蛍光体、および発光装置
【課題】 紫外から青色領域に発光ピークを有する光で励起されて赤色発光する蛍光体を用いた発光装置を提供する。
【解決手段】 250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発する発光素子(206)と、前記発光素子からの光を受けて赤色発光する蛍光体を含む発光層(209)とを具備する発光装置である。前記赤色発光する蛍光体の少なくとも一部は、下記一般式(A)で表わされる組成を有する蛍光体粒子を含むことを特徴とする。
(Mg1-w,AEw)a(Ge1-x,Snx)bOc,Cld:zMn (A)
AEはCaおよびSrから選択される少なくとも一種であり、a、b、c、d、w、xおよびzは、それぞれ以下の範囲内の数値である。
3.5≦a≦4.4、0.8≦b≦1.1、5.5≦c≦7.0、0<d≦0.41
0<w≦0.05、 0<x≦0.10、 0<z≦0.03
【解決手段】 250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発する発光素子(206)と、前記発光素子からの光を受けて赤色発光する蛍光体を含む発光層(209)とを具備する発光装置である。前記赤色発光する蛍光体の少なくとも一部は、下記一般式(A)で表わされる組成を有する蛍光体粒子を含むことを特徴とする。
(Mg1-w,AEw)a(Ge1-x,Snx)bOc,Cld:zMn (A)
AEはCaおよびSrから選択される少なくとも一種であり、a、b、c、d、w、xおよびzは、それぞれ以下の範囲内の数値である。
3.5≦a≦4.4、0.8≦b≦1.1、5.5≦c≦7.0、0<d≦0.41
0<w≦0.05、 0<x≦0.10、 0<z≦0.03
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体、および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light−emitting Diode:LED)発光装置は、励起光源としてのLEDチップと蛍光体との組み合わせから構成され、その組み合わせによって様々な色の発光色を実現することができる。白色光を放出する白色LED発光装置には、紫外から青色領域の光を放出するLEDチップと蛍光体とが用いられている。例えば、青色光を放つLEDチップと蛍光体混合物との組み合わせが挙げられる。蛍光体としては、青色の補色である黄色に発光する蛍光体が主に使用され、青色光を放つLEDチップと黄色発光蛍光体との組み合わせは擬似白色光LED発光装置と呼ばれている。その他にも青色光を放つLEDチップと、緑色発光蛍光体または黄色発光蛍光体、および赤色発光蛍光体を含む蛍光体混合物とを組み合わせた三波長型白色LED発光装置が開発されている。しかしながら、そのような発光装置を照明用途やディスプレイのバックライト用途に使用した場合には、物体の見え方を示す演色性や、豊かな色相を表現する色域などの特性が不十分である。特性低下の要因の一つとして、赤色発光蛍光体、特に深みのある赤色を表現する深赤色発光蛍光体は、紫外から青色領域の光を励起光としたときの発光効率が不十分であることが挙げられる。
【0003】
深赤色発光蛍光体の一つとして、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mnが知られている。また、この蛍光体およびイットリウム・アルミニウム・ガーネット系(YAG)黄色発光蛍光体を含む蛍光体混合物と、青色系半導体発光素子とが組み合わされた白色LED発光装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。白色LED発光装置に用いられる蛍光体は、励起光源であるLEDチップの発光波長をよく吸収するのに加え、効率よく可視光を発光することが求められている。しかしながら、前述の深赤色発光蛍光体は特に青色領域の励起光で十分な発光効率が得られず、発光強度が低い。そのため、白色発光装置においては明るさについても課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−101081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、紫外から青色領域に発光ピークを有する光で励起されて高い発光効率で赤色発光する蛍光体、およびかかる蛍光体を用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる蛍光体は、下記一般式(A)で表わされる組成を有する蛍光体粒子を含むことを特徴とする。
【0007】
(Mg1-w,AEw)a(Ge1-x,Snx)bOc,Cld:zMn (A)
AEはCaおよびSrから選択される少なくとも一種であり、a、b、c、d、w、xおよびzは、それぞれ以下の範囲内の数値である。
【0008】
3.5≦a≦4.4、0.8≦b≦1.1、5.5≦c≦7.0、0<d≦0.41
0<w≦0.05、 0<x≦0.10、 0<z≦0.03
本発明の一態様にかかる発光装置は、250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発する発光素子と、前記発光素子からの光を受けて赤色発光する蛍光体を含む発光層とを具備し、前記赤色発光する蛍光体の少なくとも一部は、前述の蛍光体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紫外から青色領域に発光ピークを有する光で励起されて高い発光効率で赤色発光する蛍光体、およびかかる蛍光体を用いた発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態にかかる発光装置の断面図。
【図2】他の実施形態にかかる発光装置の断面図。
【図3】発光素子の拡大図。
【図4】他の実施形態にかかる発光装置の断面図。
【図5】一実施形態にかかる蛍光体の発光スペクトル。
【図6】一実施形態にかかる蛍光体の励起スペクトル。
【図7】比較例の蛍光体の励起スペクトル。
【図8】規格化された励起スペクトル。
【図9】比較例の蛍光体の励起スペクトル。
【図10】規格化された励起スペクトル。
【図11】比較例の蛍光体の励起スペクトル。
【図12】規格化された励起スペクトル。
【図13】比較例の蛍光体の励起スペクトル。
【図14】規格化された励起スペクトル。
【図15】他の実施形態にかかる蛍光体の励起スペクトル。
【図16】規格化された励起スペクトル。
【図17】比較例の発光装置の発光スペクトル。
【図18】一実施形態にかかる発光装置の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための蛍光体および発光装置を示すものであり、本発明は以下の例示に限定されない。
【0012】
また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、記載した実施形態に特定するものではない。特に実施形態に記載されている構成部品の大きさ、材質、形状、その配置等は本発明の範囲を限定する趣旨ではなく、説明例に過ぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等においても説明を明確にするため誇張していることがある。さらに、同一の名称、符号については同一、もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を省略する。本発明を構成する各要素は、複数の要素を一つの部材で構成して、この部材で先の複数の要素を兼用してもよく、逆に一つの要素の機能を複数の部材で分担することも可能である。
【0013】
本発明者らは、検討および研究を重ねた結果、青色領域の励起光で発光する赤色発光蛍光体としてすでに知られている3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn赤色発光蛍光体の発光強度を超える赤色発光蛍光体を見出した。
【0014】
一実施形態にかかる蛍光体は、主結晶相と付活剤としてのマンガン(Mn)とを含有し、下記一般式(A)で表わされる組成を有する。
【0015】
(Mg1-w,AEw)a(Ge1-x,Snx)bOc,Cld:zMn (A)
AEはCaおよびSrから選択される少なくとも一種であり、a、b、c、d、w、xおよびzは、それぞれ以下の範囲内の数値である。
【0016】
3.5≦a≦4.4、 0.8≦b≦1.1、 5.5≦c≦7.0
0<d≦0.41、 0<w≦0.05、 0<x≦0.10、 0<z≦0.03
a、b、cおよびdのうち、1つでも上述の範囲から外れた場合には、得られる蛍光体の発光効率が損なわれる。
【0017】
aの値は、3.9以上4.2以下が好ましく、bの値は、0.9以上1.0以下が好ましい。cの値は、5.6以上6.9以下が好ましく、dの値は、0.40以下が好ましい。
【0018】
本実施形態にかかる蛍光体は、付活剤としてMnを含有するので、前記一般式(A)におけるzは0より大きくなければならない。Mnが含有されない場合(z=0)には、紫外から青色領域に発光ピークを有する光で励起しても発光(スペクトル)は得られない。しかしながら、過剰のMnが含有されると濃度消光現象が生じて、得られる蛍光体の発光強度が弱くなる。これを避けるために、zの上限は0.03に規定される。
【0019】
本実施形態の蛍光体の主結晶相は、基本的な結晶構造として八面体のMgO6構造が八面体のGeO6構造と四面体のGeO4構造と結びついた構造であり、付活剤であるMnは、主結晶相の八面体(Mg,AE)サイトおよび八面体(Ge,Sn)サイトを置換していることが、Mn4+に起因する発光スペクトルから推測される。しかしながら、各サイトがどれだけの割合でMnによって置換されているかを正確に求めることは困難であるので、付活剤であるMnについては、主結晶相を構成している材料に対する比率として規定される。
【0020】
本実施形態にかかる蛍光体中の各元素の含有量は、例えば以下のような手法により分析することができる。Mg、Ca、Sr、Ge、SnおよびMnなどの金属元素の分析にあたっては、合成された蛍光体をアルカリ融解する。得られた融解物を、例えばエスアイアイ・ナノテクノロジー(株)SPS4000等を用いて、内部標準のICP発光分光法にて分析する。
【0021】
非金属元素のうちOを分析するには、まず合成された蛍光体を不活性ガス融解する。融解物を、例えばLECO社製TC−600等を用いて、赤外吸収法により分析する。また、Clを分析するには、まず合成された蛍光体を熱加水分解する。これを、例えば日本ダイオネクス社製DX−120を用いて、イオンクロマトグラフ法により分析を行なう。こうして、蛍光体の組成が求められる。
【0022】
本実施形態の蛍光体には、CaおよびSrの少なくとも一方であるAEともに、SnおよびClが含有されなければならない。AE、SnおよびClのいずれか一つでも欠けると、得られる蛍光体は、紫外から青色の波長領域に発光ピークを有する光で励起した際に、十分な強度で発光しない。
【0023】
こうした元素のいずれか一種でも過剰に含有された蛍光体もまた、紫外から青色の波長領域に発光ピークを有する光で励起した際の発光強度が低下する。AE、SnおよびClといった元素が多すぎる場合には、基本的な結晶構造やMn4+周辺の結晶性を維持することができないものと推測される。それゆえ、上記一般式(A)におけるw,xおよびdの上限は、それぞれ0.05、0.10および0.41に規定される。こうした知見は、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0024】
AEとしてCaが含有される場合には、wおよびdの上限は低下し、wの上限は0.04が好ましく、dの上限は0.25が好ましい。この理由は、結晶構造とイオン半径の違いに基づいて次のように考察される。Sr2+イオンのイオン半径は、Ca2+イオンやMg2+イオンより大きい。前述の一般式(A)で表わされる組成の基本的な結晶構造には、Ge4+イオンよりイオン半径の大きなSn4+やO2-イオンよりイオン半径が大きいCl-イオンが含有されている。このため、Ca2+イオンよりイオン半径の大きなSr2+イオンが含有されることによって、SnやClが含有される組成範囲が広くなったと推測される。
【0025】
AEとして含有される元素がSrおよびCaのいずれであっても、wの下限は0.03が好ましく、xの下限は0.08が好ましい。こうした範囲内で各元素が含有された場合には、十分な発光強度が得られる利点がある。
【0026】
一般式(A)で表される蛍光体の結晶相は、以下の手法により同定することができる。まず、粉末X線回折分析法(X−ray diffractometry:XRD)によって回折パターンを測定する。測定した回折パターンを、JCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)カードと比較して、結晶相が同定される。
【0027】
XRD測定により得られる回折ピークは、JCPDSカードの複数の回折ピークに該当する。該当するピークは、JCPDSカード#23−1225の斜方晶系Mg3.5Ge1.25-xO6F4-x相、#23−1227の斜方晶系Mg3.5Ge1.25O6相、および#28−617のMg5GeO6F2相の回折ピークに類似の回折ピークである。一般式(A)で表わされる蛍光体の組成と合致する組成のJCPDSカードが存在しないために、複数の回折ピークが該当するものと推測される。既報の化合物の構成元素の一部がイオン半径の大きな元素に置換されていることが、既存のJCPDSカードと合致しない理由である。
【0028】
本実施形態の蛍光体は一般式(A)で表わされる組成を有するが、厳密にはAEおよびSnは、それぞれ、MgおよびGeサイトを完全に置換しているわけではない。一部は格子間などに侵入して、欠陥サイトが生成されていることが考えられる。Clも同様に、Oサイトの一部を置換しつつ格子間などに侵入しているものと推測される。3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn赤色発光蛍光体などでは、一部のカチオンサイトが欠陥サイトを形成しているとの報告があり、本実施形態にかかる蛍光体もXRD回折パターンより類似の結晶構造を有していることが考えられ、同様の現象が生じているものと推測される。
【0029】
本実施形態にかかる蛍光体を、紫外から青色波長領域(250nm以上490nm以下)に発光ピークを有する光で励起した際に得られる発光スペクトルは、650nm以上665nm以下の波長領域に半値幅が20nm以内の主発光ピークを有する。蛍光体の励起には、例えば、発光ピークが400nmの近紫外領域LEDや460nm青色領域LED等を用いることができ、分光光度計を用いて測定する。分光光度計としては、例えば大塚電子(株)IMUC−7000G等の分光光度計を用いることができる。
【0030】
主発光ピークとは、発光スペクトルのピーク強度が最も大きくなる波長をさす。蛍光体作製時の少量の元素添加やわずかな組成変動による10nm程度の発光ピークの変化などは、これまで報告されている主発光ピークとみなすことができる。
【0031】
本実施形態にかかる蛍光体は、紫外から青色の波長領域に発光ピークを有する発光素子と組み合わせて、本実施形態にかかる発光装置を得ることができる。主発光ピークを検出した励起スペクトルから、本実施形態の蛍光体の励起に用いられる波長の下限は、250nmに規定される。一方、490nmを超える波長で励起した際には、本実施形態にかかる蛍光体はほとんど発光しないために、励起波長の上限は490nmに規定される。420nm以上の波長で励起した際は、既存の3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn赤色発光蛍光体より高い発光強度を得ることができる。
【0032】
本実施形態にかかる蛍光体は、以下の方法により製造することができる。出発原料としては、構成元素の酸化物、塩化物、および炭酸塩化合物などの粉末を用いることができる。構成元素の原料を所定量秤量し、ボールミル等で混合する。必要に応じて、結晶成長剤を加えてもよい。
【0033】
例えば、Mn源としては、MnCO3、Mn2O3、MnO2、およびMnCl2等を用いることができる。Mg源としては(塩基性)炭酸マグネシウム(mMgCO3・Mg(OH)2・nH2O)、MgO、およびMgCl2等を用いることができる。Ca源としては、例えばCaCO3、CaO、CaCl2、CaCl2・2H2O、およびCaCl2・4H2O等を用いることができ、Sr源としては、例えばSrCO3、SrO、SrCl2、SrCl2・6H2O等を用いることができる。Ge源としては例えばGeO2等が挙げられ、Sn源としては例えばSnO2等を用いることができる。
【0034】
酸化物、炭酸塩、および塩化物といった原料粉末は、目的とされる組成比に合わせて調合する。原料粉末の混合にあたっては、溶媒を使用しない乾式混合法、およびエタノール等の有機溶媒を使用した湿式混合法のいずれを用いてもよい。
【0035】
また、Cl源は、結晶成長剤として使用することができ、また、蛍光体合成のための高温焼成時には揮散を生じる。したがって、通常、これを考慮してCl源としては、塩化アンモニウムなどのアンモニウムの塩化物が挙げられる。さらに、アルカリ金属の塩化物や、アルカリ土類金属の塩化物を用いてもよい。目的とした組成からのずれを防止するために、結晶成長剤は、原料粉末全体の0.01重量%以上0.3重量%以下程度の量で添加されることが好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物は、蛍光体中に固溶したり、他の原料と反応して異相を生成するおそれがある。これを避けるため、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物の添加量は、0.1重量%以下とすることが望まれる。
【0036】
上述したような原料粉末が混合された混合原料を坩堝等の焼成容器に収容し、熱処理を行なって焼成品を得る。熱処理は、大気雰囲気、N2雰囲気、またはAr雰囲気中で行なわれる。こうした雰囲気中で熱処理することによって、Cl元素の揮散や原料の吸湿を防止するとともに、蛍光体の合成を促進することができる。Cl2ガスやHClガスを混合して使用しても同様の効果が得られるものの、熱処理施設や排ガス処理施設など高コストとなってしまう。こうした点から、大気雰囲気、N2雰囲気、またはAr雰囲気中での熱処理が好ましい。
【0037】
熱処理の温度および時間は、1000℃〜1400℃、0.5〜10時間とすることができる。焼成温度が低すぎる場合には、原材料が未反応のままとなり、蛍光体の発光強度は低下する。焼成時間が短すぎる場合も、同様の理由から蛍光体の発光強度は低下する。焼成温度が高すぎる場合には、原材料または生成物の溶融、あるいは混合した原料の一部の揮散といった不都合が生じるおそれがある。焼成時間が長すぎる場合も、同様の不都合が生じるおそれがある。
【0038】
得られた焼成品を粉砕して再度容器に収容し、大気雰囲気、N2雰囲気またはAr雰囲気中で二次焼成する。二次焼成前の粉砕は特に規定されず、一次焼成品の塊を、乳鉢等を用いて砕いて表面積が増大すればよい。二次焼成の際には、上述の塩化物結晶成長剤を添加することもできる。二次焼成品を、粉砕、篩い分けすることによって、本実施形態の蛍光体が得られる。得られた蛍光体を発光装置などに適用する際には、必要に応じて、純水などを使用して洗浄等の後処理を適宜施すことができる。
【0039】
本実施形態の蛍光体粒子の表面には、有機材料または無機材料からなる表層材を設けてもよい。表層材は、水分、熱、湿度、および紫外線等の外的要因により蛍光体が劣化するのを防止する作用を有する。さらに、蛍光体の分散性を調整することが可能となり、蛍光層の設計を容易に行なうことができる。
【0040】
表層材の形成に用い得る材料は、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、テトラエトキシシラン(TEOS)、シリカ、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム、カルシウムポリフォスフェート、シリコーンオイル、およびシリコーングリースからなる群から選択することができる。ケイ酸亜鉛およびケイ酸アルミニウムは、例えばZnO・cSiO2(1≦c≦4)、およびAl2O3・dSiO2(1≦d≦10)でそれぞれ表わされる。こうした材料は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
表層材は、分散液または溶液を用いて蛍光体粒子表面に設けることができる。分散液または溶液中に粒子を所定時間浸漬した後、加熱等により乾燥させることによって表層材が形成される。表層材は蛍光体粒子表面を完全に覆う必要はなく、蛍光体粒子の一部が露出していてもよい。蛍光体粒子の0.1%以上の体積割合で、蛍光体粒子の表面に表層材が存在すれば、その効果が得られる。ただし、蛍光体本来の機能を損なわないために、表層材の体積割合は、蛍光体粒子の5%程度にとどめることが望まれる。
【0042】
本実施形態の蛍光体は、発光装置において使用する塗布方法に応じた粒径へと分級される。紫外から青色領域に発光ピークを有する励起光を使用した通常の白色LEDなどでは、篩分けにより5μmから50μm程度の平均粒径に分級して使用される。1μm以下のように平均粒径が小さすぎる蛍光体では、最表面の非発光層の割合が増加したり、励起光を乱反射したりして、発光強度が低下してしまう。一方、平均粒径が大きすぎる蛍光体は、発光層を形成する際の塗布装置に目詰まりする。その結果、作業効率や歩留りの低下や発光装置の色ムラの原因となってしまう。5μmから50μm程度の平均粒径を有する蛍光体であれば、こうした不都合を回避することができる。
【0043】
上述したように、本実施形態の蛍光体は、紫外から青色領域に発光ピークを有する光で励起することによって、650nm以上665nm以下の波長領域に半値幅が20nm以内のMn4+に起因する主発光ピークを有する発光が得られる。本実施形態の蛍光体を、紫外から青色領域に発光ピークを有する発光素子と組み合わせることによって、高効率で高演色性の発光装置が得られる。発光素子としては、LEDチップやレーザーダイオードなどの固体光源素子を使用できる。
【0044】
本実施形態にかかる蛍光体の発光色は、赤色から深赤色である。したがって、青色発光蛍光体や、緑色発光蛍光体および黄色発光蛍光体と組み合わせて用いることにより、白色発光装置が得られる。使用する蛍光体は、発光装置の用途に応じて変更することができる。例えば、青色波長領域(430〜490nm)の光源を使用する場合には、本実施形態の蛍光体に加えて、黄色発光蛍光体と組み合わせることにより白色発光装置が得られる。黄色発光蛍光体と組み合わせることによって、効率と演色性とを両立した色温度の低い白色発光装置が得られる。
【0045】
緑色発光蛍光体または黄色発光蛍光体は、500nm以上580nm以下の波長領域に主発光ピークを有する蛍光体ということができる。例えば、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu、Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:Ce等のケイ酸塩蛍光体、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce、BaMgAl10O17:Eu,Mn等のアルミン酸塩蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Ga2S4:Eu等の硫化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Eu、(Ca,Sr)−αSiAlON等のアルカリ土類酸窒化物蛍光体などが挙げられる。
【0046】
紫外から近紫外波長領域(380〜440nm)の光源を使用する場合、前述の緑色発光蛍光体および黄色発光蛍光体とともに青色発光光体を用いることが好ましい。青色発光蛍光体は、440nm以上500nm以下の波長領域に主発光ピークを有する蛍光体ということができる。例えば、(Sr,Ca,Ba,Mg)5(PO4)3(Cl,Br):Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)5(PO4)3Cl:Eu等のハロりん酸塩蛍光体、2SrO・0.84P2O5・0.16B2O3:Eu等のリン酸塩蛍光体、およびBaMgAl10O17:Eu等のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体などが挙げられる。
【0047】
上述の蛍光体に加えて、用途に応じて、青緑色、橙色および赤色の各色を発光する蛍光体をさらに配合して用いてもよい。
【0048】
橙色または赤色発光蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu等のケイ酸塩蛍光体、Li(Eu,Sm)W2O8等のタングステン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)2O2S:Eu等の酸硫化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba)S:Eu等の硫化物蛍光体、(Sr,Ba,Ca)2Si5N8:Eu、および(Sr,Ca)AlSiN3:Eu等の窒化物蛍光体などが挙げられる。
【0049】
本実施形態の蛍光体を、こうした蛍光体に添加して使用することによって、効率だけでなく、照明用途での演色性を高めたり、バックライト用途での色域がさらに広げられる。本実施形態の蛍光体の発光色は赤色から深赤色であるため、主発光ピーク波長が長波長の蛍光体と組み合わせた場合には効果が低減するおそれがある。これを避けるために、640nm以下の主発光ピーク波長の蛍光体と組み合わせることが好ましい。
【0050】
以下、図面を参照して本実施形態にかかる発光装置を説明する。
【0051】
図1に示す発光装置においては、樹脂ステム200はリードフレームを成形してなるリード201およびリード202と、これに一体成形されてなる樹脂部203とを有する。樹脂部203は、上部が底部より広い凹部205を有しており、この凹部の側面は反射面204として作用する。
【0052】
凹部205の略円形底面中央部には、発光素子206がAgペースト等によりマウントされている。発光素子206は、250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発する。発光素子206としては、例えば、GaAs系、およびGaN系等の発光ダイオード等を用いることが可能である。発光素子206の電極(図示せず)は、Auなどからなるボンディングワイヤ207および208によって、リード201およびリード202にそれぞれ接続されている。なお、リード201および202の配置は、適宜変更することができる。
【0053】
樹脂部203の凹部205内には、一実施形態にかかる蛍光体210を含有する発光層209が配置される。発光層209においては、例えばシリコーン樹脂からなる樹脂層中に、5wt%以上50wt%以下の割合で蛍光体が分散される。蛍光体は、有機材料である樹脂や無機材料であるガラスなど種々のバインダーによって、発光素子206近傍に固定させることができる。
【0054】
有機材料のバインダーとしては、上述したシリコーン樹脂の他にエポキシ樹脂、アクリル樹脂など耐光性に優れた透明樹脂が適している。無機材料のバインダーとしては、アルカリ土類ホウ酸塩等を使用した低融点ガラス等、粒径の大きな蛍光体を付着させるために超微粒子のシリカ、アルミナ等、沈殿法により得られるアルカリ土類リン酸塩等が適している。こうしたバインダーは、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
発光素子206としては、n型電極とp型電極とを同一面上に有するフリップチップ型のものを用いることもできる。この場合には、ワイヤの断線や剥離、ワイヤによる光吸収等のワイヤに起因した問題を解消して、信頼性の高い高輝度な発光装置が得られる。また、n型基板を有する発光素子を用いて、次のような構成とすることもできる。発光素子のn型基板の裏面にn型電極を形成し、基板上に積層された半導体層の上面にはp型電極を形成する。n型電極をリード上にマウントし、p型電極は、ワイヤにより他方のリードに接続する。
【0056】
発光素子206のサイズ、凹部205の寸法および形状は、適宜変更することができる。
【0057】
図2に示す発光装置は、封止樹脂ステム100と、その上にマウントされた発光素子106Fと、この発光素子106Fを覆う発光層111とを有する。封止樹脂ステム100は、リードフレームから形成されたリード101、102と、これと一体的に成型された樹脂部103とを有する。リード101、102は、それぞれの一端が近接対向するように配置されている。リード101、102の他端は、互いに反対方向に延在し、樹脂部103から外部に導出されている。
【0058】
樹脂部103には開口が設けられ、開口の底面においては、保護用ツェナー・ダイオード106Eが接着剤107によりリード101上にマウントされている。ダイオード106Eの上には、発光素子106Fが実装され、ダイオード106Eは、ワイヤ109によりリード102に接続されている。発光素子106Fは、250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発する。
【0059】
発光素子106Fは、樹脂部103の内壁面に取り囲まれ、この内壁面は傾斜して光を反射する反射面104として作用する。開口内に充填された発光層111には、一実施形態にかかる蛍光体110が含有されている。
【0060】
こうした発光装置における発光素子周辺部分について、詳細に説明する。図3に示されるように、保護用ダイオード106Eは、n型シリコン基板150の表面にp型領域152が形成されたプレーナ構造を有する。p型領域152上にはp側電極154が形成され、基板150の裏面にはn側電極156が設けられる。このn側電極156に対向して、ダイオード106Eの表面にもn側電極158が設けられる。2つのn側電極156および158は、ダイオード106Eの側面に設けられた配線層160によって接続される。さらに、p側電極154およびn側電極158が設けられたダイオード106Eの表面には、高反射膜162が形成されている。高反射膜162は、発光素子106Fから放出される光に対して高い反射率を有する。
【0061】
発光素子106Fにおいては、バッファ層122、n型コンタクト層123、n型クラッド層132、活性層124、p型クラッド層125、およびp型コンタクト層126が、透光性基板138の上に順次積層されている。さらに、n型コンタクト層123の上にはn側電極127が形成され、p型コンタクト層126の上にはp側電極128が形成されている。活性層124から放出される光は、透光性基板138を透過して取り出される。
【0062】
発光素子106Fは、図示するようにバンプによりダイオード106Eにフリップ・チップ・マウントされている。具体的には、発光素子106Fのp側電極128は、バンプ142によってダイオード106Eのn側電極158に電気的に接続されている。また、発光素子106Fのn側電極127は、バンプ144によってダイオード106Eのp側電極154に電気的に接続されている。ダイオード106Eのp側電極154には、ワイヤ109がボンディングされ、このワイヤ109は、図2を参照して説明したようにリード102に接続されている。
【0063】
250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発すれば、発光素子106Fの構成は適宜変更することができる。
【0064】
図4に示す砲弾型の発光装置においては、発光素子51は、リード50’にマウント材52を介して実装される。この発光素子51は、250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発し、発光層としてのプレディップ材54で覆われる。発光層には、一実施形態にかかる蛍光体56が含有される。ワイヤ53により、リード50が発光素子51に接続され、キャスティング材55で封止されている。
【0065】
いずれの構成の発光装置においても、発光素子は250nm以上490nm以下の波長範囲の光を発する発光素子からの光を受けるように、一実施形態にかかる蛍光体を含む発光層が設けられるので、高効率で高演色性の発光装置が得られる。
【0066】
本実施形態にかかる発光装置、例えば白色LEDは一般照明等に好適に用いられる。さらに、カラーフィルターなどのフィルターと発光装置を組み合わせて使用される発光デバイス、例えば液晶用バックライト用の光源等としても最適である。具体的には、液晶のバックライト光源や青色発光層を使用した無機エレクトロルミネッセンス装置の赤色発光材料としても使用することができる。
【0067】
以下、実施例および比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
原料粉末として、塩基性炭酸マグネシウム粉末34.2g、MgCl2粉末2.0g、CaCO3粉末2.0g、GeO2粉末9.6g、SnO2粉末1.5g、およびMnO2粉末1.8gを用意した。ボールミルで均一に混合し、得られた混合粉末を坩堝に収容した。これを炉内に配置し、大気雰囲気中、1000〜1400℃で0.5〜8時間焼成して、一次焼成品を得た。
【0069】
得られた一次焼成品を粉砕し、結晶成長剤として0.1wt%のNH4Clを添加して、再び坩堝に収容した。これを炉内に配置し、大気雰囲気中、800〜1200℃で0.5〜8時間焼成して二次焼成品を得た。二次焼成品を粉砕後、篩い分けして実施例1の蛍光体を得た。
【0070】
定量分析の結果、実施例1の蛍光体の組成は、(Mg0.96,Ca0.04)3.9(Ge0.90,Sn0.10)1.0O6.2,Cl0.15:0.02Mnであることが判明した。
【0071】
すなわち、実施例1の蛍光体は、一般式(A)におけるa,b,c,d,w,xおよびzが、それぞれ次の値である。
【0072】
a=3.9、 b=1.0、 c=6.2、 d=0.15
w=0.04、 x=0.10、 z=0.02
得られた蛍光体について、蛍光顕微鏡観察を行なった。顕微鏡観察は合成した蛍光体サンプルを、例えば(株)ニコンECLIPSE80i等により、蛍光体の粒子形態だけでなく、365nm、435nm、および450nmなどの励起光により蛍光体の発光の様子を観察した。蛍光顕微鏡観察の結果から、本実施例の蛍光体は比較的アスペクト比の大きな柱状、または針状の形態を有し、粒径が5μmから30μm程度で365nm〜450nmの励起光により均一に赤色発光している粒子であることが確認された。結晶の形状は使用原料、焼成温度、時間や結晶成長剤などによって変化する。本実施例の蛍光体においても、柱状、針状形態が途中で折れたような四角状の形態や角の取れた形状の粒子も確認された。
【0073】
さらに、得られた蛍光体を、発光ピーク波長460nmの青色LEDで励起して、発光スペクトルを測定した。その結果を、曲線a1として図5に示す。実施例1の蛍光体からは、Mn4+に起因する半値幅18nmの主発光ピークを657nmに有する発光スペクトルが得られたことが、曲線a1に示されている。
【0074】
比較例1として市販の3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn蛍光体を用意し、前述と同様の青色LEDで励起して発光スペクトルを測定した。その結果を、曲線a0として図5に示す。比較例1の蛍光体からも、実施例1の蛍光体と同様に、Mn4+に起因する半値幅18nmの主発光ピークを657nmに有する発光スペクトルが得られたことが、曲線a0に示されている。ただし、比較例1の蛍光体の発光強度は、実施例1の蛍光体の発光強度より劣っている。具体的には、実施例1の蛍光体の発光強度は、比較例1の蛍光体の発光強度の1.35倍であった。
【0075】
なお、図5中、500nm付近に現れているピークは、励起光に起因するものである。
【0076】
実施例1の蛍光体の励起スペクトルを測定したところ、250nmから490nm付近まで励起帯が存在することが確認された。励起スペクトルは、例えば(株)堀場製作所FluoroMax−4蛍光分光光度計にて拡散散乱法により蛍光体粉末の測定を行なって、得ることができる。
【0077】
図6に実施例1の蛍光体で得られた近紫外から青色の波長領域の励起スペクトルを曲線b1として示す。この曲線b1は、前述の主発光ピーク波長657nmの発光を観測した励起スペクトルである。比較例1の蛍光体も同様に励起して、得られた励起スペクトルを曲線b0として図6に併せて示す。図6に示されるように、実施例1の蛍光体の励起スペクトル(b1)は、比較例1の蛍光体の励起スペクトル(b0)より5nm程度長波長側にピーク波長がシフトしている。420nm付近から480nmの波長領域では、市販の蛍光体より高い発光強度が得られることが判明した。
【0078】
波長460nmの青色LEDで励起した際、実施例1の蛍光体の発光強度が比較例1の蛍光体より高いことは、前述の図5に曲線a1として示したとおりである。図6の結果は、これと一致している。Mn4+に起因する励起機構は、4A2→4T2遷移または4A2→4T1遷移で一般的に説明されている。図6に示される380nm付近から490nm付近の励起スペクトルは、4A2→4T2遷移に相当し、この4A2→4T2遷移は、Mn4+付活剤周辺の結晶場に敏感にシフトすることが知られている。実施例1の蛍光体には、Mg、Ge、Oよりイオン半径の大きなCa,SnおよびClが含有されている。このため、Mn4+付活剤周辺の結晶場の影響が比較例1の蛍光体より小さくなって、励起波長ピークが長波長側にシフトしたものと推測される。
【0079】
スペクトルのピーク位置を明らかにするために、4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化したところ、図6とほぼ同様のスペクトル図が得られた。
【0080】
さらに、以下のように処方を変更して比較例2〜5の蛍光体を合成し、前述と同様に紫外から青色の波長領域の光で励起して励起スペクトルを求めた。
【0081】
MgCl2粉末、CaCO3粉末、および結晶成長剤としてのNH4Clを用いない以外は、実施例1と同様にして比較例2の蛍光体を合成した。比較例2の蛍光体にはCaおよびClが添加されていない。したがって、この比較例2の蛍光体は、一般式(A)において、d=0かつw=0の組成である。
【0082】
比較例2の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b2として図7に示す。図7には、比較例1の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b0として合わせて示した。4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化した励起スペクトルを、比較例1および比較例2について、それぞれ曲線c0およびc2として図8に示した。規格化した励起スペクトルにより、各蛍光体におけるスペクトルのピーク位置を明らかにすることができる。
【0083】
図7に示されるように、一般式(A)においてd=0かつw=0の組成とした蛍光体では、420nm付近から480nm付近の波長領域での励起スペクトルが、市販の蛍光体よりも低下している。また、ピーク波長の明確な長波長シフトが確認されないことが、図8の規格化した励起スペクトルからわかる。
【0084】
CaCO3粉末およびSnO2粉末を用いない以外は実施例1と同様にして、比較例3の蛍光体を合成した。比較例3の蛍光体には、CaおよびSnが含有されていない。したがって、この比較例3の蛍光体は、一般式(A)において、w=0かつx=0の組成である。
【0085】
比較例3の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b3として図9に示す。図9には、比較例1の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b0として合わせて示してある。さらに、4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化した励起スペクトルを、比較例1および比較例3について、それぞれ曲線c0およびc3として図10に示した。
【0086】
図9に示されるように、一般式(A)においてw=0かつx=0の組成とした蛍光体では、420nm付近から480nm付近の波長領域での励起スペクトルが、市販の蛍光体よりも低下している。また、ピーク波長の明確な長波長シフトが確認されないことが、図10の規格化した励起スペクトルからわかる。
【0087】
CaCO3粉末を用いない以外は実施例1と同様にして、比較例4の蛍光体を合成した。比較例4の蛍光体にはCaが添加されていない。したがって、この比較例4の蛍光体は、一般式(A)において、w=0の組成である。
【0088】
比較例4の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b4として図11に示す。図11には、比較例1の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b0として合わせて示してある。さらに、4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化した励起スペクトルを、比較例1および比較例4について、それぞれ曲線c0およびc4として図12に示した。
【0089】
図11に示されるように、一般式(A)においてw=0の組成とした蛍光体では、420nm付近から480nm付近の波長領域での励起スペクトルが、市販の蛍光体よりも低下している。また、ピーク波長の明確な長波長シフトが確認されないことが、図12の規格化した励起スペクトルからわかる。
【0090】
MgCl2粉末および結晶成長剤としてのNH4Clを用いない以外は実施例1と同様にして、比較例5の蛍光体を合成した。比較例5の蛍光体にはClが添加されていない。したがって、この比較例5の蛍光体は、一般式(A)において、d=0の組成である。
【0091】
比較例5の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b5として図13に示す。図13には、比較例1の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b0として合わせて示してある。さらに、4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化した励起スペクトルを、比較例1および比較例5について、それぞれ曲線c0およびc5として図14に示した。
【0092】
図13に示されるように、一般式(A)においてd=0の組成とした蛍光体では、420nm付近から480nm付近の波長領域での励起スペクトルが、市販の蛍光体よりも低下している。また、ピーク波長の明確な長波長シフトが確認されないことが、図14の規格化した励起スペクトルからわかる。
【0093】
このように、比較例2〜5の蛍光体では、420nm付近から480nmの励起波長領域では、市販品(比較例1)の蛍光体より発光強度は低いことが確認された。
【0094】
次に、CaCO3粉末2.0gをSrCO3粉末2.7gに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の蛍光体を合成した。定量分析の結果、実施例2の蛍光体の組成は、(Mg0.95,Sr0.05)4.3(Ge0.90,Sn0.10)1.0O6.9,Cl0.35:0.02Mnであった。
【0095】
すなわち、上記一般式(A)におけるa,b,c,d,w,xおよびzは、それぞれ次のとおりである。
【0096】
a=4.3、 b=1.0、 c=6.9、 d=0.35
w=0.05、 x=0.1、 z=0.02
実施例2の蛍光体を、前述と同様に紫外から青色の波長領域の光で励起して励起スペクトルを求めた。その結果を、曲線b6として図15に示す。図15には、比較例1の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b0として合わせて示してある。さらに、4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化した励起スペクトルを、比較例1および実施例2について、それぞれ曲線c0およびc6として図16に示した。
【0097】
実施例2の励起スペクトルの強度は低下しているものの、励起波長のピークは長波長にシフトしている。したがって、420nm付近から480nmの励起波長領域では、市販の3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn蛍光体より、高い発光強度を得ることができる。
【0098】
さらに、下記表1に示すように各構成元素の含有量およびAE種を変更して、実施例3〜8の蛍光体を作製した。
【0099】
【表1】
【0100】
得られた蛍光体は、前述と同様にピーク波長が460nmの青色LEDで励起して発光強度を求めた。比較例1の蛍光体の発光強度を1として算出された強度比を、下記表2にまとめる。
【0101】
【表2】
【0102】
上記一般式(A)で表わされる組成を有するので、実施例の蛍光体は、いずれも比較例1より高い発光強度を有することが、上記表2に示されている。
【0103】
実施例1〜8の蛍光体を、ピーク波長が460nmの青色LEDにて励起を行なって発光スペクトルを求めた。その結果、いずれの蛍光体からの発光スペクトルも、形状およびピーク波長はほぼ同様であった。付活剤として添加されたMn4+の発光遷移である2E→4A2遷移は、励起遷移の4A2→4T2遷移よりも結晶場に対して非常に鈍感である。それゆえ、一般式(A)で表わされる組成を有する蛍光体であれば、発光スペクトルのピーク波長や形状が変化しないものと推測される。これは、d3電子の田辺−菅野ダイアグラムから明らかである。
【0104】
図5を参照して説明したように、460nmの青色LEDで励起した際には、実施例1の蛍光体は比較例1の蛍光体より高い発光強度が観測される。これは、例えば、図6に示した実施例1の蛍光体の励起スペクトル(b1)で説明したように、380nm付近から490nm付近において、4A2→4T2遷移に起因して励起スペクトルの長波長側にシフトしたことによるものと推測される。
【0105】
比較例2〜5の蛍光体を、ピーク波長が460nmの青色LEDで励起して発光強度を求めた。比較例1の蛍光体の発光強度を1として、それぞれの蛍光体の発光強度比を算出して、下記表3にまとめる。
【0106】
【表3】
【0107】
上記表3に示されるように、比較例2〜5の蛍光体の発光強度は、比較例1の発光強度にも及ばない。
【0108】
黄色発光蛍光体として、市販の(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体を準備し、これをシリコーン樹脂に分散させて発光層原料を調製した。得られた発光層原料をフリップチップ型の青色LEDチップと組み合わせて、図1に示すような白色LED発光装置を作製した。この白色LED発光装置を比較例7とする。
【0109】
発光層原料における蛍光体の含有量を調整して、色温度2800Kに調整しようとしたが、市販の(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体だけでは2800Kには調整できず、2800Kにもっとも近づいた色度点は(x、y)=(0.430、0.439)であり,この時の平均演色評価数Ra=57であった。この発光装置の発光スペクトルを図17に示す。平均演色評価数Raは、白色LED発光装置から得られた発光スペクトル図17から求めることができる。
【0110】
実施例1の蛍光体を加えた以外は比較例7と同様にして、樹脂混合物を調製した。得られた樹脂混合物を用いた以外は前述と同様の手法により、白色LED発光装置を作製した。この白色LED発光装置を実施例9とする。樹脂組成物における蛍光体の混合割合を調整して、色温度2800Kに調整した。この際の発光スペクトルを図18に示す。色温度2800Kに調整した白色LED発光装置は、平均演色評価数Ra=84であった。実施例1ではほぼ2800Kの黒体輻射の色度点(x、y)=(0.452、0.409)にほぼ近づけることができた。
【0111】
一般式(A)で表わされる組成を有する蛍光体が発光層に含有されたことによって、実施例9の白色LED発光装置は、比較例7の白色LED発光装置より演色性が改善され、平均演色評価数Raが高められたことがわかる。このように、実施例の発光装置は、高い効率および演色性を備えている。
【0112】
また、ピーク波長が460nmの青色LEDで実施例2〜8の蛍光体を励起したところ、実施例1の蛍光体の場合とほぼ同様の発光スペクトルが得られた。実施例2〜8の蛍光体を使用した白色LED発光装置も、実施例9とほぼ同様の発光スペクトルが確認された。したがって、実施例2〜8の蛍光体が発光層に含有される発光装置もまた、比較例7より高い平均演色評価数を示す。
【0113】
上記表2に示したように、ピーク波長が460nmの青色LEDにて励起を行なった実施例1〜8の蛍光体は、比較例1の蛍光体より優れた発光強度を有する。これら蛍光体が発光層に含有された白色発光装置は、比較例7の発光装置より優れた発光効率を有することが確認された。
【符号の説明】
【0114】
200…樹脂ステム; 201,202…リード; 203…樹脂部
204…反射面; 205…凹部; 206…発光素子
207,208…ボンディングワイヤ; 209…発光層; 210…蛍光体
100…樹脂ステム; 101,102…リード; 103…樹脂部
104…反射面; 106E…ツェナー・ダイオード; 106F…発光素子
107…接着剤; 109…ボンディングワイヤ; 110…蛍光体
111…発光層; 122…バッファ層; 123…n型コンタクト層
124…活性層; 125…p型クラッド層; 126…p型コンタクト層
127…n側電極; 128…p側電極; 132…n型クラッド層
138…透光性基板; 142,144…バンプ; 150…n型シリコン基板
152…p型領域; 154…p側電極; 156…n側電極; 158…n側電極
160…配線層; 162…高反射膜; 50、50’…リード
51…発光素子; 52…マウント材; 53…ボンディングワイヤ
54…プレディップ材; 55…キャスティング材; 56…蛍光体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体、および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light−emitting Diode:LED)発光装置は、励起光源としてのLEDチップと蛍光体との組み合わせから構成され、その組み合わせによって様々な色の発光色を実現することができる。白色光を放出する白色LED発光装置には、紫外から青色領域の光を放出するLEDチップと蛍光体とが用いられている。例えば、青色光を放つLEDチップと蛍光体混合物との組み合わせが挙げられる。蛍光体としては、青色の補色である黄色に発光する蛍光体が主に使用され、青色光を放つLEDチップと黄色発光蛍光体との組み合わせは擬似白色光LED発光装置と呼ばれている。その他にも青色光を放つLEDチップと、緑色発光蛍光体または黄色発光蛍光体、および赤色発光蛍光体を含む蛍光体混合物とを組み合わせた三波長型白色LED発光装置が開発されている。しかしながら、そのような発光装置を照明用途やディスプレイのバックライト用途に使用した場合には、物体の見え方を示す演色性や、豊かな色相を表現する色域などの特性が不十分である。特性低下の要因の一つとして、赤色発光蛍光体、特に深みのある赤色を表現する深赤色発光蛍光体は、紫外から青色領域の光を励起光としたときの発光効率が不十分であることが挙げられる。
【0003】
深赤色発光蛍光体の一つとして、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mnが知られている。また、この蛍光体およびイットリウム・アルミニウム・ガーネット系(YAG)黄色発光蛍光体を含む蛍光体混合物と、青色系半導体発光素子とが組み合わされた白色LED発光装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。白色LED発光装置に用いられる蛍光体は、励起光源であるLEDチップの発光波長をよく吸収するのに加え、効率よく可視光を発光することが求められている。しかしながら、前述の深赤色発光蛍光体は特に青色領域の励起光で十分な発光効率が得られず、発光強度が低い。そのため、白色発光装置においては明るさについても課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−101081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、紫外から青色領域に発光ピークを有する光で励起されて高い発光効率で赤色発光する蛍光体、およびかかる蛍光体を用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる蛍光体は、下記一般式(A)で表わされる組成を有する蛍光体粒子を含むことを特徴とする。
【0007】
(Mg1-w,AEw)a(Ge1-x,Snx)bOc,Cld:zMn (A)
AEはCaおよびSrから選択される少なくとも一種であり、a、b、c、d、w、xおよびzは、それぞれ以下の範囲内の数値である。
【0008】
3.5≦a≦4.4、0.8≦b≦1.1、5.5≦c≦7.0、0<d≦0.41
0<w≦0.05、 0<x≦0.10、 0<z≦0.03
本発明の一態様にかかる発光装置は、250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発する発光素子と、前記発光素子からの光を受けて赤色発光する蛍光体を含む発光層とを具備し、前記赤色発光する蛍光体の少なくとも一部は、前述の蛍光体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紫外から青色領域に発光ピークを有する光で励起されて高い発光効率で赤色発光する蛍光体、およびかかる蛍光体を用いた発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態にかかる発光装置の断面図。
【図2】他の実施形態にかかる発光装置の断面図。
【図3】発光素子の拡大図。
【図4】他の実施形態にかかる発光装置の断面図。
【図5】一実施形態にかかる蛍光体の発光スペクトル。
【図6】一実施形態にかかる蛍光体の励起スペクトル。
【図7】比較例の蛍光体の励起スペクトル。
【図8】規格化された励起スペクトル。
【図9】比較例の蛍光体の励起スペクトル。
【図10】規格化された励起スペクトル。
【図11】比較例の蛍光体の励起スペクトル。
【図12】規格化された励起スペクトル。
【図13】比較例の蛍光体の励起スペクトル。
【図14】規格化された励起スペクトル。
【図15】他の実施形態にかかる蛍光体の励起スペクトル。
【図16】規格化された励起スペクトル。
【図17】比較例の発光装置の発光スペクトル。
【図18】一実施形態にかかる発光装置の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための蛍光体および発光装置を示すものであり、本発明は以下の例示に限定されない。
【0012】
また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、記載した実施形態に特定するものではない。特に実施形態に記載されている構成部品の大きさ、材質、形状、その配置等は本発明の範囲を限定する趣旨ではなく、説明例に過ぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等においても説明を明確にするため誇張していることがある。さらに、同一の名称、符号については同一、もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を省略する。本発明を構成する各要素は、複数の要素を一つの部材で構成して、この部材で先の複数の要素を兼用してもよく、逆に一つの要素の機能を複数の部材で分担することも可能である。
【0013】
本発明者らは、検討および研究を重ねた結果、青色領域の励起光で発光する赤色発光蛍光体としてすでに知られている3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn赤色発光蛍光体の発光強度を超える赤色発光蛍光体を見出した。
【0014】
一実施形態にかかる蛍光体は、主結晶相と付活剤としてのマンガン(Mn)とを含有し、下記一般式(A)で表わされる組成を有する。
【0015】
(Mg1-w,AEw)a(Ge1-x,Snx)bOc,Cld:zMn (A)
AEはCaおよびSrから選択される少なくとも一種であり、a、b、c、d、w、xおよびzは、それぞれ以下の範囲内の数値である。
【0016】
3.5≦a≦4.4、 0.8≦b≦1.1、 5.5≦c≦7.0
0<d≦0.41、 0<w≦0.05、 0<x≦0.10、 0<z≦0.03
a、b、cおよびdのうち、1つでも上述の範囲から外れた場合には、得られる蛍光体の発光効率が損なわれる。
【0017】
aの値は、3.9以上4.2以下が好ましく、bの値は、0.9以上1.0以下が好ましい。cの値は、5.6以上6.9以下が好ましく、dの値は、0.40以下が好ましい。
【0018】
本実施形態にかかる蛍光体は、付活剤としてMnを含有するので、前記一般式(A)におけるzは0より大きくなければならない。Mnが含有されない場合(z=0)には、紫外から青色領域に発光ピークを有する光で励起しても発光(スペクトル)は得られない。しかしながら、過剰のMnが含有されると濃度消光現象が生じて、得られる蛍光体の発光強度が弱くなる。これを避けるために、zの上限は0.03に規定される。
【0019】
本実施形態の蛍光体の主結晶相は、基本的な結晶構造として八面体のMgO6構造が八面体のGeO6構造と四面体のGeO4構造と結びついた構造であり、付活剤であるMnは、主結晶相の八面体(Mg,AE)サイトおよび八面体(Ge,Sn)サイトを置換していることが、Mn4+に起因する発光スペクトルから推測される。しかしながら、各サイトがどれだけの割合でMnによって置換されているかを正確に求めることは困難であるので、付活剤であるMnについては、主結晶相を構成している材料に対する比率として規定される。
【0020】
本実施形態にかかる蛍光体中の各元素の含有量は、例えば以下のような手法により分析することができる。Mg、Ca、Sr、Ge、SnおよびMnなどの金属元素の分析にあたっては、合成された蛍光体をアルカリ融解する。得られた融解物を、例えばエスアイアイ・ナノテクノロジー(株)SPS4000等を用いて、内部標準のICP発光分光法にて分析する。
【0021】
非金属元素のうちOを分析するには、まず合成された蛍光体を不活性ガス融解する。融解物を、例えばLECO社製TC−600等を用いて、赤外吸収法により分析する。また、Clを分析するには、まず合成された蛍光体を熱加水分解する。これを、例えば日本ダイオネクス社製DX−120を用いて、イオンクロマトグラフ法により分析を行なう。こうして、蛍光体の組成が求められる。
【0022】
本実施形態の蛍光体には、CaおよびSrの少なくとも一方であるAEともに、SnおよびClが含有されなければならない。AE、SnおよびClのいずれか一つでも欠けると、得られる蛍光体は、紫外から青色の波長領域に発光ピークを有する光で励起した際に、十分な強度で発光しない。
【0023】
こうした元素のいずれか一種でも過剰に含有された蛍光体もまた、紫外から青色の波長領域に発光ピークを有する光で励起した際の発光強度が低下する。AE、SnおよびClといった元素が多すぎる場合には、基本的な結晶構造やMn4+周辺の結晶性を維持することができないものと推測される。それゆえ、上記一般式(A)におけるw,xおよびdの上限は、それぞれ0.05、0.10および0.41に規定される。こうした知見は、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0024】
AEとしてCaが含有される場合には、wおよびdの上限は低下し、wの上限は0.04が好ましく、dの上限は0.25が好ましい。この理由は、結晶構造とイオン半径の違いに基づいて次のように考察される。Sr2+イオンのイオン半径は、Ca2+イオンやMg2+イオンより大きい。前述の一般式(A)で表わされる組成の基本的な結晶構造には、Ge4+イオンよりイオン半径の大きなSn4+やO2-イオンよりイオン半径が大きいCl-イオンが含有されている。このため、Ca2+イオンよりイオン半径の大きなSr2+イオンが含有されることによって、SnやClが含有される組成範囲が広くなったと推測される。
【0025】
AEとして含有される元素がSrおよびCaのいずれであっても、wの下限は0.03が好ましく、xの下限は0.08が好ましい。こうした範囲内で各元素が含有された場合には、十分な発光強度が得られる利点がある。
【0026】
一般式(A)で表される蛍光体の結晶相は、以下の手法により同定することができる。まず、粉末X線回折分析法(X−ray diffractometry:XRD)によって回折パターンを測定する。測定した回折パターンを、JCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)カードと比較して、結晶相が同定される。
【0027】
XRD測定により得られる回折ピークは、JCPDSカードの複数の回折ピークに該当する。該当するピークは、JCPDSカード#23−1225の斜方晶系Mg3.5Ge1.25-xO6F4-x相、#23−1227の斜方晶系Mg3.5Ge1.25O6相、および#28−617のMg5GeO6F2相の回折ピークに類似の回折ピークである。一般式(A)で表わされる蛍光体の組成と合致する組成のJCPDSカードが存在しないために、複数の回折ピークが該当するものと推測される。既報の化合物の構成元素の一部がイオン半径の大きな元素に置換されていることが、既存のJCPDSカードと合致しない理由である。
【0028】
本実施形態の蛍光体は一般式(A)で表わされる組成を有するが、厳密にはAEおよびSnは、それぞれ、MgおよびGeサイトを完全に置換しているわけではない。一部は格子間などに侵入して、欠陥サイトが生成されていることが考えられる。Clも同様に、Oサイトの一部を置換しつつ格子間などに侵入しているものと推測される。3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn赤色発光蛍光体などでは、一部のカチオンサイトが欠陥サイトを形成しているとの報告があり、本実施形態にかかる蛍光体もXRD回折パターンより類似の結晶構造を有していることが考えられ、同様の現象が生じているものと推測される。
【0029】
本実施形態にかかる蛍光体を、紫外から青色波長領域(250nm以上490nm以下)に発光ピークを有する光で励起した際に得られる発光スペクトルは、650nm以上665nm以下の波長領域に半値幅が20nm以内の主発光ピークを有する。蛍光体の励起には、例えば、発光ピークが400nmの近紫外領域LEDや460nm青色領域LED等を用いることができ、分光光度計を用いて測定する。分光光度計としては、例えば大塚電子(株)IMUC−7000G等の分光光度計を用いることができる。
【0030】
主発光ピークとは、発光スペクトルのピーク強度が最も大きくなる波長をさす。蛍光体作製時の少量の元素添加やわずかな組成変動による10nm程度の発光ピークの変化などは、これまで報告されている主発光ピークとみなすことができる。
【0031】
本実施形態にかかる蛍光体は、紫外から青色の波長領域に発光ピークを有する発光素子と組み合わせて、本実施形態にかかる発光装置を得ることができる。主発光ピークを検出した励起スペクトルから、本実施形態の蛍光体の励起に用いられる波長の下限は、250nmに規定される。一方、490nmを超える波長で励起した際には、本実施形態にかかる蛍光体はほとんど発光しないために、励起波長の上限は490nmに規定される。420nm以上の波長で励起した際は、既存の3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn赤色発光蛍光体より高い発光強度を得ることができる。
【0032】
本実施形態にかかる蛍光体は、以下の方法により製造することができる。出発原料としては、構成元素の酸化物、塩化物、および炭酸塩化合物などの粉末を用いることができる。構成元素の原料を所定量秤量し、ボールミル等で混合する。必要に応じて、結晶成長剤を加えてもよい。
【0033】
例えば、Mn源としては、MnCO3、Mn2O3、MnO2、およびMnCl2等を用いることができる。Mg源としては(塩基性)炭酸マグネシウム(mMgCO3・Mg(OH)2・nH2O)、MgO、およびMgCl2等を用いることができる。Ca源としては、例えばCaCO3、CaO、CaCl2、CaCl2・2H2O、およびCaCl2・4H2O等を用いることができ、Sr源としては、例えばSrCO3、SrO、SrCl2、SrCl2・6H2O等を用いることができる。Ge源としては例えばGeO2等が挙げられ、Sn源としては例えばSnO2等を用いることができる。
【0034】
酸化物、炭酸塩、および塩化物といった原料粉末は、目的とされる組成比に合わせて調合する。原料粉末の混合にあたっては、溶媒を使用しない乾式混合法、およびエタノール等の有機溶媒を使用した湿式混合法のいずれを用いてもよい。
【0035】
また、Cl源は、結晶成長剤として使用することができ、また、蛍光体合成のための高温焼成時には揮散を生じる。したがって、通常、これを考慮してCl源としては、塩化アンモニウムなどのアンモニウムの塩化物が挙げられる。さらに、アルカリ金属の塩化物や、アルカリ土類金属の塩化物を用いてもよい。目的とした組成からのずれを防止するために、結晶成長剤は、原料粉末全体の0.01重量%以上0.3重量%以下程度の量で添加されることが好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物は、蛍光体中に固溶したり、他の原料と反応して異相を生成するおそれがある。これを避けるため、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物の添加量は、0.1重量%以下とすることが望まれる。
【0036】
上述したような原料粉末が混合された混合原料を坩堝等の焼成容器に収容し、熱処理を行なって焼成品を得る。熱処理は、大気雰囲気、N2雰囲気、またはAr雰囲気中で行なわれる。こうした雰囲気中で熱処理することによって、Cl元素の揮散や原料の吸湿を防止するとともに、蛍光体の合成を促進することができる。Cl2ガスやHClガスを混合して使用しても同様の効果が得られるものの、熱処理施設や排ガス処理施設など高コストとなってしまう。こうした点から、大気雰囲気、N2雰囲気、またはAr雰囲気中での熱処理が好ましい。
【0037】
熱処理の温度および時間は、1000℃〜1400℃、0.5〜10時間とすることができる。焼成温度が低すぎる場合には、原材料が未反応のままとなり、蛍光体の発光強度は低下する。焼成時間が短すぎる場合も、同様の理由から蛍光体の発光強度は低下する。焼成温度が高すぎる場合には、原材料または生成物の溶融、あるいは混合した原料の一部の揮散といった不都合が生じるおそれがある。焼成時間が長すぎる場合も、同様の不都合が生じるおそれがある。
【0038】
得られた焼成品を粉砕して再度容器に収容し、大気雰囲気、N2雰囲気またはAr雰囲気中で二次焼成する。二次焼成前の粉砕は特に規定されず、一次焼成品の塊を、乳鉢等を用いて砕いて表面積が増大すればよい。二次焼成の際には、上述の塩化物結晶成長剤を添加することもできる。二次焼成品を、粉砕、篩い分けすることによって、本実施形態の蛍光体が得られる。得られた蛍光体を発光装置などに適用する際には、必要に応じて、純水などを使用して洗浄等の後処理を適宜施すことができる。
【0039】
本実施形態の蛍光体粒子の表面には、有機材料または無機材料からなる表層材を設けてもよい。表層材は、水分、熱、湿度、および紫外線等の外的要因により蛍光体が劣化するのを防止する作用を有する。さらに、蛍光体の分散性を調整することが可能となり、蛍光層の設計を容易に行なうことができる。
【0040】
表層材の形成に用い得る材料は、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、テトラエトキシシラン(TEOS)、シリカ、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム、カルシウムポリフォスフェート、シリコーンオイル、およびシリコーングリースからなる群から選択することができる。ケイ酸亜鉛およびケイ酸アルミニウムは、例えばZnO・cSiO2(1≦c≦4)、およびAl2O3・dSiO2(1≦d≦10)でそれぞれ表わされる。こうした材料は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
表層材は、分散液または溶液を用いて蛍光体粒子表面に設けることができる。分散液または溶液中に粒子を所定時間浸漬した後、加熱等により乾燥させることによって表層材が形成される。表層材は蛍光体粒子表面を完全に覆う必要はなく、蛍光体粒子の一部が露出していてもよい。蛍光体粒子の0.1%以上の体積割合で、蛍光体粒子の表面に表層材が存在すれば、その効果が得られる。ただし、蛍光体本来の機能を損なわないために、表層材の体積割合は、蛍光体粒子の5%程度にとどめることが望まれる。
【0042】
本実施形態の蛍光体は、発光装置において使用する塗布方法に応じた粒径へと分級される。紫外から青色領域に発光ピークを有する励起光を使用した通常の白色LEDなどでは、篩分けにより5μmから50μm程度の平均粒径に分級して使用される。1μm以下のように平均粒径が小さすぎる蛍光体では、最表面の非発光層の割合が増加したり、励起光を乱反射したりして、発光強度が低下してしまう。一方、平均粒径が大きすぎる蛍光体は、発光層を形成する際の塗布装置に目詰まりする。その結果、作業効率や歩留りの低下や発光装置の色ムラの原因となってしまう。5μmから50μm程度の平均粒径を有する蛍光体であれば、こうした不都合を回避することができる。
【0043】
上述したように、本実施形態の蛍光体は、紫外から青色領域に発光ピークを有する光で励起することによって、650nm以上665nm以下の波長領域に半値幅が20nm以内のMn4+に起因する主発光ピークを有する発光が得られる。本実施形態の蛍光体を、紫外から青色領域に発光ピークを有する発光素子と組み合わせることによって、高効率で高演色性の発光装置が得られる。発光素子としては、LEDチップやレーザーダイオードなどの固体光源素子を使用できる。
【0044】
本実施形態にかかる蛍光体の発光色は、赤色から深赤色である。したがって、青色発光蛍光体や、緑色発光蛍光体および黄色発光蛍光体と組み合わせて用いることにより、白色発光装置が得られる。使用する蛍光体は、発光装置の用途に応じて変更することができる。例えば、青色波長領域(430〜490nm)の光源を使用する場合には、本実施形態の蛍光体に加えて、黄色発光蛍光体と組み合わせることにより白色発光装置が得られる。黄色発光蛍光体と組み合わせることによって、効率と演色性とを両立した色温度の低い白色発光装置が得られる。
【0045】
緑色発光蛍光体または黄色発光蛍光体は、500nm以上580nm以下の波長領域に主発光ピークを有する蛍光体ということができる。例えば、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu、Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:Ce等のケイ酸塩蛍光体、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce、BaMgAl10O17:Eu,Mn等のアルミン酸塩蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Ga2S4:Eu等の硫化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Eu、(Ca,Sr)−αSiAlON等のアルカリ土類酸窒化物蛍光体などが挙げられる。
【0046】
紫外から近紫外波長領域(380〜440nm)の光源を使用する場合、前述の緑色発光蛍光体および黄色発光蛍光体とともに青色発光光体を用いることが好ましい。青色発光蛍光体は、440nm以上500nm以下の波長領域に主発光ピークを有する蛍光体ということができる。例えば、(Sr,Ca,Ba,Mg)5(PO4)3(Cl,Br):Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)5(PO4)3Cl:Eu等のハロりん酸塩蛍光体、2SrO・0.84P2O5・0.16B2O3:Eu等のリン酸塩蛍光体、およびBaMgAl10O17:Eu等のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体などが挙げられる。
【0047】
上述の蛍光体に加えて、用途に応じて、青緑色、橙色および赤色の各色を発光する蛍光体をさらに配合して用いてもよい。
【0048】
橙色または赤色発光蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu等のケイ酸塩蛍光体、Li(Eu,Sm)W2O8等のタングステン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)2O2S:Eu等の酸硫化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba)S:Eu等の硫化物蛍光体、(Sr,Ba,Ca)2Si5N8:Eu、および(Sr,Ca)AlSiN3:Eu等の窒化物蛍光体などが挙げられる。
【0049】
本実施形態の蛍光体を、こうした蛍光体に添加して使用することによって、効率だけでなく、照明用途での演色性を高めたり、バックライト用途での色域がさらに広げられる。本実施形態の蛍光体の発光色は赤色から深赤色であるため、主発光ピーク波長が長波長の蛍光体と組み合わせた場合には効果が低減するおそれがある。これを避けるために、640nm以下の主発光ピーク波長の蛍光体と組み合わせることが好ましい。
【0050】
以下、図面を参照して本実施形態にかかる発光装置を説明する。
【0051】
図1に示す発光装置においては、樹脂ステム200はリードフレームを成形してなるリード201およびリード202と、これに一体成形されてなる樹脂部203とを有する。樹脂部203は、上部が底部より広い凹部205を有しており、この凹部の側面は反射面204として作用する。
【0052】
凹部205の略円形底面中央部には、発光素子206がAgペースト等によりマウントされている。発光素子206は、250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発する。発光素子206としては、例えば、GaAs系、およびGaN系等の発光ダイオード等を用いることが可能である。発光素子206の電極(図示せず)は、Auなどからなるボンディングワイヤ207および208によって、リード201およびリード202にそれぞれ接続されている。なお、リード201および202の配置は、適宜変更することができる。
【0053】
樹脂部203の凹部205内には、一実施形態にかかる蛍光体210を含有する発光層209が配置される。発光層209においては、例えばシリコーン樹脂からなる樹脂層中に、5wt%以上50wt%以下の割合で蛍光体が分散される。蛍光体は、有機材料である樹脂や無機材料であるガラスなど種々のバインダーによって、発光素子206近傍に固定させることができる。
【0054】
有機材料のバインダーとしては、上述したシリコーン樹脂の他にエポキシ樹脂、アクリル樹脂など耐光性に優れた透明樹脂が適している。無機材料のバインダーとしては、アルカリ土類ホウ酸塩等を使用した低融点ガラス等、粒径の大きな蛍光体を付着させるために超微粒子のシリカ、アルミナ等、沈殿法により得られるアルカリ土類リン酸塩等が適している。こうしたバインダーは、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
発光素子206としては、n型電極とp型電極とを同一面上に有するフリップチップ型のものを用いることもできる。この場合には、ワイヤの断線や剥離、ワイヤによる光吸収等のワイヤに起因した問題を解消して、信頼性の高い高輝度な発光装置が得られる。また、n型基板を有する発光素子を用いて、次のような構成とすることもできる。発光素子のn型基板の裏面にn型電極を形成し、基板上に積層された半導体層の上面にはp型電極を形成する。n型電極をリード上にマウントし、p型電極は、ワイヤにより他方のリードに接続する。
【0056】
発光素子206のサイズ、凹部205の寸法および形状は、適宜変更することができる。
【0057】
図2に示す発光装置は、封止樹脂ステム100と、その上にマウントされた発光素子106Fと、この発光素子106Fを覆う発光層111とを有する。封止樹脂ステム100は、リードフレームから形成されたリード101、102と、これと一体的に成型された樹脂部103とを有する。リード101、102は、それぞれの一端が近接対向するように配置されている。リード101、102の他端は、互いに反対方向に延在し、樹脂部103から外部に導出されている。
【0058】
樹脂部103には開口が設けられ、開口の底面においては、保護用ツェナー・ダイオード106Eが接着剤107によりリード101上にマウントされている。ダイオード106Eの上には、発光素子106Fが実装され、ダイオード106Eは、ワイヤ109によりリード102に接続されている。発光素子106Fは、250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発する。
【0059】
発光素子106Fは、樹脂部103の内壁面に取り囲まれ、この内壁面は傾斜して光を反射する反射面104として作用する。開口内に充填された発光層111には、一実施形態にかかる蛍光体110が含有されている。
【0060】
こうした発光装置における発光素子周辺部分について、詳細に説明する。図3に示されるように、保護用ダイオード106Eは、n型シリコン基板150の表面にp型領域152が形成されたプレーナ構造を有する。p型領域152上にはp側電極154が形成され、基板150の裏面にはn側電極156が設けられる。このn側電極156に対向して、ダイオード106Eの表面にもn側電極158が設けられる。2つのn側電極156および158は、ダイオード106Eの側面に設けられた配線層160によって接続される。さらに、p側電極154およびn側電極158が設けられたダイオード106Eの表面には、高反射膜162が形成されている。高反射膜162は、発光素子106Fから放出される光に対して高い反射率を有する。
【0061】
発光素子106Fにおいては、バッファ層122、n型コンタクト層123、n型クラッド層132、活性層124、p型クラッド層125、およびp型コンタクト層126が、透光性基板138の上に順次積層されている。さらに、n型コンタクト層123の上にはn側電極127が形成され、p型コンタクト層126の上にはp側電極128が形成されている。活性層124から放出される光は、透光性基板138を透過して取り出される。
【0062】
発光素子106Fは、図示するようにバンプによりダイオード106Eにフリップ・チップ・マウントされている。具体的には、発光素子106Fのp側電極128は、バンプ142によってダイオード106Eのn側電極158に電気的に接続されている。また、発光素子106Fのn側電極127は、バンプ144によってダイオード106Eのp側電極154に電気的に接続されている。ダイオード106Eのp側電極154には、ワイヤ109がボンディングされ、このワイヤ109は、図2を参照して説明したようにリード102に接続されている。
【0063】
250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発すれば、発光素子106Fの構成は適宜変更することができる。
【0064】
図4に示す砲弾型の発光装置においては、発光素子51は、リード50’にマウント材52を介して実装される。この発光素子51は、250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発し、発光層としてのプレディップ材54で覆われる。発光層には、一実施形態にかかる蛍光体56が含有される。ワイヤ53により、リード50が発光素子51に接続され、キャスティング材55で封止されている。
【0065】
いずれの構成の発光装置においても、発光素子は250nm以上490nm以下の波長範囲の光を発する発光素子からの光を受けるように、一実施形態にかかる蛍光体を含む発光層が設けられるので、高効率で高演色性の発光装置が得られる。
【0066】
本実施形態にかかる発光装置、例えば白色LEDは一般照明等に好適に用いられる。さらに、カラーフィルターなどのフィルターと発光装置を組み合わせて使用される発光デバイス、例えば液晶用バックライト用の光源等としても最適である。具体的には、液晶のバックライト光源や青色発光層を使用した無機エレクトロルミネッセンス装置の赤色発光材料としても使用することができる。
【0067】
以下、実施例および比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
原料粉末として、塩基性炭酸マグネシウム粉末34.2g、MgCl2粉末2.0g、CaCO3粉末2.0g、GeO2粉末9.6g、SnO2粉末1.5g、およびMnO2粉末1.8gを用意した。ボールミルで均一に混合し、得られた混合粉末を坩堝に収容した。これを炉内に配置し、大気雰囲気中、1000〜1400℃で0.5〜8時間焼成して、一次焼成品を得た。
【0069】
得られた一次焼成品を粉砕し、結晶成長剤として0.1wt%のNH4Clを添加して、再び坩堝に収容した。これを炉内に配置し、大気雰囲気中、800〜1200℃で0.5〜8時間焼成して二次焼成品を得た。二次焼成品を粉砕後、篩い分けして実施例1の蛍光体を得た。
【0070】
定量分析の結果、実施例1の蛍光体の組成は、(Mg0.96,Ca0.04)3.9(Ge0.90,Sn0.10)1.0O6.2,Cl0.15:0.02Mnであることが判明した。
【0071】
すなわち、実施例1の蛍光体は、一般式(A)におけるa,b,c,d,w,xおよびzが、それぞれ次の値である。
【0072】
a=3.9、 b=1.0、 c=6.2、 d=0.15
w=0.04、 x=0.10、 z=0.02
得られた蛍光体について、蛍光顕微鏡観察を行なった。顕微鏡観察は合成した蛍光体サンプルを、例えば(株)ニコンECLIPSE80i等により、蛍光体の粒子形態だけでなく、365nm、435nm、および450nmなどの励起光により蛍光体の発光の様子を観察した。蛍光顕微鏡観察の結果から、本実施例の蛍光体は比較的アスペクト比の大きな柱状、または針状の形態を有し、粒径が5μmから30μm程度で365nm〜450nmの励起光により均一に赤色発光している粒子であることが確認された。結晶の形状は使用原料、焼成温度、時間や結晶成長剤などによって変化する。本実施例の蛍光体においても、柱状、針状形態が途中で折れたような四角状の形態や角の取れた形状の粒子も確認された。
【0073】
さらに、得られた蛍光体を、発光ピーク波長460nmの青色LEDで励起して、発光スペクトルを測定した。その結果を、曲線a1として図5に示す。実施例1の蛍光体からは、Mn4+に起因する半値幅18nmの主発光ピークを657nmに有する発光スペクトルが得られたことが、曲線a1に示されている。
【0074】
比較例1として市販の3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn蛍光体を用意し、前述と同様の青色LEDで励起して発光スペクトルを測定した。その結果を、曲線a0として図5に示す。比較例1の蛍光体からも、実施例1の蛍光体と同様に、Mn4+に起因する半値幅18nmの主発光ピークを657nmに有する発光スペクトルが得られたことが、曲線a0に示されている。ただし、比較例1の蛍光体の発光強度は、実施例1の蛍光体の発光強度より劣っている。具体的には、実施例1の蛍光体の発光強度は、比較例1の蛍光体の発光強度の1.35倍であった。
【0075】
なお、図5中、500nm付近に現れているピークは、励起光に起因するものである。
【0076】
実施例1の蛍光体の励起スペクトルを測定したところ、250nmから490nm付近まで励起帯が存在することが確認された。励起スペクトルは、例えば(株)堀場製作所FluoroMax−4蛍光分光光度計にて拡散散乱法により蛍光体粉末の測定を行なって、得ることができる。
【0077】
図6に実施例1の蛍光体で得られた近紫外から青色の波長領域の励起スペクトルを曲線b1として示す。この曲線b1は、前述の主発光ピーク波長657nmの発光を観測した励起スペクトルである。比較例1の蛍光体も同様に励起して、得られた励起スペクトルを曲線b0として図6に併せて示す。図6に示されるように、実施例1の蛍光体の励起スペクトル(b1)は、比較例1の蛍光体の励起スペクトル(b0)より5nm程度長波長側にピーク波長がシフトしている。420nm付近から480nmの波長領域では、市販の蛍光体より高い発光強度が得られることが判明した。
【0078】
波長460nmの青色LEDで励起した際、実施例1の蛍光体の発光強度が比較例1の蛍光体より高いことは、前述の図5に曲線a1として示したとおりである。図6の結果は、これと一致している。Mn4+に起因する励起機構は、4A2→4T2遷移または4A2→4T1遷移で一般的に説明されている。図6に示される380nm付近から490nm付近の励起スペクトルは、4A2→4T2遷移に相当し、この4A2→4T2遷移は、Mn4+付活剤周辺の結晶場に敏感にシフトすることが知られている。実施例1の蛍光体には、Mg、Ge、Oよりイオン半径の大きなCa,SnおよびClが含有されている。このため、Mn4+付活剤周辺の結晶場の影響が比較例1の蛍光体より小さくなって、励起波長ピークが長波長側にシフトしたものと推測される。
【0079】
スペクトルのピーク位置を明らかにするために、4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化したところ、図6とほぼ同様のスペクトル図が得られた。
【0080】
さらに、以下のように処方を変更して比較例2〜5の蛍光体を合成し、前述と同様に紫外から青色の波長領域の光で励起して励起スペクトルを求めた。
【0081】
MgCl2粉末、CaCO3粉末、および結晶成長剤としてのNH4Clを用いない以外は、実施例1と同様にして比較例2の蛍光体を合成した。比較例2の蛍光体にはCaおよびClが添加されていない。したがって、この比較例2の蛍光体は、一般式(A)において、d=0かつw=0の組成である。
【0082】
比較例2の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b2として図7に示す。図7には、比較例1の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b0として合わせて示した。4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化した励起スペクトルを、比較例1および比較例2について、それぞれ曲線c0およびc2として図8に示した。規格化した励起スペクトルにより、各蛍光体におけるスペクトルのピーク位置を明らかにすることができる。
【0083】
図7に示されるように、一般式(A)においてd=0かつw=0の組成とした蛍光体では、420nm付近から480nm付近の波長領域での励起スペクトルが、市販の蛍光体よりも低下している。また、ピーク波長の明確な長波長シフトが確認されないことが、図8の規格化した励起スペクトルからわかる。
【0084】
CaCO3粉末およびSnO2粉末を用いない以外は実施例1と同様にして、比較例3の蛍光体を合成した。比較例3の蛍光体には、CaおよびSnが含有されていない。したがって、この比較例3の蛍光体は、一般式(A)において、w=0かつx=0の組成である。
【0085】
比較例3の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b3として図9に示す。図9には、比較例1の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b0として合わせて示してある。さらに、4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化した励起スペクトルを、比較例1および比較例3について、それぞれ曲線c0およびc3として図10に示した。
【0086】
図9に示されるように、一般式(A)においてw=0かつx=0の組成とした蛍光体では、420nm付近から480nm付近の波長領域での励起スペクトルが、市販の蛍光体よりも低下している。また、ピーク波長の明確な長波長シフトが確認されないことが、図10の規格化した励起スペクトルからわかる。
【0087】
CaCO3粉末を用いない以外は実施例1と同様にして、比較例4の蛍光体を合成した。比較例4の蛍光体にはCaが添加されていない。したがって、この比較例4の蛍光体は、一般式(A)において、w=0の組成である。
【0088】
比較例4の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b4として図11に示す。図11には、比較例1の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b0として合わせて示してある。さらに、4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化した励起スペクトルを、比較例1および比較例4について、それぞれ曲線c0およびc4として図12に示した。
【0089】
図11に示されるように、一般式(A)においてw=0の組成とした蛍光体では、420nm付近から480nm付近の波長領域での励起スペクトルが、市販の蛍光体よりも低下している。また、ピーク波長の明確な長波長シフトが確認されないことが、図12の規格化した励起スペクトルからわかる。
【0090】
MgCl2粉末および結晶成長剤としてのNH4Clを用いない以外は実施例1と同様にして、比較例5の蛍光体を合成した。比較例5の蛍光体にはClが添加されていない。したがって、この比較例5の蛍光体は、一般式(A)において、d=0の組成である。
【0091】
比較例5の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b5として図13に示す。図13には、比較例1の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b0として合わせて示してある。さらに、4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化した励起スペクトルを、比較例1および比較例5について、それぞれ曲線c0およびc5として図14に示した。
【0092】
図13に示されるように、一般式(A)においてd=0の組成とした蛍光体では、420nm付近から480nm付近の波長領域での励起スペクトルが、市販の蛍光体よりも低下している。また、ピーク波長の明確な長波長シフトが確認されないことが、図14の規格化した励起スペクトルからわかる。
【0093】
このように、比較例2〜5の蛍光体では、420nm付近から480nmの励起波長領域では、市販品(比較例1)の蛍光体より発光強度は低いことが確認された。
【0094】
次に、CaCO3粉末2.0gをSrCO3粉末2.7gに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の蛍光体を合成した。定量分析の結果、実施例2の蛍光体の組成は、(Mg0.95,Sr0.05)4.3(Ge0.90,Sn0.10)1.0O6.9,Cl0.35:0.02Mnであった。
【0095】
すなわち、上記一般式(A)におけるa,b,c,d,w,xおよびzは、それぞれ次のとおりである。
【0096】
a=4.3、 b=1.0、 c=6.9、 d=0.35
w=0.05、 x=0.1、 z=0.02
実施例2の蛍光体を、前述と同様に紫外から青色の波長領域の光で励起して励起スペクトルを求めた。その結果を、曲線b6として図15に示す。図15には、比較例1の蛍光体の励起スペクトルを、曲線b0として合わせて示してある。さらに、4A2→4T2遷移に起因した励起スペクトルピークで規格化した励起スペクトルを、比較例1および実施例2について、それぞれ曲線c0およびc6として図16に示した。
【0097】
実施例2の励起スペクトルの強度は低下しているものの、励起波長のピークは長波長にシフトしている。したがって、420nm付近から480nmの励起波長領域では、市販の3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn蛍光体より、高い発光強度を得ることができる。
【0098】
さらに、下記表1に示すように各構成元素の含有量およびAE種を変更して、実施例3〜8の蛍光体を作製した。
【0099】
【表1】
【0100】
得られた蛍光体は、前述と同様にピーク波長が460nmの青色LEDで励起して発光強度を求めた。比較例1の蛍光体の発光強度を1として算出された強度比を、下記表2にまとめる。
【0101】
【表2】
【0102】
上記一般式(A)で表わされる組成を有するので、実施例の蛍光体は、いずれも比較例1より高い発光強度を有することが、上記表2に示されている。
【0103】
実施例1〜8の蛍光体を、ピーク波長が460nmの青色LEDにて励起を行なって発光スペクトルを求めた。その結果、いずれの蛍光体からの発光スペクトルも、形状およびピーク波長はほぼ同様であった。付活剤として添加されたMn4+の発光遷移である2E→4A2遷移は、励起遷移の4A2→4T2遷移よりも結晶場に対して非常に鈍感である。それゆえ、一般式(A)で表わされる組成を有する蛍光体であれば、発光スペクトルのピーク波長や形状が変化しないものと推測される。これは、d3電子の田辺−菅野ダイアグラムから明らかである。
【0104】
図5を参照して説明したように、460nmの青色LEDで励起した際には、実施例1の蛍光体は比較例1の蛍光体より高い発光強度が観測される。これは、例えば、図6に示した実施例1の蛍光体の励起スペクトル(b1)で説明したように、380nm付近から490nm付近において、4A2→4T2遷移に起因して励起スペクトルの長波長側にシフトしたことによるものと推測される。
【0105】
比較例2〜5の蛍光体を、ピーク波長が460nmの青色LEDで励起して発光強度を求めた。比較例1の蛍光体の発光強度を1として、それぞれの蛍光体の発光強度比を算出して、下記表3にまとめる。
【0106】
【表3】
【0107】
上記表3に示されるように、比較例2〜5の蛍光体の発光強度は、比較例1の発光強度にも及ばない。
【0108】
黄色発光蛍光体として、市販の(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体を準備し、これをシリコーン樹脂に分散させて発光層原料を調製した。得られた発光層原料をフリップチップ型の青色LEDチップと組み合わせて、図1に示すような白色LED発光装置を作製した。この白色LED発光装置を比較例7とする。
【0109】
発光層原料における蛍光体の含有量を調整して、色温度2800Kに調整しようとしたが、市販の(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体だけでは2800Kには調整できず、2800Kにもっとも近づいた色度点は(x、y)=(0.430、0.439)であり,この時の平均演色評価数Ra=57であった。この発光装置の発光スペクトルを図17に示す。平均演色評価数Raは、白色LED発光装置から得られた発光スペクトル図17から求めることができる。
【0110】
実施例1の蛍光体を加えた以外は比較例7と同様にして、樹脂混合物を調製した。得られた樹脂混合物を用いた以外は前述と同様の手法により、白色LED発光装置を作製した。この白色LED発光装置を実施例9とする。樹脂組成物における蛍光体の混合割合を調整して、色温度2800Kに調整した。この際の発光スペクトルを図18に示す。色温度2800Kに調整した白色LED発光装置は、平均演色評価数Ra=84であった。実施例1ではほぼ2800Kの黒体輻射の色度点(x、y)=(0.452、0.409)にほぼ近づけることができた。
【0111】
一般式(A)で表わされる組成を有する蛍光体が発光層に含有されたことによって、実施例9の白色LED発光装置は、比較例7の白色LED発光装置より演色性が改善され、平均演色評価数Raが高められたことがわかる。このように、実施例の発光装置は、高い効率および演色性を備えている。
【0112】
また、ピーク波長が460nmの青色LEDで実施例2〜8の蛍光体を励起したところ、実施例1の蛍光体の場合とほぼ同様の発光スペクトルが得られた。実施例2〜8の蛍光体を使用した白色LED発光装置も、実施例9とほぼ同様の発光スペクトルが確認された。したがって、実施例2〜8の蛍光体が発光層に含有される発光装置もまた、比較例7より高い平均演色評価数を示す。
【0113】
上記表2に示したように、ピーク波長が460nmの青色LEDにて励起を行なった実施例1〜8の蛍光体は、比較例1の蛍光体より優れた発光強度を有する。これら蛍光体が発光層に含有された白色発光装置は、比較例7の発光装置より優れた発光効率を有することが確認された。
【符号の説明】
【0114】
200…樹脂ステム; 201,202…リード; 203…樹脂部
204…反射面; 205…凹部; 206…発光素子
207,208…ボンディングワイヤ; 209…発光層; 210…蛍光体
100…樹脂ステム; 101,102…リード; 103…樹脂部
104…反射面; 106E…ツェナー・ダイオード; 106F…発光素子
107…接着剤; 109…ボンディングワイヤ; 110…蛍光体
111…発光層; 122…バッファ層; 123…n型コンタクト層
124…活性層; 125…p型クラッド層; 126…p型コンタクト層
127…n側電極; 128…p側電極; 132…n型クラッド層
138…透光性基板; 142,144…バンプ; 150…n型シリコン基板
152…p型領域; 154…p側電極; 156…n側電極; 158…n側電極
160…配線層; 162…高反射膜; 50、50’…リード
51…発光素子; 52…マウント材; 53…ボンディングワイヤ
54…プレディップ材; 55…キャスティング材; 56…蛍光体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表わされる組成を有する蛍光体粒子を含むことを特徴とする蛍光体。
(Mg1-w,AEw)a(Ge1-x,Snx)bOc,Cld:zMn (A)
AEはCaおよびSrから選択される少なくとも一種であり、a、b、c、d、w、xおよびzは、それぞれ以下の範囲内の数値である。
3.5≦a≦4.4、0.8≦b≦1.1、5.5≦c≦7.0、0<d≦0.41
0<w≦0.05、 0<x≦0.10、 0<z≦0.03
【請求項2】
前記AEはCaであり、0<d≦0.25、0<w≦0.04であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
無機材料または有機材料からなる表層材をさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発する発光素子と、前記発光素子からの光を受けて赤色発光する蛍光体を含む発光層とを具備し、前記赤色発光する蛍光体の少なくとも一部は請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蛍光体であることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
前記発光素子は、420nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光層は、540nm以上580nm以下の波長領域に主発光ピークを有する黄色発光蛍光体をさらに含むことを特徴とする請求項4または5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光層は、440nm以上490nm以下の波長領域に主発光ピークを有する青色発光蛍光体をさらに含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項1】
下記一般式(A)で表わされる組成を有する蛍光体粒子を含むことを特徴とする蛍光体。
(Mg1-w,AEw)a(Ge1-x,Snx)bOc,Cld:zMn (A)
AEはCaおよびSrから選択される少なくとも一種であり、a、b、c、d、w、xおよびzは、それぞれ以下の範囲内の数値である。
3.5≦a≦4.4、0.8≦b≦1.1、5.5≦c≦7.0、0<d≦0.41
0<w≦0.05、 0<x≦0.10、 0<z≦0.03
【請求項2】
前記AEはCaであり、0<d≦0.25、0<w≦0.04であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
無機材料または有機材料からなる表層材をさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
250nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する光を発する発光素子と、前記発光素子からの光を受けて赤色発光する蛍光体を含む発光層とを具備し、前記赤色発光する蛍光体の少なくとも一部は請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蛍光体であることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
前記発光素子は、420nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光層は、540nm以上580nm以下の波長領域に主発光ピークを有する黄色発光蛍光体をさらに含むことを特徴とする請求項4または5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光層は、440nm以上490nm以下の波長領域に主発光ピークを有する青色発光蛍光体をさらに含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−178960(P2011−178960A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46982(P2010−46982)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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