説明

絶縁不良診断装置および絶縁不良診断方法

【課題】高電圧バッテリ10に接続される部材(インバータINV1〜INV4)が増加すると、高電圧バッテリ10と車体との間の浮遊容量が大きくなったり、絶縁抵抗の抵抗値が小さくなったりすることで、これら浮遊容量や絶縁抵抗に起因したインピーダンスが低下し、絶縁不良の診断精度の低下を招くおそれがあること。
【解決手段】製品出荷に先立ち、高電圧バッテリ10にインバータINV1〜INV4が接続され、これらが車体に搭載された後、出力部40から診断信号dsを出力する。そして、これに伴う抵抗体42およびコンデンサ44間の電位の変動量に基づき、絶縁不良の有無を判断する判定値を生成して、不揮発性メモリ48に記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される主機用の電源への接続経路と車体との絶縁不良の有無を診断する絶縁不良診断装置および絶縁不良診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の絶縁不良診断装置としては、たとえば下記特許文献1に見られるものもある。これは、主機としてのモータの電源のいずれか一方の端子と車体との間をコンデンサ及び抵抗体によって接続し、モータに接続されるインバータによって交流電圧信号を生成した際にコンデンサを介して流れる電流に基づき、モータと接地との間の絶縁不良の有無を診断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4027727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、主機用の電源に車載補機用のインバータを直接接続することが一部実用化されている。ただし、このように電源に接続される部材が増加すると、電源と車体との間の浮遊容量が大きくなったり、絶縁抵抗の抵抗値が小さくなったりすることで、これら浮遊容量や絶縁抵抗に起因したインピーダンスが低下することが懸念される。そしてこの場合には、絶縁不良の診断精度の低下を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、車両に搭載される主機用の電源への接続経路と車体との絶縁不良の有無を診断する新たな絶縁不良診断装置および絶縁不良診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、車両に搭載される主機用の電源への接続経路と車体との絶縁不良の有無を診断する絶縁不良診断装置において、前記電源には、車載補機に電力を供給する電力変換回路が接続されており、前記接続経路に診断用交流信号を出力する出力手段と、前記診断用交流信号が出力された場合に前記接続経路に流れる電流に基づき、前記絶縁不良の有無を診断する診断手段とを備え、前記診断手段は、前記絶縁不良である旨診断するための判定値または該判定値を定める情報を記憶する記憶手段を備え、前記判定値または前記情報は、前記車載補機に電力を供給する電力変換回路が前記電源に接続された状態において前記接続経路の浮遊容量および絶縁抵抗に応じた該接続経路の電気的な状態量を計測することで取得されたものであることを特徴とする。
【0008】
上記接続経路と車体との間の浮遊容量や絶縁抵抗は、接続経路の構成に依存する。このため、車載補機に電力を供給する電力変換回路が電源に接続された状態と接続されていない状態とでは、上記浮遊容量や絶縁抵抗が相違する。上記発明では、この点に鑑み、上記電力変換回路が電源に接続された状態において接続経路の電気的な状態量を計測することで得られた高精度の電気的な状態量に基づき、絶縁不良の有無を高精度に診断することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記電気的な状態量は、前記車載補機に電力を供給する電力変換回路が前記電源とともに前記車両に搭載された状態で計測されたものであることを特徴とする。
【0010】
上記浮遊容量や絶縁抵抗は、上記接続経路と車体との幾何学的な関係に依存する。このため、車両内に接続経路が配置されていない状態では、車両搭載時の浮遊容量や絶縁抵抗を高精度に把握することは困難である。上記発明では、この点に鑑み、上記電力変換回路が車両内において電源に接続された状態において接続経路の電気的な状態量を計測する。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記電気的な状態量は、前記診断用交流信号の出力に伴って前記接続経路を流れる電流に基づき定量化されるものであることを特徴とする。
【0012】
診断用交流信号を接続経路に出力する場合、接続経路を流れる交流電流は、接続経路と車体との間の浮遊容量や絶縁抵抗に依存する。上記発明では、この点に鑑み、接続経路と車体との間の浮遊容量および絶縁抵抗に応じた電気的な状態量を、上記電流に基づき定量化する。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記記憶手段は、前記絶縁不良の有無の診断処理を行なうための電力が供給されない状態においてもデータを記憶保持するものであって且つ、データの更新が可能な手段であることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、記憶手段のデータの更新が可能であるため、接続経路の構成が変更された場合等に、上記判定値や上記情報を更新することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記診断手段は、前記絶縁不良が生じている旨および前記絶縁不良が生じていない正常時である旨に加えて、それらの中間の状態である旨を診断可能なものであり、前記中間の状態である場合にその旨を通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
絶縁不良の有無を2値的に診断する場合、絶縁不良と診断された段階で、ユーザにディーラ等に直ちに向かうプレッシャーを与えやすい。この点、上記発明では、中間の状態を通知することで、ユーザが余裕のあるときにディーラ等に出向くことが可能となり、ユーザに加わるプレッシャーを和らげることができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記車載補機は、複数の車載補機を備え、前記電力変換回路は、複数の車載補機のそれぞれに接続された各別の電力変換回路を備えることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、複数の電力変換回路が上記接続経路を構成するため、接続経路と車体との間の浮遊容量が大きくなりやすく、絶縁抵抗が小さくなりやすい。このため、電力変換回路が接続された状態で計測された状態量に基づき取得される判定値や情報を利用して絶縁不良の有無を診断することのメリットが特に大きい。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記電力変換回路は、その正極側入力端子および負極側入力端子のそれぞれと前記車載補機の端子との間を選択的に開閉するスイッチング素子を備える直流交流変換回路であり、前記出力手段は、前記正極側入力端子に接続されるスイッチング素子と前記負極側入力端子に接続されるスイッチング素子とを交互にオン操作する手段であることを特徴とする。
【0020】
上記発明では、絶縁不良である旨診断される場合に、その不良箇所が直流交流変換回路および車載補機間の電気経路と車体の間であると高精度に判断することができる。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記診断手段は、前記電源の正極側と前記電力変換回路の正極側入力端子との間の電気経路に流れる電流と、前記電源の負極側と前記電力変換回路の負極側入力端子との間の電気経路に流れる電流との差信号を生成する差信号生成手段を備え、前記差信号に応じて前記絶縁不良の有無を診断することを特徴とする。
【0022】
直流交流変換回路および車載補機間の電気経路と車体との間に絶縁不良が生じていない場合、上記一対の電気経路を流れる電流量は同じである一方、上記絶縁不良が生じている場合には、これら電流量に相違が生じると考えられる。上記発明では、この点に鑑み、差信号生成手段を備えた。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記出力手段は、前記接続経路および前記車体間に接続されるコンデンサと、前記コンデンサに前記診断用交流信号を出力する手段とを備え、前記診断手段は、前記コンデンサを介して流れる電流に基づき前記絶縁不良の有無を診断することを特徴とする。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記接続経路と前記車体との間に接続されるインピーダンス素子および開閉手段の直列接続体を備えるシミュレート手段をさらに備え、前記電気的な状態量は、前記開閉手段が閉状態とされているときに、前記診断用交流信号の出力に伴って前記接続経路を流れる電流に基づき定量化されるものであることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、シミュレート手段を備えることで、接続経路と車体との間を故意に絶縁不良の状態とすることができるため、絶縁不良が生じるときの電気的な状態量を計測することが容易となる。
【0026】
請求項12記載の発明は、車両に搭載される主機用の電源(10)への接続経路(Lp,Ln,INV1〜INV4,Lo,22,24,26)と車体との絶縁不良の有無を診断する絶縁不良診断装置において、前記電源には、車載補機(22,24,26)に電力を供給する電力変換回路(INV2〜INV4)が接続されており、前記接続経路に診断用交流信号(ds)を出力する出力手段(40,INV2〜INV4)と、前記診断用交流信号が出力された場合に前記接続経路に流れる電流に基づき、前記絶縁不良の有無を診断する診断手段(46)と、前記接続経路に交流の適合信号を出力する適合用出力手段(INV2〜INV4)と、前記適合信号が出力された場合に前記接続経路に流れる電流に基づき、前記接続経路と前記車体との間の初期インピーダンスを検出する初期インピーダンス検出手段(S56)と、前記初期インピーダンスに基づき、前記診断手段が前記絶縁不良である旨診断するための判定値を算出する判定値算出手段(S70)と、を備えることを特徴とする。
【0027】
上記接続経路と車体との間の浮遊容量や絶縁抵抗は、接続経路の構成に依存する。このため、車載補機に電力を供給する電力変換回路が電源に接続された状態と接続されていない状態とでは、上記浮遊容量や絶縁抵抗が相違する。一方、診断用交流信号が接続経路に出力されることによって計測されるインピーダンスは、浮遊容量の影響を受けるため、診断用交流信号の周波数に依存し、絶縁抵抗自体を把握するには、浮遊容量に関する情報を別途取得する必要が生じる。
【0028】
ここで、上記発明では、初期インピーダンス検出手段によって浮遊容量に関する情報を得ることができる。特に、初期インピーダンスを、車載補機に電力を供給する電力変換回路が接続された状態で検出するなら、判定値算出手段によって、診断手段が診断に用いる判定値を上記浮遊容量を反映したかたちで自動的に算出するオートチューニング処理をすることが可能となる。
【0029】
請求項16記載の発明は、車両に搭載される主機用の電源への接続経路と車体との絶縁不良の有無を診断する絶縁不良診断方法において、前記車両には、前記接続経路に診断用交流信号を出力する出力手段と、前記診断用交流信号が出力された場合に前記接続経路に流れる電流に基づき、前記絶縁不良の有無を診断する診断手段とが搭載され、前記電源には、車載補機に電力を供給する電力変換回路が接続され、前記診断手段は、前記絶縁不良である旨診断するための判定値または該判定値を定める情報を記憶する記憶手段を備え、前記車載補機に電力を供給する電力変換回路が前記電源に接続された状態において前記接続経路の浮遊容量および絶縁抵抗に応じた該接続経路の電気的な状態量を計測する計測工程と、前記計測された電気的な状態量に応じた前記判定値または前記情報を前記記憶手段に記憶する記憶工程とを有することを特徴とする。
【0030】
上記接続経路と車体との間の浮遊容量や絶縁抵抗は、接続経路の構成に依存する。このため、車載補機に電力を供給する電力変換回路が電源に接続された状態と接続されていない状態とでは、上記浮遊容量や絶縁抵抗が相違する。上記発明では、この点に鑑み、上記電力変換回路が電源に接続された状態において接続経路の電気的な状態量を計測することで得られた高精度の電気的な状態量に基づき、絶縁不良の有無を高精度に診断することができる。
【0031】
請求項17記載の発明は、請求項16記載の発明において、前記電気的な状態量は、前記車載補機に電力を供給する電力変換回路が前記電源とともに前記車両に搭載された状態で計測されたものであることを特徴とする。
【0032】
上記浮遊容量や絶縁抵抗は、上記接続経路と車体との幾何学的な関係に依存する。このため、車両内に接続経路が配置されていない状態では、浮遊容量や絶縁抵抗を高精度に把握することは困難である。上記発明では、この点に鑑み、上記電力変換回路が車両内において電源に接続された状態において接続経路の電気的な状態量を計測する。
【0033】
請求項18記載の発明は、請求項17記載の発明において、前記電気的な状態量は、前記診断用交流信号の出力に伴って前記接続経路を流れる電流に基づき定量化されるものであることを特徴とする。
【0034】
診断用交流信号を接続経路に出力する場合、接続経路を流れる交流電流は、接続経路と車体との間の浮遊容量や絶縁抵抗に依存する。上記発明では、この点に鑑み、接続経路と車体との間の浮遊容量および絶縁抵抗に応じた電気的な状態量を、上記電流に基づき定量化する。
【0035】
請求項19記載の発明は、請求項16〜18のいずれか1項に記載の発明において、前記計測工程は、前記車両内において前記電源に接続される部材が全て接続されてから規定期間内に限って行われることを特徴とする。
【0036】
電源に接続される部材の全てが電源に接続された直後は、絶縁不良が生じていない正常時であると考えられることから、このときの電気的な状態量は、正常時における接続経路と車体との間の浮遊容量や絶縁抵抗を正確に反映したものとなる。上記発明では、この点に鑑み、上記設定とした。
【0037】
請求項20記載の発明は、請求項16〜19のいずれか1項に記載の発明において、前記計測工程は、前記車両内において前記電源に接続される部材の変更時に行われることを特徴とする。
【0038】
電源に接続される部材が変更される場合、すなわち接続経路の構造が変更される場合には、接続経路と車体との間の浮遊容量や絶縁抵抗が変化するおそれがある。このため、上記発明では、こうした場合に電気的な状態量の計測を行なうことで、判定値を更新することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる診断処理の手順を示す流れ図。
【図3】同実施形態にかかる判定値(判定値作成用情報)の取得手法を示す図。
【図4】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図5】同実施形態にかかるトランスTの構成を示す図。
【図6】同実施形態にかかる診断処理の手順を示す流れ図。
【図7】第3の実施形態にかかる診断処理の手順を示す流れ図。
【図8】第4の実施形態にかかるシステム構成図。
【図9】第5の実施形態にかかるオートチューニング処理の手順を示す流れ図。
【図10】初期インピーダンスZ0iと周波数との関係を示す図。
【図11】絶縁抵抗の低下時のインピーダンスと周波数との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる絶縁不良診断装置をハイブリッド車に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0041】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0042】
図示される高電圧バッテリ10は、端子電圧がたとえば百V以上となる2次電池である。高電圧バッテリ10は、車体から絶縁されている。詳しくは、たとえば高電圧バッテリ10の両端に一対のコンデンサを接続し、それらの接続点を車体に接続するなどすることで、高電圧バッテリ10の正極電位および負極電位の中央値が車体電位と等しくなるような設定がなされている。
【0043】
高電圧バッテリ10は、一対の電源ラインLp,Lnに接続されており、電源ラインLp,Lnは、一対のリレー12,14によって開閉される。電源ラインLp,Lnには、インバータINV1が接続されている。インバータINV1は、車載主機としてのモータジェネレータ16に、3相交流電圧を印加するためのものである。
【0044】
また、電源ラインLp,Lnは、電源回路PSCに接続されている。電源回路PSCは、電源ラインLp,Lnのそれぞれに接続されるノーマルモードチョークコイル18と平滑コンデンサ20とを備えて構成されている。
【0045】
電源回路PSCには、電源ラインLp1,Ln1を介してインバータINV2〜INV4が並列接続されている。ここで、インバータINV2は、車載空調装置に搭載されるブロワファン用のモータ22に、3相交流電圧を印加するためのものである。一方、インバータINV3は、ディファレンシャルギア等、駆動系に供給される潤滑油を循環させるためのオイルポンプに搭載されるモータ24に、3相交流電圧を印加するためのものである。また、インバータINV4は、車載内燃機関のシリンダブロック内の冷却水を冷却させるウォータポンプに搭載されるモータ26に、3相交流電圧を印加するためのものである。
【0046】
上記インバータINV2,INV3,INV4を構成するスイッチング素子は、マイクロコンピュータ(マイコン34)によって操作される。詳しくは、マイコン34は、フォトカプラ32を介して車載低電圧システム内の電子制御装置(ECU30)から出力された指令信号を受信し、これに基づきインバータINV2,INV3,INV4を操作する。
【0047】
ECU30は、ユーザからの要求や車載主機の制御等の要求に応じて上記指令信号を生成する。なお、ECU30は、外部(ユーザ)に視覚情報を通知する表示器33に信号を出力する機能を有する。
【0048】
上記インバータINV2,INV3,INV4やマイコン34は、1つのケースCAに収納されており、インバータINV2,INV3,INV4のそれぞれに接続される車載補機(モータ22,24,26)は、ケースCAの外部に配置される。これは、ケースCAを小型化するとともに、ケースCAと補機との配置箇所を離間させ、車両衝突時等においても損傷を受けにくいところにケースCAを配置することを1つの目的としてなされた設定である。
【0049】
次に、本実施形態にかかる絶縁不良診断手段について説明する。
【0050】
本実施形態では、インバータINV2〜INV4とそれらに接続されるモータ22,24,26との間の電気経路と車体との絶縁不良の有無を診断する機能を有する。詳しくは、電源ラインLn1には、コンデンサ44および抵抗体42の直列接続体が接続され、抵抗体42に出力部40が接続されている。出力部40は、交流の電圧信号(診断信号ds)を出力する手段である。出力部40は、ECU30から診断信号dsの出力指令が診断部46に出され、診断部46がその旨を通知することで診断信号dsを出力する。診断部46では、診断信号dsが出力されているときの抵抗体42およびコンデンサ44間の接続点の電位に基づき絶縁不良の有無を診断する。
【0051】
図2に、本実施形態にかかる上記診断処理の手順を示す。この処理は、ECU30や、診断部46、出力部40、マイコン34の協働でたとえば所定周期でくり返し実行される。
【0052】
この一連の処理では、まずステップS10において、インバータINV2〜INV4を指定する変数iを「2」とする。続くステップS12においては、インバータINViに限って、その下側アームのスイッチング素子をオン状態とする。この処理は、インバータINViの出力端子に限って、電源ラインLn1から入力される診断信号dsが伝播可能とするための設定である。続くステップS14においては、診断信号dsを出力する。そして、ステップS16では、コンデンサ44および抵抗体42間の電位を検出する(診断信号dsを受信する)。
【0053】
上記診断信号dsが出力されると、インバータINViと対応する補機との間の電気経路(出力線Lo)等に絶縁不良が生じている場合、診断信号dsは、抵抗体42、コンデンサ44、電源ラインLn1、インバータINViの下側アーム、インバータINViと対応する補機との間の電気経路、およびこの電気経路と接地間の絶縁抵抗を備えるループ経路を伝播する。これに対し、絶縁不良が生じていない場合には、診断信号dsをコンデンサ44を介して出力するものの、上記ループ経路のインピーダンスが大きいために、この経路を伝播する診断信号dsは無視しうる。このため、ループ経路における診断信号dsの伝播態様の相違(コンデンサ44を介して流れる電流の相違)によって、絶縁不良の有無を診断することができる。本実施形態では、特に、コンデンサ44および抵抗体42間の電位の変動量の相違に基づき、絶縁不良の有無を診断する。
【0054】
なお、この異常診断処理は、インバータINV2〜INV4のそれぞれと対応するモータ22,24,26との間の電気経路の全てについて行なう。このため、ステップS18において変数iが「4」となるまで、下側アームをオンとするインバータを変更しつつ(ステップS20)、診断信号dsの出力処理および受信処理が繰り返される。
【0055】
ステップS18において肯定判断される場合、ステップS22において、1箇所でも絶縁不良が生じていると診断されたか否かを判断する。そして生じていると診断された場合、ステップS24において、その旨を表示器33を用いて通知する。
【0056】
上記処理において、インバータINV2〜INV4等と車体との間の浮遊容量や絶縁抵抗を無視する場合、抵抗体42の抵抗値を、診断対象とする絶縁抵抗についての絶縁不良と判断する際の抵抗値の最大値と同程度の値とすることが診断精度を高くする上で有効である。これは、絶縁不良と判断する際の抵抗値よりも僅かに大きいときと僅かに小さいときとで、受信される診断信号dsの振幅値の相違を大きくできるためである。
【0057】
ところで、インバータINV2〜INV4等と車体との間に浮遊容量や絶縁抵抗がある場合には、受信される診断信号dsは、診断対象となる絶縁抵抗のみの影響を受けるわけではなく、インバータINV2〜INV4等と車体との間の浮遊容量および絶縁抵抗と診断対象となる絶縁抵抗とが並列接続された回路の影響を受けることとなる。詳しくは、インバータINV2〜INV4等と車体との間の浮遊容量が大きくなるほど、また、その絶縁抵抗の抵抗値が小さくなるほど、受信される診断信号dsは、診断対象となる絶縁抵抗の抵抗値が低下したときの挙動を示すようになる。このため、インバータINV2〜INV4等と車体との間の浮遊容量や絶縁抵抗を考慮することなく、絶縁不良の有無を診断するための判定値を設定する場合には、正常であるにもかかわらず絶縁不良であると判断する可能性が高くなる設定とすることを余儀なくされる。
【0058】
そこで本実施形態では、診断対象となる絶縁抵抗が正常値であるのか絶縁不良を生じる値であるのかを高精度に診断すべく、インバータINV2〜INV4等と車体との間の浮遊容量や絶縁抵抗を考慮した判定値を設定する。以下、これについて説明する。
【0059】
図3に、本実施形態にかかる絶縁不良診断装置の製造工程の一部を示す。図3(a)に示されるように、本実施形態では、高電圧バッテリ10に、インバータINV1〜INV4が接続された状態で診断信号dsをコンデンサ44を介して出力し、その際に受信される診断信号dsを計測する。詳しくは、計測に先立って、インバータINV2〜INV4が収納されるケースCAのコネクタCを介してモータ22,24,26がインバータINV2,INV3,INV4のそれぞれに接続される。
【0060】
図3(a)は、モータ22に接続される電気経路の絶縁不良の有無を診断するために利用される情報を生成するための計測工程を例示している。すなわち、モータ22の1つの端子とインバータINV2との接続を遮断した状態で、インバータINV2の該当する出力端子を抵抗体Rを介して車体に接続する。ここで、抵抗体Rの抵抗値は、モータ22の端子とインバータINV2とを接続する電気経路と車体との間の絶縁抵抗についての異常時の最大値とする。こうした状態でコネクタCを介して診断部46に、出力部40による診断信号dsの出力指令を出すように指令するとともに、この際の診断信号dsを受信するように指令する。なお、この際、こうした状態における診断信号dsの受信(計測)に加えて、インバータINV2の出力端子の全てをモータ22に接続し、車体との絶縁が良好な場合についての計測を行なってもよい。
【0061】
図3(a)における計測工程における計測結果は、図3(b)に示すように、外部から記憶指令を診断部46に入力することで、先の図1に示す不揮発性メモリ48に記憶される。不揮発性メモリ48は、たとえば電気的書き換え可能な読み出し専用メモリ(登録商標:EEPROM)等、給電の有無にかかわらずデータを記憶保持する記憶手段である。もっとも、ここに記憶されるデータは、計測結果自体に限らず、それに応じて定まる絶縁不良の判定値であってもよい。
【0062】
このように、計測結果や判定値を不揮発性メモリ48に記憶することで、製品出荷時に記憶されたデータを、ディーラ等において更新することもできる。このため、たとえば車載補機の一部を交換したり車載補機を追加したりすることで、上記浮遊容量や絶縁抵抗が変化する状況下、新たな浮遊容量や絶縁抵抗にとって最適な判定値を定めることが可能となる。
【0063】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0064】
(1)製品出荷時等において高電圧バッテリ10にインバータINV1〜INV4が接続された状態での診断信号dsの伝播態様を計測し、その計測結果(判定値を定めるための情報)や、計測結果に応じて定まる判定値を不揮発性メモリ48に記憶した。これにより、絶縁不良の有無を高精度に診断することができる。
【0065】
(2)高電圧バッテリ10やインバータINV1〜INV4が実際に車両に搭載された状態で上記計測を行った。これにより、高電圧システムと車体との間の浮遊容量や高電圧システムの絶縁抵抗を高精度に反映した計測を行なうことができる。
【0066】
(3)計測結果や判定値を不揮発性メモリ48に記憶した。これにより、製品出荷時に記憶されたデータを、高電圧システムの変更時に更新することができる。
【0067】
(4)診断信号dsをコンデンサ44を介して出力するに際し、診断対象に対応するインバータに限ってその下側アームをオン状態とした。これにより、診断対象を特定することができる。
【0068】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0069】
図4に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図4において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0070】
図示されるように、本実施形態では、コンデンサ44や抵抗体42を備えず、インバータINV2〜INV4の上側アームおよび下側アームを交互にオン操作する(相補駆動する)ことで、インバータINV2〜INV4とモータ22,24,26との間の電気経路に交流信号を出力する。そしてこの際、検出用コイルwdに誘起される電圧に基づき、絶縁不良の有無を診断する。ここで、検出用コイルwdは、トランスTの2次側コイルであり、1次側となる電源ラインLp1,Ln1の双方と磁気結合している。図5に、トランスTの構成を示す。
【0071】
図示されるように、コア50(ここではトロイダルコアを例示)は、電源ラインLp1,Ln1の双方と、検出用コイルwdとを鎖交する。さらに、電源ラインLp1について電源回路PSC側からインバータ側へと電流が流れる際にコア50に誘起される磁束の方向と、電源ラインLn1について電源回路PSC側からインバータ側へと電流が流れる際にコア50に誘起される磁束の方向とが互いに同一となるように設定されている。
【0072】
こうした構成において、インバータINV1〜INV3から交流信号が出力される状況下、それらと対応するモータ22,24,26との間の電気経路の絶縁が正常であるなら、電源ラインLp1と電源ラインLn1とを流れる電流の絶対値は同一と考えられる。そして、この場合、アンペールの法則からコア50内の磁束はゼロとなる。これに対し、上記絶縁が正常でない場合には、車体側に流れる電流のために、電源ラインLp1と電源ラインLn1とを流れる電流の絶対値が相違し、コア50内に磁束が生じる。特に、交流信号を生じさせる場合、電源ラインLp1と電源ラインLn1とを流れる電流の絶対値同士の差が変動するため、コア50内の磁束も変動する。このため、検出用コイルwdには、磁束の変動に応じた電圧が誘起される。したがって、この電圧を検出することで、絶縁不良の有無を診断することができる。
【0073】
図6に、本実施形態にかかる絶縁不良診断処理の手順を示す。この処理は、ECU30や、診断部46、出力部40、マイコン34の協働でたとえば所定周期でくり返し実行される。なお、図6において、先の図2に示した処理に対応する処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0074】
この一連の処理では、ステップS12aにおいて、変数iによって指定されたインバータINViの上側アームのスイッチング素子と下側アームのスイッチング素子とを交互にオン・オフ操作する。続くステップS16aにおいては、検出用コイルwdに誘起される電圧vdを検出する。
【0075】
このように、本実施形態では、コンデンサ44や抵抗体42によって高電圧システムと車体との間を接続することなく、絶縁不良の有無を診断することができる。ただし、この場合、診断対象の絶縁抵抗の抵抗値と検出用コイルwdに誘起される電圧との関係を正確に把握しない限り、高精度の診断は困難であり、高精度の診断ができないなら大きなマージンが要求されることとなる。このため、判定値の設定を、上記第1の実施形態の要領で行なうことが診断を高精度に行なう上で特に重要となる。
【0076】
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0077】
本実施形態では、絶縁不良の有無を2値的ではなく、2段階で診断する。これは、ユーザに与えるプレッシャーを緩和するための設定である。すなわち、絶縁不良の有無を2値的に判断する場合、絶縁不良と診断されることでユーザは直ちにディーラに出向くプレッシャーを感じる。これに対し、絶縁不良と正常との中間の診断を行なうことで、余裕のあるときに一度ディーラに出向くことを穏やかに促すことができ、ユーザが大きなプレッシャーを感じることを回避することができる。
【0078】
図7に、本実施形態にかかる絶縁不良の判定値の生成工程を示す。この処理は、先の図3に示す工程に対応するものであり、たとえば製品出荷に先立って行われる。
【0079】
この一連の処理では、まずステップS30において、抵抗値を指定する変数jを「1」とする。続くステップS32において、インバータINV2〜INV4のいずれかおよび対応するモータ22,24,26間の電気経路と車体との間に、抵抗値Rjの抵抗体を接続する。続くステップS34では、診断信号dsを出力し、ステップS36において、診断信号dsを受信する。この処理は、変数jが最大値jmaxとなるまで実行される(ステップS38,S40)。
【0080】
そして、互いに相違する抵抗値R1〜Rjmaxのそれぞれに対応する診断信号dsを受信すると、ステップS42においては、回帰分析を行なう。詳しくは、抵抗値を説明変数とし、受信される診断信号dsの変動幅を目的変数とする回帰式を作成する。続くステップS44においては、回帰式に基づき、絶縁不良が生じている旨を診断するための判定値Vth2と、正常と絶縁不良が生じている旨の診断との中間の領域(グレーゾーン)を定める一対の値のうち判定値Vth2ではない方の判定値Vth1とを設定する。そして、ステップS46において、これら一対の判定値Vth1,Vth2を、不揮発性メモリ48に記憶する。
【0081】
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0082】
図8に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図8において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0083】
図示されるように、本実施形態では、インバータINV2とモータ22との間の電気経路と車体とを、抵抗体60およびスイッチング素子62の直列接続体によって接続する。この抵抗体60は、上記電気経路の絶縁に不良が生じていると判断する際の電気経路の絶縁抵抗の抵抗値の最大値程度に設定される。これにより、診断部46がスイッチング素子62をオン操作することで、絶縁不良が生じた状態を擬似的に作り出すことができる。このため、先の図3(a)に示した計測工程において、外部から診断部46に、絶縁不良が生じた状態を擬似的に作り出して診断信号dsの伝播態様を計測するように指令することで、計測を行なうことができる。
【0084】
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0085】
本実施形態では、マイコン34、診断部46および不揮発性メモリ48によって絶縁不良の有無の診断パラメータのオートチューニング装置を構成する。
【0086】
図9に、上記オートチューニングの処理手順を示す。この処理は、ECU30を介して、外部からオートチューニング処理を行なう指示がなされることをトリガとして実行される。ここで、指示を出す状況としては、たとえば高電圧バッテリ10にインバータINV2〜INV4が接続され、インバータINV2〜INV4のそれぞれに車載補機が接続された直後とすればよい。
【0087】
この一連の処理では、まずステップS50において、インバータINV2〜INV4を指定する変数iを「2」とする。続くステップS52においては、絶縁不良のための診断に用いる交流信号を適合するための適合信号の周波数fを初期周波数f0とする。続くステップS54においては、インバータINViの上側アームと下側アームとを交互にオン操作することで、モータ22,24,26のうち対応するものに交流信号を出力する。ここでは、上側アームと下側アームとのオン時間の比率を等しくし、適合信号を矩形波信号とする。
【0088】
続くステップS56においては、モータ22,24,26のうち対応するものや出力線Loと車体との初期インピーダンスZ0iを算出する。ここでは、まず、検出用コイルwdに誘起される電圧vdのうち周波数fの成分を透過させるようにバンドパスフィルタ処理を行い、電圧vdの周波数f成分に基づき絶縁抵抗を流れる電流(交流信号)の実効値を算出する。続いて、インバータINViの出力する矩形波信号のうちの周波数f成分の実効値を算出し、それら一対の実効値の比によって初期インピーダンスZ0i(f)を算出する。ちなみに、上記バンドパスフィルタ処理は、ソフトウェア処理である。これは、診断部46が検出した電圧Vdをマイコン34に出力することで実現できる。
【0089】
続くステップS58においては、周波数fが最大周波数fmax以上であるか否かを判断する。ここで、最大周波数fmaxは、診断信号dsの周波数の候補としての最大周波数である。ステップS58において否定判断される場合、ステップS60において、周波数fを規定量Δfだけ増加補正し、ステップS54に戻る。こうして、初期周波数f0から最大周波数fmaxまで、初期インピーダンスZ0iが算出されることとなる。なお、初期インピーダンスZ0iは、周波数fが高くなるにつれて低下する傾向を有する。これは、インピーダンスが、モータ22,24,26のうち対応するものや出力線Loと車体との間の浮遊容量等に起因したものとなるからである。特に、絶縁抵抗が非常に大きい場合には、図10のように、周波数fとインピーダンスZとの両対数グラフにおいて、周波数fの上昇に伴ってインピーダンスZは、直線的に低下する。
【0090】
上記ステップS58において肯定判断される場合、ステップS62において、周波数f毎に、絶縁抵抗が、絶縁不良と診断する最大値(下限抵抗値Rth)まで低下した場合のインピーダンスを判定候補値Zthi(f)として算出する。これは、対応する初期インピーダンスZ0を用いて以下の式(c1)によって行なうことができる。
【0091】
【数1】


なお、上記の式(c1)は、初期インピーダンスZ0i(f)の検出時における絶縁抵抗を無限大と仮定することで成立するものである。実際、下限抵抗値Rthを無限大とすることで、上記の式(c1)の左辺が、初期インピーダンスZ0i(f)に一致する。
【0092】
続くステップS64では、診断周波数候補値fiを算出する。ここでは、初期インピーダンスZ0i(f)に対する判定候補値Zthi(f)の変化量が規定量(Z0i(f)・SNth)以上となる最大周波数を周波数候補値fiとする。これは、SN比を改善することを狙ったものである。すなわち、図11に示すように、絶縁抵抗値Riが低下することでインピーダンスが初期インピーダンスZ0i(f)から変化するものの、その変化量は、周波数fが高周波となるほど小さくなる。このため、変化量が大きくなる周波数fを選択することで、ノイズに対する診断の耐性を高める。
【0093】
なお、上記変化量に起因してノイズに対する耐性を高める上では、周波数fは低周波であるほど良いものの、高周波とすることには、トランスTを小型化できるメリットがある。すなわち、検出用コイルwdに誘起される電圧の絶対値を大きくする手段としては、ターン数を増大させることと、磁束の変化速度を大きくすることとがある。ここで、ターン数を増大させることはトランスTの大型化を招く。したがって、検出用コイルwdの電圧vdをある程度大きくしつつもトランスTを小型化する上では、周波数fを極力高くすることが望ましい。
【0094】
続くステップS66では、変数iが「4」であるか否かを判断する。この処理は、インバータINV2〜INV4の全てについて、ステップS54〜S64の処理が完了したか否かを判断するものである。そしてステップS66において否定判断される場合には、ステップS68において、変数iをインクリメントし、ステップS52に戻る。
【0095】
これに対し、ステップS66において肯定判断される場合、ステップS70に移行する。ステップS70では、診断信号dsの周波数fdを、各インバータINV2〜INV4のそれぞれについてステップS64において算出された周波数候補値f2〜f4のうちの最小値とする。これは、絶縁抵抗値Riの低下に伴う初期インピーダンスZ0iからの変化量を極力大きくするための設定である。また、各インバータINV2〜INV4のそれぞれに対応する判定値Zth2〜Zth4を、上記の式(c1)において、初期インピーダンスZ0i(f)の周波数fが診断信号dsの周波数fdであるときの値とする。
【0096】
そしてステップS72においては、周波数fdと、判定値Zth2〜Zth4とを、不揮発性メモリ48に記憶し、この一連の処理を一旦終了する。
【0097】
このように、本実施形態では、高電圧バッテリ10とインバータINV2〜INV4等とを接続した状態において、マイコン34等によって、周波数fdや判定値Zth2〜Zth4をオートチューニングすることができる。特に、モータ22,24,26等がそれぞれの筐体に収容されてインバータINV2〜INV4のそれぞれに接続された後にオートチューニングを行なうなら、筐体によって変化する浮遊容量等に応じて周波数fdや判定値Zth2〜Zth4を適切な値に設定することができる。
【0098】
なお、上記処理において、診断信号dsの周波数fdを共通としたのは、診断処理の簡素化や、不揮発性メモリ48の記憶容量の低減等を図るためである。
【0099】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0100】
「計測工程について」
車両に搭載される交流信号出力手段(出力部40やインバータINV1〜INV3)によって診断用交流信号を出力するものに限らない。たとえば、車両に実際には搭載しない専用の手段を用いて交流信号を出力することで、高電圧バッテリ10への接続経路の電気的な状態量を計測してもよい。
【0101】
インバータINV2〜INV4や高電圧バッテリ10が車両に搭載された状態で計測を行なうものに限らない。たとえば、補機用の各電力変換回路を最終的にその表面が車体に接触するケースに収容するなどした状態であるなら、車体に搭載した場合に近い状態で計測を行なうことができる。
【0102】
また、高電圧バッテリ10に接続される全ての補機用の電力変換回路や補機が接続された状態で行なうものにも限らない。たとえば8割以上の補機用の電力変換回路や補機が接続された状態において計測を行なう場合、全く接続されていない場合に計測を行なう場合と比較して判定値の精度に顕著な差異が生じると考えられる。
【0103】
なお、製品出荷時において、個体差を考慮すべく車両毎に計測を行なうものに限らない。たとえば車両の試作品における計測結果に応じた判定値を全車両に記憶させてもよい。この場合であっても、その後、高電圧システムを構成する部品の一部を交換した際に、その個体についての電気的な状態量を個別に計測し、それ以後、これに基づき判定値を設定する場合には、交換後における診断精度を向上させることができる。またたとえば、全車両に共通の判定値を持たせる場合において、この判定値を上記第3の実施形態のように、絶縁不良を多段階に診断するようにし、グレーゾーンであることを理由にディーラーを訪れた際に、精密検査をし、絶縁不良がない場合にはその個体についての電気的な状態量を個別に計測し、判定値を更新してもよい。
【0104】
「絶縁不良度合いの多段階診断について」
上記第3の実施形態において例示したように、「正常」、「グレー」、「絶縁不良」の3段階の診断を行なうものに限らず、4段階以上または連続的に絶縁不良度合いを診断するものであってもよい。
【0105】
「診断手段について」
上記第1の実施形態では、絶縁不良箇所を特定すべく、診断対象に対応するインバータに限って、そのスイッチング素子をオン状態としつつ診断信号dsを出力したがこれに限らない。たとえば、全てのインバータINV1〜INV3のスイッチング素子をオン状態として診断信号dsを出力してもよい。この場合であっても、高電圧システムと車体との絶縁不良の有無を診断することはできる。
【0106】
上記第2の実施形態において、コンデンサ44および抵抗体42の直列接続体によって高電圧システムおよび車体間を接続し、コンデンサ44を介して流れる電流量に基づき絶縁不良の有無を診断するようにしてもよい。
【0107】
上記第2の実施形態において、高電位側の電源ラインLp1と低電位側の電源ラインLn1とのそれぞれにシャント抵抗を接続し、これらの電圧降下量に基づきこれらを流れる電流量の差を検出してもよい。
【0108】
「診断対象について」
車載補機とその電力変換回路との間の電気経路の絶縁抵抗に限らない。たとえば先の図1に示した電源ラインLn1,Lp1等であってもよい。これは、上記第1の実施形態において、全インバータINV1〜INV4のスイッチング素子をオフした状態で診断信号dsを出力することで行なうことができる。ちなみにこの際、ノーマルモードチョークコイル18による診断信号dsの位相ずれを考慮しないなら、絶縁不良が生じていると診断される場合、その異常箇所として、主機用のモータジェネレータ16およびインバータINV1間の電気経路の絶縁抵抗等も含まれる。
【0109】
「電気的な状態量について」
上記第1の実施形態において、抵抗体42の両端の電圧であってもよい。この場合、抵抗体42の電圧降下量が、診断信号dsの出力時においてコンデンサ44を介して流れる電流量と相関を有するパラメータとなる。
【0110】
「出力手段について」
上記第1の実施形態において、コンデンサ44を高電位側の電源ラインLp1に接続してもよい。また、高電位側の電源ラインLp1と低電位側の電源ラインLn1とのいずれか一方に接続するものに限らず、双方にそれぞれ各別のコンデンサを接続してもよい。この場合、インバータINV1〜INV4を全てオフとして且つ電源ラインLp1に出力される交流信号と電源ラインLn1に出力される交流信号との位相および振幅を同一とするなら、第2の実施形態のように検出用コイルWdを用いて電源ラインLp1,Ln1の絶縁不良の有無を診断することもできる。
【0111】
「記憶手段について」
不揮発性メモリ48に限らない。たとえば、診断部46やマイコン34への電力供給が遮断される状況下においても給電が維持されるバックアップRAM等の揮発性メモリであってもよい。ちなみに、記憶手段としては、電気的書き換え可能なものであることが望ましいが、これに限らない。電気的書き換えが可能でない場合であっても、製品出荷時に個体差が反映された判定値や判定値を生成するための情報を記憶することはできる。
【0112】
「差信号生成手段について」
上記第2の実施形態において、電源ラインLp1が貫通して且つ電源ラインLn1が貫通しない第1の磁心と、電源ラインLn1が貫通して且つ電源ラインLp1が貫通しない第2の磁心と、第1の磁心および第2の磁心の双方によって貫通される検出用コイルとを備え、検出用コイルを鎖交する第1の磁心の磁束と第2の磁心の磁束とが逆方向となるようにしてもよい。
【0113】
なお、電源ラインLp1に流れる電流によって生じる磁束と、電源ラインLn1に流れる電流によって生じる磁束とが貫通する検出用コイルを備えるものに限らないことについては、「診断手段について」の欄に記載したとおりである。
【0114】
「シミュレート手段について」
インピーダンス素子としては、単一の抵抗体60に限らず、たとえば抵抗体とインダクタとの直列接続体であってもよい。
【0115】
1組の抵抗体60およびスイッチング素子62の直列接続体に限らず、抵抗値の互いに相違する複数の抵抗体と、それら各抵抗体に接続されるスイッチング素子とを備えるものであってもよい。
【0116】
「適合用出力手段について」
たとえば上記第1の実施形態(図1)における出力部40であってもよい。この際、インバータINV2〜INV4のうちの1つに限って下側アームをオン状態とすれば、そのインバータおよび車載補機間と車体との間のインピーダンスを検出することが可能となる。もっとも、車載補機の一部に適合信号を選択的に出力するものに限らない。すなわち、インバータINV2〜INV4の全ての下側アームをオン状態とすることで、インバータINV2〜INV4のそれぞれおよび対応する車載補機間と車体との合成インピーダンスを検出するようにしてもよい。
【0117】
また、診断信号dsを出力する手段に限らず、これとは別に適合専用の交流信号の出力手段であってもよい。
【0118】
交流信号としては、矩形波信号に限らず、たとえば正弦波信号であってもよい。この場合、初期インピーダンス検出手段による電流の検出処理に際して、バンドパスフィルタ処理を行わない場合の初期インピーダンスの検出精度を向上させることができる。
【0119】
「初期インピーダンス検出手段について」
たとえば、適合用出力手段を上記第1の実施形態(図1)における出力部40とするなら、コンデンサ44および抵抗体42間の電位の変動量の検出値に基づき、電流を検出する手段を備えて構成してもよい。
【0120】
なお、インバータINV2〜INV4のうちのいずれか1つおよび対応する車載補機間と車体との間のインピーダンスを検出するものに限らないことについては、「適合用出力手段について」の欄に記載してある。また、電流の検出処理に際してバンドパスフィルタ処理を行うものに限らないことについても、「適合用出力手段について」の欄に記載してある。
【0121】
「判定値算出手段について」
上記第5の実施形態(図9)では、初期インピーダンスZ0iにおける絶縁抵抗の抵抗値を無限大とみなしたが、これに限らない。たとえば絶縁要求を満足する値であって予め定められた値とみなしてもよい。この場合であっても、初期インピーダンスZ0iから浮遊容量に起因したインピーダンスを算出することができ、ひいては、判定値Zthiを算出することができる。
【0122】
また、初期の絶縁抵抗の値を適宜仮定することで、初期インピーダンスZ0iと、絶縁抵抗の下限抵抗値Rthとに基づき、判定値Zthiを算出するものに限らない。たとえば、初期インピーダンスZ0iが、下限抵抗値Rthを上回るように、診断信号dsの周波数fdを設定するとともに、判定値Zthを下限抵抗値Rthに設定してもよい。これによっても、絶縁抵抗の低下を検出することで絶縁不良と診断することができるため、絶縁抵抗が下限抵抗値Rthを下回る以前に絶縁不良と通知することが可能となる。
【0123】
「周波数決定手段について」
絶縁抵抗値Riが下限抵抗値Rthまで低下する際のインピーダンスZが初期インピーダンスZ0iに対して規定量以上変化することを条件に、判定値Zthiを設定するものに限らない。たとえば、診断信号dsの周波数fdが高いほど検出用コイルwdの電圧wdが高くなることに鑑みれば、周波数fdを上昇させることで、電圧wdに起因したノイズの耐性は高まることとなる。このため、周波数fdを上昇させることに起因した上記初期インピーダンスZ0iに対する変化量の低下と、電圧wdの振幅の増大との双方に鑑み、ノイズに対する耐性を最も向上できるように周波数fdを設定してもよい。これは、たとえば、変化量の大きさとその評価値との関係を定めたマップと、周波数fdと振幅の大きさの評価値との関係を定めたマップとを備え、一対のマップから算出される評価値の合計値が最大となる周波数を選択することで実現することできる。
【0124】
また、初期インピーダンスZ0iに対して、絶縁抵抗が下限抵抗値Rthまで低下したときのインピーダンスZの変化量が規定値以上となる周波数とするものに限らないことについては、「判定値算出手段について」の欄にも記載してある。
【0125】
「通知手段について」
視覚情報を利用して通知する手段に限らず、たとえば音を利用して通知する手段であってもよい。
【0126】
「車両について」
ハイブリッド車に限らず、たとえば車載主機に供給されるエネルギの貯蔵手段として、電気エネルギを出力する手段(2次電池、燃料電池)のみを備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0127】
10…高電圧バッテリ、40…出力部、42…抵抗体、44…コンデンサ、46…診断部、48…診断部、INV1〜INV4…インバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される主機用の電源(10)への接続経路(Lp,Ln,INV1〜INV4,Lo,22,24,26)と車体との絶縁不良の有無を診断する絶縁不良診断装置において、
前記電源には、車載補機(22,24,26)に電力を供給する電力変換回路(INV2〜INV4)が接続されており、
前記接続経路に診断用交流信号(ds)を出力する出力手段(40,INV2〜INV4)と、
前記診断用交流信号が出力された場合に前記接続経路に流れる電流に基づき、前記絶縁不良の有無を診断する診断手段(46)とを備え、
前記診断手段は、前記絶縁不良である旨診断するための判定値または該判定値を定める情報を記憶する記憶手段(48)を備え、
前記判定値または前記情報は、前記車載補機に電力を供給する電力変換回路が前記電源に接続された状態において前記接続経路に交流信号を出力した際の前記接続経路の浮遊容量および絶縁抵抗に応じた該接続経路の電気的な状態量を計測することで取得されたものであることを特徴とする絶縁不良診断装置。
【請求項2】
前記電気的な状態量は、前記車載補機に電力を供給する電力変換回路が前記電源とともに前記車両に搭載された状態で計測されたものであることを特徴とする請求項1記載の絶縁不良診断装置。
【請求項3】
前記電気的な状態量は、前記診断用交流信号の出力に伴って前記接続経路を流れる電流に基づき定量化されるものであることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁不良診断装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記絶縁不良の有無の診断処理を行なうための電力が供給されない状態においてもデータを記憶保持するものであって且つ、データの更新が可能な手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁不良診断装置。
【請求項5】
前記診断手段は、前記絶縁不良が生じている旨および前記絶縁不良が生じていない正常時である旨に加えて、それらの中間の状態である旨を診断可能なものであり、
前記中間の状態である場合にその旨を通知する通知手段(33)をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁不良診断装置。
【請求項6】
前記車載補機は、複数の車載補機を備え、
前記電力変換回路は、複数の車載補機のそれぞれに接続された各別の電力変換回路を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁不良診断装置。
【請求項7】
前記電力変換回路は、その正極側入力端子および負極側入力端子のそれぞれと前記車載補機の端子との間を選択的に開閉するスイッチング素子を備える直流交流変換回路であり、
前記出力手段は、前記正極側入力端子に接続されるスイッチング素子と前記負極側入力端子に接続されるスイッチング素子とを交互にオン操作する手段であることを特徴とする請求項6記載の絶縁不良診断装置。
【請求項8】
前記診断手段は、
前記電源の正極側と前記電力変換回路の正極側入力端子との間の電気経路に流れる電流と、前記電源の負極側と前記電力変換回路の負極側入力端子との間の電気経路に流れる電流との差信号を生成する差信号生成手段(wd)を備え、
前記差信号に応じて前記絶縁不良の有無を診断することを特徴とする請求項7記載の絶縁不良診断装置。
【請求項9】
前記出力手段は、
前記接続経路および前記車体間に接続されるコンデンサ(44)と、
前記コンデンサに前記診断用交流信号を出力する手段とを備え、
前記診断手段は、前記コンデンサを介して流れる電流に基づき前記絶縁不良の有無を診断することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁不良診断装置。
【請求項10】
前記接続経路と前記車体との間に接続されるインピーダンス素子(60)および開閉手段(62)の直列接続体を備えるシミュレート手段をさらに備え、
前記電気的な状態量は、前記開閉手段が閉状態とされているときに、前記診断用交流信号の出力に伴って前記接続経路を流れる電流に基づき定量化されるものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁不良診断装置。
【請求項11】
前記接続経路に交流の適合信号を出力する適合用出力手段(INV2〜INV4)と、
前記適合信号が出力された場合に前記接続経路に流れる電流に基づき、前記接続経路と前記車体との間の初期インピーダンスを検出する初期インピーダンス検出手段(S56)と、
前記初期インピーダンスに基づき、前記判定値を算出する判定値算出手段(S70)と、
を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の絶縁不良診断装置。
【請求項12】
車両に搭載される主機用の電源(10)への接続経路(Lp,Ln,INV1〜INV4,Lo,22,24,26)と車体との絶縁不良の有無を診断する絶縁不良診断装置において、
前記電源には、車載補機(22,24,26)に電力を供給する電力変換回路(INV2〜INV4)が接続されており、
前記接続経路に診断用交流信号(ds)を出力する出力手段(40,INV2〜INV4)と、
前記診断用交流信号が出力された場合に前記接続経路に流れる電流に基づき、前記絶縁不良の有無を診断する診断手段(46)と、
前記接続経路に交流の適合信号を出力する適合用出力手段(INV2〜INV4)と、
前記適合信号が出力された場合に前記接続経路に流れる電流に基づき、前記接続経路と前記車体との間の初期インピーダンスを検出する初期インピーダンス検出手段(S56)と、
前記初期インピーダンスに基づき、前記診断手段が前記絶縁不良である旨診断するための判定値を算出する判定値算出手段(S70)と、
を備えることを特徴とする絶縁不良診断装置。
【請求項13】
前記適合用出力手段は、前記適合信号の周波数を複数通り設定する機能を有し、
前記初期インピーダンス検出手段は、前記適合信号の周波数毎に前記初期インピーダンスを検出するものであり、
前記接続経路と前記車体との間のインピーダンスが前記絶縁不良である旨診断する最大値であるときについて、その前記初期インピーダンスに対する変化量が規定値以上となる周波数を前記診断用交流信号の周波数に決定する周波数決定手段(S70)を備え、
前記判定値算出手段は、前記決定手段によって決定された周波数に対応する初期インピーダンスに基づき、前記判定値を算出することを特徴とする請求項11または12記載の絶縁不良診断装置。
【請求項14】
前記車載補機は、複数の車載補機を備え、
前記適合用出力手段は、前記適合信号を前記複数の車載補機のうちの一部に選択的に出力する機能を備え、
前記初期インピーダンス検出手段は、前記適合用出力手段による出力対象となる車載補機毎に、前記初期インピーダンスを検出するものであり、
前記周波数決定手段は、前記出力対象をいずれとしても前記変化量が規定値以上となる周波数を前記診断用交流信号の周波数に決定することを特徴とする請求項13記載の絶縁不良診断装置。
【請求項15】
前記電力変換回路は、その正極側入力端子および負極側入力端子のそれぞれと前記車載補機の端子との間を選択的に開閉するスイッチング素子を備える直流交流変換回路であり、
前記出力手段は、前記正極側入力端子に接続されるスイッチング素子と前記負極側入力端子に接続されるスイッチング素子とを交互にオン操作する手段であり、
前記診断手段は、前記電源の正極側と前記電力変換回路の正極側入力端子との間の電気経路に流れる電流と、前記電源の負極側と前記電力変換回路の負極側入力端子との間の電気経路に流れる電流との差信号を生成する差信号生成手段(wd)を備え、前記差信号に応じて前記絶縁不良の有無を診断するものであり、
前記周波数決定手段は、前記変化量が規定値以上となる最高周波数を前記診断用交流信号の周波数に決定することを特徴とする請求項13または14記載の絶縁不良診断装置。
【請求項16】
車両に搭載される主機用の電源(10)への接続経路(Lp,Ln,INV1〜INV4,Lo)と車体との絶縁不良の有無を診断する絶縁不良診断方法において、
前記車両には、前記接続経路に診断用交流信号(ds)を出力する出力手段と、前記診断用交流信号が出力された場合に前記接続経路に流れる電流に基づき、前記絶縁不良の有無を診断する診断手段(46)とが搭載され、
前記電源には、車載補機(22,24,26)に電力を供給する電力変換回路(INV2〜INV4)が接続され、
前記診断手段は、前記絶縁不良である旨診断するための判定値または該判定値を定める情報を記憶する記憶手段(48)を備え、
前記車載補機に電力を供給する電力変換回路が前記電源に接続された状態において前記接続経路に交流信号を出力した際の前記接続経路の浮遊容量および絶縁抵抗に応じた該接続経路の電気的な状態量を計測する計測工程と、
前記計測された電気的な状態量に応じた前記判定値または前記情報を前記記憶手段に記憶する記憶工程とを有することを特徴とする絶縁不良診断方法。
【請求項17】
前記電気的な状態量は、前記車載補機に電力を供給する電力変換回路が前記電源とともに前記車両に搭載された状態で計測されたものであることを特徴とする請求項16記載の絶縁不良診断方法。
【請求項18】
前記電気的な状態量は、前記診断用交流信号の出力に伴って前記接続経路を流れる電流に基づき定量化されるものであることを特徴とする請求項17記載の絶縁不良診断方法。
【請求項19】
前記計測工程は、前記車両内において前記電源に接続される部材が全て接続されてから規定期間内に限って行われることを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の絶縁不良診断方法。
【請求項20】
前記計測工程は、前記車両内において前記電源に接続される部材の変更時に行われることを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の絶縁不良診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−40918(P2013−40918A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30391(P2012−30391)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】