説明

薄膜コイルインダクタ部品及び発振器

【課題】所望の特性を有し、しかもパッケージサイズが十分に小型化したSAW発振器と、このような小型化を可能にするインダクタ部品と、を提供する。
【解決手段】基板2上に渦巻状のスパイラル配線5を有してなる薄膜コイルインダクタ部品1である。スパイラル配線5が、基板2の中心から偏って配置され、スパイラル配線5が配置されない側に、スパイラル配線5の非配置領域9が形成されている。また、この薄膜コイルインダクタ部品1と、これをマウントした半導体チップ23と、薄膜コイルインダクタ部品1の非配置領域9に、片持ち状に設けられた表面弾性波素子25と、を備えてなる発振器20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜コイルインダクタ部品、及びこれを用いた発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発振器として、表面弾性波素子(surface acoustic wave device;SAW)を共振子(SAW共振子)として備えたSAW発振器が知られている。このSAW発振器は、前記SAW共振子とともに発振回路を形成する半導体チップを筐体内に収容し、さらに前記筐体の側壁上に、前記SAW共振子及びインダクタ部品を配置した構造となっている。
【0003】
ところで、近年では携帯情報端末をはじめとして、各種の通信用電子機器の普及が著しく、このような電子機器にあっては、携帯性の向上や高機能化が強く求められている。したがって、通信用電子機器に用いられるSAW発振器にあっても、一層の小型化、薄厚化が要望されている。しかし、従来の構造では、筐体内に半導体チップ、SAW共振子、及びインダクタ部品を平面的に配置した構造をとっているため、パッケージサイズが大きくなっている。
【0004】
そこで、SAW発振器を小型化するべく、例えばその構成部品であるインダクタ部品を小型化、薄厚化することが考えられる。このようなインダクタ部品としては、薄膜コイルを用いることにより、薄厚化を図ったものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
前記の薄厚のインダクタ部品を用いれば、SAW発振器の厚さを許容範囲に抑えた状態で、この薄厚インダクタ部品を前記半導体チップ上に直接配置することが可能になり、その分、SAW発振器の小型化が可能になる。
また、さらなる小型化を図るためには、SAW共振子も半導体チップ上に直接配置することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4120562号公報
【特許文献2】特許第3161147号公報
【特許文献3】特許第3755453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SAW共振子を半導体チップ上に直接配置するには、接着剤を用いてSAW共振子を半導体チップ上にマウントすることが考えられる。
しかし、このようにしてマウントした場合、SAW共振子と半導体チップとの間のクリアランスは接着剤層の厚さによって決まるため、十分に大きなクリアランスが確保されなくなる。すると、SAW共振子と半導体チップとは、振動や衝撃により物理的に干渉し合い、得られるSAW発振器の特性が損なわれてしまう。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、所望の特性を有し、しかもパッケージサイズが十分に小型化したSAW発振器と、このような小型化を可能にするインダクタ部品と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薄膜コイルインダクタ部品は、板上に渦巻状のスパイラル配線を有してなる薄膜コイルインダクタ部品であって、
前記スパイラル配線が、前記基板の中心から偏って配置され、該スパイラル配線が配置されない側に、スパイラル配線の非配置領域が形成されてなることを特徴としている。
【0010】
この薄膜コイルインダクタ部品によれば、そのスパイラル配線を基板の中心から偏って配置し、該スパイラル配線を配置しない側にスパイラル配線の非配置領域を形成したので、この非配置領域に、共振子としての表面弾性波素子を片持ち状に設けることが可能になる。したがって、この薄膜コイルインダクタ部品をSAW発振器に用いる場合に、半導体チップ上にこの薄膜コイルインダクタ部品を直接配置し、さらにその非配置領域に表面弾性波素子を片持ち状に設けることで、SAW発振器が十分に小型化する。また、表面弾性波素子と半導体チップとの間に、十分に大きなクリアランスを確保することが可能になる。
【0011】
本発明の発振器は、半導体チップと、
前記半導体チップ上に設けられた請求項1記載の薄膜コイルインダクタ部品と、
前記薄膜コイルインダクタ部品の前記非配置領域に、片持ち状に設けられた表面弾性波素子と、
を備えてなることを特徴としている。
【0012】
この発振器によれば、半導体チップ上に薄膜コイルインダクタ部品が設けられ、さらにその非配置領域に表面弾性波素子が片持ち状に設けられているので、SAW発振器が十分に小型化する。また、表面弾性波素子と半導体チップとの間に、十分に大きなクリアランスが確保されるので、発振器としての所望の特性が得られる。
【0013】
また、前記発振器において、前記薄膜コイルインダクタ部品は、複数のスパイラル配線を有してなり、前記表面弾性波素子は、前記複数のスパイラル配線に対応して前記非配置領域に複数設けられていてもよい。
このようにすれば、異なる複数の波長を発振することが可能になる。
【0014】
また、前記発振器において、前記薄膜コイルインダクタ部品は、基板と、前記基板上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられた第1樹脂膜と、前記第1樹脂膜上に設けられた前記スパイラル配線と、前記スパイラル配線を覆って設けられた第2樹脂膜と、を有し、かつ、前記非配置領域では前記第1樹脂膜が露出してなり、前記表面弾性波素子は、露出した前記第1樹脂膜の表面に設けられているのが好ましい。
このようにすれば、半導体チップに対する表面弾性波素子の上面の高さが、薄膜コイルインダクタ部品の前記第2樹脂膜の厚さに相当する分低くなり、したがって、この第2樹脂膜の厚さに相当する分薄厚化する。
【0015】
また、前記発振器において、前記薄膜コイルインダクタ部品は、基板と、前記基板上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられた第1樹脂膜と、前記第1樹脂膜上に設けられた前記スパイラル配線と、前記スパイラル配線を覆って設けられた第2樹脂膜と、を有し、かつ、前記非配置領域では前記絶縁膜が露出してなり、前記表面弾性波素子は、露出した前記絶縁膜の表面に設けられているのが好ましい。
このようにすれば、半導体チップに対する表面弾性波素子の上面の高さが、薄膜コイルインダクタ部品の前記第1樹脂膜と第2樹脂膜との合計厚さに相当する分低くなり、したがって、この合計厚さに相当する分薄厚化する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)(b)は薄膜コイルインダクタ部品の第1実施形態の概略構成図である。
【図2】薄膜コイルインダクタ部品の第2実施形態の概略構成を示す側断面図である。
【図3】薄膜コイルインダクタ部品の第3実施形態の概略構成を示す側断面図である。
【図4】薄膜コイルインダクタ部品の第4実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図5】(a)(b)はSAW発振器の第1実施形態の概略構成図である。
【図6】SAW発振器の第2実施形態の概略構成を示す側断面図である。
【図7】SAW発振器の第3実施形態の概略構成を示す側断面図である。
【図8】SAW発振器の第4実施形態の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
(薄膜コイルインダクタ部品)
図1(a)、(b)は、本発明の薄膜コイルインダクタ部品の第1実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線矢視側断面図である。
【0018】
図1(a)、(b)において符号1は薄膜コイルインダクタ部品であり、この薄膜コイルインダクタ部品1は、図1(b)に示すように、基板2と、基板2上に設けられたパシベーション膜(絶縁膜)3と、パシベーション膜3上に設けられた層間絶縁膜(第1樹脂膜)4と、層間絶縁膜4上に設けられたスパイラル配線5と、スパイラル配線5を覆って設けられた保護膜(第2樹脂膜)6と、を備えて構成されている。
【0019】
基板2は、図1(a)に示すようにシリコンやガラスからなる矩形状のもので、必要に応じて、その表面側から裏面(底面)側にかけて貫通する貫通電極(図示せず)が設けられている。このような貫通電極を設けておくことにより、この基板1上に設けられるスパイラル配線5や別の導電パッド(図示せず)等と、後述する半導体チップの導電部(パッド等)とを、導通させることができるようになる。すなわち、このように貫通電極が設けられる場合では、この貫通電極に導通して基板2の底面にはんだボール等からなる外部接続用端子(図示せず)が設けられる。そして、この外部接続用端子を介して、薄膜コイルインダクタ部品1は半導体チップ上に実装されるようになる。
【0020】
パシベーション膜3は、基板2を外部の影響から保護するためのもので、図1(b)に示すように基板2の上面を覆って形成されたものである。
層間絶縁膜4は、パシベーション膜3の外周部を除いた内部を覆って設けられたもので、ポリイミド等の絶縁性樹脂によって形成されたものである。この層間絶縁膜4は、後述するように薄膜コイルインダクタ部品1を半導体チップ上に設けた際、半導体チップと前記基板2との間の熱膨張係数の差に起因する応力が薄膜コイルインダクタ部品1に加わるのを抑制するように、機能するものである。
【0021】
スパイラル配線5は、正方形に近い状態で渦巻状に形成配置されたもので、端子7と端子8との間を連続した状態に形成されたものである。また、このスパイラル配線5は、その渦巻の中心が、前記基板2の中心に一致することなく大きくずれて配置されている。したがって、全体が基板2の中心から偏って配置されたものとなっている。そして、このようにスパイラル配線5が偏って配置されていることで、基板2上には、スパイラル配線5が配置されない側に、スパイラル配線5の非配置領域9が形成されている。この非配置領域9は、後述する表面弾性波素子(SAW共振子)を、片持ち状に実装する領域となっている。
【0022】
保護膜6は、ソルダーレジスト(絶縁性樹脂)からなるもので、前記スパイラル配線5を覆った状態で、前記層間絶縁膜4のほぼ全面に設けられたものである。この保護膜6は、後述するように薄膜コイルインダクタ部品1を半導体チップ上に設ける際などに、スパイラル配線5等が損傷するのを防止するためのものである。なお、この保護膜6には、前記スパイラル配線5の端子7、端子8に対応する箇所に開口が形成されており、これによってこれら開口(図示せず)内には、前記端子7、端子8が露出させられている。
【0023】
このような薄膜コイルインダクタ部品1にあっては、渦巻状のスパイラル配線5を有しているので、全体が十分に薄厚化したものとなっている。また、特にスパイラル配線5を基板2の中心から偏って配置し、基板2上に非配置領域9を形成したので、この非配置領域9を覆う前記保護膜6上に、表面弾性波素子(SAW共振子)を片持ち状に実装することができる。
【0024】
図2は、本発明の薄膜コイルインダクタ部品の第2実施形態を示す図であり、図1(b)に対応する側断面図である。図2において符号10は薄膜コイルインダクタ部品である。この薄膜コイルインダクタ部品10が、図1(a)、(b)に示した薄膜コイルインダクタ部品1と異なるところは、前記非配置領域9上に保護膜6が形成されておらず、したがって非配置領域9においては、保護膜6の下地である層間絶縁膜4が露出している点である。
【0025】
このような薄膜コイルインダクタ部品10にあっても、渦巻状のスパイラル配線5を有しているので、全体が十分に薄厚化したものとなっている。また、非配置領域9において層間絶縁膜4を露出させているので、非配置領域9における層間絶縁膜4上に、表面弾性波素子(SAW共振子)を片持ち状に実装することができる。
【0026】
図3は、本発明の薄膜コイルインダクタ部品の第3実施形態を示す図であり、図1(b)に対応する側断面図である。図3において符号12は薄膜コイルインダクタ部品である。この薄膜コイルインダクタ部品12が、図1(a)、(b)に示した薄膜コイルインダクタ部品1と異なるところは、前記非配置領域9に対応する位置に、保護膜6と層間絶縁膜4の両方が形成されておらず、したがって非配置領域9においては、パシベーション膜3が露出している点である。
【0027】
このような薄膜コイルインダクタ部品12にあっても、渦巻状のスパイラル配線5を有しているので、全体が十分に薄厚化したものとなっている。また、非配置領域9においてパシベーション膜3を露出させているので、非配置領域9におけるパシベーション膜3上に、表面弾性波素子(SAW共振子)を片持ち状に実装することができる。
【0028】
図4は、本発明の薄膜コイルインダクタ部品の第4実施形態を示す図であり、図1(a)に対応する平面図である。図4において符号14は薄膜コイルインダクタ部品である。この薄膜コイルインダクタ部品14が、図1(a)、(b)に示した薄膜コイルインダクタ部品1と異なるところは、層間絶縁膜4上にスパイラル配線15が二つ(複数)形成されている点である。
【0029】
これらスパイラル配線15は、本実施形態では図1(a)に示したスパイラル配線5と相似形状のもので、スパイラル配線5より小さく形成されている。すなわち、これらスパイラル配線15も、正方形に近い状態で渦巻状に形成配置されたもので、端子7と端子8との間を連続した状態に形成されたものである。そして、これらスパイラル配線15も、その渦巻の中心が、矩形状の基板2の長辺の長さ方向における中心線上に位置することなく、この中心線を挟んだ一方の側に偏って配置されている。したがって、スパイラル配線15が偏って配置されていることで、基板2上には、スパイラル配線15が配置されない側、すなわち前記中心線を挟んだ他方の側に、前記実施形態1〜3と同様に非配置領域9が形成されている。
【0030】
このような薄膜コイルインダクタ部品14にあっても、渦巻状のスパイラル配線15を有しているので、全体が十分に薄厚化したものとなっている。また、非配置領域9に表面弾性波素子(SAW共振子)を片持ち状に実装することができる。さらに、二つ(複数)のスパイラル配線15を有しているので、後述するようにこれら二つ(複数)のスパイラル配線15に対応して表面弾性波素子(SAW共振子)を非配置領域9に二つ(複数)設け、発振器を構成すれば、異なる二つ(複数)の波長を発振することが可能になる。
【0031】
なお、この図4に示した薄膜コイルインダクタ部品14についても、その変形例として、前記第2実施形態と同様に、非配置領域9において保護膜6の下地である層間絶縁膜4を露出させ、この層間絶縁膜4上に表面弾性波素子(SAW共振子)を片持ち状に実装可能にしてもよい。同様に、前記第3実施形態と同様に、非配置領域9においてパシベーション膜3を露出させ、このパシベーション膜3上に表面弾性波素子(SAW共振子)を片持ち状に実装可能にしてもよい。
【0032】
次に、このような構成の薄膜コイルインダクタ部品を備えたSAW発振器について説明する。
図5(a)、(b)は、本発明の発振器の第1実施形態となるSAW発振器の第1実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線矢視側断面図である。
図5(a)、(b)において符号20はSAW発振器であり、このSAW発振器20は、セラミックス製の筐体21の収容部22内に、半導体チップ(ICチップ)23と、前記薄膜コイルインダクタ部品24と、表面弾性波素子からなるSAW共振子25とを備えて構成されたものである。
【0033】
半導体チップ23は、周波数調整回路等を有してSAW共振子25とともに発振回路を形成するものである。
薄膜コイルインダクタ部品24は、本実施形態では図1(a)、(b)に示した薄膜コイルインダクタ部品1からなっている。この薄膜コイルインダクタ部品1には、前述したように例えばその基板2の底面に、はんだボール等からなる外部接続用端子(図示せず)が設けられている。したがって、薄膜コイルインダクタ部品24(1)は、この外部接続用端子を介して半導体チップ23上に実装され、電気的に接続されている。なお、このような外部接続用端子による電気的接続に代えて、例えばワイヤボンディングにより、薄膜コイルインダクタ部品24を半導体チップ23に電気的に接続するようにしてもよい。その場合には、例えば接着剤を用いて、薄膜コイルインダクタ部品24を半導体チップ23に実装することができる。
【0034】
SAW共振子25は、例えば水晶からなるもので、固体の表面に1対の櫛形電極を有し、電気信号を表面弾性波(固体表面を伝わる音波、超音波)に変換して伝達し、再び電気信号として出力するものである。このSAW共振子25は、図5(a)、(b)に示したように、前記薄膜コイルインダクタ部品24の非配置領域9に対応する位置にその一端側が片持ち状に設けられている。すなわち、薄膜コイルインダクタ部品24の非配置領域9を覆う保護膜6上に、例えば接着剤によって接着され、固定されている。
そして、このSAW共振子25は、例えばワイヤボンディングにより、薄膜コイルインダクタ部品24のスパイラル配線5の端子7または8に電気的に接続されている。
【0035】
したがって、このSAW発振器20によれば、半導体チップ23上に薄膜コイルインダクタ部品24が設けられ、さらにその非配置領域9にSAW共振子25が片持ち状に設けられているので、SAW共振子25と半導体チップ23との間に、薄膜コイルインダクタ部品24の厚さに相当する大きなクリアランスが確保される。したがって、SAW共振子25と半導体チップ23との間で、振動や衝撃による物理的な干渉が生じるのが防止され、これにより、SAW発振器20は発振器としての所望の特性が得られるようになる。
【0036】
また、SAW共振子25と半導体チップ23とを、薄膜コイルインダクタ部品24の厚さ分、離間しているので、発振特性がより良好になる。すなわち、薄膜コイルインダクタ部品24として本実施形態では図1(a)、(b)に示した薄膜コイルインダクタ部品1を用いているため、後述するように薄膜コイルインダクタ部品10、12を用いた場合に比べ、SAW共振子25と半導体チップ23との間が広くなってここに形成される寄生容量が小さくなる。したがって、寄生容量に影響される発振器の可変幅や異常発振耐性が良好になるため、発振特性がより良好になる。
【0037】
また、半導体チップ23と薄膜コイルインダクタ部品24とSAW共振子25とを、従来のように平面的でなく、立体的に配置したので、筐体21の平面的な大きさ(面積)を小さくすることができ、したがって十分に小型化することができる。さらに、コイルインダクタ部品として薄膜コイルインダクタ部品24を用いているので、SAW発振器20全体の薄厚化を図ることもできる。
【0038】
図6は、本発明のSAW発振器の第2実施形態を示す図であり、図5(b)に対応する側断面図である。図6において符号30はSAW発振器である。このSAW発振器30が、図5(a)、(b)に示したSAW発振器20と異なるところは、薄膜コイルインダクタ部品24として、図2に示した薄膜コイルインダクタ部品10を用いている点である。
すなわち、このSAW発振器30では、薄膜コイルインダクタ部品10の、非配置領域9における層間絶縁膜4上に、SAW共振子25が片持ち状に実装されている。したがって、このSAW発振器30にあっては、図5(b)に示した前記SAW発振器20に比べ、薄膜コイルインダクタ部品12の保護膜6の厚さ分、さらに薄厚化される。
【0039】
図7は、本発明のSAW発振器の第3実施形態を示す図であり、図5(b)に対応する側断面図である。図7において符号40はSAW発振器である。このSAW発振器40が、図5(a)、(b)に示したSAW発振器20と異なるところは、薄膜コイルインダクタ部品24として、図3に示した薄膜コイルインダクタ部品12を用いている点である。
すなわち、このSAW発振器40では、薄膜コイルインダクタ部品12の、非配置領域9におけるパシベーション膜3上に、SAW共振子25が片持ち状に実装されている。したがって、このSAW発振器40にあっては、図6に示した前記SAW発振器30に比べても、薄膜コイルインダクタ部品12の層間絶縁膜4の厚さ分、さらに薄厚化される。
【0040】
図8は、本発明のSAW発振器の第4実施形態を示す図であり、図5(a)に対応する平面図である。図8において符号50はSAW発振器である。このSAW発振器50が、図5(a)、(b)に示したSAW発振器20と異なるところは、薄膜コイルインダクタ部品24として、図4に示した薄膜コイルインダクタ部品14を用いている点である。
すなわち、このSAW発振器40では、薄膜コイルインダクタ部品24(14)が、スパイラル配線15を二つ(複数)形成して構成されている。そして、この薄膜コイルインダクタ部品24(14)の非配置領域9における保護膜6上に、二つ(複数)のスパイラル配線15にそれぞれ対応して、二つ(複数)のSAW共振子25がそれぞれ片持ち状に実装されている。
【0041】
したがって、このSAW発振器50にあっては、スパイラル配線15とSAW共振子25とをそれぞれ二つ(複数)ずつ備えているので、異なる二つ(複数)の波長を発振することが可能になる。
また、前記第1実施形態〜第3実施形態と同様に、SAW共振子25と半導体チップ23との間に大きなクリアランスを確保したので、発振器としての所望の特性が得られるようになる。さらに、半導体チップ23と薄膜コイルインダクタ部品24とSAW共振子25とを立体的に配置したので、十分に小型化されたものとなる。
【0042】
なお、図8に示したSAW発振器50においては、その薄膜コイルインダクタ部品24として、前述した薄膜コイルインダクタ部品14の変形例を用いてもよい。すなわち、非配置領域9において保護膜6の下地である層間絶縁膜4を露出させ、この層間絶縁膜4上にSAW共振子25を片持ち状に実装可能にしてもよく、同様に、非配置領域9においてパシベーション膜3を露出させ、このパシベーション膜3上にSAW共振子25を片持ち状に実装可能にしてもよい。このようにすれば、図6に示したSAW発振器30、図7に示したSAW発振器40と同様に、さらなる薄厚化が可能になる。
【0043】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、図5〜図8に示したSAW発振器では、半導体チップ23上に一つの薄膜コイルインダクタ部品24を設けたが、薄膜コイルインダクタ部品24を複数設けるようにし、SAW共振子25についても、これに対応して複数設けるようにしてもよい。
また、図5〜図8に示したSAW発振器では、SAW共振子25を、平面視矩形状の半導体チップ23に対して、その長辺の長さ方向に沿って片持ち状に配設したが、例えば半導体チップ23の短辺の長さ方向に沿って片持ち状に配設してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1、10、12、14…薄膜コイルインダクタ部品、2…基板、3…パシベーション膜(絶縁膜)、4…層間絶縁膜(第1樹脂膜)、5、15…スパイラル配線、6…保護膜(第2樹脂膜)、20、30、40、50…SAW発振器、21…筐体、23…半導体チップ、24…薄膜コイルインダクタ部品、25…SAW共振子(表面弾性波素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に渦巻状のスパイラル配線を有してなる薄膜コイルインダクタ部品であって、
前記スパイラル配線が、前記基板の中心から偏って配置され、該スパイラル配線が配置されない側に、スパイラル配線の非配置領域が形成されてなることを特徴とする薄膜コイルインダクタ部品。
【請求項2】
半導体チップと、
前記半導体チップ上に設けられた請求項1記載の薄膜コイルインダクタ部品と、
前記薄膜コイルインダクタ部品の前記非配置領域に、片持ち状に設けられた表面弾性波素子と、
を備えてなることを特徴とする発振器。
【請求項3】
前記薄膜コイルインダクタ部品は、複数のスパイラル配線を有してなり、
前記表面弾性波素子は、前記複数のスパイラル配線に対応して前記非配置領域に複数設けられていることを特徴とする請求項2記載の発振器。
【請求項4】
前記薄膜コイルインダクタ部品は、基板と、前記基板上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられた第1樹脂膜と、前記第1樹脂膜上に設けられた前記スパイラル配線と、前記スパイラル配線を覆って設けられた第2樹脂膜と、を有し、かつ、前記非配置領域では前記第1樹脂膜が露出してなり、
前記表面弾性波素子は、露出した前記第1樹脂膜の表面に設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の発振器。
【請求項5】
前記薄膜コイルインダクタ部品は、基板と、前記基板上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられた第1樹脂膜と、前記第1樹脂膜上に設けられた前記スパイラル配線と、前記スパイラル配線を覆って設けられた第2樹脂膜と、を有し、かつ、前記非配置領域では前記絶縁膜が露出してなり、
前記表面弾性波素子は、露出した前記絶縁膜の表面に設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の発振器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−268182(P2010−268182A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117297(P2009−117297)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】