説明

縦長形状体のための継ぎ構造

本発明は、エラストマー、特に架橋および/または熱可塑性エラストマーと、少なくとも1つの補強層と、採用随意に少なくとも1つの引張支持体(3)とを備え、かつ、少なくとも1つの補強層の2つの末端が少なくとも1つ接合箇所(2)に配置されている、少なくとも1つの接合箇所(2)を有するコンベアシステムのためのエンドレスベルト形引張要素(1)に関する。挿入部品(6)が接合箇所(2)においてその2つの端部の間に配置され、引張要素の縦方向伸長部に対して角度αで隣接配置され、更に少なくとも1つの補強層の末端は挿入部品(6)と重なり合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー、特に架橋および/または熱可塑性エラストマーと、少なくとも1つの補強層と、採用随意に少なくとも1つの引張支持体(tension support)とを備える、少なくとも1つの接合箇所を有するコンベアシステムのためのエンドレスベルト形の引張要素に係り、その少なくとも1つの補強層の2つの末端が少なくとも1つ接合箇所に配置されており、コンベアシステムは、循環するエンドレスのベルト形引張要素とこの引張要素に能動的に連結されている駆動システムとを有する。更に本発明は、引張要素セクションがエラストマーで作られ、補強層が引張要素内または引張要素上に配置され、その後で、補強層と引張要素とが熱処理によって互いに接合される、エンドレスベルト形引張要素を製造する方法と、この引張要素の使用方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な異なる横断面形状(主に、平らな断面、または、C字形、O字形、U字形、V字形、W字形、もしくは、T字形の断面)を有するベルト形引張要素が、物品または人間のためのコンベアベルト、エスカレータと動く歩道等のためのハンドレールような様々な用途から公知である。典型的な用途は、さらに、例えば駆動力を伝達したり材料を搬送したりするために様々な状況で使用されるバンドとベルトも含む。
【0003】
公知の状態で、ベルトコンベアは、ベルトの2つの互いに反対側に位置する末端区域において滑車装置によって部分的に支持されている、循環エンドレスベルトから成る。今日まで、ベルトが横方向に移動することを防止するために、ベルトコンベアと共に別のガイドローラを使用することが標準的な慣行である。エンドレスコンベアベルトは、一般的に、ゴムおよび/またはプラスチックを織物状組織(以下織物という)と組み合わせる複合材料で作られており、および、補強のために、織物、不織材料、または、スチールインサートを含み、および、用途に応じて、ベルトが応力を受ける方向における破壊強さを増大させるために1つまたは複数の引張支持体を含む。エンドレスベルトを作るためには、そのベルトの2つの互いに反対側に位置する末端が互いに接合される少なくとも1つの箇所が存在しなければならない。
【0004】
ハンドレールが、人間を搬送するための安全装備として、エスカレータと動く歩道とこれらに類似した用途と共に使用される。この目的のために、ハンドレールは乗客に確実な把持を提供し、および、損傷を被ることなく動作中の動応力と環境的影響とに耐えることが可能でなければならない。従来技術から公知のエンドレスのハンドレールは、様々な採用可能な手段によって接合されており、および、通常は、こうした要件を満たすために複数の異なる材料で作られている。乗客が接触するハンドレール表面は通常はエラストマー混合物で作られている。ハンドレールの上部は、さらに、その下に配置されている構成要素を様々な環境的影響から保護し、および、したがって、こうした環境的影響に対して耐久性を持たなければならない。織物、織物ひも、短織物で補強された混合物等のような補強層を、ハンドレール横断面の寸法安定性を増大させるための手段として使用することが標準的な慣行である。ハンドレールは、可能な限り長い使用寿命を有することが期待されている。
【0005】
ハンドレールの横断面における縦方向の力をハンドレールが吸収することを可能にするために、ハンドレールは、一般的に、引張支持体と呼ばれることがあるものを含み、突合せ接合区域を含むこの引張支持体は、規定された最小の引裂抵抗性能を持たなければならない。
【0006】
最終的に、いわゆる「耐摩耗層」が、ハンドレール案内システムとハンドレール駆動システムとに対する接触表面を形成する。
【0007】
プラスチック押出しプロセスによって形成される引張要素も公知である。
【0008】
これらの引張要素すべてが共通して有するものが、曲げられる時に、中立軸線から最も遠い距離に位置している構成要素が特に大きい応力を受けるという特性である。
【0009】
これに関連して、上述のC字形横断面を有する開放部分を検討すると、露出箇所の織物層が特に大きな応力を受けるということが明らかである。応力は、曲げ半径が構成要素の高さの1桁の倍数である時に、異なる周波数での曲げの変化によって生じることが知られている。この曲げは、軸方向の引張りが加えられる時に生じる。可とう性と寸法安定性との主な要件は、構成要素が厳しい安全規定を適用されるので、非常に狭く指定された公差の範囲内で選択されなければならない。
【0010】
規定された曲げ半径における構成要素の最大剛性が特定の公差を超えても下回ってもならないという事実は、厳しい引張状態を生じさせており、これらの3次元的に作用する力は、材料の最も脆弱な接合箇所に作用する。一般的に、それらは、主に織物層内で、突合せ/添え継ぎ箇所が存在するあらゆる場所において発見されることになる。
【0011】
この状況に備えるために、損傷を受ける可能性がある箇所を最小限にする手段として、幾つかの極めて複雑な添え継ぎ構造が従来技術において提案されてきた。例えば、織物ウェブの2つの末端が一定の角度で切断され、1つの区域内において重ね合わされ、および、その次に、この重ね合わせ区域内で互いに接合される(例えば接着される)。
【発明の開示】
【0012】
本発明の目的がベルト形の引張要素の使用寿命を延長させることである。本発明の別の目的は、その織物の接合箇所における破損の結果としての引張要素の動作中の故障し易さを最小限にすることである。
【0013】
本発明の目的の各々が、挿入部品が2つの末端の間の接合箇所において引張要素の縦方向長さに対して角度αに配置されており、かつ、少なくとも1つの補強層の末端がその挿入部品と重なり合うように配置されている、上記で概説したタイプのコンベアシステムのためのエンドレスベルト形の引張要素によって;および、上記で概説されたタイプのコンベアシステムによって;および、引張要素の縦方向長さに対して角度αに配置されている補強層の2つの末端の間の接合箇所で挿入部品を使用することによってエンドレスベルトが形成され、および、少なくとも1つの補強層の末端が挿入部品と共に重なり合って接合されるように少なくとも1つの補強層の端部が配置される、エンドレスベルト形引張要素を作る方法によって;および、このエンドレスベルト形引張要素の使用方法によって;各々に独立して実現される。このアプローチ(解決案)の利点が、このアプローチが、接合箇所がより大きい機械的応力に耐えることが可能なのでその引張要素の使用寿命を著しく延ばし、したがって、高い動作信頼性を保証するということである。別の利点が、このアプローチが、引張要素の末端に関して指定された公差範囲内での高度の可とう性と寸法安定性とを保証するということである。
【0014】
さらに、角度αが25°、好ましくは30°、特に35°の下限値と、75°、好ましくは70°、特には65°の上限値とを有する範囲内から選択され、特に45°である場合に、有利であることが判明しており、このことが優勢な応力に対する引張要素の破壊強さを増大させる。
【0015】
一実施の形態では、この挿入部品の幅が、3cm、好ましくは5cm、特に10cmの下限値と、無限である上限値として、好ましくは2m、特には50cmの上限値とを有する範囲から選択され、特には15cmであることが好ましい。引張要素の全長にわたっての引張要素の横断面の均一な実現可能な厚さとして形成することにより、したがって、このことが一定不変な表面を結果的に生じさせ、それによって、特にハンドレールにおいて、接触に対する引張要素の感触を向上させる。
【0016】
引張要素の別の実施の形態では、重なり合い部分の幅が、3mm、好ましくは5mm、特には8mmの下限値と、1m、好ましくは50cm、特には10cmの上限値とを有する範囲から選択され、特には12mmであることが好ましく、その結果として、引張要素内の挿入部品と補強要素の末端との多層構造が、その引張要素の全長よりは短い長さだけにわたって延び、それによって引張要素の高さのわずかな増大だけを結果的に生じさせる。
【0017】
さらに、その重なり合い区域は、特に引張要素が装着位置にある時には目に見えない側面に沿って、しかし、好ましくは駆動システム(装置)に面している側面上において、織物層とエラストマーとの間に位置し、このことが引張要素の耐破壊性としたがって使用寿命とがさらに改善されることを可能にするということが利点であることも判明している。
【0018】
補強層の少なくとも特定の区域が耐摩耗層または剛性層であってよく、このことが、一方では、駆動システム上の引張要素の動きを改善し、かつ、さらには、引張要素の変形性を限界内に保ち、それによって寸法安定性を確保する。さらに、耐摩耗層を備えることの結果として案内システム(装置)に対する滑り摩擦がそれほど大きくないが、しかし、駆動システムに対する粘着摩擦が十分であるということも利点である。
【0019】
さらに、少なくとも特定の区域内において補強層が織物(又は織物状組織)および/または不織材料で形成されており、それによって、大きな機械的応力が打ち消されることを可能にし、かつ、高い荷重に耐えることを可能にし、このことが、引張要素の可とう性を制限することなしに、その引張要素の引裂抵抗性能を向上させるということが利点であることが判明している。
【0020】
別の実施の形態では、耐摩耗層が、少なくとも特定の区域内において、例えばポリアミド、ポリエステル等のような合成繊維の織物で、および/または、例えば綿のような天然繊維物で、または、これらの混合物で作られており、このことが、一方では、案内システム(装置)に対する滑り摩擦があまり大きくなく、かつ、他方では、駆動システムに対する粘着摩擦が十分に大きいということを意味する。
【0021】
さらに、2つの末端の間の補強層が連続した織物ウェブの形で設けられ、それによって接合箇所の数を可能な限り少なく保ち、かつ、その結果として、潜在的な破壊箇所を最小限にするということが利点である。別の利点が、引張要素の製造が簡素化されることが可能であり、それによってコストを低減させるということである。
【0022】
さらに、補強層が案内システムまたは駆動システムとの接触を可能にし、このことが一方では高度の寸法安定性を保証し、かつ、他方ではベルト形引張要素を駆動するための駆動システムと補強層との間の追加の要素を不要にするということが利点である。
【0023】
別の実施の形態では、織物が縦糸と横糸とによって形成され、この結果としてエンドレスベルト形の引張要素がより大きい応力に耐えることが可能である。さらに、例えば、同一の織物が補強層と差し込み要素とのために使用される場合には、このことが補強層の縦糸方向と挿入部品の縦糸方向とが特定の状態で方向付けられることを可能にするということが利点である。
【0024】
別の実施の形態では、少なくとも1つの中間層が、挿入部品と補強層との間に配置されており、それは、特には中間プレート(板)であり、引張要素の2つの末端部品の間に追加の接合要素が設けられることを可能にし、それによって接合を改善し、かつ、その接合箇所をより頑丈にする。
【0025】
別の実施の形態では、少なくとも1つの補強要素の互いに反対側に位置する末端が歯部を有し、このことが、引張要素の全長にわたって運動エネルギーの非確実および/または確実な伝達を改善し、および、その結果として接合箇所の破壊強さを向上させる。
【0026】
引張支持体は、スチールコード、スチールシート、または、アラミドコード等であってよく、および、引張要素に作用する縦方向の力が吸収されることを可能にする。駆動システムのための作用箇所としての観点においても、この引張支持体が補強された設計であってもよい。
【0027】
さらに、引張要素内および/または引張要素上に磁気要素または磁化可能要素を設けることが有利であるが、これは、このことが、引張要素に連結する多数の要素と多数の機械的運動要素とを駆動システムにおいて不要にすることを可能にするからである。
【0028】
引張要素は、例えばTPE−U、TPE−V、TPE−O、TPE−S、TPE−A、TPE−E等といったTPEのような熱可塑性エラストマーのようなポリマー材料、または、ゴム、ラテックス材料といったエラストマーによって少なくとも部分的には形成されており、この結果として、引張要素の製造コストを低下させ、および、それによって本発明の目的のために使用される材料により、引張要素の長使用寿命化が可能になる。
【0029】
別の実施の形態では、引張支持体および/または少なくとも補強層および/または熱可塑性エラストマーもしくはプラスチックが、プレス加硫によって、または、押出しによって形成され、この場合に引張要素の形状が小さな公差しか持たない。このことは、さらに、引張要素の個々の要素が効果的に安定化されることを確実なものにする。
【0030】
本発明の方法の別の実施の形態では、挿入部品は、特に補強層の端部部品を切断することによって補強層を構成し、このことは、補強層の縦糸と挿入部品の縦糸とが角度αで隣接配置されるので、応力に耐えるより高い能力をエンドレスベルト形引張要素に与え、および、補強層のための追加の構成要素が不要にされることが可能なので、このことが引張要素の製造に必要とされる在庫品を減少させる。
【0031】
さらに、補強層の末端が挿入部品に接着および/または縫合および/または溶接および/または融着および/または締め付け固定(クランプ)されるということは、個々の状況に適合するように適応させられることが可能な普遍的な接合方法の使用を可能にする、引張要素の破壊強さを増大させるので、さらに有利であり、このことは、引張要素が、その引張要素が配置されることになっている場所で直接的にアセンブリされることが可能であり、これに加えて、接合箇所が取り外し可能な設計であってもよいということを意味する。
【0032】
有利なことに、本発明のエンドレスベルト形引張要素はシステムに高度の動作確実性を与え、さらには長い使用寿命を有するので、このエンドレスベルト形引張要素は、特にベルトコンベアのためのコンベアベルトとして、または、エスカレータもしくは動く歩道上のハンドレールとして使用されることが可能である。
【0033】
本発明を、添付図面に示されている実施形態の例を参照しながら、以下でさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
まず最初に、異なる実施の形態で説明される同一の部品が同一の参照番号と同一の構成要素名称によって示され、および、本説明全体において行われる開示が、意味の観点から見て、同一の参照番号または同一の構成要素名称を有する同一の部品に置き換えられることが可能であるということが指摘されるべきである。さらに、頂部、底部、側部等のような説明のために選択された位置が、具体的に説明されている図面に関係しており、および、意味の観点から見て、別の位置が説明される時には新たな位置に置き換えられることが可能である。図解され且つ説明された異なる実施の形態からの個別の形態又は形態の組合せが、本発明によって提案されている独立した発明的解決策と解釈されてよい。
【0035】
図1は、エンドレスベルト形引張要素1の2つの末端の間の接合箇所2の概略的な詳細図を示す、エンドレスベルト形引張要素1の長手方向部分を示す。
【0036】
引張要素1は、エラストマー、特に熱可塑性エラストマーで作られており、更にこの引張要素1の上または中に、特にそのエラストマーと接合されている補強層が設けられている。例えば引裂強さのような、引張要素1によって吸収されることが可能な力を増大させるために、少なくとも1つの引張支持体3(図1には図示されていない)が、必要に応じて、そのエラストマー上に、または、好ましくはそのエラストマー内に備えられてよい。
【0037】
製造プロセスに応じて、補強層は通常はエンドレスベルトであり、したがって、エンドレスの引張要素1を形成するために互いに接合されなければならない2つの互いに反対側に位置する末端を有する。
【0038】
織物状組織(以下、織物とする)で作られることが可能な補強層の2つの互いに反対側に位置する末端は、セクションA1 4とセクションA2 5として示されている。この補強層が連続している場合には、補強層の図示されているセクションA1 4とセクションA2 5も、織物の連続ウェブによって作られてよく、この場合にはA1 4はA2 5と同一であり、すなわち、1つのセクションA1 4またはセクションA2 5だけが存在する。
【0039】
本発明によって提案されているように、挿入部品6がセクションA1 4とセクションA2 5との間に配置されている。
【0040】
補強層の個々のセクションA1 4とセクションA2 5の長さ比率が自由に選択されることが可能であり、すなわち、セクションA1 4は挿入部品6よりも大きくてもよく、または、挿入部品6はセクションA1 4よりも大きくてもよい。同じことがセクションA2 5にも当てはまる。
【0041】
絶対的に明確にするために、上述したように、補強層は2つ以上の部品で構成されてよく、この結果として複数の接合箇所2を生じており、その部分(セクション)のために指定された長さがこれらの複数の部品に関係する。
【0042】
補強層が、少なくとも特定の区域内において、耐摩耗層7の形態で備えられてもよい。
【0043】
織物を使用する代わりに、補強層のために不織材料または網を使用することも可能と考えられる。
【0044】
図1に関して説明されている織物は、長手方向に延びる横糸9と、この横糸に対して横断方向に延びる縦糸8とから成り、これらの横糸9と縦糸8は互いに対して直角方向を向くように配置されていることが好ましい。菱形パターンの形に配置されている縦糸8と横糸9のような、他の角度比の配置も想定可能であり、したがって、直角の配置案が好ましいが、これは決して本発明の範囲の限定と解釈されてはならない。
【0045】
挿入部品6が、縦糸8と横糸9とを有する織物から成ることが好ましい。本発明の目的のために、この挿入部品6は引張要素の縦方向の長さ、すなわち縦糸の方向に対して角度αで配置されている。
【0046】
重なり合い区域10が、セクションA1 4またはセクションA2 5のそれぞれに向かう側面において、セクションA1 4とセクションA2 5と挿入部品6との間に形成されている。
【0047】
セクションA1 4とセクションA2 5と挿入部品6との間のこの重なり合い区域10の幅は、可変であるが、3mm、好ましくは5mm、特には8mmの下限値と、1m、好ましくは50cm、特には10cmの上限値とを有する範囲から選択されることが好ましく、特には12mmであることが好ましい。
【0048】
図2に示されているように、中間プレート(板)11がセクションA1 4とセクションA2 5との間の重なり合い区域10の中に挿入されてよい。この中間プレート11は、挿入部品6とセクションA1 4とセクションA2 5との間の追加の接合要素としての役割を果たす。この中間プレート11は、ゴム層、または、例えばNR、CR、SBR、T−PESのような任意のエラストマー材料または熱可塑性材料で作られたプレートであってよい。これに対する代替の接着剤(又は接合要素)として、さらに、例えばエポキシ、メタクリレート(メタクリル酸)、または、ポリウレタン等を主成分とする接着剤のような他の非常に強力な弾性接着剤を使用することも可能である。このタイプの接着に加えて、または、このタイプの接着に対する代替案として、セクションA1 4とセクションA2 5と挿入部品6とが、縫い綴じ突合せスカム(stitched butt scam)、溶接、融着、および/または、締め付け固定(クランプ)によって接合されてもよい。こうした添え継ぎ接合は、従来の架橋エラストマーで作られているハンドレールと熱可塑性エラストマーで作られているハンドレールの両者に使用されてよい。
【0049】
織物部品のために使用される糸は、例えばポリアミドまたはポリエステルのような合成繊維、および/または、例えば綿、サイザルアサ(sisal)、麻のような天然織物であってよい。
【0050】
セクションA1 4の端縁とセクションA2 5の端縁と挿入部品6の端縁とが角度βで隣接配置される。角度βの大きさは可変であり、および、90°未満、特には45°の上限値と、30°、好ましくは35°の下限値とを有する範囲において、選択されることが好ましく、特には45°が好ましい。
【0051】
引張要素の縦軸線と挿入部品の縦軸線との間の角度が角度αとして表されている。好ましい実施形態では、角度αは45°であるが、生産技術の理由から、例えば切断技術の理由から、わずかな変化があってもよい。セクションA1 4とセクションA2 5との縦糸方向と挿入部品6の縦糸方向は、互いに対して角度αで延びる。この角度αが90°未満の値を有することが好ましい。
【0052】
本発明によって提案されている接合方法によって生産されるエンドレスベルト形引張要素は、エスカレータ、動く歩道等のための図3に示されているハンドレールとして使用されてよい。このタイプのハンドレールの場合には、上述した引張支持体3を使用することが標準的な慣行であり、この引張支持体3はスチールコード、スチールベルト、および/または、アラミドコードであってよい。必要に応じて、例えば剛化インサートや耐摩耗層7等のような追加の織物層が設けられてもよく、この追加の織物層も上述の補強層の形で設けられてよい。
【0053】
使用されるエラストマーは、TPE−U、TPE−V、TPE−O、TPE−S、TPE−A、TPE−E等といったTPEのような例えば熱可塑性エラストマーのようなポリマー材料、または、この代わりに、ゴム、もしくは、様々なタイプのラテックス材料であってよい。
【0054】
このタイプのハンドレールのための構造が、「乗客が上を把持するように設計されている駆動ベルト(driven belt designed for passengers to hold onto)」としてEN 115に規定されている。
【0055】
耐摩耗層7は、一方では、案内システム(装置)内を延びており、この場合には、この耐摩耗層7は案内システムと少なくとも部分的に接触しており、および、他方では、耐摩耗層7は、さらに、引張要素駆動システム(装置)と接触していてもよい。
【0056】
耐摩耗層7は、引張要素1の可とう性を改善するために、縦方向すなわち搬送方向に一定の量の屈曲能力を有してよい。耐摩耗層7は、引張要素1が問題なく駆動されることが可能であるように、一方では、案内システムに対して低い滑り摩擦値を有し、かつ、他方では、駆動システムに対して十分に高い粘着摩擦値を有する。
【0057】
セクションA1 4の末端とセクションA2 5の末端と挿入部品6の境界とは滑らかな端縁を有してはならず、実際には、例えば歯部も有してよく、それによって織物セクションA1 4、A2 5の端縁と挿入部品6とのより良好な噛み合いを可能にする。
【0058】
引張要素1と駆動システムとの間の接触を改善するために、磁気要素または磁化可能要素が引張要素1内に挿入されてよい。
【0059】
引張要素1は、さらに、引張支持体3も含み、この引張支持体3の目的は、駆動システムによって引張要素1上に作用する縦方向の力を吸収することである。引張支持体3は、規定された最小引裂強さを有する。駆動システムに応じて、例えばスチール、アラミドコード、スチールベルト等といった様々な材料が、この引張支持体3のための材料として使用されてよい。引張支持体3は、単一の部品であってもよく、または、搬送方向において少なくとも実質的に互いに平行に配置されているワイヤ要素を例えば含む複数部品設計であってもよい。引張支持体3は、さらに、引張要素1内に配置されてよく、または、この代わりに、引張要素1上に配置されてよい。
【0060】
例えば織物コード等のような他の補強インサートが、寸法安定性を改善して横断面における増大または縮小を回避する手段として、従来技術から公知のハンドレールにおいて使用されることが多い。これは、案内システムとの接触時に生じさせられる騒音と、熱の過剰な増大との両方を防止し、これによって、駆動上の問題をほとんど防止し、最終的には、そうでない場合に生じる可能性がある引張要素1の破壊を防止する。引張要素1のサイズが増大しないことは、さらに、引張要素1とこれを案内するために使用されるシステム(装置)との間に結果的に生じる中間の隙間の中に人が挟み込まれることも防止する。
【0061】
耐摩耗層7は少なくとも引張要素1のより大きい方の部分の全体にわたって延びる。引張要素1は、空調された室内において、動的試験のために特別に開発された装置を使用して動的試験された。試験は、C字形の横断面を有する可とう性の細長いセクションを得ることを目的として、試験を行うために特に設計された異なる曲げ直径を有する試験台の上で行われた。試験台上のセクション長さは約17mだった。この試験台は、2つの車輪が780mmの直径を有しかつ2つの車輪が550mmの直径を有する4つの車輪と、70mmの直径を有するローラと、ローラ湾曲(roller curvature)(r−450mm:ローラ直径が70mmに等しい)とに合わせられている。試験速度が5m/秒である。最小曲げ半径が、1分間当たり12回の曲げに相当する0.2Hzの曲げ周波数において、正の曲げと負の曲げの両方に関して275mmである。20pphmのオゾン濃度と、そのセクションにおける2000Nの初期張力と、45℃の周囲温度と、90%の相対空気湿度とにおいて、合計で150万回の曲げサイクルが試験された。この試験台は、本発明によって提案されている引張要素1の接合箇所2が何回の曲げサイクルに耐えることが可能であるか試験するために使用された。本発明によって提案されている接合箇所の曲げサイクルの回数は、従来技術から公知の引張要素1によって達成されることが可能な値を大きく上回ることが判明した。本発明によって提案されているエンドレスベルト形引張要素1は、2000時間を超える試験時間にわたって試験され、この試験時間中には、接合箇所2における摩耗の徴候は全く観察されなかった。
【0062】
挿入部品6は底部上と頂部からの両方で使用されてよい。好ましい実施形態では、織物部品が、外側に、すなわち、案内レールに向かって、または、図3に示されているように引張要素1の底面12に向いている側に向かって、配置されている。別の実施形態では、挿入部品6は、セクションA1 4との重なり合い区域10においては内側に、かつ、セクションA2 5との重なり合い区域10においては外側に配置されるか、または、これとは逆の形で配置されている。当然のことながら、挿入部品6が、内側だけに、すなわち、エラストマーに向かって配置されることも想定可能である。
【0063】
織物層の代わりに、不織物層を含むことも可能である。この不織材料の引張強さを増大させるために、例えば、この不織材料が格子の頂部上に付着させられ、その後、引張要素1の中または上に配置されてよい。
【0064】
上記の実施の形態の例は引張要素1の想定可能な変形形態を示し、および、本発明が本明細書に具体的に示されている実施形態に必ずしも制限されず、その代わりに、その個々の形態が様々な異なる想定可能な組合せにおいて使用されてよく、この可能性が本発明の技術的な開示内容に関連しているこの技術分野の当業者の到達範囲内にあるということが、この段階において指摘されるべきである。本発明の範囲からの逸脱なしに、本明細書で説明され図示されている実施形態の個々の詳細内容の組合せに基づいて、様々な他の実施の形態も想定可能であり、これらの実施の形態について説明の反復は行わない。
【0065】
例示されている実施の形態は引張要素1の想定可能な変形形態を示し、および、本明細書に具体的に示されている実際の実施の形態に本発明が限定されないということが指摘されるべきである。これらの個々の実施の形態は1つの別のものと組み合わされてよく、および、こうした想定可能な変形形態は、本発明の技術的開示内容に関連する当業者の能力の範囲内にあると考えられる。したがって、例示され説明されている実施の形態からの個々の詳細を組み合わせることによって恐らく実現されることが可能であるすべての想定可能な実施の形態が、本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
適切な順序のために、引張要素1の構造のより明確な理解を実現するために、引張要素1とその構成要素部品とが、ある程度は均衡を欠いた形で、および/または、拡大縮尺で、および/または、縮小縮尺で図解されているということが最後に指摘されるべきである。
本発明の解決策の基礎となる目的が説明の中に見出されても良い。
【0067】
上述の内容すべてにおいて、図1と図2と図3とに図解されている個別の実施の形態は、それ自体において、本発明によって提案される独立した解決策と見なされてよい。本発明によって提案される目的とその関連の解決策は、これらの図面の詳細な説明の中に見出されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、突合せ構造の図式図である。
【図2】図2は、突合せ構造の断面図である。
【図3】図3は、ハンドレールの形態での本発明によって提案される引張要素の横断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 引張要素
2 接合箇所
3 引張支持体
4 セクションA1
5 セクションA2
6 挿入部品
7 耐摩耗層
8 縦糸
9 横糸
10 重なり合い区域
11 中間プレート
12 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー、特に架橋および/または熱可塑性エラストマーと、少なくとも1つの補強層と、採用随意に少なくとも1つの引張支持体(3)とを備え、かつ、前記少なくとも1つの補強層の2つの末端が少なくとも1つ接合箇所(2)に配置されている、前記少なくとも1つの接合箇所(2)を有するコンベアシステムのためのエンドレスベルト形引張要素(1)において、
挿入部品(6)が、前記引張要素の縦方向の伸長部に対して角度αで前記2つの末端の間の前記接合箇所(2)に備えられており、かつ、
前記少なくとも1つの補強層の前記末端は、前記挿入部品(6)と重なり合うように配置されていることを特徴とするエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項2】
前記角度αは、25°、好ましくは30°、特には35°の下限値と、75°、好ましくは70°、特には65°の上限値とを有する範囲から選択され、特には45°であることを特徴とする請求項1に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項3】
前記挿入部品(6)の幅は、3cm、好ましくは5cm、特には10cmの下限値と、無限である上限値として、好ましくは2m、特には50cmの上限値とを有する範囲から選択され、特には15cmであることを特徴とする請求項1または2に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項4】
前記重なり合い部分の幅は、3mm、好ましくは5mm、特には8mmの下限値と、1m、好ましくは50cm、特には10cmの上限値とを有する範囲から選択され、特には12mmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項5】
前記織物層と前記エラストマーとの間の前記重なり合い区域(10)は、特に、前記引張要素(1)が装着されている時に目に見えない側面上に位置し、しかし、好ましくは駆動システムに面している側面上に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項6】
前記補強層は、少なくとも特定の区域内において耐摩耗層(7)または剛性層であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項7】
前記補強層の少なくとも特定の区域は織物および/または不織材料の形で形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項8】
前記耐摩耗層(7)の少なくとも特定の区域が、例えばポリアミド、ポリエステル等のような合成繊維の織物で、および/または、例えば綿のような天然繊維の織物で、または、これらの混合物で作られていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項9】
前記2つの末端の間の前記補強層は織物の連続ウェブであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項10】
前記補強層は案内システムまたは駆動システムに対する接触を形成することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項11】
前記織物は縦糸(8)および横糸(9)によって形成されることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項12】
少なくとも1つの中間層が前記挿入部品(6)と前記補強層との間に配置されており、特に中間プレート(11)であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの補強要素の互いに反対側に位置した末端が歯部を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項14】
前記引張支持体(3)はスチールコード、シートスチール、または、アラミドコードであることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項15】
磁気要素または磁化可能要素が前記引張要素(1)の中および/または上に配置されていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項16】
前記引張要素(1)は、例えばTPE−U、TPE−V、TPE−O、TPE−S、TPE−A、TPE−E等といったTPEのような熱可塑性エラストマーのようなポリマー材料、または、ゴム、ラテックス材料といったエラストマーによって少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項17】
前記引張支持体(3)および/または少なくとも前記補強層および/または熱可塑性エラストマー/プラスチックは、プレス加硫または押出し成形によって形成されていることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のエンドレスベルト形引張要素(1)。
【請求項18】
循環エンドレスベルト形引張要素(1)と、前記引張要素(1)に能動的に連結されている駆動システムとを有するコンベアシステムにおいて、前記エンドレスベルト形引張要素(1)は請求項1から17のいずれか一項に記載のものであることを特徴とするコンベアシステム。
【請求項19】
引張要素セクションがエラストマーで作られ、補強層が前記引張要素上または前記引張要素内に設けられ、その後で、前記補強層と前記引張要素とが熱処理によって互いに接合される、エンドレスベルト形引張要素(1)を生産する方法において、
前記エンドレスベルトを形成するために、挿入部品(6)が前記補強層の2つの末端の間の接合箇所(2)に挿入されて、前記引張要素の縦方向の伸長部に対して角度αで隣接配置されており、
前記少なくとも1つの補強層の前記末端は前記挿入部品(6)と重なり合い、更に前記挿入部品(6)に接合されることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記挿入部品(6)は、特に前記補強層の端部部品を切断することによって、前記補強層によって形成されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記補強層の前記末端は前記挿入部品(6)に接着および/または縫合および/または溶接および/または融着および/または締め付け固定されることを特徴とする請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
コンベアベルトとしての、特にはベルトコンベアのためのコンベアベルトとしての、前記エンドレスベルト形引張要素(1)の使用方法。
【請求項23】
エスカレータまたは動く歩道のためのハンドレールとしての前記エンドレスベルト形引張要素(1)の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−511710(P2007−511710A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529423(P2006−529423)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/AT2004/000182
【国際公開番号】WO2004/106039
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505437206)センペリット アクチェンゲゼルシャフト ホールディング (1)
【Fターム(参考)】