説明

被処理物の水熱反応装置及びそれを用いた水熱反応方法

【課題】固形分による閉塞を防ぐと共に反応生成物の完全分解を防ぎ、有用な反応生成物を高収率にて回収できるようにした、被処理物の水熱反応装置及びそれを用いた水熱反応方法を提供する。
【解決手段】下部に第1の導入口4a、上端部に第1の取出口4b、下端部に排出口4c、側部に複数の導入口からなる第2の導入口4eと、複数の取出口からなる第2の取出口4dを設けた縦型円筒状の反応器4を使用し、原料タンク1で有機化合物を含む被処理物に水を混ぜ、加圧ポンプ2で所定の反応圧力にし、加熱装置3で所定の反応温度にした後、第1の導入口から反応器内に圧入し、反応器内を下部から上部に向けて流通させながら水熱反応を行い、液状の反応生成物を第1の取出口又は第2の取出口から取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を含む廃棄物を縦型円筒状の反応器を用いて水熱反応させ、反応生成物を回収して有用な再資源を得るようにした水熱反応装置及びその水熱反応装置を用いた水熱反応方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を含む廃棄物、例えば畜産物、農産物、水産物、木材・植物、食品などの天然有機物を含む廃棄物、合成樹脂、ゴム、繊維、有機塩素系化合物などの合成有機物を含む廃棄物、活性汚泥、余剰汚泥などを含む下水処理廃棄物や廃水処理廃棄物、動物の糞尿などを含む廃棄物等は、通常焼却するか又は埋め立てにより処分している。
【0003】
一般にジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンを主とする塩素系有機溶剤は、洗浄溶剤・脱脂剤としての優れた特性を有していることから、金属・電子部品製造の洗浄工程やドライクリーニング用、抽出溶媒用など幅広い用途で大量に使用されている。そして、これらの廃液中には潤滑油、防錆油、油脂等の油分や樹脂等の有機分を含み、更に顔料等の無機固形分を含んでいることが多い。又、有機塩素化合物を含む固形の被処理物の例として、廃ポリ塩化ビニル樹脂は樹脂のほかに液体成分である可塑剤、無機成分である顔料、フィラー等を含んでいる場合が多い。
【0004】
有機塩素系化合物を含む廃棄物を焼却処分する場合には、発生する塩酸により機器類が腐食して損傷が激しく、又含有する塩素により有害なダイオキシンが発生して環境を破壊するのみならず、人体に悪影響を及ぼすことになる。これらの防止対策には多額の費用を必要とし、焼却処分コストが著しく増大してしまう。又、埋め立て処分する場合には、処分場の不足によりかなり制限を受けており、近い将来において埋め立て不能になることが懸念されている。このような状況下では、産業廃棄物の不法投棄を招くことになる。
【0005】
廃棄物の無害化及び再資源化技術として、臨界点(温度375℃、圧力22MPa)以上の超臨界水による超臨界水反応、又は臨界点より少し温度・圧力が低い亜臨界水による水熱反応を利用することが注目されている。これらの高温高圧水は、優れた有機物溶解性及び強い加水分解反応を有するため、有機塩素系化合物を含む廃棄物と反応させると塩素を分離して無害化し、無機固形分は殆ど溶解しないため分離して除去することができる。このような従来技術としては、例えば下記の特許文献1ないし特許文献4に開示されている。
【特許文献1】特開2003−136095号公報
【特許文献2】特開2001−246239号公報
【特許文献3】特開2002−138057号公報
【特許文献4】特開2000−239189号公報
【0006】
上記特許文献1は、汚泥のような水と有機物と無機物とを含む有機物スラリを高温高圧の状態にして酸化剤により酸化分解するに当たり、無機物、塩、固形物などが反応器や冷却器等で沈降或は析出して流路を閉塞することを防止し、残留固形物を円滑にシステム外に取り出すことができるようにした、有機物処理システム及びこのシステムからの残留固形物の排出方法に関する技術が開示されている。この場合、水と有機物を含むスラリ状の廃棄物としては、例えばパルプ、繊維、化学、食品等の工場廃水処理から排出される有機性汚泥や、生活廃水処理から大量に排出される下水汚泥、河川の水を上水にする際に排出される浄水場汚泥、畜産農場、魚介類の養殖場から死骸、糞尿として排出される有機性汚泥等が対象とされている。又、この特許文献1の技術では、汚泥は超臨界水酸化反応により、二酸化炭素などの気体成分と無機固形物に酸化分解され、硫黄分や塩素分は固形物中に残存するか、イオン化して水中に溶解するのであり、反応生成物を取り出して有効利用するものではない。
【0007】
上記特許文献2は、所定の大きさを有する縦型筒状の反応器を用い、被反応物と酸化剤の混合物を反応器の上部から噴射機構により所定の噴射速度で噴射し、反応器内の上部に完全混合域を形成すると共に、下部にプラグフロー域を形成して、水の超臨界又は亜臨界状態で水熱反応を行い被反応物を分解するようにした、水熱反応方法及び装置に関する技術が開示されている。この場合、反応の結果有機物は酸化分解され、水と二酸化炭素からなる高温高圧の流体と、乾燥又はスラリ状態の灰分や塩類等の固体を含む反応生成物が得られる。しかしながら、この特許文献2の技術では、反応生成物を目的物として取り出して有効利用するものではない。又、反応により生成する無機塩や酸化物のような固体は、重力の作用で反応器内を下向きに移動して反応物取出路から排出される。
【0008】
上記特許文献3は、塩素化合物やフッ素化合物等のハロゲン化合物が含まれるハロゲン系有機廃棄物を、亜臨界水条件或は超臨界水条件下の水熱反応により分解処理するようにした、ハロゲン系有機廃棄物の処理方法及び処理装置に関する技術が開示されている。この場合、ハロゲン系有機廃棄物として、衣類等の繊維製品を洗浄するために用いられる有機溶剤の廃液や、他の工業製品の製造過程で物質を洗浄するために用いられる有機溶剤の廃液等が含まれている。そして、有機廃棄物中に含まれるハロゲンを良好に脱離させることを目的としており、アルカリ剤をハロゲンに対して等モル以上添加することにより、脱ハロゲン化を促進させると共に、脱離したハロゲンを水中に固定し、ハロゲンガスの発生を抑制する。又、水熱反応処理物のうち、沈殿物を取り出して無機有価物として回収したり、液相を部分蒸発させて蒸気を残留液と分離して所望の有価物として回収したりするものであるが、例えばメタンガスを回収する場合には、嫌気性処理装置を備えなければならず、回収処理後の処理物のCODを放流基準以下に低減する放流処理装置も備えなければならない。
【0009】
上記特許文献4は、有機塩素化合物の混入した有機溶剤と、金属水素化合物とを接触させ、その有機塩素化合物を脱塩素する一方で金属酸化物を生成させ、次いで有機溶剤中に得られた金属塩化物を水に接触させ、この金属塩化物を水相中に溶解することで塩素成分を有機溶剤から切り離し、又脱塩素化有機化合物を含有する有機溶剤を曝気し又は減圧することで、脱塩素化有機化合物をガス化し、有機溶剤中から有機塩素化合物を分離するようにした、有機塩素化合物の混入した有機溶剤の処理方法に関する技術が開示されている。この場合は、超臨界反応のような高圧を必要としないことを特徴としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、縦型円筒状の反応器を用いて有機化合物を含む被処理物(廃棄物)を亜臨界水等の高温高圧水で水熱反応を行い、被処理物に含まれる不溶固形分及び/又は反応により生成した不溶固形分は反応器の下部から排出し、液状の反応生成物は反応器の上部又は側部より取り出すことにより、不溶固形分による閉塞を防ぐと共に反応生成物の完全分解を防いで、有用な反応生成物を高収率にて回収できるようにした被処理物の水熱反応装置及びそれを用いた水熱反応方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための手段として、本発明の請求項1は、有機化合物を含む被処理物と、亜臨界水等の高温高圧水とを反応させる縦型円筒状の反応器を備え、この反応器は下端部に不溶固形分を排出する排出口が設けられると共に、上端部に液状の反応生成物を取り出す第1の取出口が設けられており、更に反応器の下部に第1の導入口が設けられ、この第1の導入口より上方位置に第2の導入口が設けられていることを特徴とする被処理物の水熱反応装置を要旨とする。
【0012】
本発明の請求項2は、請求項1に記載の被処理物の水熱反応装置において、前記第2の導入口は、前記反応器の側壁に高さ方向に沿って適宜の間隔をあけて複数設けられた導入口から構成され、前記被処理物の性状によって前記第1の導入口に代えて、前記複数の導入口のうちいずれかの導入口を選択使用することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3は、請求項2に記載の被処理物の水熱反応装置において、前記第2の導入口は、導入管を分岐した分岐管を介して並列に接続されると共に、それぞれの分岐管に開閉弁が配設され、これら開閉弁の開閉操作によりいずれかの導入口を選択することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置において、前記反応器の側壁に前記第1の取出口とは異なる第2の取出口が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5は、請求項4に記載の被処理物の水熱反応装置において、前記第2の取出口は、前記反応器の側壁に高さ方向に沿って適宜の間隔をあけて複数設けられた取出口から構成され、前記反応生成物の性状によって前記第1の取出口に代えて、前記複数の取出口のうちいずれかの取出口を選択使用することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6は、請求項5に記載の被処理物の水熱反応装置において、前記第2の取出口は、分岐管を介して並列に接続されると共に、それぞれの分岐管に開閉弁が配設され、且つこれらの分岐管を合流した導出管の端部が、前記第1の取出口に取り付けられた導出管に接続されており、前記開閉弁の開閉操作によりいずれかの取出口を選択することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置を用いて、前記第1の導入口から反応器内の上部に向けて水を連続的に供給し、第2の導入口から反応器内に前記被処理物を供給し、所定の反応温度・反応圧力で流通させることにより水熱反応させ、生成した液状の反応生成物は前記第1の取出口又は第2の取出口より取り出し、不溶固形分は前記排出口から排出することを特徴とする水熱反応方法を要旨とする。
【0018】
本発明の請求項8は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置を用いて、前記第1の導入口から反応器内の上部に向けて有機塩素化合物を含む被処理物と水を連続的に供給し、前記第2の導入口から前記有機塩素化合物に含まれる塩素量の1.0〜2.0倍当量のアルカリ剤を供給し所定の反応温度・反応圧力で流通させることにより脱塩素を行い、生成した液状の反応生成物は前記第1の取出口又は第2の取出口より取り出し、不溶固形分は前記排出口から排出することを特徴とする水熱反応方法を要旨とする。
【0019】
本発明の請求項9は、請求項8に記載の水熱反応方法において、前記被処理物に含まれる有機塩素化合物がジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素のうちのいずれか1つ或は2つ以上の組み合わせであることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項10は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置を用いて、前記第1の導入口から反応器内の上部に向けて水を連続的に供給し、前記第2の導入口からポリ塩化ビニル樹脂を含む被処理物を供給し、所定の反応温度・反応圧力で前記被処理物を落下させながら脱塩素を行い、生成した液状の反応生成物は前記第1の取出口又は第2の取出口より取り出し、不溶固形分は前記排出口から排出することを特徴とする水熱反応方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
上記請求項1の発明によれば、縦型円筒状の反応器内で有機化合物を含む被処理物と亜臨界水等の高温高圧水とを水熱反応させることで、液状の反応生成物は反応器の上端部に設けた第1の取出口から取り出し、不溶固形分は反応器の下端部に設けた排出口から排出する。被処理物は通常、反応器の側壁下部に設けられた第1の導入口から水と共に導入して所定の反応温度・反応圧力で水熱反応するが、被処理物の性状によっては第1の導入口の上方に位置する第2の導入口から導入して水熱反応の条件を調整することができる。これにより、水熱反応により生じる反応生成物は、二酸化炭素や水等に完全分解することなく取り出すことができる。
【0022】
上記請求項2の発明によれば、第2の導入口は反応器の側壁に高さ方向に沿って適宜の間隔をあけて複数設けられているため、被処理物の性状によっていずれかの高さの導入口を選択使用することで、最適な水熱反応の条件を設定することが可能となる。
【0023】
上記請求項3の発明によれば、複数の第2の導入口は、導入管を分岐した分岐管を介して並列に接続されると共に、それぞれの分岐管に開閉弁が配設されているため、これら開閉弁の開閉操作によりいずれかの導入口を容易に選択することができる。
【0024】
上記請求項4の発明によれば、反応器の側壁に前記第1の取出口とは異なる第2の取出口が設けられているため、第1の取出口より低い位置の第2の取出口から反応生成物を良好な状態で取り出すことができる。これにより、被処理物の性状が異なっても最適に対処することが可能となる。
【0025】
上記請求項5の発明によれば、第2の取出口は反応器の側壁に高さ方向に沿って適宜の間隔をあけて複数設けられているため、反応生成物の性状によっていずれかの高さの取出口を選択使用することで、反応生成物を良好な状態で取り出すことができる。
【0026】
上記請求項6の発明によれば、複数の第2の取出口は、分岐管を介して並列に接続されると共に、それぞれの分岐管に開閉弁が配設され、且つこれらの分岐管を合流した導出管の端部が、前記第1の取出口に取り付けられた導出管に接続されているため、開閉弁の開閉操作によりいずれかの取出口を容易に選択することができる。
【0027】
上記請求項7の発明によれば、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置を用いて、第1の導入口から反応器内の上部に向けて水を連続的に供給し、第2の導入口から前記被処理物を供給し、所定の反応温度・反応圧力で流通させることにより水熱反応を行い、生成した液状の反応生成物は第1の取出口又は第2の取出口より取り出し、不溶固形分は排出口から排出することで水熱反応を円滑に行うことができる。
【0028】
上記請求項8の発明によれば、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置を用いて、第1の導入口から反応器内の上部に向けて有機塩素化合物を含む被処理物を水と共に連続的に供給し、第2の導入口から適量のアルカリ剤を供給して所定の反応温度・反応圧力で流通させることにより脱塩素を行い、生成した液状の反応生成物は第1の取出口又は第2の取出口より取り出し、不溶固形分は排出口から排出することで有機塩素化合物を含む被処理物を効率良く処理することができる。
【0029】
上記請求項9の発明によれば、請求項8に記載の水熱反応方法において、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素のうちのいずれか1つ或は2つ以上の組み合わせである有機塩素化合物を含む被処理物を水熱反応させて、アルコール、有機酸等の反応生成物を取り出すことができると共に、不溶固形物を分離して排出することができる。
【0030】
上記請求項10の発明によれば、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置を用いて、ポリ塩化ビニル樹脂を含む被処理物を水熱反応により効率良く処理して、有用な反応生成物を取り出すと共に顔料、フィラー等の不溶固形分を分離して排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明に係る被処理物の水熱反応装置及びそれを用いた水熱反応方法の実施形態について説明する。本実施形態では、有機塩素化合物を含む被処理物に適用した例を説明するが、被処理物はこれに限定されず、前記有機化合物を含む種々の廃棄物が対象となる。
【0032】
本実施形態では、連続式の縦型円筒状の反応器を用い、有機塩素化合物を含む被処理物を亜臨界水等の高温高圧水で水熱反応を行い、アルコール、有機酸、脱塩油、炭化物、無機塩等の反応生成物を回収し、アルコール、有機酸、無機塩等は精製してそれぞれ工業原料として利用し、脱塩油、炭化物等はボイラー燃料等として利用する。これにより、有機塩素化合物を含む被処理物を安全且つ効率良く処理し、その殆ど全てを有用な再資源として利用するものである。尚、有機塩素化合物としては、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素のうちのいずれか1つ或は2つ以上の組み合わせである。
【0033】
有機塩素化合物の一例としてジクロロメタンの場合は、次式のごとく水熱反応が進んでアルコール、有機酸、無機塩が生成すると考えられる。
CH2Cl2 + 2NaOH → CH2(OH)2 + 2NaCl
2CH2(OH)2 → CH3OH + HCOOH + H2O
【0034】
本実施形態では、有機塩素化合物を含む被処理物に含まれる不溶固形分及び/又は水熱反応により生じる不溶固形分を、縦型円筒状の反応器の底部に沈殿させて排出し、閉塞を防いで水熱反応の円滑な進行を図る。これにより、有機塩素化合物の脱塩素及び加水分解を効率良く行い、アルコール、有機酸、脱塩油、無機塩等の液状生成物は反応器の上部又は側部から高収率に取り出す。反応器の材質はハステロイ、インコネル等の高価な材質を用いる必要がなく、比較的腐食性の激しい有機酸が生じる場合でも、ハステロイ、インコネル等と比べて遥かに安価なSUS316程度の材質を用いることができる。
【0035】
反応器での水熱反応に際しては、固形分を包含する被処理物を必要に応じて粉砕し、水と混合して反応器の下部から圧入し、所定の反応温度・反応圧力のもとに下部から上部に向けて流通させる。この時、被処理物は固形分の輸送速度以下の流速で流通されることにより、不溶固形分及び/又は水熱反応により生じた不溶の無機塩、炭化物等の固形分が沈降して反応器の底部に堆積する。反応器の下端部には排出口が設けられており、この排出口から不溶固形分を排出して分離する。
【0036】
水熱反応により生成したアルコール、有機酸、脱塩油、可溶性無機塩等は、通常は反応器の上端部に設けられている第1の取出口から取り出し、これらを通常の方法で精製してそれぞれ工業原料として利用し、油分及び固形の有機物はボイラーの燃料等として利用する。本発明に係る水熱反応では、反応温度は100℃〜300℃、反応圧力はその温度での飽和蒸気圧以上〜10MPa以下の範囲内で行うことが好ましい。亜臨界水は強い加水分解力を持ち、拡散係数が大きくなるので反応時の溶媒として優れている。又、亜臨界水は、殆ど全ての有機物を二酸化炭素と水に完全分解してしまう超臨界水に比して、有価物を効率良く得ることができる。
【0037】
反応器での水熱反応を促進させるために、及び有機塩素化合物の完全分解を避けてアルコールや有機酸等を有効に生成するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の適宜のアルカリ剤を添加すると良い。アルカリ剤の使用量は、被処理物に含まれる有機塩素化合物の塩素量に対し、1.0〜2.0倍当量であることが好ましい。アルカリ剤の使用量が有機塩素化合物の塩素量に対して1.0倍当量未満であると添加効果が少なく、2倍当量を超えても添加効果はさほど変わらないために不経済となる。
【0038】
アルカリ剤の添加方法は、予め被処理物スラリーに添加しても良く、又後記する反応器の第2の導入口から投入しても良い。溶解度の低い固形アルカリ剤を被処理物と共に反応器の下部に設けられている第1の導入口から投入すると、反応器下部に堆積して他の不溶固形物と一緒に排出されてしまうため、第1の導入口より上方位置に設けられる第2の導入口より投入すると良い。固形アルカリ剤は亜臨界水等の高温高圧水中を沈降する間に溶解し、被処理物中の有機塩素化合物と良好に反応するため好ましい。
【0039】
図1を参照しながら本発明の実施形態を更に詳しく説明すると、有機塩素化合物を含む被処理物は、包含される固形分を必要に応じて粉砕した後に、原料タンク1で水と混合し、この被処理物スラリーを加圧ポンプ2で所定の反応圧力に高めると共に、加熱装置3で所定の反応温度に加熱した後に、縦型円筒状の反応器4の下部に設けられた第1の導入口4aから圧入する。反応器4には図示を省略した保温装置が付設されており、この保温装置により反応器4を保温して反応温度を保つようにしてある。
【0040】
被処理物は反応器4の内部において、有機塩素化合物、油分、樹脂分その他有機物が亜臨界水に溶解若しくは分散し、反応器4の下部から上部に向けて流通しながら水熱反応が行われる。即ち、被処理物は脱塩素及び加水分解を受けて、アルコール、有機酸、脱塩油、可溶無機塩、炭化物等の液状の反応生成物が生成され、これら液状の反応生成物は、通常反応器4の上端部に設けられた第1の取出口4bから取り出される。
【0041】
反応器4内における水熱反応温度は、前記加熱装置3により調節されるが、その温度は前記のように100℃〜300℃が好ましい。反応温度が100℃未満では、反応時間が長引いて好ましくなく、300℃を超えると反応生成物の熱分解が進み、完全分解して目的とする反応生成物の回収率が下がると共に、反応器4の腐食が激しくなって好ましくない。尚、加熱装置3は特に限定されず、例えば電気ヒータ、誘導加熱装置、熱媒油等による加熱手段を用いることができる。
【0042】
又、水熱反応圧力は、前記のように反応温度での飽和蒸気圧以上〜10MPa以下であることが好ましい。この水熱反応圧力を必要以上高めても反応速度はあまり変わらず、反応圧力が10MPaを超えると、過剰な圧力が掛かるため反応器4に高度な耐圧性が必要となり且つコスト高になるので好ましくない。
【0043】
反応器4内に導入された被処理物が下部から上部に向けて流通する流速は、被処理物中に包含される固形分の輸送速度以下にする必要がある。ここで輸送速度とは、固形分の粒子が静止流体中を沈降する速度のことであり、もし被処理物が輸送速度以上の流速で反応器4中を流通すると、固形分は沈降せずに液状の反応生成物と一緒に反応器4外に出てしまう。被処理物が輸送速度以下の流速で反応器4中を流通することにより、固形分は沈降して反応器4の底部に堆積する。又、前記のように固形分を包含する被処理物を反応器4まで圧送する場合には、被処理物の流速は固形分の輸送速度若しくはそれ以上の速度にしなければならない。配管中を圧送する時の流速が輸送速度以下であると、固形分が配管内部に堆積することがあり、配管閉塞の原因となって好ましくない。配管圧送時の流速を輸送速度以上とし、反応器4中の流速を輸送速度以下とするためには、配管の内径を反応器4の内径よりも小さくする必要がある。
【0044】
上記亜臨界水の密度及び粘度は、例えば180℃(1MPa飽和水)で887kg/m、0.541kg/mhであり、200℃(1.6MPa飽和水)で863kg/m、0.477kg/mhであり、250℃(4MPa飽和水)で798kg/m、0.380kg/mhであり、輸送速度は流体抵抗の式より計算できる。
【0045】
固形分の密度が1500、2000、2500kg/mの場合の、1MPa、1.6MPa、4MPaの飽和水で計算した各粒子径(mm)に対する輸送速度(Ut)を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1より、流速を調整することにより被処理物の圧送中に固形分が沈降しないで圧送、加熱ができ、反応器4中では固形分は沈降して底部に堆積することがわかる。例えば、密度1500kg/m、粒子径が0.1mmの固形分を包含する被処理物を、反応温度250℃、反応圧力4MPaで水熱反応させる場合、輸送速度は0.021m/sであることから、その10倍の0.21m/sで配管中を圧送すれば、固形分が配管内部で沈降することなく圧送、加熱が可能である。そして、配管の10倍の断面積を持つ反応器4に導入された場合、輸送速度は1/100になるためその輸送速度は0.0021m/sとなり、固形分は沈降することが分かる。配管圧送時の流速を輸送速度以上とし、反応器4中の流速を輸送速度以下とするためには、配管の内径を反応器4の内径の1/5〜1/15にしなければならない。又、表1から明らかなように、輸送速度は固形分の密度及び粒径により異なり、密度が大きく粒径が大きい程輸送速度は大きくなる。そのため、反応器4中の流速は固形分の中で一番小さいものに合わせる必要がある。
【0048】
水熱反応により生成した液状の反応生成物は、前記のように通常は反応器4の上端部に設けられた第1の取出口4bから取り出し、冷却器7で冷却されて反応が停止した後に、圧力を調整する背圧弁8を通って反応物タンク9に回収される。そして、回収された反応生成物は用途に応じて、通常の方法で精製されそれぞれ工業原料として有効に利用される。例えば、メタノールは、ホルマリン、酢酸、メチルメタクリレート、メチルアミン、香料等の原料として利用できる。有機酸である蟻酸は染色助剤、メッキ助剤、エポキシ可塑剤、医薬品、殺菌剤等の原料として利用でき、グリコール酸はボイラー洗浄剤、電解研磨剤、染色助剤、スケール除去剤等して利用することができる。脱塩油は、その性状により軽油、重油と同様にボイラー用燃料、ビルの暖房用燃料、ディーゼル燃料、ハウス栽培用燃料等として利用することができる。そして、脱塩油の性状が軽油に相当する場合は、バスやトラックなどのディーゼルエンジン用燃料、ガスタービン用燃料、発電用燃料、ボイラー用燃料等として利用できる。脱塩油の性状が重油に相当する場合には、小型/大型ディーゼルエンジン用燃料、発電用燃料、船舶用燃料、ボイラー用燃料として工場及び発電所で利用可能である。固形物として得られた有機物は、石炭と同様に発電用ボイラー燃料若しくは製鉄用燃料等として利用できる。無機塩として得られた塩化ナトリウムは、ソーダ及びその他の化学工業原料、鉱山精錬原料として利用できる。又、塩化カルシウムは道路の融雪剤として利用することも可能である。
【0049】
本発明では、図1に示すように反応器4の側壁に前記第1の取出口4bとは異なる複数の第2の取出口4dが反応器4の高さ方向に沿って適宜の間隔をあけて設けられている。この場合、第2の取出口4dは4つの取出口(H、I、J、K)から構成されており、各取出口には分岐管を介して並列に接続されると共に、それぞれの分岐管に図示しない開閉弁が配設され、且つこれらの分岐管を合流した導出管13の端部が、前記第1の取出口4bに取り付けられた導出管14に接続されており、前記各開閉弁の開閉操作によりいずれかの取出口を選択できるようにしてある。
【0050】
前記のように通常は液状の反応生成物を第1の取出口4bから取り出すが、反応生成物の性状によっては、第2の取出口4dのうちいずれかの取出口を選択して取り出すことができる。これにより、反応器4内での流通距離を変えて被処理物の水熱反応時間を調整することができる。又、反応器4内での流通速度を変え、或は流通速度と流通距離とを組み合わせることにより水熱反応時間を更に細かく調整することが可能となる。
【0051】
又、本発明では、図1に示すように反応器4の側壁に前記第1の導入口4aとは異なる複数の第2の導入口4eが反応器4の高さ方向に沿って適宜の間隔をあけて設けられている。この場合、第2の導入口4eは5つの導入口(A、B、C、D、E)から構成されており、各導入口は導入管15を分岐した分岐管を介して並列に接続されると共に、それぞれの分岐管に図示しない開閉弁が配設され、これら各開閉弁の開閉操作によりいずれかの導入口を選択できるようにしてある。そして、導入管15は導入装置6に接続され、この導入装置6は補助タンク5に接続されている。
【0052】
前記のように通常は被処理物を第1の導入口4aから反応器4に導入するが、密度の大きな被処理物、例えばポリ塩化ビニル樹脂を含む被処理物は、第2の導入口4eのうちいずれかの導入口を選択して導入することが望ましい。この場合、水は第1の導入口4aから導入して反応温度、反応圧力で反応器4内を下部から上部に向けて流通させ、この上昇流の中を密度の大きな被処理物が落下しながら溶解して水熱反応が行われる。選択した導入口の高さによって被処理物の水熱反応時間を調整することができる。これにより、被処理物の脱塩素を行い、生成した液状の反応生成物は第1の取出口4b又は第2の取出口4dより取り出し、顔料、フィラー等の不溶固形分及び/又は水熱反応により生じる不溶固形分は下端部の排出口4cから排出する
【0053】
前記のように被処理物に含まれる物質のうち、亜臨界水に溶解しない固形分及び水熱反応により生成した不溶無機塩、炭化物等は反応器4の底部に沈殿して堆積する。反応器4の底部に堆積した不溶固形分や不溶固形物は、反応器4の下端部に設けられた排出口4cから固形分排出装置10及び背圧弁11を介して任意に排出される。
【0054】
(実施例1)
図1に示す原料タンク1で自動車の廃エンジンオイル120Lにジクロロメタン50kg(Clとして1018kmolを含む)を溶解した組成物に固形分として5kgの酸性白土(密度:2500kg/m、平均粒径0.05mm、輸送速度180℃:0.016m/s、200℃:0.017m/s)を加えたものに、酸の中和工程から排出された廃アルカリ(10%の水酸化ナトリウム及び12%の塩化ナトリウムを含む)550L(NaOHとして1.41kmolを含む)を混合した後、加圧ポンプ2により2.0MPaの圧力で100L/時間の割合で内径15mmの配管を用いて(流速:0.16m/s)加熱装置3に送り込んで180℃まで加温した。続いて被処理物を予め200℃の水で満たした内径150mm、高さ5mの縦型反応器4に導入し(流速:0.0016m/s)、補助ヒータにより反応温度200℃まで加温して水熱処理を行った。この時、被処理物の滞留時間は50分であった。被処理物は反応器4内を流通する間に脱塩アルコール化反応が起こる。そして、液状の反応生成物は第1の取出口4bから取り出され、冷却器7を通る間に約40℃まで冷却されてから背圧弁8を介して常圧に戻され、反応物タンク9にフラッシュした。
【0055】
反応物タンク9に収容された液状の反応生成物は、反応物タンク9で水相と油相に油水分離して取り出した。又、反応生成物中の固形分や反応時に生成する不溶の塩類等の固形分は反応器4の下部に沈殿し、反応器4の下端部に設けられた排出口4c及び固形分排出装置10より適宜排出を行い、背圧弁11を介して固形物タンク12にフラッシュした。固形分として添加した酸性白土及び生成した塩化ナトリウムの一部は(大部分は亜臨界水等の高温高圧水に溶解し、反応生成物と共に第1の取出口4bから取り出される)固形物タンク12より回収され、配管及び反応器4が閉塞することはなかった。
【0056】
反応物タンク9内の反応生成物を1時間毎に取り出し、油相と水相とに分け、水相の反応生成物は島津製作所製ガスクロマトグラフGC17Aによりメタノールの定性・定量分析を、日本分光製有機酸分析システムLC−10Aにより蟻酸の定性・定量分析を行った。一方、油相に含まれる未反応のジクロロメタンは島津製作所製ガスクロマトグラフGC17Aにより定性・定量分析を行った。反応物タンク9より回収される油量は、1時間目は約3L/時、水量は約100L/時、2時間目以降は油量約20L/時、水量は約80L/時であった。表2に1時間毎に廃油に含まれる未反応のジクロロメタン濃度、水相に含まれる蟻酸及びメタノールの濃度を示す。生成した蟻酸の収率は42%、メタノールの収率は43%であった。又、廃エンジンオイルには未反応のジクロロメタンは含まれておらず、ボイラー燃料等として利用できるものであった。
【0057】
【表2】

【0058】
(実施例2)
原料タンク1で自動車の廃エンジンオイル120Lにトリクロロエチレン50kg(Clとして0.38kmol)を溶解した組成物に水500L及び固形分として酸性白土(密度:2500kg/m、平均粒径0.05mm、輸送速度200℃:0.017m/s、250℃:0.019m/s)5kgを混合した後、加圧ポンプ2により5.0MPakの圧力で100L/時の割合で内径15mmの配管を用いて(流速:0.16m/s)加熱装置3に送り込んで200℃まで加熱した。続いて被処理物を予め260℃の水で満たした内径150mm、高さ5mの縦型反応器4に導入し(流速:0.0016m/s)、補助ヒータにより反応温度250℃まで加温した。同時に、粉体補助タンク5で50.7kg(0.68kmol)の水酸化カルシウム及び50Lの水を混合し、生成したスラリーを加圧ポンプを備えた導入装置6により5.5MPaの圧力で11.8L/時の割合で第2の導入口4eのうち導入口Cより投入した。投入した水酸化カルシウムは反応器4中を沈降する間に亜臨界水等の高温高圧水に溶解し、反応器4中を上昇してくる被処理物中に含まれるトリクロロエチレンと水熱反応した。液状の反応生成物は第1の取出口4bから取り出され、冷却器7を通る間に約40℃まで冷却されてから背圧弁8を介して常圧に戻され、反応物タンク9にフラッシュした。
【0059】
反応物タンク9に収容された液状の反応生成物は、反応物タンク9で水相と油相に油水分離して取り出した。又、反応生成物中の不溶固形分や反応時に生成する不溶固形分は反応器4の底部に堆積するので、反応器4の下端部に設けられた排出口4c及び固形分排出装置10により適宜排出を行い、背圧弁11を介して固形物タンク12にフラッシュした。固形分として添加した酸性白土及び水熱反応により生成した少量の炭化物は固形分タンク12より回収され、配管及び反応器4が閉塞することはなかった。投入した水酸化カルシウムは固形物タンク12から回収されなかった。
【0060】
水相の反応生成物は、日本分光製有機酸分析システムLC−10Aによりグリコール酸の定性・定量分析を行った。油相に含まれる未反応のジクロロメタンは島津製作所製ガスクロマトグラフGC17Aにより定性・定量分析を行った。反応物タンク9より回収される油量は1時間目は約3L/時、水量は約100L/時、2時間目以降は油量は約20L/時、水量は約80L/時であった。表3に廃油に含まれるトリクロロエチレン濃度及び水相に含まれるグリコール酸濃度を示す。生成したグリコール酸量は25.6kgであり収率は88%であった。自動車廃エンジンオイルには未反応のトリクロロエチレンは含まれておらず、ボイラー燃料等として使用できるものであった。
【0061】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る被処理物の水熱反応装置及びそれを用いた水熱反応方法は、有機化合物を含む廃棄物の再資源化に有効に利用することができる。被処理物の水熱反応を行う際に、縦型円筒状の反応器を用いることにより、液状の反応生成物は反応器の上部又は側部から取り出すことができ、被処理物に含まれる不溶固形分及び/又は水熱反応により生じる不溶固形分は反応器の底部から取り出すことで反応器の閉塞を防ぐことができる。又、液状の反応生成物は、反応器の上端部に設けた取出口又は側部に設けた複数の取出口のうち、いずれかの取出口から取り出すことで水熱反応時間を調整することができ、生成した反応生成物の完全分解を防いで有用な反応生成物を高収率にて回収することができる。そして、回収した反応生成物は、精製することでそれぞれ工業原料やボイラー燃料等として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る被処理物の水熱反応装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1 原料タンク
2 加圧ポンプ
3 加熱装置
4 反応器
4a 第1の導入口
4b 第1の取出口
4c 排出口
4d 第2の取出口
4e 第2の導入口
5 補助タンク
6 導入装置
7 冷却器
8 背圧弁
9 反応物タンク
10 固形分排出装置
11 背圧弁
12 固形物タンク
13、14 導出管
15 導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物を含む被処理物と、亜臨界水等の高温高圧水とを反応させる縦型円筒状の反応器を備え、この反応器は下端部に不溶固形分を排出する排出口が設けられると共に、上端部に液状の反応生成物を取り出す第1の取出口が設けられており、更に反応器の下部に第1の導入口が設けられ、この第1の導入口より上方位置に第2の導入口が設けられていることを特徴とする被処理物の水熱反応装置。
【請求項2】
前記第2の導入口は、前記反応器の側壁に高さ方向に沿って適宜の間隔をあけて複数設けられた導入口から構成され、前記被処理物の性状によって前記第1の導入口に代えて、前記複数の導入口のうちいずれかの導入口を選択使用することを特徴とする請求項1に記載の被処理物の水熱反応装置。
【請求項3】
前記第2の導入口は、導入管を分岐した分岐管を介して並列に接続されると共に、それぞれの分岐管に開閉弁が配設され、これら開閉弁の開閉操作によりいずれかの導入口を選択することを特徴とする請求項2に記載の被処理物の水熱反応装置。
【請求項4】
前記反応器の側壁に前記第1の取出口とは異なる第2の取出口が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置。
【請求項5】
前記第2の取出口は、前記反応器の側壁に高さ方向に沿って適宜の間隔をあけて複数設けられた取出口から構成され、前記反応生成物の性状によって前記第1の取出口に代えて、前記複数の取出口のうちいずれかの取出口を選択使用することを特徴とする請求項4に記載の被処理物の水熱反応装置。
【請求項6】
前記第2の取出口は、分岐管を介して並列に接続されると共に、それぞれの分岐管に開閉弁が配設され、且つこれらの分岐管を合流した導出管の端部が、前記第1の取出口に取り付けられた導出管に接続されており、前記開閉弁の開閉操作によりいずれかの取出口を選択することを特徴とする請求項5に記載の被処理物の水熱反応装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置を用いて、前記第1の導入口から反応器内の上部に向けて水を連続的に供給し、第2の導入口から反応器内に前記被処理物を供給し、所定の反応温度・反応圧力で流通させることにより水熱反応させ、生成した液状の反応生成物は前記第1の取出口又は第2の取出口より取り出し、不溶固形分は前記排出口から排出することを特徴とする水熱反応方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置を用いて、前記第1の導入口から反応器内の上部に向けて有機塩素化合物を含む被処理物と水を連続的に供給し、前記第2の導入口から前記有機塩素化合物に含まれる塩素量の1.0〜2.0倍当量のアルカリ剤を供給し所定の反応温度・反応圧力で流通させることにより脱塩素を行い、生成した液状の反応生成物は前記第1の取出口又は第2の取出口より取り出し、不溶固形分は前記排出口から排出することを特徴とする水熱反応方法。
【請求項9】
前記被処理物に含まれる有機塩素化合物がジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素のうちのいずれか1つ或は2つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項8に記載の水熱反応方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の被処理物の水熱反応装置を用いて、前記第1の導入口から反応器内の上部に向けて水を連続的に供給し、前記第2の導入口からポリ塩化ビニル樹脂を含む被処理物を供給し、所定の反応温度・反応圧力で前記被処理物を落下させながら脱塩素を行い、生成した液状の反応生成物は前記第1の取出口又は第2の取出口より取り出し、不溶固形分は前記排出口から排出することを特徴とする水熱反応方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−326499(P2006−326499A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154074(P2005−154074)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(599023107)近畿環境興産株式会社 (9)
【出願人】(500315541)
【Fターム(参考)】