説明

脂溶性化合物の水分散性製品形態の製造用変性ルピンタンパク質

この発明は、0.1〜20質量%の乾燥質量含有率を有する天然由来のルピンタンパク質を含む水溶液又は水懸濁液のpHを3〜9に調整する工程と、前記ルピンタンパク質の乾燥質量に対して、0.01〜10質量%のプロテアーゼを添加する工程と、前記タンパク質溶液又は懸濁液を、5〜70℃の温度で、加水分解率が1〜30%になるまで、加熱する工程と、前記プロテアーゼを不活性化する工程とを含む変性ルピンタンパク質の製造方法、この製造方法によって得られる変性ルピンタンパク質、脂溶性活性成分又は着色剤と共に前記ルピンタンパク質を含む組成物、並びに、食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類又は医薬品類用の、富化剤、補強剤、及び/又は、着色剤としての前記組成物の使用に関する。さらに、この発明は、前記組成物を含む、食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類又は医薬品類に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新規なルピンタンパク質、その製造方法、新規なルピンタンパク質に由来する基質中に完全に分配された脂溶性活性剤及び/又は着色剤を含有する組成物、並びに、前記組成物の製造方法に関する。この発明はまた、食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類又は医薬品類用の、着色剤、及び/又は、富化剤若しくは補強剤としてのこの発明の新規組成物の使用方法に関する。さらに詳細には、この発明は、酵素的及び/又は物理的に処理されたルピンタンパク質と、脂溶性活性剤又は着色剤とを含む新規組成物、これら組成物の製造方法、及び、食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類又は医薬品類用の着色及び/又は富化若しくは補強用添加剤としてのこれら組成物の使用方法、並びに、これらの組成物を含む食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類又は医薬品類に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
この発明の一態様においては、この発明は、天然由来のルピンタンパク質の酵素加水分解工程を含む変性ルピンタンパク質の製造方法に関する。さらに詳細には、この発明は、0.1〜20質量%の乾燥質量含有率を有する天然由来のルピンタンパク質の水溶液又は水懸濁液のpHを3〜9に調整する工程と、ルピンタンパク質の乾燥質量に対して、0.01〜10質量%のプロテアーゼを添加する工程と、タンパク質溶液又は懸濁液を、5〜70℃の温度で、加水分解率が1〜30%になるまで、加熱する工程と、プロテアーゼを不活性化する工程と、加水分解物を固形物に変換する工程とを含む製造方法に関する。所望により、前記タンパク質の加水分解物は、遠心ろ過及び/又は限外ろ過等の慣用方法で、物理的に分画されてもよい。この発明の他の一態様においては、この発明は、0.1〜20質量%の乾燥質量含有率を有する天然由来のルピンタンパク質の水溶液又は水懸濁液のpHを3〜9に調整する工程と、前記溶液又は懸濁液を遠心ろ過及び/又は限外ろ過で分画する工程と、所望のタンパク質含有分画を固形物に変換する工程とを含む製造方法に関する。固形生成物は水溶性分画又は水不溶性分画に含まれていてもよい。
【0003】
本明細書において、用語「脂溶性活性剤」には、脂溶性ビタミン、又は、機能的に関連した化合物であって、食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類若しくは医薬品類の富化用若しくは補強用に使用される化合物が含まれる。このような脂溶性ビタミンの例としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、又、それらの酢酸塩や長鎖脂肪酸エステル等のそれらの誘導体が挙げられる。機能的に関連した化合物の例としては、例えば、多価不飽和脂肪酸類(PUFAs)若しくはそれらの誘導体、又は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、γ−リノレン酸(GLA)、補酵素Q10(CoQ10)等の多価不飽和脂肪酸類に豊富に含まれているトリグリセリド等が挙げられる。また、機能的に関連した化合物として、サン・ケア用品や化粧品に用いられる紫外線A防御フィルタ及び紫外線B防御フィルタ等の、脂溶性の太陽光防御フィルタ類も挙げられる。
【0004】
本明細書において、用語「着色剤」には、食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類又は医薬品類に着色剤として使用可能なカロチン又は構造的な関連性を有するポリエン化合物が含まれる。このようなカロチノイドの例としては、α−カロチン、β−カロチン、8’−アポ−β−カロテナール、8’−アポ−β−カロテン酸エチルエステル等の8’−アポ−β−カロテン酸エステル、カンタキサンチン、アスタキサンチン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチンやクロセチン、α−ゼアカロテン、β−ゼアカロテン、又は、これらの混合物が挙げられる。このましいカロチノイドはβ−カロチンである。「脂溶性活性剤」及び「着色剤」の種子類に含まれる上述の物質は、それらの混合物として、この発明の新規な組成物に使用されてもよいものと理解される。
【0005】
用語「天然由来のルピンタンパク質」は、ルピン植物(例えば、L.アルバス、L.アングスティフォリウス又はそれら品種)のいかなる品種における種子(調合された種子又は加工された種子を含む)、又は、断片若しくは白色断片等の全小麦粉又は脱脂製品から単離されうるタンパク質に適合する。ルピンタンパク質の濃縮物及び熱的若しくは化学的に前処理されたルピンタンパク質は、この発明の目的にもまた使用されてもよい。
【0006】
用語「脱脂製品」は、この発明の処理に従って処理される前に、ルピンタンパク質が脱脂されていることを意味する。脱脂方法は、例えば、国際公開第99/17619号及び同00/54608号に開示された方法に従って行われてもよい。これらの公報においては、血小板状のフレークを得るために、水の不存在下で間接的にフレークを加熱する工程、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及び超臨界二酸化炭素から選択された溶媒を用いてそれらフレークから脂質類を連続抽出する工程を含むルピン種子の機械的な方法が開示されている。脱脂方法は、例えば、極性溶媒、又は、C1〜C6の脂肪族一価若しくは多価アルコール類、C5〜C12の芳香族一価若しくは多価アルコール類、C1〜C12の脂肪族直鎖、分岐鎖若しくは環状アルケン類、エチルメチルケトン、アセトン、酢酸のC1〜C6アルキルエステル、クエン酸のC1〜C4アルキルエステル、ジクロロメタン、C2〜C6のジアルキルエーテル、及び、超臨界二酸化炭素等の他の非極性溶媒を用いて行ってもよい。脂肪族一価若しくは二価アルコール類、アルケンの中でも、特に好ましくは、メタノール、エタノール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ノルマル−プロパノ−ル、1,2−プロピレングリコール、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ノルマル−オクタン、イソ−オクタン、シクロヘキサンである。
【0007】
この発明の好ましい態様においては、変性ルピンタンパク質は、約5〜15質量%の乾燥質量含有率を有する天然のルピンタンパク質の水溶液又は水懸濁液から得られる。この溶液又は懸濁液は、それぞれ、好ましくは40〜60℃、特に50℃の温度に設定され、0.1〜2Mの塩酸、水酸化ナトリウム等の酸又は塩基が添加されることにより、pHを3〜9に、好ましくは、4〜8に調整される。使用されるプロテアーゼは、エンド活性又はエキソ活性を有するプロテアーゼであればよく、エンドプロテアーゼとエキソプロテアーゼとの混合物であってもよい。この発明の方法に使用されるプロテアーゼは、ノボザイムズ社、ジェネンコア社、AB−エンジムズ社、ギストブロカデス社等の提供者から入手できる。好ましいプロテアーゼは、バルチスリケンホルミン類やアスペルギルスオリゼ等からの細菌又はカビ由来のプロテアーゼである。ノボザイム社から入手可能なアルカラーゼ、フレバーザイム等の酵素製剤を使用してもよい。プロテアーゼは、ルピンタンパク質の質量に対して、約0.01〜10質量%、好ましくは、約0.1〜1質量%の割合で、加えられる。酵素加水分解は、約1〜30%、好ましくは、1〜10%の加水分解率になるまで、行われる。加水分解率は、D.パターセン、P.M.ニールセン、C.カンブマンによる、「OPA反応に基づく加水分解度(DH)の決定」、ED−9512723、Novo Nordisk A/S、1995年12月、及び、H.フィッシャー、H.ミーゼル、E.シュリームによる「チオール成分としてN,N−ジメチル−2−メルカプトエチルアンモニウム クロライドを用いたOPA方法の改良」、fresenius J.Anal.Chem.、330(1998年)631に記載された当業者に知られている方法により決定される。「加水分解率」は、混合物中に最初から存在していたルピンタンパク質中の総ペプチド結合数に対する加水分解されたペプチド結合数を意味する。
【0008】
次いで、プロテアーゼは、加熱バッチの加熱処理により、好適に不活性化される。この発明の処理における好ましい態様において、酵素は一段階で加えられる。酵素加水分解はまた、段階的に行われてもよい。例えば、プロテアーゼ又はその混合物が例えば1%の割合で加熱バッチに添加され、例えば、(温度50℃で)5〜10分後に、最初に添加されたプロテアーゼ又はその混合物と同一又は異なるプロテアーゼ又はその混合物が例えば2%の割合で添加され、さらに、加熱バッチが50℃で10分間加水分解される。この工程によれば、加水分解率がほぼ0%のタンパク質を原料として用いることができる。
【0009】
基本的に、上述のすべてのパラメータを変更することができる。したがって、加水分解工程は、一般に5〜70℃で行われるが、40〜60℃、特に50℃で行われるのが好ましい。加水分解時間は、1〜300分の間で変更でき、好ましくは5〜10分である。酵素の添加量は、約0.01〜10質量%の間で変更できる。加水分解を2段階で行うときは、1段階目で使用する酵素量は(タンパク質の乾燥質量に対して)好ましくは1質量%であり、2段階目では好ましくは2質量%である。
【0010】
プロテアーゼは、例えば、80〜85℃に5〜10分間加熱する熱変性によって、不活性化することができる。次に、生産物は、分画されてもよく、例えば、遠心ろ過又は限外ろ過で、変性ルピンタンパク質を分離又は単離する。
【0011】
このようにして得られた変性ルピンタンパク質の溶液又は懸濁液は、次いで、例えば、スプレー乾燥法又は凍結乾燥法によって、例えば乾燥粉末等の固形物にされる。
【0012】
この発明の別の態様では、0.1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の乾燥質量含有率を有するルピンタンパク質の水溶液又は水懸濁液を、pHを3〜9、好ましくは4〜6に調整し、この溶液又は懸濁液を、例えば遠心ろ過又は限外ろ過で分画し、さらに、分画された加水分解物を固形物に変換することによって、変性ルピンタンパク質を得てもよい。乾燥前に、細菌による品質低下に対して生産物を安定化させるために、変性ルピンタンパク質が含まれている分画を、例えば、80〜85℃に5〜10分間加熱する熱処理(低温殺菌法)をしてもよい。
【0013】
この発明のまた別の態様では、この発明は、好ましい発明の処理方法で得られる変性ルピンタンパク質、及び、このような変性ルピンタンパク質と、脂溶性活性成分又は着色剤と、任意の補助剤及び/又は賦形剤とを含む組成物に関する。
【0014】
変性ルピンタンパク質は、分散物、すなわち、脂溶性活性剤又は着色剤の内部相に対する保護機能を働かせる水可溶性又は水分散性ポリペプチドであり、したがって、保護性の親水コロイドとして機能する。一般に親水性コロイドは、表面活性及び粘度を有しており、それによって、親水性コロイドは、脂溶性活性剤又は着色剤と共に存在する乳化液又は懸濁液を安定化させる。
【0015】
この発明の組成物は、好ましくは、含有される脂溶性活性剤又は着色剤が基質又は基材中に完全に分配された粉末固形状組成物である。基質又は基材は、保護性の親水コロイドとしての変性ルピンタンパク質と、任意成分として、脂溶性活性剤又は着色剤の形成に通常使用される一又は二以上の水可溶性賦形剤及び/又は補助剤とを含み、又は、これらからなる。
【0016】
この発明の組成物において、組成物の全質量に対して、変性ルピンタンパク質の量は約0.5〜60.0質量%であり、脂溶性活性剤又は着色剤の量は約0.1〜80.0質量%であり、全成分の合計は100質量%である。
【0017】
好適には、この組成物は、単糖類、二糖類、オリゴ糖及び多糖類、グリセロール、トリグリセリド、水可溶性酸化防止剤、及び、脂溶性酸化防止剤から選択された一又は二以上の賦形剤及び/又は補助剤を(さらに)含んでいる。固形組成物は、さらに、ケイ酸等の固化防止剤を、水に対して、約10質量%まで、通常2〜5質量%含んでもよい。
【0018】
この発明の組成物に含まれてもよい単糖類及び二糖類の例としては、サッカロース、転化糖、ブドウ糖、フラクトース、乳糖、麦芽糖、サッカロース及び糖アルコール等が挙げられ、オリゴ糖及び多糖類の例としては、デンプン、例えば、デキストリン類やマルトデキストリン類のデンプン加水分解物が挙げられ、特に、デキストロース当量(DE)5〜65の範囲にあるこれらの糖類及びグルコース・シロップが挙げられ、さらには、デキストロース当量(DE)20〜95の範囲にあるこれらの糖類が挙げられる。デキストロース当量(DE)は、加水分解度を意味し、乾燥質量に基づいたD−グルコースとして換算された還元糖の量の割合である。つまり、その基準は、ほぼ0のDEを持つ天然由来のデンプンと、100のDEを持つグルコースとに基づいている。
【0019】
トリグリセリドは、植物性油又は植物性脂肪であり、好ましくは、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、サフラワ油、菜種子油、ピーナッツ油、パーム油、綿実油又はココナッツ油である。
【0020】
有機溶媒は、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、ジメチルエーテル、アセトン、エタノール又はイソプロパノールを使用することができる。
【0021】
水可溶性酸化防止剤は、例えば、アスコルビン酸又はその塩、好ましくは、アスコルビン酸ナトリウムを使用できる。脂溶性酸化防止剤は、例えば、dl−α−トコフェノール(すなわち合成トコフェノール)、d−α−トコフェノール(すなわち天然由来のトコフェノール)、β−又はγ−トコフェノール、これら二以上の混合物等のトコフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、エポキシキン、没食子酸プロピル、ターシャーリーブチルヒドロキシキノリン、又は、脂肪酸のアスコルビン酸エステル等を使用でき、好ましくは、アスコルビン酸パルミチン酸エステル又はアスコルビン酸ステアリン酸エステルである。水性基質溶液のpHによっては、脂肪酸のアスコルビン酸エステル、特にアスコルビン酸パルミチン酸エステル及びアスコルビン酸ステアリン酸エステルのいずれかが、水相に添加されてもよい。
【0022】
この発明の組成物は、固形状組成物、つまり、安定で水溶性若しくは水分散性粉末であり、又は、液状組成物、つまり、前記粉末を含む水性コロイド溶液若しくは水中油型分散液である。安定化された水中油型分散液は、水中油型乳化剤であってもよく、又は、懸濁物、つまり、固形物、粒子と、乳化物、例えば乳化液、乳化液滴との混合物であってもよく、前記した方法で製造されてもよい。
【0023】
通常、この発明における粉末状組成物は、約0.5〜60質量%、好ましくは約5〜50質量%の変性ルピンタンパク質と、約0.1〜80質量%、好ましくは約0.5〜60質量%の脂溶性活性剤及び/又は着色剤と、約0〜70質量%、好ましくは約0〜40質量%の単糖類又は二糖類と、約0〜70質量%、好ましくは約0〜40質量%のデンプン加水分解物と、約0〜20質量%、好ましくは約0〜10質量%のグリセロールと、約0〜50質量%、好ましくは約0〜30質量%のトリグリセリドと、約0〜5質量%、好ましくは約0〜2質量%の一以上の水可溶性酸化防止剤と、約0〜5質量%、好ましくは約0〜2質量%の一以上の脂溶性酸化防止剤と、約0〜50質量%、好ましくは約0〜35質量%のデンプンと、約0〜5質量%、好ましくは約1質量%のケイ酸と、約0〜10質量%、好ましくは約1〜5質量%の水とを含み、全成分の合計含有率は100である。
【0024】
この発明の新規な組成物は、食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類若しくは医薬品類用の着色剤、及び/又は、富化剤若しくは補強剤として、使用可能である。
【0025】
この発明によれば、着色剤としてβ−カロチンを含む組成物が好ましく提供される。この組成物は、最終的に10ppmの濃度となるように水で又は水中に、溶解、分散又は希釈されると、一般に、対照試料として脱イオン水を用いた紫外線/可視光分光法によって、特徴付けられる。1cmの試料厚さでは、最大光学密度における波長が400〜600nmの範囲で、分散液は、少なくとも0.6(好ましくは1.0超)の吸光度単位の吸光度を示す。これは、600(好ましくは1000超)の水分散液E(1%、1cm)におけるβ−カロチンの公式の吸光係数と同じである。
【0026】
この発明の組成物は、食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類若しくは医薬品類用の着色剤用、及び/又は、富化剤若しくは補強剤用とされるところの、基質に基づいた脂溶性活性剤を含む組成物、又は、着色剤組成物を製造する方法として、本質的に知られている方法によって製造することができる。この方法は、例えば、欧州特許公報第0285682号、同第0347751号、同第0966889号、同第1066761号、同第1106174号、PCT公報第WO98/15195号、及び、スイス特許出願第1238/92号に開示されている。これらの開示内容は、引用することによって、ここに取り入れられている。
【0027】
したがって、この発明の組成物は、変性ルピンタンパク質、任意の一以上の水可溶性賦形剤及び/又は補助剤、脂溶性活性剤及び/又は着色剤、脂溶性活性剤又は着色剤の溶液又は分散液、並びに、任意の一以上の脂溶性補助剤の水溶液又はコロイド溶液における均質工程と、このようにして得られた分散液を固形状組成物に変換する変換工程とを含む方法で製造することができる。
【0028】
通常、変性ルピンタンパク質と、任意の水可溶性賦形剤及び/又は補助剤とは水に溶解又は分散される。脂溶性活性剤及び/又は着色剤と、任意の脂溶性賦形剤及び/又は補助剤とは、トリグリセリド及び/又は有機溶媒に、溶解又は懸濁される。次いで、脂溶性活性剤及び/若しくは着色剤、又は、これらの溶液若しくは分散液は、それぞれ、撹拌されているタンパク質水溶液に添加され、従来技術によって混合物が均質化される。得られた水中油型分散液は、(含まれていれば)有機溶媒を除去した後、乾燥粉末等の固形状組成物に変換される。
【0029】
この発明の別の目的は、より詳細に前述した変性ルピンタンパク質を基にした組成物の製造方法であり、この製造方法は、変性ルピンタンパク質、任意の水可溶性賦形剤及び/又は補助剤、脂溶性活性剤又は着色剤の溶液又は分散液、並びに、脂溶性賦形剤の水溶液又はコロイド溶液における均質工程と、所望により、得られた分散液を粉末に変換させる変換工程とを含んでいる。
【0030】
従来技術の均質化方法としては、例えば、高圧均質化処理、高圧剪断乳化処理(ローター/ステーターシステム)、微粒子又は湿式圧延処理を適用することができる。食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類若しくは医薬品類用の着色剤用、及び/又は、富化剤若しくは補強剤用の脂溶性活性剤組成物又は着色組成物の製造において、使用される他の技術は、欧州特許公報第937412及び同第1008380、米国特許明細書第6093348号に開示されている。これらの開示内容は、引用することによって、ここに取り入れられている。
【0031】
このようにして得られた分散液は、水中油型分散液であり、例えば、スプレー乾燥法、流動層造粒(近年、流動化スプレー乾燥又はFDSとして一般に知られている技術)と組合わせたスプレー乾燥法、又は、噴霧された乳濁液の飛沫が、デンプン等の吸着剤を含む床に捕獲され、次いで、乾燥される粉末捕獲技術によって、乾燥粉末等の固形状組成物に変換され得る。
【0032】
この発明の製品形態が着色剤又は機能的成分として使用される飲料は、例えば、味付水、果汁飲料類、フルーツパンチ及びこれら飲料の濃縮物だけでなく、例えば味付セルツァー炭酸水等の炭酸飲料類、清涼飲料類、ミネラル飲料類等が挙げられる。これらは、天然果物又は野菜ジュース、人工調味料に基づいていてもよい。アルコール飲料類、即席飲料粉もまた挙げられる。その上、ノン・カロリーのダイエット飲料類に含まれる糖及び人工甘味料もまた含まれる。
【0033】
さらに、天然由来又は合成で得られる乳製品は、この発明の製品形態が着色剤又は機能性成分として使用される食品製品の範囲に含まれる。このような製品の典型的な例としては、牛乳、アイスクリーム、チーズ、ヨーグルト等が挙げられる。豆乳飲料類及び豆腐製品等の牛乳由来製品もこの発明の範囲に含まれる。
【0034】
着色剤又は機能性成分としてのこの発明の製品形態を含む甘味食品もまたこの発明の範囲に含まれる。甘味食品は、例えば、菓子製品、キャンディ、ガム、デザート、例えば、アイスクリーム、ゼリー、プディング、即席プディング粉等が挙げられる。
【0035】
着色剤又は機能性成分としてのこの発明の製品形態を含むシリアル、スナック、クッキー、パスタ、スープやソース、マヨネーズ、サラダドレッシング等もまた、この発明の範囲に含まれる。さらに、乳製品及びシリアルに使用される果実製品もまた、この発明の範囲に含まれる。
【0036】
この発明の製品形態を通して食製品に添加される活性成分又は着色剤の最終的な濃度は、所望する着色度と補強度及び特に着色され、又は、補強される食製品に応じて、食品組成物の全質量に対して、約0.1〜500ppmであり、特に約1〜50ppmであってもよい。
【0037】
この発明の食品組成物は、好ましくは、この発明の組成物の形態で活性成分又は着色剤を食製品に添加することにより、得られる。食品又は医薬製品の着色又は補強には、この発明の組成物が、水分散性固形製品形態を利用する本来公知の方法に従って、使用されうる。
【0038】
一般に、組成物は、水性原液、乾燥粉末混合物、特別な利用に従って他の安定性食品成分と前混合された混合物の何れかに添加される。最終的に使用される形状に応じて、混合は、例えば、乾燥粉末混合機、低剪断混合機、高圧ホモジナイザ又は高剪断混合機等で行われる。このような専門的事項は、容易に明らかであるように、専門家の技術的範囲にある。
【0039】
組成物が着色剤として使用されるところの、錠剤、カプセル等の医薬組成物はまた、この発明の範囲内にある。液体又は固体の着色剤組成物の形態で製品形態が錠剤被覆混合物に添加されることで、又は、着色剤組成物が錠剤被覆混合物の一成分に添加されることで、錠剤は着色される。着色された硬質殻カプセル又は軟質殻カプセルは、着色剤組成物をカプセル水溶液に添加することで、生産される。
【0040】
活性成分として組成物が使用されているところの、チュアブル錠、発泡錠、フィルムコート錠等の錠剤、又は、硬質殻カプセル等のカプセル等が例示される医薬組成物は、この発明の範囲内にある。製品形態は、粉末として、錠剤混合物に通常添加され、又は、カプセルの製造方法として本来公知の方法でカプセル内に充填される。
【0041】
卵黄、テーブル家禽、若鶏、水生動物等の色素用の着色剤として、又は、活性成分として、組成物が使用されているところの、プレミックス類、化合物飼料、代用乳、流動食、飼料等の動物食製品は、この発明の範囲内にある。
【0042】
着色剤として、又は、活性成分として、組成物が使用されているところの、クリーム類、ローション類、浴用剤類、リップスティック類、シャンプー類、コンディショナー類、スプレー類又はジェル類等の化粧品類、洗浄用品、デルマ製品つまりスキンケア製品及びヘアケア製品もまた、この発明の範囲内にある。
【0043】
水中油型懸濁液、水中油型乳化液、水中油型粉末等の液状又は固体製品形態の製造のために、ここで使用された親水性コロイドは多機能成分として機能する。この目的のため、親水性コロイドは、固形製品形態において、ガス許容性、水蒸気遮蔽能だけでなく、優れた分散安定化特性、高い乳化能力と効率(後者は、分散液の内部相の粒子径分配に関連している)、高い溶解性、及び、水溶液での適した粘性、熱安定性、低いpH依存性、イオン強度及び電荷、優れたフィルム形成能等の機能特性のスペクトルを示すはずである。
【0044】
天然由来のルピンタンパク質は、レッテンマイヤー・ソン社の製品、「Vitaprot Type LP60」等の小麦粉又はタンパク質濃縮物の形態で、容易に入手できる。
【0045】
ルピンタンパク質の変性のために行われる工程は、より高い冷水安定性、より高い温度耐性、より優れたフィルム形成能だけではなく、より優れた乳化特性、低いpH依存性等の水溶液中における一般的により高い溶解性、及び、対イオン等の、すべての改良されたタンパク質の機能特性をもたらす。さらに、水溶液中での粘性は、大幅に低下し、この発明の目的の許容範囲内にある。
【実施例】
【0046】
以下に示す実施例を参照して、この発明をより詳細に説明する。
<実施例1>
天然由来のルピンタンパク質の水懸濁液を、脱脂ルピン種子をpH4〜5で水で抽出し、次いで、タンパク質をpH6〜8で抽出することによって、調製する。天然由来のルピンタンパク質の水懸濁液は、4質量%の乾燥含有率を有し、前記ルピンタンパク質の乾燥物は90%超のタンパク質含有率を有している。次いで、懸濁液のpHを7に、温度を50℃に調整する。その後、0.5質量%のアルカラーゼ(ノボザイムズ社)2.4Lを加える。酵素加水分解の間、1Mの水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを一定に保ち、温度を50℃に保つ。5〜10分経過後、懸濁液を80℃で10分間加熱して、プロテアーゼを不活性化する。次いで、不溶性分画を分離し、生産物の温度70〜80℃で、溶液をスプレー乾燥する。
【0047】
<実施例2>
天然由来のルピンタンパク質の水懸濁液を、脱脂ルピン種子をpH4〜5(前抽出を示す可溶性分画)で水で抽出し、次いで、タンパク質をpH6〜8で抽出することによって、調製する。天然由来のルピンタンパク質の水懸濁液は、4質量%の乾燥含有率を有し、前記ルピンタンパク質の乾燥物は90%超のタンパク質含有率を有している。懸濁液をpH4〜5に調整し、不溶性分画を遠心分離によって分離する。上澄液と酸性の前抽出物とを合わせて、合わせた溶液を限外ろ過により生成した。これによって、酸性の前抽出物と、残留物中の酸性化タンパク質抽出物の可溶性タンパク質との可溶性タンパク質組成物が得られる。生産物の温度70〜80℃で、限外ろ過の残留物を、スプレー乾燥する。
【0048】
<実施例3>
変性ルピンタンパク質とビタミンAとを含む組成物を以下に従って製造する。
【0049】
a)(水性)溶液Aの調製
変性ルピンタンパク質「L143T」(実施例1に従って、L.albus Typ Topから調製した。以降、「L143T」と記載する)34.1gと、乾燥グルコース・シロップ「グルシデックス IT 47」(ロークエット、フェレレス、エフ−レストリーム)51.2gとの乾燥前混合物を調製し、続いて、1Lの反応容器内で、室温下、脱イオン水120mLと混合した。混合物を45℃に加熱し、45℃で約15分間撹拌した。pHは約6.1であった。
【0050】
b)(油ベース)溶液Bの調製
結晶性の酢酸ビタミンA15.3gと、ピーナッツ油2.7gと、dl−α−トコフェロール1.3gとを100mLの三角フラスコに投入し、この混合物中に磁気撹拌子を入れた。この混合部を撹拌しながら、10分以内に65℃に加熱した。
【0051】
c)溶液A及びBからの乳化液の調製
溶液Aを50℃に加熱し、溶液Bを激しく撹拌しながら、3分以内に溶液Aに添加した。次いで、分散液を、さらに20分間50℃で激しく撹拌した。長期間の物理的安定性を確認するため、得られた乳化液を60℃に加熱し5時間撹拌した。撹拌終了後、乳化液の内部相の平均粒子径は、光子相関関係分光学(コールター エヌ4 プラス)により測定したところ、388nmであった。
【0052】
d)乳化液からの固形組成物の調製
乳化液を、コーンスターチの前もって冷却した流動床にスプレーした。過剰のコーンスターチをふるいによって除去し、得られた粉末を約2時間、室温で送風乾燥した。0.16〜0.50mmの範囲にある粒子径を持つ粉末の分画をふるいによって分取し、ビタミンAの含有量、表面油汚染、コーンスターチ含有率、及び、残留水分を測定した。得られた粉末は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定したところ、263000IU/gのビタミンA含有量を有していた。表面油汚染は、ビタミンA含有量の0.2%であった。この粉末は、24.4%のコーンスターチ含有率を有し、また、6.6%の残留水分を有していた。
【0053】
<実施例4>
変性ルピンタンパク質とビタミンEとを含む組成物を以下に従って製造する。
【0054】
a)(油ベース)溶液Aの調製
酢酸(dl−α−トコフェロール)26.7gを100mLの三角フラスコに投入した。磁気撹拌子を投入し、75℃に加熱した。
【0055】
b)(水性)溶液Bの調製
変性ルピンタンパク質「L143T」40.0gの乾燥前混合物を調製し、続いて、1Lの反応容器で、室温下、脱イオン水135mLと混合した。混合物を50℃に加熱し、50℃で約15分間撹拌した。pHは約6.1であった。
【0056】
c)溶液A及びBからの乳化液の調製
溶液Bを55℃に加熱し、溶液Aを激しく撹拌しながら、溶液Bに添加した。次いで、分散液を、さらに30分間50℃で激しく撹拌した。長期間の物理的安定性を確認するため、得られた乳化液を60℃に加熱し5時間撹拌した。撹拌終了後、乳化液の内部相の平均粒子径は、光子相関関係分光学(コールター エヌ4 プラス)により測定したところ、521nmであった。
【0057】
d)乳化液からの固形組成物の調製
乳化液を脱イオン水で希釈し、最終的な水含有量を65%に調整した。次いで、モービルマイナスプレードライヤ(Niro A/S)を用いて、スプレー乾燥した。乾燥風の内部温度は220℃で、排気温度は110℃であった。粉末を収集し、これに約1%の二酸化ケイ素を添加した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定したところ、得られた粉末の酢酸トコフェロール含有率は25.6%であった。
【0058】
<実施例5>
変性ルピンタンパク質とβ−カロチンとを含む組成物を以下に従って製造する。
【0059】
a)(油ベース)溶液Aの調製
コーン油8.8gと、dl−α−トコフェロール1.6gとを500mLの三角フラスコに投入した。結晶性のβ−カロチン18.4gをトリクロロメタン206mLに分散させ、得られた分散液をコーン油とトコフェロールとに添加した。混合物に撹拌子を入れ、三角フラスコに還流冷却器を取り付けた。ゆっくりと撹拌すると共に、混合物を65℃に加温して、溶液を得た。
【0060】
b)(水性)溶液Bの調製
ルピンタンパク質「L140T−2」(実施例1に従って、L.アングスティフォリウスから調製した。以降、「L140T−2」と記載する)48.0gと、サッカロース40.8gと、アスコルビン酸パルミチン酸エステル2.4gとの前混合物を調製し、続いて、1Lの反応容器で、室温下、脱イオン水140mLと混合した。混合物を撹拌しながら35℃に加熱し、1N水酸化ナトリウム水溶液14mLを添加して、混合部のpHを7.9に調整した。次いで、均一溶液となるように、混合物を短時間激しく撹拌した。
【0061】
c)溶液A及びBからの乳化液の調製
激しく攪拌しながら、35℃下、溶液Aを溶液Bに加え、次いで、得られた分散液をさらに30分にわたって激しく攪拌した。反応容器内を窒素ガスで置換し、分散液を55℃に加熱した。攪拌した分散液を60分間55℃に保った。残留したトリクロロメタンを回転式蒸発乾燥機を用いて50〜55℃で除去した。遠心分離によって蓄積した気泡を除去した後、乳化液を50〜55℃で2、3分間ゆっくり攪拌した。次いで、乳化液の内部相の平均粒子径を測定した。乳化液の内部相の平均粒子径は、光子相関関係分光法(コールター エヌ4 プラス)により測定したところ、148nmであった。
【0062】
d)乳化液からの固形組成物の調製
乳化液を、コーンスターチの前もって冷却した流動床にスプレーした。過剰のコーンスターチをふるいによって除去し、得られた粉末を約2時間、室温で送風乾燥した。0.16〜0.63mmの範囲にある粒子径を持つ粉末の分画(約138g)をふるいによって分取し、カロチン含有量、水分散における色強度、色調、コーンスターチ含有率及び残留水分を測定した。得られた粉末は、紫外線/可視光−分光法(HPLC)によって測定したところ、12.8%(11.5%)のβ−カロチン含有量、25%のコーンスターチ含有率、及び、5.9%の残留水分を有していた。得られた粉末を脱イオン水に分散させ、脱イオン水を対照として、1cm石英セルで吸光度を測定した。β−カロチンの10ppm分散液では、計算によると、波長481nmでの吸光度は1.130であった(E(1%、1cm)=1130)。β−カロチンの5ppm分散液をハンターラブ社製ウルトラスキャン分光測色計(1cm、TTRAN)を用いて、CIEシステムにより測定したところ、明度Lは81.9、明度aは22.6、明度bは31.6であった。明度a及び明度bの値から、飽和(彩度)Cが38.8のときに、色相角hは54.4度と計算された。
【0063】
<実施例6>
変性ルピンタンパク質とβ−カロチンとを含む組成物を以下に従って製造する。
【0064】
実施例5に準拠して、変性ルピンタンパク質「L143T」を用いて、製造した。
【0065】
得られた粉末は、紫外線/可視光−分光法(HPLC)によって測定したところ、14.2%(12.4%)のβ−カロチン含有量、20%のコーンスターチ含有率、及び、5.5%の残留水分を有していた。得られた粉末を脱イオン水に分散させ、脱イオン水を対照として、1cm石英セルで吸光度を測定した。β−カロチンの10ppm分散液では、計算によると、波長478nmでの吸光度は0.892であった。(E(1%、1cm)=892)。β−カロチンの5ppm分散液をハンターラブ社製ウルトラスキャン分光測色計(1cm、TTRAN)を用いて、CIEシステムにより測定したところ、明度Lは84.1、明度aは16.8、明度bは27.4であった。明度a及び明度bの値から、飽和(彩度)Cが32.1のときに、色相角hは58.5度と計算された。
【0066】
<実施例7>
変性ルピンタンパク質とβ−カロチンとを含む組成物を以下に従って製造する。
【0067】
a)(水性)溶液Aの調製
変性ルピンタンパク質「L143T」60gを50℃で脱イオン水400mLに溶解した。サッカロース64.5gと、マルトデキストリン(DE20−23)121.8gと、アスコルビン酸ナトリウム3.0gとの乾燥前混合物を調製し、50℃で前記タンパク質水溶液(溶液A)に加えた。
【0068】
b)(油ベース)溶液Bの調製
トリグリセリド(Durkex、一部水素化された大豆油)46.5gと、dl−α−トコフェロール0.3gとを混合し、170℃に過熱した。続いて、β−カロチン3.75gを、前記トリグリセリドとトコフェロールとの混合物に懸濁した。約10分間攪拌し、β−カロチンの着色溶液(溶液B)が得られた。
【0069】
c)溶液A及びBからの乳化液の調製
ゆっくりと攪拌しながら、溶液Bを溶液Aに添加して、粗製乳化液を調製した。圧力50/400バール(APVのLAB1000)で乳化液前駆液を4経路高圧均質化処理して、精製乳化液を得た。
【0070】
d)乳化液からの固形組成物の調製
乳化液を、吸気温度190℃、排気83℃に設定した実験用スプレー乾燥機(モービルマイナ、Niro)で、スプレー乾燥した。残留水分1.8%の微粉末が得られた。紫外線/可視光−分光法及び高速液体クロマトグラフィーによって測定したところ、この微粉末のβ−カロチン含有量は1.3%であった。この微粉末を脱イオン水に分散させ、脱イオン水を対照として、1cm石英セルで吸光度を測定した。β−カロチンの10ppm分散液では、計算によると、波長463nmでの吸光度は1.895であった(E(1%、1cm)=1895)。β−カロチンの5ppm分散液をハンターラブ社製ウルトラスキャン分光測色計(1cm、TTRAN)を用いて、CIEシステムにより測定したところ、明度Lは85.0、明度aは9.0、明度bは63.9であった。明度a及び明度bの値から、飽和(彩度)Cが64.5のときに、色相角hは82.0度と計算された。
【0071】
<実施例8>
β−カロチンを6ppmの割合で含む清涼飲料を以下に従って製造する。
組成
【0072】
【表1】

【0073】
*)アンズ香気成分 ジボダン社製、No.78511−76
**)すなわち、前記組成における10%のβ−カロチン含有量に基づいて、上記、例えば実施例3又は4で得られた組成の1%水溶液(分散液)
【0074】
製法
一部の水に安息香酸ナトリウムを溶解し、これに、糖シロップ、アスコルビン酸、クエン酸及び香気成分を加え、最後に、β−カロチン原液を加える。瓶つめのシロップを1リットルの飲料になるように希釈する。
【0075】
β−カロチンは、透明性と色強度が高く、鮮やかなオレンジ色を呈色させる。自然環境での3ヶ月に及ぶ長期安定性試験では、飲料中でのβ−カロチンの物理的安定性が優れていることが分かった。また、明度Lの点からみて色安定性も優れていることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1〜20質量%の乾燥質量含有率を有する天然由来のルピンタンパク質を含む水溶液又は水懸濁液のpHを3〜9に調整する工程と、前記ルピンタンパク質の乾燥質量に対して、0.01〜10質量%のプロテアーゼを添加する工程と、前記タンパク質溶液又は懸濁液を、5〜70℃の温度で、加水分解率が1〜30%になるまで、加熱する工程と、前記プロテアーゼを不活性化する工程とを含む変性ルピンタンパク質の製造方法。
【請求項2】
前記水溶液又は水懸濁液のpHが4〜8に調整され、前記プロテアーゼの添加量が0.1〜1質量%であり、酵素加水分解が20〜55℃で行われる請求項1に記載の変性ルピンタンパク質の製造方法。
【請求項3】
前記酵素加水分解が、1〜10%の加水分解率になるまで、行われる請求項1又は2に記載の変性ルピンタンパク質の製造方法。
【請求項4】
エンド活性を有するプロテアーゼを使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ルピンタンパク質の製造方法。
【請求項5】
エキソ活性を有するプロテアーゼを使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ルピンタンパク質の製造方法。
【請求項6】
細菌又はカビ由来のプロテアーゼを使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ルピンタンパク質の製造方法。
【請求項7】
前記プロテアーゼが加熱された後、必要に応じて分画工程に続いて、前記変性ルピンタンパク質が、遠心ろ過又は限外ろ過によって、固形物に変換される請求項1〜6のいずれか1項に記載の変性ルピンタンパク質の製造方法。
【請求項8】
0.1〜20質量%の乾燥質量含有率を有する天然由来のルピンタンパク質を含む水溶液又は水懸濁液のpHを3〜9に調整する工程と、前記水溶液又は懸濁液を遠心ろ過及び/又は限外ろ過で分画する工程と、前記タンパク質溶液を固形物に変換する工程とを含む変性ルピンタンパク質の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の変性ルピンタンパク質の製造方法によって得られる変性ルピンタンパク質。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の変性ルピンタンパク質と、脂溶性活性成分又は着色剤と、任意の補助剤及び/又は賦形剤とを含む組成物。
【請求項11】
前記脂溶性活性成分又は着色剤が、カロチノイド、脂溶性ビタミン、トリグリセリド、脂溶性の紫外線A防御フィルタ若しくは紫外線B防御フィルタ、又は、これらの混合物である請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記カロチノイドが、α−若しくはβ−カロチン、8’−アポ−β−カロテナール、8’−アポ−β−カロテン酸エチルエステル、カンタキサンチン、アスタキサンチン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン若しくはクロセチン、又は、これらの混合物である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記脂溶性ビタミンが、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE又はビタミンKである請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
単糖類、二糖類、オリゴ糖若しくは多糖類、トリグリセリド、水可溶性酸化防止剤、脂溶性酸化防止剤、ケイ酸、及び、水の少なくとも1種をさらに含有する請求項9〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記単糖類又は二糖類が、サッカロース、転化糖、ブドウ糖、フラクトース、乳糖若しくは麦芽糖、及び、さらにグリセロールを任意に含む組成物である請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記多糖類がデンプン又はデンプン加水分解物であり、及び/又は、前記トリグリセリドが植物性油又は植物性脂肪である請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記デンプン加水分解物が、デキストリン、マルトデキストリン(デキストロース当量5〜65)、又は、グルコース・シロップ(デキストロース当量20〜95)である請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記変性ルピンタンパク質の含有量が0.5〜60質量%であり、前記脂溶性活性成分及び/又は着色剤含有量が0.1〜80質量%である請求項10〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記変性ルピンタンパク質、任意の水可溶性賦形剤及び/又は補助剤、脂溶性活性剤又は着色剤の溶液又は分散液、並びに、任意の脂溶性補助剤の水溶液又はコロイド溶液における均質工程と、所望により、得られた分散液を粉末に変換する工程とを含む、請求項10〜18のいずれか1項に記載の組成物の製造製造。
【請求項20】
食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類又は医薬品類用の、富化剤、補強剤、及び/又は、着色剤としての、請求項10〜18のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項21】
請求項10〜18のいずれか1項に記載の組成物を含む、食品、飲料類、動物用食品類、化粧品類又は医薬品類。




【公表番号】特表2006−500935(P2006−500935A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540777(P2004−540777)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010974
【国際公開番号】WO2004/030472
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505123686)
【Fターム(参考)】