説明

織りプリフォーム、コンポジットおよびその製造方法

【課題】3次元織りプリフォーム、そのプリフォームを組み込んだ強化コンポジット、およびそれらの製造方法の提供。
【解決手段】織りプリフォームは、1または2以上のたて糸操りファブリック層を含む。たて糸操りファブリックの一部分を型に押し付けることにより、起立脚(20)を形成する。プリフォームは、その起立脚および本体部分のジャグル(15)を含む。本体部分および起立脚は、一体に織ることにより、プリフォームを横切る連続ファイバを設ける。たて糸操りファブリックの一部分には、たて糸方向にストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバがあり、別の部分には、一般のカーボン・ファイバがある。たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織ることができる。たて糸操りファブリックは、単一あるいは多層のファブリックである。プリフォームあるいはコンポジットは、航空機の窓フレーム(10)の一部分になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、強化コンポジットに関し、特には、織りストリップ材を含むプリフォームであって、強化コンポジット材料に用いるものに関し、平坦に織り、そして最終形状を形成することができ、最終形状には2あるいは3以上の方向の補強がなされる技術に関する。
【引用による組み入れ】
【0002】
ここで述べる製品についてのすべての特許、特許出願、文書、文献、製造者の使用説明書、解説、製品仕様書、および製品説明書を引用によってここに組み入れ、しかもまた、この発明を実施する上で使用する。
【背景技術】
【0003】
構造的な構成要素あるいは部品を製造するために、強化コンポジット材料を用いることは、今や一般的である。特に、重さが軽いこと、強固、丈夫、耐熱性、自らを支える能力、および形作る上で適合するという、好ましい特性が求められるところでは広く普及している。そのような構成要素あるいは部品は、たとえば、航空、航空宇宙産業、人工衛星、レクレーション分野(レース艇やレーシングカーなど)、およびその他の分野で用いられる。
【0004】
そのような構成要素あるいは部品は、典型的に、マトリックス材料の中に埋め込んだ強化素材から構成される。強化の構成部分は、ガラス、炭素、セラミック、アラミド、ポリエチレン、および/または、物理的、熱的、化学的および/またはその他の好ましい特性、第1には応力に対する大きな耐久性を示すその他の材料から構成される。そのような強化材料、それらは結局は完成品の構成要素になるのであるが、それらを使用するとき、たとえば非常に大きな強度のようなそれら強化素材の望ましい特性が、完成したコンポジット部品に授けられることになる。構成要素である強化材料は、典型的には、織られたり編まれたり、あるいは編組される。通常、選択理由である強化材料の特性が最大限に活用されるように注意が図られる。また、そのような強化プリフォームについては、マトリックス材料と組み合わせることにより必要な完成品を得、あるいは、完成品の最終生産のために役立つ在庫品を得る。
【0005】
必要な強化プリフォームを構成した後、マトリックス材料をプリフォームおよびその中に加えるようにする。それにより、強化プリフォームは、マトリックス材料で包まれ、マトリックス材料は強化プリフォームの構成要素の間のすき間部分を埋める。マトリックス材料としては、たとえば、エポキシ、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミック、炭素および/またはその他の材料で、必要とする物理的、熱的、化学的および/または他の特性を示すものなど、いろいろな材料を広く適用することができる。マトリックスとして用いる材料としては、強化プリフォームの材料と同じものでも良いし、異なるものでも良く、また、物理的、化学的、熱的あるいは他の特性が類似したものでも良いし、類似しないものでも良い。しかし、通常、それらは強化プリフォームと同じ材料ではなく、また、物理的、化学的、熱的あるいは他の特性が類似しない。なぜなら、第1にコンポジットを用いる通常の目的は、ただ一つの構成材料だけでは得ることができない組合せ特性を完成品で得ることにあるからである。強化プリフォームおよびマトリックス材料は、そのように組み合わされた後、熱硬化処理あるいは他の公知の方法で同じ作業工程において硬化および安定化され、さらに、目的とする構成部品を製造するための他の作業工程に入る。ここで、そのように硬化した時点において、マトリックス材料の固体化したものが、通常、強化材料(たとえば、強化プリフォーム)に非常に強く付着していることに気付くことが大事である。結局、完成品上の応力が、繊維間の接着剤として機能するそのマトリックス材料を特に通して、補強された強化プリフォームの構成材料に有効に移され保持される。
【0006】
航空機の胴体に対し、そのような強化プリフォームを含むコンポジット材料を用いることが増すことにより、コンポジットの窓フレームが必要になっている。在来の金属製のフレームをこれに使うことができない。なぜなら、コンポジット胴体と金属製フレームとの熱膨張係数の間に違いがあるからである。その上、コンポジットと金属とが接触するときに生じる腐食問題をなくすため、寄生バリヤー層を用いなければならない。それらのバリヤー層は、全体の重量を増すだけでなく、製造コスト増をきたす。
【0007】
航空機の窓フレーム10は、たとえば図1に示すように、卵形であって、フレームの主要な軸が円筒形の胴体に適合するよう曲がっている。窓フレーム10の断面形状は、たとえば図2に示すように、一般に一様である。しかし、その形状には複雑な形を含むことができる。たとえば、外側の端に起立した脚20、そしてまた、「ジョグル(オフセットフランジ)」15と称し、航空機の本体に対して窓を密閉するのを助けるものなどがある。起立した脚20は、フレーム10が卵形であるため、コンポジット設計に組み込むことが特に困難な形である。この形を今までのファブリックあるいはテープによって形作るためには、ダーツを用いて曲がった形を作らなければならない。しかし、そのようなダーツは、プリフォームを加工するための労力を増し、しかも、結果として得るコンポジットの強度を減じる。
【0008】
起立した脚を必要としない解決策が開発され、たとえば、ボーイング787の航空機に現在使用されている(たとえば、米国特許公開第2008/0078876および2008/0169380)。このシンプルな形態は、たとえばヘキセル社のHexMC(ヘックスエムシー、登録商標)のようなSMC(複合材料の中間基材)とともに、圧縮成形プロセスを用いて作ることができる。しかし、起立した脚を必要とする構造であるため、起立した脚だけでなく本体に連続ファイバを供給することができ、しかも、フレームの重量減および/あるいは性能向上を導く方法がまだ必要である。
【0009】
たとえば、WO2005/115728は、航空機の外板に取り付けるための窓フレームの製造方法に関する。その構造物は、外側フランジ、内側フランジ、およびそれら2つのフランジ間に垂直に配列した垂直フランジを含む。
【発明の概要】
【0010】
したがって、この発明の一つの目的は、今までのものに比べて、重量減および/あるいは性能向上を図ることができる3次元のプリフォームの形成方法を提供することである。
【0011】
この発明の他の目的は、今までの構造物の中で述べた弱い接合をなくすことである。そのために、たとえば本体や脚のような異なる部分を全体的に織り、境界面のすべてを横切る連続ファイバが存在するようにする。
【0012】
この発明の一つの実施態様は、1層または2層以上のたて糸操りファブリック(ワープ・ステアード・ファブリック)を含む3次元の織りプリフォームである。たて糸操りファブリックの部分を型の中に押し付けることによって、起立した脚を形成する。そのプリフォームは、本体部分に起立した脚およびジョグルを含むことになるだろう。本体部分と起立した脚とを一体的に織り、それにより、プリフォームを横切る連続ファイバを得る。たて糸操りファブリックの第1部分には、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)があり、たて糸操りファブリックの第2部分には、一般のカーボン・ファイバがあり、そして、たて糸操りファブリックの第3部分には、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)がある。たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織ることができる。たて糸操りファブリックは、単一あるいは多層のファブリックである。プリフォームは、航空機の窓フレーム部分になる。
【0013】
別の実施態様は、1層または2層以上のたて糸操りファブリック(ワープ・ステアード・ファブリック)を含む3次元の織りプリフォームから成る強化コンポジットである。たて糸操りファブリックの部分を型の中に押し付けることによって、起立した脚を形成する。そのプリフォームは、本体部分に起立した脚およびジョグルを含むことになるだろう。本体部分と起立した脚とを一体的に織り、それにより、プリフォームを横切る連続ファイバを得る。たて糸操りファブリックの第1部分には、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)があり、たて糸操りファブリックの第2部分には、一般のカーボン・ファイバがあり、そして、たて糸操りファブリックの第3部分には、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)がある。たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織ることができる。たて糸操りファブリックは、単一あるいは多層のファブリックである。コンポジットは、航空機の窓フレーム部分になる。コンポジットは、マトリックス材料中、織りプリフォームを含浸および硬化することにより形成する。
【0014】
さらに別の実施態様は、3次元の織りプリフォームを形成する方法である。その方法は、たて糸操りファブリックを織る工程、および1層または2層以上のたて糸操りファブリックを配して所定の形を作る工程を備える。また、その方法は、たて糸操りファブリックの部分を型の中に押し付けることによって、起立した脚を形成することを含む。その方法は、プリフォームの本体部分にジョグルを形成する工程を含む。本体部分と起立した脚とを一体的に織り、それにより、プリフォームを横切る連続ファイバを得る。たて糸操りファブリックの第1部分には、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)があり、たて向きファブリックの第2部分には、一般のカーボン・ファイバがあり、そして、たて糸操りファブリックの第3部分には、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)がある。たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織ることができる。たて糸操りファブリックは、単一あるいは多層のファブリックである。プリフォームは、航空機の窓フレーム部分になる。
【0015】
さらにまた別の実施態様は、強化コンポジットを形成する方法であり、3次元の織りプリフォームを形成する各工程を含む。その方法は、たて糸操りファブリックを織る工程、および1層または2層以上のたて糸操りファブリックを配して所定の形を作る工程を備える。また、その方法は、たて糸操りファブリックの部分を型の中に押し付けることによって、起立した脚を形成することを含む。その方法は、プリフォームの本体部分にジョグルを形成する工程を含む。本体部分と起立した脚とを一体的に織り、それにより、プリフォームを横切る連続ファイバを得る。たて糸操りファブリックの第1部分には、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)があり、たて糸操りファブリックの第2部分には、一般のカーボン・ファイバがあり、そして、たて糸操りファブリックの第3部分には、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)がある。たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織ることができる。たて糸操りファブリックは、単一あるいは多層のファブリックである。コンポジットは、航空機の窓フレーム部分になる。コンポジットは、マトリックス材料中、織りプリフォームを含浸および硬化することにより形成する。
【0016】
この発明のプリフォームは、たて糸ファイバに対する今までのパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。また、プリフォームは、今までの織りパターン、たとえば、平織り、あや織り、朱子織りなどの織りパターンを用いて織ることができる。カーボン・ファイバ(炭素繊維)が好ましいが、この発明は、ストレッチ・ブロークン可能なものを含む他の繊維にも実際上適用することができる。適用可能な繊維として、ストレッチ・ブロークン可能なものには、たとえばカーボン・ファイバ、ガラス、セラミック、そしてまた、ストレッチ・ブロークンが不可能あるいは不要なものには、たとえば、ペピン社が製造するDiscotex(ディスコテックス、登録商標)がある。
【0017】
この発明の織りプリフォームは、補強脚を伴う輪郭フレームを利用する、いろいろな構造に適用することができ、その例が航空機の窓フレームである。
【0018】
この発明を特徴づける新規ないろいろな技術的事項について、特には、添付のクレーム(そこに示した事項はこの出願の開示の一部である)に指摘する。この発明、ならびに、それを使用することによって得る作用効果および特定の目的について良く理解するため、詳細な説明を参照されたい。そこには、この発明の好ましい実施形態(これに限定されない)が図面に示されている。
【0019】
この中で用いる用語「備えている(comprising)」および「備える(comprises)」は、「含んでいる(including)」および「含む(includes)」という意味になるし、あるいは米国特許法におけるそれらの意味にもなる。また、「本質的に有している(consisting essentially of)」および「本質的に有する(consists essentially of)」の用語は、クレームで用いるときには、米国特許法におけるそれらの意味である。この発明の他の考え方(形態)については、以下の説明に記載されているか、その記載から自明である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】航空機の窓フレームの構成図である。
【図2】図1の2−2線に沿って示す航空機の窓フレームの断面図である。
【図3】この発明の一実施形態であって、「操り」織りを用いて得た卵形ファブリックの構成図である。
【図4】この発明の一実施形態であって、3次元の織りプリフォームを形成する際の一工程である。
【図5】この発明の一実施形態であって、3次元の織りプリフォームを形成する際の一工程である。
【図6】この発明の一実施形態であって、3次元の織りプリフォームを形成する際の一工程である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以後この発明について添付の図面を参照しながら、より詳しく説明する。図面には、好ましい実施例を示す。しかし、この発明は、多くのいろいろな形態で実施することができ、ここに述べる実施例に限定されるわけではない。むしろ、図示するそれらの実施例は、開示が全体に行き渡り完全になるようにし、当業者にこの発明の考え方を充分に伝えるためのものである。
【0022】
引き続く説明において、図面を通して同様あるいは対応する部分に対し同一の符号を付ける。そしてまた、以下の説明中、たとえば「上部の」、「下部の」、「上」、「下」、「第1の」、「第2の」およびその他の用語は、便宜的なものであり、文字どおりに解釈されるわけではない。
【0023】
さて、図面に戻ると、この発明の一実施例は、高強度のものに用いる3次元の織りプリフォームを製造する方法である。高強度のものとして、たとえば、航空機の窓フレーム、コンポジットのタービンファンケース、ジェットエンジンの格納リング、航空機の胴体フレームあるいは航空機エンジンにナセルを取り付けるためのフランジ付きリングなどがある。ここでは航空機の窓フレームを好ましい実施例として挙げるが、この発明はそれに限定されるわけではない。たとえば、ここに述べる織りプリフォームあるいは製法を、上述したものや同種のものの構造のいずれの製造にも利用することができる。
【0024】
この発明の一実施態様による方法では、独特なテキスタイル製造技術、すなわち、「たて糸操り(warp steering)」と称する技術を用いる。「たて糸操り(warp
steering)」という用語は、たて糸に対する差動テークアップ機構を指し、その差動テークアップ機構はたて糸を必要な形に「操り導き」、直線織り、ポーラ織り(polar weaving)あるいはそれらの組み合わせをすることによって、ファブリックあるいはプリフォームのX−Y面における形を実際上どのような形にもすることができる。この発明の一実施形態により、「操り」織りを用いて形成した、そのようなたて糸操りファブリックの卵形の一例30を図3に示す。卵形のファブリック30は、ある面において平らであり、X−Y面で曲線状の形である。そのような配置構造において、各たて糸32は、経路の長さが異なり、競技トラックの走路ラインと同様である。それに対し、各よこ糸34は、ファブリックの端部に対していつも直角をなしあるいは直交している。すなわち、1または2以上のたて糸32に織り込むよこ糸34の箇所において、よこ糸34は、たて糸32がとる曲線経路とは無関係に、1または2以上のたて糸32と常に直交しているのである。
【0025】
この発明の一実施態様によれば、この技術を用いることにより、図1に示すようなコンポジットの窓フレームを形成する。その窓フレームは、起立した脚20および「ジョグル」15などの特徴を含むが、今までの材料が必要とするダーツを用いた作業を必要としない。この実施例による方法では、選択領域における周辺を取り巻くファイバとして、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(「SBCF」)を用いることにより、起立した脚およびジョグルをプリフォームに一体に形成する。織りプリフォームは、結果的に、フレームの周辺方向および半径方向に連続したファイバをもつことになる。
【0026】
この方法による操り織りは、プログラム可能な差動テークアップ機構を備える織機で実行することができ、それにより、窓フレームの必要な卵形を得ることができる。操り織りのファブリック30において、たて糸は周辺方向に連続し、よこ糸は、特定部分の曲率半径に関する、半径方向に常に方向付けられる。
【0027】
ファブリックの連続した層を多数互いの上に重ねることにより、必要な厚さにすることができる。追加的な強度および/または剛性が必要であれば、軸外れ方向(また、特定部分の曲率半径に関して)のファイバを伴うファブリックの層を追加することによって、操り織りのファブリックの層間に差し入れることもできる。その代わりに、操り織りのファブリックを多層のファブリックとして織ることができる。多層のファブリックは、必要なパターンの1または2以上のたて糸および/またはよこ糸を一体に保持している。ファブリックについては、たて糸ファイバに対する今までのパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。また、ファブリック自体は、今までの織りパターン、たとえば、平織り、あや織り、朱子織りなどの織りパターンを用いて織ることができる。カーボン・ファイバ(炭素繊維)が好ましいが、この発明は、ストレッチ・ブロークン可能なものを含む他の繊維にも実際上適用することができる。適用可能な繊維として、ストレッチ・ブロークン可能なもの(たとえばカーボン・ファイバ、ガラス、セラミックなど)、そしてまた、ストレッチ・ブロークンが不可能あるいは不要なものがある。たとえば、この発明に用いる繊維として、ペピン社が製造する不連続トウ、Discotex(ディスコテックス、登録商標)がある。それをテキスタイル構造物に織ると、そのテキスタイル構造物は、強化あるいは補強方向に伸びることにより、出発時点の単純なプリフォーム形状から複雑な形状を形成することができる。
【0028】
Discotex(ディスコテックス、登録商標)を製造するとき、強化糸あるいはトウを分離した長さに切断し、それら切断した糸あるいはトウを整列させて不連続のトウを形成する。このトウは、長い不連続の重なり合った強化トウ部分から構成されており、それら強化トウ部分には整列した連続ファイバと外包みが結合している。整列した連続ファイバと外包みは、テキスタイル作業中にDiscotex(ディスコテックス、登録商標)トウを扱うために必要であるが、それらはまた、マトリックス前駆体材料としても用いる。後の処理工程で連続ファイバが必要でない場合には、それを取り除いてすべて不連続なテキスタイル材料を生み出すことができる。Discotex(ディスコテックス、登録商標)ファブリックの伸びによって、複雑な輪郭を迅速に作り上げることができ、それと同時にファイバの方向性および繊維体積含有率を維持する。ファブリックについて労力がかかる切断やダーツを除くことができ、また、この技術は、ガラス、炭素、セラミックを含むどのようなタイプの強化糸にも適用することができる。
【0029】
最初のプリフォームあるいはファブリック30が平らであることに留意されたい。しかし、3次元のプリフォームの最終の形は、形成方法を用いて進展し、起立した脚、ジョグル、および主軸に沿って全体に曲がった形を生じることになる。この形成については、操り織りファブリックのたて糸方向にストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)を用いることによる。それにより、ファブリックは、周辺を取り巻く方向に必要とされる長さとなり、プリフォームがしわのない平らな状態になる。よこ糸方向には在来のファイバを用い、ファブリックの幅を断面が所定の円弧長さにする。部分的によこ糸を伸ばすことが必要な幾何学的配置あるいは形を求めるなら、よこ糸方向にストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)を用いることができる。ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)を用いる際には、実際の形成工程において、必要な全長がファイバの許容長さを超過しないようにする。
【0030】
一つの実施例の方法は、図4および5に示すように行う。この実施例において、織りプリフォーム30は、たとえば、ファブリックの一部分36のたて糸としてストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)を用いて形成し、そしてまた、ファブリックの他の部分38のたて糸を今までのカーボン・ファイバで形成する。一部分36は、たとえば、卵形プリフォームの内側周辺領域であり、他の部分38は、たとえば、外側の周辺領域である。この場合、プリフォーム30の外方端部40は、たとえば、形成ツール45の上部に留めておき、プリフォーム30を雌型あるいは形成ツール表面42に押し付ける。部分36のストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)は、ファイバが最初のプリフォームの小さな径から最後の部分の大きな径になるにつれて、伸びて長くなる。プリフォーム30を雌型あるいは形成ツール表面42に押し付けることは、遠心圧縮、あるいは公知の方法の一つを用いて行う。そのような方法の一つは、膨張式ツールを用いる方法であり、プリフォーム30に均一なラジアル力を与えるように加圧する。別の方法は、多部分型押しを用いることにより、引き続く成形のためラジアル荷重の下、プリフォーム30を所定位置に動かし固定する。
【0031】
留意すべきことは、プリフォームの内側端部のストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)が最も大きな伸び率をもち、最大の伸びが起立脚の高さ、ジョグルの深さ、プリフォームの全幅、および曲げの部分的な最小径に依存することである。
【0032】
別の実施例の方法を図6に示す。この実施例において、織りプリフォーム30は、たとえば、端部部分36,36(卵形プリフォームあるいはファブリック30の内側および外側を取り巻く周辺領域)のたて糸方向にストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)を用い、そして、ファブリックの中心部分38のたて糸を今までのカーボン・ファイバで形成する。起立した脚20になるであろうプリフォーム30の部分は、プリフォームの本体上に折り返すことができるように実際に織る。この特徴は、形成時に起立脚20を周辺の圧縮に立ち入れないようにするために必要である。
【0033】
プリフォーム30は、今までのたて糸を含む領域22上、ツールに留める。そして、プリフォーム30の左側36を型42に押し込むことにより、ジョグル15を形成する。また、プリフォーム30の右側36を型42へと一様に押し上げることにより、起立脚20を形成する。プリフォーム30を雌型あるいは形成ツール表面42に押し付けることは、先に述べたように、遠心圧縮、あるいは公知の方法の一つを用いて行う。そのような方法の一つは、膨張式ツールを用いる方法であり、プリフォーム30に均一なラジアル力を与えるように加圧する。別の方法は、多部分型押しを用いることにより、引き続く成形のためラジアル荷重の下、プリフォーム30を所定位置に動かし固定する。
【0034】
留意すべきことは、プリフォームの内側端部のストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)が通常最も大きな伸び率をもつこと、およびどの形成方法が実行可能かを決まるのは、その特徴であることである。最大の伸びは、また、起立脚の高さ、ジョグルの深さ、プリフォームの全幅、および曲げの部分的な最小径に依存する。
【0035】
必要な3次元の形にファブリックを成形した後、たとえば、トタンスファー成形のような在来の樹脂注入法を用いて、プリフォーム30をコンポジットへと処理加工する。たとえば、この一実施例によるプリフォームは、図1に示すような航空機の窓フレーム10に加工することができる。その構造物10は、今までに述べた各実施例における織りプリフォームから構成される。そのプリフォームは、個々の層の切断およびダーツを行わずに製造することができる。切断やダーツをなくすことによって、結果として得る構造物の性能は勿論のこと、強度を向上させることができる。
【0036】
この発明のプリフォームは、たて糸ファイバに対する今までのパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。カーボン・ファイバ(炭素繊維)が好ましいが、この発明は、ストレッチ・ブロークン可能な他のタイプの繊維にも実際上適用することができる。たとえばカーボン、ナイロン、レーヨン、ファイバーグラス、綿、セラミック、アラミド、ポリエステル、および金属糸あるいは繊維などがある。
【0037】
この発明のたて糸操りファブリック(ワープ・ステアード・ファブリック)は、たとえばカーボン、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ファイバーグラス、綿、ガラス、セラミック、アラミド、およびポリエチレン、あるいはこの分野で知られた他の材料など、いろいろな材料で作り上げることができる。最終的な構造物は、マトリックス材料、たとえば、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミック、および炭素などを用いて、樹脂トランスファー成形や化学的気相ろ過などの樹脂含浸法によって含浸し、それによって、3次元のコンポジット構造物を形成する。
【0038】
この発明の織りプリフォームは、補強脚を伴う輪郭フレームを利用する、いろいろな構造に適用することができる。ここに一例として挙げたものは、航空機の窓フレームである。
【0039】
この発明の好ましい実施例および変形例について詳しく述べたが、この発明は、それらの実施例や変形例に限定されるわけではない。特許請求の範囲に記載するこの発明の考え方の範囲内において、他の変形や修正を行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
10 窓フレーム
15 ジョグル
20 起立脚
30 プリフォーム
32 たて糸
34 よこ糸
36 一部分
38 他の部分
40 外方端部
42 雌型あるいは形成ツール表面
45 形成ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2以上のたて糸操りファブリックを備える、3次元の織りプリフォーム。
【請求項2】
前記たて糸操りファブリックの一部分が型に押し付けられて起立した脚を形成する、請求項1のプリフォーム。
【請求項3】
前記プリフォームは、本体部分に起立した脚および/またはジョグルを備える、請求項2のプリフォーム。
【請求項4】
前記本体部分および起立した脚は、一体に織られており、それにより、プリフォームを横切る連続したファイバがある、請求項3のプリフォーム。
【請求項5】
前記プリフォームは、窓フレームの一部である、請求項4のプリフォーム。
【請求項6】
前記プリフォームは、航空機の窓フレームの一部である、請求項5のプリフォーム。
【請求項7】
前記たて糸操りファブリックの第1部分には、たて糸方向に、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)あるいは不連続トウ、またはストレッチ・ブロークン可能あるいはストレッチ・ブロークンできないタイプのファイバがある、請求項1のプリフォーム。
【請求項8】
前記たて糸操りファブリックの第2部分には、たて糸方向に、一般のカーボン・ファイバがある、請求項7のプリフォーム。
【請求項9】
前記たて糸操りファブリックの第3部分には、たて糸方向に、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)あるいは不連続トウ、またはストレッチ・ブロークン可能あるいはストレッチ・ブロークンできないタイプのファイバがある、請求項8のプリフォーム。
【請求項10】
前記たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織られたものである、請求項1のプリフォーム。
【請求項11】
前記たて糸操りファブリックは、多層のファブリックである、請求項1のプリフォーム。
【請求項12】
前記たて糸操りファブリックにおけるたて糸ファイバパターンは、プライ対プライ、直交、およびアングルインターロックの中の一パターンである、請求項8のプリフォーム。
【請求項13】
前記たて糸操りファブリックは、よこおよびたての複数の糸あるいはファイバを織り交ぜて構成したものであり、それらのよこおよびたての糸あるいはファイバは、カーボン、ナイロン、レーヨン、ファイバーグラス、綿、セラミック、アラミド、ポリエステル、および金属糸あるいは繊維の中の一つである、請求項1のプリフォーム。
【請求項14】
請求項1による3次元の織りプリフォームを備える強化コンポジット。
【請求項15】
マトリックス材料をさらに備える、請求項14のコンポジット。
【請求項16】
前記マトリックス材料は樹脂であり、前記コンポジットは、樹脂トランスファー成形および化学的気相ろ過のいずれかによって構成される、請求項15のコンポジット。
【請求項17】
前記マトリックス材料は、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミック、および炭素の中の一つである、請求項15のコンポジット。
【請求項18】
3次元の織りプリフォームを製造する方法であって、次の各工程を備える方法。
・たて糸操りファブリックを織る工程、および
・前記たて糸操りファブリックの1または2以上の層を整えることにより、所定の形を形成する工程
【請求項19】
前記たて糸操りファブリックの一部分を型に押し付けることにより、起立した脚を形成する工程をさらに備える、請求項18の方法。
【請求項20】
前記プリフォームの本体部分に、ジョグルを形成する工程をさらに備える、請求項19の方法。
【請求項21】
前記本体部分および起立した脚を一体に織ることによって、プリフォームを横切る連続したファイバが存在するようにする、請求項20の方法。
【請求項22】
前記プリフォームは、窓フレームの一部である、請求項21の方法。
【請求項23】
前記プリフォームは、航空機の窓フレームの一部である、請求項22の方法。
【請求項24】
前記たて糸操りファブリックの第1部分には、たて糸方向に、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)あるいは不連続トウ、またはストレッチ・ブロークン可能あるいはストレッチ・ブロークンできないタイプのファイバがある、請求項18の方法。
【請求項25】
前記たて糸操りファブリックの第2部分は、一般のカーボン・ファイバがある、請求項24の方法。
【請求項26】
前記たて糸操りファブリックの第3部分には、たて糸方向に、ストレッチ・ブロークン・カーボン・ファイバ(SBCF)あるいは不連続トウ、またはストレッチ・ブロークン可能あるいはストレッチ・ブロークンできないタイプのファイバがある、請求項25の方法。
【請求項27】
前記たて糸操りファブリックは、差動テークアップ機構を備える織機で織られる、請求項18の方法。
【請求項28】
前記たて糸操りファブリックは、多層のファブリックである、請求項18の方法。
【請求項29】
前記たて糸操りファブリックにおけるたて糸ファイバパターンは、プライ対プライ、直交、およびアングルインターロックの中の一パターンである、請求項28の方法。
【請求項30】
前記たて糸操りファブリックは、よこおよびたての複数の糸あるいはファイバを織り交ぜて構成したものであり、それらのよこおよびたての糸あるいはファイバは、カーボン、ナイロン、レーヨン、ファイバーグラス、綿、セラミック、アラミド、ポリエステル、および金属糸あるいは繊維の中の一つである、請求項18の方法。
【請求項31】
請求項18による3次元の織りプリフォームを形成する工程を備える、強化コンポジットの製造方法。
【請求項32】
前記プリフォームにマトリックス材料を含浸させる工程をさらに備える、請求項31の方法。
【請求項33】
前記マトリックス材料は樹脂であり、前記コンポジットは、樹脂トランスファー成形および化学的気相ろ過のいずれかによって形成される、請求項32の方法。
【請求項34】
前記マトリックス材料は、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミック、および炭素の中の一つである、請求項32の方法。
【請求項35】
複数のたて糸操りファブリック間に差し入れた、軸外れ方向に整列させたファイバを伴う、1または2以上のファブリック層をさらに備える、請求項1のプリフォーム。
【請求項36】
複数のたて糸操りファブリック間に、軸外れ方向に整列させたファイバを伴う、1または2以上のファブリック層を差し入れる工程をさらに備える、請求項18の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−506767(P2013−506767A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532279(P2012−532279)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050749
【国際公開番号】WO2011/041435
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(508135080)アルバニー エンジニアード コンポジッツ インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】