説明

自律走行作業車の制御装置

【課題】走行予定領域における作業車の位置を簡易な校正で検出するようにした自律走行作業車の制御装置を提供する。
【解決手段】角速度センサの出力に基づいて算出される進行方位に基づいて原動機を駆動して方位(地磁気)センサの出力に従って走行予定領域の境界を所定の起点から周回走行し、周回走行の間、算出される進行方位と走行距離を複数のビットに分割されてなるビットマップ上に順次記録して走行予定領域の境界線についての走行軌跡を生成し(S10からS14)、生成された走行軌跡を地図情報に変換し(S18)、地図情報のビットから作業車の位置を特定(検出)し、方位センサの出力から得られる規定方位を基準とし、算出される進行方位と走行距離と検出される位置とに基づき、作業車を直進走行させつつ、作業させる(S20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自律走行作業車の制御装置に関し、より具体的には走行予定領域を自律走行して芝刈りなどの作業を行う自律走行作業車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行予定領域を自律走行して芝刈りなどの作業を行う自律走行作業車においては、走行予定領域の境界を検出する必要があることから、下記の特許文献1において境界上に磁石を埋設すると共に、それに感応するセンサを作業車に搭載して検出する技術が提案されている。
【0003】
特許文献2においては、境界に電線を埋設し、よって生じる磁界を作業車に搭載されたセンサで検出することで境界を検出する技術が提案されている。特許文献3においては、それら磁気誘導技術に加え、GPS信号を用いて作業車の位置を検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−239812号公報
【特許文献2】特開平8−286738号公報
【特許文献3】特許第3467136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2記載の技術によって走行予定領域の境界を検出することはできるが、作業性を向上させるためには走行予定領域における作業車の位置を検出するのが望ましい。そのため、特許文献3記載の技術にあってはGPS信号を用いているが、構成が複雑になると共に、コストアップを招くおそれもある。
【0006】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、走行予定領域における作業車の位置を簡易な構成で検出するようにした自律走行作業車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、原動機と、前記原動機に接続される駆動輪と、作業機と、走行予定領域の境界に敷設された電線に生じる磁界を示す出力を生じる磁気センサとを備え、前記磁気センサの出力で検出される境界で規定される前記走行予定領域内を前記原動機を駆動して自律走行しつつ前記作業機を介して作業する自律走行作業車の制御装置において、前記走行予定領域に作用する地磁気を示す出力を生じる地磁気センサと、前記作業車の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じる角速度センサと、前記作業車の車輪速を示す出力を生じる車輪速センサと、前記角速度センサの出力に基づいて進行方位を算出すると共に、前記車輪速センサの出力に基づいて走行距離を算出する方位距離算出手段と、前記算出される進行方位に基づいて前記原動機を駆動して前記磁気センサの出力に従って前記走行予定領域の境界を所定の起点から周回走行し、前記周回走行の間、前記算出される進行方位と走行距離を複数のビットに分割されてなるビットマップ上に順次記録して前記走行予定領域の境界線についての走行軌跡を生成する走行軌跡生成手段と、前記生成された走行軌跡を前記ビットマップからなる地図情報に変換する地図情報変換手段と、前記変換された地図情報において前記ビットマップのビットによって前記作業車の位置を特定し、前記地磁気センサの出力から得られる規定方位を基準とすると共に、前記算出される進行方位と走行距離と前記特定される位置とに基づき、前記作業車を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させる走行作業制御手段とを備える如く構成した。
【0008】
請求項2に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記地図情報変換手段は、前記周回走行が終了したときの終点と前記起点との離間距離が第1の規定値を超えるか否か判断し、前記離間距離が前記第1の規定値を超えると判断されるとき、前記走行軌跡を再び生成する一方、前記離間距離が前記第1の規定値を超えないと判断されるとき、前記走行軌跡を前記地図情報に変換する如く構成した。
【0009】
請求項3に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記地図情報変換手段は、前記離間距離が前記第1の規定値を超えると判断されるとき、前記周回走行が終了したときの終点と前記起点との方位差が第2の規定値を超えるか否か判断し、前記方位差が前記第2の規定値を超えると判断されるとき、前記角速度センサの出力を較正する如く構成した。
【0010】
請求項4に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記地図情報変換手段は、前記離間距離が前記第1の規定値を超えると判断されるとき、前記周回走行が終了したときの終点と前記起点との方位差が第2の規定値を超えるか否か判断し、前記方位差が前記第2の規定値を超えないと判断されるとき、前記車輪速センサの出力を較正する如く構成した。
【0011】
請求項5に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記作業制御手段は、前記直進走行の間の前記地磁気センサの出力の変化量が第3の規定値未満か否か判断し、前記変化量が前記第3の規定値未満と判断されるとき、前記作業車が直進走行していると判断する如く構成した。
【0012】
請求項6に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記作業制御手段は、前記変化量が前記第3の規定値を超えると判断されるとき、前記角速度センサの出力を較正する如く構成した。
【0013】
請求項7に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、前記ビットの単位面積は、前記作業機の作業幅に基づいて設定される如く構成した。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る自律走行可能な作業車の制御装置にあっては、角速度センサの出力に基づいて進行方位を算出すると共に、車輪速センサの出力に基づいて走行距離を算出し、算出される進行方位に基づいて磁気センサの出力に従って走行予定領域の境界を所定の起点から周回走行し、その間、算出される進行方位と走行距離を複数のビットに分割されてなるビットマップ上に順次記録して走行予定領域の境界線についての走行軌跡を生成し、生成された走行軌跡を地図情報に変換し、変換された地図情報においてビットによって作業車の位置を特定し、地磁気センサの出力から得られる規定方位を基準とすると共に、算出される進行方位と走行距離と特定される位置とに基づき、作業車を直進走行させつつ、作業機を介して作業させる如く構成したので、簡易な構成で走行予定領域における作業車の位置(絶対位置)を特定、即ち、検出することができ、よって走行経路を最適に設定することが可能となると共に、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を実現するなどして作業性を向上させることができる。
【0015】
請求項2に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、周回走行が終了したときの終点と起点との離間距離が第1の規定値を超えるか否か判断し、離間距離が第1の規定値を超えると判断されるとき、走行軌跡を再び生成する一方、第1の規定値を超えないと判断されるとき、走行軌跡を地図情報に変換する如く構成したので、走行予定領域についての地図情報を正確に取得することができ、よって走行予定領域における作業車の位置を精度良く検出することができる。
【0016】
請求項3に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、離間距離が第1の規定値を超えると判断されるとき、周回走行が終了したときの終点と起点との方位差が第2の規定値を超えるか否か判断し、方位差が第2の規定値を超えると判断されるとき、角速度センサの出力を較正する如く構成したので、走行予定領域の路面の凹凸や傾斜あるいは滑りなどに起因して算出される進行方位に誤差が生じるときも、センサ出力を較正することで修正でき、よって走行予定領域についての地図情報を正確に取得することができ、走行予定領域における作業車の位置を精度良く検出することができる。
【0017】
請求項4に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、離間距離が第1の規定値を超えると判断されるとき、周回走行が終了したときの終点と起点との方位差が第2の規定値を超えるか否か判断し、方位差が第2の規定値を超えないと判断されるとき、車輪速センサの出力を較正する如く構成したので、同様に走行予定領域の路面の凹凸や傾斜あるいは滑りなどに起因して算出される走行距離に誤差が生じるときも、センサ出力を適正に較正することで修正でき、よって走行予定領域についての地図情報を正確に取得することができ、走行予定領域における作業車の位置を精度良く検出することができる。
【0018】
請求項5に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、直進走行の間の地磁気センサの出力の変化量が第3の規定値未満か否か判断し、変化量が第3の規定値未満と判断されるとき、作業車が直進走行していると判断する如く構成したので、作業性を一層向上させることができる。
【0019】
請求項6に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、変化量が前記第3の規定値を超えると判断されるとき、角速度センサの出力を較正する如く構成したので、換言すれば走行予定領域のガードレールなどの磁性体の存在などに起因して地磁気センサの出力が疑わしいときも、地磁気センサの出力は較正せず、角速度センサの出力の方を較正するようにしたので、地磁気センサの乱れの影響を受けることがない。
【0020】
請求項7に係る自律走行作業車の制御装置にあっては、ビットの単位面積は、作業機の作業幅に基づいて設定される如く構成したので、作業車の位置を精度良く検出できると共に、一層整然とした作業跡を実現することができて作業性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例に係る自律走行作業車の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1の作業車に搭載されるセンサ、電子制御ユニット、電動モータ(原動機)などの入出力関係を示すブロック図である。
【図3】図1の作業車が走行する走行予定領域を示す平面図である。
【図4】図1に示す充電ST(ステーション)での充電を示す説明図である。
【図5】図4に示す充電STの構成を示すブロック図である。
【図6】図1の作業車に対するユーザの操作機器の構成を示すブロック図である。
【図7】図2に示す制御装置(電子制御ユニット)の動作を機能的に示すブロック図である。
【図8】図1の作業車の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図9】図8の処理で生成される走行軌跡の一例を示す説明図である。
【図10】走行奇跡から変換される地図情報を示す説明図である。
【図11】図8の処理で作業車を直進走行させつつ、作業機を介して作業させる状態を示す説明図である。
【図12】図8の直進走行制御と平行して実行される図1の作業車の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図13】図8の処理で作業車を直進走行させるときに何等かの理由で作業車の進行方向に歪みが生じている状態を示す説明図である。
【図14】同様に図8の処理で作業車を直進走行させるときに走行予定領域のガードレールなどの磁性体などの影響で方位センサの出力に歪みが生じて作業車の進行方向に歪みが生じている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に即してこの発明に係る自律走行作業車の制御装置を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0023】
図1はこの発明の実施例に係る自律走行作業車の制御装置を全体的に示す概略図、図2はそれに搭載されるセンサ、電子制御ユニット、電動モータ(原動機)などの入出力関係を示すブロック図、図3は図1の作業車が走行する走行予定領域の平面図、図4は図1に示す充電ステーションでの充電を示す説明図、図5は図4に示す充電ステーションの構成を示すブロック図、図6は図1の作業車に対するユーザの操作機器の構成を示すブロック図、図7は図2に示す電子制御ユニット(制御装置)の動作を機能的に示すブロック図である。
【0024】
図1において、符号10は自律走行作業車(以下「作業車」という)を示す。図1と図2に示す如く、作業車10には走行用の電動モータ(原動機)12L,12Rが2基搭載される。
【0025】
電動モータ12L,12Rは作業車10のシャシ10aの後端側に取り付けられた左右の駆動輪14L,14R(左側のみ図示)に接続され、駆動輪14L,14Rを独立に正転(前進方向への回転)あるいは逆転(後進方向への回転)させる。
【0026】
作業車10のシャシ10aの前端側には左右の従動輪16L,16R(左側のみ図示)がステー10bを介して取り付けられる。シャシ10aの中央位置付近には、芝刈り作業用のブレード(ロータリブレード。作業機)20が取り付けられる。
【0027】
ブレード20は1基の作業用の電動モータ22に接続され、電動モータ22によって回転駆動される。ブレード20にはユーザの手動操作自在なブレード高さ調整機構24が接続される。
【0028】
ブレード高さ調整機構24はネジ(図示せず)を備え、そのネジをユーザが手で廻すことでブレード20の接地面grからの高さが調整可能に構成される。シャシ10aには車体フレーム10cが取り付けられ、電動モータ12,22、ブレード20などは車体フレーム10cで被覆される。
【0029】
作業車10の後部には充電ユニット(AC/DC変換器を含む)26とバッテリ30が格納されると共に、フレーム10cには充電端子32が2個(後で図4に示す)後方に突出するように取り付けられる。
【0030】
充電端子32は充電ユニット26に、充電ユニット26はバッテリ30に配線(図示せず)を介して接続される。バッテリ30は配線(図示せず)を介して電動モータ12,22に接続される。
【0031】
このように、作業車10は4輪の電動式の無人の芝刈り作業車として構成され、例えば全長500mm、全幅300mm、高さ300mm程度の大きさを備え、図3に示す走行予定領域(作業エリア)Aを走行するように構成される。
【0032】
図1の説明に戻ると、作業車10の前後端には障害物を検出するための超音波センサ34F,34Rが配置されると共に、車体フレーム10cには接触センサ36が取り付けられる。接触センサ36は、障害物や異物との接触によって車体フレーム10cがシャシ10aから外れるとき、オン信号を出力する。
【0033】
作業車10の中央位置付近には電子制御ユニット(Electronic Control Unit。制御装置。以下「ECU」という)40が配置される。より具体的には、ECU40はECU収納ボックス40aに収納された基板上に配置され、CPU,ROM,RAMなどを備えるマイクロコンピュータからなる。
【0034】
ECU収納ボックス40a内の基板上にはECU40に近接して方位センサ42が配置される。方位センサ42はx、y、zの3軸の出力mx、my、mzを有する3軸構造の地磁気センサからなる。尚、図3において、x:作業車10の進行方向、y:それに直交する左右方向、z:それに直交する重力軸方向(紙面を貫く方向)である。
【0035】
またECU収納ボックス40a内の基板上には方位センサ42に近接して作業車10の重心位置のz軸回りに生じる角速度(ヨーレート)を示す出力を生じる(検出する)Yawセンサ(角速度センサ)44と、作業車10に作用する前後方向(進行方向)加速度Gを示す出力を生じる(検出する)Gセンサ(加速度センサ)46が配置される。
【0036】
駆動輪14の付近には駆動輪14の車輪速を示す出力を生じる(検出する)車輪速センサ50が配置されると共に、作業車10には操作スイッチ(非常停止スイッチ)52がユーザの操作自在に設けられる。作業車10はユーザによって操作スイッチ52がオンされるとき、走行を停止する。
【0037】
上記した超音波センサ34、接触センサ36、方位センサ42、Yawセンサ44、Gセンサ46、車輪速センサ50、操作スイッチ52の出力は、ECU40に送られる。
【0038】
作業車10の車体フレーム10cは上面で大きく切り欠かれ、そこにディスプレイ54が設けられる。ディスプレイ54はECU40に接続され、ECU40の指令に応じて作業モードなどを表示する。
【0039】
前記したECU収納ボックス40aには受信アンテナ40bが取り付けられると共に、ECU収納ボックスの内部には受信アンテナに接続される無線機40cが配置される。
【0040】
ここで、図3に示す走行予定領域Aを説明すると、走行予定領域(作業エリア)Aは図示のような形状を呈し、そこには充電ST(ステーション)62が配置される。走行予定領域Aの境界にはエリアワイヤ(電線)64が敷設されると共に、図1に示すように作業車10の前後には作業エリアセンサ66F,66Rが配置される。
【0041】
作業エリアセンサ66は磁気センサからなり、後述するように交流が通電される結果、エリアワイヤ64に生じる磁界を示す出力を生じる。作業エリアセンサ66の出力もECU40に送出される。
【0042】
前記したように走行予定領域Aには充電ST62が配置され、図4に示す如く、作業車10は充電ST62と充電端子32を通じて接続され、充電ST62から充電されるように構成される。充電ST62は、図5に示す如く、商用電源70にコンセント72を介して接続される充電装置74を備える。
【0043】
充電装置74は、AC/AC変換器74aと、エリアワイヤ64に交流を通電して磁界(エリア信号)を発生させるエリア信号発生器74b、それらの動作を制御するECU(電子制御ユニット)74cとを備え、充電端子76を介して作業車10の充電端子32と接続可能に構成される。
【0044】
即ち、充電ST62において商用電源70からコンセント72を通じて送られる交流は充電装置74のAC/AC変換器74aで適宜な電圧に降圧され、作業車10が充電端子32,76を介して充電ST62に接続されたとき、作業車10に送られて充電ユニット26を介してバッテリ30に貯留される。
【0045】
作業車10に対するユーザの操作機器として、図6に示す如く、パーソナルコンピュータ80と、それに接続される無線機82と、リモートコントローラ(リモコン)84が用意される。無線機82とリモートコントローラ84は送信アンテナ82a,84aを備え、作業車10に配置された受信アンテナ40bと無線機40cを介してECU40に操作指令を送信可能に構成される。
【0046】
尚、図2に示す如く、ECU40には盗難防止用の認証装置が接続可能に構成される。
【0047】
図7に示す如く、ECU40は、Yawセンサ44の出力に基づいて作業車10の進行方位を算出すると共に、車輪速センサ50の出力に基づいて作業車10の走行距離を算出する方位距離算出部40dと、算出される進行方位に基づいて走行モータドライバ12aを介して電動モータ12を駆動して作業エリアセンサ(磁気センサ)66の出力に従って走行予定領域Aの境界を所定の起点から周回走行し、周回走行の間、算出される進行方位と走行距離を複数のビットに分割されてなるビットマップ上に順次記録して走行予定領域の境界線についての走行軌跡を生成する走行軌跡生成部40eと、生成された走行軌跡を地図情報に変換する地図情報変換部40fと、変換された地図情報においてビットによって作業車10の位置を特定し、方位センサ(地磁気センサ)42の出力から得られる規定方位を基準とすると共に、算出される進行方位と走行距離と特定される位置とに基づき、作業車10を直進走行させつつ、作業モータドライバ22aを通じてブレード(作業機)20を介して作業させる走行(芝刈り作業)制御部40gとを備える。
【0048】
さらにECU40は、超音波センサ34や接触センサ36の出力に基づいて異常を検知したとき、あるいは操作スイッチ52がオンされたとき、作業車10を停止させる異常検知部40hを備える。
【0049】
図8はECU40の上記した動作を示すフロー・チャートである。
【0050】
以下説明すると、S10において充電ST(所定の起点)62をスタートし、Yawセンサ44の出力と車輪速センサ50の出力から算出される進行方位に基づいて電動モータ12を駆動して作業エリアセンサ66の出力に従ってエリアワイヤ64上、換言すれば走行予定領域Aの境界を走行し、S14で充電ST62に到着するまで周回走行する。
【0051】
尚、S10からS14までの周回走行の間、Yawセンサ44と車輪速センサ50の出力に基づいて算出される進行方位と走行距離を複数のビットに分割されてなるビットマップ上に順次記録し、図9に示す如く、走行予定領域Aの境界線についての走行軌跡を生成する。
【0052】
図9に示すビットマップにおいて、個々のビットの単位面積はブレード22の作業幅に基づいて例えば300mm×300mmなどと設定されるが、それ以外にもユーザの操作機器から設定しても良い。
【0053】
次いでS16に進み、ビットマップから周回走行が終了したときの終点と起点(充電ST62)の座標位置の差の絶対値、即ち、起点と終点の離間距離を算出し、算出値が第1の規定値未満か否か判断する。
【0054】
図9に示す走行軌跡において走行予定領域Aの路面に凹凸や傾斜が存在し、あるいは路面が降雨などで摩擦係数が低下して作業車10に滑りなどが生じると、図示の如く、起点と終点の間に位置ずれが生じる場合がある。
【0055】
S16で肯定されて離間距離が第1の規定値を超えないと判断されるときは起点と終点の間に位置ずれが生じていないと判断してS18に進み、S10からS14の処理で生成された走行軌跡を地図情報に変換する。図10に示す如く、走行軌跡がビットマップ上に示されることから、地図情報も同様にビットマップからなる。
【0056】
次いでS20に進み、個々のビットについて作業済みか否か判断、換言すればビットから作業車10の位置を特定(別言すれば検出)し、方位センサ42の出力から得られる規定方位を基準とし、(方位距離算出部40dで)算出される進行方位と走行距離と(ビットから)特定(検出される)位置とに基づき、図11に示すように作業車10を直進走行させつつ、ブレード(作業機)20を介して作業させる。
【0057】
尚、個々のビットについての作業済みか否かの判断は同一ビットについて適宜な回数だけ走行を繰り返すことで作業済みと判断するようにしても良い。
【0058】
図示の如く、方位センサ(地磁気センサ)42の出力から得られる規定方位が北(絶対方位)であることから、作業車10は走行予定領域A内を南北に直進走行するように制御される。
【0059】
他方、S16で否定され、周回走行が終了したときの終点と起点との離間距離が第1の規定値を超えると判断されるとき、S22に進み、走行軌跡を較正(校正)する。より正確には、S16で否定されて離間距離が第1の規定値を超えると判断されるときはS22に進み、周回走行が終了したときの終点と起点との方位差が(絶対値において)第2の規定値を超えるか否か判断する。
【0060】
S22で否定されて方位差が第2の規定値を超えると判断されるときはS24に進み、Yawセンサ44の出力を較正する。これはYawセンサ44の中心値を修正することで行う。
【0061】
他方、S22で肯定されて方位差が第2の規定値を超えないと判断されるときはS26に進み、車輪速センサ50の出力を較正する。
【0062】
次いでS28に進み、較正されたYawセンサ44あるいは車輪速センサ50の出力に基づき、周回走行を再び実行して走行軌跡を再生成してS16に戻る。即ち、走行軌跡から地図情報への変換は、周回走行が終了したときの終点と起点との離間距離が第1の規定値を超えないと判断されるときのみ、実行される。
【0063】
図12は図8のS22で実行される直進走行制御と平行して実行されるECU40の動作、より具体的には走行(芝刈り作業)制御部40gの動作である。
【0064】
以下説明すると、S100において方位センサ42の出力を読み込み、S102に進み、平均値Aを算出し、S104に進み、平均値Aと値Bの差の絶対値が第3の規定値未満か否か、換言すれば直進走行の間の方位センサ42の出力の変化量が第3の規定値未満か否か判断する。値Bは周回走行を開始したときの方位センサ42の出力を意味する。
【0065】
S104で肯定されて変化量が第3の規定値未満と判断されるとき、作業車10が直進走行していると判断されることからS106に進み、直進走行を終了するか否か判断し、肯定されない限り、S100に戻る。
【0066】
他方、S104で否定されて変化量が第3の規定値を超えると判断されるときはS108に進み、Yawセンサ44の出力、より具体的にはその出力の中心値を較正し、次いでS106に進む。
【0067】
即ち、この場合、図13に示すように何等かの理由で作業車10の進行方向に歪みが生じているか、あるいは図14に示すように走行予定領域Aのガードレールなどの磁性体100などの影響で方位センサ42の出力に歪みが生じていることから、Yawセンサ44の出力を較正する。
【0068】
換言すれば、方位センサ42の出力が疑わしいときも、方位センサ42の出力は較正せず、Yawセンサ44の出力の方を較正するようにしたので、方位センサ42の乱れの影響を受けることがない。
【0069】
この実施例にあっては上記の如く、電動モータ(原動機)12と、前記電動モータ(原動機)12に接続される駆動輪14と、ブレード(作業機)20と、走行予定領域Aの境界に敷設されたエリアワイヤ(電線)64に生じる磁界を示す出力を生じる作業エリアセンサ(磁気センサ)66とを備え、前記作業エリアセンサ(磁気センサ)66の出力で検出される境界で規定される前記走行予定領域A内を前記電動モータ(原動機)12を駆動して自律走行しつつ前記ブレード(作業機)20を介して作業する自律走行作業車10の制御装置(ECU(電子制御ユニット)40)において、前記走行予定領域Aに作用する地磁気を示す出力を生じる方位センサ(地磁気センサ)42と、前記作業車10の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じるYawセンサ(角速度センサ)44と、前記作業車10の車輪速を示す出力を生じる車輪速センサ50と、前記Yawセンサ(角速度センサ)44の出力に基づいて進行方位を算出すると共に、前記車輪速センサ50の出力に基づいて走行距離を算出する方位距離算出手段(方位距離算出部40d)と、前記算出される進行方位に基づいて前記電動モータ(原動機)12を駆動して前記方位センサ(磁気センサ)42の出力に従って前記走行予定領域Aの境界を所定の起点(充電ST62)から周回走行し、前記周回走行の間、前記算出される進行方位と走行距離を複数のビットに分割されてなるビットマップ上に順次記録して前記走行予定領域の境界線についての走行軌跡を生成する走行軌跡生成手段(走行軌跡生成部40e,S10からS14)と、前記生成された走行軌跡を前記ビットマップからなる地図情報に変換する地図情報変換手段(地図情報変換部40f,S16,S18,S22からS28)と、前記変換された地図情報において前記ビットマップのビットによって前記作業車の位置を特定(検出)し、前記地磁気センサの出力から得られる規定方位(絶対方位)を基準とすると共に、前記算出される進行方位と走行距離と前記特定される位置とに基づき、前記作業車10を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させる走行作業制御手段前記算出される進行方位と走行距離を前記ブレード(作業機)20を介して作業させる走行作業制御手段(走行(芝刈り作業)制御部40g,S20)とを備える如く構成したので、簡易な構成で走行予定領域Aにおける作業車10の位置(絶対位置)を検出することができ、よって走行経路を最適に設定することが可能となると共に、作業時間の短縮化や整然とした作業跡を実現するなどして作業性を向上させることができる。
【0070】
また、前記地図情報変換手段は、前記周回走行が終了したときの終点と前記起点との離間距離が第1の規定値を超えるか否か判断し(S16)、前記離間距離が前記第1の規定値を超えると判断されるとき、前記走行軌跡を再び生成する一方(S28)、前記離間距離が前記第1の規定値を超えないと判断されるとき、前記走行軌跡を前記地図情報に変換する(S18)如く構成したので、走行予定領域Aについての地図情報を正確に取得することができ、よって走行予定領域Aにおける作業車10の位置を精度良く検出することができる。
【0071】
また、前記地図情報変換手段は、前記離間距離が前記第1の規定値を超えると判断されるとき、前記周回走行が終了したときの終点と前記起点との方位差が第2の規定値を超えるか否か判断し(S16,S22)、前記方位差が前記第2の規定値を超えると判断されるとき、前記Yawセンサ(角速度センサ)44の出力を較正する(S24)如く構成したので、走行予定領域Aの路面の凹凸や傾斜あるいは滑りなどに起因して算出される進行方位に誤差が生じるときも、センサ出力を較正することで修正でき、よって走行予定領域Aについての地図情報を正確に取得することができ、走行予定領域Aにおける作業車10の位置を精度良く検出することができる。
【0072】
また、前記地図情報変換手段は、前記離間距離が前記第1の規定値を超えると判断されるとき、前記周回走行が終了したときの終点と前記起点との方位差が第2の規定値を超えるか否か判断し(S16,S22)、前記方位差が前記第2の規定値を超えないと判断されるとき、前記車輪速センサの出力を較正する(S28)如く構成したので、同様に走行予定領域Aの路面の凹凸や傾斜あるいは滑りなどに起因して算出される走行距離に誤差が生じるときも、センサ出力を適正に較正することで修正でき、よって走行予定領域Aについての地図情報を正確に取得することができ、走行予定領域Aにおける作業車10の位置を精度良く検出することができる。
【0073】
また、前記作業制御手段は、前記直進走行の間の前記方位センサ(地磁気センサ)の出力の変化量が第3の規定値未満か否か判断し(S100からS104)、前記変化量が前記第3の規定値未満と判断されるとき、前記作業車が直進走行していると判断する(S106)如く構成したので、作業性を一層向上させることができる。
【0074】
また、前記作業制御手段は、前記変化量が前記第3の規定値を超えると判断されるとき、前記角速度センサの出力を較正する(S108)如く構成したので、換言すれば走行予定領域Aのガードレールなどの磁性体の存在などに起因して方位センサ(地磁気センサ)42の出力が疑わしいときも、方位センサ42の出力は較正せず、Yawセンサ44の出力の方を較正するようにしたので、方位センサ42の乱れの影響を受けることがない。
【0075】
また、前記ビットの単位面積は、前記作業機(ブレード)20の作業幅に基づいて設定される如く構成したので、作業車10の位置を精度良く検出できると共に、一層整然とした作業跡を実現することができて作業性を一層向上させることができる。
【0076】
尚、上記において原動機として電動モータを用いたが、それに限られるものではなく、内燃機関など他の原動機であっても良い。また作業機として芝刈り作業機を示したが、それに限られるものではない。さらに磁石として磁気ネイルを示したが、それ以外の磁石であっても良い。
【符号の説明】
【0077】
10 自律走行作業車(作業車)、12 電動モータ(原動機)、14 駆動輪、16 従動輪、20 ブレード(作業機)、22 電動モータ、24 ブレード高さ調整機構、26 充電ユニット、30 バッテリ、32 充電端子、34 超音波センサ、36 接触センサ、40 ECU(電子制御ユニット)、40d 方位距離算出部、40e 走行軌跡生成部、40f 地図情報変換部、40g 走行(芝刈り作業)制御部、40h 異常検知部、42 方位センサ(地磁気センサ)、44 Yawセンサ(角速度センサ)、46 Gセンサ(加速度センサ)、50 車輪速センサ、52 操作スイッチ(SW)、54 ディスプレイ、62 充電ST(ステーション)、64 エリアワイヤ(電線)、66 作業エリアセンサ(磁気センサ)、70 商用電源、72 コンセント、74 充電装置、76 充電端子、80 パーソナルコンピュータ、82 無線機、84 リモートコントローラ(リモコン)、A 走行予定領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、前記原動機に接続される駆動輪と、作業機と、走行予定領域の境界に敷設された電線に生じる磁界を示す出力を生じる磁気センサとを備え、前記磁気センサの出力で検出される境界で規定される前記走行予定領域内を前記原動機を駆動して自律走行しつつ前記作業機を介して作業する自律走行作業車の制御装置において、前記走行予定領域に作用する地磁気を示す出力を生じる地磁気センサと、前記作業車の重心位置の鉛直軸回りに生じる角速度を示す出力を生じる角速度センサと、前記作業車の車輪速を示す出力を生じる車輪速センサと、前記角速度センサの出力に基づいて進行方位を算出すると共に、前記車輪速センサの出力に基づいて走行距離を算出する方位距離算出手段と、前記算出される進行方位に基づいて前記原動機を駆動して前記磁気センサの出力に従って前記走行予定領域の境界を所定の起点から周回走行し、前記周回走行の間、前記算出される進行方位と走行距離を複数のビットに分割されてなるビットマップ上に順次記録して前記走行予定領域の境界線についての走行軌跡を生成する走行軌跡生成手段と、前記生成された走行軌跡を前記ビットマップからなる地図情報に変換する地図情報変換手段と、前記変換された地図情報において前記ビットマップのビットによって前記作業車の位置を特定し、前記地磁気センサの出力から得られる規定方位を基準とすると共に、前記算出される進行方位と走行距離と前記特定される位置とに基づき、前記作業車を直進走行させつつ、前記作業機を介して作業させる走行作業制御手段とを備えることを特徴とする自律走行作業車の制御装置。
【請求項2】
前記地図情報変換手段は、前記周回走行が終了したときの終点と前記起点との離間距離が第1の規定値を超えるか否か判断し、前記離間距離が前記第1の規定値を超えると判断されるとき、前記走行軌跡を再び生成する一方、前記離間距離が前記第1の規定値を超えないと判断されるとき、前記走行軌跡を前記地図情報に変換することを特徴とする請求項1記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項3】
前記地図情報変換手段は、前記離間距離が前記第1の規定値を超えると判断されるとき、前記周回走行が終了したときの終点と前記起点との方位差が第2の規定値を超えるか否か判断し、前記方位差が前記第2の規定値を超えると判断されるとき、前記角速度センサの出力を較正することを特徴とする請求項2記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項4】
前記地図情報変換手段は、前記離間距離が前記第1の規定値を超えると判断されるとき、前記周回走行が終了したときの終点と前記起点との方位差が第2の規定値を超えるか否か判断し、前記方位差が前記第2の規定値を超えないと判断されるとき、前記車輪速センサの出力を較正することを特徴とする請求項2または3記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項5】
前記作業制御手段は、前記直進走行の間の前記地磁気センサの出力の変化量が第3の規定値未満か否か判断し、前記変化量が前記第3の規定値未満と判断されるとき、前記作業車が直進走行していると判断することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項6】
前記作業制御手段は、前記変化量が前記第3の規定値を超えると判断されるとき、前記角速度センサの出力を較正することを特徴とする請求項5記載の自律走行作業車の制御装置。
【請求項7】
前記ビットの単位面積は、前記作業機の作業幅に基づいて設定されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の自律走行作業車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−79022(P2012−79022A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222641(P2010−222641)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】