組電池の電圧検出装置及びこれを具えたバッテリシステム
【課題】
組電池との間の配線に断線が発生していないにも拘わらず、断線が発生したと誤って判断されることを防止することが出来る電圧検出回路を提供する。
【解決手段】
本発明に係る電圧検出装置においては、複数の電圧入力端子からそれぞれ電圧検出線が引き出され、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路には容量素子が介在し、各電圧検出線は電圧検出手段に接続されている。少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線がそれぞれ1或いは複数の断線検知用抵抗を介してグランドに接続されており、電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて組電池の複数の電圧検出点と複数の電圧入力端子との間の配線の断線を検知する。
組電池との間の配線に断線が発生していないにも拘わらず、断線が発生したと誤って判断されることを防止することが出来る電圧検出回路を提供する。
【解決手段】
本発明に係る電圧検出装置においては、複数の電圧入力端子からそれぞれ電圧検出線が引き出され、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路には容量素子が介在し、各電圧検出線は電圧検出手段に接続されている。少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線がそれぞれ1或いは複数の断線検知用抵抗を介してグランドに接続されており、電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて組電池の複数の電圧検出点と複数の電圧入力端子との間の配線の断線を検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する装置であって、特に、組電池との間の配線(例えば、ワイヤハーネスなど)の断線を検知することが可能な電圧検出装置及び該装置を具えたバッテリシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車においては、走行用モータの電源として、複数のリチウムイオン二次電池(セル)を直列に接続してなる組電池が搭載されているが、組電池を構成するセルが過充電状態或いは過放電状態になると、発煙や発火が起こる危険性がある。そこで、図20に示す如きバッテリシステムを構成して、組電池を構成する各セルの両端電圧を監視することが行なわれている。
【0003】
該バッテリシステムは、リチウムイオン二次電池からなる複数(図示する例では10個)のセルB1〜B10を直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(6)とを具えており、組電池(1)の両端P1、P11及びセルどうしの連結点P2〜P10と電圧検出装置(6)の11個の電圧入力端子(601)〜(611)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池(1)の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0004】
電圧検出装置(6)においては、前記11個の電圧入力端子(601)〜(611)からそれぞれ電圧検出線(621)〜(631)が引き出され、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路(641)〜(650)には、静電気電圧から回路を保護するためのコンデンサC1〜C10が介在している。11本の電圧検出線(621)〜(631)の内、第1番目の電圧検出線(621)からは電源ライン(620)が引き出され、電圧検出装置(6)の電源端子(図示省略)に接続されている。又、第11番目の電圧検出線(631)は、グランドに接続されている。11本の電圧検出線(621)〜(631)はアナログ−デジタルコンバータ(以下、ADCという)(61)の11個の入力端子に接続され、該ADC(61)の1つの出力端子はマイクロコンピュータからなる制御回路(62)に接続されている。
【0005】
上記電圧検出装置(6)においては、11本の電圧検出線(621)〜(631)にそれぞれ、組電池(1)を構成する各セルB1〜B10の正極或いは負極の電位が発生することとなり、11本の電圧検出線(621)〜(631)の電位がそれぞれADC(61)の11個の入力端子に入力される。ADC(61)は、隣り合う2つの入力端子間の各電位差、即ち各セルの両端電圧をデジタルの電圧検出データに変換して出力端子から出力する。制御回路(62)は、ADC(61)の出力端子から得られる10セル分の電圧検出データに基づいて、各セルが過充電状態或いは過放電状態となっていないかどうかを監視する。
【0006】
ところで、ハイブリッド自動車のバッテリシステムにおいては、構造上、組電池と電圧検出装置とを互いに接続するワイヤハーネスが断線しやすく、ワイヤハーネスが断線すると、各セルの両端電圧を正確に検出することが出来なくなるという不具合が生じる。
【0007】
そこで、従来は組電池との間のワイヤハーネスの断線を検知する機能を有する電圧検出装置を設けて、断線の検知を行なうこととしている。
【0008】
例えば図21に示す電圧検出装置は、5個のセルB1〜B5に対してそれぞれ並列に接続されたコンデンサC11〜C15と、セルB1〜B5とコンデンサC11〜C15との間に設けられた第1スイッチング回路(71)と、コンデンサC11〜C15の両端電圧をそれぞれ選択的に検出する1つのコンデンサ電圧検出回路(74)と、コンデンサC11〜C15とコンデンサ電圧検出回路(74)との間に設けられた第2スイッチング回路(72)と、各コンデンサの両端を電圧検出後に短絡する第3スイッチング素子(73)とを具えている(特許文献1)。コンデンサC12、C14の容量は、コンデンサC11、C13、C15の容量のm倍(m>1)に設定されている。
【0009】
上記電圧検出装置においては、例えば図21中に×印で示す如くセルB3とセルB4の連結点P4から伸びるワイヤハーネスに断線が発生した場合、上述の如くコンデンサC13の容量はコンデンサC14の容量の1/m倍に設定されているので、コンデンサC13の両端には、コンデンサC14の両端にかかる電圧のm倍の電圧がかかることになる。そこで、隣り合う2つのコンデンサの両端電圧の比率がm或いは1/mとなったときに、断線が発生したものと判断される。
【0010】
尚、組電池を構成する複数のセルの両端にそれぞれ接続されるべき検出端子を具え、奇数番目のセルの検出端子間を短絡すると共に偶数番目のセルの検出端子間を開放したときに異常検出回路から出力される信号と、奇数番目のセルの検出端子間を開放すると共に偶数番目のセルの検出端子間を短絡したときに異常検出回路から出力される信号とに基づいてセルと検出端子との間の断線を検出する異常検出装置が提案されている(特許文献2)。
【0011】
又、電圧測定線を介して二次電池の出力する電圧が入力される複数の電圧入力端子と、電圧入力端子間に接続された複数の電圧センサと、電圧入力端子間に接続された複数の定電流源とを具え、電圧センサによって電圧測定線に断線が発生したことを検知することが可能な電圧測定回路が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2007−225484号公報
【特許文献2】特開2005−168118号公報
【特許文献3】特開2006−27528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図21に示す従来の電圧検出装置においては、組電池を構成する各セルの充電状態によっては、断線が発生していないにも拘わらず、断線が発生したと誤って判断される事態が発生する問題があった。
【0013】
即ち、組電池を構成する複数のセルの充電状態にばらつきが生じて、隣り合う2つのセルの両端電圧の比率がm或いは1/mとなったときには、これらのセルにそれぞれ並列に接続された2つのコンデンサの両端電圧の比率がm或いは1/mとなるので、断線が発生したと誤って判断されることになる。
【0014】
本発明の目的は、組電池との間の配線に断線が発生していないにも拘わらず、断線が発生したと誤って判断されることを防止することが出来る電圧検出装置及びこれを具えたバッテリシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る第1の電圧検出装置は、複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する装置であって、配線を介して組電池の複数の電圧検出点(組電池の両端及びセルどうしの連結点)と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路とを具え、該複数の第1連結線路の各第1連結線路には容量素子が介在し、各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されている。そして、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線(全ての電圧検出線、或いは組電池の負極側の端部に位置することとなる電圧検出線を除く一部の電圧検出線)がそれぞれ1或いは複数の断線検知用抵抗を介してグランドに接続され、前記電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて組電池の複数の電圧検出点と前記複数の電圧入力端子との間の配線の断線を検知する断線検知手段を具えている。
【0016】
上記本発明に係る第1の電圧検出装置において、何れの配線にも断線が発生していない正常な状態では、各セルから隣り合う2本の電圧検出線の間に介在する各容量素子に電流が供給されて各容量素子は電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されることとなって、各電圧検出線には各セルの正極或いは負極の電位が発生することとなる。従って、電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0017】
これに対し、例えばある1本の配線に断線が発生した場合には、該配線に接続されている電圧検出線の負極側に接続されている容量素子に対する電流の供給が停止されて、該容量素子から蓄えられていた電荷が放出されて該電圧検出線及び断線検知用抵抗を経てグランドへ流れ込み、該電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位よりも低下して零或いは略零となる。従って、断線検知手段は、正極側の電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位を下回ったとき、或いは電圧検出線の電位が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することが出来る。ここで閾値は、例えば、電圧検出線毎に設定され、各閾値は、組電池の負極側の端部に位置する電圧検出線と各電圧検出線との間に介在する全てのセルの充電容量が零となったときのそれらのセル電圧の積算値以下の値に設定される。
【0018】
上記本発明に係る第1の電圧検出装置においては、組電池を構成する複数のセルの充電状態にどの様なばらつきが生じていても、断線が発生していない正常な状態では、正極側の電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位よりも低くなることはなく、電圧検出線の電位が前記所定の閾値を下回って零或いは略零となることもないので、断線が発生していないにも拘わらず断線が発生したと誤って判断されることはない。
【0019】
また、上記第1の電圧検出装置において、前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第2連結線路を備え、該複数の第2連結線路の各第2連結線路に、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする。
【0020】
この様にすることで、何れの配線にも断線が発生していない正常な状態では、各セルから隣り合う2本の電圧検出線の間に介在する各容量素子に電流が供給されて各容量素子は電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されることとなって、各電圧検出線には各セルの正極或いは負極の電位が発生することとなる。従って、電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0021】
これに対し、例えばある1本の配線に断線が発生した場合には、該配線に接続されている電圧検出線の負極側に接続されている容量素子に対する電流の供給が停止されて、該容量素子から蓄えられていた電荷が放出されて該電圧検出線及び断線検知用抵抗を経てグランドへ流れ込み、該電圧検出線の電位が低下する。この過程で該電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位と等しくなったとき、電流が該負極側電圧検出線から整流素子を経て断線が発生した配線に接続されている電圧検出線に流れ始めるため、該電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位よりも低下することはなく、両電圧検出線の電位差は零或いは略零となる。従って、断線検知手段は、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することが出来る。ここで閾値は、例えば隣り合う2本の電圧検出線毎、即ちセル毎に設定され、各閾値は、各セルの充電容量が零となったときの両端電圧以下の値に設定される。
【0022】
尚、整流素子を具えていない構成においては、ある1本の配線に断線が発生した場合、断線が発生した配線に接続されている電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位よりも低くなって、両電圧検出線がそれぞれ接続されている電圧検出手段の2つの入力端子間に正負が逆の電圧が印加されると共に、断線が発生した配線に接続されている電圧検出線と隣接する正極側の電圧検出線がそれぞれ接続されている電圧検出手段の2つの入力端子間に高電圧が印加されることになる。
【0023】
これに対し、上記のように整流素子を具えている電圧検出装置においては、隣り合う2本の電圧検出線の間に整流素子が順方向を組電池の正極側に向けて介在しているので、上述の如く断線が発生した配線に接続されている電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位よりも低くなることはなく、電圧検出手段に正負が逆の電圧が印加されると共に高電圧が印加されることを防止することが出来る。
【0024】
具体的構成において、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線からそれぞれ電流線路が引き出され、複数本の電流線路の内、1本の電流線路の先端は断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子を介してグランドに接続され、他の電流線路の先端は該1本の電流線路に接続され、各電流線路に前記1或いは複数の断線検知用抵抗が介在している。
【0025】
断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子がオンの状態では、組電池を構成する各セルから僅かな電流が電圧検出線及び断線検知用抵抗を経てグランドに流れ込む。従って、例えば電圧検出装置の電源がオフであって断線を検知することが出来ない状態であるときに前記スイッチング素子をオンに設定した場合には、各セルの電力が無駄に消費されることになる。
【0026】
そこで、上記具体的構成においては、例えば電圧検出装置の電源がオンに設定されたときにのみ断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子がオンに設定され、これによって各セルの電力が無駄に消費されることを防止することが出来る。
【0027】
又、具体的構成において、各電流線路には、整流素子が順方向をグランド側に向けて介在している。これによって、電圧の高い電流線路から電圧の低い電流線路に電流が逆流することを防止することが出来る。
【0028】
更に具体的構成において、1本の電圧検出線に接続されている断線検知用抵抗は1つであって、該断線検知用抵抗の抵抗値は、組電池の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定されている。
【0029】
組電池を構成する各セルから僅かな電流が電圧検出線及び断線検知用抵抗を経てグランドに流れ込む。ここで、組電池の正極側の端部に位置する第1番目のセルからは第1番目の断線検知用抵抗のみ、第2番目のセルからは第1番目と第2番目の断線検知用抵抗、第3番目のセルからは第1番目と第2番目と第3番目の断線検知用抵抗・・・第n番目のセルからは第1番目〜第n番目の断線検知用抵抗に電流が流れ込むことになるが、各セルの消費電流にばらつきが発生すると各セルの両端電圧にばらつきが発生することになる。そこで、断線検知用抵抗の抵抗値は、組電池の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定されており、これによって各セルの消費電流のばらつきを小さく抑えることが出来る。
【0030】
また、1本の電圧検出線に接続されている断線検知用抵抗は複数であって、それら複数の断線検知用抵抗の抵抗値の和(合成抵抗値)は、組電池の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定されている。
【0031】
具体的構成において、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線(全ての電圧検出線、或いは組電池の負極側の端部に位置することとなる電圧検出線を除く一部の電圧検出線)にはそれぞれ、断線検知用抵抗との連結点よりも電圧入力端子側にPTC素子が介在している。
【0032】
上記具体的構成においては、電圧検出線に過電流が流れたとき、PTC素子が発熱し、これに伴って電気抵抗値が急増する。この結果、電圧検出線を流れる過電流がPTC素子によって遮断されることになる。これによって、PTC素子の後段回路に過電流が流れることを防止することが出来る。又、配線に断線が発生していない状態であっても、各セルから僅かな電流がPTC素子及び断線検知用抵抗を経てグランドに流れ込むのであるが、PTC素子の抵抗値は通常の状態では数Ω程度であるので、PTC素子による電圧降下量は無視できる程度の量となる。従って、PTC素子を具えていない電圧検出装置と同程度の高い精度で各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0033】
ところで、従来、組電池を構成する各セルの充電状態を均等化する機能を有する電圧検出装置が知られている。
【0034】
例えば図22に示す従来の電圧検出装置(8)においては、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路(851)〜(860)に、トランジスタからなる1つの第1放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW10と均等化用抵抗rとを直列に接続してなる放電回路(80)が介在している。各放電回路(80)の第1放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW10のベースから電流線路(861)〜(870)が引き出され、各電流線路の先端が第2放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20を介してグランドに接続されている。各第2放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20は制御回路(82)によってオン/オフ制御される。
【0035】
又、各電流線路(861)〜(870)には、第1のスイッチング制御用抵抗R31〜R40が介在しており、各抵抗の放電回路(80)側の一端と各放電回路(80)の正極側の電圧検出線(821)〜(830)とを互いに連結する各連結線路(871)〜(880)には、第2のスイッチング制御用抵抗R41〜R50が介在している。第2放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20が制御回路(82)によってオンに設定されると、第1放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW10もオンとなってセルが放電されることになる。
【0036】
ところで、上記従来の電圧検出装置(8)において、第1放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW10が常にオンとなるオン故障が発生した場合、その後、オン故障が発生した放電回路に接続されているセルが該放電回路により常に放電されて該セルの容量が低下する事態が発生する。
【0037】
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、放電回路に少なくとも2つのスイッチング素子を設けると共に、これら少なくとも2つのスイッチング素子の内、一部の1或いは複数のスイッチング素子にそれぞれ接続されている2つのスイッチング制御用抵抗を断線検知用抵抗として兼用することに想到し、本発明に係る第2の電圧検出装置を完成するに至った。
【0038】
本発明に係る第2の電圧検出装置は、複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する装置であって、配線を介して組電池の複数の電圧検出点(組電池の両端及びセルどうしの連結点)と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路と、前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第2連結線路とを具え、前記複数の第1連絡線路の各第1連結線路には容量素子が介在し、各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されている。前記複数の第2連結線路の各第2連結線路には、少なくとも2つのスイッチング素子と1或いは複数の抵抗とを互いに直列に接続してなる放電回路が介在している。各放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、一部の1或いは複数のスイッチング素子のベース或いはゲートがそれぞれ1或いは複数の抵抗からなる第1抵抗回路を介してグランドに接続され、各第1抵抗回路の放電回路側の一端と各放電回路の正極側の電圧検出線とを互いに連結する各第3連結線路には、1或いは複数の抵抗からなる第2抵抗回路が介在している。そして、前記電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて組電池の複数の電圧検出点と前記複数の電圧入力端子との間の配線の断線を検知する断線検知手段を具えている。
【0039】
上記本発明に係る第2の電圧検出装置においては、各セルから隣り合う2本の電圧検出線の間に介在する各容量素子に電流が供給されて各容量素子は電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されると共に、各セルから僅かな電流が電圧検出線、スイッチング制御用/断線検知用の第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込む。
【0040】
何れの配線にも断線が発生していない正常な状態では、上述の如く各容量素子は満充電状態に維持されることとなって、各電圧検出線には各セルの正極或いは負極の電位が発生することとなる。従って、電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0041】
又、上記電圧検出装置は、組電池を構成する各セルの充電状態を均等化する機能を有しており、均等化処理においては、例えば両端電圧が均等化目標電圧を超えるセルに対してそれぞれ放電回路による放電が実施される。上述の如く各セルから僅かな電流がグランドに向って流れている状態で、放電の対象とするセルに接続されている放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、例えばトランジスタ或いはFET(電界効果トランジスタ)からなる前記一部の1或いは複数のスイッチング素子以外のスイッチング素子がオンに設定されると、それら1或いは複数のスイッチング素子もオンとなって、該セルから放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子及び1或いは複数の抵抗に電流が流れて該セルが放電されることになる。これによって、各セルの充電状態を均等化することが出来る。
【0042】
又、例えばある1本の配線に断線が発生した場合には、該配線に接続されている電圧検出線の負極側に接続されている容量素子に対する電流の供給が停止されて、該容量素子から蓄えられていた電荷が放出されて該電圧検出線、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドへ流れ込み、該電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位よりも低下して零或いは略零となる。従って、断線検知手段は、正極側の電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位を下回ったとき、或いは電圧検出線の電位が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することが出来る。ここで閾値は、例えば、電圧検出線毎に設定され、各閾値は、組電池の負極側の端部に位置する電圧検出線と各電圧検出線との間に介在する全てのセルの充電容量が零となったときのそれらのセル電圧の積算値以下の値に設定される。
【0043】
上記本発明に係る第2の電圧検出装置においては、組電池を構成する複数のセルの充電状態にどの様なばらつきが生じていても、断線が発生していない正常な状態では、正極側の電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位を下回ることはなく、電圧検出線の電位が前記所定の閾値を下回って零或いは略零となることもないので、断線が発生していないにも拘わらず断線が発生したと誤って判断されることはない。
【0044】
具体的構成において、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線(全ての電圧検出線、或いは組電池の負極側の端部に位置することとなる電圧検出線を除く一部の電圧検出線)にはそれぞれ、第2連結線路よりも電圧入力端子側にPTC素子が介在している。
【0045】
上記具体的構成においては、電圧検出線に過電流が流れたとき、PTC素子が発熱し、これに伴って電気抵抗値が急増する。この結果、電圧検出線を流れる過電流がPTC素子によって遮断されることになる。これによって、PTC素子の後段回路に過電流が流れることを防止することが出来る。又、配線に断線が発生していない状態であっても、各セルから僅かな電流がPTC素子、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込むのであるが、PTC素子の抵抗値は通常の状態では数Ω程度であるので、PTC素子による電圧降下量は無視できる程度の量となる。従って、PTC素子を具えていない電圧検出装置と同程度の高い精度で各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0046】
また、上記第2の電圧検出装置において、前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第4連結線路を具え、該複数の第4連結線路の各第4連結線路には、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする。
【0047】
この様にすることで、各セルから隣り合う2本の電圧検出線の間に介在する各容量素子に電流が供給されて各容量素子は電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されると共に、各セルから僅かな電流が電圧検出線、スイッチング制御用/断線検知用の第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込む。
【0048】
何れの配線にも断線が発生していない正常な状態では、上述の如く各容量素子は満充電状態に維持されることとなって、各電圧検出線には各セルの正極或いは負極の電位が発生することとなる。従って、電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0049】
又、上記電圧検出装置は、組電池を構成する各セルの充電状態を均等化する機能を有しており、均等化処理においては、例えば両端電圧が均等化目標電圧を超えるセルに対してそれぞれ放電回路による放電が実施される。上述の如く各セルから僅かな電流がグランドに向って流れている状態で、放電の対象とするセルに接続されている放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、例えばトランジスタ或いはFETからなる前記一部の1或いは複数のスイッチング素子以外のスイッチング素子がオンに設定されると、それら1或いは複数のスイッチング素子もオンとなって、該セルから放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子及び1或いは複数の抵抗に電流が流れて該セルが放電されることになる。これによって、各セルの充電状態を均等化することが出来る。
【0050】
又、例えばある1本の配線に断線が発生した場合、該配線に接続されている電圧検出線の負極側の容量素子に対する電流の供給が停止されて、該容量素子から蓄えられていた電荷が放出されて該電圧検出線、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドへ流れ込み、該電圧検出線の電位が低下する。この過程で該電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位と等しくなったとき、電流が該負極側電圧検出線から整流素子を経て断線が発生した配線に接続されている電圧検出線に流れ始めるため、該電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位よりも低下することはなく、両電圧検出線の電位差は零或いは略零となる。従って、断線検知手段は、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することが出来る。ここで閾値は、例えば隣り合う2本の電圧検出線毎、即ちセル毎に設定され、各閾値は、各セルの充電容量が零となったときの電圧値以下の値に設定される。
【0051】
尚、整流素子を具えていない構成においては、ある1本の配線に断線が発生した場合、断線が発生した配線に接続されている電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位よりも低くなって、両電圧検出線がそれぞれ接続されている電圧検出手段の2つの入力端子間に正負が逆の電圧が印加されると共に、断線が発生した配線に接続されている電圧検出線と隣接する正極側の電圧検出線がそれぞれ接続されている電圧検出手段の2つの入力端子間に高電圧が印加されることになる。
【0052】
これに対し、上記本発明に係る第4の電圧検出装置においては、隣り合う2本の電圧検出線の間に整流素子が順方向を組電池の正極側に向けて介在しているので、上述の如く断線が発生した配線に接続されている電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位よりも低くなることはなく、電圧検出手段に正負が逆の電圧が印加されると共に高電圧が印加されることを防止することが出来る。
【0053】
上記第2の電圧検出装置の具体的構成において、各放電回路の1つのスイッチング素子のベース或いはゲートから電流線路が引き出され、複数本の電流線路の内、1本の電流線路の先端は断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子を介してグランドに接続され、他の電流線路の先端は該1本の電流線路に接続され、各電流線路に前記第1抵抗回路が介在している。
【0054】
断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子がオンの状態では、組電池を構成する各セルから僅かな電流が電圧検出線、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込む。従って、例えば電圧検出装置の電源がオフであって断線を検知することが出来ない状態であるときに前記スイッチング素子をオンに設定した場合には、各セルの電力が無駄に消費されることになる。
【0055】
そこで、上記具体的構成においては、例えば電圧検出装置の電源がオンに設定されたときにのみ断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子がオンに設定され、これによって各セルの電力が無駄に消費されることを防止することが出来る。
【0056】
又、上記具体的構成においては、放電回路を構成する少なくとも2つのスイッチング素子の内、トランジスタ或いはFETからなる前記1つのスイッチング素子以外のスイッチング素子にオン故障が発生したとしても、断線検知オン/オフ切換えスイッチがオフに設定されていれば前記1つのスイッチング素子はオンとならないので、オン故障が発生した放電回路に接続されているセルが該放電回路により放電されることはない。
【0057】
又、具体的構成において、各電流線路には、整流素子が順方向をグランド側に向けて介在している。これによって、電圧の高い電流線路から電圧の低い電流線路に電流が逆流することを防止することが出来る。
【0058】
又、具体的構成において、各放電回路は、順方向を組電池の負極側となる方向に向けた整流素子を具えている。これによって、配線の断線時に、隣り合う2本の電圧検出線の内、電圧が低い電圧検出線から両電圧検出線の間に介在する放電回路に電流が逆流することを防止することが出来る。
【0059】
又、具体的構成において、各放電回路は、順方向を組電池の負極側となる方向に向けた整流素子を具えている。これによって、配線の断線時に、隣り合う2本の電圧検出線の内、電圧が低い電圧検出線から両電圧検出線の間に介在する放電回路に電流が逆流することを防止することが出来る。
【0060】
更に具体的構成において、第1抵抗回路の抵抗値と第2抵抗回路の抵抗値の和は、組電池の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定されている。
【0061】
組電池を構成する各セルから僅かな電流が電圧検出線、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込む。ここで、組電池の正極側の端部に位置する第1番目のセルからは第1番目の2つの抵抗回路(第1抵抗回路及び第2抵抗回路)のみ、第2番目のセルからは第1番目の2つの抵抗回路と第2番目の2つの抵抗回路、第3番目のセルからは第1番目の2つの抵抗回路と第2番目の2つの抵抗回路と第3番目の2つの抵抗回路・・・第n番目のセルからは第1番目〜第n番目の2つの抵抗回路に電流が流れ込むことになるが、各セルの消費電流にばらつきが発生すると各セルの両端電圧にばらつきが発生することになる。そこで、第1抵抗回路の抵抗値と第2抵抗回路の抵抗値の和は、組電池の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定されており、これによって各セルの消費電流のばらつきを小さく抑えることが出来る。
【0062】
本発明に係るバッテリシステムは、複数のセルを直列に接続してなる組電池と、該組電池を構成する各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置とを具え、該電圧検出装置として、上記本発明に係る第1或いは第2の電圧検出装置の何れかの電圧検出装置を採用したものである。
【0063】
また、上記バッテリシステムにおいて、前記配線にはPTC素子が介在していることを特徴とする。
【0064】
この様な構成を有することで、配線に過電流が流れたとき、PTC素子が発熱し、これに伴って電気抵抗値が急増する。この結果、電圧検出線を流れる過電流がPTC素子によって遮断されることになる。これによって、PTC素子の後段回路に過電流が流れることを防止することが出来る。又、配線に断線が発生していない状態であっても、各セルから僅かな電流がPTC素子、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込むのであるが、PTC素子の抵抗値は通常の状態では数Ω程度であるので、PTC素子による電圧降下量は無視できる程度の量となる。従って、PTC素子を具えていない電圧検出装置と同程度の高い精度で各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0065】
又、本発明に係る電動車輌は、上記のバッテリシステムと、前記バッテリシステムからの電力により駆動されるモータと、前記モータの回転力により回転する車輪とを備える。
【0066】
上述の如く、本発明に係る電圧検出装置及びこれを具えたバッテリシステムによれば、組電池との間の配線に断線が発生していないにも拘わらず、断線が発生したと誤って判断されることを防止することが出来る。
【0067】
本発明に係る第1の電圧検出回路は、複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する回路であって、組電池の複数の電圧検出点の電位が入力されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される複数の電圧検出線とを具え、該複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線がそれぞれ1或いは複数の断線検知用抵抗を介してグランドに接続されている。
【0068】
この様に構成される第1の電圧検出回路は、組電池の複数の電圧検出点と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子から引き出された複数の電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路に介在する容量素子とを具えた回路に接続され、これによって、上記本発明に係る第1電圧検出装置が構成されることとなる。
【0069】
また、上記1の電圧検出回路において、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路には、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする。
【0070】
本発明に係る第2の電圧検出回路は、複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する回路であって、組電池の複数の電圧検出点の電位が入力されるべき複数の電圧入力端子を具え、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路とを具え、前記複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、前記複数の第1連結線路の各第1連結線路には、少なくとも2つのスイッチング素子と1或いは複数の抵抗とを互いに直列に接続してなる放電回路が介在しており、各放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、一部の1或いは複数のスイッチング素子のベース或いはゲートがそれぞれ1或いは複数の抵抗からなる第1抵抗回路を介してグランドに接続され、各第1抵抗回路の放電回路側の一端と各放電回路の正極側の電圧検出線とを互いに連結する各第2連結線路には、1或いは複数の抵抗からなる第2抵抗回路が介在している。
【0071】
この様に構成される第2の電圧検出回路は、組電池の複数の電圧検出点と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子から引き出された複数の電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路に介在する容量素子とを具えた回路に接続され、これによって、上記本発明に係る第2の電圧検出装置が構成されることとなる。
【0072】
また、上記第2の電圧検出回路において、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各第3連結線路には、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0073】
本発明に依れば、組電池との間の配線に断線が発生していないにも拘わらず、断線が発生したと誤って判断されることを防止することが出来る電圧検出装置及びこれを具えたバッテリシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図2】上記バッテリシステムにおいてワイヤハーネスに断線が発生した場合に電流が流れる経路を表わす回路図である。
【図3】上記バッテリシステムにおいて第3番目のワイヤハーネスに断線が発生した場合の2つのコンデンサC2、C3の両端電圧の変化を表わすグラフである。
【図4】上記バッテリシステムにおいて第11番目のワイヤハーネスに断線が発生した場合に電流が流れる経路を表わす回路図である。
【図5】第2実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図6】第3実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図7】上記バッテリシステムを構成する放電回路のダイオードの機能を説明するための回路図である。
【図8】上記バッテリシステムにおいて断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンに設定されたときに電流が流れる経路を表わす回路図である。
【図9】上記バッテリシステムにおいて均等化処理時に電流が流れる経路を表わす回路図である。
【図10】上記バッテリシステムにおいてワイヤハーネスに断線が発生した場合に電流が流れる経路を表わす回路図である。
【図11】第4実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図12】保護抵抗を断線検知抵抗が介在する電流線路よりも組電池側に配設した場合の問題点を説明するための回路図である。
【図13】1MΩの抵抗に結露が生じた場合の合成抵抗を表わす回路図である。
【図14】100kΩの抵抗に結露が生じた場合の合成抵抗を表わす回路図である。
【図15】第5実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図16】第3実施例のバッテリシステムの変形例を表わす回路図である。
【図17】第5実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図18】第3実施例のバッテリシステムの変形例を表わす回路図である。
【図19】本発明に係る電動車輌の構成を表わすブロック図である。
【図20】従来のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図21】断線検知機能を有する従来の電圧検出装置の構成を表わす回路図である。
【図22】均等化機能を有する従来の電圧検出装置の構成を表わす回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、本発明をハイブリッド自動車のバッテリシステムに実施した形態につき、5つの実施例に基づいて具体的に説明する。尚、以下では、10個のセルからなる組電池を具えたバッテリシステムについて説明するが、本発明は、10個以外の複数個のセルからなる組電池を具えたバッテリシステムにも同様に実施することが可能である。又、リチウムイオン二次電池に限らず、種々の二次電池からなるセルを直列に接続して構成される組電池を具えたバッテリシステムにも同様に実施することが可能である。
(第1実施例)
第1実施例のバッテリシステムは、図1に示す如く、リチウムイオン二次電池からなる10個のセルを直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(2)とを具えており、組電池(1)の正極点P1、セルどうしの連結点P2〜P10及び組電池(1)の負極点P11と電圧検出装置(2)の11個の電圧入力端子(201)〜(211)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池(1)の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0076】
電圧検出装置(2)においては、前記11個の電圧入力端子(201)〜(211)からそれぞれ電圧検出線(221)〜(231)が引き出され、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路(241)〜(250)には、静電気電圧から回路を保護するためのコンデンサC1〜C10が介在している。コンデンサC1〜C10は、例えば0.1μFの容量を有している。11本の電圧検出線(221)〜(231)の内、第1番目の電圧検出線(221)からは電源ライン(220)が引き出され、電圧検出装置(2)の電源端子(図示省略)に接続されている。又、第11番目の電圧検出線(231)は、グランドに接続されている。11本の電圧検出線(221)〜(231)はADC(21)の11個の入力端子に接続され、該ADC(21)の1つの出力端子はマイクロコンピュータからなる制御回路(22)に接続されている。
【0077】
上記電圧検出装置(2)は、組電池(1)の電圧検出点P1〜P11と電圧入力端子(201)〜(211)との間のワイヤハーネス(401)〜(411)の断線を検知する機能を有しており、11本の電圧検出線(221)〜(231)の内、第11番目の電圧検出線(231)を除く電圧検出線(221)〜(230)のコンデンサC1〜C10よりもADC(21)側に位置する一点(251)〜(260)からそれぞれ電流線路(261)〜(270)が引き出され、これらの電流線路(261)〜(270)の先端はグランドに接続されている。各電流線路(261)〜(270)には、例えば200KΩ程度の抵抗値を有する断線検知用抵抗R1〜R10が介在している。
【0078】
又、隣り合う2本の電圧検出線を前記一点(251)〜(260)よりもADC(21)側にて互いに連結する各連結線路(271)〜(280)には、クランプダイオードD1〜D10が介在している。即ち、各連結線路(271)〜(280)は、コンデンサが介在する各連結線路(241)〜(250)と並列に設けられている。各クランプダイオードD1〜D10は、電流が負極側の電圧検出線から正極側の電圧検出線に流れる方向に接続されている。
【0079】
上記電圧検出装置(2)においては、ワイヤハーネス(401)〜(411)の何れにも断線が発生していない正常な状態では、各セルB1〜B10から各コンデンサC1〜C10に電流が供給されて各コンデンサは電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されることとなって、11本の電圧検出線(221)〜(231)にはそれぞれ、各セルB1〜B10の正極或いは負極の電位が発生することとなり、11本の電圧検出線(221)〜(231)の電位がそれぞれADC(21)の11個の入力端子に入力される。ADC(21)は、隣り合う2つの入力端子間の各電位差、即ち各セルの両端電圧をデジタルの電圧検出データに変換して出力端子から出力する。制御回路(22)は、ADC(21)の出力端子から得られる10セル分の電圧検出データに基づいて、各セルが過充電状態或いは過放電状態となっていないかどうかを監視する。
【0080】
例えば、図2中に×印で示す如く組電池(1)の第3電圧検出点P3と電圧検出装置(2)の第3電圧入力端子(図示省略)との間の第3ワイヤハーネス(403)に断線が発生した場合には、セルB3からコンデンサC3に対する電流の供給が停止されて、コンデンサC3から蓄えられていた電荷が放出されて図中に実線の矢印で示す如く第3電圧検出線(223)、第3電流線路(263)及び断線検知用抵抗R3を経てグランドへ流れ込み、第3電圧検出線(223)の電位は徐々に低下する。この過程で第3電圧検出線(223)の電位が第4電圧検出線(224)の電位と等しくなったとき、図中に破線の矢印で示す如く第4電圧検出線(224)からクランプダイオードD3を経て第3電圧検出線(223)に電流が流れ始めるため、第3電圧検出線(223)の電位が第4電圧検出線(224)の電位よりも低下することはなく、両電圧検出線(223)(224)の電位差、即ちコンデンサC3の両端電圧は略零となる。又、この様にコンデンサC3の両端電圧が略零となるので、コンデンサC2の両端電圧はセルB2とセルB3の合計電圧と等しくなる。
【0081】
図3は、第3ワイヤハーネス(403)に断線が発生したときのコンデンサC2、C3の両端電圧の変化を表わしている。尚、断線が発生したときのセルB2、B3の両端電圧をそれぞれV2、V3とする。
【0082】
断線発生前のコンデンサC3の両端電圧は、同図(b)に示す如くセルB3の両端電圧V3と等しいが、断線が発生すると略ゼロとなる。一方、断線発生前のコンデンサC2の両端電圧は、同図(a)に示す如くセルB2の両端電圧V2と等しいが、断線が発生すると、セルB2とセルB3の合計電圧(=V2+V3)と等しくなる。
【0083】
上述の如く、第n番目(1≦n≦10)のワイヤハーネスに断線が発生すると、第n番目のコンデンサCnの両端電圧が略零となって、制御回路(22)に入力される第n番目のセルの両端電圧は略零となる。実際のリチウム二次電池の使用範囲では、両端電圧が充電容量が零のときの電圧値以下に低下することはあり得ない。そこで、図1に示す制御回路(22)は、ADC(21)から入力される各セルの両端電圧を監視し、第n番目のセルの両端電圧が所定の閾値まで低下したときに第n番目のワイヤハーネスに断線が発生したと判断する。ここで、閾値はセル毎に設定され、各閾値は、各セルの充電容量が零となったときの両端電圧以下の値に設定される。全てのセルの閾値を零に設定することも可能である。
【0084】
尚、第11番目のワイヤハーネス(411)に断線が発生した場合には、図4に矢印で示す如く電流が流れて、コンデンサC10の両端電圧が略零となるので、セルB10の両端電圧が所定の閾値まで低下したときに第11番目のワイヤハーネス(411)に断線が発生したと判断することが出来る。
【0085】
ところで、2本の電圧検出線の間にクランプダイオードD1〜D10が設けられていない構成においては、例えば上述の如く第3ワイヤハーネス(403)に断線が発生した場合、第3電圧検出線(223)の電位が第4電圧検出線(224)の電位よりも低下して、ADC(21)の第3チャンネルの入力端子CH3と第4チャンネルの入力端子CH4との間に正負が逆の電圧が印加されると共に、ADC(21)の第3チャンネルの入力端子CH3と第2チャンネルの入力端子CH2との間に高電圧が印加されることになる。
【0086】
これに対し、上記電圧検出装置(2)においては、第3電圧検出線(223)と第4電圧検出線(224)との間にクランプダイオードD3が順方向を組電池(1)の正極側に向けて介在しているので、上述の如く第3電圧検出線(223)の電位が第4電圧検出線(224)の電位よりも低下することはなく、ADC(21)の第3チャンネルの入力端子CH3と第4チャンネルの入力端子CH4との間に正負が逆の電圧が印加されることも、第3チャンネルの入力端子CH3と第2チャンネルの入力端子CH2との間に高電圧が印加されることもない。
【0087】
この様に、隣り合う2本の電圧検出線の間に順方向を組電池(1)の正極側に向けたクランプダイオードD1〜D10を設けることによって、ADC(21)に正負が逆の電圧が印加されると共に高電圧が印加されることを防止することが出来る。
【0088】
本実施例のバッテリシステムにおいては、組電池(1)を構成する複数のセルの充電状態にどの様なばらつきが生じていても、断線が発生していない正常な状態では、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が前記所定の閾値を下回って略零となることはないので、断線が発生していないにも拘わらず断線が発生したと誤って判断されることはない。
(第2実施例)
本実施例のバッテリシステムは、図5に示す如く、第1実施例のバッテリシステムと同様に、リチウムイオン二次電池からなる10個のセルを直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(20)とを具えており、組電池(1)の正極点P1、セルどうしの連結点P2〜P10及び組電池(1)の負極点P11と電圧検出装置(20)の11個の電圧入力端子(201)〜(211)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0089】
電圧検出装置(20)においては、11本の電圧検出線(221)〜(231)の内、第11番目の電圧検出線(231)を除く電圧検出線(221)〜(230)のコンデンサC1〜C10よりもADC(21)側に位置する一点(251)〜(260)からそれぞれ電流線路(281)〜(290)が引き出され、10本の電流線路(281)〜(290)の内、第10番目の電流線路(290)の先端が断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを介してグランドに接続され、他の9本の電流線路(281)〜(289)の先端は第10番目の電流線路(290)に接続されている。該スイッチング素子SWは、制御回路(23)によってオン/オフ制御される。
【0090】
各電流線路(281)〜(290)には、例えば200KΩ程度の抵抗値を有する断線検知用抵抗R1〜R10が介在すると共に、ダイオードD11〜D20が介在している。各ダイオードD11〜D20は、電流が各電圧検出線(221)〜(230)からグランドに向って流れる方向に接続されており、これによって、電圧の高い電流線路から電圧の低い電流線路に電流が逆流することを防止することが出来る。その他の構成及び動作は、第1実施例の電圧検出回路と同じであるので、説明を省略する。
【0091】
ハイブリッド自動車のバッテリシステムにおいては、イグニッションスイッチがオフの状態では組電池の充放電が行なわれないため、組電池を構成する各セルの両端電圧を監視する必要はなく、電圧検出装置の電源はオフに設定されている。
【0092】
本実施例のバッテリシステムにおいては、電圧検出装置(20)の断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンの状態では、組電池(1)を構成する各セルB1〜B10から僅かな電流が電圧検出線(221)〜(230)及び断線検知用抵抗R1〜R10を経てグランドに流れ込む。従って、仮に電圧検出装置(20)の電源がオフであって断線を検知することが出来ない状態であるときに該スイッチング素子SWをオンに設定した場合には、各セルの電力が無駄に消費されることになる。そこで、上記制御回路(23)は、イグニッションスイッチがオンに設定されることによって電圧検出装置(20)の電源がオンに設定されたときに、断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWをオンに設定する。この様に、電圧検出装置の電源がオンに設定されたときにのみ断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWをオンに設定することによって、各セルの電力が無駄に消費されることを防止することが出来る。
(第3実施例)
本実施例のバッテリシステムは、図6に示す如く、リチウムイオン二次電池からなる10個のセルを直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(5)とを具えており、組電池(1)の正極点P1、セルどうしの連結点P2〜P10及び組電池(1)の負極点P11と電圧検出装置(5)の11個の電圧入力端子(501)〜(511)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0093】
電圧検出装置(5)においては、前記11個の電圧入力端子(501)〜(511)からそれぞれ電圧検出線(521)〜(531)が引き出され、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路(541)〜(550)には、静電気電圧から回路を保護するためのコンデンサC1〜C10が介在している。コンデンサC1〜C10は、例えば0.1μFの容量を有している。11本の電圧検出線(521)〜(531)の内、第1番目の電圧検出線(521)からは電源ライン(520)が引き出され、電圧検出装置(5)の電源端子(図示省略)に接続されている。又、第11番目の電圧検出線(531)は、グランドに接続されている。11本の電圧検出線(521)〜(531)はADC(51)の11個の入力端子に接続され、該ADC(51)の1つの出力端子はマイクロコンピュータからなる制御回路(52)に接続されている。
【0094】
上記電圧検出装置(5)は、組電池(1)を構成する各セルの充電状態を均等化する機能を有しており、コンデンサが介在する連結線路(541)〜(550)と並列に設けられ隣り合う2本の電圧検出線をコンデンサC1〜C10よりもADC(51)側にて互いに連結する各連結線路(551)〜(560)には、トランジスタからなる2つのスイッチング素子SW1、SW2と均等化用抵抗rとダイオードD0とを直列に接続してなる放電回路(50)が介在している。ここで、均等化用抵抗rは、例えば100Ω程度の抵抗値を有している。又、各ダイオードD0は、電流が正極側の電圧検出線から負極側の電圧検出線に向けて流れる方向に接続されており、これによって、ワイヤハーネスの断線時に図7に破線の矢印で示す如く電流が流れることを防止することが出来る。
【0095】
図6に示す各放電回路(50)の2つのスイッチング素子SW1、SW2の内、1つのスイッチング素子SW2のベースから電流線路(561)〜(570)が引き出され、10本の電流線路(561)〜(570)の内、第1番目の電流線路(561)の先端は断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを介してグランドに接続され、他の9本の電流線路(562)〜(570)の先端は第1番目の電流線路(561)に接続されている。断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWは、制御回路(52)によってオン/オフ制御される。
【0096】
各電流線路(561)〜(570)には、第1のスイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20及びダイオードD21〜D30が介在しており、各第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗の放電回路(50)側の一端と各放電回路(50)の正極側の電圧検出線(521)〜(530)とを放電回路(50)よりもADC(51)側で互いに連結する各連結線路(571)〜(580)には、第2のスイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30が介在している。第1のスイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20は、例えば200KΩ程度の抵抗値を有しており、第2のスイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30は、例えば50KΩ程度の抵抗値を有している。各ダイオードD21〜D30は、電流がスイッチング素子SW2からグランドに向けて流れる方向に接続されている。これによって、電圧の高い電流線路から電圧の低い電流線路に電流が流れることを防止することが出来る。
【0097】
又、コンデンサが介在する連結線路(541)〜(550)と並列に設けられ隣り合う2本の電圧検出線を前記第2のスイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30よりもADC(51)側にて互いに連結する各連結線路(581)〜(590)には、クランプダイオードD1〜D10が介在している。各クランプダイオードD1〜D10は、電流が負極側の電圧検出線から正極側の電圧検出線に流れる方向に接続されている。
【0098】
尚、各放電回路(50)のスイッチング素子SW1のベースには、図20に示す従来の放電回路(80)と同様に、第1スイッチング制御用抵抗R31〜R40、第2スイッチング制御用抵抗R41〜R50及び放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20(何れも図示省略)が接続されており、放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20は、制御回路(52)によってオン/オフ制御されている。放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20がオンに設定されると、放電回路(50)のスイッチング素子SW1がオンとなる。
【0099】
本実施例のバッテリシステムにおいては、図示省略するイグニッションスイッチがオンに設定されることによって電圧検出装置(5)の電源がオンに設定されたとき、制御回路(52)は、断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWをオンに設定する。これによって、各セルB1〜B10から各コンデンサC1〜C10に電流が供給されて各コンデンサは電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されると共に、図8に破線の矢印で示す如く、各セルB1〜B10から僅かな電流が各電圧検出線(521)〜(530)、各第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30、各第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20、各ダイオードD21〜D30及び断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを経てグランドに流れ込むことになる。
【0100】
ワイヤハーネス(401)〜(411)の何れにも断線が発生していない正常な状態では、上述の如く各コンデンサC1〜C10は満充電状態に維持されることとなって、11本の電圧検出線(521)〜(531)にはそれぞれ、各セルB1〜B10の正極或いは負極の電位が発生することとなり、11本の電圧検出線(521)〜(531)の電位がそれぞれADC(51)の11個の入力端子に入力される。ADC(51)は、隣り合う2つの入力端子間の各電位差、即ち各セルの両端電圧をデジタルの電圧検出データに変換して出力端子から出力する。制御回路(52)は、ADC(51)の出力端子から得られる10セル分の電圧検出データに基づいて、各セルが過充電状態或いは過放電状態となっていないかどうかを監視する。
【0101】
又、上記電圧検出装置(5)による均等化処理においては、両端電圧が均等化目標電圧を超えるセルに対してそれぞれ放電回路(50)による放電が実施される。上述の如く電圧検出装置(5)の断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンに設定されて各セルから僅かな電流がグランドに向って流れている状態で、放電の対象とするセルに接続されている放電回路(50)のスイッチング素子SW1がオンに設定されると、スイッチング素子SW2もオンとなって該セルが放電されることになる。例えば、セルB1に接続されている放電回路(50)のスイッチング素子SW1がオンに設定されると、図9に破線の矢印で示す如くセルB1からスイッチング素子SW1、SW2、均等化用抵抗r及びダイオードD0に電流が流れて該セルが放電されることになる。この様にして、両端電圧が均等化目標電圧を越せるセルを放電させることによって、各セルの充電状態を均等化することが出来る。
【0102】
又、例えば、図10中に×印で示す如く組電池(1)の第3電圧検出点P3と電圧検出回路(5)の第3電圧入力端子(図示省略)との間の第3ワイヤハーネス(403)に断線が発生した場合には、セルB3からコンデンサC3に対する電流の供給が停止されて、コンデンサC3に蓄えられていた電荷が放出されて図中に実線の矢印で示す如く第3電圧検出線(523)、第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗R23、第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗R13、ダイオードD23及び断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを経てグランドへ流れ込み、第3電圧検出線(523)の電位は徐々に低下する。この過程で第3電圧検出線(523)の電位が第4電圧検出線(524)の電位と等しくなったとき、図中に破線の矢印で示す如く第4電圧検出線(524)からクランプダイオードD3を経て第3電圧検出線(523)に電流が流れ始めるため、第3電圧検出線(523)の電位が第4電圧検出線(524)の電位よりも低下することはなく、両電圧検出線(523)(524)の電位差、即ちコンデンサC3の両端電圧は略零となる。又、この様にコンデンサC3の両端電圧が略零となるので、コンデンサC2の両端電圧はセルB2とセルB3の合計電圧と等しくなる。
【0103】
尚、第1実施例と同様に、隣り合う2本の電圧検出線の間に順方向を組電池(1)の正極側に向けたクランプダイオードD1〜D10を設けることによって、ADC(51)に正負が逆の電圧が印加されると共に高電圧が印加されることを防止することが出来る。
【0104】
上述の如く、第n番目(1≦n≦10)のワイヤハーネスに断線が発生すると、第n番目のコンデンサCnの両端電圧が略零となって、制御回路(52)に入力される第n番目のセルの両端電圧は略零となる。実際のリチウム二次電池の使用範囲では、両端電圧が充電容量が零のときの電圧値以下に低下することはあり得ない。そこで、図6に示す制御回路(52)は、ADC(51)から入力される各セルの両端電圧を監視し、第n番目のセルの両端電圧が所定の閾値まで低下したときに第n番目のワイヤハーネスに断線が発生したと判断する。ここで、閾値はセル毎に設定され、各閾値は、各セルの充電容量が零となったときの両端電圧以下の値に設定される。全てのセルの閾値を零に設定することも可能である。
【0105】
尚、第11番目のワイヤハーネス(411)に断線が発生した場合には、コンデンサC10の両端電圧が略零となるので、セルB10の両端電圧が所定の閾値まで低下したときに第11番目のワイヤハーネス(411)に断線が発生したと判断することが出来る。
【0106】
本実施例のバッテリシステムにおいては、組電池(1)を構成する複数のセルの充電状態にどの様なばらつきが生じていても、断線が発生していない正常な状態では、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が前記所定の閾値を下回って略零となることはないので、断線が発生していないにも拘わらず断線が発生したと誤って判断されることはない。
【0107】
又、電圧検出装置(5)の電源がオンに設定されたときにのみ断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンに設定されるので、第2実施例のバッテリシステムと同様に、各セルの電力が無駄に消費されることを防止することが出来る。
【0108】
又、放電回路が1つのみのスイッチング素子を具えているバッテリシステムにおいては、該スイッチング素子が常にオンとなるオン故障が発生した場合、その後、オン故障が発生した放電回路に接続されているセルが該放電回路により常に放電されることになる。イグニッションスイッチがオフの状態で放電回路のスイッチング素子にオン故障が発生してセルの容量が所定量以下に低下すると、その後、イグニッションスイッチをオン操作したときにエンジンがかからない事態が発生する。本実施例のバッテリシステムにおいては、放電回路(50)の2つのスイッチング素子SW1、SW2に同時にオン故障が発生する可能性は極めて低く、2つのスイッチング素子に同時にオン故障が発生して上記事態が発生する可能性は極めて低い。イグニッションスイッチがオフの状態では、放電回路(50)のスイッチング素子SW1にオン故障が発生した場合であっても、断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWはオフに設定されているので放電回路(50)のスイッチング素子SW2がオンとなることはなく、上記事態が発生することはない。又、放電回路(50)のスイッチング素子SW2にオン故障が発生した場合であっても、スイッチング素子SW1はオフに設定されているので、上記事態が発生することはない。
【0109】
更に、本実施例の電圧検出装置(5)においては、スイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20、R21〜R30が放電回路(50)のスイッチング素子SW2に対するスイッチング制御用抵抗と断線検知用抵抗として兼用されているので、スイッチング制御用抵抗及び断線検知用抵抗とが別に設けられている構成に比べて部品点数が少なく、構成が簡易である。
(第4実施例)
本実施例のバッテリシステムは、図11に示す如く、リチウムイオン二次電池からなる10個のセルを直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(24)とを具えており、組電池(1)の正極点P1、セルどうしの連結点P2〜P10及び組電池(1)の負極点P11と電圧検出装置(24)の11個の電圧入力端子(201)〜(211)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0110】
電圧検出装置(24)においては、第11番目の電圧検出線(231)を除く電圧検出線(221)〜(230)上の一点(251)〜(256)からぞれぞれ引き出された電流線路(281)〜(290)にはそれぞれ、複数の抵抗(図11においては1つの抵抗のみを記載)を直列に接続してなる断線検知用抵抗回路RC1〜RC10とダイオードD11〜D20とが介在している。又、ADC(21)及び制御回路(23)によってASIC(Application Specific Integrated Circuit)が構成されており、電圧検出線(221)〜(231)にはそれぞれ、前記一点(251)〜(260)とクランプダイオードD1〜D10が介在する連結線路(271)〜(280)との連結点の間に、ASIC内で短絡が生じたときにASICに過電流が流れることを防止するための保護抵抗R51〜R60が介在している。保護抵抗R51〜R60は、例えば5kΩ程度の抵抗値を有している。尚、その他の構成は、第2実施例の電圧検出装置と同一である。
【0111】
上述の如く、断線検知用抵抗回路RC1〜RC10が介在する電流線路(281)〜(290)よりもASIC側に保護抵抗R51〜R60が配設される理由は次の通りである。
【0112】
図12は、保護抵抗を断線検知用抵抗回路が介在する電流線路よりも組電池(1)側に配設したバッテリシステムの一部の構成を表わしており、図示の如く組電池(1)の負極側から3つ目までのセルの両端電圧をそれぞれV1、V2、V3、保護抵抗R58、R59、R60による電圧降下量をVR58、VR59、VR60とした場合、ADC(21)によって検出されるセルの両端電圧は、V1−VR60、V2−VR59+VR60、V3−VR58+VR59となり、ADC(21)によって検出される各セルの両端電圧に保護抵抗による誤差が生じることになる。断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンの状態では、各セルから僅かな電流が保護抵抗R51〜R60及び断線検知用抵抗回路RC1〜RC10を経てグランドに流れ込むのであるが、各セルからグランドに流れ込む電流の大きさにはばらつきが生じるため、保護抵抗R51〜R60による電圧降下量VR51〜VR60は区々となる。例えば、断線検知用抵抗回路RC1〜RC10に流れる電流のばらつき幅が10μAである場合には、保護抵抗R51〜R60による電圧降下量は50mA(=5kΩ×10μA)のばらつき幅でばらつくことになる。従って、ADC(21)によって検出される各セルの両端電圧に生じる誤差は区々となり、電圧検出精度は低いものとなる。そこで、図11に示す如く、断線検知用抵抗回路RC1〜RC10が介在する電流線路(281)〜(290)よりもASIC側に保護抵抗R51〜R60が配設されるのである。
【0113】
本実施例のバッテリシステムによれば、上述の如く、保護抵抗R51〜R60を断線検知用抵抗回路RC1〜RC10よりもASIC側に配設することによって、ASIC内で短絡が生じたときにASICに過電流が流れることを防止すると共に保護抵抗R51〜R60を具えていない電圧検出装置と同程度の高い電圧検出精度を得ることが出来る。
【0114】
また、本実施例の断線検知用抵抗回路RC1〜RC10の合成抵抗値は、組電池(1)を構成する各セルの消費電流が略等しくなる様、組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定することも可能である。この理由は次の通りである。
【0115】
断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンの状態に、各セルB1〜B10から僅かな電流が断線検知用抵抗回路RC1〜RC10を経てグランドに流れ込む。ここで、セルB1からは断線検知用抵抗回路RC1のみ、セルB2からは断線検知用抵抗回路RC1と断線検知用抵抗回路RC2、セルB3からは断線検知用抵抗回路RC1と断線検知用抵抗回路RC2と断線検知用抵抗回路RC3、・・・セルB10からは断線検知用抵抗回路RC1〜RC10に電流が流れることとなるため、セルの消費電流にばらつきが生じることとなって、セルの両端電圧にばらつきが生じることになる。そこで、各セルの消費電流が略等しくなる様、断線検知用抵抗回路RC1〜RC10の合成抵抗値を組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定するのである。
【0116】
また、断線検知回路RC1〜RC10は、複数の抵抗を複数直列に接続して構成すると良い。この理由は次の通りである。
【0117】
基板上の抵抗に結露が生じた場合や硫化ガスや塩素ガスが吸着した場合には、基板上の抵抗は図13及び図14に示す如く10MΩ程度の抵抗が並列に接続されたときの合成抵抗値と同程度の値まで小さくなる。例えば図13に示す如く1MΩの抵抗に結露が生じた場合には、抵抗値は900kΩ(1MΩの抵抗と10MΩの抵抗の合成抵抗値)程度まで小さくなる。一方、図14に示す如く100kΩの抵抗に結露が生じた場合には、抵抗値は99kΩ(100kΩの抵抗と10MΩの抵抗の合成抵抗値)程度まで小さくなる。この様に、抵抗値の小さな抵抗を採用した方が結露が生じることによる抵抗値の減少量は少ない。そこで、断線検知回路RC1〜RC10は、複数の抵抗を複数直列に接続して構成することによって、結露等による断線検知用抵抗回路RC1〜RC10の合成抵抗値のばらつきを抑えることができるので、各セルB1〜B10から僅かな電流が断線検知用抵抗回路RC1〜RC10を経てグランドに流れ込む電流のばらつきが抑えられ、セルの両端電圧に生じるばらつきを小さく抑えることが出来る。
(第5実施例)
本実施例のバッテリシステムは、図15に示す如く、リチウムイオン二次電池からなる10個のセルを直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(25)とを具えており、組電池(1)の正極点P1、セルどうしの連結点P2〜P10及び組電池(1)の負極点P11と電圧検出装置(25)の11個の電圧入力端子(201)〜(211)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0118】
電圧検出装置(25)においては、11本の電圧検出線(221)〜(231)がASIC(3)の11個の電圧入力端子(301)〜(311)に接続されており、第11番目の電圧検出線(231)を除く電圧検出線(221)〜(230)には、コンデンサC1〜C10よりも電圧入力端子(201)〜(210)側にPTC素子(291)〜(300)が介在している。ASIC(3)内で短絡が生じて電圧検出線に過電流が流れたとき、PTC素子が発熱し、これに伴って電気抵抗値が急増する。この結果、電圧検出線を流れる過電流がPTC素子によって遮断されることになる。これによって、ASIC(3)に過電流が流れることを防止することが出来る。
【0119】
ASIC(3)においては、前記11個の電圧入力端子(301)〜(311)からそれぞれ電圧検出線(321)〜(331)が引き出されており、11本の電圧検出線(321)〜(331)はADC(31)の11個の入力端子に接続され、該ADC(31)の1つの出力端子はマイクロコンピュータからなる制御回路(32)に接続されている。
【0120】
前記11本の電圧検出線(321)〜(331)の内、第11番目の電圧検出線(331)を除く電圧検出線(321)〜(330)上の一点(351)〜(360)からそれぞれ電流線路(361)〜(370)が引き出されており、10本の電流線路(361)〜(370)の内、第10番目の電流線路(370)の先端が断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを介してグランドに接続され、他の9本の電流線路(361)〜(369)の先端は第10番目の電流線路(370)に接続されている。該スイッチング素子SWは、制御回路(32)によってオン/オフ制御される。各電流線路(361)〜(370)には、複数の抵抗(図15においては1つの抵抗のみを記載)に接続してなる断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´が介在すると共に、ダイオードD11〜D20が介在している。断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´はそれぞれ1MΩ程度の抵抗値の大きな抵抗を用いて構成されており、組電池(1)の正極に最も近い断線検知用抵抗回路RC1´は、例えば4.3MΩの抵抗値を有している。
【0121】
又、隣り合う2本の電圧検出線を前記一点(351)〜(360)よりも電圧入力端子(301)〜(310)側にて互いに連結する各連結線路(341)〜(350)には、クランプダイオードD1〜D10が介在している。その他の構成は、第2実施例の電圧検出装置と同一である。
【0122】
本実施例のバッテリシステムにおいては、断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´が介在する電流線路(361)〜(370)よりも電圧入力端子(301)〜(310)側にPTC素子(291)〜(300)が配設されているが、PTC素子の抵抗値は通常の状態では数Ω程度であるので、PTC素子による電圧降下量は無視できる程度の量となる。例えば断線検知用抵抗回路に0.1mAの電流が流れた場合には、PTC素子による電圧降下量は1mV以下となる。従って、ASIC(3)内で短絡が生じたときにASIC(3)に過電流が流れることを防止すると共に、PTC素子(291)〜(300)を具えていない電圧検出装置と同程度の高い電圧検出精度を得ることが出来る。尚、PTC素子に代えて、抵抗値の小さい保護素子、例えばヒューズを採用することも可能である。
【0123】
又、本実施例のバッテリシステムにおいては、断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´、ダイオードD11〜D20、及び断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを含む断線検知回路がASIC(3)に内蔵されているので、断線検知回路がASICの外部回路として設けられているバッテリシステムに比べて電圧検出装置が小型となり、その結果、システム全体が小型となる。
【0124】
更に、本実施例のバッテリシステムにおいては、ASIC(3)を構成するパッケージ内に断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´が収容されるので、これらの抵抗に結露が生じたり硫化ガスや塩素ガスが吸着することはない。また、抵抗に結露が生じたり硫化ガスや塩素ガスが吸着することはないので、抵抗値の大きな抵抗を用いることができ、抵抗の数を抑えて抵抗値が十分に大きな断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´を構成することが出来る。これによって、ASIC(3)の回路規模を抑えつつもセルの両端電圧に生じるばらつきを小さく抑えることが出来る。
【0125】
尚、図16は、第3実施例のバッテリシステムの変形例を表わしており、第11番目の電圧検出線(531)を除く電圧検出線(521)〜(530)には、コンデンサC1〜C10よりも電圧入力端子(501)〜(510)側にPTC素子(291)〜(300)が介在すると共に、複数の抵抗(図16においては1つの抵抗のみを記載)を直列に接続してなるスイッチング制御用/断線検知用抵抗回路RC11〜RC20、RC21〜RC30を含む断線検知回路と放電回路(50)とクランプダイオードD1〜D10とがASIC(30)に内蔵されている。
【0126】
図19は、本発明に係る電動車輌の構成を表わしており、該電動車輌においては、バッテリシステム(100)から得られる電力が電力変換部(91)を経てモータ(92)に供給され、モータ(92)が駆動される。これによって、車輪(93)が駆動される。アクセル(94)の操作量及びブレーキ(95)の操作量に応じたトルク指令が車輌側制御部(96)に供給されると共に、モータ(92)の回転数が該車輌側制御部(96)に供給され、該車輌側制御部(96)によって前記電力変換部(91)の動作が制御される。バッテリシステム(100)と電力変換部(91)との間にはコンタクタ(90)が介在しており、該コンタクタ(90)は、バッテリシステム(100)を構成する制御回路(図示省略)によってオン/オフ制御される。車輌側制御部(96)とバッテリシステム(100)の制御回路とは互いに通信を行なうことが可能であって、イグニッションキーがオン操作されると、車輌側制御部(96)がこれを検知してバッテリシステム(100)の制御回路に通知し、該制御回路はコンタクタ(90)をオンに設定する。これによって、バッテリシステム(100)から電力変換部(91)に対する電力供給が開始されて、車輌が走行可能な状態となる。一方、イグニッションキーがオフ操作されると、車輌側制御部(96)がこれを検知してバッテリシステム(100)の制御回路に通知し、該制御回路はコンタクタ(90)をオフに設定する。これによって、バッテリシステム(100)から電力変換部(91)に対する電力供給が停止される。バッテリシステム(100)の具体的構成としては、例えば図15に示す第5実施例のバッテリシステムの構成を採用することが出来る。尚、第5実施例以外の他の実施例のバッテリシステムの構成を採用することも可能である。又、上記コンタクタ(90)に代えて、リレーを採用することも可能である。
【0127】
上記車輌側制御部(96)は、加速時や登坂時には上述の如くバッテリシステム(100)の組電池からモータ(92)に電力を供給することによりモータ(92)を駆動する放電制御を行ない、減速時や降坂時にはモータ(92)に発生した電力によってバッテリシステム(100)の組電池を充電する充電制御を行なう。
【0128】
本発明に係る電動車輌においては、バッテリシステム(100)の制御回路は、コンタクタ(90)がオンに設定されている状態で、上述の如く組電池と電圧検出装置の電圧入力端子との間の何れかのワイヤハーネスに断線が発生したことを検知したとき、コンタクタ(90)をオフに切り替えると共に、断線が発生した旨の通知を車輌側制御部(96)に発する。車輌側制御部(96)は、該通知を受けて所定の制御動作を実行する。この様に、断線の発生が検知されたとき、コンタクタ(90)がオフに切り換えられるので、バッテリシステム(100)の組電池からモータ(92)に対して電力が供給されることもモータ(92)に発生した電力がバッテリシステム(100)の組電池に供給されることもなく、組電池を構成するセルが過充電状態或いは過放電状態となることを回避することが出来る。
【0129】
尚、断線の発生が検知されたときにコンタクタ(90)をオフに切り替える構成に代えて、後述の構成を採用することも可能である。例えば、特にセルが過充電状態となることが危険であるため、車輌側制御部(96)は、バッテリシステム(100)の制御回路から断線が発生した旨の通知を受けたときには、充電を禁止し、放電のみを許可することも可能である。又、放電のみを許可すると共に、モータ(92)の出力(モータトルク×回転数)を制限することによってバッテリシステム(100)の組電池の出力を制限することも可能である。
【0130】
上記の実施例のバッテリシステムにおいては、図1、図5、図6、図11、図15及び図16に示す如く、隣り合う2本の電圧検出線の間にクランプダイオードD1〜D10が設けられているが、クランプダイオードD1〜D10を省略することも可能である。クランプダイオードD1〜D10を省略したバッテリシステムにおいては、ある1本のワイヤハーネスに断線が発生した場合、該ワイヤハーネスに接続されている電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位よりも低下して略零となる。従って、電圧検出線の電位が所定の閾値まで低下したとき、或いは正極側の電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位を下回ったときに、断線が発生したものと判断することが出来る。尚、閾値は電圧検出線毎に設定され、各閾値は、組電池の負極側の端部に位置する電圧検出線と各電圧検出線との間に介在する全てのセルの充電容量が零となったときのそれらのセル電圧の積算値以下の値に設定される。
【0131】
又、第3実施例のバッテリシステムにおいては、図6に示す如く、第1番目の電流線路(561)の先端が断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを介してグランドに接続されているが、該スイッチング素子SWを省略して、10本の電流線路(561)〜(570)をグランドに接続することも可能である。又、10本の電流線路(561)〜(570)の先端にそれぞれ断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子を接続して、各電流線路の先端を各断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子を介してグランドに接続することも可能である。
【0132】
又、第3実施例のバッテリシステムにおいては、放電回路(50)の2つのスイッチング素子SW1、SW2の内、一方のスイッチング素子SW2のベースがスイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20を介してグランドに接続されているが、3つ以上のスイッチング素子を設け、それら3つのスイッチング素子の内、一部の複数のスイッチング素子のベースをそれぞれスイッチング制御用/断線検知用抵抗を介してグランドに接続することも可能である。
【0133】
又、第1実施例及び第2実施例のバッテリシステムにおいては、断線検知用抵抗R1〜R10を介してグランドに接続されている一点(251)〜(260)は容量素子C1〜C10よりもADC(21)側に位置し、クランプダイオードD1〜D10はこれらの一点(251)〜(260)よりもADC(21)側に位置しているが、容量素子C1〜C10と前記一点(251)〜(260)とクランプダイオードD1〜D10の位置関係は、入力端子(201)〜(211)とADC(21)との間であれば、どの様な位置関係であってもよい。
【0134】
又、第3実施例のバッテリシステムにおいては、容量素子C1〜C10と放電回路(50)と第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30とクランプダイオードD1〜D10の位置関係は、入力端子(501)〜(511)とADC(51)との間であれば、どの様な位置関係であってもよい。
【0135】
更に、第1実施例及び第2実施例のバッテリシステムにおいては、図1及び図5に示す断線検知用抵抗R1〜R10の抵抗値を全て同じ値に設定しているが、組電池(1)を構成する各セルの消費電流が略等しくなる様、組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定することも可能である。この理由は次の通りである。
【0136】
即ち、ワイヤハーネス(401)〜(411)に断線が発生していない状態であっても、各セルB1〜B10から僅かな電流が断線検知用抵抗R1〜R10を経てグランドに流れ込む。ここで、セルB1からは断線検知用抵抗R1のみ、セルB2からは断線検知用抵抗R1と断線検知用抵抗R2、セルB3からは断線検知用抵抗R1と断線検知用抵抗R2と断線検知用抵抗R3、・・・セルB10からは断線検知用抵抗R1〜R10に電流が流れることとなるため、セルの消費電流にばらつきが生じることとなって、セルの両端電圧にばらつきが生じることになる。そこで、各セルの消費電流が略等しくなる様、断線検知用抵抗R1〜R10の抵抗値を組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定するのである。
【0137】
尚、各電流線路に複数の断線検知用抵抗が介在する構成においては、複数の断線検知用抵抗の抵抗値の和が組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値となる様、各断線検知用抵抗の抵抗値が設定される。
【0138】
更に又、第3実施例のバッテリシステムにおいては、図6に示す第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20の抵抗値と第2スイッチング制御用断線検知用抵抗R21〜R30の抵抗値との和が組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値となる様、第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗及び第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗の抵抗値を設定することも可能である。
【0139】
尚、第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20及び第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30に代えて、複数の抵抗を直列に接続してなる第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路及び複数の抵抗を直列に接続してなる第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路を具えた構成においては、第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路の抵抗値と第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路の抵抗値との和が組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値となる様、第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路を構成する各抵抗の抵抗値及び第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路を構成する各抵抗の抵抗値が設定される。
【0140】
実施例においてセル同士の連結点P1〜P10と電圧入力端子とを接続する配線としてワイヤハーネスを用いたが、フレキシブル回路基板を用いて接続するようにしても良い。この場合、フレキシブル回路基板にプリントされる導線がセル同士の連結点P1〜P10と電圧入力端子とを接続する配線の役割を果たす。
【0141】
実施例において、PTC素子は、図15、図16に示すように電圧検出線(221)〜(230)、(521)〜(530)に介在しているが、図17、図18に示すように、配線(401)〜(410)に介在するように配置しても良い。この様にすることでも、PTC素子を電圧検出線(221)〜(230)、(521)〜(530)に介在させた場合と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0142】
(1) 組電池
P1〜P11 電圧検出点
(2) 電圧検出回路
(100) バッテリシステム
(201)〜(211) 電圧入力端子
(221)〜(231) 電圧検出線
(261)〜(270) 電流線路
(291)〜(300) PTC
C1〜C10 コンデンサ
R1〜R10 断線検知用抵抗
D1〜D10 クランプダイオード
(21) ADC
(22) 制御回路
(401)〜(411) ワイヤハーネス
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する装置であって、特に、組電池との間の配線(例えば、ワイヤハーネスなど)の断線を検知することが可能な電圧検出装置及び該装置を具えたバッテリシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車においては、走行用モータの電源として、複数のリチウムイオン二次電池(セル)を直列に接続してなる組電池が搭載されているが、組電池を構成するセルが過充電状態或いは過放電状態になると、発煙や発火が起こる危険性がある。そこで、図20に示す如きバッテリシステムを構成して、組電池を構成する各セルの両端電圧を監視することが行なわれている。
【0003】
該バッテリシステムは、リチウムイオン二次電池からなる複数(図示する例では10個)のセルB1〜B10を直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(6)とを具えており、組電池(1)の両端P1、P11及びセルどうしの連結点P2〜P10と電圧検出装置(6)の11個の電圧入力端子(601)〜(611)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池(1)の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0004】
電圧検出装置(6)においては、前記11個の電圧入力端子(601)〜(611)からそれぞれ電圧検出線(621)〜(631)が引き出され、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路(641)〜(650)には、静電気電圧から回路を保護するためのコンデンサC1〜C10が介在している。11本の電圧検出線(621)〜(631)の内、第1番目の電圧検出線(621)からは電源ライン(620)が引き出され、電圧検出装置(6)の電源端子(図示省略)に接続されている。又、第11番目の電圧検出線(631)は、グランドに接続されている。11本の電圧検出線(621)〜(631)はアナログ−デジタルコンバータ(以下、ADCという)(61)の11個の入力端子に接続され、該ADC(61)の1つの出力端子はマイクロコンピュータからなる制御回路(62)に接続されている。
【0005】
上記電圧検出装置(6)においては、11本の電圧検出線(621)〜(631)にそれぞれ、組電池(1)を構成する各セルB1〜B10の正極或いは負極の電位が発生することとなり、11本の電圧検出線(621)〜(631)の電位がそれぞれADC(61)の11個の入力端子に入力される。ADC(61)は、隣り合う2つの入力端子間の各電位差、即ち各セルの両端電圧をデジタルの電圧検出データに変換して出力端子から出力する。制御回路(62)は、ADC(61)の出力端子から得られる10セル分の電圧検出データに基づいて、各セルが過充電状態或いは過放電状態となっていないかどうかを監視する。
【0006】
ところで、ハイブリッド自動車のバッテリシステムにおいては、構造上、組電池と電圧検出装置とを互いに接続するワイヤハーネスが断線しやすく、ワイヤハーネスが断線すると、各セルの両端電圧を正確に検出することが出来なくなるという不具合が生じる。
【0007】
そこで、従来は組電池との間のワイヤハーネスの断線を検知する機能を有する電圧検出装置を設けて、断線の検知を行なうこととしている。
【0008】
例えば図21に示す電圧検出装置は、5個のセルB1〜B5に対してそれぞれ並列に接続されたコンデンサC11〜C15と、セルB1〜B5とコンデンサC11〜C15との間に設けられた第1スイッチング回路(71)と、コンデンサC11〜C15の両端電圧をそれぞれ選択的に検出する1つのコンデンサ電圧検出回路(74)と、コンデンサC11〜C15とコンデンサ電圧検出回路(74)との間に設けられた第2スイッチング回路(72)と、各コンデンサの両端を電圧検出後に短絡する第3スイッチング素子(73)とを具えている(特許文献1)。コンデンサC12、C14の容量は、コンデンサC11、C13、C15の容量のm倍(m>1)に設定されている。
【0009】
上記電圧検出装置においては、例えば図21中に×印で示す如くセルB3とセルB4の連結点P4から伸びるワイヤハーネスに断線が発生した場合、上述の如くコンデンサC13の容量はコンデンサC14の容量の1/m倍に設定されているので、コンデンサC13の両端には、コンデンサC14の両端にかかる電圧のm倍の電圧がかかることになる。そこで、隣り合う2つのコンデンサの両端電圧の比率がm或いは1/mとなったときに、断線が発生したものと判断される。
【0010】
尚、組電池を構成する複数のセルの両端にそれぞれ接続されるべき検出端子を具え、奇数番目のセルの検出端子間を短絡すると共に偶数番目のセルの検出端子間を開放したときに異常検出回路から出力される信号と、奇数番目のセルの検出端子間を開放すると共に偶数番目のセルの検出端子間を短絡したときに異常検出回路から出力される信号とに基づいてセルと検出端子との間の断線を検出する異常検出装置が提案されている(特許文献2)。
【0011】
又、電圧測定線を介して二次電池の出力する電圧が入力される複数の電圧入力端子と、電圧入力端子間に接続された複数の電圧センサと、電圧入力端子間に接続された複数の定電流源とを具え、電圧センサによって電圧測定線に断線が発生したことを検知することが可能な電圧測定回路が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2007−225484号公報
【特許文献2】特開2005−168118号公報
【特許文献3】特開2006−27528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図21に示す従来の電圧検出装置においては、組電池を構成する各セルの充電状態によっては、断線が発生していないにも拘わらず、断線が発生したと誤って判断される事態が発生する問題があった。
【0013】
即ち、組電池を構成する複数のセルの充電状態にばらつきが生じて、隣り合う2つのセルの両端電圧の比率がm或いは1/mとなったときには、これらのセルにそれぞれ並列に接続された2つのコンデンサの両端電圧の比率がm或いは1/mとなるので、断線が発生したと誤って判断されることになる。
【0014】
本発明の目的は、組電池との間の配線に断線が発生していないにも拘わらず、断線が発生したと誤って判断されることを防止することが出来る電圧検出装置及びこれを具えたバッテリシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る第1の電圧検出装置は、複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する装置であって、配線を介して組電池の複数の電圧検出点(組電池の両端及びセルどうしの連結点)と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路とを具え、該複数の第1連結線路の各第1連結線路には容量素子が介在し、各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されている。そして、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線(全ての電圧検出線、或いは組電池の負極側の端部に位置することとなる電圧検出線を除く一部の電圧検出線)がそれぞれ1或いは複数の断線検知用抵抗を介してグランドに接続され、前記電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて組電池の複数の電圧検出点と前記複数の電圧入力端子との間の配線の断線を検知する断線検知手段を具えている。
【0016】
上記本発明に係る第1の電圧検出装置において、何れの配線にも断線が発生していない正常な状態では、各セルから隣り合う2本の電圧検出線の間に介在する各容量素子に電流が供給されて各容量素子は電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されることとなって、各電圧検出線には各セルの正極或いは負極の電位が発生することとなる。従って、電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0017】
これに対し、例えばある1本の配線に断線が発生した場合には、該配線に接続されている電圧検出線の負極側に接続されている容量素子に対する電流の供給が停止されて、該容量素子から蓄えられていた電荷が放出されて該電圧検出線及び断線検知用抵抗を経てグランドへ流れ込み、該電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位よりも低下して零或いは略零となる。従って、断線検知手段は、正極側の電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位を下回ったとき、或いは電圧検出線の電位が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することが出来る。ここで閾値は、例えば、電圧検出線毎に設定され、各閾値は、組電池の負極側の端部に位置する電圧検出線と各電圧検出線との間に介在する全てのセルの充電容量が零となったときのそれらのセル電圧の積算値以下の値に設定される。
【0018】
上記本発明に係る第1の電圧検出装置においては、組電池を構成する複数のセルの充電状態にどの様なばらつきが生じていても、断線が発生していない正常な状態では、正極側の電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位よりも低くなることはなく、電圧検出線の電位が前記所定の閾値を下回って零或いは略零となることもないので、断線が発生していないにも拘わらず断線が発生したと誤って判断されることはない。
【0019】
また、上記第1の電圧検出装置において、前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第2連結線路を備え、該複数の第2連結線路の各第2連結線路に、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする。
【0020】
この様にすることで、何れの配線にも断線が発生していない正常な状態では、各セルから隣り合う2本の電圧検出線の間に介在する各容量素子に電流が供給されて各容量素子は電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されることとなって、各電圧検出線には各セルの正極或いは負極の電位が発生することとなる。従って、電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0021】
これに対し、例えばある1本の配線に断線が発生した場合には、該配線に接続されている電圧検出線の負極側に接続されている容量素子に対する電流の供給が停止されて、該容量素子から蓄えられていた電荷が放出されて該電圧検出線及び断線検知用抵抗を経てグランドへ流れ込み、該電圧検出線の電位が低下する。この過程で該電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位と等しくなったとき、電流が該負極側電圧検出線から整流素子を経て断線が発生した配線に接続されている電圧検出線に流れ始めるため、該電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位よりも低下することはなく、両電圧検出線の電位差は零或いは略零となる。従って、断線検知手段は、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することが出来る。ここで閾値は、例えば隣り合う2本の電圧検出線毎、即ちセル毎に設定され、各閾値は、各セルの充電容量が零となったときの両端電圧以下の値に設定される。
【0022】
尚、整流素子を具えていない構成においては、ある1本の配線に断線が発生した場合、断線が発生した配線に接続されている電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位よりも低くなって、両電圧検出線がそれぞれ接続されている電圧検出手段の2つの入力端子間に正負が逆の電圧が印加されると共に、断線が発生した配線に接続されている電圧検出線と隣接する正極側の電圧検出線がそれぞれ接続されている電圧検出手段の2つの入力端子間に高電圧が印加されることになる。
【0023】
これに対し、上記のように整流素子を具えている電圧検出装置においては、隣り合う2本の電圧検出線の間に整流素子が順方向を組電池の正極側に向けて介在しているので、上述の如く断線が発生した配線に接続されている電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位よりも低くなることはなく、電圧検出手段に正負が逆の電圧が印加されると共に高電圧が印加されることを防止することが出来る。
【0024】
具体的構成において、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線からそれぞれ電流線路が引き出され、複数本の電流線路の内、1本の電流線路の先端は断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子を介してグランドに接続され、他の電流線路の先端は該1本の電流線路に接続され、各電流線路に前記1或いは複数の断線検知用抵抗が介在している。
【0025】
断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子がオンの状態では、組電池を構成する各セルから僅かな電流が電圧検出線及び断線検知用抵抗を経てグランドに流れ込む。従って、例えば電圧検出装置の電源がオフであって断線を検知することが出来ない状態であるときに前記スイッチング素子をオンに設定した場合には、各セルの電力が無駄に消費されることになる。
【0026】
そこで、上記具体的構成においては、例えば電圧検出装置の電源がオンに設定されたときにのみ断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子がオンに設定され、これによって各セルの電力が無駄に消費されることを防止することが出来る。
【0027】
又、具体的構成において、各電流線路には、整流素子が順方向をグランド側に向けて介在している。これによって、電圧の高い電流線路から電圧の低い電流線路に電流が逆流することを防止することが出来る。
【0028】
更に具体的構成において、1本の電圧検出線に接続されている断線検知用抵抗は1つであって、該断線検知用抵抗の抵抗値は、組電池の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定されている。
【0029】
組電池を構成する各セルから僅かな電流が電圧検出線及び断線検知用抵抗を経てグランドに流れ込む。ここで、組電池の正極側の端部に位置する第1番目のセルからは第1番目の断線検知用抵抗のみ、第2番目のセルからは第1番目と第2番目の断線検知用抵抗、第3番目のセルからは第1番目と第2番目と第3番目の断線検知用抵抗・・・第n番目のセルからは第1番目〜第n番目の断線検知用抵抗に電流が流れ込むことになるが、各セルの消費電流にばらつきが発生すると各セルの両端電圧にばらつきが発生することになる。そこで、断線検知用抵抗の抵抗値は、組電池の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定されており、これによって各セルの消費電流のばらつきを小さく抑えることが出来る。
【0030】
また、1本の電圧検出線に接続されている断線検知用抵抗は複数であって、それら複数の断線検知用抵抗の抵抗値の和(合成抵抗値)は、組電池の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定されている。
【0031】
具体的構成において、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線(全ての電圧検出線、或いは組電池の負極側の端部に位置することとなる電圧検出線を除く一部の電圧検出線)にはそれぞれ、断線検知用抵抗との連結点よりも電圧入力端子側にPTC素子が介在している。
【0032】
上記具体的構成においては、電圧検出線に過電流が流れたとき、PTC素子が発熱し、これに伴って電気抵抗値が急増する。この結果、電圧検出線を流れる過電流がPTC素子によって遮断されることになる。これによって、PTC素子の後段回路に過電流が流れることを防止することが出来る。又、配線に断線が発生していない状態であっても、各セルから僅かな電流がPTC素子及び断線検知用抵抗を経てグランドに流れ込むのであるが、PTC素子の抵抗値は通常の状態では数Ω程度であるので、PTC素子による電圧降下量は無視できる程度の量となる。従って、PTC素子を具えていない電圧検出装置と同程度の高い精度で各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0033】
ところで、従来、組電池を構成する各セルの充電状態を均等化する機能を有する電圧検出装置が知られている。
【0034】
例えば図22に示す従来の電圧検出装置(8)においては、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路(851)〜(860)に、トランジスタからなる1つの第1放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW10と均等化用抵抗rとを直列に接続してなる放電回路(80)が介在している。各放電回路(80)の第1放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW10のベースから電流線路(861)〜(870)が引き出され、各電流線路の先端が第2放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20を介してグランドに接続されている。各第2放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20は制御回路(82)によってオン/オフ制御される。
【0035】
又、各電流線路(861)〜(870)には、第1のスイッチング制御用抵抗R31〜R40が介在しており、各抵抗の放電回路(80)側の一端と各放電回路(80)の正極側の電圧検出線(821)〜(830)とを互いに連結する各連結線路(871)〜(880)には、第2のスイッチング制御用抵抗R41〜R50が介在している。第2放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20が制御回路(82)によってオンに設定されると、第1放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW10もオンとなってセルが放電されることになる。
【0036】
ところで、上記従来の電圧検出装置(8)において、第1放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW10が常にオンとなるオン故障が発生した場合、その後、オン故障が発生した放電回路に接続されているセルが該放電回路により常に放電されて該セルの容量が低下する事態が発生する。
【0037】
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、放電回路に少なくとも2つのスイッチング素子を設けると共に、これら少なくとも2つのスイッチング素子の内、一部の1或いは複数のスイッチング素子にそれぞれ接続されている2つのスイッチング制御用抵抗を断線検知用抵抗として兼用することに想到し、本発明に係る第2の電圧検出装置を完成するに至った。
【0038】
本発明に係る第2の電圧検出装置は、複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する装置であって、配線を介して組電池の複数の電圧検出点(組電池の両端及びセルどうしの連結点)と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路と、前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第2連結線路とを具え、前記複数の第1連絡線路の各第1連結線路には容量素子が介在し、各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されている。前記複数の第2連結線路の各第2連結線路には、少なくとも2つのスイッチング素子と1或いは複数の抵抗とを互いに直列に接続してなる放電回路が介在している。各放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、一部の1或いは複数のスイッチング素子のベース或いはゲートがそれぞれ1或いは複数の抵抗からなる第1抵抗回路を介してグランドに接続され、各第1抵抗回路の放電回路側の一端と各放電回路の正極側の電圧検出線とを互いに連結する各第3連結線路には、1或いは複数の抵抗からなる第2抵抗回路が介在している。そして、前記電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて組電池の複数の電圧検出点と前記複数の電圧入力端子との間の配線の断線を検知する断線検知手段を具えている。
【0039】
上記本発明に係る第2の電圧検出装置においては、各セルから隣り合う2本の電圧検出線の間に介在する各容量素子に電流が供給されて各容量素子は電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されると共に、各セルから僅かな電流が電圧検出線、スイッチング制御用/断線検知用の第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込む。
【0040】
何れの配線にも断線が発生していない正常な状態では、上述の如く各容量素子は満充電状態に維持されることとなって、各電圧検出線には各セルの正極或いは負極の電位が発生することとなる。従って、電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0041】
又、上記電圧検出装置は、組電池を構成する各セルの充電状態を均等化する機能を有しており、均等化処理においては、例えば両端電圧が均等化目標電圧を超えるセルに対してそれぞれ放電回路による放電が実施される。上述の如く各セルから僅かな電流がグランドに向って流れている状態で、放電の対象とするセルに接続されている放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、例えばトランジスタ或いはFET(電界効果トランジスタ)からなる前記一部の1或いは複数のスイッチング素子以外のスイッチング素子がオンに設定されると、それら1或いは複数のスイッチング素子もオンとなって、該セルから放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子及び1或いは複数の抵抗に電流が流れて該セルが放電されることになる。これによって、各セルの充電状態を均等化することが出来る。
【0042】
又、例えばある1本の配線に断線が発生した場合には、該配線に接続されている電圧検出線の負極側に接続されている容量素子に対する電流の供給が停止されて、該容量素子から蓄えられていた電荷が放出されて該電圧検出線、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドへ流れ込み、該電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位よりも低下して零或いは略零となる。従って、断線検知手段は、正極側の電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位を下回ったとき、或いは電圧検出線の電位が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することが出来る。ここで閾値は、例えば、電圧検出線毎に設定され、各閾値は、組電池の負極側の端部に位置する電圧検出線と各電圧検出線との間に介在する全てのセルの充電容量が零となったときのそれらのセル電圧の積算値以下の値に設定される。
【0043】
上記本発明に係る第2の電圧検出装置においては、組電池を構成する複数のセルの充電状態にどの様なばらつきが生じていても、断線が発生していない正常な状態では、正極側の電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位を下回ることはなく、電圧検出線の電位が前記所定の閾値を下回って零或いは略零となることもないので、断線が発生していないにも拘わらず断線が発生したと誤って判断されることはない。
【0044】
具体的構成において、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線(全ての電圧検出線、或いは組電池の負極側の端部に位置することとなる電圧検出線を除く一部の電圧検出線)にはそれぞれ、第2連結線路よりも電圧入力端子側にPTC素子が介在している。
【0045】
上記具体的構成においては、電圧検出線に過電流が流れたとき、PTC素子が発熱し、これに伴って電気抵抗値が急増する。この結果、電圧検出線を流れる過電流がPTC素子によって遮断されることになる。これによって、PTC素子の後段回路に過電流が流れることを防止することが出来る。又、配線に断線が発生していない状態であっても、各セルから僅かな電流がPTC素子、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込むのであるが、PTC素子の抵抗値は通常の状態では数Ω程度であるので、PTC素子による電圧降下量は無視できる程度の量となる。従って、PTC素子を具えていない電圧検出装置と同程度の高い精度で各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0046】
また、上記第2の電圧検出装置において、前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第4連結線路を具え、該複数の第4連結線路の各第4連結線路には、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする。
【0047】
この様にすることで、各セルから隣り合う2本の電圧検出線の間に介在する各容量素子に電流が供給されて各容量素子は電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されると共に、各セルから僅かな電流が電圧検出線、スイッチング制御用/断線検知用の第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込む。
【0048】
何れの配線にも断線が発生していない正常な状態では、上述の如く各容量素子は満充電状態に維持されることとなって、各電圧検出線には各セルの正極或いは負極の電位が発生することとなる。従って、電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0049】
又、上記電圧検出装置は、組電池を構成する各セルの充電状態を均等化する機能を有しており、均等化処理においては、例えば両端電圧が均等化目標電圧を超えるセルに対してそれぞれ放電回路による放電が実施される。上述の如く各セルから僅かな電流がグランドに向って流れている状態で、放電の対象とするセルに接続されている放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、例えばトランジスタ或いはFETからなる前記一部の1或いは複数のスイッチング素子以外のスイッチング素子がオンに設定されると、それら1或いは複数のスイッチング素子もオンとなって、該セルから放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子及び1或いは複数の抵抗に電流が流れて該セルが放電されることになる。これによって、各セルの充電状態を均等化することが出来る。
【0050】
又、例えばある1本の配線に断線が発生した場合、該配線に接続されている電圧検出線の負極側の容量素子に対する電流の供給が停止されて、該容量素子から蓄えられていた電荷が放出されて該電圧検出線、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドへ流れ込み、該電圧検出線の電位が低下する。この過程で該電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位と等しくなったとき、電流が該負極側電圧検出線から整流素子を経て断線が発生した配線に接続されている電圧検出線に流れ始めるため、該電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位よりも低下することはなく、両電圧検出線の電位差は零或いは略零となる。従って、断線検知手段は、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することが出来る。ここで閾値は、例えば隣り合う2本の電圧検出線毎、即ちセル毎に設定され、各閾値は、各セルの充電容量が零となったときの電圧値以下の値に設定される。
【0051】
尚、整流素子を具えていない構成においては、ある1本の配線に断線が発生した場合、断線が発生した配線に接続されている電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位よりも低くなって、両電圧検出線がそれぞれ接続されている電圧検出手段の2つの入力端子間に正負が逆の電圧が印加されると共に、断線が発生した配線に接続されている電圧検出線と隣接する正極側の電圧検出線がそれぞれ接続されている電圧検出手段の2つの入力端子間に高電圧が印加されることになる。
【0052】
これに対し、上記本発明に係る第4の電圧検出装置においては、隣り合う2本の電圧検出線の間に整流素子が順方向を組電池の正極側に向けて介在しているので、上述の如く断線が発生した配線に接続されている電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位よりも低くなることはなく、電圧検出手段に正負が逆の電圧が印加されると共に高電圧が印加されることを防止することが出来る。
【0053】
上記第2の電圧検出装置の具体的構成において、各放電回路の1つのスイッチング素子のベース或いはゲートから電流線路が引き出され、複数本の電流線路の内、1本の電流線路の先端は断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子を介してグランドに接続され、他の電流線路の先端は該1本の電流線路に接続され、各電流線路に前記第1抵抗回路が介在している。
【0054】
断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子がオンの状態では、組電池を構成する各セルから僅かな電流が電圧検出線、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込む。従って、例えば電圧検出装置の電源がオフであって断線を検知することが出来ない状態であるときに前記スイッチング素子をオンに設定した場合には、各セルの電力が無駄に消費されることになる。
【0055】
そこで、上記具体的構成においては、例えば電圧検出装置の電源がオンに設定されたときにのみ断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子がオンに設定され、これによって各セルの電力が無駄に消費されることを防止することが出来る。
【0056】
又、上記具体的構成においては、放電回路を構成する少なくとも2つのスイッチング素子の内、トランジスタ或いはFETからなる前記1つのスイッチング素子以外のスイッチング素子にオン故障が発生したとしても、断線検知オン/オフ切換えスイッチがオフに設定されていれば前記1つのスイッチング素子はオンとならないので、オン故障が発生した放電回路に接続されているセルが該放電回路により放電されることはない。
【0057】
又、具体的構成において、各電流線路には、整流素子が順方向をグランド側に向けて介在している。これによって、電圧の高い電流線路から電圧の低い電流線路に電流が逆流することを防止することが出来る。
【0058】
又、具体的構成において、各放電回路は、順方向を組電池の負極側となる方向に向けた整流素子を具えている。これによって、配線の断線時に、隣り合う2本の電圧検出線の内、電圧が低い電圧検出線から両電圧検出線の間に介在する放電回路に電流が逆流することを防止することが出来る。
【0059】
又、具体的構成において、各放電回路は、順方向を組電池の負極側となる方向に向けた整流素子を具えている。これによって、配線の断線時に、隣り合う2本の電圧検出線の内、電圧が低い電圧検出線から両電圧検出線の間に介在する放電回路に電流が逆流することを防止することが出来る。
【0060】
更に具体的構成において、第1抵抗回路の抵抗値と第2抵抗回路の抵抗値の和は、組電池の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定されている。
【0061】
組電池を構成する各セルから僅かな電流が電圧検出線、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込む。ここで、組電池の正極側の端部に位置する第1番目のセルからは第1番目の2つの抵抗回路(第1抵抗回路及び第2抵抗回路)のみ、第2番目のセルからは第1番目の2つの抵抗回路と第2番目の2つの抵抗回路、第3番目のセルからは第1番目の2つの抵抗回路と第2番目の2つの抵抗回路と第3番目の2つの抵抗回路・・・第n番目のセルからは第1番目〜第n番目の2つの抵抗回路に電流が流れ込むことになるが、各セルの消費電流にばらつきが発生すると各セルの両端電圧にばらつきが発生することになる。そこで、第1抵抗回路の抵抗値と第2抵抗回路の抵抗値の和は、組電池の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定されており、これによって各セルの消費電流のばらつきを小さく抑えることが出来る。
【0062】
本発明に係るバッテリシステムは、複数のセルを直列に接続してなる組電池と、該組電池を構成する各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置とを具え、該電圧検出装置として、上記本発明に係る第1或いは第2の電圧検出装置の何れかの電圧検出装置を採用したものである。
【0063】
また、上記バッテリシステムにおいて、前記配線にはPTC素子が介在していることを特徴とする。
【0064】
この様な構成を有することで、配線に過電流が流れたとき、PTC素子が発熱し、これに伴って電気抵抗値が急増する。この結果、電圧検出線を流れる過電流がPTC素子によって遮断されることになる。これによって、PTC素子の後段回路に過電流が流れることを防止することが出来る。又、配線に断線が発生していない状態であっても、各セルから僅かな電流がPTC素子、第2抵抗回路及び第1抵抗回路を経てグランドに流れ込むのであるが、PTC素子の抵抗値は通常の状態では数Ω程度であるので、PTC素子による電圧降下量は無視できる程度の量となる。従って、PTC素子を具えていない電圧検出装置と同程度の高い精度で各セルの両端電圧を検出することが出来る。
【0065】
又、本発明に係る電動車輌は、上記のバッテリシステムと、前記バッテリシステムからの電力により駆動されるモータと、前記モータの回転力により回転する車輪とを備える。
【0066】
上述の如く、本発明に係る電圧検出装置及びこれを具えたバッテリシステムによれば、組電池との間の配線に断線が発生していないにも拘わらず、断線が発生したと誤って判断されることを防止することが出来る。
【0067】
本発明に係る第1の電圧検出回路は、複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する回路であって、組電池の複数の電圧検出点の電位が入力されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される複数の電圧検出線とを具え、該複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線がそれぞれ1或いは複数の断線検知用抵抗を介してグランドに接続されている。
【0068】
この様に構成される第1の電圧検出回路は、組電池の複数の電圧検出点と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子から引き出された複数の電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路に介在する容量素子とを具えた回路に接続され、これによって、上記本発明に係る第1電圧検出装置が構成されることとなる。
【0069】
また、上記1の電圧検出回路において、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路には、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする。
【0070】
本発明に係る第2の電圧検出回路は、複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する回路であって、組電池の複数の電圧検出点の電位が入力されるべき複数の電圧入力端子を具え、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路とを具え、前記複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、前記複数の第1連結線路の各第1連結線路には、少なくとも2つのスイッチング素子と1或いは複数の抵抗とを互いに直列に接続してなる放電回路が介在しており、各放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、一部の1或いは複数のスイッチング素子のベース或いはゲートがそれぞれ1或いは複数の抵抗からなる第1抵抗回路を介してグランドに接続され、各第1抵抗回路の放電回路側の一端と各放電回路の正極側の電圧検出線とを互いに連結する各第2連結線路には、1或いは複数の抵抗からなる第2抵抗回路が介在している。
【0071】
この様に構成される第2の電圧検出回路は、組電池の複数の電圧検出点と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子から引き出された複数の電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路に介在する容量素子とを具えた回路に接続され、これによって、上記本発明に係る第2の電圧検出装置が構成されることとなる。
【0072】
また、上記第2の電圧検出回路において、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各第3連結線路には、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0073】
本発明に依れば、組電池との間の配線に断線が発生していないにも拘わらず、断線が発生したと誤って判断されることを防止することが出来る電圧検出装置及びこれを具えたバッテリシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図2】上記バッテリシステムにおいてワイヤハーネスに断線が発生した場合に電流が流れる経路を表わす回路図である。
【図3】上記バッテリシステムにおいて第3番目のワイヤハーネスに断線が発生した場合の2つのコンデンサC2、C3の両端電圧の変化を表わすグラフである。
【図4】上記バッテリシステムにおいて第11番目のワイヤハーネスに断線が発生した場合に電流が流れる経路を表わす回路図である。
【図5】第2実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図6】第3実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図7】上記バッテリシステムを構成する放電回路のダイオードの機能を説明するための回路図である。
【図8】上記バッテリシステムにおいて断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンに設定されたときに電流が流れる経路を表わす回路図である。
【図9】上記バッテリシステムにおいて均等化処理時に電流が流れる経路を表わす回路図である。
【図10】上記バッテリシステムにおいてワイヤハーネスに断線が発生した場合に電流が流れる経路を表わす回路図である。
【図11】第4実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図12】保護抵抗を断線検知抵抗が介在する電流線路よりも組電池側に配設した場合の問題点を説明するための回路図である。
【図13】1MΩの抵抗に結露が生じた場合の合成抵抗を表わす回路図である。
【図14】100kΩの抵抗に結露が生じた場合の合成抵抗を表わす回路図である。
【図15】第5実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図16】第3実施例のバッテリシステムの変形例を表わす回路図である。
【図17】第5実施例のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図18】第3実施例のバッテリシステムの変形例を表わす回路図である。
【図19】本発明に係る電動車輌の構成を表わすブロック図である。
【図20】従来のバッテリシステムの構成を表わす回路図である。
【図21】断線検知機能を有する従来の電圧検出装置の構成を表わす回路図である。
【図22】均等化機能を有する従来の電圧検出装置の構成を表わす回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、本発明をハイブリッド自動車のバッテリシステムに実施した形態につき、5つの実施例に基づいて具体的に説明する。尚、以下では、10個のセルからなる組電池を具えたバッテリシステムについて説明するが、本発明は、10個以外の複数個のセルからなる組電池を具えたバッテリシステムにも同様に実施することが可能である。又、リチウムイオン二次電池に限らず、種々の二次電池からなるセルを直列に接続して構成される組電池を具えたバッテリシステムにも同様に実施することが可能である。
(第1実施例)
第1実施例のバッテリシステムは、図1に示す如く、リチウムイオン二次電池からなる10個のセルを直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(2)とを具えており、組電池(1)の正極点P1、セルどうしの連結点P2〜P10及び組電池(1)の負極点P11と電圧検出装置(2)の11個の電圧入力端子(201)〜(211)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池(1)の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0076】
電圧検出装置(2)においては、前記11個の電圧入力端子(201)〜(211)からそれぞれ電圧検出線(221)〜(231)が引き出され、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路(241)〜(250)には、静電気電圧から回路を保護するためのコンデンサC1〜C10が介在している。コンデンサC1〜C10は、例えば0.1μFの容量を有している。11本の電圧検出線(221)〜(231)の内、第1番目の電圧検出線(221)からは電源ライン(220)が引き出され、電圧検出装置(2)の電源端子(図示省略)に接続されている。又、第11番目の電圧検出線(231)は、グランドに接続されている。11本の電圧検出線(221)〜(231)はADC(21)の11個の入力端子に接続され、該ADC(21)の1つの出力端子はマイクロコンピュータからなる制御回路(22)に接続されている。
【0077】
上記電圧検出装置(2)は、組電池(1)の電圧検出点P1〜P11と電圧入力端子(201)〜(211)との間のワイヤハーネス(401)〜(411)の断線を検知する機能を有しており、11本の電圧検出線(221)〜(231)の内、第11番目の電圧検出線(231)を除く電圧検出線(221)〜(230)のコンデンサC1〜C10よりもADC(21)側に位置する一点(251)〜(260)からそれぞれ電流線路(261)〜(270)が引き出され、これらの電流線路(261)〜(270)の先端はグランドに接続されている。各電流線路(261)〜(270)には、例えば200KΩ程度の抵抗値を有する断線検知用抵抗R1〜R10が介在している。
【0078】
又、隣り合う2本の電圧検出線を前記一点(251)〜(260)よりもADC(21)側にて互いに連結する各連結線路(271)〜(280)には、クランプダイオードD1〜D10が介在している。即ち、各連結線路(271)〜(280)は、コンデンサが介在する各連結線路(241)〜(250)と並列に設けられている。各クランプダイオードD1〜D10は、電流が負極側の電圧検出線から正極側の電圧検出線に流れる方向に接続されている。
【0079】
上記電圧検出装置(2)においては、ワイヤハーネス(401)〜(411)の何れにも断線が発生していない正常な状態では、各セルB1〜B10から各コンデンサC1〜C10に電流が供給されて各コンデンサは電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されることとなって、11本の電圧検出線(221)〜(231)にはそれぞれ、各セルB1〜B10の正極或いは負極の電位が発生することとなり、11本の電圧検出線(221)〜(231)の電位がそれぞれADC(21)の11個の入力端子に入力される。ADC(21)は、隣り合う2つの入力端子間の各電位差、即ち各セルの両端電圧をデジタルの電圧検出データに変換して出力端子から出力する。制御回路(22)は、ADC(21)の出力端子から得られる10セル分の電圧検出データに基づいて、各セルが過充電状態或いは過放電状態となっていないかどうかを監視する。
【0080】
例えば、図2中に×印で示す如く組電池(1)の第3電圧検出点P3と電圧検出装置(2)の第3電圧入力端子(図示省略)との間の第3ワイヤハーネス(403)に断線が発生した場合には、セルB3からコンデンサC3に対する電流の供給が停止されて、コンデンサC3から蓄えられていた電荷が放出されて図中に実線の矢印で示す如く第3電圧検出線(223)、第3電流線路(263)及び断線検知用抵抗R3を経てグランドへ流れ込み、第3電圧検出線(223)の電位は徐々に低下する。この過程で第3電圧検出線(223)の電位が第4電圧検出線(224)の電位と等しくなったとき、図中に破線の矢印で示す如く第4電圧検出線(224)からクランプダイオードD3を経て第3電圧検出線(223)に電流が流れ始めるため、第3電圧検出線(223)の電位が第4電圧検出線(224)の電位よりも低下することはなく、両電圧検出線(223)(224)の電位差、即ちコンデンサC3の両端電圧は略零となる。又、この様にコンデンサC3の両端電圧が略零となるので、コンデンサC2の両端電圧はセルB2とセルB3の合計電圧と等しくなる。
【0081】
図3は、第3ワイヤハーネス(403)に断線が発生したときのコンデンサC2、C3の両端電圧の変化を表わしている。尚、断線が発生したときのセルB2、B3の両端電圧をそれぞれV2、V3とする。
【0082】
断線発生前のコンデンサC3の両端電圧は、同図(b)に示す如くセルB3の両端電圧V3と等しいが、断線が発生すると略ゼロとなる。一方、断線発生前のコンデンサC2の両端電圧は、同図(a)に示す如くセルB2の両端電圧V2と等しいが、断線が発生すると、セルB2とセルB3の合計電圧(=V2+V3)と等しくなる。
【0083】
上述の如く、第n番目(1≦n≦10)のワイヤハーネスに断線が発生すると、第n番目のコンデンサCnの両端電圧が略零となって、制御回路(22)に入力される第n番目のセルの両端電圧は略零となる。実際のリチウム二次電池の使用範囲では、両端電圧が充電容量が零のときの電圧値以下に低下することはあり得ない。そこで、図1に示す制御回路(22)は、ADC(21)から入力される各セルの両端電圧を監視し、第n番目のセルの両端電圧が所定の閾値まで低下したときに第n番目のワイヤハーネスに断線が発生したと判断する。ここで、閾値はセル毎に設定され、各閾値は、各セルの充電容量が零となったときの両端電圧以下の値に設定される。全てのセルの閾値を零に設定することも可能である。
【0084】
尚、第11番目のワイヤハーネス(411)に断線が発生した場合には、図4に矢印で示す如く電流が流れて、コンデンサC10の両端電圧が略零となるので、セルB10の両端電圧が所定の閾値まで低下したときに第11番目のワイヤハーネス(411)に断線が発生したと判断することが出来る。
【0085】
ところで、2本の電圧検出線の間にクランプダイオードD1〜D10が設けられていない構成においては、例えば上述の如く第3ワイヤハーネス(403)に断線が発生した場合、第3電圧検出線(223)の電位が第4電圧検出線(224)の電位よりも低下して、ADC(21)の第3チャンネルの入力端子CH3と第4チャンネルの入力端子CH4との間に正負が逆の電圧が印加されると共に、ADC(21)の第3チャンネルの入力端子CH3と第2チャンネルの入力端子CH2との間に高電圧が印加されることになる。
【0086】
これに対し、上記電圧検出装置(2)においては、第3電圧検出線(223)と第4電圧検出線(224)との間にクランプダイオードD3が順方向を組電池(1)の正極側に向けて介在しているので、上述の如く第3電圧検出線(223)の電位が第4電圧検出線(224)の電位よりも低下することはなく、ADC(21)の第3チャンネルの入力端子CH3と第4チャンネルの入力端子CH4との間に正負が逆の電圧が印加されることも、第3チャンネルの入力端子CH3と第2チャンネルの入力端子CH2との間に高電圧が印加されることもない。
【0087】
この様に、隣り合う2本の電圧検出線の間に順方向を組電池(1)の正極側に向けたクランプダイオードD1〜D10を設けることによって、ADC(21)に正負が逆の電圧が印加されると共に高電圧が印加されることを防止することが出来る。
【0088】
本実施例のバッテリシステムにおいては、組電池(1)を構成する複数のセルの充電状態にどの様なばらつきが生じていても、断線が発生していない正常な状態では、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が前記所定の閾値を下回って略零となることはないので、断線が発生していないにも拘わらず断線が発生したと誤って判断されることはない。
(第2実施例)
本実施例のバッテリシステムは、図5に示す如く、第1実施例のバッテリシステムと同様に、リチウムイオン二次電池からなる10個のセルを直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(20)とを具えており、組電池(1)の正極点P1、セルどうしの連結点P2〜P10及び組電池(1)の負極点P11と電圧検出装置(20)の11個の電圧入力端子(201)〜(211)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0089】
電圧検出装置(20)においては、11本の電圧検出線(221)〜(231)の内、第11番目の電圧検出線(231)を除く電圧検出線(221)〜(230)のコンデンサC1〜C10よりもADC(21)側に位置する一点(251)〜(260)からそれぞれ電流線路(281)〜(290)が引き出され、10本の電流線路(281)〜(290)の内、第10番目の電流線路(290)の先端が断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを介してグランドに接続され、他の9本の電流線路(281)〜(289)の先端は第10番目の電流線路(290)に接続されている。該スイッチング素子SWは、制御回路(23)によってオン/オフ制御される。
【0090】
各電流線路(281)〜(290)には、例えば200KΩ程度の抵抗値を有する断線検知用抵抗R1〜R10が介在すると共に、ダイオードD11〜D20が介在している。各ダイオードD11〜D20は、電流が各電圧検出線(221)〜(230)からグランドに向って流れる方向に接続されており、これによって、電圧の高い電流線路から電圧の低い電流線路に電流が逆流することを防止することが出来る。その他の構成及び動作は、第1実施例の電圧検出回路と同じであるので、説明を省略する。
【0091】
ハイブリッド自動車のバッテリシステムにおいては、イグニッションスイッチがオフの状態では組電池の充放電が行なわれないため、組電池を構成する各セルの両端電圧を監視する必要はなく、電圧検出装置の電源はオフに設定されている。
【0092】
本実施例のバッテリシステムにおいては、電圧検出装置(20)の断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンの状態では、組電池(1)を構成する各セルB1〜B10から僅かな電流が電圧検出線(221)〜(230)及び断線検知用抵抗R1〜R10を経てグランドに流れ込む。従って、仮に電圧検出装置(20)の電源がオフであって断線を検知することが出来ない状態であるときに該スイッチング素子SWをオンに設定した場合には、各セルの電力が無駄に消費されることになる。そこで、上記制御回路(23)は、イグニッションスイッチがオンに設定されることによって電圧検出装置(20)の電源がオンに設定されたときに、断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWをオンに設定する。この様に、電圧検出装置の電源がオンに設定されたときにのみ断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWをオンに設定することによって、各セルの電力が無駄に消費されることを防止することが出来る。
(第3実施例)
本実施例のバッテリシステムは、図6に示す如く、リチウムイオン二次電池からなる10個のセルを直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(5)とを具えており、組電池(1)の正極点P1、セルどうしの連結点P2〜P10及び組電池(1)の負極点P11と電圧検出装置(5)の11個の電圧入力端子(501)〜(511)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0093】
電圧検出装置(5)においては、前記11個の電圧入力端子(501)〜(511)からそれぞれ電圧検出線(521)〜(531)が引き出され、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する各連結線路(541)〜(550)には、静電気電圧から回路を保護するためのコンデンサC1〜C10が介在している。コンデンサC1〜C10は、例えば0.1μFの容量を有している。11本の電圧検出線(521)〜(531)の内、第1番目の電圧検出線(521)からは電源ライン(520)が引き出され、電圧検出装置(5)の電源端子(図示省略)に接続されている。又、第11番目の電圧検出線(531)は、グランドに接続されている。11本の電圧検出線(521)〜(531)はADC(51)の11個の入力端子に接続され、該ADC(51)の1つの出力端子はマイクロコンピュータからなる制御回路(52)に接続されている。
【0094】
上記電圧検出装置(5)は、組電池(1)を構成する各セルの充電状態を均等化する機能を有しており、コンデンサが介在する連結線路(541)〜(550)と並列に設けられ隣り合う2本の電圧検出線をコンデンサC1〜C10よりもADC(51)側にて互いに連結する各連結線路(551)〜(560)には、トランジスタからなる2つのスイッチング素子SW1、SW2と均等化用抵抗rとダイオードD0とを直列に接続してなる放電回路(50)が介在している。ここで、均等化用抵抗rは、例えば100Ω程度の抵抗値を有している。又、各ダイオードD0は、電流が正極側の電圧検出線から負極側の電圧検出線に向けて流れる方向に接続されており、これによって、ワイヤハーネスの断線時に図7に破線の矢印で示す如く電流が流れることを防止することが出来る。
【0095】
図6に示す各放電回路(50)の2つのスイッチング素子SW1、SW2の内、1つのスイッチング素子SW2のベースから電流線路(561)〜(570)が引き出され、10本の電流線路(561)〜(570)の内、第1番目の電流線路(561)の先端は断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを介してグランドに接続され、他の9本の電流線路(562)〜(570)の先端は第1番目の電流線路(561)に接続されている。断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWは、制御回路(52)によってオン/オフ制御される。
【0096】
各電流線路(561)〜(570)には、第1のスイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20及びダイオードD21〜D30が介在しており、各第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗の放電回路(50)側の一端と各放電回路(50)の正極側の電圧検出線(521)〜(530)とを放電回路(50)よりもADC(51)側で互いに連結する各連結線路(571)〜(580)には、第2のスイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30が介在している。第1のスイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20は、例えば200KΩ程度の抵抗値を有しており、第2のスイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30は、例えば50KΩ程度の抵抗値を有している。各ダイオードD21〜D30は、電流がスイッチング素子SW2からグランドに向けて流れる方向に接続されている。これによって、電圧の高い電流線路から電圧の低い電流線路に電流が流れることを防止することが出来る。
【0097】
又、コンデンサが介在する連結線路(541)〜(550)と並列に設けられ隣り合う2本の電圧検出線を前記第2のスイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30よりもADC(51)側にて互いに連結する各連結線路(581)〜(590)には、クランプダイオードD1〜D10が介在している。各クランプダイオードD1〜D10は、電流が負極側の電圧検出線から正極側の電圧検出線に流れる方向に接続されている。
【0098】
尚、各放電回路(50)のスイッチング素子SW1のベースには、図20に示す従来の放電回路(80)と同様に、第1スイッチング制御用抵抗R31〜R40、第2スイッチング制御用抵抗R41〜R50及び放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20(何れも図示省略)が接続されており、放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20は、制御回路(52)によってオン/オフ制御されている。放電オン/オフ切換えスイッチング素子SW20がオンに設定されると、放電回路(50)のスイッチング素子SW1がオンとなる。
【0099】
本実施例のバッテリシステムにおいては、図示省略するイグニッションスイッチがオンに設定されることによって電圧検出装置(5)の電源がオンに設定されたとき、制御回路(52)は、断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWをオンに設定する。これによって、各セルB1〜B10から各コンデンサC1〜C10に電流が供給されて各コンデンサは電荷が蓄えられた状態(満充電状態)に維持されると共に、図8に破線の矢印で示す如く、各セルB1〜B10から僅かな電流が各電圧検出線(521)〜(530)、各第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30、各第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20、各ダイオードD21〜D30及び断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを経てグランドに流れ込むことになる。
【0100】
ワイヤハーネス(401)〜(411)の何れにも断線が発生していない正常な状態では、上述の如く各コンデンサC1〜C10は満充電状態に維持されることとなって、11本の電圧検出線(521)〜(531)にはそれぞれ、各セルB1〜B10の正極或いは負極の電位が発生することとなり、11本の電圧検出線(521)〜(531)の電位がそれぞれADC(51)の11個の入力端子に入力される。ADC(51)は、隣り合う2つの入力端子間の各電位差、即ち各セルの両端電圧をデジタルの電圧検出データに変換して出力端子から出力する。制御回路(52)は、ADC(51)の出力端子から得られる10セル分の電圧検出データに基づいて、各セルが過充電状態或いは過放電状態となっていないかどうかを監視する。
【0101】
又、上記電圧検出装置(5)による均等化処理においては、両端電圧が均等化目標電圧を超えるセルに対してそれぞれ放電回路(50)による放電が実施される。上述の如く電圧検出装置(5)の断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンに設定されて各セルから僅かな電流がグランドに向って流れている状態で、放電の対象とするセルに接続されている放電回路(50)のスイッチング素子SW1がオンに設定されると、スイッチング素子SW2もオンとなって該セルが放電されることになる。例えば、セルB1に接続されている放電回路(50)のスイッチング素子SW1がオンに設定されると、図9に破線の矢印で示す如くセルB1からスイッチング素子SW1、SW2、均等化用抵抗r及びダイオードD0に電流が流れて該セルが放電されることになる。この様にして、両端電圧が均等化目標電圧を越せるセルを放電させることによって、各セルの充電状態を均等化することが出来る。
【0102】
又、例えば、図10中に×印で示す如く組電池(1)の第3電圧検出点P3と電圧検出回路(5)の第3電圧入力端子(図示省略)との間の第3ワイヤハーネス(403)に断線が発生した場合には、セルB3からコンデンサC3に対する電流の供給が停止されて、コンデンサC3に蓄えられていた電荷が放出されて図中に実線の矢印で示す如く第3電圧検出線(523)、第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗R23、第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗R13、ダイオードD23及び断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを経てグランドへ流れ込み、第3電圧検出線(523)の電位は徐々に低下する。この過程で第3電圧検出線(523)の電位が第4電圧検出線(524)の電位と等しくなったとき、図中に破線の矢印で示す如く第4電圧検出線(524)からクランプダイオードD3を経て第3電圧検出線(523)に電流が流れ始めるため、第3電圧検出線(523)の電位が第4電圧検出線(524)の電位よりも低下することはなく、両電圧検出線(523)(524)の電位差、即ちコンデンサC3の両端電圧は略零となる。又、この様にコンデンサC3の両端電圧が略零となるので、コンデンサC2の両端電圧はセルB2とセルB3の合計電圧と等しくなる。
【0103】
尚、第1実施例と同様に、隣り合う2本の電圧検出線の間に順方向を組電池(1)の正極側に向けたクランプダイオードD1〜D10を設けることによって、ADC(51)に正負が逆の電圧が印加されると共に高電圧が印加されることを防止することが出来る。
【0104】
上述の如く、第n番目(1≦n≦10)のワイヤハーネスに断線が発生すると、第n番目のコンデンサCnの両端電圧が略零となって、制御回路(52)に入力される第n番目のセルの両端電圧は略零となる。実際のリチウム二次電池の使用範囲では、両端電圧が充電容量が零のときの電圧値以下に低下することはあり得ない。そこで、図6に示す制御回路(52)は、ADC(51)から入力される各セルの両端電圧を監視し、第n番目のセルの両端電圧が所定の閾値まで低下したときに第n番目のワイヤハーネスに断線が発生したと判断する。ここで、閾値はセル毎に設定され、各閾値は、各セルの充電容量が零となったときの両端電圧以下の値に設定される。全てのセルの閾値を零に設定することも可能である。
【0105】
尚、第11番目のワイヤハーネス(411)に断線が発生した場合には、コンデンサC10の両端電圧が略零となるので、セルB10の両端電圧が所定の閾値まで低下したときに第11番目のワイヤハーネス(411)に断線が発生したと判断することが出来る。
【0106】
本実施例のバッテリシステムにおいては、組電池(1)を構成する複数のセルの充電状態にどの様なばらつきが生じていても、断線が発生していない正常な状態では、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が前記所定の閾値を下回って略零となることはないので、断線が発生していないにも拘わらず断線が発生したと誤って判断されることはない。
【0107】
又、電圧検出装置(5)の電源がオンに設定されたときにのみ断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンに設定されるので、第2実施例のバッテリシステムと同様に、各セルの電力が無駄に消費されることを防止することが出来る。
【0108】
又、放電回路が1つのみのスイッチング素子を具えているバッテリシステムにおいては、該スイッチング素子が常にオンとなるオン故障が発生した場合、その後、オン故障が発生した放電回路に接続されているセルが該放電回路により常に放電されることになる。イグニッションスイッチがオフの状態で放電回路のスイッチング素子にオン故障が発生してセルの容量が所定量以下に低下すると、その後、イグニッションスイッチをオン操作したときにエンジンがかからない事態が発生する。本実施例のバッテリシステムにおいては、放電回路(50)の2つのスイッチング素子SW1、SW2に同時にオン故障が発生する可能性は極めて低く、2つのスイッチング素子に同時にオン故障が発生して上記事態が発生する可能性は極めて低い。イグニッションスイッチがオフの状態では、放電回路(50)のスイッチング素子SW1にオン故障が発生した場合であっても、断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWはオフに設定されているので放電回路(50)のスイッチング素子SW2がオンとなることはなく、上記事態が発生することはない。又、放電回路(50)のスイッチング素子SW2にオン故障が発生した場合であっても、スイッチング素子SW1はオフに設定されているので、上記事態が発生することはない。
【0109】
更に、本実施例の電圧検出装置(5)においては、スイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20、R21〜R30が放電回路(50)のスイッチング素子SW2に対するスイッチング制御用抵抗と断線検知用抵抗として兼用されているので、スイッチング制御用抵抗及び断線検知用抵抗とが別に設けられている構成に比べて部品点数が少なく、構成が簡易である。
(第4実施例)
本実施例のバッテリシステムは、図11に示す如く、リチウムイオン二次電池からなる10個のセルを直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(24)とを具えており、組電池(1)の正極点P1、セルどうしの連結点P2〜P10及び組電池(1)の負極点P11と電圧検出装置(24)の11個の電圧入力端子(201)〜(211)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0110】
電圧検出装置(24)においては、第11番目の電圧検出線(231)を除く電圧検出線(221)〜(230)上の一点(251)〜(256)からぞれぞれ引き出された電流線路(281)〜(290)にはそれぞれ、複数の抵抗(図11においては1つの抵抗のみを記載)を直列に接続してなる断線検知用抵抗回路RC1〜RC10とダイオードD11〜D20とが介在している。又、ADC(21)及び制御回路(23)によってASIC(Application Specific Integrated Circuit)が構成されており、電圧検出線(221)〜(231)にはそれぞれ、前記一点(251)〜(260)とクランプダイオードD1〜D10が介在する連結線路(271)〜(280)との連結点の間に、ASIC内で短絡が生じたときにASICに過電流が流れることを防止するための保護抵抗R51〜R60が介在している。保護抵抗R51〜R60は、例えば5kΩ程度の抵抗値を有している。尚、その他の構成は、第2実施例の電圧検出装置と同一である。
【0111】
上述の如く、断線検知用抵抗回路RC1〜RC10が介在する電流線路(281)〜(290)よりもASIC側に保護抵抗R51〜R60が配設される理由は次の通りである。
【0112】
図12は、保護抵抗を断線検知用抵抗回路が介在する電流線路よりも組電池(1)側に配設したバッテリシステムの一部の構成を表わしており、図示の如く組電池(1)の負極側から3つ目までのセルの両端電圧をそれぞれV1、V2、V3、保護抵抗R58、R59、R60による電圧降下量をVR58、VR59、VR60とした場合、ADC(21)によって検出されるセルの両端電圧は、V1−VR60、V2−VR59+VR60、V3−VR58+VR59となり、ADC(21)によって検出される各セルの両端電圧に保護抵抗による誤差が生じることになる。断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンの状態では、各セルから僅かな電流が保護抵抗R51〜R60及び断線検知用抵抗回路RC1〜RC10を経てグランドに流れ込むのであるが、各セルからグランドに流れ込む電流の大きさにはばらつきが生じるため、保護抵抗R51〜R60による電圧降下量VR51〜VR60は区々となる。例えば、断線検知用抵抗回路RC1〜RC10に流れる電流のばらつき幅が10μAである場合には、保護抵抗R51〜R60による電圧降下量は50mA(=5kΩ×10μA)のばらつき幅でばらつくことになる。従って、ADC(21)によって検出される各セルの両端電圧に生じる誤差は区々となり、電圧検出精度は低いものとなる。そこで、図11に示す如く、断線検知用抵抗回路RC1〜RC10が介在する電流線路(281)〜(290)よりもASIC側に保護抵抗R51〜R60が配設されるのである。
【0113】
本実施例のバッテリシステムによれば、上述の如く、保護抵抗R51〜R60を断線検知用抵抗回路RC1〜RC10よりもASIC側に配設することによって、ASIC内で短絡が生じたときにASICに過電流が流れることを防止すると共に保護抵抗R51〜R60を具えていない電圧検出装置と同程度の高い電圧検出精度を得ることが出来る。
【0114】
また、本実施例の断線検知用抵抗回路RC1〜RC10の合成抵抗値は、組電池(1)を構成する各セルの消費電流が略等しくなる様、組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定することも可能である。この理由は次の通りである。
【0115】
断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWがオンの状態に、各セルB1〜B10から僅かな電流が断線検知用抵抗回路RC1〜RC10を経てグランドに流れ込む。ここで、セルB1からは断線検知用抵抗回路RC1のみ、セルB2からは断線検知用抵抗回路RC1と断線検知用抵抗回路RC2、セルB3からは断線検知用抵抗回路RC1と断線検知用抵抗回路RC2と断線検知用抵抗回路RC3、・・・セルB10からは断線検知用抵抗回路RC1〜RC10に電流が流れることとなるため、セルの消費電流にばらつきが生じることとなって、セルの両端電圧にばらつきが生じることになる。そこで、各セルの消費電流が略等しくなる様、断線検知用抵抗回路RC1〜RC10の合成抵抗値を組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定するのである。
【0116】
また、断線検知回路RC1〜RC10は、複数の抵抗を複数直列に接続して構成すると良い。この理由は次の通りである。
【0117】
基板上の抵抗に結露が生じた場合や硫化ガスや塩素ガスが吸着した場合には、基板上の抵抗は図13及び図14に示す如く10MΩ程度の抵抗が並列に接続されたときの合成抵抗値と同程度の値まで小さくなる。例えば図13に示す如く1MΩの抵抗に結露が生じた場合には、抵抗値は900kΩ(1MΩの抵抗と10MΩの抵抗の合成抵抗値)程度まで小さくなる。一方、図14に示す如く100kΩの抵抗に結露が生じた場合には、抵抗値は99kΩ(100kΩの抵抗と10MΩの抵抗の合成抵抗値)程度まで小さくなる。この様に、抵抗値の小さな抵抗を採用した方が結露が生じることによる抵抗値の減少量は少ない。そこで、断線検知回路RC1〜RC10は、複数の抵抗を複数直列に接続して構成することによって、結露等による断線検知用抵抗回路RC1〜RC10の合成抵抗値のばらつきを抑えることができるので、各セルB1〜B10から僅かな電流が断線検知用抵抗回路RC1〜RC10を経てグランドに流れ込む電流のばらつきが抑えられ、セルの両端電圧に生じるばらつきを小さく抑えることが出来る。
(第5実施例)
本実施例のバッテリシステムは、図15に示す如く、リチウムイオン二次電池からなる10個のセルを直列に接続してなる組電池(1)と、各セルの両端電圧を検出する電圧検出装置(25)とを具えており、組電池(1)の正極点P1、セルどうしの連結点P2〜P10及び組電池(1)の負極点P11と電圧検出装置(25)の11個の電圧入力端子(201)〜(211)とがそれぞれワイヤハーネス(401)〜(411)によって互いに接続されている。尚、組電池の正極及び負極からはそれぞれ電力供給線(図示省略)が引き出され、走行用モータ等からなる負荷に接続されている。
【0118】
電圧検出装置(25)においては、11本の電圧検出線(221)〜(231)がASIC(3)の11個の電圧入力端子(301)〜(311)に接続されており、第11番目の電圧検出線(231)を除く電圧検出線(221)〜(230)には、コンデンサC1〜C10よりも電圧入力端子(201)〜(210)側にPTC素子(291)〜(300)が介在している。ASIC(3)内で短絡が生じて電圧検出線に過電流が流れたとき、PTC素子が発熱し、これに伴って電気抵抗値が急増する。この結果、電圧検出線を流れる過電流がPTC素子によって遮断されることになる。これによって、ASIC(3)に過電流が流れることを防止することが出来る。
【0119】
ASIC(3)においては、前記11個の電圧入力端子(301)〜(311)からそれぞれ電圧検出線(321)〜(331)が引き出されており、11本の電圧検出線(321)〜(331)はADC(31)の11個の入力端子に接続され、該ADC(31)の1つの出力端子はマイクロコンピュータからなる制御回路(32)に接続されている。
【0120】
前記11本の電圧検出線(321)〜(331)の内、第11番目の電圧検出線(331)を除く電圧検出線(321)〜(330)上の一点(351)〜(360)からそれぞれ電流線路(361)〜(370)が引き出されており、10本の電流線路(361)〜(370)の内、第10番目の電流線路(370)の先端が断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを介してグランドに接続され、他の9本の電流線路(361)〜(369)の先端は第10番目の電流線路(370)に接続されている。該スイッチング素子SWは、制御回路(32)によってオン/オフ制御される。各電流線路(361)〜(370)には、複数の抵抗(図15においては1つの抵抗のみを記載)に接続してなる断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´が介在すると共に、ダイオードD11〜D20が介在している。断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´はそれぞれ1MΩ程度の抵抗値の大きな抵抗を用いて構成されており、組電池(1)の正極に最も近い断線検知用抵抗回路RC1´は、例えば4.3MΩの抵抗値を有している。
【0121】
又、隣り合う2本の電圧検出線を前記一点(351)〜(360)よりも電圧入力端子(301)〜(310)側にて互いに連結する各連結線路(341)〜(350)には、クランプダイオードD1〜D10が介在している。その他の構成は、第2実施例の電圧検出装置と同一である。
【0122】
本実施例のバッテリシステムにおいては、断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´が介在する電流線路(361)〜(370)よりも電圧入力端子(301)〜(310)側にPTC素子(291)〜(300)が配設されているが、PTC素子の抵抗値は通常の状態では数Ω程度であるので、PTC素子による電圧降下量は無視できる程度の量となる。例えば断線検知用抵抗回路に0.1mAの電流が流れた場合には、PTC素子による電圧降下量は1mV以下となる。従って、ASIC(3)内で短絡が生じたときにASIC(3)に過電流が流れることを防止すると共に、PTC素子(291)〜(300)を具えていない電圧検出装置と同程度の高い電圧検出精度を得ることが出来る。尚、PTC素子に代えて、抵抗値の小さい保護素子、例えばヒューズを採用することも可能である。
【0123】
又、本実施例のバッテリシステムにおいては、断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´、ダイオードD11〜D20、及び断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを含む断線検知回路がASIC(3)に内蔵されているので、断線検知回路がASICの外部回路として設けられているバッテリシステムに比べて電圧検出装置が小型となり、その結果、システム全体が小型となる。
【0124】
更に、本実施例のバッテリシステムにおいては、ASIC(3)を構成するパッケージ内に断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´が収容されるので、これらの抵抗に結露が生じたり硫化ガスや塩素ガスが吸着することはない。また、抵抗に結露が生じたり硫化ガスや塩素ガスが吸着することはないので、抵抗値の大きな抵抗を用いることができ、抵抗の数を抑えて抵抗値が十分に大きな断線検知用抵抗回路RC1´〜RC10´を構成することが出来る。これによって、ASIC(3)の回路規模を抑えつつもセルの両端電圧に生じるばらつきを小さく抑えることが出来る。
【0125】
尚、図16は、第3実施例のバッテリシステムの変形例を表わしており、第11番目の電圧検出線(531)を除く電圧検出線(521)〜(530)には、コンデンサC1〜C10よりも電圧入力端子(501)〜(510)側にPTC素子(291)〜(300)が介在すると共に、複数の抵抗(図16においては1つの抵抗のみを記載)を直列に接続してなるスイッチング制御用/断線検知用抵抗回路RC11〜RC20、RC21〜RC30を含む断線検知回路と放電回路(50)とクランプダイオードD1〜D10とがASIC(30)に内蔵されている。
【0126】
図19は、本発明に係る電動車輌の構成を表わしており、該電動車輌においては、バッテリシステム(100)から得られる電力が電力変換部(91)を経てモータ(92)に供給され、モータ(92)が駆動される。これによって、車輪(93)が駆動される。アクセル(94)の操作量及びブレーキ(95)の操作量に応じたトルク指令が車輌側制御部(96)に供給されると共に、モータ(92)の回転数が該車輌側制御部(96)に供給され、該車輌側制御部(96)によって前記電力変換部(91)の動作が制御される。バッテリシステム(100)と電力変換部(91)との間にはコンタクタ(90)が介在しており、該コンタクタ(90)は、バッテリシステム(100)を構成する制御回路(図示省略)によってオン/オフ制御される。車輌側制御部(96)とバッテリシステム(100)の制御回路とは互いに通信を行なうことが可能であって、イグニッションキーがオン操作されると、車輌側制御部(96)がこれを検知してバッテリシステム(100)の制御回路に通知し、該制御回路はコンタクタ(90)をオンに設定する。これによって、バッテリシステム(100)から電力変換部(91)に対する電力供給が開始されて、車輌が走行可能な状態となる。一方、イグニッションキーがオフ操作されると、車輌側制御部(96)がこれを検知してバッテリシステム(100)の制御回路に通知し、該制御回路はコンタクタ(90)をオフに設定する。これによって、バッテリシステム(100)から電力変換部(91)に対する電力供給が停止される。バッテリシステム(100)の具体的構成としては、例えば図15に示す第5実施例のバッテリシステムの構成を採用することが出来る。尚、第5実施例以外の他の実施例のバッテリシステムの構成を採用することも可能である。又、上記コンタクタ(90)に代えて、リレーを採用することも可能である。
【0127】
上記車輌側制御部(96)は、加速時や登坂時には上述の如くバッテリシステム(100)の組電池からモータ(92)に電力を供給することによりモータ(92)を駆動する放電制御を行ない、減速時や降坂時にはモータ(92)に発生した電力によってバッテリシステム(100)の組電池を充電する充電制御を行なう。
【0128】
本発明に係る電動車輌においては、バッテリシステム(100)の制御回路は、コンタクタ(90)がオンに設定されている状態で、上述の如く組電池と電圧検出装置の電圧入力端子との間の何れかのワイヤハーネスに断線が発生したことを検知したとき、コンタクタ(90)をオフに切り替えると共に、断線が発生した旨の通知を車輌側制御部(96)に発する。車輌側制御部(96)は、該通知を受けて所定の制御動作を実行する。この様に、断線の発生が検知されたとき、コンタクタ(90)がオフに切り換えられるので、バッテリシステム(100)の組電池からモータ(92)に対して電力が供給されることもモータ(92)に発生した電力がバッテリシステム(100)の組電池に供給されることもなく、組電池を構成するセルが過充電状態或いは過放電状態となることを回避することが出来る。
【0129】
尚、断線の発生が検知されたときにコンタクタ(90)をオフに切り替える構成に代えて、後述の構成を採用することも可能である。例えば、特にセルが過充電状態となることが危険であるため、車輌側制御部(96)は、バッテリシステム(100)の制御回路から断線が発生した旨の通知を受けたときには、充電を禁止し、放電のみを許可することも可能である。又、放電のみを許可すると共に、モータ(92)の出力(モータトルク×回転数)を制限することによってバッテリシステム(100)の組電池の出力を制限することも可能である。
【0130】
上記の実施例のバッテリシステムにおいては、図1、図5、図6、図11、図15及び図16に示す如く、隣り合う2本の電圧検出線の間にクランプダイオードD1〜D10が設けられているが、クランプダイオードD1〜D10を省略することも可能である。クランプダイオードD1〜D10を省略したバッテリシステムにおいては、ある1本のワイヤハーネスに断線が発生した場合、該ワイヤハーネスに接続されている電圧検出線の電位が隣接する負極側の電圧検出線の電位よりも低下して略零となる。従って、電圧検出線の電位が所定の閾値まで低下したとき、或いは正極側の電圧検出線の電位が負極側の電圧検出線の電位を下回ったときに、断線が発生したものと判断することが出来る。尚、閾値は電圧検出線毎に設定され、各閾値は、組電池の負極側の端部に位置する電圧検出線と各電圧検出線との間に介在する全てのセルの充電容量が零となったときのそれらのセル電圧の積算値以下の値に設定される。
【0131】
又、第3実施例のバッテリシステムにおいては、図6に示す如く、第1番目の電流線路(561)の先端が断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子SWを介してグランドに接続されているが、該スイッチング素子SWを省略して、10本の電流線路(561)〜(570)をグランドに接続することも可能である。又、10本の電流線路(561)〜(570)の先端にそれぞれ断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子を接続して、各電流線路の先端を各断線検知オン/オフ切換えスイッチング素子を介してグランドに接続することも可能である。
【0132】
又、第3実施例のバッテリシステムにおいては、放電回路(50)の2つのスイッチング素子SW1、SW2の内、一方のスイッチング素子SW2のベースがスイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20を介してグランドに接続されているが、3つ以上のスイッチング素子を設け、それら3つのスイッチング素子の内、一部の複数のスイッチング素子のベースをそれぞれスイッチング制御用/断線検知用抵抗を介してグランドに接続することも可能である。
【0133】
又、第1実施例及び第2実施例のバッテリシステムにおいては、断線検知用抵抗R1〜R10を介してグランドに接続されている一点(251)〜(260)は容量素子C1〜C10よりもADC(21)側に位置し、クランプダイオードD1〜D10はこれらの一点(251)〜(260)よりもADC(21)側に位置しているが、容量素子C1〜C10と前記一点(251)〜(260)とクランプダイオードD1〜D10の位置関係は、入力端子(201)〜(211)とADC(21)との間であれば、どの様な位置関係であってもよい。
【0134】
又、第3実施例のバッテリシステムにおいては、容量素子C1〜C10と放電回路(50)と第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30とクランプダイオードD1〜D10の位置関係は、入力端子(501)〜(511)とADC(51)との間であれば、どの様な位置関係であってもよい。
【0135】
更に、第1実施例及び第2実施例のバッテリシステムにおいては、図1及び図5に示す断線検知用抵抗R1〜R10の抵抗値を全て同じ値に設定しているが、組電池(1)を構成する各セルの消費電流が略等しくなる様、組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定することも可能である。この理由は次の通りである。
【0136】
即ち、ワイヤハーネス(401)〜(411)に断線が発生していない状態であっても、各セルB1〜B10から僅かな電流が断線検知用抵抗R1〜R10を経てグランドに流れ込む。ここで、セルB1からは断線検知用抵抗R1のみ、セルB2からは断線検知用抵抗R1と断線検知用抵抗R2、セルB3からは断線検知用抵抗R1と断線検知用抵抗R2と断線検知用抵抗R3、・・・セルB10からは断線検知用抵抗R1〜R10に電流が流れることとなるため、セルの消費電流にばらつきが生じることとなって、セルの両端電圧にばらつきが生じることになる。そこで、各セルの消費電流が略等しくなる様、断線検知用抵抗R1〜R10の抵抗値を組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値に設定するのである。
【0137】
尚、各電流線路に複数の断線検知用抵抗が介在する構成においては、複数の断線検知用抵抗の抵抗値の和が組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値となる様、各断線検知用抵抗の抵抗値が設定される。
【0138】
更に又、第3実施例のバッテリシステムにおいては、図6に示す第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20の抵抗値と第2スイッチング制御用断線検知用抵抗R21〜R30の抵抗値との和が組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値となる様、第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗及び第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗の抵抗値を設定することも可能である。
【0139】
尚、第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗R11〜R20及び第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗R21〜R30に代えて、複数の抵抗を直列に接続してなる第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路及び複数の抵抗を直列に接続してなる第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路を具えた構成においては、第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路の抵抗値と第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路の抵抗値との和が組電池(1)の正極に近い電圧検出線に接続されているものほど大きな値となる様、第1スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路を構成する各抵抗の抵抗値及び第2スイッチング制御用/断線検知用抵抗回路を構成する各抵抗の抵抗値が設定される。
【0140】
実施例においてセル同士の連結点P1〜P10と電圧入力端子とを接続する配線としてワイヤハーネスを用いたが、フレキシブル回路基板を用いて接続するようにしても良い。この場合、フレキシブル回路基板にプリントされる導線がセル同士の連結点P1〜P10と電圧入力端子とを接続する配線の役割を果たす。
【0141】
実施例において、PTC素子は、図15、図16に示すように電圧検出線(221)〜(230)、(521)〜(530)に介在しているが、図17、図18に示すように、配線(401)〜(410)に介在するように配置しても良い。この様にすることでも、PTC素子を電圧検出線(221)〜(230)、(521)〜(530)に介在させた場合と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0142】
(1) 組電池
P1〜P11 電圧検出点
(2) 電圧検出回路
(100) バッテリシステム
(201)〜(211) 電圧入力端子
(221)〜(231) 電圧検出線
(261)〜(270) 電流線路
(291)〜(300) PTC
C1〜C10 コンデンサ
R1〜R10 断線検知用抵抗
D1〜D10 クランプダイオード
(21) ADC
(22) 制御回路
(401)〜(411) ワイヤハーネス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する装置であって、配線を介して組電池の複数の電圧検出点と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される複数の電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路とを具え、該複数の第1連結線路の各第1連結線路には容量素子が介在し、前記複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線がそれぞれ1或いは複数の断線検知用抵抗を介してグランドに接続され、前記電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて組電池の複数の電圧検出点と前記複数の電圧入力端子との間の配線の断線を検知する断線検知手段を具えている電圧検出装置。
【請求項2】
前記断線検知手段は、電圧検出線の電位が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することを特徴とする請求項1に記載の電圧検出装置。
【請求項3】
前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第2連結線路を具え、該複数の第2連結線路の各第2連結線路に、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする請求項1に記載の電圧検出装置。
【請求項4】
前記断線検知手段は、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することを特徴とする請求項3に記載の電圧検出装置。
【請求項5】
複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する装置であって、配線を介して組電池の複数の電圧検出点と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される複数の電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路と、前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第2連結線路とを具え、前記複数の第1連絡線路の各第1連結線路には容量素子が介在し、前記複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、前記複数の第2連結線路の各第2連結線路には、少なくとも2つのスイッチング素子と1或いは複数の抵抗とを互いに直列に接続してなる放電回路が介在しており、各放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、一部の1或いは複数のスイッチング素子のベース或いはゲートがそれぞれ1或いは複数の抵抗からなる第1抵抗回路を介してグランドに接続され、各第1抵抗回路の放電回路側の一端と各放電回路の正極側の電圧検出線とを互いに連結する各第3連結線路には、1或いは複数の抵抗からなる第2抵抗回路が介在しており、前記電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて組電池の複数の電圧検出点と前記複数の電圧入力端子との間の配線の断線を検知する断線検知手段を具えている電圧検出装置。
【請求項6】
前記断線検知手段は、電圧検出線の電位が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することを特徴とする請求項5に記載の電圧検出装置。
【請求項7】
前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第4連結線路を具え、該複数の第4連結線路の各第4連結線路には、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする請求項5に記載の電圧検出装置。
【請求項8】
前記断線検知手段は、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することを特徴とする請求項7に記載の電圧検出装置。
【請求項9】
複数のセルを直列に接続してなる組電池と、請求項1乃至請求項8の何れかに記載の電圧検出装置とを具えているバッテリシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のバッテリシステムと、前記バッテリシステムからの電力により駆動されるモータと、前記モータの回転力により回転する車輪とを備えることを特徴とする電動車両。
【請求項11】
複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する回路であって、組電池の複数の電圧検出点の電位が入力されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される複数の電圧検出線とを具え、該複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線がそれぞれ1或いは複数の断線検知用抵抗を介してグランドに接続されている電圧検出回路。
【請求項12】
複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する回路であって、組電池の複数の電圧検出点の電位が入力されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される複数の電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路とを具え、前記複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、前記複数の第1連結線路の各第1連結線路には、少なくとも2つのスイッチング素子と1或いは複数の抵抗とを互いに直列に接続してなる放電回路が介在しており、各放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、一部の1或いは複数のスイッチング素子のベース或いはゲートがそれぞれ1或いは複数の抵抗からなる第1抵抗回路を介してグランドに接続され、各第1抵抗回路の放電回路側の一端と各放電回路の正極側の電圧検出線とを互いに連結する各第2連結線路には、1或いは複数の抵抗からなる第2抵抗回路が介在している電圧検出回路。
【請求項1】
複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する装置であって、配線を介して組電池の複数の電圧検出点と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される複数の電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路とを具え、該複数の第1連結線路の各第1連結線路には容量素子が介在し、前記複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線がそれぞれ1或いは複数の断線検知用抵抗を介してグランドに接続され、前記電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて組電池の複数の電圧検出点と前記複数の電圧入力端子との間の配線の断線を検知する断線検知手段を具えている電圧検出装置。
【請求項2】
前記断線検知手段は、電圧検出線の電位が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することを特徴とする請求項1に記載の電圧検出装置。
【請求項3】
前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第2連結線路を具え、該複数の第2連結線路の各第2連結線路に、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする請求項1に記載の電圧検出装置。
【請求項4】
前記断線検知手段は、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することを特徴とする請求項3に記載の電圧検出装置。
【請求項5】
複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する装置であって、配線を介して組電池の複数の電圧検出点と接続されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される複数の電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路と、前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第2連結線路とを具え、前記複数の第1連絡線路の各第1連結線路には容量素子が介在し、前記複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、前記複数の第2連結線路の各第2連結線路には、少なくとも2つのスイッチング素子と1或いは複数の抵抗とを互いに直列に接続してなる放電回路が介在しており、各放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、一部の1或いは複数のスイッチング素子のベース或いはゲートがそれぞれ1或いは複数の抵抗からなる第1抵抗回路を介してグランドに接続され、各第1抵抗回路の放電回路側の一端と各放電回路の正極側の電圧検出線とを互いに連結する各第3連結線路には、1或いは複数の抵抗からなる第2抵抗回路が介在しており、前記電圧検出手段は、各電圧検出線からの入力電圧に基づいて組電池の複数の電圧検出点と前記複数の電圧入力端子との間の配線の断線を検知する断線検知手段を具えている電圧検出装置。
【請求項6】
前記断線検知手段は、電圧検出線の電位が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することを特徴とする請求項5に記載の電圧検出装置。
【請求項7】
前記第1連結線路に並列に設けられ、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第4連結線路を具え、該複数の第4連結線路の各第4連結線路には、整流素子が順方向を組電池の正極側となる方向に向けて介在していることを特徴とする請求項5に記載の電圧検出装置。
【請求項8】
前記断線検知手段は、隣り合う2本の電圧検出線の電位差が所定の閾値以下に低下したときに断線が発生したものと判断することを特徴とする請求項7に記載の電圧検出装置。
【請求項9】
複数のセルを直列に接続してなる組電池と、請求項1乃至請求項8の何れかに記載の電圧検出装置とを具えているバッテリシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のバッテリシステムと、前記バッテリシステムからの電力により駆動されるモータと、前記モータの回転力により回転する車輪とを備えることを特徴とする電動車両。
【請求項11】
複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する回路であって、組電池の複数の電圧検出点の電位が入力されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される複数の電圧検出線とを具え、該複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、少なくとも各セルの正極側に位置することとなる電圧検出線がそれぞれ1或いは複数の断線検知用抵抗を介してグランドに接続されている電圧検出回路。
【請求項12】
複数のセルを直列に接続してなる組電池を対象として各セルの両端電圧を検出する回路であって、組電池の複数の電圧検出点の電位が入力されるべき複数の電圧入力端子と、これら複数の電圧入力端子からそれぞれ引き出される複数の電圧検出線と、隣り合う2本の電圧検出線を互いに連結する複数の第1連結線路とを具え、前記複数の電圧検出線の各電圧検出線は各電圧検出線からの入力電圧に基づいて各セルの両端電圧を検出する電圧検出手段に接続されており、前記複数の第1連結線路の各第1連結線路には、少なくとも2つのスイッチング素子と1或いは複数の抵抗とを互いに直列に接続してなる放電回路が介在しており、各放電回路の少なくとも2つのスイッチング素子の内、一部の1或いは複数のスイッチング素子のベース或いはゲートがそれぞれ1或いは複数の抵抗からなる第1抵抗回路を介してグランドに接続され、各第1抵抗回路の放電回路側の一端と各放電回路の正極側の電圧検出線とを互いに連結する各第2連結線路には、1或いは複数の抵抗からなる第2抵抗回路が介在している電圧検出回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−25925(P2010−25925A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140687(P2009−140687)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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