説明

耐摩耗性及び耐酸化性のタービン翼

【課題】従来技術から公知の欠点を回避し、新規部材の製造にも、リコンディショニング(レトロフィッティング)にも使用可能である、耐摩耗性及び耐酸化性のタービン翼を開発する。
【解決手段】請求項1の前提部に記載の耐摩耗性及び耐酸化性のタービン翼及び請求項12の前提部に記載のタービン翼を製造するための本発明による方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジニアリング科学及び材料科学の分野に関する。本発明は、耐摩耗性及び耐酸化性のタービン翼並びにそのような耐摩耗性及び耐酸化性のタービン翼の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン内での漏れ損失の低減は、数十年来の集約的な技術革新の主題である。ガスタービンの運転中、ローターとケーシングとの相対運動は不可避である。結果生じるケーシングもしくは翼の摩耗により、シール作用がもはや働かなくなる。この問題の解決策として、熱シールド上の研磨除去可能な厚いコーティングと翼端のアブレシブ保護コーティングとの組み合わせが準備される。
【0003】
付加的なコーティングを翼端に施すか又は該翼端の適した変性によって耐摩耗性を高める方法が、既に1970年代から公知である。同様に様々な方法が、そのような保護コーティングを、砥粒(炭化物、窒化物等)と耐酸化性材料との組み合わせにより、摩擦接触及び高温ガスによって引き起こされる酸化に対して同時に安定化させるために提案されている。しかしながら、提案された方法の多くは、製造の点で費用が掛かり、且つ煩雑でもあることから、商業的な使用をより難しくしている。
【0004】
それゆえ一般的に行われている対策の一つは、該翼端の摩耗に対する保護を完全に省き、そして熱シールドに特別な多孔質セラミックラビングコーティング(rub-in coatings)を付与することである。それらの高い多孔性に基づき、これらは保護されていない翼端からもある程度までラビングされる可能性がある。しかしながら、この方法は相当の技術的な危険性を伴っている。なぜなら、該多孔質セラミックラビングコーティングは、緻密なコーティングと同じ耐食性を保証しないからである。更なる危険性は、減摩特性に悪影響を及ぼし得る、多孔性セラミックラビングコーティングの運転条件下での変形(焼結による圧縮化)にある。このために、熱シールド上にセラミック保護コーティングを使用する場合、耐摩耗性(アブレシブ性)翼端との組み合わせが適している。
【0005】
ここ数十年において、アブレシブ翼端を製造するための多数の方法が開発されており、また数多くの特許によって保護されている(例えばUS6194086B1を参照のこと)。たしかに、アブレシブ翼端を形成するためのレーザー金属成形(LMF)の使用は1990年代初頭から公知であるけれども(例えばDE102004059904A1を参照のこと)、それでも、この方法は工業的規模で用いられることは依然として稀である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US6194086B1
【特許文献2】DE102004059904A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術から公知の欠点を回避することである。本発明が基礎とする課題は、新規部材の製造にも、リコンディショニング(レトロフィッティング)にも使用可能である、耐摩耗性及び耐酸化性のタービン翼を開発することであり、ここで、上記タービン翼の製造には、既存の製造プロセスを最小限に適合させることのみが要求される。
【0008】
そのような部品のここで記載される構成の特別な特徴は、通常のタービン翼との可能な範囲で最良の互換性及びその製造プロセスにある。これは現在の製造シーケンスの調節に少しの費用しか要さず、且つリコンディショニング及びレトロフィッティングの非常に興味深い可能性を切り開く。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、この目的は、請求項1の前提部に記載の耐摩耗性及び耐酸化性のタービン翼が以下の特徴部によって特徴付けられることで達成される:
− 少なくとも1つの耐酸化性の第一の保護コーティングが、メタリックコーティング、特にMCrAlYコーティングであること(M=Ni、Co又は両元素の組み合わせ)、
− この第一の保護コーティングが、少なくとも内側及び外側のクラウンエッジ又はウェブエッジに配置されていること、
− この第一の保護コーティングが、タービン翼の半径方向外側の翼端に存在しておらず、及び
− 半径方向外側の翼端が、公知のレーザー金属成形によって形成されている少なくとも単層の耐摩耗性及び耐酸化性の第二の保護コーティングから成り、その際、翼端のこの第二の保護コーティングが、外側及び/又は内側のクラウンエッジ又はウェブエッジに沿って、そこに配置される第一のメタリック保護コーティングと少なくとも部分的に重なる。
【0010】
請求項12の前提部に記載のタービン翼を製造するための本発明による方法は、以下の特徴部によって特徴付けられている:
− 半径方向外側の翼端の少なくとも1つの耐酸化性の保護コーティングが、制御加工、特に研磨除去、CNC切削除去及び/又は化学的コーティング除去によって除去され、且つ
− 耐摩耗性及び耐酸化性の保護コーティングが、次いで公知のレーザー金属成形によって翼端に一つの層で又は多数の層で、上記コーティングが、外側及び/又は内側のクラウンエッジ又はウェブエッジに沿って、予め適用された第一のメタリック保護コーティングと少なくとも部分的に重なるが、任意に予め適用されたセラミック遮熱コーティング(TBC)とは重ならないように適用される。
【0011】
本発明の利点は、高温ガスに曝されるタービン翼の基体が、全ての臨界表面で酸化から保護されており、且つ同時に翼端が、熱シールドとの摩擦接触に対して耐性を持っている点にあり、このことは高温ガス隙間を縮小させ、ひいては漏れ損失を低減することを可能にする。それによりタービンの効率は著しく上昇されることができる。
【0012】
本発明による翼は、高価でなく且つ簡単な方法によって製造されることができる。
【0013】
摩擦接触に対して増大したタービン翼の耐摩耗性によって、熱シールド上に比較的緻密なセラミックコーティングを適用することが可能になる。良好なラビング挙動は、このように熱シールド上のセラミックコーティングの必要とされる長期耐食性と結び付けることができる。
【0014】
タービン翼がレーザー金属成形(LMFステップ)直後に該タービンのローターに更なる熱処理なしにはめ込まれることができ、それによりタービン運転用に使用されることができることが特に有利である。
【0015】
更なる好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0016】
例として、メタリック保護コーティングがセラミック遮熱コーティングによって覆われていてよく、且つレーザー金属成形によって適用されている耐酸化性及び耐摩耗性の第二の保護コーティングが、メタリック保護コーティングとのみ少なくとも部分的に重なるが、セラミック遮熱コーティングとは重ならない。結果として、酸化に対する最適な保護が提供され、且つTBCの結着性は損なわれず、すなわち、TBCの剥離が防止される。
【0017】
更に、耐摩耗性及び耐酸化性の保護コーティングが、好ましくは立方晶窒化ホウ素である砥粒材料から、及び特に以下の組成(質量%記載):Cr 15〜30、Al 5〜10、Y 0.3〜1.2、Si 0.1〜1.2、その他 0〜2、残り Ni、Coを有する耐酸化性のメタリックバインダー材料から成る場合に有利である。
【0018】
そのうえ、耐摩耗性及び耐酸化性の多層保護コーティングにおける砥粒材料の割合が半径方向に向かって外側に増大する場合、これは負荷条件に対する最適な適応を保証することから有利である。
【0019】
本発明は、全種類のタービン翼に使用することができる。シュラウドなしの翼の場合、アブレシブコーティングは、クラウン(又はクラウンの一部)に適用される。シュラウド付翼の場合、該方法は、摩耗に対するシュラウドウェブの改善された保護を提供するのに使用することができる。
【0020】
タービン翼の記載される実現化は、新規部材の製造及びリコンディショニング(レトロフィッティング)のいずれにも適用することができる。ここでは、既存の製造プロセスの単に最小限の適応しか要求されない。
【0021】
特に関心を引く商業的可能性は、既存の翼のレトロフィッティング又はリコンディショニングである。これらの翼は、装着された場合に、漏れ損失の低減、ひいてはタービンの改善された効率を達成するために、本発明による方法によって部分変更を加えてもよい。このオプションでは、既に翼主要部に存在していてよい保護コーティングを事前に除去する必要はなく、これにより簡略化された製造法が可能となる。
【0022】
図面は、本発明の例示的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態によるクラウンとして形成された翼端を有するガスタービンのローターのタービン翼を示す図
【図2】図1におけるラインII−IIに沿った略断面図を示す図
【図3】LMF法によって作製された耐摩耗性及び耐酸化性のタービン翼端の補強部の本発明による2つの異なるタイプの写真画像を示す図
【図4】シュラウド付タービン翼を基礎とする本発明の更なる例示的な実施形態の概略図を示す図
【図5】2つの変法における本発明によるタービン翼の製造のための製造シーケンスを示す図
【図6】更なる1つの変法における本発明によるタービン翼の製造のための製造シーケンスを示す図
【図7】LMF法のための例示的なコーティング装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を、例示的な実施形態及び図1〜6に基づいて以下でより詳細に説明する。
【0025】
図1は、ガスタービンの(ここでは概略的にのみ示されている)ローター13のタービン翼1の透視図であり、他方で、図2は、図1におけるラインII−IIに沿った部分を拡大した形で示す。タービン翼1は、(ローターに対して)半径方向rに延び、且つ半径方向に延びる内側及び外側のクラウンエッジを有するクラウンとして翼端9に形成されている翼主要部2を有する。翼主要部の基材は、例えばニッケル基超合金である。翼主要部の表面は、少なくともクラウンエッジで(図2を参照のこと)、耐酸化性の保護コーティング4、この場合、好ましくは自体公知のプラズマ溶射法によって適用されたMCrAlYメタリックコーティングにより覆われている。このメタリック保護コーティング4は、タービン翼1の半径方向で最も外側の翼端9に存在しておらず、具体的に言えば、タービン翼を製造するための先行する方法ステップにおいてそのような保護コーティングが適用されていなかったためか、又はこの保護コーティングが機械的及び/又は化学的な方法により除去されたためである。完成したタービン翼を製造するための最後の方法ステップにおいて、本発明により半径方向外側の翼端が、耐摩耗性及び耐酸化性の、公知のレーザー金属成形によって形成されている第二の保護コーティング5から形成されており、その際、翼端9のこの第二の保護コーティング5は、外側及び/又は内側のクラウンエッジに沿って、そこに配置される第一のメタリック保護コーティング4と少なくとも部分的に重なる。コーティング5は、単層又は多層の形態を有してもよい。タービン翼1の長さLは、特に、LMFによって適用された多層の重なり合う保護コーティングにより容易に変化させることができる。
【0026】
保護コーティング5は、好ましくは立方晶窒化ホウ素(cBN)である砥粒材料6、及び好ましくは以下の化学組成(質量%記載):Cr 15〜30、Al 5〜10、Y 0.3〜1.2、Si 0.1〜1.2、その他 0〜2、残り Ni、Coを有する耐酸化性のバインダー材料から成る。実際に用いられている特に適したバインダー材料は、例えば市販の合金Amdry995である。
【0027】
これは、本発明によりコーティングされた翼端の写真を示す図3a及び3bに特に申し分なく見られることができる。バインダー材料7に埋め込まれている尖ったcBN粒子は、耐摩耗性及び耐酸化性の保護コーティング5において砥粒材料6として簡単に同定することができる。この保護コーティング5は、1000Wの最大出力を有するファイバー結合型高出力ダイオードレーザーを利用したLMF法によって形成されていた。図3a(左側)では、新規コーティングが、予めプラズマ溶射によって適用されているMCrAlY保護コーティング4と部分的に重なっている。図3bでは、タービン翼1が、MCrAlYコーティング4上に付加的なセラミック遮熱コーティング(TBC)4aを有している。
【0028】
図4は、半径方向に翼端の外側に配置されており、且つウェブ12を有するシュラウド付きの本発明によるタービン翼1の更なる例示的な実施形態を概略的に示す。この場合も、LMF法によって適用されており、且つ少なくとも部分的にメタリック保護コーティング4と重なる耐摩耗性及び耐酸化性の保護コーティング5により、非常に高品質の翼を得ることができる。
【0029】
ここで記載される試みの特別な特徴は、そのような耐摩耗性保護コーティング5の特別な設計である。単層又は多層のコーティング5は、それが他の既存の保護コーティング4と少なくとも部分的に重なるように適用される。例として、既存の保護コーティング4は、たいていの高負荷タービン翼において、翼主要部の表面を酸化及び腐食から保護する、従来技術から公知のMCrAlYコーティング(M=Ni、Co又は両元素の組み合わせ)である。更に、セラミック遮熱コーティング(TBC)が、付加的に翼主要部のこのMCrAlYコーティングに適用されていてよく、そしてこの遮熱コーティングの結着性は、提案された本方法によって損傷されない。
【0030】
既存の保護コーティングと重ねることによって、翼端の耐酸化性アブレシブコーティングの提案された実施形態は、高温ガスに曝される翼端の表面が効果的に保護されることを保証する。LMF法によるこの耐摩耗性コーティングの適用はまた、このコーティング処理を最終的な製造ステップとして製造プロセスに組み込むことも可能にする。それにより以下の技術的な問題が回避される:
− MCrAlYコーティングの場合、最適な結合を保証するために、表面から酸化物を前もってトランスファアークを用いたサンドブラスト処理及び/又は洗浄によって取り除かなければならない。慣例の(例えば電着)法により適用されたアブレシブコーティングは、MCrAlYコーティングの準備中ずっと適切なマスキングによって損傷から保護されている必要があり、これにより煩雑性が増し、それに付加的なコストが掛かる。
− MCrAlYコーティングは、たいていプラズマ溶射によって製造される。該コーティングが適用された後、拡散熱処理ステップが>1050℃の範囲の温度で必要とされる。この処理ステップにおいて、高い温度は、事前に適用されたアブレシブコーティングの特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0031】
上記の問題は、ここで記載されるように、該アブレシブコーティングがプロセスチェーンにおける最後のステップとしてレーザー金属成形によって適用される場合に回避される。簡単な且つ低コストの実施は、半径方向外側のMCrAlYコーティング(場合により、TBCコーティングも)を、切削除去又は研磨除去又は化学的処理によって規定の量を完全に除去することにある。次いで耐摩耗性コーティングが、LMF法によって、その後に露出した基材に適用される。ここで決定的なのは、処理が制御された形で行われる場合に、翼の隣接領域への影響を最小に保ち続けるレーザービームの局所的に非常に制限された作用である。それにより、このような耐酸化性コーティングをTBC保護コーティングの直ぐ近くでこれを損傷させずに適用することが可能である(例えば、図4bを参照のこと)。
【0032】
通常の(例えば電着)コーティング法とは対照的に、コーティングされるべきでないタービン翼の表面(例えば翼付根)は、マスキング法によって保護される必要はない。LMF処理は溶接法であり、且つ付加的な拡散熱処理を行わずに翼の基体と安定な冶金結合を生み出す。少量の熱の局所的な導入によって、素早い凝固プロセスにも関わらず局所的な硬化が最小限に維持される。それにより該部品は、耐摩耗性の保護コーティングの適用直後に、更なる後続のステップを伴わずに取り付けられることができる。
【0033】
図5は、種々の可能な実施を示す。第一の設計変法(図5a〜5c)には、耐摩耗性MCrAlY保護コーティング4が、例えばプズマ溶射によって、まず翼主要部2に適用されている。次いでこの保護コーティング4は、例えば研磨除去又は切削除去によって、翼端で局所的に除去されている。最後の処理として、耐摩耗性及び耐酸化性の保護コーティング5がLMF法によって適用されている。この場合、最後に適用された保護コーティング5は、予め適用された耐酸化性のMCrAlY保護コーティングと4少なくとも部分的に重なる。全ての翼体は、それによって高い運転温度でも酸化に対して保護されている。
【0034】
既に上記した通り、先行する更なる製造ステップにおいて、翼端に付加的な遮熱コーティング4aを備え付けることが可能である。図5fで示される設計変法において、耐摩耗性の保護コーティング5は、TBCコーティング4aの後に(図5d)、及びMCrAlYコーティング4及びTBCコーティング4aが研磨された後に(図5e)なって初めて、レーザー金属成形によって翼端に適用される。この場合、(例えばロボット又はCNCによる)コーティングヘッドの適した制御は、LMF法中にレーザービームとセラミックコーティングとの間でいかなる相互作用も起きないことを保証する。第一の変法における場合とちょうど同じように、耐摩耗性及び耐酸化性の保護コーティング5は、しかしながら、酸化に対する翼主要部2の最適な保護を保証するために、前もって適用されたMCrAlY保護コーティング4と重なる。熱の導入を局所的に制限し、且つ最小限にすることによって、TBCの剥離が起きることなく、LMF法をセラミック遮熱コーティング4aの直ぐ近くで実施することが可能である。
【0035】
更なる例示的な実施形態は、図6に示されている:この変法は、例えば、耐摩耗性及び耐酸化性の保護コーティング5が個々のパスにより適用されることができないほど、タービン翼のクラウン3が幅広い場合に使用することができる。このような場合、耐酸化性バインダー材料7から成る少なくとも1つの多層の重なり合う中間コーティング8が、まず適用されていてよい。次いで、少なくとも1つの更なるストリップが、最初に析出されたコーティングにバインダー材料8と砥粒材料6とを組み合わせた供給の下で適用される。ここで、砥粒6が翼端9の全体の幅にわたって分布している必要はない。それにより、図6で示される変法は、耐酸化性及び耐摩耗性の翼端のコストを最適化した製造を可能にする。
【0036】
図7は、本発明による方法の最後のステップを実施するための例示的なコーティング装置14を示す。該装置14は、EP1476272B1に詳細に記載されており、この文献の開示内容は参照をもって本出願の一部を成したものとする。翼端9がレーザー金属成形に供される場合、アブレシブ材料6及び耐酸化性バインダー材料7は粉末ノズル内で混合され、キャリアーガス15によって搬送され、引き続き、集束された粉末噴流としてレーザービーム10の周りを同心円状に、レーザービーム10により生成された翼端の溶融池16中へと噴射される。付加的に、該レーザー金属成形中には、溶融池中の温度又は温度分布がオンラインで検知され(光学的温度信号17)、そしてこのデータは、レーザー金属成形中にレーザー出力を制御するために及び/又はレーザービーム10とタービン翼1との相対運動を制御して変化させるために、(図7では示されていない)制御系を利用して用いられる。
【0037】
本発明は、シュラウドを除いたタービン翼において多岐にわたって使用することができるが、しかし、シュラウドを有する部品にも使用することができる。そのつどの運転条件(温度、燃料)に依存するアブレシブコーティングの耐用寿命が考慮されなければならない。該耐用寿命は、耐酸化性バインダーマトリックス中に砥粒が良好に分布し、且つ完全に埋め込まれていることによって最適化される。それにも関わらず、本発明の主たる目的は、タービン翼端を、とりわけ、なじみ運転段階中に保護することである。これは数十〜数百時間の運転継続時間に相当する。
【0038】
当然の事ながら、本発明は記載した例示的な態様に制限されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
1 タービン翼
2 翼主要部
3 クラウン
4,4a 第一の耐酸化性の保護コーティング(4 メタリックコーティング、4a セラミック遮熱コーティング)
5 耐摩耗性及び耐酸化性の第二の保護コーティング
6 砥粒材料
7 バインダー材料
8 耐酸化性のバインダー材料から成る中間コーティング
9 翼端
10 レーザービーム
11 シュラウド
12 ウェブ
13 ローター
14 コーティング装置
15 キャリアーガス
16 溶融池
17 光学的温度信号
r 半径方向
L タービン翼の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼端(9)を有し、半径方向(r)に延び、且つ該翼端(9)で、半径方向(r)に延びる内側及び外側のクラウンエッジを有するクラウン(3)として形成されているか又は半径方向に延び、且つ側面エッジを有するウェブ(12)を有するシュラウド(11)として形成されている翼主要部(2)を有する、タービンのローター(13)のタービン翼(1)であって、その際、該翼主要部(2)の表面の少なくとも特定の領域に、耐酸化性材料から成る少なくとも1つの第一の保護コーティング(4、4a)が備え付けられている、タービンのローター(13)のタービン翼(1)において、
− 少なくとも1つの耐酸化性の第一の保護コーティング(4)が、メタリックコーティング、特にMCrAlYコーティングであり、
− 前記第一の保護コーティング(4)が、少なくとも内側及び/又は外側のクラウンエッジ又はウェブエッジに配置されており、
− 前記第一の保護コーティング(4)が、タービン翼(1)の半径方向外側の翼端(9)に存在しておらず、且つ
− 半径方向外側の翼端(9)が、公知のレーザー金属成形によって形成されている少なくとも単層の耐摩耗性及び耐酸化性の第二の保護コーティング(5)から成り、その際、翼端(9)の前記第二の保護コーティング(5)が、外側及び/又は内側のクラウンエッジ又はウェブエッジに沿って、そこに配置される第一のメタリック保護コーティング(4)と少なくとも部分的に重なることを特徴とする、タービンのローター(13)のタービン翼(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのメタリック保護コーティング(4)が、セラミック遮熱コーティング(4a)によって覆われており、且つ、その際、レーザー金属成形によって適用されている耐酸化性及び耐摩耗性の第二の保護コーティング(5)が、メタリック保護コーティング(4)とのみ少なくとも部分的に重なるが、セラミック遮熱コーティング(4a)とは重ならないことを特徴とする、請求項1記載のタービン翼(1)。
【請求項3】
前記の耐摩耗性及び耐酸化性の保護コーティング(5)が、砥粒材料(6)と耐酸化性のメタリックバインダー材料(7)とから成ることを特徴とする、請求項1又は2記載のタービン翼(1)。
【請求項4】
前記砥粒材料(6)が立方晶窒化ホウ素(cBN)であることを特徴とする、請求項3記載のタービン翼(1)。
【請求項5】
前記耐酸化性のバインダー材料(7)が、次の化学組成(質量%記載):Cr 15〜30、Al 5〜10、Y 0.3〜1.2、Si 0.1〜1.2、その他 0〜2、残り Ni、Coを有することを特徴とする、請求項3記載のタービン翼(1)。
【請求項6】
前記保護コーティング(5)における砥粒材料(6)の割合が、前記コーティングが多層の形態を有する場合、半径方向(r)で外側に向かって増大することを特徴とする、請求項3記載のタービン翼(1)。
【請求項7】
もっぱら耐酸化性バインダー材料(7)から成る中間コーティング(8)が、第一のメタリック保護コーティング(4)と耐摩耗性及び耐酸化性の第二の保護コーティング(5)との間に付加的に配置されており、その際、中間コーティング(8)が、第一の保護コーティング(4)に少なくとも部分的に重なり、且つ、その際、第二の保護コーティング(5)は他方で中間コーティング(8)に少なくとも部分的に重なることを特徴とする、請求項1又は2記載のタービン翼(1)。
【請求項8】
前記タービン翼(1)が、再生されたタービン翼であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のタービン翼(1)。
【請求項9】
前記タービン翼が、前記タービンの先立つ運転間隔においてアブレシブ翼端(9)なしで使用されていることを特徴とする、請求項8記載のタービン翼(1)。
【請求項10】
前記タービン翼(1)が、新規部品であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のタービン翼(1)。
【請求項11】
長さ(L)を有する請求項1から10までのいずれか1項記載のタービン翼(1)において、前記長さ(L)が、レーザー金属成形によって形成されたコーティング(5)によって変化させられることができることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のタービン翼(1)。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載のタービン翼(1)の製造法であって、その際、先行する製造ステップにおいて、タービン翼(1)の翼主要部(2)の表面の少なくとも特定の領域を、耐酸化性のメタリック保護コーティング(4)、特にMCrAlYコーティングによりコーティングし、且つ耐酸化性のセラミック遮熱コーティング(4a)を、任意に前記保護コーティング(4)に適用する製造法において、
− 半径方向外側の翼端(9)の少なくとも1つの耐酸化性の保護コーティング(4、4a)を、制御加工、特に研磨除去、CNC切削除去及び/又は化学的コーティング除去によって除去し、次いで
− 耐摩耗性及び耐酸化性の保護コーティング(5)を、公知のレーザー金属成形によって翼端(9)に一つの層で又は多数の層で、前記コーティングが、外側及び/又は内側のクラウンエッジ又はウェブエッジに沿って、予め適用された第一のメタリック保護コーティング(4)と少なくとも部分的に重なるが、任意に予め適用されたセラミック遮熱コーティング(4a)とは重ならないように適用することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のタービン翼(1)の製造法。
【請求項13】
前記翼端(9)のレーザー金属成形ステップ中に、砥粒材料(6)及び耐酸化性のバインダー材料(7)を粉末ノズル内で混合し、次いで集束された粉末噴流としてレーザービーム(10)の周りを同心円状に、レーザービーム(10)によって生成される翼端(9)の溶融池中へと噴射することを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
溶融池中の温度又は温度分布を、レーザー金属成形中にオンラインで検知すること、及びこのデータを、レーザー金属成形中にレーザー出力を制御するために及び/又はレーザービーム(10)とタービン翼(1)との相対運動を制御して変化させるために、制御系を利用して用いることを特徴とする、請求項12又は13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−99437(P2011−99437A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−245232(P2010−245232)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】