説明

組成物、装置、および関連する方法

組成物には、第一のプローブ、第一のプローブに結合した第一のイニシエータ構成成分、第二のプローブ、および第二のプローブに結合した第二のイニシエータ構成成分が含まれる。第一のプローブおよび第二のプローブは、一つの分析対象物に結合することができ、そして第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近く存在する場合そして第一のプローブおよび第二のプローブが分析対象物に結合する場合に、イニシエータを形成することができる。関連するキット、装置、および方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願に対する相互参照
[0001] 本件出願は、2006年12月4日に出願され、その全体を参照として本件明細書により援用される“組成物、装置、および関連する方法”という発明の名称のUS仮特許出願No. 60/868,431の優先権および利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
技術分野
[0002] 本発明には、分析対象物を検出するための組成物に関する態様が含まれる。本発明には、分析対象物を検出するためのキットおよび装置に関する態様が含まれる。本発明には、分析対象物を検出する方法に関する態様が含まれる。
【0003】
関連分野の検討
[0003] 化学的および生物学的分析対象物の検出は、様々な用途(例えば、医薬研究、臨床診断、食品および飲料-品質モニタリング、水質浄化、土壌-汚染、水-汚染、および大気-汚染モニタリング)において必要とされ、または化学的または生物学的兵器の検出において必要とされる。
【0004】
[0004] 化学的分析対象物または生物学的分析対象物の1またはそれ以上のものを、分析対象物を特異的に認識することができる分子(プローブ)を使用して検出することができる。認識は、2つの分子間(例えば、酵素と基質、抗体と抗原など)の非常に特異的な相互作用を介して生じる可能性がある。認識反応の存在または非存在を、分析対象物の存在の有無の指標として適切な検出手段を使用して検出することができる。いくつかの用途において、分析対象物は、極低濃度で存在する可能性があり、そしてプローブと分析対象物との間での検出現象は、容易には検出することができない。分析対象物増幅技術を使用して、分析対象物の濃度を増加させることができるが、このことにより、分析対象物を正確に定量することが難しくなる可能性がある。いくつかの分析対象物検出技術において、プローブと分析対象物との間の認識は、部分的である可能性があり、または擬陽性が生じることにより完全には特異的ではない可能性がある。
【0005】
[0005] 現在利用可能な組成物、装置、および方法とは異なる特徴または特性を有する、分析対象物を検出するための組成物、装置、および方法を有することが好ましい。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 一態様において、組成物を提供する。この組成物には、第一のプローブ、第一のプローブに結合した第一のイニシエータ構成成分、第二のプローブ、および第二のプローブに結合した第二のイニシエータ構成成分が含まれる。第一のプローブおよび第二のプローブは、一つの分析対象物に対して結合することができ、そして第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近くに存在し、そして第一のプローブと第二のプローブとが分析対象物に結合する場合にイニシエータを形成することができる。
【0007】
[0007] 一態様において、キットを提供する。このキットには、分析対象物を検出することができる組成物が含まれる。この組成物には、第一のイニシエータ構成成分に結合した第一のプローブ、第二のイニシエータ構成成分に結合した第二のプローブ、およびポリマー前駆体が含まれる。
【0008】
[0008] 一態様において、物品を提供する。この物品には、基質の表面に配置した分析対象物を有する基質が含まれる。この基質は、分析対象物、第一のイニシエータ構成成分に結合した第一のプローブ、第二のイニシエータ構成成分に結合した第二のプローブ、および第一のイニシエータ構成成分と第二のイニシエータ構成成分とが互いに近くに存在する場合に形成されるイニシエータを介して、ポリマーと結合することができる。
【0009】
[0009] 一態様において、方法を提供する。この方法には、組成物を分析対象物と接触させて、複合体を形成させることが含まれる;ここで、この複合体は、互いに近くに存在する第一のイニシエータおよび第二のイニシエータを有する。この方法にはさらに、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分からイニシエータを形成すること、そして複合体を少なくとも一つのポリマー前駆体と接触させること、が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】[0010] 図1は、本発明の一態様に従う活性化可能イニシエータのスキーム図である。
【図2】[0011] 図2は、本発明の一態様に従う活性化可能イニシエータのスキーム図である。
【図3】[0012] 図3は、本発明の一態様に従う活性化可能イニシエータのスキーム図である。
【図4】[0013] 図4は、本発明の一態様に従う活性化可能イニシエータスキーム図である。
【図5】[0014] 図5は、本発明の一態様に従う組成物のスキーム図である。
【図6】[0015] 図6は、本発明の一態様に従う組成物のスキーム図である。
【図7】[0016] 図7は、本発明の一態様に従う組成物のスキーム図である。
【図8】[0017] 図8は、本発明の一態様に従う組成物のスキーム図である。
【図9】[0018] 図9は、本発明の一態様に従う組成物のスキーム図である。
【図10】[0019] 図10は、本発明の一態様に従う修飾ポリマー前駆体の合成についての反応スキームである。
【図11】[0020] 図11は、本発明の一態様に従うシグナルジェネレータ-修飾ポリマー前駆体の合成についての反応スキームである。
【図12】[0021] 図12は、本発明の一態様に従うシグナルジェネレータ-修飾ポリマー前駆体の合成についての反応スキームである。
【図13】[0022] 図13は、本発明の一態様に従う修飾ポリマー前駆体の合成についての反応スキームである。
【図14】[0023] 図14は、本発明の一態様に従うシグナルジェネレータ-修飾ポリマー前駆体の合成についての反応スキームである。
【図15】[0024] 図15は、本発明の一態様に従う修飾イニシエータの合成についての反応スキームである。
【図16】[0025] 図16は、本発明の一態様に従う修飾イニシエータの合成についての反応スキームである。
【図17】[0026] 図17は、ポリスチレンビーズ上に固定化したイニシエータの調製についての反応スキームである。
【図18】[0027] 図18は、実施例12において調製したスライドの蛍光強度のプロットである。
【図19】[0028] 図19は、実施例15において調製されたスライドの蛍光像を示す。
【図20】[0029] 図20は、実施例15において調製されたスライドの蛍光強度を示す。
【図21】[0030] 図21は、本発明の一態様に従う修飾ポリマー前駆体を使用した、ポリマーの合成についての反応スキームである。
【図22】[0031] 図22(a)および図22(b)は、実施例16において調製されたスライドの吸光度および蛍光強度を示す。
【図23】[0032] 図23(a)および図23(b)は、実施例17において調製されたスライドの吸光度および蛍光強度を示す。
【図24】[0033] 図24は、実施例20において調製されたスライドの蛍光像を示す。
【図25】[0034] 図25は、実施例20において調製されたスライドの蛍光強度を示す。
【図26】[0035] 図26は、実施例20において調製されたスライドの蛍光強度を示す。
【図27】[0036] 図27は、シグナルジェネレータ-結合DNAハイブリッドおよび表面開始ポリマーで官能化されたDNAハイブリッドのスキーム図である。
【図28】[0037] 図28は、実施例24において調製された組成物の蛍光強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0038] 本発明には、分析対象物を検出するための組成物に関連する態様が含まれる。本発明には、分析対象物を検出するためのキットおよび装置に関連する態様が含まれる。本発明には、分析対象物を検出するための方法に関連する態様が含まれる。
【0012】
[0039] 以下の明細書およびそれに従う節において、以下の意味を有する多数の用語を参照する。単数形の“a”、“an”および“the”には、文脈が明瞭に他のことを指定しなければ、複数の指示対象が含まれる。本明細書および特許請求の範囲を通して使用されるような近似化の用語は、それが関連する基本機能に変化をもたらさない許容範囲で変動し得るあらゆる定量表現を修飾するために適用してよい。従って、“約”のような用語によって修飾される数値は、特定される正確な数値へ限定してはならない。いくつかの事例において、近似化の用語は、数値を測定するための装置の正確性に対応することができる。同様に、“含まない”(free)を、ある用語と組み合わせて使用することができ、そしてそれには不十分な数、または微量が含まれてもよく、その場合も依然として修飾された用語が含まれないとみなされる。
【0013】
[0040] 本明細書において使用される場合、用語“may”および“may be”は、一組の環境中で発生する可能性;特定された特性、特徴または機能を持つ可能性を示すか;および/または修飾される動詞と関連した能力、機能、または可能性の1またはそれ以上のものを表現することにより別の動詞を修飾する。従って、“may”および“may be”を使用することは、修飾された用語が、ある環境下では修飾された用語がしばしば適切ではなく、可能性がなく、または適していない可能性があることを考慮しつつ、示された特徴、機能、または用途について、一見して適切であり、可能性があり、または適していることを示す。例えば、いくつかの環境において、事象または可能性を予想することができるが、一方別の環境においては、事象または可能性を生じることはできない〜この特徴が、用語“may”および“may be”により捉えられる。
【0014】
[0041] 本明細書において使用される場合、用語“ペプチド”は、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボキシル基との間でのペプチド結合により、他のアミノ酸に結合されたアミノ酸の直線状配列のことをいう。アミノ酸は、標準的アミノ酸であってもまたはその他のその他の非標準的アミノ酸であってもよい。標準的非極性(疎水性)アミノ酸のいくつかには、アラニン(Ala)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、バリン(Val)、プロリン(Pro)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、およびメチオニン(Met)が含まれる。極性中性アミノ酸には、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、システイン(Cys)、チロシン(Tyr)、アスパラギン(Asn)、およびグルタミン(Gln)が含まれる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、およびヒスチジン(His)が含まれる。負に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu)が含まれる。非標準的アミノ酸は、例えば翻訳後修飾により、体内で形成することができ、そのようなアミノ酸のいくつかの例は、セレノシステインおよびピロリジンである。ペプチドは、様々な長さのものであってもよく、中性(非荷電)型であっても、それらの塩などの形態であってもよい。ペプチドは、糖鎖付加、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まないものであっても、そのような修飾を含むものであってもよい。配列内のアミノ酸の置換は、アミノ酸が属するクラスの別の構成成分から選択することもできる。適切なペプチドには、アミノ酸鎖に結合する付加的置換(例えば、グリコシル単位、脂質、またはリン酸などの無機イオン)により、ならびに鎖の化学的修飾により、修飾されるペプチドが含まれていてもよい。このように、用語“ペプチド”またはその均等物は、参照される適切なアミノ酸配列を含むことが意図され、その機能性を破壊しない様な上述の修飾の対象とされることが意図される可能性がある。
【0015】
[0042] 本明細書において使用される場合、用語“炭水化物”は、ポリヒドロキシアルデヒドまたはケトン、または(1)糖アルコールをもたらすための還元;(2)糖酸をもたらすための酸化;(3)1またはそれ以上のヒドロキシル基の様々な化学基による置換(例えば、水素を置換してデオキシ糖をもたらすことができ、そしてアミノ基(NH2またはアセチル-NH)を置換してアミノ糖をもたらすことができる);(4)様々な部分、例えば、リン酸糖をもたらすリン酸、またはスルホ糖をもたらす硫酸によるヒドロキシル基の誘導化、または単糖、二糖、オリゴ糖、および多糖をもたらすヒドロキシル基のアルコールとの反応;を含むいくつかの手段のいずれかによりそれらから誘導することができる化合物のことをいう。炭水化物群には、単糖、二糖、またはオリゴ糖が含まれてもよい。適切な単糖には、グルコース、フコース、マンノースおよびガラクトースが含まれてもよいが、これらには限定されない。本明細書中でさらに定義するように、二糖は、加水分解された際に単糖の二つの分子が得られる化合物である。適切な二糖には、ラクトース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、マルツロース、およびスクロースが含まれてもよいが、これらには限定されない。適切なオリゴ糖には、ラフィノースおよびアカルボースが含まれてもよいが、これらには限定されない。同様に、追加の置換基により修飾された糖、例えば、メチルグリコシド、N-アセチル-グルコサミン、N-アセチル-ガラクトサミンおよびそれらの脱アセチル化型も含まれる。
【0016】
[0043] 本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、別の分子の特定の空間および極性の構造へ特異的に結合して、それによりそれと相補的であると定義される免疫グロブリンを意味する。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってよく、宿主の免疫化と血清の採取といった当該技術分野でよく知られている技術によって(ポリクローナル)、または持続的なハイブリッド細胞系を調製して分泌タンパク質を採取することによって(モノクローナル)、または天然抗体の特異的結合に必要とされるアミノ酸配列を少なくともコードするヌクレオチド配列またはその突然変異型バージョンをクローニングして発現させることによって、調製することができる。抗体には、完全な免疫グロブリンまたはその断片が含まれてよく、その免疫グロブリンには、様々なクラスおよびアイソタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3、IgMなど)が含まれてもよい。機能性の抗体断片には、全長抗体に類似したアフィニティーでの結合を保持することが可能な抗体の部分(例えば、Fab、FvおよびF(ab')2、またはFab')が含まれてよい。さらに、免疫グロブリンまたはその断片の凝集体、ポリマー、および共役体(conjugates)を、特定分子への結合アフィニティーが実質的に維持されている限りにおいて、適宜使用することができる。
【0017】
[0044] 本明細書において使用される場合、用語“発色団”は、2つの異なる分子軌道間のエネルギー差が可視スペクトル領域の範囲内に包含される一部の分子のことを言う。発色団は、可視光の特定の波長の吸収およびその他の波長の透過または反射により作用される、分子の色彩によってもよい。
【0018】
[0045] 本明細書において使用される場合、用語“フルオロフォア”は、特定の波長の光への曝露により励起されるときに、異なる波長で光を放出する化学的化合物を意味する。フルオロフォアは、その発光プロフィールまたは“色”によって記載される場合がある。。緑色フルオロフォア(例えばCy3、FITC、およびOregon Green)は、概して515〜540ナノメートルの範囲の波長でのその発光を特徴とすることができる。赤色のフルオロフォア(例えばテキサスレッド、Cy5、およびテトラメチルローダミン)は、概して590〜690ナノメートルの範囲の波長でのその発光を特徴とすることができる。
【0019】
[0046] 本発明には、一態様における組成物が含まれる。この組成物には、第一のプローブに結合した第一のイニシエータ構成成分を有する第一のプローブが含まれる。この組成物にはさらに、第二のプローブに結合した第二のイニシエータ構成成分を有する第二のプローブが含まれる。第一のプローブおよび第二のプローブは両方とも、一つの分析対象物に結合することができる。さらに、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近くに存在する場合そして第一のプローブおよび第二のプローブが分析対象物に結合する場合に、イニシエータを形成することができる。一態様において、この組成物を使用して、試料中において1またはそれ以上の分析対象物を検出することができる。
【0020】
[0047] 本明細書において使用される場合、用語プローブは、分析対象物に選択的に結合することができる化学的分子または生物学的分子のことを意味することができる。適切なプローブは、分析される試料と試料中での検出のために利用可能な分析対象物とに依存して選択することができる。一態様において、検出される分析対象物は、性質として本質的に化学的なものであってもよく、そして第一のプローブおよび第二のプローブの両方共には化学的分子が含まれていてもよい。一態様において、検出される分析対象物は、性質として本質的に生物学的なものであってもよく、そして第一のプローブと第二のプローブの両方共には生物学的分子が含まれていてもよい。一態様において、検出される分析対象物は、性質として本質的に化学的なものであってもよく、そして第一のプローブまたは第二のプローブの少なくとも一つには生物学的分子が含まれていてもよい。一態様において、検出される分析対象物は、性質として本質的に生物学的なものであってもよく、そして第一のプローブまたは第二のプローブの少なくとも一つに化学的分子が含まれていてもよい。
【0021】
[0048] 一態様において、1またはそれ以上のプローブには、目的とする分析対象物に対して結合することができる化学的分子が含まれてもよい。適切な化学的分子は、性質として有機物または無機物であってもよい。適切な有機化学的プローブには、目的とする標的と結合することができる有機リガンドが含まれてもよい。適切な有機リガンドには、ポルフィリン、アセチルアセトネート、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ピリジン、ビピリジン、テルピリジン、エチレンジアミン、オキサレートなどの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。適切な無機化学的プローブには、無機リガンド、金属錯体、金属塩、ナノ結晶、ナノ粒子、またはこれらの組合せが含まれていてもよい。適切な無機リガンドには、ハロゲン化物、アジド、アンモニア、トリフェニルホスフィン、チオシアネート、イソチオシアネートなどの1またはそれ以上のものが含まれる。
【0022】
[0049] 一態様において、1またはそれ以上のプローブには、目的とする分析対象物に結合することができる生物学的分子が含まれていてもよい。生物学的分子は、in vivoまたはin vitroの生物学的被検体から得られた分子のことをいうことができる。適切な生物学的分子には、天然型または修飾型のペプチド、タンパク質(例えば、抗体、アフィボディー(affibodies)、またはアプタマー)、核酸(例えば、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、またはアプタマー);多糖(例えば、レクチン類、糖類)、脂質、酵素、酵素基質または阻害剤、抗原、ハプテン、ビタミン等の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0023】
[0050] 本明細書中で上述したように、第一のプローブおよび第二のプローブは両方とも、一つの分析対象物に結合することができる。一態様において、第一のプローブおよび第二のプローブは、分析対象物の異なる部分を認識しそして結合することができる。例えば、分析対象物には、ポルフィリン-ベースの第一のプローブに結合することができる亜鉛カチオンが含まれていてもよく、そして分析対象物には第二のプローブと金属錯体を形成することができるEDTAリガンドがさらに含まれてもよい。同様に、分析対象物には核酸が含まれていてもよく、そして第一のプローブには核酸中の相補的な塩基配列に結合することができるオリゴヌクレオチド配列が含まれていてもよく、そして第二のプローブには核酸中の異なる塩基配列に結合することができる異なるオリゴヌクレオチド配列が含まれていてもよい。一態様において、第一のプローブおよび第二のプローブは、互いに異なる方法で分析対象物を認識しそして結合することができる。例えば、分析対象物にはタンパク質が含まれていてもよく、そして第一のプローブはタンパク質配列中の1またはそれ以上のアミノ酸に結合することができ、一方で第二のプローブはタンパク質の二次構造に結合することができる。
【0024】
[0051] 一態様において、第一のプローブおよび第二のプローブは、互いに同一であってもよく、そして分析対象物の異なる部分に結合することができるものであってもよい。例えば、分析対象物にはリガンドが含まれていてもよく、そして第一のプローブおよび第二のプローブには両方とも、分析対象物の異なる部分に結合することができる受容体が含まれていてもよい。あるいは、分析対象物には受容体が含まれていてもよく、そして第一のプローブおよび第二のプローブには両方とも、リガンドが含まれていてもよい。いくつかの態様において、分析対象物には抗原が含まれていてもよく、そして第一のプローブおよび第二のプローブには両方とも、抗体または抗体断片が含まれていてもよく、またはその逆であってもよい。いくつかの態様において、分析対象物には核酸が含まれていてもよく、そして第一のプローブおよび第二のプローブには両方とも、相補的な核酸が含まれていてもよい。いくつかの態様において、分析対象物、第一のプローブおよび第二のプローブには、互いに結合することができるタンパク質が含まれていてもよい。あるいは、一態様において、第一のプローブおよび第二のプローブは互いに異なっているものであってもよい。例えば、分析対象物には核酸が含まれていてもよく、そして第一のプローブには相補的な核酸が含まれていてもよく、その一方で第二のプローブには核酸結合タンパク質(例えば、zincフィンガー)が含まれていてもよい。
【0025】
[0052] プローブと分析対象物との間の結合は、非-共有結合形成または共有結合形成により行うことができる。共有結合形成は、(分析対象物およびプローブ中の)2またはそれ以上の原子のあいだで1またはそれ以上の電子を共有することから得られる分析対象物とプローブとの間での化学的結合形成(反応)のことをいうことができる。非-共有結合形成は、その性質として共有結合ではない、プローブと分析対象物との間での相互作用のことをいうことができる。非-共有結合相互作用の適切な例には、イオン性相互作用、疎水性結合、双極子-双極子相互作用、水素結合、Van der Waals相互作用、または高親和性相互作用(たとえば、ビオチン-アビジンまたはビオチン-ストレプトアビジン複合体形成)の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。いくつかの態様において、分析対象物およびプローブは、それらの表面上またはそれらの空洞中に、2つの間で特異的な認識を生じ、結果として非-共有結合をもたらす領域を有することができる。いくつかの態様において、プローブは、それらの分子形状の部分の相互的な適合に基いて、分析対象物に対して結合することができる。
【0026】
[0053] 一態様において、第一のプローブおよび第二のプローブの両方ともが、共有結合形成により分析対象物に対して結合することができる。一態様において、第一のプローブおよび第二のプローブの両方共が、非-共有結合形成により分析対象物に対して結合することができる。一態様において、第一のプローブは共有結合形成を介して分析対象物に対して結合することができ、そして第二のプローブは非-共有結合形成を介して分析対象物に対して結合することができる。一態様において、第一のプローブは非-共有結合形成を介して分析対象物に対して結合することができ、そして第二のプローブは共有結合形成を介して分析対象物に対して結合することができる。
【0027】
[0054] 第一のプローブおよび第二のプローブは、特異的な様式で分析対象物に対して結合することができる。本明細書において使用される場合、用語“特異的な結合”は、他の分子の実質的に低い認識と比較して、2つの異なる分子の一方の他方に対する特異的な認識のことをいうことができる。いくつかの態様において、プローブは、十分な特異性を伴って分析対象物に結合することができ、すなわち、プローブは、いずれか他の分子に対するよりも大きな親和性を伴って、分析対象物に対して結合することができる。いくつかの態様において、プローブは、他の分子に結合することができるが、しかしその結合は、非-特異的結合がバックグラウンドレベルまたはその近辺であるようなものであってもよい。いくつかの態様において、目的とする分析対象物に対するプローブの親和性は、他の分子に対するその親和性よりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、またはそれ以上である範囲であってもよい。いくつかの態様において、親和性の差が最大であるプローブを使用することができるが、それらは、分析対象物に対して最大の親和性のものでなくてもよい。いくつかの態様において、プローブ分子は、生理学的条件下にて、分析対象物に対して約105 M-1以上の固有の平衡結合定数(KA)を有する可能性がある。
【0028】
[0055] 一態様において、プローブは配列-特異的または構造-特異的なものであってもよく;ここでプローブにより認識されそして結合される分析対象物の配列または構造は、その分析対象物とは十分に独特のものであってもよい。
【0029】
[0056] 一態様において、(1または複数の)プローブは、構造-特異的であってもよく、そして分析対象物の一次構造、二次構造、または高次構造を認識することができる。分析対象物の一次構造には、その原子組成とそれらの原子を連結する化学結合(立体化学が含まれる)の詳細、例えば、タンパク質中のアミノ酸の線状配置の種類および性質が含まれてよい。分析対象物の二次構造は、生体分子のセグメントの全般的な三次元形態のことをいうことができ、例えば、タンパク質については、二次構造は、別個のアミノ酸が互いに近接することを生じ得る、ペプチド“骨格”鎖の様々なコンホメーションへの折り畳みのことをいうことができる。二次構造の適切な例には、αヘリックス、βプリーツシート、またはランダムコイルが含まれてよいが、これらには限定されない。分析対象物の三次構造は、その全体的な三次元構造であってもよい。分析対象物の四次構造は、1またはそれ以上の他の分析対象物または巨大分子とのその非共有結合性相互作用(タンパク質相互作用など)により形成される構造であってもよい。四次構造の例は、ヘモグロビンを形成する4つのグロビンタンパク質サブユニットによって形成される構造であってもよい。本発明の態様によるプローブは、上記構造のいずれかに対して特異的であってよい。
【0030】
[0057] 構造特異的なプローブの例には、タンパク質分析対象物へ結合することができるタンパク質特異的な分子が含まれていてもよい。適切なタンパク質特異的な分子の例には、抗体および抗体断片、核酸(例えば、タンパク質分析対象物を認識するアプタマー)、またはタンパク質基質(非触媒性)が含まれてよい。いくつかの態様において、分析対象物には抗原が含まれていてもよく、そして(1または複数の)プローブには抗体が含まれていてもよい。適切な抗体には、それらが抗原分析対象物に対して特異的に結合する限りにおいて、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、または抗体断片が含まれてよい。
【0031】
[0058] 一態様において、プローブは、目的とする分析対象物の領域に対して特異的であってもよい。例えば、プローブは、タンパク質修飾に対して特異的であってもよい。タンパク質修飾には、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、アセチル化などの翻訳後修飾が含まれていてもよい。
【0032】
[0059] 一態様において、(1または複数の)プローブは配列-特異的なものであってもよい。配列-特異的なプローブには、核酸が含まれていてもよく、そしてプローブは、分析対象物中のヌクレオチドまたはその誘導体の特定の線状配置を認識することができる。いくつかの態様において、線状配置には、プローブ中の対応する相補的なヌクレオチドへそれぞれ結合することができる、連続したヌクレオチドまたはその誘導体が含まれていてもよい。代わりの態様において、対応する相補的な残基をプローブ上に有していなくてもよい、1、2、またはそれ以上のヌクレオチドがあり得るので、この配列は、連続していなくてもよい。核酸ベースのプローブの適切な例には、DNAまたはRNAのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが含まれてよいが、これらには限定されない。いくつかの態様において、適切な核酸には、ジオキシゲニンdCTP、ビオチンdCTP、7-アザグアノシン、アジドチミジン、イノシン、またはウリジンなどの核酸類似体が含まれていてもよい。
【0033】
[0060] 一態様において、プローブと分析対象物の両方共に核酸が含まれていてもよい。一態様において、核酸ベースのプローブは、核酸分析対象物とワトソン-クリック結合を形成することができる。別の態様において、核酸プローブは、核酸分析対象物とフーグスティーン結合を形成して、それにより三重鎖を形成することができる。フーグスティーン結合によって結合する核酸プローブは、核酸分析対象物の主溝に入ることができ、そこに位置する塩基とハイブリダイズすることができる。上記のプローブの適切な例には、核酸の副溝および主溝を認識して結合する分子(例えば、ある形態の抗生物質)が含まれてよい。特定の態様において、核酸プローブは、核酸分析対象物とワトソン・クリック結合とフーグスティーン結合の両方の結合を形成することができる(例えば、ビスPNAプローブは、核酸に対してワトソン・クリック結合とフーグスティーン結合の両方の結合が可能である)。
【0034】
[0061] 核酸プローブの長さは、結合の特異性を決定する場合もある。プローブと核酸分析対象物の間の単一ミスマッチのエネルギーコストは、より長い配列よりもより短い配列で相対的に高い場合がある。いくつかの態様において、より長いプローブの方がミスマッチに対してより修正可能であり、条件に応じて核酸へ結合し続けることができるので、より小さい核酸プローブのハイブリダイゼーションは、より長い核酸プローブのハイブリダイゼーションより特異的であることができる。特定の態様において、より短いプローブは、所定の温度および塩濃度で、より低い結合安定性を示すことができる。いくつかの態様において、核酸プローブは、約4ヌクレオチド〜約12ヌクレオチド、約12ヌクレオチド〜約25ヌクレオチド、約25ヌクレオチド〜約50ヌクレオチド、約50ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド、約100ヌクレオチド〜約250ヌクレオチド、約250ヌクレオチド〜約500ヌクレオチド、または約500ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチドの範囲の長さを有することができる。いくつかの態様において、核酸プローブは、約1000ヌクレオチドより大きな範囲の長さを有していてもよい。核酸プローブの長さに関わらず、プローブのすべてのヌクレオチド残基を、核酸分析対象物中の相補的なヌクレオチドへハイブリダイズしなくてもよい。例えば、プローブには、長さ50ヌクレオチド残基が含まれてもよく、そしてそのヌクレオチド残基の25個のみが核酸分析対象物へハイブリダイズすることができる。いくつかの態様において、ハイブリダイズすることができるヌクレオチド残基は、互いと連続していてもよい。核酸プローブは、一本鎖であってもよく、そして二次構造が含まれていてもよい。
【0035】
[0062] (1または複数の)プローブの種類と分析対象物に関わらず、(1または複数の)プローブと分析対象物との間の結合特異性は、結合条件に依存する場合もある(例えば、相補的な核酸の場合にはハイブリダイゼーションの条件)。適切な結合条件は、pH、温度、プローブ濃度、または塩濃度の1以上の調節により実現することができる。
【0036】
[0063] 一態様において、第一のプローブまたは第二のプローブの少なくとも一方は、1またはそれ以上の媒介性(intermediatory)プローブの組合せを介して、分析対象物に結合することができる。プローブの組合せは、より高い親和性を提供し、または特定の態様において、シグナルの増幅を提供することができる。従って、一態様において、組成物には、第一のプローブ、第二のプローブ、または両方を用いてサンドイッチを形成するために使用することができる追加のプローブが含まれていてもよい。一態様において、第一のプローブまたは第二のプローブの少なくとも一方は、対応する一次プローブに結合することができ、それが次に分析対象物に結合することができる。この場合、第一のプローブ(第一のイニシエータ構成成分に結合する)または第二のプローブ(第二のイニシエータ構成成分に結合する)は、次いで、二次プローブということができる。一態様において、第一のプローブまたは第二のプローブの少なくとも一方は、対応する二次プローブに結合することができ、それが続いて対応する一次プローブに結合することができ、それが分析対象物に結合することができる。この場合の第一のプローブまたは第二のプローブは、次に、三次プローブということができる。
【0037】
[0064] プローブの組合せの適切な例には、一次抗体-二次抗体、相補的な核酸、または他のリガンド-受容体ペア(ビオチン-ストレプトアビジンなど)が含まれてもよい。適切なプローブペアのいくつかの具体的な例には、c-mycエピトープを伴う組換え発現タンパク質へのマウス抗myc;His-Tagエピトープを伴う組換えタンパク質へのマウス抗HisG、エピトープ-タグを伴う組換えタンパク質へのマウス抗xpress、ヤギIgG一次分子に対するウサギ抗ヤギ、核酸に対する相補的な核酸配列;チオレドキシン融合タンパク質に対するマウス抗チオ、融合タンパク質に対するウサギ抗GFP、α-D-ガラクトースに対するジャカリン;および、炭水化物-結合タンパク質、糖類、ニッケル連結(couple)マトリクス、またはヘパリンへのメリビオース;が含まれてよい。
【0038】
[0065] いくつかの態様において、一次抗体と二次抗体の組合せを第一のプローブまたは第二のプローブとして使用することができる。一次抗体は分析対象物の特異的領域へ結合することができ、そして二次抗体は一次抗体へ結合することができる。二次抗体は一次抗体への結合前にイニシエータに対して付着することができ、またはより後の工程で、イニシエータに対して結合することができる。代わりの態様において、一次抗体と特異的結合リガンド-受容体のペア(ビオチン-ストレプトアビジンなど)を使用することができる。一次抗体をこのペアの一方のメンバー(例えば、ビオチン)へ付着させることができ、他のメンバー(例えば、第一のプローブまたは第二のプローブとしてのストレプトアビジン)をイニシエータと結合させることができる。いくつかの態様において、いくつかの二次抗体が一次抗体のエピトープに対して結合することができる場合に、初期シグナル増幅を得ることができる。
【0039】
[0066] さらなるシグナル増幅を、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分からイニシエータを形成し、そしてこのイニシエータを使用して重合反応を開始することにより得ることができる。上述したように、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、イニシエータ構成成分が互いに近傍に存在することができる場合に、例えば、第一のプローブおよび第二のプローブが分析対象物に結合する場合に、イニシエータを形成することができる。イニシエータは、重合反応を開始することができる1またはそれ以上の分子のことをいうことができる。一態様において、重合反応のタイプに依存して、イニシエータには単一の分子が含まれていてもよい。一態様において、重合反応のタイプに依存して、イニシエータには重合反応の開始を一緒にもたらすことができる分子の組合せが含まれていてもよい。
【0040】
[0067] 一態様において、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近傍に存在しない場合に、独立して不活性であってもよい。不活性なイニシエータ構成成分は、本明細書において使用される場合、重合反応を開始することができない可能性がある化学的部分のことをいうことができる。一態様において、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近傍に存在する場合にイニシエータを形成することができる。一態様において、(2またはそれ以上のイニシエータ分子が組み合わされてイニシエータを形成する場合)互いに近傍に存在する場合、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、イニシエータ分子の一方を形成することができる。一態様において、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近傍に存在する場合に反応しまたは相互作用して、活性イニシエータを形成することができる化学部分を形成することができる。例えば、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、金属と結合することができて、その他のイニシエータ性分子とは独立してまたは組合わさって重合反応を開始することができる金属-リガンド触媒を形成することができる、リガンドを形成することができる。
【0041】
[0068] 一態様において、第一のイニシエータ構成成分または第二のイニシエータ構成成分の一方にはブロック化イニシエータが含まれていてもよく、そして他方のイニシエータ構成成分をブロック化イニシエータを非ブロック化するかまたは活性化するように提供することができる。ブロック化イニシエータは、本明細書において使用される場合、そのイニシエータ能力を阻害することができる保護的官能基を含むことができるイニシエータ性分子のことをいうことができる。一態様において、第一のイニシエータ構成成分には、イニシエータ特性を妨害することができる保護的官能基が含まれていてもよい。第二のイニシエータ構成成分は、第一のイニシエータ構成成分の近傍に存在する場合、保護的官能基を修飾するかまたは除去することにより、第一のイニシエータ構成成分を脱ブロック化することができる。保護的官能基の修飾または除去により、結果として、独立してまたは他のイニシエータ分子と組み合わせて、重合反応を開始することができる活性イニシエータ分子を得ることができる。
【0042】
[0069] 図1は、互いに近傍に存在する場合に、金属触媒を形成する2種類のイニシエータ構成成分の例を示す。図2は、カリウムカチオンと接触させることにより活性化することができる、不活性イニシエータの例を示す。一態様において、第一のイニシエータ構成成分には不活性イニシエータが含まれていてもよく、そして第二のイニシエータ構成成分にはカリウムカチオン供給源が含まれていてもよい。図3は、ニトロ還元酵素と接触させることにより活性化することができる、不活性イニシエータの例を示す。一態様において、第一のイニシエータ構成成分には不活性イニシエータが含まれていてもよく、そして第二のイニシエータ構成成分にはニトロ還元酵素が含まれていてもよい。図4は、酵素および脱カルボキシル化反応との接触により活性化することができる、ブロック化イニシエータの例を示す。一態様において、第一のイニシエータ構成成分にはブロック化イニシエータが含まれていてもよく、そして第二のイニシエータ構成成分には酵素が含まれていてもよい。
【0043】
[0070] 一態様において、プローブおよびイニシエータ構成成分は、互いに直接(すなわちリンカーなしに)結合することができる。一態様において、プローブおよびイニシエータ構成成分を、リンカーを介して互いへ連結させることができる。リンカーには、非共有結合形成または共有結合形成により形成される、連結性構造または配列の形態が含まれていてもよい。非共有結合性相互作用には、疎水性相互作用、イオン性相互作用、水素-結合相互作用、高親和性相互作用(例えば、ビオチン-アビジンまたはビオチン-ストレプトアビジン複合体)、またはその他の親和性相互作用が含まれていてもよいが、これらには限定されない。結合の性質は、いずれかの部分の有効性を実質的に減じないようなものであることができる(例えば、結合機構はプローブのイニシエータ構成成分効率またはプローブの分析対象物-結合能に影響を与えない)。
【0044】
[0071] 一態様において、イニシエータ構成成分には、プローブに対して結合することができる官能基が含まれていてもよい。対応して、第一のプローブまたは第二のプローブの少なくとも一方には、イニシエータ構成成分における官能基と反応することができる相補的な官能基が含まれてもよい。官能基の組合せの適切な例には、アミンエステルとアミンまたはアニリン;アシルアジドとアミンまたはアニリン;ハロゲン化アシルとアミン、アニリン、アルコール、またはフェノール;アシルニトリルとアルコールまたはフェノール;アルデヒドとアミンアミンまたはアニリン;ハロゲン化アルキルとアミン、アニリン、アルコール、フェノール、またはチオール;アルキルスルホネートとチオール、アルコール、またはフェノール;無水物とアルコール、フェノール、アミンまたはアニリン;ハロゲン化アリールとチオール;アジリジンとチオールまたはチオエーテル;カルボン酸とアミン、アニリン、アルコール、またはハロゲン化アルキル;ジアゾアルカンとカルボン酸;エポキシドとチオール;ハロアセトアミドとチオール;ハロトリアジンとアミン、アニリン、またはフェノール;ヒドラジンとアルデヒドまたはケトン;ヒドロキシアミンとアルデヒドまたはケトン;イミドエステルとアミンまたはアニリン;イソシアネートとアミンまたはアニリン;そしてイソチオシアネートとアミンまたはアニリン、が含まれてもよいが、これらには限定されない。上述した官能基ペアの一つにおける官能基にはイニシエータ構成成分が存在していてもよく、そして対応する官能基はプローブ中に存在することができる。例えば、イニシエータ構成成分にはカルボン酸が含まれていてもよく、そしてプローブにはアミン、アニリン、アルコールまたはハロゲン化アシルが含まれていてもよく、または含まれなくてもよい。イニシエータ構成成分とプローブとの間の抱合化は、この場合には、アミド結合またはエステル結合の形成により行うことができる。一態様において、イニシエータ構成成分とプローブとの間の結合は、リガンド-受容体ペア、例えば、ビオチン-ストレプトアビジン、を使用して行うことができる。プローブはビオチンに結合することができ、イニシエータ構成成分はストレプトアビジンに結合することができ、そしてプローブ-イニシエータ構成成分の結合はビオチン-ストレプトアビジンペア形成によりもたらすことができる。
【0045】
[0072] 適切な官能基を、既存のイニシエータ構成成分を修飾するかまたは新規なイニシエータ構成成分を合成するかにより、イニシエータ構成成分中に含ませることができる。一態様において、第一のイニシエータ構成成分または第二のイニシエータ構成成分の少なくとも一方には、修飾されたATRPイニシエータ構成成分が含まれていてもよい。一態様において、第一のイニシエータ構成成分または第二のイニシエータ構成成分の少なくとも一方には、修飾されたROMPイニシエータ構成成分が含まれていてもよい。
【0046】
[0073] 一態様において、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分から形成されたイニシエータは、段階的成長重合反応または付加重合反応を開始することができる。一態様において、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分から形成されるイニシエータは、フリーラジカル重合反応、アニオン重合反応、カチオン重合反応、配位重合、開環重合、メタセシス重合、縮合重合、またはこれらの2以上のものの組合せを開始することができる。
【0047】
[0074] イニシエータを、イニシエーションの機構および重合反応の型により、さらに特徴づけることができる。一態様において、イニシエータは、調節された重合反応を開始することができる。本明細書において使用される場合、調節された重合反応は、生成されるポリマーの分子量および多分散性インデックスの調節を可能にすることができる重合反応のことをいう。一態様において、調節された重合反応には、以下の特徴の1つまたはそれ以上が含まれる:時間の関数としての重合の程度の線形依存性;数-平均分子量(Mn)の重合の程度に対する線形依存性;ポリマー前駆体対イニシエータ比または多分散性インデックス(PDI)を約2.0未満の範囲で変化させることによるポリマーの分子量の調節;鎖増加反応と比較してわずかな鎖切断反応;より多くのポリマー前駆体の添加の際に、重合を継続する能力を有するポリマーへのポリマー前駆体の完全な変換;連続的なポリマー前駆体付加によりブロックコポリマーを作成する能力;または鎖-末端官能化ポリマーを高収率で生成する能力。
【0048】
[0075] 一態様において、調節された重合反応の型には、以下の1またはそれ以上のものが含まれてもよい:原子移動ラジカル重合(ATRP)、基移動重合(GTP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)、可逆的付加-開裂移動(RAFT)、または開環メタセシス重合(ROMP)。一態様において、調節された重合反応の型には、以下の1またはそれ以上のものが含まれていてもよい:交換連鎖移動(DT)、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、非環式ジエンメタセシス重合(ADMET)、または安定なフリーラジカル(SFR)が関連するその他の重合反応。
【0049】
[0076] 一態様において、イニシエータは、原子移動ラジカル重合(ATRP)型を開始することができる。一態様において、イニシエータは、開環メタセシス重合(ROMP)型を開始することができる。一態様において、イニシエータは、基移動重合(GTP)型を開始することができる。一態様において、イニシエータは、ニトロキシド-媒介重合型(NMP)を開始することができる。一態様において、イニシエータは、可逆性付加断片化連鎖移動重合型(RAFT)を開始することができる。
【0050】
[0077] 一態様において、イニシエータには、例えば、フリーラジカル重合において使用されるパーオキシドなどのイニシエータ分子が含まれていてもよい。一態様において、イニシエータには、イニシエータ性分子および触媒、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP)において使用するハロゲン化アルキルとハロゲン化銅-ビピリジン-ベースの触媒、が含まれてもよい。一態様において、イニシエータには、触媒、例えば開環メタセシス重合(ROMP)において使用する金属アルキリデン触媒、が含まれてもよい。一態様において、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近傍に存在する場合、フリーラジカルイニシエータを形成することができる。一態様において、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近傍に存在する場合、ハロゲン化アルキルを形成することができ、それを触媒と組み合わせて使用して、ATRPイニシエータを提供することができる。一態様において、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近傍に存在する場合、金属-リガンド錯対を形成することができ、それによりROMPイニシエータを提供することができる。一態様において、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近傍に存在する場合、金属と組み合わせて使用されてROMPイニシエータを提供することができる、リガンドを形成することができる。
【0051】
[0078] 本発明のために適切なイニシエータの型は、重合のためのメカニズム、使用されるポリマー前駆体の型、所望される分子量、溶媒系および反応条件を含む、重合反応の詳細に依存する可能性がある。いくつかの態様において、イニシエータは、フリーラジカル機構、例えば、ATRP、NMP、DT、RAFTまたは安定なフリーラジカルが関与する関連する機構、による重合のためのイニシエータであってもよい。フリーラジカル重合のための適切なイニシエータには、フリーラジカルを作製することができる試薬または試薬の組合せが含まれてもよい。いくつかの態様において、イニシエータは、イオン性機構、例えばカチオン重合またはアニオン重合、による重合のためのイニシエータであってもよい。いくつかの態様において、イニシエータは、オレフィンメタセシス、例えばROMPまたはADMET、のための金属-アルキリデン触媒を作製するための試薬であってもよい。
【0052】
[0079] 一態様において、イニシエータには、フリーラジカルイニシエータが含まれてもよい。フリーラジカル重合プロセスのためのイニシエータラジカルは、いずれかの適切な方法、例えば(1または複数の)適切な化合物の熱誘導性の均一切断(パーオキシド化合物、パーオキシエステル化合物、またはアゾ化合物などの熱イニシエータ)、モノマーからの自発性生成(例えば、スチレン)、レドックスイニシエータシステム、光化学イニシエータシステム、または電子線、X-線またはγ-線等の高エネルギー照射に対して反応性のシステム、により生成することができる。熱イニシエータは、重合温度での適切な半減期を有するように選択することができる。これらのイニシエータには、以下の化合物の1またはそれ以上のものが含まれていてもよい:2,2'-アゾbis(イソブチロニトリル)(“AIBN”)、2,2'-アゾbis(2-シアノ-2-ブタン)、ジメチル2,2' 20アゾbisジメチルイソブチレート、4,4'-アゾbis(4-シアノペンタン酸)、1,1'アゾbis(シアノヘキサンカルボニトリル)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2'-アゾbis[2-メチル-N(1,1)-bis(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2'-アゾbis[2-メチル-Nヒドロキシエチル)]-プロピオンアミド、2,2'-アゾbis(N,N'-ジメチレンイソブチラミジン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾbis(2-アミドプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾbis(N,N'ジメチレンイソブチラミド)、2,2'-アゾbis(2-メチル-N-[1,1-bis(ヒドロキシメチル)-2ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)、2,2'-アゾbis(2-メチル-N-[1,1-bis(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド)、2,2'-[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'アゾbis(イソブチラミド)二水和物、2,2'-アゾbis(2,2,4-トリメチルペンタン)、2,2'-アゾbis(2メチルプロパン)、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-アミルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、all-イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジクミル-パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、カリウムパーオキシジスルフェート、アンモニウムパーオキシジスルフェート、次亜硝酸ジ-t-ブチル、または次亜硝酸ジクミル。光化学イニシエータの適切な例には、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルホスフィンオキシド、および光-レドックスシステムが含まれてもよい。レドックスイニシエータの適切な例には、オキシダント(例えば、カリウムパーオキシジスルフェート、水素パーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド)、または還元剤(例えば鉄(II)、チタニウム(III)、カリウムチオスルファイト、重亜硫酸カリウム)、またはこれらの組合せが含まれていてもよい。
【0053】
[0080] 一態様において、イニシエータには、ATRPイニシエータが含まれてもよい。ATRPイニシエータには、ハロゲン化アルキルおよび遷移金属錯体(金属リガンド錯体)の組合せが含まれていてもよい。遷移金属錯体は、イニシエータおよび固定的なポリマー鎖とともにレドックスサイクルに関与することができるが、しかしポリマー鎖との直接的な炭素-金属結合は形成することができない。遷移金属錯体は、Cu(I)/Cu(II)、Fe(II)/Fe(III);Ru(II)/Ru(III)、Cr(II)/Cr(III);Mo(0)/Mo(I);Mo(II)/Mo(III);W(II)/W(III);Rh(III)/Rh(IV);Co(I)/Co(II)、Re(II)/Re(III);Ni(0)/Ni(I);Mn(III)/Mn(IV);V(II)/V(III);Zn(I)/Zn(II);Au(I)/Au(II);およびAg(I)/Ag(II)からなる群から選択することができる。リガンドの適切な例には、ビピリジン、アルキル-置換ビピリジン誘導体、アルキルピリジンイミン(例えばN-(プロピル)-2 25ピリジルメタンイミン)、トリアミン、テトラアミン(例えばN,N,N',N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミンおよびtris(2-(ジメチルアミノ)エチル(アミン))が含まれてもよい。一態様において、イニシエータは、直接的ATRP反応型を開始することができる。一態様において、イニシエータは、間接的なATRP反応型を開始することができる。間接的ATRPイニシエータには、フリーラジカルイニシエータおよび金属ハロゲン化リガンド錯体が含まれてもよい。一態様において、イニシエータには、臭化アルキルおよびCuCl錯体が含まれてもよい。CuCl錯体には、ビピリジンリガンドまたはtris(2-(ジメチルアミノ)エチル(アミン))リガンドが含まれてもよい。
【0054】
[0081] 一態様において、イニシエータには、ROMPイニシエータが含まれてもよい。ROMPイニシエータには、金属アルキリデン触媒が含まれてもよい。一態様において、ROMPイニシエータには、式(I)〜(VI)を有する1またはそれ以上の分子、またはその誘導体が含まれてもよい。
【0055】
【化1】

【0056】
[0082] 一態様において、イニシエータには、NMPイニシエータが含まれてもよい。NMPイニシエータには、フリーラジカルイニシエータ(択一的)そしてニトロキシド供給源が含まれてもよい。いくつかの態様において、ニトロキシド供給源は、フリーラジカルイニシエーション(例えば、アルコキシアミン)もまた提供することができる。適切なニトロキシド供給源には、アルコキシアミン、TEMPO(すなわち、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシ)、ニトロンの反応生成物、または酸化窒素の反応生成物、の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0057】
[0083] 一態様において、イニシエータには、RAFTイニシエータが含まれてもよい。RAFTイニシエータには、フリーラジカルイニシエータおよび対照試薬が含まれてもよい。適切なRAFT対照試薬には、ジチオカーボネート、ジチオエステル、キサンテート(xanthates)、またはジチオアシルヒドラゾンの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0058】
[0084] ATRPイニシエータのいくつかのその他の例には、式(VII)〜(X)を有する構造が含まれてもよい。
【0059】
【化2】

【0060】
[0085] 1またはそれ以上の上述した分子は、ATRPイニシエータとしての金属リガンド錯体と組み合わせて使用することができる。ROMPイニシエータのいくつかのその他の例には、式(XI)および(XII)を有する構造が含まれてもよく、ここでPEG550は、550 g/molの分子量を有するポリエチレングリコール鎖を示す。
【0061】
【化3】

【0062】
[0086] 一態様において、イニシエータのイニシエータ構成成分は、反応条件下にてイニシエータのその他のポリマー前駆体との実質的に不都合な相互作用はないように、または重合の条件下にて試薬との不都合な相互作用は存在しないように、選択することができる。さらに、イニシエータ構成成分は、イニシエータ構成成分が分析対象物とプローブとの間の結合に影響を与えないように、選択することができる。イニシエータ構成成分またはイニシエータは、反応媒体またはポリマー前駆体混合物中での必須な溶解性もまた有していてよい。
【0063】
[0087] 一態様において、組成物には、分析対象物がさらに含まれる。一態様において、第一のプローブおよび第二のプローブは両方とも分析対象物に結合する。図5は、本発明の一態様に従う組成物の概要例を示す。組成物には、第一のプローブ-特異的結合部位101および第二のプローブ-特異的結合部位102を有する分析対象物100が含まれる。組成物には、分析対象物-特異的結合部位111を有する第一のプローブ110が含まれる。第一のプローブには、結合性構造113を介して第一のプローブと結合した第一のイニシエータ構成成分112もまた含まれる。組成物には、分析対象物-特異的結合部位121を有する第二のプローブ120がさらに含まれる。第二のプローブには、結合性構造123を介して第二のプローブと結合した第二のイニシエータ構成成分122が含まれる。図6は、本発明の一態様に従う複合体200の概要例を示す。複合体には、特異的結合部位101および111を介して第一のプローブ110と結合し、そして特異的結合部位102および121を介して第二のプローブと結合した、分析対象物100が含まれる。第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータは一緒に、イニシエータ210を形成する。図7および図8は、2つの核酸プローブが核酸分析対象物に対して結合される場合、そして2つのイニシエータ構成成分が互いに近接して存在する場合、ルテニウム-アルキリデンベースのROMP触媒を形成することができる、本発明の一態様を示す。
【0064】
[0088] 一態様において、分析対象物は、分析される試料の一部であってもよい。本明細書中で開示される組成物を使用して解析することができる適切な試料には、土壌試料、大気試料、水試料、植物試料、食物試料、または生体試料が含まれてもよい。“生体試料”は、本明細書において使用される場合、生体被験者からin vivoまたはin vitroで得られる試料のことをいうことができる。いくつかの態様においては、生体試料は、真核生物起源のもの、例えば、昆虫、原虫類、鳥類、魚類、は虫類であってもよく、および哺乳動物起源の別の態様においては、例えば、ラット、マウス、ウシ、イヌ、ロバ、モルモット、またはウサギ、および霊長類起源の別の態様においては、例えば、チンパンジーまたはヒトであってよい。生体試料の適切な例には、培養物、血液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、胸膜液、乳、リンパ、痰、精液、尿、糞便、涙、唾液、注射針吸引物、皮膚の外部部分、気道、腸管、および尿生殖路、腫瘍、臓器、細胞培養物または細胞培養成分、または固体組織切片が含まれてもよい。生体試料にはまた、生体試料由来の抽出物、例えば、血液などの生体液由来の抗原、が含まれてもよい。
【0065】
[0089] 試料には、凍結または染色されているかまたは他のやり方で処理されているものなど(しかしそれらには限定されない)、その物理状態にかかわらず、上記の試料のいずれかが含まれてもよい。いくつかの態様において、試料には、保存剤、抗凝固薬、バッファー、固定剤、栄養素、抗生物質、溶媒等のような、性質上試料と天然では混ざらない化合物が含まれてもよい。一態様において、試料を、固体支持体、例えばブロット、アッセイ、アレイ、ガラススライド、ナノ粒子、ビーズ、マイクロタイター、ELISAプレート、またはその他のいずれかの基材上に固定化することができる。
【0066】
[0090] いくつかの態様において、試料をそのまま、すなわち、目的とする分析対象物を回収することなくおよび/または単離することなく、解析することができる。代わりの態様において、分析対象物の回収および単離は、解析の前に行うことができる。本発明の態様に従う分析対象物は、試料の表面上に存在しても(例えば、組織切片の表面上の抗原)または試料のバルク中に存在してもよい(例えば、バッファー溶液中の抗体)。いくつかの態様において、分析対象物は、試料の表面上にもともとは存在しなくてもよく、そして試料は分析対象物を表面上で利用可能にするための処理しなければならない場合があってもよい。一態様において、試料は必要とされていなくてもよく、そして分析対象物は直接的に解析することができ、または分析対象物は分析のあいだ基質上に直接的に固定化されていてもよい。
【0067】
[0091] 解析される(1または複数の)分析対象物の適合性は、試料のために必要とされる解析の型および性質により決定することができる。一態様において、解析は、試料中の分析対象物の存在の有無についての情報を提供することができる。例えば、解析は、感染が疑われる大気試料中での病原菌の存在の有無についての情報を提供することができる。別の態様において、解析は、試料の状態についての情報を提供することができる。例えば、試料に飲料用水試料が含まれる場合、解析は、試料中のバクテリア濃度についてそして従って試料の飲料適合性についての情報を提供することができる。同様に、試料に組織試料が含まれる場合、本明細書中で開示される方法を使用して、(1または複数の)分析対象物を検出することができ、それにより様々な種類の細胞または組織を比較し、様々な発生段階を比較し、疾患または異常の存在を検出し、疾患異常の型を決定し、または複数の分析対象物と経路とのあいだの相互作用を検討する際の補助をすることができる。
【0068】
[0092] 分析対象物は、事実上生きているものであっても死んでいるものであってもよい。一態様において、分析対象物には、汚染物質が含まれてもよい。適切な汚染物質には、大気汚染物質、土壌汚染物質、または水質汚染物質の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。大気汚染物質には、一酸化炭素、二酸化硫黄、クロロフルオロカーボン、または二酸化窒素の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。適切な土壌汚染物質には、炭化水素、重金属、除草剤、農薬、または塩素化炭化水素の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。適切な水質汚染物質には、重金属、肥料、除草剤、殺虫剤、または病原体の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。一態様において、分析対象物には、水試料または土壌試料についての情報、例えば、水試料の硬度についての情報、を提供することができる、リン酸塩、モリブデン酸塩、マグネシウム、亜硫酸塩、またはカルシウムの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0069】
[0093] 一態様において、分析対象物には、食肉副産物(meat by-product)と関連した1またはそれ以上の損傷指示体が含まれてもよい。適切な食肉には、ビーフ、ラム、ポーク、チキンなどが含まれてもよい。損傷指示体には、食肉と接触したバクテリアの生物学的活性により形成される生体ジアミン、またはヒスタミン、の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。損傷因子(spoilage factor)、およびジアミン含量、は、直接的に損傷を受けた食肉のバクテリア含量と関連づけることができる。一態様において、分析対象物は、損傷性微生物により放出された酵素による食肉中の遊離のアミノ酸の脱カルボキシル化に関して、情報を提供することができる。これらの生成物、腐敗およびカダベリンのうちの2つが、特徴的な臭気を有する可能性があり、そして臭気濃度が表面バクテリア数と相関する可能性がある。表面バクテリア数を使用して、食肉の新鮮度を評価することができる。
【0070】
[0094] 一態様において、分析対象物には、化学兵器が含まれてもよい。適切な化学兵器には、身体の自由を奪う物質、催涙物質、水疱発生剤またはびらん剤、神経ガス、窒息剤、血液剤、または臭気剤の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0071】
[0095] 適切な身体の自由を奪う物質には、神経系影響物質(nervous system affecters)、嘔吐剤、窒息剤、幻覚剤、鎮静剤、麻酔剤、抑制剤など、およびこれらの2種またはそれ以上の組合せが含まれてもよい。一態様において、身体の自由を奪う薬剤には、例えば、コリンを含むプローブと反応することができる抗コリン作用薬であってもよい、3-キヌクリジニルベンジラート(QNB、BZ)が含まれてもよい。代わりの神経系影響物質には、商業的に利用可能な市販(OTC)医薬組成物または処方医薬組成物が含まれてもよい。一態様において、身体の自由を奪う物質には、クラーレ、またはクラーレ類似体または誘導体が含まれてもよい。
【0072】
[0096] 適切な催涙物質には、o-クロロベンジルマロニトリル、クロロメチルクロロホルメート、塩化第二スズ、sym-ジクロロメチルエーテル、臭化ベンジル、臭化キシリル、メチルクロロスルホネート、エチルヨード酢酸、ブロモアセトン、ブロモメチル-エチルケトン、アクロレイン(2-プロパノール)、類似体および誘導体を含むカプサイシン、などの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0073】
[0097] 適切な水疱発生剤には、硫黄マスタード、ナイトロジェン・マスタード、またはLewisiteなどのヒ素剤の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。適切な硫黄マスタードには、2-クロロエチルクロロメチルスルフィド、bis(2-クロロエチル)スルフィドまたはジクロロエチルジスルフィド、bis(2-クロロエチルチオ)メタン、1,2-bis(2-クロロエチルチオ)エタン、1,3-bis(2-クロロエチルチオ)-n-プロパン、1,4-bis(2-クロロエチルチオ)-n-ブタン、1,5-bis(2-クロロエチルチオ)-n-ペンタン、bis(2-クロロエチルチオメチル)エーテル、またはbis(2-クロロエチルチオエチル)エーテルの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。適切なナイトロジェン・マスタードには、bis(2-クロロエチル)エチルアミン、bis(2-クロロエチル)メチルアミン、またはtris(2-クロロエチル)アミンの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。適切なLewisitesには、2-クロロビニルジクロロアルシン、またはbis(2-クロロビニル)クロロアルシン、tris(2-クロロビニル)アルシンの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0074】
[0098] 適切な神経ガスには、コリンエステラーゼ阻害剤が含まれてもよい。一態様において、コリンエステラーゼ阻害剤には、o-アルキル(Me、Et、n-Prまたはi-Pr)-ホスホノフルオリデート、例えば、o-イソプロピルメチルホスホノフルオリデート(サリン)またはo-ピナコリルメチルホスホノフルオリデート(ソマン);o-アルキルN,N-ジアルキル(Me、Et、n-Prまたはi-Pr)ホスホールアミドシアニデート、例えばo-エチルN,N-ジメチルホスホールアミドシアニデート(タブン);またはo-アルキルS-2-ジアルキル(Me、Et、n-Prまたはi-Pr)-アミノエチルアルキル(Me、Et、n-Prまたはi-Pr)ホスホノチオレートおよび対応するアルキル化塩またはプロトン化塩、例えばo-エチルS-2-ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホノチオレートの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0075】
[0099] 適切な窒息剤には、ホスゲン(塩化カルボニル)およびパーフルオロイソブチレンの一方または両方が含まれてもよい。適切な化学毒には、パリトキシン、リシン、サキシトキシン、またはボツリヌス毒素の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0076】
[0100] 適切な血液剤には、シアン化物、例えば塩、およびシアニド塩の類似体および誘導体の形状が含まれてもよい。適切なシアン化物の固体塩には、ナトリウム、カリウム、および/またはカルシウムが含まれてもよい。適切なシアン化物の揮発性液体形状には、シアン化水素および/または塩化シアノゲンが含まれてもよい。
【0077】
[0101] 一態様において、分析対象物には、1またはそれ以上の生物剤が含まれてもよい。適切な生物剤には、病原体、毒素、またはそれらの組合せが含まれてもよい。生物剤には、プリオン、微生物(ウィルス、バクテリア、および菌類)およびいくつかの単細胞真核生物および多細胞真核生物(例えば寄生虫)およびそれらの関連する毒素が含まれてもよい。病原体は、その宿主(動物または植物)に対して疾患または病気を引き起こす可能性のある感染性因子である。病原体には、バクテリア、ウィルス、原虫、菌類、寄生虫、またはプリオンの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0078】
[0102] バクテリア感染性因子(およびそれらにより引き起こされる疾患または作用)のいくつかの例には、1またはそれ以上の以下のもの:Escherichia coli(腹膜炎、食中毒);Mycobacterium tuberculosis(結核);Bacillus anthracis(炭疽);サルモネラ(食中毒);Staphylococcus aureus(毒素性ショック症候群);Streptococcus pneumoniae(肺炎);Streptococcus pyogenes(連鎖球菌性咽頭炎);Helicobacter pylori(胃潰瘍);またはFrancisella tularensis(野兎病);が含まれてもよい。
【0079】
[0103] ウィルス(およびそれらにより引き起こされる疾患または作用)のいくつかの例には、1またはそれ以上の以下のもの:A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎およびE型肝炎(肝臓疾患);インフルエンザウィルス(流感、トリインフルエンザ);SARSコロナウィルス(重症急性呼吸器症候群);単純ヘルペスウィルス(ヘルペス);伝染性軟属腫(発疹);またはヒト免疫不全ウィルス(AIDS);が含まれてもよい。
【0080】
[0104] 原虫のいくつかの例(およびそれらにより引き起こされる疾患または作用)には、1またはそれ以上の以下のもの:クリプトスポリジウム(クリプトスポリジウム症);Giardia lamblia(ランブル鞭毛虫症);プラスモディウム(マラリア);またはTrypanosoma cruzi(シャーガス病);が含まれてもよい。菌類のいくつかの例(およびそれらにより引き起こされる疾患または作用)には、1またはそれ以上の以下のもの:Pneumocystis jiroveci(日和見肺炎);たむし(白癬);またはカンジダ(カンジダ症)が含まれてもよい。
【0081】
[0105] 寄生虫のいくつかの例には、回虫、疥癬、サナダムシ、または扁形動物の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。タンパク質-ベースの病原体のいくつかの例には、プリオン(狂牛病として一般には知られるウシ海綿状脳症(BSE)または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD))が含まれてもよい。
【0082】
[0106] 毒素には、生体高分子と相互作用することにより体組織と接触しまたは体組織に吸収される際に疾患を生じることができるタンパク質が含まれ、そして毒素は生物兵器として使用することができる。適切な毒素には、リシン、SEB、ボツリヌス毒素、サキシトキシン、および多数のマイコトキシンが含まれてもよい。
【0083】
[0107] 生物剤により引き起こされる疾患のいくつかのその他の例には、炭疽、エボラ、腺ペスト、コレラ、野兎病、ブルセラ症、Q熱、マチュポ、コクシジオイデス症(Coccidioides mycosis)、鼻疽、類鼻疽、赤痢菌、ロッキー山発疹熱、発疹チフス、オウム病、黄熱、日本脳炎(Japanese B Encephalitis)、リフトバレー熱、または天然痘(Smallpox)が含まれてもよい。
【0084】
[0108] 生物剤は、食物試料中、大気試料中、水試料中、土壌試料中、植物試料中、または生体試料中に存在してもよい。一態様において、生物剤は、食物試料の損傷に関して、例えば、損傷を受けた食肉試料中のバクテリアに関して、情報を提供することができる。一態様において、生物剤は、工業用水試料(冷却水、処理水、または排水)中の、在郷軍人病菌(Legionella pneumophila)の存在または濃度を示すことができる。一態様において、生物剤は、都市水道水試料(飲料水または排水)中の、Cryptosporidia giardiaの存在または濃度を示すことができる。一態様において、生物剤は、食物試料中のリステリアまたはサルモネラの存在または濃度を示すことができる。
【0085】
[0109] 一態様において、生物剤は、生物兵器として使用することができる。生物剤の検出および解析は、感染地域に関する情報を提供することができる。一態様において、生物剤の解析により、影響を受けた環境の消毒の有効性に関する情報を提供することができる。
【0086】
[0110] 一態様において、本明細書中で開示される組成物を使用して検出することができる分析対象物には、1またはそれ以上の生体分子が含まれてもよい。一態様において、生体分子-ベースの分析対象物は、生物剤の一部、例えば病原体であってもよい。一態様において、生体分子は、例えば、RNAアッセイまたはDNAアッセイにおいて、診断用途、治療用途、または予後用途のために使用することができる。適切な生体分子には、ペプチド、タンパク質(例えば、抗体、アフィボディー、またはアプタマー)、核酸(例えば、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、またはアプタマー);多糖(例えば、レクチンまたは糖)、脂質、酵素、酵素基質、リガンド、受容体、ビタミン、抗原、またはハプテンの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。用語、分析対象物は、別々の分子、および、そのような分子の部分、例えば1またはそれ以上のプローブと特異的に結合することができるタンパク質のエピトープ、の両方について言及する。
【0087】
[0111] プローブおよびそれらに対応する生体分子分析対象物は、結合ペアとみなすことができ、その限定的ではない例には、免疫型結合ペア、例えば、抗原/抗体、抗原/抗体断片、またはハプテン/抗-ハプテン;非-免疫型結合ペア、例えばビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、葉酸/葉酸結合タンパク質、ホルモン/ホルモン受容体、レクチン/特異的炭水化物、酵素/酵素、酵素/基質、酵素/基質類似体、酵素/偽基質(酵素活性により触媒され得ない基質類似体)、酵素/補因子、酵素/調節剤、酵素/阻害剤、またはビタミンB12/内因子が含まれてもよい。結合ペアのその他の適切な例には、相補的な核酸断片(DNA配列、RNA配列、PNA配列、およびペプチド核酸配列を含む);プロテインA/抗体;プロテインG/抗体;核酸/核酸結合タンパク質;またはポリヌクレオチド/ポリヌクレオチド結合タンパク質;が含まれてもよい。
【0088】
[0112] 一態様において、組成物には、1またはそれ以上のポリマー前駆体がさらに含まれていてもよい。ポリマー前駆体には、モノマー種、オリゴマー種、モノマー種の混合物、オリゴマー種の混合物、ポリマー種、ポリマー種の混合物、部分-架橋種、部分架橋種の混合物、または上記の2種またはそれ以上の混合物が含まれてもよい。イニシエータは、ポリマー前駆体の重合反応を開始することができる。
【0089】
[0113] ポリマー前駆体には、化学的に反応してポリマーを形成することができる反応基が含まれてもよい。反応基は、熱エネルギー、電磁放射、または化学物質(例えば、イニシエータ)の1またはそれ以上のものに暴露された場合に、化学的反応に関与することができる。
【0090】
[0114] ポリマー前駆体には、イニシエータの型およびポリマー前駆体の組成物との適合性(例えば、使用される溶媒中の溶解度)に依存した有機骨格または無機骨格が含まれてもよい。ポリマー前駆体についての適切な無機骨格には、炭素-炭素結合または炭素-ヘテロ原子-炭素結合の主鎖結合以外の主鎖結合、例えば、シラン中のシリコン-シリコン結合、シロキサン中のシリコン-酸素-シリコン結合、ホスファゼン中のリン-窒素-リン結合、などが含まれてもよい。
【0091】
[0115] 適切な有機ポリマー前駆体には、本質的に、主鎖中の炭素-炭素結合(例えば、オレフィン)または炭素-ヘテロ原子-炭素結合(例えば、エーテル、エステルなど)のみが含まれていてもよい。有機ポリマー前駆体の適切な例には、1またはそれ以上の以下のもの:オレフィン-由来ポリマー前駆体、例えば、エチレン、プロピレン、およびそれらの混合物;メチルペンタン-由来ポリマー前駆体、例えば、ブタジエン、イソプレン、およびこれらの混合物;不飽和カルボン酸のポリマー前駆体およびそれらの機能的誘導体、例えば、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリルアミド、アクリロニトリル、およびアクリル酸などのアクリル;アルケニル芳香族ポリマー前駆体、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、およびゴム変性スチレン;アミド、例えば、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-1,1、およびナイロン-1,2;エステル、例えば、ジカルボン酸アルキレン、特にエチレンテレフタラート、1,4-ブチレンテレフタラート、トリメチレンテレフタラート、エチレンナフタレート、ブチレンナフタレート、シクロヘキサンジメタノールテレフタラート、シクロヘキサンジメタノール-co-エチレンテレフタラート、および1,4-シクロヘキサンジメチル-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートおよびアルキレンアレネジオエート(arenedioates);カーボネート;エステルカーボネート;スルホン;イミド;アリーレンスルフィド;スルフィドスルホン;およびアリーレンエーテル、フェニレンエーテル、エーテルスルホン、エーテルイミド、エーテルケトン、エーテルエーテルケトンなどのエーテル;またはこれらのブレンド、ホモポリマー、またはコポリマー;が含まれてもよい。
【0092】
[0116] 一態様において、ポリマー前駆体には、化学的に反応して、フリーラジカル重合、開環重合、メタセシス重合、アニオン重合、カチオン重合、またはこれらの2またはそれ以上の組合せを介して、ポリマーを形成することができる官能基が含まれてもよい。一態様において、ポリマー前駆体には、化学的に反応して、フリーラジカル重合、原子移動ラジカル重合、開環メタセシス重合、またはこれらの2またはそれ以上の組合せを介して、ポリマーを形成することができる官能基が含まれてもよい。一態様において、ポリマー前駆体には、スチレン、アクリレート、メタクリレート、またはノルボルネン官能基の1またはそれ以上のものが含まれてもよい。一態様において、ポリマー前駆体は、室温にて、プローブ溶液中に可溶性であってもよい。一態様において、ポリマー前駆体は、室温にて水に可溶性であってもよい。
【0093】
[0117] 一態様において、ポリマー前駆体には、1またはそれ以上のシグナルジェネレータが含まれてもよい。本明細書において使用される場合、用語“シグナルジェネレータ”は、検出可能シグナルを提供することができる分子のことをいうことができる。検出可能シグナルは、例えば、分光分析、熱量測定、分光法、または目視検査を含む、1またはそれ以上の検出技術を使用して検出することができるシグナルのことをいうことができる。検出可能シグナルの適切な例には、光学シグナル、電気シグナル、または放射性シグナルが含まれてもよい。
【0094】
[0118] 本明細書に開示する組成物に適したシグナルジェネレータの種類は、行われる分析の性質、使用するエネルギー源および検出器の種類、利用されるイニシエータの種類、プローブの種類、標的の種類、または使用される溶媒を含む、様々な要因に依存する場合がある。
【0095】
[0119] シグナルジェネレータは、エネルギー源または電流との相互作用により、特徴的なシグナルを提供することができる。エネルギー源には、電磁放射源と蛍光励起源が含まれてよい。電磁放射源は、可視光、赤外線、および紫外線が含まれるあらゆる波長の電磁エネルギーを提供することが可能であってよい。電磁放射線は、直接光源の形態であっても、ドナーフルオロフォアなどの発光性化合物によって放出されてもよい。蛍光励起源は、ある供給源に蛍光を発生させることが可能であっても、光子放出を生じてもよい(即ち、電磁放射、有向電場(directed electric field)、温度、物理的接触、または機械的な破壊)。適切なシグナルジェネレータは、光学測定(例えば、蛍光)、電気伝導度、または放射活性を含む、様々な方法によって検出されることが可能なシグナルを提供することができる。適切なシグナルジェネレータは、例えば、光放出性、エネルギー受容性、蛍光発生性、放射性、または消光性であってよい。
【0096】
[0120] 適切なシグナルジェネレータは、それが結合する構成要素、例えば、ポリマー前駆体、と立体的および化学的に適合性であってよい。適切なシグナルジェネレータは、ポリマー前駆体の重合能に干渉し得ない。さらに、重合反応の後、適切なシグナルジェネレータはプローブの分析対象物への結合を干渉しないだけでなく、プローブの結合特異性にも影響を及ぼさない。適切なシグナルジェネレータは、有機または無機の性質であってもよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータは、化学品、ペプチド、または核酸の性質のものであってもよい。
【0097】
[0121] シグナルジェネレータは、直接的にまたは間接的に検出可能であってもよい。直接的に検出可能な部分は、例えば、別のより低い特徴的な波長の光による励起に続いて特定の波長の光を放出する蛍光標識および/または特定の波長の吸収する蛍光標識など、シグナルを放出するその能力によって直接的に検出することができるものであってよい。間接的に検出可能なシグナルジェネレータは、別の部分に結合し、別の部分を誘導しそして、いくつかの場合には、別の部分を切断して、続いてシグナルを放出することができる能力により、間接的に検出することができるものであってもよい。間接的に検出可能なシグナルジェネレータの例は、適切な基質と接触する場合に基質を切断して検出可能なシグナルを提供する、酵素ベースのシグナルジェネレータであってもよい。あるいは、間接的に検出可能なシグナルジェネレータは、シグナルを実際に放出する化合物に結合することができる。例えば、それ自体はシグナルを放出しないビオチンなどのシグナルジェネレータを、標識されたアビジンまたはストレプトアビジン分子に結合された場合に検出することができる。間接的に検出可能なシグナルジェネレータのその他の例には、特定の受容体に特異的に結合するリガンドが含まれてもよい。検出可能に標識した受容体は、プローブを検出するため、リガンド標識したポリマー前駆体に結合することができる。例えば、ポリマー前駆体は、ビオチン分子およびシグナルジェネレータに結合することができ、そしてビオチンに対して特異的に結合することができるアビジン分子に結合することができる。間接的に検出可能なシグナルジェネレータのいくつかのその他の例には、アフィニティ分子、リガンド、受容体、ビオチン分子、アビジン分子、ストレプトアビジン分子、抗原(例えば、FLAGまたはHAエピトープなどのエピトープタグ)、ハプテン(例えば、ビオチン、ピリドキサル、ジゴキシゲニンフルオロセインおよびジニトロフェノール)、抗体、抗体断片、マイクロビーズ、またはこれらの2種またはそれ以上の組合せが含まれてもよい。
【0098】
[0122] いくつかの態様において、シグナルジェネレータは、光放出分子、放射性同位元素(例えば、P32またはH314C、125Iおよび131I)、光学密度マーカーまたは電子密度マーカー、ラマン活性タグ、酵素、酵素基質(例えば、発色基質)、電子スピン共鳴分子(例えば、ニトロキシルラジカルなど)、電荷移動分子(即ち、電荷変換分子)、半導体ナノ結晶、半導体ナノ粒子、コロイド金ナノ結晶、ミクロビーズ、磁気ビーズ、常磁性粒子、量子ドット、または親和性分子(例えば、ビオチン分子、ストレプトアビジン分子、タンパク質、ペプチド、核酸、糖質、抗原、ハプテン、抗体、抗体断片、または脂質)より選択することができる。
【0099】
[0123] いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、光放出性分子が含まれてよい。光放出性分子は、特定の波長の光での照射に応答して光を放出することができる。光放出性分子は、発光(励起時の材料による電磁放射線の非発熱性放出)、リン光(放射線の吸収の結果としての遅延した発光)、化学発光(化学反応による発光)、蛍光、または偏光蛍光を介して光を吸収および放出することが可能である。
【0100】
[0124] いくつかの態様において、シグナルジェネレータは、直接的に検出可能であってもよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、発色団が含まれていてもよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、蛍光性分子またはフルオロフォアが含まれていてもよい。適切な発色団およびフルオロフォアには、本明細書において上述した1またはそれ以上の分子が含まれていてもよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータは、FRETペアの一部であってもよい。FRETペアには、互いの近傍に位置しているときに、FRETを受けて検出可能なシグナルを発生または消失させることが可能である2つのフルオロフォアが含まれる。ドナーのいくつかの例には、Alexa 488、Alexa 546、BODIPY 493、Oyster 556、Fluor(FAM)、Cy3、またはTTR(Tamra)が含まれてよい。アクセプタのいくつかの例には、Cy5、Alexa 594、Alexa 647、またはOyster 656が含まれてよい。
【0101】
[0125] いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、フルオロフォアが本質的に含まれていてもよい。フルオロフォアの例には、4-アセトアミド-4′-イソチオシアナートスチルベン-2,2′ジスルホン酸、アクリジン、アクリジンおよびアクリジンイソチオシアネートの誘導体、5-(2′-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド-3,5ジスルホネート(Lucifer Yellow VS)、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、Brilliant Yellow、クマリン、クマリン誘導体、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、Coumarin 120)、7-アミノ-トリフルオロメチルクマリン(Coumaran 151)、シアノシン;4′,6-ジアミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、5′,5”-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(Bromopyrogallol Red)、7-ジエチルアミノ-3-(4′-イソチオシアナートフェニル)4-メチルクマリン、4,4′-ジイソチオシアナートジヒドロ-スチルベン-2,2′-ジスルホン酸、4,4′-ジイソチオシアナートスチルベン-2,2′-ジスルホン酸、5-[ジメチルアミノ]ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド)、エオシン、エオシンイソチオシアネート等のエオシンの誘導体、エリスロシン、エリスロシンBおよびエリスロシンイソチオシアネート等のエリスロシンの誘導体;エチジウム;フルオレセインおよびその誘導体例えば5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2′7′-ジメトキシ-4′5′-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、QFITC(XRITC);フルオレスカミン誘導体(アミンとの反応の際に蛍光を発する);IR144;IR1446;Malachite Greenイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローザニリン;Phenol Red、B-フィコエリトリン;o-フタルジアルデヒド誘導体(アミンとの反応の際に蛍光を発する);ピレンおよびピレン、ピレンブチラートおよびスクシンイミジル1-ピレンブチラートなどの誘導体;Reactive Red 4(Cibacron)、Brilliant Red 3B-A、ローダミンおよび6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101(Texas Red)およびスルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体などの誘導体;N,N,N′,N′-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ロゾール酸およびランタニドキレート誘導体、量子ドット、シアニン、およびスクアライン(squaraines)、が含まれるが、これらには限定されない。フルオロフォアのいくつかのその他の例には、1つまたはフルオレセイン、ローダミン、Texas Red、VECTOR Red、ELF(酵素標識蛍光)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy7、FluorX、Calcein、Calcein-AM、CRYPTOFLUOR、Orange(42 kDa)、Tangerine(35 kDa)、Gold(31 kDa)、Red(42 kDa)、Crimson(40 kDa)、BHMP、BHDMAP、Br-Oregon、Lucifer Yellow、Alexa色素ファミリー、N-[6-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ]カプロイル](NBD)、BODIPY、ボロンジピロメテンジフルオリド、Oregon Green、MITOTRACKER Red、DiOC(3)、DiIC18、フィコエリスリン、フィコビリプロテインBPE(240 kDa)RPE(240 kDa)CPC(264 kDa)APC(104 kDa)、Spectrum Blue、Spectrum Aqua、Spectrum Green、Spectrum Gold、Spectrum Orange、Spectrum Red、NADH、NADPH、FAD、Infra-Red(IR)色素、サイクリックGDP-リボース(cGDPR)、Calcofluor White、Lissamine、Umbelliferone、TyrosineまたはTryptophanの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0102】
[0126] いくつかの態様において、シグナルジェネレータは、例えば、酵素/酵素基質の組合せなど、間接的に検出可能であってもよい。いくつかの態様において、酵素は、可溶性基質を沈殿させ、不溶性の生成物を形成することができる(例えば、免疫組織化学において)。さらに、酵素は、発色基質の化学反応を触媒することができ、それを適切な技術を使用して測定することができる。例えば、酵素は、基質中の色彩変化を触媒することができ、それを写真分光学的に測定することができる。あるいは、酵素は、基質の蛍光特性または化学発光特性を変化させることができる。酵素-基質の組合せの適切な例は、本明細書の以下に記載される。
【0103】
[0127] 西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)は、基質としての水素ペルオキシダーゼと反応し、ここで水素ペルオキシダーゼは、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンヒドロクロリド(TMB))を酸化することができる。その他の適切なHRPO基質には、2,2'アジノ-ジ-3-エチルベンズ-チアゾリンスルホネート(ABTS、緑色、水溶性)、アミノエチルカルバゾール、3-アミノ、9-エチルカルバゾールAEC(3A9EC、赤色)、α-ナフトールピロニン(赤色)、4-クロロ-1-ナフトール(4C1N、青色、青色-黒色)、3,3'-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB、褐色)、オルト-ジアニシジン(緑色)、o-フェニレンジアミン(OPD、褐色、水溶性)、TACS Blue(青色)、TACS Red(赤色)、3,3',5,5'テトラメチルベンジジン(TMB、緑色または緑色/青色)、TRUE BLUE(青色)、VECTO VIP(紫色)、VECTOR SG(灰色がかった青色-灰色)、およびZymed Blue HRP基質(鮮やかな青色)、が含まれてもよいが、これらには限定されない。
【0104】
[0128] アルカリホスファターゼ(AP)は、発色性基質としてのパラ-ニトロフェニルホスフェートと反応する。その他の適切なAP基質には、AP-Blue基質(青色沈殿、Zymed);AP-Orange基質(橙色、沈殿、Zymed)、AP-Red基質(赤色、赤色沈殿、Zymed)、5-ブロモ、4-クロロ、3-インドリルホスフェート(BCIP基質、ターコイズ沈殿)、5-ブロモ、4-クロロ、3-インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム/ヨードニトロテトラゾリウム(BCIP/INT基質、黄色-褐色沈殿、Biomeda)、5-ブロモ、4-クロロ、3-インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT基質、青色/紫色)、5-ブロモ、4-クロロ、3-インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム/ヨードニトロテトラゾリウム(BCIP/NBT/INT、褐色沈殿、DAKO、Fast Red(Red)、Magenta-phos(マゼンダ)、Naphthol AS-BI-ホスフェート(NABP)/Fast Red TR(Red)、Naphthol AS-BI-ホスフェート(NABP)/New Fuchsin(Red)、Naphthol AS-MX-ホスフェート(NAMP)/New Fuchsin(Red)、New Fuchsin AP基質(赤色)、p-ニトロフェニルホスフェート(PNPP、黄色、水溶性)、VECTOR Black(黒色)、VECTO Blue(青色)、VECTOR Red(赤色)、Vega Red(ラズベリー赤色)、が含まれるが、これらには限定されない。
【0105】
[0129] β-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)は、発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光性基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ)と反応する。その他の適切なβ-ガラクトシダーゼ基質には、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルβ-D-ガラクトピラノシド(X-gal、青色沈殿)、が含まれるが、これらには限定されない。
【0106】
[0130] 適切なグルコースオキシダーゼ(GO)基質には、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT、紫色沈殿)、テトラニトロブルーテトラゾリウム(TNBT、黒色沈殿)、2-(4-ヨードフェニル)-5-(4-ニトロフェニル)-3-フェニルテトラゾリウムクロリド(INT、赤色または橙色沈殿)、テトラゾリウムブルー(青色)、ニトロテトラゾリウムバイオレット(紫色)、および3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT、紫色)、が含まれるが、これらには限定されない。テトラゾリウム基質は、補助基質としてグルコースを必要とする場合がある。上述した基質のそれぞれと関連する沈殿は、固有の検出可能なスペクトルの特徴を有していてもよい。
【0107】
[0131] いくつかの態様において、ポリマー前駆体は、(例えば、ポリマー前駆体がオリゴマーの場合、検出可能に標識したモノマーを使用した合成のあいだ)シグナルジェネレータを用いて内在的に標識することができる。内在的に標識されるポリマー前駆体は、検出されるために別個のシグナルジェネレータを必要としなくてもよい。むしろ、内在的な標識は、ポリマー前駆体を検出可能にするために十分なものであってもよい。代わりの態様において、ポリマー前駆体を、特異的なシグナルジェネレータをそれに対して結合することにより標識することができる(すなわち、外的に標識される)。
【0108】
[0132] ポリマー前駆体およびシグナルジェネレータは、適切な条件下で反応しそして結合を形成することができる官能基を介して、互いに化学的に結合されていてもよい。官能基の組合せの適切なには、アミンエステルおよびアミンまたはアニリン;アシルアジドおよびアミンまたはアニリン;ハロゲン化アシルおよびアミン、アニリン、アルコール、またはフェノール;アシルニトリルおよびアルコール、またはフェノール;アルデヒドとアミンまたはアニリン;ハロゲン化アルキルとアミン、アニリン、アルコール、フェノール、またはチオール;スルホン酸アルキルおよびチオール、アルコール、またはフェノール;無水物およびアルコール、フェノール、アミンまたはアニリン;ハロゲン化アリールとチオール;アジリジンおよびチオールまたはチオエーテル;カルボン酸およびアミン、アニリン、アルコール、またはハロゲン化アルキル;ジアゾアルカンおよびカルボン酸;エポキシドおよびチオール;ハロアセトアミドとチオール;ハロトリアジンおよびアミン、アニリン、またはフェノール;ヒドラジンおよびアルデヒドまたはケトン;ヒドロキシアミンおよびアルデヒドまたはケトン;イミドエステルおよびアミンまたはアニリン;イソシアネートおよびアミンまたはアニリン;およびイソチオシアネートおよびアミンまたはアニリン、が含まれるが、これらには限定されない。上述した官能基ペアの一つにおける官能基は、ポリマー前駆体中に存在してもよく、そして対応する官能基は、シグナルジェネレータ中に存在していてもよい。例えば、ポリマー前駆体には、カルボン酸が含まれていてもよく、そしてシグナルジェネレータには、アミン、アニリン、アルコールまたはハロゲン化アシルが含まれていても、または含まれていなくてもよい。ポリマー前駆体とシグナルジェネレータとの間の複合体形成は、この場合、アミド結合またはエステル結合の形成により、行うことができる。
【0109】
[0133] 一態様において、ポリマー前駆体には、1またはそれ以上のシグナルジェネレータ-標識-モノマーが含まれてもよい。シグナルジェネレータ-標識-モノマーの適切な例には、フルオロフォア-標識-モノマーが含まれていてもよい。フルオロフォア-標識-モノマーのいくつかの例には、シアニンまたはフルオレセイン-標識-モノマーが含まれてもよい。本発明の一態様に従うシグナルジェネレータ-標識-ポリマー前駆体のいくつかの例には、式(XIII)〜(XVI)を有する構造が含まれてもよい。
【0110】
【化4】

【0111】
[0134] 一態様において、ポリマー前駆体には、モノマーの混合物:シグナルジェネレータ-標識-ポリマー前駆体および非標識ポリマー前駆体が含まれてもよい。一態様において、非標識モノマーは、標識されたポリマー前駆体と共に使用して、標識されたポリマー前駆体間のシグナルの消光を防止することができる。標識-ポリマー前駆体および非標識-ポリマー前駆体の濃度は、所望のポリマーの分子量および必要とされる発光(dequenching)の程度に依存して、変化させることができる。適切な非標識-ポリマー前駆体には、本明細書中で開示される組成物に従って使用されるイニシエータにより重合化可能な、1またはそれ以上のモノマーが含まれてもよい。
【0112】
[0135] 一態様において、イニシエータには、ATRPイニシエータが含まれてもよく、そしてポリマー前駆体には、フルオロフォア-標識ATRPポリマー前駆体と非標識-ATRPポリマー前駆体の混合物が含まれてもよい。例えば、フルオロフォア-標識ATRPポリマー前駆体には、式(XIII)〜(XV)の構造を有する1またはそれ以上の分子が含まれていてもよく、そして非標識-ATRPポリマー前駆体には、アクリレートまたはスチレンポリマー前駆体が含まれてもよい。一態様において、非標識ATRPポリマー前駆体は、式(XVII)の構造を有していてもよい。
【0113】
【化5】

【0114】
[0136] 一態様において、イニシエータには、ROMPイニシエータが含まれてもよく、そしてポリマー前駆体には、フルオロフォア-標識ROMPポリマー前駆体および非標識-ROMPポリマー前駆体の混合物が含まれてもよい。例えば、フルオロフォア-標識ROMPポリマー前駆体には、式(XVI)の構造を有する分子が含まれてもよく、そして非標識-ROMPポリマー前駆体には、式(XVIII)の構造を有するノルボルネンポリマー前駆体が含まれてもよい。
【0115】
[0137] 一態様において、ポリマー前駆体は、非標識であってもよく、すなわち、シグナルジェネレータが含まれていなくてもよい。非標識ポリマー前駆体の混合物を使用することができる組成物のため、本発明の一態様に従い、全てのポリマー前駆体は非標識であってもよい。一態様において、非標識ポリマー前駆体には、重合反応後にシグナルジェネレータと抱合体形成するかまたは結合することができる1またはそれ以上の官能基が含まれてもよい。
【0116】
[0138] 本発明の一態様に従い、組成物中で使用することができる非標識ポリマー前駆体のいくつかの例には、式(XIX)または(XX)の構造が含まれてもよい。一態様において、式(XIX)または(XX)を有するポリマー前駆体から形成されるポリマーは、例えば、シアニン標識したリジンまたはポリリジンを介して、シグナルジェネレータと抱合体形成することができる。
【0117】
【化6】

【0118】
[0139] 一態様において、ポリマー前駆体には、別のポリマー前駆体の重合反応を開始することができる官能基が含まれてもよい。一態様において、ポリマー前駆体には、別のポリマー前駆体の重合反応を開始することができるイニシエータに結合することができる官能基が含まれてもよい。例えば、一態様において、ATRPポリマー前駆体には、ROMPモノマーの重合化反応を開始することができるROMPイニシエータが含まれてもよい。同様に、一態様において、ATRPポリマー前駆体には、別のイニシエータとの結合を形成することができる官能基が含まれてもよい。イニシエータを伴うポリマー前駆体は、分岐鎖ポリマーまたはグラフトポリマーの形成を提供することができる。一態様において、ポリマー前駆体には、別のポリマー前駆体の重合反応を開始することができる官能基が含まれてもよい。一態様において、ポリマー前駆体には、別のイニシエータに対して結合することができる官能基が含まれてもよい。
【0119】
[0140] 図6は、本発明の一態様に従う組成物の概略例を示す。組成物には、複合体200およびポリマー前駆体220が含まれる。ポリマー前駆体220にはさらにシグナルジェネレータ230が含まれる。上述したように、いくつかの態様において、ポリマー前駆体は非標識であってもよく、またはポリマー前駆体には、重合反応後に1またはそれ以上のシグナルジェネレータに対して結合することができる官能基が含まれてもよい。いくつかの態様において、ポリマー前駆体には、重合反応後に1またはそれ以上のイニシエータに対して結合することができる官能基が含まれてもよい。
【0120】
[0141] 一態様において、複合体200およびポリマー前駆体220は、溶液の形状で存在していてもよい。一態様において、複合体200およびポリマー前駆体220は、懸濁液の形状で存在していてもよい。一態様において、複合体200は、固体支持体上に固定化されていてもよく、そしてポリマー前駆体220は、複合体200と接触する溶液の形状で存在していてもよい。
【0121】
[0142] 一態様において、組成物には、組成物の反応生成物が含まれてもよい。一態様において、本明細書中で開示される組成物の反応生成物には、プローブを介して分析対象物に結合されるポリマー生成物といずれかの反応しなかったポリマー前駆体との混合物が含まれてもよい。一態様において、ポリマー前駆体の変換は、完全であってもよく、すなわち、反応生成物はいずれかの反応しなかったポリマー前駆体が存在しなくてもよい。形成されるポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。形成されるポリマーは、直鎖型、分岐鎖型、または架橋型であってもよい。
【0122】
[0143] 一態様において、ポリマーは、標識モノマーまたは非標識モノマーのホモポリマーであってもよい。一態様において、非標識ポリマーは、ポリマーの形成後に、シグナルジェネレータにより標識することができる。一態様において、ポリマーは、標識モノマー、非標識モノマー、またはこれらの組合せ、のコポリマーであってもよい。コポリマーは、ブロックコポリマー、交互コポリマー、またはランダムコポリマーであってもよい。一態様において、ポリマーは、直鎖ポリマーであってもよい。一態様において、ポリマーは、分岐鎖型ポリマーであってもよい。一態様において、ポリマーは架橋型ポリマーであってもよい。
【0123】
[0144] ポリマーの平均分子量は、所望されるシグナル量、使用されるイニシエータの型およびモノマーの型、イニシエータ対モノマー比、または試薬条件(例えば、溶媒の有無)の1またはそれ以上に依存する可能性がある。一態様において、ポリマーは、約50 g/mol〜約100 g/mol、約100 g/mol〜約200 g/mol、約200 g/mol〜約500 g/mol、約500 g/mol〜約1000 g/mol、約1000 g/mol〜約2500 g/mol、約2500 g/mol〜約5000 g/mol、約5000 g/mol〜約10000 g/mol、約10000 g/mol〜約25000 g/mol、約25000 g/mol〜約50000 g/mol、または約50000 g/mol〜約100000 g/molの範囲の数平均分子量を有することができる。一態様において、ポリマーの数平均分子量は、約100000 g/mol〜約250000 g/mol、約250000 g/mol〜約500000 g/mol、または約500000 g/mol〜約1000000 g/molの範囲であってもよい。一態様において、ポリマーの数平均分子量は、約106 g/molよりも大きい範囲であってもよい。一態様において、ポリマーの数平均分子量は、イニシエータおよびポリマー前駆体濃度を変化させることにより調節することができる。一態様において、ポリマーの数平均分子量は、例えば、調節された重合において、イニシエータとポリマー前駆体濃度の比と関連していてもよい。
【0124】
[0145] 一態様において、ポリマーは、単峰型分子量分布を有していてもよい。一態様において、ポリマーは、約2.0未満の範囲の多分散性インデックスを有していてもよい。一態様において、ポリマーは、約1.5未満の範囲の多分散性インデックスを有していてもよい。一態様において、ポリマーは、約1.0〜約1.1の範囲の、約1.1〜約1.2の範囲の、約1.2〜約1.3の範囲の、約1.3〜約1.4の範囲の、または約1.4〜約1.5の範囲の、多分散性インデックスを有していてもよい。一態様において、ポリマーは、約1.1未満の範囲の多分散性インデックスを有していてもよい。多分散性インデックスとは、ポリマーの数平均分子量に対するポリマーの重量平均分子量の比のことをいい、そして分子量分布の測定値であってもよい。
【0125】
[0146] 一態様において、組成物には、分析対象物、分析対象物に結合した第一のプローブ、同一の分析対象物に対して結合した第二のプローブ、第一のプローブに結合した第一のイニシエータ構成成分、第二のプローブに結合した第二のイニシエータ構成成分、イニシエータを形成する第1のイニシエータ構成成分および第2のイニシエータ構成成分、およびポリマーが含まれてもよい。図9は、本発明の一態様に従う組成物300の概略例を示す。組成物には、第一のプローブ110と第二のプローブ120とを介して複合体に結合する複合体200およびポリマー310が含まれる。ポリマーには、複数のシグナルジェネレータ230が含まれる。本明細書で上述したように、ポリマー310はホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。さらに、ポリマー310は図中では直鎖型として示されるが、分岐鎖型ポリマーおよび架橋型ポリマーが組成物中に存在していてもよい。
【0126】
[0147] 一態様において、組成物には、複数(2、3、・・・n)のプローブが含まれてもよく、そのそれぞれが別個のイニシエータ構成成分に結合し、そしてそれぞれのプローブは一つの分析対象物に対して結合することができる。プローブの数は、分析対象物中で結合のために利用可能な別個の結合部位の数と、解析のために必要とされる正確性の程度とに依存することができる。一態様において、組成物には、複数のイニシエータ構成成分により形成されるイニシエータにより開始される重合反応を受けることができる、ポリマー前駆体がさらに含まれていてもよい。一態様において、組成物には、複数のプローブに結合した分析対象物が含まれてもよく、それぞれのプローブは別個のイニシエータ構成成分に結合し、そして組成物はポリマー前駆体をさらに含む。一態様において、組成物には、複数のプローブに結合した分析対象物が含まれてもよく、プローブはイニシエータを介してポリマーに結合する。ポリマーには、1またはそれ以上のシグナルジェネレータが含まれてもよい。
【0127】
[0148] 一態様において、組成物には、複数の分析対象物を検出することができる複数のプローブペアが含まれてもよく、すなわち、組成物は、複数の分析対象物検出または多重化を行うことができる。それぞれの分析対象物は、特定のプローブペアを使用して検出することができ、プローブペアのそれぞれの構成成分は分析対象物に対して特異的であってもよく、そして解析において使用するそれぞれのプローブペアは識別可能なシグナルジェネレータにより標識されていてもよい。本明細書中で上述したように、それぞれのプローブペアは、イニシエータ(プローブペア中のプローブに結合するイニシエータ構成成分から形成される)を介してシグナルジェネレータにより、そしてイニシエータを介してプローブに結合したポリマーにより、標識することができる。本明細書において使用される場合、複数は、2以上ではあるが無限よりは少ない量であってもよい。
【0128】
[0149] 一態様において、組成物には、一つの分析対象物に結合することができる複数のプローブペアが含まれてもよい。すなわち、複数のプローブペア中のそれぞれのプローブは、一つの分析対象物に結合することができる。それぞれのプローブペアには、第一のイニシエータ構成成分に結合した第一のプローブおよび第二のイニシエータ構成成分に結合した第二のプローブが含まれてもよい。それぞれのプローブペアは、イニシエータ構成成分が互いに近くに存在し、そしてプローブペアが分析対象物に結合される場合に、形成されるイニシエータと結合することができる。一態様において、組成物には、それぞれが特定のプローブペアに結合する複数のイニシエータおよびポリマー前駆体の重合反応を開始することができるそれぞれのイニシエータが含まれてもよい。
【0129】
[0150] 一態様において、組成物の全ての構成成分(分析対象物、プローブ、イニシエータ、ポリマー前駆体、ポリマー)は、室温で水に可溶性であってもよい。一態様において、組成物は、室温で水に可溶性であってもよい。一態様において、組成物は、室温で水中で懸濁液を形成することができる。一態様において、組成物の全ての構成成分(分析対象物、プローブ、イニシエータ、ポリマー前駆体、ポリマー)は、室温で有機溶媒中に可溶性であってもよい。適切な有機溶媒には、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、またはN-メチルピロリジノンの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。
【0130】
[0151] 一態様において、組成物は、室温で水以外の溶媒に可溶性であってもよい。適切な溶媒には、分析対象物、プローブ、または分析対象物とプローブとの間の結合特異性に影響を与えない極性溶媒または非極性溶媒が含まれてもよい。一態様において、液体組成物を提供することができる。液体組成物には、第一のイニシエータ構成成分に結合した第一のプローブ、第二のイニシエータ構成成分に結合した第二のプローブ、ポリマー前駆体、および溶媒が含まれてもよい。一態様において、液体組成物には、第一のプローブおよび第二のプローブに結合された分析対象物が含まれてもよい。一態様において、液体組成物には、イニシエータ(第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分から形成されたもの)の反応生成物とポリマー前駆体とが含まれてもよい。
【0131】
[0152] 一態様において、1またはそれ以上の分析対象物の検出用キットが提供される。キットには、第一のイニシエータ構成成分に結合した第一のプローブ;第二のイニシエータ構成成分に結合した第二のプローブ;およびポリマー前駆体が含まれてもよい。第一のプローブおよび第二のプローブには、一つの分析対象物中に存在する異なる結合部位に対して結合することができる特異的結合部位が含まれてもよい。一態様において、キットは、ポリマー前駆体の重合のために必要とされる追加の試薬、例えば、ATRP反応におけるハロゲン化イニシエータと共に使用される金属リガンド錯体、がさらに含まれていてもよい。いくつかの態様において、シグナルジェネレータ-標識-ポリマー前駆体と非標識-ポリマー前駆体の混合物を利用することができ、そしてキットには、標識-ポリマー前駆体および非標識-ポリマー前駆体が混合物または別個の組成物として含まれてもよい。いくつかの態様において、使用されるポリマー前駆体は、全て非標識であってもよく、そしてキットには、重合後にポリマーに対して結合することができる1またはそれ以上のシグナルジェネレータがさらに含まれてもよい。一態様において、このキットには、追加の試薬、例えば、溶媒、バッファー溶液などがさらに含まれていてもよい。一態様において、このキットには、複数(2、3、・・・n)のプローブが含まれてもよく、それぞれは別個のイニシエータ構成成分および複数のポリマー前駆体と結合する。複数のプローブには、一つの分析対象物中に存在する異なる結合部位と結合することができる特異的結合部位が含まれてもよい。
【0132】
[0153] 一態様において、分析対象物を検出するための物品が提供される。その装置には基質が含まれ、そして基質はその表面上に1またはそれ以上の分析対象物を固定化することができる。一態様において、基質は、ポリマーと結合することができる。一態様において、基質は、分析対象物、第一のイニシエータ構成成分に結合した第一のプローブ、第二のイニシエータ構成成分に結合した第二のプローブ、および第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分が互いに近くに存在する場合に形成されるイニシエータを介して、ポリマーと結合することができる。
【0133】
[0154] 適切な基質には、アレイ、ゲル、ガラススライド、細胞、組織、組織切片、ビーズ、ブロット、ELISAプレートなどの1またはそれ以上のものが含まれてもよい。一態様において、1またはそれ以上の分析対象物を、基質を適切な官能基、例えば、アミノシランを用いて官能化することにより、基質の表面に固定化することができる。分析対象物は、アミン官能基を使用して基質上に固定化することができる。一態様において、分析対象物を、特異的-結合ペア、例えばストレプトアビジン-ビオチン、を使用して基質の表面上に固定化することができる、例えば、ビオチン化分析対象物をストレプトアビジン-官能化基質上に固定化することができる。一態様において、分析対象物に対して結合することができるプローブ(第一のプローブおよび第二のプローブとは異なり、そしてイニシエータ構成成分には結合しない)を、基質上に固定化することができる。分析対象物は、プローブに対して結合することができる。次いで、第一のプローブおよび第二のプローブを、例えば、サンドイッチアッセイを形成する分析対象物に対して結合することができる。第一のプローブおよび第二のプローブを、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分にそれぞれ結合させることができる。
【0134】
[0155] 一態様において、物品は、例えば分子生物学的に、1またはそれ以上の生体分子を検出することができる。一態様において、物品には、タンパク質マイクロアレイ、RNAマイクロアレイ、DNAマイクロアレイ、ELISAプレート、ブロット技術(例えば、ウェスタンブロット、サザンブロット、またはノザンブロット)において使用されるメンブレン、または組織学的試料(細胞、組織、組織切片)の1またはそれ以上のものが含まれる。
【0135】
[0156] 一態様において、装置が提供される。この装置には、本明細書中で開示される物品が含まれる。この装置は、分析対象物の型、分析対象物の量、または分析対象物の型と量の両方を検出することができる。
【0136】
[0157] 一態様において、この装置は、現場で分析対象物を検出することができる手持ち型の装置であり、例えば、最初の応答者による分析対象物の検出を提供することができる装置である。一態様において、この手持ち型の装置は、化学兵器またはバイオ兵器の1またはそれ以上のものを検出することができる。一態様において、この装置は、大気試料、土壌試料、または水試料中の1またはそれ以上の汚染物質を感知することができる。一態様において、この装置は、食品試料または飲料試料における1またはそれ以上の損傷-指示薬を感知することができる。
【0137】
[0158] 一態様において、この装置は、自動的に環境中の分析対象物を採取し、調製し、そして検出することができる、自動検出システムである。一態様において、この自動検出システムは携帯型であってもよく、そして現場で分析対象物を検出することができる。一態様において、自動検出システムは、化学兵器またはバイオ-兵器の1またはそれ以上のものを検出することができる。一態様において、この装置は手持ち型の装置であってもよく、携帯型ラボの部分であってもよく、または地域解析を行うことができる装置の一部であってもよい。
【0138】
[0159] 一態様において、分析対象物の検出方法が提供される。この方法には、分析対象物を第一のイニシエータ構成成分に結合した第一のプローブおよび第二のイニシエータ構成成分に結合した第二のプローブに接触させて、複合体を形成することが含まれる。分析対象物とプローブとのあいだの接触の条件(pH、濃度、温度など)は、プローブが分析対象物中に存在する特異的結合部位を介して分析対象物に結合できる様なものであってもよい。
【0139】
[0160] 本明細書中で上述したように、分析対象物は、解析される試料の一部であってもよく(例えば、水試料中の有機リンまたは感染大気試料中の生物剤)、解析される試料の抽出物であってもよく(例えば、血液試料中の抗原)、または分析対象物は試料それ自体であってもよい(例えば、バッファー溶液中の核酸)。いくつかの態様において、分析対象物または試料(分析対象物が試料中に存在する場合)を、分析対象物または試料を(1または複数の)プローブと接触させる前に処理しそして調製することができる。分析対象物または試料調製物には、1またはそれ以上の以下の工程:分析対象物の分離、分析対象物の濃度、分析対象物の精製、分析対象物の増幅などが含まれてもよい。1またはそれ以上の上述の分析対象物または試料調製技術を使用して、結合および検出のために利用可能な分析対象物を作製することができる。
【0140】
[0161] 一態様において、方法には、本明細書の他の部分に記載される1またはそれ以上の技術を使用して、基質の表面上に分析対象物を固定化することがさらに含まれる。方法には、基質(使用する場合)を第一のプローブおよび第二のプローブの基質に対する非特異的結合をブロックすることができる試薬と接触させることができる、ブロッキングの工程がさらに含まれていてもよい。
【0141】
[0162] 一態様において、分析対象物を、第一のプローブおよび第二のプローブと同時に接触させることができる、すなわち、分析対象物と接触させることができるプローブの混合物を使用することができる。一態様において、第一のプローブおよび第二のプローブを分析対象物に対して同時に結合させることができる。一態様において、分析対象物を、第一のプローブおよび第二のプローブに連続的に接触させることができる、すなわち、第一のプローブまたは第二のプローブのいずれかを分析対象物と最初に接触させ、その後もう一方のプローブと接触させることができる。一態様において、第一のプローブまたは第二のプローブを、分析対象物に対して最初に結合させ、その後もう一方のプローブを分析対象物と結合させて、複合体を形成することができる。
【0142】
[0163] 方法には、分析対象物を第一のプローブ、第二のプローブ、または第一のプローブおよび第二のプローブの両方に接触させた後、1またはそれ以上の洗浄の工程が含まれてもよい。洗浄の工程には、分析対象物-プローブ複合体を洗浄用溶液シリーズと接触させて、いずれかの非結合プローブまたは非-特異的結合プローブを除去することが含まれてもよい。
【0143】
[0164] 方法には、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分からイニシエータを形成することがさらに含まれてもよい。一態様において、複合体は、ポリマー前駆体とさらに接触させることができる。一態様において、複合体は、ポリマー前駆体の重合反応を開始してポリマーを形成することを実現する条件下、ポリマー前駆体と接触させることができる。
【0144】
[0165] 方法には、複合体をポリマー前駆体と接触させた後、1またはそれ以上の洗浄の工程が含まれてもよい。洗浄の工程には、分析対象物-ポリマー複合体を洗浄用溶液シリーズと接触させて、いずれかの非結合ポリマーまたはいずれかの非反応ポリマー前駆体を除去することが含まれてもよい。
【0145】
[0166] 一態様において、ポリマー前駆体には、1またはそれ以上のシグナルジェネレータが含まれてもよい。対応して、ポリマーには、検出可能なシグナルを提供できるシグナルジェネレータが含まれてもよい。一態様において、ポリマー前駆体には、シグナルジェネレータを含まれていなくてもよく、そしてポリマー前駆体には、シグナルジェネレータに結合することができる官能基が含まれてもよい。一態様において、この方法には、ポリマーを1またはそれ以上のシグナルジェネレータと接触させることがさらに含まれていてもよい。
【0146】
[0167] この方法には、少なくとも一つのポリマーからの少なくとも一つのシグナルを観察することがさらに含まれてもよい。ポリマー中のシグナルジェネレータからのシグナルは、検出システムを使用して検出することができる。使用される検出システムの性質は、使用されるシグナルジェネレータの性質に依存することができる。従って、検出システムには、電子スピン共鳴(ESR)検出システム、電荷結合素子(CCD)、AMS検出システム(例えば、放射性同位体用)、蛍光検出システム、電気的検出システム、写真用フィルム検出システム、化学発光検出システム、酵素検出システム、原子間力顕微鏡(AFM)検出システム(例えば、マイクロビーズ検出用)、走査トンネル顕微鏡(STM)検出システム(例えば、マイクロビーズ検出用)、光学検出システム、分光検出システム(レーザーFMまたは多光子励起)、近接場検出システム、または全内部反射(TIR)検出システムが含まれてもよい。
【0147】
[0168] 1またはそれ以上の上述した技術を使用して、シグナルジェネレータ(ポリマー中に存在する)由来のシグナルの1またはそれ以上の特徴を観察することができる。いくつかの態様において、シグナル強度、シグナル波長、シグナル位置、シグナル頻度、またはシグナルシフトを、1またはそれ以上の上述した技術を使用して測定することができる。いくつかの態様において、シグナルの1またはそれ以上の上述した特徴を、観察し、測定し、そして記録することができる。いくつかの態様において、シグナルジェネレータには、フルオロフォアが含まれてもよく、そして蛍光波長または蛍光強度は蛍光検出システムを使用して決定することができる。いくつかの態様において、シグナルを、in situで観察することができる、すなわち、シグナルを、ポリマーを介して試料中のプローブおよび分析対象物に結合させたシグナルジェネレータから直接的に観察することができる。いくつかの態様において、シグナルジェネレータからのシグナルを試料中で解析することができ、別個のアレイ-ベースの検出システムの必要性を取り除くことができる。
【0148】
[0169] いくつかの態様において、シグナルを観察することには、試料の画像をキャプチャーすることが含まれてもよい。いくつかの態様において、イメージング装置に接続された顕微鏡を、本明細書中に開示される方法に従って検出システムとして使用することができる。いくつかの態様において、シグナルジェネレータ(例えば、フルオロフォア)を励起することができ、そして得られたシグナル(例えば、蛍光シグナル)を観察し、そしてデジタルシグナルの形状(例えば、デジタル化スペクトルまたはイメージ)で記録することができる。同じ手順を、適切な蛍光フィルターを使用して分析対象物に結合させる、異なるシグナルジェネレータ(存在する場合)について繰り返すことができる。
【0149】
[0170] 一態様において、シグナルを解析して、分析対象物に関する情報を得ることができる。一態様において、この方法には、シグナルを分析対象物の型と相関させることが含まれてもよい。一態様において、この方法には、シグナルを分析対象物の量と相関させることが含まれてもよい。一態様において、この方法には、シグナルを分析対象物の型と量の両方ともと相関させることが含まれてもよい。一態様において、シグナルの有無は、試料中の分析対象物の同時結合の有無を示すことができる。同時結合とは、2種またはそれ以上のプローブの一つの分析対象物への結合のことを意味することができる。同時結合は、試料中の分析対象物の存在を示唆するものであってもよい。ポリマー(および検出可能シグナル)の形成を引き起こす重合反応は、2つのプローブが分析対象物に結合する場合にのみ開始することができる。
【0150】
[0171] いくつかの態様において、シグナルの強度値(例えば、蛍光強度)を測定することができ、そして試料中の分析対象物の量と相関させることができる。分析対象物の量とシグナル強度との間の相関は、較正標準を使用して決定することができる。一態様において、この方法には、試料中の分析対象物の相対濃度または絶対量を決定することが含まれてもよい。相対濃度または量は、分析対象物に同時的に結合するプローブからのシグナルの量を測定することにより決定することができる。
【0151】
[0172] 一態様において、シグナル量を、試料を絶対的定量について解析するタイミングの前にまたは同時に調製することができる較正曲線と比較することができる。一態様において、較正曲線は、既知の分析対象物濃度(x-軸)の関数としてのシグナル強度(y-軸)のプロットであってもよい。一態様において、この方法には、分析対象物の直接的な定量、すなわち、シグナル強度と分析対象物量との間の較正曲線を使用することのない定量、が含まれてもよい。後者は、例えば、調節された重合イニシエータを使用する組成物中で可能である。調節された重合反応は、既知分子量および狭い多分散性インデックスを有するポリマーの合成を提供することができ、それにより特定の分子量に対応するシグナルの量を正確に測定することができる。次に、シグナルの量を、試料中に存在する分析対象物の量と相関させることができる。例えば、ポリマーの重合の組み合わせた程度(分子量から計算)を、約10と計算することができる。第1のシグナルおよび第2のシグナルについて測定された同時シグナルの量は、約100程度の重合に対応することができる。次いで、存在することができるポリマーの数は、約100/10、すなわち約10と計算することができる。1つのポリマーがいつでも1つの分析対象物に対して結合することができるため、試料中に存在する分析対象物の数は、所定の被検試料中、対応して約10と計算することができる。
【0152】
[0173] 複数の分析対象物を複数のプローブを使用して解析することができる態様において、生体試料中の異なる分析対象物の相対量を、異なるシグナル強度を測定することにより決定することができる。いくつかの態様において、1またはそれ以上の対照試料を使用することができる。試料中のシグナルの有無を観察することにより(目的とする試料対対照)、試料に関する情報を得ることができる。例えば、疾患組織試料と正常組織試料とを比較することにより、疾患組織試料中に存在する分析対象物に関する情報を得ることができる。同様に試料間のシグナル強度を比較することにより(すなわち、目的とする試料と1またはそれ以上の対照との間)、試料中の分析対象物の発現に関する情報を得ることができる。
【0153】
[0174] 一つの態様において、試料中のシグナルの位置を観察することができる。いくつかの態様において、2つまたはそれ以上のシグナルの相対的な位置を観察することができる。シグナルの位置は、分析対象物の位置と相関させることができ、試料中の異なる分析対象物の位置に関する情報を提供する。いくつかの態様において、シグナルの強度値および同時シグナルの位置を相関させて、試料中の異なる分析対象物の位置に関する情報を得ることができる。例えば、特定の分析対象物を、組織試料中、核と比較して細胞質においてより多く発現させることができ、またはその逆をすることもできる。いくつかの態様において、分析対象物の相対的な位置に関する情報は、2つまたはそれ以上のシグナルの位置および強度値を比較することにより得ることができる。
【0154】
[0175] 一態様において、1またはそれ以上の観察の工程または相関させる工程を、コンピュータ-支援手段を使用して行うことができる。いくつかの態様において、1またはそれ以上の方法の工程を自動化し、そして自動化システムを使用して行うことができる。
【0155】
[0176] 一態様において、本明細書中で開示された組成物および方法は、稀な試料または少量の試料(例えば、ナノリットル容量の試料)中または分析対象物濃度が低い試料中の分析対象物を検出するために具体的に利用可能であってもよい。一態様において、被検試料または分析対象物試料は、ナノリットル容量を有していてもよく、すなわち、それは、本明細書中で記載された方法を実施するため、ナノリットル容量を検出システム中にロードすることのみが必要とされてもよい。
【0156】
[0177] 一態様において、本明細書中で開示された組成物および方法は、ナノモル濃度で分析対象物を検出するために具体的に適用可能なものであってもよい。一態様において、本明細書中で開示された組成物および方法は、ピコモル濃度での分析対象物を検出するために具体的に適用可能なものであってもよい。一態様において、本明細書中で開示された組成物および方法は、フェムトモル濃度で分析対象物を検出するために具体的に適用可能なものであってもよい。一態様において、分析対象物は、10,000個の分子中に約1つ未満の頻度で存在してもよい。一態様において、分析対象物は、1,00,000個の分子中に約1つ未満の頻度で存在してもよい。一態様において、分析対象物は、1,000,000個の分子中に約1つ未満の頻度で存在してもよい。一態様において、分析対象物は、被検試料中2,000,000個の分子中に約1つ未満の頻度で存在してもよい。従って、組成物および方法を使用して、非常に稀な分析対象物を検出しそして解析することができる。
【0157】
[0178] 一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、約18000リットルの大気中に約1000個未満の分析対象物の検出限界(LOD)を有していてもよい。一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、約18000リットルの大気中に約100個の分析対象物の検出限界(LOD)を有していてもよい。一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、約18000リットルの大気中に約10個の分析対象物の検出限界(LOD)を有していてもよい。
【0158】
[0179] 一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、重合反応を使用して検出可能シグナルを増幅することにより、低濃度での分析対象物の検出を提供することができる。一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、検出可能シグナルを増幅し、その結果ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の技術を使用して分析対象物を増幅する必要性を取り除くことにより、低濃度での分析対象物の検出を提供することができる。一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、PCRなどの分析対象物増幅技術に影響を受けにくい分析対象物の検出、例えば、タンパク質分析物の検出、を提供することができる。
【0159】
[0180] 一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、分析対象物の正確な検出を提供することができる。本明細書中に開示された組成物および方法は、同時結合および同時検出を使用して、分析対象物の正確な検出を提供することができる。一態様において、開示された組成物および方法は、擬陽性を減少させることにより分析対象物の正確な検出を提供することができる。一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、偽陰性を減少させることにより、分析対象物の正確な検出を提供することができる。
【0160】
[0181] 一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、約10-6未満の範囲の単一の分析対象物についての偽陽性率を提供することができる。一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、約10-7未満の範囲の単一の分析対象物についての偽陽性率を提供することができる。一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、約10-8未満の範囲の単一の分析対象物についての偽陽性率を提供することができる。一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、約10-6未満の範囲の単一の分析対象物についての偽陰性率を提供することができる。一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、約10-7未満の範囲の単一の分析対象物についての偽陰性率を提供することができる。一態様において、本明細書中に開示された組成物および方法は、約10-8未満の範囲の単一の分析対象物についての偽陰性率を提供することができる。
【0161】
[0182] 一態様において、本明細書中に開示される組成物および方法は、被検試料中の複数の分析対象物の検出を提供することができ、それにより試料を節約することができる。一態様において、複合化の程度は、2であってもよい(すなわち、2つの分析対象物を1回の解析において検出することができる)。一態様において、複合化の程度は、約2〜約4の範囲、約4〜約6の範囲、約6〜約10の範囲、約10〜約20の範囲、約20〜約50の範囲、約50〜約100の範囲、約100〜約250の範囲、または約250〜約500の範囲であってもよい。一態様において、複合化の程度は、約500よりも大きくてもよい。
【0162】
[0183] 一態様において、本明細書中で開示される組成物および方法は、約2時間未満の範囲の、約1時間未満の範囲の、約30分未満の範囲の、約15分未満の範囲の、または約5分未満の範囲の試験時間内に検出可能なシグナルを提供することができる。
【実施例】
【0163】
[0184] 以下の実施例は、本発明に従う方法および態様を説明することのみを意図しており、そしてそのようにして節に対して限定を課すものと解釈すべきではない。
【0164】
[0185] 実施例1〜4は、シグナルジェネレータと複合体化されたポリマー-前駆体の合成を記述する。
【0165】
実施例1 Cy5-標識-ATRP-モノマーの合成
[0186] 化合物2の合成。クロロホルム(10 mL)中ジ-tert-ブチルカルボネート(2.57 g、11.8 mmol)の溶液を、クロロホルム(10 mL)中2-(2-アミノ-エトキシ)エタノール(1.25 g、11.9 mmol)である化合物1の溶液に対して添加する。混合物を室温にて約2時間攪拌する。この溶液を水(15 mL)で洗浄し、そして有機層を無水MgSO4上で乾燥させ、そして減圧下で濃縮して、化合物2(2.31 g、95%)を得る。1H NMR(CDCl3):δ1.38(9H, s), 3.25-3.28(2H, m), 3.47-3.52(4H, m), 3.66-3.69(2H, m), 4.82(1H, bs)。
【0166】
[0187] 化合物4の合成。DCC(1.24 g、6.0 mmol)およびDMAP(0.36 g、3.0 mmol)を、CH2Cl2(30 mL)中4-エテニル安息香酸(すなわち化合物3)(0.82 g、5.5 mmol)およびアルコール2(1.13 g、5.5 mmol)に対して添加し、そして混合物を一晩攪拌する。ジクロロヘキシルウレア(DCU)を濾別しそしてH2O(15 mL)を添加する。水層および有機層を分離し、そして水相をCH2Cl2(3×30 mL)を用いて抽出する。組み合わせた有機抽出物をMgSO4を用いて乾燥させ、減圧下にて濃縮させ、そしてクロマトグラフィーにかけ(ヘキサン:EtOAc、20:1〜5:1)、エステル4を得る(0.99 g、54%)。1H NMR(CDCl3):δ1.43(9H, s), 3.33-3.34(2H, m), 3.58-3.60(2H, m), 3.78-3.81(2H, m), 4.46-4.48(2H, m), 4.92(1H, bs), 5.39(1H, d), 5.86(1H, d), 6.76(1H, dd), 7.47(2H, d), 8.01(2H, d)。
【0167】
[0188] 化合物5(“アミノスチレン5”)の合成。トリフルオロ酢酸(2 mL)をCH2Cl2(6 mL)中、化合物4の溶液(0.15 g、0.46 mmol)に対して添加し、そして室温で約2時間攪拌する。得られた混合物をNaHCO3飽和水溶液を用いて洗浄し、そしてCH2Cl2を用いて抽出する。有機層をNa2SO4を用いて乾燥させ、減圧下にて濃縮させ、そしてクロマトグラフィーにかけ(CH2Cl2:MeOH、20:1〜10:1、1%Et3Nを用いる)化合物5を得る(0.10 g、92%)。1H NMR(CDCl3):δ2.88-2.91(2H, m), 3.56-3.59(2H, m), 3.80-3.82(2H, m), 4.47-4.49(2H, m), 5.38(1H, d), 5.86(1H, d), 6.76(1H, dd), 7.46(2H, d), 8.01(2H, d)。反応スキームを図10に示す。
【0168】
[0189] Cy5および化合物5を使用したATRP色素-モノマーの合成。2.0 mL DMSO中Cy5モノ-NHSエステル(5.0 mg、6.3μmol)を、DMSO(2.0 mL)中アミノスチレン5(1.5 mg、6.3μmol)中に添加する。0.13 mLのトリエチルアミン(0.95 mmol)を混合物中に添加した後、反応物を室温にて暗所で一晩攪拌する。粗生成物をHPLC(C-18、CH3CN/H2O/CF3COOH)により精製して、11を得る(5.0 mg、87%収率)。反応スキームを図11に示す。
【0169】
実施例2 FITC-標識-ATRP-モノマー(FITC-MA)の合成
[0190] 6ミリグラムの水酸化ナトリウム(0.15 mmol)を、1 mL炭酸ナトリウムバッファー(pH = 9.6)中、塩酸2-アミノエチルメタクリレート(25 mg、0.153 mmol)の溶液に添加する。1.5 mL DMSO中に溶解したフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(65 mg、0.17 mmol)を、混合物中に添加する。混合物を室温で一晩攪拌する。得られた透明で赤色の溶液をさらに精製することなく2℃で保存することができる。1H NMR(DMSO-d6):δ6.10(1H, s), 5.68(1H, s), 4.26(2H, t), 3.83(2H, t), 1.89(3H, s), 0.42(6H, s)。反応スキームを図12に示す。
【0170】
実施例3 重合後修飾のための二価ATRPモノマーの合成
[0191] BOC-保護化N-(4-ビニルベンゾイル)リシン、化合物7の合成:CH2Cl2(15 mL)中、DCC(0.68 g、3.3 mmol)、DMAP(0.10 g、2.5 mmol)、Et3N(0.46 mL、3.3 mmol)および化合物6(0.89 g、3.0 mmol)の溶液を、CH2Cl2(15 mL)中の4-ビニル安息香酸(すなわち化合物3)(0.44 g、3.0 mmol)の溶液に対して添加し、そして混合物を一晩攪拌する。ジクロロヘキシルウレア(DCU)を濾別し、そして濾過物を濃縮する。粗生成物を、ヘキサン/EtOAc(4:1〜1:1)を溶出液として使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。化合物7が89%の収率で得られる(1.05 g)。1H NMR(CDCl3):δ1.41(9H, s), 1.49-1.57(2H, m), 1.80-1.84(2H, m), 1.95-2.01(2H, m), 3.11-3.12(2H, m), 3.78(3H, s), 4.60(1H, bs), 4.79-4.84(1H, m), 5.36(1H, d), 5.84(1H, d), 6.71-6.78(2H, m), 7.47(2H, d), 7.79(2H, d)。
【0171】
[0192] N-(4-ビニルベンゾイル)リシン、化合物8(“VBA-Lys”)の合成:ジオキサン/MeOH(6 mL)中、化合物7(0.13 g、0.34 mmol)の溶液を、1 M LiOHを用いて、約10〜約9.5のあいだのpHで、加水分解する。混合物を室温にて2〜3時間攪拌する。反応の完了は、薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用して判断する。トリフルオロ酢酸(0.5 mL)をこの溶液に対して添加し、そして室温にてさらに2時間攪拌する。得られた混合物を減圧下にて濃縮させ、そしてクロマトグラフィーにより分離し(CH2Cl2:MeOH、20:1〜10:1、1%Et3Nを用いる)、微量なEt3Nまたはその塩とともに化合物8(0.08 g、84%の収率)を得る。1H NMR(CDCl3):δ1.45-1.58(2H, m), 1.80-1.89(2H, m), 2.01-2.09(2H, m), 3.07-3.14(2H, m), 4.49-4.52(1H, m), 4.68(1H, bs), 5.32(1H, d), 5.81(1H, d), 6.74(1H, d), 7.43(2H, d), 7.83(2H, d)。反応スキームを図13に示す。
【0172】
実施例4 Cy5-標識-ROMPモノマーの合成
[0193] 5-ノルボルネン-2-メタンアミン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イルメタンアミン)の合成。三つ口フラスコに、機械式スターラー、還流濃縮器(reflux condenser、ジムロート冷却管)および滴下ロートを装着する。フラスコを、無水エーテル中1.0 Mの水素化アルミニウムリチウム溶液(42 mmol)42 mlを用いて、N2のもとで満たす。45 mlのエーテル中5 gの5-ノルボルネン-2-カルボニトリル(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-カルボニトリル)の溶液(42 mmol、1.0 M)を滴下ロートを介して、ゆっくりとした還流を可能にする速度で滴加する。1時間後、混合物を0℃にまで冷却し、そして水素ガス放出が観察されなくなるまで水を滴加する。これに対して、100 mlの20%酒石酸カリウムナトリウムを添加し、そして透明な溶液を作製する。反応溶液を分液ロートに移し、そして水相を回収し、3×50 mlのエーテルの部分を用いて洗浄する。合わせたエーテル画分を硫酸カルシウムを用いて乾燥させ、そして溶媒をロータリーエバポレーションにより除去して、黄色の油状物を得る。この生成物を減圧下にてさらに蒸留し、透明な油状物を得る。
【0173】
[0194] Cy5-標識5-ノルボルネン-2-メタンアミン(ROMPモノマー)の合成。N2-フラッシュしたバイアルに対して、400 mMの5-ノルボルネン-2-メタンアミン溶液(5 mg、0.04 mmol、130 mM最終濃度)100 ml、340 mMのCy5モノ-NHSエステルN,N-ジイソプロピルエチルアンモニウム塩溶液(30 mg、0.034 mmol、113 mM最終濃度)100 mlを添加する。攪拌しながら、100 mlのN,N-ジイソプロピルエチルアミン(75.7 mg、0.59 mmol、2 M最終濃度)を添加し、そして暗青色の溶液をN2の下で一晩攪拌する。これをHPLCで精製し、そして凍結乾燥して、濃青色の微結晶粉末を得る。反応スキームを図14に示す。
【0174】
[0195] 実施例5〜10は、イニシエータの修飾または基質上へのイニシエータの固定化のための方法を記載する。
【0175】
実施例5 シラン-修飾ATRPイニシエータの合成
[0196] 化合物9の合成:5グラムの4-ペンタン-1-オール(5.0 g、0.058 mol)、トリエチルアミン12 mL、および無水ジクロロメタン(50 mL)を氷浴中に浸漬した乾燥した250 mLの一つ口丸底フラスコに添加する。30 mLジクロロメタン中に溶解した18グラムの2-ブロモ臭化イソブチリル(BiBB)(18 g、0.078 mol)を、0.5時間の経過をかけてシリンジを使用してフラスコに滴加する。反応混合物を20℃で一晩攪拌する。混合物を10%飽和炭酸ナトリウムを用いて3回抽出し、そして無水硫酸ナトリウム上で乾燥させる。ジクロロメタンをロータリーエバポレーションにより除去する。減圧蒸留により、10.4 gの化合物9が得られる(収量:10.4 g、76%)。1H NMR(CDCl3):δ5.81(1H, m), 5.03(2H, m), 4.19(2H, t), 2.19(2H, m), 1.94(6H, s), 1.80(2H, m)。
【0176】
[0197] 化合物10(シラン-修飾ATRPイニシエータ)の合成:2滴のKarstedtの触媒を0℃で100 mLフラスコ中の化合物9(10.42 g、0.044 mol)およびクロロジメチルシラン(6.6 mL、0.058 mol)の混合物に対して添加する。この混合物を室温で一晩攪拌する。反応しなかったシランをロータリーエバポレーションで除去する。混合物を減圧下で蒸留し11.2 gの化合物10を得る(収率77%)。1H NMR(CDCl3):δ4.19(2H, t), 1.95(6H, s), 1.71(2H, t), 1.47(4H, m), 0.86(2H, t), 0.42(6H, s)。反応スキームを図15に示す。
【0177】
実施例6 第1級アミンへの結合のための二価ATRPイニシエータの合成
[0198] N-ヒドロキシスクシンイミド(B、1.28 g)および遊離酸(A、2.3 g)をCH2Cl2(90 mL)中に溶解し、そして0℃にまで冷却する。EDCI(2.09 g)を添加し、反応物を0℃にて10分間攪拌し、そして次いで室温で一晩攪拌する。反応物をEt2O(20 mL)で希釈し、5%酸性水溶液(10 mL)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10 mL)およびブライン(10 mL)で洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥させる。減圧下での濃縮ののち、得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、1:1ヘキサン:酢酸エチル)により精製して、3.82 gの活性化エステルを無色油状物として得る。図16は本発明の一態様に従う修飾イニシエータの合成のための反応スキームである。
【0178】
実施例7 シラン化-ATRPイニシエータを用いた、石英表面上の表面-支持化ATRPイニシエータの調製
[0199] 石英スライド(10×10 mm2)を10%NaOH中に一晩浸し、そして次いで脱イオン化(DI)水を用いてすすぐ。次いで、スライドをDI水中で超音波処理し、その後1%HCl、水、および最終的にはエタノール中で超音波処理する。それぞれの超音波処理工程は約20分間継続する。スライドを減圧下にて2時間、110℃で乾燥させ、そして乾燥THF(20 mL)中に浸す。次いで、0.5 mLの化合物10をシリンジを介して懸濁液中に注入する。混合物をN2雰囲気下で一晩攪拌しそして還流する。次いで、スライドを無水THFにより完全に洗浄し、そして風乾する。
【0179】
実施例8 ビオチン化-イニシエータを用いた、石英表面上の表面-支持化ATRPイニシエータの調製
[0200] ビオチン-NHSの液滴(PBS中100μLの2 mM、pH = 7.4)をポリリジンフィルム上にマイクロピペットを使用して滴下する。別のポリリジン-コート化スライドをスライドの上面に表を下にしてロードする。このスライドを室温で2時間インキュベーションし、そして次いで脱イオン化水およびPBSバッファー溶液を用いて連続的に完全にすすぐ。ストレプトアビジン(100μL、PBS中1.0 mg/mL)をビオチン-修飾スライド上にロードする。架橋反応を約2〜8℃にて一晩行い、次いでそれらをPBSバッファー溶液およびTween 20で別々に洗浄する。あるいは、架橋反応を室温で約2時間行うことができる。最終的に、式XXIを有する100μLのビオチン化イニシエータ(メタノール中4 mg/mL)を20 mL PBSバッファーを用いて希釈し、そしてスライドをその中に浸す。スライドを一晩インキュベーションし、そして次いでPBSバッファーを用いて洗浄する。
【0180】
【化7】

【0181】
実施例9 磁気粒子上の表面-支持化ATRPイニシエータの調製
[0201] 2ミリリットルのストレプトアビジン-コート酸化鉄粒子(すなわち磁気粒子)および10μLの式(XXI)を有するビオチンイニシエータをフラスコ中に入れ、そして混合物を一晩攪拌する。磁気粒子を磁石を用いて回収し、そしてPBSバッファーを用いて5回洗浄する。
【0182】
実施例10 ポリスチレンビーズ上の表面-支持化ROMPイニシエータの調製
[0202] (ビニル)ポリスチレンの合成:クロロメチルポリスチレン樹脂(10 g、1 mmol/gのCl、10 mmolのCl、100〜200メッシュ)を60 ml THF中で一晩震盪することにより膨潤させる。N2のもと、n-ブチルリチウム(46 ml、1.6 M、74 mmol)を300 mlのヨウ化リチウム(9.9 g、74 mmol)とトリメチルヨウ化スルホニウム(16.32 g、80 mmol)との懸濁液に対して、0℃で滴下する。添加の後、反応物を0℃で1時間攪拌する。これを、0℃で、THF中の膨潤化(クロロメチル)ポリスチレン樹脂に対して添加し、そして懸濁液を室温で一晩震盪する。混合物をメタノールを用いて希釈し、そして0.45 m PTFEメンブレンを介して濾過する。この樹脂をメタノール/酢酸(80/20)、メタノールおよびメチレンクロリドを用いて洗浄し、そして減圧下にて室温で約16時間乾燥させる。
【0183】
[0203] bis(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウムジクロリドポリスチレン樹脂の合成。N2のもと、bis(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウムジクロリドのメチレンクロリド溶液2.5 ml(130 mg、0.16 mmol、64 mM)を40 mlメチレンクロリド中(ビニル)ポリスチレン(2 g、1 mmol/g ビニル、2 mmolビニル、100〜200メッシュ)の懸濁液に対して添加し、そして室温で1時間震盪させる。混合物をN2のもとで濾過し、そしてアンプル量のメチレンクロリドおよびエーテルで洗浄し、そして減圧下にて40℃で一晩乾燥させて、褐色樹脂を得る。図17は、ポリスチレンビーズ上に固定化したイニシエータの調製のための反応スキームである。
【0184】
[0204] 実施例11〜17は、基質上に固定化されたイニシエータを使用した、ポリマー前駆体のATRP重合のための手法を記載する。
【0185】
実施例11 非-蛍光モノマー(HEMA)および蛍光モノマー(FITC-MA)の、石英スライド上での表面開始ATRP共重合
[0205] 1.5 mLの2-ヒドロキシエチレンメタクリレート(HEMA)を1.5 mLの脱気脱イオン化水中に溶解する。CuCl(10.3 mg、0.1 mmol)、CuBr2(6.8 mg、0.03 mmol)および2,2’-ビピリジン(46 mg、0.29 mmol)をイニシエータ-修飾石英スライド(実施例7より)および非修飾対照石英スライドを両方とも含有するバイアルに添加する。バイアルをゴム隔膜でシールし、脱気する。次いで、モノマー溶液をバイアルに移し、そして均一な褐色溶液を穏やかに震盪させながら形成する。1.0 mLのFITC-MA溶液をシリンジを用いて導入する。重合を室温で一晩行う。次いで、石英スライドを反応混合物から取り出し、脱イオン化水、DMF、そして脱イオン化水で連続的にすすぎ、そして風乾する。475 nmでの励起による蛍光スペクトルを測定する(図18に示す)。FITC-MAとHEMAの表面開始重合(SIP)は、対照試料(空スライド)と比較した場合、蛍光ピークを示した。
【0186】
実施例12 非-蛍光モノマー(HEMA)および蛍光モノマー(FITC-MA)の、石英スライド上での表面開始ATRP共重合
[0206] ガラスチューブにFMA(75 mg)、NaOH(7.5 mg)、CuBr2(8 mg)、水(0.5 mL)およびHEMA(0.5 mL)を満たす。全ての材料を溶解した後、溶液のpH値をNaHCO3を添加することにより、約8に調整する。チューブ中の混合物を2回の凍結-ポンプ-融解サイクルにより脱気し、そして160μLのCuClおよびMe6TRENの溶液([Cu+1] = 0.5 mg/μl、CuCl:Me6TREN=1:1.5)を添加する。さらに凍結-ポンプ-融解サイクルを行ったのち、実施例7から得られるATRPイニシエータ修飾石英スライドをアルゴン下で添加し、そして次いで最終の凍結-ポンプ-融解サイクルを行う。重合を室温で一晩行う。次いで、石英スライドを反応混合物から取り出し、脱イオン化水、DMFおよびNaHCO3/Na2CO3バッファーを用いて連続的にすすぎ、そして風乾する。次いで、蛍光スペクトルをPerkin-Elmer LS55発光分光計を用いて460 nmでの励起で測定する。
【0187】
実施例13 ビオチン化-イニシエータ修飾石英スライドを用いた、非-蛍光モノマー(MPEO)および蛍光モノマー(FITC-MA)の表面開始ATRP共重合
[0207] ガラスチューブにFITC(20 mg)、NaOH(1.5 mg)、CuBr2(1.5 mg)、水(0.2 mL)そしてMPEO(0.1 mL)を満たす。全ての材料を溶解した後、溶液のpHをNaHCO3を用いて約8に調整する。チューブ中の混合物を2回の凍結-ポンプ-融解サイクルを用いて脱気し、そして28μLのCuClおよびMe6TRENの溶液([Cu+1] = 0.5 mg/μl、CuCl:Me6TREN = 1:1.5)を添加する。さらに凍結-ポンプ-融解サイクルを行った後、イニシエータ-修飾石英スライドをアルゴンの下で添加しそして最終の凍結-ポンプ-融解サイクルを行う。重合を室温で一晩行う。次いで、石英スライドを反応混合物から取り出し、そして脱イオン化水、DMFおよびNaHCO3/Na2CO3バッファーを用いて連続的にすすぎ、そして風乾する。次いで、蛍光スペクトルをPerkin-Elmer LS55発光分光計を用いて460 nmの励起ピークで測定する。
【0188】
【化8】

【0189】
実施例14 非-蛍光モノマー(MPEO)および蛍光モノマー(FITC-MA)の、イニシエータ修飾磁気粒子上での表面開始ATRP共重合
[0208] ガラスチューブを、FITC-MA(10 mg)、NaOH(2 mg)、CuBr2(0.8 mg)、水(0.1 mL)およびMPEO(0.1 mL)で満たす。全ての材料を溶液中で溶解したのち、溶液のpH値をNaHCO3を添加することにより約8に調整する。次いで、0.1 mLの磁気粒子溶液をシリンジにより添加する。チューブ中の混合物を3回の凍結-ポンプ-融解サイクルにより脱気する。次いで、14μLのCuClとMe6TRENの溶液([Cu] = 0.5 mg /μL、CuCl:Me6TREN = 1:1.5)を添加し、そして混合物を攪拌することなく一晩反応させる。酸化鉄粒子を磁石を用いて回収し、そして脱イオン化水を用いて3回、そしてNaHCO3/Na2CO3バッファー(pH = 9.6)を用いて2回、連続的に洗浄する。蛍光スペクトルを、Perkin-Elmer LS55発光分光計を用いて、460 nmでの励起により、NaHCO3/Na2CO3バッファー中で測定する。
【0190】
実施例15 消光の効果を観察するための、非-蛍光モノマー(MPEO)および蛍光モノマー(FITC-MA)の、イニシエータ修飾石英スライド上での表面開始ATRP共重合
[0209] 石英スライドを3-アミノプロピルトリエトキシシランとトリメトキシシラン(TMS)とを用いて修飾し、そしてNHS-ATRPイニシエータを用いて連続的に修飾する。1%(v/v)および10%(v/v)濃度の3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いて、2シリーズの石英スライドを調製する。シリーズ1の石英スライドは、1%(v/v)3-アミノプロピルトリエトキシシランと99%トリメトキシシラン(TMS)とを用いて修飾され、そしてNHS-ATRPイニシエータを用いて連続的に修飾される。シリーズ2の石英スライドは、10%(v/v)3-アミノプロピルトリエトキシシランと90%トリメトキシシラン(TMS)とを用いて修飾され、そしてNHS-ATRPイニシエータを用いて連続的に修飾される。1:0.3:2のモル比、そして25 mMの濃度でのCuCl:CuBr2:Bipyを、触媒として使用する。8回の異なる重合反応を、非-蛍光モノマー(MPEO)対蛍光モノマー(FITC-MA)のモル比を変化させることにより、1Mの合計濃度で行う。MPEOに対するFITC-MAのモル比は、100:0、1:0、1:1、1:2、1:5、1:10、1:20、1:50、および1:100である。トリメトキシシラン修飾石英スライドを1M濃度のFITC-MAおよびMPEOと共に使用する2つの対照試料:(TMS1およびTMS2)を、比較のために使用する。
【0191】
[0210] 図19および20は、シリーズ1の試料とシリーズ2の試料の蛍光像および蛍光強度を、MPEO対するFITC-MAのモル比の関数として示す。最適な強度は、1:20のモル比を使用して得られるようである。より高いモル比では、蛍光モノマー間のシグナルの消光が見られる。
【0192】
実施例16 イニシエータ修飾石英スライド上の非-蛍光モノマー(VBA)および二価ATRPモノマー(VBA-Lys)の表面開始ATRP共重合、および共有結合的官能化による重合後検出
[0211] 支持化ATRPイニシエータ石英表面上でのVBA-LysおよびVBAの共重合:ガラスチューブをVBA(100 mg)、VBA-リジン(10 mg)、NaOH(30 mg、溶液、100 mg/mL)、および水(0.1 mL)により満たす。材料を溶解し、そしてその後溶液のpHを固体NaHCO3を用いて約8に調整する。モノマーと触媒との混合物を凍結-ポンプ-融解サイクルにより3回脱気する。次いで、3.8μlのCuClおよび2,2’-ビピリジン(bpy)溶液([Cu+1] = 0.5 mg/μL、CuCl:bpy = 1:1.5)を添加し、そして混合物をイニシエータ、例えばイニシエータ-修飾石英、を含む種を含有する反応チャンバーに移す。一晩重合化させた後、反応を石英を過剰な水ですすぐことにより急冷する。このプロセスにより、図21に示す通り、リジン-標識ポリマーを得る。
【0193】
[0212] 表面結合VBA-Lys/VBAコポリマーの可視化:リジン-標識ポリマーをリジンの第1級アミンを介して様々な色素と抱合化することができる。例えば、図22に示すように、この実施例において、以前の工程に由来するリジン標識ポリマーを、塩基性条件の下でCy5 NHS-モノエステルを用いて染色し、そして蛍光的に定量する。表面開始重合(SIP)反応生成物の標識後の吸光度は対照よりも大きい。標識後のSIPポリマーの蛍光強度は、対照の蛍光強度よりも高く、そして標識前のSIPポリマーの蛍光強度よりも高い。
【0194】
実施例17 イニシエータ修飾石英スライド上での非-蛍光モノマー(VBA)の表面開始ATRP重合、および蛍光ポリマーを使用した重合後検出
[0213] 支持化ATRPイニシエータ石英表面上でのビニル安息香酸の重合。ビニル安息香酸、すなわちVBA(0.500 g、3.38 mmol)を0.126 gの炭酸水素ナトリウムおよび0.130 gの水酸化ナトリウムを含有する1.5 mLの脱気脱イオン化水中に溶解して、透明な溶液を形成する。CuBr(9.9 mg、0.138 mmol)、CuBr2(5.1 mg、0.023 mmol)および2,2’-ビピリジン(32 mg、0.207 mmol)を実施例7に由来するATRPイニシエータ修飾石英スライドと非修飾対照スライドを両方とも含有するバイアルに添加する。バイアルをゴム隔膜でシールし、そして脱気する。次いで、モノマー溶液をバイアルに移し、そして均一な褐色溶液を穏やかに震盪させることにより形成する。重合は室温で一晩行う。次いで、石英スライドを反応混合物から取り出し、脱イオン化水、DMF、および脱イオン化水を用いて連続的にすすぎ、そして風乾する。スライドのUV-visスペクトルを記録する(図23に示す)。
【0195】
[0214] 表面結合ポリ(ビニル安息香酸)の可視化。スライドの表面を染色するため、四級化ポリフルオレン-ブロック-ポリ(ジメチルアミノエチレンメタクリレート)を、1:1 DMSO/水中に溶解して、4 mg/mLの透明な溶液を形成する。スライドをこの溶液中に15分間浸し、そして脱イオン化水で完全にすすぐ。次いで、蛍光スペクトルを吸光度ピーク(本件の場合には約375 nm)またはその近傍で測定する(図23)。表面開始重合(SIP)反応生成物の標識後の吸光度は、対照の吸光度よりも高い。SIPポリマーの標識後の蛍光強度は、対照の蛍光強度よりも高く、そして標識前のSIPポリマーの蛍光強度よりも高い。
【0196】
[0215] 実施例18および19は、基質上に固定化されるイニシエータを使用する、ポリマー前駆体のROMP重合のための手順を記載する。
【0197】
実施例18 ROMPイニシエータ修飾ポリスチレンビーズを用いた、蛍光モノマーの表面開始ROMP重合
[0216] 支持化触媒-Bis(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウムジクロリドポリスチレン樹脂を使用する、Cy5-標識5-ノルボルネン-2-メタンアミンの重合。N2のもと、100 mlのDMF中Cy5-標識5-ノルボルネン-2-メタンアミン(4.2 mg、5.52×10-3mmol)の溶液を、実施例10のBis(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウムジクロリドポリスチレン樹脂に添加し、そして混合物を一晩震盪させる。ビーズをDMFを用いて、洗浄液が透明になるまで数回洗浄する。蛍光ポリマー-修飾ポリスチレンビーズを共焦点蛍光顕微鏡を用いて可視化する。
【0198】
実施例19 蛍光モノマー(Cy5-ノルボルネン)および非-蛍光モノマー(グルコネートノルボルネン)の、ROMPイニシエータ修飾石英スライドを使用する表面開始ROMP重合
[0217] 表面-官能化ROMPイニシエータを、表面-修飾ノルボルネン(ノルボルネンシランを使用)のROMP反応を、ROMP触媒(30 mg/mL)を使用して触媒することにより、合成する。表面-固定化ROMPイニシエータの2種の異なる濃度は、1%(v/v)および10%(v/v)濃度が使用される。
【0199】
[0218] 表面-固定化ROMP触媒を使用して、モノマー混合物(1M)(1:10モル比でのCy5-ノルボルネン(構造XVI)およびグルコネートノルボルネン(構造XVIII))の重合反応を開始する。表面-固定化ROMP触媒を使用して、1Mモノマー混合物(1:10モル比のCy5-PEG-ノルボルネンおよびグルコネートノルボルネン(構造XVIII))の重合反応も開始する。Cy5-NHSの単層を有する、アミン(1%(v/v)および10%(v/v)濃度)により官能化した石英スライド-表面を、対照として使用する。
【0200】
[0219] 実施例20および21は、基質上に固定化されたイニシエータを使用した、分岐鎖ポリマーの合成のための手順を記載する。
【0201】
実施例20 ATRPイニシエータ修飾石英スライドを使用した、蛍光モノマーの表面開始ATRP-ATRPグラフト重合
[0220] 石英スライドを、10%(v/v)3-アミノプロピルトリエトキシシランと90%トリメトキシシラン(TMS)とにより修飾し、そして続いてNHS-ATRPイニシエータにより修飾する。1:0.3:2のモル比でのCuCl:CuBr2:Bipy、25 mMの濃度を、触媒として使用する。最初のATRP反応において、1Mのヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を、25 mMの濃度で表面-固定化ATRPイニシエータを使用して15分間重合化する。次いで、ヒドロキシ-官能化ポリマーを、TEA(0.1M)中2-ブロモ臭化イソブチリル(0.1 M)と30分間反応させる。得られたブロモ-官能化メタクリレートポリマーを、Cu(I)Cl、Cu(II)Br2および2,2’-ビピリジル(1:0.3:2)触媒を25 mMの濃度で使用して、別のATRP重合反応に供する。使用されるモノマーは、1 Mの濃度でのFITC-MAおよびMPEOである(1:20、モル対モル)。図24〜26は、グラフト/分岐鎖ATRP-ATRP重合生成物、直鎖ATRP重合生成物、および対照試料(10%アミンの単層および空スライド)の蛍光像および蛍光強度値を示す。直鎖ポリマーは、30分間の重合時間の後の、5×シグナル増幅対対照試料を示す。分岐鎖ポリマーは、45分間の重合時間の後に、15×シグナル増幅対対照試料を示す。
【0202】
実施例21 ROMPイニシエータ修飾石英スライドを使用した、蛍光モノマーの表面開始ROMP-ATRPグラフト重合
[0221] 石英スライドを、10%(v/v)3-アミノプロピルトリエトキシシランと90%トリメトキシシラン(TMS)とにより修飾する。ATRPイニシエータ(ノルボルネン-メチルブロモイソブチレート)を、ノルボルネン-NHSおよびノルボルネンアセテートを用いて、THF溶液中ROMP法により共重合化し、そして次いで、得られたマクロ-イニシエータをアミン-コート化石英表面にNH2-NHS反応を介して移動させる。次いで、石英表面上に固定化された得られたブロモ-官能化ノルボルネンポリマーを、Cu(I)Cl、Cu(II)Br2および2,2’-ビピリジル(1:0.3:2)触媒を25 mMの濃度で使用するATRP重合反応に供する。使用するモノマーは、1 Mの濃度のFITC-MAおよびMPEO(1:20、モル対モル)である。
【0203】
[0222] 実施例22および23は、ATRPおよびROMPを介して単一反応混合物中で第一のポリマーおよび第二のポリマーを合成するための手順を記載する。
【0204】
実施例22 水相中での単一反応混合物における同時的ATRPおよびROMP重合
[0223] ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)およびノルボルネン-アセテートを、ATRPおよびROMPをそれぞれ使用して、水相中で単一反応混合物において、同時的に重合化する。ATRP反応用のイニシエータ/触媒の組合せは、25 mMの濃度の、有機ハロゲン化物およびCu(I)Cl、Cu(II)Br2および2,2’-ビピリジル(1:0.3:2)触媒である。ROMP反応を、(PCy32Cl2[Ru]=CHPh触媒を使用して開始する。。
【0205】
実施例23 THF中での単一反応混合物における同時的ATRPおよびROMP重合
[0224] ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)およびノルボルネン-アセテートをATRPおよびROMPそれぞれにより、THF中での単一反応混合物において同時的に重合化される。ATRP反応用のイニシエータ/触媒の組合せは、25 mMの濃度の有機ハロゲン化物およびCu(I)Cl、Me6Tren触媒である。ROMP反応は、(PCy32Cl2[Ru]=CHPh触媒を使用して開始される。
【0206】
実施例24 相補的DNA-アンチセンスDNAハイブリッドからの蛍光モノマーおよび非-蛍光モノマーの表面開始ATRP反応による分析対象物検出
[0225] DNA配列分析対象物は、ビオチン化DNA配列を分析対象物として使用して、そしてストレプトアビジン粒子を基質として使用する、基質上に固定化される。5’末端NH2残基を有するアンチセンスDNAプローブ配列を、NHS-ATRPイニシエータと反応させ、その後分析対象物とプローブをハイブリダイゼーションさせる。この後、DNA分析対象物およびアンチセンスDNAプローブのあいだでのハイブリダイゼーション反応を行う。ハイブリダイゼーションを5時間行う。ハイブリダイゼーション反応の後、分析対象物-プローブハイブリッドを、Cu(I)Cl、Cu(II)Br2および2,2’-ビピリジル(1:0.3:2.9)触媒を25 mMの濃度で使用するATRP反応に供する。使用されるモノマーは、1 Mの濃度のFITC-MAおよびMPEOである(1:20、モル対モル)。
【0207】
[0226] 一蛍光色素FAMを含むアンチセンスDNA配列をDNA修飾ストレプトアビジン粒子に対してハイブリダイズさせ、そして対照として使用する。図27は、対照試料とATRP重合を使用する被検試料のスキーム図である。図28は、表面-開始重合反応(SIPS)を使用して調製される被検試料および一色素を有する対照試料についての蛍光強度を示す。SIPS-試料は、一色素分子を有する試料と比較した場合、ほぼ1.5×のシグナル強度を示す。
【0208】
実施例25 2種の異なる分析対象物に対して結合することができる2種のプローブを使用した多重化
[0227] 本発明の多重化の例は、本実施例に化学的に異なる分析対象物(異なる相補的DNA配列)を認識する複数の化学的に異なるプローブ(異なるアンチセンスDNA配列)が含まれること以外は、実施例24と同様である。本実施例において、各タイプの化学的に異なるプローブを化学的に異なるイニシエータに結合させる。例えば、第一の分析対象物に結合する第一のアンチセンスDNA配列を、1またはそれ以上のATRPイニシエータに結合させることができ、一方第二の分析対象物に結合する第二のアンチセンスDNA配列を1またはそれ以上のROMPイニシエータに結合させることができる。本実施例にしたがい、試料を第一のアンチセンスDNA配列および第二のアンチセンスDNA配列に対して暴露し、それにより存在しうるいずれかの相補的DNA配列をアンチセンスDNA配列に対して結合することができる。DNA/DNAハイブリッドをATRP反応条件およびROMP反応条件に連続して暴露し、従ってATRPにより第一のポリマーを、そしてROMPにより第二のポリマーを形成する。さらに、第一のポリマーおよび第二のポリマーは色彩を有することができ、または互いとは異なる分析的シグナルを有することができる。すなわち、ポリマーを吸着することができおよび/または電磁スペクトルの異なる領域で発光することができる。従って、第一の分析対象物および第二の分析対象物の存在を、単一試料中で識別することができ、そして定量的に決定することができる。
【0209】
実施例26 一分析対象物に結合することができる2種のプローブを使用した単一分析対象物検出
[0228] 本発明の分析対象物の検出例は、本実施例に一分析対象物(相補的なDNA配列)上の異なる結合部位を認識する複数の化学的に異なるプローブ(異なるアンチセンスDNA配列)が含まれること以外は、実施例24と同様である。本実施例において、各タイプの化学的に異なるプローブを化学的に異なるイニシエータに結合させる。例えば、分析対象物DNA中の相補的配列に結合する第一のアンチセンスDNA配列は、ATRPイニシエータに対して結合することができ、一方、分析対象物DNA中の異なる相補的な配列に結合する第二のアンチセンスDNA配列は、ROMPイニシエータに対して結合することができる。本実施例にしたがい、試料を第一のアンチセンスDNA配列および第二のアンチセンスDNA配列に対して暴露し、それにより存在しうるいずれかの相補的DNA配列をアンチセンスDNA配列に対して結合することができる。次いで、DNA/DNAハイブリッドをATRP反応条件およびROMP反応条件に連続して暴露し、従ってATRPにより第一のポリマーを、そしてROMPにより第二のポリマーを形成する。第一のポリマーおよび第二のポリマーからの同時的なシグナルが観察される。従って、分析対象物の存在を、単一試料中で正確に識別することができ、そして定量的に決定することができる。
【0210】
[0229] 既存の物質、構成成分、または有効成分について言及し、その直後に、本明細書の開示に従って1またはそれ以上の他の物質、構成成分、または有効成分と初めに接触させ、in situで形成させ、ブレンドし、または混合する。常識や対応する分野における当業者(例えば、化学者)の通常の技術を利用しつつ本明細書の開示に従い実施する場合、反応生成物、得られる混合物、などとして同定される物質、構成成分または有効成分は、接触、in situ形成、ブレンド、または混合の操作の経過の間の化学反応または変換を通じて、同一性、特性、または特徴を獲得することができる。化学反応または開始物質の化学的生成物または最終物質への変換は、継続的に前進するプロセスであり、それが生じる速度の構成要素である。従って、そのような変換プロセスが進行中である場合、それらの反応速度的な寿命に依存して、開始物質と最終物質の混合物が存在することができ、ならびに中間体種が存在することができ、当業者に既知の現在の分析技術を用いて検出することは容易であるかまたは困難である。
【0211】
[0230] 単数形または複数形で言及されているかにかかわらず、本願明細書または請求の範囲において化学名または化学式により言及される反応物質および構成成分は、化学名または化学型により言及される別の物質(例えば、別の反応物質または溶媒)と接触させる前に存在していたものとして、同定することができる。得られた混合物、溶液、または反応溶媒中で生じる、予備的な化学変化および/または一過性の化学変化、変換、または反応は、存在する場合、中間体種、マスターバッチ等として特定することができ、そして反応生成物または最終物質の用途とは異なる用途を有する可能性がある。引き続いて生じるその他の変化、変換、または反応は、本明細書の開示に準じる条件下で、特定された反応物質および/または構成成分を一緒にすることから得ることができる。引き続いて生じるこれらのその他の変化、変換、または反応において、一緒にすべき反応物質、有効成分、または構成成分が、反応生成物または最終物質を特定しまたは示唆することができる。
【0212】
[0231] 上述の実施例は、本発明のいくつかの特徴を例示するものである。添付する請求の範囲は、本発明を考えられる限りできるだけ広く記載することを意図し、そして本明細書中に提示される実施例は、全ての可能性のある態様の多様性に由来する選択された態様を例示する。従って、添付する請求の範囲が使用される実施例の選択により本発明の例示的な特徴に限定されないことを、出願人は意図している。請求の範囲において使用されるように、単語“含む”およびその文法的な変形は、論理的に範囲を定めそして例えば、“本質的に〜からなる”や“〜からなる”などの様々な範囲の言い回しが含まれるが、それらには限定されない。必要であれば、範囲が提供され、そしてそのような範囲はその下の範囲の全てを含む。これらの範囲のバリエーションは当業者に示唆されており、そして既に公衆に捧げられたものでない場合、添付の請求の範囲はそのようなバリエーションをカバーすべきである、ということが期待されるべきである。科学および技術の進歩は、言語の不正確の理由により現在は企図されない、均等物および可能性のある置換を生み出す可能性がある;これらのバリエーションは、添付する請求の範囲によりカバーされるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のプローブ;
第一のプローブに結合した第一のイニシエータ構成成分;
第二のプローブ;および
第二のプローブに結合した第二のイニシエータ構成成分;
を含む組成物であって、
ここで第一のプローブおよび第二のプローブは、一つの分析対象物に結合することができ、そして
第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は、互いに近くに存在する場合そして第一のプローブおよび第二のプローブが分析対象物に対して結合することができる場合、イニシエータを形成することができる、
前記組成物。
【請求項2】
第一のプローブまたは第二のプローブの少なくとも一つが、静電相互作用、水素結合、疎水性相互作用、または親和性相互作用から生じる物理的結合形成の1またはそれ以上のものを介して、分析対象物に対して結合することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第一のプローブまたは第二のプローブの少なくとも一つが、共有結合形成を介して分析対象物に結合することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第一のプローブまたは第二のプローブの少なくとも一つが、生理学的条件下にて、約105 M-1より大きな結合定数を有する結合機構を介して分析対象物に対して結合することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
イニシエータが調節された重合反応を開始することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
イニシエータが、原子移動ラジカル重合タイプ、開環メタセシス重合タイプ、基移動重合タイプ、窒素酸化物-媒介性重合タイプ、または可逆性付加断片化連鎖移動重合タイプからなる群から選択される重合を開始することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
分析対象物をさらに含み、ここで第一のプローブおよび第二のプローブが分析対象物に対して結合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ポリマー前駆体を含み、イニシエータがポリマー前駆体の重合反応を開始することができる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物の反応生成物を含む、組成物。
【請求項10】
直鎖ポリマーまたは分岐鎖ポリマーをさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリマーが、約100 g/モル〜約100,0000 g/モルの範囲の数平均重合度(number average degree of polymerization)を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ポリマーが単峰型分子量分布を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
ポリマーが約1.5未満の多分散性を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
ポリマー前駆体が1またはそれ以上のシグナルジェネレータを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
シグナルジェネレータが、発色団、フルオロフォア、Raman-活性タグ、電気活性標識、磁気標識、または放射活性標識の1またはそれ以上のものを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
シグナルジェネレータが、酵素または酵素基質の1またはそれ以上のものを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
分析対象物が、大気-汚染物質、水質-汚染物質、土壌汚染物質、およびそれらの2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択される1またはそれ以上の汚染物質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
分析対象物が食肉副産物と関連する1またはそれ以上の損傷指示体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
分析対象物が、身体の自由を奪う物質、催涙物質、水疱発生剤、びらん剤、神経ガス、窒息剤、血液剤、臭気剤、およびこれらの2またはそれ以上の組合せからなる群から選択される1またはそれ以上の科学兵器を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
分析対象物が、病原体、毒素、およびこれらの組合せからなる群から選択される1またはそれ以上の生物兵器を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
分析対象物が、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖、脂質、酵素、酵素基質、抗原、ハプテン、アプタマー、ビタミン、およびこれらの2またはそれ以上の組合せからなる群から選択される1またはそれ以上の生体分子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
第一のプローブおよび第二のプローブが独立して核酸、タンパク質、糖、脂質、糖質、ビタミン、酵素、または酵素基質の1またはそれ以上のものを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
一つの分析対象物に結合することができる複数のプローブ対を含む請求項1に記載の組成物であって、ここでそれぞれのプローブ対は第一のイニシエータ構成成分に結合した第一のプローブおよび第二のイニシエータ構成成分に結合した第二のプローブを含み、そしてそれぞれのプローブ対はイニシエータ構成成分が互いに近くに存在する場合そしてプローブ対が分析対象物に結合する場合に形成されるイニシエータに結合することができる、前記組成物。
【請求項24】
室温で水溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
組成物が、室温で、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、またはN-メチルピロリジノンの1またはそれ以上のものからなる群から選択される有機溶媒中に可溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の組成物;
ポリマー前駆体;および
溶媒;
を含む、液体組成物。
【請求項27】
第一のイニシエータ構成成分に結合した第一のプローブ;
第二のイニシエータ構成成分に結合した第二のプローブ;および
ポリマー前駆体;
を含む分析対象物を検出することができる組成物を含む液体組成物であって、
ここで第一のプローブおよび第二のプローブは一つの分析対象物に結合することができ、第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分は互いに近くに存在する場合にそして第一のプローブおよび第二のプローブが分析対象物に結合する場合にイニシエータを形成することができ、そしてイニシエータはポリマー前駆体の重合反応を開始することができる、
前記液体組成物。
【請求項28】
分析対象物を介してポリマーと結合することができる、基質の表面に配置された分析対象物を含む基質;
第一のイニシエータ構成成分に結合した第一のプローブ、第二のイニシエータ構成成分に結合した第二のプローブ、および第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分が互いに近くに存在する場合に形成されるイニシエータ、
を含む、物品。
【請求項29】
基質が粒子、スライド、ゲル、細胞、組織試料、またはマイクロアレイの1またはそれ以上のものを含む、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
分析対象物のタイプ、分析対象物の量、または分析対象物のタイプおよび量の両方を検出することができる、請求項28に記載の物品を含む装置。
【請求項31】
請求項1に記載の組成物を分析対象物に接触させて、複合体を形成すること;ここで、この複合体が互いに近くに存在する第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分を含み;
第一のイニシエータ構成成分および第二のイニシエータ構成成分からイニシエータを形成し;そして
複合体を少なくとも一つのポリマー前駆体と接触させる;
ことを含む方法。
【請求項32】
ポリマー前駆体からポリマーを形成することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ポリマーからのシグナルを観察することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ポリマーを1またはそれ以上のシグナルジェネレータと接触させ、その後シグナルを観察することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
シグナルと、分析対象物のタイプ、分析対象物の量、または分析対象物のタイプと量の両方とを相関させることをさらに含む、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図16】
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【図21】
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【図4】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2010−521652(P2010−521652A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540416(P2009−540416)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/086328
【国際公開番号】WO2008/070639
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】