説明

自動分析装置

【課題】検体の粘度を反映しつつ、分析の処理能力を低下させずに分析結果を得ることができる自動分析装置を提供すること。
【解決手段】粘度記憶部35bが記憶する関係を参照して、所定の吸引速度で検体を吸引した際に検体分注機構12の管路内における液体の圧力を検出する検出手段が検出する圧力に対応する検体の粘度を算出する粘度算出部34aと、粘度算出部34aが算出した検体の粘度と該検体を吸引したときの吸引速度とに基づいて、測定された反応液の吸光度を、規定の分注量通りに分注することが可能な粘度である標準粘度を有する検体が該吸引した検体と同じ分注量で分注されたときに試薬と反応した場合の反応液の吸光度へ補正する吸光度補正部34cと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応容器に分注し、この反応容器内で生じる反応液の吸光度を測定することによって検体を分析する自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体と試薬とを反応容器に分注し、この反応容器内で生じる反応液の吸光度を測定することによって検体を分析する自動分析装置が知られている。この自動分析装置は、精度の高い分析結果を得るため、検体が収容された検体容器から反応容器に規定量の液体を分注する分注装置を備えている。この分注装置は、分注ノズルと分注ポンプとを管路によって連結した分注流路内に液体が充填されており、分注ポンプを吸排動作させた際の液体への圧力伝達によって分注ノズルを介して検体容器から検体を吸引し、反応容器に吐出して分注を行っている。
【0003】
この分注装置は、規定量の検体を分注するため、検体の粘度に対応させて分注を行っている。例えば、分注ノズル内に検体を吸引する際に分注ポンプのピストンの移動量から検体の粘度を算出し、この算出した検体の粘度に基づいて検体を吐出する際にピストンの移動量を調整することによって規定量の検体を分注する分注装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、分注ノズル内に検体を吸引する際に管路内の圧力を測定する圧力センサと、分注ノズル内に吸引した検体を吐出するために吐出圧を発生させる吐出圧発生機構と、吐出量を調整する吐出量調整機構とを設け、検体を吸引した際に圧力センサが圧力を測定し、この測定した圧力に基づいて検体を吐出する際に分注ノズル内の吐出圧と吸引した検体を加圧する時間とを調整することによって、粘度が異なる複数の検体を分注する場合でも、規定量の分注する分注装置が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−199031号公報
【特許文献2】特開2005−291998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載の分注装置は、検体の粘度に対応させてピストンの移動量または検体を吸引した際の圧力に基づいて分注ノズル内に吸引した検体を加圧する時間を調整するため、検体によって分注する時間にばらつきがあった。このため、分注装置が検体の分注量に関わらず設定された所定の時間内で検体を分注できない場合には、自動分析装置が備える他の装置にも時間の遅れが生じ、各装置の動作タイミングを継続して行えなかった。この結果、連続的に大量の検体を分析する場合には、分析の処理能力が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであった、検体の粘度を反映しつつ、分析の処理能力を低下させずに分析結果を得ることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる自動分析装置は、分注ノズルと分注ポンプとを管路で連結した分注流路内に液体を充填してあり、前記分注ポンプを吸排動作させた際の前記液体への圧力伝達により検体を収容した検体容器から前記分注ノズルを介して分析対象の検体を吸引し、吸引した検体を反応容器に吐出して分注する分注装置を備え、前記反応容器内で検体と試薬とを反応させ、この反応液の吸光度を測定し、該検体を分析する自動分析装置において、前記管路内における液体の圧力を検出する検出手段と、前記管路内における液体の圧力と前記検体の粘度との関係を、予め設定された前記検体の分注量を所定の分注時間で除した商である吸引速度と対応付けて記憶する記憶手段と、前記記憶手段が記憶する関係を参照して、前記分注装置が前記検体を吸引した際に前記検出手段が検出する液体の圧力に対応する前記吸引した検体の粘度を算出する粘度算出手段と、前記粘度算出手段が算出した前記吸引した検体の粘度と該検体の吸引速度とに基づいて、測定された前記反応液の吸光度を、規定の分注量通りに分注することが可能な粘度である標準粘度を有する検体が前記吸引した検体と同じ予め設定された分注量で分注されたときに前記試薬と反応した場合の反応液の吸光度へ補正する吸光度補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記吸光度補正手段は、前記検体の粘度と該検体の吸引速度とに応じて吸光度を補正する補正係数を設定する補正係数設定手段を備え、測定された前記反応液の吸光度に対して前記補正係数を乗じる演算を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記補正係数は、前記吸引した検体の粘度が大きいほど大きい値を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記粘度算出手段が算出した前記吸引した検体の粘度が、予め定められた閾値を超えるか否かを判定する粘度判定手段と、前記粘度判定手段が前記吸引した検体の粘度が予め定められた閾値を超えると判定した場合、前記吸引した検体の粘度に異常が生じていることを示す情報を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、管路内における液体の圧力と検体の粘度との関係を、検体の分注量を所定の分注時間で除した商である吸引速度と対応付けて記憶した関係を参照して、分注装置が検体を吸引した際に検出する液体の圧力に対応する吸引した検体の粘度を算出し、この算出した検体の粘度と該検体を吸引した吸引速度とに基づいて、測定された反応液の吸光度を、規定の分注量通りに分注することが可能な粘度である標準粘度を有する検体が該吸引した検体と同じ予め設定された分注量で分注されたときに試薬と反応した場合の反応液の吸光度へ補正するようにしているので、検体の粘度を反液しつつ、分析処理の低下が防止でき、分析結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の自動分析装置にかかる好適な実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態にかかる自動分析装置の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、この実施の形態にかかる自動分析装置1は、試薬と検体とを反応容器20に分注し、反応容器20内で反応させ、この反応液の吸光度を測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の分析を自動的に行う。
【0015】
まず、測定機構2について説明する。図1に示すように、測定機構2は、血液や尿等の液体である検体を収容した複数の検体容器11aを保持する検体ラック11bを図中の矢印方向に順次移送する検体移送部11と、検体移送部11の検体容器11aから検体を吸引して反応容器20に検体を吐出して分注する検体分注機構12と、検体と接触する部分を洗浄する洗浄部12aと、反応容器20への検体や試薬の分注、攪拌、測光および洗浄を行うために反応容器20を所定の位置まで移送する反応テーブル13と、反応容器20内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収容する試薬庫14と、試薬庫14内の試薬容器15から第1試薬または第2試薬を吸引して反応容器20に試薬を吐出して分注を行う試薬分注機構16と、反応容器20内に分注された試薬と検体とを攪拌する攪拌部17と、反応容器20に分注された液体の吸光度を測定する測光部18と、測光部18による測定が終了した反応容器20に対して洗浄する洗浄部19と、を備える。
【0016】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、吸光度補正処理部34、記憶部35、出力部36および送受信部37を備える。制御部31は、測定機構2および制御機構3が備える各部に接続される。
【0017】
制御部31は、CPU等によって実現され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力
制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0018】
入力部32は、キーボード、マウス、入出力機能を備えたタッチパネル等によって実現され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。
【0019】
分析部33は、測光部18によって測定された吸光度の測定結果に基づいて検体の成分分析等を行う。
【0020】
吸光度補正処理部34は、粘度算出部34a、粘度判定部34bおよび吸光度補正部34cを有する。粘度算出部34aは、検体分注機構12が検体を吸引した際に該検体の粘度を算出する。粘度判定部34bは、粘度算出部34aが算出した吸引した検体の粘度が、予め定められた閾値を超えるか否かを判定する。吸光度補正部34cは、粘度算出部34aが算出した吸引した検体の粘度と該検体の吸引速度とに基づいて、測定された反応液の吸光度を、規定の分注量通りに分注することが可能な粘度である標準粘度を有する検体が吸引した検体と予め設定された同じ条件で分注されたときに試薬と反応した場合の反応液の吸光度へ補正する。ここでいう予め設定された同じ条件とは、検体の分注量、反応時間、反応温度および試薬の分注量等である。吸光度補正部34cは、粘度算出部34aが算出した吸引した検体の粘度と該検体の吸引速度とに応じて吸光度を補正する補正係数を設定する補正係数設定部34dを有する。吸光度補正部34cは、補正係数設定部34dによって設定された補正係数を、測定された反応液の吸光度に乗じる演算を行う。ここで、吸引速度とは、検体の分注量を分注量によらず一定の時間として定められる分注時間で除した商をいい、以下の説明においては、単に吸引速度という。
【0021】
記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際に、この処理にかかる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて実現され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。ここで、記憶部35は、吸引速度記憶部35a、粘度記憶部35b、補正係数記憶部35cおよび吸光度記憶部35dを有する。吸引速度記憶部35aは、予め設定された検体の分注量に応じて設定される吸引速度を記憶する。粘度記憶部35bは、検体分注機構12の配管内における液体の圧力と検体の粘度との関係を、吸引速度と対応付けて記憶する。補正係数記憶部35cは、検体の粘度と該検体の吸引速度とに基づいて、測定された反応液の吸光度を、規定の分注量通りに分注することが可能な粘度である標準粘度を有する検体が該吸引した検体と同じ予め設定された分注量で分注されたときに試薬と反応した場合の反応液の吸光度へ補正する補正係数を記憶する。吸光度記憶部35dは、測光部18によって測定された反応液の吸光度を記憶する。
【0022】
出力部36は、ディスプレイ、プリンタおよびスピーカ等によって実現され、各情報を出力する。送受信部37は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがって情報の送受信を行うインターフェースとしての機能を有する。また、出力部36は、粘度判定部34bが吸引した検体の粘度が予め定められた閾値を超えると判定した場合、吸引した検体の粘度に異常が生じていることを示す情報を出力する。
【0023】
以上のように構成された自動分析装置1では、反応テーブル13上で順次移送される複数の反応容器20に対して、試薬分注機構16が試薬庫14の試薬容器15から第1試薬を分注後、検体分注機構12が検体吸引位置の検体容器11aから検体を分注する。その後、試薬分注機構16が試薬庫14の試薬容器15から第2試薬を分注する。さらに、測光部18が第1試薬、検体および第2試薬を反応させた状態の反応液の吸光度を測定し、この測定結果をもとに分析部33が分析することによって、検体の成分分析等が自動的に行われる。その後、洗浄部19が測光部18による測定が終了した後に搬送される反応容器20を搬送させながら洗浄し、反応容器20を再利用する。その後、洗浄された反応容器20を再利用し、複数の分析処理を行う。
【0024】
つぎに、図1に示した検体分注機構12について詳細に説明する。図2は、この実施の形態に用いられる検体分注機構12の概略構成を示す模式図である。検体分注機構12は、図2に示すように、分注ノズル41、分注ポンプ46、圧力センサ48および洗浄水ポンプ50を備える。
【0025】
分注ノズル41は、ステンレス等によって棒管状に形成されたものからなり、アーム42に装着されている。このアーム42は、駆動部43の駆動によって動作するものであり、アーム42と駆動部43とを連結する連結部44を介して、鉛直方向の昇降および連結部44を通る鉛直軸Oを中心とする回動を自在に行う。
【0026】
分注ポンプ46は、シリンジポンプで実現され、配管45を介して分注ノズル41と、配管45内の圧力を検出する圧力センサ48と、洗浄水Waの流量を調整する電磁弁49とに接続されている。分注ポンプ46は、プランジャ駆動部47によるプランジャ46aの往復動によって、分注ノズル41内に検体を吸引し、吸引した検体を反応容器20に吐出して分注を行う。プランジャ駆動部47は、制御部31による制御のもと、プランジャ46aを駆動することによって、検体の分注量および吸引速度を調整する。電磁弁49には、別の配管52が接続され、この配管52の他端は、洗浄水Waを供給する洗浄水ポンプ50に接続されている。さらに、洗浄水ポンプ50には、別の配管53が接続され、この配管53の他端は、洗浄水Waを収容する洗浄水タンク51に達している。
【0027】
圧力センサ48は、配管45内における洗浄水Waの圧力を検出し、圧力信号(アナログ)として増幅回路48aへ出力する。増幅回路48aは、圧力センサ48から出力される圧力信号(アナログ)を増幅し、増幅した圧力信号を処理部48bへ出力する。処理部48bは、A/D変換器によって実現され、増幅回路48aから入力される圧力信号(アナログ)をデジタル信号に変換して処理し、検出部48cへ出力する。検出部48cは、処理部48bによって変換された圧力信号における所定時間の圧力、具体的には、分注ノズル41内に検体を吸引し終えた時点の圧力を検出し、制御部31を介して記憶部35へ出力する。
【0028】
洗浄水ポンプ50は、洗浄水タンク51に貯蔵された洗浄水Waを吸い上げ、圧力センサ48との間に設けた電磁弁49を介して配管45内に洗浄水Waを供給する。ここで、電磁弁49は、制御部31の制御のもと、吸い上げた洗浄水Waを配管45内に供給する場合には開かれ、分注ポンプ46によって分注ノズル41が検体を吸引または吐出する場合には閉じられる。なお、洗浄水Waは、脱気されたイオン交換水または蒸留水等の非圧縮性流体である。
【0029】
以上のように構成される検体分注機構12は、制御部31の制御のもと、洗浄水ポンプ50によって洗浄水タンク51から洗浄水Waを吸引し、電磁弁49を開いて、配管45、分注ポンプ46および分注ノズル41に洗浄水Waを供給し充填する。その後、制御部31は、電磁弁49を閉じて洗浄水ポンプ50の動作を終了する。その後、検体分注機構12は、制御部31の制御のもと、プランジャ駆動部47を駆動させ、分注ノズル41内の先端に所定量の空気を吸引する。その後、検体分注機構12は、駆動部43を駆動させ、検体吸引位置に配置された検体容器11aにアーム42を移送し、分注ノズル41内に検体を吸引する。その後、検体分注機構12は、駆動部43を駆動させ、検体吐出位置に配置された反応容器20にアーム42を移送し、分注ノズル41内の検体を吐出する。これにより、検体容器11aから反応容器20に1つの検体を分注する一連の分注動作が完了する。なお、分注ノズル11の先端部で検体を吸引または吐出する場合、検体と洗浄水Waとの間には空気層が介在するため、検体が洗浄水Waと混在することがない。
【0030】
つぎに、図3を参照して、圧力センサ48によって検出される配管45内における洗浄水Waの圧力変化波形について説明する。この圧力変化波形は、検体の分注量に応じて設定される吸引速度によって粘度が異なる検体を吸引した際に圧力センサ48が検出する配管45内における洗浄水Waの圧力変化波形を示したものである。なお、図3において、横軸は、時間(秒)であり、左縦軸は、圧力センサ48が検出する圧力信号の出力電圧(V)であり、右縦軸は、制御部31からプランジャ駆動部47に出力される分注ポンプ46内のプランジャ46aを駆動する駆動信号Sの駆動電圧(V)である。また、時点t1は、検体の吸引開始時を示し、時点t2は、検体の吸引終了時を示す。
【0031】
検体分注機構12は、所定の時間内に分注動作を終えるように設定される。すなわち、検体分注機構12は、吸引する検体の粘度および吸引速度に関わらず、時点t2から時点t1を減算した時間内で検体を吸引するように設定される。このため、分注ノズル41内に所定の吸引速度で粘度が異なる複数の検体を吸引した場合、各検体毎の粘度によって圧力センサ48が検出する配管45内における洗浄水Waの出力電圧が異なる。
【0032】
具体的には、吸引速度V1で検体を吸引した場合、各検体毎の粘度によって圧力変化波形W1〜W4が検出される。この圧力変化波形W1〜W4における検体の粘度の関係は、検体の粘度が高いほど、配管45内の圧力における陰圧が大きくなるため、時点t2の出力電圧が低くなる(点P1<点P2<点P3<点P4)。通常、検体の粘度が高い場合には、分注ノズル41内に検体を吸引しにくく規定量で吸引することができないため、配管45内の圧力における陰圧が大きくなり出力電圧が低くなる。このため、規定量の検体を分注できなかった場合には、反応容器内で反応する検体の量が少なくなり、反応液の吸光度の測定値が低くなる。
【0033】
そこで、この実施の形態では、自動分析装置1は、まず、配管45内における洗浄水Waの圧力と検体の粘度との関係を、吸引速度と対応付けて記憶した関係を参照して、検体分注機構12が検体を吸引した際に圧力センサ48が検出する洗浄水Waの圧力に対応する検体の粘度を算出する。その後、この算出した検体の粘度と該検体を吸引した吸引速度とに基づいて、測定された反応液の吸光度を、規定の分注量通りに分注することが可能な粘度である標準粘度を有する検体が吸引した検体と同じ予め設定された分注量で分注されたときに試薬と反応した場合の反応液の吸光度へ補正することによって、予め設定された分注量の検体で分注を行ったときと同様の反応液の吸光度を得られるようにしている。
【0034】
図4は、吸引速度毎の配管45内における洗浄水Waの圧力に対応する出力電圧と検体の粘度との関係を示す図である。図4において、直線L1〜L3は、吸引速度V1〜V3の配管45内における洗浄水Waの圧力に対応する出力電圧と検体の粘度との関係をそれぞれ示す。また、吸引速度V1〜V3は、V3<V2<V1という関係を満たす。さらに、吸引速度V1〜V3における検体の分注量をS1〜S3とすると、分注量S1〜S3は、S3<S2<S1という関係を満たす。すなわち、粘度算出部34aは、図4に示す、吸引速度の配管45内における洗浄水Waの圧力に対応する出力電圧と検体の粘度との関係を用いて、検体分注機構12が検体を吸引した際に圧力センサ48が検出する出力電圧に対応する検体の粘度を算出する。
【0035】
図5は、検体の粘度と吸引速度に応じて設定される補正係数を示す図である。図5において、粘度a〜dは、a<b<c<dという関係を満たす。このうち、粘度「a」は、規定の分注量通りに分注することが可能な粘度である標準粘度である。この標準粘度を有する検体「a」に対しては、反応液の吸光度を補正する必要がないため、吸引速度によらず、補正係数は「1」と設定される。また、補正係数は、検体の粘度が大きいほど大きい値になるように設定する。具体的には、吸引速度が一定の場合、検体の粘度が高くなることによって分注ノズル41内に吸引される検体の分注量が少なくなる。このため、補正係数は、検体の粘度が大きいほど大きな値に設定される。これにより、検体の粘度によらず、予め設定された分注量の検体で分注を行った際と同様の反応液の吸光度が得られる。すなわち、補正係数設定部34dは、図5に示す、検体の粘度と検体分注機構12が検体を吸引したときの吸引速度とに基づいて、測定された反応液の吸光度を、規定の分注量通りに分注することが可能な粘度である標準粘度を有する検体が吸引した検体と同じ予め設定された分注量で分注されたときに試薬と反応した場合の反応液の吸光度へ補正する補正係数を設定する。なお、上述した図4および図5の関係は、自動分析装置1が分析前に行うキャリブレーションまたは実験などによって予め求めておくことが望ましい。
【0036】
ここで、図6に示すフローチャートを参照して、自動分析装置1が行う吸光度補正処理について説明する。なお、以下では、一つの検体の吸光度補正処理を行う場合の一連の処理を説明する。
【0037】
まず、吸光度補正処理部34は、制御部31を介して記憶部35内の吸引速度記憶部35aから検体の分注量に応じて設定される吸引速度、具体的には、吸引速度V1を取得する(ステップS101)。
【0038】
その後、制御部31は、検体分注機構12を駆動させ、検体吸引位置に静止している検体容器11a内に収容された検体に対して吸引速度V1で分注ノズル41内に吸引させる(ステップS102)。
【0039】
その後、吸光度補正処理部34は、図7に示す、分注ノズル41内に検体を吸引する際に圧力センサ48が検出する配管45内における洗浄水Waの圧力変化波形W5における時点t2の出力電圧「A」を取得する(ステップS103)。
【0040】
その後、粘度算出部34aは、制御部31を介して記憶部35内の粘度記憶部35bが記憶する関係を用いて、吸引速度V1で吸引した際に圧力センサ48が検出した出力電圧「A」に対応する検体の粘度を算出する(ステップS104)。具体的には、図8に示すように、粘度算出部34aは、粘度記憶部35bが記憶する吸引速度V1の配管45内における洗浄水Waの出力電圧と検体の粘度との関係を参照して、吸光度補正処理部34が取得した出力電圧「A」に対応する吸引した検体の粘度を「c」と算出する。
【0041】
その後、粘度判定部34bは、粘度算出部34aが算出した吸引した検体の粘度「c」が予め定められた閾値を超えるか否かを判定する(ステップS105)。具体的には、吸引した検体の粘度が分注された反応液の吸光度を補正するときに正常の値が得られる状態の粘度を閾値として予め設定する。吸引した検体の粘度が閾値以下の場合(ステップS105:No)、ステップS106へ移行する。一方、吸引した検体の粘度が閾値を超える場合(ステップS105:Yes)、自動分析装置1は、異常処理を行う(ステップS107)。具体的には、制御部31が、検体分注機構12を駆動させ、吸引した検体を洗浄部12aに吐出させるとともに、分注ノズル41を洗浄する。その後、出力部36は、制御部31を介して粘度判定部34bから出力される判定結果をもとに吸引した検体の粘度に異常が生じていることを示す情報を出力する。
【0042】
その後、補正係数設定部34dは、記憶部35内の補正係数記憶部35cが記憶する補正係数を用いて、粘度算出部34aが算出した吸引した検体の粘度「c」と吸引速度V1とに基づいて、標準粘度を有する検体を、吸引速度V1で吸引したときに試薬と反応した場合の反応液の吸光度に補正する補正係数を設定する(ステップS106)。この場合、図5に示すように、吸引した検体の粘度「c」と吸引速度V1とに基づいて補正係数が1.2と設定される。
【0043】
その後、制御部31は、検体分注機構12を駆動させ、検体吐出位置に配置された反応容器20に吸引した検体を吐出させる(ステップS108)。
【0044】
その後、吸光度補正処理部34は、記憶部35内の吸光度記憶部35dが記憶する測光部18が測定した反応液の吸光度を取得する(ステップS109)。ここで、取得する反応液の吸光度は、分析対象の検体に対して測光部18が複数回測定した中で最新の測定値である。
【0045】
その後、吸光度補正部34cは、補正係数設定部34dによって設定された補正係数を測定された反応液の吸光度に乗ずることによって反応液の吸光度を補正する(ステップS110)。
【0046】
その後、吸光度補正処理部34は、制御部31を介して出力部36に補正した吸光度を出力し(ステップS111)、本処理を終了する。
【0047】
この実施の形態では、配管45内における洗浄水Waの圧力と検体の粘度との関係を、吸引速度と対応付けて記憶した関係を参照して、粘度算出部34aが所定の吸引速度で検体を吸引した際に圧力センサ48が検出する圧力に対応する吸引した検体の粘度を算出し、補正係数設定部34dが吸引した検体の粘度と該検体を吸引したときの吸引速度とに基づいて、測定された反応液の吸光度を、規定の分注量通りに分注することが可能な粘度である標準粘度を有する検体が該吸引した検体と同じ予め設定された分注量で分注されたときに試薬と反応した場合の反応液の吸光度へ補正する補正係数を設定後、吸光度補正部34cが補正係数を用いて設定された反応液の吸光度を補正することによって、検体の粘度を反映しつつ、分析の処理効率を低下させず、予め設定された分注量の検体を分注した際と同様の分析結果を得ることができる。さらに、吸引した検体の粘度が異常の場合、この検体に対応した第2試薬を分注しないため、試薬の無駄を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動分析装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる分注装置の構成を示すブロック図である。
【図3】圧力センサによって検出された配管内の洗浄水の圧力変化波形を示す波形図である。
【図4】吸引速度毎の配管内における洗浄水の圧力に対応する出力電圧と検体の粘度との関係を示す図である。
【図5】検体の粘度と吸引速度に応じて設定される補正係数を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る自動分析装置の吸光度補正処理部が行う吸光度補正処理の概要を示すフローチャートである。
【図7】検体を吸引した際に圧力センサによって検出された配管内の洗浄水の圧力変化波形の一例を示す図である。
【図8】吸引速度の配管内における洗浄水の圧力と検体の粘度との関係を参照して、吸引した検体の粘度を算出した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 自動分析装置
2 測定機構
3 制御機構
11 検体移送部
11a 検体容器
11b 検体ラック
12 検体分注機構
12a 洗浄部
13 反応テーブル
14 試薬庫
15 試薬容器
16 試薬分注機構
17 攪拌部
18 測光部
19 洗浄部
20 反応容器
31 制御部
32 入力部
33 分析部
34 吸光度補正処理部
34a 粘度算出部
34b 粘度判定部
34c 吸光度補正部
34d 補正係数設定部
35 記憶部
35a 吸引速度記憶部
35b 粘度記憶部
35c 補正係数記憶部
35d 吸光度記憶部
36 出力部
37 送受信部
41 分注ノズル
42 アーム
43 駆動部
44 連結部
45,52,53 配管
46 分注ポンプ
46a プランジャ
47 プランジャ駆動部
48 圧力センサ
48a 増幅回路
48b 処理部
48c 検出部
49 電磁弁
50 洗浄水ポンプ
51 洗浄水タンク
Wa 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注ノズルと分注ポンプとを管路で連結した分注流路内に液体を充填してあり、前記分注ポンプを吸排動作させた際の前記液体への圧力伝達により検体を収容した検体容器から前記分注ノズルを介して分析対象の検体を吸引し、吸引した検体を反応容器に吐出して分注する分注装置を備え、前記反応容器内で検体と試薬とを反応させ、この反応液の吸光度を測定し、該検体を分析する自動分析装置において、
前記管路内における液体の圧力を検出する検出手段と、
前記管路内における液体の圧力と前記検体の粘度との関係を、予め設定された前記検体の分注量を所定の分注時間で除した商である吸引速度と対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶する関係を参照して、前記分注装置が前記検体を吸引した際に前記検出手段が検出する液体の圧力に対応する前記吸引した検体の粘度を算出する粘度算出手段と、
前記粘度算出手段が算出した前記吸引した検体の粘度と該検体の吸引速度とに基づいて、測定された前記反応液の吸光度を、規定の分注量通りに分注することが可能な粘度である標準粘度を有する検体が前記吸引した検体と同じ予め設定された分注量で分注されたときに前記試薬と反応した場合の反応液の吸光度へ補正する吸光度補正手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記吸光度補正手段は、
前記検体の粘度と該検体の吸引速度とに応じて吸光度を補正する補正係数を設定する補正係数設定手段を備え、
測定された前記反応液の吸光度に対して前記補正係数を乗じる演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記補正係数は、前記吸引した検体の粘度が大きいほど大きい値を有することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記粘度算出手段が算出した前記吸引した検体の粘度が、予め定められた閾値を超えるか否かを判定する粘度判定手段と、
前記粘度判定手段が前記吸引した検体の粘度が予め定められた閾値を超えると判定した場合、前記吸引した検体の粘度に異常が生じていることを示す情報を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−112832(P2010−112832A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285667(P2008−285667)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】