薄膜製造装置及び薄膜の製造方法
【課題】CVD装置が大型化してもチャンバ内を容易に密閉可能であり、多様な形状、及び多様な組み合わせのチャンバを容易に密封可能な、薄膜製造装置及び薄膜の製造方法を提供することである。
【解決手段】成膜チャンバ群14を構成する各チャンバの、薄膜を成膜する対象となる基板を出し入れするための基板出入り口に、基板が通過する開口部と当該開口部を塞ぐスライド扉を配し、開口部の周囲又は扉部の相当位置に気密性と弾性を有するチューブを取り付け、チューブに気体を導入することで、チューブを膨張させて、膨張したチューブを対向する開口部の周囲又は扉部の相当位置に押し当てることにより、チャンバ内を密閉することのできる薄膜製造装置1を提供する。
【解決手段】成膜チャンバ群14を構成する各チャンバの、薄膜を成膜する対象となる基板を出し入れするための基板出入り口に、基板が通過する開口部と当該開口部を塞ぐスライド扉を配し、開口部の周囲又は扉部の相当位置に気密性と弾性を有するチューブを取り付け、チューブに気体を導入することで、チューブを膨張させて、膨張したチューブを対向する開口部の周囲又は扉部の相当位置に押し当てることにより、チャンバ内を密閉することのできる薄膜製造装置1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜製造装置及び薄膜の製造方法に関し、さらに詳細には、室内を減圧して化学気相成長法を実施する薄膜製造装置、及び当該製造装置を用いる薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油等の化石原料の高騰や、発電を行う際の環境への配慮から太陽電池パネルを用いた発電が注目されている。なぜなら、太陽電池は太陽光を基に発電するので、枯渇性燃料が持つ有限性への対策になり、また、発電時に二酸化炭素を排出しないので、地球温暖化の緩和策に成り得る等の理由によるものである。
【0003】
ここで、太陽電池パネル(薄膜太陽電池)は、板状であり、透明導電膜、半導体層、金属導電膜及び有機保護膜を順次、ガラス基板上に積層して製造される。
これらの透明導電膜、半導体層、金属導電膜は、CVD法(化学気相成長法)によって形成される。
例えば、透明導電膜を成膜する際には、LPCVD法(減圧化学気相成長法)を利用して成膜する。ここで、LPCVD法とは、減圧雰囲気中で行うCVD法のことであり、具体的には、減圧雰囲気中で、透明導電膜の原料が含まれるガスをガラス基板の周辺に配し、熱CVDを実行することで、透明導電膜が生成される。なお、ここで熱CVDとはエネルギーによる原料ガスの分解生成物や化学反応を利用して薄膜を形成するCVDの一種である。
【0004】
より具体的には、基板を減圧状態の成膜室に搬入し、成膜室内に錫や亜鉛の供給源となるガスを導入する。そして、ヒータで基板を昇温することで、基板上にSnO2やZnO等の膜を成膜する。
【0005】
ところで、減圧を実施して成膜するCVD装置(薄膜製造装置)では、チャンバの外部からの出入り口や、成膜を実施するチャンバと該チャンバに連結可能なチャンバ(例えば、成膜の下準備を行うチャンバ(成膜準備室)や、成膜後の後処理を行うためのチャンバ(アンロード室)、基板物質を搬送するためのチャンバ等)の間に、各チャンバ内を密閉するためのシール部材が用いられることがある。例えば、減圧を実施して成膜するCVD装置において、チャンバと移動チャンバの間に自己膨張型のシール部材を設けたCVD装置(半導体製造装置)が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている発明は、シール部材を自己膨張型にすることにより、チャンバ間を封止することにより、装置が大型化しても密着性を容易に確保できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−34480公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示されている発明では、搬送用チャンバ、もしくは搬送用チャンバに連結するチャンバにシール部材を設けるため、両チャンバの位置及び姿勢を保持する部材(クランプ機構)が必要になる、シール部材の形状を開口の形状に合わせる必要があるといった装置作成上の制限がある。したがって、チャンバの外部からの出入り口や、互いに移動しないチャンバの間を密閉する場合に、自由度の高い密閉ができない。
【0008】
そこで本発明は、CVD装置が大型化してもチャンバ内を容易に密閉可能であり、多様な形状、及び多様な組み合わせのチャンバを容易に密封可能な、薄膜製造装置及び薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、薄膜を成膜すべき基板を出し入れする基板出入り口を有する1又は複数のチャンバを備え、前記チャンバの少なくとも1つは基板に成膜する成膜室である薄膜製造装置において、前記チャンバは内部を減圧可能であり、前記基板出入り口は、基板が通過する開口部と当該開口部を塞ぐ扉部を有し、当該扉部は、前記チャンバの本体部分に対してスライド移動するスライド扉であり、前記本体部分の開口部の周囲又は扉部の相当位置に気密性と弾性を有するチューブが巡らされ、チューブに気体を導入してチューブを膨張させて、対向する前記開口部の周囲又は扉部の相当位置にチューブの一部を接触可能であることを特徴とする薄膜製造装置である。
【0010】
本発明の薄膜製造装置では、スライドする扉部の相当位置にチューブを設けている。そして、扉部は適宜設計可能であるため、それぞれ開口を有し、各開口が対向するように配されたチャンバ間の開口近傍にシール材を設ける場合と異なり、チューブの形状及び配置方法が開口の形状に依存しないという利点がある。また、スライドする扉部が膨張するチューブを有しているので、チューブを萎んだ状態で扉部を開閉することにより、扉部のスライド動作を妨げない。したがって、通常のOリング等の部材を設けた場合と比べて、扉部の設置位置の自由度が高いという利点がある。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記チャンバとして、前記成膜室の前段に設けられた成膜準備室及び/又は、前記成膜室の後段に設けられたアンロード室をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置である。
【0012】
本発明の薄膜製造装置では、チャンバとして成膜室の前段に設けられた成膜準備室及び/又は、成膜室の後段に設けられたアンロード室をさらに備える。そのため、成膜前の下準備や、成膜後の後処理を成膜室とは別室で実施することができる。そのことにより、基板の成膜中に、次に成膜を行う基板の下準備を行ったり、すでに成膜を行った基板の後処理を行うことができる。そのため、連続して基板の成膜を実施する際に効率よく作業を行うことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記扉部を直線移動させるためのガイドを有し、当該ガイドの一部に逃げ部が設けられ、扉部が開口部を覆う位置にあるとき、前記逃げ部によって扉部が開口部に対して近接・離反方向に移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製造装置である。
【0014】
本発明の薄膜製造装置では、直線移動させるためのガイドが逃げ部を有しており、扉部が開口部を覆う位置にあるとき、前記逃げ部によって扉部が開口部に対して近接・離反方向に移動可能である。そのため、室内の減圧が実施される等の理由により扉部が移動しても、扉部の移動によって周囲の部材が破損しない。したがって、扉部の位置を強固に固定するための部材等を設ける必要が無く、扉部と開口近傍の間に配されているチューブに必要以上の強度を設ける必要がない等の理由により、薄膜製造装置の組み立て及び据え付けの手間と費用を削減できる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、チャンバの本体部分の気圧に応じてチューブ内の圧力を変更することができることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜製造装置である。
【0016】
本発明の薄膜製造装置では、成膜室又は成膜準備室又はアンロード室の本体部分の気圧に応じてチューブ内の圧力を変更することができる。そのため、各室(チャンバ)内の減圧量に応じて、チューブによる封止の強さ、及び封止時のチューブの形状を適宜変更することができる。そのため、室内の密閉を効率よく実施することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜製造装置を用いて、基板の表面に薄膜を成膜することを特徴とする薄膜の製造方法である。
【0018】
本発明の薄膜の製造方法では、上記した本発明の薄膜製造装置を用いて、基板の表面に薄膜を成膜する。そのことにより、成膜の規模(薄膜製造装置の大きさ)に係らず、低コストで効率がよく、精度の高い室内の密閉が可能であり、部材の形状及び材質の自由度が高い薄膜製造装置によって成膜を行うことができる。したがって、良好な環境での成膜を、低費用で実施することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記薄膜製造装置は、成膜室、成膜準備室、及びアンロード室を備えたものであり、減圧した成膜準備室で成膜すべき基板を加熱する工程と、互いに内部を減圧した成膜準備室と成膜室とを基板を受け渡し可能に連結する工程と、成膜室の内部を密閉して基板表面に成膜する工程と、互いに内部を減圧した成膜室とアンロード室とを基板を受け渡し可能に連結する工程と、アンロード室の内部を大気圧と略同等の気圧まで加圧する工程とを包含することを特徴とする請求項5に記載の薄膜の製造方法である。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記基板はガラスであり、前記薄膜は透明導電膜であることを特徴とする請求項5又は6に記載の薄膜の製造方法である。
【0021】
本発明の薄膜の製造方法では、内部を減圧可能な成膜準備室、及び成膜室、並びにアンロード室において、各室の間を精度の高い減圧状態で基板物資を受け渡すことができる。そのため、減圧、加熱、成膜、加圧の各手順を各室に分割することができる。そのため、先行の基板物質の成膜中に、次の基板物質を加熱するといった、所謂ライン生産方式を採用することができるので、生産効率が向上するという利点がある。
また、本発明の薄膜の製造方法では、ガラス基板に透明導電膜を生成する際に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の薄膜製造装置では、装置が大型化してもチャンバ内を容易に密閉可能であり、多様な形状、及び多様な組み合わせのチャンバを密封可能な薄膜製造装置を提供することができる。また、本発明の薄膜の製造方法では、良好な環境での成膜を、低費用で実施する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板出入り口構造を備えたチャンバを有する薄膜製造装置の斜視図である。
【図2】図1の薄膜製造装置の成膜チャンバ群のA−A断面図である。
【図3】図1の薄膜製造装置の成膜チャンバ群を形成する各チャンバの説明図であり、(a)は成膜準備室近傍を示し、(b)は成膜室近傍を示し、(c)はアンロード室近傍を示す。
【図4】図3(a)の一部を拡大した、開口連結部の内部の構造を示す一部断面斜視図である。
【図5】図4のガイド溝の一部を拡大したガイド溝の凹部を示す説明図である。
【図6】基板出入り口構造に用いる扉部を正面側から見た斜視図である。
【図7】基板出入り口構造に用いる扉部を背面側から見た斜視図である。
【図8】図6の扉部に取り付けたシール部材を拡大した斜視図である。
【図9】図8のシール部材を示す断面図であり、(a)はチューブが萎んだ状態を示し、(b)はチューブが膨らんだ状態を示す。
【図10】チューブが膨張して成膜準備室を密閉した状態を示す断面図である。
【図11】扉部を開口連結部に取り付けた状態を示す断面図である。
【図12】開口連結部の内部の構造を示す説明図であり、(a)は扉部が開いた状態を示し、(b)は扉部が閉じた状態を示す。
【図13】扉部に取り付けられたチューブが膨張し、成膜準備室を密閉する様子を示す断面図であり、(a)はチューブの膨張前を示し、(b)はチューブの膨張後を示し、(c)はチューブの膨張した状態で、扉部が成膜準備室に接近した状態を示す。
【図14】チューブが膨張して成膜準備室を密閉した状態を示す断面図である。
【図15】図9のシール部材とは異なるシール部材を示す断面図であり、(a)はチューブが萎んだ状態を示し、(b)はチューブが膨らんだ状態を示す。
【図16】図9及び図15のシール部材とは異なるシール部材を示す断面図であり、(a)はチューブが萎んだ状態を示し、(b)はチューブが膨らんだ状態を示す。
【図17】図6とは異なる基板出入り口構造に用いる扉部を正面側から見た斜視図である。
【図18】図2とは異なる成膜チャンバ群を示す断面図である。
【図19】図18の成膜チャンバ群を形成する各チャンバの説明図であり、(a)は成膜準備室近傍を示し、(b)は成膜室近傍を示し、(c)はアンロード室近傍を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
図1に示す薄膜製造装置1は、LPCVD法によって、ガラス基板に透明導電膜を成膜するものである。薄膜製造装置1は、大きく分けて、ロボット12と、基板キャリア13と、成膜チャンバ群14によって構成されている。成膜チャンバ群14は、成膜室2(プロセスチャンバ)、成膜準備室3(ロードロックヒートチャンバ)、アンロード室4(アンロードチャンバ)、及び開口連結部23〜26によって構成されている。
ここで、図1,2に示されるように、開口連結部23〜26は、それぞれ外観が直方体状であり、外壁に囲まれた内部に空間を有している。そして、基板キャリア13の搬送方向(図2のX方向)の両端に位置する外壁に、それぞれの外壁を貫通する開口が設けられている。そのことにより、開口連結部23〜26は、一方の開口から基板キャリア13を内部空間に導入し、他方の開口から内部空間の基板キャリア13を導出することができる。したがって、基板キャリア13は、開口連結部23〜26を貫通するように進行することができる。
そして、これらの開口の内少なくとも一つは、隣接するチャンバ本体(成膜室2、成膜準備室3、アンロード室4のいずれか)の外壁に設けられた開口(開口2a,2b,3a,3b,4a,4bのいずれか)と連通している。それにより、開口連結部23〜26の内部の空間は、隣接するチャンバ本体の内部の空間と連続している。即ち、開口連結部23、成膜準備室3、開口連結部24、成膜室2、開口連結部25、アンロード室4、開口連結部26の内部を順に、基板キャリア13が進行可能となっており、成膜が実施される際、図2のX方向へ基板キャリア13が進行する。
このうち、成膜チャンバ群14を構成する各開口連結部23〜26に本発明の特徴的な構成が設けられている。以下、薄膜製造装置1の各構成を上述した順に説明する。
【0025】
ロボット12は、図1に示されるように、基板保持部材21を基板キャリア13上に着脱することが可能な装置であり、具体的には、成膜前のガラス基板(図示せず)が嵌め込まれた基板保持部材21を基板キャリア13に装着し、成膜後のガラス基板(図示せず)が嵌め込まれた基板保持部材21を基板キャリア13から取り外す動作を行うものである。
【0026】
基板キャリア13は、図1に示されるように、箱状のカートであり、その上面に図示しない溝が設けられている。そのため、平板状の基板保持部材21を嵌め込むことで、基板キャリア13上に基板保持部材21を立設することができる。なお、基板保持部材21は、ガラス基板を一体に取り付けることができるため、基板キャリア13は、ガラス基板を積載することができる。
そのことにより、薄膜製造装置1に設けられた走行路及び、成膜チャンバ群14を構成する各チャンバ内において、基板キャリア13を移動させることで、ガラス基板を複数同時に規定の方向及び位置に移動させることができる。
【0027】
次に、成膜チャンバ群14を構成する各室、及び開口連結部について説明する。
【0028】
成膜室2は、図3(b)で示されるように、室内を減圧した状態で、ガラス基板に透明導電膜の原料となるガスの吹き付けを実施するチャンバの一部であって、隣接する開口連結部24,25とチャンバを形成する。そのため、図示しない成膜用のガスを供給するための供給口や、真空ポンプに接続された吸引口等を内部に有している。
また、図2、図3(b)に示されるように、成膜室2は外観が直方体状であり、基板キャリア13の進行方向(図2におけるX方向)の両端に位置する外壁に基板キャリア13の出入り口となる開口2a,2bが設けられている。詳細には、図2、図3(b)における右端側に基板キャリア13の入り口となる開口2aが設けられており、左端側に出口となる開口2bが設けられている。
【0029】
成膜準備室3は、図3(a)で示されるように、室内を減圧した状態で、ガラス基板を加熱するチャンバの一部であって、隣接する開口連結部23,24とチャンバを形成する。そのため、図示しない真空ポンプに接続された吸引口や、ヒータ等を内部に有している。
また、図2、図3(a)に示されるように、成膜準備室3は外観が直方体状であり、基板キャリア13の進行方向(図2におけるX方向)の両端に位置する外壁に基板キャリア13の出入り口となる開口3a,3bが設けられている。詳細には、図2、図3(b)における右端側に基板キャリア13の入り口となる開口3aが設けられており、左端側に出口となる開口3bが設けられている。
【0030】
アンロード室4は、図3(c)で示されるように、室内の気圧を真空状態に減圧可能であり、また、減圧した状態から大気圧と同等の気圧まで戻すことが可能なチャンバの一部であって、隣接する開口連結部24,25とチャンバを形成する。そのため、図示しない真空ポンプに接続された吸引口等を内部に有している。
また、アンロード室4は外観が直方体状であり、基板キャリア13の進行方向(図2におけるX方向)の両端に位置する外壁に基板キャリア13の出入り口となる開口4a,4bが設けられている。詳細には、図2、図3(c)における右端側に基板キャリア13の入り口となる開口4aが設けられており、左端側に出口となる開口4bが設けられている。
【0031】
開口連結部23は、外観が直方体状であり、横幅(図2,3におけるY方向の長さ)が成膜準備室3の幅(図2,3におけるY方向の長さ)より長くなっている。そして、外壁に囲まれた内部に空間を有している。内部の空間を形成する外壁の内、基板キャリア13の進行方向(図2,3におけるX方向)両端にある外壁にそれぞれ開口23a,23bが設けられている。開口23a、23bは互いに対向する位置にあり、開口23aは、外部と開口連結部23の内部を繋ぐ孔であり、開口23bは、隣接する成膜準備室3の開口3aと連通している。そして、基板キャリア13の搬送時に開口23aが入り口となり、開口23bが出口となる。
また、開口連結部23は、内部空間に扉部70を有する。詳細は後述するが、この扉部70はスライド移動が可能なスライド扉であり、閉じた状態において開口23b及び開口3aを塞ぐことができる。
【0032】
開口連結部24は、外観が直方体状であり、横幅(図2,3におけるY方向の長さ)が成膜準備室3及び成膜室2の幅(図2,3におけるY方向の長さ)より長くなっている。そして、外壁に囲まれた内部に空間を有している。内部の空間を形成する外壁の内、基板キャリア13の進行方向(図2,3におけるX方向)両端にある外壁にそれぞれ開口24a,24bが設けられている。開口24a、24bは互いに対向する位置にあり、開口24aは、隣接する成膜準備室3の開口3bと連通しており、開口24bは、隣接する成膜室2の開口2aと連通している。そして、基板キャリア13の搬送時に開口24aが入り口となり、開口24bが出口となる。
また、開口連結部24は、内部空間に扉部71を有する。この扉部71はスライド移動が可能なスライド扉であり、閉じた状態において開口24b及び開口2aを塞ぐことができる。
【0033】
開口連結部25は、外観が直方体状であり、横幅(図2,3におけるY方向の長さ)が成膜室2及びアンロード室4の幅(図2,3におけるY方向の長さ)より長くなっている。そして、外壁に囲まれた内部に空間を有している。内部の空間を形成する外壁の内、基板キャリア13の進行方向(図2,3におけるX方向)両端にある外壁にそれぞれ開口25a,25bが設けられている。開口25a、25bは互いに対向する位置にあり、開口25aは、隣接する成膜室2の開口2bと連通しており、開口25bは、隣接するアンロード室4の開口4aと連通している。そして、基板キャリア13の搬送時に開口25aが入り口となり、開口25bが出口となる。
また、開口連結部24は、内部空間に扉部72を有する。この扉部72はスライド移動が可能なスライド扉であり、閉じた状態において開口25a及び開口2bを塞ぐことができる。
【0034】
開口連結部26は、外観が直方体状であり、横幅(図2,3におけるY方向の長さ)がアンロード室4の幅(図2,3におけるY方向の長さ)より長くなっている。そして、外壁に囲まれた内部に空間を有している。内部の空間を形成する外壁の内、基板キャリア13の進行方向(図2,3におけるX方向)両端にある外壁にそれぞれ開口26a,26bが設けられている。開口26a、26bは互いに対向する位置にあり、開口26aは、隣接するアンロード室4の開口4bと連通しており、開口23bは、開口連結部26の内部と外部を繋ぐ孔である。そして、基板キャリア13の搬送時に開口26aが入り口となり、開口26bが出口となる。
また、開口連結部23は、内部空間に扉部73を有する。この扉部73はスライド移動が可能なスライド扉であり、閉じた状態において開口4b及び開口26aを塞ぐことができる。
【0035】
以下、開口連結部23〜26が有する、扉部70〜扉部73を取り付けるための部材について説明するが、開口連結部23についてのみ説明し、開口連結部24〜26及びそれに取り付けられた扉部71〜73については同様の説明を省略する。また、扉部の構造についても扉部70のみについて説明し、構造が同じである他の扉部(扉部71〜扉部73)については説明を省略する。
【0036】
扉部70は、開口連結部23の幅方向(図2,4のY方向)にスライド可能であり、開口3aを開閉可能に取り付けられている。そして、詳細は後述するが、図4に示されるように、開口連結部23がガイド溝41(ガイド)とレール60及び、ギア51を有しており、これらに対して、扉部70の弁体ガイド30、駆動ローラ35、ラック部31がそれぞれ係合することで、開口連結部23に扉部70が取り付けられる。以下それぞれ詳細に説明する。
【0037】
ガイド溝41は、図4に示されるように、2つの板状部材から構成されており、これらを立設した状態で並列に配することで形成される。このガイド溝41は、開口連結部23の上面近傍に配置されている。
加えて、図4,5に示されるように、このガイド溝41を構成する2つ板状部材の内、成膜準備室3に近い位置にある板状部材には、凹部41a(逃げ部)が設けられている。凹部41aは基板キャリア13の進行方向(図4のX方向)に向かって伸びる有底孔である。凹部41aは2つ設けられており、扉部70が開口3aを閉じる位置にあるとき、扉部70の弁体ガイド30と隣接する位置にある。
【0038】
レール60は、図4に示されるように、2つの板状部材から構成されており、これらを立設した状態で並列に配することで形成される。このレール60は、開口連結部23の下面近傍に配置されている。
加えて、前述のガイド溝41と同様に、2つ板状部材の内、成膜準備室3に近い位置にある板状部材には、凹部60a(逃げ部)が設けられている。凹部60aは基板キャリア13の進行方向(図4のX方向)に向かって伸びる有底孔である。凹部60aは4つ設けられており、扉部70が開口3aを閉じる位置にあるとき、扉部70のガイドローラ34と隣接する位置にある。
【0039】
ギア51は、開口連結部23の地下側に埋め込まれた、モータ等の駆動機構(図示しない)と連結しており、駆動機構により時計回り及び反時計回りに回転可能に取り付けられている。
【0040】
扉部70は、図6,7に示されるように、正面視が略正方形状の板状の部材であり、底面にガイドローラ34、正面及び背面の下端部に駆動ローラ35を備え、背面の下端部にラック部31を備えている。さらに上面に弁体ガイド30が設けられており、正面に凸部33とシール部材29とを有している。
【0041】
ガイドローラ34は、図6,7に示されるように、扉部70の底面に回転可能に取り付けられたローラである。ガイドローラ34の回転軸の軸芯は、扉部70の底面に対して垂直となっている。
【0042】
駆動ローラ35は、図6,7に示されるように、扉部70の正面及び背面の下端部の両端に、二つずつ回転可能に取り付けられたローラである。これらの回転軸の軸芯は正面及び背面と垂直になっており、正面から見て時計回り及び反時計回りに回転可能である。なお、駆動ローラ35は、前述のレール60の上に回転可能に設置することができる。
【0043】
ラック部31は、図7に示されるように、扉部70の背面の下端部に一体に取り付けられており、直方体の棒状の部材に歯を取り付けた様な形状となっている。ラック部31は前述のギア51と噛合可能であり、ギア51の回転に伴って水平移動する。
【0044】
弁体ガイド30は、図6に示されるように、扉部70の上面に凸設されており、ローラ部30aを有している。ローラ部30aは弁体ガイド30の突出側先端に回転可能に取り付けられたローラであり、回転軸の軸芯は扉部70の上面と垂直となっている。
【0045】
凸部33は、図6に示されるように、扉部70の正面から突出している角棒状の部分であり、扉部70と一体に設けられている。
【0046】
シール部材29は、図6に示されるように、扉部70の正面に環状に取り付けられて(巡らされて)おり、チューブ7と膨張規制部材32により構成されている。
膨張規制部材32には、図8,9に示されるように、複数のボルト挿通孔45が設けてあり、ボルトによって扉部70に固着される。なお、チューブ7は、膨張規制部材32と扉部70に挟まれることにより扉部70に固着されている。
【0047】
また、図9に示すように、チューブ7には中空部7aに連通する開口部7bが設けてある。開口部7bは、中空部a内に窒素や空気等の加圧気体を供給して膨張部7cを膨張させたり、中空部7a内の気体を排出させて膨張部7cを凹ませるための気体の出入口である。よって、開口部7bは、速やかに中空部7a内に気体を供給したり、逆に中空部7a内から気体を排出することができるように、複数個所に設置するのが好ましい。
【0048】
シール部材29を設置するために、扉部70には、膨張規制部材32のボルト挿通孔45に対応する位置にねじ穴46が設けてある。
また、扉部70には、チューブ7の開口部7bと連通する孔47が設けてある。
【0049】
チューブ7は、例えばシリコンゴム,フッ素ゴム,エチレンプロピレンゴム,クロロプレンゴム,ニトリルゴム等の合成ゴムや天然ゴム等の弾性変形可能な素材で構成されている。また、耐圧性を向上させるために、必要に応じてナイロン布等で補強するのが好ましい。
【0050】
また、膨張規制部材32は、図9に示されるようにチューブ7の膨張部7cの膨張する方向(変形する方向)を規制する立壁部32a,32bを有している。これらの立壁部32a,32bは、平板状であり、あたかも、扉部70に立設されたように設けられている。そして、立壁部32aと立壁部32bの間に膨張部7cを挟むように設けられている。
膨張規制部材32は、チューブ7の変形を規制することができる剛性を有する素材で形成されている。具体的には、形鋼(山型鋼,溝型鋼等)を採用したり、平鋼同士を直角姿勢で溶接することで形成される。また、強化プラスチック等で形成することもできる。
このことにより、膨張部7cは、立壁部32a,32bに沿うように、扉部70から突出する方向へ、膨張(変形)することができるようになっている。
【0051】
前述した扉部70の孔47には配管44が気密を保ち挿通されている。配管44の先端部は、チューブ7の開口部7bに接続されている。配管44には、図示しないコンプレッサが接続されており、配管44を介してチューブ7の中空部7a内には窒素や空気等の加圧気体が供給されたり、中空部7a内の気体を排出したりすることができるようになっている。
【0052】
配管44を介して中空部7a内に加圧気体が供給され、チューブ7が膨張すると、図9(b)に示すように、膨張部7cは、膨張規制部材32によって扉部70の正面と平行な方向への膨張(変形)が規制され、膨張規制部材32の立壁部32a,32bよりも突出量d1だけ突出する。また、中空部41cから気体が排出されると、図9(a)に示すように膨張部7cは、立壁部32a,32bの高さより低くなるように収縮するようになっている。実際には、図10に示すように、立壁部32a,32bの先端から距離d2の位置にチャンバの開口を有する外壁が配置されるので、中空部7a内に気体が供給されると、膨張部7cは成膜準備室3の外壁と立壁部32a,32bに密着(接触)しながら変形する。
【0053】
図10に示すように、チューブ7の中空部7cに気体が供給されて膨張変形すると、膨張部7cが、成膜準備室3の開口3aを有する面の壁の各辺に密着するので、開口連結部23の内部空間と成膜準備室3の内部空間の間の気密は保持される。
【0054】
次に、本発明の特徴的な構成たる、シール部材29を備えた扉部70の開閉動作について順を追って説明する。
【0055】
まず、扉部70の開口連結部23への取り付け構造について説明する。
扉部70が開口連結部23に取り付けられる際、図11に示されるように、扉部70は駆動ローラ35を介して、レール60上に載置される。具体的には、扉部70の正面側と背面側に設けられた対向する位置にある駆動ローラ35が、レール60を構成する2つの板状部材の上面(図11における上面)にそれぞれ載置される。
また、このとき駆動ローラ35は、レール60の上面(図11における上面)と接触した状態で回転可能となっている。
【0056】
そして、弁体ガイド30は、ガイド溝41の2つの板状部材の間に配され、ガイドローラ34は、レール60の2つの板状部材の間に配される。このとき、弁体ガイド30のローラ部30aとガイド溝41の間及び、ガイドローラ34とレール60の間にはそれぞれ隙間がある。そのため、扉部70が開閉方向と垂直な方向(図11における左右方向)のいずれかへ移動した場合、ローラ部30aとガイドローラ34が、それぞれガイド溝41又はレール60の板状部材の内側の側面に接触した状態で回転可能となっている。
【0057】
このように、弁体ガイド30とガイドローラ34を扉部70の上側と下側で、ガイド溝41及びレール60の間に嵌めこむと、扉部70の開閉方向と垂直な方向(図11における左右方向)へ移動したとき、弁体ガイド30のローラ30aがガイド溝41に当接し、ガイドローラ34がレール60に当接する。そのため、扉部70の開閉方向と垂直な方向(図11における左右方向)への移動が制限されるので、扉部70の位置が決まると共に、駆動ローラ35のレール60からの脱輪等を防ぐことができる。
加えて、ローラ部30aとガイドローラ34は、ガイド溝41及びレール60に当接した状態で回転可能であるため、扉部70のスライド移動を妨げない。
【0058】
つまり、扉70は、開閉方向と垂直な方向(図11における左右方向)に遊びのある状態で開口連結部23に取り付けられており、開口連結部23のガイド溝41及びレール60とローラ(駆動ローラ35,弁体ガイド30のローラ30a,ガイドローラ34)を介して接触しているため、滑らかに開閉可能な状態になっている。
【0059】
次に、扉部70を閉じる時の動作について説明する。
図12(a)の状態から、図示しない駆動機構を動作させてギア51を回転させると、ギア51の回転に伴って、ギア51と噛合しているラック部31が水平移動する。このとき、ラック部31は扉部70と一体に取り付けられているので、ラック部31と共に扉部70が図12(a)の状態から図12(b)の状態に移動する。換言すると、扉部70は成膜準備室3の開口3a及び、開口連結部23の開口23bを覆う位置へ移動する。
【0060】
扉部70が図12(b)及び図13(a)の状態にあるとき、シール部材29のチューブ7に、加圧気体(窒素等)を導入することにより、チューブ7を膨張させる。すると、扉部70の上下方向(図13及び図10の上下方向)への膨張は、膨張規制部材32によって規制されるため、チューブ7は、成膜準備室3の外壁に近づく方向に向かって、扉部70から突出していく。そして、チューブ7が成膜準備室3の外壁3cに接触する。
【0061】
チューブ7は成膜準備室3の外壁3cに接触後、膨張を続けることにより、外壁3cとの接触面積を広げながら膨張していき、外壁3cに密着する(図10,図13(b))。
このとき、図14に示されるように、扉部70のチューブ7より外側の空間E2とチューブ7より内側の空間E1が、チューブ7によって気体が流通不可能な状態で分断される。ここで、成膜準備室の開口3aはチューブ7の内側に位置しているので、成膜準備室3は外気(開口連結部23の内部空間)に対して密閉される。
【0062】
ここで、開口3aが扉部70によって密閉された状態において、成膜準備室3内を減圧することにより、成膜準備室3内と開口連結部23内に気圧差が生じたときの扉部70の動作について説明する。
成膜準備室3内が減圧されると、大気圧に押圧されることにより、扉部70が成膜準備室3に近づく方向へ移動する。詳細に説明すると、図13(c)に示されるように、扉部70が成膜準備室3に近づくにつれて、チューブ7は潰れるように形状が変形する。これは、チューブ7が弾性を有するためである。したがって、チューブ7は扉部70の移動を阻害しない。さらに、扉部70が開口3aを閉じる位置にあるので、弁体ガイド30の移動方向にはガイド溝41の凹部41a(逃げ部)があり、ガイドローラ34の移動方向にはレール60の凹部60a(逃げ部)がある(図14)。そして、扉部70の移動後、弁体ガイド30の一部が凹部41aの内側に配され(図13(c))、ガイドローラ34の一部が凹部60aの内側に配されるので、ガイド溝41及びレール60は扉部70の移動を阻害しない。
ここで、扉部70には、凸部33が設けてあり、凸部33の先端は膨張規制部材33の立壁部33a,33bの先端よりも、成膜準備室3に近い位置にあるため(図10に示されるように、凸部33の長さd4は立壁部33a,33bの長さd3より長いため)、凹部33の先端が成膜準備室3の外壁に当接することにより扉部70の移動が止まる。
なお、このことにより、膨張規制部材32等より強度の高い凸部33によって、大気圧から扉部70が受ける力を支えることができるので、扉70の耐久性を確保することができる。
【0063】
また、成膜準備室3内が減圧された状態から、室内を加圧することにより、成膜準備室3内と開口連結部23内に気圧差がない状態になると、チューブ7が成膜準備室3の外壁3cを押圧することにより、図10,図13(b)で示される状態に戻る。換言すると、扉部70は、成膜準備室3は離反する。
【0064】
次に、扉部70を開くときの動作について説明する。扉部70を開く時は、上記したように成膜準備室3内と開口連結部23内に気圧差が無い状態(図10,図13(b)で示される状態)にした上で、扉部70を閉じるときと逆向きにギア51を回転させる。扉部70は、ギア51との接触部分における回転方向に移動するので、図12における手前側に移動する。即ち、扉部70が図12(b)の状態から図12(a)の状態に移動する。
【0065】
上記した例では、成膜準備室3内と成膜準備室3外を大気圧と同等の気圧にして扉部70の開閉動作を行ったが、気圧は大気圧と同等でなくてもよい。室内と室外に大きな気圧差が無ければよく、真空状態であってもよい。即ち、扉部71や扉部72を開く時、成膜室2内と、開口連結部24及び開口連結部25が真空であっても、扉の開閉動作を実施することができる。
【0066】
次に、本実施形態の薄膜製造装置1を用いて、LPCVD(及び熱CVD)によって、ガラス基板に透明導電膜を成膜する手順を、図1を参照しながら説明する。
【0067】
ロボット12によって、あらかじめガラス基板(図示せず)を取り付けた基板保持部材21を、基板キャリア13上の溝(図示せず)に嵌め込む。そして、ロボット12がこの動作を繰り返すことにより、規定の枚数だけ基板キャリア13に基板保持部材21を立設させる。
【0068】
基板保持部材21の基板キャリア13への積載が終了すると、基板キャリア13を成膜チャンバ群14へ移動する。このとき、開口連結部23〜26の扉部70〜73(図2)を閉じ、成膜室2及びアンロード室4を予め減圧しておく。
開口連結部23の扉部70を開いて、基板保持部材21を積載した基板キャリア13を成膜準備室3の内部に移動させる。なお、このとき成膜準備室3内の気圧は、大気圧と同等にしておく。そして、開口連結部23の扉部70を閉じ、成膜準備室3を密閉する。その状態で、成膜準備室3の減圧を実行し、ガラス基板に対して予備加熱を実行する。具体的には、開口連結部23,24の扉部70,71が閉じた状態で、図示しない真空ポンプ(減圧装置)を起動することで、成膜準備室3内の気体を排出する。そのうえで、従来周知のヒータにより、基板保持部材21を加熱することで、ガラス基板を昇温する。
【0069】
次に、開口連結部24の扉部71を開いて、予め減圧しておいた成膜室2の内部へ基板キャリア13を移動させ、開口連結部24の扉部71を閉じる。そして、プロセスガスや水(酸素源となる水)等、成膜に必要な各原料を成膜室2内に導入する。そのことにより、昇温したガラス基板(図示せず)の、基板保持部材21から露出している部分に透明導電膜が蒸着する。また、成膜室2の内部へ基板キャリア13を移動完了させると共に、別の基板キャリア13を成膜準備室3内に移動させる。そして、成膜室2内で成膜を行うと同時に、次に成膜を行うべきガラス基板に対して、減圧下での予備加熱を実施して生産性の向上を図る。
【0070】
成膜完了後、成膜室2から余剰のプロセスガスを排出する。そして、開口連結部25の扉部72を開き、基板キャリア13を予め減圧しておいたアンロード室4に移動し、開口連結部25の扉部72を閉める。
さらに、密閉したアンロード室4に空気を注入し、室内の気圧を大気圧と同等にする。その状態で、開口連結26の扉部73を開き、アンロード室4から基板キャリア13を移動させる。基板キャリア13は、ロボット12の近傍まで移動し、ロボット12によって、基板保持部材21を基板キャリア13から取り外す。その後、適宜の手段によって、基板保持部材21から、ガラス基板を取り外すことにより、透明導電膜を有するガラス基板を得ることができる。
【0071】
以上説明した実施形態では、チューブ7に扉部の背面側から空気を導入したが、空気導入口(開口部7b)を設置する位置はこれに限るものではない。また、チューブ7の形状も上記した形状に限るものではない。例えば、図15,16に示されるように、チューブ80,81の側面に空気導入口である開口部80b,81bを設けてもよい。また、チューブの形状も、図15(b)で示されるように、突出方向先端が丸みを帯びた略長方形状であってよいし、図16(b)で示されるように、断面形状が半円形でもよい。
【0072】
また、前述の実施形態では、膨張規制部材32によりチューブ7を扉部70に固着したが、チューブ7の固着方法はこれに限るものではない。チューブ7の形状や大きさ等に応じて適宜変更してよい。例えば、図16に示されるように、チューブ7自身に平板部分81cを設け、平板部分81cにボルトを挿通可能な孔を設けて、ボルトによってチューブ7を固着してもよい。
【0073】
上記した実施形態では、シール部材29を正面視が正方形状となるように配したが、シール部材29の形状はこれに限るものではない。また、各扉部の形状も上記した形状に限るものではなく、凸部33の形状や数も上記したものに限るものではない。
例えば、図17に示されるように、上側部分が丸みを帯びた形状の扉部75に、五角形状にシール部材29を配し、凸部33を上側に2つ、下側に1つ設けてもよい。これらは適宜変更してよい。
【0074】
また、本実施形態では、成膜チャンバ群14を、成膜室2、成膜準備室3、アンロード室4と開口連結部23〜26によって形成したが、成膜チャンバ群14の成膜室の構成はこれに限るものではない。例えば、成膜準備室3及び開口連結部23を設けずに、成膜室2で基板物質の減圧及び加熱を行った上で成膜を実施する構成にしてもよい。また、アンロード室4及び開口連結部26を設けず、成膜室2で加圧を実施する構成にしてもよい。または、新たなチャンバを加え、成膜室2、成膜準備室3、アンロード室4にて行っていた工程を新たなチャンバの本体で行う構成にしてもよい。即ち、チャンバは少なくとも1つあれば良く、成膜チャンバ群14の構成は適宜変更してよい。
【0075】
また、上記した実施形態のように、成膜チャンバ群14を構成するチャンバの本体である成膜室2、成膜準備室3及びアンロード室4に隣接する全ての開口連結部(開口連結部23〜26)に、本発明の特徴的な構成たる、シール部材29を備えた扉部(以下本発明の扉部)を取り付けることが好ましいが、本発明の扉部は必ずしも全ての開口連結部に設ける必要はない。例えば、本発明の扉部を高い気密性が要求される開口連結部24,25のみに設け、従来周知の密閉方法で他の部分を密閉してもよい。また、成膜チャンバ14の構成が変更された場合、それに応じて本発明の扉部の設ける位置、又は数を変更してよい。即ち、本発明の扉部を設ける位置及び数は自由に変更してよい。
【0076】
さらに、上記した実施形態では、図2,3に示されるように、成膜準備室3と開口連結部23,24、アンロード室4と開口連結部25,26でチャンバを形成したが、本発明の扉部を設けるチャンバはこれに限るものではない。例えば、図18,19に示されるように、開口連結部23,26を設けず、成膜準備室3及びアンロード室4の外壁の形状を変更して、扉部70,73を設けてもよい。即ち、チャンバは内部に空間を有する開口連結部を介して外部と連続してもよく、しなくてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 薄膜製造装置
2 成膜室
2a,2b 開口(開口部)
3 成膜準備室
3a,3b 開口(開口部)
4 アンロード室
4a,4b 開口(開口部)
7 チューブ
41 ガイド溝(ガイド)
41a 凹部(逃げ部)
60a 凹部(逃げ部)
70,71,72,73 扉部
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜製造装置及び薄膜の製造方法に関し、さらに詳細には、室内を減圧して化学気相成長法を実施する薄膜製造装置、及び当該製造装置を用いる薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油等の化石原料の高騰や、発電を行う際の環境への配慮から太陽電池パネルを用いた発電が注目されている。なぜなら、太陽電池は太陽光を基に発電するので、枯渇性燃料が持つ有限性への対策になり、また、発電時に二酸化炭素を排出しないので、地球温暖化の緩和策に成り得る等の理由によるものである。
【0003】
ここで、太陽電池パネル(薄膜太陽電池)は、板状であり、透明導電膜、半導体層、金属導電膜及び有機保護膜を順次、ガラス基板上に積層して製造される。
これらの透明導電膜、半導体層、金属導電膜は、CVD法(化学気相成長法)によって形成される。
例えば、透明導電膜を成膜する際には、LPCVD法(減圧化学気相成長法)を利用して成膜する。ここで、LPCVD法とは、減圧雰囲気中で行うCVD法のことであり、具体的には、減圧雰囲気中で、透明導電膜の原料が含まれるガスをガラス基板の周辺に配し、熱CVDを実行することで、透明導電膜が生成される。なお、ここで熱CVDとはエネルギーによる原料ガスの分解生成物や化学反応を利用して薄膜を形成するCVDの一種である。
【0004】
より具体的には、基板を減圧状態の成膜室に搬入し、成膜室内に錫や亜鉛の供給源となるガスを導入する。そして、ヒータで基板を昇温することで、基板上にSnO2やZnO等の膜を成膜する。
【0005】
ところで、減圧を実施して成膜するCVD装置(薄膜製造装置)では、チャンバの外部からの出入り口や、成膜を実施するチャンバと該チャンバに連結可能なチャンバ(例えば、成膜の下準備を行うチャンバ(成膜準備室)や、成膜後の後処理を行うためのチャンバ(アンロード室)、基板物質を搬送するためのチャンバ等)の間に、各チャンバ内を密閉するためのシール部材が用いられることがある。例えば、減圧を実施して成膜するCVD装置において、チャンバと移動チャンバの間に自己膨張型のシール部材を設けたCVD装置(半導体製造装置)が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている発明は、シール部材を自己膨張型にすることにより、チャンバ間を封止することにより、装置が大型化しても密着性を容易に確保できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−34480公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示されている発明では、搬送用チャンバ、もしくは搬送用チャンバに連結するチャンバにシール部材を設けるため、両チャンバの位置及び姿勢を保持する部材(クランプ機構)が必要になる、シール部材の形状を開口の形状に合わせる必要があるといった装置作成上の制限がある。したがって、チャンバの外部からの出入り口や、互いに移動しないチャンバの間を密閉する場合に、自由度の高い密閉ができない。
【0008】
そこで本発明は、CVD装置が大型化してもチャンバ内を容易に密閉可能であり、多様な形状、及び多様な組み合わせのチャンバを容易に密封可能な、薄膜製造装置及び薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、薄膜を成膜すべき基板を出し入れする基板出入り口を有する1又は複数のチャンバを備え、前記チャンバの少なくとも1つは基板に成膜する成膜室である薄膜製造装置において、前記チャンバは内部を減圧可能であり、前記基板出入り口は、基板が通過する開口部と当該開口部を塞ぐ扉部を有し、当該扉部は、前記チャンバの本体部分に対してスライド移動するスライド扉であり、前記本体部分の開口部の周囲又は扉部の相当位置に気密性と弾性を有するチューブが巡らされ、チューブに気体を導入してチューブを膨張させて、対向する前記開口部の周囲又は扉部の相当位置にチューブの一部を接触可能であることを特徴とする薄膜製造装置である。
【0010】
本発明の薄膜製造装置では、スライドする扉部の相当位置にチューブを設けている。そして、扉部は適宜設計可能であるため、それぞれ開口を有し、各開口が対向するように配されたチャンバ間の開口近傍にシール材を設ける場合と異なり、チューブの形状及び配置方法が開口の形状に依存しないという利点がある。また、スライドする扉部が膨張するチューブを有しているので、チューブを萎んだ状態で扉部を開閉することにより、扉部のスライド動作を妨げない。したがって、通常のOリング等の部材を設けた場合と比べて、扉部の設置位置の自由度が高いという利点がある。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記チャンバとして、前記成膜室の前段に設けられた成膜準備室及び/又は、前記成膜室の後段に設けられたアンロード室をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置である。
【0012】
本発明の薄膜製造装置では、チャンバとして成膜室の前段に設けられた成膜準備室及び/又は、成膜室の後段に設けられたアンロード室をさらに備える。そのため、成膜前の下準備や、成膜後の後処理を成膜室とは別室で実施することができる。そのことにより、基板の成膜中に、次に成膜を行う基板の下準備を行ったり、すでに成膜を行った基板の後処理を行うことができる。そのため、連続して基板の成膜を実施する際に効率よく作業を行うことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記扉部を直線移動させるためのガイドを有し、当該ガイドの一部に逃げ部が設けられ、扉部が開口部を覆う位置にあるとき、前記逃げ部によって扉部が開口部に対して近接・離反方向に移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製造装置である。
【0014】
本発明の薄膜製造装置では、直線移動させるためのガイドが逃げ部を有しており、扉部が開口部を覆う位置にあるとき、前記逃げ部によって扉部が開口部に対して近接・離反方向に移動可能である。そのため、室内の減圧が実施される等の理由により扉部が移動しても、扉部の移動によって周囲の部材が破損しない。したがって、扉部の位置を強固に固定するための部材等を設ける必要が無く、扉部と開口近傍の間に配されているチューブに必要以上の強度を設ける必要がない等の理由により、薄膜製造装置の組み立て及び据え付けの手間と費用を削減できる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、チャンバの本体部分の気圧に応じてチューブ内の圧力を変更することができることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜製造装置である。
【0016】
本発明の薄膜製造装置では、成膜室又は成膜準備室又はアンロード室の本体部分の気圧に応じてチューブ内の圧力を変更することができる。そのため、各室(チャンバ)内の減圧量に応じて、チューブによる封止の強さ、及び封止時のチューブの形状を適宜変更することができる。そのため、室内の密閉を効率よく実施することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜製造装置を用いて、基板の表面に薄膜を成膜することを特徴とする薄膜の製造方法である。
【0018】
本発明の薄膜の製造方法では、上記した本発明の薄膜製造装置を用いて、基板の表面に薄膜を成膜する。そのことにより、成膜の規模(薄膜製造装置の大きさ)に係らず、低コストで効率がよく、精度の高い室内の密閉が可能であり、部材の形状及び材質の自由度が高い薄膜製造装置によって成膜を行うことができる。したがって、良好な環境での成膜を、低費用で実施することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記薄膜製造装置は、成膜室、成膜準備室、及びアンロード室を備えたものであり、減圧した成膜準備室で成膜すべき基板を加熱する工程と、互いに内部を減圧した成膜準備室と成膜室とを基板を受け渡し可能に連結する工程と、成膜室の内部を密閉して基板表面に成膜する工程と、互いに内部を減圧した成膜室とアンロード室とを基板を受け渡し可能に連結する工程と、アンロード室の内部を大気圧と略同等の気圧まで加圧する工程とを包含することを特徴とする請求項5に記載の薄膜の製造方法である。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記基板はガラスであり、前記薄膜は透明導電膜であることを特徴とする請求項5又は6に記載の薄膜の製造方法である。
【0021】
本発明の薄膜の製造方法では、内部を減圧可能な成膜準備室、及び成膜室、並びにアンロード室において、各室の間を精度の高い減圧状態で基板物資を受け渡すことができる。そのため、減圧、加熱、成膜、加圧の各手順を各室に分割することができる。そのため、先行の基板物質の成膜中に、次の基板物質を加熱するといった、所謂ライン生産方式を採用することができるので、生産効率が向上するという利点がある。
また、本発明の薄膜の製造方法では、ガラス基板に透明導電膜を生成する際に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の薄膜製造装置では、装置が大型化してもチャンバ内を容易に密閉可能であり、多様な形状、及び多様な組み合わせのチャンバを密封可能な薄膜製造装置を提供することができる。また、本発明の薄膜の製造方法では、良好な環境での成膜を、低費用で実施する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板出入り口構造を備えたチャンバを有する薄膜製造装置の斜視図である。
【図2】図1の薄膜製造装置の成膜チャンバ群のA−A断面図である。
【図3】図1の薄膜製造装置の成膜チャンバ群を形成する各チャンバの説明図であり、(a)は成膜準備室近傍を示し、(b)は成膜室近傍を示し、(c)はアンロード室近傍を示す。
【図4】図3(a)の一部を拡大した、開口連結部の内部の構造を示す一部断面斜視図である。
【図5】図4のガイド溝の一部を拡大したガイド溝の凹部を示す説明図である。
【図6】基板出入り口構造に用いる扉部を正面側から見た斜視図である。
【図7】基板出入り口構造に用いる扉部を背面側から見た斜視図である。
【図8】図6の扉部に取り付けたシール部材を拡大した斜視図である。
【図9】図8のシール部材を示す断面図であり、(a)はチューブが萎んだ状態を示し、(b)はチューブが膨らんだ状態を示す。
【図10】チューブが膨張して成膜準備室を密閉した状態を示す断面図である。
【図11】扉部を開口連結部に取り付けた状態を示す断面図である。
【図12】開口連結部の内部の構造を示す説明図であり、(a)は扉部が開いた状態を示し、(b)は扉部が閉じた状態を示す。
【図13】扉部に取り付けられたチューブが膨張し、成膜準備室を密閉する様子を示す断面図であり、(a)はチューブの膨張前を示し、(b)はチューブの膨張後を示し、(c)はチューブの膨張した状態で、扉部が成膜準備室に接近した状態を示す。
【図14】チューブが膨張して成膜準備室を密閉した状態を示す断面図である。
【図15】図9のシール部材とは異なるシール部材を示す断面図であり、(a)はチューブが萎んだ状態を示し、(b)はチューブが膨らんだ状態を示す。
【図16】図9及び図15のシール部材とは異なるシール部材を示す断面図であり、(a)はチューブが萎んだ状態を示し、(b)はチューブが膨らんだ状態を示す。
【図17】図6とは異なる基板出入り口構造に用いる扉部を正面側から見た斜視図である。
【図18】図2とは異なる成膜チャンバ群を示す断面図である。
【図19】図18の成膜チャンバ群を形成する各チャンバの説明図であり、(a)は成膜準備室近傍を示し、(b)は成膜室近傍を示し、(c)はアンロード室近傍を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
図1に示す薄膜製造装置1は、LPCVD法によって、ガラス基板に透明導電膜を成膜するものである。薄膜製造装置1は、大きく分けて、ロボット12と、基板キャリア13と、成膜チャンバ群14によって構成されている。成膜チャンバ群14は、成膜室2(プロセスチャンバ)、成膜準備室3(ロードロックヒートチャンバ)、アンロード室4(アンロードチャンバ)、及び開口連結部23〜26によって構成されている。
ここで、図1,2に示されるように、開口連結部23〜26は、それぞれ外観が直方体状であり、外壁に囲まれた内部に空間を有している。そして、基板キャリア13の搬送方向(図2のX方向)の両端に位置する外壁に、それぞれの外壁を貫通する開口が設けられている。そのことにより、開口連結部23〜26は、一方の開口から基板キャリア13を内部空間に導入し、他方の開口から内部空間の基板キャリア13を導出することができる。したがって、基板キャリア13は、開口連結部23〜26を貫通するように進行することができる。
そして、これらの開口の内少なくとも一つは、隣接するチャンバ本体(成膜室2、成膜準備室3、アンロード室4のいずれか)の外壁に設けられた開口(開口2a,2b,3a,3b,4a,4bのいずれか)と連通している。それにより、開口連結部23〜26の内部の空間は、隣接するチャンバ本体の内部の空間と連続している。即ち、開口連結部23、成膜準備室3、開口連結部24、成膜室2、開口連結部25、アンロード室4、開口連結部26の内部を順に、基板キャリア13が進行可能となっており、成膜が実施される際、図2のX方向へ基板キャリア13が進行する。
このうち、成膜チャンバ群14を構成する各開口連結部23〜26に本発明の特徴的な構成が設けられている。以下、薄膜製造装置1の各構成を上述した順に説明する。
【0025】
ロボット12は、図1に示されるように、基板保持部材21を基板キャリア13上に着脱することが可能な装置であり、具体的には、成膜前のガラス基板(図示せず)が嵌め込まれた基板保持部材21を基板キャリア13に装着し、成膜後のガラス基板(図示せず)が嵌め込まれた基板保持部材21を基板キャリア13から取り外す動作を行うものである。
【0026】
基板キャリア13は、図1に示されるように、箱状のカートであり、その上面に図示しない溝が設けられている。そのため、平板状の基板保持部材21を嵌め込むことで、基板キャリア13上に基板保持部材21を立設することができる。なお、基板保持部材21は、ガラス基板を一体に取り付けることができるため、基板キャリア13は、ガラス基板を積載することができる。
そのことにより、薄膜製造装置1に設けられた走行路及び、成膜チャンバ群14を構成する各チャンバ内において、基板キャリア13を移動させることで、ガラス基板を複数同時に規定の方向及び位置に移動させることができる。
【0027】
次に、成膜チャンバ群14を構成する各室、及び開口連結部について説明する。
【0028】
成膜室2は、図3(b)で示されるように、室内を減圧した状態で、ガラス基板に透明導電膜の原料となるガスの吹き付けを実施するチャンバの一部であって、隣接する開口連結部24,25とチャンバを形成する。そのため、図示しない成膜用のガスを供給するための供給口や、真空ポンプに接続された吸引口等を内部に有している。
また、図2、図3(b)に示されるように、成膜室2は外観が直方体状であり、基板キャリア13の進行方向(図2におけるX方向)の両端に位置する外壁に基板キャリア13の出入り口となる開口2a,2bが設けられている。詳細には、図2、図3(b)における右端側に基板キャリア13の入り口となる開口2aが設けられており、左端側に出口となる開口2bが設けられている。
【0029】
成膜準備室3は、図3(a)で示されるように、室内を減圧した状態で、ガラス基板を加熱するチャンバの一部であって、隣接する開口連結部23,24とチャンバを形成する。そのため、図示しない真空ポンプに接続された吸引口や、ヒータ等を内部に有している。
また、図2、図3(a)に示されるように、成膜準備室3は外観が直方体状であり、基板キャリア13の進行方向(図2におけるX方向)の両端に位置する外壁に基板キャリア13の出入り口となる開口3a,3bが設けられている。詳細には、図2、図3(b)における右端側に基板キャリア13の入り口となる開口3aが設けられており、左端側に出口となる開口3bが設けられている。
【0030】
アンロード室4は、図3(c)で示されるように、室内の気圧を真空状態に減圧可能であり、また、減圧した状態から大気圧と同等の気圧まで戻すことが可能なチャンバの一部であって、隣接する開口連結部24,25とチャンバを形成する。そのため、図示しない真空ポンプに接続された吸引口等を内部に有している。
また、アンロード室4は外観が直方体状であり、基板キャリア13の進行方向(図2におけるX方向)の両端に位置する外壁に基板キャリア13の出入り口となる開口4a,4bが設けられている。詳細には、図2、図3(c)における右端側に基板キャリア13の入り口となる開口4aが設けられており、左端側に出口となる開口4bが設けられている。
【0031】
開口連結部23は、外観が直方体状であり、横幅(図2,3におけるY方向の長さ)が成膜準備室3の幅(図2,3におけるY方向の長さ)より長くなっている。そして、外壁に囲まれた内部に空間を有している。内部の空間を形成する外壁の内、基板キャリア13の進行方向(図2,3におけるX方向)両端にある外壁にそれぞれ開口23a,23bが設けられている。開口23a、23bは互いに対向する位置にあり、開口23aは、外部と開口連結部23の内部を繋ぐ孔であり、開口23bは、隣接する成膜準備室3の開口3aと連通している。そして、基板キャリア13の搬送時に開口23aが入り口となり、開口23bが出口となる。
また、開口連結部23は、内部空間に扉部70を有する。詳細は後述するが、この扉部70はスライド移動が可能なスライド扉であり、閉じた状態において開口23b及び開口3aを塞ぐことができる。
【0032】
開口連結部24は、外観が直方体状であり、横幅(図2,3におけるY方向の長さ)が成膜準備室3及び成膜室2の幅(図2,3におけるY方向の長さ)より長くなっている。そして、外壁に囲まれた内部に空間を有している。内部の空間を形成する外壁の内、基板キャリア13の進行方向(図2,3におけるX方向)両端にある外壁にそれぞれ開口24a,24bが設けられている。開口24a、24bは互いに対向する位置にあり、開口24aは、隣接する成膜準備室3の開口3bと連通しており、開口24bは、隣接する成膜室2の開口2aと連通している。そして、基板キャリア13の搬送時に開口24aが入り口となり、開口24bが出口となる。
また、開口連結部24は、内部空間に扉部71を有する。この扉部71はスライド移動が可能なスライド扉であり、閉じた状態において開口24b及び開口2aを塞ぐことができる。
【0033】
開口連結部25は、外観が直方体状であり、横幅(図2,3におけるY方向の長さ)が成膜室2及びアンロード室4の幅(図2,3におけるY方向の長さ)より長くなっている。そして、外壁に囲まれた内部に空間を有している。内部の空間を形成する外壁の内、基板キャリア13の進行方向(図2,3におけるX方向)両端にある外壁にそれぞれ開口25a,25bが設けられている。開口25a、25bは互いに対向する位置にあり、開口25aは、隣接する成膜室2の開口2bと連通しており、開口25bは、隣接するアンロード室4の開口4aと連通している。そして、基板キャリア13の搬送時に開口25aが入り口となり、開口25bが出口となる。
また、開口連結部24は、内部空間に扉部72を有する。この扉部72はスライド移動が可能なスライド扉であり、閉じた状態において開口25a及び開口2bを塞ぐことができる。
【0034】
開口連結部26は、外観が直方体状であり、横幅(図2,3におけるY方向の長さ)がアンロード室4の幅(図2,3におけるY方向の長さ)より長くなっている。そして、外壁に囲まれた内部に空間を有している。内部の空間を形成する外壁の内、基板キャリア13の進行方向(図2,3におけるX方向)両端にある外壁にそれぞれ開口26a,26bが設けられている。開口26a、26bは互いに対向する位置にあり、開口26aは、隣接するアンロード室4の開口4bと連通しており、開口23bは、開口連結部26の内部と外部を繋ぐ孔である。そして、基板キャリア13の搬送時に開口26aが入り口となり、開口26bが出口となる。
また、開口連結部23は、内部空間に扉部73を有する。この扉部73はスライド移動が可能なスライド扉であり、閉じた状態において開口4b及び開口26aを塞ぐことができる。
【0035】
以下、開口連結部23〜26が有する、扉部70〜扉部73を取り付けるための部材について説明するが、開口連結部23についてのみ説明し、開口連結部24〜26及びそれに取り付けられた扉部71〜73については同様の説明を省略する。また、扉部の構造についても扉部70のみについて説明し、構造が同じである他の扉部(扉部71〜扉部73)については説明を省略する。
【0036】
扉部70は、開口連結部23の幅方向(図2,4のY方向)にスライド可能であり、開口3aを開閉可能に取り付けられている。そして、詳細は後述するが、図4に示されるように、開口連結部23がガイド溝41(ガイド)とレール60及び、ギア51を有しており、これらに対して、扉部70の弁体ガイド30、駆動ローラ35、ラック部31がそれぞれ係合することで、開口連結部23に扉部70が取り付けられる。以下それぞれ詳細に説明する。
【0037】
ガイド溝41は、図4に示されるように、2つの板状部材から構成されており、これらを立設した状態で並列に配することで形成される。このガイド溝41は、開口連結部23の上面近傍に配置されている。
加えて、図4,5に示されるように、このガイド溝41を構成する2つ板状部材の内、成膜準備室3に近い位置にある板状部材には、凹部41a(逃げ部)が設けられている。凹部41aは基板キャリア13の進行方向(図4のX方向)に向かって伸びる有底孔である。凹部41aは2つ設けられており、扉部70が開口3aを閉じる位置にあるとき、扉部70の弁体ガイド30と隣接する位置にある。
【0038】
レール60は、図4に示されるように、2つの板状部材から構成されており、これらを立設した状態で並列に配することで形成される。このレール60は、開口連結部23の下面近傍に配置されている。
加えて、前述のガイド溝41と同様に、2つ板状部材の内、成膜準備室3に近い位置にある板状部材には、凹部60a(逃げ部)が設けられている。凹部60aは基板キャリア13の進行方向(図4のX方向)に向かって伸びる有底孔である。凹部60aは4つ設けられており、扉部70が開口3aを閉じる位置にあるとき、扉部70のガイドローラ34と隣接する位置にある。
【0039】
ギア51は、開口連結部23の地下側に埋め込まれた、モータ等の駆動機構(図示しない)と連結しており、駆動機構により時計回り及び反時計回りに回転可能に取り付けられている。
【0040】
扉部70は、図6,7に示されるように、正面視が略正方形状の板状の部材であり、底面にガイドローラ34、正面及び背面の下端部に駆動ローラ35を備え、背面の下端部にラック部31を備えている。さらに上面に弁体ガイド30が設けられており、正面に凸部33とシール部材29とを有している。
【0041】
ガイドローラ34は、図6,7に示されるように、扉部70の底面に回転可能に取り付けられたローラである。ガイドローラ34の回転軸の軸芯は、扉部70の底面に対して垂直となっている。
【0042】
駆動ローラ35は、図6,7に示されるように、扉部70の正面及び背面の下端部の両端に、二つずつ回転可能に取り付けられたローラである。これらの回転軸の軸芯は正面及び背面と垂直になっており、正面から見て時計回り及び反時計回りに回転可能である。なお、駆動ローラ35は、前述のレール60の上に回転可能に設置することができる。
【0043】
ラック部31は、図7に示されるように、扉部70の背面の下端部に一体に取り付けられており、直方体の棒状の部材に歯を取り付けた様な形状となっている。ラック部31は前述のギア51と噛合可能であり、ギア51の回転に伴って水平移動する。
【0044】
弁体ガイド30は、図6に示されるように、扉部70の上面に凸設されており、ローラ部30aを有している。ローラ部30aは弁体ガイド30の突出側先端に回転可能に取り付けられたローラであり、回転軸の軸芯は扉部70の上面と垂直となっている。
【0045】
凸部33は、図6に示されるように、扉部70の正面から突出している角棒状の部分であり、扉部70と一体に設けられている。
【0046】
シール部材29は、図6に示されるように、扉部70の正面に環状に取り付けられて(巡らされて)おり、チューブ7と膨張規制部材32により構成されている。
膨張規制部材32には、図8,9に示されるように、複数のボルト挿通孔45が設けてあり、ボルトによって扉部70に固着される。なお、チューブ7は、膨張規制部材32と扉部70に挟まれることにより扉部70に固着されている。
【0047】
また、図9に示すように、チューブ7には中空部7aに連通する開口部7bが設けてある。開口部7bは、中空部a内に窒素や空気等の加圧気体を供給して膨張部7cを膨張させたり、中空部7a内の気体を排出させて膨張部7cを凹ませるための気体の出入口である。よって、開口部7bは、速やかに中空部7a内に気体を供給したり、逆に中空部7a内から気体を排出することができるように、複数個所に設置するのが好ましい。
【0048】
シール部材29を設置するために、扉部70には、膨張規制部材32のボルト挿通孔45に対応する位置にねじ穴46が設けてある。
また、扉部70には、チューブ7の開口部7bと連通する孔47が設けてある。
【0049】
チューブ7は、例えばシリコンゴム,フッ素ゴム,エチレンプロピレンゴム,クロロプレンゴム,ニトリルゴム等の合成ゴムや天然ゴム等の弾性変形可能な素材で構成されている。また、耐圧性を向上させるために、必要に応じてナイロン布等で補強するのが好ましい。
【0050】
また、膨張規制部材32は、図9に示されるようにチューブ7の膨張部7cの膨張する方向(変形する方向)を規制する立壁部32a,32bを有している。これらの立壁部32a,32bは、平板状であり、あたかも、扉部70に立設されたように設けられている。そして、立壁部32aと立壁部32bの間に膨張部7cを挟むように設けられている。
膨張規制部材32は、チューブ7の変形を規制することができる剛性を有する素材で形成されている。具体的には、形鋼(山型鋼,溝型鋼等)を採用したり、平鋼同士を直角姿勢で溶接することで形成される。また、強化プラスチック等で形成することもできる。
このことにより、膨張部7cは、立壁部32a,32bに沿うように、扉部70から突出する方向へ、膨張(変形)することができるようになっている。
【0051】
前述した扉部70の孔47には配管44が気密を保ち挿通されている。配管44の先端部は、チューブ7の開口部7bに接続されている。配管44には、図示しないコンプレッサが接続されており、配管44を介してチューブ7の中空部7a内には窒素や空気等の加圧気体が供給されたり、中空部7a内の気体を排出したりすることができるようになっている。
【0052】
配管44を介して中空部7a内に加圧気体が供給され、チューブ7が膨張すると、図9(b)に示すように、膨張部7cは、膨張規制部材32によって扉部70の正面と平行な方向への膨張(変形)が規制され、膨張規制部材32の立壁部32a,32bよりも突出量d1だけ突出する。また、中空部41cから気体が排出されると、図9(a)に示すように膨張部7cは、立壁部32a,32bの高さより低くなるように収縮するようになっている。実際には、図10に示すように、立壁部32a,32bの先端から距離d2の位置にチャンバの開口を有する外壁が配置されるので、中空部7a内に気体が供給されると、膨張部7cは成膜準備室3の外壁と立壁部32a,32bに密着(接触)しながら変形する。
【0053】
図10に示すように、チューブ7の中空部7cに気体が供給されて膨張変形すると、膨張部7cが、成膜準備室3の開口3aを有する面の壁の各辺に密着するので、開口連結部23の内部空間と成膜準備室3の内部空間の間の気密は保持される。
【0054】
次に、本発明の特徴的な構成たる、シール部材29を備えた扉部70の開閉動作について順を追って説明する。
【0055】
まず、扉部70の開口連結部23への取り付け構造について説明する。
扉部70が開口連結部23に取り付けられる際、図11に示されるように、扉部70は駆動ローラ35を介して、レール60上に載置される。具体的には、扉部70の正面側と背面側に設けられた対向する位置にある駆動ローラ35が、レール60を構成する2つの板状部材の上面(図11における上面)にそれぞれ載置される。
また、このとき駆動ローラ35は、レール60の上面(図11における上面)と接触した状態で回転可能となっている。
【0056】
そして、弁体ガイド30は、ガイド溝41の2つの板状部材の間に配され、ガイドローラ34は、レール60の2つの板状部材の間に配される。このとき、弁体ガイド30のローラ部30aとガイド溝41の間及び、ガイドローラ34とレール60の間にはそれぞれ隙間がある。そのため、扉部70が開閉方向と垂直な方向(図11における左右方向)のいずれかへ移動した場合、ローラ部30aとガイドローラ34が、それぞれガイド溝41又はレール60の板状部材の内側の側面に接触した状態で回転可能となっている。
【0057】
このように、弁体ガイド30とガイドローラ34を扉部70の上側と下側で、ガイド溝41及びレール60の間に嵌めこむと、扉部70の開閉方向と垂直な方向(図11における左右方向)へ移動したとき、弁体ガイド30のローラ30aがガイド溝41に当接し、ガイドローラ34がレール60に当接する。そのため、扉部70の開閉方向と垂直な方向(図11における左右方向)への移動が制限されるので、扉部70の位置が決まると共に、駆動ローラ35のレール60からの脱輪等を防ぐことができる。
加えて、ローラ部30aとガイドローラ34は、ガイド溝41及びレール60に当接した状態で回転可能であるため、扉部70のスライド移動を妨げない。
【0058】
つまり、扉70は、開閉方向と垂直な方向(図11における左右方向)に遊びのある状態で開口連結部23に取り付けられており、開口連結部23のガイド溝41及びレール60とローラ(駆動ローラ35,弁体ガイド30のローラ30a,ガイドローラ34)を介して接触しているため、滑らかに開閉可能な状態になっている。
【0059】
次に、扉部70を閉じる時の動作について説明する。
図12(a)の状態から、図示しない駆動機構を動作させてギア51を回転させると、ギア51の回転に伴って、ギア51と噛合しているラック部31が水平移動する。このとき、ラック部31は扉部70と一体に取り付けられているので、ラック部31と共に扉部70が図12(a)の状態から図12(b)の状態に移動する。換言すると、扉部70は成膜準備室3の開口3a及び、開口連結部23の開口23bを覆う位置へ移動する。
【0060】
扉部70が図12(b)及び図13(a)の状態にあるとき、シール部材29のチューブ7に、加圧気体(窒素等)を導入することにより、チューブ7を膨張させる。すると、扉部70の上下方向(図13及び図10の上下方向)への膨張は、膨張規制部材32によって規制されるため、チューブ7は、成膜準備室3の外壁に近づく方向に向かって、扉部70から突出していく。そして、チューブ7が成膜準備室3の外壁3cに接触する。
【0061】
チューブ7は成膜準備室3の外壁3cに接触後、膨張を続けることにより、外壁3cとの接触面積を広げながら膨張していき、外壁3cに密着する(図10,図13(b))。
このとき、図14に示されるように、扉部70のチューブ7より外側の空間E2とチューブ7より内側の空間E1が、チューブ7によって気体が流通不可能な状態で分断される。ここで、成膜準備室の開口3aはチューブ7の内側に位置しているので、成膜準備室3は外気(開口連結部23の内部空間)に対して密閉される。
【0062】
ここで、開口3aが扉部70によって密閉された状態において、成膜準備室3内を減圧することにより、成膜準備室3内と開口連結部23内に気圧差が生じたときの扉部70の動作について説明する。
成膜準備室3内が減圧されると、大気圧に押圧されることにより、扉部70が成膜準備室3に近づく方向へ移動する。詳細に説明すると、図13(c)に示されるように、扉部70が成膜準備室3に近づくにつれて、チューブ7は潰れるように形状が変形する。これは、チューブ7が弾性を有するためである。したがって、チューブ7は扉部70の移動を阻害しない。さらに、扉部70が開口3aを閉じる位置にあるので、弁体ガイド30の移動方向にはガイド溝41の凹部41a(逃げ部)があり、ガイドローラ34の移動方向にはレール60の凹部60a(逃げ部)がある(図14)。そして、扉部70の移動後、弁体ガイド30の一部が凹部41aの内側に配され(図13(c))、ガイドローラ34の一部が凹部60aの内側に配されるので、ガイド溝41及びレール60は扉部70の移動を阻害しない。
ここで、扉部70には、凸部33が設けてあり、凸部33の先端は膨張規制部材33の立壁部33a,33bの先端よりも、成膜準備室3に近い位置にあるため(図10に示されるように、凸部33の長さd4は立壁部33a,33bの長さd3より長いため)、凹部33の先端が成膜準備室3の外壁に当接することにより扉部70の移動が止まる。
なお、このことにより、膨張規制部材32等より強度の高い凸部33によって、大気圧から扉部70が受ける力を支えることができるので、扉70の耐久性を確保することができる。
【0063】
また、成膜準備室3内が減圧された状態から、室内を加圧することにより、成膜準備室3内と開口連結部23内に気圧差がない状態になると、チューブ7が成膜準備室3の外壁3cを押圧することにより、図10,図13(b)で示される状態に戻る。換言すると、扉部70は、成膜準備室3は離反する。
【0064】
次に、扉部70を開くときの動作について説明する。扉部70を開く時は、上記したように成膜準備室3内と開口連結部23内に気圧差が無い状態(図10,図13(b)で示される状態)にした上で、扉部70を閉じるときと逆向きにギア51を回転させる。扉部70は、ギア51との接触部分における回転方向に移動するので、図12における手前側に移動する。即ち、扉部70が図12(b)の状態から図12(a)の状態に移動する。
【0065】
上記した例では、成膜準備室3内と成膜準備室3外を大気圧と同等の気圧にして扉部70の開閉動作を行ったが、気圧は大気圧と同等でなくてもよい。室内と室外に大きな気圧差が無ければよく、真空状態であってもよい。即ち、扉部71や扉部72を開く時、成膜室2内と、開口連結部24及び開口連結部25が真空であっても、扉の開閉動作を実施することができる。
【0066】
次に、本実施形態の薄膜製造装置1を用いて、LPCVD(及び熱CVD)によって、ガラス基板に透明導電膜を成膜する手順を、図1を参照しながら説明する。
【0067】
ロボット12によって、あらかじめガラス基板(図示せず)を取り付けた基板保持部材21を、基板キャリア13上の溝(図示せず)に嵌め込む。そして、ロボット12がこの動作を繰り返すことにより、規定の枚数だけ基板キャリア13に基板保持部材21を立設させる。
【0068】
基板保持部材21の基板キャリア13への積載が終了すると、基板キャリア13を成膜チャンバ群14へ移動する。このとき、開口連結部23〜26の扉部70〜73(図2)を閉じ、成膜室2及びアンロード室4を予め減圧しておく。
開口連結部23の扉部70を開いて、基板保持部材21を積載した基板キャリア13を成膜準備室3の内部に移動させる。なお、このとき成膜準備室3内の気圧は、大気圧と同等にしておく。そして、開口連結部23の扉部70を閉じ、成膜準備室3を密閉する。その状態で、成膜準備室3の減圧を実行し、ガラス基板に対して予備加熱を実行する。具体的には、開口連結部23,24の扉部70,71が閉じた状態で、図示しない真空ポンプ(減圧装置)を起動することで、成膜準備室3内の気体を排出する。そのうえで、従来周知のヒータにより、基板保持部材21を加熱することで、ガラス基板を昇温する。
【0069】
次に、開口連結部24の扉部71を開いて、予め減圧しておいた成膜室2の内部へ基板キャリア13を移動させ、開口連結部24の扉部71を閉じる。そして、プロセスガスや水(酸素源となる水)等、成膜に必要な各原料を成膜室2内に導入する。そのことにより、昇温したガラス基板(図示せず)の、基板保持部材21から露出している部分に透明導電膜が蒸着する。また、成膜室2の内部へ基板キャリア13を移動完了させると共に、別の基板キャリア13を成膜準備室3内に移動させる。そして、成膜室2内で成膜を行うと同時に、次に成膜を行うべきガラス基板に対して、減圧下での予備加熱を実施して生産性の向上を図る。
【0070】
成膜完了後、成膜室2から余剰のプロセスガスを排出する。そして、開口連結部25の扉部72を開き、基板キャリア13を予め減圧しておいたアンロード室4に移動し、開口連結部25の扉部72を閉める。
さらに、密閉したアンロード室4に空気を注入し、室内の気圧を大気圧と同等にする。その状態で、開口連結26の扉部73を開き、アンロード室4から基板キャリア13を移動させる。基板キャリア13は、ロボット12の近傍まで移動し、ロボット12によって、基板保持部材21を基板キャリア13から取り外す。その後、適宜の手段によって、基板保持部材21から、ガラス基板を取り外すことにより、透明導電膜を有するガラス基板を得ることができる。
【0071】
以上説明した実施形態では、チューブ7に扉部の背面側から空気を導入したが、空気導入口(開口部7b)を設置する位置はこれに限るものではない。また、チューブ7の形状も上記した形状に限るものではない。例えば、図15,16に示されるように、チューブ80,81の側面に空気導入口である開口部80b,81bを設けてもよい。また、チューブの形状も、図15(b)で示されるように、突出方向先端が丸みを帯びた略長方形状であってよいし、図16(b)で示されるように、断面形状が半円形でもよい。
【0072】
また、前述の実施形態では、膨張規制部材32によりチューブ7を扉部70に固着したが、チューブ7の固着方法はこれに限るものではない。チューブ7の形状や大きさ等に応じて適宜変更してよい。例えば、図16に示されるように、チューブ7自身に平板部分81cを設け、平板部分81cにボルトを挿通可能な孔を設けて、ボルトによってチューブ7を固着してもよい。
【0073】
上記した実施形態では、シール部材29を正面視が正方形状となるように配したが、シール部材29の形状はこれに限るものではない。また、各扉部の形状も上記した形状に限るものではなく、凸部33の形状や数も上記したものに限るものではない。
例えば、図17に示されるように、上側部分が丸みを帯びた形状の扉部75に、五角形状にシール部材29を配し、凸部33を上側に2つ、下側に1つ設けてもよい。これらは適宜変更してよい。
【0074】
また、本実施形態では、成膜チャンバ群14を、成膜室2、成膜準備室3、アンロード室4と開口連結部23〜26によって形成したが、成膜チャンバ群14の成膜室の構成はこれに限るものではない。例えば、成膜準備室3及び開口連結部23を設けずに、成膜室2で基板物質の減圧及び加熱を行った上で成膜を実施する構成にしてもよい。また、アンロード室4及び開口連結部26を設けず、成膜室2で加圧を実施する構成にしてもよい。または、新たなチャンバを加え、成膜室2、成膜準備室3、アンロード室4にて行っていた工程を新たなチャンバの本体で行う構成にしてもよい。即ち、チャンバは少なくとも1つあれば良く、成膜チャンバ群14の構成は適宜変更してよい。
【0075】
また、上記した実施形態のように、成膜チャンバ群14を構成するチャンバの本体である成膜室2、成膜準備室3及びアンロード室4に隣接する全ての開口連結部(開口連結部23〜26)に、本発明の特徴的な構成たる、シール部材29を備えた扉部(以下本発明の扉部)を取り付けることが好ましいが、本発明の扉部は必ずしも全ての開口連結部に設ける必要はない。例えば、本発明の扉部を高い気密性が要求される開口連結部24,25のみに設け、従来周知の密閉方法で他の部分を密閉してもよい。また、成膜チャンバ14の構成が変更された場合、それに応じて本発明の扉部の設ける位置、又は数を変更してよい。即ち、本発明の扉部を設ける位置及び数は自由に変更してよい。
【0076】
さらに、上記した実施形態では、図2,3に示されるように、成膜準備室3と開口連結部23,24、アンロード室4と開口連結部25,26でチャンバを形成したが、本発明の扉部を設けるチャンバはこれに限るものではない。例えば、図18,19に示されるように、開口連結部23,26を設けず、成膜準備室3及びアンロード室4の外壁の形状を変更して、扉部70,73を設けてもよい。即ち、チャンバは内部に空間を有する開口連結部を介して外部と連続してもよく、しなくてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 薄膜製造装置
2 成膜室
2a,2b 開口(開口部)
3 成膜準備室
3a,3b 開口(開口部)
4 アンロード室
4a,4b 開口(開口部)
7 チューブ
41 ガイド溝(ガイド)
41a 凹部(逃げ部)
60a 凹部(逃げ部)
70,71,72,73 扉部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜を成膜すべき基板を出し入れする基板出入り口を有するチャンバを備え、前記チャンバの少なくとも一つは基板に成膜する成膜室である薄膜製造装置において、
前記チャンバは内部を減圧可能であり、
前記基板出入り口は、基板が通過する開口部と当該開口部を塞ぐ扉部を有し、
当該扉部は、前記チャンバの本体部分に対してスライド移動するスライド扉であり、
前記本体部分の開口部の周囲又は扉部の相当位置に気密性と弾性を有するチューブが巡らされ、
チューブに気体を導入してチューブを膨張させて、対向する前記開口部の周囲又は扉部の相当位置にチューブの一部を接触可能であることを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項2】
前記チャンバとして、前記成膜室の前段に設けられた成膜準備室及び/又は前記成膜室の後段に設けられたアンロード室をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置。
【請求項3】
前記扉部を直線移動させるためのガイドを有し、当該ガイドの一部に逃げ部が設けられ、扉部が開口部を覆う位置にあるとき、前記逃げ部によって扉部が開口部に対して近接・離反方向に移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製造装置。
【請求項4】
チャンバの本体部分の気圧に応じてチューブ内の圧力を変更することができることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜製造装置を用いて、基板の表面に薄膜を成膜することを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記薄膜製造装置は、成膜室、成膜準備室、及びアンロード室を備えたものであり、
減圧した成膜準備室で成膜すべき基板を加熱する工程と、
互いに内部を減圧した成膜準備室と成膜室とを基板を受け渡し可能に連結する工程と、
成膜室の内部を密閉して基板表面に成膜する工程と、
互いに内部を減圧した成膜室とアンロード室とを基板を受け渡し可能に連結する工程と、
アンロード室の内部を大気圧と略同等の気圧まで加圧する工程とを包含することを特徴とする請求項5に記載の薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記基板はガラスであり、前記薄膜は透明導電膜であることを特徴とする請求項5又は6に記載の薄膜の製造方法。
【請求項1】
薄膜を成膜すべき基板を出し入れする基板出入り口を有するチャンバを備え、前記チャンバの少なくとも一つは基板に成膜する成膜室である薄膜製造装置において、
前記チャンバは内部を減圧可能であり、
前記基板出入り口は、基板が通過する開口部と当該開口部を塞ぐ扉部を有し、
当該扉部は、前記チャンバの本体部分に対してスライド移動するスライド扉であり、
前記本体部分の開口部の周囲又は扉部の相当位置に気密性と弾性を有するチューブが巡らされ、
チューブに気体を導入してチューブを膨張させて、対向する前記開口部の周囲又は扉部の相当位置にチューブの一部を接触可能であることを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項2】
前記チャンバとして、前記成膜室の前段に設けられた成膜準備室及び/又は前記成膜室の後段に設けられたアンロード室をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置。
【請求項3】
前記扉部を直線移動させるためのガイドを有し、当該ガイドの一部に逃げ部が設けられ、扉部が開口部を覆う位置にあるとき、前記逃げ部によって扉部が開口部に対して近接・離反方向に移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製造装置。
【請求項4】
チャンバの本体部分の気圧に応じてチューブ内の圧力を変更することができることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜製造装置を用いて、基板の表面に薄膜を成膜することを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記薄膜製造装置は、成膜室、成膜準備室、及びアンロード室を備えたものであり、
減圧した成膜準備室で成膜すべき基板を加熱する工程と、
互いに内部を減圧した成膜準備室と成膜室とを基板を受け渡し可能に連結する工程と、
成膜室の内部を密閉して基板表面に成膜する工程と、
互いに内部を減圧した成膜室とアンロード室とを基板を受け渡し可能に連結する工程と、
アンロード室の内部を大気圧と略同等の気圧まで加圧する工程とを包含することを特徴とする請求項5に記載の薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記基板はガラスであり、前記薄膜は透明導電膜であることを特徴とする請求項5又は6に記載の薄膜の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−54912(P2011−54912A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205194(P2009−205194)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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