説明

表面処理無機粉体、無機粉体の表面処理方法及び化粧料

【課題】 無機粉体が分散された水性懸濁液に加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を添加することにより該水性懸濁液中で加水分解された前記化合物の加水分解物が前記無機粉体の表面を被覆してなることを特徴とする表面処理無機粉体。
【解決手段】 本発明によれば、異臭等の問題がなく、非反応性シリコーンオイルに対する相溶性が良好な表面処理無機粉体を簡単な工程で容易に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解性基含有有機ケイ素化合物で表面処理された表面処理無機粉体、無機粉体を該有機ケイ素化合物で表面処理する方法、及び前記表面処理無機粉体を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料は化粧料等に広く用いられ、特に二酸化チタンはUV遮蔽効果に優れることから日焼け防止等のために化粧料に配合されている。この場合、無処理の二酸化チタンを用いるのは特許文献1,2:特開昭47−42502号公報、特開昭49−450号公報に記載され、アルミナやジルコニア処理については特許文献3:特開平5−155748号公報、金属石鹸処理については特許文献4,5:特開昭59−172415号公報、特公平1−57084号公報、有機ケイ素化合物処理については特許文献6〜8:特開昭62−67015号公報、特開平5−339518号公報、特開平7−196946号公報、シリコーン分散体とすることは特許文献9:特開平9−208438号公報に記載されている。
【0003】
多くは二酸化チタンをステアリン酸処理することが行われているが、ステアリン酸処理ではシリコーン分散体としたときに相溶性が悪い(固形分濃度も上げられない)という問題、脂肪酸の異臭の問題等がある。また、二酸化チタンをオルガノハイドロジェンシロキサン等で処理することも提案されているが、これらは乾燥した顔料(粉体)に処理するものであり、2工程以上必要となる。
【0004】
【特許文献1】特開昭47−42502号公報
【特許文献2】特開昭49−450号公報
【特許文献3】特開平5−155748号公報
【特許文献4】特開昭59−172415号公報
【特許文献5】特公平1−57084号公報
【特許文献6】特開昭62−67015号公報
【特許文献7】特開平5−339518号公報
【特許文献8】特開平7−196946号公報
【特許文献9】特開平9−208438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、異臭の問題もなく、非反応性シリコーンオイルに分散させる場合に相溶性が良好で、しかも簡単な工程で容易に製造することができ、顔料として好適な表面処理無機粉体、及び無機粉体の表面処理方法、並びに前記表面処理無機粉体を配合した化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、無機粉体が分散された水性懸濁液に、必要により水溶性のアルミニウム塩、ケイ酸塩又はジルコニウム塩を添加、溶解し、更にpH調整により前記水溶性塩を水不溶性の水酸化物又は酸化物として前記無機粉体表面に付着、被覆した後、加水分解性基含有有機ケイ素化合物を添加して該化合物を加水分解し、この加水分解物を前記無機粉体表面に付着、被覆することにより、表面処理すべき無機粉体の水性懸濁液に表面処理剤を添加するというステップだけで簡単かつ確実に表面処理無機粉体を得ることができ、得られた表面処理無機粉体は異臭等の問題もなく、非反応性シリコーンオイルに対する分散性、相溶性が良好で、顔料として各種化粧料に配合するのに有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は、下記表面処理無機粉体、無機粉体の表面処理方法及び化粧料を提供する。
[I]無機粉体が分散された水性懸濁液に加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を添加することにより該水性懸濁液中で加水分解された、前記化合物の加水分解物が前記無機粉体の表面を被覆してなることを特徴とする表面処理無機粉体。
[II]無機粉体の表面が水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムから選ばれる1種又は2種以上で被覆され、更にその表面が前記有機ケイ素化合物の加水分解物で被覆されてなることを特徴とする[I]記載の表面処理無機粉体。
[III]無機粉体が二酸化チタン又は酸化亜鉛顔料である[I]又は[II]記載の表面処理無機粉体。
[IV]有機ケイ素化合物が、下記平均組成式(1)
1a2b3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は非置換又は置換1価炭化水素基、R2は加水分解性基を含む1価の基、R3は下記式(2)
【化1】


で示される基(式(2)中R1は上記と同様の意味を示す)である。a、b、cは、0.01≦a≦1.5、0.01≦b≦3.5、0≦c≦1.5、0.02≦a+b+c≦4である。また、xは1〜20の整数、yは0〜500の整数であり、式(1)における合計ケイ素原子数は1〜1,000である。)
で示されるものである[I]、[II]又は[III]記載の表面処理無機粉体。
[V]R2がエトキシシリル基を有する1価の基である[IV]記載の表面処理無機粉体。
[VI]無機粉体が分散された水性懸濁液に、加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を添加し、該化合物を前記水性懸濁液中に加水分解させることにより前記無機粉体の表面に前記化合物の加水分解物を付着、被覆することを特徴とする無機粉体の表面処理方法。
[VII]無機粉体が分散された水性懸濁液に、水溶性のアルミニウム塩、ケイ酸塩、ジルコニウム塩の1種又は2種以上を添加、溶解後、この水性懸濁液のpHを調整して前記塩の水不溶性水酸化物又は酸化物を前記無機粉体表面に付着、被覆し、次いでこの水性懸濁液に加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を添加し、該化合物を前記水性懸濁液中に加水分解させることにより、前記水酸化物又は酸化物被覆無機粉体の表面に前記化合物の加水分解物を付着、被覆することを特徴とする[VI]記載の無機粉体の表面処理方法。
[VIII]無機粉体が二酸化チタン又は酸化亜鉛顔料である[VI]又は[VII]記載の無機粉体の表面処理方法。
[IX]有機ケイ素化合物が、下記平均組成式(1)
1a2b3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は非置換又は置換1価炭化水素基、R2は加水分解性基を含む1価の基、R3は下記式(2)
【化2】


で示される基(式(2)中R1は上記と同様の意味を示す)である。a、b、cは、0.01≦a≦1.5、0.01≦b≦3.5、0≦c≦1.5、0.02≦a+b+c≦4である。また、xは1〜20の整数、yは0〜500の整数であり、式(1)における合計ケイ素原子数は1〜1,000である。)
で示されるものである[VI]、[VII]又は[VIII]記載の無機粉体の表面処理方法。
[X]R2がエトキシシリル基を有する1価の基である[IX]記載の無機粉体の表面処理方法。
[XI][I]乃至[V]のいずれかに記載の表面処理無機粉体を配合してなる化粧料。
[XII]紫外線防御化粧料、メークアップ化粧料又はスキンケア化粧料である[XI]記載の化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異臭等の問題がなく、非反応性シリコーンオイルに対する相溶性が良好な表面処理無機粉体を簡単な工程で容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、無機粉体としては、化粧料などの顔料等として配合されるいずれのものでもよいが、二酸化チタン、酸化亜鉛等が好ましく、特に好ましくは二酸化チタンであり、二酸化チタンはルチル型でもアナターゼ型でもよい。
【0010】
上記無機粉体の平均粒径は、これが配合される化粧料等の種類に応じて適宜選定されるが、0.001〜5μm、特に0.01〜0.3μmが好ましい。
なお、本発明において、平均粒径は、例えばレーザー光回折法などによる粒度分布測定装置等を用いて、重量平均値(又はメジアン径)などとして求めることができる。
【0011】
本発明に係る表面処理無機粉体を得るには、まず上記無機粉体を水に分散した水性懸濁液を調製する。この場合、顔料等、無機粉体の製造工程で水に懸濁されているものを使用してもよい。水性懸濁液中の無機粉体濃度は、水性懸濁液の粘度、表面処理効率等の点から1〜50質量%、特に5〜15質量%とすることが好ましい。
【0012】
本発明においては、上記無機粉体の水性懸濁液に、後述する加水分解性基含有有機ケイ素化合物を添加して無機粉体を直接この有機ケイ素化合物で表面処理することができるが、必要により、好ましくは無機粉体の表面を水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムの1種又は2種以上で被覆処理を行った後、上記有機ケイ素化合物で表面処理を行う。
【0013】
ここで、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムの被覆処理は、上記水性懸濁液に水溶性のアルミニウム塩(例えば、アルミン酸ソーダ等)、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ソーダ等)、ジルコニウム塩(例えば、硫酸ジルコニウム等)から選ばれる1種又は2種以上の水溶性塩を添加、溶解する。この場合、水性懸濁液に、上記水溶性塩の水溶液、例えばアルミン酸ソーダ水溶液、ケイ酸ソーダ水溶液、硫酸ジルコニウム水溶液等を添加するようにしてもよい。次いで、水性懸濁液のpHを、添加、溶解した水溶性塩の種類に応じ、この水溶性塩が水不溶性の水酸化物又は酸化物に変化するpHに調整し、水不溶性水酸化物又は酸化物を上記懸濁液中で生成させ、無機粉体の表面に該水酸化物又は酸化物を付着、被覆する。
【0014】
この場合、この処理は、上記水溶性塩の1種のみの処理に限られず、2種以上を用いて同時に処理してもよく、また上記水溶性塩の1種又は2種以上を用いて処理した後、更に別の水溶性塩の1種又は2種以上を用いて処理するようにしてもよい。例えば、最初にケイ酸ソーダを添加し、pH8〜10で処理し、無機粉体表面に二酸化ケイ素を被覆した後、更にアルミン酸ソーダを添加し、pH3〜5で処理して、上記二酸化ケイ素被覆無機粉体表面に更に水酸化アルミニウムによる被覆を行うようにしてもよい。
【0015】
本発明においては、このように無機粉体に対して、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムの1種又は2種以上の被覆処理を行うことにより、酸化チタン等の無機粉体の表面活性を抑制し、また凝集性を改善できる。
【0016】
この場合、上記水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムの1種又は2種以上の被覆物の合計被覆量は、無機粉体100質量部に対して3〜30質量部、特に5〜20質量部とすることが好ましい。被覆量が少なすぎると、酸化チタン等の無機粉体の表面活性を抑制し得ない場合があり、多すぎると、粒子間の凝集が生じ易くなる場合がある。
【0017】
本発明は、上記無機粉体に直接、又は上記水酸化アルミニウム等の被覆処理がなされた無機粉体に対し、加水分解性基含有有機ケイ素化合物による表面処理を行う。この処理は、上記無機粉体の水性懸濁液、又はこの水性懸濁液に上記水溶性塩を添加して処理した後の水性懸濁液に対し、加水分解性基含有有機ケイ素化合物を添加することによって行う。
【0018】
この場合、加水分解性基含有有機ケイ素化合物としては、下記平均組成式(1)で示されるものが好ましい。
1a2b3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は非置換又は置換1価炭化水素基、R2は加水分解性基を含む1価の基、R3は下記式(2)
【化3】


で示される基(式(2)中R1は上記と同様の意味を示す)である。a、b、cは、0.01≦a≦1.5、0.01≦b≦3.5、0≦c≦1.5、0.02≦a+b+c≦4である。また、xは1〜20の整数、yは0〜500の整数であり、式(1)における合計ケイ素原子数は1〜1,000である。)
【0019】
ここで、R1の非置換又は置換1価炭化水素基としては、炭素数1〜30のものが好ましく、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜3であり、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等や、これらの非置換1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子等のハロゲン原子や、アミノ基、アルキルアミノ基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、メルカプト基等で置換された基が挙げられる。
【0020】
2の加水分解性基を含む1価の基としては、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、オキシム基等の加水分解性基、及び下記式(3)
−A−SiR13-pp (3)
(但し、Aは、炭素数2〜20のアルキレン基又は下記式
−O−(SiR12O)q
で示される基、Xは上記した加水分解性基、R1は上記した非置換又は置換1価炭化水素基であり、pは1,2又は3、特に2又は3、qは0〜500、特に0〜100の整数である。)
で示される1価の基を挙げることができる。
【0021】
3は上記式(2)の通りであるが、xは1〜20、好ましくは2〜10、yは0〜500、好ましくは3〜60、特に好ましくは3〜20である。
【0022】
なお、上記加水分解性基としては、アルコキシ基が好ましく、特に加水分解されたときに生成するアルコールがエタノールとなり、化粧料等に使用する場合に支障がない点からエトキシ基が好ましい。
【0023】
また、上記式(1)において、0.01≦a≦1.5、0.01≦b≦3.5、0≦c≦1.5、0.02≦a+b+c≦4であるが、aは0.3≦a≦1.2、特に0.5≦a≦1.0が好ましく、bは0.5≦b≦3.0、特に1.5≦b≦2.5が好ましい。cは0≦c≦1.0、特に0≦c≦0.5が好ましく、cが0ではなく、式(2)の基を存在させることにより、化粧品用油剤への分散性が優れたものになると共に、柔らかい感触を付与することができる。また、R2として上記式(3)の基を用いる場合も、同様に柔らかい感触を付与することができる。更に、a+b+cは4(即ち、上記式(1)の有機ケイ素化合物がオルガノシランであるもの)でもよいが、好ましくは式(1)の有機ケイ素化合物は、オルガノポリシロキサンであり、好ましくは0.5≦a+b+c<4、より好ましくは0.8≦a+b+c<4、特に好ましくは2≦a+b+c≦3である。
【0024】
好ましい加水分解性基含有有機ケイ素化合物としては、特に下記式(4)で示されるものが挙げられる。
【化4】


(但し、Qは
【化5】

であり、Meはメチル基、Etはエチル基である。dは0≦d≦1,000、好ましくは0≦d≦100、特に好ましくは0≦d≦20であり、eは、好ましくは0≦e≦100、特に好ましくは0≦e≦20であり、fは、好ましくは1≦f≦100、特に好ましくは1≦f≦30であり、gは、好ましくは0≦g≦100、特に好ましくは0≦g≦20である。nは1≦n≦30、特に1≦n≦15であり、mは0≦m≦100、特に0≦m≦20である。)
【0025】
更に、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等のジ又はトリエトキシシランの1種又は2種以上の混合物、特にジエトキシシランとトリエトキシシランとの混合物の部分加水分解物も好適なものとして挙げることができる。
【0026】
上記加水分解性基含有有機ケイ素化合物の使用量は、無機粉体100質量部に対し、0.1〜20質量部、特に2〜15質量部とすることが好ましい。使用量が少なすぎると、撥水性、有機油剤への分散性が劣る場合があり、また凝集しやすくなる場合がある。
【0027】
上記有機ケイ素化合物を上記水性懸濁液に添加し、処理する場合、処理温度は室温〜90℃、特に室温〜60℃であることが好ましく、また、反応時にエタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性の低沸点アルコール類を添加してもよい。水性懸濁液のpHは3〜11、特に5〜9に調整することが好ましく、また加水分解触媒、例えば塩酸、酢酸等の酸性化合物、アンモニア、有機アミン等の塩基性化合物等を添加してもよい。
【0028】
このように有機ケイ素化合物を処理することにより、有機ケイ素化合物が加水分解されて、この加水分解物が上記無機粉体に付着、被覆されるものである。
【0029】
以上のように処理した後、上記懸濁液を濾過又は遠心分離し、その固形分(処理物)を乾燥し、必要により粉砕処理し、表面処理無機粉体を得る。この場合、表面処理無機粉体の平均粒径は、0.01〜5μm、特に0.01〜0.3μmであることが好ましい。
【0030】
このようにして得られる表面処理無機粉体は、出発無機粉体を核粒子とし、その表面に必要により水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムの1種又は2種以上の粉体が付着乃至は被覆し、無機粉体最表面に上記有機ケイ素化合物の加水分解物が付着乃至は被覆しているものである。
【0031】
本発明は、この表面処理無機粉体をそのまま顔料等として化粧料等に配合、使用することができるが、得られた表面処理無機粉体を化粧品用油剤に分散させて分散体とした態様で化粧料等に配合することができる。この場合、化粧品用油剤としては、例えば、天然動植物油脂類及び半合成油脂、炭化水素油、高級アルコール、エステル油、非反応性シリコーン油等であり、好ましくはジメチルポリシロキサンオイル、メチルフェニルポリシロキサンオイル等の直鎖状のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状オルガノポリシロキサンが挙げられる。この中でも環状5量体が特に好ましい。ここで、非反応性とは、表面処理無機粉体や化粧料成分と反応する官能基を有さないことを意味する。化粧品用油剤中の表面処理無機粉体の分散量は、5〜80質量%、特に35〜50質量%であることが好ましい。
【0032】
上記表面処理無機粉体又はこれを非反応性シリコーンオイル等の化粧品用油剤に分散させた分散体は、化粧料に配合することができるが、化粧料としては、紫外線防御化粧料、メークアップ化粧料、スキンケア化粧料等を挙げることができ、その配合量は顔料等としての通常量である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
[実施例1]
二酸化チタンの合成反応で得られた、平均粒径0.02μmの二酸化チタン10質量%の分散懸濁液2,000gを70〜80℃に加熱し、まずSiO2換算で20質量%のケイ酸ソーダ水溶液42g(二酸化チタンに対しSiO2換算で6質量%)を添加した後、Al23換算で25質量%のアルミン酸ソーダ水溶液56g(二酸化チタンに対しAl23換算で10質量%)を添加した。水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6に調整し、30分熟成した。更に、この懸濁液に下記式で示されるエトキシ基含有オルガノポリシロキサンを上記二酸化チタン100質量部に対して10質量部添加し、40℃で1時間熟成した。これを濾過し、洗浄した後、90℃で10時間乾燥して粉砕し、平均粒径0.02μmの表面処理二酸化チタンを得た。得られた表面処理二酸化チタンは、二酸化チタンの表面がSiO2及びAl23層で被覆され、更にその表面を覆って下記式のオルガノポリシロキサンの加水分解物層が形成されているものであった。
【0035】
【化6】

【0036】
[実施例2]
式(1)のオルガノポリシロキサンの代わりにトリエトキシメチルシラン5モル、ジエトキシジメチルシラン10モル、水5モルを添加し、部分加水分解して得られた重量平均分子量1,200のエトキシ基含有オルガノポリシロキサンを使用した以外は実施例1と同じ処理を行い、同様に表面処理二酸化チタンを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉体が分散された水性懸濁液に加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を添加することにより該水性懸濁液中で加水分解された、前記化合物の加水分解物が前記無機粉体の表面を被覆してなることを特徴とする表面処理無機粉体。
【請求項2】
無機粉体の表面が水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムから選ばれる1種又は2種以上で被覆され、更にその表面が前記有機ケイ素化合物の加水分解物で被覆されてなることを特徴とする請求項1記載の表面処理無機粉体。
【請求項3】
無機粉体が二酸化チタン又は酸化亜鉛顔料である請求項1又は2記載の表面処理無機粉体。
【請求項4】
有機ケイ素化合物が、下記平均組成式(1)
1a2b3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は非置換又は置換1価炭化水素基、R2は加水分解性基を含む1価の基、R3は下記式(2)
【化1】

で示される基(式(2)中R1は上記と同様の意味を示す)である。a、b、cは、0.01≦a≦1.5、0.01≦b≦3.5、0≦c≦1.5、0.02≦a+b+c≦4である。また、xは1〜20の整数、yは0〜500の整数であり、式(1)における合計ケイ素原子数は1〜1,000である。)
で示されるものである請求項1、2又は3記載の表面処理無機粉体。
【請求項5】
2がエトキシシリル基を有する1価の基である請求項4記載の表面処理無機粉体。
【請求項6】
無機粉体が分散された水性懸濁液に、加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を添加し、該化合物を前記水性懸濁液中に加水分解させることにより、前記無機粉体の表面に前記化合物の加水分解物を付着、被覆することを特徴とする無機粉体の表面処理方法。
【請求項7】
無機粉体が分散された水性懸濁液に、水溶性のアルミニウム塩、ケイ酸塩、ジルコニウム塩の1種又は2種以上を添加、溶解後、この水性懸濁液のpHを調整して前記塩の水不溶性水酸化物又は酸化物を前記無機粉体表面に付着、被覆し、次いでこの水性懸濁液に加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を添加し、該化合物を前記水性懸濁液中に加水分解させることにより、前記水酸化物又は酸化物被覆無機粉体の表面に前記化合物の加水分解物を付着、被覆することを特徴とする請求項6記載の無機粉体の表面処理方法。
【請求項8】
無機粉体が二酸化チタン又は酸化亜鉛顔料である請求項6又は7記載の無機粉体の表面処理方法。
【請求項9】
有機ケイ素化合物が、下記平均組成式(1)
1a2b3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は非置換又は置換1価炭化水素基、R2は加水分解性基を含む1価の基、R3は下記式(2)
【化2】

で示される基(式(2)中R1は上記と同様の意味を示す)である。a、b、cは、0.01≦a≦1.5、0.01≦b≦3.5、0≦c≦1.5、0.02≦a+b+c≦4である。また、xは1〜20の整数、yは0〜500の整数であり、式(1)における合計ケイ素原子数は1〜1,000である。)
で示されるものである請求項6、7又は8記載の無機粉体の表面処理方法。
【請求項10】
2がエトキシシリル基を有する1価の基である請求項9記載の無機粉体の表面処理方法。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の表面処理無機粉体を配合してなる化粧料。
【請求項12】
紫外線防御化粧料、メークアップ化粧料又はスキンケア化粧料である請求項11記載の化粧料。

【公開番号】特開2006−104342(P2006−104342A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293440(P2004−293440)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】