説明

表面形状転写樹脂シートの製造方法およびその製造装置

【課題】転写型の表面形状を精度よく、速やかに転写して、表面形状転写樹脂シートを製造し得る方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法は、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、連続樹脂シートを第一押圧ロールと第二押圧ロールとで挟み込む第一押圧工程と、第二押圧ロールに密着させたまま連続樹脂シートを搬送する搬送工程と、搬送された連続樹脂シートを第二押圧ロールと第三押圧ロールとで挟み込む第二押圧工程とを含み、第三押圧ロールは、その表面に転写型を備え、該転写型は、複数の凹部からなり、前記凹部のピッチ間隔は50μm〜500μmであり、前記凹部の溝深さは3μm〜500μmであり、連続シートは、第二押圧工程において第三押圧ロール表面に備えた転写型が転写されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状転写樹脂シートの製造方法および製造装置に関し、詳しくは転写型の表面形状が転写された樹脂シートの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に形状を有する樹脂シート(表面形状転写樹脂シート)を製造する方法として、押出機を用いて、樹脂を加熱溶融状態でダイから押し出して得られる連続した樹脂シート(連続樹脂シート)に転写型の表面形状を転写する方法が知られている(たとえば、特許文献1)。押出機を用いた方法では、図4に示すように、ダイ4から連続的に押し出された連続樹脂シート2は、第一押圧ロール5aと第二押圧ロール5bとの間に挟み込まれ、第二押圧ロール5bの表面に沿って搬送し、第二押圧ロール5bと第三押圧ロール5cとの間に挟み込まれる。ここで、特許文献1においては、第二押圧ロール5bに転写型が設けられており、第一押圧ロール5aと転写型が設けられた第二押圧ロール5bとの間に連続樹脂シート2を挟み込むことにより、転写型の表面形状が連続樹脂シート2に転写され、表面形状転写樹脂シートを得る方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、このような従来の製造方法では、転写型の表面形状を精度よく連続樹脂シートに転写するためは、転写速度を遅くする必要があり、必ずしも生産性のよい方法であるとは言えなかった。
【特許文献1】特開平9−11328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、転写型の表面形状を精度よく、速やかに転写して、効率よく表面形状転写樹脂シートを製造し得る方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、転写型の表面形状および転写位置を特定のものとすることにより、転写型の表面形状を精度よく、速やかに転写することができることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、連続樹脂シートを第一押圧ロールと第二押圧ロールとで挟み込む第一押圧工程と、第二押圧ロールに密着させたまま連続樹脂シートを搬送する搬送工程と、搬送された連続樹脂シートを第二押圧ロールと第三押圧ロールとで挟み込む第二押圧工程とを含む表面に形状を有する表面形状転写樹脂シートの製造方法であって、第三押圧ロールは、その表面に転写型を備え、該転写型は、複数の凹部からなり、前記凹部のピッチ間隔は50μm〜500μmであり、前記凹部の溝深さは3μm〜500μmであり、連続樹脂シートは、第二押圧工程において第三押圧ロール表面に備えた転写型が転写されることを特徴とする表面形状転写樹脂シートの製造方法に関する。
【0007】
上記凹部は、その断面形状が略半円形状であることが好ましい。また、上記凹部は、その断面形状が三角形であり、該三角形の頂角が40°〜160°である形状とすることができる。
【0008】
また、本発明は、加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するダイと、押圧ロールと、前記連続樹脂シートを該押圧ロールとの間に挟み込むことにより表面形状を前記連続樹脂シートに転写する転写ロールとを含む表面形状転写樹脂シートの製造装置であって、上記転写ロールは、その表面に複数の凹部が形成され、凹部のピッチ間隔が50μm〜500μmであり、凹部の溝深さHが3μm〜500μmである表面形状転写樹脂シートの製造装置に関する。
【0009】
上記製造装置において凹部は、その断面形状が略半円形状であることが好ましい。また、上記凹部は、その断面形状が三角形であり、該三角形の頂角が40°〜160°である形状とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法および製造装置によれば、転写型の表面形状を精度よく、速やかに転写して、生産性よく、目的の表面形状転写樹脂シートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の製造方法および製造装置についてさらに詳細に説明する。なお、以下の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
【0012】
<表面形状転写樹脂シートの製造装置>
本発明の製造装置は、加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出して連続樹脂シートを得るダイと、押圧ロールと、上記連続樹脂シートをこの押圧ロールとの間に挟み込むことにより表面形状を前上記連続樹脂シートに転写する転写ロールとを備えたものである。図2に、本発明の表面形状転写樹脂シートの製造装置の一例を模式的に示す。図2に示す装置は、加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出して連続樹脂シート2を得るダイ4と、押圧ロール5とを備える。押圧ロール5は、連続樹脂シートを押圧するための第一押圧ロール5aと、第二押圧ロール5bと、第三押圧ロール5cとからなり、第三押圧ロール5cの表面に転写型6を備え、上記連続樹脂シート2を、第二押圧ロール5bと転写型6を備えた第三押圧ロール5cとに挟み込むことにより、所望の表面形状を連続樹脂シート2に転写することができる。
【0013】
なお、上記押圧ロール5の他に、本発明に技術上無関係なロールを設けてもよい。このようなロールは連続樹脂シートに接するものであり、たとえば、連続樹脂シートを第一押圧ロールに搬送するためのガイドロール(タッチロール)や、連続樹脂シートを第二押圧ロールに密着させておくためのタッチロールを挙げることができる。
【0014】
<表面形状転写樹脂シートの製造方法>
本発明の表面形状転写樹脂シートの製造方法は、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、連続樹脂シートを第一押圧ロールと第二押圧ロールとで挟み込む第一押圧工程と、第二押圧ロールに密着させたまま連続樹脂シートを搬送する搬送工程と、搬送された連続樹脂シートを第二押圧ロールと第三押圧ロールとで挟み込む第二押圧工程とを含む。
【0015】
<シート製造工程>
シート製造工程は、樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造する。
【0016】
本発明の製造方法に用いられる樹脂としては、通常は、加熱されることにより溶融状態となる熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、たとえばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂などが挙げられる。なお、本発明の製造方法に適用できる範囲で、加熱されることにより硬化する熱硬化性樹脂であってもよい。
【0017】
上記樹脂は、光拡散剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0018】
上記光拡散剤は、無機系光拡散剤であってもよいし、有機系光拡散剤であってもよい。
無機系光拡散剤としては、たとえば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、無機ガラス、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などのような無機化合物の粒子が挙げられる。無機系光拡散剤は、脂肪酸などの表面処理剤により表面処理されていてもよい。
【0019】
また、有機系光拡散剤としては、たとえばスチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などのような有機化合物の粒子が挙げられる。
【0020】
光拡散剤を添加する場合、添加される光拡散剤の屈折率と樹脂の屈折率との差の絶対値は、光拡散の効果の点で、通常0.02以上であり、得られる表面形状転写樹脂シートの光透過性の点で、通常は0.13以下である。このように樹脂に光拡散剤を添加した場合、得られる表面形状転写樹脂シートは、光拡散板として使用することができる。
【0021】
上記樹脂を加熱溶融状態で連続的に押し出すダイとしては、通常の押出成形法に用いられると同様の金属製のTダイなどが用いられる。ダイから樹脂を加熱溶融状態で押し出すには、通常の押出成形法と同様に、押出機が用いられる。押出機は一軸押出機であってもよいし、二軸押出機であってもよい。樹脂は押出機内で加熱され、溶融された状態でダイに送られ、押し出される。ダイから押し出された樹脂は、連続的にシート状となって押し出され、連続樹脂シートとなる。
【0022】
連続樹脂シートの厚みは、得られたシートの用途に応じて適宜調整すればよく、たとえば、光拡散板として用いる場合は1.0mm〜3.0mmとすればよい。
【0023】
上記連続樹脂シートは、単層でもよいし2以上の層としてもよい。連続樹脂シートが単層の場合は、ダイから樹脂を加熱溶融状態で押し出す際にダイに1種の樹脂を供給し押し出しをすればよく、2以上の層の場合は、2種以上の樹脂をダイに供給し、積層した状態で共押し出しをしてもよい。なお、2種以上の樹脂を積層した状態で共押し出しをするには、たとえば、公知の2種3層分配型フィードブロックを用い、これを経由してダイに樹脂を供給すればよい。
【0024】
<第一押圧工程>
上記シート製造工程で得られた連続樹脂シートは、第一押圧工程により、図2に示すように、第一押圧ロール5aと第二押圧ロール5bとで同時に挟み込まれる。第一押圧ロールと、第二押圧ロールとして通常はステンレス鋼、鉄鋼などの金属で構成された金属製ロールが用いられ、その直径は通常100mm〜500mmである。これらの第一および第二押圧ロールとして金属製ロールを用いる場合、その表面は、たとえばクロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理が施されていてもよい。また、押圧ロールの表面は、鏡面であってもよいし、精度よく転写する必要がなければ、エンボスなどの凹凸が施された転写面となっていてもよい。
【0025】
<搬送工程>
搬送工程は、連続樹脂シートを第二押圧ロールに密着した状態で、第二押圧ロールの回転に従って搬送する工程である。
【0026】
連続樹脂シートは、上記第一押圧工程および搬送工程において、押圧ロールに接することによる冷却や、外気との接触による冷却によって、ダイから押し出された加熱溶融状態よりも温度が低下する。このように加熱溶融状態よりも温度が低下した状態で、連続樹脂シートは搬送され、次の第二押圧工程に供される。なお、押圧ロールは、温度調節機能を備え、所望の温度に調節可能であることが望ましい。
【0027】
<第二押圧工程>
第二押圧工程では、上記搬送された連続樹脂シートは、図2に示されるように、第二押圧ロール5bと第三押圧ロール5cとに挟み込まれ押圧される。この第二押圧工程において、連続樹脂シート2には、第三押圧ロール5c表面に備えられた転写型6が転写される。なお、本発明においては、転写型を備えた第三押圧ロールを転写ロールともいう。上記転写ロール表面に備えられた転写型は、連続樹脂シートの表面に押し当てられ、その表面形状を逆型として連続樹脂シートに転写するものである。
【0028】
上記連続樹脂シートは、この第二押圧工程において、第二押圧ロールと転写ロールとで再度押圧され、第二押圧ロールから剥離し、転写ロールに密着し、今度は転写ロールの回転に従って搬送される。その際、連続樹脂シートの表面温度が高く、第二押圧ロールと転写ロールとで押圧せずとも、連続樹脂シートが十分に転写ロールに密着する場合は、第二押圧ロールと転写ロールとの間は連続樹脂シートの厚さよりも若干大きく開いていてもよい。
【0029】
上記転写型は、転写ロール表面に設けられた複数の凹部からなり、凹部のピッチ間隔は、転写型の作製が容易であることから通常10μm以上、好ましくは50μm以上であるが、本発明の製造方法および製造装置においては、凹部のピッチ間隔が200μm〜500μmである場合に好適であり、凹部の溝深さが3μm〜500μmである。図1に、転写型表面の一例を示す。図1に示すように、複数の凹部は、通常間隔dをあけて平行に設けられる。凹部のピッチ間隔(P)とは、隣接する凹部の溝部間の距離をいい、凹部の溝深さ(H)とは、転写ロール表面円周上から凹部の溝部までの距離をいう。
【0030】
上記転写型の形状としては、図1に示すような略半円形状である略半円凹部(略半円凹み)の溝を例示することができる。隣接する略半円凹部のピッチ間隔(P)は、転写ロールの作製が容易である点で、通常10μm以上、好ましくは50μm以上であり、本発明の製造方法は、ピッチ間隔(P)が200μm〜500μmの範囲において好適である。また、上記略半円凹部の溝深さ(H)は、3μm〜500μmの範囲において、本発明の製造方法に好適である。ここで転写型におけるピッチ間隔(P)および溝深さ(H)は、転写型全体で必ずしも一定ではなく、隣接する凹部間で異なる場合も含まれる。また、略半円とは、図1に示すように、断面が半円弧状である形状に限定されるものではなく、たとえば図3に示すように、円柱体をその軸線に平行であって、該軸線を含まない平面で切断した場合の断面のいずれかの弧状である形状であってもよいし、或いは断面が半楕円弧状や、該半楕円弧状の一部である扁平湾曲状等の形状であってもよい。上記「略半円凹部」とは、このような略半円形状の断面の凹部をも含むものとする。
【0031】
上記転写ロール表面に備えられた転写型の形状としては、断面形状が略半円形状である溝に限らず、たとえば多数のV字溝(V字凹み)が転写ロールの円周上に平行に設けられた形状が挙げられる。この場合の断面形状は三角形となる。V字溝(三角形)の頂角は通常160°以下であり、作製が容易である点で通常は40°以上である。V字溝(三角形)のピッチ間隔(P)は、転写ロールの作製が容易である点で、通常10μm以上、好ましくは50μm以上であるが、本発明の製造方法は、ピッチ間隔(P)が200μm〜500μmの範囲において好適である。
【0032】
上記転写型の作製方法としては、上記ステンレス鋼、鉄鋼などからなる転写ロールの表面に、たとえばクロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施した後に、そのメッキ面に対してダイヤモンドバイトや金属砥石等を用いた除去加工や、レーザー加工や、またはケミカルエッチングを行ない、形状を加工することがあるが、これらの手法に特に限定されるものではない。
【0033】
また、転写ロールの表面は、上記転写型を形成した後に、たとえば表面形状の精度を損なわないレベルで、クロムメッキ、銅メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル−リンメッキなどのメッキ処理を施してもよい。
【0034】
上記第二押圧工程において転写ロールの表面形状(転写型)を連続樹脂シートに転写することにより、目的の表面形状転写樹脂シートを製造することができる。得られた表面形状転写樹脂シートは通常、さらに冷却されたのち枚葉に切断されて、たとえば液晶表示装置を構成するプリズムシートなどとして用いられる。また、樹脂として光拡散剤が添加されたものを用いた場合には、表面に形状が転写された光拡散板として好適に用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
<原材料>
透光性樹脂R1:スチレン樹脂(東洋スチレン製「HRM40」、屈折率1.59)
透光性樹脂R2:MS樹脂(新日鐵化学性「MS200NT」、屈折率1.57、スチレン/メタクリル酸メチル=80質量部/20質量部)
結晶性樹脂C1:プロピレン−エチレンランダム共重合樹脂(住友化学(株)製、「FSX20L8」、プロピレン単位含有量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%以下)
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2’−メチレンビス[6−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(ADEKA社製、「アデカスタブLA31」)
光安定剤:ヒンダードアミン系光安定剤、(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、「Tinuvin XT 855FF」)
造核剤:有機リン酸塩系造核剤;リン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム(ADEKA社製、「アデカスタブNA11」)
酸化防止剤:リン系酸化防止剤;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、「Irg168」)
<マスターバッチ>
表層マスターバッチMA:結晶性樹脂C1 98.7質量部、紫外線吸収剤(LA31)0.5質量部、光安定剤(Tinuvin XT 855FF)0.5質量部、造核剤(アデカスタブNA11)0.1質量部、酸化防止剤(Irg168)0.2質量部をドライブレンドしてブレンド物を得た。このブレンド物を65mm2軸押出機のホッパーに投入し、225℃〜260℃のシリンダー内で溶融混合した後、ストランド状に押出してペレット化させて、ペレット状の表層マスターバッチMAを得た。
【0037】
中間層マスターバッチMB:結晶性樹脂C1 94.0質量部、造核剤(アデカスタブNA11)2.0質量部、酸化防止剤(Irg168)4.0質量部をドライブレンドしてブレンド物を得た。このブレンド物を65mm2軸押出機のホッパーに投入し、225℃〜260℃のシリンダー内で溶融混合した後、ストランド状に押出してペレット化させて、ペレット状の中間層マスターバッチMBを得た。
【0038】
<転写型>
転写型として、表1に記載した形状を有する半円凹みの溝A〜D、または表3に記載した形状を有するV字凹みの溝E〜Hを用いた。
【0039】
下記表1において、P、d、Hは、図1に示す転写型に施されている半円凹みの溝のレプリカの断面形状の各距離を示し、「ピッチ間隔P」は隣接する凹部の溝部間距離、「平坦部の幅d」は隣接する凹部間の平坦部の幅、「溝深さH」は転写型表面円周上と溝部との間の距離を示す。また、「アスペクト比A」は溝深さHとピッチ間隔Pとの比率とH/Pである。各半円凹みの溝A〜Dは、シリンドリカルレンズ(円柱レンズ)形状であり、各溝部が平行に等間隔(ピッチ間隔P)で構成されている。なお、図3に示すように、シリンドリカルレンズ8とは、少なくとも、一つの面が、円柱の一部のような形をしたレンズであり、たとえば、円柱を軸方向に二つに割った形状をいう。
【0040】
下記表3において、P、H、Θは、図5に示す転写型に施されているV字凹みの溝のレプリカの断面形状の各距離または角度を示し、「ピッチ間隔P」は隣接する凹部の溝部間距離、「溝深さH」は凹部の頂角までの垂直距離、「Θ」はV字凹みの頂点の角度(頂角)を示す。各V字凹みの溝E〜Hはプリズムレンズ(角柱レンズ)形状であり、図5に示すように各溝部が平行に等間隔(ピッチ間隔P)で構成されている。図5に示されるレプリカは、得られるシートの形状の反転形状である。
【0041】
また、表2および表4には、各実施例および比較例の製造条件および得られた表面形状転写樹脂シートの形状転写率T(%)を示す。形状転写率T(%)は、以下の式(1)で定義する。式(1)において、成形シートの断面形状の凹部溝深さは、得られた表面形状転写樹脂シートの凹部の最大溝深さの実測値である。
形状転写率T(%)=成形シートの断面形状の凹部溝深さ/レプリカの断面形状の凹部溝深さH×100・・・(1)
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
(実施例1)
透光性樹脂R1をシリンダー内の温度が190℃〜250℃の第1押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。一方、透光性樹脂R2をシリンダー内の温度が190℃〜250℃の第2押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。
【0047】
上記第1押出機からフィードブロックに供給される透光性樹脂R1が主層となり、上記第2押出機からフィードブロックに供給される透光性樹脂R2が表層(主層の両面)となるように押出樹脂温度250℃で共押出成形を行ない、図2に示す押圧ロール5で押圧と冷却を行なうことによって、厚さ2.0mmの3層の積層板からなる表面形状転写樹脂シート(1)を作製した。
【0048】
表面形状転写樹脂シート(1)の製造において、押出機より吐出された連続樹脂シートを押圧するために、該シートの上側に第一押圧ロール5a、下側に第二押圧ロール5bを配置した。第一押圧ロール5aと第二押圧ロール5bとにより押圧された後、第二押圧ロール5b表面に密着して搬送され、その際に冷却される。
【0049】
その後に第二押圧ロール5bと表面に転写型6が備えられた第三押圧ロール5c(転写ロール)とで押圧される。転写ロールには転写型として、表1に示す略半円凹みの溝Aが形成されており、上記第二押圧ロール5bと第三押圧ロール5cとの押圧の際に、連続樹脂シート(1)の表層の上面側に、略半円凹みの溝Aの反対型が転写され、表面形状転写樹脂シート(1)を得ることができる。
【0050】
上記製造時に各ロール表面の温度は、第一押圧ロール5aが70℃であり、第二押圧ロール5bが88℃、第三押圧ロール5c(転写ロール)が94℃となるよう調整した。
【0051】
実施例1において得られた表面形状転写樹脂シート(1)に転写された形状の形状転写率Tは、90.4%であった。
【0052】
(実施例2)
押圧ロールの押圧を調整して連続樹脂シートの厚さを1.5mmとする以外は、実施例1と同様にして、3層の積層板からなる連続樹脂シート(2)を得た。その際、第三押圧ロール5c(転写ロール)には、ロール表面の円周上に略半円凹みの溝Aが形成されており、連続樹脂シート(2)の表層の上面側に、略半円凹みの溝Aの反対型が転写され、表面形状転写樹脂シート(2)を得ることができる。
【0053】
実施例2において得られた表面形状転写樹脂シート(2)に転写された形状の形状転写率Tは、96.1%であった。
【0054】
(実施例3)
透光性樹脂R1をシリンダー内の温度が190℃〜250℃の第3押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。一方、透光性樹脂R2をシリンダー内の温度が190℃〜250℃の第4押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。
【0055】
上記第3押出機からフィードブロックに供給される透光性樹脂R1が主層となり、上記第4押出機からフィードブロックに供給される透光性樹脂R2が表層(主層の両面)となるように押出樹脂温度250℃で共押出成形を行ない、押圧ロールで押圧と冷却を行なうことによって、厚さ2.0mmの3層の積層板からなる連続樹脂シート(3)を製造した。
【0056】
また、上記製造時に押圧ロールを3本使用したが、押出機より吐出された連続樹脂シートを押圧するために、上側に第一押圧ロール、下側に第二押圧ロールを配置した。さらに、連続樹脂シート(3)は、第二押圧ロールに密着して搬送されている際に冷却され、その後に第三押圧ロール(転写ロール)に密着して搬送され、その後に第四押圧ロールへと引取られる。その際、第二押圧ロールと転写ロール、および転写ロールと第四押圧ロールとの間では、連続樹脂シートは押圧されず、隙間が空いているものとする。
【0057】
上記転写ロールには、ロール表面の円周上に略半円凹みの溝Bが形成されており、連続樹脂シート(3)の表層の上面側に、略半円凹みの溝Bの反対型が転写され、表面形状転写樹脂シート(3)を得ることができる。
【0058】
上記製造時に各ロールの表面温度は、第一押圧ロールの温度を78℃、第二押圧ロールの温度を78℃、転写ロールの温度を98℃とした。
【0059】
実施例3において得られた表面形状転写樹脂シート(3)に転写された形状の形状転写率Tは、78.6%であった。
【0060】
(実施例4)
押圧ロールの押圧を調整して連続樹脂シートの厚さを1.5mmとする以外は、実施例3と同様にして、厚さ1.5mmの3層の積層板からなる連続樹脂シート(4)を得た。
【0061】
上記転写ロールには、ロール表面の円周上に略半円凹みの溝Bが形成されており、連続樹脂シート(4)の表層の上面側に、略半円凹みの溝Bの反対型が転写され、表面形状転写樹脂シート(4)を得ることができる。
【0062】
実施例4において得られた表面形状転写樹脂シート(4)に転写された形状の形状転写率Tは、92.8%であった。
【0063】
(比較例1)
図4に示すように、第三押圧ロール5cのかわりに第二押圧ロール5b表面に転写型を備え、冷却温度を変更した以外は、実施例2と同様に操作して厚さ1.5mmの連続樹脂シート(5)を得た。連続樹脂シート(5)は、転写ロールである第二押圧ロール5bに密着して搬送されている際に冷却され、その後、第三押圧ロール5cへと引取られる。その際、転写ロールと第三押圧ロール5cとの間は隙間が開いており、これらのロール間では連続樹脂シートは押圧されない状態とした。
【0064】
上記転写ロールには、ロール表面の円周上に略半円凹みの溝Cが形成されており、連続樹脂シート(5)の表層の下面側に、略半円凹みの溝Cの反対型が転写され、表面形状転写樹脂シート(5)を得ることができる。
【0065】
上記製造時に各ロール表面の温度は、第一押圧ロールの温度を50℃、第二押圧ロール(転写ロール)の温度を80℃、第三押圧ロールの温度を90℃とした。
【0066】
比較例1において得られた表面形状転写樹脂シート(5)に転写された形状の形状転写率Tは、30.0%であった。
【0067】
(比較例2)
転写型および冷却温度を変更した以外は、実施例1と同様に、第三押圧ロールに転写型を備え、押圧ロールと転写ロールとで押圧と冷却を行なうことによって、厚さ2.0mmの3層の積層板からなる連続樹脂シート(6)を得た。
【0068】
上記転写ロールには、ロール表面の円周上に略半円凹みの溝Cが形成されており、連続樹脂シート(6)の表層の下面側に、略半円凹みの溝Cの反対型が転写され、表面形状転写樹脂シート(6)を得ることができる。
【0069】
上記製造時に各ロール表面の温度は、第一押圧ロールの温度を70℃、第二押圧ロール(転写ロール)の温度を108℃、第三押圧ロールの温度を88℃とした。
【0070】
比較例2において得られた表面形状転写樹脂シート(6)に転写された形状の形状転写率Tは、40.0%であった。
【0071】
(比較例3)
転写ロールに、ロール表面の円周上に略半円凹みの溝Dが形成されている以外は、比較例1と同様に操作して、厚さ1.5mmの表面形状転写樹脂シート(7)を得た。
【0072】
比較例3において得られた表面形状転写樹脂シート(7)に転写された形状の形状転写率Tは、48.0%であった。
【0073】
(比較例4)
転写ロールに、ロール表面の円周上に略半円凹みの溝Dが形成されている以外は、比較例2と同様に操作して、厚さ2.0mmの表面形状転写樹脂シート(8)を得た。
【0074】
比較例4において得られた表面形状転写樹脂シート(8)に転写された形状の形状転写率Tは、65.0%であった。
【0075】
(実施例5)
95質量部の結晶性樹脂C1と5質量部の中間層マスターバッチMBとをドライブレンドした後、シリンダー内の温度が190℃〜260℃の第1押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。一方、表層マスターバッチMAをシリンダー内の温度が190℃〜260℃の第2押出機で溶融混練して、フィードブロックに供給する。
【0076】
上記第1押出機からフィードブロックに供給される結晶性樹脂C1と中間層マスターバッチMBとをドライブレンドしたものが主層となり、上記第2押出機からフィードブロックに供給される表層マスターバッチMAが上記主層の両表面(表層)となるように押出樹脂温度250℃で共押出成形を行ない、図2に示す押圧ロール5で押圧と冷却とを行なうことによって、厚さ1.5mmの3層の積層板からなる表面形状転写樹脂シート(9)を製造した。
【0077】
表面形状転写樹脂シート(9)の製造において、押出機より吐出された連続樹脂シートを押圧するために、該シートの上側に第一押圧ロール5a、下側に第二押圧ロール5bを配置した。第一押圧ロール5aと第二押圧ロール5bとにより押圧された後、第二押圧ロール5b表面に密着して搬送され、その際に冷却される。
【0078】
その後に第二押圧ロール5bと表面に転写型6が備えられた第三押圧ロール5c(転写ロール)とで押圧される。転写ロールには転写型として、表3に示すV字凹みの溝Eが形成されており、上記第二押圧ロール5bと第三押圧ロール5cとの押圧の際に、連続樹脂シート(9)の表層の上面側に、図5に示すV字凹みの溝Eの凸部と凹部とが反対の型が転写され、表面形状転写樹脂シート(9)を得ることができる。
【0079】
上記製造時に各ロール表面の温度は、第一押圧ロール5aが80℃であり、第二押圧ロール5bが78℃、第三押圧ロール5c(転写ロール)が115℃となるよう調整した。
【0080】
(実施例6)
転写型6として表3に示すV字凹みの溝Fが形成された転写ロールを用いた以外は、実施例5と同様にして表面形状転写樹脂シート(10)を製造した。
【0081】
(実施例7)
転写型6として表3に示すV字凹みの溝Gが形成された転写ロールを用いた以外は、実施例5と同様にして表面形状転写樹脂シート(11)を製造した。
【0082】
(実施例8)
転写型6として表3に示すV字凹みの溝Hが形成された転写ロールを用いた以外は、実施例5と同様にして表面形状転写樹脂シート(12)を製造した。
【0083】
(実施例9)
押圧ロールの押圧を調整して連続樹脂シートの厚さを1.0mmとし、各押圧ロールの温度を変更した以外は、実施例5と同様にして、3層の積層板からなる表面形状転写樹脂シート(13)を得た。その際、第三押圧ロール5c(転写ロール)には、転写型6として、ロール表面の円周上に表3に示すV字凹みの溝Eが形成されており、表面形状転写樹脂シート(13)の表層上面側に、図5に示すV字凹みの溝Eの凸部と凹部とが反対の型が転写され、表面形状付与樹脂シート(13)を得ることができる。
【0084】
なお、上記製造時に各ロール表面の温度は、第一押圧ロール5aが100℃であり、第二押圧ロール5bが98℃、第三押圧ロール5c(転写ロール)が119℃となるよう調整した。
【0085】
(実施例10)
転写型6として表3に示すV字凹みの溝Fが形成された転写ロールを用いた以外は、実施例9と同様にして表面形状転写樹脂シート(14)を製造した。
【0086】
(実施例11)
転写型6として表1に示すV字凹みの溝Gが形成された転写ロールを用いた以外は、実施例9と同様にして表面形状転写樹脂シート(15)を製造した。
【0087】
(実施例12)
転写型6として表1に示すV字凹みの溝Hが形成された転写ロールを用いた以外は、実施例9と同様にして表面形状転写樹脂シート(16)を製造した。
【0088】
上記実施例5〜12で製造した表面形状転写樹脂シート(9)〜(16)は、それぞれ形状転写率Tが95%であり、転写率(転写性能)に優れることがわかる。
【0089】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の製造方法および製造装置を用いて得られる表面形状転写樹脂シートは、原料樹脂への添加物を選択することにより、種々の用途に適用することができる。また、本発明の製造方法および製造装置を用いて得られる表面形状転写樹脂シートは、転写率に優れるので、添加剤として光拡散剤を用いて光拡散板として特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】転写型に施されている半円凹みの溝のレプリカの断面形状の模式図である。
【図2】本発明の表面形状転写樹脂シートの製造に用いる製造装置の一例の模式図である。
【図3】シリンドリカルレンズの模式図である。
【図4】従来の表面形状転写樹脂シートの製造に用いる製造装置の模式図である。
【図5】転写型に施されているV字凹みの溝のレプリカの断面形状の模式図である。
【符号の説明】
【0092】
1 転写型表面、2 連続樹脂シート、3 樹脂投入口、4 ダイ、5 押圧ロール、5a 第一押圧ロール、5b 第二押圧ロール、5c 第三押圧ロール、6 転写型、7 押出機、8 シリンドリカルレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を加熱溶融状態でダイから連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するシート製造工程と、
前記連続樹脂シートを第一押圧ロールと第二押圧ロールとで挟み込む第一押圧工程と、
前記第二押圧ロールに密着させたまま前記連続樹脂シートを搬送する搬送工程と、
搬送された前記連続樹脂シートを前記第二押圧ロールと第三押圧ロールとで挟み込む第二押圧工程とを含み、
前記第三押圧ロールは、その表面に転写型を備え、
前記転写型は、複数の凹部からなり、前記凹部のピッチ間隔は50μm〜500μmであり、前記凹部の溝深さは3μm〜500μmであり、
前記連続樹脂シートは、前記第二押圧工程において前記第三押圧ロール表面に備えた転写型が転写される表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記凹部は、その断面形状が略半円形状である請求項1に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記凹部は、その断面形状が三角形であり、該三角形の頂角が40°〜160°である請求項1に記載の表面形状転写樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
加熱溶融状態の樹脂を連続的に押し出して連続樹脂シートを製造するダイと、押圧ロールと、前記連続樹脂シートを該押圧ロールとの間に挟み込むことにより表面形状を前記連続樹脂シートに転写する転写ロールとを含む表面形状転写樹脂シートの製造装置であって、
前記転写ロールは、その表面に複数の凹部が形成され、前記凹部のピッチ間隔が50μm〜500μmであり、前記凹部の溝深さHが3μm〜500μmである表面形状転写樹脂シートの製造装置。
【請求項5】
前記凹部は、その断面形状が略半円形状である請求項4に記載の表面形状転写樹脂シートの製造装置。
【請求項6】
前記凹部は、その断面形状が三角形であり、該三角形の頂角が40°〜160°である請求項4に記載の表面形状転写樹脂シートの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−220555(P2009−220555A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200980(P2008−200980)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】