説明

組立装置

【課題】部材の移動操作の精度を特段に向上させる必要を生ずることなく、凸部を有する部材の凹部への挿入を短時間で完了することができ、さらに、ロボットアームの可搬重量や可動範囲が制限されることのない組立装置を提供する。
【解決手段】凹部を有する部品101または凸部を有する部品102を把持して移動操作し凹部103に凸部を有する部品102の凸部を挿入させるロボットアーム1と、凸部を有する部品102または凹部を有する部品101を保持する保持台4と、保持台4を挿入方向に直交する方向及び/又は挿入方向に直交する軸周りの回転方向に移動可能に支持する受動機構5とを備え、ロボットアーム1が凹部103に凸部を挿入させようとしたときに、保持台4に固定された部材が受ける挿入方向の並進力及び/又はこれに直交する軸周りのモーメントにより受動機構5が変位され、凸部を有する部品102の凸部が凹部103に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部または孔が設けられた部材(孔部品)と、凸部を有する部材または棒状部材(軸部品)とのいずれかを把持して移動操作し、凹部または孔が設けられた部材の凹部または孔に、凸部または棒状部材を挿入させる組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凸部を有する部材、例えば、棒状部材(軸部品)を把持して移動操作し、この棒状部材を、凹部が設けられた部材、例えば、孔が設けられた部材(孔部品)の孔(凹部)に挿入、嵌合させる組立装置が提案されている。
【0003】
このような組立装置としては、孔が設けられた部材を固定して支持し、この部材の孔の内径と棒状部材の外径との差(孔及び棒状部材間のクリアランス)よりも芯ずれが小さくなるように、棒状部材を高精度に移動操作できるように構成し、この棒状部材を孔に挿入できるようにしたものが提案されている。
【0004】
また、このような組立装置として、特許文献1には、ロボットアームに力覚センサを設け、このロボットアームによって棒状部材を把持し、棒状部材を孔が設けられた部材の孔に挿入させようとしたときに、棒状部材の先端が当接して受ける力(反力)を力覚センサにより検出し、受けた力の方向に応じて棒状部材を移動操作し、再度の挿入動作を行うようにしたピン挿入装置が提案されている。
【0005】
さらに、このような組立装置として、特許文献1には、ロボットアームに力覚センサ及び微小動作用のアクチュエータを設け、このロボットアームによって棒状部材を把持し、棒状部材を孔が設けられた部材の孔に挿入させようとしたときに、棒状部材の先端が当接して受ける力(反力)を力覚センサにより検出し、受けた力の方向に応じてアクチュエータを動作させて棒状部材を微小移動させ、再度の挿入動作を行うようにした組立装置が記載されている。
【0006】
また、従来、ロボットアームに、弾性を有し、または、並進及びねじれ方向に自由に動作する受動機構を設け、このロボットアームによって棒状部材を把持し、棒状部材を孔が設けられた部材の孔に挿入させようとしたときに、棒状部材の先端が当接して受ける力(反力)に応じて受動機構の位置及び姿勢が変化して棒状部材が移動し、挿入動作が行えるようにした組立装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−71760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述した従来の組立装置においては、芯ずれが孔及び棒状部材間のクリアランスよりも小さくなるように構成したものにおいては、棒状部材の移動操作を極めて高い精度で行う必要があり、特に、精密部品を扱う場合には、クリアランスが極めて小さいため、バックラッシュや装置の微小な撓みも重大な影響を与えるものとなり、装置の構成及び使用が困難となる。すなわち、極めて高い精度で部材の把持及び固定を行うことができる冶具や把持手段を用意しなければならず、また、装置の動作について精密な教示が必要となる。このような教示は部材の種類が変わるたびに実施しなければならず、極めて煩雑である。
【0009】
また、特許文献1に記載された組立装置及びさらに微小動作用のアクチュエータを設けた組立装置においては、力覚センサやアクチュエータなど多くの機構をロボットアームの先端部分に設ける必要があるため、その分、ロボットアームの可搬重量が制限されてしまうという問題がある。
【0010】
また、ロボットアームに受動機構を設けた組立装置においては、ロボットアームの動作によって把持した部材が振動してしまい、振動が収まるまで挿入操作ができず、迅速な作業ができないという問題がある。また、ロボットアームを横向きにすると重力によって受動機構より先端側が下方に降下してしまうので、上下方向の挿入操作しか行えない。そのため、受動動作にロック機構を設けるか、または、把持した部材の位置及び姿勢を検出するセンサを別途設けなければならず、装置構成が複雑化してしまう。
【0011】
さらに、これら組立装置においては、ロボットアームの先端部分が長くなってしまい、把持した部材の姿勢を所定量変化させるためにロボットアームを大きく動かす必要が生じ、可動範囲が制約されてしまうという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部材の移動操作の精度を特段に向上させる必要を生ずることなく、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を短時間で完了することができ、さらに、把持手段(ロボットアーム)の可搬重量や可動範囲が制限されることのない組立装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る組立装置は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0014】
〔構成1〕
凹部または孔が設けられた部材と凸部が設けられた部材または棒状部材とのいずれか一方を把持して移動操作し凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させる把持手段と、凹部または孔が設けられた部材と凸部が設けられた部材または棒状部材との他方を保持する保持台と、保持台を挿入方向に直交する方向及び挿入方向に直交する軸周りの回転方向に移動可能に支持する受動機構とを備え、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させようとしたときに、凸部または棒状部材の先端部と凹部または孔の周囲部とが当接した場合に、保持台に固定された部材が受ける並進力及び/又はこれらの軸周りのモーメントにより、受動機構が変位され、凸部または棒状部材が凹部または孔に挿入されることを特徴とするものである。
【0015】
なお、受動機構の変位は、並進3自由度と回転3自由度のどの自由度であってもよい。例えば、受動機構の変位は、挿入方向に対し直交する並進軸2自由度及びこれらの軸回り2自由度などであってもよい。
【0016】
〔構成2〕
構成1を有する組立装置において、保持台に設けられ、受動機構の変位を計測する変位センサと、変位センサによる検出結果に応じて、把持手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させようとしたときに、凸部または棒状部材の先端部と凹部または孔の周囲部とが当接した場合に、保持台に固定された部材が受ける並進力及び/又はこれらの軸周りのモーメントにより受動機構が変位されて凸部または棒状部材が凹部または孔に挿入されたときの受動機構の変位量を記録し、次に把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された受動機構の変位量に応じて、把持手段を制御して、凸部または棒状部材を凹部または孔に挿入させることを特徴とするものである。
【0017】
〔構成3〕
構成2を有する組立装置において、制御手段は、保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の受動機構の変位量を記録するとともに、保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた受動機構の変位量を記録しておき、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された保持台に固定された部材の搭載前後の受動機構の変位量の差にも応じて把持手段を制御することを特徴とするものである。
【0018】
すなわち、保持台に固定された部材に重心の偏りがあると、保持台に当該部材を載せただけで受動機構が変位するので,載せる前と後との受動機構の変位を計測しておき,載せたことによって受動機構が変位した分だけ、把持手段の動作開始点を変更し、さらに、棒状部材が孔に挿入されたときの受動機構の変位量に基づいて、把持手段を制御するものである。
【0019】
〔構成4〕
構成1を有する組立装置において、保持台に設けられ、受動機構の変位を計測する変位センサと、変位センサによる検出結果に応じて把持手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の受動機構の変位量を記録するとともに、保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた受動機構の変位量を記録しておき、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された保持台に固定された部材の搭載前後の受動機構の変位量の差に応じて把持手段を制御して、凸部または棒状部材を凹部または孔に挿入させることを特徴とするものである。
【0020】
すなわち、保持台に固定された部材に重心の偏りがあると、保持台に当該部材を載せただけで受動機構が変位するので,載せる前と後との受動機構の変位を計測しておき,載せたことによって受動機構が変位した分だけ、把持手段の動作開始点を変更するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る組立装置においては、構成1を有することにより、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させようとしたときに、凸部または棒状部材の先端部と凹部または孔の周囲部とが当接した場合に、保持台に固定された部材が受ける並進力及び/又はモーメントにより、受動機構が変位され、凸部または棒状部材が凹部または孔に挿入されるので、凸部または棒状部材と凹部または孔との相対位置が迅速に修正され、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を完了することができる。
【0022】
この組立装置においては、把持手段(ロボットアーム)としては受動機構等の特別の機構を有しない任意の把持手段を用いることができるので、把持手段の可搬重量や可動範囲が制限されることがない。また、この組立装置においては、把持手段に受動機構が設けられていないので、任意の方向の組立(挿入)を行うことができる。
【0023】
そして、本発明に係る組立装置においては、構成2を有することにより、制御手段は、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させようとしたときに、凸部または棒状部材の先端部と凹部または孔の周囲部とが当接した場合に、保持台に固定された部材が受ける並進力及び/又はモーメントにより受動機構が変位されて凸部または棒状部材が凹部または孔に挿入されたときの受動機構の変位量を記録し、次に把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された受動機構の変位量に応じて把持手段を制御して、凸部または棒状部材を凹部または孔に挿入させるので、凸部または棒状部材と凹部または孔との相対位置が迅速に修正され、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を完了することができる。
【0024】
この組立装置においても、把持手段としては受動機構等の特別の機構を有しない任意の把持手段を用いることができるので、把持手段の可搬重量や可動範囲が制限されることがない。また、この組立装置においては、把持手段に受動機構が設けられていないので、任意の方向の組立(挿入)を行うことができる。
【0025】
さらに、本発明に係る組立装置においては、構成3を有することにより、制御手段は、保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の受動機構の変位量を記録するとともに、保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた受動機構の変位量を記録しておき、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された該部材の搭載前後の受動機構の変位量の差にも応じて把持手段を制御するので、保持台に固定される部材に重心の偏りがあり、保持台に当該部材を載せただけで受動機構が変位する場合においても、載せたことによる受動機構の変位分だけ、把持手段の動作開始点が変更され、さらに、凸部または棒状部材が凹部または孔に挿入されたときの受動機構の変位量に基づいて、把持手段が制御されるので、凸部または棒状部材と凹部または孔との相対位置が迅速に修正され、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を完了することができる。
【0026】
さらに、本発明に係る組立装置においては、構成4を有することにより、制御手段は、保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の受動機構の変位量を記録するとともに、保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた受動機構の変位量を記録しておき、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された該部材の搭載前後の受動機構の変位量の差に応じて把持手段を制御して、凸部または棒状部材を凹部または孔に挿入させるので、保持台に固定される部材に重心の偏りがあり、保持台に当該部材を載せただけで受動機構が変位する場合においても、載せたことによる受動機構の変位分だけ、把持手段の動作開始点が変更され、凸部または棒状部材と凹部または孔との相対位置が迅速に修正され、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を完了することができる。
【0027】
すなわち、本発明は、部材の移動操作の精度を特段に向上させる必要を生ずることなく、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を短時間で完了することができ、さらに、把持手段の可搬重量や可動範囲が制限されることのない組立装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る組立装置の構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係る組立装置において、前回の挿入操作における検出値を反映した組立作業を示す側面図である。
【図3】本発明に係る組立装置において、動作の対象となる凹部が設けられた部材及び凸部が設けられた部材の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0030】
〔第1の実施の形態における組立装置の構成〕
図1は、本発明に係る組立装置の構成を示す側面図である。
【0031】
本発明に係る組立装置は、図1に示すように、把持手段となるロボットアーム1、制御手段3及び保持台4を有して構成されている。ロボットアーム1は、凹部が設けられた部材である孔が設けられた部材(以下、「孔部品」という。)101または凸部が設けられた部材である棒状部材(以下、「軸部品」という。)102のいずれかを保持治具1aを介して把持し、移動操作する。この実施の形態においては、ロボットアーム1は、孔部品101を把持するようになっている。また、この組立装置においては、保持台4には、軸部品102または孔部品101が固定される。この実施の形態においては、保持台4には、保持治具4aを介して軸部品102が固定される。
【0032】
この組立装置においては、ロボットアーム1は、把持した孔部品101を移動操作し、この孔部品101の孔103に、図1中矢印で示す挿入方向に、軸部品102を挿入させる。
【0033】
保持台4には、この保持台4を挿入方向に直交する方向及び挿入方向に直交する軸周りの回転方向に弾性的に移動可能に支持する受動機構5が設けられている。
【0034】
〔第1の実施の形態における組立装置の動作〕
この組立装置において、受動機構5の変位は、ロボットアーム1が孔103に軸部品102を挿入させようとしたときに、軸部品102の先端部と孔103の周囲部とが当接した場合に、軸部品102(保持台4に固定された部材)が受ける挿入方向の並進力及び/又はこれに直交する軸周りのモーメントによるものである。
【0035】
すなわち、この組立装置においては、ロボットアーム1が孔103に軸部品102を挿入させようとしたときに、軸部品102の先端部と孔103の周囲部とが当接しても、受動機構5が迅速に変位するため、孔103と軸部品102とが倣い、軸部品102を孔103に迅速、かつ、確実に挿入することができる。
【0036】
〔第2の実施の形態における組立装置の構成〕
この組立装置においては、保持台4に、この保持台4の変位量(すなわち、受動機構5の変位量)を計測する変位センサを設けてもよい。この変位センサ2は、ロボットアーム1が軸部品102を孔103に挿入させようとしたときに、軸部品102の先端部と孔103の周囲部とが当接した場合に、保持台4が受ける挿入方向の並進力及び/又はこれに直交する軸周りのモーメントに応じた受動機構5の変位を検出する。
【0037】
この組立装置においては、変位センサ2からの検出出力は、データ収集装置6によって収集され、制御手段となるロボット制御装置3に送られる。ロボット制御装置3は、変位センサ2により検出された受動機構5の変位量に基づき、ロボットアーム1を制御する。
【0038】
〔第2の実施の形態における組立装置の動作〕
図2は、本発明に係る組立装置において、前回の挿入操作における検出値を反映した組立作業を示す側面図である。
【0039】
この組立装置においては、図2中の(a)に示すように、孔部品101と軸部品102との間に毎回同じだけの位置ずれが想定され、その度に受動機構5が変位される場合には、この位置ずれに対応した受動機構5の変位量の情報を保存しておき、図2中の(b)に示すように、この変位量の情報に基づいてロボットアーム1を制御することにより、受動機構5を変位させずに、孔部品101と軸部品102とを組立てることができる。
【0040】
すなわち、孔部品101と軸部品102との間の位置ずれに対応した受動機構5の変位量の情報をロボット制御装置3に送信し、このロボット制御装置3により、ロボットアーム1の動作に、受動機構5の変位量の情報に対応した変位量を加算して制御することによって、受動機構5を変位させずに、孔部品101と軸部品102とを組立てることができる。
【0041】
例えば、最初の組立作業において、受動機構5がx方向に2mm、y方向に1mm変位されて組立作業が完了したとする。そして、次に組立作業を行うときには、ロボットアーム1を、x方向に−2mm、y方向に−1mmずれた場所を目標位置として制御することにより、挿入時に各部品101,102にかかる力を減らすことができ、より高速、かつ、部品に無理な力をかけずに組立作業を完了することができる。
【0042】
なお、本発明に係る組立装置において、受動機構5がダンパ要素のみを持つものである場合には、組立作業が完了した後、この受動機構5は、変位したままとなる。これを初期状態に戻すためには、テーパピンなどにより保持台4を初期位置に戻す構成や、あるいは、変位センサ2により計測された変位量だけ、ロボットアーム1により保持台4を押し戻すことが考えられる。
【0043】
さらに、この組立装置においては、ロボット制御装置3は、保持台4に固定される部材(孔部品101または軸部品102)を固定する前の受動機構5の変位量を記録するとともに、保持台4に固定される部材(孔部品101または軸部品102)を保持台4に固定した後の当該部材の重心の偏りによって生じた受動機構5の変位量を記録しておくようにしてもよい。
【0044】
そして、ロボットアーム1が孔103に軸部品102を挿入させるときに、記録された保持台4に固定される部材(孔部品101または軸部品102)の搭載前後の受動機構5の変位量の差に応じてロボットアーム1を制御して、軸部品102を孔103に挿入させるようにしてもよい。
【0045】
すなわち、保持台4に固定される部材に重心の偏りがあると、保持台4に当該部材を載せただけで受動機構5が変位するので,載せる前と後との受動機構5の変位を計測しておき,載せたことによって受動機構5が変位した分だけ、ロボットアーム1の動作開始点を変更することにより、軸部品102と孔103との相対位置が迅速に修正され、軸部品102の孔103への挿入を完了することができる。
【0046】
さらに、この組立装置においては、ロボット制御装置3は、保持台4に固定される部材(孔部品101または軸部品102)を保持台4に固定する前後の当該部材の重心の偏りによって生じた受動機構5の変位量を記録しておくとともに、受動機構5が変位されて軸部品102が孔103に挿入されたときの受動機構5の変位量も記録し、次にロボットアーム1が孔103に軸部品102を挿入させるときに、記録された受動機構5の変位量に応じて、ロボットアーム1を制御するようにしてもよい。
【0047】
すなわち、保持台4に固定される部材(孔部品101または軸部品102)に重心の偏りがあると、保持台4に当該部材を載せただけで受動機構5が変位するので,載せる前と後との受動機構5の変位を計測しておき,載せたことによって受動機構5が変位した分だけ、ロボットアーム1の動作開始点を変更し、さらに、軸部品102が孔103に挿入されたときの受動機構5の変位量に基づいて、ロボットアーム1を制御することにより、軸部品102と孔103との相対位置が迅速に修正され、軸部品102の孔103への挿入を完了することができる。
【0048】
図3は、本発明に係る組立装置において、動作の対象となる凹部が設けられた部材及び凸部が設けられた部材の形状を示す斜視図である。
【0049】
また、本発明に係る組立装置においては、動作の対象となる凹部が設けられた部材としては、図3に示すように、前述のような孔部品101に限定されず、また、凸部が設けられた部材としては、前述のような軸部品102に限定されない。
【0050】
すなわち、凹部が設けられた部材及び凸部が設けられた部材は、図5中の(a)に示すように、複数の凹部103a及び複数の凸部102aを有する部材であってもい。
【0051】
また、凹部が設けられた部材及び凸部が設けられた部材は、図5中の(b)に示すように、矩形の凹部103b及び矩形の凸部102bを有する部材であってもい。
【0052】
さらに、凹部が設けられた部材及び凸部が設けられた部材は、図5中の(c)に示すように、溝状の凹部103c及び突条102cを有する部材であってもい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、凹部または孔が設けられた部材(孔部品)と、凸部を有する部材または棒状部材(軸部品)とのいずれかを把持して移動操作し、凹部または孔が設けられた部材の凹部または孔に、凸部または棒状部材を挿入させる組立装置に適用される。
【符号の説明】
【0054】
1 ロボットアーム(把持手段)
2 変位センサ
3 ロボット制御装置
4 保持台
5 受動機構
101 孔部品
102 軸部品
103 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部または孔が設けられた部材と、凸部が設けられた部材または棒状部材とのいずれか一方を把持して移動操作し、前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させる把持手段と、
前記凹部または前記孔が設けられた部材と、前記凸部が設けられた部材または前記棒状部材との他方を保持する保持台と、
前記保持台を前記挿入方向に直交する方向及び前記挿入方向に直交する軸周りの回転方向に移動可能に支持する受動機構と
を備え、
前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させようとしたときに、前記凸部または前記棒状部材の先端部と前記凹部または前記孔の周囲部とが当接した場合に、前記保持台に固定された部材が受ける並進力及び/又はこれらの軸周りのモーメントにより、前記受動機構が変位され、前記前記凸部または棒状部材が前記凹部または前記孔に挿入される
ことを特徴とする組立装置。
【請求項2】
前記保持台に設けられ、前記受動機構の変位を計測する変位センサと、
前記変位センサによる検出結果に応じて、前記把持手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させようとしたときに、前記凸部または前記棒状部材の先端部と前記凹部または前記孔の周囲部とが当接した場合に、前記保持台に固定された部材が受ける並進力及び/又はこれらの軸周りのモーメントにより前記受動機構が変位されて前記凸部または前記棒状部材が前記凹部または前記孔に挿入されたときの前記受動機構の変位量を記録し、次に前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させるときに、記録された受動機構の変位量に応じて、前記把持手段を制御して、前記凸部または前記棒状部材を前記凹部または前記孔に挿入させる
ことを特徴とする請求項1記載の組立装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の前記受動機構の変位量を記録するとともに、前記保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた前記受動機構の変位量を記録しておき、前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させるときに、記録された前記保持台に固定された部材の搭載前後の前記受動機構の変位量の差にも応じて前記把持手段を制御する
ことを特徴とする請求項2記載の組立装置。
【請求項4】
前記保持台に設けられ、受動機構の変位を計測する変位センサと、
前記変位センサによる検出結果に応じて把持手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の前記受動機構の変位量を記録するとともに、前記保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた前記受動機構の変位量を記録しておき、前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させるときに、記録された前記保持台に固定された部材の搭載前後の前記受動機構の変位量の差に応じて前記把持手段を制御して、前記凸部または前記棒状部材を前記凹部または前記孔に挿入させる
ことを特徴とする請求項1記載の組立装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−214513(P2010−214513A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63475(P2009−63475)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】