説明

経皮吸収促進剤

【課題】ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進し、ふけ抑制及びかゆみ抑制効果を有する経皮吸収促進剤を提供する。
【解決手段】(A)ヒドロキシピリドン系化合物、(B)大豆由来の抽出物、(C)HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(D)カチオン性高分子化合物を含有する、上記(A)ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進する経皮吸収促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進する経皮吸収促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシピリドン系化合物はデオドラント効果に優れた有効成分として知られており、特に毛髪化粧料では、ふけやかゆみ等を防止、軽減するため等の種々の目的で用いられている。しかしながら、近年の清潔志向及びおしゃれ意識の高まりに伴い、頭皮は、毎日の洗髪やスタイリング、ドライヤー等による物理的損傷や、染毛、ブリーチ、パーマ処理等による化学的損傷にさらされており、その結果、これまでの効果では十分ではなく、ふけ、かゆみや炎症といった頭皮トラブルを抱えた人が増加している。
【0003】
表皮は、体外からの異物進入を阻止する構造になっているため、皮膚上に有効成分を塗布しただけでは、表皮の角質層のバリア機能により、十分な経皮吸収性が得られない。有効成分であるヒドロキシピリドン系化合物の効果は皮膚内部への浸透により発現することから、ヒドロキシピリドン系化合物の効果を増強するには有効成分の皮膚透過率を向上させることが重要となる。
【0004】
皮膚透過率を改善するために、各種経皮吸収促進剤が提案されている。例えば、界面活性剤、各種油剤、テルペン類等が提案されており、具体的には、皮膚外用剤における薬剤の浸透剤として分岐脂肪酸及びアルコールを用いる技術(特許文献1:特開平02−207018号公報参照)が提案されている。また、美白成分の吸収性向上のために、ポリエチレングリコールを用いる技術(特許文献2:特開2001−106621号公報参照)が提案されている。しかしながら、これらの方法では、十分な浸透効果を得るためには多量の配合が必要であり、ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収促進には不十分であった。以上により、ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収をさらに促進する経皮吸収促進剤が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開平02−207018号公報
【特許文献2】特開2001−106621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進し、ふけ抑制及びかゆみ抑制効果を有する経皮吸収促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(B)大豆由来の抽出物、(C)HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(D)カチオン性高分子化合物を組み合わせることで、(A)ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収促進を向上できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、(A)ヒドロキシピリドン系化合物、(B)大豆由来の抽出物、(C)HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(D)カチオン性高分子化合物を含有する、上記(A)ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進する経皮吸収促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進し、ふけ抑制及びかゆみ抑制効果を有する経皮吸収促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の(A)ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進する経皮吸収促進有効成分は、(B)大豆由来の抽出物、(C)HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(D)カチオン性高分子化合物からなる。本発明の経皮吸収促進剤は、(A)ヒドロキシピリドン系化合物、(B)大豆由来の抽出物、(C)HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(D)カチオン性高分子化合物を含有する、上記(A)ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進する経皮吸収促進剤である。
【0011】
本発明の(A)ヒドロキシピリドン系化合物としては、下記一般式(I)で表される1−ヒドロキシ−2−ピリドン系化合物が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0012】
【化1】

(式中、R1は1〜17個の炭素原子を有するアルキル基、2〜17個の炭素原子を有するアルケニル基、5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、7〜9個の炭素原子を有するビシクロアルキル基、シクロアルキル基が5〜8個の炭素原子を有し、かつアルキル基が1〜4個の炭素原子を有するシクロアルキル−アルキル基(但し、シクロアルキル基は、その水素原子の一部が1〜4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい)、6〜14個の炭素原子を有するアリール基、アリール基が6〜14個の炭素原子を有し、かつアルキル基が1〜4個の炭素原子を有するアラルキル基、アリール基が6〜14個の炭素原子を有し、かつアルケニル基が2〜4個の炭素原子を有するアリールアルケニル基、アリール基が6〜14個の炭素原子を有し、かつアルキル基がそれぞれ1〜4個の炭素原子を有するアリールオキシアルキル基もしくはアリールメルカプトアルキル基、ベンズヒドリル基、アルキル基が1〜4個の炭素原子を有するフェニルスルフォニルアルキル基、フリル基、又はアルケニル基が2〜4個の炭素原子を有するフリルアルケニル基を示す。但し、上述のアリール基は、その水素原子の一部が1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。R2は水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、2〜4個の炭素原子を有するアルケニル基もしくはアルキニル基、ハロゲン原子、フェニル基、又はベンジル基を示す。X+は、有機塩基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は2〜4価の陽イオンを示す。)
【0013】
特に、上記一般式(I)で表される化合物の具体例として、下記の化合物及びその塩を挙げることができる。すなわち、1−ヒドロキシ−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4−メチル−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−6−メチル−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4,6−ジメチル−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4−トリメチルペンチル)−2−ピリドン等の6−アルキル系;1−ヒドロキシ−4−メチル−6−シクロヘキシル−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(メチル−シクロヘキシル)−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプチル)−2−ピリドン等の6−シクロヘキサン系;1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(4−メチル−フェニル)−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−〔1−(4−ニトロフェノキシ)−ブチル〕−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(4−シアノフェノキシメチル)−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(フェニルスルホニルメチル)2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(4−ブロム−ベンジル)−2−ピリドン等の6−フェニル系、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4−トリメチルペンチル)−2−ピリドンのモノエタノールアミン塩等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。なお、上記一般式(I)で表される1−ヒドロキシ−2−ピリドン系化合物は、上記一般式(I)で表されるものであれば、上記具体例に限定されるものではない。
【0014】
上記一般式(I)で表される1−ヒドロキシ−2−ピリドン系化合物は、各種の有機若しくは無機塩基との塩として用いることもできる。例えば、有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノ−エタノール、2−アミノ−2−メチル−プロパンジオール等の低分子アルカノールアミン;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、N−メチルピペラジン等の難揮発性塩基;トリメチルベンジル水酸化物の如き第4級アンモニウム水酸化物;グアニジン及びその誘導体、特にそのアルキル化生成物等が挙げられ、無機塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩;亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム等の2〜4価陽イオンとの塩が挙げられ、上記塩のうち難揮発性の有機塩すなわち、低分子アルカノールアミン、エチレンジアミン類、及びアルカリ金属塩等の無機塩が好ましい。
【0015】
上記(I)の1−ヒドロキシ−2−ピリドン系化合物としては特に制限されないが、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−シクロヘキシル−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(メチル−シクロヘキシル)−2−ピリドン、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプチル)−2−ピリドン等の6−シクロヘキサン系、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4−トリメチルペンチル)−2−ピリドンのモノエタノールアミン塩等が好ましく、特に、下記式(II)で表される1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4−トリメチルペンチル)−2−ピリドンのモノエタノールアミン塩(別名:ピロクトンオラミン)、下記式(III)で表される1−ヒドロキシ−4−メチル−6−シクロヘキシル−2−ピリドンのモノエタノールアミン塩(シクロピロックスオラミン)が好ましい。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0016】
【化2】

【0017】
(A)ヒドロキシピリドン系化合物の配合量は特に限定されないが、通常、経皮吸収促進剤中0.001〜5質量%であり、0.05〜2質量%が好ましい。0.001質量%以上で本発明の効果をより得ることができ、5質量%を超えると、たとえば溶解が不十分で、低温での保存安定性が低下しやすくなる場合があり、また経済的でない。
【0018】
本発明の(B)大豆由来の抽出物は、特に限定はないが、大豆を生のままあるいは乾燥した後に適当な大きさに粉砕加工したものを抽出して得た抽出エキス、さらに分離精製した成分等を用いることができる。さらに、納豆等の酵素や菌で発酵したものを抽出して得たエキスも用いることができる。これらを1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0019】
抽出エキスは、常法により、大豆、又は大豆を酵素や菌で発酵したものを溶媒抽出することによって得ることができる。抽出条件としては、例えば、冷浸、温浸、加熱還流、パーコレーション法等が挙げられ、常法によって行うことができる。溶媒抽出の他に、水蒸気蒸留、炭酸ガスを超臨界状態にして行う超臨界抽出によって得たエキスも同様に利用できる。超臨界抽出では、抽出助剤としてヘキサン、エタノール等を用いることもできる。抽出温度、抽出pH等には特に制限はない。
【0020】
抽出溶媒が使用上無害なものであれば抽出エキスをそのまま用いてもよく、適宜な溶媒で希釈した希釈液として用いてもよく、あるいは濃縮エキスとしたり、凍結乾燥等により乾燥粉末したもの、ペースト状に調製したもの等も抽出物として利用できる。
【0021】
抽出エキスの分離精製方法としては、例えば、抽出エキスをろ過、活性炭処理、液体分配カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等を挙げることができる。また、大豆由来の抽出物は、エキスに限らず、抽出物の主成分であるタンパク質、ポリグルタミン酸等のポリアミノ酸、脂質であれば、合成物も利用できる。
【0022】
大豆由来の抽出物の具体例としては、例えば、ダイズエキス、大豆蛋白加水分解物、大豆油、大豆リゾリン脂質液、大豆リン脂質、大豆タンパク、納豆エキス、ポリグルタミン酸等が挙げられ、納豆エキスとポリグルタミン酸が好ましい。
【0023】
(B)大豆由来の抽出物の配合量は特に限定されないが、通常、経皮吸収促進剤中0.001〜5質量%であり、0.01〜2質量%が好ましい。0.001質量%以上で、本発明の効果をより得ることができ、5質量%を超えると、例えば高温での保存安定性が低下しやすくなる場合があり、また経済的でない。
【0024】
本発明の(C)HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては特に限定されず、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、モノラウリン酸デカグリセリル(HLB15.5)、モノオレイン酸デカグリセリル(HLB13.0〜15.0)、モノステアリン酸デカグリセリル(HLB15.0)、モノイソステアリン酸デカグリセリル(HLB14.9)、モノラウリン酸ペンタグリセリル(HLB15.6)等が挙げられる。この中でも、モノラウリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリルが好ましい。HLBの上限は特に限定されないが22以下が好ましい。
【0025】
(C)HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は特に限定されないが、経皮吸収促進剤中0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜7質量%である。0.1質量%以上で、本発明の効果をより得ることができ、10質量%を超えて配合すると、例えば低温での保存安定性が低下しやすくなる場合があり、また経済的でない。
【0026】
本発明の(D)カチオン性高分子化合物としては、官能基がジメチルジアリルアンモニウムハライドである塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム系ポリマー、カチオン化セルロース、カチオン化グアガム、カチオン化デキストラン、カチオン化プルラン、四級化ビニルピロリドン−アミノエチルメタクリレート共重合体、ポリエチレンイミン、ジプロピレントリアミン縮合物、アジピン酸ジメチル−アミノヒドロキシプロピルジエチルトリアミン共重合体、第四級窒素含有スターチ等の他、カチオン化加水分解ケラチン、カチオン化加水分解シルク、カチオン化加水分解コラーゲン、カチオン化加水分解小麦、シリコーン化加水分解コラーゲン、シリコーン化加水分解シルクのタンパク加水分解にカチオン基を導入したもの等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中でも、カチオン化グアガム、カチオン化セルロース、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体が好ましい。
【0027】
なお、カチオン化セルロースの具体的な例としては、レオガードLP・GP・MGP、XE−511K(ライオン(株)製)、UCARE LR−30M・JR−400・JR−30M(ダウケミカル(株)製)、カチナールHC−100(東邦化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0028】
カチオン化グアガムの具体的な例としては、ラボールガムCG−M・CG−M7・C
G−M8M(大日本住友製薬(株)製)、N−Hance3000(ハーキュレス・ジャ
パン(株)製)、ジャガーC−13S、ジャガーC−14S、ジャガーC−17S、ジャ
ガーC−210、ジャガーC−1620、ジャガーEXCEL(ローディア(株)製)等
が挙げられる。
【0029】
カチオン性高分子化合物の重量平均分子量は、一般的なGPCカラムを用いた液体クロマトグラフィーを用い、分子量既知のポリマーと比較する方法によって測定することができる。具体的には、重量平均分子量は、GPC−MALLSを用いて測定した値であり、ポリマーの純分濃度が約1000ppmの移動相で希釈した試料溶液を、TSK−GELαカラム(東ソー(株)製)を用い、0.5moL/Lの過塩素酸ナトリウム溶液を移動相として、約633nmの波長を多角度光散乱検出器により測定した。標準品としては分子量既知のポリエチレングリコールを用いる。
【0030】
(D)カチオン性高分子化合物の配合量は特に限定されないが、経皮吸収促進剤中0.01〜10質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。0.1質量%以上で、本発明の効果をより得ることができ、10質量%を超えると、乾燥後にゴワつき等の不具合を起こす場合がある。
【0031】
本発明の経皮吸収促進剤には、必要により任意成分として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の各種界面活性剤、(C)カチオン性高分子化合物以外の高分子化合物、固体又は液体油分、高級アルコール類、エステル類、防腐剤、ハイドロトロープ剤、無機塩、増粘剤、紫外線吸収剤、殺菌剤、乳濁剤、(A)成分以外のフケ止め剤、酸化防止剤、トニック剤、(B)成分以外の動植物の抽出物、タンパク誘導体、薬効剤、pH調整剤、キレート剤、パール化剤、色素、香料、希釈性溶媒、疎水性溶媒等を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができ、その目的に応じた配合がなされてよい。
【0032】
本発明の経皮吸収促進剤のpH(25℃)は3〜7が好ましい。なお、pHは化粧品原料基準の一般試験法に定められた方法を用い、組成物中に直接pHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定することができる。
【0033】
本発明の経皮吸収促進剤は、液状、クリーム状、フォーム状、スプレー状、ジェル状、粉末状、固形状等の多くの剤型で広く利用でき、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアエッセンス、ヘアローション等の毛髪化粧料等の化粧料、皮膚外用剤等に好適に使用することができる。
【0034】
本発明の経皮吸収促進剤は、(A)〜(D)成分、任意成分、及び水(経皮吸収促進剤の全体が100質量%となるように残部)を混合し、各剤型の常法に基づいて調製することができ、任意の容器に充填することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示し、特に記載がある場合を除いては、表中の各成分の配合量は成分の純分換算量である。
【0036】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
表1,2に示す組成の経皮吸収促進剤を調製し、下記評価方法に基づいて、ヒドロキシピリドン系化合物の皮膚透過率と、ふけ・かゆみの抑制効果の評価を行った。結果を表中に併記する。
【0037】
(1)ピロクトンオラミン(ヒドロキシピリドン系化合物)の皮膚透過率
あらかじめ毛刈りしたモルモット(Hartley系、雌)の背部剥離皮膚(5cm×5cm)を用い、フランツ型拡散セル(拡散有効膜面積約4cm2)に、角質層側がドナー相、真皮側がレセプター相になるように固定し、試料の皮膚透過実験を行った。
レセプター側を生理的食塩水で満たした後、攪拌しながら32℃に保温し、皮膚上に被験試料を50μL添加した。その24時間後に生理的食塩水をサンプリングし、HPLCにより定量してレセプター相中の薬剤の量を測定した。実施例及び比較例の組成物において、皮膚透過率実験を行ない、ピロクトンオラミン0.5%エタノール溶液(コントロール)の透過率を100としたときの相対値(%)を算出した。
HPLC測定条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:210〜270nm)
カラム:Inertsil ODS−2(φ4.6×250mm,ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/水混液
【0038】
(2)ふけ・かゆみ抑制効果
ふけ抑制効果について以下の方法で調べた。ふけの頭皮トラブルを抱えているパネル20名が試料を毛髪化粧料(シャンプー)としての通常の方法で使用した。実験開始時及び使用継続1週間後のパネルの頭皮を観察し、ふけの症状が改善したか否かを判断した。
結果をふけの症状が改善した人数に基づき、下記基準で示した。
<基準>
◎:ふけの症状が改善した人が16〜20名
○:ふけの症状が改善した人が10〜15名
△:ふけの症状が改善した人が5〜9名
×:ふけの症状が改善した人が0〜4名
【0039】
かゆみ抑制効果について以下の方法で調べた。かゆみの頭皮トラブルを抱えているパネル20名が試料を毛髪化粧料(シャンプー)としての通常の方法で使用した。実験開始時及び使用継続1週間後で、パネルの申告により、かゆみ改善効果を判断した。
結果をかゆみの症状が改善した人数に基づき、下記基準で示した。
<基準>
◎:かゆみの症状が改善した人が16〜20名
○:かゆみの症状が改善した人が10〜15名
△:かゆみの症状が改善した人が5〜9名
×:かゆみの症状が改善した人が0〜4名
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
以上からも明らかなように、本発明の(B)大豆由来の抽出物、(C)HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(D)カチオン性高分子化合物からなる(A)ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進する経皮吸収促進有効成分、及び本発明の経皮吸収促進剤は、(A)ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進し、ふけ・かゆみ抑制効果を有していた。
【0043】
[実施例6]
下記組成のシャンプー組成物を、通常の方法に従い、各成分を混合攪拌することにより調製した。
組成 %
ピロクトンオラミン 1
納豆エキス 0.5
モノラウリン酸デカグリセリル 3
POEアルキルエーテル硫酸ナトリウム 10
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 8
POE(20)硬化ヒマシ油 1
カチオン化グアガム(2) 0.5
ソルビトール 5
クエン酸 適量(pH5.0に調製)
ベントナイト 0.3
ジグルコシル没食子酸 0.1
香料A 0.6
精製水 適量
合計 100.0
【0044】
[実施例7]
下記組成のシャンプー組成物を、通常の方法に従い、各成分を混合攪拌することにより調製した。
組成 %
ピロクトンオラミン 0.5
ダイズエキス 0.5
モノオレイン酸デカグリセリル 2
POEアルキルエーテル硫酸ナトリウム 7
テトラデセンスルホン酸ナトリウム 3
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 5
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド 2
ラウリルジメチルアミンオキシド 0.6
ジメチルシリコーン(1000万mm2/s/400万mm2/s/1000mm2/s=1.5/1.5/7) 2
カチオン化セルロース(2) 0.5
クエン酸 適量(pH4.5に調整)
安息香酸ナトリウム 0.4
ベントナイト 0.3
ジグルコシル没食子酸 0.1
香料B 0.6
精製水 適量
合計 100.0
【0045】
[実施例8]
下記組成のシャンプー組成物を、通常の方法に従い、各成分を混合攪拌することにより調製した。
組成 %
ピロクトンオラミン 0.5
ポリグルタミン酸(A) 0.5
モノラウリン酸デカグリセリル 4
カチオン化グアガム(1) 0.3
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 12
POE(10)ベヘニルエーテル 0.2
ジメチルシリコーン(1000万mm2/s/400万mm2/s/1000mm2/s=1.5/1.5/7) 1
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体エマルション

ヒドロキプロピルメチルセルロース 0.3
プロピレングリコール 3
グリセリン 6
クエン酸 適量(pH6.0に調整)
安息香酸ナトリウム 1
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2
ステアリルアルコール 3
ベヘニルアルコール 3
ベントナイト 0.3
ジグルコシル没食子酸 0.1
香料C 0.6
精製水 適量
合計 100.0
【0046】
[実施例9]
下記組成のシャンプー組成物を、通常の方法に従い、各成分を混合攪拌することにより調製した。
組成 %
ピロクトンオラミン 1
ポリグルタミン酸(B) 0.1
モノラウリン酸デカグリセリル 1
モノオレイン酸デカグリセリル 1
カチオン化セルロース(2) 0.2
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 14
POE(10)ベヘニルエーテル 0.2
ラウリルジメチルアミンオキシド 1
ジメチルシリコーン(1000万mm2/s/400万mm2/s/1000mm2/s=1.5/1.5/7) 1
クエン酸 適量(pH5.5に調整)
安息香酸ナトリウム 0.4
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 3
ベヘニルアルコール 8
ベントナイト 0.3
ジグルコシル没食子酸 0.1
香料D 0.6
精製水 適量
合計 100.0
【0047】
[実施例10]
下記組成のシャンプー組成物を、通常の方法に従い、各成分を混合攪拌することにより調製した。
組成 %
シクロピロックス 0.5
大豆タンパク 0.1
モノオレイン酸デカグリセリル 5
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体 0.3
POEアルキルエーテル硫酸ナトリウム 14
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 3
POE(2)ラウリン酸モノエタノールアミド 2
POE(20)硬化ヒマシ油 1
ラウリルジメチルアミンオキシド 0.5
ジメチルシリコーン(1000万mm2/s/400万mm2/s/1000mm2/s=1.5/1.5/7) 2
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体エマルション
0.4
グリセリン 2
クエン酸 適量(pH4.0に調整)
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.5
4−グアニジノブチルラウロアミド酢酸塩 0.3
ジステアリン酸グリコール 2
ベントナイト 0.3
ジグルコシル没食子酸 0.1
香料D 0.6
精製水 適量
合計 100.0
【0048】
[実施例11]
下記組成のコンディショナー組成物を、通常の方法に従い、油相を高温で溶解した後、水相を添加して調製した。
組成 %
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.0
ステアリルアルコール 4.0
ベヘニルアルコール 1.0
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体エマルション
1.0
アミノガムシリコーン 0.2
モノステアリン酸ポリエチレングリコール 0.5
ジイソステアリン酸ポリグリセリル 1.0
ヒドロキシエチルセルロース 0.3
モノラウリン酸デカグリセリル 0.5
ピロクトンオラミン 0.5
納豆エキス 0.2
カチオン化セルロース(1) 0.1
植物性スクワラン 0.1
グリコール酸 0.5
グリコール酸アンモニウム 適量(pH3.5に調整)
香料A 0.6
精製水 適量
合計 100.0
【0049】
[実施例12]
下記洗い流すヘアトリートメントを、通常の方法に従い、油相を高温で溶解した後、水相を添加して調製した。
組成 %
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.5
ステアリルアルコール 5.0
ジイソステアリン酸ジグリセリル 0.5
N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステアリル、2−オクチルドデシル)
0.8
ソルビトール 30.0
ヒドロキシエチルセルロース 0.3
酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体 0.3
ジメチルシリコーン(1000万mm2/s/400万mm2/s/1000mm2/s=1.5/1.5/7) 1.0
アミノガムシリコーン 2.0
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体エマルション
0.5
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
モノステアリン酸デカグリセリル 0.5
ピロクトンオラミン 1.0
ポリグルタミン酸(A) 1.0
ポリグルタミン酸(B) 0.5
カチオン化セルロース(2) 0.1
アルギニン 0.5
システイン 0.3
安息香酸 0.1
ピロリン酸ナトリウム 0.1
グリコール酸 0.5
グリコール酸アンモニウム 適量(pH3.5に調整)
香料C 0.6
精製水 適量
合計 100.0
【0050】
[実施例13]
下記洗い流すヘアエッセンスを、通常の方法に従い、油相を高温で溶解した後、水相に添加して調製した。
組成 %
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.5
ステアリルアルコール 5.0
グリセリン 20.0
ソルビトール 20.0
ジメチルシリコーン(1000万mm2/s/400万mm2/s/1000mm2/s=1.5/1.5/7) 1.0
アミノガムシリコーン 2.0
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
モノラウリン酸デカグリセリル 1.0
ピロクトンオラミン 1.0
カチオン化グアガム(1) 0.05
大豆タンパク 0.5
システイン 0.3
L−アラニン 0.3
リンゴ酸 0.5
グリコール酸 0.5
水酸化ナトリウム 適量(pH3.5に調整)
香料D 0.6
精製水 適量
合計 100.0
【0051】
[実施例14]
下記組成の洗い流さないトリートメント用ヘアローション組成物を、通常の方法に従って、各成分を混合攪拌することにより調製した。
組成 %
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.7
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体エマルション
5.0
モノステアリン酸デカグリセリル 0.5
ピロクトンオラミン 0.5
ダイズエキス 0.5
カチオン化グアガム(2) 0.1
香料B 0.05
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 適量(pH5.5に調整)
エタノール 15.0
精製水 残部
合計 100.0
【0052】
[実施例15]
下記組成の洗い流さないトリートメント用ジェル剤を、通常の方法に従って、各成分を混合攪拌することにより調製した。
組成 %
ヒドロキシエチルセルロース 1.0
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.8
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体エマルション
1.5
ポリオキシプロピレン(14)ジグリセリルエーテル 0.7
プロピレングリコール 3.0
モノラウリン酸デカグリセリル 0.6
シクロピロックス 0.3
大豆蛋白加水分解物 0.2
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体 0.15
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.1
ピロリン酸ナトリウム 0.05
グリコール酸 適量(pH4.0に調整)
香料A 0.05
ジヒドロキシベンゾフェノン 0.05
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
エタノール 25.0
精製水 残部
合計 100.0
【0053】
実施例6〜15のヒドロキシピリドン系化合物の皮膚透過率及びふけ・かゆみ抑制効果はいずれも良好であった。
以下、実施例及び比較例で使用した原料を示す。
【0054】
【表3】

【0055】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロキシピリドン系化合物、(B)大豆由来の抽出物、(C)HLB12以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(D)カチオン性高分子化合物を含有する、上記(A)ヒドロキシピリドン系化合物の経皮吸収を促進する経皮吸収促進剤。

【公開番号】特開2008−143816(P2008−143816A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331354(P2006−331354)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】