説明

被加工品および/または材料に高強度被覆をする方法

【課題】被加工品および/または材料に良好に付着した被覆を提供する。
【解決手段】本発明は、被加工品および/または材料に被覆をする方法であって、以下の工程を含む方法に関する:接着層の塗布、および高強度の最上層のプラズマ被覆による塗布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載した被加工品および/または材料に高強度被覆をする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工品および材料の耐用年数および摩擦係数の向上のために、かなり前から表面被覆が使用されている。酸化ケイ素(SiO)やその他の材料からなる被覆と同様に、炭素(「ダイヤモンドライクカーボン(diamond-like carbon)」)を含む被覆は、よく用いられている。
【0003】
そのような被覆は、特にプラズマ化学気相成長法(PECVD)工程のようなプラズマ被覆法によって、被加工品および/または材料に適用されている。
この工程は、化学蒸着(CVD)の特別な形態であるが、CVD工程においては、真空槽中での化学反応により薄い層が堆積されるのであるが、被覆に用いられる材料は、ガス中または蒸気中に存在する。
【0004】
また、PECVD工程は、プラズマを用いる。このために、強力な電場が被覆されるべき基材と対の電極との間に印加され、それによりプラズマは引火される。プラズマは、反応性ガスの結合を切断する、そしてガスはイオンまたはラジカルに分解して基材の上に堆積し、その場において化学析出反応が起こる。このようにして、CVDを用いた場合よりも低い堆積温度で、高い堆積率を達成することができる。
【0005】
炭素および/または酸化ケイ素を含む被覆、特にDLCからなる被覆は、非常に硬く、摩擦力に高い抵抗を有し、平滑度が高く、μ=0.1の範囲の低い摩擦係数を有している。
【0006】
それゆえ、このタイプの被覆は、打ち抜き、切断、穴あけおよびねじ回し具、機械加工具、人工器官(プロテーゼ)、ボールまたはローラーベアリング、歯車、小歯車、駆動チェーン、磁気テープ記録装置の音声および駆動ユニット、外科および歯科の道具に特に好適に用いられる。被覆は、交換可能な刃を有するナイフに特に適する。たとえば、手術用メスの刃、および/または工業用途の刃および/またはカッターが挙げられる。
【0007】
被覆されるべき被加工品および/または材料は、特に金属、セラミック、またはプラスチックからなることがあり、それらの材料を含むことがあり、またはそれらの材料の混合物若しくは合成物を表すことがある。
【0008】
しかしながら、多くの場合、そのような被覆は、上記被加工品および/または材料に対し非常に貧弱な付着力しか有さない。それは以下の様々な理由がある。
1.PECVD被覆は、適切な真空室中で、真空下に適用されるため、被覆されるべき被加工品および/または材料は、室の排気中によりわずかな体積の増加が起こる。その理由は被加工品および/または材料は、非圧縮性の固体から構成されているにも関わらず、しばしばガスに満たされた微小空洞を有し、排気の間、その空洞が体積を増大させることによる。被覆がなされた後、被加工品および/または材料は、再び大気圧の下に置かれ、収縮する。この収縮は、被加工品および/または材料の表面に被覆が十分に付着していない場合に、被覆が剥がれることになり得る。
【0009】
2.被覆されるべき被加工品および/または材料の内部応力は、しばしば被覆の内部応力と異なることがしばしばある。これは、製造の方法に基づくものである。従って、硬質金属の被加工品または材料は、フレーム溶射中、極端な内部応力を受け、または組成によっては、非常に高い内部応力を受ける。
【0010】
3.粉体混合物もまた用いられるが、そのような粉体混合物は、炭素フリーであることが必要な場合には、引き続き行われる厳密な意味でのDLC被覆をすることができないばかりか、受け付けない。
【0011】
従来技術においては、被加工品および/または材料にDLC層を付着させるのを改良する目的のさまざまな取り組みが知られている。
たとえば、鋼が窒素を用いて窒化されている場合に、超速度スチール(SSS)にDLC層を付着させることを改良する方法が知られている。しかしながら、この方法は、熱の影響で実際には困難であることが明らかになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記理由により、被加工品および/または材料に良好に付着した被覆を提供することである、そうして表面に卓越した硬さ、高い強靭性、摩擦力に対する高い抵抗力、高い平滑度、低い摩擦係数、および点荷重に対する抵抗力を与えることである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、被加工品および/または材料に良好に付着した被覆を提供することであり、その被覆は、耐点荷重であると同時に、表面張力、耐染料性、酸および塩基といった耐洗浄剤性に関して適している表面特性を有し、電気的に絶縁性で、熱伝導性で、および/または生体適合性であり抗アレルギー性である。
【0014】
本発明のさらなる目的は、切断、機械加工、穴あけ、鋳造、フライス加工、ねじ回し、および打ち抜き機のための、良好に付着した被覆であって、寿命および/または耐用年数が長い被覆を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、良好に付着した被覆であって、寿命および/または耐用年数を延長する被覆および非常に鋭敏な刃に適した被覆を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的は、現請求項1に記載の特徴により達成される。従属請求項は、好ましい態様について記載されている。その範囲は、それぞれの臨界値を含むことを理解されることを明記したい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
こうして、本発明によれば、被加工品および/または材料に被覆する方法は、以下のステップを含む:
b)接着層の塗布;および
c)高強度最上層のプラズマ被覆による塗布
被加工品および/または材料は、特に、セラミック、鉄、スチール、高合金鋼、ニッケル、コバルト、およびそれらのクロム、モリブデン、およびアルミニウムとの合金、銅および銅の合金、チタンまたは上記材料を含んだ合金からなる。被加工品および/または材料は、また金属および/またはZn、Sn、Cu、Fe、Ni、Co、Al、Tiに基づく金属製合金、およびMo、W、Taなどの耐火性金属からなっていてもよい。また金属焼結材料および金属セラミック材料(MMC)および金属−ポリマー材料、同様に酸素、炭化物、ホウ化物、窒化物からなるセラミック材料も好適である。
【0018】
被加工品は、また、プラスチックまたはプラスチックの混合物からなっていてもよい。当然、合金の混合物または上記の材料の合成物もまた好適である。
最初に述べたように、本発明によれば、高強度の最上層が、プラズマ被覆により塗布される。さらに、不活性保護ガスに加えて、炭素またはケイ素を含む活性ガスも好ましく用いられる。たとえば、メタン(CH)、エタン(C)、アセチレン(C)、メチルトリクロロシラン(CHSiCl)、またはテトラメチルジシロキサン(C14OSi)が挙げられる。
【0019】
このように、たとえば、炭素を含む最上層は、しばしばダイヤモンドのような特性および構造を有する層として堆積することもあり、それゆえ、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層といわれる。そのような層は、本発明において特に好ましい態様として用いられる。
【0020】
それとは対照的に、最上層としての窒化ケイ素層は、アンモニアとジクロロシランの反応性ガスを用いて製造される。二酸化ケイ素層は、ケイ素および酸素の反応性ガスが用いられる。そのような層は、同様に本発明において特に好ましい態様として用いられる。
【0021】
金属/水素化ケイ素(シリサイド)を最上層として製造するためには、たとえば六フッ化タングステン(WF)が反応性ガスとして用いられる。
道具を硬くするための窒化チタン層の最上層は、テトラキス(ジメチルアミド)チタン(TDMAT)および窒素から製造される。炭化ケイ素の層は、水素およびメチルトリクロロシラン(CHSiCl)の混合物が堆積される。
【0022】
原則として、ガス層からの堆積に関して、堆積する物質は、前記方法(「反応性ガス」)に適したもので作られなければならない。適切な物質としては、室温で気体状で存在する物質、または液体、揮発性物質である。装置は、本発明の出願人による公報DE10 2007 020 852にはじめて記載されている、その装置によれば、室温で固体状で存在している物質(たとえばTiO)は、機能的に酸化炭素や酸化ケイ素をドープするため、または前記固体に基づき純粋な被覆を作るための、ガスからの堆積が可能となる。DE10 2007 020 852に開示された内容は、本出願に全て組み込まれるものとする。
【0023】
チタンを含む層の堆積は特に好ましく、好ましくはチタンイソプロポキサイド(C1228Ti)を出発物質として用いる。
本発明における接着層は、最上層の被加工品または材料への付着を改善するために、以下のように様々に寄与する。
【0024】
・ 材料表面の不均一さを補う。
・ 理想的には中程度の内部応力を有すること、すなわち、材料と最上層の物質との間の内部応力である。
【0025】
・ 中間層の内部応力が、材料の内部応力と異なるように、中間層が設けられる。すなわち、基材に応力に対する補償効果が得られる。
被覆される被加工品、被覆される材料は、しばしば金属からできている、特に、スチール、ステンレススチール、アルミニウム、またはチタン、およびそれらの合金からできている。これらの金属の表面は、相対的に柔らかく、炭素またはケイ素を含む最上層に比較すると容易に塑性的に変形可能である。それに対して、参照した最上層は、極めて硬いが、もろい。その結果、多くの状況において、たとえば非常に高い点荷重において、被加工品または材料は塑性的に変形し、そのもろさにより、最上層は、この変形に追従できず、それゆえ、割れたり、裂けたりする。説明のために、この挙動は、マットレスの上に載っている厚板ガラスと比較されて、点荷重のもとで、破損する。
【0026】
こうして、そのような最上層に被覆された道具および材料は、特定の分野の適用や荷重状況において短い寿命および/または耐用年数である。
この理由により、本発明における1つの好ましい態様の方法は、ステップb)の前に以下のステップを含む:
a.1)被加工品および/または材料に支持層を塗布する。
【0027】
これらの支持層は、最上層の極度な硬さはない、しかし高い点荷重に負けることのない適度な強靭な硬度の特性は有するので、最上層の割れ目または削れを回避する。これらの支持層の特徴は、以下に詳細に述べる。
【0028】
本発明のさらに好ましい態様は、ステップb)の前に以下のステップを含む:
a.2)被加工品および/または材料をスパッタリングにより前処理または活性化する。
【0029】
この場合、被加工品および/または材料自体に行うと同様にその次に塗られた任意の支持層もスパッタリングにより前処理され、または活性化されることになる。ステップa.2)は、ステップa.1)の前および/または後に行ってもよい。
【0030】
「スパッタリング」または「スパッタエッチング」の言葉は、衝撃によって原子が固体から高いエネルギーのイオンとして遊離され、気体相中に移行する物理工程を言う。同様にPECVDに関しては、これらのイオンは、真空室中の高周波の交流電磁場を用いて、しばしばプラズマの生成により生成する。優れたガス、たとえばアルゴン(Ar)は、通常、反応ガスとして適する。高硬度の基材(たとえば、タングステンカーバイド上のフレーム溶射層)に対しては、酸素(O)が好ましくは用いられる、鉄を含まない材料、たとえば真ちゅう、青銅、アルミニウムなどに対しては、酸素(O)および水素(H)が好ましく用いられる。
【0031】
基材によっては、被覆されるべきその次の中間層または基材が必要とする場合は、HとOの混合物もまた用いられる。基材の表面は、イオンエッチングによりナノレベルまで不要なものが取り除かれる。名目的な意味では、削摩される。この表面の削摩は、たとえばOを用いたものは、短時間後に測定することができ、1時間に100nmの範囲で変化する。この操作は、その後の操作を受ける基材表面の不純物の除去を確実にする。特に青銅および真ちゅうが被覆されるべき基材として用いられると、表面の不要なものを取り除くのに、最も広い意味では活性化のために、HとOの混合物を用いることは、どのような接着においてもとにかく必要である。
【0032】
支持層は、好ましくは以下の群から選ばれる少なくとも1つの方法を用いて塗布される:
・ 高速フレーム溶射
・ プラズマ吹き付け
・ フレーム溶射
・ 硬質陽極酸化処理を含む陽極酸化処理
・ 電気めっき
・ 粉体被覆および/または
・ 電気泳動
・ 硬質陽極酸化処理
高速フレーム溶射(HVOF)に関しては、被覆されるべき基材上にスプレー状粉体が非常に高速でスプレーされる。前記粉体が溶解されるための熱は、酸素と燃料ガス、たとえば燃焼室中の蒸発した灯油、との反応により生成される。
【0033】
温度は、炎中で、おおよそ3000℃まで達する。ガスは反応により拡大し、スプレー状粉体を高速に加速する。
プラズマ吹き付けに関しては、通常陽極と陰極が細い間隔で分離されているプラズマバーナーが用いられる。直接の電流電圧により、陽極と陰極との間にアークが生じる。プラズマバーナーを通過して流れるガスは、アークに導かれ、イオン化される。イオン化またはその後の電離は、正イオンと電子からなる過熱された(20,000K以下)導電性のガスを生成する。高いプラズマ温度により溶かされた粉体は、生じたこのプラズマジェットに注入される。プラズマガス流は粉体粒子を取り込み、被覆されるべき被加工品の上に100m/s以下のスピードで粉体粒子を堆積する。短時間後にガス分子は、安定状態に戻り、エネルギーの放出を終了する。そうして、短距離を移動した後にプラズマの温度を下げる。プラズマ被覆は、通常大気圧で行われる。プラズマの動力学的および熱的エネルギーは層の質にとって特に重要である。アルゴン、ヘリウム、水素、酸素または窒素がガスとして用いられる。
【0034】
粉体を用いたフレーム溶射は、熱的スプレー技術を用いた最も古い操作である。燃料ガス/酸素の炎を熱源として用いた結果、低融点の金属および合金が処理される。フレーム溶射後、ひき続きたとえばニッケルまたはコバルトを基本とする硬質合金を溶解することで、2.5mm以下の濃く厚い層が、達成される。炭化物を加えると、硬さが著しく向上する。
【0035】
上記3つの場合の全てにおいて、被覆物資は粉体の形状で存在する。金属が結合した炭化物、たとえばタングステン炭化物、クロム炭化物、チタン炭化物、あるいはシリコン炭化物、または酸化物、たとえばアルミニウム酸化物、チタン二酸化物、クロム酸化物、マグネシウム酸化物およびジルコニウム酸化物、ならびにそれらの合金および混合物が好ましい。
【0036】
ワイヤーを用いるフレーム溶射において、被覆物質は、ワイヤーの形態で存在する。層物質は燃料ガス/酸素の炎とガスの速度の結果、塗布される。この方法に用いられる典型的な被覆物質は、金属であり、たとえば、モリブデン、Crスチール、Cr−Niスチール、Znなどが挙げられる。
【0037】
陽極酸化処理(「eloxal工程」)は、酸化物保護層がアルミニウムの被加工品または材料に陽極酸化によって塗布される。電気めっき法に対して、保護層は、被加工品上に堆積しない、しかしその代わり最上位の金属領域の変化によって酸化物または水酸化物が形成される。
【0038】
5〜25マイクロメートルの厚さの層が形成され、それはアルミニウムを腐食から保護する。それに対し、アルミニウムの天然の酸化物層は、ほんの2〜3ナノメートルの厚さしかない。陽極酸化された層の硬さは、モース硬度計でおおよそ8〜9、すなわち、クォーツとコランダムの間である。
【0039】
硬質陽極酸化処理(硬質被覆)は、過冷却された電解質により生成されたアルミニウムの表面の酸化に関する。この被覆は高摩耗、熱、腐食、電気に対し耐性がある。この被覆は、また、慣性力を非常に減じて良好な滑り特性を有する。なぜなら硬質陽極酸化処理層は、基材の材料そのもので形成されているので、付着の問題がない。良好な耐用性は、前記工程により形成され、硬質陽極酸化処理層を構成する酸化アルミニウムに由来する。関連した方法は、押出形状および回転部品のための陽極酸化処理、ダイカスト、砂型鋳造、および金型鋳造のための陽極酸化処理、鍛造および鍛錬合金である。この言葉はいくつかの陽極酸化処理技術を含む、それらの技術によって、厚く(50−100μm)密度の高い酸化物層を低温で製造することができる。それらの層は焼き戻しスチールの最良のものよりも耐摩耗性に優れ、磁器に匹敵する電気絶縁性を有する。陽極酸化処理された製品は、電気的および機械的な用途に用いられる。様々な含浸させる物質は、摩擦係数を減少させるのに適する。たとえばラノリン、テフロン(登録商標)、硫化モリブデンなどが挙げられる。非常に高い層の厚さに関しては、陽極酸化処理後、被加工品の寸法を変更する場合もある。
【0040】
電気めっきとは、被加工品または材料上への金属沈殿物の電気化学的堆積をいう。その工程において、電流が電解槽を通過する。塗布される金属(たとえば、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、またはある種の合金)は、陽極(消耗電極)に設置され、被覆されるべき被加工品または材料は陰極に設置される。電流は、消耗電極から金属イオンを放出し、還元することにより、品上にそれらを堆積させる。処理される品は、全面を銅または他の金属により均一に被覆される。品を電解槽に設置する時間が長いほど、また電流が高いほど、金属層は厚くなる(たとえば銅層が挙げられる)。被加工品または材料の表面の硬さは、こうして増大することができる。
【0041】
粉体被覆は、通常導電性の材料または被加工品が被覆用粉体により被覆される被覆工程である。粉体は、被覆されるべき基材の上に静電的または静摩擦的にスプレーされ、焼き付けられる。被加工品は、前もって完全に脱脂されなくてはならず、任意に防食処理される。電流処理において、焼き付けの温度は、塗布によって非常に幅広いことがある。典型的に、焼き付けの条件は、140℃から200℃の間である。ポリウレタン、エポキシ、またはポリエステル樹脂に基づく被覆用粉体が典型的に用いられるのではあるが、現在は、さまざまなバインダーが用いられている。焼き付けは、永久的な付着もたらし、均一で密度の高い被覆が達成される。その結果、凝固することもなく(疑似焼結)、粒子が溶解することもない。粉体は、流動床焼結にも適用される。この方法において、加熱された被加工品は、圧縮空気を用いて流動化されたプラスチック粉体に短い間浸される。加熱下被加工品が粉体を融解した結果、粉体は表面に融合しプラスチックの層を形成する。
【0042】
上記方法のいくつもが、特に好ましくは併用される。たとえば、電気泳動と電気めっき堆積の併用は、連続して[行う]ことも可能である。たとえば、最初にセラミック層(たとえばイットリウム安定化ジルコニウム酸化物)を電気泳動により被加工品上に形成し、次に1100℃で焼結して開放多孔性層を形成することができる。その次の段階で、たとえばニッケルが電気めっきにより、層の孔中に堆積される。複合材料の支持層の被加工品または材料への結合はこうして形成され、最後に熱処理を行うことで改良される。
【0043】
電気泳動の基本的な原理は、定電場における分散された粒子の移動およびそれらの電極上へのそれらの堆積である。セラミック粉体(たとえば酸化イットリウム(Y),酸化チタン)は、通常たとえばエタノール、または水―エタノール混合物中に分散される。分散物質、たとえば4−ヒドロキシ安息香酸は、よく用いられ、同時に未熟の層(焼結されていない、前もって堆積された層)において、バインダーとして働くことができる。
【0044】
被覆は、通常、直流電圧5〜200Vで行われる。被覆される被加工品または材料は、被覆基材として用いられ、同時に電極として機能する。対の電極は、たとえばグラファイトからなる。
【0045】
電気泳動被覆は、通常その後、数時間、層を空気乾燥する。焼結は、その後、800〜1500℃の間で行われる。こうして形成された支持層は、焼結後50%に至るまでの非常に高い多孔性を有することができる。
【0046】
加えて、支持層は、好ましくは、以下の群から選ばれる少なくとも1種の層を有する。
・ 陽極酸化層
・ セラミック層
・ クロム(VI)層、および/または
・ コランダム層
陽極酸化処理層は、上記陽極酸化処理方法を用いて塗布される。セラミック層は、さまざまな上記方法を用いて塗布されるが、特に上記スプレー方法および電気泳動方法が用いられる。クロム(VI)層は、通常電気めっき法により塗布される。コランダム層は、Alからなり、モース硬度計で9であり、ダイヤモンドに次いで2番目に硬い鉱物である。コランダムは工業用セラミックであり、同じように、たとえばスプレー方法および電気泳動方法を用いて、被加工品または材料上に被覆として塗布される。
【0047】
上記接着層は、特に好ましくは、被加工品および/または材料にプラズマ被覆により塗布される。
前記接着層は、好ましくは、[周期表の]6および/または7族の元素を含む。Cr、Mo、W、Mn、Mg、Tiおよび/またはSiの元素を含む化合物は、特にそれらを含む混合物は、好ましい。同じように、個々の化合物は、接着層の深部に少しずつ分配されることができる。Siは、特に好ましい。たとえばTMSは、真空状態では、非常に揮発性が高いが、反応性ガスに適している。
【0048】
1つの好ましい態様においては、複数のガスがステップa.2)において使用される。この態様においては、ステップa.2)は、複数のガスのスパッタリング方法を表す、その利点を以下に詳述する。
【0049】
ステップb)および/またはステップc)を、不活性および/または還元性雰囲気で実行することは特に好ましい。
不活性および/または還元性雰囲気を条件とするのは、以下の様々な目的があるからである。
【0050】
・ 金属製の被加工品および/または材料の表面を酸化、そして不動態化から保護する、それらは、続いての接着層および最上層の付着を損なうからである。
・ 炭素を堆積する間COおよび/またはCOの生成を防止する、さもなければそれらは、縮んだ孔、気泡、およびマイクロキャビティを炭素含有層に生じ、耐過重性が低く、起伏のある、密度の低い表面を生成し、最上層の接着を大いに損なう。
【0051】
不活性および/または還元性雰囲気は、様々な方法で提供することができる、一方、ステップb)および/またはc)は、保護ガス雰囲気下、たとえば同時にArを供給しながら行うことができる。
【0052】
一方、ステップb)および/またはc)を開始する前に、たとえば室からOのような酸化ガスの残渣のいずれをも追い出すため、および/または窒素を用いたフラッシュサイクルを導入するための移行として、室は、Arのような保護ガスでフラッシュしていてもよい。
【0053】
同様に本発明の方法の特に好ましい態様は、少なくとも2種の異なるガスが、
・ ステップa.2)において、および/または、
・ ステップb)からステップc)への移行において
対抗する傾斜の形態(opposing ramps形態)で供給される。
【0054】
本発明の文脈において、「対抗する傾斜の形態」とは、スパッタリングまたはPECVD工程の間に、少なくとも1種の反応性ガスの微小な体積が段階的なまたは無段の態様で減少するのに対して、他のガスの微小な体積が段階的なまたは無段の態様で増加する。
【0055】
傾斜については、ここで初めて説明する。本発明によれば、これらの傾斜は、一方でステップa.2)(スパッタリング)において、および他方でステップb)からステップc)への移行(PECVD)において異なった機能を有する。
【0056】
スパッタリングに関しては、傾斜は反応性ガスが引き続いて他の反応性ガスと置き換えられる効果を有する、そのことは、たとえば最初に用いられた反応性ガスが妨害するといったひき続きの工程ステップに意味があることがある。
【0057】
PECVDに関しては、傾斜は、2つの物質の堆積相が統合されるという効果を有する。このことは、様々な被覆材料の割合を徐々に変化させた移行領域を生じる。このことは、2つの層の緊密な相互作用となり、こうして、たとえば最上層の接着層への付着が改善される。
【0058】
前記傾斜の重要な側面は、少なくとも1つの反応性ガスから少なくとも1つの他の反応性ガスへの徐々の移行、中間層のための被覆ガスから最上層のための被覆ガスへの移行が、特別な一時的な勾配を用いることによって時間的に統合されて整えられるにちがいない。バイアス数の変化およびさらなる被覆パラメータについても、適用可能であれば、同様である。反応性ガスのそれぞれの移行の前に室が望ましいバイアス値に上昇したり減少したりすることは、内部応力の形成を減じることを確かにするにちがいない。このバイアス値は、傾斜の設定を開始する前に、少なくとも5秒であり15秒未満である別々のステップで設定される。
【0059】
応力のない最上層を得るための最上層の被覆工程全体の間、「連続勾配」で操作することが有利であることがわかった。実際には、このことは最上層のための被覆工程全体の間においてガス供給の微小量が一定でないが、周期的に変化することを意味し、一方、バイアス電圧は、一定に保たれる。このように、たとえば、DLCの最上層は、10μ以下の厚さを有し、応力がないように塗布されることができる。
【0060】
ステップb)からステップc)への移行は、たとえば最初にシリコンを含む接着層がプラズマ被覆により塗布される。そのために、たとえばテトラメチルジシロキサン(C14OSi)が用いられる、それは室温で液体であるが、低圧の状態では、非常に揮発性である。一定の時間後、TMSのためのガス微小量は、徐々に減少し、炭素含有ガスであるアセチレンのためのガス微小量は、徐々に増加する。
【0061】
上記傾斜は、以下のように設計されることができる。任意のスパッタリングステップ(a.2)後、中間層の塗布開始5秒前、バイアス電圧Vバイアスは、被覆に必要なレベルへ上昇される。それから気化したシラン含有ガスであるTMSが、非常に短い傾斜で(10秒)導入される。接着層の堆積時間経過後、500秒かけてアセチレンのバルブを徐々に開けて望ましい注入値にする。同時に、TMSのバルブを同じ時間をかけて徐々に閉める。それから最上層が所望の時間をかけて塗布される。表1は例示の値によりこの方法を示したものである:
【0062】
【表1】

【0063】
原則として、最上層は、所望の時間をかけて塗布することができる。最上層の厚さは、被覆の継続時間につれ、比例的に増大する。この理由により、可変の「X」は上記表において、時間値として選択される。
【0064】
表1に示した値と一線を画して、基本的に以下のパラメーターの範囲は、様々なステップに対して好ましい。
【0065】
【表2】

【0066】
また、傾斜は接着層に用いられる物質のために操作されてもよい。こうして、塗布の間、1つの物質が次々と他と置き換わる。
加えて、最上層の被覆の間、以下の処理パラメーターが、プラズマ被覆室中で維持される。
【0067】
【表3】

【0068】
室中のガス濃度は、ガスの流量、室の体積、および室中の圧力に起因する。900Lの体積を有する室であって、0.0〜2.0Paで、たとえばアセチレン(C)で、100sccm(0.1175g/分)のガスの流量の場合、得られる濃度は、室の体積の0.011%である。
【0069】
さらなる好ましいガス流量の設定の例は、200sccm(0.2350g/分、C=0.022%)、300sccm(0.3525g/分、C(0.033%))、400sccm(0.4700g/分、C=0.044%)および500sccm(0.5875g/分、C=0.055%)である。
【0070】
このようにしてアセチレンを反応性ガスとして用いて製造されたDLC層は、6000〜8000HVの硬さで0.90μmから5.0μmまでの厚さである。
原則として、Oは、スパッタリングに理想的な反応性ガスである、なぜなら、イオン化された酸素原子が、高分子量であることにより高い運動エネルギーを有し、それゆえ効果的に表面の不要なものを除去する。加えて、酸素は安価である。
【0071】
しかしながら一般に、Oは、先行技術において、金属材料または被加工品のスパッタリングの前処理または活性化に用いられていない、なぜなら、それは金属表面を酸化する効果を有し、多かれ少なかれ厚い金属酸化物層をその上に形成し、それゆえ表面を不動態化する。それゆえ、金属材料または被加工品の予備スパッタリングのために、当業者は、たとえばアルゴンのような優れた非反応性ガスを好ましく用いる。しかしながら、これらは、酸素よりはるかに高価である。低減効果を有するガス、たとえばHは、同様に金属表面の不動態化を防ぐまたは逆行さえさせるため、理想的である。しかしながら、Hは、低分子量のため、運動エネルギーが低く、スパッタリングに適していない。
【0072】
いずれにしても、Oは、プラスチック表面のスパッタリングに適する、なぜなら、酸化によって、表面が不動態化することに気を使うことがないからである。
当業者がOをスパッタリングに用いないさらなる理由として、スパッタリングに続いて、炭素含有層がプラズマ被覆により被加工品および/または材料に塗布される場合がある。Oのいかなる残渣も炭素をCOおよび/またはCOに酸化しうる。その結果、縮んだ孔、気泡、およびマイクロキャビティを炭素含有層に生じ、耐荷重性が低く、起伏のある、密度の低い表面を生成し、最上層の接着を大いに損なう。
【0073】
しかしながら、非常に高い分子量を有するので、Arもまた不利である。なぜなら、スパッタリングの間、それは非常に起伏のある表面となり、その上に塗布される最上層、たとえばDLC層は、品質が良くない。
【0074】
上述のOを反応ガスとして使用しない理由にもかかわらず、本発明の方法の1つの好ましい態様において、本発明の出願人は、Oの利点を利用した。本発明の好ましい態様において、上述の不利な点は []によって回避される。
【0075】
ステップa.2)における反応性ガスは、特に、好ましくは、少なくとも一時的に、HとOガスを含む。Hを反応性ガス中に存在させることによって、Oの酸化効果は減少し、金属表面の不動態化は生じない。これらの状態の下、Oの分子量は、スパッタリング中に効果的に不要なものを除去する効果を生じるのに理想的である、しかしながら、被加工品および/または材料の表面を粗くすることがない。
【0076】
上述の方法は、以下のように行われる:被加工品は、化学量論比で1:2から1:8までのHおよびOを用いて、スパッタリングされる。上述のように、Hの存在は、被加工品の表面の不動態化を防ぐ。T=400秒の時間において、Hの微小量は、傾斜により徐々に減らされる、そしてその代わりにArが室中へ供給される。T=600秒の時間において、Oの微小量は、徐々に減らされる、一方Arの微小量は一定のままである。このようにして、室中に残存する酸素は、残渣を残さずに洗い出され/追い出される。
【0077】
上述の下位ステップの間のArを用いたスパッタリングの不利な結果を減らすために、交流電磁場をこの間に減少させることができる。代わりに、この洗浄ステップの持続時間を最小限にすることもできる。
【0078】
Arの供給は、その後突然終了する、TMSが室に入れられる、そして必要であれば、プラズマは再点火される。この段階において、シリコン接着層は、スパッタリングで活性化された表面に塗布される。T=1600秒の時間において、TMSの微小量は、さらなる傾斜により徐々に減らされる、そしてその代わりにCが室中へ供給され、DLCが堆積する結果となる。こうして、移行期間の間に、シリコンおよび炭素は同時に堆積され、シリコンの割合は徐々に減らされ、炭素の割合は徐々に増やされる。こうして、移行領域は、接着層と高い強度の最上層との間に形成され、前者に対する後者の付着性を著しく向上させている。それから最上層が、所望の時間をかけて塗布される。表4は、この方法を例示の値で表わしたものである:
【0079】
【表4】

【0080】
原則として、最上層は、どのような所望の時間をかけて塗布されてもよい。最上層の厚さは、塗布の間に、比例的に増加する。この理由により、可変の「X」は上記表において、時間値として選択される。
【0081】
傾斜を、例として図1に略図として示した。表1に示した値と一線を画して、基本的に以下のパラメーターの範囲は、様々なステップに対して好ましい。
【0082】
【表5】

【0083】
以下のプロセスパラメーターは、好ましくは以下の全工程で維持される。
【0084】
【表6】

【0085】
本発明のさらなる好ましい態様において、上述のOを用いることによる不利な点は、ステップa.2)において、上述の対抗する傾斜を用いてHおよび/またはOをArで置換することにより、回避される。
【0086】
対抗する傾斜を用いた置換は、殊に完全にOを洗い出すことになる。こうしてOは、続いての補足処理の前に、完全に被覆室から取り除かれる、さもなければ、Oの残渣の存在により、上述の逆の効果となる。
【0087】
スパッタリングステップ(a.2)の前または後、またはスパッタリングステップ(a.2)の代わりに、ステップ(a.1)を支持層を塗布するために挿入してもよい。このステップは、たとえば、以下を含む群から選択される方法を含んでいてもよい。
【0088】
・ 高速フレーム溶射
・ プラズマ吹き付け
・ フレーム溶射
・ 硬質陽極酸化処理を含む陽極酸化処理
・ 電気めっき
・ 粉体被覆および/または
・ 電気泳動
本発明による方法のさらなる態様において、本発明の方法は、交流電磁場を生じるための平らな高周波の電極および室の外側に周波数発生器を有するプラズマ被覆室中において行われ、前記高周波電極は、少なくとも2つの供給線ラインを有し、そのラインを通って、電極は交流発生器により交流電圧を供給される。
【0089】
そのようなプラズマ被覆室は、本発明の出願人により最初にPCT/EP2007/057117に、記載されている。
こうして、室中で、非常に高い強度を有する交流場を生じることができる。こうして交流場は、十分な高い放電深度と高度の均一性を有する。こうして、一定の層厚および製造された被覆中の低い内部応力の差が少ないことに見られるように、均一なプラズマおよび均一な堆積速度が、室の全ての領域で達成される。両要因は、さらに本発明により塗布される高強度の最上層の付着を改良する。
【0090】
3つ以上のラインが好ましくは供給され、こうして、さらに均一な交流場が成立することを可能とする。
高周波電極に至る個々の供給ラインは、好ましくは独立に制御され、そうすることにより、均一に高い磁場強度を有する均一な交流場が室全体で生じる。この特徴は、被覆の質を大いに改善する。
【0091】
このことは、高周波発生器と高周波電極の間に接続されたいわゆるマッチ箱の使用により達成される。前記マッチ箱は、独立に制御された高周波電極に至る個々の供給ラインのために、たとえばトリム電位差計を有する。前記バイアス電圧の設定は、すべての制御装置において同じであり、その結果、同一の磁場強度となり、こうして均一な交流場となる。
【0092】
本発明によれば、交流電磁場を生じるための平らな高周波電極、室の外側に設置された周波数発生器、および高周波電極に周波数発生器で生じた交流電圧を提供するための少なくとも2つの供給ラインを有するプラズマ被覆室を使用することが、先に記載された方法の請求項の1つによる被加工品および/または材料の被覆に用いられる。
【0093】
本発明は、さらに以下の層を含む被加工品および/または材料の被覆に関する。
a)接着層
b)高強度の最上層
前記接着層および最上層は、徐々に変化する移行領域を有する、すなわち、本発明の方法を用いて形成されるであろう被加工品および/または材料上の被覆である。
【0094】
この被覆の材料特性、被覆のための出発物質、ならびに被覆の生成のためのプロセス特性およびパラメーターは、先立って論じた方法の請求項とともに開示されている、また被覆それ自体も開示されている。このことは接着層と高強度の最上層との間の移行について特に当てはまり、それは上記傾斜を用いて達成されることができる。
【0095】
本発明においてさらに好ましくは、前記被覆が、前記被加工品および/または材料と接着層の間にある支持層もまた有することである。この支持層の特徴および利点が上記に十分開示されている。
【0096】
本発明は、さらに上述の方法を用いた被覆を備えた道具、被加工品または材料、または部品に関する、すなわち上述の被覆に関する。
道具は、外科道具であってもよい、たとえば、メスが挙げられる。道具は打ち抜き道具であってもよい。さらに、道具は、肉切りまたは食肉加工の切断用具であってもよい。
【0097】
上述の道具の寿命は、本発明の被覆の使用により著しく延長されることがある。本発明により被覆された切断用具は、こうして、たとえ悪条件のもとであっても、鋭さをより長く保つ。これは、特に肉切りまたは食肉加工の切断用具に対し当てはまる。それらは、柔らかい材料(脂肪、筋肉、皮、結合組織)を切ることもできる上に、たとえば骨、冷凍製品などの硬い材料も切ることができる。
【0098】
他の例は、頻繁に消毒されなければならない外科道具である。消毒は、本発明により被覆されていない道具にとっては、消毒の条件(熱、水分および圧力)に起因して、短い時間で深刻な腐食を生じる。一方、前記道具の適性それ自体は、逆に作用する、そして、一方、特に用いられる刃の鋭さは、深刻に損なわれる。
【0099】
本発明により被覆されるべき部品のさらなる例は、以下の通りである:
・ ポンプ、ガスコンプレッサー、およびタービンなどの回転機械のシールおよび部
品、特に、回転機械と固定ハウジングとの間のシール
・ 接着摩耗ならびに典型的なフレッティングおよび穴あけを受ける部品
・ 空気式タイヤおよび水圧設備、特に「棒とシリンダー」シーリングシステム、封
止要素、ならびに棒とシリンダーの表面
・ エンジンのユニットおよび部品、特にピストンリングを備えたまたは備えていな
いピストン、ブッシングおよびシリンダー孔、バルブおよびカムシャフト、なら
びにピストンおよび連結ロッド
・ 化学工程に曝される機械の部品、ならびにそれらの金属表面および/または金属
基材、それらは化学的に攻撃されおよび腐食される
・ 高い生体適合性の要請のある部品、特に人工器官、移植物、ねじ、プレート、人
工関節、ステント、ならびに生体力学的およびマイクロメカニカルな部品
・ 基本的に抗アレルギー性でなければならない外科道具、たとえば外科用メス、鉗
子、内視鏡、切削道具、クランプなどが挙げられる
・ 印刷可能なインクおよび洗浄剤に対し化学的な耐性のある表面を有する必要があ
る部品、そしてその表面は明確な顔料の測定に対する明確な抗付着性ならびに防
液体性および/または液体付着性を必要とする部品、たとえば、プリンターのた
めのローラー、シリンダーおよびワイパーが挙げられる。
【0100】
・ 熱放散および絶縁性の表面被覆を必要とする導電機械、コンピューター、および
機械における部品、たとえば磁気記録媒体および可動電力供給ラインの絶縁体
・ ガス、液体、およびガス−または液体−流動固体媒体のための可動メディアサプ
ライライン
・ もはや許容可能でない硬質クロム層の交換、たとえば航空機の着陸装置における
水圧のピストンおよびシリンダーに用いられるもの
さらに、本発明により被覆されるべき被加工品および/または材料は、切断、穴あけおよびねじ回し機、機械加工具、球状またはローラーベアリング、歯車、小歯車、駆動チェーン、磁気記録装置における音および駆動装置、ならびに外科および歯科道具が含まれる。
【0101】
原理的には、特に滑り摩擦摩耗のある機械および機関の組み合わせは、本発明によれば有利に被覆することができる、なぜなら、これらは高い圧力および/または温度に曝されるからである。
【0102】
定義
「微小量」とは、プラズマ被覆室への画一化されたガスの流れをいう。大きさ「sccm」は、この件において、標準的な1分当たりの立法センチを表し、標準化された体積の流れを表す。真空ポンプ技術において、これはまた「ガス負荷」とも言われる。この標準は、温度と圧力に依存しない、明確な単位時間当たりのガスの量(粒子数)を示す。1sccmは、標準状態(T=20℃およびp=1013.25hPa)の下、単位時間当たりのV=1cm=1mLのガスの容積流量に対応する。
【0103】
図と実施例
本発明は、以下に示し述べる図および実施例を参照して、詳細に説明される。図と実施例は、実際は厳密な実例であり、いかなる場合でも本発明を限定するものとして解釈されない。
【実施例】
【0104】
[実施例1]
上記方法(層構成:金属結合されたWC−Co 83 17 タングステン カーバイドのHVOF被覆上にDLC最上層と中間層とがある)で被覆された肉切りナイフは、複合被覆のされた標準的な肉切りナイフの3倍の寿命であった。
【0105】
[実施例2]
じゃがいもに用いる工業的な切断刃を上記方法により被覆したところ、従来の複合被覆のされた切断刃の8倍の寿命であった。
【0106】
[実施例3]
自動車工業に用いる電気的プラグインコネクターの製造に用いる打ち抜き道具を上記方法で被覆したところ、従来の打ち抜き道具の2倍以上の寿命であった。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、表4で述べた傾斜の時間経過の変動の時間図を示す。最初のブロックは、スパッタリングステップ(a.2)、および第2のブロックは接着層を塗布するためのステップb)、同様にその傾斜様の移行を、ステップc)で塗布される最上層とともに示す。スパッタリングステップ(a.2)の前または後に、またはスパッタリングステップ(a.2)の代わりに、支持層を塗布するためにステップ(a.1)を入れてもよい。
【0108】
このステップは、たとえば、以下を含む群から選ばれる方法を使用する。
・ 高速フレーム溶射
・ プラズマ吹き付け
・ フレーム溶射
・ 硬質陽極酸化処理を含む陽極酸化処理
・ 電気めっき
・ 粉体被覆および/または
・ 電気泳動。
図2〜4は、3つのステンレススチール被加工品の物理分析の結果を示す
、その中の1つは、チタンニトリド(TiN)で被覆され、他の2つは本発明による被覆がされている(M44、層の厚さ0.81μm、M59、層の厚さ0.84μm;層組成:金属結合されたWC−Co 83 17 タングステン カーバイドのHVOF被覆上にある接着層を有するDLC最上層)。先行技術において、チタンニトリドは、切断、フライス加工、打ち抜き道具のための最も硬質で、最も耐性のある被覆である。
【0109】
摩擦および摩耗試験は、SOP 4CP1(ピンオンディスクのトライボロジー)に従って、CSEMピンオンディスクトライボメーターを測定装置として実施された。以下のプロセスパラメーターは維持されている。
【0110】
応力スペクトル:
・ カウンター物質:WC Co ボール、直径6mm
・ 滑剤:なし
・ 標準力FN:1N
・ 回転スピード:500rpm
・ 滑り速度 v:52.4mm/s
・ 摩擦印の直径D:2mm
境界条件:
周囲温度:23℃+/−1K
相対湿度:50%+/−6%
【図2】図2は、摩擦係数μを決定した結果を示す。平均摩擦係数μがおおよそ0.3であることから、本発明による被覆は明らかに、常に2倍以上高い平均摩擦係数を有するTiN被覆より重要な利点がある。
【図3】図3は、本発明による被覆M59(図3a)とTiN被覆(図3b)に対する30,000回転後の摩擦印における摩耗の光学顕微鏡の資料(倍率:100x)を示す。本発明による被覆は、TiN被覆よりずっと少ない摩耗を示す。
【図4】図4は、30,000回転後の摩擦印の深さの表面形状測定した結果を示す。同様に本発明の被覆は、TiN被覆よりずっと少ない摩耗を示す。
【図5】図5は、本発明により被覆された被加工品の切片の光学顕微鏡の資料を示す。倍率は3000Xである。DLC層1は、接着層2に対して明るい線で対比されており、支持層3(この場合、HVOF支持層)は、容易に識別可能である。前記DLC層は、おおよそ4μmの厚さである。前記DLC層に埋め込まれた媒体は乏しい接着性を有し、埋め込まれた媒体が切られたときにDLC層は分離することも容易に分かる(間隙4)。さらにプラズマ被覆方法を用いた前記DLC層は、前に塗布された支持層における不均一さを補うことができることも、分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む被加工品および/または材料への被覆を行うための方法:
b)接着層の塗布;および
c)高強度の最上層のプラズマ被覆による塗布。
【請求項2】
ステップb)の前に、以下のステップを含む請求項1に記載の方法:
a.1)被加工品および/または材料に支持層を塗布する。
【請求項3】
ステップb)の前に、少なくとも1つのステップa.2)を含む請求項1または2に記載の方法:
a.2)被加工品および/または材料および/または支持層をスパッタリングにより前処理または活性化する。
【請求項4】
前記支持層が、以下の群から選ばれる少なくとも1つの方法を用いて塗布されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法:
・ 高速フレーム溶射
・ プラズマ吹き付け
・ フレーム溶射
・ 硬質陽極酸化処理を含む陽極酸化処理
・ 電気めっき
・ 粉体被覆および/または
・ 電気泳動。
【請求項5】
前記支持層が、以下の群から選ばれる少なくとも1種の層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法:
・ 陽極酸化層
・ セラミック層
・ クロム(VI)層、および/または
・ コランダム層。
【請求項6】
プラズマ被覆により被加工品および/または材料へ接着層が塗布されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記接着層が[周期表の]6および/または7族の元素を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップa.2)において複数のガスを使用することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
不活性および/または減圧の雰囲気下で、ステップb)および/またはステップc)が行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2種の異なるガスの供給が、
・ ステップa.2)において、および/または、
・ ステップb)からステップc)への移行において
対抗する傾斜の形態で行われることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップa.2)において、H、Oおよび/またはArを含む群から選択される少なくとも1種のガスを用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ステップa.2)における反応性ガスが少なくても一時的にHおよびOガスを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ステップa.2)において、上記対抗する傾斜を用いてHおよび/またはOがArに置き換わることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
交流電磁場を生じるための平らな高周波の電極および室の外側に周波数発生器を有するプラズマ被覆室中において行われる方法であって、前記高周波電極は、少なくとも2つの供給線ラインを有し、そのラインを通って、電極は交流発生器により生じた交流電圧を供給されることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
交流電磁場を生じるための平らな高周波の電極と、室の外側に周波数発生器と、およびそのラインを通って高周波電極が交流発生器により生じた交流電圧を供給される少なくとも2つの供給線ラインとを有するプラズマ被覆室を被加工品および/または材料の被覆に使用する請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
以下の層を含む被加工品および/または材料の被覆であって:
c)接着層 および
d)高強度の最上層
前記接着層と高強度の最上層が、変化する移行領域を有する被覆。
【請求項17】
前記被加工品および/または材料と接着層との間に支持層を有することを特徴とする請求項16に記載の被覆。
【請求項18】
請求項1から15の1つによる方法を用いて形成された被加工品および/または材料の被覆。
【請求項19】
請求項1から15の1つによる方法を用いて被覆され、請求項16または17の1つにより供された被覆を有する、道具、被加工品もしくは材料、または部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−523824(P2010−523824A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502515(P2010−502515)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054394
【国際公開番号】WO2008/125607
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509013448)
【Fターム(参考)】