衝撃吸収部材
【課題】簡単に製作することができ、軽量で、高い平均圧潰荷重を有し、蛇腹状に確実に変形することにより高い吸収エネルギを有する衝撃吸収部材を提供する。
【解決手段】曲面及び平面からなる開いた形状のユニット部材O6,O6及びO1,O1を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する衝撃吸収部材1である。ユニット部材O6,O6及びO1,O1は、曲面に平面状又は曲面状に形成されるとともに衝撃吸収部材1の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合される。
【解決手段】曲面及び平面からなる開いた形状のユニット部材O6,O6及びO1,O1を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する衝撃吸収部材1である。ユニット部材O6,O6及びO1,O1は、曲面に平面状又は曲面状に形成されるとともに衝撃吸収部材1の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収部材に関する。具体的には、本発明は、例えば自動車等の車両の衝突時に発生する衝撃エネルギを吸収することができる衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、現在の多くの自動車の車体は、軽量化及び高剛性を両立するために、フレームと一体化したボディ全体によって荷重を支えるモノコックボディにより、構成される。自動車の車体は、車両の衝突時には、車両としての機能損傷を抑制するとともにキャビン内の乗員の生命を守る機能を有さなければならない。車両の衝突時の衝突エネルギを吸収してキャビン内への衝撃力を緩和することによってキャビンの損傷をできるだけ低減するためには、例えばエンジンルームやトランクルームといったキャビン以外のスペースを優先的に潰すことが有効である。このような安全上の要請から、車体の前部、後部あるいは側部等の適宜箇所には、衝突時に衝撃荷重が負荷されると圧壊することによって衝突エネルギを積極的に吸収するための衝撃吸収部材が設けられてきた。これまでにも、このような衝撃吸収部材として、フロントサイドメンバ、サイドシルさらにはリアサイドメンバ等が知られている。
【0003】
近年、クラッシュボックスといわれる衝撃吸収部材をフロントサイドメンバの先端に、例えば締結や溶接等の適宜手段によって装着することによって、車体の安全性の向上と、軽衝突による車体の損傷を略解消することによる修理費の低減とをともに図ることも行われるようになってきている。クラッシュボックスとは、負荷された衝撃荷重によって長手方向に蛇腹状に優先的に圧潰することによって衝突エネルギの多くを吸収するための部材である。
【0004】
フロントサイドメンバ等やこのクラッシュボックスといった衝撃吸収部材に要求される衝撃吸収性能を具体的に説明すると、(a)衝撃荷重が軸方向に負荷されるとその負荷方向へ繰り返し安定して座屈することにより蛇腹状に変形すること、(b)衝撃吸収部材の圧壊時の平均荷重が高いこと、さらには、(c)衝撃吸収部材の圧壊の際に発生する最大反力がこの衝撃吸収部材の近傍に配置された他の部材を破壊しない範囲に抑制されることの三点である。
【0005】
図1は、軸方向に衝撃荷重が負荷された衝撃吸収部材について、軸圧潰荷重と軸圧潰量との関係と、負荷された衝撃エネルギのうちで衝撃吸収部材により吸収されたエネルギ(本明細書では「吸収エネルギ」という)の量との一例を示すグラフである。図1のグラフにおける曲線と横軸との間の面積が吸収エネルギの量を示している。
【0006】
吸収エネルギの量を十分に確保するためには、安定した軸圧壊変形を生じて蛇腹状に圧潰することが必要である。すなわち、図1にグラフで示すように、圧壊時の衝撃吸収部材が蛇腹状の変形を継続できずに断続的に折れ曲がり変形を伴ってしまうと、折れ曲がり変形を生じる度に軸圧壊荷重が急激に低下するため、吸収エネルギの量が低下してしまう。図1のグラフにおける軸圧壊荷重の急激な低下(本明細書ではこのように軸圧潰荷重が断続的に急激に低下する現象を「荷重振幅」という)を防止するには、衝撃吸収部材の板厚を増加せざるを得なくなるため、自動車車体に強く要求される軽量化に反してしまう。
【0007】
このような背景下にあって、衝撃吸収部材の衝撃吸収性能を向上させるための材質や形状がこれまでにも積極的に開発されている。フロントサイドメンバ等の一般的に用いられてきた衝撃吸収部材は、例えば特許文献1に開示されるような、ハット形の断面形状の部材に設けられたフランジを介して裏板を溶接して箱状部材となしたものである。なお、本明細書において「フランジ」とは、横断面における輪郭から外部へ向けて突出し、その一端が部材の横断面形状に連続しない部位を意味する。
【0008】
これに対し、特許文献2には、一端から他端へ向けての横断面形状が四角形以上の多角形からこの多角形よりも辺の数が多い他の多角形へと連続的に変化する閉断面構造とすることによって、衝突初期の荷重を低減しながら吸収エネルギの量を増加させた衝撃吸収部材に係る発明が開示されている。
【0009】
特許文献3には、内部に隔壁を有する多角形の閉断面形状を有する衝撃吸収部材に係る発明が開示されている。
特許文献4には、四角形の横断面を有する素材の4つの頂点を含む領域に、内部へ向けた略直角三角形状の凹み部を形成することによって強度を確保した衝撃吸収部材に係る発明が開示されている。
【0010】
さらに、特許文献5には、フランジを有するハット形の断面形状のフロントサイドフレームの側面に軸線方向へ向けてビードを形成することにより、衝撃荷重が負荷された際のフロントサイドメンバの折れ曲がり変形を抑制する発明が開示されている。
【特許文献1】特開平8−128487号公報
【特許文献2】特開平9−277953号公報
【特許文献3】特開2003−48569号公報
【特許文献4】特開2002−284033号公報
【特許文献5】特開平8−108863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、これらの従来のいずれの発明によっても、簡単に製作することができ、軽量で、高い平均圧潰荷重を有し、蛇腹状に確実に変形することにより高い吸収エネルギを有する衝撃吸収部材を提供することは、できない。
【0012】
すなわち、自動車の車体に用いられる衝撃吸収部材の横断面形状は、殆どの場合、矩形等の扁平形状である。このため、特許文献2により開示されたような単純な正多角形等の多角形の横断面形状を有する衝撃吸収部材を用いることは難しい。また、特許文献2により開示された発明では、衝撃吸収部材の略全長に渡って横断面形状が徐々に変化するため、軸方向の位置によっては不可避的に安定した座屈には適さない横断面形状になってしまう。したがって、この衝撃吸収部材は、衝撃荷重が軸方向に負荷されると、衝撃荷重の負荷方向へ繰り返し安定して座屈することができず、蛇腹状に変形しないおそれがある。
【0013】
特許文献3により開示された発明では、隔壁を設けられた部分の強度が過剰に上昇するおそれがある。このため、この発明では、座屈が不安定となってかえって吸収エネルギの量が不足するおそれがあるとともに、圧壊の特に初期に衝撃吸収部材に生じる最大反力が他の部材の強度を超え、衝撃吸収部材が圧壊される前に他の部材が先に圧壊してしまうおそれもある。また、この発明では、内部に隔壁を設ける分だけ衝撃吸収部材の重量が不可避的に増加する。このため、この発明では近年特に強く要請されている車体の軽量化に逆行する。
【0014】
特許文献4により開示された発明では、もともと強度が高い角部にさらに加工を行って凹み部を設けるために、この凹み部の強度が過剰に上昇するおそれがある。このため、この発明では、特許文献3により開示された発明と同様に、吸収エネルギの量が不足するおそれがあるとともに、この衝撃吸収部材が圧壊される前に他の部材が先に圧壊してしまうおそれがある。
【0015】
さらに、特許文献5により開示された発明では、衝撃吸収部材がフランジを有するハット形の横断面形状を有する。このため、この発明によれば、負荷された衝撃荷重による折れ曲がり変形を抑制することは確かに可能になると考えられる。しかし、この発明によっては、衝撃荷重を負荷されても、軸方向へ蛇腹状に安定して圧壊することはできない。
【0016】
本発明の目的は、簡単に製作することができ、軽量で、高い平均圧潰荷重を有し、蛇腹状に確実に変形することにより高い吸収エネルギを有する衝撃吸収部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する衝撃吸収部材であって、複数のユニット部材が、曲面又は平面の少なくとも一方に平面状又は曲面状に形成されるとともに衝撃吸収部材の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合されることを特徴とする衝撃吸収部材である。
【0018】
本発明に係る衝撃吸収部材は、横断面において、(i)輪郭についての仮想の最大の輪郭の長辺の長さ(L1)と、この長辺の長さ方向への一つのユニット部材の最大の長さ(W1)とが、W1≦L1×(2/3)の関係を満足すること、又は(ii)接合部と、この接合部に隣接する平面又は曲面の接線とが、接合部の端部においてなす角度である接合部内角(α)が180°以下であることの少なくとも一方であることが、望ましい。
【0019】
また、これらの本発明に係る衝撃吸収部材では、横断面において、凹み部が形成された領域におけるユニット部材の、ユニット部材の接合方向と直交する方向の長さである高さ(H)と、凹み部が形成された領域におけるユニット部材の、ユニット部材の接合方向の最大長さである幅(Wu)とが、H≧0.05×Wuの関係を満足することが望ましい。
【0020】
さらに、これらの本発明に係る衝撃吸収部材では、複数のユニット部材の板厚又は強度の少なくとも一方が、衝撃吸収部材に要求される所定の吸収エネルギを満足するように、複数のユニット部材毎に個別に設定されることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
この本発明に係る衝撃吸収部材は、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有するため、蛇腹状への変形の初期に生じる各しわ一つずつを小さくするとともに、このしわの発生数を多くすることができる。
【0022】
また、本発明に係る衝撃吸収部材は、複数のユニット部材が、曲面又は平面の少なくとも一方におおよそ平面状に形成されるとともに衝撃吸収部材の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合されるため、折れ曲がり変形を伴うことなく軸圧壊変形を維持できるために、蛇腹状に確実に圧潰される。
【0023】
さらに、本発明に係る衝撃吸収部材では、複数のユニット部材の板厚又は強度の少なくとも一方が、衝撃吸収部材に要求される所定の吸収エネルギを満足するように個別に設定すれば、衝撃吸収部材の輪郭の大きさを設計目標値内にとどめたままで、また板厚増加による重量増を最小限に抑えて、所望の吸収エネルギを得ることができるとともに、荷重の負荷方向に対して斜めに装着される場合であっても、強度及び剛性差のバランス設定を容易に行って蛇腹状の変形を維持することができる。
【0024】
これらにより、本発明によれば、簡単に製作することができ、軽量で、高い平均圧潰荷重を有し、蛇腹状に確実に変形することにより高い吸収エネルギを有する衝撃吸収部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る衝撃吸収部材を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
初めに、本発明に係る衝撃吸収部材の原理を簡単に説明する。
【0026】
横断面形状が例えば多角形からなる衝撃吸収部材に衝撃荷重が負荷された際に生じる荷重振幅の幅をできるだけ抑制し、衝撃荷重の負荷方向へ繰り返し安定して座屈させることによって蛇腹状の変形を促進して吸収エネルギを高めるためには、蛇腹状への変形の起点として圧潰の初期に生じる各しわ一つずつを小さくするとともに、このしわの発生数を多くする必要がある。
【0027】
このしわを小さくかつ多量に発生することだけを達成するには、衝撃吸収部材の板厚を薄くするとともに衝撃吸収部材の各辺の長さを小さく設定すればよいのでは、と一見思われる。しかし、単に、衝撃吸収部材の板厚の低下及び各辺長さの短縮を図ってしまうと、所望の強度等を確保する必要性から、衝撃吸収部材の横断面積を大きく確保しなければならなくなり、エンジンコンパートメント等の狭隘部に配置されることからその輪郭の大きさについて厳しい制限が課される衝撃吸収部材として実用化することが困難になる。
【0028】
これに対し、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有するように衝撃吸収部材を構成すれば、蛇腹状への変形の初期に生じる各しわ一つずつを小さくするとともに、このしわの発生数を多くすることができる。このため、衝撃吸収部材の大きさの拡大を防止でき、横断面積をできるだけ小さく抑制したままで、強度等の微調整を容易に行うとともに板厚の増加に起因した重量増加も最小限に抑制することができ、これにより、蛇腹状に圧潰させることができる。
【0029】
しかし、このような衝撃吸収部材を構成するユニット部材同士をその端部に外向きに突出して形成したフランジを介して接合すると、衝撃荷重を負荷された際にこのフランジが部分的に口開きする変形(以下、「口開き変形」という)を生じ、これにより、蛇腹状に変形する軸圧壊変形を継続できずに折れ曲がり変形が断続的に発生し、軸圧壊荷重の低下すなわち吸収エネルギが低下する。
【0030】
図2は、外向きのフランジを有するハット部材同士を、このフランジを介して適当な打点間距離でのスポット溶接により接合して得られる衝撃吸収部材に、軸方向への衝撃荷重を負荷した際の軸圧潰の様子と、荷重応答状況(軸圧潰量と、荷重/平均荷重との関係)とを示す説明図である。
【0031】
図2に示すように、ハット部材同士を外向きのフランジ同士を重ね合わせて一定の打点間距離でスポット溶接すると、衝撃荷重による圧潰の際にスポット打点間で図2に例示するような口開き変形を生じ、吸収エネルギの量が減少する。
【0032】
これに対し、フランジが内側を指向するように設け、ハット部材同士を内向きのフランジ同士を重ね合わせて一定の打点間距離でスポット溶接すると、衝撃荷重による圧潰の際にスポット打点間での口開き変形を生じることが解消され、軸圧潰変形を継続して確実に蛇腹状に圧潰させることができるようになるため、吸収エネルギの低下を抑制できる。
【0033】
略述すると、本発明は、衝撃荷重による圧潰の際に上述した口開き変形が生じることを抑制することにより、蛇腹状への軸圧潰変形を確実に実現して、吸収エネルギの増加を図るものである。次に、本実施の形態の衝撃吸収部材の特徴を説明する。
【0034】
本実施の形態の衝撃吸収部材は、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面及び/又は平面の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する。図3は、各種のユニット部材の例O1〜O13、C1〜C11の横断面形状を示す説明図である。
【0035】
図3に示すように、本実施の形態では、例えば、曲面からなるユニット部材C1、C2や、複数の平面からなるユニット部材C3、C4、C6、C7,C8,O2〜O4、O7〜O9、さらには一又は二以上の曲面及び平面からなるユニット部材C5、C9、C10、C11、O1、O5、O6、O10〜O13を用いることができる。
【0036】
また、本実施の形態では、その周長方向に端部が存在しない閉じた形状のユニット部材C1〜C11を用いることができるし、あるいは、周長方向に端部が存在する開いた形状のユニット部材O1〜O13を用いることができる。さらには、閉じた形状のユニット部材C1〜C11と開いた形状のユニット部材O1〜O13とを適宜組み合わせた形状であってもよい。
【0037】
また、同一の横断面形状を有する一種のユニット部材のみを用いてもよいし、異なる横断面形状を有する複数種のユニット部材を組み合わせて用いてもよい。この場合に、組み合わせるユニット部材の板厚や材質等も同じに揃える必要はなく、適宜設定すればよい。ユニット部材の材質としては、鋼、アルミニウム合金さらにはマグネシウム合金等が例示される。
【0038】
このようなユニット部材の成形方法は、公知の適当な手段によればよく特定の手段には限定されない。例えば、所定の板厚の薄板にプレス成形を行って得られたものを用いてもよいし、管又は管を切断加工したもの、さらにはハイドロフォーム加工したもの等を用いることもできる。
【0039】
また、本発明者らは、様々な横断面形状を有するユニット部材を組み合わせて得られる様々な横断面形状を有する衝撃吸収部材に、その軸方向への衝撃荷重が負荷された場合の衝撃軸圧潰特性を、動的陽解法有限要素法ソフトを用いて解析した結果、ユニット部材に設けられた曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する衝撃吸収部材は、軸圧潰時の変形が安定するとともに、その輪郭を形成する角部や曲面によって座屈耐力が高まり、これにより、高い吸収エネルギを確保することができることを知見した。
【0040】
そこで、本実施の形態では、上述した複数のユニット部材をそれぞれの接合部を重ね合わせて並列配置した状態で接合することにより、衝撃吸収部材を構成する。本実施の形態の衝撃吸収部材は、ユニット部材に形成された曲面又は平面の少なくとも一方の一部により、衝撃吸収部材の内部へ向けて凹み部が形成されるとともに、閉じた横断面形状を呈する。
【0041】
本実施の形態の衝撃吸収部材は、例えばプレス成形により所望の横断面形状に成形された上述した複数のユニット部材を、それぞれの平面状または曲面状に形成された接合部を重ね合わせて並列配置した状態で、接着剤や治具等により仮止めして組み立てた後に、その内部に位置する接合部で例えばスポット溶接等を行うことにより接合されることにより、製造される。
【0042】
なお、ポータブルスポット溶接機によりスポット溶接を行う場合には、接合部が衝撃吸収部材の内部に存在するため、外部からのスポット作業が容易ではない場合には、複数のユニット部材の該当する位置にポータブルスポット溶接機のチップを貫通させるための作業孔を設けておけばよい。
【0043】
また、ユニット部材の接合手段として、上述したスポット溶接の他に、レーザ溶接やアーク溶接等も例示される。さらに、衝撃吸収部材の断面寸法が小さくポータブルスポット溶接機を用いることが容易でない場合には、例えば衝撃吸収部材の外部側からロウ付け溶接等を行うことによりユニット部材同士を接合することとしてもよい。
【0044】
また、組み合わせるユニット部材の個数は、衝撃吸収部材の断面寸法により適宜設定すればよく特段の限定は要さないが、2〜10個程度とすることが好ましい。組み合わせるユニット部材の個数が多過ぎると、製造コストの増加を招くとともに、衝撃吸収部材の外法が過大になることを防ぐために各ユニット部材の断面積を小さく設定するために個々のユニット部材の寸法が小さくなり過ぎてしまい、衝撃荷重を負荷された際に衝撃吸収部材に折れ曲がり変形が発生し易くなるからである。
【0045】
また、組み合わせるユニット部材それぞれは、軸方向の長さを同じ値に揃える必要はなく、例えば、3つのユニット部材を横方向に並べて組み上げる場合に真ん中のユニット部材の全長を両端のユニット部材の全長よりも短く設定して初期の衝撃荷重を両端に位置する2つのユニット部材のみで受けるように構成すれば、初期ピーク荷重を低減することも可能である。
【0046】
また、用いるユニット部材の横断面形状や、ユニット部材により構成される衝撃吸収部材の横断面形状は、軸方向に一定としなくともよい。例えば、初期ピーク荷重の軽減や蛇腹状の変形を促進するために、衝撃荷重の入力面側から徐々に横断面積が拡大されるように構成してもよい。
【0047】
さらに、初期ピーク荷重の軽減や蛇腹状の変形を促進するために、潰れビードや切り欠きを適宜設けてもよい。また、吸収エネルギを向上させるためには、ユニット部材の接合後に高周波加熱による焼入れや窒化処理を施してもよく、あるいは、ユニット部材の内部に発泡樹脂等を充填してもよい。
【0048】
本実施の形態では、上述した接合部は、複数のユニット部材それぞれの曲面及び/又は平面に平面状又は曲面状に形成されるとともに、衝撃吸収部材の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される。複数のユニット部材は、この接合部を重ね合わせて、接合される。
【0049】
図4は、本実施の形態の衝撃吸収部材1の一例を示す説明図であって、図4(a)は横断面図、図4(b)は圧潰量と軸圧潰荷重との関係の一例を示すグラフである。なお、図4(a)における破線の丸印を付した部分は、各ユニット部材O1、O1、O6、O6の接合部を示しており、本例ではこの接合部で軸方向への適当な打点間距離となるようにしてスポット溶接を行った。
【0050】
この衝撃吸収部材1は、上述した図3におけるユニット部材O1、O6を用いた場合を示す。本例では、接合部は、円弧状の輪郭を有するユニット部材O1、O6の円弧端における接線方向へ向けて平面として形成した。
【0051】
本例の衝撃吸収部材1は、曲面及び平面からなる開いた形状を有するユニット部材O1、O1、O6、O6を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面の一部によって内部に向けて形成された8つの凹み部24を有する閉じた輪郭を有する。そして、ユニット部材O1、O1、O6、O6が、曲面の端部に平面状に形成されるとともに衝撃吸収部材1の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される4組の接合部22、23を重ね合わせて、接合されている。
【0052】
本例の衝撃吸収部材1は、軸方向への衝撃荷重が負荷されると、それぞれのユニット部材O1、O6の円弧部は、小さいしわを形成し、さらに4組の接合部22、23を介して軸方向に交互にしわを発生することができる。このため、全体として安定した軸圧潰変形を示す。このため、図4(b)にグラフで示すように振幅の小さい荷重応答を示す。また、4組の接合部22、23は、しわの整合を図ることができるだけではなく、衝撃吸収部材1の曲げ剛性も向上させるため、斜めからの衝撃荷重に対しても安定変形に寄与する。
【0053】
一方、図5は、本実施の形態の他の衝撃吸収部材2の一例を示す説明図であって、図5(a)は横断面図、図5(b)は圧潰量と軸圧潰荷重との関係を示すグラフである。なお、図5(a)における破線の丸印を付した部分は、各ユニット部材O3、O3、O8、O8の接合部を示しており、本例においても接合部で軸方向への適当な打点間距離となるようにしてスポット溶接を行った。
【0054】
この衝撃吸収部材2は、上述した図3におけるユニット部材O3、O8を用いた場合を示す。本例では、4組の接合部22、23は、円弧状の輪郭を有するユニット部材O3、O8の円弧端における接線方向へ向けて平面として形成した。
【0055】
本例の衝撃吸収部材2は、平面からなる開いた形状を有するユニット部材O3、O3、O8、O8を並列に配置した状態で備えるとともに、この平面の一部によって内部に向けて形成された8つの凹み部25を有する閉じた輪郭を有する。そして、ユニット部材O3、O3、O8、O8が、平面の端部に平面状に形成されるとともに衝撃吸収部材2の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される4組の接合部22、23を重ね合わせて、接合されている。
【0056】
本例においても、それぞれのユニット部材O3、O8の角部を有する平面部が小さいしわを形成することができ、さらに4組の接合部22、23を介して軸方向に交互にしわを発生することができるため、全体として安定した軸圧潰変形を示し、図5(b)にグラフで示すように振幅の小さい荷重応答を示す。また、4組の接合部22、23は、しわの整合を図るだけではなく、衝撃吸収部材2の曲げ剛性も向上させるため、斜めからの衝撃荷重に対しても安定変形に寄与する。
【0057】
図6は、本実施の形態のさらに他の衝撃吸収部材3〜13の横断面を示す説明図である。なお、図6における破線の丸印を付した部分は、各ユニット部材の接合部を示しており、本例でもこの接合部で軸方向への適当な打点間距離となるようにしてスポット溶接を行った。
【0058】
衝撃吸収部材3は上述した図3におけるユニット部材O6を用いた場合を示し、衝撃吸収部材4はユニット部材O1、O12を用いた場合を示し、衝撃吸収部材5はユニット部材O2、O7を用いた場合を示し、衝撃吸収部材6はユニット部材O1、O6を用いた場合を示し、衝撃吸収部材7はユニット部材O1、O11を用いた場合を示し、衝撃吸収部材8はユニット部材O11を用いた場合を示し、衝撃吸収部材9はユニット部材O1、O6を用いた場合を示し、衝撃吸収部材10はユニット部材O2、O6、O8を用いた場合を示し、衝撃吸収部材11はユニット部材C11、O6を用いた場合を示し、衝撃吸収部材12はユニット部材O1、O5を用いた場合を示し、さらに、衝撃吸収部材13はユニット部材C2、O13を用いた場合を示す。
【0059】
これらの衝撃吸収部材3〜13も、上述した衝撃吸収部材1、2と同様に、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する。そして、複数のユニット部材は、曲面又は平面の少なくとも一方に平面状又は曲面状に形成されるとともに衝撃吸収部材の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合されるものである。
【0060】
ここで、接合部の形態に関し「平面状又は曲面状」である理由は、衝撃吸収部材1〜12のように、「平面状」とすれば、接合が容易であり、且つ、接合部の剛性が過度に強くならず、安定変形に寄与できるからである。また、衝撃吸収部材13のように、曲面のみからなるユニット部材C2を用いる場合にはユニット部材O13の接合部のように接合部形状をユニット部材C2の接合面に沿うような曲面状とすれば、ユニット部材C2−ユニット部材O13間のしわの整合もとれ、接合部剛性が過度に強くなることを防止できる。その結果、衝撃吸収部材3〜13のいずれも、それぞれのユニット部材O1、O2、O5、O6、O7、O8、O11、O12、O13、C2、C11に形成された曲面又は平面部の少なくとも一方は、小さいしわを形成することができ、さらに、軸方向に形成された平面部又は曲面部である接合部を介して交互にしわを発生することができるため、全体として安定した軸圧潰変形を示し、振幅の小さい荷重応答を示すことができる。また、接合部は、しわの整合を図るだけでなく、部材の曲げ剛性を向上させるため、斜めからの衝撃荷重に対しても安定変形に寄与する。
【0061】
また、本実施の形態の衝撃吸収部材1〜13は、横断面において、
(i)輪郭についての仮想の最大の輪郭の長辺の長さ(L1)と、この長辺の長さ方向への一つのユニット部材の最大の長さ(W1)とが、W1≦L1×(2/3)の関係を満足すること、
(ii)接合部と、この接合部に隣接する平面又は曲面の接線とが、接合部の端部においてなす角度である接合部内角(α)が180°以下であること、又は
(iii)凹み部が形成された領域におけるユニット部材の、ユニット部材の接合方向と直交する方向の長さである高さ(H)と、凹み部が形成された領域におけるユニット部材の、ユニット部材の接合方向の最大長さである幅(Wu)とが、H≧0.05×Wuの関係を満足すること
のうちの少なくとも一つを満足することが望ましいため、この点について説明する。
【0062】
(i)項について
図7は、本実施の形態の衝撃吸収部材1〜13の矩形の設計領域である、辺の長さがL1、L2(L1≧L2)である仮想の最大の輪郭14を示す説明図である。また、図8は、この仮想の最大の輪郭14内に存在する衝撃吸収部材1、8を示す説明図であり、一つのユニット部材により構成されるユニット領域15の辺の長さがW1、W2(W1≦W2)である。
【0063】
図7及び図8においてW1>L1×(2/3)の関係が成り立つと、軸圧潰時に形成されるしわの波長が大きく、かつ、荷重振幅が大きくなり、結果として吸収エネルギが低下する。このため、W1≦L1×(2/3)の関係が成り立つことが望ましい。なお、この関係が成立していれば、W2=L2となっても変形が長さL1の長辺方向に追従するため、特に限定を要さない。
【0064】
(ii)項について
図9は、平面からなるユニット部材からなる衝撃吸収部材16、又は平面及び曲面からなるユニット部材からなる衝撃吸収部材17について、隣接するユニット部材同士の接合部を抽出して示す説明図である。
【0065】
図9に示すように、衝撃吸収部材16では、横断面において、接合部18と、この接合部18に隣接する平面20とが、接合部18の端部18aにおいてなす角度である接合部内角αが180°以下であること、一方、衝撃吸収部材17では、横断面において、接合部19と、この接合部19に隣接する曲面21の接線26とが、接合部19の端部19aにおいてなす角度である接合部内角αが180°以下であることが満足されると、衝撃荷重が負荷された圧潰時における接合部18、20の口開き変形の発生が効果的に抑制される。このため、衝撃吸収部材16、17は全体として安定な軸圧潰変形を維持でき、確実に蛇腹状に圧潰されるため、望ましい。
【0066】
(iii)項について
図10は、ユニット部材の端部の領域を抽出して示す説明である。同図において、符号Hは、凹み部が形成された領域におけるユニット部材の接合方向(図面の左右方向)と直交する方向の長さである高さを示し、符号Wuは、凹み部が形成された領域におけるユニット部材の、ユニット部材の接合方向の最大長さである幅を示す。
【0067】
本実施の形態では、高さHが幅Wuに対してH<0.05×Wuの関係が成り立つと、断面の曲げ剛性が低下し、軸圧潰変形時の不安定な座屈変形を示す恐れがあり、結果として吸収エネルギが低下する。そこで、本実施の形態では、H≧0.05×Wuの関係を満足することが望ましい。
【0068】
さらに、本実施の形態では、複数のユニット部材の板厚又は強度の少なくとも一方が、衝撃吸収部材に要求される所定の吸収エネルギーを満足することができる値に、それぞれ個別に設定されることが望ましい。これにより、衝撃吸収部材の重量増加を最低限に抑制しながら所望の吸収エネルギを得ることができ、衝撃荷重の負荷方向に対して斜めに装着される場合にも強度や剛性差のバランスを設定し易くなる。
【0069】
このように、本実施の形態の衝撃吸収部材は、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有するため、蛇腹状への変形の初期に生じる各しわ一つずつを小さくするとともに、このしわの発生数を多くすることができる。
【0070】
また、本実施の形態の衝撃吸収部材は、複数のユニット部材が、曲面又は平面の少なくとも一方に平面状又は曲面状に形成されるとともに衝撃吸収部材の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合されるため、衝撃吸収部材の大きさの拡大を防止できるとともに、軸圧壊変形が維持されて蛇腹状に破壊される。
【0071】
さらに、本実施の形態の衝撃吸収部材では、複数のユニット部材の板厚又は強度の少なくとも一方が、衝撃吸収部材に要求される所定の吸収エネルギを満足するように個別に設定すれば、衝撃吸収部材の形状を修正することなく、さらに板厚増加による重量増を最小限に抑えつつ、所望の軸圧潰荷重レベル、すなわち、吸収エネルギが得られ、斜めに取り付けられる部材に対しても強度及び剛性差のバランス設定を容易に行うことができる。
【0072】
これらにより、本発明によれば、簡単に製作することができ、軽量で、高い平均圧潰荷重を有し、蛇腹状に確実に変形することにより高い吸収エネルギを有する衝撃吸収部材を提供することができる。
【実施例1】
【0073】
さらに、本発明を実施例を参照しながらより具体的に説明する。
図7に示す、120×60(mm)の矩形の仮想の最大の輪郭内で、上述した本実施の形態に基づいて断面形状を設計し、動的陽解法有限要素法ソフトを使用して衝撃軸圧潰性能を調査した。なお、衝撃速度は等速64km/h、部材長は200mmとし、圧潰量を150mmに設定した。なお、実車で使用されることを想定し、初期変形安定化・1ピーク荷重低減のための切り欠きを衝撃面側に導入している。材質は590MPa級の高張力鋼板(Cowper-Symonds則によるひずみ依存性考慮)で統一した。
【0074】
評価を行った衝撃吸収部材の横断面形状及び板厚を、図11にまとめて示す。なお、図11(c)は、従来より公知である、いわゆる片ハット部材を示す。
図11(a)、図11(b)、図11(d)〜 図11(i)に示す本発明例と、図11(c)に示す比較例とについて、重量・吸収エネルギ比較を表1に示す。断面周長による重量差を考慮し、吸収エネルギを重量で除した値もあわせて記載している。
【0075】
【表1】
【0076】
また、軸圧潰時の荷重変位線図を図12にグラフで示す。図12に示すグラフでは発明例・比較例で荷重レベルが異なるため平均荷重で除したグラフにて比較している。
【0077】
表1をみるとわかるように、本発明例1、2、3〜8は,比較例よりも軽量であり、吸収エネルギ量および単位重量当たりの吸収エネルギ量が比較例3よりも大きく、衝撃特性が良好であることが分かる。
【0078】
図12のグラフから明らかなように、本発明例は、比較例より波形の凹凸が小さくなっている。これは各ユニット部材が小さいしわを形成し、塑性座屈周期が短く、板厚が比較例より小さくても荷重の落ち込みを抑えることができるためであり、結果として荷重が高位で安定し、吸収エネルギ量を高めている。
【0079】
さらに、発明例2は発明例1の各ユニット部材の1つを板厚1.2tに増加したものであるが、荷重応答特性を崩すことなく、表1に示すように吸収エネルギ量を向上している。このように、ユニット毎に板厚・材質を調整すれば、形状を修正することなく、さらに板厚増加による重量増を最小限に抑えつつ、軸圧潰荷重レベル、すなわち、吸収エネルギのコントロールに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】軸方向に衝撃荷重が負荷された衝撃吸収部材について、軸圧潰荷重と軸圧潰量との関係と、負荷された衝撃エネルギのうちで衝撃吸収部材により吸収されたエネルギの量との一例を示すグラフである。
【図2】外向きのフランジを有するハット部材同士を、このフランジを介して適当な打点間距離でのスポット溶接により接合して得られる衝撃吸収部材に、軸方向への衝撃荷重を負荷した際の軸圧潰の様子と、荷重応答状況(軸圧潰量と、荷重/平均荷重との関係)とを示す説明図である。
【図3】各種のユニット部材の例の横断面形状を示す説明図である。
【図4】実施の形態の衝撃吸収部材の一例を示す説明図であって、図4(a)は横断面図、図4(b)は圧潰量と軸圧潰荷重との関係の一例を示すグラフである。
【図5】実施の形態の他の衝撃吸収部材の一例を示す説明図であって、図5(a)は横断面図、図5(b)は圧潰量と軸圧潰荷重との関係を示すグラフである。
【図6】実施の形態のさらに他の衝撃吸収部材の横断面を示す説明図である。
【図7】実施の形態の衝撃吸収部材の矩形の設計領域である、辺の長さがL1、L2である仮想の最大の輪郭を示す説明図である。
【図8】仮想の最大の輪郭内に存在する衝撃吸収部材を示す説明図であり、一つのユニット部材により構成されるユニット領域の辺の長さがW1、W2である。
【図9】平面からなるユニット部材からなる衝撃吸収部材、又は平面及び曲面からなるユニット部材からなる衝撃吸収部材について、隣接するユニット部材同士の接合部を抽出して示す説明図である。
【図10】ユニット部材の端部の領域を抽出して示す説明である。
【図11】評価を行った衝撃吸収部材の横断面形状及び板厚をまとめて示す説明図である。
【図12】ユニット部材の端部の領域を抽出して示す説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1〜13 衝撃吸収部材
14 仮想の最大の輪郭
15 ユニット領域
16、17 衝撃吸収部材
18,19 接合部
18a,19a 端部
20 平面
21 曲面
22、23 接合部
24、25 凹み部
26 接線
α 接合部内角
C1〜C11 閉じた形状のユニット部材
O1〜O13 開いた形状のユニット部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収部材に関する。具体的には、本発明は、例えば自動車等の車両の衝突時に発生する衝撃エネルギを吸収することができる衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、現在の多くの自動車の車体は、軽量化及び高剛性を両立するために、フレームと一体化したボディ全体によって荷重を支えるモノコックボディにより、構成される。自動車の車体は、車両の衝突時には、車両としての機能損傷を抑制するとともにキャビン内の乗員の生命を守る機能を有さなければならない。車両の衝突時の衝突エネルギを吸収してキャビン内への衝撃力を緩和することによってキャビンの損傷をできるだけ低減するためには、例えばエンジンルームやトランクルームといったキャビン以外のスペースを優先的に潰すことが有効である。このような安全上の要請から、車体の前部、後部あるいは側部等の適宜箇所には、衝突時に衝撃荷重が負荷されると圧壊することによって衝突エネルギを積極的に吸収するための衝撃吸収部材が設けられてきた。これまでにも、このような衝撃吸収部材として、フロントサイドメンバ、サイドシルさらにはリアサイドメンバ等が知られている。
【0003】
近年、クラッシュボックスといわれる衝撃吸収部材をフロントサイドメンバの先端に、例えば締結や溶接等の適宜手段によって装着することによって、車体の安全性の向上と、軽衝突による車体の損傷を略解消することによる修理費の低減とをともに図ることも行われるようになってきている。クラッシュボックスとは、負荷された衝撃荷重によって長手方向に蛇腹状に優先的に圧潰することによって衝突エネルギの多くを吸収するための部材である。
【0004】
フロントサイドメンバ等やこのクラッシュボックスといった衝撃吸収部材に要求される衝撃吸収性能を具体的に説明すると、(a)衝撃荷重が軸方向に負荷されるとその負荷方向へ繰り返し安定して座屈することにより蛇腹状に変形すること、(b)衝撃吸収部材の圧壊時の平均荷重が高いこと、さらには、(c)衝撃吸収部材の圧壊の際に発生する最大反力がこの衝撃吸収部材の近傍に配置された他の部材を破壊しない範囲に抑制されることの三点である。
【0005】
図1は、軸方向に衝撃荷重が負荷された衝撃吸収部材について、軸圧潰荷重と軸圧潰量との関係と、負荷された衝撃エネルギのうちで衝撃吸収部材により吸収されたエネルギ(本明細書では「吸収エネルギ」という)の量との一例を示すグラフである。図1のグラフにおける曲線と横軸との間の面積が吸収エネルギの量を示している。
【0006】
吸収エネルギの量を十分に確保するためには、安定した軸圧壊変形を生じて蛇腹状に圧潰することが必要である。すなわち、図1にグラフで示すように、圧壊時の衝撃吸収部材が蛇腹状の変形を継続できずに断続的に折れ曲がり変形を伴ってしまうと、折れ曲がり変形を生じる度に軸圧壊荷重が急激に低下するため、吸収エネルギの量が低下してしまう。図1のグラフにおける軸圧壊荷重の急激な低下(本明細書ではこのように軸圧潰荷重が断続的に急激に低下する現象を「荷重振幅」という)を防止するには、衝撃吸収部材の板厚を増加せざるを得なくなるため、自動車車体に強く要求される軽量化に反してしまう。
【0007】
このような背景下にあって、衝撃吸収部材の衝撃吸収性能を向上させるための材質や形状がこれまでにも積極的に開発されている。フロントサイドメンバ等の一般的に用いられてきた衝撃吸収部材は、例えば特許文献1に開示されるような、ハット形の断面形状の部材に設けられたフランジを介して裏板を溶接して箱状部材となしたものである。なお、本明細書において「フランジ」とは、横断面における輪郭から外部へ向けて突出し、その一端が部材の横断面形状に連続しない部位を意味する。
【0008】
これに対し、特許文献2には、一端から他端へ向けての横断面形状が四角形以上の多角形からこの多角形よりも辺の数が多い他の多角形へと連続的に変化する閉断面構造とすることによって、衝突初期の荷重を低減しながら吸収エネルギの量を増加させた衝撃吸収部材に係る発明が開示されている。
【0009】
特許文献3には、内部に隔壁を有する多角形の閉断面形状を有する衝撃吸収部材に係る発明が開示されている。
特許文献4には、四角形の横断面を有する素材の4つの頂点を含む領域に、内部へ向けた略直角三角形状の凹み部を形成することによって強度を確保した衝撃吸収部材に係る発明が開示されている。
【0010】
さらに、特許文献5には、フランジを有するハット形の断面形状のフロントサイドフレームの側面に軸線方向へ向けてビードを形成することにより、衝撃荷重が負荷された際のフロントサイドメンバの折れ曲がり変形を抑制する発明が開示されている。
【特許文献1】特開平8−128487号公報
【特許文献2】特開平9−277953号公報
【特許文献3】特開2003−48569号公報
【特許文献4】特開2002−284033号公報
【特許文献5】特開平8−108863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、これらの従来のいずれの発明によっても、簡単に製作することができ、軽量で、高い平均圧潰荷重を有し、蛇腹状に確実に変形することにより高い吸収エネルギを有する衝撃吸収部材を提供することは、できない。
【0012】
すなわち、自動車の車体に用いられる衝撃吸収部材の横断面形状は、殆どの場合、矩形等の扁平形状である。このため、特許文献2により開示されたような単純な正多角形等の多角形の横断面形状を有する衝撃吸収部材を用いることは難しい。また、特許文献2により開示された発明では、衝撃吸収部材の略全長に渡って横断面形状が徐々に変化するため、軸方向の位置によっては不可避的に安定した座屈には適さない横断面形状になってしまう。したがって、この衝撃吸収部材は、衝撃荷重が軸方向に負荷されると、衝撃荷重の負荷方向へ繰り返し安定して座屈することができず、蛇腹状に変形しないおそれがある。
【0013】
特許文献3により開示された発明では、隔壁を設けられた部分の強度が過剰に上昇するおそれがある。このため、この発明では、座屈が不安定となってかえって吸収エネルギの量が不足するおそれがあるとともに、圧壊の特に初期に衝撃吸収部材に生じる最大反力が他の部材の強度を超え、衝撃吸収部材が圧壊される前に他の部材が先に圧壊してしまうおそれもある。また、この発明では、内部に隔壁を設ける分だけ衝撃吸収部材の重量が不可避的に増加する。このため、この発明では近年特に強く要請されている車体の軽量化に逆行する。
【0014】
特許文献4により開示された発明では、もともと強度が高い角部にさらに加工を行って凹み部を設けるために、この凹み部の強度が過剰に上昇するおそれがある。このため、この発明では、特許文献3により開示された発明と同様に、吸収エネルギの量が不足するおそれがあるとともに、この衝撃吸収部材が圧壊される前に他の部材が先に圧壊してしまうおそれがある。
【0015】
さらに、特許文献5により開示された発明では、衝撃吸収部材がフランジを有するハット形の横断面形状を有する。このため、この発明によれば、負荷された衝撃荷重による折れ曲がり変形を抑制することは確かに可能になると考えられる。しかし、この発明によっては、衝撃荷重を負荷されても、軸方向へ蛇腹状に安定して圧壊することはできない。
【0016】
本発明の目的は、簡単に製作することができ、軽量で、高い平均圧潰荷重を有し、蛇腹状に確実に変形することにより高い吸収エネルギを有する衝撃吸収部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する衝撃吸収部材であって、複数のユニット部材が、曲面又は平面の少なくとも一方に平面状又は曲面状に形成されるとともに衝撃吸収部材の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合されることを特徴とする衝撃吸収部材である。
【0018】
本発明に係る衝撃吸収部材は、横断面において、(i)輪郭についての仮想の最大の輪郭の長辺の長さ(L1)と、この長辺の長さ方向への一つのユニット部材の最大の長さ(W1)とが、W1≦L1×(2/3)の関係を満足すること、又は(ii)接合部と、この接合部に隣接する平面又は曲面の接線とが、接合部の端部においてなす角度である接合部内角(α)が180°以下であることの少なくとも一方であることが、望ましい。
【0019】
また、これらの本発明に係る衝撃吸収部材では、横断面において、凹み部が形成された領域におけるユニット部材の、ユニット部材の接合方向と直交する方向の長さである高さ(H)と、凹み部が形成された領域におけるユニット部材の、ユニット部材の接合方向の最大長さである幅(Wu)とが、H≧0.05×Wuの関係を満足することが望ましい。
【0020】
さらに、これらの本発明に係る衝撃吸収部材では、複数のユニット部材の板厚又は強度の少なくとも一方が、衝撃吸収部材に要求される所定の吸収エネルギを満足するように、複数のユニット部材毎に個別に設定されることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
この本発明に係る衝撃吸収部材は、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有するため、蛇腹状への変形の初期に生じる各しわ一つずつを小さくするとともに、このしわの発生数を多くすることができる。
【0022】
また、本発明に係る衝撃吸収部材は、複数のユニット部材が、曲面又は平面の少なくとも一方におおよそ平面状に形成されるとともに衝撃吸収部材の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合されるため、折れ曲がり変形を伴うことなく軸圧壊変形を維持できるために、蛇腹状に確実に圧潰される。
【0023】
さらに、本発明に係る衝撃吸収部材では、複数のユニット部材の板厚又は強度の少なくとも一方が、衝撃吸収部材に要求される所定の吸収エネルギを満足するように個別に設定すれば、衝撃吸収部材の輪郭の大きさを設計目標値内にとどめたままで、また板厚増加による重量増を最小限に抑えて、所望の吸収エネルギを得ることができるとともに、荷重の負荷方向に対して斜めに装着される場合であっても、強度及び剛性差のバランス設定を容易に行って蛇腹状の変形を維持することができる。
【0024】
これらにより、本発明によれば、簡単に製作することができ、軽量で、高い平均圧潰荷重を有し、蛇腹状に確実に変形することにより高い吸収エネルギを有する衝撃吸収部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る衝撃吸収部材を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
初めに、本発明に係る衝撃吸収部材の原理を簡単に説明する。
【0026】
横断面形状が例えば多角形からなる衝撃吸収部材に衝撃荷重が負荷された際に生じる荷重振幅の幅をできるだけ抑制し、衝撃荷重の負荷方向へ繰り返し安定して座屈させることによって蛇腹状の変形を促進して吸収エネルギを高めるためには、蛇腹状への変形の起点として圧潰の初期に生じる各しわ一つずつを小さくするとともに、このしわの発生数を多くする必要がある。
【0027】
このしわを小さくかつ多量に発生することだけを達成するには、衝撃吸収部材の板厚を薄くするとともに衝撃吸収部材の各辺の長さを小さく設定すればよいのでは、と一見思われる。しかし、単に、衝撃吸収部材の板厚の低下及び各辺長さの短縮を図ってしまうと、所望の強度等を確保する必要性から、衝撃吸収部材の横断面積を大きく確保しなければならなくなり、エンジンコンパートメント等の狭隘部に配置されることからその輪郭の大きさについて厳しい制限が課される衝撃吸収部材として実用化することが困難になる。
【0028】
これに対し、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有するように衝撃吸収部材を構成すれば、蛇腹状への変形の初期に生じる各しわ一つずつを小さくするとともに、このしわの発生数を多くすることができる。このため、衝撃吸収部材の大きさの拡大を防止でき、横断面積をできるだけ小さく抑制したままで、強度等の微調整を容易に行うとともに板厚の増加に起因した重量増加も最小限に抑制することができ、これにより、蛇腹状に圧潰させることができる。
【0029】
しかし、このような衝撃吸収部材を構成するユニット部材同士をその端部に外向きに突出して形成したフランジを介して接合すると、衝撃荷重を負荷された際にこのフランジが部分的に口開きする変形(以下、「口開き変形」という)を生じ、これにより、蛇腹状に変形する軸圧壊変形を継続できずに折れ曲がり変形が断続的に発生し、軸圧壊荷重の低下すなわち吸収エネルギが低下する。
【0030】
図2は、外向きのフランジを有するハット部材同士を、このフランジを介して適当な打点間距離でのスポット溶接により接合して得られる衝撃吸収部材に、軸方向への衝撃荷重を負荷した際の軸圧潰の様子と、荷重応答状況(軸圧潰量と、荷重/平均荷重との関係)とを示す説明図である。
【0031】
図2に示すように、ハット部材同士を外向きのフランジ同士を重ね合わせて一定の打点間距離でスポット溶接すると、衝撃荷重による圧潰の際にスポット打点間で図2に例示するような口開き変形を生じ、吸収エネルギの量が減少する。
【0032】
これに対し、フランジが内側を指向するように設け、ハット部材同士を内向きのフランジ同士を重ね合わせて一定の打点間距離でスポット溶接すると、衝撃荷重による圧潰の際にスポット打点間での口開き変形を生じることが解消され、軸圧潰変形を継続して確実に蛇腹状に圧潰させることができるようになるため、吸収エネルギの低下を抑制できる。
【0033】
略述すると、本発明は、衝撃荷重による圧潰の際に上述した口開き変形が生じることを抑制することにより、蛇腹状への軸圧潰変形を確実に実現して、吸収エネルギの増加を図るものである。次に、本実施の形態の衝撃吸収部材の特徴を説明する。
【0034】
本実施の形態の衝撃吸収部材は、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面及び/又は平面の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する。図3は、各種のユニット部材の例O1〜O13、C1〜C11の横断面形状を示す説明図である。
【0035】
図3に示すように、本実施の形態では、例えば、曲面からなるユニット部材C1、C2や、複数の平面からなるユニット部材C3、C4、C6、C7,C8,O2〜O4、O7〜O9、さらには一又は二以上の曲面及び平面からなるユニット部材C5、C9、C10、C11、O1、O5、O6、O10〜O13を用いることができる。
【0036】
また、本実施の形態では、その周長方向に端部が存在しない閉じた形状のユニット部材C1〜C11を用いることができるし、あるいは、周長方向に端部が存在する開いた形状のユニット部材O1〜O13を用いることができる。さらには、閉じた形状のユニット部材C1〜C11と開いた形状のユニット部材O1〜O13とを適宜組み合わせた形状であってもよい。
【0037】
また、同一の横断面形状を有する一種のユニット部材のみを用いてもよいし、異なる横断面形状を有する複数種のユニット部材を組み合わせて用いてもよい。この場合に、組み合わせるユニット部材の板厚や材質等も同じに揃える必要はなく、適宜設定すればよい。ユニット部材の材質としては、鋼、アルミニウム合金さらにはマグネシウム合金等が例示される。
【0038】
このようなユニット部材の成形方法は、公知の適当な手段によればよく特定の手段には限定されない。例えば、所定の板厚の薄板にプレス成形を行って得られたものを用いてもよいし、管又は管を切断加工したもの、さらにはハイドロフォーム加工したもの等を用いることもできる。
【0039】
また、本発明者らは、様々な横断面形状を有するユニット部材を組み合わせて得られる様々な横断面形状を有する衝撃吸収部材に、その軸方向への衝撃荷重が負荷された場合の衝撃軸圧潰特性を、動的陽解法有限要素法ソフトを用いて解析した結果、ユニット部材に設けられた曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する衝撃吸収部材は、軸圧潰時の変形が安定するとともに、その輪郭を形成する角部や曲面によって座屈耐力が高まり、これにより、高い吸収エネルギを確保することができることを知見した。
【0040】
そこで、本実施の形態では、上述した複数のユニット部材をそれぞれの接合部を重ね合わせて並列配置した状態で接合することにより、衝撃吸収部材を構成する。本実施の形態の衝撃吸収部材は、ユニット部材に形成された曲面又は平面の少なくとも一方の一部により、衝撃吸収部材の内部へ向けて凹み部が形成されるとともに、閉じた横断面形状を呈する。
【0041】
本実施の形態の衝撃吸収部材は、例えばプレス成形により所望の横断面形状に成形された上述した複数のユニット部材を、それぞれの平面状または曲面状に形成された接合部を重ね合わせて並列配置した状態で、接着剤や治具等により仮止めして組み立てた後に、その内部に位置する接合部で例えばスポット溶接等を行うことにより接合されることにより、製造される。
【0042】
なお、ポータブルスポット溶接機によりスポット溶接を行う場合には、接合部が衝撃吸収部材の内部に存在するため、外部からのスポット作業が容易ではない場合には、複数のユニット部材の該当する位置にポータブルスポット溶接機のチップを貫通させるための作業孔を設けておけばよい。
【0043】
また、ユニット部材の接合手段として、上述したスポット溶接の他に、レーザ溶接やアーク溶接等も例示される。さらに、衝撃吸収部材の断面寸法が小さくポータブルスポット溶接機を用いることが容易でない場合には、例えば衝撃吸収部材の外部側からロウ付け溶接等を行うことによりユニット部材同士を接合することとしてもよい。
【0044】
また、組み合わせるユニット部材の個数は、衝撃吸収部材の断面寸法により適宜設定すればよく特段の限定は要さないが、2〜10個程度とすることが好ましい。組み合わせるユニット部材の個数が多過ぎると、製造コストの増加を招くとともに、衝撃吸収部材の外法が過大になることを防ぐために各ユニット部材の断面積を小さく設定するために個々のユニット部材の寸法が小さくなり過ぎてしまい、衝撃荷重を負荷された際に衝撃吸収部材に折れ曲がり変形が発生し易くなるからである。
【0045】
また、組み合わせるユニット部材それぞれは、軸方向の長さを同じ値に揃える必要はなく、例えば、3つのユニット部材を横方向に並べて組み上げる場合に真ん中のユニット部材の全長を両端のユニット部材の全長よりも短く設定して初期の衝撃荷重を両端に位置する2つのユニット部材のみで受けるように構成すれば、初期ピーク荷重を低減することも可能である。
【0046】
また、用いるユニット部材の横断面形状や、ユニット部材により構成される衝撃吸収部材の横断面形状は、軸方向に一定としなくともよい。例えば、初期ピーク荷重の軽減や蛇腹状の変形を促進するために、衝撃荷重の入力面側から徐々に横断面積が拡大されるように構成してもよい。
【0047】
さらに、初期ピーク荷重の軽減や蛇腹状の変形を促進するために、潰れビードや切り欠きを適宜設けてもよい。また、吸収エネルギを向上させるためには、ユニット部材の接合後に高周波加熱による焼入れや窒化処理を施してもよく、あるいは、ユニット部材の内部に発泡樹脂等を充填してもよい。
【0048】
本実施の形態では、上述した接合部は、複数のユニット部材それぞれの曲面及び/又は平面に平面状又は曲面状に形成されるとともに、衝撃吸収部材の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される。複数のユニット部材は、この接合部を重ね合わせて、接合される。
【0049】
図4は、本実施の形態の衝撃吸収部材1の一例を示す説明図であって、図4(a)は横断面図、図4(b)は圧潰量と軸圧潰荷重との関係の一例を示すグラフである。なお、図4(a)における破線の丸印を付した部分は、各ユニット部材O1、O1、O6、O6の接合部を示しており、本例ではこの接合部で軸方向への適当な打点間距離となるようにしてスポット溶接を行った。
【0050】
この衝撃吸収部材1は、上述した図3におけるユニット部材O1、O6を用いた場合を示す。本例では、接合部は、円弧状の輪郭を有するユニット部材O1、O6の円弧端における接線方向へ向けて平面として形成した。
【0051】
本例の衝撃吸収部材1は、曲面及び平面からなる開いた形状を有するユニット部材O1、O1、O6、O6を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面の一部によって内部に向けて形成された8つの凹み部24を有する閉じた輪郭を有する。そして、ユニット部材O1、O1、O6、O6が、曲面の端部に平面状に形成されるとともに衝撃吸収部材1の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される4組の接合部22、23を重ね合わせて、接合されている。
【0052】
本例の衝撃吸収部材1は、軸方向への衝撃荷重が負荷されると、それぞれのユニット部材O1、O6の円弧部は、小さいしわを形成し、さらに4組の接合部22、23を介して軸方向に交互にしわを発生することができる。このため、全体として安定した軸圧潰変形を示す。このため、図4(b)にグラフで示すように振幅の小さい荷重応答を示す。また、4組の接合部22、23は、しわの整合を図ることができるだけではなく、衝撃吸収部材1の曲げ剛性も向上させるため、斜めからの衝撃荷重に対しても安定変形に寄与する。
【0053】
一方、図5は、本実施の形態の他の衝撃吸収部材2の一例を示す説明図であって、図5(a)は横断面図、図5(b)は圧潰量と軸圧潰荷重との関係を示すグラフである。なお、図5(a)における破線の丸印を付した部分は、各ユニット部材O3、O3、O8、O8の接合部を示しており、本例においても接合部で軸方向への適当な打点間距離となるようにしてスポット溶接を行った。
【0054】
この衝撃吸収部材2は、上述した図3におけるユニット部材O3、O8を用いた場合を示す。本例では、4組の接合部22、23は、円弧状の輪郭を有するユニット部材O3、O8の円弧端における接線方向へ向けて平面として形成した。
【0055】
本例の衝撃吸収部材2は、平面からなる開いた形状を有するユニット部材O3、O3、O8、O8を並列に配置した状態で備えるとともに、この平面の一部によって内部に向けて形成された8つの凹み部25を有する閉じた輪郭を有する。そして、ユニット部材O3、O3、O8、O8が、平面の端部に平面状に形成されるとともに衝撃吸収部材2の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される4組の接合部22、23を重ね合わせて、接合されている。
【0056】
本例においても、それぞれのユニット部材O3、O8の角部を有する平面部が小さいしわを形成することができ、さらに4組の接合部22、23を介して軸方向に交互にしわを発生することができるため、全体として安定した軸圧潰変形を示し、図5(b)にグラフで示すように振幅の小さい荷重応答を示す。また、4組の接合部22、23は、しわの整合を図るだけではなく、衝撃吸収部材2の曲げ剛性も向上させるため、斜めからの衝撃荷重に対しても安定変形に寄与する。
【0057】
図6は、本実施の形態のさらに他の衝撃吸収部材3〜13の横断面を示す説明図である。なお、図6における破線の丸印を付した部分は、各ユニット部材の接合部を示しており、本例でもこの接合部で軸方向への適当な打点間距離となるようにしてスポット溶接を行った。
【0058】
衝撃吸収部材3は上述した図3におけるユニット部材O6を用いた場合を示し、衝撃吸収部材4はユニット部材O1、O12を用いた場合を示し、衝撃吸収部材5はユニット部材O2、O7を用いた場合を示し、衝撃吸収部材6はユニット部材O1、O6を用いた場合を示し、衝撃吸収部材7はユニット部材O1、O11を用いた場合を示し、衝撃吸収部材8はユニット部材O11を用いた場合を示し、衝撃吸収部材9はユニット部材O1、O6を用いた場合を示し、衝撃吸収部材10はユニット部材O2、O6、O8を用いた場合を示し、衝撃吸収部材11はユニット部材C11、O6を用いた場合を示し、衝撃吸収部材12はユニット部材O1、O5を用いた場合を示し、さらに、衝撃吸収部材13はユニット部材C2、O13を用いた場合を示す。
【0059】
これらの衝撃吸収部材3〜13も、上述した衝撃吸収部材1、2と同様に、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する。そして、複数のユニット部材は、曲面又は平面の少なくとも一方に平面状又は曲面状に形成されるとともに衝撃吸収部材の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合されるものである。
【0060】
ここで、接合部の形態に関し「平面状又は曲面状」である理由は、衝撃吸収部材1〜12のように、「平面状」とすれば、接合が容易であり、且つ、接合部の剛性が過度に強くならず、安定変形に寄与できるからである。また、衝撃吸収部材13のように、曲面のみからなるユニット部材C2を用いる場合にはユニット部材O13の接合部のように接合部形状をユニット部材C2の接合面に沿うような曲面状とすれば、ユニット部材C2−ユニット部材O13間のしわの整合もとれ、接合部剛性が過度に強くなることを防止できる。その結果、衝撃吸収部材3〜13のいずれも、それぞれのユニット部材O1、O2、O5、O6、O7、O8、O11、O12、O13、C2、C11に形成された曲面又は平面部の少なくとも一方は、小さいしわを形成することができ、さらに、軸方向に形成された平面部又は曲面部である接合部を介して交互にしわを発生することができるため、全体として安定した軸圧潰変形を示し、振幅の小さい荷重応答を示すことができる。また、接合部は、しわの整合を図るだけでなく、部材の曲げ剛性を向上させるため、斜めからの衝撃荷重に対しても安定変形に寄与する。
【0061】
また、本実施の形態の衝撃吸収部材1〜13は、横断面において、
(i)輪郭についての仮想の最大の輪郭の長辺の長さ(L1)と、この長辺の長さ方向への一つのユニット部材の最大の長さ(W1)とが、W1≦L1×(2/3)の関係を満足すること、
(ii)接合部と、この接合部に隣接する平面又は曲面の接線とが、接合部の端部においてなす角度である接合部内角(α)が180°以下であること、又は
(iii)凹み部が形成された領域におけるユニット部材の、ユニット部材の接合方向と直交する方向の長さである高さ(H)と、凹み部が形成された領域におけるユニット部材の、ユニット部材の接合方向の最大長さである幅(Wu)とが、H≧0.05×Wuの関係を満足すること
のうちの少なくとも一つを満足することが望ましいため、この点について説明する。
【0062】
(i)項について
図7は、本実施の形態の衝撃吸収部材1〜13の矩形の設計領域である、辺の長さがL1、L2(L1≧L2)である仮想の最大の輪郭14を示す説明図である。また、図8は、この仮想の最大の輪郭14内に存在する衝撃吸収部材1、8を示す説明図であり、一つのユニット部材により構成されるユニット領域15の辺の長さがW1、W2(W1≦W2)である。
【0063】
図7及び図8においてW1>L1×(2/3)の関係が成り立つと、軸圧潰時に形成されるしわの波長が大きく、かつ、荷重振幅が大きくなり、結果として吸収エネルギが低下する。このため、W1≦L1×(2/3)の関係が成り立つことが望ましい。なお、この関係が成立していれば、W2=L2となっても変形が長さL1の長辺方向に追従するため、特に限定を要さない。
【0064】
(ii)項について
図9は、平面からなるユニット部材からなる衝撃吸収部材16、又は平面及び曲面からなるユニット部材からなる衝撃吸収部材17について、隣接するユニット部材同士の接合部を抽出して示す説明図である。
【0065】
図9に示すように、衝撃吸収部材16では、横断面において、接合部18と、この接合部18に隣接する平面20とが、接合部18の端部18aにおいてなす角度である接合部内角αが180°以下であること、一方、衝撃吸収部材17では、横断面において、接合部19と、この接合部19に隣接する曲面21の接線26とが、接合部19の端部19aにおいてなす角度である接合部内角αが180°以下であることが満足されると、衝撃荷重が負荷された圧潰時における接合部18、20の口開き変形の発生が効果的に抑制される。このため、衝撃吸収部材16、17は全体として安定な軸圧潰変形を維持でき、確実に蛇腹状に圧潰されるため、望ましい。
【0066】
(iii)項について
図10は、ユニット部材の端部の領域を抽出して示す説明である。同図において、符号Hは、凹み部が形成された領域におけるユニット部材の接合方向(図面の左右方向)と直交する方向の長さである高さを示し、符号Wuは、凹み部が形成された領域におけるユニット部材の、ユニット部材の接合方向の最大長さである幅を示す。
【0067】
本実施の形態では、高さHが幅Wuに対してH<0.05×Wuの関係が成り立つと、断面の曲げ剛性が低下し、軸圧潰変形時の不安定な座屈変形を示す恐れがあり、結果として吸収エネルギが低下する。そこで、本実施の形態では、H≧0.05×Wuの関係を満足することが望ましい。
【0068】
さらに、本実施の形態では、複数のユニット部材の板厚又は強度の少なくとも一方が、衝撃吸収部材に要求される所定の吸収エネルギーを満足することができる値に、それぞれ個別に設定されることが望ましい。これにより、衝撃吸収部材の重量増加を最低限に抑制しながら所望の吸収エネルギを得ることができ、衝撃荷重の負荷方向に対して斜めに装着される場合にも強度や剛性差のバランスを設定し易くなる。
【0069】
このように、本実施の形態の衝撃吸収部材は、曲面又は平面の少なくとも一方からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、この曲面又は平面の少なくとも一方の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有するため、蛇腹状への変形の初期に生じる各しわ一つずつを小さくするとともに、このしわの発生数を多くすることができる。
【0070】
また、本実施の形態の衝撃吸収部材は、複数のユニット部材が、曲面又は平面の少なくとも一方に平面状又は曲面状に形成されるとともに衝撃吸収部材の閉じた形状の内部にこの内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合されるため、衝撃吸収部材の大きさの拡大を防止できるとともに、軸圧壊変形が維持されて蛇腹状に破壊される。
【0071】
さらに、本実施の形態の衝撃吸収部材では、複数のユニット部材の板厚又は強度の少なくとも一方が、衝撃吸収部材に要求される所定の吸収エネルギを満足するように個別に設定すれば、衝撃吸収部材の形状を修正することなく、さらに板厚増加による重量増を最小限に抑えつつ、所望の軸圧潰荷重レベル、すなわち、吸収エネルギが得られ、斜めに取り付けられる部材に対しても強度及び剛性差のバランス設定を容易に行うことができる。
【0072】
これらにより、本発明によれば、簡単に製作することができ、軽量で、高い平均圧潰荷重を有し、蛇腹状に確実に変形することにより高い吸収エネルギを有する衝撃吸収部材を提供することができる。
【実施例1】
【0073】
さらに、本発明を実施例を参照しながらより具体的に説明する。
図7に示す、120×60(mm)の矩形の仮想の最大の輪郭内で、上述した本実施の形態に基づいて断面形状を設計し、動的陽解法有限要素法ソフトを使用して衝撃軸圧潰性能を調査した。なお、衝撃速度は等速64km/h、部材長は200mmとし、圧潰量を150mmに設定した。なお、実車で使用されることを想定し、初期変形安定化・1ピーク荷重低減のための切り欠きを衝撃面側に導入している。材質は590MPa級の高張力鋼板(Cowper-Symonds則によるひずみ依存性考慮)で統一した。
【0074】
評価を行った衝撃吸収部材の横断面形状及び板厚を、図11にまとめて示す。なお、図11(c)は、従来より公知である、いわゆる片ハット部材を示す。
図11(a)、図11(b)、図11(d)〜 図11(i)に示す本発明例と、図11(c)に示す比較例とについて、重量・吸収エネルギ比較を表1に示す。断面周長による重量差を考慮し、吸収エネルギを重量で除した値もあわせて記載している。
【0075】
【表1】
【0076】
また、軸圧潰時の荷重変位線図を図12にグラフで示す。図12に示すグラフでは発明例・比較例で荷重レベルが異なるため平均荷重で除したグラフにて比較している。
【0077】
表1をみるとわかるように、本発明例1、2、3〜8は,比較例よりも軽量であり、吸収エネルギ量および単位重量当たりの吸収エネルギ量が比較例3よりも大きく、衝撃特性が良好であることが分かる。
【0078】
図12のグラフから明らかなように、本発明例は、比較例より波形の凹凸が小さくなっている。これは各ユニット部材が小さいしわを形成し、塑性座屈周期が短く、板厚が比較例より小さくても荷重の落ち込みを抑えることができるためであり、結果として荷重が高位で安定し、吸収エネルギ量を高めている。
【0079】
さらに、発明例2は発明例1の各ユニット部材の1つを板厚1.2tに増加したものであるが、荷重応答特性を崩すことなく、表1に示すように吸収エネルギ量を向上している。このように、ユニット毎に板厚・材質を調整すれば、形状を修正することなく、さらに板厚増加による重量増を最小限に抑えつつ、軸圧潰荷重レベル、すなわち、吸収エネルギのコントロールに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】軸方向に衝撃荷重が負荷された衝撃吸収部材について、軸圧潰荷重と軸圧潰量との関係と、負荷された衝撃エネルギのうちで衝撃吸収部材により吸収されたエネルギの量との一例を示すグラフである。
【図2】外向きのフランジを有するハット部材同士を、このフランジを介して適当な打点間距離でのスポット溶接により接合して得られる衝撃吸収部材に、軸方向への衝撃荷重を負荷した際の軸圧潰の様子と、荷重応答状況(軸圧潰量と、荷重/平均荷重との関係)とを示す説明図である。
【図3】各種のユニット部材の例の横断面形状を示す説明図である。
【図4】実施の形態の衝撃吸収部材の一例を示す説明図であって、図4(a)は横断面図、図4(b)は圧潰量と軸圧潰荷重との関係の一例を示すグラフである。
【図5】実施の形態の他の衝撃吸収部材の一例を示す説明図であって、図5(a)は横断面図、図5(b)は圧潰量と軸圧潰荷重との関係を示すグラフである。
【図6】実施の形態のさらに他の衝撃吸収部材の横断面を示す説明図である。
【図7】実施の形態の衝撃吸収部材の矩形の設計領域である、辺の長さがL1、L2である仮想の最大の輪郭を示す説明図である。
【図8】仮想の最大の輪郭内に存在する衝撃吸収部材を示す説明図であり、一つのユニット部材により構成されるユニット領域の辺の長さがW1、W2である。
【図9】平面からなるユニット部材からなる衝撃吸収部材、又は平面及び曲面からなるユニット部材からなる衝撃吸収部材について、隣接するユニット部材同士の接合部を抽出して示す説明図である。
【図10】ユニット部材の端部の領域を抽出して示す説明である。
【図11】評価を行った衝撃吸収部材の横断面形状及び板厚をまとめて示す説明図である。
【図12】ユニット部材の端部の領域を抽出して示す説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1〜13 衝撃吸収部材
14 仮想の最大の輪郭
15 ユニット領域
16、17 衝撃吸収部材
18,19 接合部
18a,19a 端部
20 平面
21 曲面
22、23 接合部
24、25 凹み部
26 接線
α 接合部内角
C1〜C11 閉じた形状のユニット部材
O1〜O13 開いた形状のユニット部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面及び/又は平面からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、前記曲面及び/又は平面の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する衝撃吸収部材であって、前記複数のユニット部材は、前記曲面及び/又は平面に、平面状又は曲面状に形成されるとともに前記衝撃吸収部材の前記閉じた形状の内部に該内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合されることを特徴とする衝撃吸収部材。
【請求項2】
横断面において、前記輪郭についての仮想の最大の輪郭の長辺の長さ(L1)と、該長辺の長さ方向への一つの前記ユニット部材の最大の長さ(W1)とは、W1≦L1×(2/3)の関係を満足する請求項1に記載された衝撃吸収部材。
【請求項3】
横断面において、前記接合部と、該接合部に隣接する前記平面又は前記曲面の接線とが、該接合部の端部においてなす角度である接合部内角(α)は180°以下である請求項1又は請求項2に記載された衝撃吸収部材。
【請求項4】
横断面において、前記凹み部が形成された領域における前記ユニット部材の、該ユニット部材の接合方向と直交する方向の長さである高さ(H)と、該凹み部が形成された領域における前記ユニット部材の、該ユニット部材の接合方向の最大長さである幅(Wu)とは、H≧0.05×Wuの関係を満足する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記複数のユニット部材の板厚及び/又は強度は、前記衝撃吸収部材に要求される所定の吸収エネルギを満足するように、前記複数のユニット部材毎に個別に設定される請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された衝撃吸収部材。
【請求項1】
曲面及び/又は平面からなる開いた形状若しくは閉じた形状を有する複数のユニット部材を並列に配置した状態で備えるとともに、前記曲面及び/又は平面の一部によって内部に向けて形成された凹み部を有する閉じた輪郭を有する衝撃吸収部材であって、前記複数のユニット部材は、前記曲面及び/又は平面に、平面状又は曲面状に形成されるとともに前記衝撃吸収部材の前記閉じた形状の内部に該内部側に臨んで配置される接合部を重ね合わせて、接合されることを特徴とする衝撃吸収部材。
【請求項2】
横断面において、前記輪郭についての仮想の最大の輪郭の長辺の長さ(L1)と、該長辺の長さ方向への一つの前記ユニット部材の最大の長さ(W1)とは、W1≦L1×(2/3)の関係を満足する請求項1に記載された衝撃吸収部材。
【請求項3】
横断面において、前記接合部と、該接合部に隣接する前記平面又は前記曲面の接線とが、該接合部の端部においてなす角度である接合部内角(α)は180°以下である請求項1又は請求項2に記載された衝撃吸収部材。
【請求項4】
横断面において、前記凹み部が形成された領域における前記ユニット部材の、該ユニット部材の接合方向と直交する方向の長さである高さ(H)と、該凹み部が形成された領域における前記ユニット部材の、該ユニット部材の接合方向の最大長さである幅(Wu)とは、H≧0.05×Wuの関係を満足する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記複数のユニット部材の板厚及び/又は強度は、前記衝撃吸収部材に要求される所定の吸収エネルギを満足するように、前記複数のユニット部材毎に個別に設定される請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された衝撃吸収部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−9904(P2006−9904A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186432(P2004−186432)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】
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