説明

芳香族ポリアミドフィルムの製造方法および芳香族ポリアミドフィルム

【課題】 機械特性および熱寸法安定性に優れた芳香族ポリアミドフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 アルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化層状珪酸塩を芳香族ポリアミドに対して1〜12重量%含んでいる芳香族ポリアミドフィルムの製造方法であって、有機溶媒に溶解させた芳香族ジアミン溶液に、有機溶媒と上記の有機化層状珪酸塩とからなる分散体を添加した後、さらに芳香族ジ酸クロリドを添加して得た芳香族ポリアミド溶液を溶液製膜することにより芳香族ポリアミドフィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一に分散された層状珪酸塩を含む芳香族ポリアミドフィルムを溶液製膜により得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリアミドフィルムは剛性や強度などの機械特性が他のフィルムより高く薄膜化に非常に有利である。また、ポリイミドフィルムに次ぐ耐熱性も有しており、これらの特性を活かして、磁気テープ、プリンタリボン、コンデンサー、電気絶縁材、離型フィルム、耐熱テープ、太陽電池などの用途で活用が考えられている。
【0003】
しかし近年の電子機器の小型化、薄膜化、軽量化、高速化に伴い、それらに用いる電子部品の小型化、精密化の要求が強くなっており、芳香族ポリアミドフィルムにも機械物性や熱寸法安定性の向上、薄膜化が求められている。
【0004】
これまでに、ポリアミドフィルムの機械特性や熱寸法安定性などを向上させる方法の一つとして、層状珪酸塩をポリマー中に均一分散させる方法が提案されているが(例えば、特許文献1、2参照)、これらは溶融製膜でフィルム化されるものであり、本発明の技術分野である溶液製膜とは製膜方法が大きく異なる。
【0005】
また有機オニウムイオンで処理された膨潤性珪酸塩をポリイミドに分散して、機械特性、熱寸法安定性、ガスバリア性を高めたポリイミドフィルムの製造方法が提案されているが(例えば、特許文献3参照)、このようなポリマー溶液中での有機化層状珪酸塩の分散性は、ポリマーおよび溶媒の種類によって大きく変化するため、有機化処理の適正化が必要である。特に溶液製膜では、溶融製膜のように機械的な高せん断エネルギーを与えた層状珪酸塩の分散が難しいことから、有機化処理の適正化が重要と考えられる。
【0006】
また芳香族ポリアミドフィルム中に有機カチオンでイオン交換された層状珪酸塩を0.01〜50重量%分散させて、高剛性かつ耐熱性に優れた芳香族ポリアミドフィルムの製造方法が提案されているが(特許文献4)、開示されている方法では層状珪酸塩の分散性が不十分であり、更なる高分散化が求められている。
【特許文献1】特開平10−138332号公報
【特許文献2】特開2002−38035号公報
【特許文献3】特開2003−340919号公報
【特許文献4】特開2000−336186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は上述した従来のフィルムの問題を解決し、層状珪酸塩の均一分散により機械特性や熱寸法安定性の改善された芳香族ポリアミドフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の目的を達成するため以下の構成を採用する。すなわち本発明は、アルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化層状珪酸塩を芳香族ポリアミドに対して1〜12重量%含んでいる芳香族ポリアミドフィルムの製造方法であって、該フィルムは有機溶媒に溶解させた芳香族ジアミン溶液に、有機溶媒と上記の有機化層状珪酸塩とからなる分散体を添加した後、さらに芳香族ジ酸クロリドを添加して得た芳香族ポリアミド溶液を溶液製膜する芳香族ポリアミドフィルムの製造方法を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、機械特性や熱寸法安定性の改善された芳香族ポリアミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において用いる芳香族ポリアミドは、例えば、次の化学式(1)および/または化学式(2)の構造単位を50モル%以上含有しているポリマーを用いることができる。このような構造単位の含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは100モル%以下である。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
ここで、Ar、Ar、Arの基としては、例えば、
【0014】
【化3】

【0015】
などが挙げられ、X、Yは芳香環の結合基であって、−O−、−CH−、−CO−、−S−、−C(CH−などから選ばれるが、これらに限定されるものではない。さらに、これら芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素などのハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基(特にメチル基)、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基などの置換基で置換されていてもよく、また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。
【0016】
また、本発明に用いる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有している重合体が全芳香環の50モル%以上、より好ましくは70モル%以上であるとフィルムの剛性が高く、耐熱性も良好となるため好ましい。ここでパラ配向性とは、芳香環上の主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸または平行にある状態をいう。このようなパラ配向性の重合体の含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは100モル%以下である。
【0017】
また、本発明に用いる芳香族ポリアミドには、上記化学式(1)および/または化学式(2)の構造単位を50モル%以上含有していれば、50モル%未満の他の構造単位を共重合またはブレンドしていてもよい。
【0018】
また、本発明に用いる芳香族ポリアミドには、本発明の目的を阻害しない範囲で、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、無機または有機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核生成剤などが添加されていてもよい。
【0019】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは上記したような芳香族ポリアミドに対して、アルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化層状珪酸塩を1〜12重量%含んでいる。芳香族ポリアミドに対する上記の有機化層状珪酸塩の含有量は、フィルム特性と製膜性の点から、好ましくは3〜10重量%、より好ましくは3〜7重量%である。芳香族ポリアミドに対する層状珪酸塩の含有量が1重量%未満の場合は、目的とする機械特性や熱寸法安定性の向上効果が得られ難く、12重量%を超える場合は芳香族ポリアミドフィルムが脆くなることがある。
【0020】
本発明で用いる層状珪酸塩は、モンモリロナイト、サポナイト、パイデライト、ヘクトライト、スティプンサイトなどのスメクタイト系粘土鉱物や、バーミキュライト粘土鉱物、ハロサイト粘土鉱物、雲母などである。これらの層状珪酸塩は天然のものでも化学的に合成されたものでもよく、また複数の層状珪酸塩の混合物であってもよい。
【0021】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、上記した層状珪酸塩がアルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化層状珪酸塩を含んでいる。本発明に用いるアルキルアンモニウム塩は、少なくとも1つのアルキル基の炭素数が4〜30であることが好ましく、より好ましくは6〜20である。炭素数が4未満であると有機化処理による層状珪酸塩の層間拡大効果が不十分で分散性が低下することがあり、炭素数が30を超えると層状珪酸塩の有機化処理が不十分となることがある。
【0022】
本発明に用いる有機化層状珪酸塩は、例えば層状珪酸塩を水やケトン系有機溶媒などに十分溶媒和させた後、1〜10当量のアルキルアンモニウム塩を加えてイオン交換反応を行うなどの方法で得ることができる。
【0023】
本発明に用いる有機化層状珪酸塩の平均一次粒径は、好ましくは1〜7μmの範囲内、より好ましくは5〜7μmの範囲内である。ここで平均一次粒径とは、JIS−H7008(2002)において単一の結晶核の成長によって生成した粒子と定義される一次粒子の粒子径の平均である。また一次粒子の粒子径(以下、一次粒径と称する)とは、有機化層状珪酸塩の面内の長径と短径の平均値とする。このような平均一次粒径の測定については、JIS−H7804(2005)に従い、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率5千倍で試料を観察し、写真を用いて個々の一次粒子の長径と短径を測定し、その平均で一次粒径を求め、さらに一次粒子100個について同様の一次粒径の測定を行い、その平均値から平均一次粒径を求めることができる。有機化層状珪酸塩の平均一次粒径が1μm未満の場合には機械特性や熱寸法安定性の向上が十分でなく、逆に7μmを超える場合にはフィルム欠点となってフィルムの伸度を低下させることがある。
【0024】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムに含まれる有機化層状珪酸塩は、エチレンオキサイド基を含むアルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化層状珪酸塩であることが、より分散性に優れるという点で特に好ましい。これはエチレンオキサイド基特有の反応性が芳香族ポリアミドや有機溶媒との親和性を良好なものとし、有機化層状珪酸塩の分散性向上に寄与していると考えられる。
【0025】
上記した有機化層状珪酸塩が均一に分散した状態で芳香族ポリアミド中に含まれることにより、芳香族ポリアミドの分子鎖が有機化層状珪酸塩の層間に取り込まれ規則正しく配列するために、芳香族ポリアミドフィルムの機械特性や熱寸法安定性が向上するものと考えられる。
【0026】
本発明に用いる芳香族ポリアミドフィルムは、易滑性を付与することを目的として無機および/または有機粒子(以下、単にこれらを総称して粒子という。なお本発明では有機化層状珪酸塩とこれら粒子は区別して取り扱う)を含有してもよい。このような粒子としては、特に限定されないが、例えば、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック、ゼオライト粒子などの無機粒子や、アクリル粒子、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、“テフロン(登録商標)”粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋重合体粒子、コアシェル粒子などの有機粒子が挙げられ、これら粒子のいずれを用いてもあるいは複数種を併用してもよい。
【0027】
本発明に用いる粒子の平均一次粒径は、0.01〜1μmの範囲内であることが好ましい。ここで平均一次粒径とは、JIS−H7008(2002)において単一の結晶核の成長によって生成した粒子と定義される一次粒子の粒子径の平均である。また一次粒子の粒子径(以下、一次粒径と称する)とは、長径と短径の平均値とする。このような平均一次粒径の測定については、JIS−H7804(2005)に従い、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率5万倍で試料を観察し、写真を用いて個々の一次粒子の長径と短径を測定し、その平均で一次粒径を求め、さらに一次粒子100個について同様の一次粒径の測定を行い、その平均値から平均一次粒径を求めることができる。粒子の平均一次粒径が0.01μm未満の場合には粒子が凝集して粗大突起となりフィルム特性を低下させることがあり、逆に1μmを超える場合には添加量ほどの易滑性効果が得られない。粒子の平均一次粒径は、より好ましくは20〜200nmの範囲内、さらに好ましくは30〜100nmの範囲内である。なお粒子には、単分散粒子を用いても、複数の粒子が凝集した凝集粒子を用いてもよい。また、場合によっては平均一次粒径の異なる複数種の粒子を併用してもよい。また、粒子の添加量は、ポリマー組成や平均一次粒径、求められる易滑性や用途などによって適切に調節設計されるべきであるが、芳香族ポリアミドに対して0.1〜2重量%の範囲内が好ましく、より好ましくは0.1〜1重量%の範囲内である。
【0028】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは機械特性に優れる点から、少なくとも一方向のヤング率が10GPa以上であることが好ましく、12GPa以上であることがより好ましい。なお現実的な芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも一方向のヤング率の上限としては、あまり高すぎると他のフィルム特性を損なうことがあるため、20GPa程度と考えられる。少なくとも一方向のヤング率が10GPa以上の芳香族ポリアミドフィルムは、芳香族ポリアミドの組成について、芳香環がパラ配向性を有している重合体を全芳香環の50モル%以上としたり、本発明の特徴である有機化層状珪酸塩をポリマー中に均一分散させることなどで実現できる。また後述する芳香族ポリアミドフィルムの延伸によってもヤング率を高めることができる。
【0029】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの伸度は5%以上、より好ましくは10%以上であることが、適度な柔軟性を持つために好ましい。なお現実的な芳香族ポリアミドフィルムの伸度の上限としては、上記ヤング率を考慮して、100%程度と考えられる。伸度が5%以上の芳香族ポリアミドフィルムは、芳香族ポリアミドの組成について、芳香環がパラ配向性を有している重合体を全芳香環の0〜50モル%、より好ましくは5〜30モル%、さらに好ましくは10〜20モル%と減らす方法などで実現できる。
【0030】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの吸湿率は5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下であることが、吸湿による寸法変化を抑制できるため好ましい。なお現実的な芳香族ポリアミドフィルムの吸湿率の下限としては、1%程度と考えられる。吸湿率が5%以下の芳香族ポリアミドフィルムは、芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素などのハロゲン基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基などの置換基で置換されている芳香環、特にハロゲン基で置換されている芳香環を有する重合体を用いた芳香族ポリアミドで実現できる。
【0031】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、単層フィルムであっても共押出などによる積層フィルムであってもよいが、上記フィルム特性は、単層フィルム、積層フィルムを問わず満足することが好ましい。
【0032】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、例えば、次のような方法で製造できるが、これに限定されるものではない。
【0033】
まずジアミンと酸クロリドから芳香族ポリアミドを得る場合には、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)や、ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略す)、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)などの有機溶媒中で、溶液重合により合成される。このような溶液重合では低分子量物の生成を抑制するため、反応を阻害するような水やその他の物質の混入は避けるべきであり、効率的な攪拌手段をとることが好ましい。またモノマーの当量性は重要であるが、製膜性を損なう恐れのあるときは適当に調整することができる。また溶解助剤として塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、硝酸リチウムなどを添加してもよい。
【0034】
モノマーとして芳香族ジアミンと芳香族ジ酸クロリドを用いると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの周期律表I族かII族のカチオンと水酸化物イオン、炭酸イオンなどのアニオンとからなる塩に代表される無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤を使用すればよい。
【0035】
このとき中和剤として無機の炭酸塩を用いる場合には、塩化水素に対して93〜99モル%、特に94〜98.5モル%の中和剤で中和することが好ましく、また、中和時間は2時間以上が好ましく、特に3時間以上が好ましく、上限は10時間程度が適切である。塩化水素のモル濃度に対して過剰の炭酸塩で中和を行った場合は、過剰分の炭酸塩がポリマー溶液中に残存し、これが異物となって芳香族ポリアミドフィルムの機械特性や熱寸法安定性を低下させることがあり、逆に少な過ぎると塩化水素の中和が不充分でポリマー溶液の酸性度が強く製膜装置などを腐食させることがある。また塩化水素のモル濃度に対して等当量モル濃度の炭酸塩で中和を行った場合には、中和反応が完了するまでに長時間を要し、あまり長時間の中和を行っても期待したほどの効果が得られず、逆に生産性が悪くなる傾向がある。炭酸塩などによる塩化水素の中和は、それぞれ適切に決めるべきであるが、さらに残存する塩化水素を中和する場合には、有機の中和剤を用いることが好ましい。
【0036】
またフィルムの湿度特性を改善する目的で、塩化ベンゾイル、無水フタル酸、酢酸クロリド、アニリンなどを重合の完了したポリマー溶液に添加し、ポリマーの末端官能基を封鎖してもよい。
【0037】
本発明に用いる有機化層状珪酸塩の添加は、芳香族ポリアミドの重合前、すなわち有機溶媒に芳香族ジアミンを溶解させた芳香族ジアミン溶液に添加することが好ましい。重合後あるいは重合中の高粘度となったポリマー溶液に有機化層状珪酸塩を添加しても分散性が十分ではなく、重合前で低粘度の芳香族ジアミン溶液に有機化層状珪酸塩を添加して重合反応を行うことが好ましい。また芳香族ジアミン溶液に添加する有機化層状珪酸塩はあらかじめ有機溶媒と混合し、有機化層状珪酸塩/有機溶媒の分散体として添加する方法が分散性向上の点で好ましい。このような分散体として添加することにより、粉体で添加する場合よりも速やかに芳香族ジアミン溶液に有機化層状珪酸塩が拡散および分散するとともに、有機溶媒に添加した直後の有機化層状珪酸塩の凝集を抑制することができる。また有機化層状珪酸塩/有機溶媒の分散体は、攪拌式分散機や、ボールミル、サンドミル、超音波分散機などで分散性を向上させておくことも有効である。
【0038】
また本発明の芳香族ポリアミドフィルムに易滑性の付与を目的として粒子を添加する場合は、重合前後のいずれの工程で添加してもよいが、粒子の分散性向上や効率の点で上記有機化層状珪酸塩の場合と同様に、重合前の芳香族ジアミン溶液に添加することが好ましい。なおこれらの粒子も超音波ホモジナイザーなどを使って有機溶媒に分散させた粒子ゾルの状態で添加する方法が分散性向上の点で好ましい。この場合の粒子ゾルの粒子濃度は、粒子ゾルの安定性の点で2〜30重量%の範囲内であることが好ましい。
【0039】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムを得るためには、ポリマーの固有粘度(ポリマー0.5gを硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した値)は、0.5以上であることが好ましい。このようなポリマーの固有粘度の上限は特に限定されないが、製膜加工性の観点から5以下であることが好ましい。
【0040】
製膜に供するポリマー溶液としては、中和後のポリマー溶液をそのまま用いてもよいし、一旦単離したポリマーを硫酸などからなる無機溶媒や有機溶媒に再溶解したものを用いてもよい。
【0041】
上記ポリマー溶液は芳香族ポリアミドフィルムの機械特性や熱寸法安定性などフィルム特性低下の原因となるような異物を重合中あるいは製膜時に、金属や樹脂フィルターなどで除去しておくことが好ましい。このような金属フィルターとしては耐酸性に優れるニッケルや、チタン、ジルコニウム、タンタル、鉛の単体、およびそれら単体を主成分とする“インコネル”、“モネル”(International Nickel Co.社の商標名)、“ハステロイ”(Haynes Internationalの商標名)などの合金、不動体化された鉄あるいはステンレスなどの金属素材で構成されるフィルターなどを用いることができ、また樹脂フィルターとしては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、“テフロン(登録商標)”などのフッ素樹脂、活性炭、ガラスなどの非金属素材で構成されるフィルター、あるいは上記2種類以上を組み合わせたフィルターなどを用いることができる。またフィルターの濾過精度は、有機化層状珪酸塩の平均一次粒径やポリマー溶液の粘度などによって適宜調整されるが30μm以下が好ましいと考えられる。なおフィルターの濾過精度は小さい方が好ましい方向ではあるが、あまりに小さ過ぎるとフィルターの目詰まりが早く生産性が悪くなるため10μm程度が適切であると考えられる。
【0042】
また芳香族ポリアミドの重合中、重合槽内への異物混入を避けるために重合槽内にポリマー溶液に対して不活性なガスを流し込み、重合槽内の圧力を大気圧より高くする方法も有効である。
【0043】
また上記したように、本発明の目的を阻害しない範囲で、芳香族ポリアミドフィルムに、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、核生成剤などの無機および/または有機の添加剤を重合ポリマーにブレンドさせてもよい。
【0044】
またポリマー溶液中のポリマー濃度は2〜40重量%であることが好ましい。ポリマー濃度が2重量%未満の場合は生産性が悪く、十分な機械特性のフィルムが得られないなどの問題が生じることがあり、逆にポリマー濃度が40重量%を超える場合はポリマー溶液が高粘度となって溶液キャスト性が悪化するなどの問題が生じやすいためである。
【0045】
次に、本発明の芳香族ポリアミドフィルムの製膜方法について説明する。
【0046】
上記のように調製されたポリマー溶液の製膜方法としては、乾湿式法、湿式法、半乾半湿式法の溶液製膜法が挙げられ、いずれの製膜方法でフィルム化してもよいが、生産性の観点から乾湿式法が好ましく、以下、乾湿式法を例にとって説明する。
【0047】
上記ポリマー溶液を口金からドラムやエンドレスベルトなどの支持体上にキャストして、熱風乾燥によりキャスト薄膜中の有機溶媒を飛散させて乾燥を行う。
【0048】
このとき溶媒の乾燥速度は3〜30重量%/分で乾燥することが好ましい。脱溶媒速度が3重量%/分未満では生産性が悪く、また、脱溶媒速度が30重量%/分を超えると急激な溶媒蒸発でフィルム表面が粗れることがある。また乾燥温度は100〜210℃であることが好ましく、より好ましくは120〜180℃である。また乾燥時間は、2〜12分が好ましく、より好ましくは5〜10分である。
【0049】
次に乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて、湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれる。この湿式工程を通す前のゲルフィルムを延伸すると、ゲルフィルム中の有機化層状珪酸塩が延伸方向に配向しやすく、芳香族ポリアミドフィルムとした際の機械特性や熱寸法安定性がさらに向上するため好ましい。このようなゲルフィルムの延伸倍率はポリマー組成や有機化層状珪酸塩などの添加剤によって適宜調整されるが、1.1〜5倍の範囲内が好ましく、より好ましくは1.2〜3倍の範囲内である。ゲルフィルムの延伸倍率が1倍未満の場合は、さらなるフィルム特性の向上効果が見られず、逆に5倍を超える場合は延伸工程中でフィルムが破れやすく生産性が低下しやすい。ここで湿式工程の溶媒は一般的に水系であるが、水の他に少量の無機や有機溶媒あるいは無機塩などを含んでいてもよい。なお溶媒温度は通常0〜100℃で使用される。さらに必要に応じて湿式工程中でフィルムを長手方向に延伸してもよい。
【0050】
この後、延伸、熱処理が行なわれて芳香族ポリアミドフィルムとなる。
【0051】
延伸温度は200〜400℃の温度範囲内で行うことがフィルムの機械特性向上に有効であり、より好ましくは220〜350℃、さらに好ましくは240〜300℃であり、幅方向の延伸倍率は0.9〜3倍の範囲内とすることが好ましい。幅方向の延伸倍率が0.9倍未満の場合には、製膜の安定性は向上するものの優れた機械物性のフィルムが得られ難い。また、幅方向の延伸倍率が3倍を超える場合には、フィルム破れが多発するなど製膜が不安定となり、帯電防止層にクラックが生じて帯電防止性が悪くなる懸念がある。幅方向の延伸倍率は、より好ましくは1〜2倍の範囲内である。なお延伸倍率とは、延伸後のフィルム幅を延伸前のフィルム幅で除した値で定義する。
【0052】
また、フィルムの延伸中あるいは延伸後に熱処理が行なわれるが、熱処理温度は200〜300℃の範囲内にあることがフィルムの寸法安定性を向上させる点で好ましい。
【0053】
さらに、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することが、フィルムの平面性を向上させるために有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが有効である。
【0054】
上記したように、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは単層フィルムでも、積層フィルムでもよく、積層フィルムとする場合には、例えば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいてその上に他の層を形成する方法などを用いればよい。
【0055】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの厚みは用途により適宜調節されるが、3〜20μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜15μmの範囲内である。芳香族ポリアミドフィルムの厚みが3μmを下回ると薄すぎてハンドリング性が悪化したり、機械特性が低下するなどの問題が生じることがあり、逆に20μmを超えると耐屈曲性が悪化するなどの問題が生じることがある。
【0056】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの280℃での熱寸法変化率は0.01〜1%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.7%である。芳香族ポリアミドフィルムの280℃での熱寸法変化が1%を超えると、例えばフレキシブル回路基板用の基材フィルムとして使用した場合に、半田リフロー時の熱寸法変化で配線パターンが変形したり欠落する可能性がある。
【0057】
芳香族ポリアミドフィルムの280℃での熱寸法変化率を上記範囲内とする方法は、パラ配向性の芳香環を有する重合体の割合を50モル%以上としてポリマーの耐熱性を高める方法や、有機化層状珪酸塩を均一分散してポリマーの熱運動を抑制する方法、製膜時のゲルフィルムを延伸して有機化層状珪酸塩の配向度合いを高める方法などがある。
【0058】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、機械特性と耐熱性に優れることから、フレキシブル回路基板用途や、磁気テープ、離型フィルム、耐熱粘着ベースフィルム、太陽電池基板などの用途で好適に使用でき、特にその特長を活かしてフレキシブル回路基板用とでの使用が好ましい。
【0059】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも一方の面に金属層を設けてフレキシブル回路基板とする場合には、例えば次のような方法で製造することができる。
まず金属層を形成する金属は、導電性に優れる金属から構成されていれば特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、SUS、コバルト、亜鉛、金などから選ばれる単独あるいは複数の合金を挙げることができ、これらの中では電気特性に優れる点で銅が好ましい。
【0060】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムに金属層を設ける方法としては、特に限定されないが、接着剤を介して銅箔などの金属層を貼り合わせるラミネート法でも、上記金属を蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、化学気相成長法(CVD)などの気相で薄膜を形成した後、電解メッキ法で銅層などを形成するメッキ法でもよい。また、金属層は同種または異種の金属で多層構造を形成していてもよい。
【0061】
金属層の厚みは特に限定されないが、1〜20μmの範囲内が好ましい。金属層の厚みが1μm未満であるとピンホールが発生し易く、20μmを超えると高精細の配線パターンを形成し難くなる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
なお物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0064】
(1)分散性
有機化層状珪酸塩を含む芳香族ポリアミドを溶液製膜して、得られたフィルム表面を倍率340倍の光学顕微鏡で観察し(1視野面積:0.28×0.21mm)、長径が5μmを超える3視野合計の粗大突起個数から以下の評価基準で分散性を表した。
【0065】
◎:粗大突起が見られない
○:粗大突起が1〜9個
×:粗大突起が10個以上
(2)引張りヤング率、破断伸度、破断強度
オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”を用いて、幅10mm、長さ150mmに切断したフィルムをチャック間距離50mmの装置にセットして、引張速度300mm/分、温度23℃、相対湿度65%の条件下で引張試験を行い、得られた荷重−伸び曲線の立ち上がり部の接線から引張りヤング率を求めた。また、フィルム破断時の長さからチャック間距離を減じたものをチャック間距離で除したものに100を乗じて破断伸度とした。また、フィルム破断時の応力を破断強度とした。
【0066】
(3)寸法変化率
セイコーインスツルメンツ社製の熱・応用・歪み測定装置TMA/SS6000を用いて以下の条件で測定し、280℃での寸法変化率を求めた。
【0067】
試料サイズ:幅4mm、長さ15mm
昇温範囲:25〜400℃
昇温速度:10℃/分
測定荷重:1.11N/mm(例えば厚み4μm、幅4mmのフィルムの場合、測定荷重17.8mN)
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中
280℃での寸法変化率は、温度25℃、相対湿度65%における初期のフィルム長さをL1(=15mm)、温度280℃におけるフィルム長さをL2とし、以下の式で求めた。
【0068】
280℃での寸法変化率(%)=((L2−L1)/L1)×100
(4)吸湿率
フィルム約0.5gサンプリングし、脱湿のため200℃で2時間の加熱を行った後に、窒素ガスを導入して除冷するなど吸湿しないように25℃まで降温して、芳香族ポリアミドフィルムの重量を測定した(この時の重量をW0とする)。次いで芳香族ポリアミドフィルムを、25℃、相対湿度75%の雰囲気下に48時間静置し、その後の重量を測定して(この時の質量をW1とする)、以下の式で吸湿率を求めた。
【0069】
吸湿率(%)=((W1−W0)/W1)×100
(実施例1)
(有機化層状珪酸塩/有機溶媒の分散体の調製)
脱水したN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)に、エチレンオキサイド基含有アルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化雲母(コープケミカル株式会社製“ソマシフ”S1MEE、平均一次粒径1〜3μm、以下雲母Aと略す)をゆっくり添加攪拌して、有機化層状珪酸塩の濃度が10重量%となるように有機化層状珪酸塩/有機溶媒の分散体を調製した。
【0070】
(芳香族ポリアミドの重合)
脱水したNMPに、85モル%に相当する2−クロルパラフェニレンジアミン(以下、CPAと略す)と15モル%に相当する4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、DPEと略す)を溶解させ、これに有機化層状珪酸塩の添加量が芳香族ポリアミドに対して3重量%となるように有機化層状珪酸塩/有機溶媒の分散体を添加攪拌した。これに98.5モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロリドを添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い重合ポリマーを得た。
【0071】
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して5時間の中和を行い、さらに重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10重量%のポリマー溶液を得た。
【0072】
(芳香族ポリアミドフィルムの製膜)
アプリケーターでポリマー溶液をガラス板上にキャストして、120℃の熱風オーブンで7分間乾燥させた後、自己保持性を得たゲルフィルムをガラス板から剥離した。この時のゲルフィルムのポリマー濃度は43重量%であった。
【0073】
次に、ゲルフィルムの四方を金属枠に固定して、水槽内で10分間の残存溶媒や中和で生じた無機塩、有機アミンの水抽出を行った。
【0074】
次に、水抽出後の含水フィルム両面の水分をガーゼで拭き取り、金枠に固定したまま300℃のオーブンで1分間熱処理した。
【0075】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0076】
(実施例2)
雲母Aの添加量を芳香族ポリアミドに対して5重量%とすること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0077】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0078】
(実施例3)
エチレンオキサイド基含有アルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化雲母(コープケミカル株式会社製“ソマシフ”MEE、平均一次粒径5〜7μm、以下雲母Bと略す)を芳香族ポリアミドに対して3重量%とすること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0079】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0080】
(実施例4)
雲母Bの添加量を芳香族ポリアミドに対して5重量%とすること以外は実施例3と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0081】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す、
(実施例5)
雲母Bの添加量を芳香族ポリアミドに対して7重量%とすること以外は実施例3と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0082】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す、
(実施例6)
オキシプロピレン基含有アルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化雲母(コープケミカル株式会社製“ソマシフ”S1MPE、平均一次粒径1〜3μm、以下雲母Cと略す)を芳香族ポリアミドに対して3重量%とすること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0083】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0084】
(実施例7)
雲母Cの添加量を芳香族ポリアミドに対して5重量%とすること以外は実施例6と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0085】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す、
(実施例8)
オキシプロピレン基含有アルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化雲母(コープケミカル株式会社製“ソマシフ”MPE、平均一次粒径5〜7μm、以下雲母Dと略す)を芳香族ポリアミドに対して3重量%とすること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0086】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0087】
(実施例9)
雲母Dの添加量を芳香族ポリアミドに対して5重量%とすること以外は実施例8と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0088】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す、
(実施例10)
雲母Dの添加量を芳香族ポリアミドに対して7重量%とすること以外は実施例8と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0089】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す、
(実施例11)
エチレンオキサイド基含有アルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化スメクタイト(コープケミカル株式会社製“ルーセンタイト”S1SEN、平均一次粒径1〜3μm、以下スメクタイトAと略す)を芳香族ポリアミドに対して3重量%とすること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0090】
この芳香族ポリアミドフィルムの特性を表1、2に示す。
【0091】
(実施例12)
オキシプロピレン基含有アルキルアンモニウム塩で有機化処理された有機化スメクタイト(コープケミカル株式会社製“ルーセンタイト”S1SPN、平均一次粒径1〜3μm、以下スメクタイトBと略す)を芳香族ポリアミドに対して3重量%とすること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0092】
この芳香族ポリアミドフィルムの特性を表1、2に示す。
【0093】
(実施例13)
実施例1と同様にして得た芳香族ポリアミドをアプリケーターでガラス板上にキャストして、120℃の熱風オーブンで7分間乾燥させた後、自己保持性を得たゲルフィルムをガラス板から剥離した。この時のゲルフィルムのポリマー濃度は43重量%であった。
【0094】
次に手動1軸延伸装置を使い、ゲルフィルムの両端をクリップで把持して1.2倍の1軸延伸を行った。
【0095】
次に延伸したゲルフィルムの両端を手動1軸延伸装置に固定したまま、水槽内で10分間の残存溶媒や中和で生じた無機塩、有機アミンの水抽出を行った。
【0096】
次に、水抽出後の含水フィルム両面の水分をガーゼで拭き取り、手動1軸延伸装置に固定したまま300℃のオーブンで1分間熱処理した。
【0097】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0098】
(実施例14)
実施例2と同様にして得た芳香族ポリアミドを用いること以外は実施例13と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0099】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0100】
(実施例15)
実施例3と同様にして得た芳香族ポリアミドを用いること以外は実施例13と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0101】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0102】
(実施例16)
実施例4と同様にして得た芳香族ポリアミドを用いること以外は実施例13と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0103】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0104】
(実施例17)
実施例5と同様にして得た芳香族ポリアミドを用いること以外は実施例13と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0105】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0106】
(実施例18)
実施例6と同様にして得た芳香族ポリアミドを用いること以外は実施例13と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0107】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0108】
(実施例19)
実施例7と同様にして得た芳香族ポリアミドを用いること以外は実施例13と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0109】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0110】
(実施例20)
実施例8と同様にして得た芳香族ポリアミドを用いること以外は実施例13と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0111】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0112】
(実施例21)
実施例9と同様にして得た芳香族ポリアミドを用いること以外は実施例13と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0113】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0114】
(実施例22)
実施例12と同様にして得た芳香族ポリアミドを用いること以外は実施例13と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0115】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0116】
(比較例1)
有機化層状珪酸塩を芳香族ポリアミドに添加しないこと以外は実施例1と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0117】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0118】
(比較例2)
比較例1と同様にして得た芳香族ポリアミドを用い、実施例13と同様にして延伸された芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0119】
この延伸された芳香族ポリアミドフィルム特性を表1、2に示す。
【0120】
(比較例3)
雲母Aの添加量を芳香族ポリアミドに対して0.5重量%とすること以外は実施例1と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0121】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0122】
(比較例4)
雲母Aの添加量を芳香族ポリアミドに対して20重量%とすること以外は実施例1と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0123】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0124】
(比較例5)
(有機化層状珪酸塩の調製)
モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製“クニピア”F)を水に分散し、これにn−ドデシルトリメチルアンモニウムクロリドを加えて、室温で1時間攪拌した。次に有機化処理したモンモリロナイト/水の懸濁液を1μmカットのメンブレンフィルターで吸引濾過し、100℃で24時間減圧乾燥して有機化モンモリロナイトナイト(以下、モンモリロナイトAと略す)を得た。
【0125】
(有機化層状珪酸塩/有機溶媒の分散体の調製)
脱水したNMPに、上記モンモリロナイトAをゆっくり添加攪拌して、有機化層状珪酸塩の濃度が10重量%となるように有機化層状珪酸塩/有機溶媒の分散体を調製した。
【0126】
(芳香族ポリアミドの重合と製膜)
有機化層状珪酸塩にモンモリロナイトAを用いること以外は実施例1と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0127】
(実施例23)
雲母Bの添加量を芳香族ポリアミドに対して2重量%とすること以外は実施例3と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0128】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0129】
(実施例24)
雲母Bの添加量を芳香族ポリアミドに対して10重量%とすること以外は実施例3と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0130】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0131】
(実施例25)
雲母Bの添加量を芳香族ポリアミドに対して12重量%とすること以外は実施例3と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0132】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0133】
(比較例6)
(有機化層状珪酸塩の調製)
水に分散させた膨潤性マイカゾル(トピー工業株式会社製NTS−5、平均一次粒径11μm)に、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロリドを加えて、室温で1時間攪拌した。次に有機化処理した膨潤性マイカゾルを、1μmカットのメンブレンフィルターを用いた吸引濾過で濾別し、100℃で24時間減圧乾燥して有機化雲母(以下、雲母Eと略す)を得た。
【0134】
(有機化層状珪酸塩/有機溶媒の分散体の調製)
脱水したNMPに上記雲母Eをゆっくり添加攪拌して、雲母Eの濃度が10重量%となるように調製した。
【0135】
(芳香族ポリアミドの重合と製膜)
雲母Eの添加量を芳香族ポリアミドに対して5重量%とすること以外は実施例1と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0136】
(比較例7)
雲母Bの添加量を芳香族ポリアミドに対して14重量%とすること以外は実施例3と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0137】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0138】
(比較例8)
有機化処理が施されていない膨潤性雲母(コープケミカル株式会社製“ソマシフ”ME100、平均一次粒径5〜7μm、以下雲母Fと略す)を芳香族ポリアミドに対して5重量%とすること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0139】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0140】
(比較例9)
以下の手順に示す通り、重合後の芳香族ポリアミドポリマー溶液に雲母Bを後添加すること以外は実施例4と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0141】
(芳香族ポリアミドの重合)
脱水したNMPに、85モル%に相当するCPAと15モル%に相当するDPEを溶解させ、これに98.5モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロリドを添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い重合ポリマーを得た。
【0142】
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して5時間の中和を行い、さらに重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10重量%のポリマー溶液を得た。
【0143】
(有機化層状珪酸塩/有機溶媒の分散体の調製)
脱水したNMPに雲母Bをゆっくり添加・攪拌して、有機化層状珪酸塩の濃度が10重量%となるように有機化層状珪酸塩/有機溶媒の分散体(以下雲母B分散体と略す)を調製した。
【0144】
(芳香族ポリアミドと雲母B分散体の混合)
芳香族ポリアミドに対する雲母Bの添加量が5重量%となるように量り取った雲母B分散体を、ウォーターバスで60℃に恒温したポリマー溶液にゆっくり添加し、3段十字攪拌翼(60rpm)で3時間の混合を行った。
【0145】
(芳香族ポリアミドフィルムの製膜)
上記雲母Bを後添加したポリマー溶液を用いること以外は実施例1と同様にして芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0146】
この芳香族ポリアミドフィルムのフィルム特性を表1、2に示す。
【0147】
【表1】

【0148】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルアンモニウム塩で有機化処理された平均一次粒径1〜7μmの有機化層状珪酸塩を芳香族ポリアミドに対して1〜12重量%含んでいる芳香族ポリアミドフィルムの製造方法であって、有機溶媒に溶解させた芳香族ジアミン溶液に、有機溶媒と上記の有機化層状珪酸塩とからなる分散体を添加した後、さらに芳香族ジ酸クロリドを添加して得た芳香族ポリアミド溶液を溶液製膜する芳香族ポリアミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
有機化層状珪酸塩がエチレンオキサイド基を含むアルキルアンモニウム塩で有機化処理されている、請求項1に記載の芳香族ポリアミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
有機化層状珪酸塩を含む芳香族ポリアミド溶液を支持体上にキャストした後、乾燥し、得られたゲルフィルムを少なくとも一方向に延伸する工程を含んでいる、請求項1または2に記載の芳香族ポリアミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により得られる芳香族ポリアミドフィルムであって、少なくとも一方向のヤング率が10〜20GPa、かつ280℃における熱寸法変化率が0.01〜1%である芳香族ポリアミドフィルム。

【公開番号】特開2008−265316(P2008−265316A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75137(P2008−75137)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】