説明

自在管部構造

【課題】主に、構成が簡単で、内部に汚物溜り部が形成され難いものとする。
【解決手段】軸線方向2に隣接配置された複数個のリング状部材3を備えると共に、各リング状部材3が、リング状本体4と、このリング状本体4の隣接する端面間に傾動自在に連結可能に設けられた傾動可能連結部5と、リング状本体4の内周側に設けられた内壁構成部6とを備えるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自在管部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、住宅などの建物には、給水設備や排水設備などが備えられている。このような給水設備や排水設備を構成する配管部分には、樹脂製の管状部材が用いられている。そして、この樹脂製の管状部材の配設方向を途中で変更する場合、方向変更部分に対して、いわゆる自在継手(例えば、球面継手)を用いることが行われている。
【0003】
ここで、球面継手などの自在継手は、例えば、二つの管状部材の端部間を球面形状部と球面受部とを介して回動自在に連結したものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−332788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した球面継手では、角度を変えた時の受口部分の下部内面に段差が生じて、汚れや汚物が滞留する、いわゆる汚物溜まりができるのを避けることが難しいという問題があった。そのため、特許文献1では、球面継手を外殻部分とすると共に、その内部に、内殻部分として自在管部構造を設けて、全体を二重構造とし、上記した段差が、流れ方向から見て、正段差となるようにして、極力、汚物溜まりが生じないようにしている。しかし、このように二重構造にすると、構造が複雑となると共に、部品点数が増加して、高価格化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、ほぼ軸線方向に隣接配置された複数個のリング状部材を備えると共に、各リング状部材が、リング状本体と、該リング状本体の隣接する端面間に傾動自在に連結可能に設けられた傾動可能連結部と、リング状本体の内周側に設けられた内壁構成部とを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載された発明は、上記において、前記傾動可能連結部が、互いに出入動自在に嵌合可能な嵌合用凸部と嵌合用凹部とを備えると共に、嵌合用凸部と嵌合用凹部との間に、互いに係止可能な係止部を備え、前記内壁構成部が、リング状本体の内周部分に設けられた本体側内壁部分と、本体側内壁部分から前記嵌合用凸部の内周側に位置するように突設された突出壁部分とを備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載された発明は、上記において、前記嵌合用凸部が、前記軸線方向へ延びる腕部と、該腕部の先端に設けられた先端形状部とを有し、前記嵌合用凹部が、前記腕部を出入動自在に収容可能な腕部収容部と、前記先端形状部を受ける先端受部とを有し、前記係止部が、前記嵌合用凸部の、腕部と先端形状部との境界部分の外周側に設けられた凸部側係止部と、前記嵌合用凹部の、腕部収容部の入口部分の外周側に設けられた凹部側係止部とを有することを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載された発明は、上記において、前記本体側内壁部分と突出壁部分との間に、互いに重複可能な重複部がそれぞれ設けられ、該重複部が、隣接するリング状本体の傾動に対して当接状態を維持可能な内周側テーパ部と、外周側テーパ部とをそれぞれ有することを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載された発明は、上記において、前記嵌合用凹部と嵌合用凸部との間に、両者の変位に対して止水可能なシール部材が介装されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、ほぼ軸線方向に隣接配置された複数個のリング状部材を、リング状本体の隣接する端面間に設けられた傾動可能連結部を用いて傾動自在に連結することにより、自在に屈曲可能な自在管部構造を得ることが可能となる。このような自在管部構造は、いわゆる通常の可撓管と比べて短い距離の間で大きく曲げることができるようにしたり、厚肉化して耐久性などを高めたりすることが可能となる。また、いわゆる球面継手と比べて構造を単純化したり、低価格化を図ることができる。そして、リング状本体の内周側に内壁構成部を設けることによって、複雑な構造にすることなく、自在に屈曲可能な自在管部構造の内周部分を、汚物溜り部が形成され難い形状にすることが可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、嵌合用凸部と嵌合用凹部とを互いに出入動自在に嵌合すると共に、嵌合用凸部と嵌合用凹部との間に備えられた係止部を互いに係止させることにより、簡単な構成で確実に機能する傾動可能連結部を得ることが可能となる。また、リング状本体の内周部分に設けられた本体側内壁部分と、本体側内壁部分から前記嵌合用凸部の内周側に位置するように突設された突出壁部分とによって、汚物溜り部が形成され難い内壁構成部をうまく構成することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、嵌合用凸部の軸線方向へ延びる腕部と、腕部の先端に設けられた先端形状部とを、嵌合用凹部の腕部収容部と先端受部とに対して嵌合させることにより、傾動可能連結部の構造を最適なものとすることができる。即ち、腕部と腕部収容部とによって、嵌合用凸部と嵌合用凹部との出入動の移動距離を大きく確保することができる。また、先端形状部と先端受部とによって、傾動可能連結部の傾動中心が容易に定められるようにすることができる。また、嵌合用凸部の、腕部と先端形状部との境界部分の外周側に係止部として設けられた凸部側係止部と、嵌合用凹部の、腕部収容部の入口部分の外周側に係止部として設けられた凹部側係止部とを係止させることにより、傾動可能連結部の抜止めを行って、安定して傾動を行い得るようにすることができる。また、上記した位置に凸部側係止部と凹部側係止部とを設けることにより、傾動可能連結部の傾動角度をより大きくすることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、本体側内壁部分と突出壁部分との間に重複部を設けることによって、傾動可能連結部の内周部分に汚物溜り部が形成され難くなるようにすることや、汚物溜り部をより小さなものとすることができるようになる。また、重複部が互いに重複する内周側テーパ部と、外周側テーパ部とを有することによって、隣接するリング状本体を傾動させた場合であっても重複部を当接状態に維持して、両者間に隙間ができるのを防止することが可能となる。
【0015】
請求項5の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、嵌合用凹部と嵌合用凸部との間に介装したシール部材により、隣接するリング状本体の傾動によって、嵌合用凹部と嵌合用凸部との嵌合位置が変化した場合でも、止水性を保持し続けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例にかかる自在管部構造の屈曲状態の断面図である。
【図2】図1の非屈曲状態の部分断面図である。
【図3】図1のリング状本体の傾動可能連結部および内壁構成部を示す分解状態の部分拡大断面図である。
【図4】嵌合用凹部と嵌合用凸部との間に介装されるシール部材を示す図3と同様の部分拡大断面図である。
【図5】フランジ部を有するリング状本体の単体状態(a)および複数連結状態(b)を示す部分拡大断面図である。
【図6】保護カバー部を有するリング状本体の単体状態(a)および複数連結状態(b)を示す部分拡大断面図である。
【図7】リング状部材を多数連結してなるベンド管を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、主に、構成を簡単とすると共に、内部に汚物溜り部ができ難くなるようにすることを目的としている。
【0018】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0019】
なお、以下の実施例は、上記した背景技術や発明が解決しようとする課題などと密接な関係があるので、必要が生じた場合には、互いに、記載を流用したり、必要な修正を伴って流用したりすることができるものとする。
【実施例】
【0020】
図1〜図7は、この発明の実施例およびその変形例を示すものである。
【0021】
<構成>まず、構成について説明する。
【0022】
例えば、住宅などの建物の排水設備を構成する配管部分には、樹脂製の管状部材が用いられている。そして、この樹脂製の管状部材の配設方向を途中で変更し得るようにするために、以下のような自在管部構造を用いるようにする。
【0023】
(1)図1、図2に示すように、この実施例にかかる自在管部構造1は、ほぼ軸線方向2に隣接配置された複数個のリング状部材3を備えている。そして、各リング状部材3が、リング状本体4と、このリング状本体4の隣接する端面間に傾動自在に連結可能に設けられた傾動可能連結部5とを備えている。また、各リング状部材3は、リング状本体4の内周側に設けられた内壁構成部6を備えている。
【0024】
ここで、各リング状部材3は、塩化ビニル樹脂製のものとされる。このリング状部材3は短筒状を呈している。そして、短筒状をしたリング状部材3は、非屈曲状態で、それぞれの軸線方向2が一直線上に並ぶように同心状に配置されている。各リング状部材3は、傾動可能連結部5および内壁構成部6を一体形成し易いように、矩形断面形状が基本とされている。
【0025】
なお、各リング状部材3は、基本的に同じものとするのが好ましい。但し、自在管部構造1全体の両端部に位置するリング状部材3については、外部の配管部分などとの接続部を設ける必要性があることなどにより、この限りではない。また、各リング状部材3は、上記した傾動可能連結部5や内壁構成部6などを有していれば構成が成立するため、目的に応じて、長さや、大きさや、形状の異なる上記とは別のリング状本体を連結して使用することも可能である。
【0026】
(2)上記において、図3に示すように、傾動可能連結部5は、互いに出入動自在に嵌合可能な嵌合用凸部11と嵌合用凹部12とを備えている。そして、嵌合用凸部11と嵌合用凹部12との間に、互いに係止可能な係止部13を備えている。更に、内壁構成部6は、リング状本体4の内周部分に設けられた本体側内壁部分14と、本体側内壁部分14から嵌合用凸部11の内周側に位置するように突設された突出壁部分15とを備えている。
【0027】
ここで、嵌合用凸部11は、リング状部材3の一方の端面に対し、周方向に連続して延設された、(端面方向から見て)円形の突条とされている。嵌合用凸部11は、リング状部材3の厚み方向のほぼ中間部に設けられている。また、嵌合用凹部12は、リング状部材3の他方の端面に対し、周方向に連続して延設された、(端面方向から見て)円形の凹溝とされている。嵌合用凹部12は、リング状部材3の厚み方向のほぼ中間部に設けられている。また、本体側内壁部分14と突出壁部分15とは、それぞれリング状部材3に一体形成されている。
【0028】
(3)上記において、嵌合用凸部11は、軸線方向2へ延びる腕部21と、この腕部21の先端に設けられた先端形状部22とを有している。また、嵌合用凹部12は、腕部21を出入動自在に収容可能な腕部収容部23と、この腕部収容部23の奥部に位置して先端形状部22を受ける先端受部24とを有している。また、係止部13は、嵌合用凸部11の、腕部21と先端形状部22との境界部分の、少なくとも外周側に設けられた凸部側係止部25と、嵌合用凹部12の、少なくとも腕部収容部23の入口部分の外周側に設けられた凹部側係止部26とを有している。
【0029】
ここで、嵌合用凸部11の先端形状部22は、ほぼ半円形の断面形状を有している。よって、嵌合用凸部11の先端形状部22は、全体として、リング状部材3の端面の周方向に連続して延びる環状のほぼ半円筒面とされている。これに対して、嵌合用凹部12の先端受部24は、ほぼ半円形の、凹断面を有している。よって、嵌合用凹部12の先端受部24は、全体として、リング状部材の3端面の周方向に連続して延びる環状のほぼ半円筒状凹面とされている。これにより、先端形状部22と先端受部24とは、リング状部材3の端面の周方向の何処か1箇所の位置を傾動中心として、リング状部材3を360度自在に傾動させることができるように構成されている。
【0030】
また、嵌合用凸部11の腕部21は、先端形状部22の直径よりも狭い幅寸法(半径方向寸法)を有して、軸線方向2へ延びるものとされている。嵌合用凹部12の腕部収容部23は、先端受部24の直径と同じ幅寸法(リング状部材3の肉厚方向の寸法または半径方向寸法)を有して、軸線方向2へ腕部21とほぼ同じ長さに延びるものとされている。そして、腕部21と腕部収容部23とは、その軸線方向2の長さによって、傾動可能連結部5の出入動可能量や傾動角度をほぼ設定し得るように構成されている。
【0031】
更に、凸部側係止部25は、腕部21と先端形状部22との外周側の境界部分に半径方向寸法の違いによる段差を設けることよって一体に構成されている。この凸部側係止部25は、嵌合用凸部11に対し、(リング状部材3の)周方向に連続して設けられている。また、凹部側係止部26は、腕部収容部23の入口部分の外周側に内周側へ向かう係止用爪部を突設することによって一体に構成されている。この凹部側係止部26は、嵌合用凹部12に対し、(リング状部材3の)周方向に連続して設けられている。係止部13の、凸部側係止部25と凹部側係止部26とは、それぞれ嵌合用凸部11や嵌合用凹部12の内周側に追加して設けることも構造的には可能である。
【0032】
そして、係止部13は、その設置位置(または係止位置)によって、傾動可能連結部5の出入動可能量や傾動角度をほぼ設定し得るように構成されている。特に、上記したように、嵌合用凸部11の、腕部21と先端形状部22との境界部分の外周側に凸部側係止部25を設けるようにすると共に、嵌合用凹部12の、腕部収容部23の入口部分の外周側に凹部側係止部26を設けるようにすることによって、傾動可能連結部5の傾動角度をより大きく確保し得るように設定している。この場合には、1箇所の傾動可能連結部5に対し、傾動角度が最大5度となるような設定がなされている。
【0033】
(4)上記において、本体側内壁部分14と突出壁部分15との間に、互いに重複可能な重複部31がそれぞれ設けられる。そして、この重複部31が、隣接するリング状本体4の傾動に対して当接状態を維持可能な内周側テーパ部32と、外周側テーパ部33とをそれぞれ有している。
【0034】
この場合、より単純な形状となるように、本体側内壁部分14の内周面が内周側テーパ部32とされ、突出壁部分15の外周面が外周側テーパ部33とされている。また、内周側テーパ部32と外周側テーパ部33とは、嵌合用凸部11の先端側へ進むに従い、リング状部材3の軸心へ向かう内向きの傾斜面とされている。
【0035】
(5)上記において、図4に示す実施例のように、嵌合用凹部12と嵌合用凸部11との間には、両者の変位に対して止水可能なシール部材41が介装されている。
【0036】
この場合、シール部材41は、合成ゴムやシリコンなどの弾性を有する素材によって構成されている。シール部材41は、嵌合用凹部12の内部に取付けられている。シール部材41は、嵌合用凹部12の腕部収容部23と先端受部24とに沿ったU字断面形状部42を有している。このU字断面形状部42は、リング状部材3の周方向に連続して延びる環状のものとされている。更に、シール部材41には、リング状部材3の周方向に対する位置を固定することにより、シール部材41の周方向の廻止めおよびズレ止めや、変形防止およびシワ防止などを行わせるために、周方向位置固定部43が一体に設けられている。この周方向位置固定部43は、U字断面形状部42の頂部に対し外周側へ突設された突起部などとされている。この周方向位置固定部43は、リング状部材3の周方向に対して連続して延設されている。これに対し、嵌合用凹部12には、周方向位置固定部43を収容保持可能な固定用溝部44が設けられている。この固定用溝部44は、リング状部材3の周方向に連続して延設されている。なお、シール部材41については、図面の都合によって省略している場合があるが、基本的には全て備えているものとする。
【0037】
また、シール構造としては、上記した個別のシール部材41に代えて、または、上記した個別のシール部材41に加えて、自在管部構造1の内周部分全体に、図示しない防水被覆層を設けたり、自在管部構造1の外周部分全体を図示しない防水被覆層で覆ったり、また、これらを適宜組合せたりすることなども可能である。
【0038】
(6)上記において、図5に示す実施例のように、リング状部材3の外周部に、周方向に延びるフランジ部51が突設されるようにしても良い。
【0039】
このフランジ部51は、リング状部材3に一体に形成される。このフランジ部51は、リング状部材3の補強リブとしても使用することができる。フランジ部51は、各リング状部材3に対して1箇所または数箇所設けることができる。この場合には、各リング状部材3に対して1箇所設けられている。
【0040】
(7)上記において、図6に示す実施例のように、リング状部材3の外周部に、傾動可能連結部5を保護可能な保護カバー部53が設けられるようにしても良い。
【0041】
この保護カバー部53は、リング状部材3に一体に形成される。この保護カバー部53は、リング状部材3のほぼ外周側へ向けて立上がる立上部54と、立上部54の先端部分から嵌合用凸部11の外周側に位置して傾動可能連結部5を覆うように延びる覆部55とを有している。
【0042】
なお、上記したフランジ部51と保護カバー部53とは、同時に設けるようにすることも、組合せて一体化して覆部55上にフランジ部を突設することも可能である。
【0043】
(8)このような自在管部構造1は、リング状部材3の連結個数を選択、調整することによって、傾動角度および長さを自在に設定、調整して使用可能なものとすることができる(傾動角度等設定可能構造)。
【0044】
例えば、上記したように、1つの傾動可能連結部5の傾動角度を最大5度に設定した場合には、例えば、リング状部材3を2個連結することによって5度、3個連結することによって10度、4個連結することによって15度、・・・など、必要な角度だけ傾動し得るようにすることができるため、構造的な無駄をなくすことが可能となる。
【0045】
また、例えば、図7に示す実施例のように、リング状部材3を多数連結することによって、上記した自在管部構造1によって、ベンド管61を構成することが可能となる。この場合、自在管部構造1の両端部には、例えば、外部の配管部分を接続するための受口部を有する図示しない接続用のリング状部材などが取付けられることになる。
【0046】
また、例えば、図1の自在管部構造1を、図示しない樹脂製汚水マス本体や樹脂製マンホール本体の流入口部分に取付けることにより、自在受口付の樹脂製汚水マスや樹脂製マンホールなどを構成することが可能となる。この場合、自在管部構造1の一端部には、樹脂製汚水マス本体や樹脂製マンホール本体の流入口に対して取付用リング状部材65が接合され、また、自在管部構造1の他端部には、外部の配管を接続するための受口部を有する接続用リング状部材67が取付けられることになる。
【0047】
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
【0048】
複数のリング状部材3を、傾動可能連結部5を介して連結することにより、自在管部構造1が構成される。そして、この連結によって、自在管部構造1の内周側に、排水などの流路面となる内壁(内壁構成部6)が構成される。この自在管部構造1は、傾動可能連結部5によって、真っ直ぐにしたり(非屈曲状態)、曲げたりする(屈曲状態)ことができる。また、自在管部構造1を屈曲状態とした場合でも、内壁構成部6は、排水などのほぼ平坦な(段差のない)流路面を保持することができる。
【0049】
そして、この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0050】
(1)ほぼ軸線方向2に隣接配置された複数個のリング状部材3を、リング状本体4の隣接する端面間に設けられた傾動可能連結部5を用いて傾動自在に連結することにより、自在に屈曲可能な自在管部構造1を得ることが可能となる。このような自在管部構造1は、いわゆる通常の可撓管と比べて短い距離の間で大きく曲げることができるようにしたり、厚肉化して耐久性などを高めたりすることが可能となる。また、いわゆる球面継手と比べて構造を単純化したり、低価格化を図ることができる。そして、リング状本体4の内周側に内壁構成部6を設けることによって、複雑な構造にすることなく、自在に屈曲可能な自在管部構造1の内周部分を、汚物溜り部が形成され難い形状にすることが可能となる。
【0051】
(2)嵌合用凸部11と嵌合用凹部12とを互いに出入動自在に嵌合すると共に、嵌合用凸部11と嵌合用凹部12との間に備えられた係止部13を互いに係止させることにより、簡単な構成で確実に機能する傾動可能連結部5を得ることが可能となる。また、リング状本体4の内周部分に設けられた本体側内壁部分14と、本体側内壁部分14から嵌合用凸部11の内周側に位置するように突設された突出壁部分15とによって、汚物溜り部が形成され難い内壁構成部6をうまく構成することができる。
【0052】
(3)嵌合用凸部11の軸線方向2へ延びる腕部21と、腕部21の先端に設けられた先端形状部22とを、嵌合用凹部12の腕部収容部23と先端受部24とに対して嵌合させることにより、傾動可能連結部5の構造を最適なものとすることができる。即ち、腕部21と腕部収容部23とによって、嵌合用凸部11と嵌合用凹部12との出入動の移動距離を大きく確保することができる。また、先端形状部22と先端受部24とによって、傾動可能連結部5の傾動中心が容易に定められるようにすることができる。また、嵌合用凸部11の、腕部21と先端形状部22との境界部分の外周側に係止部13として設けられた凸部側係止部25と、嵌合用凹部12の、腕部収容部23の入口部分の外周側に係止部13として設けられた凹部側係止部26とを係止させることにより、傾動可能連結部5の抜止めを行って、安定して傾動を行い得るようにすることができる。また、上記した位置に凸部側係止部25と凹部側係止部26とを設けることにより、傾動可能連結部5の傾動角度をより大きくすることができる。
【0053】
(4)本体側内壁部分14と突出壁部分15との間に重複部31を設けることによって、傾動可能連結部5の内周部分に汚物溜り部が形成され難くなるようにすることや、汚物溜り部をより小さなものとすることができるようになる。また、重複部31が互いに重複する内周側テーパ部32と、外周側テーパ部33とを有することによって、隣接するリング状本体4を傾動させた場合であっても重複部31を当接状態に維持して、両者間に隙間ができるのを防止することが可能となる。
【0054】
(5)嵌合用凹部12と嵌合用凸部11との間に介装したシール部材41により、隣接するリング状本体4の傾動によって、嵌合用凹部12と嵌合用凸部11との嵌合位置が変化した場合でも、止水性を保持し続けることが可能となる。また、シール部材41を、嵌合用凹部12と嵌合用凸部11との間にそれぞれ介装することにより、各傾動可能連結部5を個別にシールすると共に、各傾動可能連結部5ごとにメンテナンスを行う構成とすることが可能となる。
【0055】
(6)リング状部材3の外周部に設けた周方向に延びるフランジ部51により、各リング状部材3や自在管部構造1全体を補強することができるようになる。
【0056】
(7)リング状部材3の外周部に設けた保護カバー部53を用いて傾動可能連結部5を保護することにより、埋設時の傾動可能連結部5への外部の土砂の噛込みなどを防止することができる。
【0057】
(8)このような自在管部構造1は、リング状部材3の連結個数を選択することによって、傾動角度および長さを自在に調整して使用することができるようになる。
【0058】
例えば、図7に示すように、リング状部材3を多数連結することによって、上記した自在管部構造1によって、ベンド管61とすることができる。また、例えば、図1の自在管部構造1を、樹脂製汚水マス本体や樹脂製マンホール本体の流入口部分に取付けることにより、自在受け付きの樹脂製汚水マスや樹脂製マンホールとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
例えば、住宅などの建物における、特に排水設備などの配管部分に、自在管部構造として使用することができる。この自在管部構造は、安価で、構成が簡単で、内部に汚物溜り部が形成され難いので、上記以外にも、広い用途が期待できる。
【符号の説明】
【0060】
1 自在管部構造
2 軸線方向
3 リング状部材
4 リング状本体
5 傾動可能連結部
6 内壁構成部
11 嵌合用凸部
12 嵌合用凹部
13 係止部
14 本体側内壁部分
15 突出壁部分
21 腕部
22 先端形状部
23 腕部収容部
24 先端受部
25 凸部側係止部
26 凹部側係止部
31 重複部
32 内周側テーパ部
33 外周側テーパ部
41 シール部材
51 フランジ部
53 保護カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ軸線方向に隣接配置された複数個のリング状部材を備えると共に、各リング状部材が、リング状本体と、該リング状本体の隣接する端面間に傾動自在に連結可能に設けられた傾動可能連結部と、リング状本体の内周側に設けられた内壁構成部とを備えたことを特徴とする自在管部構造。
【請求項2】
前記傾動可能連結部が、互いに出入動自在に嵌合可能な嵌合用凸部と嵌合用凹部とを備えると共に、嵌合用凸部と嵌合用凹部との間に、互いに係止可能な係止部を備え、前記内壁構成部が、リング状本体の内周部分に設けられた本体側内壁部分と、本体側内壁部分から前記嵌合用凸部の内周側に位置するように突設された突出壁部分とを備えたことを特徴とする請求項1記載の自在管部構造。
【請求項3】
前記嵌合用凸部が、前記軸線方向へ延びる腕部と、該腕部の先端に設けられた先端形状部とを有し、前記嵌合用凹部が、前記腕部を出入動自在に収容可能な腕部収容部と、前記先端形状部を受ける先端受部とを有し、前記係止部が、前記嵌合用凸部の、腕部と先端形状部との境界部分の外周側に設けられた凸部側係止部と、前記嵌合用凹部の、腕部収容部の入口部分の外周側に設けられた凹部側係止部とを有することを特徴とする請求項2記載の自在管部構造。
【請求項4】
前記本体側内壁部分と突出壁部分との間に、互いに重複可能な重複部がそれぞれ設けられ、該重複部が、隣接するリング状本体の傾動に対して当接状態を維持可能な内周側テーパ部と、外周側テーパ部とをそれぞれ有することを特徴とする請求項2または請求項3の記載の自在管部構造。
【請求項5】
前記嵌合用凹部と嵌合用凸部との間に、両者の変位に対して止水可能なシール部材が介装されたことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の自在管部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−281399(P2010−281399A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135647(P2009−135647)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】