説明

表示素子の製造方法

【課題】従来の製造プロセスからの大きな変更を抑えつつ、薄型化および軽量化を図った液晶表示パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】大判ガラス基板33上に従来の製造プロセスによってストッパ層41、および、複数の画素を形成する。大判ガラス基板33に対して対向用大判非ガラス基板38を貼り合わせて中間パネル45を形成する。大判ガラス基板33およびストッパ層41を除去する。大判ガラス基板33よりも薄膜状のアレイ用大判非ガラス基板を、接着層を介して対向用大判非ガラス基板38側と貼り合わせる。画素(薄膜トランジスタ層35)をアレイ用大判非ガラス基板28に転写するに際して、中間パネル45までを従来の製造プロセスで組み立てることができる。大幅な製造プロセスの工程変更や間接部材数の増加を抑えつつ、液晶表示パネル11の薄型化および軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対向して貼り合わせられた一対の非ガラス基板を有する表示素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶表示素子である液晶表示パネルに代表される平面表示素子は、軽量、薄型、低消費電力などの特徴を生かして、OA機器、情報端末、時計、テレビジョン受像機などの各種分野で利用されている。中でも薄膜トランジスタ(TFT)を用いた液晶セルは、その応答性の高さから携帯端末やコンピュータなど多くの情報を表示する表示素子として多用されている。
【0003】
近年、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯情報端末機器では、性能面もさることながら、デザイン性および携帯性などの観点から、より薄くかつより軽い表示素子への要求が高まっている。
【0004】
そこで、例えば、より一層の薄型化構造を実現する液晶セルがある。一般的に、薄膜トランジスタを形成する基板材料は、耐熱性などの観点から、石英基板やガラス基板が用いられており、これらの基板を機械的あるいは化学的に研磨するなどの処理をすることで、薄板化や軽量化が図られている。さらに軽量化を狙う方法として、これらのガラス基板を一旦除去して薄膜トランジスタ(TFT薄膜)のみを別の軽量な樹脂基板などに転写する新たな試みも検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−311541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薄膜トランジスタを転写するためには、薄膜トランジスタが残留応力などによって湾曲しないようにすること、および、製造プロセスにおける耐薬品性の改善や取り扱い性を容易にすることを目的として、支持基板、薬品シールド膜、仮着用接着剤などの間接部材を増加させることによるコストアップが懸念される。さらには、フィルム化した基板を用いて液晶表示パネルを組み立てる新たな設備も必要となることから、従来の製造プロセスに対して大規模な変更なども必要となる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、従来の製造プロセスからの大きな変更を抑えつつ薄型化および軽量化を図った表示素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガラス基板上に除去防止層、および、この除去防止層上に複数の画素をそれぞれ形成する画素形成工程と、前記ガラス基板に対して対向用非ガラス基板を貼り合わせて中間体を形成する第1貼り合わせ工程と、前記ガラス基板を除去する第1除去工程と、前記除去防止層を除去する第2除去工程と、アレイ用非ガラス基板を前記対向用非ガラス基板と貼り合わせる第2貼り合わせ工程とを具備したものである。
【0008】
そして、ガラス基板上に除去防止層、および、この除去防止層上に複数の画素をそれぞれ形成し、このガラス基板に対して対向用非ガラス基板を貼り合わせて中間体を形成した後、ガラス基板および除去防止層を除去し、かつ、アレイ用非ガラス基板を対向用非ガラス基板と貼り合わせる。
【0009】
また、本発明は、ガラス基板上に少なくとも複数の画素をそれぞれ形成する画素形成工程と、前記ガラス基板に対して対向用非ガラス基板を貼り合わせて中間体を形成する第1貼り合わせ工程と、前記ガラス基板を研磨して所定厚みを残した薄板層とする研磨工程と、前記薄板層に対してアレイ用非ガラス基板を貼り合わせる第2貼り合わせ工程とを具備したものである。
【0010】
そして、ガラス基板上に少なくとも複数の画素をそれぞれ形成し、このガラス基板に対して対向用非ガラス基板を貼り合わせて中間体を形成した後、ガラス基板を研磨して所定厚みを残した薄板層とし、かつ、この薄板層に対してアレイ用非ガラス基板を貼り合わせる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガラス基板上に形成した画素を、アレイ用非ガラス基板に転写するに際して、ガラス基板に対して対向用非ガラス基板を貼り合わせた中間体までを従来の製造プロセスで製造できるので、従来の製造プロセスからの大きな変更を抑えつつ、薄型化および軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を図面を参照して説明する。
【0013】
図5において、11は表示素子としての液晶表示素子である液晶表示パネルを示し、この液晶表示パネル11は、例えばカラー表示が可能なアクティブマトリクス型のものである。そして、この液晶表示パネル11は、アレイ基板12と、対向基板13とが互いに対向配置されているとともに、これら基板12,13間に光変調層である液晶層14が介在され、基板12,13のそれぞれに図示しない偏光板が取り付けられて構成され、基板12,13が互いに接着部としてのシール部15にて貼り合わされて接着固定され、このシール部15によって囲まれた内部に、複数の画素(副画素)16がマトリクス状に配置された有効表示部17が形成されているとともに、この有効表示部17に隣接してシール部15の外方に周辺回路部18が形成されている。
【0014】
なお、以下、液晶表示パネル11は、透過型のものとして説明するが、反射型や半透過型のものでも対応して適用できることは言うまでもない。
【0015】
アレイ基板12は、絶縁基板である非ガラス基板21上の有効表示部17の内面側の主面上に、複数の信号線23および走査線24が格子状に配置され、かつ、これら信号線23と走査線24との交差位置のそれぞれに対応して、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)25が配置されている。また、非ガラス基板21上には、着色層である図示しないカラーフィルタ層が形成されているとともに、このカラーフィルタ層上に、薄膜トランジスタ25によって駆動される画素電極26が配置されている。さらに、非ガラス基板21上には、アレイ基板12側と対向基板13側とを電気的に接続するための図示しないトランスファ電極がシール部15の四隅近傍などに形成されているとともに、アレイ基板12を外部の回路などと接続するための図示しない配線用パッド部などが形成されている。
【0016】
非ガラス基板21は、例えばアラミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂とガラス繊維とのハイブリッド樹脂などにより形成された高耐熱性樹脂基板であり、PES(製品名)、PEN(製品名)あるいはネオプリム(製品名)などが良好に用いられるが、液晶表示パネル11を構成する基板としての所望の透過率、耐熱および耐薬品性などを備えた材料であれば概ね使用可能である。そして、この非ガラス基板21は、例えば0.2mm以下の厚さ、本実施の形態では0.1mmの厚さを有している。この非ガラス基板21は、製造時において、大判のマザー基板としてのアレイ用非ガラス基板であるアレイ用大判非ガラス基板28から切り出されて構成される。
【0017】
信号線23および走査線24は、導電性を有する金属などの部材によりそれぞれ形成されている。また、信号線23は、垂直方向に沿って形成され、走査線24は、水平方向に沿って形成されている。
【0018】
薄膜トランジスタ25は、ゲート電極が走査線24から突出して形成され、ソース電極が信号線23から突出して形成されているとともに、ドレイン電極が図示しないコンタクトホールなどを介して画素電極26と接続されており、走査線駆動回路であるゲートドライバ31から供給された駆動信号(操作信号)が走査線24を介してゲート電極に印加されることでスイッチング制御され、信号線駆動回路であるソースドライバ32から信号線23を介して入力された駆動信号(映像信号)に対応して画素電極26に電圧を印加することで、画素16をそれぞれ独立して点灯/消灯させるものである。この薄膜トランジスタ25の構造としては、例えばアルミニウム(Al)、窒化シリコン膜(SiNx)、ITO(Indium Tin Oxide)、ポリシリコン(p−Si)、アモルファスシリコン(a−Si)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、酸化シリコン膜(SiOx)などにより、全層無機膜によって構成することが可能であるが、ガラス基板としての大判ガラス基板33の研磨時の自己支持性を考慮した場合、上記無機膜に加え、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂など柔軟性を有する有機薄膜を積層構造内に含む無機有機ハイブリッド薄膜構造であることが好ましい。
【0019】
特に、無機有機ハイブリッド薄膜がCOA構造であることが非ガラス基板を用いた高精細な表示素子を構成する上で重要である。従来構成である対向カラーフィルタ構造では、アレイ基板の対向側に配置されたカラーフィルタとアレイ基板側の画素とを高精度に位置合わせする必要があるので、熱や吸湿によって寸法精度が左右されやすい非ガラス基板を用いることが容易でない。このような状況下では、寸法精度の良好なガラス基板上の画素アレイとガラス基板上のカラーフィルタとを貼り合わせる従来構造の表示素子からガラス基板のみを除去するといった非現実的な方法でしか本発明のセルプロセスが適用できず、歩留まりが低下するという問題がある。これに対して、COA構造では対向基板とアレイ基板側との貼り合わせ精度を殆ど必要としないことから、予め対向基板に寸法精度の低い非ガラス基板を用いることができ、本発明のプロセスが容易に適用できる。すなわち、近年COA構造の歩留まりが向上し量産プロセスとして充分対応可能になったことが、本発明の実施を可能としている。
【0020】
無機有機ハイブリッド薄膜の構成例としては、RGB着色レジスト材料をパターニングして上記カラーフィルタ層を形成したカラーフィルタオンアレイ(COA)構造、あるいは、透明レジスト材料によって画素電極26と薄膜トランジスタ25との間を分離して開口率の向上を図った画素上置き構造などがある。
【0021】
さらに、薄膜トランジスタ25などの自己支持性を改善するためには、周辺回路部18上にも上記着色レジスト材料や透明レジスト材料によりオーバーコートを施す構造が好ましい。
【0022】
画素電極26は、例えばITOなどの透明導電材料により略四角形状に形成されている。
【0023】
そして、これら信号線23、走査線24、薄膜トランジスタ25、カラーフィルタ層および画素電極26(画素16)などは、製造時に、上記大判ガラス基板33上に通常の製造プロセスによって形成され、アレイ用大判非ガラス基板28に接着層34を介して転写される。なお、以下、これら信号線23、走査線24、薄膜トランジスタ25などを含む層を、まとめて薄膜トランジスタ層35というものとする。
【0024】
大判ガラス基板33は、化学的な研磨、あるいは機械的な研磨などによって製造時に除去されるものである。
【0025】
一方、対向基板13は、絶縁基板である非ガラス基板36上に、有効表示部17にて内面側の主面上に、画素電極26に対向して配置された対向電極である共通電極37を備えている。
【0026】
非ガラス基板36は、非ガラス基板21と同様の材質、すなわち、例えばアラミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂とガラス繊維とのハイブリッド樹脂などにより形成された高耐熱性樹脂基板であり、PES(製品名)、PEN(製品名)あるいはネオプリム(製品名)などが良好に用いられるが、液晶表示パネル11を構成する基板としての所望の透過率、耐熱および耐薬品性などを備えた材料であれば概ね使用可能である。そして、この非ガラス基板36は、例えば0.2mm以下の厚さ、本実施の形態では0.1mmの厚さを有している。この非ガラス基板36は、製造時において、大判のマザー基板としての対向用非ガラス基板である対向用大判非ガラス基板38から切り出されて構成される。
【0027】
共通電極37は、例えばITOなどの透明導電材料により略四角形状に形成されている。
【0028】
液晶層14は、所定の液晶材料により形成された光変調層である。
【0029】
シール部15としては、例えば光(例えば紫外線)硬化型などの種々の接着剤を用いることができる。
【0030】
次に、上記第1の実施の形態の表示素子の製造方法を説明する。
【0031】
まず、図1および図2に示すように、成膜とパターニングとを繰り返す一般的なアレイ製造プロセスを用いて、大判ガラス基板33上に除去防止層としての研磨防止層であるストッパ層41を形成した後、大判ガラス基板33上の各位置に、信号線23、走査線24、薄膜トランジスタ25、カラーフィルタ層、画素電極26(画素16)などの薄膜トランジスタ層35を形成する(画素形成工程)。ここで、ストッパ層41は、大判ガラス基板33の化学研磨に用いられる薬液(フッ化アンモンなど)に薄膜トランジスタ層35が耐えられるように形成されている。これらストッパ層41としては、例えばアモルファスシリコン(a−Si)薄膜などの耐フッ酸性薄膜を用いることが好ましい。
【0032】
次いで、対向用大判非ガラス基板38上に、共通電極37などを形成する(対向形成工程)。
【0033】
この後、大判ガラス基板33と対向用大判非ガラス基板38とを、互いに貼り合わせる(第1貼り合わせ工程)。具体的に、この第1貼り合わせ工程には、例えば一般的な液晶滴下工法であるODF(One Drop fill)プロセスなどを用いる。すなわち、大判ガラス基板33に、所定のシール材(接着剤)によって各有効表示部17を覆う本シール材であるシール部15、および、これら大判ガラス基板33と対向用大判非ガラス基板38との外縁に沿って全ての有効表示部17を覆う仮シール材である仮シール部43を形成した後、大判ガラス基板33上のシール部15内にそれぞれ液晶層14を構成する液晶材料を滴下し、大判ガラス基板33と対向用大判非ガラス基板38とを、真空下で所定の間隙を有して貼り合わせる。この結果、中間体である中間パネル45が形成される。なお、仮シール部43は、シール部15と同様に、光(例えば紫外線)硬化型などの種々の接着剤を用いることができ、所定波長の光を照射することで硬化させる。
【0034】
続いて、図3に示すように、大判ガラス基板33と対向用大判非ガラス基板38とが一体化された中間パネル45に対して、大判ガラス基板33の外面側を化学的、あるいは機械的に研磨して除去する(第1除去工程)。この第1除去工程には、一般的な機械研磨、薬液を用いた化学研磨、およびそれらを交互に用いた複合研磨などを用いることが可能である。薄膜トランジスタ25(薄膜トランジスタ層35)が非常に薄い構造(例えば1〜5μm厚)の場合、機械研磨による粗削りで研磨処理の処理効率(スループット)を上げた後、化学研磨で残りの大判ガラス基板33を完全に除去する方法が本実施の形態のプロセスとしては好ましい。
【0035】
化学研磨に用いる研磨溶液としては、例えばフッ酸溶液などを用意し、研磨溶液に浸漬することで大判ガラス基板33のガラス面を研磨する。これにより、大判ガラス基板33の表面が溶解し、水ガラスへと化学変化する。このとき、水ガラスによって大判ガラス基板33の表面が保護されるため、大判ガラス基板33を随時揺動して水ガラスを剥離し、新しい基板表面を露出させるようにする。
【0036】
そして、予め設定したストッパ層41まで研磨したところで、中間パネル45をフッ酸溶液から取り出し、流水によって大判ガラス基板33の表面の水ガラスおよびフッ酸溶液を除去する。このようにして、第1除去工程での研磨処理を完了する。このとき、仮シール部43によって全ての液晶表示パネル11に対応する部分の外側が密封されているため、このような化学研磨処理をした際に研磨溶液が周辺回路部18などに浸入することはない。
【0037】
続いて、大判ガラス基板33を全て除去した中間パネル45からストッパ層41を、例えばアルカリ溶液(TMAH)などの溶液を用いて除去する(第2除去工程)。
【0038】
そして、図4に示すように、薄膜トランジスタ層35側を露出した面に接着層34を塗布した後に、アレイ用大判非ガラス基板28を貼り合わせる(第2貼り合わせ工程)。
【0039】
この後、有効表示部17および周辺回路部18を残す設計で個々のセル状態に分断する(分割工程)。この分割工程としては、例えば各基板28,38と薄膜トランジスタ層35およびカラーフィルタ層などとを一括で切断が可能な、COレーザ、あるいは2次ないし4次の高調波YAGレーザなどの切断装置を利用してスクライブ処理を用いる。
【0040】
そして、単個状態となった個々のセルに偏光板などの光学素子を貼着することで、液晶表示パネル11を構成する(貼着工程)。
【0041】
このように、上記第1の実施の形態では、大判ガラス基板33上に従来の製造プロセスによってストッパ層41、および、このストッパ層41上に複数の画素16などをそれぞれ形成し、この大判ガラス基板33に対して対向用大判非ガラス基板38を貼り合わせて中間パネル45を形成した後、大判ガラス基板33を化学的あるいは機械的に除去し、さらに、ストッパ層41を除去し、大判ガラス基板33よりも薄膜状のアレイ用大判非ガラス基板28を、接着層34を介して対向用大判非ガラス基板38側と貼り合わせる構成とした。
【0042】
すなわち、このような液晶表示パネル11の製造方法において、画素16(薄膜トランジスタ層35)をアレイ用大判非ガラス基板28に転写するに際して、対向基板として対向用大判非ガラス基板38を貼り付けた中間パネル45までを従来の製造プロセスで組み立てることができ、大幅な製造プロセスの工程変更や間接部材数の増加を抑えつつ、液晶表示パネル11の薄型化および軽量化を図ることができるとともに、歩留まりの低下をも抑制でき、コストアップを抑制できる。
【0043】
さらに、中間パネル45を形成する際に大判ガラス基板33と対向用大判非ガラス基板38との間に液晶材料を滴下して液晶層14を形成するため、大判ガラス基板33を除去する第1除去工程において、薄膜トランジスタ層と対向用大判非ガラス基板との間に空隙がある構造に対し、薄膜トランジスタ層35と対向用大判非ガラス基板38との間の空隙に液晶材料を充填した本実施の形態の構造の方が、薄膜トランジスタ層35の自己支持性が向上し、薄膜トランジスタ層35と対向用大判非ガラス基板38間の距離(セルギャップ)を均一に保つことが容易になる。
【0044】
さらに、大判ガラス基板33を研磨除去する第1除去工程では、研磨材や薬液によって液晶表示パネル11の配線用パッド、トランスファ電極あるいは周辺回路部18などに損傷を与えるおそれがあるものの、滴下注入方式で中間パネル45において各液晶表示パネル11を形成した後に、この中間パネル45の外縁部にも研磨材や薬液の侵入を防止するための仮シール部43を形成することにより、この仮シール部43によって個々の液晶表示パネル11の配線パッド、トランスファ電極部あるいは周辺回路部18などを保護でき、第1除去工程における歩留まりを向上できる。
【0045】
次に、第2の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態のストッパ層41に代えて、大判ガラス基板33を0.0015mmより大きく0.1mmよりも小さい範囲で残すものである。
【0047】
まず、図6に示すように、上記第1の実施の形態の画素形成工程ないし第1貼り合わせ工程と同様の各工程により、中間パネル45を形成する。
【0048】
続いて、中間パネル45の大判ガラス基板33の外面を、例えば化学的研磨処理により研磨し、所定厚、例えば0.05mmの厚みを残した薄板層47とする(研磨工程)。具体的に、研磨溶液として例えばフッ酸溶液を用意し、研磨溶液に浸漬することで大判ガラス基板33の背面側を研磨することで、大判ガラス基板33の外面が溶解し、水ガラスへと化学変化し、大判ガラス基板33の外面を保護するため、随時大判ガラス基板33を揺動させて水ガラスを剥離し、新しい大判ガラス基板33の外面を露出させるようにする。
【0049】
そして、図7に示すように、薄板層47を形成した後、中間パネル45をフッ酸溶液から取り出し、流水によって薄板層47の外面の水ガラスおよびフッ酸溶液を除去し、研磨処理を完了する。このとき、仮シール部43によって全ての液晶表示パネル11に対応する部分の外側が密封されているため、このような化学研磨処理をした際に研磨溶液が周辺回路部18などに浸入することはない。
【0050】
次いで、図8に示すように、中間パネル45の薄板層47に対して、接着層34を塗布した後に、アレイ用大判非ガラス基板28を貼り合わせる(第2貼り合わせ工程)。
【0051】
そして、上記第1の実施の形態の分断工程および貼着工程と同様の各工程により、液晶表示パネル11を構成する。
【0052】
このように、上記第2の実施の形態では、大判ガラス基板33上に従来の製造プロセスによって複数の画素16などをそれぞれ形成し、この大判ガラス基板33に対して対向用大判非ガラス基板38を貼り合わせて中間パネル45を形成した後、大判ガラス基板33を研磨して所定厚みを残した薄板層47とし、かつ、この薄板層47に対して大判ガラス基板33よりも薄膜状のアレイ用大判非ガラス基板28を貼り合わせる構成とした。
【0053】
すなわち、このような液晶表示パネル11の製造方法において、画素16(薄膜トランジスタ層35)をアレイ用大判非ガラス基板28に転写するに際して、対向基板として対向用大判非ガラス基板38を貼り付けた中間パネル45までを従来の製造プロセスで組み立てることができ、大幅な製造プロセスの工程変更や間接部材数の増加を抑えつつ、液晶表示パネル11の薄型化および軽量化を図ることができるとともに、歩留まりの低下をも抑制でき、コストアップを抑制できるなど、上記第1の実施の形態と同様の各作用効果を奏することが可能になる。
【0054】
また、大判ガラス基板33を全て除去せずに薄板層47を残すことにより、上記第1の実施の形態のストッパ層41が不要となるため、アルカリ溶液(TMAH)を用いた第2除去工程を省略でき、製造工数の低減が可能になる。
【0055】
なお、上記各実施の形態において、液晶表示パネル11および各工程は上記に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に構成要素を変形して具体化できる。
【0056】
また、上記各実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成してもよい。例えば、上記各実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態の表示素子の製造方法の画素形成工程ないし第1貼り合わせ工程により形成された中間体を示す説明断面図である。
【図2】同上中間体を示す説明平面図である。
【図3】同上表示素子の製造方法の第1除去工程を示す説明断面図である。
【図4】同上表示素子の製造方法の第2貼り合わせ工程を示す説明断面図である。
【図5】同上表示素子の製造方法により製造された表示素子を示す説明斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態の表示素子の製造方法の画素形成工程ないし第1貼り合わせ工程により形成された中間体を示す説明断面図である。
【図7】同上表示素子の製造方法の研磨工程を示す説明断面図である。
【図8】同上表示素子の製造方法の第2貼り合わせ工程を示す説明断面図である。
【符号の説明】
【0058】
11 表示素子としての液晶表示パネル
16 画素
28 アレイ用非ガラス基板であるアレイ用大判非ガラス基板
33 ガラス基板としての大判ガラス基板
38 対向用非ガラス基板である対向用大判非ガラス基板
41 除去防止層としてのストッパ層
45 中間体である中間パネル
47 薄板層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に除去防止層、および、この除去防止層上に複数の画素をそれぞれ形成する画素形成工程と、
前記ガラス基板に対して対向用非ガラス基板を貼り合わせて中間体を形成する第1貼り合わせ工程と、
前記ガラス基板を除去する第1除去工程と、
前記除去防止層を除去する第2除去工程と、
アレイ用非ガラス基板を前記対向用非ガラス基板と貼り合わせる第2貼り合わせ工程と
を具備したことを特徴とする表示素子の製造方法。
【請求項2】
ガラス基板上に少なくとも複数の画素をそれぞれ形成する画素形成工程と、
前記ガラス基板に対して対向用非ガラス基板を貼り合わせて中間体を形成する第1貼り合わせ工程と、
前記ガラス基板を研磨して所定厚みを残した薄板層とする研磨工程と、
前記薄板層に対してアレイ用非ガラス基板を貼り合わせる第2貼り合わせ工程と
を具備したことを特徴とする表示素子の製造方法。
【請求項3】
前記対向用非ガラス基板と前記アレイ用非ガラス基板とを、同一材質とする
ことを特徴とする請求項1または2記載の表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−265396(P2009−265396A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115574(P2008−115574)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】