表示装置用のマザー基板、および表示装置
【課題】基板間の間隔が不均一になる可能性を低減できる表示装置用のマザー基板、および表示装置を提供する。
【解決手段】複数の表示領域と、隣り合う表示領域間に位置する非表示領域とを有した表示装置用のマザー基板であって、第1マザー基板と、第1マザー基板に対向して配置される第2マザー基板と、表示領域に対応する第1マザー基板と第2マザー基板との間に設けられた着色層6と、表示領域に対応する第1マザー基板と第2マザー基板との間に設けられており、かつ着色層6よりも非表示領域側に配置された遮光膜7と、非表示領域に対応する第1マザー基板と第2マザー基板との間に設けられたダミー層18と、を備え、ダミー層18は、遮光膜7と間隙を介して配置されている。
【解決手段】複数の表示領域と、隣り合う表示領域間に位置する非表示領域とを有した表示装置用のマザー基板であって、第1マザー基板と、第1マザー基板に対向して配置される第2マザー基板と、表示領域に対応する第1マザー基板と第2マザー基板との間に設けられた着色層6と、表示領域に対応する第1マザー基板と第2マザー基板との間に設けられており、かつ着色層6よりも非表示領域側に配置された遮光膜7と、非表示領域に対応する第1マザー基板と第2マザー基板との間に設けられたダミー層18と、を備え、ダミー層18は、遮光膜7と間隙を介して配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置用のマザー基板、および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶層の厚みが小さく、面内にて均一化が求められる液晶表示装置が市場のニーズとしてある。このような液晶表示装置として、たとえばカイラルネマチック液晶を用いたメモリー性双安定型液晶表示装置の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このメモリー性双安定型液晶表示装置は、リセットパルスと選択パルスとの間に遅延時間を導入した信号波形を設け、これによって遅延時間を短縮させるというものである。
【0004】
すなわち、フレデリクス転移後の準安定状態(0°あるいは360°)への移行にはバックフロー現象が関係していると言われるが、この現象を最大限に生かすために、リセットパルスと選択パルスとの間にインターバルを設けるというものであって、これによって準安定状態へ移行しやすくなり、その結果、マトリックス駆動の1ラインあたりの書き込み時間(選択時間)が短縮され、フリッカーレスのハイデューティな単純マトリックス駆動を実現しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−248485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなメモリー性双安定型液晶表示装置は、液晶層厚を狭くするほどに、選択時間が短縮できるので、液晶層厚を相当に小さくするとともに、その液晶層厚を液晶表示領域にわたって均一にそろえる必要がある。
【0007】
しかしながら、信号電極部材と走査電極部材とを貼り合わせるに際し、表示領域および非表示領域の双方の基板全面に同一径の球形スペーサを配しているにもかかわらず、基板に歪みが生じ、シール部が均一に押しつぶされずに硬化し、これにより、表示領域のシール部近傍は層厚が大きくなる傾向にあり、その結果、表示領域内を所望とおりの薄さの厚みでもって、液晶層厚を均一に設定することがむずかしかった。
【0008】
この課題を図4〜図6に示す液晶表示装置P,P´より説明する。信号電極部材と走査電極部材の双方はマザーガラスより分断作成するが、このマザーガラスより6個の液晶表示装置P,P´が得られる場合を説明する。
【0009】
図4は分断前の液晶表示装置Pの平面図であり、図5は図4に示す切断面線b−b´による概略断面図である。また、図6についても図4に示す切断面線b−b´による液晶表示装置P´の概略断面図である。
【0010】
この液晶表示装置Pによれば、透明基板1の上に信号電極2と配向膜3とを順次積層形成し、これにより、信号電極部材4をなす。また、透明基板5の上にカラーフィルタ用の着色層6と遮光層7とを形成し、これらの上にオーバーコート層8、走査電極9、配向膜10とを順次積層し、これによって走査電極部材11となす。そして、信号電極部材4と
走査電極部材11とを液晶層12を介して、シール部13およびダミーシール部14により貼り合わせる。15はスペーサ、16は表示領域である。
【0011】
しかしながら、上記のようにマザーガラスを切断する前であれば、信号電極部材4と走査電極部材11とを貼り合わせるに際し、シール部13を押しつぶすことで、基板に歪みが生じ、これにより、表示領域16のシール部13近傍は層厚が大きくなっていた。
【0012】
たとえば、シール材として三井化学(株)製「ストライクボンドXN−21−S」を用いて、1.0kg/cm2、150℃にて加圧・加熱すると、歪みが生じて、加圧・加熱
を解除した後にも、そのような歪みが残っていた。
【0013】
上記構成においては、スペーサ15を用いたが、これに代えて図6に示す液晶表示装置P´のように柱状スペーサ17を形成しても同様な課題がある。なお、同図において図4と同一箇所には同一符号を記す。
【0014】
かかる課題を解消するために、透明基板のシール部が当る部分に深さ1.5μm程度の溝をフッ化水素等を用いてエッチング処理でもって形成する技術が提案されている(特開平8−211395号公報参照)。
【0015】
しかしながら、このような溝を形成することで生産コストが上がり、しかも、高い精度にて溝を形成することがむずかしく、溝全体を均一な深さにできないという課題がある。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板間の間隔が不均一になる可能性を低減できる表示装置用のマザー基板、および表示装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の表示装置用のマザー基板における一態様は、複数の表示領域と、隣り合う表示領域間に位置する非表示領域とを有した表示装置用のマザー基板であって、第1マザー基板と、前記第1マザー基板に対向して配置される第2マザー基板と、前記表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられた着色層と、前記表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられており、かつ前記着色層よりも前記非表示領域側に配置された遮光膜と、前記非表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられたダミー層と、を備え、前記ダミー層は、前記遮光膜と間隙を介して配置されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の表示装置用のマザー基板、および表示装置は、基板間の間隔が不均一になる可能性を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の液晶表示装置に係るマザーガラスの分断前の平面図である。
【図2】図1に示す切断面線a−a´による概略断面図である。
【図3】図1に示す切断面線a−a´による概略断面図である。
【図4】従来の液晶表示装置に係るマザーガラスの分断前の平面図である。
【図5】図4に示す切断面線b−b´による概略断面図である。
【図6】図4に示す切断面線b−b´による概略断面図である。
【図7】本発明の液晶表示装置の製法に関する工程図である。
【図8】本発明の液晶表示装置の製法に関する工程図である。
【図9】本発明の液晶表示装置の製法に関する工程図である。
【図10】双安定型の液晶表示装置における選択電圧と不安定状態(不安定領域)との関係を示す説明図である。
【図11】双安定型の液晶表示装置におけるスイッチング状態を示す説明図である。
【図12】セルギャップ測定位置とギャップ差との関係を示す線図である。
【図13】セルギャップ測定位置とギャップ差との関係を示す線図である。
【図14】セルギャップ測定位置とギャップ差との関係を示す線図である。
【図15】シール部の位置とシール高さとの関係を示す線図である。
【図16】シール部の位置とシール高さとの関係を示す線図である。
【図17】シール部の位置とシール高さとの関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の液晶表示装置の製造方法を述べる。本例においては、カラー液晶表示装置でもって例示する。
【0021】
順次下記(a)〜(c)の各工程を経て作製した一方部材と、マザーガラス上に電極と配向層とを順次積層してなる他方部材とを表示領域の外周部ではシール部にて、さらに非表示領域ではダミー部材でもって貼り合わせ、ついで双方のマザーガラスを非表示領域にて切断する。
(a)マザーガラス上の各表示領域に着色層を、さらに各表示領域間の非表示領域にダミー層を形成する。
(b)上記各表示領域の着色層上に電極を形成する。
(c)上記電極上に配向膜を形成する。
【0022】
つぎに図1〜図3および図7〜図9によって本発明の液晶表示装置A、Bの製造方法を詳述する。
【0023】
前記他方部材である信号電極部材と、前記一方部材である走査電極部材の双方はマザーガラスからなるが、1個のマザーガラスより分断作成することで6個の液晶表示装置A、Bを作製する場合を例示する。
【0024】
図1は分断前の基板平面図であり、図2と図3はそれぞれ図1に示す切断面線a−a´による概略断面図である。また、図7〜図9はいずれも工程図である。なお、図4および図5に示す液晶表示装置と同一箇所には同一符号を付す。
(液晶表示装置Aの製法)
図1と図2と図7により本発明の液晶表示装置Aの製法を述べる。信号電極部材4については、マザーガラス(たとえば300×360mm)である透明基板1の上にITOなどからなる膜をスパッタリング法や蒸着にて成膜し、ついでフォトリソグラフィにより一方に配列した多数の信号電極2を形成する。そして、この信号電極2の上にポリイミド樹脂からなる樹脂を塗布でもって被覆形成し、ついで一方向にラビング処理し、これによって配向膜3となす。
【0025】
そして、このような設けた6個の表示領域16に対し、それぞれ外周にそってシール部13を形成する。このシール部13の形成と同時に、前記ダミー部材であるダミーシール部14aも各表示領域16の間の非表示領域に形成する。このダミーシール部14aはシール部13と同じ材料にて設ければよい。たとえば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂などがある。
【0026】
他方の走査電極部材11については、下記(a)〜(b)の各工程を含む工程でもって作製する。
(a)工程
マザーガラス(たとえば300×360mm)である透明基板5を用意する。そして、
透明基板5の上にクロムやアルミニウム、銀などの金属膜を形成し、その後にフォトリソグラフィにて所定のパターンからなる遮光膜7(層厚1000Å〜3000Å)を設ける。このような金属膜の遮光膜7に代えて黒色樹脂からなる遮光膜7(層厚1.3〜1.5μm)を塗布形成してもよい。
【0027】
そして、透明基板5の遮光膜7が形成されていない領域にカラーフィルタ用の着色層6(層厚1.3〜1.5μm)を形成する。この着色層6は顔料分散方式、すなわちあらかじめ顔料(赤、緑、青)により調合された感光性レジストを基板上に塗布し、フォトリソグラフィにより形成する。
【0028】
さらに非表示領域の上にダミー層18を形成する。たとえば、アクリル系感光ポリマー、ポリイミド系感光ポリマーなどからなるレジストを塗布し、フォトマスクを用いて露光し、現像することで、非表示領域の上に遮光膜7もしくは着色層6とほぼ同じ厚みになるようにダミー層18を形成する。
【0029】
つぎに遮光膜7と着色層6とダミー層18との上にアクリル系樹脂からなるオーバーコート層8をスピンナー方式で塗布し形成する。
(b)工程
この工程においては、ITOなどからなる膜をスパッタリング法や蒸着にて成膜し、ついでフォトリソグラフィにより一方に配列した多数の走査電極9を形成する。なお、オーバーコート層8とITOなどからなる膜との間に、密着性を向上させるために、SiO2
やSiNからなる層を形成する方が望ましい。
(c)工程
そして、この走査電極9の上にポリイミド樹脂からなる樹脂を塗布でもって被覆形成し、ついで一方向にラビング処理し、これによって配向膜10となす。なお、走査電極9は非表示領域にも同時形成するが、表示領域16内の電極とは電気的に絶縁する。しかる後に樹脂からなる球状のスペーサ15を多数個散布する。
【0030】
以上の各工程(a)〜(c)を経た後に、信号電極部材4と走査電極部材11とを層厚1.5μmの液晶層12(室温でネマチック相を呈する液晶組成物「E.Merck社製ZLI−1557」に光学活性添加物「E.Merck社製S−811」を加えてヘリカルピッチPを2.7μmに調整したもの)を介して、シール部13およびダミーシール部14aにより貼り合わせる。
【0031】
ついで、このような貼り合わせマザーガラス基板を圧着し、非表示領域にて分断し、個々の液晶表示装置Aに対しシール部13の一部の開孔より液晶材を注入し、しかる後に、その注入口を封止する。この分断部位は、シール部13とダミーシール部14aとの間にする。
【0032】
かくして上記製法により得られた液晶表示装置Aによれば、非表示領域に遮光膜7もしくは着色層6とほぼ同じ厚みになるようにダミー層18を形成したことで、信号電極部材4と走査電極部材11とを貼り合わせるに際し、シール部13やダミーシール部14aが均等に押しつぶされ硬化できるため、とくにシール部13の全体に対し液晶層厚方向の厚みを揃えられ、これによって基板に歪みが生じなくなる。
【0033】
また、上記構成の液晶表示装置Aによれば、さらに信号電極部材4と走査電極部材11のそれぞれの外側に偏光板を配設した構成であって、そして、カイラルネマチック液晶からなる液晶層12は初期状態でねじれ構造を有し、その初期状態にフレデリクス転移を生じさせる電圧を印加した後に印加される電圧差によって初期状態とは異なる2つの準安定状態を有するようになしたメモリー性双安定型となる。
【0034】
たとえば初期状態でのツイスト角φ0(=180°)に対してφ0+π(=360°)のねじれ状態が暗状態となるような両偏光板の位置関係(クロスニコル)にした場合に、明状態はツイスト角φ0−π(=0°)である。
【0035】
つぎにこの双安定型を利用する液晶表示装置Aに対し、図10に示すように不安定状態(不安定領域)を挟んで0°と360°との間でスイッチングする。
【0036】
このようなスイッチングをおこなった場合、初期状態にフレデリクス転移を生じさせる電圧を印加した後の選択電圧をV1より低くすると360°状態、V2にまで高くすると0°状態、そして、Vl〜V2との間にすると0°と360°が混在した不安定状態が生じる。
【0037】
たとえば、両偏光板クロスニコルにして、初期状態でのツイスト角φ0(180°)に
対してφ0+π(360°)のねじれ状態が暗状態、φ0−π(0°)の状態が明状態であるとすると、不安定状態は2つの状態(明状態と黒状態)が混在しており、白〜黒の間の状態を示す。また、このように2つの準安定状態を利用するスイッチングは、図10に示すように選択電圧をV3、V4にした関係を利用しても同様におこなわれる。
【0038】
さらにまた、液晶表示装置Aのマトリクス駆動を図11により述べる。走査電位をVS、信号電位をVdとすると、0°状態を発現させるための選択パルス値(選択電圧)V1(=±|VS+Vd|)と、360°状態を発現させるための選択パルス値(選択電圧)V2(=±|VS−Vd|)に対して、V2−V1=2Vdとなる。そして、不安定領域の幅△1、△2の値において、2Vd>Δ1、Δ2の条件が満たされると、360°/0°状態が発現し、マトリクス駆動できる。
(液晶表示装置Bの製法)
前記液晶表示装置Aにおいては、信号電極部材4と走査電極部材11とを多数のスペーサ15を介して貼り合わせたが、これに代えて柱状スペーサを設けている。そして、非表示領域上のダミーシール部14aが前記ダミー部材である。なお、液晶表示装置Aと同一箇所には同一符号を付す。
【0039】
図3は液晶表示装置Bのマザーガラス分断前の断面図であり、図8は製造工程を示す。
【0040】
信号電極部材4については、液晶表示装置Aと同じ製法であり、マザーガラス(たとえば300×360mm)である透明基板1の上に一方に配列した多数の信号電極2を形成し、この信号電極2の上にポリイミド樹脂からなる樹脂を塗布でもって被覆形成し、ついで一方向にラビング処理し、これによって配向膜3となす。そして、6個の表示領域16に対し、同時にシール部13とダミーシール部14aを形成する。
【0041】
他方の走査電極部材11については、下記(a)〜(b)の各工程を含む工程でもって作製する。
(a)工程
マザーガラス(たとえば300×360mm)である透明基板5の上にクロムやアルミニウム、銀などの金属膜(層厚1000〜3000Å)、あるいは黒色樹脂(層厚1.3〜1.5μm)などからなる遮光膜7を設け、そして、遮光膜7が形成されていない領域にカラーフィルタ用の着色層6(層厚1.3〜1.5μm)を形成する。さらに非表示領域の上にダミー層18を形成する。つぎに遮光膜7と着色層6とダミー層18との上にアクリル系樹脂からなるオーバーコート層8をスピンナー方式で塗布し形成する。
(b)工程
この工程においては、ITOなどからなる膜をスパッタリング法や蒸着にて成膜し、つ
いでフォトリソグラフィにより一方に配列した多数の走査電極9を形成する。なお、オーバーコート層8とITOなどからなる膜との間に、密着性を向上させるために、SiO2
やSiNからなる層を形成する方が望ましい。
(c)工程
そして、この走査電極9の上にポリイミド樹脂からなる樹脂を塗布でもって被覆形成し、ついで一方向にラビング処理し、これによって配向膜10となす。さらに走査電極9の一部は非表示領域にも形成する。
【0042】
しかる後に柱状スペーサ17を画素間の領域(非画素領域)に、前記ダミー部材である柱状スペーサ19をダミー層18の上に形成する。
【0043】
この柱状スペーサ17、19は、たとえばアクリル系感光樹脂またはポリイミド系感光樹脂からなるレジストを塗布し、フォトマスクを用いて露光し、現像し、一様な厚みにそろえることで形成する。
【0044】
以上の各工程(a)〜(c)を経た後に、信号電極部材4と走査電極部材11とを層厚1.5μmの液晶層12を介して、シール部13およびダミーシール部14a、柱状スペーサ17、19により貼り合わせる。
【0045】
ついで、このような貼り合わせマザーガラス基板を圧着し、非表示領域にて分断し、個々の液晶表示装置Bに対しシール部13の一部の開孔より液晶材を注入し、しかる後に、その注入口を封止する。
【0046】
かくして上記製法により得られた液晶表示装置Bによれば、非表示領域に遮光膜7もしくは着色層6とほぼ同じ厚みになるようにダミー層18を、さらに柱状スペーサ17、19を形成したことで、信号電極部材4と走査電極部材11とを貼り合わせるに際し、シール部13やダミーシール部14aが均等に押しつぶさ硬化され、とくにシール部13の全体に対し液晶層厚方向の厚みを揃えられ、これによって基板に歪みが生じなくなる。
【0047】
しかも、液晶表示装置Bでは液晶表示装置Aと比べても、柱状スペーサ17、19を形成したことで、散布にて配した球状のスペーサ15よりも均等に液晶層内に設けられ、これにより、液晶層厚のバラツキ度合いがさらに改善され、均等な層厚になる。
【0048】
また、上記構成の液晶表示装置Bについても、信号電極部材4と走査電極部材11のそれぞれの外側に偏光板を配設した構成であって、そして、カイラルネマチック液晶からなる液晶層13は初期状態でねじれ構造を有し、その初期状態にフレデリクス転移を生じさせる電圧を印加した後に印加される電圧差によって初期状態とは異なる2つの準安定状態を有するようになしたメモリー性双安定型となる。
【0049】
また、前記ダミー層18は遮光膜7や着色層6を形成した際に、そこにて使用したフォトマスクを変更することで、それらと同一材でもって厚みを調整して成膜形成してもよい。この製造工程を図9に示す。
【0050】
なお、本発明は上記のような実施形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更や改良等は何ら差し支えない。たとえば、液晶層厚の小さいカイラルスメクティック液晶を用いた強誘電性液晶表示装置や反強誘電性液晶表示装置においても同じ作用効果がある。さらには液晶層厚が5μm程度の通常のSTN型やTN型の液晶表示装置であっても同様の効果を奏する。しかも、実施例では、以下のとおり、単純マトリックス駆動方式の構造にて説明したが、その他の駆動方式、たとえばアクティブマトリックス駆動方式の構造でも同じ作用効果がある。
【実施例】
【0051】
本発明は非表示領域の上にダミー層18を形成し、さらにダミーシール部14aや柱状スペーサ19を設けたことで、表示領域16上の遮光膜7もしくは着色層6の高さとそろえている。
【0052】
そこで、本発明者は液晶表示装置Bに対し、透明基板5上における表示領域16の高さd1(走査電極部材11の表示領域16における厚み)と、非表示領域の高さd2(走査電
極部材11の非表示領域における厚み)とを、幾とおりにも変えて、それぞれ信号電極部
材4と走査電極部材11とを層厚1.5μmの液晶層12を介して、シール部13およびダミーシール部14aにより貼り合わせ、ついで、このような貼り合わせマザーガラス基板を圧着し、非表示領域にて分断し、さらに液晶材を注入し、液晶表示装置Bとなした。
【0053】
高さd1、d2の測定については、触針を測定対象物に接触させ、測定対象物を移動させることで、触針の上下の触れを検出し、表面形状を測定するというDEKTAK装置を用いて、各膜の厚みを測定し、そこから基板構造を考慮し算出するという方法を用いた。
【0054】
そして、これら各種液晶表示装置を評価し、「良好」と「不良」に2分した。「良好」はフリッカーレスのハイデューティな単純マトリックス駆動を実現し、これによって色ムラのない高品質が達成された場合であり、「不良」はそのようなハイデューティな単純マトリックス駆動とならず、色ムラが発生した場合である。
d1−d2=2.1μm ⇒「不良」
d1−d2=1.8μm ⇒「不良」
d1−d2=1.6μm ⇒「不良」
d1−d2=1.4μm ⇒「不良」
d1−d2=1.2μm ⇒「良好」
d1−d2=1.1μm ⇒「良好」
d1−d2=1.0μm ⇒「良好」
d1−d2=0.9μm ⇒「良好」
d1−d2=―0.9μm ⇒「良好」
d1−d2=―1.0μm ⇒「良好」
d1−d2=―1.1μm ⇒「良好」
d1−d2=―1.2μm ⇒「良好」
d1−d2=―1.4μm ⇒「不良」
かくして│d1−d2│≦1.2に、好適には│d1−d2│≦1.0に設定することで、フリッカーレスのハイデューティな単純マトリックス駆動を実現し、これによって色ムラのない高品質が達成された。
【0055】
また、d1−d2=1.4〜2.1μmである場合に、表示領域16の外周を起点にして、そこでのセルギャップ差を0.00とした場合に、起点から表示領域内に向けて、測定位置を移動させることで、セルギャップ差の変化を追ったところ、図12に示すような結果が得られた。
【0056】
また、シール部13の全体に対し液晶層厚方向の厚み(シール高さ)を測定したところ、図15に示すようにシール高さが液晶セル内側にいくほどに高くなっている。
【0057】
つぎにd1−d2=−1.2〜1.2μmである場合に、同様に表示領域16の外周を起点にして表示領域内に向けて、測定位置を移動させることで、セルギャップ差の変化を追ったところ、図13に示すような結果が得られた。
【0058】
また、シール部を測定したところ、図16に示すようにシール高さが一様に揃っている。シール高さがシール幅600μmに対し0.05μm以下である場合に、セルギャップ差が0.10μm以下の差になることを確認した。
【0059】
さらにまた、d1−d2<−1.4μmである場合に、表示領域16の外周を起点にして、同様にセルギャップ差の変化を追ったところ、図14に示すような結果が得られた。
【0060】
また、シール部の全体に対し液晶層厚方向の厚み(シール高さ)を測定したところ、図17に示すようにシール高さが液晶セル内側にいくほどに低くなっている。
【0061】
これらの結果から明らかなとおり、d1−d2=−1.2〜1.2μmにまで小さくすることで、表示領域内のギャップ差が顕著に小さくなっていることがわかる。
【0062】
以上のとおり、マザーガラス上に電極と配向層とを順次積層してなる2種類の部材を、表示領域の外周部ではシール部にて、さらに非表示領域ではダミー部材でもって貼り合わせ、ついで双方のマザーガラスを非表示領域にて切断した液晶表示装置A,Bによれば、シール部の全体に対し液晶層厚方向の厚みを揃えることができ、これにより、基板に歪みが生じなくなった。
【符号の説明】
【0063】
1、5 透明基板
2 信号電極
3、10 配向膜
4 信号電極部材
6 着色層
7 遮光膜
9 走査電極
11 走査電極部材
12 液晶層
13 シール部
14、14a ダミーシール部
16 表示領域
17、19 柱状スペーサ
18 ダミー層
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置用のマザー基板、および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶層の厚みが小さく、面内にて均一化が求められる液晶表示装置が市場のニーズとしてある。このような液晶表示装置として、たとえばカイラルネマチック液晶を用いたメモリー性双安定型液晶表示装置の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このメモリー性双安定型液晶表示装置は、リセットパルスと選択パルスとの間に遅延時間を導入した信号波形を設け、これによって遅延時間を短縮させるというものである。
【0004】
すなわち、フレデリクス転移後の準安定状態(0°あるいは360°)への移行にはバックフロー現象が関係していると言われるが、この現象を最大限に生かすために、リセットパルスと選択パルスとの間にインターバルを設けるというものであって、これによって準安定状態へ移行しやすくなり、その結果、マトリックス駆動の1ラインあたりの書き込み時間(選択時間)が短縮され、フリッカーレスのハイデューティな単純マトリックス駆動を実現しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−248485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなメモリー性双安定型液晶表示装置は、液晶層厚を狭くするほどに、選択時間が短縮できるので、液晶層厚を相当に小さくするとともに、その液晶層厚を液晶表示領域にわたって均一にそろえる必要がある。
【0007】
しかしながら、信号電極部材と走査電極部材とを貼り合わせるに際し、表示領域および非表示領域の双方の基板全面に同一径の球形スペーサを配しているにもかかわらず、基板に歪みが生じ、シール部が均一に押しつぶされずに硬化し、これにより、表示領域のシール部近傍は層厚が大きくなる傾向にあり、その結果、表示領域内を所望とおりの薄さの厚みでもって、液晶層厚を均一に設定することがむずかしかった。
【0008】
この課題を図4〜図6に示す液晶表示装置P,P´より説明する。信号電極部材と走査電極部材の双方はマザーガラスより分断作成するが、このマザーガラスより6個の液晶表示装置P,P´が得られる場合を説明する。
【0009】
図4は分断前の液晶表示装置Pの平面図であり、図5は図4に示す切断面線b−b´による概略断面図である。また、図6についても図4に示す切断面線b−b´による液晶表示装置P´の概略断面図である。
【0010】
この液晶表示装置Pによれば、透明基板1の上に信号電極2と配向膜3とを順次積層形成し、これにより、信号電極部材4をなす。また、透明基板5の上にカラーフィルタ用の着色層6と遮光層7とを形成し、これらの上にオーバーコート層8、走査電極9、配向膜10とを順次積層し、これによって走査電極部材11となす。そして、信号電極部材4と
走査電極部材11とを液晶層12を介して、シール部13およびダミーシール部14により貼り合わせる。15はスペーサ、16は表示領域である。
【0011】
しかしながら、上記のようにマザーガラスを切断する前であれば、信号電極部材4と走査電極部材11とを貼り合わせるに際し、シール部13を押しつぶすことで、基板に歪みが生じ、これにより、表示領域16のシール部13近傍は層厚が大きくなっていた。
【0012】
たとえば、シール材として三井化学(株)製「ストライクボンドXN−21−S」を用いて、1.0kg/cm2、150℃にて加圧・加熱すると、歪みが生じて、加圧・加熱
を解除した後にも、そのような歪みが残っていた。
【0013】
上記構成においては、スペーサ15を用いたが、これに代えて図6に示す液晶表示装置P´のように柱状スペーサ17を形成しても同様な課題がある。なお、同図において図4と同一箇所には同一符号を記す。
【0014】
かかる課題を解消するために、透明基板のシール部が当る部分に深さ1.5μm程度の溝をフッ化水素等を用いてエッチング処理でもって形成する技術が提案されている(特開平8−211395号公報参照)。
【0015】
しかしながら、このような溝を形成することで生産コストが上がり、しかも、高い精度にて溝を形成することがむずかしく、溝全体を均一な深さにできないという課題がある。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板間の間隔が不均一になる可能性を低減できる表示装置用のマザー基板、および表示装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の表示装置用のマザー基板における一態様は、複数の表示領域と、隣り合う表示領域間に位置する非表示領域とを有した表示装置用のマザー基板であって、第1マザー基板と、前記第1マザー基板に対向して配置される第2マザー基板と、前記表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられた着色層と、前記表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられており、かつ前記着色層よりも前記非表示領域側に配置された遮光膜と、前記非表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられたダミー層と、を備え、前記ダミー層は、前記遮光膜と間隙を介して配置されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の表示装置用のマザー基板、および表示装置は、基板間の間隔が不均一になる可能性を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の液晶表示装置に係るマザーガラスの分断前の平面図である。
【図2】図1に示す切断面線a−a´による概略断面図である。
【図3】図1に示す切断面線a−a´による概略断面図である。
【図4】従来の液晶表示装置に係るマザーガラスの分断前の平面図である。
【図5】図4に示す切断面線b−b´による概略断面図である。
【図6】図4に示す切断面線b−b´による概略断面図である。
【図7】本発明の液晶表示装置の製法に関する工程図である。
【図8】本発明の液晶表示装置の製法に関する工程図である。
【図9】本発明の液晶表示装置の製法に関する工程図である。
【図10】双安定型の液晶表示装置における選択電圧と不安定状態(不安定領域)との関係を示す説明図である。
【図11】双安定型の液晶表示装置におけるスイッチング状態を示す説明図である。
【図12】セルギャップ測定位置とギャップ差との関係を示す線図である。
【図13】セルギャップ測定位置とギャップ差との関係を示す線図である。
【図14】セルギャップ測定位置とギャップ差との関係を示す線図である。
【図15】シール部の位置とシール高さとの関係を示す線図である。
【図16】シール部の位置とシール高さとの関係を示す線図である。
【図17】シール部の位置とシール高さとの関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の液晶表示装置の製造方法を述べる。本例においては、カラー液晶表示装置でもって例示する。
【0021】
順次下記(a)〜(c)の各工程を経て作製した一方部材と、マザーガラス上に電極と配向層とを順次積層してなる他方部材とを表示領域の外周部ではシール部にて、さらに非表示領域ではダミー部材でもって貼り合わせ、ついで双方のマザーガラスを非表示領域にて切断する。
(a)マザーガラス上の各表示領域に着色層を、さらに各表示領域間の非表示領域にダミー層を形成する。
(b)上記各表示領域の着色層上に電極を形成する。
(c)上記電極上に配向膜を形成する。
【0022】
つぎに図1〜図3および図7〜図9によって本発明の液晶表示装置A、Bの製造方法を詳述する。
【0023】
前記他方部材である信号電極部材と、前記一方部材である走査電極部材の双方はマザーガラスからなるが、1個のマザーガラスより分断作成することで6個の液晶表示装置A、Bを作製する場合を例示する。
【0024】
図1は分断前の基板平面図であり、図2と図3はそれぞれ図1に示す切断面線a−a´による概略断面図である。また、図7〜図9はいずれも工程図である。なお、図4および図5に示す液晶表示装置と同一箇所には同一符号を付す。
(液晶表示装置Aの製法)
図1と図2と図7により本発明の液晶表示装置Aの製法を述べる。信号電極部材4については、マザーガラス(たとえば300×360mm)である透明基板1の上にITOなどからなる膜をスパッタリング法や蒸着にて成膜し、ついでフォトリソグラフィにより一方に配列した多数の信号電極2を形成する。そして、この信号電極2の上にポリイミド樹脂からなる樹脂を塗布でもって被覆形成し、ついで一方向にラビング処理し、これによって配向膜3となす。
【0025】
そして、このような設けた6個の表示領域16に対し、それぞれ外周にそってシール部13を形成する。このシール部13の形成と同時に、前記ダミー部材であるダミーシール部14aも各表示領域16の間の非表示領域に形成する。このダミーシール部14aはシール部13と同じ材料にて設ければよい。たとえば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂などがある。
【0026】
他方の走査電極部材11については、下記(a)〜(b)の各工程を含む工程でもって作製する。
(a)工程
マザーガラス(たとえば300×360mm)である透明基板5を用意する。そして、
透明基板5の上にクロムやアルミニウム、銀などの金属膜を形成し、その後にフォトリソグラフィにて所定のパターンからなる遮光膜7(層厚1000Å〜3000Å)を設ける。このような金属膜の遮光膜7に代えて黒色樹脂からなる遮光膜7(層厚1.3〜1.5μm)を塗布形成してもよい。
【0027】
そして、透明基板5の遮光膜7が形成されていない領域にカラーフィルタ用の着色層6(層厚1.3〜1.5μm)を形成する。この着色層6は顔料分散方式、すなわちあらかじめ顔料(赤、緑、青)により調合された感光性レジストを基板上に塗布し、フォトリソグラフィにより形成する。
【0028】
さらに非表示領域の上にダミー層18を形成する。たとえば、アクリル系感光ポリマー、ポリイミド系感光ポリマーなどからなるレジストを塗布し、フォトマスクを用いて露光し、現像することで、非表示領域の上に遮光膜7もしくは着色層6とほぼ同じ厚みになるようにダミー層18を形成する。
【0029】
つぎに遮光膜7と着色層6とダミー層18との上にアクリル系樹脂からなるオーバーコート層8をスピンナー方式で塗布し形成する。
(b)工程
この工程においては、ITOなどからなる膜をスパッタリング法や蒸着にて成膜し、ついでフォトリソグラフィにより一方に配列した多数の走査電極9を形成する。なお、オーバーコート層8とITOなどからなる膜との間に、密着性を向上させるために、SiO2
やSiNからなる層を形成する方が望ましい。
(c)工程
そして、この走査電極9の上にポリイミド樹脂からなる樹脂を塗布でもって被覆形成し、ついで一方向にラビング処理し、これによって配向膜10となす。なお、走査電極9は非表示領域にも同時形成するが、表示領域16内の電極とは電気的に絶縁する。しかる後に樹脂からなる球状のスペーサ15を多数個散布する。
【0030】
以上の各工程(a)〜(c)を経た後に、信号電極部材4と走査電極部材11とを層厚1.5μmの液晶層12(室温でネマチック相を呈する液晶組成物「E.Merck社製ZLI−1557」に光学活性添加物「E.Merck社製S−811」を加えてヘリカルピッチPを2.7μmに調整したもの)を介して、シール部13およびダミーシール部14aにより貼り合わせる。
【0031】
ついで、このような貼り合わせマザーガラス基板を圧着し、非表示領域にて分断し、個々の液晶表示装置Aに対しシール部13の一部の開孔より液晶材を注入し、しかる後に、その注入口を封止する。この分断部位は、シール部13とダミーシール部14aとの間にする。
【0032】
かくして上記製法により得られた液晶表示装置Aによれば、非表示領域に遮光膜7もしくは着色層6とほぼ同じ厚みになるようにダミー層18を形成したことで、信号電極部材4と走査電極部材11とを貼り合わせるに際し、シール部13やダミーシール部14aが均等に押しつぶされ硬化できるため、とくにシール部13の全体に対し液晶層厚方向の厚みを揃えられ、これによって基板に歪みが生じなくなる。
【0033】
また、上記構成の液晶表示装置Aによれば、さらに信号電極部材4と走査電極部材11のそれぞれの外側に偏光板を配設した構成であって、そして、カイラルネマチック液晶からなる液晶層12は初期状態でねじれ構造を有し、その初期状態にフレデリクス転移を生じさせる電圧を印加した後に印加される電圧差によって初期状態とは異なる2つの準安定状態を有するようになしたメモリー性双安定型となる。
【0034】
たとえば初期状態でのツイスト角φ0(=180°)に対してφ0+π(=360°)のねじれ状態が暗状態となるような両偏光板の位置関係(クロスニコル)にした場合に、明状態はツイスト角φ0−π(=0°)である。
【0035】
つぎにこの双安定型を利用する液晶表示装置Aに対し、図10に示すように不安定状態(不安定領域)を挟んで0°と360°との間でスイッチングする。
【0036】
このようなスイッチングをおこなった場合、初期状態にフレデリクス転移を生じさせる電圧を印加した後の選択電圧をV1より低くすると360°状態、V2にまで高くすると0°状態、そして、Vl〜V2との間にすると0°と360°が混在した不安定状態が生じる。
【0037】
たとえば、両偏光板クロスニコルにして、初期状態でのツイスト角φ0(180°)に
対してφ0+π(360°)のねじれ状態が暗状態、φ0−π(0°)の状態が明状態であるとすると、不安定状態は2つの状態(明状態と黒状態)が混在しており、白〜黒の間の状態を示す。また、このように2つの準安定状態を利用するスイッチングは、図10に示すように選択電圧をV3、V4にした関係を利用しても同様におこなわれる。
【0038】
さらにまた、液晶表示装置Aのマトリクス駆動を図11により述べる。走査電位をVS、信号電位をVdとすると、0°状態を発現させるための選択パルス値(選択電圧)V1(=±|VS+Vd|)と、360°状態を発現させるための選択パルス値(選択電圧)V2(=±|VS−Vd|)に対して、V2−V1=2Vdとなる。そして、不安定領域の幅△1、△2の値において、2Vd>Δ1、Δ2の条件が満たされると、360°/0°状態が発現し、マトリクス駆動できる。
(液晶表示装置Bの製法)
前記液晶表示装置Aにおいては、信号電極部材4と走査電極部材11とを多数のスペーサ15を介して貼り合わせたが、これに代えて柱状スペーサを設けている。そして、非表示領域上のダミーシール部14aが前記ダミー部材である。なお、液晶表示装置Aと同一箇所には同一符号を付す。
【0039】
図3は液晶表示装置Bのマザーガラス分断前の断面図であり、図8は製造工程を示す。
【0040】
信号電極部材4については、液晶表示装置Aと同じ製法であり、マザーガラス(たとえば300×360mm)である透明基板1の上に一方に配列した多数の信号電極2を形成し、この信号電極2の上にポリイミド樹脂からなる樹脂を塗布でもって被覆形成し、ついで一方向にラビング処理し、これによって配向膜3となす。そして、6個の表示領域16に対し、同時にシール部13とダミーシール部14aを形成する。
【0041】
他方の走査電極部材11については、下記(a)〜(b)の各工程を含む工程でもって作製する。
(a)工程
マザーガラス(たとえば300×360mm)である透明基板5の上にクロムやアルミニウム、銀などの金属膜(層厚1000〜3000Å)、あるいは黒色樹脂(層厚1.3〜1.5μm)などからなる遮光膜7を設け、そして、遮光膜7が形成されていない領域にカラーフィルタ用の着色層6(層厚1.3〜1.5μm)を形成する。さらに非表示領域の上にダミー層18を形成する。つぎに遮光膜7と着色層6とダミー層18との上にアクリル系樹脂からなるオーバーコート層8をスピンナー方式で塗布し形成する。
(b)工程
この工程においては、ITOなどからなる膜をスパッタリング法や蒸着にて成膜し、つ
いでフォトリソグラフィにより一方に配列した多数の走査電極9を形成する。なお、オーバーコート層8とITOなどからなる膜との間に、密着性を向上させるために、SiO2
やSiNからなる層を形成する方が望ましい。
(c)工程
そして、この走査電極9の上にポリイミド樹脂からなる樹脂を塗布でもって被覆形成し、ついで一方向にラビング処理し、これによって配向膜10となす。さらに走査電極9の一部は非表示領域にも形成する。
【0042】
しかる後に柱状スペーサ17を画素間の領域(非画素領域)に、前記ダミー部材である柱状スペーサ19をダミー層18の上に形成する。
【0043】
この柱状スペーサ17、19は、たとえばアクリル系感光樹脂またはポリイミド系感光樹脂からなるレジストを塗布し、フォトマスクを用いて露光し、現像し、一様な厚みにそろえることで形成する。
【0044】
以上の各工程(a)〜(c)を経た後に、信号電極部材4と走査電極部材11とを層厚1.5μmの液晶層12を介して、シール部13およびダミーシール部14a、柱状スペーサ17、19により貼り合わせる。
【0045】
ついで、このような貼り合わせマザーガラス基板を圧着し、非表示領域にて分断し、個々の液晶表示装置Bに対しシール部13の一部の開孔より液晶材を注入し、しかる後に、その注入口を封止する。
【0046】
かくして上記製法により得られた液晶表示装置Bによれば、非表示領域に遮光膜7もしくは着色層6とほぼ同じ厚みになるようにダミー層18を、さらに柱状スペーサ17、19を形成したことで、信号電極部材4と走査電極部材11とを貼り合わせるに際し、シール部13やダミーシール部14aが均等に押しつぶさ硬化され、とくにシール部13の全体に対し液晶層厚方向の厚みを揃えられ、これによって基板に歪みが生じなくなる。
【0047】
しかも、液晶表示装置Bでは液晶表示装置Aと比べても、柱状スペーサ17、19を形成したことで、散布にて配した球状のスペーサ15よりも均等に液晶層内に設けられ、これにより、液晶層厚のバラツキ度合いがさらに改善され、均等な層厚になる。
【0048】
また、上記構成の液晶表示装置Bについても、信号電極部材4と走査電極部材11のそれぞれの外側に偏光板を配設した構成であって、そして、カイラルネマチック液晶からなる液晶層13は初期状態でねじれ構造を有し、その初期状態にフレデリクス転移を生じさせる電圧を印加した後に印加される電圧差によって初期状態とは異なる2つの準安定状態を有するようになしたメモリー性双安定型となる。
【0049】
また、前記ダミー層18は遮光膜7や着色層6を形成した際に、そこにて使用したフォトマスクを変更することで、それらと同一材でもって厚みを調整して成膜形成してもよい。この製造工程を図9に示す。
【0050】
なお、本発明は上記のような実施形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更や改良等は何ら差し支えない。たとえば、液晶層厚の小さいカイラルスメクティック液晶を用いた強誘電性液晶表示装置や反強誘電性液晶表示装置においても同じ作用効果がある。さらには液晶層厚が5μm程度の通常のSTN型やTN型の液晶表示装置であっても同様の効果を奏する。しかも、実施例では、以下のとおり、単純マトリックス駆動方式の構造にて説明したが、その他の駆動方式、たとえばアクティブマトリックス駆動方式の構造でも同じ作用効果がある。
【実施例】
【0051】
本発明は非表示領域の上にダミー層18を形成し、さらにダミーシール部14aや柱状スペーサ19を設けたことで、表示領域16上の遮光膜7もしくは着色層6の高さとそろえている。
【0052】
そこで、本発明者は液晶表示装置Bに対し、透明基板5上における表示領域16の高さd1(走査電極部材11の表示領域16における厚み)と、非表示領域の高さd2(走査電
極部材11の非表示領域における厚み)とを、幾とおりにも変えて、それぞれ信号電極部
材4と走査電極部材11とを層厚1.5μmの液晶層12を介して、シール部13およびダミーシール部14aにより貼り合わせ、ついで、このような貼り合わせマザーガラス基板を圧着し、非表示領域にて分断し、さらに液晶材を注入し、液晶表示装置Bとなした。
【0053】
高さd1、d2の測定については、触針を測定対象物に接触させ、測定対象物を移動させることで、触針の上下の触れを検出し、表面形状を測定するというDEKTAK装置を用いて、各膜の厚みを測定し、そこから基板構造を考慮し算出するという方法を用いた。
【0054】
そして、これら各種液晶表示装置を評価し、「良好」と「不良」に2分した。「良好」はフリッカーレスのハイデューティな単純マトリックス駆動を実現し、これによって色ムラのない高品質が達成された場合であり、「不良」はそのようなハイデューティな単純マトリックス駆動とならず、色ムラが発生した場合である。
d1−d2=2.1μm ⇒「不良」
d1−d2=1.8μm ⇒「不良」
d1−d2=1.6μm ⇒「不良」
d1−d2=1.4μm ⇒「不良」
d1−d2=1.2μm ⇒「良好」
d1−d2=1.1μm ⇒「良好」
d1−d2=1.0μm ⇒「良好」
d1−d2=0.9μm ⇒「良好」
d1−d2=―0.9μm ⇒「良好」
d1−d2=―1.0μm ⇒「良好」
d1−d2=―1.1μm ⇒「良好」
d1−d2=―1.2μm ⇒「良好」
d1−d2=―1.4μm ⇒「不良」
かくして│d1−d2│≦1.2に、好適には│d1−d2│≦1.0に設定することで、フリッカーレスのハイデューティな単純マトリックス駆動を実現し、これによって色ムラのない高品質が達成された。
【0055】
また、d1−d2=1.4〜2.1μmである場合に、表示領域16の外周を起点にして、そこでのセルギャップ差を0.00とした場合に、起点から表示領域内に向けて、測定位置を移動させることで、セルギャップ差の変化を追ったところ、図12に示すような結果が得られた。
【0056】
また、シール部13の全体に対し液晶層厚方向の厚み(シール高さ)を測定したところ、図15に示すようにシール高さが液晶セル内側にいくほどに高くなっている。
【0057】
つぎにd1−d2=−1.2〜1.2μmである場合に、同様に表示領域16の外周を起点にして表示領域内に向けて、測定位置を移動させることで、セルギャップ差の変化を追ったところ、図13に示すような結果が得られた。
【0058】
また、シール部を測定したところ、図16に示すようにシール高さが一様に揃っている。シール高さがシール幅600μmに対し0.05μm以下である場合に、セルギャップ差が0.10μm以下の差になることを確認した。
【0059】
さらにまた、d1−d2<−1.4μmである場合に、表示領域16の外周を起点にして、同様にセルギャップ差の変化を追ったところ、図14に示すような結果が得られた。
【0060】
また、シール部の全体に対し液晶層厚方向の厚み(シール高さ)を測定したところ、図17に示すようにシール高さが液晶セル内側にいくほどに低くなっている。
【0061】
これらの結果から明らかなとおり、d1−d2=−1.2〜1.2μmにまで小さくすることで、表示領域内のギャップ差が顕著に小さくなっていることがわかる。
【0062】
以上のとおり、マザーガラス上に電極と配向層とを順次積層してなる2種類の部材を、表示領域の外周部ではシール部にて、さらに非表示領域ではダミー部材でもって貼り合わせ、ついで双方のマザーガラスを非表示領域にて切断した液晶表示装置A,Bによれば、シール部の全体に対し液晶層厚方向の厚みを揃えることができ、これにより、基板に歪みが生じなくなった。
【符号の説明】
【0063】
1、5 透明基板
2 信号電極
3、10 配向膜
4 信号電極部材
6 着色層
7 遮光膜
9 走査電極
11 走査電極部材
12 液晶層
13 シール部
14、14a ダミーシール部
16 表示領域
17、19 柱状スペーサ
18 ダミー層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示領域と、隣り合う表示領域間に位置する非表示領域とを有した表示装置用のマザー基板であって、
第1マザー基板と、
前記第1マザー基板に対向して配置される第2マザー基板と、
前記表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられた着色層と、
前記表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられており、かつ前記着色層よりも前記非表示領域側に配置された遮光膜と、
前記非表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられたダミー層と、を備え、
前記ダミー層は、前記遮光膜と間隙を介して配置されている、表示装置用のマザー基板。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置用のマザー基板における、前記非表示領域を分断することによって作製される、表示装置。
【請求項1】
複数の表示領域と、隣り合う表示領域間に位置する非表示領域とを有した表示装置用のマザー基板であって、
第1マザー基板と、
前記第1マザー基板に対向して配置される第2マザー基板と、
前記表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられた着色層と、
前記表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられており、かつ前記着色層よりも前記非表示領域側に配置された遮光膜と、
前記非表示領域に対応する前記第1マザー基板と前記第2マザー基板との間に設けられたダミー層と、を備え、
前記ダミー層は、前記遮光膜と間隙を介して配置されている、表示装置用のマザー基板。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置用のマザー基板における、前記非表示領域を分断することによって作製される、表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−118430(P2011−118430A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51805(P2011−51805)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【分割の表示】特願2000−151414(P2000−151414)の分割
【原出願日】平成12年5月23日(2000.5.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【分割の表示】特願2000−151414(P2000−151414)の分割
【原出願日】平成12年5月23日(2000.5.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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