説明

編隊を組む宇宙船グループ内の一宇宙船用の、2周波数信号を解析することによる相対位置制御装置

編隊を組んで移動する宇宙船のグループの、1つの宇宙船(S1)用の制御装置(D)は、
i)宇宙船(S1)の面に設置され、選ばれた周波数ギャップにより隔てられた第一と第二の周波数を示す、第一と第二のRF信号を発信及び/又は受信可能な、3つのアンテナ(A1〜A3)から成る集合体と、
ii)アンテナにより受信され、そして他の宇宙船に由来する第一と第二の信号に基づき、第一の周波数及び周波数ギャップに対応する、アンテナ(A1〜A3)間の、第一と第二の経路長の差を決定する任務を負う第一の測定手段(M1)と、
iii)宇宙船(S1)により経験された回転の測定値を届ける任務を負う、第二の測定手段(M2)と、そして
iv)
a)第一と第二の初期経路長の差に基づき、受信した信号の伝送方向を粗く推算し、
b)前記宇宙船に結び付けられた座標系の選ばれた軸が、粗い伝送方向に対して揃えられるように、宇宙船(S1)の位置調整を指令し、
c)選ばれた軸を中心とした宇宙船(S1)の回転駆動を指令し、
d)回転測定、及びこの回転により引き起こされる第一の経路長の差の変化測定に基づき、他の宇宙船(Si’)により発信された信号の伝送方向を正確に推算する任務を負う、処理手段(MT)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は任務を集団的に実行するために、編隊を組んで移動するように意図された例えば人工衛星のような宇宙船のグループに関し、より正確にはこれらの宇宙船の互いに対する相対位置の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者に知られているように、或る宇宙船のグループは任務を集団的に実行するために、互いに対して一定の精度で位置調整されなければならない。この位置調整は建前として任務の幾つかの局面−発射後の展開、巡航、及びその任務目的を実行するための該集団の目的の保持−の間に起こる。位置調整はグループの部分的又は全体的な再配置を行なうため、又は少なくとも1つの宇宙船の技術的故障(又は設備故障)を緩和するためにも介入させることができる。
【0003】
相対GPSタイプの技術による位置調整は、該任務の高度がGPS(「全地球測位システム(Global Positioning System)」)集団の高度に対して余りに高すぎるか、あるいは追加的又は独立した位置調整手段が必要とされるために、必ずしもこのタイプの任務には適さない。
【0004】
そのような位置調整を可能にするため、少なくとも、第一に宇宙船の様々な方向の面に設置され、発信/受信の無線周波数信号(RF)を引き受ける、受信アンテナで必要に応じて補完される発信/受信アンテナと、第二に複数のアンテナの間で受信された信号の経路長の差を算定する任務を負う、特に第一の測定手段を含む「RFセンサ」と、そして第三に経路長の差に基づき、該グループの他の宇宙船により発信された信号の(一般に「視軸」と呼ばれる)伝送方向を推算する任務を負う処理手段とを備えた制御装置を、宇宙船に装備することが提案されている。
【0005】
そのような制御装置は、アンテナにより受信された信号、及び該グループの他の宇宙船により発信された補助信号に基づき、該グループの他の宇宙船の1つからそれらの宇宙船を隔てている各距離を推算する任務を負う、第二の測定装置を含むことができる。この場合、推算された距離及び推算された視軸に基づき、該処理手段は選ばれた座標系に関して該グループの宇宙船の相対位置を決定できる。
【0006】
相対位置のそのような決定は、次に該任務により必要とされる幾何学的配置の中へ複数の宇宙船を導き、そして保持するように該グループの宇宙船を制御し、そして宇宙船間の衝突の危険性が検出された場合に、あらゆる回避操作を決定することを可能にする。
【0007】
相対位置のセンチメートル級の精度、又はセンチメートル未満の精度を得ることは、搬送波の位相の測定に対する作業を行なうことを必要とする。当業者は通常、波長の一部分(典型的には妥当な多経路を有する環境において、波長の5%)に等しい精度を有する位相の測定法を知っている。しかしながら、位相測定は2π以内であることが知られているが、それらは不明瞭であり、この不明瞭さを取り除くには困難が存在する。
【0008】
超短波(SHF(センチ波)又はEHF(ミリ波))を有する信号の使用は広い周波数帯域を生じ、これは搬送波走査技術又は多重搬送波技術を用いて、不明瞭さの除去を容易にし得る。自由空間における信号の減衰は、その周波数の2乗に比例し、超短波の信号が用いられるとき、大きな発信出力又は指向性のアンテナが必要であり、それによってこれら超短波の使用領域を制限する。該グループの宇宙船の初期位置が大きく傾いた視軸に対応するとき、事実、それらの正確な相対位置を決定することは可能でない。
【0009】
機上/地上及び機上/機上の空間リンク(2.0GHz〜2.2GHz)に対し、S帯域において割り当てられるような低周波数の使用は、全方向性アンテナと低い発信出力(数10kmの宇宙船間距離に対して1W未満)を用いることを可能にする。不明瞭性の除去を容易にするために、この帯域内で約100MHz離れた2つの周波数を使用出来る。:これら2つの周波数から生じる位相測定は、次にその波長がより長い仮想搬送波における位相測定を得るために組み合わされる。可能な組合せは、2つの周波数のうなり周波数に関連する位相測定を得るために、2つの周波数測定値を引き算することにある。
【0010】
これは約15cmの実波長から約3mの仮想波長まで変化することを可能にする。アンテナ間を隔てる距離が例えば1mに等しい場合、経路長の差は必然的に−1mと1mの間にある。約3mの波長の使用は、その時この経路長の差の不明瞭でない測定を与える。しかしこの測定は大きな誤差により損なわれる。:2つの周波数の位相における測定誤差が波長の約5%(15cmの5%は7.5mmに等しい)である場合、組み合わされた位相測定における誤差は「長い」波長の10%(3mの10%は30cmに等しい)に達し得る。
【0011】
誤差の主な源は多経路及び、受信用電子装置における伝播の較正の残余である。特に宇宙船の数が2つ迄減少した場合、観察の冗長性が無いため、これらの誤差は非常にゆっくりと進行し、フィルタリングすることが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の目的は、特に次の観察に基づいて状況を改善することである。
2つの周波数の組合せによって得られる経路長の差の測定は不明瞭ではないが、近似値である。しかしながら、経路長の差の時間にわたる変化は不明瞭な大きさではなく、2つの周波数のうちの1つのおかげで、正確な方法で測定されることができ、そして
ホストの宇宙船において観察される経路長の差の変化は、他の宇宙船の横方向の移動又はホストの宇宙船の回転の結果であり得る。そしてこれらは(例えばスタートラッカーのような)姿勢センサを用いて差別化され得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は選ばれた編隊に従って移動するように意図され、そして宇宙船の面上の選ばれた位置に設置されて、無線周波数信号(RF)を発信及び/又は受信出来る、1つの発信/受信アンテナならびに、2つの受信アンテナから成る少なくとも一組の集合体を備えた、宇宙船グループの1つの宇宙船用の制御装置と、そして該集合体のアンテナにより受信された信号に基づいて、該グループの他の宇宙船により発信された信号の伝送方向を推算する任務を負う処理手段とを提案する。
【0014】
この制御装置は、
各集合体の各アンテナが、選ばれた周波数ギャップにより隔てられた第一と第二の選ばれた周波数を示す、第一と第二のRF信号を発信及び/又は受信する任務を負い、
制御装置が一方で、グループの他の宇宙船に由来する、集合体の各アンテナにより受信された第一と第二の信号に基づき、第一又は第二の周波数に、そして周波数ギャップに対応するアンテナ間の、第一と第二の経路長の差を決定する任務を負う第一の測定手段と、他方で、宇宙船により経験された回転の測定値を届ける任務を負う姿勢測定手段とを備え、そして
その処理手段が、
・第一と第二のいわゆる初期経路長の差に基づき、他の宇宙船により発信された信号の伝送方向を粗く推算し、
・宇宙船に結び付けられた座標系の選ばれた軸が、粗く推算された伝送方向に対して実質的に揃えられるように、宇宙船の粗い位置調整を指令し、
・選ばれた軸を中心とした宇宙船の少なくとも1つの回転駆動を指令し、
・姿勢測定手段により届けられる回転測定と、第一の測定手段により行なわれる、この回転の間の第一又は第二の経路長の差の変化測定とに基づき、他の宇宙船により発信された信号の伝送方向を正確に推算する任務を負うことを特徴とする。
【0015】
本発明による装置は別個に、又は組み合わせて得られる別の特徴を含むことができる。とりわけ、
回転駆動を指令する前に、その処理手段が、第一の測定手段により行なわれる、第一と第二の経路長の差の内の1つの変化の(正確な)測定を用いて、ゼロに近い速度における粗い位置調整の安定化を指令する任務を負うことができ、
その処理手段が、第一と第二の経路長の差の内の1つの変化の測定のおかげで、伝送方向の正確な知識を(それに続いて)保持する任務を負うことができ、
その第一の測定手段が、
・他の宇宙船に由来する、集合体の各アンテナにより受信された第一と第二の信号の、第一と第二の位相を決定し、
・第一と第二の位相から、発信/受信アンテナと2つの受信アンテナの各々との間の、第一と第二の位相における差を推定し、
・第一と第二の位相差から、(望ましくはそれ自体がアンテナ間距離の2倍よりも長い波長に対応する)周波数ギャップに対応する第三の位相差を推定し、
・第一と第二の連続する位相差から、及び第三の連続する位相差から、第一又は第二の経路長の差の変化の測定値を推定し、
・第一又は第二の経路長の差の変化の測定値から、第一又は第二の周波数に対応する、第一と第二の経路長の差の不明瞭でない測定値を推定する任務を負い、
それは他の宇宙船に由来する、アンテナの少なくとも1つにより受信された第一及び/又は第二の信号に基づき、それらの宇宙船をグループの他の宇宙船から隔てている距離を推算する任務を負う、第二の測定手段を含むことができる。この目的において、第一及び/又は第二の信号は、一方で擬似的距離測定を得ることを可能にする、擬似ランダムコードにより、そして他方でクロックの偏りを識別し、真の距離測定を得るために、それらの間で少なくともそれら各自の擬似的距離測定が存在する、宇宙船が情報交換することを可能にするデータにより、例えば変調される。擬似ランダムコードを観察することにより得られる距離測定はむしろ不正確であり、その測定ノイズは、(当業者によく知られている)搬送波により該コードを平滑化するための技術によって低減され得る。受信された擬似ランダムコードの観察は、またホストの宇宙船の制御装置が他の宇宙船の制御装置の時間を確かめることを可能にし、それによって該グループの宇宙船間の発信と受信の時期を同期させることを可能にする。
第一及び第二の測定手段が用いられるとき、処理手段(MT)は推算された距離と、正確な推算された伝送方向に基づき、ホストの宇宙船に対する該宇宙船の相対位置を決定する任務を負い、
その処理手段は、距離測定及び/又は伝送方向の測定を、多経路の影響を修正することにより精緻化する任務を負うことが出来る。この修正は、例えば無響室におけるテストによって以前に得られた、宇宙船における多経路の作表されたマッピング・データを持つことを必要にする。作表されたマッピングの使用は、伝送方向が、本発明によってもたらされるような十分な精度で確かめられる場合のみ有効である。
それは少なくとも2つの異なる向きの面において、少なくとも2つのアンテナ集合体を備えることができ、
それはアンテナ集合体が存在しない少なくとも1つの面において、少なくとも1つの補完的な発信/受信アンテナを備えることができ、
該アンテナは、第一と第二の搬送波の形をとる第一と第二の無線周波信号を発信及び/又は受信することができる可能性があり、そのうちの少なくとも一方が、選ばれた擬似ランダムコードにより変調され、
該アンテナは、S、SHF、及びEHF帯域の中から選ばれた周波数帯域に属する、第一と第二の周波数を示す、第一と第二の搬送波を発信及び/又は受信することができる可能性がある。
【0016】
本発明はまた、宇宙船のグループの中で編隊を組んで移動するように意図され、そして上記に示されるタイプの制御装置を装備する宇宙船を提案する。
【0017】
本発明はまた、宇宙船の少なくとも1つが上記に示されるタイプの制御装置を備え、そして他の宇宙船の少なくとも幾つかが、少なくとも1つの選ばれた面上に設置された、少なくとも1つの発信/受信アンテナを備える、選ばれた編隊に従って移動するように意図された一団の宇宙船を提案する。
【0018】
本発明は人工衛星タイプの宇宙船に、それ専用ではないが、特に良く適合している。
【0019】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付図を調べることにより、明らかになるであろう。
【0020】
添付図は本発明を補完するために役立つだけでなく、必要とあればその定義付けにも貢献し得るであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の目的は、衛星の相対位置を確かめるために、(約数mmの視軸の座標精度を有する)正確な視軸と同様に、必要に応じて(約1cmの精度を有する)正確な衛星間距離を、編隊を組んで移動している衛星のグループの1つの衛星に設置された制御装置により決定可能にすることである。該グループの宇宙船の相対位置のこの確認は、又その任務により要求される幾何学的な配置にそれらを導き、保つため、及び宇宙船間の衝突の危険性が検出された場合に、あらゆる回避操作を決定するためにそれらを制御可能にすることができる。
【0022】
以下において、制限されない例として、該グループの宇宙船は宇宙又は地球観察の任務を遂行するように、編隊を組んで飛行している衛星であることが考えられる。
【0023】
しかしながら、本発明はこのタイプの宇宙船には限定されない。それは実際に、選ばれた(必要があれば修正可能な)配置に従って編隊を組んで飛行するように意図された、全ての宇宙船に関する。
【0024】
図1〜3は第一に、本発明が適用可能な宇宙船のグループを示すと見なされる。
【0025】
図1には、編隊を組んで飛行している3つの宇宙船(衛星)Si(i=1〜3)のグループが表わされている。本発明は3つの宇宙船を含むグループに限定されないことに注意することが重要である。それは実際、少なくとも2つの宇宙船を含む限り、あらゆるグループに関する。
【0026】
そのようなグループの中で、宇宙船の少なくとも1つ、ここではS1は本発明による制御装置Dを備え、一方でその他の宇宙船、ここではS2とS3は処理装置DTを備える。勿論、同一グループ内の幾つかの宇宙船が、又は実に全ての宇宙船までもが本発明による制御装置Dを備えることを想定するのは可能である。
【0027】
本発明による制御装置Dは、主アンテナと称される1つの発信/受信アンテナA1と、二次アンテナと称される2つの受信アンテナA2及びA3とから成る、少なくとも1つの集合体を備える。集合体の該3つのアンテナAj(j=1〜3)は、宇宙船S1の面F上の選ばれた位置に設置される。宇宙船S1の面F上のアンテナ集合体の1つの例示的設置は図2に概略的に図解されている。
【0028】
制御装置Dは、同一の宇宙船S1の異なる向きの面上に設置された3つのアンテナAjの、幾つかの集合体を備え得ることに注意するのは重要である。また制御装置Dがその複数の面Fの1つに3つのアンテナAjの少なくとも一組を備え、同様に(図1に例示される制限されない例の場合のように)その他の面の少なくとも一面上に、補足アンテナと称される少なくとも1つの他の発信/受信アンテナA4を備えることもまた想定できる。
【0029】
本発明によれば、各々の主アンテナA1(及び補足アンテナA4)は、選ばれた周波数ギャップf3(ここでf3=f2−f1)により隔てられた、第一と第二の選ばれた周波数f1とf2を示す、第一と第二の無線周波数信号(RF)を発信及び受信することができる。追加として、各二次アンテナA2、A3は第一と第二の無線周波数信号を受信することができる。
【0030】
第一周波数f1と第二周波数f2はS帯域に属することが望ましい。しかし、これは必須ではない。それらは実際に例えばSHF又はEHF帯域のような、S帯域よりも高い周波数の帯域に属してもよい。
【0031】
第一周波数f1と第二周波数f2との間の周波数ギャップf3は、主アンテナA1と二次アンテナA2及びA3の各々との間の距離の2倍よりも長い波長に相当することが望ましい。
【0032】
これ以降、第一周波数f1と第二周波数f2はS帯域に属するものと考える。例えばf1=2.1GHz、f2=2.2GHzであり、従って周波数ギャップf3=100MHzを与える。
【0033】
制御装置Dを持たない宇宙船S2、S3に取り付けられた各処理装置DTは、そのグループの他の宇宙船宛ての、又は他の宇宙船から由来する第一と第二の無線周波数信号を発信及び受信可能な、少なくとも1つの発信/受信アンテナA1を備える。
【0034】
各制御装置Dはまた第一測定モジュールMM及び第二測定モジュールM2を備える。
【0035】
第一測定モジュールMMは、例えば受信した無線周波信号(RF)を処理し、それをデジタル信号に変換する一部のアナログタイプと、信号の取得及びトラッキングと同様に測定値の作成に対してより正確に専念する、一部のデジタルタイプとを備える。
【0036】
図3に概略的に例示されているように、第一測定モジュールMMは例えば、第一と第二のスイッチング・モジュールC1とC2を経由して、(有り得る補足アンテナA4へと同様に)各集合体のアンテナAjに結合される。
【0037】
第一スイッチング・モジュールC1は処理モジュールMTから由来する指示に応じて、1つのアンテナ又は他のアンテナとの結合を確実にする。それに関しては以下で更に述べられるであろう。
【0038】
第二スイッチング・モジュールC2は第一スイッチング・モジュールC1の入力/出力に接続され、一方で測定モジュールMMの入力に、他方で(伝送部分用の)第一と第二の信号を形成するためのモジュールMFの出力に接続される。従ってそれは処理モジュールMTから生じる指示に応じ、信号受信モードあるいは信号発信モードのいずれかにおいて、制御装置Dの動作を可能にする。
【0039】
制御装置Dは、そのローカル時間を表わし、そして搬送波の周波数を発生させるため、及び擬似ランダムコードを順序付けるために用いられるクロックHを備える(それについては以下で更に述べられるであろう)。それはまた少なくともその構成要素の幾つかの動作に必要な、そして特に伝送及び受信の制御に必要なクロック信号も備える。
【0040】
第一測定モジュールMMは、そのグループの他の宇宙船S2、S3から由来する、集合体の各アンテナAjにより受信された第一と第二の信号に基づき、それぞれ第一周波数f1(又は第二周波数f2)と(f1とf2の間の周波数ギャップに等しい)周波数f3に対応する、その主アンテナA1とその二次アンテナA2及びA3との間の経路長の第一の差DM1と第二の差DM2とを決定する任務を負う、少なくとも1つの第一の測定サブモジュールM1を備える。
【0041】
図4には宇宙船S1の面F上に設置された集合体の、主アンテナA1と二次アンテナA2との間の、同じグループの宇宙船S2により発信された信号の経路長の例示的な差DM1が概略的に図解されている。ここで、DM1=d1−d2であり、d1は宇宙船S2を宇宙船S1の主アンテナA1から隔てている距離、そしてd2は宇宙船S2を宇宙船S1の二次アンテナA2から隔てている距離である。
【0042】
第一の測定サブモジュールM1は以下に示すように、周波数f3に対応する第一の経路長の差DM1及び第二の経路長の差DM2の決定を行なうことが望ましい。
【0043】
第一に、第一の測定サブモジュールM1は他の宇宙船S2又はS3から由来する、集合体の各アンテナAjにより受信された第一と第二の信号の、第一と第二の位相をそれぞれ決定する。
【0044】
各信号は少なくとも選ばれた周波数f1又はf2の搬送波の形をとる。2つの周波数f1とf2の内の少なくとも1つは、宇宙船間の距離を測定するため、及びグループの宇宙船間の発信と受信の時期を同期させるために必要な、選ばれた擬似ランダムコードにより変調されることが望ましい。この場合、測定モジュールMMは、擬似ランダムコードの取得と、その解析を可能にするために搬送波からそれを削除する任務を負う。
【0045】
その上、2つの搬送波の内の少なくとも1つは、宇宙船の情報交換を可能にするデータにより変調され得る。この場合、測定モジュールMMは又、それが含む情報データの抽出を可能にするように、搬送波の復調機能を確実にする。
【0046】
搬送波はその後、第一と第二の位相測定値を決定するために、第一の測定サブモジュールM1により、当業者に知られている方法で解析される。第一の測定サブモジュールM1の中で実施される技術によれば、第一の周波数f1と第二の周波数f2の各々に対して、主アンテナA1と二次アンテナA2及びA3の各々との間の、第一と第二の位相差を得るためにその後に減算される、各アンテナAjに対する第一と第二の位相測定値、あるいは直接的に、第一の周波数f1と第二の周波数f2の各々に対して、主アンテナA1と二次アンテナA2及びA3の各々との間の、第一と第二の位相差を得ることが可能である。
【0047】
次に、第一の測定サブモジュールM1は、第一と第二の位相差を周波数f3(又は周波数ギャップ)に対応する第三の位相差から推定する。より正確には、各第三の位相差は、アンテナAjの1つにより受信された第一と第二の信号に基づき、人工的に構成され、周波数ギャップf2−f1に等しい周波数f3を示す、第三の「ダミー」信号に相当する位相である。
【0048】
その後に、第一の測定サブモジュールM1は、一方でそれぞれ第一又は第二の位相差と第三の位相差とに基づき、主アンテナA1と二次アンテナA2間の2つの第一の経路長差DM1を決定し、他方でそれぞれ第一又は第二の位相差と別の第三の位相差とに基づき、主アンテナA1と二次アンテナA3間の2つの第二の経路長差DM2を決定する。
【0049】
第一の測定サブモジュールM1はまた、第一の周波数f1に対応する、その主アンテナA1とその二次アンテナA2及びA3との間の経路長の差の、第一の変化ΔDM1と第二の変化ΔDM2をそれぞれ決定する任務を負う。位相測定が例えば毎秒実施される場合、経路長の差DM1とDM2は毎秒発生し、各変化ΔDM1、ΔDM2は経過した瞬時の間の、対応する経路長の差DM1、DM2の変化を表わす。
【0050】
経路長の差の変化ΔDM1及びΔDM2のこれらの測定値は、不明瞭さのない測定値である。
【0051】
第二の測定モジュールM2は少なくとも、宇宙船S1により経験される各回転を表わす測定値を届けるように、前記宇宙船S1の姿勢を測定する任務を負う。それは無線周波数信号を処理する任務を負う測定モジュールMMと無関係である。それは例えばスタートラッカーであってもよい。
【0052】
各制御装置Dは又、以下に述べる少なくとも四つのタスクを実行する任務を負う処理モジュールMTも備える。
【0053】
処理モジュールMTの第一のタスクは、第一と第二の初期経路長の差DM1とDM2に基づき、他の宇宙船S2により発信される信号の伝送方向(又は視軸)AVを、粗い方法で推算することにある。
【0054】
第一軸(Z、図2及び5を参照)が主アンテナA1と二次アンテナA2に関係し、第二軸(Y)が主アンテナA1と二次アンテナA3に関係し、そして第三軸(X)が他の2軸(Y及びZ)に直角である基準座標系を考えるときに、視軸AVはその座標の2つが直接的に経路長の差DM1とDM2である、(例えば1mに等しい長さの)単位ベクトルである。ベクトルAVはノルムが定義されているため、第三座標は数値がない。アンテナ間の距離が1mに等しくないとき、座標がアンテナ間の距離により正規化された経路長の差に基づき決定されることに注意するのは重要である。
【0055】
周波数ギャップf3に対する測定を構成するとき、第一の経路長の差DM1及び第二の経路長の差DM2における測定誤差が波長の比率で増幅されるため、この測定は粗いと云われる。
【0056】
処理モジュールMTの第二のタスクは、名目上A1A2(Z)方向とA1A3(Y)方向に垂直な軸である、選ばれた軸(X)が、第一のタスクの間に粗い方法で推算された、伝送の方向(又は視軸)AVに対して実質的に揃えられるような方法で、ホストの宇宙船S1の操縦を命令することにある。従って、処理モジュールMTは、ホストの宇宙船が、粗い方法で推算された伝送の方向(又は視軸)AVに対して、選ばれた軸(X)の位置を考慮に入れなければならない姿勢の設定ポイントを計算し、次にそれは、この設定ポイントをホストの宇宙船S1の制御モジュールMDに送る。1つの異なる方策は、ホストの宇宙船S1の回転の操縦によりもむしろ、2つの宇宙船の内の1つの横方向移動の操縦に導く、相対位置の設定ポイントを計算することにある。これらの2つの方策の間の選択は、その任務に結び付けられた外的なパラメータに依存する。
【0057】
図5には宇宙船S2について定義される、推算された粗い視軸AVに関して、宇宙船S1に結ばれた座標系(X、Y、Z)のX軸の例示的な位置調整が例示されている。この段階では、推算された視軸の精度は平均的であり、従って位置合わせは近似に過ぎない可能性がある。
【0058】
この第二のタスクは、ホストの宇宙船S1と他の宇宙船S2の間の相対運動の、出来れば完全な打ち消しにより続けられることが望ましい。ここでの目的は2つの宇宙船S1とS2を固定した相対的配置に保つように、それらの横方向の相対速度を打ち消すことである。
【0059】
従って、処理モジュールMTは周波数f1の第一搬送波、又は周波数f2の第二搬送波の、経路長差の変化の測定値を用いる。周波数f1の第一搬送波(又は周波数f2の第二搬送波)の経路長の差は不明瞭で正確であるが、しかし時間に対するその変化は不明瞭でなく、それは従って視軸の有利な速度測定を構成する。具体的に、2つの宇宙船の相対速度を打ち消し得るためには、正確な速度測定が得られることが必要である。視軸の速度の2つだけの正確な座標(その座標DM1の速度及びその座標DM2の速度)が得られ、一方でこの速度のベクトルは三次元であるという事実から困難が生じる。しかしながら、視軸がA1A2及びA1A3の方向の法線に近い場合、第三の座標は無視し得ることを示すことができ、それにより視軸AVを粗く、そしてA1A2及びA1A3の方向に垂直に位置合わせすることから構成される、前のステップを正当化する。
【0060】
視軸の速度測定に基づいて、処理モジュールMTは該視軸AVの速度を殆ど打ち消すために実施されるべき操縦を計算する。該操縦は宇宙船S1の移動速度の変更又は宇宙船S2の移動速度の変更、又は宇宙船S1の回転速度の変更により、或いはこれらの変更の組合せにより行なわれ得る。選択される方策はその任務に関連付けられる外的なパラメータに依存する。操縦が宇宙船S1によってなされる必要がある場合、処理モジュールMTはその宇宙船S1の制御モジュールMDと対話する。操縦が宇宙船S2によってなされる必要がある場合、遠隔の宇宙船S2への指示の伝送は例えば第一及び/又は第二の信号を用いて、例えば主アンテナA1により実行される。
【0061】
処理モジュールMTの第三のタスクは、ここではXである選ばれた軸を中心とした、従って実質的に粗く推算された視軸AVを中心とした、少なくとも1回の選ばれた、宇宙船S1の回転駆動を命令することにある。この回転は第二の測定モジュールM2により正確に測られる。回転角度の値は決定的に重大ではない。該回転は、処理モジュールMTの第四のタスクにより必要とされる精度に達するために、十分な振幅(典型的には数十度)を持たなければならない。
【0062】
この回転の間、処理モジュールMTはその第一の測定サブモジュールM1のおかげで、周波数f1を示す第一搬送波、又は周波数f2を示す第二搬送波における、経路長の差の変化ΔDM1及びΔDM2を記録する。
【0063】
処理モジュールMTの第四のタスクは、(姿勢専用の)第二の測定モジュールM2により届けられる回転の測定、及び第一の測定モジュールM1により届けられる、周波数f1を示す第一搬送波、又は周波数f2を示す第二搬送波における、経路長の差の変化ΔDM1及びΔDM2の測定に基づき、宇宙船S1とS2の間の視軸を正確に推算することにある。
【0064】
視軸を正確に推算するための、この手順は図6及び7に図解されている制限されない例を参照して、ここで以下に詳細に説明されるであろう。以下において、AVは粗い方法で推算された(回転前の)視軸を示し、AV’は正確に推算された視軸を示す。
【0065】
図6は(粗く決定された)視軸AVに垂直な軸に関する、宇宙船S1の回転を二次元で例示している。ここで、二次アンテナA2の(回転前の)初期位置P1から(角度θだけ回転後の)最終位置P2への移動のみが表わされている。この回転角度θは例えばスタートラッカー・タイプの二次(姿勢)測定モジュールM2により、正確に測定される。該回転角度θは、第一の測定サブモジュールM1により届けられる、(回転前の)初期経路長の差と(回転後の)補足的な経路長の差との第一測定値に基づき、処理モジュールMTにより決定される、主アンテナA1と二次アンテナA2の間の第一の経路長の差DM1の変化を導入する。該主アンテナA1と二次アンテナA2とを隔てている距離BL1と、(周波数f1を示す第一搬送波、又は周波数f2を示す第二搬送波によって)第一の経路長の差DM1の変化とを知ることにより、視軸AV’に関するA1A2(Z)方向のずれの初期角度αはそこから推定される。同じ動作が主アンテナA1と他の二次アンテナA3との間で実行され、視軸AV’を定義する正確な座標が全ての結果から推定される。
【0066】
この二次元(2D)の例は、三次元(3D)の実際の場合を完全には代表しないことに注目されたい。実際の場合、A1A2(Z)方向(Z)及びA1A3(Y)方向に垂直な軸(X)を中心とした単独回転は、宇宙船S1に結び付けられた基準座標系において、正確な視軸AV’(S1S2)を決定するのに十分であることが示され得る。
【0067】
二次元モデルよりも更に高度に複雑な1つのモデルが、図7を参照して以下に説明される。宇宙船S1に結び付けられた座標系(X、Y、Z)のZ軸は、ここで宇宙船S2に向かって指し示すために用いられる。Z軸はここで粗い視軸AVに関して位置合わせされた軸を定義する。
【0068】
図7において、座標AZはZ軸に対する正確な視軸AV’の方位角を表わし、座標ELはZX平面に対する正確な視軸AV’の上昇を表わす。
【0069】
第一にZ軸を中心とした宇宙船S1の回転角θと、経路長の差の変化と、(回転前の)粗い視軸AVの座標との間に存在する関係を決定することが探求される。平行な入射信号の存在下で、経路長の差は、視軸AVへのベクトルA1A2の投影であると定義出来ることが示され得る。
【0070】
その結果として、BL1が主アンテナA1と二次アンテナA2との間のベクトルを示し、VLoSが粗い視軸AVの単位ベクトルを示す場合、以下の関係が得られる。
【数1】

【0071】
宇宙船S1に結び付けられた座標系(X、Y、Z)において、(推算が望まれる正確な視軸AV’の座標を定義する)単位ベクトルVLoSは、以下に示すように定義される。
【数2】

【0072】
前記座標系における2つの二次アンテナA2及びA3の座標は良く知られており、以下で与えられる。
【数3】

【0073】
角度θの回転前に、第一の経路長の差DM1と第二の経路長の差DM2は次の関係で与えられる。
【数4】

【0074】
(回転マトリックスRot(θ)により定義される)角度θの回転後に、前述の座標系における、主アンテナA1と二次アンテナA2及びA3との間の距離をそれぞれ表わす、ベクトルBL1(θ)とBL2(θ)は、次の関係により与えられる。
【数5】

【0075】
その結果、第一と第二の補足的な経路長の差DM1(θ)及びDM2(θ)は、次の関係により与えられる。
【数6】

【0076】
(選ばれた周波数f1又はf2に対応する)第一と第二の経路長差の変化は、そのとき次のように書かれ得る。
【数7】

【0077】
次のマトリックス表記を採用することにより
【数8】

転置されたマトリックス要素を指数が示す、次の関係がそのとき得られる。
【数9】

【0078】
その第一項(BL1、BL2)が2×3タイプのマトリックスを表わすため、後者の表現は容易には反転出来ず、本発明者らは次に三次元の代わりに二次元に減らす。これは一方で、ベクトルVLoSが単位ベクトルであり、そのZ座標はXとY座標から推定されるため、従って関心を持たれず、他方で、角度θの回転がZ軸を中心として行なわれるという事実を利用することによりなされる。その結果、上記の式は(X,Y平面における)二次元で、以下に示すように書き直され得る。
【数10】

【0079】
処理モジュールMTが一旦(回転前の粗い)視軸の座標を有すると、それ以降、経路長の差の変化ΔDM1及びΔDM2を組み込むことにより、それは何時でもこの視軸の正確な座標を確かめることができる。1つの変形は、第一の周波数f1(又は第二の周波数f2)において実行される測定DM1とDM2における不明瞭さを取り除くため、正確な視軸AV’の知識を使用すること、そして次に経路長の差の変化ΔDM1及びΔDM2に基づき、不明瞭さを保持することにある。
【0080】
装置DTを装備した他の宇宙船(例えばS3)がある場合、宇宙船S1に結び付けられた基準座標系において、視軸S1S3を正確に測定するため、同じ手順が宇宙船S1とS3との間で繰り返されることができる。宇宙船S1とS3との間でこの手順を実施中に、宇宙船S2が宇宙船S1にとって見え続けるように注意することが必要である。具体的に、宇宙船S1とS2との間でRFリンクが断ち切られた場合、正確な視軸AV’(S1S2)の知識が失われ、宇宙船S1とS2との間の手順を再度始める必要があるかも知れない。
【0081】
装置Dを装備した少なくとも1つの他の宇宙船(例えばS4)がある場合、宇宙船S4はこの同じ手順を実行することにより、自身の基準座標系において、他の宇宙船の視軸をそれ自身で正確に決定することができる。グループの幾つかの宇宙船に、装置DTの代わりに装置Dを設置する利点は、その任務に依存する。
【0082】
視軸が精度を伴って一旦分かると、作表された多経路のマッピングが以前にマッピング・データの形で実行され、記憶されている場合、この精度は更に改善され得る。この場合、処理モジュールMTは、多経路の既知の寄与を、第一の周波数f1を表わす信号における経路長の差の測定値から差し引く。この技術は、多経路がホストの宇宙船における局部反射によって引き起こされるとき、とりわけ有効である。この場合、多経路に起因するエラーは、信号の到着方向に完全に関連する。
【0083】
上記に示したマトリックスの式は、それらの理解を容易にするため単純化されていることに注意されたい。実際に、幾つかの副次的影響はそれらを以下のように複雑にし得る。
残留速度は横方向の速度打ち消し局面の最後に存続する可能性があり、
処理モジュールMTにより命令される回転が、宇宙船により実際に実行される回転と異なるかも知れず、とりわけ実際の回転軸はA1A2とA1A3の方向に直角な軸に関して歪められる可能性があり、
宇宙船S1とS2の間の距離がアンテナA1、A2、及びA3の間の距離に対して非常に大きくはない場合、様々なアンテナAjにより受信されるラジオ波は完全に平行ではない。
【0084】
しかしながら、これらの影響は当業者により、単純化された式に基づいて該式を複雑化することによって修正され得る。
【0085】
正確な視軸AV’の測定とは無関係に、装置D及びDTは、宇宙船を隔てている距離を測るために配置され得る。
【0086】
従って制御装置Dは、望ましくはその第一の測定モジュールMM内に、第二の測定サブモジュールM3を含まなければならない。後者はより正確には、少なくとも該アンテナの1つにより、そして望ましくは発信/受信アンテナA1(又はA4)により受信され、そして他の宇宙船S2から由来する、少なくとも第一及び/又は第二の信号に基づき、その宇宙船S1を同じグループの他の宇宙船S2から隔てている各距離を推算する任務を負う。
【0087】
以下において、例示的そして制限されない例として、第二の測定サブモジュールM3が主アンテナA1により受信された第一の信号に基づいて、宇宙船間の距離を推算することが考えられる。
【0088】
宇宙船S1とS2のクロックHの間の同期の欠如によって導入される時間的な偏りの理由から、第二の測定サブモジュールM3はその距離の推算を、別の宇宙船S2から由来する、主アンテナS1により受信される第一の信号だけでなく、この別の宇宙船S2により伝送される補助信号にも基づいて実行することが望ましい。
【0089】
前に示したように、これらの補助信号は、発信された信号が発信元の宇宙船のローカル時間のイメージであり、そしてこの信号の観察が擬似距離測定を得ることを可能にするような方法で、選ばれた擬似ランダムコードと同様、必要に応じて情報データを用いて、第一の信号の搬送波の変調から成ることが望ましい。
【0090】
それ自身の擬似距離測定を、補助信号における情報データの形で、他の宇宙船S2により伝送された測定と照合することにより、第二の測定サブモジュールM3はクロックの偏りを分離し、そして宇宙船間の距離d(S1、S2)を確かめることができる。具体的に、真の距離は、宇宙船S2により発信された第一の信号について宇宙船S1により測定された擬似距離と、宇宙船S1により発信された第一の信号について宇宙船S2により測定された擬似距離との合計の半分に等しい。
【0091】
擬似ランダムコードの解析により得られる距離測定は、不明瞭ではないが、擬似ランダムコードの波長が通常は搬送波の波長よりもかなり大きいため、平凡な精度である。擬似ランダムコードの観察により得られる距離測定の精度が、周波数f3の波長の半分よりも良好な場合、この近似の距離測定は(宇宙船S1とS2の主アンテナにおいて行なわれる)周波数f3に対する位相測定に基づいて得られた距離測定における、不明瞭さを除去することを可能にする。従って擬似ランダムコードに基づいて得られるものよりも優れた品質の距離測定が得られる。しかしながら、f3に対する位相測定の精度は波長f3/f1の比率で低下するため、この距離測定の質は、周波数の位相測定値に基づいて得られる距離測定における不明瞭さを解決するには、依然として余りにも乏しい。
【0092】
次に最後のステップが、距離測定においてセンチメートル級の精度を達成するために提供される。従って、好ましくは3つの技法が組み合わされる。
【0093】
第一の技法は測定ノイズを平滑化することにある。当業者には良く知られているこの第一の技法は、より正確には、不明瞭ではないが非常にノイズの多い量の変化速度が、ノイズの少ない方法において知られている場合、該量をその変化速度を通じてフィルタリングすることにある。ここで、擬似ランダムコードに基づいて得られる距離測定が、第一の信号(f1)に対する位相測定値の変化に基づいて得られる速度を通じて平滑化される。次に、周波数ギャップf3に対する位相測定値に基づいて得られる距離測定が、第一の信号(f1)に対する位相測定値の変化に基づいて得られる速度を通じて平滑化される。その目的は該距離におけるノイズを低減するためである。この技法は測定ノイズの低減を可能にするが、しかしそれは多経路及び、信号発信及び受信用電子機器における信号の伝播に起因する「ゆっくりと変化し得る偏り」のタイプのエラーを低減しない。
【0094】
第二の技法は、自動較正による発信及び受信用電子機器における伝播の影響(伝播遅れ及び伝播位相のずれ)を修正することにある。モジュールSRにより主アンテナA1に送られる全ての信号の振幅の一部分は、次にモジュールSRへと再び向けられる。
【0095】
測定モジュールMMにおけるこれらの信号の解析は、宇宙船S1の発信用電子機器における伝播、及び宇宙船S1の受信用電子機器における伝播に対応する量を正確に測ることを可能にする。同じ技術が、宇宙船S2の発信用電子機器における伝播、及び宇宙船S2の受信用電子機器における伝播に対応する量を、宇宙船S2において測るために用いられる。
【0096】
分離されたこれら2つの量の各々は関心を持たれないが、これら2つの量の合計はS2に向かうS1の経路の電子的伝播と、S1に向かうS2の経路の電子的伝播との合計として書き換えられ得る。この合計は、距離が宇宙船S1と宇宙船S2との間の擬似距離と、宇宙船S2と宇宙船S1との間の擬似距離の合計の結果であるため、そのとき該距離を修正することを可能にする。
【0097】
この修正は、伝送される信号(擬似ランダムコードの伝播、周波数f1の搬送波の伝播、及び周波数f2の搬送波の伝播)における成分の数と同じ数の要素を有する。従ってそれは、擬似ランダムコードにより得られる距離と、周波数f1、f2、及びf3の搬送波に対して得られる距離とを修正することを可能にする。
【0098】
第三の技法は、宇宙船S1及び宇宙船S2における、これらの多経路の作表されたマッピングを用いて、多経路の影響を修正することにある。そのようなマッピングの使用は、S1に結び付けられた基準座標系において、視軸AV’(S1S2)を正確に確かめることを必要にする(これは上述の手順を用いてなされる)。これは又、S2に結び付けられた基準座標系において、視軸S2S1を確かめることを必要にし、そしてこれはS2が装置Dを備えるため、或いはそれが装置DT+姿勢センサを備えるために得られる可能性がある。具体的に、S1に結び付けられた基準座標系における視軸AV’(S1S2)の知識、及び宇宙船S2の姿勢の知識は、宇宙船S2に結び付けられた基準座標系における視軸S2S1を確かめるために十分である。
【0099】
宇宙船間の距離d(S1、S2)又はd(S1、S3)の正確な推算、及び対応する視軸AV1又はAV2の座標の正確な推算を知ることにより、処理モジュールMTは次に、その宇宙船S1に結び付けられた座標系(X、Y、Z)(或いは宇宙船S1に結び付けられた他のあらゆる座標系)に関する、2つの宇宙船S2及びS3の相対位置を確かめる。
【0100】
制限されない例として図3に例示されているように、制御装置Dは又、その任務によって必要とされる幾何学的配置の中へそれらを導き、そして保持するため、及び宇宙船間の衝突危険性が検出された場合、あらゆる回避操作を決定するために該グループの宇宙船を制御する任務を負う、解析モジュールMAを含むことができる。該グループの宇宙船の位置、及び当業者に知られている衝突危険性の検出の、あらゆるタイプの制御がこの段階において実行され得る。
【0101】
衝突の危険性を検出するたびに、解析モジュールMAは該グループの他の宇宙船の相対位置に応じて、その宇宙船S1に対して又、必要に応じて回避操作を決定することができる。
【0102】
本発明による制御装置D、そして特にその処理モジュールMT、その第一の測定モジュールMMと第二の測定モジュールM2、及びその必要に応じての解析モジュールMAは、電子回路、ソフトウェア(又は計算)モジュール、又は回路とソフトウェアの組合せの形で具現化され得る。
【0103】
制御装置Dの中で、第一の測定モジュールMM、スイッチング・モジュールC1とC2、ビーム形成モジュールMF、同様に必要に応じて第二の(姿勢)測定モジュールM2が、2周波数センサSRを構成する実体へと結合され得る。
【0104】
本発明がS帯域で動作するとき、全方向性アンテナを使用することができ、その結果として、編隊を組んで飛行している宇宙船の相対位置におけるセンチメートル級の精度を、それらの初期相対位置にかかわらず、そして特に視軸が初期に弱く又は強く傾斜している時に得ることが可能である。
【0105】
追加として、本発明は典型的には1つ以上の等級のオーダーだけ更に大きい、より大きな精度さえも有する宇宙船の相対位置を決定し得るように、例えばSHF又はEHFにおいて動作している、又は光信号に基づき、そして正確な事前の位置調整を必要とする、先行技術の制御装置に対して、正確な相対位置を供給するために役立つことができる。
【0106】
本発明は、単に例として上記に説明された制御装置及び宇宙船の実施形態に制限されることなく、それは以下の特許請求の範囲内で当業者により想定され得る、全ての変形を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】その1つが本発明による制御装置を備えた、編隊を組む3つの衛星のグループを、非常に図式的な方法で例示している。
【図2】1つの衛星の面における、同一の集合体における3つのアンテナの例示的な位置調整を、非常に図式的な方法で例示している。
【図3】本発明による制御装置の例示的実施形態を、非常に図式的な方法で例示している。
【図4】第二衛星により発信された信号の、第一衛星の主アンテナと二次アンテナ間の経路長の差を、図式的な方法で例示している。
【図5】粗い方法で決定された視軸に関する、本発明による制御装置を備えた衛星の位置調整のステップを、非常に図式的な方法で例示している。
【図6】二次元で考えられる回転が存在する状態において、視軸の正確な座標の決定に制御権を持つ主パラメータを、非常に図式的な方法で例示している。
【図7】三次元で考えられる回転が存在する状態において、視軸の正確な座標の決定に制御権を持つ主パラメータを、非常に図式的な方法で例示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選ばれた編隊に従って移動するように意図された宇宙船グループの1つの宇宙船(Si)用の制御装置(D)であって、
前記宇宙船(Si)の面上の選ばれた位置に設置されて、無線周波数信号を発信及び/又は受信出来る、1つの発信/受信アンテナ(A1)ならびに、2つの受信アンテナ(A2、A3)から成る少なくとも一組の集合体と、そして前記アンテナ(A1〜A3)により受信された前記信号に基づいて、該グループの他の宇宙船により発信された信号の伝送方向を推算するために設計された処理手段(MT)とを備えた制御装置(D)において、
前記集合体の各アンテナ(A1〜A3)が、選ばれた周波数ギャップにより隔てられた第一と第二の選ばれた周波数を示す、第一と第二の信号を発信及び/又は受信するために設計され、
制御装置(D)が、i)前記グループの他の宇宙船(Si’)に由来する、前記集合体の各前記アンテナにより受信された第一と第二の信号に基づき、第一又は第二の周波数に、そして前記周波数ギャップに対応するアンテナ(A1〜A3)の間の、第一と第二の経路長の差を決定するために設計された第一の測定手段(M1)と、そしてii)前記宇宙船(Si)により経験された回転の測定値を届けるために設計された姿勢測定手段(M2)とを備え、
そして前記処理手段(MT)が、
a)第一と第二のいわゆる初期経路長の差に基づき、前記他の宇宙船(Si’)により発信された信号の伝送方向を粗く推算し、
b)前記宇宙船に結び付けられた座標系の選ばれた軸(X)が、前記粗く推算された伝送方向に対して実質的に揃えられるように、宇宙船の粗い位置調整を指令し、
c)前記選ばれた軸(X)を中心とした前記宇宙船(Si)の少なくとも1つの回転駆動を指令し、
d)前記姿勢測定手段(M2)により届けられる回転測定、及び前記第一の測定手段(M1)により行なわれる、この回転により生じる第一又は第二の経路長の差の変化測定に基づき、前記他の宇宙船(Si’)により発信された信号の前記伝送方向を正確に推算するために設計されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記処理手段(MT)が、前記回転駆動を指令する前に、前記第一の測定手段(M1)により行なわれる、第一と第二の経路長の差の内の1つの変化の前記測定に基づき、前記宇宙船(Si)のゼロに近い速度における、粗い位置調整の安定化を指令するように意図された指示を生成するために設計されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記処理手段が、第一と第二の経路長の差の内の1つの変化の前記測定に基づき、前記伝送方向の正確な知識を保持するために設計されることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記第一の測定手段(M1)が、
i)前記他の宇宙船(Si’)に由来する、前記集合体の各前記アンテナ(A1〜A3)により受信される第一と第二の信号の、第一と第二の位相を決定し、
ii)前記第一と第二の位相から、前記発信/受信アンテナ(A1)と前記受信アンテナ(A2、A3)の各々との間の、第一と第二の位相における差を推定し、
iii)前記第一と第二の位相差から、前記周波数ギャップに対応する第三の位相差を推定し、
iv)第一と第二の連続する位相差から、及び第三の連続する位相差から、第一又は第二の経路長の差の変化の測定値を推定し、
v)第一又は第二の経路長の差の変化の測定値から、第一又は第二の周波数に対応する、前記第一と第二の経路長の差の、不明瞭でない測定値を推定するために設計されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記他の宇宙船(Si’)に由来する、前記アンテナ(A1〜A3)の少なくとも1つにより受信された前記第一及び/又は第二の信号に基づき、それらの宇宙船(Si)をグループの前記他の宇宙船(Si’)から隔てている距離を推算するために設計された、第二の測定手段(M3)を備え、そして前記処理手段(MT)が、前記推算された距離と、前記正確な推算された伝送方向に基づき、それらの宇宙船(Si)に対する前記宇宙船(Si’)の相対位置を決定するために設計されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第二の測定手段(M3)が、前記他の宇宙船(Si’)に由来する、前記アンテナ(A1〜A3)の少なくとも1つにより受信された、前記第一及び/又は第二の信号と、そして前記他の宇宙船(Si’)により伝送され、それを前記宇宙船(Si)から隔てている距離を表わす補助信号とに基づき、それらの宇宙船(Si)を該グループの前記他の宇宙船(Si’)から隔てている距離を推算するために設計されることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記処理手段(MT)が、記憶されたマッピング・データと、信号伝送の前記方向とに基づき、前記距離測定及び/又は、多経路により引き起こされる影響の、伝送の正確な方向の前記測定を修正するために設計されることを特徴とする、請求項5及び6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
異なる向きの少なくとも二面において、少なくとも2つのアンテナの集合体を備えることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
アンテナの集合体が存在しない少なくとも一面において、少なくとも1つの補足の発信/受信アンテナ(A4)を備えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
選ばれた擬似ランダムコードによって少なくとも一方が変調された、第一と第二の搬送波の形をとる第一と第二の無線周波数信号を前記アンテナ(A1〜A3)が発信及び/又は受信出来ることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記周波数ギャップが、前記発信/受信アンテナ(A1)を前記受信アンテナ(A2、A3)の各々から隔てている距離の、少なくとも二倍に等しい長さの波長に対応することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記アンテナ(A1〜A3)が、S、SHF、及びEHF帯域を含むグループから選ばれた周波数帯域に属する第一と第二の周波数を示す、第一と第二の搬送波を発信/受信するために設計されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記周波数帯域がS帯域であることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の制御装置(D)を備えることを特徴とする、宇宙船のグループ内において編隊を組んで移動するように意図された宇宙船(S1)。
【請求項15】
前記宇宙船(S1)の少なくとも1つが請求項1〜13のいずれか一項に記載の制御装置(D)を備え、他の宇宙船(S2、S3)の少なくとも幾つかが、少なくとも1つの選ばれた面に設置された、少なくとも1つの発信/受信アンテナ(A1)を備えることを特徴とする、選ばれた編隊に従って移動するように意図された宇宙船(Si)のグループ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−536314(P2009−536314A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550768(P2008−550768)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050532
【国際公開番号】WO2007/082929
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】