく場合が多い。そのため、残差Qを判定指標とすることがより好ましい。
【0027】
次に、主成分分析による主成分得点PCの算出と残差Qの算出に関して例示をする。
主成分分析を行うことで、複数の波長に関する情報を1種類の総合的な判定指標である主成分得点PC、残差Qで表現することができるようになる。なお、主成分分析を行う際には、情報の損失を伴うが情報の損失を最小化するという条件の下で総合的な指標である主成分が決定されることになる。
【0028】
図4、図5は、主成分である主成分得点PC、残差Qの算出を例示するための模式図である。
なお、図4、図5は、4種類の波長(波長X1〜X4)に関する情報を用いて残差Qを求める場合である。
まず、図4に示すように、4種類の波長(波長X1〜X4)における発光強度の時間的変化を求める。
この際、各波長における測定を複数回実施するようにすることが好ましい。
ここで、堆積物や反応生成物に関する光の場合は、堆積物や反応生成物の分解量が処理の開始から増えていくので発光強度もそれにともなって増えていく。そして、処理が進むにつれて堆積物や反応生成物の量が減っていくので発光強度もそれにともなって減っていく。すなわち、図4中の波長X1〜X3のようになる。
一方、処理に用いるガス(例えば、エッチングガスやクリーニングガスなど)に関する光の場合は、処理の開始から発光強度が増えていく。すなわち、図4中の波長X4のように、処理が進んでも発光強度が減ずることなく増えていく。これは、処理が進むにつれて堆積物や反応生成物の量が少なくなるので、これらとの反応に消費され失われるガスの量が少なくなっていくためである。
【0029】
この様に、波長によっては処理が進むにつれて発光強度が減少するものや、増加するものがある。ここで、残差Qは処理の最終的な状態(終点)との差異を表す評価指標である。そのため、任意の時点の発光強度の増減にかかわらず最終的な状態(終点)に近づくにつれて、残差Qは減少していくことになる。また、終点における主成分得点PC”は処理の最終的な状態(終点)を表す評価指標である。そのため、任意の時点の発光強度の増減にかかわらず最終的な状態(終点)に近づくにつれて、逐次求められた主成分得点PC’と予め求められた終点における主成分得点PC”との差が減少していくことになる。
【0030】
この場合、堆積物や反応生成物に関する光のように処理が進むにつれて発光強度が減少していくもののみに基づいて主成分得点PCまたは残差Qを求め、終点を検出するようにすることもできる。しかしながら、処理に用いるガスに関する光のように処理が進むにつれて発光強度が増加していくものをも組み合わせるようにすれば、終点の検出精度を高めることができる。
【0031】
次に、図5(a)に示すように、各波長ごとに終点における発光強度を求める。
なお、各波長における発光強度の測定を複数回実施する場合には、図5(b)に示すように、求められた発光強度を平均して各波長ごとの終点における発光強度とする。
ここで、波長X1の終点における発光強度をa1、波長X2の終点における発光強度をa2、波長X3の終点における発光強度をa3、波長X4の終点における発光強度をa4とすると、終点における発光強度の情報Xは以下の(1)式により表すことができる。

X=(a1、a2、a3、a4) ・・・(1)
【0032】
次に、終点における主成分得点PC”を求める。
この場合、終点における主成分得点PC”は以下の(2)式により求めることができる。

PC”=a1・b1+a2・b2+a3・b3+a4・b4 ・・・(2)
【0033】
ここで、b1〜b4は、主成分分析において情報の損失が最小となるように決められた係数(結合係数)である。
【0034】
次に、波長X1の任意の時点における発光強度をa11、波長X2の任意の時点における発光強度をa12、波長X3の任意の時点における発光強度をa13、波長X4の任意の時点における発光強度をa14とすると、任意の時点における発光強度の情報X10は以下の(3)式により表すことができる。

X10=(a11、a12、a13、a14) ・・・(3)
【0035】
ここで、終点検出の判定指標として主成分得点PCを用いる場合には、任意の時点における主成分得点PC’を以下の(4)式により求める。次に、主成分得点PCは、以下の(5)式に示す、終点における主成分得点PC”と任意の時点の主成分得点PC’の差分により求める。この主成分得点PCが所定の範囲内となった時点を終点とすることができる。なお、所定の範囲は使用者により任意に設定することができる。例えば、良品製造時の主成分得点の3σなどを所定の範囲として設定する。

PC’=a11・b1+a12・b2+a13・b3+a14・b4 ・・・(4)

PC=│PC”−PC’│ ・・・(5)
【0036】
一方、終点検出の判定指標として残差Qを用いる場合には、任意の時点における発光強度の情報X10を主成分軸上に投影した情報X20を、以下の(6)式により求める。

X20=(PC’・b1+PC’・b2+PC’・b3+PC’・b4) ・・・(6)
【0037】
この場合、残差Qは以下の(7)式により求める。この残差Qの値が所定の範囲内となった時点を終点とすることができる。なお、所定の範囲は使用者により任意に設定することが出来る。例えば、良品製造時の残差の3σなどを所定の範囲として設定する。

Q=(X10−X20) ・・・(7)
【0038】
ここで、各波長における発光強度を逐次求めて各時点における残差Qを求めるようにすれば、残差Qに基づく終点検出モデルを構築することもできる。
図6は、残差に基づく終点検出モデルの構築を例示するための模式図である。
図6(a)〜図6(d)に示すように、各波長における発光強度の時間的変化を逐次求め、前述した手順により各時点における残差Qを求める。そして、各時点における残差Qに基づいて、図6(e)に示すような終点検出モデルを構築することができる。
【0039】
図7は、残差Qに基づく終点検出の様子を例示するための模式図である。
なお、図中のT1は、前述のようにして予め構築された終点検出モデルにおける終点である。この場合、終点T1は平均的な処理における終点である。
処理容器42の内部のクリーニングを行うような場合には、予め求められた終点検出モデルの終点T1に基づいてクリーニングを終了させることができる。その様にすれば、経験則により求められた終点に基づいてクリーニングを終了させる場合よりも適切なクリーニングを行うことができる。
【0040】
しかしながら、製品に直接関係するエッチングなどの場合にはさらに精密な終点の検出を行うことが好ましい。また、クリーニングを行うような場合であっても処理容器42の内部の状態などによっては終点が大きく変わるおそれもある。例えば、図7(a)〜図7(e)に示すように、終点T2が終点T1よりも短くなったり、終点T3が終点T1よりも長くなったりする場合がある。
この様な場合に、例えば、終点T1でクリーニングを終了させるものとすれば、終点T2の場合には過剰なクリーニングとなり、終点T3の場合にはクリーニング不足となる。
【0041】
そのため、本実施の形態においては、各波長における発光強度を逐次求めて(4)式により各時点における残差Qを求め、残差Qが所定の範囲内となった場合にはその時点を終点とするようにしている。
その様にすれば、実際の状況に応じた適切な時点においてプラズマ処理を終了させることができる。すなわち、正確な終点検出を行うことができる。この場合、各プラズマ処理装置間における発光強度の個別的な差の影響を排除することもできる。
【0042】
次に、本実施の形態に係る終点検出装置1の作用について例示をする。
なお、一例として、処理容器42の内部をクリーニングする場合について例示をする。 まず、処理容器42の内部が減圧部50により所定の圧力まで減圧される。この際、圧力制御部51により処理容器42の内部の圧力が調整される。
次に、ガス供給部53から流量制御部52を介して所定流量のガスGが処理容器42の内部のプラズマPを発生させる領域に供給される。供給されるガスGは、いわゆるクリーニングガス(例えば、酸素を含有したガス、Ar(アルゴン)などの不活性ガスなど)とすることができる。
【0043】
一方、電源部44より100KHz〜100MHz程度の高周波電力が下部電極48に印加される。すると、下部電極48と上部電極49とが平行平板電極を構成するため、電極間に放電が起こりプラズマPが発生する。発生したプラズマPによりガスGが励起、活性化されて中性活性種、イオン、電子などのプラズマ生成物が生成される。この生成されたプラズマ生成物により処理容器42の内部がクリーニングされる。すなわち、処理容器42の内部に堆積した堆積物にイオンや電子などが衝突することで堆積物の物理的な除去が行われる。また、堆積物と中性活性種とが反応することで堆積物の化学的な分解除去が行われる。
【0044】
クリーニングが開始されると、堆積物の成分、堆積物と中性活性種とが反応することで生成された反応生成物の成分、クリーニングガスの成分などに応じて複数の波長の光が放出される。放出された光は窓54を介して受光部2に入射し、受光部2に入射した光は光ケーブルなどを介して分光分析部3に伝送される。分光分析部3に伝送された光は分光分析され、複数の波長に対する発光強度が電気信号に変換される。変換された電気信号は主成分演算部4に伝送される。主成分演算部4においては、分光分析部3から提供された複数の波長に対する発光強度に関する情報と、対象となるプラズマ処理の終点における複数の波長に対する発光強度に関する情報と、に基づいて主成分得点PCまたは残差Qが求められる。求められた主成分得点PCまたは残差Qは終点判定部5に伝送され終点の判定が行われる。
【0045】
例えば、逐次求められた各波長における発光強度に基づいて、各時点における主成分得点PC’、残差Qが逐次求められ、逐次求められた主成分得点PC’と予め求められた終点における主成分得点PC”との差、または残差Qが所定の範囲内となった場合にはその時点を終点と判定する。終点判定部5により終点と判定された場合には、制御部41に向けて終点検出信号が出力される。
そして、制御部41に終点検出信号が入力された場合には、クリーニングの終了動作が行われクリーニングが終了する。すなわち、高周波電力の印加、ガスGの供給が停止され、処理容器42の内部が排気されることで残留物が排出される。その後、処理容器42の内部が大気圧状態に戻されてクリーニングが終了する。
【0046】
本実施の形態に係る終点検出装置1によれば、各波長における発光強度を逐次求めて各時点における残差Qを求め、残差Qが所定の範囲内となった場合にはその時点を終点とすることができる。また、各波長における発光強度を逐次求めて各時点における主成分得点PC’を求め、逐次求められた主成分得点PC’と予め求められた終点における主成分得点PC”との差が所定の範囲内となった場合にはその時点を終点とすることもできる。そのため、実際の状況に応じた適切な時点においてプラズマ処理を終了させることができる。すなわち、正確な終点検出を行うことができる。この場合、各プラズマ処理装置間における発光強度の個別的な差の影響を排除することもできる。
【0047】
次に、本実施の形態に係る終点検出方法について例示をする。
図8は、本実施の形態に係る終点検出方法について例示をするためのフローチャートである。
まず、対象となるプラズマ処理の終点における発光強度を予め求める。
すなわち、まず、複数の波長に対する発光強度の時間的変化を予め求める(ステップS10)。
発光強度は、例えば、発光分光分析法(OES;Optical Emission Spectroscopy)を用いて求めるようにすることができる。
次に、各波長ごとに終点における発光強度を求める(ステップS11)。
この場合、各波長における測定をステップS10において複数回実施し、求められた複数の発光強度をステップS11において平均して各波長ごとの終点における発光強度を求めるようにすることが好ましい。
次に、終点における主成分得点PC”を求める(ステップS12)。
【0048】
次に、プラズマ処理における終点を検出する。
すなわち、まず、プラズマ処理において複数の波長に対する発光強度を逐次求める(ステップS21)
次に、逐次求められた発光強度に関する情報に基づいて主成分得点PCまたは残差Qを求める(ステップS22)。
すなわち、予め求められた終点における発光強度、主成分得点PC”と、プラズマ処理において逐次求められた発光強度と、に基づいて各時点における主成分得点PC’、残差Qを求める。
なお、主成分得点PCを用いて終点検出を行う場合には、残差Qを求める手順を省略することができる。
【0049】
次に、求められた主成分得点PCまたは残差Qに基づいてプラズマ処理の終点を判定する(ステップS23)。
例えば、逐次求められた各時点における残差Qが所定の範囲内となった場合にはその時点を終点と判定するようにすることができる。また、逐次求められた各時点における主成分得点PC’と予め求められた終点における主成分得点PC”との差が所定の範囲内となった場合にはその時点を終点と判定するようにすることができる。
【0050】
本実施の形態に係る終点検出方法によれば、各波長における発光強度を逐次求めて各時点における残差Qを求め、残差Qが所定の範囲内となった場合にはその時点を終点とすることができる。また、各波長における発光強度を逐次求めて各時点における主成分得点PC’を求め、逐次求められた主成分得点PC’と予め求められた終点における主成分得点PC”との差が所定の範囲内となった場合にはその時点を終点とすることもできる。そのため、実際の状況に応じた適切な時点においてプラズマ処理を終了させることができる。すなわち、正確な終点検出を行うことができる。この場合、各プラズマ処理装置間における発光強度の個別的な差の影響を排除することもできる。
【0051】
次に、本実施の形態に係る終点検出プログラムについて例示をする。
本実施の形態に係る終点検出プログラムは、コンピュータに、前述した終点検出を実行させるものである。
一連の終点検出方法を実行させるために、本実施の形態に係る終点検出プログラムが、例えば、終点判定部5に設けられた図示しない格納部に格納される。終点検出プログラムは、例えば、図示しない記録媒体に格納された状態で終点判定部5に供給され、読み出されることで終点判定部5の図示しない格納部に格納される。なお、MES(Manufacturing Execution System)系LAN(Local Area Network)などを介して、終点判定部5の図示しない格納部に格納されるようにすることもできる。
【0052】
すなわち、終点判定部5の図示しない格納部には、以下の手順(1)〜(5)を実行するプログラムが格納される。
なお、主成分得点PCを用いて終点検出を行う場合には、(4)に示した残差Qを求める手順を省略することができる。
(1)予め求められた終点における発光強度を収集する手順。
(2)プラズマ処理において複数の波長に対する発光強度を逐次収集する手順。
(3)逐次収集された発光強度に関する情報に基づいて主成分得点PCまたは残差Qを求める手順。
【0053】
(4)求められた主成分得点PCまたは残差Qに基づいてプラズマ処理の終点を判定する手順。
【0054】
(5)終点検出信号を出力する手順。
【0055】
この場合、前述した順序に従って時系列的に実行されるようにしてもよいし、必ずしも時系列的に実行されなくとも並列的あるいは選別的に実行されるようにしてもよい。
また、本実施の形態に係る終点検出プログラムは、単一の演算手段により処理されるものであってもよいし、複数の演算手段によって分散処理されるものであってもよい。
なお、各手順の内容は前述したものと同様のため詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施の形態に係る終点検出プログラムによれば、各波長における発光強度を逐次求めて各時点における残差Qを求め、残差Qが所定の範囲内となった場合にはその時点を終点とすることができる。また、各波長における発光強度を逐次求めて各時点における主成分得点PC’を求め、逐次求められた主成分得点PC’と予め求められた終点における主成分得点PC”との差が所定の範囲内となった場合にはその時点を終点とすることもできる。そのため、実際の状況に応じた適切な時点においてプラズマ処理を終了させることができる。すなわち、正確な終点検出を行うことができる。この場合、各プラズマ処理装置間における発光強度の個別的な差の影響を排除することもできる。
【0057】
次に、本実施の形態に係る微細構造体の製造方法について例示をする。
微細構造体の製造方法としては、例えば、半導体装置の製造方法を例示することができる。ここで、半導体装置の製造工程には、成膜・レジスト塗布・露光・現像・エッチング・レジスト除去などにより基板(ウェーハ)表面にパターンを形成する工程、検査工程、洗浄工程、熱処理工程、不純物導入工程、拡散工程、平坦化工程などがある。そして、これらの工程においてプラズマ処理が広く用いられている。
そのため、プラズマ処理が用いられている工程において、前述した本実施の形態に係る終点検出装置1、終点検出方法、終点検出プログラムを用いてプラズマ処理の終了を行うようにすることができる。なお、前述した本実施の形態に係る終点検出装置1、終点検出方法、終点検出プログラム以外のものは、既知の各工程における技術を適用できるので、詳細な説明は省略する。
【0058】
また、一例として、本実施の形態に係る微細構造体の製造方法を半導体装置の製造方法により説明をしたが、これに限定されるわけではない。例えば、フラットパネルディスプレイや太陽電池などの電子デバイスの製造、位相シフトマスクや光学素子などの精密部品の製造、MES(Micro-Electro-Mechanical Systems)分野やマイクロ化学分野などにおける精密部品の製造などにおいてもプラズマ処理が広く用いられている。そのため、プラズマ処理が用いられる工程を含む微細構造体の製造に適用することができる。
【0059】
本実施の形態に係る微細構造体の製造方法によれば、実際の状況に応じた適切な時点においてプラズマ処理を終了させることができる。すなわち、正確な終点検出を行うことができる。この場合、各プラズマ処理装置間における発光強度の個別的な差の影響を排除することもできる。そのため、生産性や製品品質などの向上を図ることができる。
【0060】
以上、本実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、終点検出装置1が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0061】
また、前述の実施の形態では、主成分得点PCまたは残差Qのいずれか一方を判定指標としていたが、主成分得点PC、残差Qの両方を判定指標として、主成分得点PCの値および残差Qの値が両方とも所定の範囲内となった時点をプラズマ処理における終点と判定するようにすることができる。これにより、より正確にプラズマ処理における終点を判定することができる。
【0062】
また、プラズマ処理装置として平行平板型の反応性イオンエッチング装置を例示したがこれに限定されるわけではない。例えば、マイクロ波励起型のプラズマ処理装置など各種のプラズマ処理装置とすることができる。
また、プラズマ処理としてクリーニングを例示したがこれに限定されるわけではない。例えば、エッチング、アッシング、薄膜堆積(成膜)、表面改質などの各種のプラズマ処理においても発光分光分析法による終点検出が行われており、発光分光分析法による終点検出が行われる各種のプラズマ処理に適用することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0063】
1…終点検出装置、2…受光部、3…分光分析部、4…主成分演算部、5…終点判定部、40…プラズマ処理装置、41…制御部、42…処理容器、43…プラズマ発生部、44…電源部、50…減圧部、53…ガス供給部、54…窓、G…ガス、P…プラズマ、PC…主成分得点、Q…残差、S1〜S3…スペクトル、W…被処理物、X1〜X4…波長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理を実行した際に発生した光を分光分析する分光分析部と、
前記分光分析部から提供された複数の波長に対する発光強度に関する情報に基づいて主成分得点または残差を求める主成分演算部と、
前記求められた主成分得点または残差に基づいてプラズマ処理の終点を判定する終点判定部と、
を備えたことを特徴とする終点検出装置。
【請求項2】
前記終点判定部は、前記残差が所定の範囲内となった場合にはプラズマ処理の終点と判定すること、を特徴とする請求項1記載の終点検出装置。
【請求項3】
前記終点判定部は、前記主成分得点と、予め求められた終点における主成分得点との差が所定の範囲内となった場合にはプラズマ処理の終点と判定すること、を特徴とする請求項1記載の終点検出装置。
【請求項4】
処理容器と、
前記処理容器内にプラズマを発生させるための電極と、
プラズマ処理を実行した際に発生した光を分光分析する分光分析部と、
前記分光分析部から提供された複数の波長に対する発光強度に関する情報に基づいて主成分得点または残差を求める主成分演算部と、
前記求められた主成分得点または残差に基づいてプラズマ処理の終点を判定する終点判定部と、
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
プラズマ処理において複数の波長に対する発光強度を逐次求める手順と、
前記発光強度に関する情報に基づいて主成分得点または残差を求める手順と、
前記求められた主成分得点または残差に基づいてプラズマ処理の終点を判定する手順と、
を備えたことを特徴とする終点検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−199072(P2011−199072A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65220(P2010−65220)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】