説明

自動分析装置、自動分析装置の異常原因解析支援方法、および異常原因解析支援プログラム

【課題】構成を複雑化することなく、異常発生時にユーザによってなされる発生原因の解析の迅速化を実現することができる自動分析装置、自動分析装置の異常原因解析支援方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】検体と試薬とを反応させることによって検体の成分を分析する自動分析装置で異常が発生した場合、その発生箇所を表示した後、前記異常に応じた発生原因の候補である原因候補を表示し、この表示した原因候補が発生原因であること示す適合入力がなされた場合、当該発生原因に対する対処法を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応させることによって検体の成分を自動的に分析する自動分析装置、当該自動分析装置で発生した異常の発生原因の解析を支援する自動分析装置の異常原因解析支援方法、および当該方法をコンピュータに実行させる異常原因解析支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
検体と試薬とを反応させることによって検体の成分を自動的に分析する自動分析装置は、検体を分析するためのさまざまな機構を具備している。このような自動分析装置で何らかの異常が発生し分析動作が停止すると、ユーザは異常の発生原因を特定する原因解析に多くの時間を費やさざるを得ないことが多い。そのため、異常が発生した時、その発生原因を速やかに特定することができる技術が従来から待望されていた。
【0003】
上述した問題を解決可能な技術として、装置の故障情報およびサービス拠点情報をあらかじめ装置内に関連付けして記憶しておき、故障発生時やメインテナンス期限時に装置が自動でサービス拠点に報告を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、故障発生時のデータから発生原因の解析を自動的に行う技術も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−258426号公報
【特許文献2】特開2002−65099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、故障箇所の解析や判定も自動化されているのが一般的であるため、その解析や判定を行うためにセンサ等の検知手段をさらに設けなければならず、通常の装置に新たなハードウェアを付加することによって構成が複雑化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構成を複雑化することなく、異常発生時にユーザによってなされる発生原因の解析の迅速化を実現することができる自動分析装置、自動分析装置の異常原因解析支援方法、および異常原因解析支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の発明は、検体と試薬とを反応させ、この反応の測定を行う測定ユニットを備え、検体の成分を自動的に分析する自動分析装置であって、前記測定ユニットで発生する異常を検知する異常検知手段と、前記異常検知手段が検知可能な異常の発生原因の候補である一または複数の原因候補、および各原因候補に対する対処法を記憶する記憶手段と、前記異常検知手段が検知した異常の発生箇所、当該異常の内容に応じた原因候補、および異常の発生原因として選択された原因候補に対する対処法を前記記憶手段から読み出して表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記表示手段は、前記異常検知手段が検知した異常の内容と、当該異常の内容に応じた原因候補のいずれか一つとを表示するとともに、前記原因候補が異常を発生した箇所の状態と適合しているか否かの選択入力を促す内容を表示し、この表示に応じて選択入力された内容に応じて前記原因候補に対する対処法を表示するか、または前記原因候補とは異なる原因候補を表示することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記記憶手段は、当該装置で発生した異常の発生原因ごとの発生頻度を記憶し、前記表示手段で表示する原因候補の表示順序は、当該装置における各原因候補の発生頻度に基づいて定められることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記表示手段は、前記異常検知手段が検知した異常の内容、および当該異常の内容に応じた全ての原因候補を一括して表示することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記記憶手段は、当該装置で発生した異常の発生原因ごとの発生頻度を記憶し、前記表示手段は、各原因候補を発生頻度と対応付けて表示することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項記載の発明において、前記表示手段は、前記異常検知手段が異常を検知した箇所をグラフィック表示することを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項記載の発明において、前記測定ユニットは、検体および/または試薬を吸引して吐出する分注手段と、前記検体および/または試薬の液面を検知する液面検知手段と、を有し、前記異常検知手段は、前記液面検知手段における異常を検知することを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項記載の発明において、前記測定ユニットは、検体を収容する検体容器が載置されたラックを搬送する搬送手段を有し、前記異常検知手段は、前記搬送手段における異常を検知することを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項記載の発明において、前記測定ユニットは、検体と試薬とを反応させる反応容器に光を照射し、前記反応容器を透過してきた光を検出する測光手段を有し、前記異常検知手段は、前記測光手段における異常を検知することを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の発明は、検体と試薬とを反応させることによって検体の成分を分析する自動分析装置で発生した異常の発生原因の解析を支援する自動分析装置の異常原因解析支援方法であって、前記異常が発生した箇所を表示する発生箇所表示ステップと、前記異常に応じた発生原因の候補である原因候補を、当該装置で検知可能な異常に応じた一または複数の原因候補を少なくとも記憶する記憶部から読み出して表示する原因候補表示ステップと、前記原因候補表示ステップで表示した原因候補が異常を発生した箇所の状態と適合しているか否かの入力を受ける入力ステップと、前記適合しているとの入力がなされた場合、当該発生原因に対する対処法を表示する対処法表示ステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記原因候補表示ステップは、前記異常の内容と、当該異常の内容に応じた原因候補のいずれか一つとを表示するとともに、前記原因候補が異常を発生した箇所の状態と適合しているか否かの選択入力を促す内容を表示し、前記入力ステップで前記原因候補が異常を発生した箇所の状態とは適合しないことを示す入力がなされた場合、前記原因候補表示ステップに戻って前記原因候補とは異なる原因候補を表示することを特徴とする。
【0019】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の発明において、前記原因候補の表示順序は、当該装置における各原因候補の発生頻度に基づいて定められることを特徴とする。
【0020】
請求項13記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記原因候補表示ステップは、異常の内容、および当該異常の内容に応じた全ての原因候補を一括して表示することを特徴とする。
【0021】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記原因候補表示ステップは、当該装置における各原因候補を発生頻度と対応付けて表示することを特徴とする。
【0022】
請求項15記載の発明に係る異常原因解析支援プログラムは、請求項10〜14のいずれか一項に記載した自動分析装置の異常原因解析支援方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、自動分析装置に異常が発生した場合、その発生箇所を表示した後、前記異常に応じた発生原因の候補である原因候補を表示し、この表示した原因候補が発生原因であることを示す適合入力がなされた場合、当該発生原因に対する対処法を表示することにより、構成を複雑化することなく、異常発生時にユーザによってなされる発生原因の解析の迅速化を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る自動分析装置要部の構成を示す図である。同図に示す自動分析装置1は、血液や体液等の検体とその検体の検査項目に応じた試薬とを反応させることによって検体の成分の生化学的な分析を自動的に行う装置である。この自動分析装置1は、検体と試薬とを所定の容器にそれぞれ分注し、その容器内部に収容された液体に対して光学的な測定を行う測定ユニット101と、この測定ユニット101を含む自動分析装置1の制御を行うとともに測定ユニット101における測定結果の分析を行うデータ処理ユニット102とを有し、これら二つの機構が連携することによって複数の検体の成分の分析を連続的に行う装置である。
【0025】
測定ユニット101は、検体を収容する検体容器21が搭載された複数のラック22を収納して順次移送する搬送部2と、主として第1試薬の試薬容器31を保持する試薬容器保持部3と、主として第2試薬の試薬容器41を保持する試薬容器保持部4と、検体と試薬とを反応させる反応容器51を保持する反応容器保持部5と、を備える。
【0026】
また、自動分析装置1は、搬送部2上の検体容器21に収容された検体を反応容器51に分注する検体分注部6と、試薬容器保持部3上の試薬容器31に収容された試薬を反応容器51に分注する試薬分注部7と、試薬容器保持部4上の試薬容器41に収容された試薬を反応容器51に分注する試薬分注部8と、反応容器保持部5上の反応容器51の内部の液体をそれぞれ攪拌する攪拌部9および10と、光源から照射されて反応容器51内を通過した光を受光して所定の波長成分の強度等を測定する測光部11と、反応容器保持部5上の反応容器51の洗浄を行う洗浄部12と、を備える。
【0027】
検体容器21には、内部に収容する検体を識別する識別情報をバーコードまたは2次元コード等の情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体が貼付されている(図示せず)。同様に、試薬容器31および41にも、内部に収容する試薬を識別する識別情報を情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体が貼付されている(図示せず)。このため、測定ユニット101には、検体容器21ならびに試薬容器31および41にそれぞれ貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部が、搬送部2、試薬容器保持部3および4に設けられている(図示せず)。
【0028】
試薬容器保持部3および4、ならびに反応容器保持部5は、試薬容器31または反応容器51をそれぞれ収容保持するホイールと、このホイールの底面中心に取り付けられ、その中心を通る鉛直線を回転軸としてホイールを回転させる駆動手段とを有する(図示せず)。各容器保持部の内部は一定の温度に保たれている。例えば、試薬容器保持部3および4の内部は、試薬の劣化や変性を抑制するために室温よりも低温に設定される。また、反応容器保持部5の内部は、人間の体温と同程度の温度に設定される。
【0029】
測光部11は、白色光を照射する光源11aと、反応容器51および反応容器保持部5の測光窓5aを透過してきた白色光を分光する分光光学系11bと、分光光学系11bで分光した光を成分ごとに受光して電気信号に変換する受光素子11cとを有する。
【0030】
図2は、試薬分注部7の構成を示す図である。同図に示す試薬分注部7は、中空細管状をなして試薬の吸引および吐出を行う試薬ノズル71と、試薬ノズル71の基端部を装着するアーム72と、アーム72を連結し、アーム72の昇降や鉛直軸Oを中心とした回動を行わせる連結部73と、アーム72および連結部73を駆動する駆動部74とを有する。また、試薬分注部7は、試薬ノズル71の近傍に配設され、棒状をなす電極75と、電極75に接続され、電極75の先端が試薬容器31によって収容される試薬Rg(第1試薬)の液面に触れたとき、所定の液面検知信号をデータ処理ユニット102の制御部16(後述)へ送出する液面検知部76とを備える。駆動部74および液面検知部76は、制御部16の制御のもとで駆動する。
【0031】
試薬ノズル71の上端には、吸引または吐出の際に試薬ノズル71の先端に圧力を伝達する洗浄液Waの流路となる管状のチューブ91が接続されている。このチューブ91の他端は、吸引または吐出の際に洗浄液Wa(イオン交換水等からなる)を介して伝達する圧力を発生するシリンジ77に接続される。このシリンジ77は、シリンダ77aとピストン77bとから成り、ピストン駆動部78の駆動によってピストン77bが移動する。シリンジ77は、チューブ91とは異なるチューブ92にも接続されている。このチューブ92の他端には、電磁弁79が接続されている。電磁弁79とポンプ7Aとはチューブ93によって接続されており、ポンプ7Aはチューブ94を介して洗浄液Waを収容する洗浄液タンク7Bに接続されている。ピストン駆動部78、電磁弁79およびポンプ7Aは、制御部16の制御のもとで駆動する。
【0032】
試薬ノズル71、シリンジ77、チューブ91および92を洗浄液Waで満たされており、試薬Rgの吸引または吐出を行う際には、ピストン駆動部78が駆動してシリンジ77のピストン77bを移動させることにより、洗浄液Waを介して試薬ノズル71の先端部に適当な吸引圧または吐出圧を印加する。試薬ノズル71の先端部では、洗浄液Waと試薬Rgとの間に空気層が介在するため、試薬Rgを吸引したときにその試薬Rgが洗浄液Waと混合することはない。
【0033】
なお、分注手段の一部をなす検体分注部6(検体ノズル61を具備)および試薬分注部8(試薬ノズル81を具備)も試薬分注部7と同様の構成を有している。
【0034】
次に、引き続き図1を参照してデータ処理ユニット102の機能構成を説明する。データ処理ユニット102は、検体の分析に必要な情報や自動分析装置1の動作指示信号などを含む情報の入力を受ける入力部13と、少なくとも検体の分析に関する情報を出力する出力部14と、自動分析装置1で発生する異常に関する情報や検体の分析に関する情報を含む各種情報を記憶する記憶部15と、データ処理ユニット102内の各機能または各手段の制御および演算を行うとともに測定ユニット101内の各機能または各手段の駆動制御を行う制御部16と、を備える。
【0035】
入力部13は、キーボードやマウスを有している。この入力部13として、トラックボール、トラックパッドなどのポインティングデバイスや、音声入力用のマイクロフォン等のユーザインターフェースをさらに有してもよい。
【0036】
出力部14は、各種情報を表示する液晶、プラズマ、有機EL、CRT等のディスプレイ置からなる表示部141を有している。この出力部14として、音声出力用のスピーカや、紙などに情報を印刷して出力するプリンタをさらに有してもよい。なお、表示部141をタッチパネル形式として、入力部13の一部機能を具備させ、ユーザが画面上で所望の入力を直接行うことが可能な構成としてもよい。
【0037】
記憶部15は、予め発生することが想定される異常の内容、当該異常の内容に応じた発生原因の候補である一または複数の原因候補、および各原因候補に対する対処法を記憶する。また、記憶部15は、分析項目、検体情報、試薬の種類、検体や試薬の分注量、検体や試薬の有効期限、分析に使用する検量線に関する情報、検量線の有効期限、各分析項目の参照値や許容値などの分析に必要なパラメータ、および分析データなどを記憶するとともに、各種プログラムを記憶する。このプログラムには、本実施の形態に係る自動分析装置の異常原因解析方法(後述)を実行させる異常原因解析プログラムや、測定ユニット101の動作を制御するプログラムも含まれる。
【0038】
制御部16は、記憶部15から各種プログラムを読み出すことによって自動分析装置1の各種動作の制御および演算を実行する。この制御部16は、測定ユニット101の測定結果に基づいた分析演算を行い検体の分析データを生成する演算部161を有する。演算部161が行う分析演算には、反応容器51内部の液体の吸光度の算出や、吸光度の算出結果および検量線や分析パラメータなどの各種情報を用いた反応容器51内部の液体の成分の定量的な算出などが含まれる。演算部161の演算結果は、分析データとして出力部14から出力(表示部141からの表示を含む)される一方、記憶部15に書き込まれて記憶される。
【0039】
以上の機能構成を有するデータ処理ユニット102は、CPU,ROM,RAM等を具備した電子的な装置であるコンピュータによって実現される。
【0040】
なお、記憶部15として、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、フラッシュメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された情報を読み取る補助記憶装置を具備してもよく、そのような記録媒体に対して上述した異常原因解析プログラムを含む各種プログラムを記録しておくことも可能である。
【0041】
ところで、自動分析装置1には、測定ユニット101において検体と試薬とを反応させ、この反応を測定するために作動させる各種作動機構の誤動作や誤検知、故障等を含む異常を検知するための異常検知手段が設けられている。このような異常検知手段としては、試薬分注部7で液面検知部76の検知信号を判定する機構の他、搬送部2でラック22を搬送するベルトの移動量を検知する回転センサや、反応容器保持部5において反応容器51の停止位置を判定する位置センサ、攪拌部9および10ならびに洗浄部12の動作を監視する各種センサなどが含まれる。このような異常検知手段は、従来の自動分析装置が具備しているものである。したがって、自動分析装置1は、故障解析を自動的に行うプロセスモニターのような手法を適用する場合のように特別なハードウェアを追加しているわけではない。
【0042】
次に、以上の構成を有する自動分析装置1の分析動作の概要を、図3のフローチャートを参照して説明する。自動分析装置1が分析を開始(ステップS101)した後、異常検知手段が何らかの異常の発生を検知した場合(ステップS102でYes)、自動分析装置1は表示部141にて異常発生の表示、例えば「液面検知エラーの発生」との表示を行った後(ステップS103)、分析を中止し(ステップS104)、異常原因解析支援処理を行う(ステップS105)。
【0043】
図4は、ステップS105の処理すなわち本実施の形態に係る自動分析装置の異常原因解析支援方法の概要を示すフローチャートである。まず、ステップS102で異常を検知した箇所を表示部141で表示する(ステップS1)。図5は、表示部141における異常検知箇所の表示例を示す図である。図5に示す異常箇所表示画面Pは、自動分析装置1の測定ユニット101の構成を模式的にグラフィック表示するものである。図5は試薬分注部7による分注時に液面検知エラーが発生した場合の表示を示すものであって、試薬容器保持部3および試薬分注部7に対応する領域が異常検知領域Qとして点線で表示されている。なお、表示部141では、異常検知領域Qを他の領域と異なる色によって表示してもよいし、異常検知領域Qが画面上で点滅するように表示してもよい。これにより、自動分析装置1のユーザは、検知された異常すなわち液面検知エラーが試薬容器保持部3または試薬分注部7で発生していることを視覚的に認識することができる。
【0044】
図5に示す異常箇所表示画面Pの下部領域には、「いずれか選択してください。1.原因候補表示、2.終了」というメッセージが表示されている。ユーザは、このメッセージにしたがって選択肢「1」または「2」を入力部13から選択入力し、その入力内容に応じた処理へ進む。まず、「1.原因候補表示」が選択された場合(ステップS2でYes)について説明する。この場合、検知した異常の内容に応じて、予め記憶部15で記憶する原因候補を表示部141から順次表示していく。ユーザは、表示部141の表示内容を見たあと、その表示内容に応じた異常の有無を調査する。表示部141では、原因候補を表示するとともに、ユーザによる調査の結果、実際の異常がその原因候補と適合しているか否かについての入力をユーザに促すメッセージを表示する。
【0045】
以下、より具体的な例として、検知した異常が試薬分注部7における液面検知エラーであった場合を参照しながら説明する。まず、1番目の原因候補1の内容を表示する(ステップS3−1)。図6は、試薬分注部7における液面検知エラーの原因候補の表示内容の選択結果に応じた表示部141における画面遷移例を示す図である。ステップS3−1では、図6の原因候補表示画面P1に示すように、原因候補1として「試薬容器内部の試薬が多すぎませんか?」というメッセージを表示するとともに、ユーザに対して多すぎる(Yes:y入力)か適正(No:n入力)かの選択入力を促す内容を表示する。
【0046】
ユーザが該当箇所を確認した結果、試薬液量が多すぎると認識した場合、これが異常の発生原因であるとしてユーザが入力部13からy入力(適合入力)を行うと(ステップS4−1でYes)、この入力に応じて表示部141では原因候補1(試薬過剰)に対する対処法を表示する(ステップS5−1)。このステップS5−1では、例えば図6の対処法表示画面P1Aに示すように、「原因:試薬残量が多すぎます。操作:試薬液量を適正な量にしてください」という表示を行う。
【0047】
これに対して、ユーザが試薬液量は適正であることを確認した場合、ユーザが入力部13からn入力を行うと(ステップS4−1でNo)、この入力に応じて表示部141では原因候補1とは異なる原因候補2を表示する(ステップS4−2)。図6に示す原因候補表示画面P2では、「試薬容器は傾いていませんか?」というメッセージを表示するとともに、ユーザに傾いている(Yes:y入力)か傾いていない(No:n入力)かの選択入力を促す内容を表示している。
【0048】
このあと、ユーザが入力部13からy入力(適合入力)をした場合(ステップS4−2でYes)、原因候補2(容器傾斜)に対する対処法を表示部141から表示する(ステップS5−2)。ステップS5−2では、例えば図6の対処法表示画面P2Aに示すように、「原因:試薬容器が傾いています。操作:試薬容器を正しくセットしてください」という表示を行う。
【0049】
ステップS4−2でユーザが原因候補表示画面P2を表示中にn入力をした場合(ステップS4−2でNo)、次の原因候補の内容を表示する。以下、原因候補ごとの処理内容は、上述した原因候補1および2の場合と同様である。図4では、検知された異常に応じた原因候補がN個であった場合について途中を省略して記載している。これに対して、図6に示す場合、原因候補の総数(図4のN)は3である。具体的には、原因候補3は、原因候補表示画面P3にも示すように試薬ノズルの屈曲である。この原因候補表示画面P3を表示中にユーザからy入力(適合入力)がなされた場合、表示部141では原因候補3(ノズル屈曲)に対する対処法表示画面P3Aとして、「原因:試薬ノズルが曲がっています。操作:試薬ノズルを交換してください」という表示を行う。なお、図6に示す場合、原因候補1〜3の表示順は予め定められているものとする。
【0050】
全ての原因候補1,・・・,Nによっても原因が特定されなかった場合、すなわち原因候補表示画面P1,・・・,PNを表示している間に入力部13からの適合入力がなかった場合には、ステップS6に進んで連絡先を表示する。具体的には、例えば図6の連絡先表示画面PFに示すように「弊社サービスマンをお呼びください。TEL:03−xxxx−xxxx」と表示することによってユーザからサービスマンへの連絡を促す。このような場合に該当する液面検知エラーの内容としては、静電気などの外来ノイズにより、試薬ノズル71が本来の液面よりもかなり上方に位置しているときに液面検知信号が発生した場合を挙げることができる。
【0051】
なお、自動分析装置1が電話等の通信機器との間で通信可能な構成を有している場合には、ステップS6で連絡先を表示する代わりに、その連絡先への呼出しを自動的に発生する制御を行う構成としてもよい。また、自動分析装置1が、通信ネットワーク(インターネット、イントラネット、専用回線等を含む)を介した情報の送受信が可能な構成を有している場合、ステップS6において発生した異常に関する情報を所定の送信先(例えばサポートセンター)へ自動的に送信するような構成としてもよい。
【0052】
ここまで、ステップS2において「1.原因候補表示」が選択された場合を説明してきたが、「2.終了」が選択された場合(ステップS2でNo)には、異常原因解析支援処理を終了する。これは、例えばユーザが自動分析装置1からの支援を受けることなく異常原因を即座に特定できた場合などの処理に対応する。
【0053】
以上説明した異常原因解析支援処理において、ユーザからの自動分析装置1への信号入力の具体的な方法としては、入力部13が有するキーボードやマウスによる入力の他、表示部141上でタッチパネル方式による入力が可能な構成としてもよいし、ユーザの音声による入力が可能な構成としてもよい。また、出力部14がマイクロフォンを具備している場合には、表示部141で出力するのと同じかまたは同等の内容を音声によって出力する構成としてもよい。
【0054】
異常原因解析支援処理(ステップS105)が終了した後、ユーザは異常原因を取り除く作業を行うか、またはサービスマンへ連絡して修理等に来てもらう。その後、検体の分析を再開する場合(ステップS106でYes)、ステップS101へ戻って処理を繰り返す。他方、分析を中断する場合(ステップS106でNo)、そのまま一連の処理を終了する。
【0055】
なお、ステップS102で異常が検知されない場合(ステップS102でNo)には、分析動作が終了していなければ(ステップS107でNo)、ステップS102に戻る。これに対して、所定の分析動作が終了した場合(ステップS107でYes)には、一連の処理を終了する。
【0056】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、自動分析装置に異常が発生した場合、その発生箇所を表示した後、前記異常に応じた発生原因の候補である原因候補を表示し、この表示した原因候補が発生原因であることを示す適合入力がなされた場合、当該発生原因に対する対処法を表示することにより、構成を複雑化することなく、異常発生時にユーザによってなされる発生原因の解析の迅速化を実現することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、自動分析装置に異常が発生したとき、ユーザはチェックすべき内容を視覚的(場合によっては聴覚的に)認識することができる上、原因究明を装置側との対話形式で進めていくことができるので、装置のマニュアルに記載されてる膨大な記事の中から該当する記載箇所を探し出したり、画面上でヘルプ機能を参照したりすることによって異常原因解析を行う手間や、その際にユーザが感じる精神的なストレスを著しく軽減することができる。
【0058】
さらに、本実施の形態によれば、ユーザは容易にかつ迅速に故障原因を究明することができるようになるので、異常の発生原因が究明できずにサービスマンを呼び出す回数が減少する。この結果、ユーザおよびサービスマン双方の負担が減少するととともに、装置のランニングコストを削減することが可能となる。
【0059】
なお、表示部141における原因候補の表示例は、上記一実施の形態に限定されるものではない。図7は、表示部141における原因候補の別な表示例(第2例)として、検知した異常に対応して想定される原因候補を一括して表示する場合の表示例を示す図である。同図に示す原因候補表示テーブルT1は、液面検知エラーの場合に想定される全ての原因候補および各原因候補に対する対処法を一括して表示している。この場合、ユーザは、想定される原因候補を一度に全部見ることができるので、特に急いで異常原因解析を行いたい場合などに好適である。
【0060】
図8は、表示部141における原因候補のさらに別な表示例(第3例)として、当該自動分析装置1において以前に検知した異常に応じた原因候補を各原因候補の発生頻度と対応付けて表示する場合を示す図である。同図に示す発生頻度表示画面Phでは、全ての原因候補を、発生頻度に応じたヒストグラムによって表示している。具体的には、発生頻度表示画面Phでは、試薬液面検知エラーが「試薬過剰」を原因として発生した回数がn1回、「容器傾斜」を原因として発生した回数がn2回、「ノズル屈曲」を原因として発生した回数がn3回、「その他」の原因で発生した回数がn4回であって、n3>n1>n2>n4であることを示している。なお、この場合には、記憶部15がそれまでに発生した異常の発生原因ごとの発生頻度も記憶していることはいうまでもない。
【0061】
図8に示す表示例によれば、ユーザは、発生頻度表示画面Phに表示された原因候補と発生頻度との関係を参考にして、例えば発生頻度が高い順から原因究明を行っていくことができる。なお、表示部141がタッチパネル形式となっている場合、ヒストグラムをタッチしたときに対処法が表示されるようにしてもよい。
【0062】
図9は、表示部141における原因候補の第4の表示例を示す図である。具体的には、液面検知エラーの原因候補と発生頻度との関係が、図8の発生頻度表示画面Phで示される関係にある場合、試薬分注部7における液面検知エラーの原因候補の表示内容の選択結果に応じた表示部141における画面遷移例を示す図であり、図6に対応する図である。図9では、発生頻度の高い原因候補から表示部141で順次表示していく場合を図示している。このようなカスタマイズ処理を行うことにより、ユーザは原因である可能性が大きい順に異常原因解析を行っていくことができるので、より迅速な原因究明を図ることが可能となる。
【0063】
なお、図6〜9に示す表示方法の中からユーザが所望の表示方法を選択できるような構成とすることも可能である。
【0064】
図10は、液面検知エラー以外の異常を検知した場合の例として、測光部11における測光エラーが生じた場合の原因候補の表示例を示す図である。同図に示す原因候補表示テーブルT2は、測光エラーが発生した時の全原因候補と各原因候補に対する対処法とを表示するものであり、図7に示す原因候補表示テーブルT1に対応するものである。測光エラーの場合にも、図6に示す場合と同様に原因候補を一つずつ表示することも可能であるし、図9に示す場合と同様にその表示を発生頻度に応じてカスタマイズすることも可能である。また、図8に示す場合と同様に原因候補と当該装置における発生頻度との関係を示すヒストグラムを表示してもよい。
【0065】
ここまで、生化学的な分析を行う自動分析装置の場合を取り上げて説明してきたが、本発明は、免疫学的または遺伝学的な分析を行う自動分析装置にも適用可能である。
【0066】
以上の説明からも明らかなように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置要部の構成を示す図である。
【図2】試薬分注部の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の分析動作の概要を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の異常原因解析支援方法の概要を示すフローチャートである。
【図5】表示部における異常検知箇所の表示例を示す図である。
【図6】表示部における液面検知エラーの原因候補の表示例を示す図である。
【図7】表示部における液面検知エラーの原因候補の表示例(第2例)を示す図である。
【図8】表示部における液面検知エラーの原因候補の表示例(第3例)を示す図である。
【図9】表示部における液面検知エラーの原因候補の表示例(第4例)を示す状態遷移図である。
【図10】表示部における測光エラーの原因候補の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 自動分析装置
2 搬送部
3、4 試薬容器保持部
5 反応容器保持部
5a 測光窓
6 検体分注部
7、8 試薬分注部
7A ポンプ
7B 洗浄液タンク
9、10 攪拌部
11 測光部
11a 光源
11b 分光光学系
11c 受光素子
12 洗浄部
13 入力部
14 出力部
15 記憶部
16 制御部
21 検体容器
22 ラック
31 試薬容器
41 試薬容器
51 反応容器
61 検体ノズル
71、81 試薬ノズル
72 アーム
73 連結部
74 駆動部
75 電極
76 液面検知部
77 シリンジ
77a シリンダ
77b ピストン
78 ピストン駆動部
79 電磁弁
91、92、93、94 チューブ
101 測定ユニット
102 データ処理ユニット
141 表示部
161 演算部
P 異常箇所表示画面
P1、P2、P3 原因候補表示画面
P1A、P2A、P3A 対処法表示画面
PF 連絡先表示画面
Ph 発生頻度表示画面
Q 異常検知領域
Rg 試薬
T1、T2 原因候補表示テーブル
Wa 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とを反応させ、この反応の測定を行う測定ユニットを備え、検体の成分を自動的に分析する自動分析装置であって、
前記測定ユニットで発生する異常を検知する異常検知手段と、
前記異常検知手段が検知可能な異常の発生原因の候補である一または複数の原因候補、および各原因候補に対する対処法を記憶する記憶手段と、
前記異常検知手段が検知した異常の発生箇所、当該異常の内容に応じた原因候補、および異常の発生原因として選択された原因候補に対する対処法を前記記憶手段から読み出して表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記表示手段は、
前記異常検知手段が検知した異常の内容と、当該異常の内容に応じた原因候補のいずれか一つとを表示するとともに、前記原因候補が異常を発生した箇所の状態と適合しているか否かの選択入力を促す内容を表示し、
この表示に応じて選択入力された内容に応じて前記原因候補に対する対処法を表示するか、または前記原因候補とは異なる原因候補を表示することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、当該装置で発生した異常の発生原因ごとの発生頻度を記憶し、
前記表示手段で表示する原因候補の表示順序は、当該装置における各原因候補の発生頻度に基づいて定められることを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記表示手段は、
前記異常検知手段が検知した異常の内容、および当該異常の内容に応じた全ての原因候補を一括して表示することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、当該装置で発生した異常の発生原因ごとの発生頻度を記憶し、
前記表示手段は、各原因候補を発生頻度と対応付けて表示することを特徴とする請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記異常検知手段が異常を検知した箇所をグラフィック表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記測定ユニットは、検体および/または試薬を吸引して吐出する分注手段と、前記検体および/または試薬の液面を検知する液面検知手段と、を有し、
前記異常検知手段は、前記液面検知手段における異常を検知することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記測定ユニットは、検体を収容する検体容器が載置されたラックを搬送する搬送手段を有し、
前記異常検知手段は、前記搬送手段における異常を検知することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記測定ユニットは、検体と試薬とを反応させる反応容器に光を照射し、前記反応容器を透過してきた光を検出する測光手段を有し、
前記異常検知手段は、前記測光手段における異常を検知することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項10】
検体と試薬とを反応させることによって検体の成分を分析する自動分析装置で発生した異常の発生原因の解析を支援する自動分析装置の異常原因解析支援方法であって、
前記異常が発生した箇所を表示する発生箇所表示ステップと、
前記異常に応じた発生原因の候補である原因候補を、当該装置で検知可能な異常に応じた一または複数の原因候補を少なくとも記憶する記憶部から読み出して表示する原因候補表示ステップと、
前記原因候補表示ステップで表示した原因候補が異常を発生した箇所の状態と適合しているか否かの入力を受ける入力ステップと、
前記適合しているとの入力がなされた場合、当該発生原因に対する対処法を表示する対処法表示ステップと、
を有することを特徴とする自動分析装置の異常原因解析支援方法。
【請求項11】
前記原因候補表示ステップは、前記異常の内容と、当該異常の内容に応じた原因候補のいずれか一つとを表示するとともに、前記原因候補が異常を発生した箇所の状態と適合しているか否かの選択入力を促す内容を表示し、
前記入力ステップで前記原因候補が異常を発生した箇所の状態とは適合しないことを示す入力がなされた場合、前記原因候補表示ステップに戻って前記原因候補とは異なる原因候補を表示することを特徴とする請求項10記載の自動分析装置の異常原因解析支援方法。
【請求項12】
前記原因候補の表示順序は、当該装置における各原因候補の発生頻度に基づいて定められることを特徴とする請求項11記載の自動分析装置の異常原因解析支援方法。
【請求項13】
前記原因候補表示ステップは、
異常の内容、および当該異常の内容に応じた全ての原因候補を一括して表示することを特徴とする請求項10記載の自動分析装置の異常原因解析支援方法。
【請求項14】
前記原因候補表示ステップは、
当該装置における各原因候補を発生頻度と対応付けて表示することを特徴とする請求項13記載の自動分析装置の異常原因解析支援方法。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか一項に記載した自動分析装置の異常原因解析支援方法をコンピュータに実行させることを特徴とする異常原因解析支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−32493(P2008−32493A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205218(P2006−205218)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】