説明

自動分析装置及びその動作判定方法

【課題】 撹拌不良による分析データの悪化を未然に防ぎ、精度よく測定することができる自動分析装置及びその動作判定方法を提供する。
【解決手段】 第1及び第2の混合液を撹拌するための第1及び第2撹拌子11a,11bを駆動する駆動部322と、第1及び第2撹拌子11a,11bの慣性による動作で発生する信号を検出する検出部323と、第1及び第2撹拌子11a,11bの撹拌動作が正常であるか否かを判定する判定部324とを備え、判定部324は、駆動部323により駆動した後に、検出部323から出力された検出信号の最大値から最小値を差し引いて求めた電圧V1が予め設定した電圧Vmaxよりも小さい場合、第1及び第2撹拌子11a,11bの撹拌動作を異常であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に含まれている成分を分析する自動分析装置及びその動作判定方法に係り、特に、ヒトの血液や尿などの体液を分注して体液に含まれる成分を自動的に測定する自動分析装置及びその動作判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、反応容器に分注した被検試料と分析を行う生化学や免疫などの測定項目に該当する試薬との混合液の反応によって生ずる色調などの変化を光の透過量を測定することにより、被検試料中の様々な被測定物質の濃度や酵素の活性を測定する。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料毎に分析条件の設定により測定可能になった多数の項目の中から、検査に応じて選択された測定項目の測定が行われる。そして、被検試料及び測定項目に該当する試薬は、サンプル及び試薬分注プローブにより反応容器に分注され、反応容器に分注された被検試料及び試薬の混合液は撹拌子により撹拌され、撹拌された混合液は測光部により測定される。更に、被検試料及び試薬に接触したサンプル及び試薬分注プローブ、混合液に接触した反応容器及び撹拌子は、洗浄された後に繰り返し測定に使用される。
【0004】
そして、撹拌の方法には、モータの先端部に取り付けた撹拌棒を、モータを移動する移動機構により反応容器内に移動して回転させ、反応容器内の混合液を撹拌する方法がある。また、薄い金属板の両面に圧電素子を貼り付けて、その金属板の先端部に設けた撹拌棒を、その金属板を移動する移動機構により反応容器内に移動して振動させ、反応容器内の混合液を撹拌する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3135605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、移動機構の制動力低下による撹拌棒の洗浄槽縁部などへの衝突や、操作者の撹拌棒への接触により撹拌棒が偏心すると、撹拌棒が反応容器の内面に接触して混合液を十分に撹拌できないため、その混合液の分析データが悪化する問題がある。そして、撹拌不良により分析データが悪化した場合、その分析データを用いて誤診しないように細心の注意が必要である。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、撹拌不良による分析データの悪化を未然に防ぎ、精度よく測定することができる自動分析装置及びその動作判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る本発明の自動分析装置は、被検試料と試薬とを容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記混合液を撹拌するための撹拌子を駆動する駆動手段と、前記駆動手段により駆動した前記撹拌子の慣性による動作で発生する信号を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された検出信号に基づいて、前記撹拌子の撹拌動作が正常であるか否かを判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項10に係る本発明の自動分析装置の動作判定方法は、被検試料と試薬とを容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置の動作判定方法において、前記混合液を撹拌するための撹拌子を駆動手段により駆動し、前記駆動手段により駆動した前記撹拌子の慣性による動作で発生する信号を検出手段により検出し、前記検出手段により検出された検出信号に基づいて、前記撹拌子の撹拌動作が正常であるか否かを判定手段により判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撹拌子を駆動した後、撹拌子の慣性による動作により発生した信号を検出し、検出した検出信号に基づいて撹拌子の撹拌動作が正常であるか否かを判定することにより、撹拌不良により測定精度が悪化するのを未然に防ぎ、被検試料を精度よく測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図6を参照して説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、様々な測定項目の標準試料や被検試料毎に選択入力された測定項目を測定する分析部19と、分析部19の測定動作の制御を行う分析制御部30と、分析部19から出力された被検試料データを処理して分析データを生成するデータ処理部40と、データ処理部40からの分析データを出力する出力部50と、測定項目毎の分析条件の設定や被検試料毎の測定項目の選択入力、各種コマンド信号を入力する操作部60と、上述したこれらのユニットを統括して制御するシステム制御部70とを備えている。
【0012】
分析部19は、測定項目毎の標準試料、被検試料などのサンプルを分注するユニットを有するサンプル部20と、サンプルの測定項目の成分と化学反応させるための試薬を分注するユニットを有する試薬部21と、サンプルと試薬の混合液の撹拌や測定を行うユニットを有する反応部22とを備えている。そして、標準試料や被検試料の測定により生成された標準試料データや被検試料データなどは、反応部22からデータ処理部40に出力される。
【0013】
分析制御部30は、分析部19の各ユニットを駆動する機構を有する機構部31と、機構部31の各機構などを制御する制御部32とを備えている。制御部32は、機構部31の各機構を制御する機構制御部321と、分析部19における反応部22の混合液を撹拌するユニットを駆動する駆動部322と、反応部22の撹拌ユニットを駆動した後に発生する信号を検出する検出部323と、検出部323からの検出信号に基づいて反応部22における撹拌ユニットの動作が正常であるか否かを判定する判定部324とを備えている。
【0014】
データ処理部40は、分析部19の反応部22から出力された標準試料データや被検試料データなどから、各測定項目のキャリブレーションテーブルの作成、各被検試料の各測定項目の分析データの生成などを行う演算部41と、演算部41で作成されたキャリブレーションテーブルや生成された分析データなどを保存する記憶部42とを備えている。
【0015】
演算部41は、分析部19の反応部22から出力された各測定項目の標準試料データから各測定項目のキャリブレーショテーブルを作成して、出力部50に出力すると共に記憶部42に保存する。また、分析部19の反応部22から出力された各被検試料の各測定項目の被検試料データに対して、記憶部42から測定項目のキャリブレーションテーブルを読み出した後、このキャリブレーションテーブルを用いて分析データを算出して、出力部50に出力すると共に記憶部42に保存する。
【0016】
記憶部42は、ハードディスクなどを備え、演算部41から出力されたキャリブレーションテーブル、分析データなどを被検試料毎に保存する。
【0017】
出力部50は、データ処理部40の演算部41から出力されたキャリブレーションテーブル、分析データなどを印刷出力する印刷部51及び表示出力する表示部52を備えている。
【0018】
印刷部51は、プリンタなどを備え、データ処理部40の演算部41から出力されたキャリブレーションテーブル、分析データなどを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷出力する。
【0019】
表示部52は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、データ処理部40の演算部41から出力されたキャリブレーションテーブルや分析データ、被検体のID及び氏名などを入力する被検体情報入力画面、測定項目毎の分析条件を設定するための分析条件設定画面、被検試料毎に測定項目を選択設定するための測定項目設定画面などの表示を行う。
【0020】
操作部60は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、測定項目毎の分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検試料毎の測定項目の選択入力、各測定項目のキャリブレーションや被検試料測定などの様々な操作が行われる。
システム制御部70は、図示しないCPUと記憶回路を備え、操作部60から供給される操作者のコマンド信号、測定項目の分析条件、被検体情報、被検試料毎の測定項目などの情報を記憶した後、これらの情報に基づいて、分析部19を構成する各分析ユニットなどを一定サイクルの所定のシーケンスで測定動作させる制御、キャリブレーションテーブルの作成、分析データの算出と出力などシステム全体の制御を行う。
【0021】
次に、図2乃至図4を参照して、分析部19及び分析制御部30の構成及び動作の詳細を説明する。図2は、分析部19の構成を示した図である。図3は、分析部19の反応部22の撹拌ユニットの構成を示した図である。図4は、分析制御部30の制御部32における検出部323で検出される検出信号を示した図である。
【0022】
図2は、分析部19の構成を示した図である。サンプル部20は、標準試料、被検試料などのサンプルを収容した試料容器17と、サンプルを収容した試料容器17を回動可能に保持するディスクサンプラ6と、ディスクサンプラ6の試料容器17からサンプルを吸引して反応部22に吐出するサンプル分注プローブ16とを備えている。
【0023】
また、同一サンプルの吸引及び吐出による分注終了毎にサンプル分注プローブ16を洗浄する洗浄槽16aと、サンプル分注プローブ16を試料容器17、反応部22、及び洗浄槽16aの各停止位置への水平移動、及び各停止位置での上下移動可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。
【0024】
試薬部21は、各測定項目の第1試薬を収容した複数の試薬ボトル7aと、この試薬ボトル7aを収納する試薬ラック1aと、この試薬ラック1aを回動可能に保持する試薬庫2と、第1試薬と対をなす第2試薬を収容した試薬ボトル7bと、この試薬ボトル7bを収納する試薬ラック1bと、この試薬ラック1bを回動可能に保持する試薬庫3とを備えている。
【0025】
また、試薬ボトル7aから第1試薬を吸引して反応部22に吐出する第1試薬分注プローブ14と、第1試薬分注終了毎に第1試薬分注プローブ14を洗浄する洗浄槽14aと、試薬ボトル7bから第2試薬を吸引して反応部22に吐出する第2試薬分注プローブ15と、第2試薬分注終了毎に第2試薬分注プローブ15を洗浄する洗浄槽15aとを備えている。
【0026】
更に、第1試薬分注プローブ14を試薬ボトル7a、反応部22、及び洗浄槽14aの各停止位置への水平移動、及び各停止位置での上下移動可能に保持する第1試薬分注アーム8と、第2試薬分注プローブ15を試薬ボトル7b、反応部22、及び洗浄槽15aの各停止位置への水平移動、及び各位置で上下移動可能に保持する第2試薬分注アーム9とを備えている。
【0027】
反応部22は、サンプル分注プローブ16から吐出されたサンプル、第1試薬分注プローブ14から吐出された第1試薬、及び第2試薬分注プローブ15から吐出された第2試薬を収容する円周上に複数配置された反応容器4と、この反応容器4を回転可能に保持する反応ディスク5とを備えている。
【0028】
また、反応容器4内のサンプル及び第1試薬からなる第1の混合液を撹拌する第1撹拌子11aと、第1の混合液の撹拌終了毎に第1撹拌子11aを洗浄する洗浄槽80aと、第1撹拌子11aを反応容器4及び洗浄槽80aへの水平移動、及び各停止位置での上下移動可能に保持する第1撹拌アーム18aとを備えている。
【0029】
更に、反応容器4内のサンプル、第1試薬、及び第2試薬からなる第2の混合液を撹拌する第2撹拌子11bと、第2の混合液の撹拌終了毎に第2撹拌子11bを洗浄する洗浄槽80bと、第2撹拌子11bを反応容器4及び洗浄槽80bの各停止位置への水平移動、及び各停止位置での上下移動可能に保持する第2撹拌アーム18bとを備えている。
【0030】
更にまた、第1及び第2混合液を収容した反応容器4に光を照射して、透過した光から予め設定された波長の吸光度を測定して標準試料データや被検試料データを生成する測光ユニット13と、反応容器4内の測定を終えた第1及び第2の混合液を吸引すると共に、反応容器4内を洗浄する洗浄ノズル及び乾燥する乾燥ノズルを上下移動可能に保持する洗浄ユニット12とを備えている。そして、反応容器4は、洗浄ユニット12で洗浄及び乾燥された後、再び測定に使用される。
【0031】
次に、分析制御部30の機構部31及び制御部32の構成を説明する。
機構部31は、サンプル部20のディスクサンプラ6を回動する機構、及びサンプル分注アーム10を回動及び上下移動する機構と、試薬部21の試薬庫2,3を夫々回動する機構、及び第1及び第2試薬分注アーム8,9を夫々回動及び上下移動する機構とを備えている。
【0032】
また、反応部22の反応ディスク5を回転する機構、第1及び第2撹拌アーム18a,18bを夫々回動及び上下移動する機構、及び洗浄ユニット12を上下移動する機構を備えている。
【0033】
制御部32は、機構部31の各機構を制御する機構制御部321を備えている。そして、制御部32からの制御信号に基づき機構部31は分析サイクル単位で、ディスクサンプラ6、サンプル分注アーム10、試薬庫2、試薬庫3、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、反応ディスク5、第1撹拌アーム18a、第2撹拌アーム18b、洗浄ユニット12などを作動する。
【0034】
また、第1及び第2撹拌子11a,11bを夫々駆動する駆動部322と、第1及び第2撹拌子11a,11bで発生した信号を夫々検出する検出部323と、検出部323からの検出信号に基づいて第1及び第2撹拌子11a,11bの撹拌動作が正常であるか否かを判定する判定部324とを備えている。
【0035】
次に、反応部22の第1及び第2撹拌子11a,11b及びこの撹拌子を制御する分析制御部30の制御部32の構成及び動作の詳細を説明する。
【0036】
図3は、分析部19の反応部22における第1撹拌子11aの構成を示した図である。図3(a)は、第1撹拌子11aの正面図であり、図3(b)は、第1撹拌子11aの側面図である。なお、第2撹拌子11bは、第1撹拌子11aの構成ユニットと同じユニットで構成されているので、その説明を省略する。
【0037】
第1撹拌子11aは、長方形のプレート11a1と、このプレート11a1を挟んで両面の同じ位置に配置され2つの圧電素子11a2,11a3と、プレート11a1の下側に配置されたプレート11a1よりも幅が狭いブレード11a4と、プレート11a1の下端部に固定された錘11a5とにより構成される。
【0038】
プレート11a1は、例えば鋼弾性板であり、上端部が反応部22の第1撹拌アーム18aに保持されている。
【0039】
各圧電素子11a2,11a3は、プレート11a1の両面に接合されている。そして、制御部32の駆動部322からの駆動信号により、交互に同期して同じ方向に伸縮し、プレート11a1を矢印L1及びL2方向に振動させる。なお、1つの圧電素子をプレート11a1の片面だけに接合するようにしてもよい。
【0040】
ブレード11a4は、プレート11a1を含めて継ぎ目のない同じ板から形成され、プレート11a1の下端部中央から下方に向けて延びている。そして、プレート11a1から伝達された振動により、L1及びL2方向に屈曲振動する。
【0041】
錘11a5は、プレート11a1の質量をブレード11a4の質量よりも大きくして、ブレード11a4の振幅を圧電素子11a2,11a3の振幅よりも大きくさせるために設けられている。これにより、圧電素子11a2,11a3の振幅を小さくして破損を防ぎ、ブレード11a4による撹拌を効率よく行うことができる。
【0042】
駆動部322は、サンプル測定時にブレード11a4が反応部22の第1の混合液を収容した反応容器4内に挿入された後に、圧電素子11a2,11a3に所定の周波数の交流電圧を印加して、ブレード11a4をL1及びL2方向に屈曲振動させる。この振動により、反応容器4内の第1の混合液が撹拌される。
【0043】
また、第1の混合液の撹拌後の洗浄時に、ブレード11a4が反応部22の洗浄槽80a内に挿入された後、圧電素子11a2,11a3に交流電圧を印加して、ブレード11a4をL1及びL2方向に屈曲振動させる。この振動によりブレード11a4の表面に付着した第1の混合液が洗い落とされる。
【0044】
更に、洗浄後の第1撹拌子11aが洗浄槽80aの上方に移動した後に、圧電素子11a2,11a3に所定周波数の交流電圧を印加して、ブレード11a4をL1及びL2方向に屈曲振動させる。
【0045】
そして、交流電圧を印加した後に、圧電素子11a2,11a3は、ブレード11a4の慣性による振動に応じた周波数の交流電圧を発生する。そして、発生した交流電圧の信号を検出部323に出力する。
【0046】
ここで、第1撹拌アーム18aの移動機構の制動力低下による洗浄槽80a縁部への衝突や、自動分析装置100の操作者との接触などにより、ブレード11a4が図3(b)に示した中心線から偏心することがある。ブレード11a4が偏心すると、測定時には反応容器4内のL1及びL2方向の偏心した側の内面に接触して第1の混合液を十分に撹拌できない問題が発生する。また、偏心の程度が大きいと、第1の混合液の撹拌及び洗浄のため移動しようとしても、ブレード11a4を反応容器4及び洗浄槽80a内に移動できない問題が発生する。
【0047】
そして、ブレード11a4が偏心していると、圧電素子11a2,11a3に交流電圧を印加した後に、ブレード11a4の慣性による振動幅は偏心していないときよりも狭くなると共に停止するまでの時間が短くなる特性がある。この特性を利用して、制御部32の判定部324で、第1撹拌子11aの撹拌が正常であるか否かを判定する。
【0048】
検出部323は、第1及び第2撹拌子11a,11bからの信号を検出し、検出した信号を増幅した後、デジタル信号に変換する。そして、その検出信号を判定部324に出力する。
【0049】
判定部324は、検出部323から出力された検出信号に基づいて、第1及び第2撹拌子11a,11bによる撹拌動作が正常であるか否かを判定する。そして、検出信号の最大の振幅における電圧から最小の振幅における電圧を差し引いて求めた電圧V1が、図4に示した撹拌動作が正常であるときの検出信号の予め設定した電圧Vmax以上である場合、正常であると判定する。また、最大電圧V1が電圧Vmaxよりも小さい場合、異常であると判定する。
【0050】
なお、圧電素子11a2,11a3への交流電圧の印加を停止した時点から図4の時間Ta以降の検出信号において、最大の電圧から最小の電圧を差し引いて求めた電圧V2が、予め設定した図4の電圧Va以上である場合に正常であると判定し、電圧V2が電圧Vaよりも小さい場合に異常であると判定するようにしてもよい。
【0051】
また、交流電圧の印加を停止した時点から電圧Vaに収束するまでに要した時間を求め、求めた時間T1が図4の時間Ta以上である場合に正常であると判定し、時間T1が時間Ta未満である場合に異常であると判定するようにしてもよい。
【0052】
更に、交流電圧の印加を停止した時点から検出信号が0V近傍に収束するまでに要した時間を求め、求めた時間T2が予め設定した図4の時間Tcon以上である場合に正常であると判定し、時間T2が時間Tcon未満である場合に異常であると判定するようにしてもよい。
【0053】
そして、判定部324は、異常であると判定した場合、その判定直前に撹拌した第1の混合液以降の第1の混合液の測定動作を停止させると共に、第1撹拌子11aの異常情報を、システム制御部70を介して出力部50に出力する。また、その判定直前に撹拌した第2の混合液以降の第2の混合液の測定動作を停止させると共に、第2撹拌子11bの異常情報を、システム制御部70を介して出力部50に出力する。
【0054】
なお、判定直前に撹拌した第1の混合液以降の第1の混合液の分析データに第1撹拌子11a異常のエラーフラグを付けるようにしてもよい。また、判定直前に撹拌した第2の混合液以降の第2の混合液の分析データに第2撹拌子11b異常のエラーフラグを付けるようにしてもよい。
【0055】
以下、図1乃至図6を参照して、自動分析装置100の動作の一例を説明する。図5は、表示部52に表示される測定項目設定画面の一例を示す。図6は、自動分析装置100の動作を示したフローチャートである。
【0056】
操作部60からのキャリブレーション操作により、データ処理部40の記憶部42には予め各測定項目のキャリブレーションテーブルが保存されている。また、操作部60からの測定項目選択入力により、システム制御部70の内部記憶回路には、被検試料毎に選択入力された測定項目が保存されている。
【0057】
図5は、表示部52に表示される選択入力された測定項目設定画面の一例を示した図である。この測定項目設定画面53は、被検体情報入力画面で入力された被検体のIDを表示する「ID」の欄と、項目名を略称で表示する「項目」の欄と、「ID」の欄に表示された被検体のID毎に「項目」の欄に表示された項目名の測定項目を設定するための測定項目設定エリア53aから構成される。
【0058】
「ID」の欄には、予め入力された例えば「1」及び「2」の被検体のIDが表示されている。また、「項目」の欄には、例えば「GOT」、「GPT」、「Ca」、「TP」などの項目名が表示されている。
【0059】
測定項目設定エリア53aには、「ID」の欄の各被検体のIDに対応した「項目」の欄の項目名が設定された場合には「○」が表示され、設定されない場合には「・」が表示される。そして、操作部60から例えば「ID」の欄に表示された「1」に対して、「GOT」、「GPT」、及び「Ca」が設定されると、測定項目設定エリア53aに1テスト乃至3テスト欄に「○」が表示される。また、「ID」の欄に表示された「2」に対して「TP」が設定されると、測定項目設定エリア53aに4テスト欄に「○」が表示される。
【0060】
測定項目設定画面53から設定入力された測定項目設定情報は、システム制御部70の内部記憶回路に保存される。そして、被検試料の測定は測定項目設定画面53から選択入力された測定項目の情報に基づいて行われ、「ID」の最上段の「1」に対応した被検試料から順に、各被検体のIDの左の設定された測定項目「GOT」から順に測定されることになる。
【0061】
図6は、自動分析装置100の動作を示したフローチャートである。まず、操作部60からの被検試料の測定操作により、自動分析装置100は動作を開始する(ステップS1)。
【0062】
システム制御部70は、分析制御部30、データ処理部40、及び出力部50に、内部記憶回路に保存されている被検試料毎の測定項目の測定を指示する。分析制御部30の制御部32は、分析部19の各ユニットを一旦ホームポジションに移動させてから測定動作を開始させる。
【0063】
分析部19のサンプル部20におけるサンプル分注プローブ16は、測定項目設定画面53で選択入力された1テスト欄の「GOT」、2テスト欄の「GPT」、及び3テスト欄の「Ca」を測定するための被検試料を、被検体ID「1」の被検試料を収容した試料容器17から吸引して反応容器4に吐出する。また、4テスト欄の「TP」を測定するための被検試料を、被検体ID「2」の被検試料を収容した試料容器17から吸引して反応容器4に吐出する。(ステップS2)。
【0064】
被検試料を分注した後に、分析部19における試薬部21の第1試薬分注プローブ14は、試薬ボトル7aから1乃至4テスト欄の各測定項目に該当する第1試薬を吸引して、各反応容器4に吐出する(ステップS3)。
【0065】
第1試薬を分注した後に、分析部19における反応部22の第1撹拌子11aは、反応容器4に移動して、反応容器4内のmテスト欄(m=1)の測定項目に対応する第1の混合液を撹拌する(ステップS4)。
【0066】
第1の混合液の撹拌後、第1撹拌子11aは、洗浄槽80aに移動して洗浄した後に、洗浄槽80aの上停止点まで移動する。
【0067】
分析制御部30における制御部32の駆動部322は、駆動信号を出力して第1撹拌子11aを駆動する。駆動信号を出力した後に、検出部323は、第1撹拌子11aから出力される信号を検出して、その検出信号を判定部324に出力する。判定部324は、検出部323から出力された検出信号に基づいて、第1撹拌子11aの撹拌動作が正常であるか否かを判定する。
【0068】
そして、検出信号の最大の電圧から最小の振幅における電圧を差し引いて求めた電圧V1が電圧Vmax以上である場合(ステップS5のはい)、第1撹拌子11aの撹拌動作を正常であると判定し、ステップS6に移行する。
【0069】
また、電圧V1が電圧Vmaxよりも小さい場合(ステップS5のいいえ)、第1撹拌子11aの撹拌動作を異常であると判定し、mテスト欄の測定項目に対応する第1の混合液以降の測定を停止すると共に、第1撹拌子11aの異常情報を、システム制御部70を介して出力部50に出力する(ステップS7)。
【0070】
ステップ5の「はい」の後に、mが4である場合(ステップS6のはい)、ステップS8に移行する。また、mが4未満である場合(ステップS6のいいえ)、ステップS4に戻る。
【0071】
ここで、1乃至4テスト欄の測定項目に対応する第1の混合液の撹拌動作がすべて正常であったと仮定して、以下の動作を説明する。
【0072】
ステップS6の「はい」又はステップS7の後に、試薬部21の第2試薬分注プローブ15は、試薬ボトル7bから1乃至3テスト欄の各測定項目に該当する第2試薬を吸引して、各反応容器4に吐出する(ステップS8)。
【0073】
第2試薬を分注した後に、分析部19における試薬部21の第2撹拌子11bは、反応容器4に移動して、反応容器4内のnテスト欄(n=1)の測定項目に対応する第2の混合液を撹拌する(ステップS9)。
【0074】
第2の混合液の撹拌後、第2撹拌子11bは、洗浄槽80bに移動して洗浄した後に、洗浄槽80bの上停止点まで移動する。
【0075】
駆動部322は、駆動信号を出力して第2撹拌子11bを駆動する。駆動信号を出力した後に、検出部323は、第2撹拌子11bから出力される信号を検出して、その検出信号を判定部324に出力する。判定部324は、検出部323から出力された検出信号に基づいて、第2撹拌子11bの撹拌動作が正常であるか否かを判定する。
【0076】
そして、電圧V1が電圧Vmax以上である場合(ステップS10のはい)、第2撹拌子11bの撹拌動作を正常であると判定し、ステップS11に移行する。また、電圧V1が電圧Vmaxよりも小さい場合(ステップS10のいいえ)、第2撹拌子11bの撹拌動作を異常であると判定し、nテスト欄の測定項目に対応する第2の混合液以降の測定動作を停止すると共に第2撹拌子11bの異常情報を、システム制御部70を介して出力部50に出力する(ステップS12)。
【0077】
ステップ10の「はい」の後に、nが3である場合(ステップS11のはい)、ステップS13に移行する。また、nが3未満である場合(ステップS11のいいえ)、ステップS9に戻る。
【0078】
ステップS11の「はい」又はステップS12の後に、反応部22の測光ユニット13は、1乃至3テスト欄の内の第2の混合液の撹拌動作が正常であった測定項目、及び4テスト欄の測定項目の混合液を収容した反応容器4に光を照射して、透過した光から設定波長の吸光度を測定する。そして、各測定項目の被検試料データを生成してデータ処理部40に出力する(ステップS13)。
【0079】
測定した後に、洗浄ユニット12は、反応容器4内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応容器4内を洗浄及び乾燥する。データ処理部40の演算部41は、測光ユニット13から出力された被検試料データから各被検試料の各測定項目の分析データを生成して記憶部42に保存すると共に、出力部50に出力する(ステップS13)。
【0080】
ステップS13の後に、全ての反応容器4の洗浄及び乾燥が終了し、被検体ID「1」及び「2」の各測定項目の分析データ又は異常情報が出力部50に出力された時点で、自動分析装置100は、測定動作を終了する(ステップS14)。
【0081】
以上述べた本発明の実施例によれば、第1及び第2の混合液の撹拌終了毎に、第1及び第2撹拌子11a,11bを駆動した後、第1及び第2撹拌子11a,11bの慣性による動作によって発生した信号を検出し、検出した検出信号に基づいて第1及び第2撹拌子11a,11bの撹拌動作が正常であるか否かを判定することができる。
【0082】
そして、検出信号である電圧V1が予め設定した電圧Vmax以上である場合、第1及び第2撹拌子11a,11bの撹拌動作を正常であると判定する。また、電圧V1が電圧Vmaxよりも小さい場合、第1及び第2撹拌子11a,11bの撹拌動作を異常であると判定する。
【0083】
また、第1撹拌子11aの撹拌動作を異常であると判定した場合、判定直前に撹拌した第1の混合液以降の測定動作を停止させると共に、第1撹拌子11aの異常情報を出力部50に出力させることができる。
【0084】
更に、第2撹拌子11bの撹拌動作を異常であると判定した場合、判定直前に撹拌した第2の混合液以降の測定動作を停止させると共に、第2撹拌子11bの異常情報を出力部50に出力させることができる。
【0085】
これにより、撹拌不良による分析データの悪化を未然に防ぐことが可能となり、サンプルを精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示す図。
【図2】本発明の実施例に係る分析部の構成を示す図。
【図3】本発明の実施例に係る第1撹拌子の構成を示す図。
【図4】本発明の実施例に係る検出部で検出される検出信号を示す図。
【図5】本発明の実施例に係る測定項目設定画面の一例を示す図。
【図6】本発明の実施例に係る自動分析装置の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0087】
4 反応容器
11a 第1撹拌子
11b 第2撹拌子
11a1 プレート
11a2,11a3 圧電素子
11a4 ブレード
11a5 錘
18a 第1撹拌アーム
32 制御部
80a,80b 洗浄槽
113 洗浄槽
321 機構制御部
322 駆動部
323 検出部
324 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料と試薬とを容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記混合液を撹拌するための撹拌子を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段により駆動した前記撹拌子の慣性による動作で発生する信号を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された検出信号に基づいて、前記撹拌子の撹拌動作が正常であるか否かを判定する判定手段とを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記混合液の測定結果を出力する出力手段を有し、
前記撹拌子の撹拌動作が異常であると前記判定手段が判定した場合、前記撹拌子の異常情報を前記出力手段に出力するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記撹拌子の撹拌動作が異常であると前記判定手段が判定した場合、この判定の直前に前記撹拌子によって撹拌された混合液以降の測定動作を停止させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記撹拌子は、圧電素子及びこの圧電素子の振動によって振動するブレードを有し、前記検出手段は、前記撹拌子の慣性による振動で発生する前記圧電素子の電圧を検出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記検出手段により検出された検出信号の最大値から最小値を差し引いて求めた値が予め設定した値よりも小さい場合、前記撹拌子の撹拌動作を異常であると判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記検出手段により検出された検出信号の所定時間以降の検出信号において、最大値から最小値を差し引いて求めた値が予め設定した値よりも小さい場合、前記撹拌子の撹拌動作を異常であると判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記検出手段により検出された検出信号が所定の大きさに収束するまでに要した時間を求め、求めた時間が予め設定した時間未満である場合、前記撹拌子の撹拌動作を異常であると判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記検出手段により検出された検出信号がゼロ近傍に収束するまでに要した時間を求め、求めた時間が予め設定した時間未満である場合、前記撹拌子の撹拌動作を異常であると判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記撹拌子を洗浄する洗浄槽を有し、
前記駆動手段は、前記洗浄槽の近傍に位置する洗浄後の前記撹拌子を駆動し、
前記検出手段は、前記駆動手段により駆動した後に、前記撹拌子で発生する信号を検出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項10】
被検試料と試薬とを容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置の動作判定方法において、
前記混合液を撹拌するための撹拌子を駆動手段により駆動し、
前記駆動手段により駆動した前記撹拌子の慣性による動作で発生する信号を検出手段により検出し、
前記検出手段により検出された検出信号に基づいて、前記撹拌子の撹拌動作が正常であるか否かを判定手段により判定することを特徴とする自動分析装置の動作判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−64713(P2008−64713A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245642(P2006−245642)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】