説明

表面形状測定装置

【課題】 本発明は、被被測定部材の厚さ、うねり、及びナノトポグラフィを測定する表面形状測定装置に関し、ガイドバーのガイド面に案内されて移動するスライダの横振れを小さくして、1つの装置で被測定部材の厚さ、うねり、ナノトポグラフィを精度良く測定することを課題とする。
【解決手段】 ワーク保持器90が配設されたスライダ61を複数の流体静圧パッド62,63によりガイドバー51に対して移動可能に支持し、ワイヤ118を介して駆動モータ104の動力をスライダ61に伝達させて、スライダ61をX,X方向に移動させてワーク29の面29A,29Bの表面形状の測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状測定装置に係り、特に被測定部材の厚さ、うねり、及びナノトポグラフィを測定する表面形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層配線構造を有した半導体デバイスを形成する際のワーク(被測定部材)には、スライス工程、ラップ工程、研削工程、研磨工程(ワークの両面を鏡面状態に加工する工程)等を経て、鏡面状態とされたものが用いられる。このような鏡面状態とされたワークの表面には、ワークの加工時(例えば、研削加工時)に生じた、うねり、粗さ及びナノトポグラフィに対応した成分が存在する。
【0003】
ナノトポグラフィとは、半導体シリコンウエハのようなワークの表面にできた凹凸である。その空間波長はおおよそ0.2〜20mmであり、波頂と波底との高さの差は1〜数百nmである。うねりとは、ナノトポグラフィよりも空間波長が長い成分であり、その空間波長は2mm以上である。粗さとは、ナノトポグラフィよりも空間波長が短い成分であり、その空間波長は1mm以下である。
【0004】
半導体デバイスを製造する際、ワークにナノトポグラフィが存在すると、微細な凹凸を平坦化するCMP工程において、層間絶縁膜の膜厚むら等が発生して半導体デバイスの歩留まりが低下する。そのため、ワークを研削する際には、研削工程において、ワークの表面に生じたナノトポグラフィがCMP工程後のワークの表面形状にどのような影響を及ぼすかを把握し、研削加工時にナノトポグラフィが発生しないように対処することは重要である。なお、研削工程には、例えば、カップ型砥石の研削動作面がワークの中心を通過するようにワークを研削加工する両頭研削装置を用いられる。また、このような研削装置で研削加工されたワークは、所定の形状に加工されたか否かの判断を行うために、測定装置により厚さやうねりが測定されていた。
【0005】
研削加工後のワークのナノトポグラフィを測定できる表面形状測定装置としては、固定体に固定されたワークに対して、測定器が取り付けられたスライダをガイドバーのガイド面に沿ってリニアモータで駆動させたり(例えば、特許文献1参照)、固定体に固定された測定器に対して、ワークが保持されたスライダをガイドバーのガイド面に沿ってリニアモータで駆動させたりしていた。また、リニアモータを用いた駆動方式の代わりに、ボールネジを用いた駆動方式のものがある。
【特許文献1】特開平11−351857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、駆動方式にリニアモータを用いた表面形状測定装置では、磁場の影響によりガイドバーの長手方向(スライダの移動方向)以外の方向に不正力(スライダの横振れ等)が生じ、ナノトポグラフィを精度良く測定することが困難であるという問題があった。また、ボールネジを用いた駆動方式の場合には、ボールネジに設けられたベアリングの形状ばらつきにより、ボールネジが回転する毎にうねりが発生し、このうねりの影響により、ナノトポグラフィを精度良く測定することが困難であるという問題があった。
【0007】
さらに、スライダを案内するガイドバーのガイド面には、ガイドバーの加工精度に起因する微細な凹凸やうねりが存在する。そのため、スライダがガイドバーのうねりに沿って移動するため、測定したワークの表面形状データにスライダのうねり(スライダ形状データ)が反映されて、ナノトポグラフィを精度良く測定することが困難であるという問題があった。
【0008】
また、従来、ワークの厚さ、うねり及びナノトポグラフィを測定する際には、ワークの厚さ及びうねりを測定する測定装置と、ナノトポグラフィを測定する表面形状測定装置との2台の測定装置が必要であり、装置コストを要するという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ガイドバーのガイド面に案内されて移動するスライダの横振れを小さくして、1つの装置で被測定部材の厚さ、うねり、ナノトポグラフィを精度良く測定することのできる表面形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項1記載の発明では、被測定部材を保持する被測定部材保持器、又は前記被測定部材の表面形状を測定する一対のセンサのどちらか一方を備えた移動体と、該移動体を案内するガイドバーと、前記移動体と前記ガイドバーとの間に設けられ、前記移動体を前記ガイドバーに対して移動可能に支持する支持部材と、前記ガイドバーの長手方向に延在すると共に、前記移動体と接続された紐状部材又は帯状部材と、前記紐状部材又は帯状部材を介して、前記移動体を前記ガイドバーの長手方向に移動させる駆動装置とを備えたことを特徴とする表面形状測定装置により、解決できる。
【0012】
上記発明によれば、支持部材によりガイドバーに対して移動可能に支持された移動体を、紐状部材又は帯状部材を介してガイドバーの長手方向に移動させることで、ガイドバーの形状に沿って移動体が横振れすることを抑制して、一対のセンサにより被測定部材の表面形状を精度良く測定することができる。
【0013】
請求項2記載の発明では、前記支持部材には、複数の流体静圧パッドを用いることを特徴とする請求項1に記載の表面形状測定装置により、解決できる。
【0014】
上記発明によれば、複数の流体静圧パッドにより移動体をガイドバーに対して非接触で支持することで、ガイドバーの形状の影響を受けて移動体が横振れすることを抑制して、被測定部材の表面形状を精度良く測定することができる。
【0015】
請求項3記載の発明では、前記被測定部材保持器は、前記被測定部材を立てた状態で直接支持する3つの支持体を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の表面形状測定装置により、解決できる。
【0016】
上記発明によれば、3つの支持体により被測定部材を3点支持することにより、被測定部材が反ることなく、安定して支持することができる。これにより、被測定部材の表面形状を精度良く測定することができる。
【0017】
請求項4記載の発明では、前記3つの支持体には、前記被測定部材の端面を支持する溝を設けたことを特徴とする請求項3に記載の表面形状測定装置により、解決できる。
【0018】
上記発明によれば、3つの支持体に被測定部材の端面を支持する溝を設けることにより、支持体に設けられた溝で被測定部材をしっかりと挟持させて、被測定部材の表面形状を精度良く測定することができる。
【0019】
請求項5記載の発明では、前記3つの支持体のうち2つの支持体には、前記ガイドバーの長手方向と直交する方向に対して前記支持体の位置を調整する位置調整機構を設けたことを特徴とする請求項3または4に記載の表面形状測定装置により、解決できる。
【0020】
上記発明によれば、被測定部材保持器により被測定部材が傾いて支持された際、被測定部材の傾きが小さくなるよう補正して、被測定部材の表面形状を精度良く測定することができる。
【0021】
請求項6記載の発明では、前記被測定部材保持器は、1つの前記支持体を備えた第1の被測定部材支持ユニットと、2つの前記支持体を備えた第2の被測定部材支持ユニットとを有し、前記第2の被測定部材支持ユニットは、着脱可能な構成とされていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の表面形状測定装置により、解決できる。
【0022】
上記発明によれば、第2の被測定部材支持ユニットは、着脱可能な構成とされているため、第2の被測定部材支持ユニットを交換することで、径の異なる被測定部材の測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ガイドバーのガイド面に案内されて移動するスライダの横振れを小さくして、1つの装置で被測定部材の厚さ、うねり、ナノトポグラフィを精度良く測定することのできる表面形状測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0025】
本実施例では、両頭研削装置20で研削加工した被測定部材であるワーク29の厚さ、うねり、ナノトポグラフィを本実施例の表面形状測定装置40で測定する場合を例に挙げて説明する。そこで説明の便宜上、始めに、両頭研削装置20の構成についての説明し、その後、表面形状測定装置40の構成及びワーク29の表面形状の測定方法について説明する。
【0026】
図1を参照して、両頭研削装置20について説明する。図1は、両頭研削装置の概略図である。なお、図1において、ワーク29を挟んで左側と右側とに示した構成部分は同一構成である。したがって、図1の左側の構成部分には符号aを添記し、同図中の右側の構成部分には符号bを添記して、主に左側の構成部分についての説明を行う。また、図1に示したX,X方向は研削主軸21a,21bの移動方向を示しており、Y,Y方向は、研削主軸21a,21bの回転方向(ラジアル方向)を示している。
【0027】
両頭研削装置20は、大略すると研削主軸21a,21bと、カップ型砥石22a,22bと、サドル25a,25bと、研削主軸回転移動手段28a,28bと、架台26と、ワーク保持器(図示せず)とを有した構成とされている。
【0028】
ワーク29と対向する側の研削主軸21aの端部には、カップ型砥石22aが配設されており、反対側の端部には、サドル25aが配設されている。カップ型砥石22aのワーク29と接触する部分には、ワーク29を研削する研削動作面23aが形成されている。
【0029】
サドル25aは、X,X方向に移動可能な状態で架台26に配設されている。研削主軸21aが配設されている側とは反対側のサドル25aには、研削主軸回転移動手段28aが配設されている。研削主軸回転移動手段28aは、サドル25aを介して、カップ型砥石22a及び研削主軸21aをY,Y方向に一体的に回転させると共に、X,X方向に一体的に移動させるためのものである。
【0030】
ワーク29は、図示していないワーク保持器により回転可能な状態で支持されている。ワーク29を研削加工する際には、ワーク29及びカップ型砥石22a,22bは共に回転した状態にあり、ワーク29は回転移動する一対のカップ型砥石22a,22bに挟持されることで研削加工される。
【0031】
次に、研削加工時のカップ型砥石22aとワーク29との位置関係について説明する。図2は、研削加工時のカップ型砥石とワークの位置関係を示した図である。図2に示すように、研削動作面23aは、常にワーク29の中心Aを通過してワーク29を研削加工する。そのため、研削加工されたワーク29の直径方向に対する加工状態はワーク29の全周において略等しくなる。この加工状態には、厚さ、うねり、粗さ及びナノトポグラフィに対応する成分が含まれており、ワーク29の直径方向に対する厚さ、うねり、ナノトポグラフィはワーク29の全周において略等しくなる。
【0032】
したがって、上記説明したような両頭研削装置20により研削加工されたワーク29の厚さ、うねり、及びナノトポグラフィを表面形状測定装置40で評価する際には、ワーク29の面29A,29Bに対して、それぞれ1つの直径方向の表面形状データを取得すれば良い。なお、面29A,29Bは、研削加工されたワーク29の面である。
【0033】
次に、図3乃至図5を参照して、本発明の実施例である表面形状測定装置40の構成について説明する。なお、本実施例では、両頭研削装置20で研削加工処理されたワーク29の直径方向に対するナノトポグラフィの発生がワーク29の全周において略等しいワーク29を測定対象としている。図3は、本発明の一実施例である表面形状測定装置の概略図であり、図4は、図3に示した測定装置本体の平面図であり、図5は、図3に示した測定装置本体をC視した図である。
【0034】
表面形状測定装置40は、大略すると、測定装置本体45と、コンピュータ120とを有した構成されている。測定装置本体45は、ワーク29の面29A,29Bを測定して、表面形状データを取得するためのものである。コンピュータ120は、測定装置本体45が測定した表面形状データを記憶し、ワーク29の厚さ分布と、ワーク29のうねりの形状を出力表示すると共に、後述するフィルタ処理を行って、表面形状データからナノトポグラフィの形状を出力表示するためのものである。
【0035】
コンピュータ120は、記録媒体読み取り部123を有した構成とされている。表面形状測定装置40のワーク29の厚さの測定方法と、ワーク29のうねりの測定方法と、ワーク29のナノトポグラフィの測定方法とに関するプログラムは、記録媒体125に格納されている。よって、この記録媒体125を記録媒体読み取り部123に挿入して、プログラムを読み取り実行することにより、ワーク29の厚さ、うねり、及びナノトポグラフィの評価を行うことができる。なお、記録媒体125には、CD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク(MO)等のデータを光学的、電気的、或いは磁気的に記録する記録媒体を用いることができる。
【0036】
測定装置本体45は、大略すると、架台46と、支持脚47と、ガイドバー51と、スライダ部60と、測定部95と、スライダ駆動手段100とを有した構成とされている。
【0037】
架台46の面46Aには、スライダ駆動手段100と、ガイドバー51とが配設されており、架台46の面46Bには、複数の支持脚47が設けられている。架台46は、この複数の支持脚47により安定して支持されている。このように、複数の支持脚47により架台46を支持することで、スライダ部60が移動した際、架台46が撓むことを防止して、精度の良いワーク29の表面形状データを取得することができる。
【0038】
ガイドバー51は、X,X方向がガイドバー51の長手方向となるよう架台46上に配設されている。ガイドバー51は、スライダ部60をX,X方向に移動させる際のガイド面52A,52Bを有した構成とされている。また、ガイドバー51には、空間53が形成されており、この空間53は、後述するワイヤ118を通過させるためのものである。ガイドバー51のガイド面52A,52Bには、ガイドバー51を製造する際の加工精度の限界から生じる微細な凹凸やうねり等が存在する(図6参照)。
【0039】
スライダ部60は、大略するとスライダ61と、ワーク保持器90と、ピース支持部材91と、厚さ基準ピース92とを有した構成とされている。移動体であるスライダ61は、移動体であるスライダ本体64と、複数の支持部材である流体静圧パッド62,63と有した構成とされている。スライダ本体64は、ガイドバー51の上面51A及びガイド面52A,52Bと対向するような形状とされており、スライダ本体64とガイドバー51との間には、隙間55が形成されている。また、スライダ本体64の両端には、ワイヤ固定部材65を配設するためのネジ穴(図示せず)が設けられている。
【0040】
図6は、本実施例のスライダの移動軌跡を示した図である。なお、図6において、図3に示した表面形状測定装置と同一構成部分には同一の符号を付す。また、図6に示したEはスライダ61の移動軌跡(以下、移動軌跡Eとする)を示している。
【0041】
図3及び図5に示すように、ガイドバー51の上面51Aと対向するスライダ本体64には、複数の流体静圧パッド63(本実施例の場合は8つ)が配設されている。ガイドバー51のガイド面52A,52Bと対向するスライダ本体64には、それぞれ複数の流体静圧パッド62(本実施例の場合は8つ)が配設されている。複数の流体静圧パッド62,63は、複数の支持部材である。スライダ本体64は、これら複数の流体静圧パッド62,63を介して、X,X方向に移動可能な状態でガイドバー51に支持されている。なお、流体静圧パッド62,63には、例えば、エアを用いた流体静圧パッドを用いることができる。
【0042】
このように、複数の支持部材として複数の流体静圧パッド62,63を設けて、ガイドバー51に対してスライダ本体64を移動可能に非接触で支持させることにより、スライダ本体64とガイドバー51との間に摩擦が生じることを防止することができる。また、Y,Y方向を支持する流体静圧パッド62を複数(本実施例の場合は8つ)設けることにより、スライダ61をX,X方向に移動させた際、複数設けられた流体静圧パッド62の平均化効果により、微細な凹凸やうねり等を含んだガイドバー51のガイド面52A,52Bの形状よりもY,Y方向に対する振れ(以下、横振れとする)の小さい移動軌跡EでガイドバーをX,X方向に移動させることができる。これにより、微細な凹凸やうねり等を含んだガイド面52A,52Bの形状データ(以下、ガイドバー形状データとする)が、後述する変位センサ99a,99b(一対のセンサ)が取得するワーク29の表面形状データに及ぼす影響を小さくすることができる。
【0043】
なお、ここでの平均化効果とは、Y,Y方向を支持する流体静圧パッド62の数や面積が増加するにつれて、X,X方向に移動するスライダ61の移動軌跡Eの横振れが小さくなり、スライダ61の移動軌跡Eがガイドバー51のガイド面52A,52Bの形状の影響を受けにくくなることを言う。
【0044】
図7は、ワイヤ固定部材の概略図である。図7に示すように、ワイヤ固定部材65は、貫通穴68が形成されたワイヤ固定部66と、ネジ部67とを有した構成とされている。貫通穴68は、後述するワイヤ118を接続する(結ぶ)ためのものである。ネジ部67は、ワイヤ固定部材65をスライダ本体64に固定すると共に、接続されたワイヤ118の張りの強さ(テンション)を調整するためのものである。ワイヤ118のテンションは、ネジ部67をスライダ本体64に形成されたネジ穴(図示せず)に挿入する長さで決定することができる。
【0045】
被測定部材保持器であるワーク保持器90は、スライダ本体64上に配設されている。ワーク保持器90は、測定したいワーク29を縦置きにした状態で支持するためのものであり、大略すると上部ワーク支持ユニット82と、下部ワーク支持ユニット70と、支持部材81とを有した構成とされている。
【0046】
第1の被測定部材支持ユニットである上部ワーク支持ユニット82は、図3におけるスライダ本体64上の左側に配設された支持部材81に支持されている。上部ワーク支持ユニット82は、大略すると回転支持部83と、アーム84と、支持体であるローラ86とを有した構成とされている。アーム84の一方の端部は、回転支持部83により回転可能に支持されており、他方の端部には、ワーク29を直接支持するローラ86が配設されている。ローラ86は、回転しないようアーム84に固定されている。ローラ86には、ワーク29の端面を支持する溝86Aが形成されている。溝86Aの形状には、例えば、V字形状を用いることができる。
【0047】
回転支持部83は、ローラ86が取り付けられたアーム84をその端部を中心にD方向(図3参照)に回転可能にするためのものである。このような回動可能な構成とされた上部ワーク支持部82を設けることにより、ワーク29の直径Rに依存することなく、ワーク29の1点をローラ86により支持することができる。
【0048】
第2の被測定部材支持ユニットである下部ワーク支持ユニット70は、スライダ61上に配設されている。下部ワーク支持ユニット70は、板体71と、板体71上に設けられた2つのワーク支持機構72とを有した構成とされている。ワーク支持機構72は、大略するとローラ74と、一対の支持部73と、ローラ位置調整機構76とを有した構成とされている。支持体であるローラ74は、ワーク29を直接支持するためのものである。ローラ74には、ワーク29の端面を支持する溝74Aが形成されている。ワーク29の端面とは、ワーク29の外周部に形成されたテーパ面と、テーパ面が設けられた部分よりも外側の面とを含んだ面のことである。溝74Aの形状には、例えば、V字溝を用いることができる。ワーク29は、下部ワーク支持ユニット70に設けられた2つのローラ74により支持される。
【0049】
ローラ74は、位置調整機構であるローラ位置調整機構76に貫通されると共に、ローラ位置調整機構76と一体的に構成されている。ローラ位置調整機構76には、ネジ部(図示せず)が設けられており、ローラ位置調整機構76は、一対の支持部73に設けられたネジ穴(図示せず)にネジ締結されている。
【0050】
このようなローラ位置調整機構76をローラ74に設けることで、後述する一対の変位センサ99a,99bに対してワーク29が傾いて支持された際、ローラ位置調整機構76のネジ部を回してローラ74の位置を調整して、ワーク29の傾きが小さくなるよう補正することができる。これにより、変位センサ99a,99bにより、ワーク29の面29A,29Bの表面形状を精度良く測定することができる。
【0051】
また、下部ワーク支持ユニット70は、スライダ61に対して着脱可能な構成とされているため、異なるワーク29の直径に対応するよう複数の下部ワーク支持ユニットを用意することで、下部ワーク支持ユニットを交換して、直径の異なるワークの表面形状を測定することができる。
【0052】
上記説明したように、ワーク29は、上部ワーク支持ユニット82に設けられたローラ86と、下部ワーク支持ユニット70に設けられた2つのローラ74とにより3点支持される。このように、ワーク29を3点支持することにより、ワーク29を支持した際、ワーク29に反りが発生することが抑制され、ワーク29を安定して支持することができる。また、ローラ74に形成された溝74Aと、ローラ86に形成された溝86Aとにより、ワーク29の端面がしっかりと挟持されるので、変位センサ99a,99bにより、ワーク29の面29A,29Bの表面形状を精度良く測定することができる。
【0053】
厚さ基準ピース92は、図3におけるスライダ本体64の右側に配設されたピース支持部材91上に設けられている。厚さ基準ピース92は、予め厚さの分かった試料であり、ワーク29の厚さを求める際に使用されるものである。なお、ワーク29の厚さの算出方法に関しては後述する。
【0054】
測定部95は、大略すると測定部フレーム96と、一対のセンサである変位センサ99a,99bと、センサ位置調整機構98a,98bとを有した構成とされている。測定部フレーム96は、スライダ部60を通過させることが可能な形状とされており、架台46と接続されている。図3における測定部フレーム96の左側には、センサ位置調整機構98aとセンサ位置調整機構98bとが対向するよう設けられている。変位センサ99aは、センサ位置調整機構98aを介して測定部フレーム96と接続されている。また、変位センサ99bは、センサ位置調整機構98bを介して測定部フレーム96と接続されている。
【0055】
変位センサ99a,99bは、ワーク29の面29A,29Bの表面形状データを取得するためのものである。変位センサ99a,99bには、例えば、レーザ変位計、静電容量変位計、光ファイバ変位計等を用いることができる。センサ位置調整機構98a,98bは、ワーク29に対する変位センサ99a,99bのY,Y方向の位置を調整するためのものである。測定部95は、変位センサ99a,99bにより、ワーク29の両面29A,29Bの1直径方向の表面形状データを取得するためのものである。なお、本実施例の表面形状測定装置40は、変位センサ99a,99bにより得られた表面形状データに基づいて、コンピュータ120の演算処理により、ワーク29の厚さ(厚さ分布)、ワーク29のうねり、及びワーク29のナノトポグラフィを求める。
【0056】
図5に示すように、測定部95が配設された架台46部分に多くの支持脚47(本実施例の場合は4本)を設けることで、測定部95がしっかりと支持することができる。なお、架台46とは独立した別の架台を設けて、この別の架台上に測定部95を配設し、別の架台に複数の支持脚47を設けて測定部95を支持する構成としても良い。このような構成とすることにより、スライダ61が移動した際に発生する振動等が測定部95に伝達されることが抑制され、変位センサ99a,99bにより精度良く、ワーク29の面29A,29Bの表面形状データを取得することができる。
【0057】
スライダ駆動手段100は、大略すると駆動部101と、受動部110と、紐状部材であるワイヤ118とを有した構成とされている。駆動部101は、図3における架台46の右側端部近傍の面46A上に配設されている。駆動部101は、大略すると支持部材103A,103Bと、駆動装置である駆動モータ104と、回転軸105と、駆動側プーリ106とを有した構成とされている。支持部材103A,103Bは、架台46上に配設されている。駆動モータ104は、回転軸105を有しており、支持部材103Aにより支持されている。回転軸105は、支持部材103Aと支持部材103Bとを貫通するように設けられており、支持部材103Aと支持部材103Bとの間に位置する回転軸105には、駆動側プーリ106が回転軸105に貫通された状態で配設されている。駆動側プーリ106には、ワイヤ118のY,Y方向の位置規制を行うための溝107が形成されている。溝107の形状には、例えば、V字形状を用いることができる。駆動側プーリ106は、駆動モータ104が駆動した際、回転軸105と共に回転して、ワイヤ118をX,X方向に移動させる。
【0058】
受動部110は、図3における架台46の左側端部近傍の面46A上に配設されている。受動部110は、大略すると支持部材111A,111Bと、回転軸112と、受動側プーリ113とを有した構成とされている。支持部材111A,111Bは、架台46上に配設されている。受動側プーリ113は、支持部材111Aと支持部材111Bとの間に回転軸112に貫通された状態で配置されている。受動側プーリ113には、ワイヤ118のY,Y方向の位置規制を行うための溝114が形成されている。溝114の形状には、例えば、V字形状を用いることができる。受動側プーリ113は、回転軸112に回転可能に支持されている。
【0059】
ワイヤ118は、一方の端部が駆動側プーリ106と対向するワイヤ固定部材65と接続され、他方の端部が受動側プーリ113と対向するワイヤ固定部材65と接続されている。ワイヤ118は、駆動側プーリ106と受動側プーリ113との間を繋ぐと共に、2つのワイヤ固定部材65を結んだ直線上に位置するよう配置されている。また、スライダ部60の重心Bは、2つのワイヤ固定部材65を結んだ直線上に位置するよう構成されている(図3参照)。このような構成とすることにより、スライダ部60を高い運動精度で安定して移動させることができる。
【0060】
ワイヤ118は、駆動側プーリ106と受動側プーリ113とのそれぞれに対して2〜3回程度巻きつけられている。このように、駆動側プーリ106と受動側プーリ113とのそれぞれに対してワイヤ118を2〜3回程度巻きつけることにより、駆動側プーリ106及び受動側プーリ113とワイヤ118との間の摩擦係数を大きくして、駆動側プーリ106及び受動側プーリ113に対してワイヤ118を滑りにくくすることができる。ワイヤ118は、駆動モータ104の動力をスライダ部60に伝達させて、スライダ部60をX,X方向に移動させるための動力伝達手段である。
【0061】
上記説明したように、ガイドバー51と対向するスライダ本体64に複数の流体静圧パッド62,63を設けてガイドバー51に対してスライダ本体64を移動可能に支持すると共に、駆動モータ104の動力をX,X方向に配設されたワイヤ118を介して、スライダ部60に伝達させてスライダ部60をX,X方向に移動させることにより、スライダ部60の横振れを抑制することができる。これにより、変位センサ99a,99bが取得するワーク29の面29A,29Bに対応した表面形状データに、ガイドバー形状データ(ガイドバー51のガイド面52A,52Bのうねりや粗さ等の形状データ)が含まれることが抑制され、精度良くワーク29の面29A,29Bの表面形状データを取得することができ、1つの表面形状測定装置40でワーク29の厚さ、うねり、ナノトポグラフィを精度良く求めることができる。
【0062】
ここで、ワーク29のうねりやナノトポグラフィを求める際に悪影響を及ぼすガイドバー形状データの取得方法について説明する。ガイドバー形状データは、スライダ61上に基準となる平面(以下、基準平面とする)を有した基準平面部材を搭載し、面位置センサによりスライダ61を移動させた際の基準平面の位置を測定して基準平面位置データを取得し、この基準平面位置データの最小二乗近似直線の成分を除去することで求めることができる。なお、ワーク29の所定の直径方向の位置の測定を、ワーク29の計測面の表裏を反転させて2回計測し、それぞれの面の向きの時に変位センサ99a,99bにより求められた面29A,29Bの表面位置データの和の半分のデータから、それぞれの面の向きの時のワークの厚さの中心面位置データの和の半分のデータから、さらにそのデータの最小二乗近似直線の成分を除去したものをガイドバー形状データとして用いても良い。
【0063】
次に、図8及び図9を参照して、表面形状測定装置40によるワーク29の厚さの測定方法について説明する。図8及び図9は、表面形状測定装置によるワークの厚さの測定方法を説明するための図である。なお、図8及び図9において、図3に示した表面形状測定装置40と同一構成部分には同一の符号を付す。また、図8において、L1は変位センサ99aと変位センサ99bとの間の距離(以下、距離L1とする)、d1は変位センサ99aと厚さ基準ピース92との間の距離(以下、距離d1とする)、d2は変位センサ99bと厚さ基準ピース92との間の距離(以下、距離d2とする)、M1は厚さ基準ピース92の厚さ(以下、厚さM1とする)をそれぞれ示している。さらに、図9において、d3は変位センサ99aとワーク29の面29Aとの間の距離(以下、距離d3とする)、d4は変位センサ99bとワーク29の面29Bとの間の距離(以下、距離d4とする)、M2はワーク29の厚さ(以下、厚さM2とする)をそれぞれ示している。
【0064】
未知の厚さのワーク29の厚さM2を求める場合には、始めに、図8に示すように、厚さの分かっている厚さ基準ピース92(厚さM1)を変位センサ99aと変位センサ99bとの間に配置させて、距離d1と距離d2を求める。これにより、変位センサ99aと変位センサ99bとの間の距離L1(=d1+d2+M1)が分かる。
【0065】
続いて、図9に示すように、厚さを測定したいワーク29を変位センサ99aと変位センサ99bとの間に配置させて、距離d3と距離d4を求める。図8及び図9に示した状態において、変位センサ99aと変位センサ99bとの間の距離L1は、一定の値となるよう予め設定されているので、ワーク29の厚さM2は、下記(1)式により求めることができる。
【0066】
M2=(d1+d2+M1)−(d3+d4)・・・(1)
ワーク29の厚さ分布は、例えば、ワーク29厚さの平均、ワーク29の中心厚さ、最も厚い部分と最も薄い部分の差について評価される。
【0067】
なお、ワーク29の厚さM2を求める際の上記演算処理は、コンピュータ120で行われる。また、ガイドバー51の微細な凹凸やうねり等を含んだガイド面52A,52Bの形状がワーク29の厚さに及ぼす影響は小さいので、上記ワーク29の厚さを求める際には、ガイドバー51のガイド面52A,52Bの形状は考慮していない。
【0068】
次に、表面形状測定装置40によるワーク29のうねりの測定方法について説明する。うねりは、ワーク29の表面(半導体デバイスの製造工程において、パターンが形成される側のワーク29の面)の表面形状データからガイドバー形状データの成分を除去し、ガイドバー形状データの成分が除去された表面形状データに対して、最小二乗近似直線の成分を除去することでうねりに関するデータを求めることができる。うねりは、例えば、うねりに関するデータの最大値と最小値との差や、ワーク29の中心位置の値を基準とした際のうねり分布について評価される。
【0069】
次に、表面形状測定装置40によるワーク29のナノトポグラフィの測定方法について説明する。始めに、図10を参照して、ナノトポグラフィを求める際に必要な表面形状データの外挿処理及びフィルタ処理について説明する。図10は、ナノトポグラフィを求める際のフローチャートを示した図である。
【0070】
図10に示した処理が起動すると、STEP141において、測定装置本体45を用いてワーク29の面29A,29Bのそれぞれの中心を通る1軸方向に対して測定を行い、コンピュータ120に、ワーク29の面29A,29Bに関する表面形状データが記憶される。
【0071】
ここで、表面形状データについて説明する。図11は、表面形状データの一部分を示した図であり、図12は、図11に示した表面形状データからガイドバー形状データを除去した第1のデータに関する成分を示した図であり、図13は、図12に示した第1のデータに含まれる粗さに関する成分を示した図であり、図14は、図12に示した第1のデータに含まれるうねり成分とナノトポグラフィの成分とを示した図である。なお、図13及び図14は、うねり、粗さ及びナノトポグラフィについて説明するための図である。
【0072】
図11に示した表面形状データである波形Iには、ガイドバー形状、粗さ、うねり及びナノトポグラフィに関する成分が含まれている。図12に示した波形Jは、図11に示した表面形状データからガイドバー形状データ(ガイドバー形状に対応する成分)を除去した第1のデータである。この第1のデータである波形Jには、粗さ、うねり及びナノトポグラフィに関する成分が含まれている。
【0073】
図13に示した波形Kは、図12に示した第1のデータから粗さに対応する成分を取り出したものである。図14に示した波形Lは、図12に示した第1のデータからうねり及びナノトポグラフィに対応する成分を取り出したものである。図14に示した範囲T1,T2は、うねりとナノトポグラフィの両方の成分が存在している部分の波形Lを示しており、範囲T1,T2以外に対応した波形Lは、うねりに対応する成分を示している。
【0074】
また、図12に示した波形Jは、波形Kと波形Lとを合わせたものであり、波形Lからうねりの成分を除去することでナノトポグラフィに対応する成分を取り出すことができる。本実施例では、表面形状データからガイドバー形状データ(ガイドバー形状に対応する成分)を除去して第1のデータを取得後、フィルタ処理により第1のデータ(表面形状データからガイドバー形状データが除去されたデータ)からうねりに対応する成分を除去し、続いて、粗さに対応する成分を除去して、ナノトポグラフィに対応する成分を取り出す場合を例に挙げて以下の説明を行う。
【0075】
次に、STEP142の処理において、コンピュータ120により表面形状データに含まれるガイドバー形状データの除去を行って、第1のデータを取得する。続いて、STEP143の処理において、コンピュータ120により第1のデータの外挿処理を行う。ここで、図15乃至図17を参照して、外挿処理について説明を行う。
【0076】
図15は、ワークの直径方向の第1のデータの波形を示した図であり、図16は、図15に示した第1のデータをカットオフ波長が20mmのハイパスフィルタ処理した際の波形を示した図であり、図17は、図15に示した第1のデータに対して外挿データを結合させた結合データの波形を示した図である。なお、図15において、Rはワークの直径(以下、直径Rとする)、Hは表面形状測定装置を用いて測定した表面形状データの波形(以下、波形Hとする)、Uは波形Hの基準面からの高さ(以下、高さUとする)をそれぞれ示しており、高さUは数μm〜数10μmである。また、図16において、Fはハイパスフィルタ処理によるエッジ効果が発生している範囲(測定端〜20mmの範囲)、Sは波形がエッジ効果により波形が下がっている部分の波形(以下、波形Sとする)、Vはフィルタ処理後の波形の基準面からの高さ(以下、高さVとする)、Wはフィルタ処理後の波形Sに対応した部分の高さ(以下、高さWとする)をそれぞれ示しており、高さVは数10nm〜数100nm、高さWは数100nm〜数μmである。さらに、図17において、Oは結合データの波形(以下、波形Oとする)を示しており、F1は外挿データが結合された範囲(以下、範囲F1とする)を示しており、FとF1の範囲の大きさはF≦F1である。
【0077】
図15に示すような第1のデータの波形Hに対して、カットオフ波長が20mmのハイパスフィルタ処理を行った場合には、図16に示すように、ワーク29の測定端からフィルタのカットオフ波長20mmの範囲Fにおいて、エッジ効果(波形Sの部分)が発生する。このエッジ効果が存在したデータでは、ワーク29の測定端〜20mmの範囲のナノトポグラフィを評価することができないため、図17に示すように、あらかじめ第1のデータに外挿データ(範囲F1に示したデータ)を結合させて結合データを作成する。
【0078】
なお、外挿データの形成方法は、例えば、表面形状データの基本空間波長をワーク29の直径Rとするフーリエ級数から形成する方法を用いて良い。この場合の基本空間波長は、ワーク29の直径Rの2倍の値が好ましい。外挿データの形成方法は、図15乃至図17で説明したような外挿データが形成できれば良くこれに限定されるものではない。
【0079】
このように、第1のデータと外挿データとを結合させた結合データを作成することにより、ワーク29の外周近傍に近い範囲Fのナノトポグラフィの評価を行うことができる。
【0080】
次に、STEP144の処理において、コンピュータ120は、結合データに対してカットオフ波長が20mmのハイパスフィルタ処理を行い、第2のデータが取得される。
【0081】
ここで、ハイパスフィルタ及びハイパスフィルタ処理について説明する。図18は、第2のデータの波形を示した図である。ハイパスフィルタは、ダブルガウシャンフィルタと2次アナログフィルタベースのIIRフィルタとにより設計されている。ハイパスフィルタには、カットオフ波長が20〜50mmのものを目的に応じて用いることができる。
【0082】
結合データをハイパスフィルタ処理することにより、結合データに含まれるうねりに関する成分が除去され、粗さの成分とナノトポグラフィの成分とを含んだ第2のデータが取得されて、図18に示すような波形Nを得ることができる。範囲P1,P2に対応した波形Nには、粗さの成分とナノトポグラフィの成分とが含まれており、範囲P1,P2以外の波形Nには、粗さの成分が存在している。なお、ハイパスフィルタと同様な性能を有するカットオフ波長が20〜50mmのバンドパスフィルタを用いても良い。
【0083】
続いて、STEP145の処理において、第2のデータに対してカットオフ波長が0.2mmのロウパスフィルタ処理を行うことで、第3のデータが取得される。
【0084】
ここで、ロウパスフィルタ及びロウパスフィルタ処理について説明する。図19は、第2のデータをハイパスフィルタ処理した際の波形を示した図である。ロウパスフィルタは、ダブルガウシャンフィルタ、2次アナログフィルタベースのIIRフィルタ及び周波数特定近似FIRフィルタにより設計されている。図19は、第3のデータの波形を示した図である。ロウパスフィルタには、カットオフ波長が0.2〜20mmの範囲ものを目的に応じて用いることができる。粗さの成分とナノトポグラフィの成分とを含んだ第2のデータをロウパスフィルタ処理することにより、第2のデータに含まれる粗さの成分が除去されて、ナノトポグラフィの成分である第3のデータが取得され、図19に示すような波形Qを得ることができる。波形Qの範囲Z1,Z2がナノトポグラフィを示している。
【0085】
さらに、ロウパスフィルタに研磨工程において除去できる粗さの成分を設定することも可能である。次に、この場合のロウパスフィルタの設計方法について説明する。始めに、研磨加工前後のワーク29の表面形状の測定を行い、2つの表面形状データを取得する。次に、2つの表面形状データからガイドバー形状データを除去し、2つの第1のデータをフーリエ変換して、それぞれの空間波長の増幅度成分を比較する。ここで、研磨加工後の表面形状データにおいて減衰している波長成分が、研磨工程で除去可能な粗さ成分である。
【0086】
このようにして得られた空間周波数毎の伝達特性を近似する周波数特性近似フィルタを設計してロウパスフィルタに適用することで、研磨加工を行うこと無く、研磨加工後のワーク29の面29A,29Bに残るナノトポグラフィを評価することができる。また、研磨工程で問題となる種類のナノトポグラフィを、研削工程の段階で把握することができ、研削加工条件等を最適化してナノトポグラフィを改善することが可能である。なお、研磨工程における粗さ成分の除去性能は、研磨布の弾性係数、スラリー濃度、主軸回転数、加工圧力等の研磨加工パラメータに依存する。したがって、上記研磨加工パラメータについて十分な評価を行い、周波数特性近似フィルタを作成することで、より高精度なナノトポグラフィの評価を行うことができる。なお、ナノトポグラフィを評価する際には、評価パラメータとして、1mm毎、2mm毎、5mm毎、10mm毎のいずれかで区切った範囲内でのPV(Peak to Valley(Max−Min))値の最大値や、ワーク29の中央部とワーク29の外周部とに区切った中でのPV値を用いることができる。
【0087】
STEP146では、先に説明した図19に示すように、表面形状データからうねり及び粗さ成分が除去されたナノトポグラフィに対応した成分が出力される。
【0088】
このように、うねり、粗さ及びナノトポグラフィに対応する成分が含まれた表面形状データからガイドバー形状データを除去して第1のデータを取得し、その後、ハイパスフィルタとロウパスフィルタとを組み合わせたフィルタ処理を第1のデータに対して行うことにより、第1のデータからナノトポグラフィに対応した成分を取り出すことができ、ナノトポグラフィの評価を行うことができる。
【0089】
なお、本実施例においては、STEP144ではハイパスフィルタによるハイパスフィルタ処理を行い、STEP145ではロウパスフィルタによるロウパスフィルタ処理を行なったが、バンドパスフィルタを用いてSTEP144とSTEP145のフィルタ処理を同時に行った場合においても、本実施例と同様に第1のデータからナノトポグラフィに対応した成分を取り出すことができ、ナノトポグラフィの評価を行うことができる。本実施例では、ナノトポグラフィの測定方法を、両頭研削装置20により研削加工した被測定部材を用いて説明したが、本発明による表面形状の測定方法は、両頭研削装置20以外の研削装置、研磨装置及び成膜等の加工装置で加工された被測定部材のナノトポグラフィの測定にも適用できる。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。なお、本実施例では、スライダ61にワーク保持器90を設け、測定部フレーム96に変位センサ99a,99bを設けた構成としたが、ワーク保持器側を固定し、測定部側をスライダ上に配置した構成としても良い。また、本実施例においては、紐状部材であるワイヤ118を用いた場合を例に挙げて説明したが、ワイヤ118の代わりに、帯状部材である平ベルトを用いても本実施例と同様な効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、ガイドバーの形状が被測定部材の表面形状データに及ぼす影響を小さくして、被測定部材の厚さ、うねり、ナノトポグラフィを精度良く測定することのできる表面形状測定装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】両頭研削装置の概略図である。
【図2】研削加工時のカップ型砥石とワークの位置関係を示した図である。
【図3】本発明の一実施例である表面形状測定装置の概略図である。
【図4】図3に示した測定装置本体の平面図である。
【図5】図3に示した測定装置本体をC視した図である。
【図6】本実施例のスライダの移動軌跡を示した図である。
【図7】ワイヤ固定部材の概略図である。
【図8】表面形状測定装置によるワークの厚さの測定方法を説明するための図(その1)である。
【図9】表面形状測定装置によるワークの厚さの測定方法を説明するための図(その2)である。
【図10】ナノトポグラフィを求める際のフローチャートを示した図である。
【図11】表面形状データの一部分を示した図である。
【図12】図11に示した表面形状データからガイドバー形状データを除去した第1のデータに関する成分を示した図である。
【図13】図12に示した第1のデータに含まれる粗さに関する成分を示した図である。
【図14】図12に示した第1のデータに含まれるうねり成分とナノトポグラフィの成分とを示した図である。
【図15】ワークの直径方向の第1のデータの波形を示した図である。
【図16】図15に示した第1のデータをカットオフ波長が20mmのハイパスフィルタ処理した際の波形を示した図である。
【図17】図15に示した第1のデータに対して外挿データを結合させた結合データの波形を示した図である。
【図18】第2のデータの波形を示した図である。
【図19】第2のデータをハイパスフィルタ処理した際の波形を示した図である。
【符号の説明】
【0093】
20 両頭研削装置
21a,21b 研削主軸
22a,22b カップ型砥石
23a,23b 研削動作面
25a,25b サドル
26 架台
28a,28b 研削主軸回転移動手段
29 ワーク
29A,29B,46A,46B 面
40 表面形状測定装置
45 測定装置本体
46 架台
46A 上面
46B 下面
47 支持脚
51 ガイドバー
51A 上面
52A,52B ガイド面
53 空間
55 隙間
60 スライダ部
61,131 スライダ
62,63 流体静圧パッド
64 スライダ本体
65 ワイヤ固定部材
66 ワイヤ固定部
67 ネジ部
68 貫通穴
70 下部ワーク支持ユニット
71 板体
72 ワーク支持機構
74 ローラ
74A,86A,107,114 溝
73 支持部
76 ローラ位置調整機構
81,103A,103B,111A,111B 支持部材
82 上部ワーク支持ユニット
83 回転支持部
84 アーム
86 ローラ
90 ワーク保持器
91 ピース支持部材
92 厚さ基準ピース
95 測定部
96 測定部フレーム
98a,98b センサ位置調整機構
99a,99b 変位センサ
100 スライダ駆動手段
100 スライダ駆動手段
101 駆動部
104 駆動モータ
105,112 回転軸
106 駆動側プーリ
110 受動部
113 受動側プーリ
118 ワイヤ
120 コンピュータ
123 記録媒体読み取り部
125 記録媒体
A 中心
B 重心
D 方向
E 移動軌跡
F,F1,T1,T2,P1,P2,Z1,Z2 範囲
J〜L,H,N,O,Q 波形
L1,d1〜d4 距離
M1,M2 厚さ
R 直径
U,V,W 高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定部材を保持する被測定部材保持器、又は前記被測定部材の表面形状を測定する一対のセンサのどちらか一方を備えた移動体と、
該移動体を案内するガイドバーと、
前記移動体と前記ガイドバーとの間に設けられ、前記移動体を前記ガイドバーに対して移動可能に支持する支持部材と、
前記ガイドバーの長手方向に延在すると共に、前記移動体と接続された紐状部材又は帯状部材と、
前記紐状部材又は帯状部材を介して、前記移動体を前記ガイドバーの長手方向に移動させる駆動装置とを備えたことを特徴とする表面形状測定装置。
【請求項2】
前記支持部材には、複数の流体静圧パッドを用いることを特徴とする請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項3】
前記被測定部材保持器は、前記被測定部材を立てた状態で直接支持する3つの支持体を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の表面形状測定装置。
【請求項4】
前記3つの支持体には、前記被測定部材の端面を支持する溝を設けたことを特徴とする請求項3に記載の表面形状測定装置。
【請求項5】
前記3つの支持体のうち2つの支持体には、前記ガイドバーの長手方向と直交する方向に対して前記支持体の位置を調整する位置調整機構を設けたことを特徴とする請求項3または4に記載の表面形状測定装置。
【請求項6】
前記被測定部材保持器は、1つの前記支持体を備えた第1の被測定部材支持ユニットと、2つの前記支持体を備えた第2の被測定部材支持ユニットとを有し、
前記第2の被測定部材支持ユニットは、着脱可能な構成とされていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の表面形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−105919(P2006−105919A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296493(P2004−296493)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】