説明

荷台防振構造における衝突時荷台保持構造

【課題】車両が衝突した際に、荷台が車両から脱落することを防止する荷台防振構造を提供する。
【解決手段】キャブ7後方の車両本体2上に、荷台4の前端部を、ヒンジ12を介して車幅方向に延びる軸回りに回動自在に設けると共に、荷台4の後端部を上下の振動を吸収するバネ13を介して設けた荷台防振構造における衝突時荷台保持構造において、荷台4に、荷台4の前方移動を抑制するための前後に延びる前後方向用シート16の前端部を取り付けると共に車両本体2に前後方向用シート16の後端部を前後方向用シート16にたるみを持たせるように取り付け、荷台4の後端部に、荷台4の上方移動を抑制するための上下に延びる上下方向用シート17の上端部を取り付けると共に、車両本体2に上下方向用シート17の下端部を上下方向用シート17にたるみを持たせるように取り付けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台防振構造における衝突時荷台保持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前端部にヒンジ構造、後端部にバネを設けたことを特徴とするトラックの荷台防振構造には図4に示すものがある。図4に示すように、前端部のヒンジ12は車両幅方向に延びる軸を中心として荷台4を回動可能に支持し、後端部のエアバネ13は荷台4からの上下方向の荷重を受けるものである。また、荷台4は軽量化のためハニカム材で作られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−1345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の荷台防振構造においては、荷台4を機械的に拘束するのはヒンジ12のみであるため、車両が衝突した場合、衝突のエネルギーをヒンジ12で吸収する必要があり、ヒンジ12の機械的な強度を高めておく必要があった。このため、ヒンジ12が大きく重くなってしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、車両が衝突した際に、荷台が車両から脱落することを防止する荷台防振構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、キャブ後方の車両本体上に、荷台の前端部を、ヒンジを介して車幅方向に延びる軸回りに回動自在に設けると共に、荷台の後端部を上下の振動を吸収するバネを介して設けた荷台防振構造における衝突時荷台保持構造において、前記荷台に、荷台の前方移動を抑制するための前後に延びる前後方向用シートの前端部を取り付けると共に前記車両本体に前記前後方向用シートの後端部を前後方向用シートにたるみを持たせるように取り付け、前記荷台の後端部に、荷台の上方移動を抑制するための上下に延びる上下方向用シートの上端部を取り付けると共に、前記車両本体に前記上下方向用シートの下端部を上下方向用シートにたるみを持たせるように取り付けたものである。
【0007】
前記荷台が、ハニカム材と、該ハニカム材の上面に設けられた上板と、前記ハニカム材の下面に設けられた下板とを備え、前記前後方向用シートの前端部が前記下板にリベットにて取り付けられるとよい。
【0008】
また、前記上下方向用シートの上端部が前記上板にリベットにて取り付けられるとよい。
【0009】
前記上下方向用シートの下端部は、前記バネと前記車両本体との間に挟み込まれて車両本体の上面に固定されるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両が衝突した際に、荷台が車両から脱落することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の実施の形態を示す衝突時荷台保持構造の斜視説明図である。
【図2】図2は荷台と荷台に取り付けた前後方向用シートと上下方向用シートの側面断面図である。
【図3】図3は図1の平面説明図である。
【図4】図4は本発明の前提となる荷台防振構造の側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図4に示すように、車両たるトラック1は、車両本体2と、車両本体2に防振装置3を介して設けられた荷台4と、車両本体2に荷台4を覆うように設けられたボデー5とを備える。
【0013】
車両本体2は、シャシフレーム6と、シャシフレーム6の走行方向前端部に設けられたキャブ7と、シャシフレーム6に図示しない懸架装置を介して設けられた走行輪8とを備える。
【0014】
図2に示すように、荷台4は、平面視矩形状に形成されたハニカム材9と、ハニカム材9の上面に設けられた上板10と、ハニカム材9の下面に設けられた下板11とを備える。ハニカム材9、上板10及び下板11は、それぞれアルミニウム等の軽金属からなる。ハニカム材9は、断面六角形の中空穴が上下に延びるように配置されている。荷台4は、軽金属からなるハニカム構造とされることで軽量化されると共に、固有振動数を高くされ、車両本体2の振動の影響を受けにくいようになっている。
【0015】
図4に示すように、防振装置3は、キャブ7後方の車両本体2のシャシフレーム6上に設けられ荷台4の前端部を車幅方向に延びる軸回りに回動自在に設けるためのヒンジ12と、車両本体2のシャシフレーム6の後端部に設けられ車両本体2から荷台4の後端部に伝わる上下方向の振動を吸収するためのバネ13と、車両本体2のシャシフレーム6の後端部に設けられ荷台4の振動を減衰するためのショックアブソーバ14とを備える。バネ13はエアバネからなり、車両本体2の左右両側にそれぞれ設けられる。ショックアブソーバ14はエア式であり、車両本体2の左右両側にバネ13と並列にそれぞれ設けられる。
【0016】
図1及び図3に示すように、車両本体2と荷台4との間には、車両衝突時に荷台4を車両本体2から脱落させないように保持するための荷台保持手段15が設けられる。
【0017】
荷台保持手段15は、車両衝突時に荷台4が車両前方に移動するのを抑制するための前後方向用シート16と、車両横転時に荷台4が上方向に移動(ヒンジ12を中心として過度に回動)するのを抑制するための上下方向用シート17とからなる。
【0018】
前後方向用シート16と上下方向用シート17は、それぞれナイロン素材のものを織ったシートまたは金属メッシュなどの引っ張り強度に優れるシートからなる。
【0019】
前後方向用シート16は、車両本体2と荷台4との間に前後に延びるように配置されており、荷台4に前端部を取り付けられると共に、車両本体2のシャシフレーム6に後端部を前後方向用シート16にたるみを持たせるように取り付けられる。荷台4に対する前後方向用シート16の取り付けは、荷台4の下板11に前後方向用シート16を複数のブラインドリベット18にて締結することで荷台4の底面になされる。また、前後方向用シート16は、シャシフレーム6の上面に複数のリベット19にて取り付けられる。
【0020】
上下方向用シート17は、上下に延びるように配置されており、荷台4の後端部に上端部を取り付けられると共に、車両本体2のシャシフレーム6に下端部を上下方向用シート17にたるみを持たせるように取り付けられる。荷台4に対する上下方向用シート17の取り付けは、荷台4の上板10に上下方向用シート17を複数のブラインドリベット18にて締結することで荷台4の上面になされる。また、上下方向用シート17は、シャシフレーム6の上面に複数のリベット19にて取り付けられる。上下方向用シート17の下端部は、バネ13とシャシフレーム6との間に挟み込まれており、バネ13によっても車両本体2に固定されるようになっている。
【0021】
次に本実施の形態の作用について述べる。
【0022】
トラック1が走行すると、車両本体2の振動はヒンジ12とバネ13とを介して荷台4に伝わる。このとき、バネ13は伸縮することで振動を吸収し、ショックアブソーバ14はヒンジ12を中心とする荷台4の揺動を減衰させる。また、前後方向用シート16と上下方向用シート17は、それぞれ若干のたるみを持って荷台4と車両本体2に取り付けられるため、通常時には荷台4の揺動に干渉することはなく荷台4に対する余分な拘束力が生じることはない。
【0023】
トラック1が走行中に前方の障害物等に衝突した場合、ヒンジ12には荷台4の慣性力が作用し、この慣性力がヒンジ12の強度を超える場合、ヒンジ12が損傷する。これにより、荷台4はヒンジ12より前方へ移動しようとするが、前後方向用シート16が張り、荷台4の移動を抑制するため、荷台4が車両本体2から脱落することはない。
【0024】
またさらに、トラック1が横転し、荷台4の慣性力などによってバネ13とショックアブソーバ14が損傷等した場合、荷台4は車両本体2から離間する方向に移動するが、上下方向用シート17が張り、荷台4の移動を抑制するため、荷台4が車両本体2から脱落することはない。
【0025】
このように、荷台4に、荷台4の前方移動を抑制するための前後方向用シート16の前端部を取り付けると共に、車両本体2に前後方向用シート16の後端部を前後方向用シート16にたるみを持たせるように取り付け、荷台4の後端部に、荷台4の上方移動を抑制するための上下方向用シート17の上端部を取り付けると共に、車両本体2に上下方向用シート17の下端部を上下方向用シート17にたるみを持たせるように取り付けたため、車両走行時には、荷台4に余分な拘束力を発生させる事なく、車両衝突時にたとえヒンジ12が損傷しても荷台4が車両本体2から脱落するのを防止できる。また、ヒンジ12に余計な強度を持たせる必要がないため、ヒンジ12を小さく軽量なものにできる。そして、荷台保持手段15としてシート素材を用いるため、軽量構造で衝突時の荷台脱落を防止できる。
【0026】
荷台4が、ハニカム材9と、ハニカム材9の上面に設けられた上板10と、ハニカム材9の下面に設けられた下板11とを備え、前後方向用シート16の前端部が下板11にブラインドリベット18にて取り付けられるものとしたため、荷台4に前後方向用シート16を広い面積で固定することができ、ハニカム材9との取り付け強度も確保できる。
【0027】
また、上下方向用シート17の上端部が上板10にブラインドリベット18にて取り付けられるものとしたため、荷台4に上下方向用シート17を広い面積で固定することができ、ハニカム材9との取り付け強度も確保できる。
【0028】
上下方向用シート17の下端部がバネ13と車両本体2との間に挟み込まれて車両本体2の上面に固定されるものとしたため、上下方向用シート17をバネ13と共通の締結具で車両本体2に固定でき、部品点数の増加を抑えることができると共に車両本体2に強固に固定できる。
【0029】
なお、バネ13は上述のものに限るものではない。バネ13はコイルバネ、板バネ等の弾性材からなるものであってもよい。また、上下方向用シート17は、下端部を車両本体2の上面に取り付けられるものとしたが、車両本体2の後端面又は下面に取り付けられるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
2 車両本体
4 荷台
7 キャブ
9 ハニカム材
10 上板
11 下板
12 ヒンジ
13 バネ
16 前後方向用シート
17 上下方向用シート
18 ブラインドリベット(リベット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブ後方の車両本体上に、荷台の前端部を、ヒンジを介して車幅方向に延びる軸回りに回動自在に設けると共に、荷台の後端部を上下の振動を吸収するバネを介して設けた荷台防振構造における衝突時荷台保持構造において、前記荷台に、荷台の前方移動を抑制するための前後に延びる前後方向用シートの前端部を取り付けると共に前記車両本体に前記前後方向用シートの後端部を前後方向用シートにたるみを持たせるように取り付け、前記荷台の後端部に、荷台の上方移動を抑制するための上下に延びる上下方向用シートの上端部を取り付けると共に、前記車両本体に前記上下方向用シートの下端部を上下方向用シートにたるみを持たせるように取り付けたことを特徴とする荷台防振構造における衝突時荷台保持構造。
【請求項2】
前記荷台が、ハニカム材と、該ハニカム材の上面に設けられた上板と、前記ハニカム材の下面に設けられた下板とを備え、前記前後方向用シートの前端部が前記下板にリベットにて取り付けられる請求項1記載の荷台防振構造における衝突時荷台保持構造。
【請求項3】
前記荷台が、ハニカム材と、該ハニカム材の上面に設けられた上板と、前記ハニカム材の下面に設けられた下板とを備え、前記上下方向用シートの上端部が前記上板にリベットにて取り付けられる請求項1又は2記載の荷台防振構造における衝突時荷台保持構造。
【請求項4】
前記上下方向用シートの下端部は、前記バネと前記車両本体との間に挟み込まれて車両本体の上面に固定される請求項3記載の荷台防振構造における衝突時荷台保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−25780(P2011−25780A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171964(P2009−171964)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】