説明

荷電粒子ビーム露光方法及び装置、荷電粒子ビーム露光データ作成方法及びプログラム、並びに、ブロックマスク

【課題】スループットの向上を図ることができる荷電粒子ビーム露光方法を提供する。
【解決手段】電子銃64から放射された電子ビームを所定サイズの矩形に成形する第1アパーチャ65と、該第1アパーチャ65で所定サイズの矩形に成形した電子ビームを任意サイズの矩形に成形する第2アパーチャ66と、該第2アパーチャ66で任意サイズの矩形に成形した電子ビームを一括露光用パターン形状に成形するブロックマスク67とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を製造する場合等に使用される荷電粒子ビーム露光方法及び装置、荷電粒子ビーム露光装置に与える荷電粒子ビーム露光データを作成する場合に使用される荷電粒子ビーム露光データ作成方法及びプログラム、並びに、荷電粒子ビーム露光装置に搭載して使用するブロックマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、ウエハに塗布したレジストに、製造対象の半導体装置の回路パターン(回路図形)を転写するために、紫外光や電子ビームを使用した露光が行われる。電子ビーム露光は、紫外光露光よりも微細なパターンの転写が可能であり、次世代の露光方法として、更なる開発が進められている。
【0003】
電子ビーム露光方法には、電子ビームのサイズを可変させてパターンを1つずつ転写する可変矩形露光方法と、複数のパターンを一括して転写する一括露光(ブロック露光)方法がある。図18は電子ビーム露光方法を説明するための図であり、(A)は可変矩形露光を行う場合の電子ビーム露光装置の状態、(B)は一括露光を行う場合の電子ビーム露光装置の状態を概念的に示している。
【0004】
図18中、1は電子ビームを放射する電子銃、2は電子銃1から放射された電子ビームを、例えば、5μm四方の矩形に成形する第1アパーチャ、3は第1アパーチャ2で矩形に成形された電子ビームを任意サイズの矩形に成形する第2アパーチャであり、可変矩形露光を行う場合に使用するものである。
【0005】
4は一括露光を行う場合に使用するブロックマスクであり、ブロックマスク4は、例えば、5μm四方の領域を、一括露光するパターン群(以下、ブロックと称する)を複数個搭載している。5、6はブロックマスク4中の2個のブロック、7、8、9はブロック5が有するパターン(開口パターン)、10は露光対象であるレジストが塗布されたウエハである。
【0006】
可変矩形露光を行う場合には、図18(A)に示すように、第2アパーチャ3が使用され、電子銃1から放射された電子ビームは、第1アパーチャ2で、例えば、5μm四方の矩形に成形され、更に、第2アパーチャ3で任意サイズの矩形に成形され、ウエハ10に塗布されたレジストに照射される。
【0007】
一括露光を行う場合には、図18(B)に示すように、ブロックマスク4が使用され、電子銃1から放射された電子ビームは、第1アパーチャ2で、例えば、5μm四方の矩形に成形され、更に、ブロックマスク4上のブロックに照射されてブロックが有するパターンの形状に成形され、ウエハ10に塗布されたレジストに照射される。一括露光は、可変矩形露光よりもショット数(露光回数)が少なく、スループットの向上を図ることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
一括露光を行う場合に電子ビーム露光装置に与えるべきウエハ製造用露光データ(使用するブロックのブロックマスク上の位置や電子ビームのウエハ上の照射位置等のデータ)は、例えば、製造対象の半導体装置の設計データ(回路パターンデータ)とブロックマスク製造用露光データ(ブロックマスクに搭載するブロックやその位置等のデータ)を使用して作成され、また、製造対象の半導体装置の設計データ及びブロックマスク製造用露光データは、基本パターンを使用して作成される(例えば、特許文献2の図4参照。)。
【0009】
図19は従来の半導体装置の設計データ作成方法及びブロックマスク製造用露光データ作成方法の一例を示す図である。図19中、12は各種回路を構築するために用意されている基本パターン群、13、14、15は基本パターン群12を使用して設計者が作成した製造対象の半導体装置A、B、Cの設計データである。
【0010】
16は基本パターン群12の中から設計者が選択した基本パターンを抽出し、ブロックマスク製造用露光データを作成するブロックマスク製造用露光データ作成装置、17はブロックマスク製造用露光データ作成装置16が作成したブロックマスク製造用露光データ、18はブロックマスク製造用露光データ17を使用して製造されたブロックマスクである。
【0011】
即ち、半導体装置A、B、Cを製造する場合には、一方において、基本パターン群12を使用して半導体装置A、B、Cの設計データが作成され、他方において、基本パターン群12の中から半導体装置A、B、Cの製造に必要な基本パターンが選択され、ブロックマスク製造用露光データ作成装置16によりブロックマスク製造用露光データ17が作成され、これに基づいてブロックマスク18が製造される。
【0012】
図20は従来のウエハ製造用露光データ作成方法の一例を示す図である。(A)は半導体装置Aを製造する場合、(B)は半導体装置Bを製造する場合、(C)は半導体装置Cを製造する場合を示しており、19はウエハ製造用露光データ作成装置、20、21、22はウエハ製造用露光データ、23は電子ビーム露光装置である。
【0013】
即ち、半導体装置Aが製造される場合には、図20(A)に示すように、半導体装置Aの設計データ13とブロックマスク製造用露光データ17とを使用してウエハ製造用露光データ作成装置19により半導体装置Aを製造するためのウエハ製造用露光データ20が作成される。そして、ウエハ製造用露光データ20とブロックマスク18とが使用され、電子ビーム露光装置23により半導体装置Aを製造するためのウエハ24に対する露光が行われる。
【0014】
また、半導体装置Bが製造される場合には、図20(B)に示すように、半導体装置Bの設計データ14とブロックマスク製造用露光データ17とを使用してウエハ製造用露光データ作成装置19により半導体装置Bを製造するためのウエハ製造用露光データ21が作成される。そして、ウエハ製造用露光データ21とブロックマスク18とが使用され、電子ビーム露光装置23により半導体装置Bを製造するためのウエハ25に対する露光が行われる。
【0015】
また、半導体装置Cが製造される場合には、図20(C)に示すように、半導体装置Cの設計データ15とブロックマスク製造用露光データ17とを使用してウエハ製造用露光データ作成装置19により半導体装置Cを製造するためのウエハ製造用露光データ22が作成される。そして、ウエハ製造用露光データ22とブロックマスク18とが使用され、電子ビーム露光装置23により半導体装置Cを製造するためのウエハ26に対する露光が行われる。
【0016】
図21は従来のブロックマスク製造用露光データ作成方法の他の例を示す図である。図21中、28はブロックマスクに搭載するブロックの仕様(パターンサイズ、パターン間距離等のパラメタ)を所定のフォーマットで記述した制御ファイル、29は制御ファイル28の内容を入力してブロックマスク製造用露光データを作成するブロックマスク製造用露光データ作成装置である。
【0017】
30はブロックマスク製造用露光データ作成装置29が作成したブロックマスク製造用露光データ、31はブロックマスク製造用露光データ30を使用して製造されたブロックマスクである。このように、ブロックマスク製造用露光データは、ブロックマスクに搭載するブロックの仕様を所定のフォーマットで記述した制御ファイル28を使用して作成することもできる。
【0018】
図22は制御ファイル28に記述されるパラメタを説明するための図である。図22中、33はブロックマスク上のブロック、34はブロック33のパターンであり、この例では、パターン34は、縦横に等間隔に配置されている。この場合において、制御ファイル28にブロック33の仕様を記述する場合には、パターン34のX方向のサイズL1とY方向のサイズL2、パターン間サイズL3が記述される。なお、サイズL1、L2、L3はテクノロジ(例えば、90nmテクノロジ)毎に定められている設計規則である。
【0019】
図23はブロック33の使用例を示す図である。図23中、35は矩形に成形された電子ビームを示し、(A)はブロック33の全体に電子ビーム35を照射(全面照射)した場合、(B)、(C)はブロック33の一部分に電子ビーム35を照射(部分照射)した場合を示している。即ち、ブロック33を使用する場合には、選択により、図23(A)、(B)又は(C)に示すように、全面照射又は部分照射を行うことができる。
【0020】
このように、ブロックマスクを使用する場合には、ウエハ上に様々なパターン群を一括露光することができる。しかも、各基本パターンは設計規則に基づいて作成されるので、1つのテクノロジにおいて1種類のブロックマスクで様々な種類の半導体装置に対応することができる。したがって、ブロックマスクを使用した一括露光方法は、コストの削減とスループットの向上を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2001−160529号公報
【特許文献2】特開2002−25900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
例えば、図20に示すようにして半導体装置A、B、Cを製造する場合には、図19に示すように、一方において、基本パターン群12を使用して半導体装置A、B、Cの設計データが作成され、他方において、基本パターン群12の中から半導体装置A、B、Cの製造に必要な基本パターンが選択され、ブロックマスク製造用露光データ作成装置16によりブロックマスク製造用露光データ17が作成され、これに基づいてブロックマスク18が製造される。
【0023】
しかしながら、半導体装置を受託生産する場合において、半導体装置の設計データとして、顧客が作成した設計データが与えられた場合、顧客の設計規則が半導体装置の生産を受託した側の設計規則と異なっていると、場合によっては、顧客の設計規則に合わせて、改めてブロックマスクを作成しなければならず、スループットの向上を実現できないという問題点があった。
【0024】
また、図24は図18に示す従来の電子ビーム露光装置が有する問題点を説明するための図である。図24中、37、38はブロックマスクに搭載されたブロックであり、39、40はパターン、41は矩形に成形された電子ビームであり、図24はブロック37に電子ビーム41を部分照射した場合を示している。
【0025】
この場合、第1アパーチャ2で矩形に成形される電子ビームのサイズは一定(例えば、5μm四方)なので、パターン40が配置されたブロック38にも電子ビーム41が照射されてしまう。したがって、ブロックマスクを製造する場合には、部分照射するブロックの周辺には他のブロックを近接して配置しないことが必要となる。
【0026】
しかしながら、このようにする場合、ブロックマスクに配置することができるブロック数が減少し、即ち、一括露光に使用することができるブロック数が減少し、可変矩形露光で露光を行う回数が増加してしまうため、スループットの向上を図ることができないという問題点があった。
【0027】
本発明は、かかる点に鑑み、スループットの向上を図ることができる荷電粒子ビーム露光方法及び装置、荷電粒子ビーム露光データ作成方法及びプログラム、並びに、ブロックマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の荷電粒子ビーム露光方法は、設計規則を異にする複数個のブロックを分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造する工程と、前記複数個のブロックマスクのうち、露光対象に対する露光パターンの設計データと設計規則が一致するブロックを含むブロックマスクを選択して前記露光対象に対する露光を行う工程を有するものである。
【0029】
本発明の荷電粒子ビーム露光データ作成方法は、設計規則を異にする複数個のブロックを分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造する工程と、前記複数個のブロックマスクのうち、露光対象に対する露光パターンの設計データと設計規則が一致するブロックを含むブロックマスクを使用して前記露光対象に対する露光を行うための荷電粒子ビーム露光データを作成する工程を有するものである。
【0030】
本発明の荷電粒子ビーム露光データ作成プログラムは、コンピュータに、設計規則を異にする複数個のブロックを分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造するための複数個のブロックマスク製造用露光データを作成する工程と、前記複数個のブロックマスクのうち、露光対象に対する露光パターンの設計データと設計規則が一致するブロックを含むブロックマスクを使用して前記露光対象に対する露光を行うための荷電粒子ビーム露光データを作成する工程を実行させるプログラムを含むものである。
【0031】
本発明の荷電粒子ビーム露光装置は、荷電粒子ビーム発生源から放射された荷電粒子ビームを所定サイズの矩形に成形する第1アパーチャと、前記第1アパーチャで所定サイズの矩形に成形した荷電粒子ビームを任意サイズの矩形に成形する第2アパーチャと、前記第2アパーチャで任意サイズの矩形に成形した荷電粒子ビームを一括露光用パターン形状に成形するブロックマスクを有するものである。
【0032】
本発明のブロックマスクは、矩形に成形された荷電粒子ビームを、選択によりL字形状、L字を90度回転させた形状、L字を180度回転させた形状又はL字を270度回転させた形状に成形可能とされたブロックを有するものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の荷電粒子ビーム露光方法は、予め、設計規則を異にする複数個のブロックを分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造しておき、露光時には、予め作成しておいた複数個のブロックマスクのうち、露光対象に対する露光パターンの設計データと設計規則が一致するブロックを含むブロックマスクを使用するというものである。

【0034】
したがって、本発明の荷電粒子ビーム露光方法によれば、ブロックに対する複数の設計規則に対応することができ、設計規則が異なるブロックを必要とする露光を行う際ごとに改めてブロックマスクを製造する必要がなく、スループットの向上を図ることができる。
【0035】
本発明の荷電粒子ビーム露光データ作成方法によれば、本発明の荷電粒子ビーム露光方法を実施することができ、スループットの向上を図ることができる。
【0036】
本発明の荷電粒子ビーム露光データ作成プログラムによれば、本発明の荷電粒子ビーム露光データ作成方法を実施することができ、スループットの向上を図ることができる。
【0037】
本発明の荷電粒子ビーム露光装置によれば、第1アパーチャとブロックマスクとの間に第1アパーチャで所定サイズの矩形に成形された荷電粒子ビームを任意サイズの矩形に成形する第2アパーチャを有しているので、荷電粒子ビームを部分照射するブロックの周囲のブロックに荷電粒子ビームが照射しないようにすることができる。したがって、より多くのブロックをブロックマスクに搭載して荷電粒子ビームの露光回数を減少させることができ、スループットの向上を図ることができる。
【0038】
本発明のブロックマスクによれば、矩形に成形された荷電粒子ビームを、選択によりL字形状、L字を90度回転させた形状、L字を180度回転させた形状又はL字を270度回転させた形状に成形可能とされたブロックを有するので、可変矩形露光で対応する場合にはエッチング補正でパターンの短辺サイズの種類が増加してしまう場合であっても、最少で1種類、最大でも4種類のブロックによる一括露光で対応することができ、スループットの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態を示す流れ図である。
【図2】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で実行されるブロックマスクの製造方法を示す図である。
【図3】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で使用される制御ファイルの作成例を説明するための図である。
【図4】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で使用する制御ファイルの他の作成例を説明するための図である。
【図5】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で実行されるウエハに対する露光方法を示す図である。
【図6】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で使用されるウエハ製造用露光データ作成装置で実行される処理を示す流れ図である。
【図7】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で使用されるウエハ製造用露光データ作成装置で算出される削減ショット数を説明するための図である。
【図8】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で使用されるウエハ製造用露光データ作成装置で算出されるブロックマスクごとの削減ショット数の合計数の例を示す表図である。
【図9】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で作成されるブロックマスクセットの一例を示す図である。
【図10】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で使用される電子ビーム露光装置を示す概念図である。
【図11】本発明の荷電粒子ビーム露光データ作成方法の第1実施形態が必要とするブロックマスク製造用露光データ作成装置及びウエハ製造用露光データ作成装置として使用されるコンピュータ・システムの概念図である。
【図12】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態を示す図である。
【図13】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態で使用するブロックマスクに搭載するブロックのうちの2個を示す図である。
【図14】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態で使用されるウエハ製造用露光データ作成装置で実行される処理を示す流れ図である。
【図15】図13に示すブロックを使用して一括露光を行う場合を説明するための図である。
【図16】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態で作成されるウエハ製造用露光データに含める電子ビーム照射テーブルの一部分を示す図である。
【図17】本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態で使用するブロックマスクに搭載するブロックの例を示す図である。
【図18】電子ビーム露光方法を説明するための図である。
【図19】従来の半導体装置の設計データ作成方法及びブロックマスク製造用露光データ作成方法の一例を示す図である。
【図20】従来のウエハ製造用露光データ作成方法の一例を示す図である。
【図21】従来のブロックマスク製造用露光データ作成方法の他の例を示す図である。
【図22】図21に示す制御ファイルに記述されるパラメタを説明するための図である。
【図23】図22に示すブロックの使用例を示す図である。
【図24】図18に示す従来の電子ビーム露光装置が有する問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図1〜図17を参照して、本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態及び第2実施形態について、本発明の荷電粒子ビーム露光データ作成方法、荷電粒子ビーム露光データ作成プログラム、荷電粒子ビーム露光装置及びブロックマスクの各実施形態を含めて説明するが、本発明は、これらの各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱することなく、種々の形態を取り得るものである。
【0041】
(本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態)
図1は本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態を示す流れ図である。本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態は、半導体装置を製造するための電子ビーム露光方法の一例である。
【0042】
本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態においては、まず、複数個の制御ファイルに基づいて、設計規則を異にする複数個のブロックを任意の個数に分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造するための複数個のブロックマスク製造用露光データを作成し(ステップS1)、これら複数個のブロックマスク製造用露光データを使用して複数個のブロックマスクを製造する(ステップS2)。
【0043】
次に、製造対象の半導体装置の設計データ(回路パターンデータ)に基づいて、複数個のブロックマスク製造用露光データから、削減ショット数(削減露光回数)が最も大きいブロックマスクの製造用露光データを選択し(ステップS3)、製造対象の半導体装置の設計データと、選択したブロックマスク製造用露光データを使用してウエハ製造用露光データを作成する(ステップS4)。
【0044】
次に、作成したウエハ製造用露光データと、削減ショット数が最も大きいブロックマスクを使用してウエハに対して電子ビーム露光を行う(ステップS5)。以上の工程が、本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で行われる工程であるが、ブロックマスク製造用露光データの作成工程(ステップS1)及びウエハ製造用露光データの作成工程(ステップS3、S4)は、後述するブロックマスク製造用露光データ作成プログラム及びウエハ製造用露光データ作成プログラムを使用してコンピュータで実行することができる。
【0045】
図2は本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で実行されるブロックマスクの製造方法を示す図である。図2中、42−1、42−2、42−N(Nは4以上の整数)はブロックマスクに形成するブロックの仕様(パターンサイズや、パターン間距離等のパラメタ)が所定フォーマットで記述された制御ファイルであり、制御ファイル42−3〜42−(N−1)は図示を省略している。
【0046】
43は制御ファイル42−iを入力してブロックマスク製造用露光データを作成するブロックマスク製造用露光データ作成装置、44−1、44−2、44−Nはブロックマスク製造用露光データ作成装置43で作成されたブロックマスク製造用露光データであり、ブロックマスク製造用露光データ44−3〜44−(N−1)は図示を省略している。なお、ブロックマスク製造用露光データ44−iは制御ファイル42−iを使用して作成されたものである。
【0047】
45−1、45−2、45−Nはブロックマスクであり、ブロックマスク45−3〜45−(N−1)は図示を省略している。なお、ブロックマスク45−iはブロックマスク製造用露光データ44−iを使用して製造されたものである。
【0048】
即ち、図2の例では、ブロックマスク製造用露光データ作成装置43により、N個の制御ファイル42−1〜42−Nに基づいて、設計規則を異にするN個のブロックを任意の個数に分けて搭載するN個のブロックマスク45−1〜45−Nを製造するためのN個のブロックマスク製造用露光データ44−1〜44−Nが作成される。そして、これらN個のブロックマスク製造用露光データ44−1〜44−Nを使用してN個のブロックマスクが製造される。
【0049】
図3は制御ファイル42−1〜42−Nの作成例を説明するための図である。ここで、製造対象の半導体装置が、例えば、90nmテクノロジの半導体装置の場合には、100nmから600nmの範囲内にコンタクト層と全てのビア層のパターンサイズが定義されている可能性が高い。そこで、例えば、パターンサイズを100nmから600nmまで+10nm刻みで設定する。
【0050】
また、各パターンサイズに対しては、パターン間サイズを+10nm刻みで設定する。この場合、ウエハプロセスの見地から、最小のパターン間サイズはパターンサイズと同一とし、最大のパターン間サイズはパターンサイズの2倍とする。したがって、例えば、パターンサイズ=100nmのパターンについては、パターン間サイズを100nmから開始し、+10nm刻みで200nmまで設定することになり、11個のブロックが作成されることになる。
【0051】
そして、例えば、1個のブロックマスクに搭載する最大ブロック個数を100個とし、1個の制御ファイルで作成するブロックの個数が100個以内になるように制御ファイルを作成する。なお、製造対象の半導体装置がASICやマイクロコンピュータ等の場合には、コンタクト層とビア層のパターンサイズは1種類であることから、同一のパターンサイズのパターンは1個のブロックマスクに作成することが好適である。
【0052】
ここに、例えば、図3の例では、パターンサイズ=100nm〜160nmのブロック個数は98となるので、これらブロックサイズ=100nm〜160nmのブロックの仕様は、制御ファイル42−1に書き込まれることになる。また、パターンサイズ=170nm〜210nmのブロック個数は100となるので、パターンサイズ=170nm〜210nmのブロックの仕様は、制御ファイル42−2に書き込まれることになる。
【0053】
このように、複数のブロックサイズを設定し、かつ、各ブロックサイズについても、複数のパターン間サイズを設定することにより、設計規則の異なる複数のブロックを用意しておく場合には、受託生産などで顧客の設計規則が未知である場合に備えることができ、スループットの向上を図ることができる。
【0054】
図4は制御ファイルの他の作成例を説明するための図である。図4中、46はブロックマスクであり、点線の枠47はブロック配置可能位置を示しており、この例では、ブロックマスク46は、100個のブロック配置可能位置を有している。
【0055】
ここで、ブロック配置位置からブロックマスク46の中心48への距離が短いほど高精度で露光することができるので、例えば、周辺の領域49〜52内の36箇所のブロック配置可能位置47にはブロックを配置せず、周辺の領域49〜52の内側の64箇所のブロック配置可能領域47にブロックを配置することが好適である。
【0056】
そこで、この例の場合には、1つの制御ファイルで作成するブロックの個数が64個以内になるように設定する。なお、ブロック配置可能位置47に記載した「1」〜「64」は、ブロックマスク46に配置したブロックの番号を示している。
【0057】
また、ブロックマスク46の中心48に距離が短いほど高精度で露光することができるので、パターンサイズが小さい順に別々のブロックマスクに搭載する場合もある。例えば、パターンサイズ=100nmのブロックは、図2に示すブロックマスク45−1の中心から配置し、パターンサイズ=110nmのブロックは、図2に示すブロックマスク45−2の中心から配置していくという方法もある。
【0058】
図5は本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で実行されるウエハに対する露光方法を示す図である。図5中、53は製造対象の半導体装置の設計データ(回路パターンデータ)、54は製造対象の半導体装置の設計データ53とブロックマスク製造用露光データ44−1〜44−Nを入力し、削減ショット数が最も大きいブロックマスクの製造用露光データを選択してウエハ製造用露光データを作成するウエハ製造用露光データ作成装置である。
【0059】
55はウエハ製造用露光データ作成装置54が作成したウエハ製造用露光データ、56はウエハ製造用露光データ作成装置54で選択されたブロックマスク製造用露光データを使用して製造されたブロックマスク、57は電子ビーム露光装置(本発明の荷電粒子ビーム露光装置の一実施形態)、58は露光対象のウエハである。
【0060】
即ち、図5の例では、ウエハ製造用露光データ作成装置54は、製造対象の半導体装置の設計データ53とブロックマスク製造用露光データ44−1〜44−Nを入力し、削減ショット数が最も大きいブロックマスクの製造用露光データを選択してウエハ製造用露光データを作成する。
【0061】
そして、電子ビーム露光装置57は、ウエハ製造用露光データ作成装置54が作成したウエハ製造用露光データ55と、ウエハ製造用露光データ作成装置54で選択されたブロックマスク製造用露光データを使用して製造されたブロックマスク、即ち、削減ショット数が最も大きいブロックマスク56を使用してウエハ58に対する露光を行う。
【0062】
図6はウエハ製造用露光データ作成装置54で実行される処理を示す流れ図である。即ち、ウエハ製造用露光データ作成装置54においては、まず、製造対象の半導体装置の設計データ53が入力され(ステップP1)、次に、ブロックマスク製造用露光データ44−1〜44−Nが入力される(ステップP2)。
【0063】
次に、ブロックマスク製造用露光データ44−1〜44−Nに含まれているブロックと一致するブロックが、製造対象の半導体装置の設計データ53から抽出される(ステップP3)。そして、抽出されたブロック毎に、削減ショット数が周知の方法(例えば、特開2001−160529号公報に記載の方法)で計算される(ステップP4)。ここで、削減ショット数とは、「可変矩形露光を行うとした場合のショット数」から「一括露光を行うとした場合のショット数」を減算した値である。
【0064】
次に、ブロックマスク毎に削減ショット数を計算し(ステップP5)、ブロックマスク製造用露光データ44−1〜44−Nから、削減ショット数が最も大きいブロックマスクの製造用露光データが選択され(ステップP6)、製造対象の半導体装置の設計データ53と、選択されたブロックマスク製造用露光データを使用してウエハ製造用露光データ55が作成されて出力される(ステップP7)。
【0065】
即ち、ウエハ製造用露光データ作成装置54では、製造対象の半導体装置の設計データの基本となっている設計規則と一致する設計規則で作成されたブロックを含むブロックマスク製造用露光データを使用してウエハ製造用露光データが作成されることになる。
【0066】
図7は削減ショット数を説明するための図であり、ブロックマスクの一部分を示している。図7中、59は同一のパターン間サイズで配置されたパターン、60はブロックである。この例では、135個のパターンが15個のブロックで作成されている。ここで、例えば、135個のパターン59をパターン単位で露光すると、ショット数は135であり、ブロック単位で露光すると、ショット数は15である。したがって、この例の場合には、削減ショット数は120となる。
【0067】
そこで、本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態では、ブロックマスクごとに搭載されているブロック数分の削減ショット数の合計を求める。図8はブロックマスクごとの削減ショット数の合計数の例を示す表図である。
【0068】
ここで、例えば、N個のブロックマスク45−1〜45−Nの中で、ブロックマスク45−2の削減ショット数が最大であれば、ブロックマスク45−2を電子ビーム露光装置57で使用するブロックマスクとして選択する。なお、ブロックマスク45−1〜45−Nは、これらの集合体であるブロックマスクセットとして構成することができる。
【0069】
図9はブロックマスクセットの一例を示す図である。図9中、61はブロックマスクセット、62はブロックマスクであり、各ブロックマスク62にはブロック63が搭載されている。この例では、30個のブロックマスク62が搭載されているが、各ブロックマスク62には唯一無二の番号(ブロックマスク番号)が付される。ブロックマスク62に記載した番号「1」〜「30」はブロックマスク番号を示している。
【0070】
そこで、例えば、図2に示すブロックマスク45−2がブロックマスク番号=2番の位置に搭載されている場合には、ブロックマスク45−2を識別するために、ウエハ製造用露光データに露光使用ブロックマスク番号として2番を格納する。その他、ブロックを露光するウエハ上の位置などの情報を格納する。
【0071】
ここで、図5において、電子ビーム露光装置57に対してウエハ製造用露光データ55を入力すると、電子ビーム露光装置57は、ウエハ製造用露光データ55に格納されている露光使用ブロックマスク番号を読み取り、ブロックマスクセットの中からブロックマスク番号と一致するブロックマスクを選択し、この選択したブロックマスクを使用して、ウエハ58にパターンを露光することになる。
【0072】
図10は電子ビーム露光装置57の概念図である。図10中、64は電子ビームを放射する電子銃、65は電子銃64から放射された電子ビームを所定サイズの矩形(例えば、5μm四方の矩形)に成形する第1アパーチャ、66は第1アパーチャ65で矩形に成形された電子ビームを任意サイズに成形する第2アパーチャ、67はブロックマスク、68、69はブロックマスク67中の2個のブロックである。
【0073】
電子ビーム露光装置57では、電子銃64から放射された電子ビームは第1アパーチャ65で所定サイズの矩形に成形され、この所定サイズの矩形に成形された電子ビームは第2アパーチャ66で任意のサイズを有する矩形に成形される。そして、この任意サイズの矩形に成形された電子ビームはブロックマスク67に搭載されたブロックの一部または全体に照射され、ブロックのパターンの一部又は全部で成形された電子ビームがウエハ58に露光される。
【0074】
図11はブロックマスク製造用露光データ作成装置43及びウエハ製造用露光データ作成装置54として使用されるコンピュータ・システムの概念図である。図11中、71はパーソナル・コンピュータやエンジニアリング・ワークステーション等を構成するコンピュータ本体、72は入力装置、73はディスプレイ装置、74は通信装置である。
【0075】
入力装置72は、コンピュータ本体71を操作するための各種コマンドや要求された指示に対する応答等を入力する場合に使用するものであり、キーボードやマウス等である。ディスプレイ装置73は、コンピュータ本体71で処理された結果を表示すると共に、コンピュータ本体71を操作する際にユーザとの対話を可能にするための様々な情報を表示するものである。通信装置74は、他の装置との通信を行うものであり、モデムやネットワークインターフェース等である。
【0076】
コンピュータ本体71において、75はCPU(central processing unit)、76はCPU75が使用するRAM(random access memory)、77はプログラムの格納等に使用されるハードディスク装置(HDD)、78は入力装置72、ディスプレイ装置73及び通信装置74との接続を図るインタフェース、79はバスである。
【0077】
ハードディスク装置77には、例えば、本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で実行されるブロックマスク製造用露光データの作成に使用するブロックマスク製造用露光データ作成プログラム80や、本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態で実行されるウエハ製造用露光データの作成に使用するウエハ製造用露光データ作成プログラム81等が格納される。
【0078】
ブロックマスク製造用露光データ作成プログラム80及びウエハ製造用露光データ作成プログラム81は、入力装置72からの実行指示によりハードディスク装置77からRAM76にロードされて実行される。なお、ブロックマスク製造用露光データ作成プログラム80及びウエハ製造用露光データ作成プログラム81は、図11に示すコンピュータ・システム外にある記憶装置から通信装置74及びインタフェース78を介してRAM76にロードするようにしても良い。
【0079】
以上のように、本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態は、設計規則を異にする複数個のブロックを任意の個数に分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造する工程(ステップS1、S2)と、複数個のブロックマスクのうち、削減ショット数が最も大きいブロックマスクの製造用露光データを選択してウエハに対する電子ビーム露光を行う工程(ステップS3〜S5)を実行するとしている。
【0080】
即ち、本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第1実施形態によれば、半導体装置を受託生産する場合に、顧客の設計規則が未知である場合に備えることができ、半導体装置の設計データとして、顧客が作成した設計データが与えられた場合においても、顧客の設計規則に合わせて改めてブロックマスクを製造する必要がなく、スループットの向上を図ることができる。
【0081】
(本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態)
図12は本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態を示す図である。本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態は、半導体装置を製造するための電子ビーム露光方法の他の例である。図12中、82はブロックマスクに形成するブロックの仕様(パターンサイズや、パターン間距離等のパラメタ)が所定のフォーマットで記述された制御ファイルである。
【0082】
83は制御ファイル82を入力してブロックマスク製造用露光データを作成するブロックマスク製造用露光データ作成装置、84はブロックマスク製造用露光データ作成装置83が作成したブロックマスク製造用露光データ、85はブロックマスク製造用露光データ84を使用して製造されたブロックマスクである。
【0083】
86は製造対象の半導体装置の設計データ(回路パターンデータ)、87は製造対象の半導体装置の設計データ86とブロックマスク製造用露光データ84を入力してウエハ製造用露光データを作成するウエハ製造用露光データ作成装置、88はウエハ製造用露光データ作成装置87が作成したウエハ製造用露光データ、89は図10に示す構成を有する電子ビーム露光装置、90はウエハである。
【0084】
本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態においては、まず、制御ファイル82に基づいて、複数個のブロックを搭載するブロックマスク85を製造するためのブロックマスク製造用露光データ84を作成し、このブロックマスク製造用露光データ84を使用してブロックマスク85を製造する。
【0085】
次に、製造対象の半導体装置の設計データ(回路パターンデータ)86と、ウエハ製造用露光データ作成装置87を使用してウエハ製造用露光データ88を作成し、この作成したウエハ製造用露光データ88と、ブロックマスク85を使用してウエハ90に対して電子ビーム露光を行う。
【0086】
なお、ブロックマスク製造用露光データ作成装置83及びウエハ製造用露光データ作成装置87として、図11に示すコンピュータ・システムを使用することができる。この場合、ブロックマスク製造用露光データ作成プログラム80及びウエハ製造用露光データ作成プログラム81として、本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態でのブロックマスク製造用露光データ作成工程及びウエハ製造用露光データ作成工程を実行し得るプログラムが使用される。
【0087】
図13はブロックマスク85に搭載するブロックのうちの2個を示す図である。図13中、91、92はブロックであり、ブロック91は、逆凹字形のパターン(開口)93を有し、ブロック92は、逆凹字形を90度回転させた凹字形のパターン(開口)94を有する。
【0088】
なお、パターン93、94の短辺サイズは、テクノロジとエッチング補正処理の仕様により決定する。例えば、90nmテクノロジにおいて、パターンの短辺サイズが100nmであり、エッチング補正処理における短辺サイズの最大変更サイズが+30nmであれば、パターン93、94の短辺サイズは130nm以上にする。
【0089】
図14はウエハ製造用露光データ作成装置87で実行される処理を示す流れ図である。ウエハ製造用露光データ作成装置87では、まず、製造対象の半導体装置の設計データ86が入力され(ステップQ1)、次に、ブロックマスク製造用露光データ84が入力される(ステップQ2)。
【0090】
次に、製造対象の半導体装置の設計データ86からL字形パターン、L字形パターンを90度回転させたパターン、L字形パターンを180度回転させたパターン及びL字形パターンを270度回転させたパターン、即ち、鈎状パターンが抽出され(ステップQ3)、鈎状パターンについては、ブロック91、92を使用して露光するための電子ビーム照射テーブルが作成され(ステップQ4)、この電子ビーム照射テーブルを含むウエハ製造用露光データが作成されて出力される(ステップQ5)。
【0091】
図15はブロック91、92を使用して一括露光を行う場合を説明するための図である。図15(A)はウエハ上のレジストに露光すべきパターン群を示しており、95〜104はウエハ上のレジストに露光すべき各パターンであり、従来では可変矩形露光の対象となるパターンである。
【0092】
この例の場合、本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態では、図15(B)に示すように、パターン95、96については、ブロック91内の枠105を使用して一括露光し、パターン97、98についてはブロック91内の枠106を使用して一括露光し、パターン99、100についてはブロック91内の枠107を使用して一括露光する。
【0093】
また、パターン101、102についてはブロック92内の枠108を使用して一括露光し、パターン103、104についてはブロック92内の枠109を使用して一括露光する。このようにすると、図15(C)に示すように、パターン110〜114を順に一括露光することができる。
【0094】
ここで、配線層のパターン等には、エッチング後のマイクロローディング効果によるパターンサイズの変化を補正する処理として、エッチング補正処理を行う場合がある。エッチング補正処理では、エッチング後のパターンサイズが設計データのパターンサイズと異ならないように、周囲に配置されている別のパターンとの距離に応じて、パターンの長辺または短辺のサイズを予め変更することが行われる。
【0095】
この結果、パターン95〜104を可変矩形露光すると、エッチング補正処理前には1〜2種類であった短辺サイズも、処理後には数十種類になり、図15(A)の例の場合には、段差115〜117が生じる場合がある。
【0096】
本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態では、パターン95、96を一括露光する場合、矩形の電子ビームの幅は、パターン95の長辺サイズ118と同一、高さはパターン95の短辺サイズとパターン96の長辺サイズの合計サイズ119と同一とし、かつ、電子ビームがパターン93と重なる部分において、幅120がパターン95の短辺サイズ121と、幅122がパターン96の短辺サイズ123と同一になるように、照射位置を決定する。
【0097】
照射位置の設定は、例えば、枠105の左下隅の頂点124に座標(X、Y)を設定し、ブロック91の左下隅の頂点125の座標(X、Y)を原点(0、0)と定義し、頂点124の座標(X、Y)を求めることにより行うことができる。パターン97、98、パターン99、100、パターン101、102、パターン103、104をそれぞれ一括露光する場合も、同様にして、矩形の電子ビームのサイズ及び照射位置の設定を行う。したがって、配線層やゲート層のパターンを1〜4種類のブロックで一括露光できる。
【0098】
図15(B)に示すような一括露光は、図16に示す電子ビーム照射テーブルをウエハ製造用露光データ88に含めることにより行うことができる。図16中、126は一括露光一回分の情報格納領域であり、127−1はブロック配置位置(X)情報格納領域、127−2はブロック配置位置(Y)情報格納領域、127−3は電子ビームサイズ(幅)情報格納領域、127−4は電子ビームサイズ(高さ)情報格納領域、127−5はブロック上照射位置(X)情報格納領域、127−6はブロック上照射位置(Y)情報格納領域である。
【0099】
ブロック配置位置(X)情報格納領域127−1には、ブロックの原点(左下隅頂点)のブロックマスク上の位置のX座標値を格納し、ブロック配置位置(Y)情報格納領域127−2には、ブロックの原点のブロックマスク上の位置のY座標値を格納する。
【0100】
電子ビームサイズ(幅)情報格納領域127−3には、ブロックに照射する電子ビームの幅サイズを格納し、電子ビームサイズ(高さ)情報格納領域127−4には、ブロックに照射する電子ビームの高さサイズを格納する。
【0101】
ブロック上照射位置(X)情報格納領域127−5には、ブロックに照射する電子ビームの原点(左下隅頂点)のブロック上の位置のX座標値を格納し、ブロック上照射位置(Y)情報格納領域127−6には、ブロックに照射する電子ビームの原点のブロック上の位置のY座標値を格納する。
【0102】
以上のように、本発明の荷電粒子ビーム露光方法の第2実施形態によれば、ブロックマスク85は、矩形に成形された電子ビームを選択によりL字形状、L字を90度回転させた形状、L字を180度回転させた形状又はL字を270度回転させた形状に成形可能とされたブロック91、92を有するとしている。
【0103】
したがって、可変矩形露光で対応する場合には、エッチング補正でパターンの短辺サイズが数十種類に増加してしまう場合であっても、1〜4種類のブロックによる一括露光で対応することができ、荷電粒子ビーム露光におけるスループットの向上を図ることができる。
【0104】
なお、ブロックマスク85に、矩形に成形された電子ビームを鈎形状に成形可能とされたブロックとして、図17(A)に示すように、L字形パターン129を配置したブロック130、L字形パターン129を90度回転させたパターン131を配置したブロック132、L字形パターン129を180度回転させたパターン133を配置したブロック134及びL字形パターン129を270度回転させたパターン135を配置したブロック136を搭載するようにしても良い。
【0105】
137はブロック130に電子ビームを部分照射する場合の電子ビームの照射位置の例、138はブロック132に電子ビームを部分照射する場合の電子ビームの照射位置の例、139はブロック134に電子ビームを部分照射する場合の電子ビームの照射位置の例、140はブロック136に電子ビームを部分照射する場合の電子ビームの照射位置の例を示している。
【0106】
また、ブロックマスク85に、矩形に成形された電子ビームを鈎形状に成形可能とされたブロックとして、図17(B)に示すように、T字形パターン141を配置したブロック142及び逆T字形パターン143を配置したブロック144を搭載するようにしても良い。145、146はブロック142に電子ビームを部分照射する場合の電子ビームの照射位置の例、147、148はブロック144に電子ビームを部分照射する場合の電子ビームの照射位置の例を示している。
【0107】
また、ブロックマスク85に、矩形に成形された電子ビームを鈎形状に成形可能とされたブロックとして、図17(C)に示すように、H字形パターン149を配置したブロック150を搭載するようにしても良い。151〜154はブロック150に電子ビームを部分照射する場合の電子ビームの照射位置の例を示している。
【0108】
また、ブロックマスク85に、矩形に成形された電子ビームを鈎形状に成形可能とされたブロックとして、図17(D)に示すように、H字形パターンを90度回転させたパターン155を配置したブロック156を搭載するようにしても良い。157〜160はブロック156に電子ビームを部分照射する場合の電子ビームの照射位置の例を示している。
【0109】
また、ブロックマスク85に、矩形に成形された電子ビームを鈎形状に成形可能とされたブロックとして、図17(E)に示すように、十字形パターン161を配置したブロック162を搭載するようにしても良い。163〜166はブロック162に電子ビームを部分照射する場合の電子ビームの照射位置の例を示している。
【0110】
ここで、本発明を整理すると、本発明には、少なくとも、以下の荷電粒子ビーム露光方法、荷電粒子ビーム露光装置、荷電粒子ビーム露光データ作成方法、荷電粒子ビーム露光データ作成プログラム、及び、ブロックマスクが含まれる。
【0111】
(付記1) 設計規則を異にする複数個のブロックを分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造する工程と、前記複数個のブロックマスクのうち、露光対象に対する露光パターンの設計データと設計規則が一致するブロックを含むブロックマスクを選択して前記露光対象に対する露光を行う工程を有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
【0112】
(付記2) 前記設計規則を異にする複数個のブロックを分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造する工程は、前記複数個のブロックマスクに搭載するブロックの仕様が所定のフォーマットで記述された複数個の制御ファイルから複数個のブロックマスク製造用露光データを作成する工程と、前記複数個のブロックマスク製造用露光データから前記複数個のブロックマスクを製造する工程を有することを特徴とする付記1記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0113】
(付記3) 前記露光対象に対する露光パターンの設計データと設計規則が一致するブロックを含むブロックマスクの選択は、最もショット数が減少するブロックマスクを選択することにより行うことを特徴とする付記1記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0114】
(付記4)
前記最もショット数が減少するブロックマスクの選択は、前記複数個のブロックマスクに搭載されているブロックと一致するブロックを前記露光対象の露光パターンの設計データから抽出し、該抽出したブロック毎に削減ショット数を求めることにより行うことを特徴とする付記3記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0115】
(付記5) 設計規則を異にする複数個のブロックを分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造する工程と、前記複数個のブロックマスクのうち、露光対象に対する露光パターンの設計データと設計規則が一致するブロックを含むブロックマスクを使用して前記露光対象に対する露光を行うための荷電粒子ビーム露光データを作成する工程を有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光データ作成方法。
【0116】
(付記6) 前記設計規則を異にする複数個のブロックを分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造する工程は、前記複数個のブロックマスクに搭載するブロックの仕様が所定のフォーマットで記述された複数個の制御ファイルから複数個のブロックマスク製造用露光データを作成する工程と、前記複数個のブロックマスク製造用露光データから前記複数個のブロックマスクを製造する工程を有することを特徴とする付記5記載の荷電粒子ビーム露光データ作成方法。
【0117】
(付記7) 前記露光対象に対する露光パターンの設計データと設計規則が一致するブロックを含むブロックマスクの選択は、最もショット数が減少するブロックマスクを選択することにより行うことを特徴とする付記5記載の荷電粒子ビーム露光データ作成方法。
【0118】
(付記8) 前記最もショット数が減少するブロックマスクの選択は、前記複数個のブロックマスクに搭載されているブロックと一致するブロックを前記露光対象の露光パターンの設計データから抽出し、該抽出したブロック毎に削減ショット数を求めることにより行うことを特徴とする付記7記載の荷電粒子ビーム露光データ作成方法。
【0119】
(付記9) コンピュータに、設計規則を異にする複数個のブロックを分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造するための複数個のブロックマスク製造用露光データを作成する工程と、前記複数個のブロックマスクのうち、露光対象に対する露光パターンの設計データと設計規則が一致するブロックを含むブロックマスクを使用して前記露光対象に対する露光を行うための荷電粒子ビーム露光データを作成する工程を実行させるプログラムを含むことを特徴とする荷電粒子ビーム露光データ作成プログラム。
【0120】
(付記10) 前記設計規則を異にする複数個のブロックを分けて搭載する複数個のブロックマスクを製造するための複数個のブロックマスク製造用露光データを作成する工程は、前記複数個のブロックマスクに搭載するブロックの仕様が所定のフォーマットで記述された複数個の制御ファイルから前記複数個のブロックマスク製造用露光データを作成する工程を有することを特徴とする付記9記載の荷電粒子ビーム露光データ作成プログラム。
【0121】
(付記11) 前記露光対象に対する露光パターンの設計データと設計規則が一致するブロックを含むブロックマスクの選択は、最もショット数が減少するブロックマスクを選択することにより行うことを特徴とする付記9記載の荷電粒子ビーム露光データ作成プログラム。
【0122】
(付記12) 前記最もショット数が減少するブロックマスクの選択は、前記複数個のブロックマスクに搭載されているブロックと一致するブロックを前記露光対象の露光パターンの設計データから抽出し、該抽出したブロック毎に削減ショット数を求めることにより行うことを特徴とする付記11記載の荷電粒子ビーム露光データ作成プログラム。
【0123】
(付記13) 荷電粒子ビーム発生源から放射された荷電粒子ビームを所定サイズの矩形に成形する第1アパーチャと、前記第1アパーチャで所定サイズの矩形に成形した荷電粒子ビームを任意サイズの矩形に成形する第2アパーチャと、前記第2アパーチャで任意サイズの矩形に成形した荷電粒子ビームを一括露光用パターン形状に成形するブロックマスクを有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光装置。
【0124】
(付記14) 前記ブロックマスクは、矩形に成形された荷電粒子ビームを、選択により、L字形状、L字を90度回転させた形状、L字を180度回転させた形状又はL字を270度回転させた形状に成形可能とされたブロックを有することを特徴とする付記13記載の荷電粒子ビーム露光装置。
【0125】
(付記15) 前記ブロックとして、凹字形パターンを配置したブロック及び逆凹字形パターンを配置したパターンを有するブロック、又は、L字形パターンを配置したブロック、前記L字形パターンを90度回転させたパターンを配置したブロック、前記L字形パターンを180度回転させたパターンを配置したブロック及び前記L字形パターンを270度回転させたパターンを配置したブロック、又は、T字形パターンを配置したブロック及び逆T字形パターンを配置したブロック、又は、H字形パターンを配置したブロック、又は、H字形パターンを90度回転させたパターンを配置したブロック、又は、十字形パターンを配置したブロックを備えていることを特徴とする付記14記載の荷電粒子ビーム露光装置。
【0126】
(付記16) 荷電粒子ビーム発生源から放射された荷電粒子ビームを第1アパーチャで所定サイズの矩形に成形する工程と、前記第1アパーチャで所定サイズの矩形に成形した荷電粒子ビームを第1アパーチャで任意サイズの矩形に成形する工程と、前記第2アパーチャで任意サイズの矩形に成形した荷電粒子ビームをブロックマスクで一括露光用パターンに成形する工程を有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
【0127】
(付記17) 前記ブロックマスクは、矩形に成形された荷電粒子ビームを、選択により、L字形状、L字を90度回転させた形状、L字を180度回転させた形状又はL字を270度回転させた形状に成形可能とされたブロックを有することを特徴とする付記16記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0128】
(付記18) 前記ブロックとして、凹字形パターンを配置したブロック及び逆凹字形パターンを配置したパターンを有するブロック、又は、L字形パターンを配置したブロック、前記L字形パターンを90度回転させたパターンを配置したブロック、前記L字形パターンを180度回転させたパターンを配置したブロック及び前記L字形パターンを270度回転させたパターンを配置したブロック、又は、T字形パターンを配置したブロック及び逆T字形パターンを配置したブロック、又は、H字形パターンを配置したブロック、又は、H字形パターンを90度回転させたパターンを配置したブロック、又は、十字形パターンを配置したブロックを備えていることを特徴とする付記17記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0129】
(付記19) 露光対象に対する露光パターンの設計データとブロックマスク製造用露光データから、前記第2アパーチャで任意サイズの矩形に成形された荷電粒子ビームを前記ブロックマスクで一括露光用パターンに成形する工程に必要な前記ブロックマスク上のブロックの配置位置情報、前記荷電粒子ビームのサイズ情報、前記荷電粒子ビームのブロック上の照射位置情報を作成する工程を有することを特徴とする付記16記載の荷電粒子ビーム露光方法。
【0130】
(付記20) 矩形に成形された荷電粒子ビームを、選択により、L字形状、L字を90度回転させた形状、L字を180度回転させた形状又はL字を270度回転させた形状に成形可能とされたブロックを有することを特徴とするブロックマスク。
【0131】
(付記21) 前記ブロックとして、凹字形パターンを配置したブロック及び逆凹字形パターンを配置したパターンを有するブロック、又は、L字形パターンを配置したブロック、前記L字形パターンを90度回転させたパターンを配置したブロック、前記L字形パターンを180度回転させたパターンを配置したブロック及び前記L字形パターンを270度回転させたパターンを配置したブロック、又は、T字形パターンを配置したブロック及び逆T字形パターンを配置したブロック、又は、H字形パターンを配置したブロック、又は、H字形パターンを90度回転させたパターンを配置したブロック、又は、十字形パターンを配置したブロックを備えていることを特徴とする付記20記載のブロックマスク。
【符号の説明】
【0132】
47…ブロック搭載可能領域
48…ブロックマスクの中心
49〜51…ブロックマスクの周辺の領域
91、92…ブロック
93、94…パターン
95〜104、110〜114…パターン
106〜109…電子ビームの照射位置
115〜117…段差
129、131、133、135…パターン
130、132、134、136…ブロック
137〜140…電子ビームの照射位置
141、143…パターン
142、144…ブロック
145〜148…電子ビームの照射位置
149…パターン
150…ブロック
151〜154…電子ビームの照射位置
155…パターン
156…ブロック
157〜160…電子ビームの照射位置
161…パターン
162…ブロック
163〜166…電子ビームの照射位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム発生源から放射された荷電粒子ビームを所定サイズの矩形に成形する第1アパーチャと、
前記第1アパーチャで所定サイズの矩形に成形した荷電粒子ビームを任意サイズの矩形に成形する第2アパーチャと、
前記第2アパーチャで任意サイズの矩形に成形した荷電粒子ビームを一括露光用パターン形状に成形するブロックマスクと
を有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光装置。
【請求項2】
前記ブロックマスクは、矩形に成形された荷電粒子ビームを、選択により、L字形状、L字を90度回転させた形状、L字を180度回転させた形状又はL字を270度回転させた形状に成形可能とされたブロックを有すること
を特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム露光装置。
【請求項3】
前記ブロックとして、
凹字形パターンを配置したブロック及び逆凹字形パターンを配置したパターンを有するブロック、又は、
L字形パターンを配置したブロック、前記L字形パターンを90度回転させたパターンを配置したブロック、前記L字形パターンを180度回転させたパターンを配置したブロック及び前記L字形パターンを270度回転させたパターンを配置したブロック、又は、
T字形パターンを配置したブロック及び逆T字形パターンを配置したブロック、又は、
H字形パターンを配置したブロック、又は、
H字形パターンを90度回転させたパターンを配置したブロック、又は、
十字形パターンを配置したブロックを有すること
を特徴とする請求項2に記載の荷電粒子ビーム露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−29676(P2011−29676A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253340(P2010−253340)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【分割の表示】特願2004−352351(P2004−352351)の分割
【原出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】