締結装置
【課題】雄螺子と雌螺子の螺合部の潤滑性を向上及び潤滑剤の漏れを防止すると共に、被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を簡単に配設することが可能な締結装置を提供する。
【解決手段】雄螺子15の両側の外径が異なるホルダ本体10と、雌螺子31が形成された締付ナット30を備え、雄螺子15と雌螺子との螺合部に充填された潤滑剤24と、螺合部の両側に配設され、潤滑剤を密封するOリング16及び17と、締付ナットに設けられ、Oリングを収容する収容部34と、締付ナット部材に設けられ、締付ナットがホルダ本体10を締付ける方向に移動する際に、収容部に収容されたOリングを、締付ナットの移動方向に向けて押圧して移動可能である押圧部37を備えた締結装置1である。
【解決手段】雄螺子15の両側の外径が異なるホルダ本体10と、雌螺子31が形成された締付ナット30を備え、雄螺子15と雌螺子との螺合部に充填された潤滑剤24と、螺合部の両側に配設され、潤滑剤を密封するOリング16及び17と、締付ナットに設けられ、Oリングを収容する収容部34と、締付ナット部材に設けられ、締付ナットがホルダ本体10を締付ける方向に移動する際に、収容部に収容されたOリングを、締付ナットの移動方向に向けて押圧して移動可能である押圧部37を備えた締結装置1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄螺子が形成されると共に、該雄螺子の両側における外径が異なる被締付部材に、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材を装着して、前記雄螺子と雌螺子を螺合させ、当該締付部材により、当該被締付部材の締付け及び締付け解除を行う締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雄螺子が形成された被締付部材に、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材を装着して、前記雄螺子と雌螺子を螺合させ、当該締付部材により、当該被締付部材の締付け及び締付け解除を行う締結装置が種々利用されている。
【0003】
例えば、先端に雄螺子が形成された工具保持体(被締付部材)と、この雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締結体(締付部材)を備え、工具保持体に内装されたコレットの工具挿入孔に工具を挿入し、当該工具保持体に締結体を装着して、前記雄螺子と雌螺子を螺合させながら、当該締結体を回転させることによって、工具保持体を締付けることで、前記コレットの径を拡縮させて前記工具を挟持する、または挟持を解除するチャック装置がある。このチャック装置では、前記工具保持体と締付体との螺合部分の摩擦を低減するため、この部分に摩擦係数が可及的に小さいコーティングを施している。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そしてまた、ボールナットの内部に潤滑グリースを封入すると共に、この潤滑グリースの基油と同種または相互作用により潤滑性低下を生じない潤滑油を成分として含有する固形状の潤滑組成物でシール部材を形成し、これをボールナットの両端部に装着し、その内周を螺子軸の螺子溝面に摺接させたボール螺子もある。(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−1104号公報
【特許文献2】特開平11−166608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたチャック装置では、工具保持体と締付体との螺合部分に潤滑油を使用する代わりに、摩擦係数が可及的に小さいコーティングを施しているが、このコーティングにより形成されるコーティング層は固体であり、液体ではない。ここで、摩擦を低減するための潤滑剤は、固体の状態よりも液体の状態である方が、潤滑性が高い(すなわち、摩擦がより低減される)ことが知られている。したがって、特許文献1に記載されたチャック装置は、潤滑性をさらに向上させる余地がある。また、仮に、潤滑性をさらに向上するために、前記螺合部分に液体の潤滑剤を適用しようとても、これを密封するための構成を備えていない。さらにまた、前記コーティング層は、固体であるため、摩擦により剥がれると元に戻らず、潤滑性を維持することができなくなってしまう虞もある。
【0006】
また、特許文献2に記載されたボール螺子は、ボールナットの両端部にシール部材を配設した構成を備えているが、このシール部材は、その外周に弾性部材を嵌めた状態でボールナットのシール装着部に装着され、さらにシール押えでボールナットに固定されており、構造が複雑である。ここで、前記螺子軸として、その一端側の直径が他端側の直径よりも大きくなるように傾斜している略円錐形を備えた部材を用いる場合、ナットが回転する際に、直径が小さい側に充填されている潤滑剤が油圧効果を生じ、潤滑剤の漏れが発生することがある。しかしながら、この特許文献2に記載されている送り螺子は、前記螺子軸の直径が一定であるため、油圧効果に起因して潤滑剤に漏れが生じることが殆どないため、この潤滑剤の漏れを防止するための構成を考慮する必要がなく、また備えていない。また、ここで、雄螺子が形成された部材が略円錐形を備えている場合、直径が小さい側に配設されるシール部材は、直径が大きい側に配設されるシール部材よりも配設が困難であることが知られている。しかしながら、この文献に記載されているボール螺子は、前記螺子軸の直径が一定であるため、直径が小さい側に配設されるシール部材を簡単に所定位置に配設するための構成を考慮する必要がなく、また備えていない。
【0007】
本発明は、雄螺子が形成されると共に、該雄螺子の両側における外径が異なる被締付部材に、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材を装着して、前記雄螺子と雌螺子を螺合させ、当該締付部材により、当該被締付部材の締付け及び締付け解除を行う締結装置を改良することを課題とするものであり、雄螺子と雌螺子との螺合部における潤滑性を向上すると共に、潤滑剤の漏れを防止し、前記被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を簡単に所定位置に配設することが可能な締結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明は、雄螺子が形成されると共に、該雄螺子の両側における外径が異なる被締付部材と、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材と、を備え、前記被締付部材の外周部に前記締付部材を装着して前記雄螺子と雌螺子を螺合させ、該締付部材により当該被締付部材の締付け及び締付け解除を行う締結装置であって、前記雄螺子と雌螺子との螺合部に充填された潤滑剤と、前記螺合部の両側に配設され、前記潤滑剤を密封するシール部材と、前記締付部材に設けられ、前記被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を収容する収容部と、前記締付部材に設けられ、前記締付部材が被締付部材を締付ける方向に移動する際に、前記収容部に収容されたシール部材を当該締付部材の移動方向に向けて押圧して移動可能である押圧部と、を備えてなる締結装置を提供するものである。
【0009】
この構成を備えた締結装置は、雄螺子と雌螺子との螺合部の両側にシール部材を配設したため、当該螺合部に液体の潤滑剤を充填しても、当該潤滑剤が外部に漏れることを防止することができる。したがって、固体よりも潤滑性の高い液体の潤滑剤を使用することができ、螺合部の潤滑性を向上することができる。
【0010】
また、前記締付部材が、前記被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を収容する収容部と、当該締付部材が被締付部材を締付ける方向に移動する際に、前記収容部に収容されたシール部材を、当該締付部材の移動方向に向けて押圧して移動可能である押圧部を備えているため、前記締付部材を、前記被締付部材が締付けられる方向に移動するという簡単な操作だけで、前記収容部に収容されているシール部材(被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材)を簡単に所定位置に配設することができる。
【0011】
そしてまた、本発明にかかる締結装置は、前記被締付部材の前記雄螺子を挟んで外径が小さい側の外周面に、前記締付部材が被締付部材を締付ける方向に移動する際に、前記収容部に収容されたシール部材を、当該締付部材の移動方向に誘導可能であるガイド部を形成した構成を備えることもできる。この構成を備えることで、前記収容部に収容されているシール部材は、ガイド部材に沿って移動することができるため、このシール部材をさらに簡単に所定位置に配設することができる。
【0012】
そしてまた、本発明にかかる締結装置は、前記両シール部材が、前記被締付部材と、前記締付け部材とで画定されるシール装着部に装着されて位置決めされる構成を備えていてもよい。このように構成することで、両シール部材を所定位置に固定するために、シール押さえ等の余計な部材を使用する必要がないため、締結装置の構造が複雑になることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる締結装置は、雄螺子と雌螺子との螺合部の両側にシール部材を配設し、この螺合部に潤滑剤が容積一定に充填されてなるため、当該潤滑剤が外部に漏れることを防止することができる。また、前記締付部材が、前記被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を収容する収容部と、この収容部に収容されたシール部材を、当該締付部材の移動方向に向けて押圧して移動可能である押圧部を備えているため、前記締付部材を、前記被締付部材が締付けられる方向に移動するだけで、前記収容部に収容されているシール部材を簡単に所定位置に配設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかる締結装置について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0015】
図1は、本発明にかかる締結装置の斜視図であり、一部を断面にして示す図、図2〜図11は、図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図、図12は、図1に示す締結装置のホルダ本体に対し締付ナットを締付けた際の潤滑剤の状態を模式的に示す断面図、図13は、図1に示す締結装置のホルダ本体に対し締付ナットを緩めた際の潤滑剤の状態を模式的に示す断面図である。
【0016】
なお、本実施の形態では、雄螺子が形成されると共に、当該雄螺子の両側における外径が異なる被締付部材としてホルダ本体を使用し、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材として締付ナットを使用した場合について説明する。また、本実施の形態では、締付ナットがホルダ本体を締付けるように移動する方向を「基端側」とし、締付ナットがホルダ本体の締付けを解除する(緩める)ように移動する方向を「先端側」として説明する。
【0017】
図1〜図11に示すように、本実施の形態にかかる締結装置1は、ホルダ本体10と、ホルダ本体10の外周部に装着されてホルダ本体10の締付け及び締付け解除を行う締付ナット30と、ホルダ本体10の内側に形成されたテーパ孔14に装着されるコレット50と、コレット50をホルダ本体10に装着するための装着ナット70と、を備えて構成されている。
【0018】
ホルダ本体10は、軸方向の略中央部に設けられたフランジ部11と、フランジ部11を挟んで先端側に形成され、工具100のシャンク部101(図9及び図10参照)を把握する工具把握部12と、フランジ部11を挟んで基端側に形成されたシャンク部13とを備えて構成されている。
【0019】
工具把握部12の略中央部には、先端側から基端側に向けて直径が徐々に小さくなるテーパ孔14が形成されており、このテーパ孔14にコレット50が挿入される。工具把握部12の軸線方向略中央部の外周面には、後に詳述する締付ナット30の内周面に形成された雌螺子31に螺合する雄螺子15が形成されている。また、この工具把握部12は、雄螺子15の先端側の直径が、雄螺子15の基端側の直径よりも徐々に大きくなるように構成されている。この形状により、工具把握部12は、後に詳述するが、締付ナット30が基端側に移動することで、締付ナット30に締付けられて縮径し、締付ナット30が先端側に移動することで、この締付けが解除されて前記縮径が復元されることになる。
【0020】
また、工具把握部12の雄螺子15を挟んだ両側には、シール部材としてのOリング16及び17を収容する溝18及び19が各々形成されている。先端側に形成された溝19は、基端側に形成された溝18よりも大きく形成されており、Oリング16よりも容積の大きいOリング17が収納可能となっている。そして、これら各々の溝18及び19は、後に詳述する締付ナット30の内周壁と共にシール装着部22及び23をそれぞれ形成する。
【0021】
さらに、この工具把握部12の溝19よりも先端側には、先端に行くにしたがって直径が徐々に小さくなるよう傾斜した傾斜面からなるガイド部20が形成されている。このガイド部20は、後に詳述するが、締付ナット30が、工具ホルダ10の基端側に移動する(ホルダ本体10を締付ける)際に、Oリング17を基端側に誘導する役割を担っている。また、工具把握部12の最先端側には、後に詳述するスナップリング29を係止する係止部21が形成されている。
【0022】
締付ナット30は、直径が大きい第1の円筒部32と、第1の円筒部32の先端側に連続形成され、第1の円筒部32の内径と略同一の内径を備えた第2の円筒部33を備えて構成されている。第1の円筒部32の内周面には、ホルダ本体10の雄螺子15に螺合する雌螺子31が形成されている。この雌螺子31と雄螺子15との間、すなわち、Oリング16とOリング17との間には、潤滑剤24が充填されており、この潤滑剤24は、これらのOリング16及び17によって密封されている。なお、潤滑剤24は、雌螺子31と雄螺子15が螺合する際に生じる摩擦を低減するものであり、液状である。
【0023】
また、第1の円筒部32の先端側と雌螺子31との間には、Oリング17を収容可能な収容部34が形成されている。この収容部34は、先端側の側壁が、Oリング17を基端側に向けて押圧する押圧部37となっている。
【0024】
第2の円筒部33の外周面には、後に詳述する装着ナット70に形成された雌螺子71に螺合する雄螺子35が形成されている。この第2の円筒部33の先端は、基端側よりも内径が大きくなっており、この構成により段差部38が形成されている。この段差部38と、ホルダ本体10に形成された係止部21とにより形成される空間には、スナップリング29が配設されている。そして、締付ナット30が、先端側に移動した際に、段差部38がスナップリング29に当接して、締付ナット30がこれ以上先端側に移動しないようにしている。
【0025】
装着ナット70は、環状部材74と、環状部材74の外周面に装着されたナット本体75を備えて構成されている。環状部材74は、その内周面に、コレット50の傾斜面53に相補した傾斜面76と、コレット50の環状溝54に係合される係合凸部72が形成されている。
【0026】
ナット本体75は、環状部材74に対し、ボール77を介して回転可能に装着されている。このナット本体75の基端側の内周面には、締付ナット30の先端側に形成された雄螺子35に螺合する雌螺子71が形成されている。
【0027】
次に、本実施の形態にかかる締結装置1の具体的動作について説明する。
【0028】
先ず、ホルダ本体10に締付ナット30を装着するには、図2に示すように、溝18にOリング16が嵌着されたホルダ本体10の溝18から溝19の間の領域に潤滑剤24を塗布する。次に、図3に示すように、締付ナット30の収容部34にOリング17を装着させた後、締付ナット30をホルダ本体10の先端側から挿入する。この動作によって、Oリング17は、ホルダ本体10の係止部21とガイド部20との間に収容される。
【0029】
次に、図4に示すように、締付ナット30を回転させて、締付ナット30の雌螺子31を、ホルダ本体10の雄螺子15に螺合させる。この動作により、締付ナット30は、基端側に移動する。この時、Oリング17は、締付ナット30の押圧部37によって基端側に押圧され、ガイド部20に沿って基端側に移動し始める。さらに締付ナット30を回転させると、Oリング17は、ホルダ本体10と、締付ナット30の収容部34との間で潰されながら(変形しながら)締付ナット30と共に基端側に移動し、締付ナット30が奥に到達すると、図5に示すように、溝19内に収容される。このように、Oリング17は、締付ナット30が基端側に移動するように締付ナット30を回転するという簡単な操作だけで、所定位置(溝19内)に装着される。以上の動作によって、Oリング16及び17は、シール装着部22及び23に各々配設される。
【0030】
次に、図6に示すように、ホルダ本体10の係止部21とガイド部20との間に、スナップリング29を配設する。その後、図7に示すように、締付ナット30を前記とは反対方向に回転させ、締付ナット30の段差部38がスナップリング29に突き当たって停止するまで締付ナット30を先端側に移動させる。なお、Oリング17は、溝19内に嵌着されているため、締付ナット30が先端側に移動する際に、締付ナット30と共に移動することがない。このように、Oリング16及び17は、溝18及び19によって、各々位置決めがなされている。
【0031】
次に、図8に示すように、コレット50の環状溝54に、装着ナット70の係合凸部72を係合させた後、コレット50を、ホルダ本体10のテーパ孔14内に挿入させる。次いで、装着ナット70のナット本体75を回転させ、装着ナット70の雌螺子71を締付ナット30の雄螺子35に螺合させる。このようにして、装着ナット70は、締付ナット30に接合される。
【0032】
次に、図9に示すように、コレット50の工具挿入孔51に、工具100のシャンク部101を挿入した後、レンチ200によって、締付ナット30を回転させ、締付ナット30を再び基端側に移動させる。この時、装着ナット70も締付ナット30と共に基端側に移動する。この動作により、コレット50は、工具把握部12に押し込まれるため、テーパ孔14に伴って縮径し、工具100のシャンク部101を確実に把持することになる。
【0033】
なお、締付ナット30が基端側に移動する際は、工具把握部12を締付ける際は、図12に示すように、潤滑剤24が、雄螺子15と雌螺子31の締付け時の作用面に移動し、締付けに理想的な潤滑状態となる。したがって、この締付ナット30の回転時に生じる雄螺子15と雌螺子31の摩擦力は、潤滑剤24によって大幅に低減される。また、Oリング16とOリング17によって密封された領域内は、体積変化がないので、圧力の変化が生じることもない。したがって、工具把握部12の雄螺子15の先端側の直径が、雄螺子15の基端側の直径よりも小さくても、油圧効果が生じることもなく、潤滑剤24が漏れ出すことも確実に防止することができる。
【0034】
一方、コレット50から工具100を取外す際は、図10に示すように、レンチ200によって、締付ナット30を前記とは反対方向に回転させ、締付ナット30の段差部38がスナップリング29に当接するまで、締付ナット30を先端側に移動させる。この動作により、コレット50の縮径が元に戻り、工具100のシャンク部101を解放するため、工具100をコレット50から取外すことができる。
【0035】
なお、締付ナット30が先端側に移動する際は、工具把握部12の締付けを解除する(緩める)際は、図13に示すように、潤滑剤24が、雄螺子15と雌螺子31の締付け時の作用面の反端側に移動し、この場合も理想的な潤滑状態となる。したがって、この締付ナット30の回転時に生じる雄螺子15と雌螺子31の摩擦力は、潤滑剤24によって大幅に低減される。この時も前記と同様に、Oリング16とOリング17によって密封された領域内に圧力の変化が生じることもないため、油圧効果が生じることもなく、潤滑剤24が漏れ出すことも確実に防止することができる。
【0036】
次に、図11に示すように、レンチ200によって、装着ナット70のナット本体75を回転させる。この時、締付ナット30は、段差部38がスナップリング29に当接しているため、これ以上先端側に移動しない。したがって、装着ナット70のみが先端側に移動し、装着ナット70の雌螺子71と、締付ナット30の雄螺子35との螺合が解除される。このようにして、装着ナット70及びコレット50をホルダ本体10から取外す。その後、装着ナット70のコレット50の係合凸部72をコレット50の環状溝54から抜き取る。
【0037】
なお、本実施の形態では、被締付部材としてホルダ本体10を使用し、締付部材として締付ナット30を使用した場合について説明したが、これに限らず、本発明にかかる被締付部材は、雄螺子が形成されると共に、該雄螺子の両側における外径が異なる構成を備えていればよく、また、締付部材は、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された構成を備えていればよい。
【0038】
また、本実施の形態では、コレット50が装着されるタイプのホルダ本体10について説明したが、これに限らず、ホルダ本体は、必ずしもコレットが装着されるタイプのものでなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態にかかる締結装置の斜視図であり、一部を断面にして示す図である。
【図2】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図3】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図4】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図5】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図6】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図7】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図8】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図9】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図10】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図11】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図12】図1に示す締結装置のホルダ本体に対し締付ナットを締付けた際の潤滑剤の状態を模式的に示す断面図である。
【図13】図1に示す締結装置のホルダ本体に対し締付ナットを緩めた際の潤滑剤の状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 締結装置
10 ホルダ本体
12 工具把握部
15、35 雄螺子
16、17 Oリング
18、19 溝
20 ガイド部
21 係止部
22、23 シール装着部
24 潤滑剤
29 スナップリング
30 締付ナット
31、71 雌螺子
34 収容部
37 押圧部
50 コレット
70 装着ナット
100 工具
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄螺子が形成されると共に、該雄螺子の両側における外径が異なる被締付部材に、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材を装着して、前記雄螺子と雌螺子を螺合させ、当該締付部材により、当該被締付部材の締付け及び締付け解除を行う締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雄螺子が形成された被締付部材に、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材を装着して、前記雄螺子と雌螺子を螺合させ、当該締付部材により、当該被締付部材の締付け及び締付け解除を行う締結装置が種々利用されている。
【0003】
例えば、先端に雄螺子が形成された工具保持体(被締付部材)と、この雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締結体(締付部材)を備え、工具保持体に内装されたコレットの工具挿入孔に工具を挿入し、当該工具保持体に締結体を装着して、前記雄螺子と雌螺子を螺合させながら、当該締結体を回転させることによって、工具保持体を締付けることで、前記コレットの径を拡縮させて前記工具を挟持する、または挟持を解除するチャック装置がある。このチャック装置では、前記工具保持体と締付体との螺合部分の摩擦を低減するため、この部分に摩擦係数が可及的に小さいコーティングを施している。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そしてまた、ボールナットの内部に潤滑グリースを封入すると共に、この潤滑グリースの基油と同種または相互作用により潤滑性低下を生じない潤滑油を成分として含有する固形状の潤滑組成物でシール部材を形成し、これをボールナットの両端部に装着し、その内周を螺子軸の螺子溝面に摺接させたボール螺子もある。(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−1104号公報
【特許文献2】特開平11−166608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたチャック装置では、工具保持体と締付体との螺合部分に潤滑油を使用する代わりに、摩擦係数が可及的に小さいコーティングを施しているが、このコーティングにより形成されるコーティング層は固体であり、液体ではない。ここで、摩擦を低減するための潤滑剤は、固体の状態よりも液体の状態である方が、潤滑性が高い(すなわち、摩擦がより低減される)ことが知られている。したがって、特許文献1に記載されたチャック装置は、潤滑性をさらに向上させる余地がある。また、仮に、潤滑性をさらに向上するために、前記螺合部分に液体の潤滑剤を適用しようとても、これを密封するための構成を備えていない。さらにまた、前記コーティング層は、固体であるため、摩擦により剥がれると元に戻らず、潤滑性を維持することができなくなってしまう虞もある。
【0006】
また、特許文献2に記載されたボール螺子は、ボールナットの両端部にシール部材を配設した構成を備えているが、このシール部材は、その外周に弾性部材を嵌めた状態でボールナットのシール装着部に装着され、さらにシール押えでボールナットに固定されており、構造が複雑である。ここで、前記螺子軸として、その一端側の直径が他端側の直径よりも大きくなるように傾斜している略円錐形を備えた部材を用いる場合、ナットが回転する際に、直径が小さい側に充填されている潤滑剤が油圧効果を生じ、潤滑剤の漏れが発生することがある。しかしながら、この特許文献2に記載されている送り螺子は、前記螺子軸の直径が一定であるため、油圧効果に起因して潤滑剤に漏れが生じることが殆どないため、この潤滑剤の漏れを防止するための構成を考慮する必要がなく、また備えていない。また、ここで、雄螺子が形成された部材が略円錐形を備えている場合、直径が小さい側に配設されるシール部材は、直径が大きい側に配設されるシール部材よりも配設が困難であることが知られている。しかしながら、この文献に記載されているボール螺子は、前記螺子軸の直径が一定であるため、直径が小さい側に配設されるシール部材を簡単に所定位置に配設するための構成を考慮する必要がなく、また備えていない。
【0007】
本発明は、雄螺子が形成されると共に、該雄螺子の両側における外径が異なる被締付部材に、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材を装着して、前記雄螺子と雌螺子を螺合させ、当該締付部材により、当該被締付部材の締付け及び締付け解除を行う締結装置を改良することを課題とするものであり、雄螺子と雌螺子との螺合部における潤滑性を向上すると共に、潤滑剤の漏れを防止し、前記被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を簡単に所定位置に配設することが可能な締結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明は、雄螺子が形成されると共に、該雄螺子の両側における外径が異なる被締付部材と、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材と、を備え、前記被締付部材の外周部に前記締付部材を装着して前記雄螺子と雌螺子を螺合させ、該締付部材により当該被締付部材の締付け及び締付け解除を行う締結装置であって、前記雄螺子と雌螺子との螺合部に充填された潤滑剤と、前記螺合部の両側に配設され、前記潤滑剤を密封するシール部材と、前記締付部材に設けられ、前記被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を収容する収容部と、前記締付部材に設けられ、前記締付部材が被締付部材を締付ける方向に移動する際に、前記収容部に収容されたシール部材を当該締付部材の移動方向に向けて押圧して移動可能である押圧部と、を備えてなる締結装置を提供するものである。
【0009】
この構成を備えた締結装置は、雄螺子と雌螺子との螺合部の両側にシール部材を配設したため、当該螺合部に液体の潤滑剤を充填しても、当該潤滑剤が外部に漏れることを防止することができる。したがって、固体よりも潤滑性の高い液体の潤滑剤を使用することができ、螺合部の潤滑性を向上することができる。
【0010】
また、前記締付部材が、前記被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を収容する収容部と、当該締付部材が被締付部材を締付ける方向に移動する際に、前記収容部に収容されたシール部材を、当該締付部材の移動方向に向けて押圧して移動可能である押圧部を備えているため、前記締付部材を、前記被締付部材が締付けられる方向に移動するという簡単な操作だけで、前記収容部に収容されているシール部材(被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材)を簡単に所定位置に配設することができる。
【0011】
そしてまた、本発明にかかる締結装置は、前記被締付部材の前記雄螺子を挟んで外径が小さい側の外周面に、前記締付部材が被締付部材を締付ける方向に移動する際に、前記収容部に収容されたシール部材を、当該締付部材の移動方向に誘導可能であるガイド部を形成した構成を備えることもできる。この構成を備えることで、前記収容部に収容されているシール部材は、ガイド部材に沿って移動することができるため、このシール部材をさらに簡単に所定位置に配設することができる。
【0012】
そしてまた、本発明にかかる締結装置は、前記両シール部材が、前記被締付部材と、前記締付け部材とで画定されるシール装着部に装着されて位置決めされる構成を備えていてもよい。このように構成することで、両シール部材を所定位置に固定するために、シール押さえ等の余計な部材を使用する必要がないため、締結装置の構造が複雑になることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる締結装置は、雄螺子と雌螺子との螺合部の両側にシール部材を配設し、この螺合部に潤滑剤が容積一定に充填されてなるため、当該潤滑剤が外部に漏れることを防止することができる。また、前記締付部材が、前記被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を収容する収容部と、この収容部に収容されたシール部材を、当該締付部材の移動方向に向けて押圧して移動可能である押圧部を備えているため、前記締付部材を、前記被締付部材が締付けられる方向に移動するだけで、前記収容部に収容されているシール部材を簡単に所定位置に配設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかる締結装置について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0015】
図1は、本発明にかかる締結装置の斜視図であり、一部を断面にして示す図、図2〜図11は、図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図、図12は、図1に示す締結装置のホルダ本体に対し締付ナットを締付けた際の潤滑剤の状態を模式的に示す断面図、図13は、図1に示す締結装置のホルダ本体に対し締付ナットを緩めた際の潤滑剤の状態を模式的に示す断面図である。
【0016】
なお、本実施の形態では、雄螺子が形成されると共に、当該雄螺子の両側における外径が異なる被締付部材としてホルダ本体を使用し、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材として締付ナットを使用した場合について説明する。また、本実施の形態では、締付ナットがホルダ本体を締付けるように移動する方向を「基端側」とし、締付ナットがホルダ本体の締付けを解除する(緩める)ように移動する方向を「先端側」として説明する。
【0017】
図1〜図11に示すように、本実施の形態にかかる締結装置1は、ホルダ本体10と、ホルダ本体10の外周部に装着されてホルダ本体10の締付け及び締付け解除を行う締付ナット30と、ホルダ本体10の内側に形成されたテーパ孔14に装着されるコレット50と、コレット50をホルダ本体10に装着するための装着ナット70と、を備えて構成されている。
【0018】
ホルダ本体10は、軸方向の略中央部に設けられたフランジ部11と、フランジ部11を挟んで先端側に形成され、工具100のシャンク部101(図9及び図10参照)を把握する工具把握部12と、フランジ部11を挟んで基端側に形成されたシャンク部13とを備えて構成されている。
【0019】
工具把握部12の略中央部には、先端側から基端側に向けて直径が徐々に小さくなるテーパ孔14が形成されており、このテーパ孔14にコレット50が挿入される。工具把握部12の軸線方向略中央部の外周面には、後に詳述する締付ナット30の内周面に形成された雌螺子31に螺合する雄螺子15が形成されている。また、この工具把握部12は、雄螺子15の先端側の直径が、雄螺子15の基端側の直径よりも徐々に大きくなるように構成されている。この形状により、工具把握部12は、後に詳述するが、締付ナット30が基端側に移動することで、締付ナット30に締付けられて縮径し、締付ナット30が先端側に移動することで、この締付けが解除されて前記縮径が復元されることになる。
【0020】
また、工具把握部12の雄螺子15を挟んだ両側には、シール部材としてのOリング16及び17を収容する溝18及び19が各々形成されている。先端側に形成された溝19は、基端側に形成された溝18よりも大きく形成されており、Oリング16よりも容積の大きいOリング17が収納可能となっている。そして、これら各々の溝18及び19は、後に詳述する締付ナット30の内周壁と共にシール装着部22及び23をそれぞれ形成する。
【0021】
さらに、この工具把握部12の溝19よりも先端側には、先端に行くにしたがって直径が徐々に小さくなるよう傾斜した傾斜面からなるガイド部20が形成されている。このガイド部20は、後に詳述するが、締付ナット30が、工具ホルダ10の基端側に移動する(ホルダ本体10を締付ける)際に、Oリング17を基端側に誘導する役割を担っている。また、工具把握部12の最先端側には、後に詳述するスナップリング29を係止する係止部21が形成されている。
【0022】
締付ナット30は、直径が大きい第1の円筒部32と、第1の円筒部32の先端側に連続形成され、第1の円筒部32の内径と略同一の内径を備えた第2の円筒部33を備えて構成されている。第1の円筒部32の内周面には、ホルダ本体10の雄螺子15に螺合する雌螺子31が形成されている。この雌螺子31と雄螺子15との間、すなわち、Oリング16とOリング17との間には、潤滑剤24が充填されており、この潤滑剤24は、これらのOリング16及び17によって密封されている。なお、潤滑剤24は、雌螺子31と雄螺子15が螺合する際に生じる摩擦を低減するものであり、液状である。
【0023】
また、第1の円筒部32の先端側と雌螺子31との間には、Oリング17を収容可能な収容部34が形成されている。この収容部34は、先端側の側壁が、Oリング17を基端側に向けて押圧する押圧部37となっている。
【0024】
第2の円筒部33の外周面には、後に詳述する装着ナット70に形成された雌螺子71に螺合する雄螺子35が形成されている。この第2の円筒部33の先端は、基端側よりも内径が大きくなっており、この構成により段差部38が形成されている。この段差部38と、ホルダ本体10に形成された係止部21とにより形成される空間には、スナップリング29が配設されている。そして、締付ナット30が、先端側に移動した際に、段差部38がスナップリング29に当接して、締付ナット30がこれ以上先端側に移動しないようにしている。
【0025】
装着ナット70は、環状部材74と、環状部材74の外周面に装着されたナット本体75を備えて構成されている。環状部材74は、その内周面に、コレット50の傾斜面53に相補した傾斜面76と、コレット50の環状溝54に係合される係合凸部72が形成されている。
【0026】
ナット本体75は、環状部材74に対し、ボール77を介して回転可能に装着されている。このナット本体75の基端側の内周面には、締付ナット30の先端側に形成された雄螺子35に螺合する雌螺子71が形成されている。
【0027】
次に、本実施の形態にかかる締結装置1の具体的動作について説明する。
【0028】
先ず、ホルダ本体10に締付ナット30を装着するには、図2に示すように、溝18にOリング16が嵌着されたホルダ本体10の溝18から溝19の間の領域に潤滑剤24を塗布する。次に、図3に示すように、締付ナット30の収容部34にOリング17を装着させた後、締付ナット30をホルダ本体10の先端側から挿入する。この動作によって、Oリング17は、ホルダ本体10の係止部21とガイド部20との間に収容される。
【0029】
次に、図4に示すように、締付ナット30を回転させて、締付ナット30の雌螺子31を、ホルダ本体10の雄螺子15に螺合させる。この動作により、締付ナット30は、基端側に移動する。この時、Oリング17は、締付ナット30の押圧部37によって基端側に押圧され、ガイド部20に沿って基端側に移動し始める。さらに締付ナット30を回転させると、Oリング17は、ホルダ本体10と、締付ナット30の収容部34との間で潰されながら(変形しながら)締付ナット30と共に基端側に移動し、締付ナット30が奥に到達すると、図5に示すように、溝19内に収容される。このように、Oリング17は、締付ナット30が基端側に移動するように締付ナット30を回転するという簡単な操作だけで、所定位置(溝19内)に装着される。以上の動作によって、Oリング16及び17は、シール装着部22及び23に各々配設される。
【0030】
次に、図6に示すように、ホルダ本体10の係止部21とガイド部20との間に、スナップリング29を配設する。その後、図7に示すように、締付ナット30を前記とは反対方向に回転させ、締付ナット30の段差部38がスナップリング29に突き当たって停止するまで締付ナット30を先端側に移動させる。なお、Oリング17は、溝19内に嵌着されているため、締付ナット30が先端側に移動する際に、締付ナット30と共に移動することがない。このように、Oリング16及び17は、溝18及び19によって、各々位置決めがなされている。
【0031】
次に、図8に示すように、コレット50の環状溝54に、装着ナット70の係合凸部72を係合させた後、コレット50を、ホルダ本体10のテーパ孔14内に挿入させる。次いで、装着ナット70のナット本体75を回転させ、装着ナット70の雌螺子71を締付ナット30の雄螺子35に螺合させる。このようにして、装着ナット70は、締付ナット30に接合される。
【0032】
次に、図9に示すように、コレット50の工具挿入孔51に、工具100のシャンク部101を挿入した後、レンチ200によって、締付ナット30を回転させ、締付ナット30を再び基端側に移動させる。この時、装着ナット70も締付ナット30と共に基端側に移動する。この動作により、コレット50は、工具把握部12に押し込まれるため、テーパ孔14に伴って縮径し、工具100のシャンク部101を確実に把持することになる。
【0033】
なお、締付ナット30が基端側に移動する際は、工具把握部12を締付ける際は、図12に示すように、潤滑剤24が、雄螺子15と雌螺子31の締付け時の作用面に移動し、締付けに理想的な潤滑状態となる。したがって、この締付ナット30の回転時に生じる雄螺子15と雌螺子31の摩擦力は、潤滑剤24によって大幅に低減される。また、Oリング16とOリング17によって密封された領域内は、体積変化がないので、圧力の変化が生じることもない。したがって、工具把握部12の雄螺子15の先端側の直径が、雄螺子15の基端側の直径よりも小さくても、油圧効果が生じることもなく、潤滑剤24が漏れ出すことも確実に防止することができる。
【0034】
一方、コレット50から工具100を取外す際は、図10に示すように、レンチ200によって、締付ナット30を前記とは反対方向に回転させ、締付ナット30の段差部38がスナップリング29に当接するまで、締付ナット30を先端側に移動させる。この動作により、コレット50の縮径が元に戻り、工具100のシャンク部101を解放するため、工具100をコレット50から取外すことができる。
【0035】
なお、締付ナット30が先端側に移動する際は、工具把握部12の締付けを解除する(緩める)際は、図13に示すように、潤滑剤24が、雄螺子15と雌螺子31の締付け時の作用面の反端側に移動し、この場合も理想的な潤滑状態となる。したがって、この締付ナット30の回転時に生じる雄螺子15と雌螺子31の摩擦力は、潤滑剤24によって大幅に低減される。この時も前記と同様に、Oリング16とOリング17によって密封された領域内に圧力の変化が生じることもないため、油圧効果が生じることもなく、潤滑剤24が漏れ出すことも確実に防止することができる。
【0036】
次に、図11に示すように、レンチ200によって、装着ナット70のナット本体75を回転させる。この時、締付ナット30は、段差部38がスナップリング29に当接しているため、これ以上先端側に移動しない。したがって、装着ナット70のみが先端側に移動し、装着ナット70の雌螺子71と、締付ナット30の雄螺子35との螺合が解除される。このようにして、装着ナット70及びコレット50をホルダ本体10から取外す。その後、装着ナット70のコレット50の係合凸部72をコレット50の環状溝54から抜き取る。
【0037】
なお、本実施の形態では、被締付部材としてホルダ本体10を使用し、締付部材として締付ナット30を使用した場合について説明したが、これに限らず、本発明にかかる被締付部材は、雄螺子が形成されると共に、該雄螺子の両側における外径が異なる構成を備えていればよく、また、締付部材は、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された構成を備えていればよい。
【0038】
また、本実施の形態では、コレット50が装着されるタイプのホルダ本体10について説明したが、これに限らず、ホルダ本体は、必ずしもコレットが装着されるタイプのものでなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態にかかる締結装置の斜視図であり、一部を断面にして示す図である。
【図2】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図3】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図4】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図5】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図6】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図7】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図8】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図9】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図10】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図11】図1に示す締結装置の一部を模式的に示す断面図であり、締結装置の操作手順の一部を概略的に示す図である。
【図12】図1に示す締結装置のホルダ本体に対し締付ナットを締付けた際の潤滑剤の状態を模式的に示す断面図である。
【図13】図1に示す締結装置のホルダ本体に対し締付ナットを緩めた際の潤滑剤の状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 締結装置
10 ホルダ本体
12 工具把握部
15、35 雄螺子
16、17 Oリング
18、19 溝
20 ガイド部
21 係止部
22、23 シール装着部
24 潤滑剤
29 スナップリング
30 締付ナット
31、71 雌螺子
34 収容部
37 押圧部
50 コレット
70 装着ナット
100 工具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄螺子が形成されると共に、該雄螺子の両側における外径が異なる被締付部材と、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材と、を備え、前記被締付部材の外周部に前記締付部材を装着して前記雄螺子と雌螺子を螺合させ、当該締付部材により当該被締付部材の締付け及び締付け解除を行う締結装置であって、
前記雄螺子と雌螺子との螺合部に充填された潤滑剤と、
前記螺合部の両側に配設され、前記潤滑剤を密封するシール部材と、
を備え、
前記両シール部材が当接する締付部材の雌螺子の両側の内径が略同一である締結装置。
【請求項2】
前記締付部材に設けられ、前記被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を収容する収容部と、
前記締付部材に設けられ、前記締付部材が被締付部材を締付ける方向に移動する際に、前記収容部に収容されたシール部材を、当該締付部材の移動方向に向けて押圧して移動可能である押圧部と、
を備えてなる請求項1記載の締結装置。
【請求項3】
前記被締付部材の前記雄螺子を挟んで外径が小さい側の外周面に、前記締付部材が被締付部材を締付ける方向に移動する際に、前記収容部に収容されたシール部材を、当該締付部材の移動方向に誘導可能であるガイド部を形成した請求項1または請求項2に記載の締結装置。
【請求項1】
雄螺子が形成されると共に、該雄螺子の両側における外径が異なる被締付部材と、前記雄螺子に螺合可能な雌螺子が形成された締付部材と、を備え、前記被締付部材の外周部に前記締付部材を装着して前記雄螺子と雌螺子を螺合させ、当該締付部材により当該被締付部材の締付け及び締付け解除を行う締結装置であって、
前記雄螺子と雌螺子との螺合部に充填された潤滑剤と、
前記螺合部の両側に配設され、前記潤滑剤を密封するシール部材と、
を備え、
前記両シール部材が当接する締付部材の雌螺子の両側の内径が略同一である締結装置。
【請求項2】
前記締付部材に設けられ、前記被締付部材の外径が小さい側に配設されるシール部材を収容する収容部と、
前記締付部材に設けられ、前記締付部材が被締付部材を締付ける方向に移動する際に、前記収容部に収容されたシール部材を、当該締付部材の移動方向に向けて押圧して移動可能である押圧部と、
を備えてなる請求項1記載の締結装置。
【請求項3】
前記被締付部材の前記雄螺子を挟んで外径が小さい側の外周面に、前記締付部材が被締付部材を締付ける方向に移動する際に、前記収容部に収容されたシール部材を、当該締付部材の移動方向に誘導可能であるガイド部を形成した請求項1または請求項2に記載の締結装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−95612(P2006−95612A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281902(P2004−281902)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000205834)大昭和精機株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000205834)大昭和精機株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
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