説明

組立装置

【課題】移動操作精度を向上させず、凸部の凹部への挿入を短時間で完了でき、ロボットアームの可搬重量や可動範囲が制限されない組立装置を提供する。
【解決手段】凹部を有する部品101を把持して凹部103に凸部を有する部品102の凸部を挿入させるロボットアーム1と、凸部を有する部品102を保持する保持台4と、保持台4に設けられロボットアーム1が凹部103に凸部を有する部品102を挿入させるとき凹部を有する部品101又は凸部を有する部品102が受けるモーメントを検出する力覚センサ2と、保持台4を移動操作するアクチュエータ5aと、保持台4を挿入方向に直交する方向に移動可能に支持する受動機構5bとを備え、凹部103に凸部を有する部品102を挿入させるとき、保持台4に固定された部品が受ける挿入方向の並進力により受動機構5bが変位し、検出されたモーメントに基づきアクチュエータ5aにより保持台4を移動操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部または孔が設けられた部材(孔部品)と、凸部を有する部材または棒状部材(軸部品)とのいずれかを把持して移動操作し、凹部または孔が設けられた部材の凹部または孔に、凸部または棒状部材を挿入させる組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凸部を有する部材、例えば、棒状部材(軸部品)を把持して移動操作し、この棒状部材を、凹部が設けられた部材、例えば、孔が設けられた部材(孔部品)の孔(凹部)に挿入、嵌合させる組立装置が提案されている。
【0003】
このような組立装置としては、孔が設けられた部材を固定して支持し、この部材の孔の内径と棒状部材の外径との差(孔及び棒状部材間のクリアランス)よりも芯ずれが小さくなるように、棒状部材を高精度に移動操作できるように構成し、この棒状部材を孔に挿入できるようにしたものが提案されている。
【0004】
また、このような組立装置として、特許文献1には、ロボットアームに力覚センサを設け、このロボットアームによって棒状部材を把持し、棒状部材を孔が設けられた部材の孔に挿入させようとしたときに、棒状部材の先端が当接して受ける力(反力)を力覚センサにより検出し、受けた力の方向に応じて棒状部材を移動操作し、再度の挿入動作を行うようにしたピン挿入装置が提案されている。
【0005】
さらに、このような組立装置として、特許文献1には、ロボットアームに力覚センサ及び微小動作用のアクチュエータを設け、このロボットアームによって棒状部材を把持し、棒状部材を孔が設けられた部材の孔に挿入させようとしたときに、棒状部材の先端が当接して受ける力(反力)を力覚センサにより検出し、受けた力の方向に応じてアクチュエータを動作させて棒状部材を微小移動させ、再度の挿入動作を行うようにした組立装置が記載されている。
【0006】
また、従来、ロボットアームに、弾性を有し、または、並進及びねじれ方向に自由に動作する受動機構を設け、このロボットアームによって棒状部材を把持し、棒状部材を孔が設けられた部材の孔に挿入させようとしたときに、棒状部材の先端が当接して受ける力(反力)に応じて受動機構の位置及び姿勢が変化して棒状部材が移動し、挿入動作が行えるようにした組立装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−71760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述した従来の組立装置においては、芯ずれが孔及び棒状部材間のクリアランスよりも小さくなるように構成したものにおいては、棒状部材の移動操作を極めて高い精度で行う必要があり、特に、精密部品を扱う場合には、クリアランスが極めて小さいため、バックラッシュや装置の微小な撓みも重大な影響を与えるものとなり、装置の構成及び使用が困難となる。すなわち、極めて高い精度で部材の把持及び固定を行うことができる冶具や把持手段を用意しなければならず、また、装置の動作について精密な教示が必要となる。このような教示は部材の種類が変わるたびに実施しなければならず、極めて煩雑である。
【0009】
また、特許文献1に記載された組立装置及びさらに微小動作用のアクチュエータを設けた組立装置においては、力覚センサやアクチュエータなど多くの機構をロボットアームの先端部分に設ける必要があるため、その分、ロボットアームの可搬重量が制限されてしまうという問題がある。
【0010】
また、ロボットアームに受動機構を設けた組立装置においては、ロボットアームの動作によって把持した部材が振動してしまい、振動が収まるまで挿入操作ができず、迅速な作業ができないという問題がある。また、ロボットアームを横向きにすると重力によって受動機構より先端側が下方に降下してしまうので、上下方向の挿入操作以外は極めて困難で、受動動作にロック機構を設けるか、または、把持した部材の位置及び姿勢を検出するセンサを別途設けるなどの必要が生じ、装置構成が複雑化してしまう。
【0011】
さらに、これら組立装置においては、ロボットアームの先端部分が長くなってしまい、把持した部材の姿勢を所定量変化させるためにロボットアームを大きく動かす必要が生じ、可動範囲が制約されてしまうという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部材の移動操作の精度を特段に向上させる必要を生ずることなく、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を短時間で完了することができ、さらに、把持手段の可搬重量や可動範囲が制限されることのない組立装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る組立装置は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0014】
〔構成1〕
凹部または孔が設けられた部材と凸部を有する部材または棒状部材とのいずれか一方を把持して移動操作し凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させる把持手段と、凹部または孔が設けられた部材と凸部を有する部材または棒状部材との他方を保持する保持台と、把持手段または保持台に設けられ、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させようとしたときに、凸部または棒状部材の先端部と凹部または孔の周囲部とが当接した場合に、凹部または孔が設けられた部材または凸部を有する部材または棒状部材が受けるモーメントを検出する検出手段と、保持台を回転方向に移動操作するアクチュエータと、検出手段により検出されたモーメントに基づく演算を行いこの演算結果に応じてアクチュエータを制御する制御手段と、保持台を挿入方向に直交する方向に移動可能に支持する受動機構とを備え、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させようとしたときに、凸部または棒状部材の先端部と凹部または孔の周囲部とが当接した場合に、保持台に固定された部材が受ける並進力により、受動機構が変位され、制御手段は、検出手段により検出されたモーメントに基づき、アクチュエータにより保持台を移動操作させ、凸部または棒状部材を凹部または孔に挿入させることを特徴とするものである。
【0015】
なお、回転3自由度のどの自由度を検出手段により検出し、アクチュエータを動作させるかは任意である。例えば、検出手段による検出は、挿入方向に対し直交する軸回り2自由度であってもよい。
【0016】
また、受動機構の変位は、並進3自由度のうちどの自由度であってもよい。例えば、受動機構の変位は、挿入方向に対し直交する並進軸2自由度であってもよい。
【0017】
〔構成2〕
構成1を有する組立装置において、保持台に設けられ受動機構の変位を計測して検出結果を制御手段に送る変位センサを備え、制御手段は、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させようとしたときに、凸部または棒状部材の先端部と凹部または孔の周囲部とが当接した場合に、保持台に固定された部材が受ける並進力により受動機構が変位されて凸部または棒状部材が凹部または孔に挿入されたときの受動機構の変位量を記録し、次に把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された受動機構の変位量に応じて、把持手段を制御して、凸部または棒状部材を凹部または孔に挿入させることを特徴とするものである。
【0018】
〔構成3〕
構成2を有する組立装置において、制御手段は、保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の受動機構の変位量を記録するとともに、保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた受動機構の変位量を記録しておき、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された保持台に固定された部材の搭載前後の受動機構の変位量の差にも応じて把持手段を制御することを特徴とするものである。
【0019】
すなわち、保持台に固定された部材に重心の偏りがあると、保持台に当該部材を載せただけで受動機構が変位するので,載せる前と後との受動機構の変位を計測しておき,載せたことによって受動機構が変位した分だけ、把持手段の動作開始点を変更し、さらに、棒状部材が孔に挿入されたときの受動機構の変位量に基づいて、把持手段を制御するものである。
【0020】
〔構成4〕
構成1を有する組立装置において、保持台に設けられ、受動機構の変位を計測して検出結果を制御手段に送る変位センサを備え、制御手段は、保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の受動機構の変位量を記録するとともに、保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた受動機構の変位量を記録しておき、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された保持台に固定された部材の搭載前後の受動機構の変位量の差に応じて把持手段を制御して、凸部または棒状部材を凹部または孔に挿入させることを特徴とするものである。
【0021】
すなわち、保持台に固定された部材に重心の偏りがあると、保持台に当該部材を載せただけで受動機構が変位するので,載せる前と後との受動機構の変位を計測しておき,載せたことによって受動機構が変位した分だけ、把持手段の動作開始点を変更するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る組立装置においては、構成1を有することにより、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させようとしたときに、凸部または棒状部材の先端部と凹部または孔の周囲部とが当接した場合に、保持台に固定された部材が受ける並進力により、受動機構が変位されるとともに、制御手段は、検出手段により検出されたモーメントに基づき、アクチュエータにより保持台を移動操作させ、凸部または棒状部材を凹部または孔に挿入させるので、凸部または棒状部材と凹部または孔との相対位置を迅速に修正して、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を完了することができる。
【0023】
この組立装置においては、把持手段(ロボットアーム)としては受動機構等の特別の機構を有しない任意の把持手段を用いることができるので、把持手段の可搬重量や可動範囲が制限されることがない。また、アクチュエータの制御周期や位置精度を把持手段よりも高性能のものとすることにより、把持手段のみを制御する場合よりも高速、かつ、高精度の組立を行うことができる。また、この組立装置においては、把持手段に受動機構を設ける必要がないので、任意の方向の組立(挿入)を行うことができる。
【0024】
この組立装置においては、保持台に固定された部材が受ける並進力の方向については、受動機構(バネやダンパ)の固さに応じて、受けた並進力に対する位置が変位するだけなので、固定パラメータの受動機構を用いても、多品種に対応することができる。受動機構を用いることにより、構造を簡素化し、製造コストを抑えながら、高速の応答が可能となる。
【0025】
そして、検出手段により検出されるモーメントについては、アクチュエータを用いることにより、回転中心を任意の場所に移動させることができるので、多品種に対応することができる。アクチュエータの移動角度は、座標系の教示などによって校正することが容易であり、補正する角度の値は小さいので、検出手段及びアクチュエータの応答性が良好でない場合であっても、十分な補正が可能である。
【0026】
さらに、この組立装置において、アクチュエータには、任意の軸に対して任意の特性を持たせることができ、組立作業によって特性を変更したり、アクチュエータの弾性的な移動をなくすこともできる。例えば、組立(挿入)時には変位が大きくなっても過大な力がかからないようダンパ要素のみを持たせ、組立(挿入)後にばね要素を加えて原点に戻すなどの動作も容易に行うことができる。
【0027】
そして、本発明に係る組立装置においては、構成2を有することにより、制御手段は、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させようとしたときに、凸部または棒状部材の先端部と凹部または孔の周囲部とが当接した場合に、保持台に固定された部材が受ける並進力及び/又はモーメントにより受動機構が変位されて凸部または棒状部材が凹部または孔に挿入されたときの受動機構の変位量を記録し、次に把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された受動機構の変位量に応じて把持手段を制御して、凸部または棒状部材を凹部または孔に挿入させるので、凸部または棒状部材と凹部または孔との相対位置が迅速に修正され、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を完了することができる。
【0028】
この組立装置においても、把持手段としては受動機構等の特別の機構を有しない任意の把持手段を用いることができるので、把持手段の可搬重量や可動範囲が制限されることがない。また、この組立装置においては、把持手段に受動機構が設けられていないので、任意の方向の組立(挿入)を行うことができる。
【0029】
さらに、本発明に係る組立装置においては、構成3を有することにより、制御手段は、保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の受動機構の変位量を記録するとともに、保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた受動機構の変位量を記録しておき、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された該部材の搭載前後の受動機構の変位量の差にも応じて把持手段を制御するので、保持台に固定される部材に重心の偏りがあり、保持台に当該部材を載せただけで受動機構が変位する場合においても、載せたことによる受動機構の変位分だけ、把持手段の動作開始点が変更され、さらに、凸部または棒状部材が凹部または孔に挿入されたときの受動機構の変位量に基づいて、把持手段が制御されるので、凸部または棒状部材と凹部または孔との相対位置が迅速に修正され、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を完了することができる。
【0030】
さらに、本発明に係る組立装置においては、構成4を有することにより、制御手段は、保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の受動機構の変位量を記録するとともに、保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた受動機構の変位量を記録しておき、把持手段が凹部または孔に凸部または棒状部材を挿入させるときに、記録された該部材の搭載前後の受動機構の変位量の差に応じて把持手段を制御して、凸部または棒状部材を凹部または孔に挿入させるので、保持台に固定される部材に重心の偏りがあり、保持台に当該部材を載せただけで受動機構が変位する場合においても、載せたことによる受動機構の変位分だけ、把持手段の動作開始点が変更され、凸部または棒状部材と凹部または孔との相対位置が迅速に修正され、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を完了することができる。
【0031】
すなわち、本発明は、部材の移動操作の精度を特段に向上させる必要を生ずることなく、凸部または棒状部材の凹部または孔への挿入を短時間で完了することができ、さらに、把持手段の可搬重量や可動範囲が制限されることのない組立装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る組立装置の第1の実施の形態における構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係る組立装置の第1の実施の形態において、前回の挿入操作における検出値を反映した組立作業を示す側面図である。
【図3】本発明に係る組立装置の第2の実施の形態における構成を示す側面図である。
【図4】本発明に係る組立装置の第2の実施の形態において、前回の挿入操作における検出値を反映した組立作業を示す側面図である。
【図5】本発明に係る組立装置の第3の実施の形態において、動作の対象となる凹部が設けられた部材及び凸部が設けられた部材の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0034】
〔第1の実施の形態における組立装置の構成〕
図1は、本発明に係る組立装置の第1の実施の形態における構成を示す側面図である。
【0035】
本発明に係る組立装置は、図1に示すように、把持手段となるロボットアーム1、制御手段3及び保持台4を有して構成されている。ロボットアーム1は、凹部が設けられた部材である孔が設けられた部材(以下、「孔部品」という。)101または凸部が設けられた部材である棒状部材(以下、「軸部品」という。)102のいずれかを保持治具1aを介して把持し、移動操作する。この実施の形態においては、ロボットアーム1は、孔部品101を把持するようになっている。また、この組立装置においては、保持台4には、軸部品102または孔部品101が固定される。この実施の形態においては、保持台4には、保持治具4aを介して軸部品102が固定される。
【0036】
この組立装置においては、ロボットアーム1は、把持した孔部品101を移動操作し、この孔部品101の孔103に、図1中矢印で示す挿入方向に、軸部品102を挿入させる。
【0037】
保持台4には、には、この保持台4が軸部品102を介して受ける挿入方向に直交する軸回りのモーメントを計測する検出手段として、力覚センサ2が設けられている。この力覚センサ2は、ロボットアーム1が軸部品102を孔103に挿入させようとしたときに、軸部品102の先端部と孔103の周囲部とが当接した場合に、軸部品102を介して保持台4が受ける挿入方向に直交する軸周りのモーメントを検出する。
【0038】
なお、力覚センサ2は、回転3自由度のどの自由度を検出するものであってもよい。例えば、力覚センサ2は、挿入方向に対し直交する並進軸2自由度及びこれらの軸回り2自由度を検出するものでであってもよい。
【0039】
そして、保持台4には、この保持台4を挿入方向に直交する軸周りの回転方向に移動操作するアクチュエータ5aが設けられている。
【0040】
この組立装置においては、力覚センサ2からの検出出力は、制御手段3の演算装置3aに送られる。この制御手段3は、演算装置3aと、制御手段3bとから構成されている。演算装置3aは、力覚センサ2により検出されたモーメントに基づき、保持台4が受けた力に倣ってアクチュエータ5aを動作させるための倣い動作信号(移動角度及び角速度)を生成する。アクチュエータ5aは、倣い動作信号に応じて動作する。また、倣い動作信号は、制御手段3bに送られる。
【0041】
また、保持台4には、この保持台4を挿入方向に直交する方向に弾性的に移動可能に支持する受動機構5bが設けられている。この受動機構5bは、ロボットアーム1が孔103に軸部品102を挿入させようとしたときに、軸部品102の先端部と孔103の周囲部とが当接した場合に、軸部品102(保持台4に固定された部材)が受ける挿入方向の並進力により変位される。
【0042】
演算装置3aによって行なわれる処理は、力覚センサ2により取得された力覚情報から、アクチュエータ5aの動作指令を生成することである。力覚センサ2が計測する力覚の軸数は、アクチュエータ5aの制御に用いる軸数となるが、ここでは、図1に示すx軸周りのロール(Roll)及びy軸周りのピッチ(Pitch)の2軸について説明する。
【0043】
力覚センサ2により計測されたモーメントをFi、アクチュエータ5aへの指令角速度をviとする。ここで、iは、x軸周りのロール及びy軸周りのピッチのいずれかを示す。
【0044】
この組立装置において、アクチュエータ5aにより仮想的なダンパを構成するためには、2軸それぞれに対して、指令角速度を以下のように定めればよい。なお、ここで、Diは、仮想粘性係数である。
vi=−Fi/Di
【0045】
また、この組立装置において、アクチュエータ5aにより仮想的なダンパを構成する上で、目標の力(押し付け力など)を設定するためには、2軸それぞれに対して、指令角速度を以下のように定めればよい。なお、ここで、Fdiは、目標の力である。
vi=−(Fi−Fdi)/Di
【0046】
さらに、この組立装置において、アクチュエータ5aにより仮想的なインピーダンス(バネ、マス、ダンパ)を構成するためには、2軸それぞれについて、以下に示す微分方程式を解けばよい。なお、ここで、変数の肩の「′」は、時間による微分を示し、〔xi′(角度の微分)=vi(角速度)〕である。また、Mi、Di、Kiは、それぞれ仮想重量、仮想粘性、仮想バネ係数を示す。
Mi×xi′′+Di×xi′+Ki×xi=Fi
【0047】
これらの方法により角速度viを求め、アクチュエータ5aを駆動させる。アクチュエータ5aが角度入力を必要とする場合には、角速度viを積分した値を角度情報として入力し、また、トルクの入力を必要とする場合には、アクチュエータ5aの角速度が角速度viと一致するような制御系を構成して、トルクtiを求めればよい。
【0048】
〔第1の実施の形態における組立装置の動作〕
この組立装置においては、ロボットアーム1が孔103に軸部品102を挿入させようとしたときに、軸部品102の先端部と孔103の周囲部とが当接しても、受動機構5bが迅速に変位し、また、力覚センサ2により検出されたモーメントに基づき、保持台4が受けた力に倣ってアクチュエータ5aが動作するので、孔103と軸部品102とが倣い、軸部品102を孔103に迅速、かつ、確実に挿入することができる。
【0049】
図2は、本発明に係る組立装置の第1の実施の形態において、前回の挿入操作における検出値を反映した組立作業を示す側面図である。
【0050】
この組立装置においては、図2中の(a)に示すように、保持台4の傾きを変更しない場合において、孔部品101と軸部品102との間に毎回同じだけの傾きが想定される場合には、この傾きに対応したアクチュエータ5aの移動量の情報を保存しておき、図2中の(b)に示すように、この移動量の情報に基づいてロボットアーム1を制御することにより、アクチュエータ5aを駆動しなくとも、孔部品101と軸部品102とを組立てることができる。
【0051】
また、この組立装置において、受動機構5bの変位は、ロボットアーム1が孔103に軸部品102を挿入させようとしたときに、軸部品102の先端部と孔103の周囲部とが当接した場合に、軸部品102(保持台4に固定された部材)が受ける挿入方向の並進力によるものである。
【0052】
すなわち、孔部品101と軸部品102との間の傾き(角度ずれ)に対応したアクチュエータ5aの傾き量の情報を制御手段3bに送信し、この制御手段3bにより、ロボットアーム1の動作に、アクチュエータ5aの傾き量に対応した傾き量を加算して制御することによって、アクチュエータ5aを駆動させずに、孔部品101と軸部品102とを組立てることができる。
【0053】
例えば、最初の組立作業において、アクチュエータ5aをx軸回りに2°、y軸回りに1°傾けて組立作業が完了したとする。そして、次に組立作業を行うときには、ロボットアーム1を、x軸回りに−2°、y軸回りに−1°傾ける制御を行うことにより、挿入時に各部品101,102にかかる力を減らすことができ、より高速、かつ、部品に無理な力をかけずに組立作業を完了することができる。このとき、受動機構5bは、軸部品102の先端部と孔103の周囲部とが当接した場合に、軸部品102(保持台4に固定された部材)が受ける挿入方向の並進力に応じて変位し、軸部品102が孔103に挿入されるようにする。
【0054】
〔第2の実施の形態における組立装置の構成〕
図3は、本発明に係る組立装置の第2の実施の形態における構成を示す側面図である。
【0055】
この組立装置においては、図3に示すように、保持台4に、この保持台4の変位量(すなわち、受動機構5bの変位量)を計測する変位センサ7を設けてもよい。この変位センサ7は、ロボットアーム1が軸部品102を孔103に挿入させようとしたときに、軸部品102の先端部と孔103の周囲部とが当接した場合に、保持台4が受ける挿入方向の並進力に応じた受動機構5bの変位を検出する。
【0056】
この組立装置においては、変位センサ7からの検出出力は、データ収集装置6によって収集され、制御手段3に送られる。制御手段3は、変位センサ7により検出された受動機構5bの変位量に基づき、ロボットアーム1を制御する。
【0057】
〔第2の実施の形態における組立装置の動作〕
この組立装置においても、ロボットアーム1が孔103に軸部品102を挿入させようとしたときに、軸部品102の先端部と孔103の周囲部とが当接しても、受動機構5bが迅速に変位し、また、力覚センサ2により検出されたモーメントに基づき、保持台4が受けた力に倣ってアクチュエータ5aが動作するので、孔103と軸部品102とが倣い、軸部品102を孔103に迅速、かつ、確実に挿入することができる。
【0058】
図4は、本発明に係る組立装置の第2の実施の形態において、前回の挿入操作における検出値を反映した組立作業を示す側面図である。
【0059】
この組立装置においては、図4中の(a)に示すように、孔部品101と軸部品102との間に毎回同じだけの位置ずれが想定され、その度に受動機構5bが変位される場合には、この位置ずれに対応した受動機構5bの変位量の情報を保存しておき、図4中の(b)に示すように、この変位量の情報に基づいてロボットアーム1を制御することにより、受動機構5bを変位させずに、孔部品101と軸部品102とを組立てることができる。
【0060】
すなわち、孔部品101と軸部品102との間の位置ずれに対応した受動機構5bの変位量の情報を制御手段3に送信し、この制御手段3により、ロボットアーム1の動作に、受動機構5bの変位量の情報に対応した変位量を加算して制御することによって、受動機構5bを変位させずに、孔部品101と軸部品102とを組立てることができる。
【0061】
例えば、最初の組立作業において、受動機構5bがx方向に2mm、y方向に1mm変位されて組立作業が完了したとする。そして、次に組立作業を行うときには、ロボットアーム1を、x方向に−2mm、y方向に−1mmずれた場所を目標位置として制御することにより、挿入時に各部品101,102にかかる力を減らすことができ、より高速、かつ、部品に無理な力をかけずに組立作業を完了することができる。
【0062】
なお、本発明に係る組立装置において、受動機構5bがダンパ要素のみを持つものである場合には、組立作業が完了した後、この受動機構5bは、変位したままとなる。これを初期状態に戻すためには、テーパピンなどにより保持台4を初期位置に戻す構成や、あるいは、変位センサ7により計測された変位量だけ、ロボットアーム1により保持台4を押し戻すことが考えられる。
【0063】
さらに、この組立装置においては、制御手段3は、保持台4に固定される部材(孔部品101または軸部品102)を固定する前の受動機構5bの変位量を記録するとともに、保持台4に固定される部材(孔部品101または軸部品102)を保持台4に固定した後の当該部材の重心の偏りによって生じた受動機構5bの変位量を記録しておくようにしてもよい。
【0064】
そして、ロボットアーム1が孔103に軸部品102を挿入させるときに、記録された保持台4に固定される部材(孔部品101または軸部品102)の搭載前後の受動機構5bの変位量の差に応じてロボットアーム1を制御して、軸部品102を孔103に挿入させるようにしてもよい。
【0065】
すなわち、保持台4に固定される部材に重心の偏りがあると、保持台4に当該部材を載せただけで受動機構5bが変位するので,載せる前と後との受動機構5bの変位を計測しておき,載せたことによって受動機構5bが変位した分だけ、ロボットアーム1の動作開始点を変更することにより、軸部品102と孔103との相対位置が迅速に修正され、軸部品102の孔103への挿入を完了することができる。
【0066】
さらに、この組立装置においては、制御手段3は、保持台4に固定される部材(孔部品101または軸部品102)を保持台4に固定する前後の当該部材の重心の偏りによって生じた受動機構5bの変位量を記録しておくとともに、受動機構5bが変位されて軸部品102が孔103に挿入されたときの受動機構5bの変位量も記録し、次にロボットアーム1が孔103に軸部品102を挿入させるときに、記録された受動機構5bの変位量に応じて、ロボットアーム1を制御するようにしてもよい。
【0067】
すなわち、保持台4に固定される部材(孔部品101または軸部品102)に重心の偏りがあると、保持台4に当該部材を載せただけで受動機構5bが変位するので,載せる前と後との受動機構5bの変位を計測しておき,載せたことによって受動機構5bが変位した分だけ、ロボットアーム1の動作開始点を変更し、さらに、軸部品102が孔103に挿入されたときの受動機構5bの変位量に基づいて、ロボットアーム1を制御することにより、軸部品102と孔103との相対位置が迅速に修正され、軸部品102の孔103への挿入を完了することができる。
【0068】
〔第3の実施の形態における組立装置の構成〕
本発明に係る組立装置においては、力覚センサ2は、状況に応じて、保持台4にではなく、ロボットアーム1の先端側に設けるようにしてもよい。すなわち、力覚センサ2は、より計測レンジの狭い小型な力覚センサで足りる側に設ければよい。また、力覚センサ2は、ロボットアーム1及び保持台4のうち、孔部品101を保持する側に設けることが望ましい。
【0069】
すなわち、本発明に係る組立装置においては、力覚センサ2及び受動機構5bを保持台4に設ける構成(第1の実施の形態)の他に、力覚センサ2をロボットアーム1の先端側に設け受動機構5bを保持台4に設ける構成の2通りの構成が考えられる。
【0070】
図5は、本発明に係る組立装置の第3の実施の形態において、動作の対象となる凹部が設けられた部材及び凸部が設けられた部材の形状を示す斜視図である。
【0071】
また、本発明に係る組立装置においては、動作の対象となる凹部が設けられた部材としては、図5に示すように、前述のような孔部品101に限定されず、また、凸部が設けられた部材としては、前述のような軸部品102に限定されない。
【0072】
すなわち、凹部が設けられた部材及び凸部が設けられた部材は、図5中の(a)に示すように、複数の凹部103a及び複数の凸部102aを有する部材であってもい。
【0073】
また、凹部が設けられた部材及び凸部が設けられた部材は、図5中の(b)に示すように、矩形の凹部103b及び矩形の凸部102bを有する部材であってもい。
【0074】
さらに、凹部が設けられた部材及び凸部が設けられた部材は、図5中の(c)に示すように、溝状の凹部103c及び突条102cを有する部材であってもい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、凹部または孔が設けられた部材(孔部品)と、凸部を有する部材または棒状部材(軸部品)とのいずれかを把持して移動操作し、凹部または孔が設けられた部材の凹部または孔に、凸部または棒状部材を挿入させる組立装置に適用される。
【符号の説明】
【0076】
1 ロボットアーム(把持手段)
2 力覚センサ
3 制御手段
4 保持台
5a アクチュエータ
5b 受動機構
7 変位センサ
101 孔部品
102 軸部品
103 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部または孔が設けられた部材と、凸部を有する部材または棒状部材とのいずれか一方を把持して移動操作し、前記凹部または孔に前記凸部または棒状部材を挿入させる把持手段と、
前記凹部または前記孔が設けられた部材と、前記凸部を有する部材または前記棒状部材との他方を保持する保持台と、
前記把持手段または前記保持台に設けられ、前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させようとしたときに、前記凸部または前記棒状部材の先端部と前記凹部または前記孔の周囲部とが当接した場合に、前記凹部または前記孔が設けられた部材または前記凸部を有する部材または前記棒状部材が受けるモーメントを検出する検出手段と、
前記保持台を回転方向に移動操作するアクチュエータと、
前記検出手段により検出されたモーメントに基づく演算を行い、この演算結果に応じてアクチュエータを制御する制御手段と、
前記保持台を前記挿入方向に直交する方向に移動可能に支持する受動機構と
を備え、
前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させようとしたときに、前記凸部または前記棒状部材の先端部と前記凹部または前記孔の周囲部とが当接した場合に、前記保持台に固定された部材が受ける並進力により、前記受動機構が変位され、
前記制御手段は、前記検出手段により検出されたモーメントに基づき、前記アクチュエータにより前記保持台を移動操作させ、前記凸部または前記棒状部材を前記凹部または前記孔に挿入させる
ことを特徴とする組立装置。
【請求項2】
前記保持台に設けられ、前記受動機構の変位を計測して検出結果を前記制御手段に送る変位センサを備え、
前記制御手段は、前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させようとしたときに、前記凸部または前記棒状部材の先端部と前記凹部または前記孔の周囲部とが当接した場合に、前記保持台に固定された部材が受ける並進力により前記受動機構が変位されて前記凸部または前記棒状部材が前記凹部または前記孔に挿入されたときの前記受動機構の変位量を記録し、次に前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させるときに、記録された受動機構の変位量に応じて、前記把持手段を制御して、前記凸部または前記棒状部材を前記凹部または前記孔に挿入させる
ことを特徴とする請求項1記載の組立装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の前記受動機構の変位量を記録するとともに、前記保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた前記受動機構の変位量を記録しておき、前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させるときに、記録された前記保持台に固定された部材の搭載前後の前記受動機構の変位量の差にも応じて前記把持手段を制御する
ことを特徴とする請求項2記載の組立装置。
【請求項4】
前記保持台に設けられ、前記受動機構の変位を計測して検出結果を前記制御手段に送る変位センサを備え、
前記制御手段は、前記保持台に固定される部材を該保持台に固定する前の前記受動機構の変位量を記録するとともに、前記保持台に固定される部材を該保持台に固定した後の該部材の重心の偏りによって生じた前記受動機構の変位量を記録しておき、前記把持手段が前記凹部または前記孔に前記凸部または前記棒状部材を挿入させるときに、記録された前記保持台に固定された部材の搭載前後の前記受動機構の変位量の差に応じて前記把持手段を制御して、前記凸部または前記棒状部材を前記凹部または前記孔に挿入させる
ことを特徴とする請求項1記載の組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−214514(P2010−214514A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63476(P2009−63476)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】