説明

草刈機

【課題】 モーアを連結した走行機体の後部に、ラジエータを前方に位置させた水冷式のエンジンを搭載し、走行機体の前後中間に配置された運転座席の後方からラジエータへの冷却用外気を取り込むよう構成した草刈機において、運転座席とラジエータとの間隔を大きくすることなく防塵網の吸気面積を増大して早期の目詰まりなく連続作業を行えるようにする。
【解決手段】 ラジエータ6の前部に箱形に構成された除塵網16を配備して、この除塵網16を通過した清浄外気をラジエータ6に導くよう構成するとともに、この除塵網16の横側部を後方あるいは前方に延出してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーアを連結した走行機体の後部に、ラジエータを前方に位置させた水冷式のエンジンを搭載し、走行機体の前後中間に配置された運転座席の後方からラジエータへの冷却用外気を取り込むよう構成した草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記草刈機としては、ラジエータの前部に箱形に構成された除塵網を配備して、この除塵網を通過した清浄外気をラジエータに導くよう構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−154857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように構成された草刈機においては、機体全長を短くするためにエンジンを極力前方に位置させて配置しているために、運転座席とラジエータとの間隔は小さいものになり勝ちであり、この間隔に配備される箱型防塵網の吸気面積を大きく確保することが困難なものとなっていた。このために、防塵網を通過する冷却風の風速が早くなり、浮塵の多い作業環境においては浮塵が防塵網に吸引付着されて早期に目詰まり状態になることがあった。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、運転座席とラジエータとの間隔を大きくすることなく防塵網の吸気面積を増大して早期の目詰まりなく連続作業を行えるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係るは、モーアを連結した走行機体の後部に、ラジエータを前方に位置させた水冷式のエンジンを搭載し、走行機体の前後中間に配置された運転座席の後方から前記ラジエータへの冷却用外気を取り込むよう構成した草刈機において、
ラジエータの前部に箱形に構成された除塵網を配備して、この除塵網を通過した清浄外気をラジエータに導くよう構成するとともに、この除塵網の横側部を前後方向に延出してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、除塵網の横側部に形成した延出部の表面を網面にすることで除塵網全体としての吸気面積を増大することができ、その分、防塵網を通過する冷却風の風速を抑制することができる。
【0007】
従って、第1の発明によると、運転座席とラジエータとの間隔を大ききしなくても防塵網の吸気面積を増大して早期の目詰まりなく連続作業を行うことが可能となった。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記除塵網の横側部を前記ラジエータの側部後方にまで延出してあることを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、除塵網の後方延出部は運転座席から後方に離れた箇所に位置するので、吸気騒音が運転者に届きにくく、第1の発明の上記効果をもたらすとともに、運転環境を悪化させることがない。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、
前記除塵網の後方た延出部を、エンジンボンネットの側面に切欠き形成した凹部に臨設してあることを特徴とする。
【0011】
上記構成によると、エンジンボンネットの側面の凹部に臨設された除塵網の後方延出部から冷外気を直接に吸引することができ、効率の良い冷却を行うことができる。
【0012】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
エンジンルームと前記ラジエータの前部とを隔絶する仕切り板を固定配備するとともに、仕切り板の横側部位を後方に延出し、この仕切り板の横側部位に前記除塵網の前記後方延出部を接続してあることを特徴とする。
【0013】
上記構成によると、エンジンルームの熱気が除塵網に吸引されるのを仕切り板が阻止して効率の良い冷却を行うことができる。
【0014】
第5の発明は、上記第1の発明において、
前記除塵網の横側部を前記運転座席の横外側まで延出してあることを特徴とする。
【0015】
上記構成によると、運転座席の後方に配備されるエンジンボンネットを改造することなく、除塵網の吸気面積を拡大することができる。
【0016】
第6の発明は、上記第5の発明において、
前記除塵網の前方延出部の上面を前下がり傾斜させてあることを特徴とする。
【0017】
上記構成によると、運転座席に着座した運転者の肘が除塵網の前方延出部に接触するようなことなく、除塵網の吸気面積を拡大することができ、第1の発明の上記効果をもたらすとともに、操縦操作性を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に本発明に係る草刈機の側面が、また、図2にその平面がそれぞれ示されている。この草刈機は、向き固定の前輪1と操向可能な後輪2を備えた四輪駆動型の走行機体3の前部に、3ブレード型のモーア4が油圧駆動されるリフトアーム5を介して昇降可能に連結して構成されている。
【0019】
前記走行機体3の後部には、ラジエータ6を前方に位置させた水冷式のエンジン7が搭載されて、後部支点a周り上下に揺動開閉可能なエンジンボンネット8で覆われるとともに、走行機体3の前後中間部位に運転座席9およびアーチ形の転倒保護フレーム10が配備され、さらに、走行機3体の前部に後輪2を操向するステアリングハンドル11が配備されており、エンジン7からの出力が機体前部のミッションケース12に入力され、適宜変速されて前輪1に伝達されるとともに、ミッションケース12内で分岐された走行系動力が伝動軸13を介して後輪2に伝達されるようになっている。
【0020】
本発明は、上記構成の草刈機におけるエンジン冷却構造に特徴を有しており、その例のいくつかを以下に説明する。
【0021】
〔第1例〕
【0022】
図3〜6に、エンジン冷却構造の第1例が示されている。図示のように、ラジエータ6とエンジン7との間にはエンジン動力で駆動される冷却ファン15が配備され、運転座席9の後方から外気を吸引してラジエータ6に導くよう構成されるとともに、ラジエータ6の前部には箱型の防塵網16が配備され、この防塵網16を通過して浄化された外気を冷却風としてラジエータ6に吸引供給するようになっている。
【0023】
前記ラジエータ6の背面には、前記冷却ファン15を囲むファンシュラウド17が設けられるとともに、ボンネット内を前後に区画する仕切り板18がファンシュラウド17に取付けられ、エンジンルーム19の熱気がラジエータ6の前方に逆流することが阻止されている。そして、仕切り板18の左右横側部位18aが、ラジエータ6から後方に突出するように屈曲延出されている。
【0024】
前記防塵網16の左右両横側部が仕切り板18の形状に対応して後方に延出され、防塵網16の後方延出部16aが仕切り板18の横側部位18aに接続されることで、防塵網16の平面視での全体形状が後向きに開放されたコの字状に形成されて吸気面積の増大が図られている。そして、コの字状に構成された防塵網16の全体横幅はエンジンボンネット8の前部横幅と同等に設定されており、エンジンボンネット8における左右側面の前部に切欠き形成した凹部8aに防塵網16の後方延出部16aが臨設され、後方延出部16aの横外側面から外気が直接吸引されるようになっている。
【0025】
上記のように構成された防塵網16は上方に引き外すことが可能となっており、これによってラジエータ6への注水や防塵網16の清掃が可能となっている。
【0026】
なお、前記防塵網16の吸気面積を増大する上からは前記後方延出部16aをできるだけ大きくすることが望ましいが、図7に示すように、仕切り板18の横側部位18aをラジエータ6よりも斜め後方に延出して防塵網16を接続することによっても吸気面積の増大に充分有効となる。
【0027】
〔第2例〕
【0028】
図8,9にエンジン冷却構造の第2例が示されている。この例では前記防塵網16の全体横幅がエンジンボンネット8の前端横幅と同等に設定されるとともに、その左右両横側部が運転座席9の横外側まで延出されて、防塵網16の吸気面積の増大が図られている。また、この防塵網16における前方延出部16bの上面Sが前下がり傾斜されて、運転座席9への乗り降りや着座状態での肘の移動の妨げにならないようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】草刈機の全体側面図
【図2】草刈機の全体平面図
【図3】冷却用外気取り入れ構造の側面図
【図4】冷却用外気取り入れ構造の平面図
【図5】冷却用外気取り入れ構造の背面図
【図6】防塵網の斜視図
【図7】冷却用外気取り入れ構造の変形例を示す平面図
【図8】別実施例の冷却用外気取り入れ構造を備えた草刈機の全体側面図
【図9】別実施例の冷却用外気取り入れ構造を備えた草刈機の全体平面図
【符号の説明】
【0030】
3 走行機体
4 モーア
6 ラジエータ
7 エンジン
8 エンジンボンネット
9 運転座席
16 防塵網
16a 後方延出部
16b 前方延出部
18 仕切り板
18a 横側部位
19 エンジンルーム
s 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーアを連結した走行機体の後部に、ラジエータを前方に位置させた水冷式のエンジンを搭載し、走行機体の前後中間に配置された運転座席の後方から前記ラジエータへの冷却用外気を取り込むよう構成した草刈機において、
ラジエータの前部に箱形に構成された除塵網を配備して、この除塵網を通過した清浄外気をラジエータに導くよう構成するとともに、この除塵網の横側部を前後方向に延出してあることを特徴とする草刈機。
【請求項2】
前記除塵網の横側部を前記ラジエータの側部後方にまで延出してあることを特徴とする請求項1記載の草刈機。
【請求項3】
前記除塵網の後方延出部を、エンジンボンネットの側面に切欠き形成した凹部に臨設してあることを特徴とする請求項2記載の草刈機。
【請求項4】
エンジンルームと前記ラジエータの前部とを隔絶する仕切り板を固定配備するとともに、仕切り板の横側部位を後方に延出し、この仕切り板の横側部位に前記除塵網の前記後方延出部を接続してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の草刈機。
【請求項5】
前記除塵網の横側部を前記運転座席の横外側まで延出してあることを特徴とする請求項1記載の草刈機。
【請求項6】
前記除塵網の前方延出部の上面を前下がり傾斜させてあることを特徴とする請求項5記載の草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−37779(P2006−37779A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216064(P2004−216064)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】